説明

ディスプレイ用前面フィルター

【課題】優れた分光吸収特性および耐候性、特に耐光性に優れた、ディスプレイ用前面フィルターの提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される色素、下記一般式(2)で表される化合物およびバインダーを含有することを特徴とするディスプレイ用前面フィルター。
【化1】


一般式(2)
M(X1m(X2l・(W1s

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の色素を少なくとも1種および金属イオン含有化合物を少なくとも1種およびバインダーを少なくとも1種含有するディスプレイ用前面フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型の壁掛けテレビをはじめ種々の電子機器の表示パネルとして、プラズマディスプレイ、CRT、蛍光表示管、液晶ディスプレイ等、様々なディスプレイが開発され、その需要が増大している。また、ELディスプレイやFEDディスプレイなど新規ディスプレイ技術も実用化の域に達しており、今後もディスプレイの需要は大幅に拡大するものを推測されている。
【0003】
こうした中でもプラズマディスプレイやCRTなど発光型ディスプレイでは、発光体に電子線や紫外線を照射させるなど種々の方法により、赤、青、緑のそれぞれの3原色発光を得て表示を行うが、これらの三色の発光に悪影響を及ぼさずに三色の色バランスを補正する色調整フィルターが求められている。
【0004】
上記の色調整フィルター用色素には、可視域に良好な吸収特性を有する事、例えばモル吸光係数が大きいこと、半値幅が小さいこと、副吸収を有さないことが求められる。また同時にフィルター製造の観点から、種々の有機溶媒に対して溶解性が高いこと、バインダーとの相溶性が高いことなどが求められる。また更にディスプレイは長期間の使用が前提とされるため高い耐候性、特に耐光性が高いことが求められている。
【0005】
プラズマディスプレイにおいては、色純度を向上させたり、色温度を上げたりするために560〜620nm近辺に吸収をもつ色素を配合する必要がある。また、この波長域にはパネル内のネオンガスからの発光も含まれるため、このような不必要な発光を吸収する光学フィルターが求められている。
【0006】
このような要望を受けて、様々な色素が提案されており、そのなかでもスクアリリウム色素は、比較的モル吸光係数が大きく、半値幅も小さいという優れた吸収特性を有し、これを利用したディスプレイ用前面フィルター(以下、単に光学フィルターともいう)、ディスプレイ用前面フィルターが提案されている(特許文献1〜5参照)が、いずれも耐候性、特に耐光性が不十分であった。
【特許文献1】特開2004−86133号公報
【特許文献2】特開2004−99712号公報
【特許文献3】特開2004−99713号公報
【特許文献4】特開2004−315789号公報
【特許文献5】WO04/5981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、優れた分光吸収特性および耐候性、特に耐光性に優れた、ディスプレイ用前面フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は以下の手段によって達成される。
【0009】
1.下記一般式(1)で表される色素、下記一般式(2)で表される化合物およびバインダーを含有することを特徴とするディスプレイ用前面フィルター。
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、Qは5員または6員の含窒素ヘテロ環を形成するために必要な原子団を表し、Qは縮環していても置換基を有していてもよい。Z1は5又は6員の複素環を形成するために必要な原子団を表し、置換基を有していてもよく、該置換基により縮環を形成してもよく、Z2は4〜6員環を形成するために必要な原子団を表す。L1、L2、L3、L4及びL5はそれぞれ独立に無置換または置換基を有するメチン基を表す。n1は0から4までの整数を表し、n2は0または1であり、pは0から3までの整数を表し、R及びR12は水素原子または置換基を表し、R11は置換基を表す。]
一般式(2)
M(X1m(X2l・(W1s
[式中、MはNi、Co、Zn又はCuの2価イオンを表し、X1およびX2はそれぞれ独立に1座または2座配位子を表し、同一であっても異なっていても良く、X1とX2は連結していてもよい。m、l及びsは0〜2の整数を表し、m+l>1である。(W1sは電荷を中和させるのに必要な対イオンを表す。]
2.前記一般式(1)において、Z2で表される環が下記一般式(3)で表されることを特徴とする前記1に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、Y1は酸素原子、硫黄原子又は=C(CN)R13を表す。R13はシアノ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボンアミド基を表し、*でL3と、**でZ1と結合する。]
3.前記一般式(1)において、Z1で表される環が下記一般式(4)で表されることを特徴とする前記1又は2に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、Y2は酸素原子、又は=NR43を表し、R41〜R43は置換基を表し、R42とR43で結合して5又は6員環を形成してもよく、*でZ2と結合する。]
4.前記一般式(1)において、Z1で表される環が下記一般式(5)で表されることを特徴とする前記1又は2に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【0016】
【化4】

【0017】
[式中、R51及びR52は置換基を表し、*でZ2と結合する。]
5.前記一般式(1)において、Z1で表される環が下記一般式(6)で表されることを特徴とする前記1又は2に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【0018】
【化5】

【0019】
[式中、R61〜R64は水素原子又は置換基を表し、R61とR62又はR63とR64で結合して5又は6員環を形成してもよく、*でZ2と結合する。]
6.前記一般式(2)において、Mで表される2価の金属イオンがCuイオンであることを特徴とする前記1〜5の何れか1項記載のディスプレイ用前面フィルター。
【0020】
7.前記一般式(2)において、X1又はX2で表される配位子の少なくとも1つが下記一般式(8)で表されることを特徴とする前記1〜6の何れか1項に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【0021】
【化6】

【0022】
[式中、E1は置換基を表し、E2はハメット置換基定数(σp)が0.1以上0.9以下の電子吸引性基を表し、R81は置換、無置換のアルキル基、置換、無置換のアリール基、置換、無置換の複素環基、置換、無置換のアルコキシ基、置換、無置換のアリールオキシ基、置換、無置換のアミノ基を表す。]
8.前記一般式(8)において、E1のハメット置換基定数(σp)が0.1以上0.9以下の電子吸引性基であることを特徴とする前記7に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【発明の効果】
【0023】
本発明によって、優れた分光吸収特性および耐候性、特に耐光性を有するディスプレイ用前面フィルターを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の色素、金属イオン含有化合物及びバインダーをそれぞれ少なくとも1種含有するディスプレイ用前面フィルターについて説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
以下、前記一般式(1)〜(6)、(8)で各々表される構造について説明する。
【0026】
《一般式(1)で表される化合物》
前記一般式(1)において、Qは5員または6員の含窒素ヘテロ環を形成するために必要な原子団を表し、Qは縮環していても置換基を有していてもよい。Z1は5又は6員の複素環を形成するために必要な原子団を表し、置換基を有していてもよく、該置換基により縮環を形成してもよく、Z2は4〜6員環を形成するために必要な原子団を表す。L1、L2、L3、L4及びL5はそれぞれ独立に無置換または置換基を有するメチン基を表す。n1は0から4までの整数を表し、n2は0または1であり、R及びR11は置換基を表し、R12は置換基を表す。
【0027】
Qで形成されるヘテロ環の好ましい例としては、ベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンゾテルラゾール核、2−キノリン核、4−キノリン核、ベンゾイミダゾール核、チアゾリン核、インドレニン核、オキサジアゾール核、チアゾール核、イミダゾール核が挙げられるが、さらに好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、ベンズイミダゾール核、ベンゾセレナゾール核、2−キノリン核、4−キノリン核、インドレニン核であり、特に好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、2−キノリン核、4−キノリン核、インドレニン核等である。
【0028】
環上の置換基としては、カルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、シアノ、アルコキシ(メトキシ、エトキシ、メトキシエトキシなど)、アリールオキシ(フェノキシなど)、アルキル(メチル、エチル、シクロプロピル、シクロへキシル、トリフルオロメチル、メトキシエチル、アリル、ベンジルなど)、アルキルチオ(メチルチオ、エチルチオなど)、アルケニル(ビニル、1−プロペニルなど)、アリール(フェニル、チエニル、トルイル、クロロフェニルなど)などが挙げられる。
【0029】
1で表される5又は6員環としては、例えばベンゼン環、キノリン環、ピラゾリジンジオン環、バルビツール酸環、チオバルビツール酸環、イソオキサゾロン環、ピラゾロン環、ピリドン環、ロダニン環、ピロロトリアゾール環、ピラゾロトリアゾール環、ピラゾロピリミジン環、イミダゾール環、イミダゾロピラゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環等を形成することが好ましい。更に好ましくは、前記一般式(4)〜(6)で表される構造である。
【0030】
2は炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子および水素原子から選ばれる原子により構成された、4〜6員環を形成するために必要な原子団を表す。Z2によって形成される環として好ましくは4又は5個の炭素によって骨格が形成される環であり、より好ましくは前記一般式(3)で表される環である。
【0031】
前記一般式(3)において、Y1は酸素原子、硫黄原子又は=C(CN)R13を表し、R13はシアノ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボンアミド基を表し、*でL3と、**でZ1と結合する。Y1は酸素原子であることが好ましい。
【0032】
一般式(1)において、L1、L2、L3、L4及びL5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいメチン基を表す。置換基としては、置換、無置換のアルキル基(好ましくは炭素原子数1ないし12、さらに好ましくは1ないし7のものであり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、2−カルボキシエチル、ベンジルなど)、置換、無置換のアリール基(好ましくは炭素原子数6ないし10、さらに好ましくは6ないし8のものであり、例えば、フェニル、トルイル、クロロフェニル、o−カルボキシフェニル)、複素環基(例えば、ピリジル、チエニル、フラニル、ピリジル、バルビツール酸)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ等の各基)、アミノ基(好ましくは炭素原子数1ないし12、さらに好ましくは6ないし12あり、例えば、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、4−アセチルピペラジン−1−イル基)、オキソ基などが挙げられる。これらのメチン基上の置換基は互いに連結してシクロペンテン環、シクロヘキセン環、スクアリリウム環などの環を形成してもよく、あるいは助色団と環を形成することもできる。
【0033】
n1は0から4までの整数を表し、好ましくは0から3であり、更に好ましくは0から2である。n2は0または1である。pは0から3までの整数を表し、好ましくは0から2であり、更に好ましくは1から2である。
【0034】
Rは水素原子または置換基を表す。置換基として好ましくは置換基を有してもよい芳香族基または置換基を有していてもよい脂肪族基であり、芳香族基の炭素原子数は好ましくは1〜16、更に好ましくは5又は6である。
【0035】
脂肪族基の炭素原子数は好ましくは1〜18、更に好ましくは2〜10である。
【0036】
無置換の脂肪族基および芳香族基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−オクチル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0037】
11は置換基を表し、R12は水素原子または置換基を表し、R11及びR12で表される置換基としては、置換可能なものであれば特に限定はないが、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、トリフルオロメチル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、キナゾリル基、フタラジル基等)、ヘテロ環基(複素環基とも呼び、例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)などが挙げられる。またこれらは更に同様の置換基よって置換されても良い。
【0038】
11として好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、スルファモイル基、ウレイド基、アミノ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、ハロゲン原子等が挙げられるが、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、シアノ基、アミド基である。
【0039】
12として好ましくはR11と同様な基が挙げられ、更に別の基により置換されていても良い。特に、耐光性改良の点で、R12はキレート可能な基が好ましい。
【0040】
キレート可能な基とは非共有電子対を有する原子を含有する置換基を表し、具体的には複素環基(ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環、キノリン環等)、ヒドロキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、複素環オキシ基、カルボニルオキシ基、ウレタン基、スルホニルオキシ基、アミノ基、イミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基、スルホニル基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、および複素環チオ基等が挙げられる。
【0041】
好ましい置換基としてはヒドロキシ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、カルボニルオキシ基、ウレタン基、スルホニルオキシ基、アミノ基、イミノ基、スルホニルアミノ基、アシルアミノ基、ウレイド基アルキルチオ基、アリールチオ基が挙げられ。更に好ましい置換基としてはヒドロキシ基、カルボニル基、カルバモイル基、アルコキシ基、スルホニルアミノ基、アシルアミノ基、複素環等が挙げられる。
【0042】
また、R12がキレート可能な基である場合として好ましくは下記一般式(7)で表される基が挙げられる。
【0043】
【化7】

【0044】
一般式(7)において、Wは=N−又は=C(OR71)−を表し、Z3は5又は6員環を形成するために必要な原子団を表し、置換基を有していても良く、R71は置換基を表し、*でZ1と結合する。
【0045】
71は前記R11と同義であるが、好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、アシル基等が挙げられ、更に好ましくはアルキル基、複素環基が挙げられる。
【0046】
3で形成される5又は6員環として好ましくはベンゼン環、ナフタレン環、キノリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピラゾール環、ピロール環、イミダゾール環等が挙げられるが、更に好ましくはベンゼン環、キノリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピラゾール環が挙げられる。
【0047】
《一般式(2)で表される化合物》
一般式(2)において、MはNi、Co、Zn又はCuの2価イオンを表し、好ましくはCo、Zn又はCuであり、より好ましくはZn又はCuであり、最も好ましくはCuである。(一部だぶっててる所がありました)
1およびX2はそれぞれ独立に1座または2座配位子を表し、同一であっても異なっていても良く、X1とX2は連結していてもよい。m、l及びsは0〜2の整数を表し、m+l>1である。(W1sは電荷を中和させるのに必要な対イオンを表す。
【0048】
1及びX2の具体例としては、例えば、特開2000−251957号、同2000−311723号、同2000−323191号、同2001−6760号、同2001−59062号、同2001−60467号の各公報等に記載されているようなものが挙げられる。
【0049】
具体的にはハロゲンイオン、水酸イオン、アンモニア、ピリジン、アミン(たとえばメチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン等)、シアン化物イオン、シアン酸イオン、チオラートイオン、チオシアン酸イオン、およびビピリジン類、アミノポリカルボン酸類、8−ヒドロキシキノリン等の各種のキレート配位子が挙げられ、キレート配位子については上野景平著「キレート化学」等に例示されている。
【0050】
1座配位子としてはアシル基、カルボニル基、チオシアネート基、イソシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、ハロゲン原子、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基又はアリールオキシ基で配位する配位子、或いはジアルキルケトン又はカルボンアミドからなる配位子が好ましい。
【0051】
2座配位子としてはアシルオキシ基、オキザリレン基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アルキルチオ基又はアリールチオ基で配位する配位子、或いはジアルキルケトン又はカルボンアミドからなる配位子が好ましい。
【0052】
以下に具体例を示すが、本発明はこれらに限定されることはない。尚、ここに示す構造式は幾つも取り得る共鳴構造の中の1つの極限構造に過ぎず、共有結合(−で示す)と配位結合(…で示す)の区別も形式的なもので、絶対的な区別を表すものではない。
【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
【化10】

【0056】
【化11】

【0057】
また、前記一般式(8)で表される化合物も配位子として更に好ましい。
【0058】
一般式(8)において、E1は置換基を表し、E2はハメット置換基定数(σp)が0.1以上0.9以下の電子吸引性基を表し、R81はアルキル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基を表し、置換基を有していてもよい。
【0059】
1及びE2で表されるσp値が0.1以上0.9以下の置換基について説明する。
【0060】
ここでいうハメットの置換基定数σpの値としては、Hansch,C.Leoらの報告(例えば、J.Med.Chem.16、1207(1973);ibid.20、304(1977))に記載の値を用いるのが好ましい。
【0061】
例えば、σpの値が0.10以上の置換基または原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン置換アルキル基(例えばトリクロロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、トリフルオロメチルチオメチル、トリフルオロメタンスルホニルメチル、パーフルオロブチル等の各基)、脂肪族アシル基、芳香族アシル基又は複素環アシル基(例えばホルミル、アセチル、ベンゾイル)、脂肪族スルホニル基、芳香族スルホニル基もしくは複素環スルホニル基(例えばトリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル等の各基)、カルバモイル基(例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロ−フェニルカルバモイル等の各基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル等の各基)、置換芳香族基(例えばペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル)、複素環残基(例えば2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンズチアゾリル、1−フェニル−2−ベンズイミダゾリル、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えばフェニルアゾ)、ジトリフルオロメチルアミノ基、トリフルオロメトキシ基、アルキルスルホニルオキシ基(例えばメタンスルホニルオキシ)、アシロキシ基(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(例えばベンゼンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えばジメトキシホスホニル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−(2−ドデシルオキシエチル)スルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N,N−ジエチルスルファモイル)などが挙げられる。
【0062】
また、σpの値が0.35以上の置換基としてはシアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、フッ素置換アルキル基(例えば、トリフルオロメチル、パーフルオロブチル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環アシル基(例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル)、脂肪族・芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、フェニルカルバモイル、2−クロロ−フェニルカルバモイル)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ジフェニルメチルカルボニル)、弗素又はスルホニル基置換芳香族基(例えば、ペンタフルオロフェニル、2,4−ジメタンスルホニルフェニル)、複素環残基(例えば、1−テトラゾリル)、アゾ基(例えば、フェニルアゾ)、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、メタンスルホニルオキシ)、ホスホリル基(例えば、ジメトキシホスホリル、ジフェニルホスホリル)、スルファモイル基などが挙げられる。
【0063】
σpの値が0.60以上の置換基としては、シアノ基、ニトロ基、脂肪族・芳香族もしくは複素環スルホニル基(例えば、トリフルオロメタンスルホニル、ジフルオロメタンスルホニル、メタンスルホニル、ベンゼンスルホニル)などが挙げられる。
【0064】
1で表される置換基としては前記一般式(1)におけるR11と同義であるが、好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、カルボニル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基等が挙げられるが好ましくは電子吸引性基である。
【0065】
1及びE2として好ましくはハロゲン化アルキル基(特にフッ素置換アルキル基)、カルボニル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0066】
81の好ましい置換基としては炭素数2〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基が挙げられ、更に好ましくは炭素数4〜18のアルキル基又は炭素数4〜18のアルコキシ基、アリールオキシ基、である。最も好ましくは炭素数6〜16のアルコキシ基である。
【0067】
以下に一般式(8)で示される配位子の具体例を示すが本発明はこれらに限定されることはない。
【0068】
【化12】

【0069】
【化13】

【0070】
【化14】

【0071】
【化15】

【0072】
【化16】

【0073】
【化17】

【0074】
(W1sは電荷を中和させるのに必要な対イオンを表し、例えば、ある色素が陽イオン、陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうかは、その金属、配位子、および置換基に依存する。置換基が解離性基を有する場合、解離して負電荷を持っても良く、この場合にも分子全体の電荷は(W1sによって中和される。典型的な陽イオンは無機または有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン)、アルカリ金属イオンおよびプロトンであり、一方、陰イオンは具体的に無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、例えば、ハロゲン陰イオン、(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えば、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(例えば、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えば、メチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。
【0075】
一般式(2)で表される化合物の添加量は色素に対して0.5〜20倍モルの範囲で添加することができる。さらに、0.5〜10倍モルであることが好ましく、更に好ましくは0.5〜5倍モルである。併用する色素にもよるが、0.5倍モルより少ないと耐光性が著しく低下することがある。
【0076】
この様な銅化合物としては例えば、酢酸銅、ステアリン酸銅、2−エチルヘキサン酸銅、硫酸銅、塩化第2銅など、ニッケル化合物としては例えば酢酸ニッケル、ステアリン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケルなど、コバルト化合物としては、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトナートなど、亜鉛化合物としてはジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ギ酸亜鉛、オレイン酸亜鉛などが挙げられる。
【0077】
《一般式(4)について》
一般式(4)において、Y2は酸素原子又は=NR43を表し、R41〜R43は置換基を表し、R42とR43で結合して5又は6員環を形成してもよく、*でZ2と結合する。
【0078】
41〜R43で表される置換基は一般式(1)におけるR11と同義であり、好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、ヘテロアリール基、カルバモイル基、シアノ基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。
【0079】
42とR43が結合して形成される縮環としては例えばピラゾロトリアゾール、ピラゾロイミダゾール、ピラゾロピリミジン−5−オン、ピラゾロピリミジン−7−オンなどが挙げられるがこれに限定されない。
【0080】
一般式(4)として好ましくは下記一般式(4−1)〜(4−4)が挙げられるが、更に好ましくは一般式(4−2)〜(4−4)が挙げられる。
【0081】
【化18】

【0082】
前記一般式(4−1)〜(4−4)において、R42〜R47は一般式(1)におけるR11と同義である。
【0083】
42として好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、ヘテロアリール基、アシル基、等が挙げられるが、更に好ましくはアリール基、複素環基、ヘテロアリール基、アシル基が挙げられ、キレート可能な基(一般式(7)を含む)を有していても良い。
【0084】
44及びR45として好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、ヘテロアリール基等が挙げられるが、更に好ましくはアリール基、複素環基、ヘテロアリール基が挙げられ、キレート可能な基(一般式(7)を含む)を有していることが好ましい。
【0085】
46及びR47として好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、ヘテロアリール基、アシル基、アミド基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等が挙げられるが、更に好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、ヘテロアリール基、アルコキシカルボニル基が挙げられ、キレート可能な基(一般式(7)を含む)を有していることが好ましい。
【0086】
《一般式(5)について》
一般式(5)において、R51及びR52は置換基を表し、*でZ2と結合する。
【0087】
51及びR52で表される置換基は一般式(1)におけるR11と同義であり、好ましくはアルキル基、アリール基、複素環基、ヘテロアリール基、ウレイド基、アミド基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられるが更に好ましくはアリール基、複素環基、ヘテロアリール基、アミド基、スルファモイル基、アルコキシ基等が挙げられ、キレート可能な基(一般式(7)を含む)を有していても良い。
【0088】
《一般式(6)について》
一般式(6)において、R61〜R64は水素原子又は置換基を表し、R61とR62又はR63とR64で結合して5又は6員環を形成してもよく、*でZ2と結合する。
【0089】
61〜R64で表される置換基は一般式(1)におけるR11と同義であり、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基、ヘテロアリール基、ウレイド基、アミド基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等が挙げられるが更に好ましくは水素原子、アルキル基、複素環基、ヘテロアリール基、アミド基、スルファモイル基等が挙げられ、キレート可能な基(一般式(7)を含む)を有していても良い。
【0090】
61とR62又はR63とR64で結合して5又は6員環を形成する事も好ましく、例えばナフタレン環、キノリン環、インドール環、ベンゾチアゾール環などが挙げられるが好ましくはキノリン環、インドール環である。
【0091】
以下に、前記一般式(1)で表される本発明に係る色素及び一般式(2)で表される金属イオン含有化合物の代表的な具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0092】
【化19】

【0093】
【化20】

【0094】
【化21】

【0095】
【化22】

【0096】
【化23】

【0097】
【化24】

【0098】
【化25】

【0099】
【化26】

【0100】
【化27】

【0101】
【化28】

【0102】
【化29】

【0103】
【化30】

【0104】
【化31】

【0105】
【化32】

【0106】
【化33】

【0107】
【化34】

【0108】
【化35】

【0109】
【化36】

【0110】
【化37】

【0111】
【化38】

【0112】
【化39】

【0113】
【化40】

【0114】
【化41】

【0115】
【化42】

【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
本発明に係る前記一般式(1)で表される色素は、例えば、特開平6−250357号、特開昭63−226653号、英国特許1,252,418号、特開昭64−63194号、特開平3−205189号、特開平3−226750号、英国特許1,183,515号等、特開平4−190348号等、同3−285959号、特開2000−285978号、特開2000−345059号、特開2004−99712、特許第3078398等に記載された従来公知の方法を参考にして合成することができ、一般式(8)で表される金属イオン含有化合物の配位子は特開2002−332259号、同2003−237246号等を参考にして合成することができる。
【0119】
以下に具体的に一般式(1)及び(2)で表される化合物の合成法の一例を示すが、その他の化合物も同様にして合成することが可能であり、合成法としては、これらに限定されない。
【0120】
〔合成例1〕
《D−22の合成》
【0121】
【化43】

【0122】
<中間体3の合成>
中間体2:5.43gに1−ブタノール:50mlとトリエチルアミン:4.04gを加え60℃で撹拌溶解させる。次に中間体1:8.00gを1−ブタノール:20mlに溶解したものを1時間かけて滴下する。滴下終了後、2時間同温度で撹拌した後、濃縮し、酢酸エチル:200mlに溶解し分液した後、中和、水洗し濃縮する。濃縮物をカラムクロマトグラフィーにて精製した。次に濃縮物をアセトン:200mlに溶解し、2N−HCl:70mlを加えて6時間加熱還流した。反応液を100mlまで濃縮し、水:300ml中へ滴下し析出する結晶を濾過し、中間体3:5.52gを得た。MASS、H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0123】
<D−22の合成>
中間体3:3.67g、中間体4:2.86gに1−ブタノール:40mlとトルエン:40mlを加えて8時間加熱還流した。反応液を冷却し、析出する結晶を濾過し、D−22:4.83gを得た。MASS、H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0124】
〔合成例2〕
《D−81の合成》
【0125】
【化44】

【0126】
中間体5:3.87g、中間体6:2.51gに1−ブタノール:40mlとトルエン:40mlを加えて8時間加熱還流した。反応液を冷却し、析出する結晶を濾過し、D−81:5.06gを得た。MASS、H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0127】
〔合成例3〕
《D−111の合成》
【0128】
【化45】

【0129】
中間体7:3.23g、中間体8:5.00gに1−ブタノール:40mlとトルエン:40mlを加えて8時間加熱還流した。反応液を濃縮、更にカラムクロマトグラフィーにて精製し、D−111:6.81gを得た。MASS、H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0130】
〔合成例4〕
《MS−41の合成》
【0131】
【化46】

【0132】
<中間体11(X−116)の合成>
中間体9:35.0gに攪拌しながらアセトニトリル:200ml、塩化カルシウム:26.3g及びトリエチルアミン:36.3gを順次加えて15℃まで冷却する。次に内温を20℃以下に保ちながら中間体10:32.0gを滴下し、室温で2時間反応させる。酢酸エチル:200mlと水:100mlを加え抽出し、中和、水洗し濃縮する。濃縮物をカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体11:45.2gを得た。MASS、H−NMR、IRスペクトルによって同定し、目的物であることを確認した。
【0133】
<MS−41の合成>
塩化銅2水和物:2.73gに水:50mlを加え溶解し、中間体11:10.27gにメタノール:5ml加えた溶液を攪拌しながら滴下し、析出する結晶を濾過した。アセト二トリルで再結晶し、MS−41:9.20gを得た。MASSスペクトル及び元素分析によって同定し、目的物であることを確認した。
【0134】
本発明の色素および金属イオン含有化合物は、ディスプレイ用前面フィルターとして供するにあたり、バインダー(分散剤)との組成物、もしくはこれに更に溶媒を加えた組成物として用いられることが好ましい。
【0135】
バインダーとしては、(メタ)アクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ系樹脂、フッ素系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アラミド樹脂などが挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが好ましく用いられ、最も好ましくは(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂である。また、これらの共重合体も同様に好ましい。
【0136】
(メタ)アクリレート系樹脂とは、種々のメタクリレート系モノマー、もしくはアクリレート系モノマーを単独重合、もしくは共重合することにより合成され、モノマー種及びモノマー組成比を種々変えることによって、望みの(メタ)アクリレート系樹脂を得ることができる。
【0137】
また本発明においては、(メタ)アクリレート系モノマーと一緒に(メタ)アクリレート系モノマー以外の不飽和二重結合を有する共重合可能なモノマーと共に共重合しても使用可能であり、更に本発明においては、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂と一緒に他の複数の樹脂を混合しても使用可能である。
【0138】
本発明において用いられる(メタ)アクリレート系樹脂を形成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)エチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、塩化エチルトリメチルアンモニウム(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−アセトアミドメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、3−トリメトキシシランプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、好ましくは(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
【0139】
ポリスチレン系樹脂とはスチレンモノマーの単独重合物、あるいはスチレンモノマーと共重合可能な他の不飽和二重結合を有するモノマーを共重合したランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。
【0140】
更に、かかるポリマーに他のポリマーを配合したブレンド物やポリマーアロイも含まれる。前記スチレンモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチルスチレン−p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、などの核アルキル置換スチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、ジクロルスチレン、ジブロモスチレン、トリクロルスチレン、トリブロモスチレンなどの核ハロゲン化スチレンなどが挙げられるが、この中でスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0141】
これらを単独重合、もしくは共重合することによって本発明で用いられる樹脂は合成され、例えば、ベンジルメタクリレート/エチルアクリレート、あるいはブチルアクリレート等の共重合体樹脂、またメチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート等の共重合体樹脂、またメチルメタクリレート/メタクリル酸/ステアリルメタクリレート/アセトアセトキシエチルメタクリレートの共重合体樹脂、またスチレン/アセトアセトキシエチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体樹脂、また、スチレン/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルメタクリレートの共重合体、更には、2−エチルヘキシルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の共重合体樹脂等が例として挙げられる。
【0142】
《ディスプレイ用前面フィルター》
本発明のディスプレイ用前面フィルターは、基材中に本発明の色素、金属イオン含有化合物(色素混合物とも記載する)およびバインダーをそれぞれ少なくとも1種を含有することを特徴とする。本発明でいうディスプレイ用前面フィルターに含有するとは、適当な基材の内部に含有されることは勿論、基材の表面に塗布した状態、基材と基材の間に挟まれた状態等でディスプレイ用前面フィルターとして供する事を意味する。
【0143】
本発明におけるディスプレイ用前面フィルターは、可視域に吸収極大を少なくとも一つ有する事が特徴であって、いわゆるカラーフィルターとして知られるような、RGB三色を1組として格子状に多数並び全体として四角形に配置され、CCDイメージセンサなど固体撮像素子、あるいは液晶を使用したカラーディスプレイに用いられる部品のように特定の色の光を透過させ、それ以外を遮るものではなく、特定の波長域の光を減色させる、あるいは遮り、それ以外の光は透過させるために用いられるものである。
【0144】
また、本発明におけるディスプレイ用前面フィルターは、プラズマディスプレイや有機ELディスプレイのような自発光型表示装置の前面に配置され、色調補整や不要な波長域の発光を遮るために用いられる。
【0145】
このために本発明のディスプレイ用前面フィルターは可視領域に少なくとも一つの吸収極大を有することが特徴である。
【0146】
これを実現するために本発明の色素は、色素単独もしくは本発明の金属イオン含有化合物共存下において、溶液状態において可視領域に吸収極大を有することが特徴であり、より好ましくは色調調整のために450〜620nmに吸収極大を有することが好ましく、特にネオン発光をカットするためには560〜620nmに吸収極大を有することが好ましく、580〜610nmに吸収極大を有することがより好ましい。
【0147】
基材としては、透明樹脂板、透明フィルム、透明ガラス等が挙げられ、波長400〜700nmの光線透過率が40%以上の透明性があれば特に制限はない。
【0148】
例えば、ポリイミド、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチレンメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン(PP)、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びトリアセチルセルロース(TAC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好ましく用いられる。
【0149】
基材の厚さは、ある程度の機械的強度があれば特に制限はないが、通常は、20μm〜10mmであり、20μm〜1mmが好ましく、20μm〜200μmが特に好ましい。
【0150】
本発明のディスプレイ用前面フィルターを作製する方法としては、特に限定されるものではないが、
(1)透明粘着剤に含有させる方法
(2)高分子成形体へ含有させる方法
(3)高分子成形体又はガラス表面にコーティングする
方法等が挙げられる。
【0151】
(1)に挙げた透明粘着剤の具体的な例としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール粘着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤(EVA)等、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等のシート状または液状の粘着剤等を挙げることができ、この中でもアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルブチラール系粘着剤が好ましい。
【0152】
色素の添加量は、通常10ppm〜30質量%であり、10ppm〜20質量%が好ましく、10ppm〜10質量%が特に好ましい。
【0153】
(2)に挙げた高分子樹脂成形体へ含有させる方法としては、(A)樹脂に色素混合物を混錬し、加熱成形する方法と(B)有機溶剤に、樹脂または樹脂モノマーと色素混合物を分散、溶解させ、キャスティング法により高分子成形体を作成する方法が挙げられる。
【0154】
(A)で使用される樹脂としては、板またはフィルム作製した際に、できるだけ透明性の高いものが好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン6等のポリアミド、ポリイミド、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル化合物、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ビニル化合物の付加重合体、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデン等のビニリデン化合物、フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のビニル化合物又はフッ素系化合物の共重合体、ポリエチレンオキシド等のポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を挙げることができる。
【0155】
加工条件としては、色素混合物をベース高分子の粉体或いはペレットに添加、混合し、150〜350℃に加熱、溶解させた後、成形して板を作製する方法、押し出し機でフィルム化する方法、押し出し機で原反を作製し、30〜120℃で2〜5倍に1軸乃至2軸に延伸して、10〜200μm厚のフィルムにする方法、等が挙げられる。尚、混錬する際に可塑性等の通常の樹脂成形に用いる添加剤を加えても良い。
【0156】
(B)のキャスティング法では、樹脂又は樹脂モノマーの有機溶剤溶液もしくは有機溶剤に、色素混合物を添加・溶解させ、必要であれば可塑剤、重合開始剤、酸化防止剤を加え、必要とする面状態を有する金型やドラム上へ流し込み、溶剤揮発・乾燥又は重合・溶剤揮発・乾燥させることにより、板又はフィルムを製造することができる。
【0157】
使用される樹脂としては、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変成樹脂(PVA、EVA等)或いはそれらの共重合樹脂の樹脂モノマーが挙げられる。
【0158】
溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、或いはそれらの混合物系等が挙げられる。
【0159】
(3)に挙げた高分子成形体又はガラス表面にコーティングする方法としては、色素混合物を樹脂及び有機系溶媒に溶解させて組成物とした後に塗料化する方法、未着色のアクリルエマルジョン塗料に色素混合物を微粉砕(50〜500nm)したものを分散させてアクリルエマルジョン系水性塗料にする方法等が挙げられる。塗料中には、酸化防止剤等の通常塗料に用いるような添加物を加えても良い。
【0160】
使用される樹脂としては、脂肪族エステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、芳香族エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリオレフィン樹脂、芳香族ポリオレフィン樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル系変成樹脂(PVB、EVA等)或いはそれらの共重合樹脂等が挙げられる。
【0161】
溶媒としては、ハロゲン系、アルコール系、ケトン系、エステル系、脂肪族炭化水素系、芳香族炭化水素系、エーテル系溶媒、或いはそれらの混合物系等が挙げられる。
【0162】
組成物の濃度は、グラム吸光係数、コーティングの厚み、目的の吸収強度、目的の可視光透過率等によって異なるが、バインダー樹脂の質量に対して、通常、0.1ppm〜30質量%である。
【0163】
また、樹脂濃度は、塗料全体に対して、通常、1〜50質量%である。
【0164】
上記の方法で作製した塗料は、基材上にバーコーダー、ブレードコーター、スピンコーター、リバースコーター、ダイコーター、或いはスプレー等のコーティング法等の公知の方法で薄膜を形成することにより、塗工することができる。
【0165】
さらに本発明のディスプレイ用前面フィルターには、電磁波シールド機能や近赤外線遮断機能を持たせることが好ましい。電磁波シールドとしては、銀薄膜を用いた積層体や銅を主として用いる金属のメッシュを用いることができる。銀薄膜を用いた積層体としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の誘電体と銀を交互に、積層したようなものが好ましい。
【0166】
金属のメッシュとしては、繊維に金属を蒸着した繊維メッシュ、フォトリソグラフィーの技術を用いパターンを形成してエッチングによりメッシュを得るエッチングメッシュ等を使用することができる。
【0167】
また、金属を含有するインクによるパターニングを行う方法、ハロゲン化銀を塗布、現像定着させる方法なども好適に用いられる
近赤線遮断機能については、銀薄膜を用いる電磁波シールドを用いる場合は、銀の自由電子による散乱のため、同時に、近赤外線の遮断を行うことができる。
【0168】
その他、メッシュ、インクパターニングあるいは現像法などを用いた場合は、別途、近赤外線を吸収、もしくは反射するフィルムを用いる。
【0169】
更に本発明のディスプレイ用前面フィルターには公知の反射防止層、防眩層、ハードコート層、静電防止層、防汚層などの機能性透明層を付加することができる。
【0170】
また、紫外線カットについては、紫外線カットアクリル板を基板に使っても良いし、基板の一方の面あるいは両面に紫外線吸収層を形成させても良いが、本発明のディスプレイ用前面フィルムに、紫外線吸収剤を含有させても良い。
【0171】
紫外線吸収剤として、例えば、サリチル酸誘導体(UV−1)、ベンゾフェノン誘導体(UV−2)、ベンゾトリアゾール誘導体(UV−3)、アクリロニトリル誘導体(UV−4)、安息香酸誘導体(UV−5)又は有機金属錯塩(UV−6)等があり、それぞれ(UV−1)としては、サリチル酸フェニル、4−t−チルフェニルサリチル酸等を、(UV−2)としては、2−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等を、(UV−3)としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−5’−ジ−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を、(UV−4)としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、メチル−α−シアノ−β−(p−メトキシフェニル)アクリレート等を、(UV−5)としては、レゾルシノール−モノベンゾエート、2’,4’−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等を、(UV−6)としては、ニッケルビス−オクチルフェニルサルファミド、エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸のニッケル塩等を挙げることができる。
【0172】
本発明で好ましく用いられる上記記載の紫外線吸収剤は、透明性が高く、偏光板や液晶素子、プラズマディスプレイ等の光学装置の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0173】
また、これ以外にも酸化防止剤や重合開始剤などを必要に応じて適宜添加することができる。
【0174】
本発明のディスプレイ用前面フィルターを用いて、電子ディスプレイ、またはプラズマディスプレイパネル表示装置を得るには、表示装置として、公知の表示装置あるいは市販品であれば特に限定なく用いることができる。
【0175】
プラズマディスプレイパネル表示装置とは、次のような原理によってカラー画像の表示を行う装置である。前面ガラス板と背面ガラス板との間に表示電極対と、2枚のガラス板の間に設けた各画素(R(赤)、G(緑)、B(青))に対応するセルを設け、セルの中にキセノンガスやネオンガスを封入し、一方セル内の背面ガラス板側に各画素に対応する蛍光体を塗布しておく。
【0176】
表示電極間の放電によって、セル中のキセノンガスおよびネオンガスの励起発光し、紫外線が発生する。そしてこの紫外線を蛍光体に照射することによって、各画素に対応する可視光が発生する。そして、背面ガラス板にアドレス用電極を設け、このアドレス用電極に信号を印加することにより、どの放電セルを表示するかを制御し、カラー画像の表示を行うものである。
【0177】
本発明のディスプレイ用前面フィルターはセル内のネオンガスの発光を選択的に遮断するネオンカットフィルターとして好適に利用することができる。上述したようにプラズマディスプレイでは蛍光体の発光によりカラー表示を行っているが、ネオン原子が励起された後基底状態に戻る際に600nm付近を中心とするいわゆるネオンオレンジ光を発光することが知られている(映像情報メディア学会誌Vol.51NO.4、P.459〜463(1997))。
【0178】
この為、プラズマディスプレイでは、赤色にオレンジ色が混ざり鮮やかな赤色が得られない欠点があった。この欠点を解消するため、ネオン発光をカットすることが好ましく、本発明の組成物を用いてネオン発光吸収フィルターを作製する場合には、本発明の色素は、単独もしくは本発明の金属イオン含有化合物共存下においてが溶液状態で560〜620nmに吸収極大を有していること好ましく、580〜605nmに吸収極大を有することが更に好ましい。このとき560〜620nmの波長領域の吸収極大でのフィルターの透過率は、0.01〜80%の範囲であることが好ましく、1〜70%の範囲であることがさらに好ましい。
【0179】
またディスプレイの色再現性を高めるために、560〜620nmの波長領域の吸収波形は、シャープであることが好ましい。具体的には560〜620nmにおける吸収波形は、半値幅(吸収極大の吸光度の半分の吸光度を示す波長領域の幅)が、15〜100nmであることが好ましく、20〜70nmであることがより好ましく、25〜50nmであることがさらに好ましい。
【実施例】
【0180】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0181】
実施例1
《光学フィルターの製造》
(光学フィルター1−Aの製造)
アクリル樹脂(オリバインBPS5896(固形分質量35質量%。東洋インキ製造株式会社製))100質量部に対して、本発明の色素D−22:1質量部、本発明の金属イオン含有化合物MS−41:3質量部を秤量した。
【0182】
秤量したアクリル樹脂、色素、金属イオン含有化合物を同一の容器に移し、さらにアクリル樹脂固形分質量が25質量部となるようにテトラヒドロフランを加え、この本発明の組成物を超音波分散機で十分に分散させた(組成物:1−a)。
【0183】
この組成物をPETフィルム基板上にバーコーターで塗工、乾燥したのち、光学フィルター(試料:1−A)を作製した。このフィルターは、青紫色を呈しており、可視光線を有効に吸収することがわかった(極大吸収波長:602nm)。
【0184】
(光学フィルター2−Aの製造)
光学フィルター1−Aの製造のうち、色素をD−142に変更した以外は同様にして、光学フィルター(試料:2−A)を作製した。このフィルターは、青紫色を呈しており、可視光線を有効に吸収することがわかった(極大吸収波長:595nm)。
【0185】
(光学フィルター3−Aの製造)
光学フィルター1−Aの製造のうち、色素をD−144に変更した以外は同様にして、光学フィルター(試料:3−A)を作製した。このフィルターは、青紫色を呈しており、可視光線を有効に吸収することがわかった(極大吸収波長:592nm)。
【0186】
(光学フィルター:4−A〜45−Aの製造)
色素、金属イオン含有化合物、バインダーを下記表3、4に示す通りに変更した以外は上記光学フィルター1−Aの製造と同様にして光学フィルター4−A〜46−Aを製造した。なお、表中の色素の添加割合(X)、金属イオン含有化合物の添加割合(Y)は、それぞれ、バインダーの固形分質量を100質量%とした場合の添加割合である。
【0187】
使用したバインダーは以下のとおりである。
【0188】
A:ポリエステル樹脂(バイロン200;東洋紡績(株)製)
B:アクリル樹脂(オリバインBPS5896(東洋インキ製造株式会社製))
C:ポリスチレン樹脂(St/HEMA/SMA=30/40/30共重合体、St:スチレン、HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、SMA:ステアリルメタクリレート)
D:エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(東ソー社製、商品名:メルセンG)
比較化合物E:ジ・ブチル錫マレート系安定剤[P−5T(東京ファインケミカル(株)社製)]
作製した本発明の光学フィルター1−A〜45−Aについて表面状態、耐光性および高温条件−低温条件繰り返し保存性を下記基準により評価した。評価結果を表3に併せて示す。
【0189】
(表面状態)
乾燥後の表面状態を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて4段階評価した。A、Bが実用上問題ないレベルであり、表面状態が優れていることを示す。
【0190】
A:フィルターの失透やヒビ、ワレなどが観察されないもの
B:若干の失透が見られるが実用上問題ないもの
C:明らかな失透が観察されたもの
D:ヒビ、ワレなどが観察されたもの。
【0191】
A,Bが実用上問題ないレベルである。
【0192】
(耐光性試験)
可視光線吸収光学フィルターAにキセノンランプを5.5万luxで5日間照射した後、可視光線吸収光学フィルターの極大吸収波長での吸収変化から色素残存量を測定した。作製直後の吸収極大の吸光度をA0、キセノンランプを5.5万luxで5日間照射した後の吸収極大の吸光度をA1としたとき、色素の残存量は
色素残存量(%)=A1/A0×100
として求めた。
【0193】
A:色素残存量70%以上
B:色素残存量50%以上〜70%未満
C:色素残存量25%以上〜50%未満
D:色素残存量5%以上〜25%未満
E:色素残存量5%未満
A,Bが実用上問題ないレベルである。
【0194】
(高温条件−低温条件繰り返し保存試験)
高温条件−低温条件繰り返し保存(サイクルサーモ試験)
作製直後の可視光線吸収光学フィルターAを密閉容器に入れ、70℃の恒温槽に1日間保存後、続いて−25℃の冷凍庫で1日間保存した場合、サイクルサーモ試験1回とした。
【0195】
サイクルサーモ試験を5回行った後に、密閉容器を室温で1日かけて常温に戻し、フィルターを取り出し、表面状態を目視で観察し、下記評価基準に基づいて4段階評価した。
【0196】
A:保存前後でフィルターの失透やヒビ、ワレなどが観察されないもの
B:保存後、若干の失透が見られたもの
C:保存後、明らかな失透や変色が観察されたもの
D:保存後、明らかな析出物や大きな変色が観察されたもの
A,Bが実用上問題ないレベルである。
【0197】
【表3】

【0198】
【表4】

【0199】
本発明の試料が比較の試料に対して、優れていることが分かる。
【0200】
実施例2
(ディスプレイ用前面フィルターの製造)
《ディスプレイ用前面フィルター》
(本発明のディスプレイ用前面フィルター1の作製)
アクリル系粘着剤の主剤溶液[オリバインBPS5896(東洋インキ製造株式会社製)]に酢酸エチル、本発明のD−22:0.150質量%/(樹脂固形分)、本発明の金属イオン含有化合物MS−41:0.300質量%/(樹脂固形分)およびポリイソシアネート系硬化剤[BXX4773(東洋インキ製造株式会社製)]を加え、この可視光吸収粘着剤をポリエチレンテレフタレート(PET)製フィルム(厚み50μm)にバーコーターで塗工、乾燥し、この面にPET製フィルム(厚み50μm)をローラーで貼り合わせディスプレイ用前面フィルター1を得た。
【0201】
このディスプレイ用前面フィルターの透過率曲線は、602nmに極小値を有しており、これ以外に可視光域に明瞭な極小値はなく、可視光透過率の最小値の波長がネオン発光の波長領域である560〜620nmにあることから、ネオン発光を有効に吸収することのできるネオン発光カットフィルター、ディスプレイ用前面フィルターを提供することができた。
【0202】
得られたフィルターをキセノンフェードメーター(5.5万Lux)にて24時間露光した後の、試料の未露光試料からの可視領域の極大吸収波長における吸収スペクトル濃度の低下率を評価し、色素残存量%を算出したところ、96%であった。
【0203】
(本発明のディスプレイ用前面フィルター2の作製)
前記本発明のディスプレイ用前面フィルター1の作製において、色素をD−142に変更した以外は同様にして、本発明のディスプレイ用前面フィルター2を得た。このディスプレイ用前面フィルターの透過率曲線は、595nmに極小値を有しており、これ以外に可視光域に明瞭な極小値はなく、可視光透過率の最小値の波長がネオン発光の波長領域である560〜620nmにあることから、ネオン発光を有効に吸収することのできるネオン発光カットフィルター、ディスプレイ用前面フィルターを提供することができた。
【0204】
得られたフィルターをキセノンフェードメーター(5.5万Lux)にて48時間露光した後の、試料の未露光試料からの可視領域の極大吸収波長における吸収スペクトル濃度の低下率を評価し、色素残存量%を算出したところ、95%であった。
【0205】
(本発明のディスプレイ用前面フィルター3の作製)
前記本発明のディスプレイ用前面フィルター1の作製において、色素をD−144に変更した以外は同様にして、本発明のディスプレイ用前面フィルター3を得た。このディスプレイ用前面フィルターの透過率曲線は、592nmに極小値を有しており、これ以外に可視光域に明瞭な極小値はなく、可視光透過率の最小値の波長がネオン発光の波長領域である560〜620nmにあることから、ネオン発光を有効に吸収することのできるネオン発光カットフィルター、ディスプレイ用前面フィルターを提供することができた。
【0206】
得られたフィルターをキセノンフェードメーター(5.5万Lux)にて48時間露光した後の、試料の未露光試料からの可視領域の極大吸収波長における吸収スペクトル濃度の低下率を評価し、色素残存量%を算出したところ、87%であった。
【0207】
(比較ディスプレー前面光学フィルム1)
前記、本発明のディスプレイ用前面光学フィルムー1の作製で得られた可視光吸収粘着剤にMS−41を加えなかった以外は同様にして、比較ディスプレイ用前面光学フィルムー1を作製した。このディスプレイ用前面フィルターの透過率曲線は、588nmに極小値を有していた。
【0208】
キセノンフェードメーター(5.5万Lux)を用いて48時間露光した後のサンプルの未露光サンプルからの可視領域極大吸収波長における色素残存率%を算出したところ、17%であった。
【0209】
(比較ディスプレー前面光学フィルム2)
前記、本発明のディスプレイ用前面フィルター2の作製で得られた可視光吸収粘着剤にMS−41を加えなかった以外は同様にして、比較ディスプレイ用前面フィルター1を作製した。このディスプレイ用前面フィルターの透過率曲線は、590nmに極小値を有していた。
【0210】
キセノンフェードメーター(5.5万Lux)を用いて48時間露光した後のサンプルの未露光サンプルからの可視領域極大吸収波長における色素残存率%を算出したところ、12%であった。
【0211】
(比較ディスプレー前面光学フィルム3)
前記、本発明のディスプレイ用前面フィルター3の作製で得られた可視光吸収粘着剤にMS−41を加えなかった以外は同様にして、比較ディスプレイ用前面フィルター1を作製した。このディスプレイ用前面フィルターの透過率曲線は、592nmに極小値を有していた。
【0212】
キセノンフェードメーター(5.5万Lux)を用いて48時間露光した後のサンプルの未露光サンプルからの可視領域極大吸収波長における色素残存率%を算出したところ、28%であった。
【0213】
以上の如く、本発明のディスプレイ用前面光学フィルムが比較のディスプレイ用前面光学フィルム比して、色素残存率が高く、即ち、耐光性に優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される色素、下記一般式(2)で表される化合物およびバインダーを含有することを特徴とするディスプレイ用前面フィルター。
【化1】

[式中、Qは5員または6員の含窒素ヘテロ環を形成するために必要な原子団を表し、Qは縮環していても置換基を有していてもよい。Z1は5又は6員の複素環を形成するために必要な原子団を表し、置換基を有していてもよく、該置換基により縮環を形成してもよく、Z2は4〜6員環を形成するために必要な原子団を表す。L1、L2、L3、L4及びL5はそれぞれ独立に無置換または置換基を有するメチン基を表す。n1は0から4までの整数を表し、n2は0または1であり、pは0から3までの整数を表し、R及びR12は水素原子または置換基を表し、R11は置換基を表す。]
一般式(2)
M(X1m(X2l・(W1s
[式中、MはNi、Co、Zn又はCuの2価イオンを表し、X1およびX2はそれぞれ独立に1座または2座配位子を表し、同一であっても異なっていても良く、X1とX2は連結していてもよい。m、l及びsは0〜2の整数を表し、m+l>1である。(W1sは電荷を中和させるのに必要な対イオンを表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、Z2で表される環が下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【化2】

[式中、Y1は酸素原子、硫黄原子又は=C(CN)R13を表す。R13はシアノ基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基またはカルボンアミド基を表し、*でL3と、**でZ1と結合する。]
【請求項3】
前記一般式(1)において、Z1で表される環が下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【化3】

[式中、Y2は酸素原子、又は=NR43を表し、R41〜R43は置換基を表し、R42とR43で結合して5又は6員環を形成してもよく、*でZ2と結合する。]
【請求項4】
前記一般式(1)において、Z1で表される環が下記一般式(5)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【化4】

[式中、R51及びR52は置換基を表し、*でZ2と結合する。]
【請求項5】
前記一般式(1)において、Z1で表される環が下記一般式(6)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【化5】

[式中、R61〜R64は水素原子又は置換基を表し、R61とR62又はR63とR64で結合して5又は6員環を形成してもよく、*でZ2と結合する。]
【請求項6】
前記一般式(2)において、Mで表される2価の金属イオンがCuイオンであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載のディスプレイ用前面フィルター。
【請求項7】
前記一般式(2)において、X1又はX2で表される配位子の少なくとも1つが下記一般式(8)で表されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のディスプレイ用前面フィルター。
【化6】

[式中、E1は置換基を表し、E2はハメット置換基定数(σp)が0.1以上0.9以下の電子吸引性基を表し、R81は置換、無置換のアルキル基、置換、無置換のアリール基、置換、無置換の複素環基、置換、無置換のアルコキシ基、置換、無置換のアリールオキシ基、置換、無置換のアミノ基を表す。]
【請求項8】
前記一般式(8)において、E1のハメット置換基定数(σp)が0.1以上0.9以下の電子吸引性基であることを特徴とする請求項7に記載のディスプレイ用前面フィルター。

【公開番号】特開2008−209462(P2008−209462A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43536(P2007−43536)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】