説明

ディスプレイパネル用フィルター

【課題】導通性を良好に確保しつつ、連続的に製造を行うことが可能な生産性に優れたディスプレイパネル用フィルターを提供する。
【解決手段】基材フィルム1上に、電磁波シールド材2と、少なくとも1層の機能性塗工層3,4とを備えるディスプレイパネル用フィルターである。フィルターの、対向する少なくとも一対の辺縁部11、好適には対向する二対の辺縁部に沿って複数箇所に、フィルターを貫通してなる導電性部材5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスプレイパネル用フィルター(以下、単に「フィルター」とも称する)に関し、詳しくは、プラズマディスプレイパネル(PDP)などのディスプレイパネルの前面に配して用いられるディスプレイパネル用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイパネル用の前面フィルターは、電磁波遮蔽や反射防止、色調調整、赤外線遮蔽等の機能を有する複数の機能性フィルムを貼り合わせた構造が一般的であった。最近では、一枚の基材フィルムに諸機能を担保、集約させることで生産性やコスト性を向上した、いわゆる一枚化フィルターが開発されている。
【0003】
このような前面フィルターをPDP装置などに組み込んで良好な電磁波シールド性を発揮させるためには、前面フィルター内の電磁波シールド材とPDPの筐体の導電面との間で、均一な導通を図る必要がある。このため従来は、電磁波遮蔽機能を有する面よりも一回り小さい光学フィルムを用い、周囲に電極部分を残した状態でこれを電磁波遮蔽面に貼り付け、またはコーティングして、この周囲の電極部分から導通を取ることで電磁波遮蔽を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−66854号公報(特許請求の範囲、[図2]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したような一枚化フィルターにおいては、貼り合わせ工程が必要ないために、容易に連続生産を行うことが可能となるメリットがある。しかしながら、上述のようにフィルターの全周にわたり電極部分を残すことにより導通を確保する方法では、製造工程において連続加工ができないため、生産性が低下してしまうという問題点があった。この場合、一枚ごとに塗工を行う枚葉塗工技術を用いることも可能であるが、既存の枚葉貼り合わせ技術と同等の精度を得ることは困難であり、やはり生産性が著しく低下することとなっていた。
【0005】
そこで本発明の目的は、一枚化フィルター構造の改良により上記問題を解消して、導通性を良好に確保しつつ、連続的に製造を行うことが可能な生産性に優れたディスプレイパネル用フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、電磁波シールド材上にいったん機能性塗工層を被覆形成した後、後加工により電磁波シールド材との導通を取ることで、上記問題を解消することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明のディスプレイパネル用フィルターは、基材フィルム上に、電磁波シールド材と、少なくとも1層の機能性塗工層とを備えるディスプレイパネル用フィルターにおいて、
フィルターの、対向する少なくとも一対の辺縁部に沿って複数箇所に、フィルターを貫通してなる導電性部材が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明のフィルターにおいては、前記機能性塗工層が非導電性の層を少なくとも一層含むことが好ましい。また、本発明においては、フィルターの、対向する二対の辺縁部に沿って複数箇所に、フィルターを貫通してなる導電性部材が設けられているものとすることもできる。さらに、前記導電性部材は、辺縁部に沿って略等間隔に設けられているものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上記構成としたことにより、導電性部材を介して電磁波シールド材との導通を良好に確保しつつ、連続的に製造を行うことが可能な生産性に優れたディスプレイパネル用フィルターを実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明のディスプレイパネル用フィルターの一例の、(a)幅方向断面図(A−A線)、(b)平面図および(c)長手方向断面図(B−B線)を示す。図示するように、本発明のフィルター10は、基材フィルム1上に、電磁波シールド材2と、少なくとも1層、図示する例では2層の機能性塗工層3,4とを備えている。
【0011】
また、本発明においては図示するように、フィルター10の、対向する一対の辺縁部11に沿って複数箇所に、フィルターを貫通してなる導電性部材5が設けられている。即ち、本発明においては、連続製造工程において露出部の確保しにくい電磁波シールド材2の幅方向(または長手方向)辺縁部11に、いったん機能性塗工層3,4を形成した後、後加工によりフィルター全体を貫通する導電性部材5を配設して、この導電性部材5を介して電磁波シールド材2との導通を確保するものとしたことで、連続製造工程により製造し得るフィルターとすることが可能となったものである。従って本発明は、機能性塗工層が非導電性の層を少なくとも一層含む場合に、より有用である。
【0012】
導電性部材5の配設条件としては、特に制限されるものではなく、所望に応じ適宜決定することが可能であるが、フィルターとして良好な導通を確保するためには、導電性部材5を、辺縁部全体にわたり均一に設けることが好ましく、特には、辺縁部に沿って略等間隔に設けることが好適である。また、例えば、図2(a)に示すように、導電性部材5を2列にて互い違いに設けることもでき、この場合、電磁波シールド性をより向上することが可能である。
【0013】
図1,2(a)に示す例では、フィルター10の対向する一対の辺縁部に沿って導電性部材5を設けているが、本発明においては、図2(b)に示すように、フィルター10の対向する二対の辺縁部に沿って複数箇所に、即ち、フィルター10の全周にわたり導電性部材5を設けて、導通を確保することもできる。図1等に示すように、一対の辺縁部において電磁波シールド材2が露出している場合にはその必要はないが、例えば、図2(b)に示すように機能性塗工層3,4を電磁波シールド材2を完全に被覆するよう形成した場合においては、フィルター10の全周にわたり導電性部材5を設けて、電磁波シールド材2との導通を図ることが有効である。
【0014】
本発明に用いる導電性部材5としては、導電性を有し、フィルターを貫通した状態で配設することができるものであれば、いかなるものを用いてもよい。例えば、図1,2に示すように、フィルター厚み分の長さを有し、金属繊維や導電性樹脂繊維等からなる線材5を打設して用いる他、図3(a),(b)に示すように、ステープラーを用いてコの字状の金具5Aを打設して導電性部材としたり、図4(a),(b)に示すように、ハトメ5Bを打ち込んで用いることもできる。さらに、図5に示すように、導電性樹脂繊維等からなる導電性糸5Cを用いて、辺縁部を工業用ミシン等で縫うことにより、導電性部材とすることもできる。従って導電性部材5の寸法や形状、配設ピッチ等は、確実に導通を取ることができるものであれば、導電性部材5の種類等に応じて適宜選定することができ、特に制限されるものではない。
【0015】
本発明のフィルターにおいては、フィルターを貫通する上記導電性部材5を介して電磁波シールド材との導通を図る点のみが重要であり、具体的な層構成や材料等については特に制限されるものではないが、例えば、以下のように構成することができる。例えば、図1において基材フィルム1と電磁波シールド材2とが逆の順に積層された層構成であってもよい。
【0016】
基材フィルム1としては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、セルローストリアセテート(TAC)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等の透明フィルムを用いることができ、加工時の負荷(熱、溶剤、折り曲げ等)に対する耐性が高く、透明性が特に高い等の観点から、好ましくはPET、PC、PMMAフィルムであり、特にはPETが、加工性に優れているので好ましい。なお、ここで「透明」とは、可視光に対して透明であることを意味する。
【0017】
また、基材フィルム1の厚さは、フィルターの用途等によっても異なるが、通常1μm〜10mm、好適には1μm〜5mm、より好適には25〜250μm程度である。
【0018】
電磁波シールド材2としては、メッシュ(格子)状の導電層や塗工層、気相成膜法により得られる層(金属酸化物(ITO等)の透明導電薄膜)、ITO等の金属酸化物の誘電体層とAg等の金属層との交互積層体等を用いることができ、得られるフィルターの表面抵抗値が、一般に10Ω/□以下、好ましくは0.001〜5Ω/□の範囲、特には0.005〜5Ω/□の範囲になるよう選択する。
【0019】
このうちメッシュ状の導電層としては、金属繊維および/または金属被覆有機繊維を網状に形成したもの(導電性メッシュ)、金属箔等の導電性の膜をフォトリソグラフィーの手法により網状にエッチング加工して開口部を設けたもの(エッチングメッシュ)、透明フィルム上に導電性インクをメッシュ状に印刷したもの(導電印刷メッシュ)等を挙げることができる。
【0020】
導電性メッシュにおけるメッシュとしては、金属繊維および/または金属被覆有機繊維よりなる線径1μm〜1mm、開口率40〜95%のものが、光透過性の向上およびモアレ現象の防止の観点から好ましい。導電性メッシュにおいて線径が1mmを超えると、電磁波シールド性は向上するが開口率が低下してしまい、これらを両立させることができない。一方、線径が1μm未満ではメッシュとしての強度が低下し、取扱いが困難となる。また、開口率が95%を超えるとメッシュとしての形状を維持することが困難となり、40%未満では光透過性が低下し、ディスプレイからの光量が低減する。より好ましい線径は10〜500μm、開口率は50〜90%である。
【0021】
なお、上記メッシュの開口率とは、当該メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合をいう。上記開口率および線径を維持する観点からは、メッシュ形状の維持特性に優れた金属被覆有機繊維よりなるメッシュが好適である。
【0022】
導電性メッシュを構成する金属繊維または金属被覆有機繊維に用いられる金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、チタン、タングステン、錫、鉛、鉄、銀、クロム、炭素あるいはこれらの合金が挙げられ、好ましくは銅、ニッケル、ステンレス、アルミニウムを用いる。また、金属被覆有機繊維に用いる有機材料としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、塩化ビニリデン、アラミド、ビニロン、セルロース等が挙げられる。
【0023】
また、エッチングメッシュに用いる金属膜の金属としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、クロム、鉄、真鍮またはこれらの合金等を用いることができ、好ましくは銅、ステンレス、アルミニウムを用いる。これら金属膜は、蒸着やスパッタリングにより形成するか、または、これらの金属の箔を接着剤によって基材フィルム1に貼り合わせたものを用いることができる。この場合の接着剤としては、エポキシ系、ウレタン系、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)系などが好ましい。
【0024】
これら金属膜の厚さとしては、薄すぎると取扱い性やパターンエッチングの作業性等の面で好ましくない一方、厚すぎると得られるフィルムの厚さに影響を及ぼし、エッチング工程の所要時間が長くなることから、好適には1〜200μm程度とする。
【0025】
エッチングメッシュにおけるエッチングパターンの形状には特に制限はなく、例えば、四角形の孔が形成された格子状や、円形、六角形、三角形または楕円形の孔が形成されたパンチングメタル状等とすることができる。また、孔は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしてもよい。この金属箔の投影面における開口部分の面積割合は、好適には20〜95%程度とする。
【0026】
エッチングメッシュの場合、フォトリソグラフィーの手法を用いることで、導電部分の形状や線径などを自由に設計することができるため、上記導電性メッシュに比較して開口率を高くすることができる。
【0027】
また、導電印刷メッシュは、以下に示すような導電性インクを用いて、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、静電印刷法などにより、基材フィルム1上にパターン印刷を行うことで形成することができる。このようなパターン印刷によれば、パターンの自由度が大きく、任意の線径、間隔および開口形状の導電層を形成することができ、従って、所望の電磁波遮断性と光透過性を有するフィルムを容易に形成することができる。
【0028】
かかる導電性インクとしては、粒径100μm以下のカーボンブラック粒子、または、銀、銅、アルミニウム、ニッケル等の金属または合金の粒子等の導電性を有する粒子を、50〜90重量%濃度にて、エポキシ系、ウレタン系、EVA系、メラニン系、セルロース系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル等のバインダ樹脂中に分散させたものを用いることができ、これは、トルエン、キシレン、塩化メチレン、水等の溶媒に適当な濃度に希釈または分散させて基材フィルム1上に印刷により塗布し、その後、必要に応じ室温〜120℃で乾燥させて塗着させることができる。また、上記導電性の粒子を上記バインダ樹脂で覆った粒子を静電印刷法により直接塗布して熱等で固着させることもできる。
【0029】
導電印刷メッシュの厚さとしては、薄すぎると電磁波シールド性が不足するので好ましくない一方、厚すぎると得られるフィルムの厚さに影響を及ぼすことから、好適には0.5〜100μm程度とする。
【0030】
導電印刷メッシュのパターンの形状には特に制限はなく、上記エッチングメッシュと同様に、例えば、四角形の開口部が形成された格子状や、円形、六角形、三角形または楕円形の開口部が形成されたパンチングメタル状等とすることができ、開口部は規則的に並んだものに限らず、ランダムパターンとしてもよい。導電印刷メッシュの投影面における開口部分の面積割合は、好適には20〜95%とする。
【0031】
メッシュ状の導電層としては、上記の他、フィルム面に、溶剤に対して可溶な材料によりドットを形成し、次いで、その上に溶剤に対して不溶な導電材料からなる導電材料層を形成した後、フィルム面を溶剤と接触させてドットおよびドット上の導電材料層を除去することによって得られるメッシュ状導電層を用いてもよい。
【0032】
また、塗工層としては、ポリマー中に無機化合物の導電性粒子が分散された塗工層を挙げることができる。導電性粒子を構成する無機化合物としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、インジウム、クロム、金、バナジウム、スズ、カドミウム、銀、プラチナ、銅、チタン、コバルト、鉛等の金属、合金;或いはITO、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウム−酸化スズ(ITO、いわゆるインジウムドープ酸化スズ)、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO、いわゆるアンチモンドープ酸化スズ)、酸化亜鉛−酸化アルミニウム(ZAO、いわゆるアルミニウムドープ酸化亜鉛)等の導電性酸化物等を挙げることができる。特に、ITOが好ましい。平均粒径は10〜10000nm、特に10〜50nmが好ましい。
【0033】
また、ポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、含ケイ素樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂のうちでも、熱硬化性樹脂が好適に用いられる。さらに、ポリマーとして、後述するハードコート層に使用される紫外線硬化性樹脂を用いることも好ましい。
【0034】
上記塗工層からなる電磁波シールド材2の形成は、必要により溶剤を用いて、ポリマー中に上記導電性粒子を混合等により分散させて塗工液を作製し、この塗工液を基材フィルム1上に塗工して、適宜乾燥、硬化させることにより行うことができる。熱可塑性樹脂を用いた場合は、塗工後乾燥することにより、熱硬化型樹脂の場合は、乾燥、熱硬化させることにより塗工層を得ることができ、また、紫外線硬化性樹脂を用いた場合には、塗工後、必要に応じて乾燥し、紫外線照射することにより得ることができる。この塗工層の厚さとしては、通常0.01〜5μm、特には0.05〜3μmが好適である。この厚さが0.01μm未満であると、電磁波シールド性が十分でない場合があり、一方、5μmを超えると、得られるフィルムの透明性を低下させるおそれがある。
【0035】
なお、塗工層は、導電性ポリマーからなるものとすることもでき、例えば、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリナフタレン等の炭化水素系ポリマー;ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリエチレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン等のヘテロ原子含有ポリマーを用いることができる。中でも特に、ポリピロール、ポリチオフェンが好ましい。
【0036】
気相成膜法により得られる層(金属酸化物の透明導電薄膜)の材料としては、前掲した無機化合物を用いることができ、その形成方法としては、スパッタリング、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、レーザーアブレーション、真空蒸着等の物理蒸着法や、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法等の化学蒸着法を用いることができ、一般的にはスパッタリング法を用いることが好ましい。この場合の層厚は、通常30〜50000nm、特には50nm程度とすることができる。
【0037】
電磁波シールド材2としては、上記金属酸化物の誘電体層と金属層との交互積層膜を用いてもよく、特に、誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層の5層以上の積層体が好ましい。例えば、ITO等の金属酸化物の誘電体層とAg等の金属層との交互積層体(ITO/銀/ITO/銀/ITOの積層体等)を挙げることができる。
【0038】
なお、電磁波シールド材2(特に、メッシュ状の導電層)をより低い抵抗値として、電磁波シールド効果を向上させたい場合には、その上にめっき層を形成することが好ましい。めっき層は、通常の液相めっき(電解めっき、無電解めっき等)により形成することができる。めっき処理に使用する金属材料としては、銅、銅合金、ニッケル、アルミニウム、クロム、亜鉛、スズ、銀、金などを挙げることができ、これらは単独で使用しても2種以上の合金として使用してもよい。好ましくは銅、銅合金、銀またはニッケルであり、特に経済性および導電性の点から、銅または銅合金を好適に使用することができる。
【0039】
また、電磁波シールド材2には、防眩(AG;Anti Glare)性能を付与してもよい。この防眩化処理を行う場合、メッシュ状の導電層の表面に黒化処理を行ってもよく、例えば、金属膜の酸化処理、クロム合金等の黒色めっき、黒または暗色系インクの塗布、片面または両面に黒色の印刷を施す等の手段により行うことができる。
【0040】
さらに、電磁波シールド材2としてメッシュ状の導電層を形成する場合には、電磁波シールド材2を覆うように透明化処理層を設けてもよい。かかる透明化処理層は、導電性メッシュの凹凸を均してディスプレイパネル用フィルムの透明性を高める作用を奏する。この透明化処理層には、透明な粘着剤または接着剤、例えば、ブチルアクリレート等のアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)やスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)などの熱可塑性エラストマー樹脂をベースとしたTPE系粘着剤等を用いることができる。この透明化処理層は、例えば、塗工により形成することができ、その厚さは通常5〜500μm程度、特には10〜100μm程度が好適である。なお、後述するハードコート層等の機能性塗工層により、この透明化処理層の役目を担わせてもよい。
【0041】
電磁波シールド材2上には、少なくとも1層の機能性塗工層が設けられる。機能性塗工層としては、反射防止(AR;Anti Reflection)層、ハードコート層等が挙げられる。本発明において好適には、図示するように、機能性塗工層として、電磁波シールド材2上にハードコート層3および反射防止層4を順次形成することができる。
【0042】
ハードコート層3は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等により形成することができ、その厚さは通常1〜50μm、好適には1〜10μmとする。熱硬化性樹脂および紫外線硬化性樹脂のいずれを用いてもよいが、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0043】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、シリコン樹脂などを挙げることができる。
【0044】
紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリエトキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジプロポキシジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリ〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマー類;ポリオール化合物(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオール類、前記ポリオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、水添ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の多塩基酸またはこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ポリオール類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、前記ポリオール類と前記、多塩基酸またはこれらの酸無水物類のε−カプロラクトンとの反応物、ポリカーボネートポリオール、ポリマーポリオール等)と有機ポリイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4’−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2’−4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)と水酸基含有(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等)の反応物であるポリウレタン(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応物であるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートオリゴマー類等を挙げることができる。これら化合物は1種で、または2種以上を混合して使用することができる。これら紫外線硬化性樹脂は、熱重合開始剤とともに用いて熱硬化性樹脂として使用してもよい。
【0045】
ハードコート層とするには、上記の紫外線硬化性樹脂(モノマー、オリゴマー)のうち、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の硬質の多官能モノマーを主に使用することが好ましい。
【0046】
紫外線硬化性樹脂の光重合開始剤としては、紫外線硬化性樹脂の性質に適した任意の化合物を使用することができる。例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、イソプロピルチオキサントン、2−4−ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン系、その他特殊なものとしては、メチルフェニルグリオキシレートなどが使用できる。特に好ましくは、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパン−1、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、必要に応じて、4−ジメチルアミノ安息香酸のごとき安息香酸系、または、第3級アミン系などの公知慣用の光重合促進剤の1種または2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。また、光重合開始剤のみの1種または2種以上の混合で使用することができる。特には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティケミカルズ社製、イルガキュア184)等が好ましい。上記光重合開始剤の配合量は、ハードコート層3を形成する樹脂組成物に対して通常0.1〜10質量%程度、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0047】
ハードコート層3には、ITO、ATO、Sb23、SbO2、In23、SnO2、ZnO等の導電性金属酸化物微粒子を配合することが好ましく、これによりハードコート層の表面抵抗を5×1010Ω/□以下とすることで、に帯電防止機能を持たせることができる。
【0048】
ハードコート層3は、基材フィルム1より屈折率が低いことが好ましく、一般に、上記紫外線硬化性樹脂を用いることにより、基材フィルム1より低い屈折率を得ることが容易となる。従って、基材フィルム1としては、PET等の高屈折率の材料を用いることが好ましい。かかる観点からハードコート層は、屈折率1.60以下の低屈折率にて形成することが好ましい。また、ハードコート層の可視光線透過率は、85%以上であることが好ましい。
【0049】
反射防止層4は、一般に低屈折率層により形成され、ハードコート層とその上に設けられた低屈折率層との複合膜により反射防止効果を示すものである。また、ハードコート層と低屈折率層との間に高屈折率層を設けてもよく、これにより反射防止機能を向上することができる。反射防止層4を形成するこれら各層は、いずれも各種樹脂を用いて形成することができ、例えば、紫外線硬化型または電子線硬化型の合成樹脂、特には、コストダウンや膜強度増大、耐薬品性向上、耐湿熱性向上等の観点から、多官能アクリル樹脂を好適に用いることができる。なお、ハードコート層3の屈折率が低い場合には、反射防止層4を別途設けることなく、ハードコート層3のみで反射防止効果を得ることもできる。
【0050】
低屈折率層は、屈折率低下、耐傷性向上、すべり性向上等の目的で、シリカ(SiO2)、MgF2、Al23、フッ素樹脂等の微粒子、好適には中空シリカ10〜60重量%、好適には10〜50質量%を、ポリマー中、好適には紫外線硬化性樹脂中に分散した硬化層とすることが好ましい。この低屈折率層の屈折率は、好適には1.40〜1.51である。低屈折率層の屈折率が1.51を超えると、反射防止層4の反射防止特性が悪化してしまう。また、膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好ましくは20〜200nmである。さらに、上記中空シリカとしては、平均粒径10〜100nm、特には10〜50nm、比重0.5〜1.0、特には0.8〜0.9のものが好ましい。
【0051】
また、高屈折率層は、ポリマー、好適には紫外線硬化性樹脂中に、ITO、ATO、Sb25、Sb23、SbO2、In23、SnO2、ZnO、ZrO2、AlをドープしたZnO、TiO2、SnO2、ZrO等の高屈折率の導電性金属酸化物微粒子(無機化合物)が分散した層とすることが好ましい。金属酸化物微粒子としては、平均粒径10〜10000nm、特には10〜50nmのものが好ましい。中でも特に、ITO(特には、平均粒径10〜50nmのもの)が好適である。また、屈折率を1.64以上としたものが好適である。膜厚は一般に10〜500nmの範囲、好適には20〜200nmである。
【0052】
なお、高屈折率層が導電層である場合には、この高屈折率層の屈折率を1.64以上とすることにより、反射防止層の表面反射率の最小値を1.5%以内とすることができ、屈折率を1.69以上、好ましくは1.69〜1.82とすることにより、反射防止層の表面反射率の最小値を1.0%以内とすることができる。
【0053】
なお、低屈折率層および高屈折率層の可視光線透過率については、いずれも85%以上であることが好ましい。
【0054】
反射防止層4を低屈折率層および高屈折率層からなるものとし、ハードコート層3と併せて形成する場合には、例えば、ハードコート層3の厚さ2〜20μm、高屈折率層の厚さ75〜200nm、低屈折率層の厚さ75〜200nm程度の範囲で調整することが好ましい。
【0055】
反射防止層4の各層を形成するには、前述したように、ポリマー中に所望に応じ上記の微粒子を配合して、得られた塗工液を塗工し、次いで乾燥して、必要により熱硬化させるか、または、塗工後、必要により乾燥し、紫外線を照射する。この場合、各層を1層ずつ塗工して硬化させてもよく、全ての層を塗工した後、まとめて硬化させてもよい。
【0056】
塗工の具体的な方法としては、例えば、アクリル系モノマー等を含む紫外線硬化性樹脂をトルエン等の溶媒で溶液にした塗工液をグラビアコータ等によりコーティングして、その後乾燥し、次いで紫外線により硬化する方法を好適に挙げることができる。このウェットコーティング法によれば、高速で均一にかつ安価に成膜できるという利点がある。コーティング後に、例えば、紫外線を照射して硬化を行うことにより、密着性の向上や膜硬度の上昇という効果が得られる。
【0057】
なお、本発明において紫外線の照射に用いる光源としては、紫外〜可視領域に発光する多くのものが採用でき、例えば、超高圧,高圧,低圧水銀灯、ケミカルランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、マーキュリーハロゲンランプ、カーボンアーク灯、白熱灯、レーザー光等を挙げることができる。照射時間は、光源の種類および強さにより、一概には決められないが、数秒〜数分程度である。また、硬化促進のために、あらかじめ積層体を40〜120℃に加熱して、これに紫外線を照射してもよい。
【0058】
反射防止層4は、上記のように塗工により形成することが好ましいが、気相成膜法により形成してもよく、前述した物理蒸着法または化学蒸着法を好適に用いることができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法が挙げられるが、一般的にはスパッタリング法で成膜するのが好ましい。化学蒸着法としては、常圧CVD法、減圧CVD法、プラズマCVD法が挙げられる。
【0059】
なお、反射防止層4における高屈折率層および低屈折率層等の組み合わせの例としては、例えば、(a)高屈折率層/低屈折率層の順で各1層ずつ計2層で積層したもの、(b)高屈折率層/低屈折率層を2層ずつ交互に計4層で積層したもの、(c)中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順で1層ずつ計3層で積層したもの、(d)高屈折率層/低屈折率層の順で各層を交互に3層ずつ計6層で積層したものなどを挙げることができる。また、反射防止層4上には、保護層を設けてもよく、かかる保護層は、上記ハードコート層と同様にして形成することができる。
【0060】
また、基材フィルム1の、電磁波シールド材2形成面とは反対側の面には、図示するように、近赤外線吸収層6を形成することが好ましい。近赤外線吸収層6は、一般に、基材フィルム1の表面に、近赤外線領域に吸収を有する色素と、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等のバインダ樹脂とを含む塗工液を塗工し、必要により乾燥して、硬化させることにより得ることができる。フィルムとして使用する場合には、一般に近赤外線カットフィルムであり、例えば、色素等を含有するフィルムである。
【0061】
近赤外線吸収色素としては、波長800〜1200nmの領域に吸収極大を有するものを用いることができ、例えば、フタロシアニン系、金属錯体系、ニッケルジチオレン錯体系、シアニン系、スクアリリウム系、ポリメチン系、アゾメチン系、アゾ系、ポリアゾ系、ジイモニウム系、アミニウム系、アントラキノン系の色素を挙げることができ、特に、シアニン系色素またはスクアリリウム系色素が好ましい。これらの色素は、単独または適宜組み合わせて使用することができる。
【0062】
また、近赤外線吸収層6には、ネオン発光の吸収機能を付与することにより色調の調節機能を持たせてもよい。このためには、別途ネオン発光の吸収層を設けてもよいが、近赤外線吸収層にネオン発光の選択吸収色素を含有させて、双方の機能を発揮させることもできる。
【0063】
ネオン発光の選択吸収色素としては、シアニン系、スクアリリウム系、アントラキノン系、フタロシアニン系、ポリメチン系、ポリアゾ系、アズレニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系の色素を挙げることができる。このような選択吸収色素は、585nm付近のネオン発光の選択吸収性を有するとともに、それ以外の可視光波長においては吸収が小さいことが必要であるため、吸収極大波長が575〜595nmであり、吸収スペクトル半値幅が40nm以下であるものが好適に用いられる。
【0064】
また、近赤外線やネオン発光の吸収色素を複数種類組み合わせる場合に、色素の溶解性に問題がある場合、混合による色素間の反応がある場合、耐熱性や耐湿性等の低下が認められる場合などには、全ての近赤外線吸収色素を同一の層に含有させる必要はなく、別の層に含有させることもできる。光学特性に大きな影響を与えない限り、さらに着色用の色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを添加してもよい。
【0065】
本発明のフィルターにおける近赤外線吸収特性としては、波長850〜1000nmの領域の透過率を、20%以下、さらに15%とすることが好ましい。また、ネオン発光の選択吸収性としては、波長585nmの透過率が50%以下であることが好ましい。前者については、周辺機器のリモコン等の誤作動が指摘されている波長領域の透過度を減少させる効果があり、後者については、波長575〜595nmにピークを持つオレンジ色が色再現性を悪化させる原因であることから、このオレンジ色の波長を吸収する効果があり、これにより、真赤性を高めて、色の再現性を向上させることができる。
【0066】
かかる近赤外線吸収層6の厚さは、0.5〜50μm程度が好適である。
【0067】
近赤外線吸収層6上には、本発明のフィルターをディスプレイに接着するための透明粘着剤層7を形成することができる。透明粘着剤層7としては、接着機能を有するものであればいかなる樹脂を使用してもよく、例えば、ブチルアクリレート等から形成されたアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、SEBS(スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン)およびSBS(スチレン/ブタジエン/スチレン)等の熱可塑性エラストマー(TPE)を主成分とするTPE系粘着剤および接着剤等を用いることができる。透明粘着剤層7の厚みは、通常5〜500μm、特には10〜100μmの範囲内である。本発明のフィルターは、上記透明粘着剤層7をディスプレイのガラス板に加熱圧着することにより装着することができる。
【0068】
透明粘着剤層7の材料としてEVAを用いる場合、EVAとしては、酢酸ビニル含有量が5〜50重量%、特には15〜40重量%のものを好適に使用できる。酢酸ビニル含有量が5重量%より少ないと透明性に問題があり、一方、40重量%を超えると機械的性質が著しく低下する上、成膜が困難となり、フィルム相互のブロッキングが生じ易くなる。
【0069】
また、EVAを加熱架橋する場合の架橋剤としては有機過酸化物が適当であり、シート加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選択する。使用可能な有機過酸化物としては、例えば、2,5−ジメチルヘキサン−2、5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2、5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3;ジ−t−ブチルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシべンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシアセテート;2,5−ジメチル−2、5−ビス(第3ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(第3ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;メチルエチルケトンパーオキサイド;2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート;第3ブチルハイドロパーオキサイド;p−メンタンハイドロパーオキサイド;p−クロルベンゾイルパーオキサイド;第3ブチルパーオキシイソブチレート;ヒドロキシヘプチルパーオキサイド;クロルへキサノンパーオキサイド等を挙げることができる。これらの有機過酸化物は、1種を単独で、または2種以上を適宜混合して、EVA100重量部に対して通常5質量部以下、好ましくは0.5〜5.0質量部の割合で使用される。かかる有機化酸化物は、EVAに対し、通常、押出機やロールミル等を用いて混練されるが、有機溶媒、可塑剤、ビニルモノマー等に溶解し、EVAのフィルムに含浸法により添加してもよい。
【0070】
なお、EVAの物性(機械的強度、光学的特性、接着性、耐候性、耐白化性、架橋速度等)の改良のために、各種アクリロキシ基またはメタクリロキシ基およびアリル基含有化合物を添加することができる。この目的で用いられる化合物としては、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体、例えば、そのエステルおよびアミドが最も一般的であり、エステル残基としてはメチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等のアルキル基の他、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の多官能アルコールとのエステルを用いることもできる。アミドとしてはダイアセトンアクリルアミドが代表的である。
【0071】
その例としては、トリメチルロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等のアクリルまたはメタクリル酸エステル等の多官能エステルや、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マイレン酸ジアリル等のアリル基含有化合物が挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を混合して、EVA100質量部に対して通常0.1〜2質量部、好適には0.5〜5質量部で用いられる。
【0072】
EVAを光により架橋する場合には、上記有機過酸化物に代えて光増感剤を使用することができ、その添加量は、EVA100質量部に対して通常5質量部以下、好適には0.1〜3.0質量部である。使用可能な光増感剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ジベンジル、5−ニトロアセナフテン、ヘキサクロロシクロペンタジエン、p−ニトロジフェニル、p−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン、1,2−ベンズアントラキノン、3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズアンスロンなどが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0073】
またこの場合、接着促進剤として、シランカップリング剤を併用することができる。このシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0074】
シランカップリング剤は、EVA100質量部に対して通常0.001〜10質量部、好適には0.001〜5質量部の割合で、1種または2種以上を適宜混合して使用することができる。
【0075】
透明粘着剤層7には、その他、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、老化防止剤、塗料加工助剤、着色剤等を少量含有させてもよく、また、場合によってはカーボンブラック、疎水性シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤を少量含んでもよい。
【0076】
透明粘着剤層7は、例えば、EVAと上述の添加剤とを混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の成膜法により所定の形状にシート成形することで製造できる。
【0077】
また、透明粘着剤層7上には、剥離シートを設けることができ、かかる剥離シートの材料としては、ガラス転移温度が50℃以上の透明のポリマーが好ましく、このような材料としては、PET、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、PC、PMMA、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライド等のポリマーを主成分とする樹脂を用いることができる。これらの中で、PC、PMMA、ポリビニルクロライド、ポリスチレン、PETを好適に用いることができる。厚さとしては、10〜200μm程度が好ましく、30〜100μmがより好ましい。
【0078】
本発明のフィルターを製造する方法としては、基材フィルム1上に、電磁波シールド材2および機能性塗工層3,4を順次形成した後、所定の位置、例えば、図1に示す例では、フィルターの対向する一対の辺縁部11に沿う複数箇所において、適宜手法により導電性部材5を貫通させればよく、これにより、電磁波シールド材2との導通を確保することができる。
【0079】
本発明のフィルターは、特に、連続工程により製造することができる点でメリットが大きく、具体的には例えば、図6に示すように、長尺状の基材フィルム1上に順次、電磁波シールド材2を形成し(A)、機能性塗工層3,4を形成し(B)、電磁波シールド材2の露出していないフィルター辺縁部11となる部位に沿う複数箇所において導電性部材5を貫通させる(C)、これら一連の工程により、製造を行うことができる。この場合、これら工程(A)〜(D)は、いわゆるロールトゥロールの手法により連続的に行うことができ、その後、最終的なフィルター寸法に合わせ切断することにより、製品フィルターを得ることができる。
【0080】
図7に、本発明のフィルターをPDP装置に組み込んだ状態の概略断面図を示す。図示するように、PDPパネル20の前面に本発明のフィルター10を配して筐体30内に収容し、フィルター10内の電磁波シールド材2と導通させた導電性部材5と、筐体30の導電面31とを接触させることで、良好な電磁波遮蔽効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一好適実施形態に係るディスプレイパネル用フィルターの、(a)はA−A線に沿う幅方向断面図であり、(b)は平面図であり、(c)はB−B線に沿う長さ方向断面図である。
【図2】(a),(b)は、本発明の他の好適実施形態に係るディスプレイパネル用フィルターの概略平面図である。
【図3】本発明のさらに他の好適実施形態に係るディスプレイパネル用フィルターの概略平面図である。
【図4】本発明のさらに他の好適実施形態に係るディスプレイパネル用フィルターの概略平面図である。
【図5】本発明のさらに他の好適実施形態に係るディスプレイパネル用フィルターの概略平面図である。
【図6】本発明のディスプレイパネル用フィルターの製造方法を示す概略説明図である。
【図7】本発明のディスプレイパネル用フィルターをPDP装置に組み込んだ状態を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 基材フィルム
2 電磁波シールド材
3 ハードコート層(機能性塗工層)
4 反射防止層(機能性塗工層)
5,5A,5B,5C 導電性部材
6 近赤外線吸収層
7 透明粘着剤層
10 ディスプレイパネル用フィルター
11 辺縁部
20 PDPパネル
30 筐体
31 導電面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、電磁波シールド材と、少なくとも1層の機能性塗工層とを備えるディスプレイパネル用フィルターにおいて、
フィルターの、対向する少なくとも一対の辺縁部に沿って複数箇所に、フィルターを貫通してなる導電性部材が設けられていることを特徴とするディスプレイパネル用フィルター。
【請求項2】
前記機能性塗工層が非導電性の層を少なくとも一層含む請求項1記載のディスプレイパネル用フィルター。
【請求項3】
フィルターの、対向する二対の辺縁部に沿って複数箇所に、フィルターを貫通してなる導電性部材が設けられている請求項1または2記載のディスプレイパネル用フィルター。
【請求項4】
前記導電性部材が、辺縁部に沿って略等間隔に設けられている請求項1〜3のうちいずれか一項記載のディスプレイパネル用フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−328299(P2007−328299A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161490(P2006−161490)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】