説明

ディスプレイ用複合フィルタ

【課題】電磁波遮蔽シートと機能層を平坦化層を介して積層したディスプレイ用複合フィルタであって、反射防止機能とともに、高い透明性を有し、機能層の表面平坦性が高く、且つ厚みが薄い複合フィルタを提供する。
【解決手段】透明基材の一方の面に少なくとも金属パターン層が積層された電磁波遮蔽シート表面の一部に、当該金属パターン層の一部を露出させた平坦化層が設けられ、当該平坦化層上に反射防止層を含む機能層が設けられてなるディスプレイ用複合フィルタであって、前記平坦化層の屈折率が1.4以上1.7未満であり、該反射防止層を構成する層のうち最も表面側に、屈折率が1.49以下である低屈折率層が配置され、前記機能層が、転写により、基材を含むことなく平坦化層上に設けられたものであることを特徴とするディスプレイ複合フィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用複合フィルタに関し、更に詳細には、本発明は、厚みが薄く、明所でのコントラストに優れたディスプレイ用複合フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子機器の機能高度化と利用増加に伴い、電磁気的なノイズ妨害(Electro Magnetic Interference;EMI)が増えた。陰極線管(CRTという)、プラズマディスプレイパネル(PDPという)などの画像表示装置(ディスプレイ)でも電磁波が発生する。プラズマディスプレイパネルは、データ電極と蛍光層を有するガラスと透明電極を有するガラスとの組合体であり、作動すると電磁波、近赤外線、及び熱が大量に発生する。
通常、電磁波を遮蔽するためにプラズマディスプレイパネルの前面に、電磁波シールドフィルタが設けられる。ディスプレイ前面から発生する電磁波のシールド性は、30MHz〜1GHzにおいて30dB以上の機能が必要である。
【0003】
このような用途に用いる電磁波シールドフィルタは、電磁波シールド性能と共に光透過性も要求される。従って、電磁波シールドフィルタとしては、樹脂フィルムからなる透明基材上に接着剤で貼り合わせた金属箔をエッチングしてメッシュ状とした金属パターン層やメッキ法によりメッシュ状に形成した金属パターン層を積層した構成(以下、金属パターン層/透明基材のように表す場合がある。「/」の左右の層は積層一体化されていることを意味する。)等が知られている。
【0004】
また、画像表示面の前面には、電磁波遮蔽機能以外に通常、様々な機能を有する光学フィルタを設けることが求められる。例えば、外部光源から照射された光線による反射を少なくし、その視認性を高めるために、透明基材に反射防止層を形成させた光学フィルタを利用することが一般になされている。この他、上記光学フィルタとしては、例えば、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、紫外線吸収機能、防擦傷機能等の様々な機能を有する層が設けられている。このような光学フィルタは、通常、電磁波シールドフィルタに積層することにより得られる複合フィルタの形態でディスプレイの前面に設置される。
【0005】
当該光学フィルタを金属パターン面に積層する際には、予め平坦化樹脂と称呼される透明樹脂で金属パターン面の開口部を充填して、金属パターン状領域の表面を平坦化した後、該平坦化層上に接着剤層を介して該光学フィルタ等を積層することが一般的である。これは、金属パターン層は開口部が凹んで凹凸面をなす為、光学フィルタを接着剤によって直接積層すると、金属パターンの開口部内に気泡が残留してしまい、該気泡の光散乱により、複合フィルタの曇値(ヘイズ)が上昇するという不具合を生じるからである。
【0006】
また、上記のような複合フィルタにおいては、金属パターン層を接地する必要がある。そのために通常、金属パターン層は、メッシュ状等の金属パターンの周辺部に囲むように設けられた額縁状の、開口部を形成しない部分を有し、この額縁状の開口部を形成しない部分から接地することが一般的である(特許文献1)。そのため、平坦化層は、開口部が形成された金属パターン面の部分のみに限定的に設けられる場合が多い。
【0007】
複合フィルタの層構成としては、電磁波シールドフィルタの平坦化層上に、光学機能層/透明基材を積層した構成が一般的である。しかし、この構成では、光学機能層の形成の為に用いられる透明基材が複合フィルタの層構成に含まれる分、複合フィルタの厚みが増すという問題がある。更に、このような複合フィルタを製造する際は、光学機能層/透明基材を平坦化層の大きさに合わせて枚葉化したり、枚葉化したものを位置合わせしたりして積層しなければならないため、生産効率に問題がある。
【0008】
一方、光学機能層の透明基材が複合フィルタの層構成に含まれないような複合フィルタとして、例えば特許文献2には、透明基板(基材)の片方の面上に設けられた電磁波を遮蔽するための金属パターン層と、前記金属パターン層と前記透明基板(基材)との凹凸を平坦化するための透明な平坦化層と、前記平坦化層の上面に設けられ、前記平坦化層よりも屈折率の低い反射防止層とを有することを特徴とする電磁波シールド付き光学フィルタが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2003−66854号公報
【特許文献2】特開平11−337702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した特許文献2の電磁波シールド付き光学フィルタは、反射防止効果を高くすることを目的として、平坦化層の屈折率が1.7以上であることを特徴とする電磁波シールド付き光学フィルタを好ましい態様としている。しかし、このような態様の場合、透明基材や透明基材と金属パターン層を貼り合わせるための接着剤層との屈折率差が大きくなりすぎ、透明性が損なわれるという問題がある。また、特許文献2では、平坦化層上に反射防止層を設ける方法として塗布方法が記載されているが、塗布方法で設けられた反射防止層は、塗工ムラが生じ易く、表面の平坦性に問題が生じる。
【0011】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、厚みが薄く、明所でのコントラストに優れたディスプレイ用複合フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るディスプレイ用複合フィルタは、第一の態様として、透明基材の一方の面に、金属パターン層と、当該金属パターン層の凹凸を平坦化するための平坦化層と、当該平坦化層上に反射防止層を含む機能層が設けられてなるディスプレイ用複合フィルタであって、前記平坦化層の屈折率が1.4以上1.7未満であり、前記反射防止層は、直下に存在する層よりも低い屈折率を有する低屈折率層からなる単層構造であるか、又は、屈折率の高い層と低い層とが交互に積層され、且つ、該反射防止層を構成する層のうち最も表面側に、屈折率が1.49以下である低屈折率層が配置された多層構造であり、且つ、前記機能層が、転写により、基材を含むことなく前記平坦化層上に設けられたものであることを特徴とする。
本発明に係る上記複合フィルタは、屈折率が制御された反射防止層を有しつつ、透明基材や透明基材と金属パターン層を積層するための接着剤の屈折率と、平坦化層の屈折率との差が過剰に大きくならないように制御されていることにより、反射防止機能とともに高い透明性を有する。また、平坦化層上に基材を介することなく機能層が設けられることから、複合フィルタの厚みを薄くすることができる。更に、本発明に係る上記複合フィルタは、機能層が転写により設けられていることから、機能層が塗工により設けられる場合に比べて、機能層の最表面を平坦にすることができる。
【0013】
また、本発明に係るディスプレイ用複合フィルタは、第二の態様として、透明基材の一方の面に、金属パターン層と、当該金属パターン層の凹凸を平坦化するための平坦化層と、当該平坦化層上に反射防止層を含む機能層が設けられてなるディスプレイ用複合フィルタであって、前記平坦化層の屈折率が1.4以上1.7未満であり、前記反射防止層が防眩層のみからなり、前記機能層が、転写により、基材を含むことなく前記平坦化層上に設けられたものであることを特徴とする。
本発明に係る第二の態様の複合フィルタは、防眩層による反射防止機能を有する。また、平坦化層上に基材を介することなく機能層が設けられることから、複合フィルタの厚みを薄くすることができる。
【0014】
また、本発明のディスプレイ用複合フィルタは、一実施形態として、前記平坦化層が、前記金属パターン層の一部を露出させて設けられたものであり、且つ、前記機能層が、転写される際に、当該平坦化層と重ね合わせた後に破断することにより、実質的に当該平坦化層全面上のみに設けられたものとすることができる。このようなディスプレイ用複合フィルタは、高い生産効率で、金属パターン層の接地用領域を確保することができる。
【0015】
本発明のディスプレイ用複合フィルタは、前記機能層が、屈折率が1.5〜1.6のハードコート層を含むことが、複合フィルタの観察者(表示面)側に耐擦傷性を付与することができる点から好ましい。
【0016】
更に、本発明に係るディスプレイ用複合フィルタは、第三の態様として、透明基材の一方の面に、金属パターン層と、当該金属パターン層の凹凸を平坦化するための平坦化層が設けられているディスプレイ用複合フィルタであって、前記平坦化層の屈折率が1.4以上1.7未満であり、且つ当該平坦化層表面は防眩性機能を有する凹凸形状を備えていることを特徴とする。これにより、外光のうつりこみを低減できる。
前記平坦化層上に屈折率が1.5〜1.6のハードコート層が設けられていることが好ましい。ハードコート層を設けることで、複合フィルタの表面の保護や表面光沢の調整、帯電防止を行うことができる。
【0017】
また、本発明のディスプレイ用複合フィルタは、前記平坦化層が、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含有することが、平坦化層と機能層との密着性、及び平坦化層の硬度を向上させる点から好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、厚みが薄く、明所でのコントラストに優れたディスプレイ用複合フィルタを提供することができる。
特に、本発明の第一の態様によれば、電磁波遮蔽シートと機能層を平坦化層を介して積層したディスプレイ用複合フィルタであって、反射防止機能とともに、高い透明性を有し、且つ厚みが薄い複合フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るディスプレイ用複合フィルタは、第一の態様として、透明基材の一方の面に、金属パターン層と、当該金属パターン層の凹凸を平坦化するための平坦化層と、当該平坦化層上に反射防止層を含む機能層が設けられてなるディスプレイ用複合フィルタであって、前記平坦化層の屈折率が1.4以上1.7未満であり、前記反射防止層は、直下に存在する層よりも低い屈折率を有する低屈折率層からなる単層構造であるか、又は、屈折率の高い層と低い層とが交互に積層され、且つ、該反射防止層を構成する層のうち最も表面側に、屈折率が1.49以下である低屈折率層が配置された多層構造であり、且つ、前記機能層が、転写により、基材を含むことなく前記平坦化層上に設けられたものであることを特徴とする。
本発明に係る上記複合フィルタは、屈折率が制御された反射防止層を有しつつ、透明基材(通常、屈折率1.4〜1.7)や透明基材と金属パターン層を積層するための接着剤(通常、屈折率1.4〜1.7)の屈折率と、平坦化層の屈折率との差が過剰に大きくならないように制御されていることにより、反射防止機能とともに高い透明性を有する。また、平坦化層上に基材を介することなく機能層が設けられることから、複合フィルタの厚みを薄くすることができる。更に、本発明に係る上記複合フィルタは、機能層が転写により設けられていることから、機能層が塗工により設けられる場合に比べて、機能層の最表面を平坦にすることができる。
【0020】
また、本発明に係るディスプレイ用複合フィルタは、第二の態様として、透明基材の一方の面に、金属パターン層と、当該金属パターン層の凹凸を平坦化するための平坦化層と、当該平坦化層上に反射防止層を含む機能層が設けられてなるディスプレイ用複合フィルタであって、前記平坦化層の屈折率が1.4以上1.7未満であり、前記反射防止層が防眩層のみからなり、前記機能層が、転写により、基材を含むことなく前記平坦化層上に設けられたものであることを特徴とする。
上記第二の態様の複合フィルタは、防眩層による反射防止機能を有する。また、平坦化層上に基材を介することなく機能層が設けられることから、複合フィルタの厚みを薄くすることができる。
【0021】
更に、本発明に係るディスプレイ用複合フィルタは、第三の態様として、透明基材の一方の面に、金属パターン層と、当該金属パターン層の凹凸を平坦化するための平坦化層が設けられているディスプレイ用複合フィルタであって、前記平坦化層の屈折率が1.4以上1.7未満であり、且つ当該平坦化層表面は防眩性機能を有する凹凸形状を備えていることを特徴とする。これにより、外光のうつりこみを低減できる。
前記平坦化層上に屈折率が1.5〜1.6のハードコート層が設けられていることが好ましい。ハードコート層を設けることで、複合フィルタの表面の保護や表面光沢の調整、帯電防止を行うことができる。
以下、図を用いながら本発明のディスプレイ用複合フィルタの層構成を説明する。先ず、第一の態様のディスプレイ用複合フィルタについて詳しく説明した後、第二及び第三の態様のディスプレイ用複合フィルタについて説明する。
【0022】
(1)第一の態様のディスプレイ用複合フィルタ
図1は本発明のディスプレイ用複合フィルタの最も基本的な層構成を示す図である。本発明の第一の態様のディスプレイ用複合フィルタ1は、透明基材11の一方の面に、金属パターン層14と、当該金属パターン層14の凹凸を平坦化するための屈折率が1.4以上1.7未満の平坦化層15と、当該平坦化層15上に機能層12として屈折率が1.49以下の反射防止層19が設けられてなる。
本発明の複合フィルタを構成する機能層12は、転写により設けられたものであり、当該機能層を形成するために必要な基材を含まないため、本発明の複合フィルタの総厚みを薄くすることができる。
【0023】
機能層12に含まれる反射防止層は、低屈折率層1層のみからなる単層構造であっても良いし、高屈折率層と低屈折率層が交互に積層してなる多層構造であってもよい。機能層12が、反射防止層以外の機能層を含む例としては、図2に示されるように、上記図1に示す複合フィルタ1の平坦化層15と反射防止層19の間に屈折率が1.5〜1.6のハードコート層18が設けられた複合フィルタ2が挙げられる。このような複合フィルタは、機能層表面の防擦傷機能を向上させる点から好ましい。
【0024】
なお、本発明において、透明基材11と金属パターン層14の間には、両層を貼り合わせるための接着剤層(図示せず)が設けられていてもよい。
また、ハードコート層18は、近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色調調整機能、紫外線吸収機能等の光学的機能を付与するための添加剤を含有し、これらの光学機能層と兼用するものであってもよい。
更に、図3に示されるように、上記図1に示す複合フィルタ1の透明基材11の金属パターン層14側の裏面に近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色調調整機能、紫外線吸収機能等を付与した光学機能層17を設けた複合フィルタ3としてもよい。
本発明のディスプレイ用複合フィルタは、上記機能層12が防眩層のみからなる場合も有る。この場合、防眩層の屈折率は特に限定されない。
【0025】
以下、本発明の複合フィルタに係る各構成について説明する。
[透明基材]
透明基材は、接着剤層又は粘着剤層を介して金属パターン層を積層するための基材となる層である。本発明に用いられる透明基材は透明性を有し、かつ接着剤層又は粘着剤層が形成可能であれば、その種類等は特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトンからなるフィルムで可視領域の光線透過率が80%以上のフィルムが挙げられる。
【0026】
これらのフィルムは本発明の目的を妨げない程度であれば着色していてもよく、さらに単層で使うこともできるが、2層以上組み合わせた多層フィルムとして使ってもよい。中でも透明性、耐熱性、コストや取扱い性の面等から、PETが最も好ましい。可視領域の光線透過率はできる限り高いことが望ましいが、これは最終製品としては50%以上の光線透過率が必要なことから最低2枚を積層する場合でも透明基材としては80%を有すれば目的に適うからである。透過率が高ければ高いほど透明基材を複数枚積層できるため、光線透過率は好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上であり、このために厚さを薄化するのも有効な手段である。この透明基材の厚さは、透明性さえ満足すれば特に制限されるものではないが、加工性上からは12μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。厚さ12μm未満の場合はフィルムが柔軟過ぎ、導電層である金属パターン層の成膜や加工する際の張力により伸張やシワが発生しやすく、そのため金属パターン層の亀裂や剥離が生じやすく適さない。300μmを超えるとフィルムの可撓性が減少し、各工程での連続巻き取りが困難で適さない。さらに複数枚を積層する際は加工性が大幅に劣るといった問題もある。
【0027】
なお、このような透明基材の屈折率(本発明において、アッベ法の測定結果を用いる)は、通常1.4〜1.7、好ましくは1.5〜1.6である。本発明において好適に用いられるPETは屈折率が1.575、TACは屈折率が1.475である。
【0028】
[接着剤層又は粘着剤層]
接着剤層又は粘着剤層(図示していない)は、透明基材と金属パターン層とを接着するのに用いられる層である。接着剤層又は粘着剤層は、金属パターン層と透明基材とを接着することが可能な層であれば、その種類等は特に限定されるものではないが、本発明においては、上記金属パターン層を構成する金属箔及び透明基材を接着剤層又は粘着剤層を介して貼り合わせた後、金属箔をエッチングによりメッシュ状とすることから、接着剤層又は粘着剤層も耐エッチング性を有することが好ましい。
具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール単独もしくはその部分ケン化品、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンエステル樹脂等が挙げられる。また、本発明に用いられる接着剤層又は粘着剤層は、紫外線硬化型であってもよく、また熱硬化型であってもよい。特に、透明基材との密着性や、近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素との相溶性、分散性などの観点からアクリル樹脂もしくはポリエステル樹脂が好ましい。
なお、このような接着剤層又は粘着剤層の屈折率層は、通常1.4〜1.7、好ましくは1.45〜1.6である。本発明において好適に用いられる接着剤は屈折率が1.50〜1.57、粘着剤は屈折率が1.50〜1.60である。
【0029】
また、接着剤層又は粘着剤層中に、近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素を1種以上含有させてもよい。その場合、800nm〜1100nmの波長域における光線透過率が20%以下、中でも15%以下、560〜630nmの波長域における光線透過率が30%以下、中でも25%以下、であることが好ましい。
【0030】
さらに用いる樹脂の水酸基価及び酸価が各々10以下であることが好ましい。
ここで樹脂の酸価とは、樹脂1gに含まれる全酸性成分(例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、アクリル酸基等)を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数、また、樹脂の水酸基価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、全水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を指す。酸価及び水酸基価の測定方法はJIS K2501などで定められている方法を用いることができる。
これにより、上記樹脂に含まれる水酸基及び酸により近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素が樹脂中の反応基と反応すること等を防ぐことができ、安定に近赤外線吸収、及び/又は、ネオン光吸収機能を発揮することが可能なものとすることができる。
【0031】
接着剤層又は粘着剤層を介してドライラミネーション法等により透明基材と金属パターン層を形成するための金属箔とを接着することができる。また、この接着剤層又は粘着剤層の膜厚が0.5μm〜50μmの範囲内、中でも1μm〜20μmであることが好ましい。これにより、透明基材と金属パターン層とを強固に接着することができ、また、金属パターン層を形成するエッチングの際に透明基材が酸化鉄等のエッチング液の影響を受けること等を防ぐことができる。
【0032】
[金属パターン層]
金属パターン層は、複合フィルタを構成する各層のうち、特に、プラズマディスプレイ等から発生した電磁波を遮蔽する機能を有する。金属パターン層は、メッシュ状等の形状で開口部が存在することにより、電磁波シールド性能と光透過性を両立させている。
【0033】
本発明に係る金属パターン層の一態様を図4に示す。図4(A)は、本発明に用いられる金属パターン層14が透明基材上に設けられた一態様の平面図である。また、図4(B)は、図4(A)に示された、透明基材11上に設けられた金属パターン層14の模式的断面図である。
図4(A)に示すように、本発明の金属パターン層14の一態様としては、平面方向においては、適用されるディスプレイの画像表示領域を全て覆うことが可能な開口部を有するメッシュ状領域21と、当該メッシュ状領域の周囲の少なくとも一部に接地用領域20が形成されている。
【0034】
メッシュ状領域21は、適用されるディスプレイの画像表示領域を全て覆うことが可能な寸法及び形状を有し、適用されるディスプレイの画像表示領域に対峙する部分30が必ず含まれる。当該ディスプレイの画像表示領域に対峙する部分30の外の領域となる外縁部は、メッシュ状領域21が含まれても良いし、接地用領域20のみからなっても良い。接地用領域20は、通常、メッシュ状領域21と同じ層構成を有しながら開口部を形成しないものであり、ディスプレイへ設置した場合にアースをとり易いために設けられる。なお、接地用領域20は、開口部が形成されたメッシュ状であっても良い。接地用領域20は、通常四角形のディスプレイの画像表示領域に対峙する部分30の外の領域となる外縁部である画像表示に影響しない部分に、四辺周囲の額縁状に設けられることが多いが、メッシュ状領域21の全周囲でなくても、周囲の一部に設ける形態でもよく、三辺、二辺、或いは一辺のみに設ける形態でも良い。
【0035】
本発明に係る金属パターン層は、通常、上述の透明基材上に、接着剤層又は粘着剤層により金属箔が貼り合わせられ、その金属箔をメッシュ状等のパターンにエッチングすることにより形成される。このエッチングは、通常のフォトリソグラフィー法により行なうことができ、例えば金属箔の表面にレジストを塗布し、乾燥した後、レジストをパターン版で密着露光し、現像処理を行なうことにより得ることができる。パターンは、任意で特に限定されないが、開口部の形状としては正方形が代表的である。開口部の形状は、例えば、正三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形、等の多角形、或いは、円形、楕円形などが挙げられる。
【0036】
このエッチング処理された後の金属パターン層は、開口部間が50μm〜500μmの範囲内、中でも100μm〜400μmの範囲内、特に200μm〜300μmの範囲内であることが好ましく、また開口部間の線幅が5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。開口部間の線幅が上記範囲より細かい場合には、断線が起こる場合があり、電磁波遮蔽性の面から好ましくなく、また開口部間の線幅が上記範囲より太い場合には、可視光の透過率が低く、例えばプラズマディスプレイの輝度が低くなる等という面から好ましくないからである。
【0037】
本発明においては、この金属パターン層は、電磁波遮蔽性を有するものであれば、その金属の種類等は特に限定されるものではなく、例えば銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、金、銀、ステンレス、タングステン、チタン等を用いることができる。本発明においては、上記の中でも銅が、電磁波のシールド性、エッチング処理適性や取扱い性の面から好ましい。また用いられる銅箔の種類としては、圧延銅箔、電解銅箔等が挙げられるが、特に、電解銅箔であることが好ましい。これにより、厚さが10μm以下の均一性のよい金属パターン層とすることができ、また、金属パターン層の表面に黒化処理が施された際に、酸化クロム等との密着性を良好なものとすることができる。
【0038】
ここで、本発明においては、上記金属箔の一方の面又は両面に黒化処理されていることが好ましい。黒化処理とは、酸化クロム等により金属パターン層の表面を黒化する処理である。黒化処理面は、観察者側の面、或いは観察者側とは反対の面となるように配置される。この黒化処理により金属パターン層表面に形成された酸化クロム等により、複合フィルタ表面の外光が吸収されることから、複合フィルタ表面で光が散乱することを防止することができ、良好な透過性を得ることが可能な複合フィルタとすることができる。光の散乱を防止する観点からは、黒化処理面は、観察者側の面にある方が好ましい。このような黒化処理は、上記金属箔に黒化処理液を塗布することにより行なうことができる。
【0039】
黒化処理の方法としては、CrO水溶液や、無水クロム酸水溶液に酒石酸、マロン酸、クエン酸、乳酸等の異なるオキシカルボン酸化合物を添加して、6価クロムの一部を3価クロムに還元した溶液等を、ロールコート法、エアーカーテン法、静電霧化法、スクイズロールコート法、浸漬法等により塗布し、乾燥させることにより行なうことができる。なお、この黒化処理は、透明基材上に、接着剤層又は粘着剤層により金属箔が貼り合わせられ、メッシュ状にエッチングされた後に行われるものであってもよい。
【0040】
この黒化処理された金属箔の表面の黒濃度が0.6以上であることが好ましい。これにより、より非視認性を良好なものとすることができるからである。ここで、黒濃度は、COLOR CONTROL SYSTEMのGRETAG SPM100−11((株)KIMOTO製)を用いて、観測視野角10°、観測光源D50、照明タイプとして濃度標準ANSI Tに設定し、白色キャリブレイション後に測定した値である。
【0041】
また、上記金属箔の膜厚は、1μm〜100μmの範囲内、中でも5μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より膜厚が厚いと、エッチングによりパターン線幅を細かく高精細化することが困難となり、また上記範囲より膜厚が薄い場合には、十分な電磁波シールド性が得られないからである。
【0042】
さらに、上記金属箔は、JIS B0601に準拠する十点平均粗さが0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲より小さい場合には、上記黒化処理をした場合であっても、複合フィルタ表面の外光が鏡面反射することから、視認性が劣化し、また上記範囲より大きい場合には、接着剤やレジスト等を塗布することが困難となるからである。
【0043】
本発明に用いられる上述したような金属パターン層は、表面抵抗が10−6Ω/□〜5Ω/□の範囲内、中でも10−4Ω/□〜3Ω/□の範囲内であることが好ましい。一般的に、電磁波遮蔽性は、表面抵抗により測定することができ、この表面抵抗が低いほど、電磁波遮蔽性が良好なものということができる。ここで、上記表面抵抗の値は、表面抵抗測定装置ロレスターGP、(株)ダイヤインスツルメンツ製にてJIS K7194「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験法」に記載される方法にて測定された値である。
【0044】
[平坦化層]
本発明に係るディスプレイ用複合フィルタにおいては、上記金属パターン層の開口部と非開口部とが凹凸をなすため、上記金属パターン層上に、金属パターン層の厚み以上の厚みで形成された平坦化層が積層される。金属パターン層上に平坦化層を形成することによって、金属パターン層の凹凸を平坦化することができ、他の部材と貼りあわせた際等に、金属パターン層による凹凸によって複合フィルタの透明性が低下することを防ぐことができる。また、上述した金属パターン層形成の際に行われるエッチングによって、上記接着剤層表面が劣化し、透明性が低下した場合であっても、その接着剤層上に平坦化層が形成されることから、透明性を改良することができ、さらに、平坦化層により金属パターン層の断面が覆われることから、金属パターン層を斜めから見た際にも乱反射を防止することができる。
【0045】
特に、本発明に係る平坦化層は、屈折率が1.4以上1.7未満という制御された屈折率を有するため、上記透明基材や、透明基材上に金属パターン層を積層するための接着剤層又は粘着剤層との屈折率との差が、過剰に大きくならないため、反射防止機能とともに透明性を確保することができる。平坦化層の屈折率が1.4未満、或いは1.7を超える場合、当該平坦化層と、平坦化層に接する透明基材、又は金属パターンと透明基材の間の接着剤層又は粘着剤層との屈折率差が大きすぎるため、透明性が損なわれるという問題が生じる。平坦化層の屈折率は、更に、1.45以上1.60以下であることが好ましい。
【0046】
平坦化層の材料は、上記屈折率を有する層を得られる材料であれば特に限定されないが、機能層の転写の際に接着力を有し、更に、可視光に対する透明性、及び塗工適性を有するものを適宜用いる。本発明に係る複合フィルタの透過スペクトルを実質的に変化させることの無いものが好ましく、公知の粘着剤(感圧性材料)の中から適宜選択して用いることができる。更に、平坦化層と機能層との密着性、及び平坦化層の硬度を向上させる点から、光硬化性樹脂(以下において、電離放射線硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、及び電子線硬化性樹脂を総称する)及び/又は熱硬化性樹脂を含有することが好ましい。中でも、熱による光学機能層の劣化を防ぐ点から、光硬化性樹脂を用いることが好ましい。この場合、更に反射防止層を含む機能層を積層して複合フィルタを形成した後、複合フィルタに光照射することにより、平坦化層と機能層との界面の接着力を向上させることができる。
ここで、機能層の転写の際に接着力を有するとは、転写の際の条件(例えば、温度、加圧、加圧時間)において、後述の転写を行うことが可能な接着力を有することをいう。
【0047】
本発明の複合フィルタにおいて、機能層が加熱を行わずに感圧転写される場合は、平坦化層は、公知の粘着剤として慣用されているものの中から、単に適度な、通常、軽く手で押圧する程度の加圧のみにより、表面の粘着性のみで接着可能な材料を選択して用いることが好ましい。また、機能層が熱転写される場合は、平坦化層は、加熱時に接着可能な材料を適宜選択して用いる。機能層が熱転写される場合、平坦化層に用いる材料は、熱転写時を除き、必ずしも接着力を有している必要はない。
平坦化層に用いられる材料としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリアルコール・ポリグリコール型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂、脂環式やハロゲン化ビスフェノールなどのエポキシ樹脂(いずれも屈折率(以下、nと称する)が1.55〜1.60)を使うことができる。エポキシ樹脂以外では天然ゴム(n=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ−1、2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.5125)、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1、3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1、3−ブタジエン(n=1.515)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(n=1.4563)、ポリビニルエチルエーテル(n=1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(n=1.4591)、ポリビニルブチルエーテル(n=1. 4563)などのポリエーテル類、ポリビニルアセテート(n=1.4665)、ポリビニルプロピオネート(n=1.4665)などのポリエステル類、ポリウレタン(n=1.5〜1.6)、エチルセルロース(n=1.479)、ポリ塩化ビニル(n=1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(n=1.52)、ポリメタクリロニトリル(n=1.52)、ポリスルフィド(n=1.6)、フェノキシ樹脂(n=1.5〜1.6)などを挙げることができる。これらは好適な可視光透過率を発現する。
【0048】
上記の樹脂以外に、ポリエチルアクリレート(n=1.469)、ポリブチルアクリレート(n=1.466)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(n=1.463)、ポリ−t−ブチルアクリレート(n=1.464)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(n=1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート(n=1.465)、ポリメチルアクリレート(n=1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(n=1.473)、ポリドデシルメタクリレート(n=1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(n=1.475)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(n=1.484)、ポリ−3、3、5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(n=1.484)、ポリエチルメタクリレート(n=1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(n=1.487)、ポリ−1、1−ジエチルプロピルメタクリレート(n=1.489)、ポリメチルメタクリレート(n=1.489)などのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのアクリルポリマーは必要に応じて、2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使うことも可能である。
【0049】
さらにアクリル樹脂とアクリル以外との共重合樹脂としてはエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレートなども使うこともできる。特に接着性の点から、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートは分子内に水酸基を有するため接着性向上に有効であり、これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。
【0050】
感圧転写される場合の平坦化層の材料としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系共重合体、エチレン−カルボン酸エステル共重合体、水溶性ポリビニルアセタール樹脂、ブチラール樹脂、ホルマール樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリオレフィン、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、等を単独或いは混合して使用することができる。中でも、アクリル系樹脂が好ましい。
【0051】
平坦化層の形成に用いられる光硬化性樹脂としては、重合体、光重合性単量体、光開始剤等からなる光硬化性樹脂原料に光を照射して硬化された樹脂が挙げられる。それらのなかでもアクリル酸エステル系の樹脂が好ましい。重合体としては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート等の重合体が挙げられ、中でもエポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレートが好ましい。
光重合性単量体としては、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、その他、2価以上のアルコールと相当するアクリル酸とのエステルである多官能アクリレートが挙げられ、中でも2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレートが好ましい。
【0052】
光開始剤とは、紫外線などの照射光を吸収して、重合反応を開始させるものであって、アセトフェノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、テトラメチルウラムモノサルファイド、チオキサントン類が挙げられ、中でもアセトフェノン、ベンゾフェノンが好ましい。
【0053】
また、上記平坦化層には、酸化防止剤を配合してもよい。この場合には、得られる複合フィルタの粘着剤層と金属パターン層との界面で、接着剤に含まれる酸成分によって金属パターン層が酸化され、色変化が起きるのを防ぐことができる。
更に、平坦化層には、所望に応じて、粘着付与剤、シランカップリング剤、充填剤等を配合することができる。
【0054】
また、平坦化層には近赤外線吸収機能、ネオン光吸収機能、色調調整機能、紫外線吸収機能等の光学機能を付与するため、上述の光学機能層に添加する材料を1種以上含有させてもよい。このようにすることにより、複数の層の機能を1層で兼務し、且つこれを平坦化層とも統合することができるため、複合フィルタの総厚み、工程数、原価を低減することが可能となり、好ましい。その場合、近赤外線吸収機能を付与する為には、800nm〜1100nmの波長域における光線透過率が20%以下、中でも10%以下、ネオン光吸収機能を付与する為には、560〜630nmの波長域における光線透過率が30%以下、中でも25%以下となるようにすることが好ましい。又、紫外線吸収機能を付与する為には、380nm以下の波長域における光線透過率が10%以下とすることが好ましい。
【0055】
本発明において、このような平坦化層の膜厚は、5〜40μmの範囲内であることが好ましい。この範囲にすることにより、特に、電磁波シールドフィルタと光学機能層とを積層する際に電磁波シールドフィルタにおける金属パターン層の凹凸を良好に平坦化することが可能となるからである。更に好ましくは、10〜30μmである。
【0056】
上記平坦化層の形成方法は特に限定されないが、例えば、上述した材料を溶剤等に溶解させた平坦化層形成用塗工液を金属パターン層上にロールコーター、カーテンコーター、グラビアコーター等の塗工機により一定厚みに塗布後、溶剤を揮発させて乾燥する。中でも、前記金属パターン層の一部を露出させて設けられた平坦化層を形成する場合には、平坦化層は、平坦化層形成用塗工液を金属パターン層上に間歇塗工を行なって形成することが好ましい。その後、表面に金属パターンの凹凸により形成された樹脂の凹凸を、樹脂基材のガラス転移点温度(Tg)以上の温度で、例えばミラーロール等を用いて圧力をかけることにより平坦化することにより形成することができる。
このことから、上記の樹脂は、Tgが30℃〜150℃の範囲内、中でも40℃〜120℃の範囲内であることが好ましい。
また、この平坦化層を平坦化する工程における温度および圧力は、その樹脂の種類により適宜選択されるものであるが、通常50℃〜170℃の範囲内であり、また圧力は線圧0.1kg/cm〜10kg/cmの範囲内であることが好ましい。
【0057】
更に、平坦化層が光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含有する場合には、光及び/又は熱により硬化させる工程が必要である。このような光及び/又は熱により硬化させる工程は、後述する機能層を転写する前でも良いが、機能層を転写後に光及び/又は熱により硬化させる方が、機能層の転写時の接着性や、機能層との密着性の点から好ましい。具体的には、平坦化層を光及び/又は熱により硬化させる工程については、後述の機能層の転写において詳述する。
【0058】
後述する機能層の転写の際の接着力の目安として、形成された平坦化層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに対する25℃での密着強度が5N/25mm以上、更に10N/25mm以上であることが好ましい。このような接着力を有する平坦化層上に反射防止層を含む機能層を重ねあわせることにより、当該機能層を平坦化層上に好適に転写することができる。
なお、上記密着強度とは、以下の180°剥離試験を行い測定した値である。PETフィルム(東洋紡績(株)製、A−4300 100μm)に対し、平坦化層を接着及び積層することにより得られる積層体について、これを幅25mmに切り、JIS Z0237−00の試験に基づき、速度300mm/minで180°で剥離させて測定した値のことである。180°剥離試験は、例えばテンシロン万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、商品名「RTF−2350」)を用いて、行うことができる。
【0059】
[機能層]
本発明の複合フィルタを構成する機能層は、転写により、基材(以下、支持基材とも称する)を含むことなく前記平坦化層上に設けられたものであり、且つ、少なくとも単層構造又は多層構造の反射防止層を含むものである。
また、本発明の複合フィルタを構成する機能層は、転写により、基材(支持基材)を含むことなく前記平坦化層上に設けられたものであり、且つ、反射防止層が防眩層のみからなるものである。
ここで基材とは、機能層そのものを構成しない、機能層の支持体としてのみ用いられる材である。
本発明の複合フィルタを構成する機能層は単層でも多層であっても良い。機能層は、反射防止層の他に、ハードコート層(防擦傷層)、後述するその他の光学機能層を含有することができる。多層の機能層としては、例えば反射防止層/ハードコート層等の積層体が挙げられる。
【0060】
(転写)
まず、本発明における転写について説明する。本発明において、転写とは、支持基材上に反射防止層を含む機能層(防眩層のみの場合も有る)が形成された転写体の機能層側を、少なくとも透明基材、金属パターン層、平坦化層の順に積層されてなる被転写体の平坦化層側に重ね合わせて、前記転写体のうち、機能層のみを平坦化層上に積層する方法である。本発明においては、このような転写により機能層が設けられているので、支持基材(例えば、PETフィルムなど)を含むことなく機能層を平坦化層上に設けることが可能であり、且つ、上記転写体の支持基材の表面性状の調整により、転写された機能層最表面を平滑にも適宜凹凸にもする(例えば、防眩性を生じさせる)ことができる。
【0061】
以下、転写の一例として、支持基材/機能層からなる転写体を用いて、機能層を平坦化層/金属パターン層/透明基材からなる被転写体に転写して、図1の機能層12/平坦化層15/金属パターン層14/透明基材11からなる複合フィルタ1を得る工程について説明する。
【0062】
まず、図5(A)のように、支持基材16上に機能層12を剥離可能に形成して、転写体4を得る。
転写体の支持基材としては、反射防止層を含む機能層を形成するために必要なシート状のフィルムを用いる。支持基材の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。無色な基材に限らず、着色した基材であっても良い。
【0063】
尚、機能層を剥離可能とするためには、支持基材上に離型層を設けることがあってもよい。離型層は、転写するときには支持基材上に残り、剥離を安定化するものであるが、同時に転写された機能層の表面形状や物理的特性である光沢を設定することができるものである。離型層の材料は、一般的には、支持基材と接着するとともに、離型性をよくするもので、電離放射線硬化型樹脂を含むアクリルウレタン樹脂、アミノアルキッド等よりなるワニスに、離型性を持たせるシリコン樹脂(シリコーン)、フッ素樹脂、ワックス、界面活性剤等を加えたものを、通常の工程で塗布して形成することができる。また、転写された機能層表面の光沢を調整する目的で、無機あるいは有機の微粒子をマット化剤として加えることもある。
【0064】
次に図5(B)のように、透明基材11を準備し、その上に金属パターン層14、更に平坦化層15を順に積層することにより電磁波シールドフィルタからなる被転写体5を得る。
【0065】
次に、図5(C)〜(E)のような転写工程を経て複合フィルタ3を得る。すなわち、上記転写体4の機能層12側と被転写体5の平坦化層15側とを重ね合わせ、図5(D)のような積層体を得て、更に図5(E)のように転写体4から支持基材16を剥離し、図5(F)のように複合フィルタ1を得る。
【0066】
本発明における転写は感圧転写で行われ、感圧転写とは転写体と被転写体を積層する際に、両シートの接着面の反対側の面から圧力をかけることにより一体化させる方法のことである。感圧転写を用いる場合は、上記平坦化層の材料として粘着剤(感圧性接着剤)を用いる必要がある。
【0067】
転写法の具体的な方法としては、特に限定されないが、例えば加圧ロール等の加圧部分を備えるラミネーターを用いて、両シートの接着面の反対側の面から加圧することにより重ね合わせ、更に支持基材を剥離して複合フィルタを得る方法が挙げられる。
ラミネーターは、ロール式、平板式等、電磁波シールドフィルタ及び粘着性光学フィルタに対して加圧することができるものであればかまわないが、ロールツーロール方式に対応すること及び連続生産が可能な点からロール式ラミネーターを用いることが好ましい。
重ね合わせ時の加圧は特に限定されないが、例えばロール式ラミネーターを用いる場合、線圧で1〜20kgf/cmが好ましい。積層時の加圧部分の温度も特に限定されないが、平坦化層の材料により適宜選択することが好ましい。また、熱による光学機能層の劣化防止、光熱費及び設備投資の節減、作業時の安全性確保等の観点から、低温であるほうが好ましく、25〜80℃程度が好ましい。
【0068】
上記転写において、転写体及び被転写体の形状は特に限定されない。例えば、被転写体の平坦化層が金属パターン層の一部を露出させて設けられたものである場合、図6のように接地用領域20を有する金属パターン層14のメッシュ状領域21のみに平坦化層15が積層され、更に、平坦化層15と同程度の面積を有する機能層12を位置合わせしながら転写する態様が挙げられる。
【0069】
また、好ましい転写の実施態様として、前記平坦化層が、前記金属パターン層の一部を露出させて設けられたものであり、且つ、機能層が、転写される際に、前記平坦化層と重ね合わせた後に破断することにより、実質的に平坦化層全面上のみに設けられる態様が挙げられる。
すなわち、図7のように、被転写体5において、金属パターン層が接地用領域20を有する場合であって、平坦化層15が金属パターン層の一部を露出させて、すなわち、メッシュ状領域21のみに設けられたものであり、転写体4の機能層12側と、被転写体5の平坦化層15側とを重ね合わせた後、転写体4から支持基材16を剥離する際に、機能層12が平坦化層15と積層する領域22(平坦化層形成領域22)と積層しない領域23との境界24で破断することにより、前記平坦化層15表面上には機能層12が転写され、前記平坦化層を有しない接地用領域20には機能層12が転写されない態様が、転写の態様として好ましい。
【0070】
平坦化層15の表面の密着力は、ポリエチレンテレフタレート(PET)に対する25℃での密着強度が5N/25mm以上、更に10N/25mm以上であることが好ましい。図7のような工程においては、平坦化層15が上記密着強度を有することにより、平坦化層15表面上にのみ、機能層12が接着されて支持基材16から剥離する。一方、平坦化層を有しない表面には反射防止層が接着されないため、支持基材16から剥離せず、平坦化層15の有無の境界(平坦化層形成領域の外端部)で機能層12が破断する。
【0071】
図7のような工程を有する場合には、平坦化層15の有無の境界24で破断することにより、平坦化層15表面上のみに機能層12を積層することができるので、平坦化層15表面上のみに積層するために機能層12を枚葉化する工程や枚葉化した機能層12を位置合わせした上で貼りつける工程が不要となるので、従来に比べて極めて生産効率が向上する。前記平坦化層を有しない露出された金属パターン層表面には機能層が転写されないため、当該平坦化層を有しない金属パターン層表面は接地用領域として使用することができる。
【0072】
この機能層を破断して転写する方法では、機能層の破断部分が必ずしも直線状にならない場合もあるが、通常、完成された複合フィルタをディスプレイ前面に装着した際に該ディスプレイの画像表示領域に対峙する領域全体よりも大きな範囲で平坦化層を積層していることから、平坦化層の有無の境界で破断した機能層の破断部分が当該表示領域にかかることは通常ない。
【0073】
また、上記転写により得られる複合フィルタ1は、図8に示されるように、転写後に平坦化層を光及び/又は熱により硬化させる工程を有していてもよい。或いは、転写工程中の転写体と被転写体を積層した積層体に対して光及び/又は熱により硬化させて、その後転写体の支持基材を剥離しても良い。このような積層体に対して光硬化を行う場合には、転写体の支持基材が照射光に対して透過性を有する基材を用いるようにする。
【0074】
本発明において、光硬化するために用いられる照射光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
例えば、平坦化層に紫外線硬化性樹脂を含有する場合、照射工程の紫外線の照度としては40mW/cm以上1200mW/cm以下が好ましく、特に400mW/cm以上600mW/cm以下であることがより好ましい。また照射工程の照射時間は、0.1〜20秒間、更に0.1〜5秒間であることがより好ましい。このような照射工程は、通常、機能層12の面側から行なうことが好ましい。更に機能層12の面側から照射するだけでなく、透明基材11の面側から合わせて照射しても良い。
【0075】
平坦化層に熱により架橋を行う熱硬化性樹脂を含有している場合には、用いられた熱硬化性樹脂に合わせて適宜加熱をする。
転写体は、後述するような各機能層の材料を、例えば溶剤に希釈し、スピンコーティング、ロールコーティングや印刷等により塗布し、乾燥し、必要に応じて熱や放射線(紫外線の場合は光重合開始剤を使用する)等により硬化させて、塗膜を得るウェットコーティング法、或いは、真空蒸着、スパッタリング、プラズマCVD、イオンプレーティング等による気相法により、支持基材上に所望の層状に設けることで得ることができる。
【0076】
本発明の複合フィルタは、上述のように機能層が転写により設けられるため、塗布により機能層を設ける場合に比べて、機能層側の最表面を容易に平坦化することが可能である。機能層側の最表面の算術平均粗さ(Ra)は0.01〜0.5(μm)であることが、機能層の表面の平坦性が向上すると、フラットパネル自体の品位が高まる点から好ましい。
ここで、本発明における算術平均粗さRa(μm)はJIS B0601に準拠し、評価長さL=2mmとしたとき、下記数1式より求められる値である。
【0077】
【数1】

【0078】
算術平均粗さ(Ra)は、例えば、東精エンジニアリング製、商品名「ハンディーサーフ」などの装置により測定することができる。
【0079】
次に、各機能層について説明する。
(反射防止層)
本発明における反射防止層の第一の態様は、光の干渉作用を利用して反射光量を減少させるタイプの反射防止層を含む。該反射防止層は、単層構造又は多層構造のどちらであっても良い。該反射防止層が単層構造である場合には、平坦化層や、任意に存在する場合があるハードコート層等の直下に存在する層よりも低い屈折率を有する低屈折率層のみからなる。本発明において、平坦化層は屈折率1.4以上1.7未満の範囲に調節され、その一方において、最表面の低屈折率層は屈折率1.49以下に調節される。しかし、平坦化層の上に単層構造の反射防止層(すなわち低屈折率層ただ一層のみ)を直接設ける場合には、低屈折率層の直下に存在することとなる平坦化層は、低屈折率層よりも屈折率が大きい層であることが原理的に必要とされる。それゆえ、本発明において、屈折率が1.4以上1.49以下の低屈折率層のみからなる単層構造の反射防止層を平坦化層の上に直接積層する場合には、平坦化層の屈折率は、屈折率1.4以上1.7未満の範囲であって、なお且つ、このような原理的な制約の条件を満たす数値に決定される。例えば、低屈折率層の屈折率を優先的に1.40と決定した場合には、平坦化層の屈折率は1.40とすることはできず、1.41以上の値、例えば屈折率1.55と決定する。
一方、該反射防止層が多層構造である場合には、屈折率の高い層と低い層とが交互に積層され、且つ、該反射防止層を構成する層のうち最も表面側(鑑賞者側)に、屈折率が1.49以下である低屈折率層が存在する層構成をとる。
低屈折率層は、機能層の最表面側に配置されていることが好ましい。しかし、機能層は、該低屈折率層のさらに表面側に、反射防止層を構成しない他の層(例えば、防汚層、ハードコート層、帯電防止層等)を含んでいても良い。低屈折率層よりも表面側に、さらに他の層が存在する場合であっても、当該他の層の屈折率が1.55以下であるならば、必要とされる反射防止作用が得られる。低屈折率層よりも表面側に他の層を設ける場合には、当該他の層の数は1層のみに限定することが望ましい。
【0080】
屈折率が1.49以下である低屈折率層を形成するための材料としては、例えばLiF(屈折率n=1.4)、MgF(屈折率n=1.4)、3NaF・AlF(屈折率n=1.4)、AlF(屈折率n=1.4)、NaAlF(屈折率n=1.33)、SiO(屈折率n=1.45)等の無機材料を微粒子化し、アクリル系樹脂やエポキシ系樹脂等に含有させた無機系低反射材料、フッ素系・シリコーン系の有機化合物、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、放射線硬化型樹脂等の有機低反射材料を挙げることができる。
【0081】
さらに、5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルとフッ素系の皮膜形成剤を混合した材料を使用することもできる。該5〜30nmのシリカ超微粒子を水もしくは有機溶剤に分散したゾルは、ケイ酸アルカリ塩中のアルカリ金属イオンをイオン交換等で脱アルカリする方法や、ケイ酸アルカリ塩を鉱酸で中和する方法等で知られた活性ケイ酸を縮合して得られる公知のシリカゾル、アルコキシシランを有機溶媒中で塩基性触媒の存在下に加水分解と縮合することにより得られる公知のシリカゾル、さらには上記の水性シリカゾル中の水を蒸留法等により有機溶剤に置換することにより得られる有機溶剤系のシリカゾル(オルガノシリカゾル)が用いられる。これらのシリカゾルは水系及び有機溶剤系のどちらでも使用することができる。有機溶剤系シリカゾルの製造に際し、完全に水を有機溶剤に置換する必要はない。前記シリカゾルはSiOとして0.5〜50重量%濃度の固形分を含有する。シリカゾル中のシリカ超微粒子の構造は球状、針状、板状等様々なものが使用可能である。また、皮膜形成剤としては、アルコキシシラン、金属アルコキシドや金属塩の加水分解物や、ポリシロキサンをフッ素変性したものなどを用いることができる。
屈折率が1.49以下である層の厚みは、0.05〜10μm、更に0.1〜3μmが好ましい。
【0082】
本発明における反射防止層において、更に高屈折率層を形成する場合は、屈折率を高くするために高屈折率のバインダ樹脂を使用するか、高い屈折率を有する超微粒子をバインダ樹脂に添加することによって行なうか、あるいはこれらを併用することによって行なう。高屈折率層の屈折率は1.55〜2.70の範囲にあることが好ましい。
【0083】
高屈折率層に用いる樹脂については、透明なものであれば任意の樹脂が使用可能であり、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、光(紫外線を含む)硬化型樹脂などを用いることができる。熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を用いることができ、これらの樹脂に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を加えることができる。
【0084】
高い屈折率を有する超微粒子としては、例えば、紫外線遮蔽の効果をも得ることができる、ZnO(屈折率n=1.9)、TiO(屈折率n=2.3〜2.7)、CeO(屈折率n=1.95)の微粒子、また、帯電防止効果が付与されて埃の付着を防止することもできる。
アンチモンがドープされたSnO(屈折率n=1.95)又はITO(屈折率n=1.95)の微粒子が挙げられる。その他の微粒子としては、Al(屈折率n=1.63)、La(屈折率n=1.95)、ZrO(屈折率n=2.05)、Y(屈折率n=1.87)等を挙げることができる。これらの微粒子は単独又は混合して使用され、有機溶剤又は水に分散したコロイド状になったものが分散性の点において良好であり、その粒径としては、1〜100nm、塗膜の透明性から好ましくは、5〜20nmであることが望ましい。
高屈折率層の厚みは、0.05〜10μm、更に1〜4μmが好ましい。
【0085】
また反射防止層中に、後述の近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素を1種以上含有させてもよい。その場合、800nm〜1100nmの波長域における光線透過率が20%以下、中でも15%以下、560〜630nmの波長域における光線透過率が30%以下、中でも25%以下であることが好ましい。さらに前述した反射防止層を形成する樹脂の水酸基価及び酸価が10以下であることが好ましい。これにより、上記樹脂に含まれる水酸基及び酸価により近赤外線吸収色素、及び/又は、ネオン光吸収色素が反応すること等を防ぐことができ、安定に近赤外線吸収能、及び/又は、ネオン光吸収機能を発揮することが可能なものとなる。また、反射防止層に紫外線遮蔽機能をもたらす点から、反射防止層中に紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。
【0086】
(ハードコート層)
本発明の複合フィルタは、平坦化層の表面に屈折率が1.5以上1.6以下のハードコート層を有し、更に、当該ハードコート層上に当該ハードコート層よりも屈折率の低い反射防止層を有することが、複合フィルタの厚みが薄く、透明性に優れ、更に観察者(表示面)側の面の鉛筆硬度が高い点から好ましい。なお、ハードコート層は、防擦傷機能を有するものである。
ハードコート層(防擦傷層)としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートプレポリマー、或いは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーを単独で或いはこれらの中から2種以上選択して組み合わせて配合した電離放射線硬化性樹脂を用いて形成することができる。なおここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する複合的表記である。
【0087】
[その他の光学機能層]
本発明の複合フィルタは、近赤外線吸収機能層、ネオン光吸収機能層、色調調整機能層、紫外線吸収機能層等の光学機能層を有することが好ましい。このような光学機能層は、上述の反射防止層やハードコート層と兼ねていても良いし、平坦化層上に転写により設けられる機能層に含まれていても良い。或いは、このような光学機能層は、図3に示されるように、前記透明基材の平坦化層を有する側とは反対側の面に設けられていてもよい。このような光学機能層は1層でも2層以上でもよく、各層が複数の異なる機能を兼ね備えていても良い。また、各光学機能層間に、それぞれ粘着剤層が設けられていても良い。
以下、各光学機能層について説明する。
【0088】
(近赤外線吸収機能層)
近赤外線吸収機能層は、基本的には、透明バインダ樹脂中に、近赤外線を吸収する近赤外線吸収色素を有するものである。
近赤外線吸収色素としては、複合フィルタの代表的な用途であるプラズマディスプレイパネルの前面に適用される場合、プラズマディスプレイパネルがキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長域を吸収するもの、該帯域の近赤外線の透過率が20%以下、更に15%以下であることが好ましい。同時に近赤外線吸収機能層は、可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長域で、十分な光線透過率を有することが望ましい。
【0089】
近赤外線吸収色素としては、具体的には、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類の有機系近赤外線吸収色素、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン等の無機系近赤外線吸収色素、を1種、又は2種以上を併用することができる。
また、酸化タングステン等の他に、複合タングステン酸化物(タングステン酸化物に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、I、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選抜される1種以上の元素を複合したもの)を用いることもできる。
【0090】
種類や添加量は、近赤外線吸収色素の吸収波長や吸収係数や、色調及びディスプレイ用前面板に要求される透過率などによって適宜選択すればよい。例えば、近赤外線吸収剤の添加量は、層中に0.1〜15重量%程度添加し、それらの近赤外線吸収剤を紫外線から保護するために、層中にベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤を含ませてもよく、紫外線吸収剤の添加量は、層中に0.1〜10重量%程度である。
【0091】
上記透明バインダ樹脂としては熱可塑性樹脂が好ましく、さらに好ましくは、極性の高い官能基を持たない合成樹脂や、また極性の高い官能基を持っている官能基数の少ない合成樹脂である。好ましい熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ウレタン系樹脂、又はポリエステル樹脂である。該熱可塑性樹脂は色素の溶解性や安定維持性、及び着色剤の機能耐久性の点で良好である。さらに樹脂の水酸基価、及び/又は、酸価が各々10以下でなければならない。これにより、上記樹脂に含まれる水酸基及び酸基により近赤外線吸収色素等が反応すること等を防ぐことができ、安定に近赤外線吸収機能等を発揮することが可能なものとすることができる。
【0092】
(ネオン光吸収機能層)
ネオン光吸収機能層は、光学機能層がプラズマディスプレイ用として用いられる際に、プラズマディスプレイパネルから放射されるネオン光、即ちネオン原子の発光スペクトルを吸収するべく設置される。ネオン光吸収機能層の光線透過率は波長560〜630nmにおいて30%以下、中でも25%以下になるように設計することが好ましい。ネオン光吸収機能層は、少なくとも570〜610nmの波長領域内に吸収極大を有する色素として従来から利用されてきた色素を近赤外線吸収機能層のところに挙げたようなバインダ樹脂に分散させて形成することができる。該色素の具体例としては、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはテトラアザポルフィリンなどのポルフィリン系等を挙げることができる。
【0093】
(色調調整機能層)
色調調整機能層は、パネルからの発光の色純度や色再現範囲、電源OFF時のディスプレイ色などの改善の為にディスプレイ用フィルタの色を調整するため設置される。可視領域である380〜570nm若しくは610〜780nmに最大吸収波長を有する公知の色素から、目的に応じて任意に色素を組み合わせて、近赤外線吸収機能層のところに挙げたようなバインダ樹脂に分散させて形成することができる。色調調整色素として用いることのできる公知の色素としては、特開2000−275432号公報、特開2001−188121号公報、特開2001−350013号公報、特開2002−131530号公報等に記載の色素が好適に使用できる。更にこのほかにも、黄色光、赤色光、青色光等の可視光を吸収するアントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の色素を使用することができる。
【0094】
(紫外線吸収機能層)
また、紫外線吸収機能層としては、例えば、紫外線吸収剤をバインダ樹脂に分散させて形成することができる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等の有機系化合物、微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム等からなる無機系化合物からなるものが挙げられる。当該バインダ樹脂としては、上記近赤外線吸収機能層のところに挙げたような樹脂を用いることができる。
【0095】
このような光学機能層が前記透明基材の平坦化層を有する側とは反対側の面に設けられる場合、光学機能層の製造方法は、特に限定されない。例えば、PETフィルム等の離型フィルム上に光学機能層用材料含有インクを例えばグラビアリバース法等により塗工(例えば10g/m)することにより、離型フィルム/光学機能層用材料/離型フィルムからなる積層シートを得た後、適宜、透明基材上に積層する。
【0096】
(2)第二の態様のディスプレイ用複合フィルタ
本発明の第二の態様のディスプレイ用複合フィルタは、前記第一の態様の反射防止層に代えて、反射防止層が防眩層のみからなるものである。なお、他の部分は第一の態様のディスプレイ用複合フィルタと同様である。
防眩層とは、磨りガラスのように、光を散乱もしくは拡散させて像をぼかして画像表面での光のギラツキを抑えて画像の認識性を向上させる層である。
防眩層は、樹脂バインダ中にシリカなどの無機フィラーや、樹脂粒子などの有機フィラーを添加した塗膜形成や、或いは賦形シートや賦形版等を用いた賦形加工により、層表面に外光を乱反射する微細凹凸を設けた層として形成することができる。樹脂バインダの樹脂としては、表面層として表面強度が望まれる関係上、硬化性アクリル樹脂や、下記ハードコート層同様に電離放射線硬化性樹脂等が好適に使用される。この場合、防眩層の屈折率は特に限定されない。
【0097】
(3)第三の態様のディスプレイ用複合フィルタ
本発明の第三の態様のディスプレイ用複合フィルタは、反射防止層を備えずに、平坦化層に防眩機能を付与することで反射防止機能を具備するものである。なお、他の部分は第一の態様のディスプレイ用複合フィルタと同様である。
平坦化層に防眩性機能を有する凹凸形状を付与する方法は、表面粗さを調整したフィルムの表面形状を平坦化層の表面に転写する(平坦化層を未硬化な状態でこのフィルムと貼り合わせ、その後UV照射や加熱や電子線照射などの手法で硬化させる)方法や、塗工液の溶剤揮発に伴い、塗膜樹脂の層分離により表面凹凸を付与する方法などがある。
押型として用いられる、表面粗さが調整されたフィルムとしては、厚み均一性が高く、割れにくく安価なPETなどの基材表面に凹凸形状を直接形成したものや、PETなどの基材上に凹凸形状を有する層を設けたものが挙げられる。
該フィルムの凹凸形状側の面の算術平均粗さ(Ra;単位μm)は、0.2≦Ra<1.0、望ましくは0.25〜0.50であり、更に望ましくは0.28〜0.48である。
転写する圧力は、未硬化な平坦層にフィルムをラミネートした後に、平坦化層を硬化させるので、大きな圧力を必要としない。気泡が入らないようラミネートすればそれでよい。
【0098】
以上、第一、第二及び第三の態様の各複合フィルタを説明したが、本発明の複合フィルタは、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0099】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。尚、実施例において行った評価方法は以下のとおりである。
(1)透明性
JIS K7105−1981に準拠し、ヘイズ測定法により行った。判定基準は以下のとおりとした。
ヘイズ値が3以下の場合:特に透明性が高い(◎)
ヘイズ値が15以下の場合:十分な透明性を有する(○)
ヘイズ値が15を超える場合:透明性が不十分である(×)
【0100】
(2)平坦性
算術平均粗さ(Ra)を複合フィルタの最表面の機能層の平坦性の指標とした。
本発明における算術平均粗さRa(μm)はJIS B0601に準拠し、評価長さL=2mmとしたときの値を、下記数2式より求めた。
【0101】
【数2】

【0102】
(実施例1)
1.電磁波シールドフィルタの作製
まず、片面がクロメート処理により黒化処理されている、銅箔(古川サーキットフォイール製、EXP−WS:商品名、厚み9μm)と、PETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A−4300」、厚み100μm)とを、ウレタン系接着剤(Tg20℃、平均分子量3万、酸価1、水酸基価9)にてロールツーロール方式でドライラミネーション加工し貼り合わせた後、上記銅箔上にレジストを塗布後、露光、現像、エッチング、レジスト除去をロールツーロール方式で行なうことにより開口部の縦・横の長さがそれぞれ300μm、線幅10μmの金属パターン層を形成することにより電磁磁波シールドフィルタを得た。なお、この際黒化処理面はプラズマディスプレイパネルが製造される場合、見る側(人間側)になるように設置するものである。
【0103】
2.転写体(反射防止層/支持基材)の作製
支持基材として、藤森工業(株)製、商品名「DG2.5」を準備した。当該支持基材の離型処理面に、AlF(屈折率n=1.4)を微粒子化し、アクリル系樹脂塗工液(下記参照)に含有させた無機系低反射材料をロールツーロール方式のダイコーターを用いて、塗工幅1000(mm)で連続塗工し、更に照度80W/cm(「Hバルブ」、フュージョン社製)の紫外線を4秒間照射して光硬化して、平均厚み3μmの反射防止層を機能層として設けた転写体を得た。なお、反射防止層の屈折率は1.48であった。
【0104】
アクリル系樹脂塗工液
ペンタエリスリトールトリアクリレート 100質量部
イルガキュア184(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)) 4質量部
プロピオン酸セルロース 1.25質量部
シリコーン(シリコン樹脂系レベリング剤) 0.1質量部
【0105】
3.転写工程
前述した電磁波シールドフィルタの黒化処理面側に、平坦化剤(荒川化学工業(株)社製、商品名「ビームセット 505A−6」;平坦化層形成時の屈折率は1.55)をロールツーロール方式のダイコーターを用いて、600mmの塗工幅(mm)で間欠塗工し、転写体を(25℃)のニップロール(押圧ロール)で貼り合わせて、平坦化剤が硬化する前に、続けて照度80W/cm(「Hバルブ」、フュージョン社製)の紫外線を4秒間照射して、電磁波シールドフィルタ上に平坦化層が形成された被転写体と転写体とが積層された積層体が、ロールツーロール(Roll to Roll)製法を行うことで、被転写体と転写体とを位置合わせすることなく得られた。
得られた積層体の被転写体から転写体をはがす際、転写体の反射防止層は平坦化層の有無の境界で破断され、被転写体の平坦化層表面上のみに反射防止層が積層されたPET基材/金属パターン層/平坦化層/反射防止層(AR型)の全体厚みが134μmの複合フィルタが得られた。なお、複合フィルタのヘイズ値は4%であり、反射防止層表面の算術平均粗さ(Ra)は0.15μmであった。
【0106】
(実施例2)
剥離性のあるPETフィルム(藤森工業(株)社製;商品名「DG2.5」)を基材として用い、防眩層用組成物(下記参照)を、そのPETフィルム上にグラビアダイレクト法を用いて塗布し、70℃で1分間加熱乾燥し、溶剤分を蒸発させた。その後に窒素パージ下(酸素濃度200ppm以下)で、紫外線を照射線量が14mJになるよう照射して塗膜を硬化させ、膜厚が4μmの防眩層を備える転写体を得た。透光性第一微粒子は、粒子径の小さいアクリルビーズであり、且つ、粒子の表面は親水性であるため、凝集部を形成させるために、疎水性のスチレンアクリルポリマー(数平均分子量:65,000)を添加した。
【0107】
防眩層用組成物とは、次の通りである。
紫外線硬化型樹脂;ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA;日本化薬(株)社製、屈折率1.51) 21.28質量部、
紫外線硬化型樹脂;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA;日本化薬(株)社製、屈折率1.51) 8.63質量部、
アクリル系ポリマー(三菱レイヨン製、数平均分子量75,000)
3.02質量部、
スチレン・アクリルポリマー(ザ・インクテック(株)社製、数平均分子量65,000) 0.16質量部
光硬化開始剤;イルガキュア184(チバガイギー(株)社製)
1.96質量部、
光硬化開始剤;イルガキュア907(チバガイギー社(株)製)
0.33質量部、
透光性第一微粒子;アクリルビーズ((株)日本触媒製、粒径3.5μm、屈折率1.53) 5.62質量部、
透光性第二微粒子;アクリルビーズ((株)日本触媒製、粒径3.5μm、屈折率1.52) 0.99質量部、
シリコン樹脂系レベリング剤10−28(ザ・インクテック(株)社製)
0.013質量部、
トルエン 46.40質量部、
シクロヘキサノン 11.60質量部。
以上の成分を十分混合して組成物として調製した。この組成物を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層用組成物を調製した。
【0108】
前述した防眩層を備える転写体と、実施例1で作製した電磁波シールドフィルタとを用いて、実施例1と同じ条件、すなわち平坦化剤が硬化する前に紫外線照射を開始する転写工程を行い、電磁波シールドフィルタ上に平坦化層が形成された被転写体と、防眩効果のあるアクリルビーズ含む防眩層を備える転写体とが積層された積層体が、ロールツーロール製法を行うことで、被転写体と転写体とを位置合わせすることなく得られた。
得られた積層体の被転写体から転写体をはがす際に、転写体の防眩層は平坦化層の有無の境界で破断され、平坦化層表面上のみに防眩層が積層された。得られた複合フィルタのPET基材/金属パターン層/平坦化層/反射防止層(防眩型;AG型)の全体厚みが139μmであった。なお、複合フィルタのヘイズ値は14%であり、反射防止層表面の算術平均粗さ(Ra)は0.35μmであった。
【0109】
(実施例3)
透明性の高いPETフィルム(東洋紡(株)社製A−4100、厚み50μm)を基材として用い、実施例2と同じ組成の防眩層用組成物を、そのPETフィルムの易接着処理面側にグラビアリバース法(斜線版、110L)を用いて塗布し、70℃で1分間加熱乾燥し、溶剤分を蒸発させた。その後に窒素パージ下(酸素濃度200ppm以下)で、紫外線を照射線量が14mJになるよう照射して塗膜を硬化させ、膜厚が4μmの凹凸層を備える転写体を得た。透光性第一微粒子は、粒子径の小さいアクリルビーズであり、且つ、粒子の表面は親水性であるため、凝集部を形成させるために、疎水性のスチレンアクリルポリマー(数平均分子量:65,000)を添加した。
【0110】
前述した凹凸層を備える転写体と、実施例1で作製した電磁波シールドフィルタとを用いて、実施例1と同じ条件で、すなわち平坦化剤が硬化する前に紫外線照射を開始する転写工程を行い、電磁波シールドフィルタ上に平坦化層が形成された被転写体と、その表面に凹凸を有する転写体とが積層された積層体が、ロールツーロール製法を行うことで、被転写体と転写体とを位置合わせすることなく得られた。
得られた積層体の被転写体から転写体を剥がす際に、支持基材であるPETフィルムと凹凸層とは剥離せず、転写体の凹凸層の表面形状が被転写体の平坦層に転写して、その表面に微細な凹凸が発現した複合フィルタが得られた。得られた複合フィルタのPET基材/金属パターン層/平坦化層(防眩型)の全体厚みが135μmとなった。本実施例では、転写体の再利用が可能であり、材料原価の低減を図ることができる。なお、複合フィルタのヘイズ値は6%であり、平坦化層表面の算術平均粗さ(Ra)は0.26μmであった。
【0111】
(比較例)
(防眩フィルムの形成)
透明性の高いPETフィルム(東洋紡(株)社製A−4300、厚み100μm)を基材として用い、実施例2と同じ組成の防眩層用組成物を、そのPETフィルムの易接着処理面側にグラビアリバース法(斜線版、110L)を用いて塗布し、70℃で1分間加熱乾燥し、溶剤分を蒸発させた。その後に窒素パージ下(酸素濃度200ppm以下)で、紫外線を照射線量が14mJになるよう照射して塗膜を硬化させ、防眩層の膜厚が4μmでPET基材/防眩層からなる防眩フィルムを得た。透光性第一微粒子は、粒子径の小さいアクリルビーズであり、且つ、粒子の表面は親水性であるため、凝集部を形成させるために、疎水性のスチレンアクリルポリマー(数平均分子量:65,000)を添加した。
【0112】
前述した電磁波シールドフィルタの黒化処理面側に、平坦化剤(荒川化学工業(株)社製、商品名「ビームセット 550B」)をロールツーロール方式のダイコーターを用いて、塗工幅600mmで間欠塗工し、フィルム(東洋紡(株)社製 A−4100)の非易接着層側を25℃のニップロールで貼り合わせて以下は実施例1と同じ条件で平坦化剤を硬化させた後に前記フィルムを剥離して、電磁波シールドフィルタを得た(フィルムにより平坦化剤から形成される平坦化層表面が平坦化される)。そして、この電磁波シールドフィルタを所定のPDPフィルターサイズに枚葉でカットした。
【0113】
先に得られた防弦フィルムと、ノンキャリア透明粘着フィルム(日東電工(株)社製 商品名「CS−9621」;層構成=軽剥離セパレーター/両面粘着フィルム本体(=粘着剤層)/重剥離セパレーター)をロールツーロール方式のラミネーターを用いて、線圧約10kg/cmのラミネート圧且つ常温でラミネートした。ラミネートの直前に「CS−9621」の軽剥離セパレーターを剥離し巻き取った。
これにより防弦フィルム/粘着剤層/重剥離セパレーターの積層物が得られた。この積層物を、電磁波シールドフィルタの平坦化層部分と同じか僅かに大きいサイズに枚葉でカットした。なお、ノンキャリア透明粘着フィルムには、層構成がセパレーター/粘着/セパレーターであり、セパレーターは、離型処理されたPETであり、厚みは順に38μm/25μm/38μmの物を用いた。
【0114】
枚葉化された電磁波シールドフィルタと前記積層物とを、枚葉貼合機(三共株式会社製「HAL−1458」)により、枚葉製法で位置合わせを行い貼り合わせた。この後、オートクレーブ処理により、貼り合わされた際に混入した気泡の除去を行った。得られた積層体である複合フィルタは、PET基材/金属パターン層/平坦化層/粘着剤層/PET基材/防眩層の層構成となり全体厚みが235μmとなった。なお、複合フィルタのヘイズ値は4%であり、防眩層表面の算術平均粗さ(Ra)は0.44μmであった。
【0115】
【表1】

【0116】
比較例で得られた複合フィルタの全体厚みは、本発明に係る転写を取り入れた実施例1乃至実施例3に比べ厚いものとなった。また、防弦フィルムを貼り合わせる際、電磁波シールドフィルタを枚葉カットするため、ロールツーロール製法ができず位置合わせが必要なため、生産性を向上させることが出来なかった。本発明に係る実施例1乃至実施例3では、複合フィルタの厚みを薄くすることができ、ロールツーロール製法が出来るため生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明に係る複合フィルタの一例を示す図である。
【図2】本発明に係る複合フィルタの一例を示す図である。
【図3】本発明に係る複合フィルタの一例を示す図である。
【図4】本発明に用いられる金属パターン層が透明基材上に設けられた一態様の平面図及び金属パターン層の模式的断面図である。
【図5】本発明の複合フィルタにおける転写の一例を示す図である。
【図6】本発明の複合フィルタにおける転写の一実施形態を示す図である。
【図7】本発明の複合フィルタにおける転写の一実施形態を示す図である。
【図8】本発明に係る複合フィルタにおいて、転写後に平坦化層を光及び/又は熱により硬化させる工程を示す図である。
【符号の説明】
【0118】
1〜3 ディスプレイ用複合フィルタ
4 転写体
5 被転写体
11 透明基材
12 機能層
14 金属パターン層
15 平坦化層
16 支持基材
17 光学機能層
18 ハードコート層
19 反射防止層
20 接地用領域
21 メッシュ状領域
22 機能層12が平坦化層15と積層する領域
23 機能層12が平坦化層15と積層しない領域
24 平坦化層15の有無の境界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に、金属パターン層と、当該金属パターン層の凹凸を平坦化するための平坦化層と、当該平坦化層上に反射防止層を含む機能層が設けられてなるディスプレイ用複合フィルタであって、
前記平坦化層の屈折率が1.4以上1.7未満であり、前記反射防止層は、直下に存在する層よりも低い屈折率を有する低屈折率層からなる単層構造であるか、又は、屈折率の高い層と低い層とが交互に積層され、且つ、該反射防止層を構成する層のうち最も表面側に、屈折率が1.49以下である低屈折率層が配置された多層構造であり、且つ、
前記機能層が、転写により、基材を含むことなく前記平坦化層上に設けられたものであることを特徴とする、ディスプレイ用複合フィルタ。
【請求項2】
透明基材の一方の面に、金属パターン層と、当該金属パターン層の凹凸を平坦化するための平坦化層と、当該平坦化層上に反射防止層を含む機能層が設けられてなるディスプレイ用複合フィルタであって、
前記平坦化層の屈折率が1.4以上1.7未満であり、前記反射防止層が防眩層のみからなり、
前記機能層が、転写により、基材を含むことなく前記平坦化層上に設けられたものであることを特徴とする、ディスプレイ用複合フィルタ。
【請求項3】
前記平坦化層が、前記金属パターン層の一部を露出させて設けられたものであり、且つ、前記機能層が、転写される際に、当該平坦化層と重ね合わせた後に破断することにより、実質的に当該平坦化層全面上のみに設けられたものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のディスプレイ用複合フィルタ。
【請求項4】
前記機能層が、屈折率が1.5〜1.6のハードコート層を含むことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載のディスプレイ用複合フィルタ。
【請求項5】
透明基材の一方の面に、金属パターン層と、当該金属パターン層の凹凸を平坦化するための平坦化層が設けられているディスプレイ用複合フィルタであって、
前記平坦化層の屈折率が1.4以上1.7未満であり、且つ当該平坦化層表面は防眩性機能を有する凹凸形状を備えていることを特徴とする、ディスプレイ用複合フィルタ。
【請求項6】
前記平坦化層上に屈折率が1.5〜1.6のハードコート層が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載のディスプレイ用複合フィルタ。
【請求項7】
前記平坦化層が、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のディスプレイ用複合フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−249880(P2008−249880A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89418(P2007−89418)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】