説明

ディスプレイパネルの製造方法及びディスプレイパネル

【課題】接着剤の流動を適切に制御することができるディスプレイパネルの製造方法及び当該製造方法から得られたディスプレイパネルを提供する。
【解決手段】本発明のディスプレイパネルの製造方法は、光電デバイスが配設されるデバイス面を含む第1基板と、接着剤によって前記デバイス面に接着される接着面と接着面を取り囲む側面とを含む第2基板とを、接着剤を用いて接着させた積層基板を含むディスプレイパネルの製造方法であって、デバイス面に光電デバイスを配設し、光電デバイス層を形成する第1工程と、デバイス面よりも狭い接着面に、接着剤を用いて、接着剤層を形成する第2工程と、第1基板と第2基板とを重ね合わせ、光電デバイス層を第2基板で覆う第3工程と、接着剤層を加圧し、第1基板と第2基板との境界から接着剤を流出させ、側面の一部を接着剤で覆う第4工程と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を表示するディスプレイパネルの製造方法及び当該製造方法によって製造されたディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイパネルは、一対の基板と、一対の基板同士を接着並びに固定するための接着剤層と、を備える。特許文献1は、ディスプレイパネルの基板同士を接着する方法を開示する。
【0003】
ここで、図13は、従来のディスプレイパネル900の概略的な断面図である。図13を用いて、従来のディスプレイパネル900が説明される。
【0004】
ディスプレイパネル900は、映像を表示するために用いられる光電デバイスが配列された光電デバイス層910と、光電デバイス層910を支持する下側基板920と、下側基板920上に形成された光電デバイス層910を封止する封止層930と、封止層930上に設置された上側基板940と、を備える。封止層930は、光電デバイス層910を封止するだけでなく、下側基板920と上側基板940とを接着する役割をも担う。したがって、封止層930は、多くの場合、ディスプレイパネル900の製造工程において接着性能を発揮する樹脂材料を用いて形成される。
【0005】
下側基板920と上側基板940との間の境界からの接着性樹脂のはみ出しは、樹脂のはみ出し量によって下側基板920と上側基板940とを貼り合わせた後の、他部材を設置する工程や基板の切断といった工程ではみ出した樹脂が干渉し、不良を生じることがある。したがって、樹脂がはみ出さないよう、または樹脂のはみ出し量の制御を行う必要がないよう、封止層930は、下側基板920と上側基板940との間の境界面よりも狭くなるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−185658号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
境界面より狭く形成された封止層930は、下側基板920と上側基板940との間に空隙Gを生じさせる。この場合、特に、下側基板920及び上側基板940が可撓性を有するならば(例えば、フレキシブルディスプレイ)、下側基板920の曲げ変形に上側基板940が追従しにくくなる。或いは、上側基板940の曲げ変形に下側基板920が追従しにくくなる。結果として、下側基板920と上側基板940との間の剥離が促進されることとなる。
【0008】
本発明は、基板間の剥離を好適に抑制することができるディスプレイパネルの製造方法及び当該製造方法から得られたディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一の局面に係る製造方法にしたがって、光電デバイスが配設されるデバイス面を含む第1基板と、接着剤によって前記デバイス面に接着される接着面と該接着面を取り囲む側面とを含む第2基板とを、接着させた積層基板を含むディスプレイパネルが製造される。当該ディスプレイパネルの製造方法は、前記デバイス面に光電デバイスを配設し、光電デバイス層を形成する第1工程と、前記デバイス面よりも狭い前記接着面に、前記接着剤を用いて、接着剤層を形成する第2工程と、前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせ、前記光電デバイス層を前記第2基板で覆う第3工程と、前記接着剤層を加圧し、前記第1基板と前記第2基板との境界から流出させ、前記側面の一部を前記接着剤で覆う第4工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の局面に係るディスプレイパネルは、光電デバイスを含む光電デバイス層が配設されたデバイス面を含む第1基板と、前記デバイス面に接着剤を用いて形成された接着剤層と、該接着剤層を介して前記光電デバイス層を覆うように前記第1基板に接着される接着面と該接着面を取り囲む側面とを含む第2基板と、を備え、前記接着剤層は、前記第1基板と前記第2基板との境界からはみ出し、前記側面の一部を覆う前記接着剤を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るディスプレイパネルは、接着剤が基板の側面の一部を覆うので、基板間の剥離は、ほとんど生じない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】映像を表示するためのディスプレイパネルの概略的な断面図である。
【図2】図1に示されるディスプレイパネルの概略的な平面図である。
【図3】図1に示されるディスプレイパネルの製造方法の概略的なフローチャートである。
【図4】図3に示される製造方法のステップS110を通じて得られる下側基板の概略的な断面図である。
【図5】図3に示される製造方法のステップS120で用いられる接着剤シートの概略的な斜視図である。
【図6】図3に示される製造方法のステップS120を通じて得られる接着剤層と上側基板との積層体の概略的な断面図である。
【図7】図3に示される製造方法のステップS130及びステップS140において用いられる例示的な貼合装置の概略的な断面図である。
【図8】図7に示される工程の後の貼合装置の概略的な断面図である。
【図9】図3に示される製造方法のステップS140における貼合装置の概略的な断面図である。
【図10】図3に示される製造方法のステップS140における貼合装置の概略的な断面図である。
【図11】図3に示される製造方法のステップS140の後の貼合装置の概略的な断面図である。
【図12】比較例の貼合技術を表す概略図である。
【図13】従来のディスプレイパネルの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ディスプレイパネルの製造方法及び当該製造方法に従って製造されたディスプレイパネルが図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、説明の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、ディスプレイパネルの製造方法及びディスプレイパネルの原理を容易に理解させることを目的とするものであり、ディスプレイパネルの製造方法及びディスプレイパネルの原理はこれらに何ら限定されるものではない。
【0014】
(ディスプレイパネル)
図1は、映像を表示するためのディスプレイパネル100の概略的な断面図である。図2は、図1に示されるディスプレイパネル100の概略的な平面図である。図1及び図2を用いて、ディスプレイパネル100が説明される。尚、以下の説明において用いられる「上」や「下」といった方向を表す用語は、本実施形態の原理を明瞭化させるためのものであり、本実施形態の原理を何ら限定するものではない。
【0015】
ディスプレイパネル100は、略矩形状の下側基板110を備える。下側基板110は、EL膜やバリア膜といった光電デバイスを用いて形成された光電デバイス層112が配設された上面111を含む。ディスプレイパネル100に入力された映像信号に基づき、光電デバイス層112に電流が供給され、光電デバイス層112が発光する。この結果、光電デバイス層112は、映像信号に応じた映像を表示することとなる。光電デバイス層112は、有機EL(エレクトロルミネセンス)材料を用いた既知のディスプレイパネルに採用される構造であってもよい。本実施形態において、下側基板110は、第1基板として例示される。また、下側基板110の上面111は、デバイス面として例示される。
【0016】
ディスプレイパネル100は、光電デバイス層112を覆うように、接着剤を用いて形成された接着剤層120と、接着剤層120を介して下側基板110に接着される上側基板130と、を備える。上側基板130は、下側基板110に対向する下面131と、下面131とは反対側の上面132と、下面131及び上面132を取り囲む側面133と、を含む。上側基板130の下面131は、接着剤層120の接着剤によって、下側基板110の上面111に接着される。本実施形態において、上側基板130は、第2基板として例示される。上側基板130の下面131は、接着面として例示される。上側基板130の上面132は、反対面として例示される。
【0017】
接着剤層120は、光電デバイス層112を封止する役割を担う。上側基板130は、光電デバイス層112を保護する役割を担う。以下の説明において、上側基板130と下側基板110との積層構造は、「積層基板150」と称される。必要に応じて、ディスプレイパネル100は、積層基板150に加えて、上側基板130の上面132に取り付けられる偏光板(図示せず)やタッチパネル(図示せず)を更に備えてもよい。
【0018】
本実施形態において、下側基板110及び上側基板130は、可撓性を有する。したがって、ディスプレイパネル100は、フレキシブルディスプレイ装置として機能する。代替的に、下側基板110及び上側基板130のうち一方が可撓性を有してもよい。更に代替的に、下側基板110及び上側基板130は、比較的高い剛性を有してもよい。
【0019】
上側基板130の下面131は、下側基板110の上面111よりも狭く、且つ、光電デバイス層112よりも広く形成される。以下の説明において、上側基板130の下面131と下側基板110の上面111との間の境界は、「境界領域」と称される。
【0020】
上側基板130と下側基板110との境界領域に介在する接着剤層120は、光電デバイス層112並びに上側基板130の下面131より広く、且つ、下側基板110の上面111よりも狭く形成される。境界領域からはみ出した接着剤層120の接着剤は、上側基板130の側面133の一部を覆う。接着剤層120の接着剤は、上側基板130の側面133の一部を覆う領域に留められるので、上側基板130の上面132に取り付けられた追加的な部品(例えば、偏光板やタッチパネル)と接着剤層120との干渉はほとんど生じない。
【0021】
(ディスプレイパネルの製造方法)
図3は、ディスプレイパネル100の製造方法の概略的なフローチャートである。図1及び図3を用いて、ディスプレイパネル100の製造方法が説明される。
【0022】
(ステップS110)
ディスプレイパネル100の製造方法において、ステップS110が最初に実行される。ステップS110において、下側基板110の上面111に、映像を表示するための光電デバイスが配設される。この結果、下側基板110の上面111に、光電デバイス層112が形成される。光電デバイス層112の形成の後、ステップS120が実行される。本実施形態において、ステップS110は、第1工程として例示される。
【0023】
(ステップS120)
ステップS120において、上側基板130の下面131に接着剤を用いて、接着剤層120が形成される。接着剤層120の形成の後、ステップS130が実行される。本実施形態において、ステップS120は、第2工程として例示される。
【0024】
(ステップS130)
ステップS130において、上側基板130は、下側基板110に重ね合わせられる。この結果、ステップS110において下側基板110の上面111に形成された光電デバイス層112は、接着剤層120が形成された上側基板130によって覆われる。上側基板130と下側基板110との積層の後、ステップS140が実行される。本実施形態において、ステップS130は、第3工程として例示される。
【0025】
(ステップS140)
ステップS140において、上側基板130と下側基板110との境界に介在する接着剤層120が加圧される。この結果、接着剤層120の接着剤は、境界領域から流出し、上側基板130の側面133の一部を覆う。本実施形態において、接着剤層120は、熱硬化性樹脂を用いて形成される。ステップS140が実行されている間、接着剤層120は加熱され、接着剤が上側基板130の側面133の一部を覆うと、接着剤層120は十分に硬化する。接着剤層120への加熱のタイミングは、接着剤層120の性質、接着剤層120を加圧する加圧装置の性能や接着剤層120を加熱する加熱装置の性能に応じて、適切に設定される。したがって、必要に応じて、接着剤層120への加熱は、ステップS130において実行されてもよい。接着剤層120が硬化すると、ディスプレイパネル100が完成する。本実施形態において、ステップS140は、第4工程として例示される。
【0026】
図4は、ステップS110を通じて得られる下側基板110の概略的な断面図である。図3及び図4を用いて、ディスプレイパネル100の製造方法が更に説明される。
【0027】
ステップS110において、下側基板110の上面111に、EL膜やバリア膜といった光電デバイスを用いて、光電デバイス層112が形成される。光電デバイス層112の形成手法は、有機EL(エレクトロルミネセンス)材料を用いた既知のディスプレイパネルの光電デバイスの形成と同様の手法に従ってもよい。
【0028】
図5は、ステップS120で用いられる接着剤シートASの概略的な斜視図である。図6は、ステップS120を通じて得られる接着剤層120と上側基板130との積層体の概略的な断面図である。図3、図5及び図6を用いて、ディスプレイパネル100の製造方法が更に説明される。
【0029】
ステップS120において、熱硬化性樹脂を用いて形成された接着剤シートASが用意される。接着剤シートASは、上側基板130の下面131よりも狭いシート片ASPに切り取られる。シート片ASPは、上側基板130の下面131に接着され、接着剤層120として用いられる。
【0030】
図7は、ステップS130及びステップS140において用いられる例示的な貼合装置500の概略的な断面図である。図3及び図7を用いて、貼合装置500が説明される。
【0031】
貼合装置500は、下側チャンバ510と、下側チャンバ510の上方に配設される上側チャンバ520と、を備える。ステップS110において作成された下側基板110と光電デバイス層112との積層体及びステップS120において作成された上側基板130と接着剤層120との積層体は、下側チャンバ510内に配設される。図7に示される如く、ステップS120において形成される接着剤層120は、光電デバイス層112よりも広く形成される。
【0032】
上側チャンバ520は、上側チャンバ520の内部空間を規定する箱状の外壁521と下側チャンバ510との隔壁として機能する膨張性シート522と、を備える。外壁521には、下側チャンバ510に向けて開口した開口部523が形成される。上側基板130の上面132より広く形成された膨張性シート522は、開口部523を閉塞するように外壁521に取り付けられる。
【0033】
貼合装置500は、下側チャンバ510内に配設された支持台530と、支持台530を上下動させるシリンダ装置540と、を備える。支持台530は、ステップS110において作成された下側基板110と光電デバイス層112との積層体が載置される支持部531と、支持部531を支持するシャフト532と、を備える。シャフト532は、ベローズ533を含む。シリンダ装置540が支持部531を上下動させると、ベローズ533は伸縮する。
【0034】
貼合装置500は、下側チャンバ510の内部空間から空気を吸引する第1真空装置550と、上側チャンバ520の内部空間から空気を吸引する第2真空装置560と、上側チャンバ520の内部空間に空気を送り込む送気装置570と、を更に備える。ステップS130において、第1真空装置550及び第2真空装置560が作動し、下側チャンバ510及び上側チャンバ520の内部空間は、減圧される。その後、第2真空装置560が停止される一方で、送気装置570が作動する。この結果、膨張性シート522は、下側基板110に向けて膨張する。尚、送気装置570は省略されてもよい。第2真空装置560の停止後、送気装置570を用いることなく、上側チャンバ520内に外気が導入されるならば、膨張性シート522は同様に下側基板110に向けて膨張することができる。本実施形態において、貼合装置500は、第1真空装置550と第2真空装置560とを備える。代替的に、貼合装置500は、単一の真空装置を用いて、下側チャンバ510及び上側チャンバ520の内部空間を減圧してもよい。単一の真空装置、下側チャンバ及び上側チャンバとの間の配管経路に切替弁が配設されるならば、下側チャンバ及び上側チャンバの内部空間の圧力は、独立して、制御される。
【0035】
膨張性シート522は、多数の貫通穴524が形成された開口領域を含む。ステップS130において、上側基板130の上面132は、開口領域内に形成された貫通穴524を塞ぐように膨張性シート522に取り付けられる。上側チャンバ520が減圧されるならば、上側基板130は、膨張性シート522に吸着される。必要に応じて、上側基板130が取り付けられる膨張性シート522の面は、上面132に対して接着性を有してもよい。この結果、上側基板130は、膨張性シート522によって適切に保持される。
【0036】
貼合装置500は、下側チャンバ510と上側チャンバ520との間に配設されたシール部材580を更に備える。シール部材580は、下側チャンバ510と上側チャンバ520との間の境界を気密にするので、下側チャンバ510及び上側チャンバ520内で作り出された減圧環境は適切に維持される。
【0037】
貼合装置500は、下側チャンバ510の内部空間を加熱する加熱装置590を更に備える。加熱装置590は、上述の如く、接着剤層120を硬化するために用いられる。
【0038】
ステップS130において、第1真空装置550及び第2真空装置560が作動され、下側チャンバ510及び上側チャンバ520内に減圧環境が作り出される。その後、ステップS110において作成された下側基板110と光電デバイス層112との積層体が支持台530上に載置される。また、ステップS120において作成された上側基板130と接着剤層120との積層体が、膨張性シート522によって保持される。
【0039】
図8は、図7に示される工程の後の貼合装置500の概略的な断面図である。図3、図7及び図8を用いて、ステップS130における貼合装置500の動作が説明される。
【0040】
下側基板110と光電デバイス層112との積層体並びに上側基板130と接着剤層120との積層体が下側チャンバ510内に適切に設置されると、シリンダ装置540が作動される。この結果、支持台530の支持部531は、上方に変位し、光電デバイス層112と接着剤層120とが軽く接触する。その後、ステップS140が行われる。
【0041】
図9及び図10は、ステップS140における貼合装置500の概略的な断面図である。図3、図9及び図10を用いて、ステップS140における貼合装置500の動作が説明される。
【0042】
ステップS140が開始されると、第2真空装置560が停止される。その一方で、送気装置570が作動される。尚、ステップS140の間、第1真空装置550によって作り出された下側チャンバ510の減圧環境は維持される。したがって、上側チャンバ520の内圧は、下側チャンバ510の内圧よりも大きくなり、膨張性シート522は、下側基板110に向けて膨張する。膨張性シート522の下方への膨張の結果、下側基板110と上側基板130との間の接着剤層120は加圧される。
【0043】
図9は、ステップS140の開始直後の貼合装置500の概略的な断面図である。図9に示される如く、膨張性シート522は、上側基板130の外側において、下方に膨張し、下側基板110の上面111に圧着される。この結果、膨張性シート522は、下側基板110の上面111との間で接着剤層120の接着剤の流動を許容する流動空間190を形成する。本実施形態において、流動空間190は、流動範囲として例示される。
【0044】
膨張性シート522の下方への膨張によって、接着剤層120は下側基板110と上側基板130の境界において面内方向に押し広げられる。この結果、接着剤層120の接着剤は、境界領域から流出され、流動空間190を満たす。かくして、上側基板130の下面131より広い接着剤層120が形成される(図10参照)。
【0045】
下側チャンバ510と上側チャンバ520との圧力差は、膨張性シート522が上側基板130の側面133の一部を被覆するように設定される。この結果、膨張性シート522は、上側基板130の上面132への接着剤の流入を防ぐ障壁として機能する。膨張性シート522によって、上側基板130の上面132への接着剤の流入が防止されるので、上側基板130の上面132に取り付けられる他の部品(例えば、偏光板やタッチパネル)と接着剤層120との干渉はほとんど生じない。
【0046】
ステップS140において、加熱装置590が作動される。この結果、流動空間190を満たすように拡張された接着剤層120は硬化する。本実施形態において、接着剤層120は、熱硬化性樹脂を用いて形成される。代替的に、接着剤層は、所望のタイミングで硬化させることができる他の材料を用いて形成されてもよい。例えば、接着剤層は、紫外線硬化樹脂を用いて形成されてもよい。紫外線硬化樹脂が用いられるならば、加熱装置590に代えて、接着剤層に紫外線を照射する照射装置が用いられてもよい。
【0047】
図11は、ステップS140の後の貼合装置500の概略的な断面図である。図3及び図11を用いて、ステップS140の後のディスプレイパネル100の製造方法の工程が説明される。
【0048】
接着剤層120の硬化の後、下側チャンバ510内に空気が導入され、第1真空装置550によって作り出された減圧環境は解消される。上側チャンバ520と下側チャンバ510との間の内圧差も解消されるので、膨張性シート522は収縮する。また、シリンダ装置540が作動され、支持台530の支持部531は下方に変位される。この結果、ディスプレイパネル100は、膨張性シート522から離間する。最終的に、ディスプレイパネル100は、下側チャンバ510から取り出される。その後、必要に応じて、偏光板やタッチパネルが上側基板130の上面132に取り付けられもよい。上述の如く、接着剤層120の接着剤は、上側基板130の側面133の一部を覆う範囲に留められているので、これらの追加的な部品と接着剤層120との干渉はほとんど生じない。
【0049】
上述された実施形態に係るディスプレイパネル100は、以下の製造工程を経て製造される。当該製造工程に従って製造されたディスプレイパネル100は、接着剤に対する適切な流動制御の下で製造されるので、基板間の剥離や周辺部材との干渉はほとんど生じない。
【0050】
(有利な特徴)
上述のディスプレイパネル100の製造方法の比較例として、以下に説明する製造方法が挙げられる。以下に説明する製造方法と、上述のディスプレイパネル100の製造方法と、を比較し、本実施形態の有利な特徴が説明される。
【0051】
図12は、比較例のディスプレイパネル950の製造工程を表す概略図である。図12を用いて、比較例のディスプレイパネル950の製造方法が説明される。
【0052】
比較例のディスプレイパネル950は、基板925と、フレキシブル基板945と、基板925とフレキシブル基板945との間に介在する接着剤層935と、を備える。フレキシブル基板945及び接着剤層935は、加圧装置CPを用いて、基板925に押しつけられる。
【0053】
フレキシブル基板945は、基板925に対向する接着面946と、接着面946とは反対側の上面947と、を含む。接着剤層935は、接着面946を全体的に被覆する。したがって、加圧装置CPがフレキシブル基板945を基板925に向けて押しつけるならば、フレキシブル基板945と基板925との間の接着剤層935は、フレキシブル基板945と基板925との境界からはみ出す。この結果、フレキシブル基板945と基板925との間の空隙は解消される。
【0054】
加圧装置CPは、フレキシブル基板945と基板925との境界からはみ出した接着剤の流動を制御しない。比較例のディスプレイパネル950中の接着剤層935は、不定形となる。この結果、比較例のディスプレイパネル950の周囲に配設される他の電子部品と接着剤層935との干渉が生じやすくなる。
【0055】
一方、図9及び図10を用いて説明されたように、本実施形態のディスプレイパネル100の製造方法によれば、接着剤層120の流動範囲は、膨張性シート522と下側基板110とによって規定された流動空間190内に制限される。したがって、ディスプレイパネル100中の接着剤層120の形状や大きさは、略一定である。上側基板130の周囲に配設される他の電子部品と接着剤層935との干渉が生じないように、第1真空装置550、第2真空装置560及び/又は送気装置570は、上側チャンバ520と下側チャンバ510との間の内圧差を調整し、流動空間190の形状及び大きさを適切に制御することができる。したがって、本実施形態に従うディスプレイパネル100の製造方法は、製品中の接着剤層(封止層)の形状並びに大きさの制御の観点から、従来の貼合技術と比して優れている。
【0056】
上述のディスプレイパネル100は、有機ELを用いて、映像を表示する。本実施形態の原理は、有機ELを用いるディスプレイパネル100だけでなく、他の表示方式にしたがって映像を表示するディスプレイパネルにも同様に適用可能である。
【0057】
上述された実施形態の一の局面に係る製造方法にしたがって、光電デバイスが配設されるデバイス面を含む第1基板と、接着剤によって前記デバイス面に接着される接着面と該接着面を取り囲む側面とを含む第2基板とを、接着させた積層基板を含むディスプレイパネルが製造される。当該ディスプレイパネルの製造方法は、前記デバイス面に光電デバイスを配設し、光電デバイス層を形成する第1工程と、前記デバイス面よりも狭い前記接着面に、前記接着剤を用いて、接着剤層を形成する第2工程と、前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせ、前記光電デバイス層を前記第2基板で覆う第3工程と、前記接着剤層を加圧し、前記第1基板と前記第2基板との境界から前記接着剤を流出させ、前記側面の一部を前記接着剤で覆う第4工程と、を備えることを特徴とする。
【0058】
上記構成によれば、第1工程において、デバイス面に光電デバイスが配設され、光電デバイス層が形成される。第2工程において、デバイス面よりも狭い接着面に接着剤を用いて接着剤層が形成される。第3工程において、第2基板が光電デバイス層を覆うように第1基板及び第2基板が重ね合わせられる。第4工程において、接着剤層が加圧される。この結果、接着剤は、第1基板と第2基板との境界から流出する。第1基板と第2基板との間の境界は接着剤層によって満たされるので、第1基板と第2基板との間の剥離は生じにくくなる。第1基板と第2基板との境界から流出した接着剤の流動範囲は、第2基板の側面の一部を覆う範囲に制限される。接着剤層は、不必要に拡がることがないので、周辺部材との干渉は生じにくくなる。
【0059】
上記構成において、前記第2工程において、前記接着剤層は、前記光電デバイス層より広く且つ前記接着面よりも狭く形成されることが好ましい。
【0060】
上記構成によれば、第2工程において、接着剤層は、光電デバイス層より広く且つ接着面よりも狭く形成されるので、第2工程から第3工程の間における接着剤層への不必要な接触は生じにくくなる。したがって、ディスプレイパネルは円滑に製造される。
【0061】
上記構成において、前記第2基板は、前記接着面とは反対側の反対面を含み、前記第4工程において、前記反対面への前記接着剤の流動を防止することが好ましい。
【0062】
上記構成によれば、第4工程において、接着面とは反対側の反対面への接着剤の流動が防止される。したがって、反対面へ取り付けられる他の部材と接着剤層との干渉は生じにくくなる。
【0063】
上記構成において、前記第4工程において、前記反対面への前記接着剤の流動を防ぐ障壁を形成することが好ましい。
【0064】
上記構成によれば、第4工程において、反対面への接着剤の流動を防ぐ障壁が形成されるので、反対面への接着剤の流動が防止される。したがって、反対面へ取り付けられる他の部材と接着剤層との干渉は生じにくくなる。
【0065】
上記構成において、前記第3工程において、前記反対面は、前記第1基板に向けて膨張可能な膨張性シートに取り付けられ、前記第4工程において、前記膨張性シートが前記第2基板の外側で前記第1基板に接続するまで、前記膨張性シートを膨張させ、前記障壁として機能させることが好ましい。
【0066】
上記構成によれば、第3工程において、反対面は、第1基板に向けて膨張可能な膨張性シートに取り付けられる。第4工程において、膨張性シートが第2基板の外側で第1基板に接続するまで、膨張性シートが膨張されるので、膨張性シートは障壁として適切に機能する。したがって、反対面へ取り付けられる他の部材と接着剤層との干渉は生じにくくなる。
【0067】
上記構成において、前記第4工程において、前記膨張性シート及び前記第1基板は、前記接着剤の流動範囲を規定することが好ましい。
【0068】
上記構成によれば、第4工程において、膨張性シート及び第1基板は、接着剤の流動範囲を規定するので、接着剤層と他の部材との干渉は生じにくくなる。
【0069】
上記構成において、前記第4工程において、前記接着剤層を面内方向に押し広げ、前記境界から前記接着剤を流出させることにより、前記接着剤層を前記接着面より広くすることが好ましい。
【0070】
上記構成によれば、第4工程において、接着剤層は、面内方向に押し広げられる。この結果、第1基板と第2基板との境界から、接着剤が流出される。接着剤層は、接着面より広くなるので、第1基板と第2基板との間の境界は接着剤層によって満たされるので、第1基板と第2基板との間の剥離は生じにくくなる。
【0071】
上記構成において、前記第1基板及び前記第2基板のうち少なくとも一方は、可撓性を有することが好ましい。
【0072】
上記構成によれば、第1基板及び第2基板のうち少なくとも一方が、可撓性を有していても、第1基板と第2基板との間の境界は接着剤層によって満たされるので、第1基板と第2基板との間の剥離は生じにくくなる。
【0073】
上記構成において、前記第4工程において、前記接着剤層は加熱されることが好ましい。
【0074】
上記構成によれば、第4工程において、接着剤層は加熱されるので、接着剤は好適に流動することとなる。
【0075】
上述された実施形態の一の局面に係るディスプレイパネルは、光電デバイスを含む光電デバイス層が配設されたデバイス面を含む第1基板と、接着剤を用いて、前記光電デバイス層を覆うように形成された接着剤層と、該接着剤層を介して前記光電デバイス層を覆うように前記第1基板に接着される接着面と該接着面を取り囲む側面とを含む第2基板と、を備え、前記接着剤層は、前記第1基板と前記第2基板との境界からはみ出し、前記側面の一部を覆う前記接着剤を含むことを特徴とする。
【0076】
上記構成によれば、第1基板のデバイス面には、光電デバイスを含む光電デバイス層が配設される。接着剤層は、接着剤を用いて、デバイス面を覆うように形成される。第2基板の接着面は、接着剤層を介して光電デバイス層を覆うように第1基板に接着される。接着剤層は、第1基板と第2基板との境界からはみ出し、接着面を取り囲む側面の一部を覆う接着剤を含むので、第1基板と第2基板との間の境界は接着剤層によって満たされる。したがって、第1基板と第2基板との間の剥離は生じにくくなる。接着剤は、第2基板の側面の一部を覆う範囲に留められるので、接着剤層と周辺部材との干渉は生じにくくなる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
上述の実施形態に係る原理は、映像を表示するためのディスプレイパネルに好適に適用される。
【符号の説明】
【0078】
100・・・・・・・・・・ディスプレイパネル
110・・・・・・・・・・下側基板
111・・・・・・・・・・上面
120・・・・・・・・・・接着剤層
130・・・・・・・・・・上側基板
131・・・・・・・・・・下面
132・・・・・・・・・・上面
133・・・・・・・・・・側面
150・・・・・・・・・・積層基板
190・・・・・・・・・・流動空間
522・・・・・・・・・・膨張性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電デバイスが配設されるデバイス面を含む第1基板と、接着剤によって前記デバイス面に接着される接着面と該接着面を取り囲む側面とを含む第2基板とを、接着させた積層基板を含むディスプレイパネルの製造方法であって、
前記デバイス面に光電デバイスを配設し、光電デバイス層を形成する第1工程と、
前記デバイス面よりも狭い前記接着面に、前記接着剤を用いて、接着剤層を形成する第2工程と、
前記第1基板と前記第2基板とを重ね合わせ、前記光電デバイス層を前記第2基板で覆う第3工程と、
前記接着剤層を加圧し、前記第1基板と前記第2基板との境界から前記接着剤を流出させ、前記側面の一部を前記接着剤で覆う第4工程と、を備えることを特徴とするディスプレイパネルの製造方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記接着剤層は、前記光電デバイス層より広く且つ前記接着面よりも狭く形成されることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項3】
前記第2基板は、前記接着面とは反対側の反対面を含み、
前記第4工程において、前記反対面への前記接着剤の流動を防止することを特徴とするディスプレイパネルの製造方法。
【請求項4】
前記第4工程において、前記反対面への前記接着剤の流動を防ぐ障壁を形成することを特徴とする請求項3に記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項5】
前記第3工程において、前記反対面は、前記第1基板に向けて膨張可能な膨張性シートに取り付けられ、
前記第4工程において、前記膨張性シートが前記第2基板の外側で前記第1基板に接続するまで、前記膨張性シートを膨張させ、前記障壁として機能させることを特徴とする請求項4に記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項6】
前記第4工程において、前記膨張性シート及び前記第1基板は、前記接着剤の流動範囲を規定することを特徴とする請求項5に記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項7】
前記第4工程において、前記接着剤層を面内方向に押し広げ、前記境界から前記接着剤を流出させることにより、前記接着剤層を前記接着面より広くすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項8】
前記第1基板及び前記第2基板のうち少なくとも一方は、可撓性を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項9】
前記第4工程において、前記接着剤層は加熱されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のディスプレイパネルの製造方法。
【請求項10】
光電デバイスを含む光電デバイス層が配設されたデバイス面を含む第1基板と、
接着剤を用いて、前記光電デバイス層を覆うように形成された接着剤層と、
該接着剤層を介して前記光電デバイス層を覆うように前記第1基板に接着される接着面と該接着面を取り囲む側面とを含む第2基板と、を備え、
前記接着剤層は、前記第1基板と前記第2基板との境界からはみ出し、前記側面の一部を覆う前記接着剤を含むことを特徴とするディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−114994(P2013−114994A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262222(P2011−262222)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】