説明

ディスプレー装置用の光学フィルム

放射線硬化バインダー中に、層状粘土粒子を含有する層を含む光学フィルムが提供される。また、可撓性の透明な支持体上に当該分散体を塗布することを含む光学フィルムの形成方法、並びに当該フィルムを使用したLCD装置及び接触スクリーンディスプレーが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたグレア防止性を付与するためのLCD及びCRTパネルのような高鮮明度画像ディスプレー装置に使われる光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
LCD及びCRTは、テレビジョンセット、コンピューター端末機などのような種々の典型的ディスプレー装置に広く使われている。重要な問題は、増大する画像解像度の傾向に沿ったディスプレー装置の画質を改良することである。特に、携帯電話などに代表される通信システムの様々な携帯端末機を含むマルチメディアの到来に伴って、革新的なディスプレーシステムが、人と機械との間のインターフェースに極めて重要な役割を演ずることが期待されている。米国特許第5,914,073号明細書には、UV硬化性であるポリオールアクリレート樹脂で被覆された透明樹脂からなる接着塗布積層体が提案されている。米国特許第6,329,041号明細書には、反射防止塗膜で被覆された中間緩衝層をもつ三層の硬質塗膜が提案されている。米国特許第6,376,060号明細書には、ハードコートフィルム中に無機フィラーを含有させることが提案されている。
【0003】
LCDは、多くのタイプのディスプレーの使用に伴って、それが重量的に軽くて、コンパクトに作れることから、この携帯端末機の市場で大きな役割を果たしている。これらの携帯端末機は、屡、戸外で使用されることから、出来るだけ完全にグレア又は正反射を抑えることによって、明るい直射日光でも良好な可視性を確保することが重要である。これを確保するために、グレア防止フィルムが、外部光を拡散させ、正反射を抑える目的でディスプレー表面に備えられていることが好ましい。
【0004】
米国特許第5,998,013号明細書には、透明な基体フィルムの表面に、凝集した二酸化珪素のようなフィラーを含有する樹脂を塗布することによって形成されるグレア防止フィルムが開示されている。その他の方法では、基体表面を梨地化するか、あるいは粗面化することによって同様なことが行われている。例えば、基体表面は、サンドブラストやエンボス加工などによって直接粗面化されてよく、あるいは多孔質フィルムが基体表面に形成される方法を採用することによって粗面化されてもよい。
【0005】
米国特許第6,008,940号明細書には、粗粒及び細粒を含有し、1.4〜1.6の屈折率を有する樹脂を含むグレア防止層が記載されている。その細粒は、親水性であり、0.5%を超える含水量を有する。米国特許第6,217,176号明細書には、層の反射率をコントロールするため二種類の光透過性細粒を含有する樹脂を含むグレア防止フィルムが記載されている。米国特許第6,074,741号明細書には、エポキシ化合物と光カチオン重合開始剤及び二種の異なる母集団の樹脂ビーズを含有する紫外線硬化性樹脂から派生する粗面化された表面層を含むグレア防止材料が記載されている。米国特許第6,347,871号明細書には、上層の方が下層よりも粒度の小さい粒子を含有する二層の樹脂被覆層を含むグレア防止層が記載されている。米国特許第6,343,865号明細書には、低屈折率のフィルムを上面に積層することによって、結果的にコントラストと白色化を抑制したグレアの無いフィルムが記載されている。
【0006】
前記先行技術では、主として、対称球体粒子を使用することが教示されている。球体対称ポリマー粒子は、所望のグレア防止性を与えることができるが、その高度に湾曲した表面は、潜在的に、当該システムに有害となる可能性がある。摩耗すると、かかる球体粒子は、粒子/バインダー界面での接着が弱くなるため、その塗膜から離脱する傾向がある。これによって、その表面が粉立ち、顕微鏡的な毛孔が生じて、その結果、透過曇りが増大して、画像のコントラスト及び鮮明度を低下させてしまう。更に、グレア防止塗膜が、三酢酸セルロースのような可撓性基体上に塗布されるときは、かかる可撓性基体は、屡、巻き取られたロール形態で取り扱われるという事実に照らして、当該基体に対する接着性が、益々重要となる。
【0007】
当該技術分野では、グレア防止姓を与えるために、塗膜中に、凝集したシリカ粒子を用いることが周知である。これらの粒子は、コントロールされた曇りと光沢を与える一方で、それらが、かかる巻き取られた可撓性基体のロールにおいて摩耗による巻き斑を引き起こす一因ともなり得る。
【0008】
グレア防止スクリーンの分野での教示にも見拘わらず、上記した理由で、LCDにおける偏光子の最外層表面にはグレア防止フィルムが塗布されるので、例えば、太陽、蛍光灯などの光源からのいずれの外部光の正反射をも抑制するグレア防止性をもつ、強いディスプレースクリーンの開発を求める絶えざる要求がある。特に、所望の光沢及び曇りレベルの両者を示すグレア防止光学フィルムを有することが望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、放射線硬化バインダー中に層状粘土粒子を含有する層を含む光学フィルムが提供される。また、本発明によれば、有用な分散体、当該フィルムの製造方法、及び当該フィルムを組み込んだLCD又は接触スクリーンディスプレーが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所望の光沢及び曇りレベルの両特性を有する材料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、一般的には、前記に記載されている。
用語「低分子量」とは、10,000未満の重量平均分子量を意味する。典型的には、当該化合物は、5,000未満の重量平均分子量を有することとなる。本発明では、優れたグレア防止性、耐摩耗性、耐薬品性及び耐取り扱い性を与えるLCD又はCRTパネルのような高鮮明度画像のディスプレー装置に使用されるグレア防止層を含有する光学フィルム、及びその製造方法が提供される。本発明によれば、本発明のグレア防止層は、良好なフィルム形成性、優れたグレア防止性、低曇り性、良好な耐指紋性、耐摩耗性、強靭性、硬度、良好な耐薬品性及び耐候性のような好都合な諸特性が付与されるように、可撓性の透明支持体上に塗布された層状粘土粒子を含有するオリゴマー又はモノマーの化学放射線硬化性分散体から得られる。化学放射線の具体例には、紫外(UV)線及び電子ビーム線が含まれる。勿論、UVが好ましい。
【0012】
本発明者等は、放射線で硬化した光学フィルム中に層状粘土粒子を使用すると、同レベルの光沢での比較例よりも望ましい低い曇り値が得られることを見出した。第2の予期しない結果によると、本発明の多くの実施態様では、高い粒子装填量での粘土粒子がグレア防止層に用いられる際でも、同様な曇り及び光沢値が得られたことが示されている。このことは、粒子含有層の靭性を高めることが望まれているときに、その粒子の装填量を高めることが望ましいとされている場合に好都合となり得る。
【0013】
本発明のグレア防止層を形成させるのに有用なUV硬化性組成物は、二つの主要なタイプの硬化性薬品、フリーラジカル薬品とカチオン薬品を用いて硬化されてよい。アクリレートモノマー(反応性希釈剤)とオリゴマー(反応性樹脂及びラッカー)は、フリーラジカル系配合の主な成分であり、硬化した塗膜に殆どの物性を付与する。光重合開始剤は、紫外線エネルギーを吸収し、分解してフリーラジカルを生成させ、そしてアクリレート基のC=C二重結合を攻撃して、重合を開始させる。カチオン薬品には、その主要な成分として脂環式エポキシ樹脂とビニルエーテルモノマーが用いられる。光重合開始剤は、紫外線を吸収して、ルイス酸を生成させ、それがエポキシ環を攻撃して、重合を開始させる。UV硬化とは、紫外線硬化のことをいい、280〜420nm、好ましくは320〜410nmの波長のUV線を使用することが含まれる。
【0014】
本発明での有用な層に用いられるUV線硬化性樹脂及びラッカーの具体例は、例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、又はネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物のような(メタ)アクリレート官能基を有する多価アルコール及びその誘導体のような多官能性化合物のアクリレート及びメタクリレートオリゴマー(本明細書中で使用される用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタアクリレートを指す。)、及び低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、エポキシアクリレート、ポリブタジエン樹脂、及びポリチオール−ポリエン樹脂など及びそれらの混合物から誘導されるアクリレート及びポリメタクリレートオリゴマーのような、光重合性のモノマー及びオリゴマー、及び比較的大量の反応性希釈剤を含有するイオン化放射線硬化性樹脂から得られるものである。本発明で使用可能な反応性希釈剤には、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルトルエン、及びN−ビニルピロリドンのような一官能性モノマー、及び、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、又はネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのような多環能性モノマーが含まれる。
【0015】
とりわけ、本発明では、好都合に用いられる放射線硬化性ラッカーには、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが含まれる。これらは、ジイソシアネートをオリゴ(ポリ)エステル又はオリゴ(ポリ)エーテルポリオールと反応させて、イソシアネート末端ウレタンを得ることから誘導される。引き続いて、ヒドロキシ末端アクリレートを、その末端イソシアネート基と反応させる。このアクリル化によって、オリゴマーの末端が不飽和化される。ウレタンアクリレートの脂肪属性又は芳香族性は、ジイソシアネートの選定によって決定される。トルエンジイソシアネートのような芳香族ジイソシアネートからは、芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーが得られることとなる。脂肪族ウレタンアクリレートは、イソホロンジイソシアネート又はヘキシルメチルジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネートの選定から得られることとなる。イソシアネートの選択以外に、ポリオールの主鎖は、オリゴマーの最終性能を決定する極めて重要な役割を果たす。ポリオールは、一般に、エステル、エーテル、あるいはこれらの組み合わせとして分類される。このオリゴマーの主鎖は、2個以上のアクリレート又はメタクリレート単位によって停止され、それが、フリーラジカル開始重合のための反応部位として作用する。イソシアネート、ポリオール、及びアクリレート又はメタクリレート間での停止単位の選択によっては、ウレタンアクリレートオリゴマーの発現に相当な許容度が存在する。ウレタンアクリレートのような殆どのオリゴマーは、典型的に、分子量及び粘度が大きい。これらのオリゴマーは多官能性であり、複数の反応部位を有する。この増加した数の反応部位に起因して、その硬化速度は改善され、最終製品は、架橋されている。当該オリゴマーの官能価は、2から6まで変えることが可能である。
【0016】
なかでも、都合よく使用される放射線硬化性樹脂には、多価アルコールと、ペンタエリスリトールテトラアクリレートのようなペンタエリスリトールのアクリレート誘導体とイソホロンジイソシアネートから誘導されるペンタエリスリトールトリアクリレート官能脂肪族ウレタンとの混合物のようなそれらの誘導体とから誘導される、多官能性アクリル化合物が含まれる。本発明の実施に使用される市販されているウレタンアクリレートオリゴマーのいくつかの具体例には、Sartomer 社製(ペンシルバニア州、Exton )のオリゴマーが含まれる。本発明の実施に都合よく使用される樹脂の一例は、Sartomer 社製のCN 968である。
【0017】
アセトフェノン化合物、ベンゾフェノン化合物、マイケル(Michler)の ベンゾイルベンゾエート、α−アミルオキシムエステル、又はチオキサントン化合物のような光重合開始剤、及びn−ブチルアミン、トリエチルアミン、又はトリ−n−ブチルホスフィン、又はそれらの混合物のような光増感剤は、当該紫外線硬化性組成物に含まれている。本発明では、慣用的に使われている開始剤は、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1である。
【0018】
グレア防止性を付与する粒子は、前述したように、放射線硬化性でグレア防止性の層組成物中に分散されており、それは、層状粘度粒子である。更に、当該粒子は、典型的に、2〜1000m2/gの範囲にある比表面積値を示している。
【0019】
それらの不規則な構造のため、かかる粒子は、UV硬化マトリクスと機械的結合を形成することが可能となる。これにより、表面の摩耗時に、グレア防止層の表面から粒子が離脱及び粉立ちすることを防止し、その結果、表面曇りを増大させる。他方、球体粒子は、表面層に付着することが難しいため、取り扱い時に表面から離脱して、結果として、表面を毛孔化して、曇りが生じる。
【0020】
グレア防止性を付与する層状粘土粒子の具体例には、平均粒度2〜20μm、好適には2〜15μm、そして望ましくは4〜10μmを有する層状結晶物質が含まれる。それらは、2〜50重量%、好適には約2〜40重量%、典型的には2〜20重量%、そして望ましくは2〜10重量%の量で、層中に存在している。
【0021】
本発明に最も好適な層状物質には、非対称粒子における短軸方向に対する長軸方向の比であるアスペクト比で高アスペクト比をもつ、板状形態の物質が含まれる。本発明での使用に好適な層状物質には、天然の粘土、特に、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ボルコンスコアイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ソボクカイト、スティーブンサイト、スビンフォルダイト、ハロイサイト、マガデアイト、ケニヤアイト及びバーミキュライト、並びに層状二重水酸化物、即ちハイドロタルサイトのような天然のスメクタイト粘土が含まれる。最も好ましい層状物質には、これら物質が市販されているため、天然のモンモリロナイト、ヘクトライト及びハイドロタルサイトが含まれる。
【0022】
本発明に好適な層状物質には、葉状(層状)ケイ酸塩、例えば、モンモリロナイト、特にナトリウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト、及び/又はカルシウムモンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ボルコンスコアイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、ソボクカイト、スティーブンサイト、スビンフォルダイト、バーミキュライト、マガデアイト、ケニヤアイト、タルク、雲母、カオリナイト、及びそれらの混合物が含まれる。他の有用な層状物質には、イライト、混合層状イライト/スメクタイト鉱物、例えばレディカイト及びイライトと前記した層状物質との混合物が、含まれてよい。他の有用な、特にアニオン性マトリクスポリマーにとって有用な層状物質には、層状二重水酸化物粘土、即ち、Mg6AL3.4(OH)18.8(CO3)1.72Oのようなハイドロタルサイトが含まれる。このハイドロタルサイトは、正に荷電した層を有し、その中間層の空間でアニオンと交換可能である。好ましい層状物質は膨潤性であり、そのため、他の剤、通常、有機イオン又は分子が、層状物質の層間を広げ、つまり、層間挿入及び/又は展開して、その結果、無機相への所望の分散が可能となる。これらの膨潤性層状物質には、文献(例えば、H. van Olphen 著の「粘土コロイド化学入門」、John Willey & Sons 社発行)で定義されるような、2:1タイプの葉状(層状)ケイ酸塩が含まれる。50〜300ミリ当量/100gのイオン交換容量を有する典型的な葉状(層状)ケイ酸塩が、好ましい。一般に、小板粒子をグレア防止塗膜に混入する前に、当該小板粒子の凝集体を分離させて小結晶体(「タクトイド」(粘土の単位層)とも言う)となすように、選定される粘土物質を処理することが望ましい。また、この小板粒子を予備分散させ、又は分離しておくことは、バインダー/小板の界面をも改善する。前記目的を達成する処理であれば、いかなる処理が用いられてもよい。有用な処理の具体例には、水溶性又は非水溶性ポリマー、有機反応剤又はモノマー、シラン化合物、金属又は有機金属化合物、カチオン交換に機能する有機カチオン、及びそれらの組み合わせを用いての層間挿入が含まれる。
【0023】
ポリマー及びオリゴマーを用いての有効な前処理の具体例には、米国特許第5,552,469号、及び同第5,578,672号明細書に開示されている処理が含まれるが、これを、ここに引用したことにより本明細書に含める。小板粒子に層間挿入させるに有効なポリマーの具体例には、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリスチレン、ポリカプロラクトン、ある種の水分散性ポリエステル、及びポリアミドが含まれる。
【0024】
有機変性粘土を得るために有機試薬及びモノマーを用いる有効な前処理の具体例には、欧州特許第780,340号明細書に記載される処理が含まれるが、これを、ここに引用したことにより本明細書に含める。小板粒子に層間挿入させるに有効な有機試薬及びモノマーの具体例には、ドデシルピロリドン、カプロラクトン、カプロラクタム、エチレンカーボネート、エチレングリコール、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、ジメチルテレフタレートなど、又はそれらの混合物が含まれる。
【0025】
シラン化合物を用いる有効な前処理の具体例には、WO93/11190号パンフレットに開示される処理が含まれるが、これを、ここに引用したことにより本明細書に含める。有効なシラン化合物の具体例には、(3−グリシドオキシプロピル)トリメトキシシラン、2−メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピルヘプタメチルトリシロキサン、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリドなどが含まれる。
【0026】
有機カチオンを用いて層状粒子を変性させる多くの方法が知られているが、これらのいずれも、有機変性粘土を得るための本発明の処理に使用されてよい。本発明の一実施態様では、層状粒子物質を、最も好ましくは50〜80℃の温水中に浸漬し、有機カチオン塩又は有機カチオン塩の混合物を(そのまま、あるいは水又はアルコール中に溶解させて)撹拌しながら添加し、次いで、この有機カチオンが、粘土物質の層間間隙に存在する金属カチオンの大部分と交換するに十分な時間ブレンドする方法によって、層状粒子が有機カチオンで変性される。その後、有機で変性された層状粒子物質は、濾過、遠心分離、噴霧乾燥、及びそれらの組み合わせを含むがこれに限定されない当該分野で公知の方法によって単離される。当該層状粒子の間隙に存在する金属カチオンの殆どを有機カチオンと交換可能とするに足る十分な量の有機カチオンを使用することが望ましいので、少なくとも1当量の有機カチオン塩が用いられ、そして、約3当量までの有機カチオン塩が用いられてもよい。約1.1〜2当量の有機カチオン塩の使用が好ましく、約1.1〜1.5当量の使用がより好ましい。洗浄及び当該分野で公知の他の手段によって、殆どの金属カチオン塩及び殆どの過剰な有機カチオン塩が取り除かれることが望ましいが、必要ではない。有機粘土の粒度は、磨砕、微粉砕、ハンマーミル粉砕、ジェット粉砕、及びそれらの組み合わせを含むがそれに限定されない公知方法によって、粒度が小さくされる。その平均粒度は、直径100μm未満に下げられることが好ましく、より好ましくは、直径50μm未満、そして最も好ましくは、直径20μm未満である。本発明の処理に有用な有機カチオン塩は、以下のように表される。
【0027】
【化1】

【0028】
式中、Mは、それぞれ窒素又はリンを表す。X-は、ハロゲン、水酸化物、又はアセテートアニオン、好ましくはクロリド及びブロミドからなる群より選ばれるアニオンを表し、R1、R2、R3及びR4は、独立して、有機及びオリゴマー配位子から選ばれ、水素であってもよい。有用な有機配位子の具体例には、1〜22個の炭素原子を有する線状もしくは分枝アルキル基、ベンジル及び当該構造のアルキル部分に1〜22個の炭素原子の直鎖もしくは分枝を有する縮合環部位を含む置換ベンジル部分であるアラルキル基、フェニル及び縮合環芳香族置換基を含む置換フェニルのようなアリール基、6個以下の炭素原子を有するβ、γ不飽和基、及び2〜6個の炭素原子を有するアルキレンオキシド基が含まれるが、これに限定されない。有用なオリゴマー配位子の具体例には、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリスチレン、ポリアクリレート、及びポリカプロラクトンが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
有用な有機カチオンの具体例には、ドデシルアンモニウム、オクタデシルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)オクタデシルメチルアンモニウム、オクタデシルベンジルジメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、又はそれらの混合物のようなアルキルアンモニウムイオン、及びテトラブチルホスホニウム、トリオクチルオクタデシルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、オクタデシルトリフェニルホスホニウム、又はそれらの混合物のようなアルキルホスホニウムイオンが含まれるが、それに限定されない。好適なポリアルコキシル化アンモニウム化合物の実例には、Aczo Chemie America 社製の、商品名Ethoquad又はEthomeenで市販されているもの、即ち、オクタデシルメチルビス(ポリオキシエチレン[15])アンモニウムクロリドであるEthoquad 18/25及びオクタデシルビス(ポリオキシエチレン[15])アミンであるEtomeen 18/25が含まれ、ここで、カッコ内の数は、エチレンオキシド単位の全数である。最も好ましい有機カチオンは、オクタデシルメチルビス(ポリオキシエチレン[15])アンモニウムクロリドである。
【0030】
本発明のグレア防止層を塗布するために適用できる溶剤の具体例には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン及びキシレン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルのようなエステル及びそれらの混合物が含まれる。溶剤が適切に選択されると、透明なプラスティック基体フィルムとその塗膜樹脂との間の接着が、その透明なプラスティック基体フィルムからの可塑剤及び他の添加剤の移行を最小にしつつ、改良される。TACのような支持体に係る好適な溶剤は、トルエン及び酢酸プロピルのような芳香族炭化水素及びエステル溶剤である。
【0031】
又、塗布組成物には、有機溶剤が含まれ、好ましくは、有機溶剤の濃度は、全塗布組成物の1〜99重量%である。
【0032】
これらの層状粘土粒子を含有する紫外線重合性モノマー及びオリゴマーは、透明な可撓性支持体に塗布され、続いて、紫外線に曝されて、光学的に透明な架橋された耐摩耗性層が形成される。好ましいUV硬化の吸光エネルギーは、30〜1000mJ/cm2である。
【0033】
グレア防止層の厚さは、一般に、約0.5〜50μmであり、好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜10μmである。
【0034】
本発明によるグレア防止層は、耐引掻き傷性、耐摩耗性及び耐粘着性を与えるのに必要な透明性及び靭性を除いて、優れた耐水透過性、耐指紋性、耐候性及び耐黄変性を含む優れた物性のため、特に、好都合である。
【0035】
グレア防止層は、無色であることが、好ましい。しかし、この層は、それが被膜によるディスプレーの形成又は目視に悪影響がない限り、カラー補正の目的、又は特別な効果を狙って、ある種の色を有していてもよいと、特に考えている。よって、当該ポリマー中には、色を与える色素が含まれていてもよい。更に、当該ポリマー中には、当該層に望ましい特性を与える添加剤が含まれていてもよい。当該塗布組成物には、その特定層の機能によって、界面活性剤、乳化剤、塗工助剤、滑剤、艶消粒子、レオロジー変性剤、架橋剤、カブリ防止剤、導電性及び非導電性の金属酸化物粒子のような無機フィラー、顔料、磁性粒子、殺生剤などを含む他の付加的な化合物が添加されてもよい。
【0036】
本発明のグレア防止層は、浸漬塗布、ロッド塗布、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布及びリバースロール塗布、スロット塗布、押出塗布、スライド塗布、カーテン塗布などのような多くの周知な手段のいずれによって塗布されてもよい。塗布後に、当該層は、一般に、対流加熱のような公知の手段で加速されてもよい単純蒸発によって乾燥される。公知の塗布及び乾燥方法は、Research Disclosure、第308119号、1989年発行、1007〜1008頁に、更に詳細に記載されている。
【0037】
また、当該分野で周知な艶消粒子は、本発明の塗布組成物に使用されてよく、かかる艶消剤は、Research Disclosure、第308119号、1989年発行、1008〜1009頁に記載されている。ポリマー艶消粒子ガ用いられるときには、当該ポリマーには、当該塗布層に対する艶消粒子の改善された付着を促進させるために、分子間架橋により、あるいは架橋剤との反応によってバインダーポリマーと共有結合を形成できる反応性官能基が含まれていてもよい。
【0038】
本発明により光学フィルムの滑り摩擦を低減させ、塗膜の耐引掻き傷性を改善させるために、当該UV硬化ポリマーには、フルオロ化又はシロキサン系成分が含まれてよく、また、当該塗布組成物には、滑剤又は滑剤の組み合わせが含まれてもよい。典型的な滑剤には、例えば、(1)カルナバ蝋、天然及び合成蝋、石油蝋、鉱物蝋などのような液体パラフィン及びパラフィン又はワックス様物質、(2)米国特許第2,454,043号、同第2,732,305号、同第2,976,148号、同第3,206,311号、同第3,933,516号、同第2,588,765号、同第3,121,060号、同第3,502,473号、同第3,042,222号、及び同第4,427,964号明細書;及び独国特許第1,284,295号、及び同第1,284,294号明細書に記載されるような、高級脂肪酸及びその誘導体、高級アルコール及びその誘導体、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸の多価アルコールエステルなど、(3)ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(トリフルオロクロロエチレン)、ポリ(ビニリデンフロリド)、ポリ(トリフルオロクロロエチレン−co−塩化ビニル)、ペルフルオロアルキル側鎖基を含有するポリ(メタ)アクリレート又はポリ(メタ)アクリルアミドなどを含むペルフルオロ−又はフルオロ−又はフルオロクロロ−含有物質が含まれる。しかしながら、UV硬化グレア防止層の耐久力のある滑性のためには、添加剤31、メタクリロキシ−官能シリコーンポリエーテルコポリマー(Dow Corning 社製)のような重合性滑剤が好ましい。
【0039】
本発明の諸物質を何事もなく搬送させるためには、製造中のウェブ搬送によって引き起こされる静電気を減殺させることが望ましい。本発明のグレア防止層は、それがローラーや駆動ニップのような搬送設備上で動くに連れてウェブに蓄積される静電気の放電から荷電されるので、塵や汚れの吸引を避けるため静電気を減殺させることが必要である。本発明の透明なポリマー支持体材料は、それらが搬送時に機械要素と触れるに連れて、静電気を著しく蓄積する傾向を有する。本発明のウェブ材料に蓄積される荷電を減殺させるために、帯電防止材料を使用することが望ましい。
【0040】
帯電防止材料が、本発明のウェブ材料上に塗布されてよく、また、当該帯電防止材料には、印画紙の搬送時に静電気を減らすため透明のウェブ材料上に塗布できる当該分野で公知な材料のいずれが含まれてもよい。帯電防止塗膜の具体例には、導電性の塩及びコロイド状シリカが含まれる。また、本発明の支持体材料の望ましい帯電防止特性は、当該ポリマー層の一体部分である帯電防止剤によって達成されてよい。電気伝導度を改善するため当該ポリマーの表面に移行する帯電防止剤の混入には、脂肪族の第4アンモニウム化合物、脂肪族アミン、及びリン酸エステルが含まれる。他のタイプの帯電防止剤は、ポリエチレングリコールのような吸湿性化合物、及びウェブ材料の摩擦係数を低下させる疎水性の滑剤である。帯電防止塗膜は、支持体のいずれの側に含まれてもよい。50%RHでの帯電防止コートの表面抵抗率は、1013Ω/平方未満である。また、更に、付加的な導電層が、支持体のグレア防止層と同じ側に、あるいは支持体の両側に設けられてもよい。
【0041】
本発明の支持体材料には、種々の透明なポリマーフィルム、例えば、三酢酸セルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、二酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、芳香族ポリアミド、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、塩化ビニルから誘導されたポリマー(例えば、塩化ポリビニル及び塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー)、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリノルボルネン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、(メタ)アクリロニトリル、ガラスなどから得られるフィルムが含まれてよい。当該フィルムは、厚さ1〜50ミル又はその近辺で変わってもよい。
【0042】
これら透明支持体の光透過率はできるだけ高いことが望ましいが、BYK Gardner Haze−Gard Plus装置を用いて、JIS K7105 & ASTM D−1003に従って測定した光透過率は、少なくとも80%、又は好ましくは少なくとも90%、又は最も好ましくは少なくとも93%であることが必要である。透明基体が、小さくて軽量な液晶表示装置に取り付けられるグレア防止材料用に用いられるときは、その透明基体は、プラスチックフィルムであることが好ましい。当該透明基体の厚さは、全体の重量を減らすという観点から、できるだけ薄いことが望ましい条件ではあるが、その厚さは、生産性及びグレア防止材料の他の要因を考慮すると、1〜50ミルの範囲にあることが必要である。
【0043】
透明支持体材料のうち、TAC、ポリカーボネート及びポリエステルが、その全体の耐候性及び機械的強度のため、好ましい。更に、TACは、それが十分に低い複屈折を有して、相互に非グレアフィルムと偏光装置とを積層させることを可能にし、その上、グレア防止層に用いて優れた表示画質のディスプレー装置が提供できるので、液晶表示装置用に、特に好ましい。
【0044】
本発明に使用可能なTACフィルムは、当該分野で公知である。三酢酸セルロースのアセチル価は、好ましくは35%〜70%の範囲であるが、特に好ましくは55%〜65%の範囲である。酢酸セルロースの重量平均分子量は、好ましくは70,000〜200,000の範囲であり、特に好ましくは80,000〜190,000の範囲である。酢酸セルロースの分散度(重量平均分子量を数平均分子量で割った値)は、2〜7の範囲、特に、2.5〜4の範囲にある。酢酸セルロースは、ウッドパルプ又はコットンリンターのいずれかから誘導されるセルロース出発材料から得られる。酢酸セルロースは、アセチル価が所望の範囲にある限り、プロピオン酸又は酪酸のような脂肪酸を用いてエステル化されてもよい。
【0045】
酢酸セルロースフィルムには、一般に、可塑剤が含まれる。当該可塑剤の具体例には、トリフェニルホスフェート、ビフェニルイルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びトリブチルホスフェートのようなリン酸エステル、及びジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、及びジオクチルフタレートのようなフタル酸エステルが含まれる。グリコール酸エステルの好ましい具体例は、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、及びメチルフタリルエチルグリコレートである。上記した二種以上の可塑剤が、組み合わされてもよい。当該可塑剤は、フィルム中に、20重量%以下の量で、特に、5重量%〜15重量%の量で含まれることが好ましい。また、三酢酸セルロース以外のポリマーから作製されるフィルムも、適宜、上記可塑剤が含まれてよい。
【0046】
本発明のTACには、表面滑性を与えるために無機又は有機化合物の粒子が含まれてよい。無機化合物の具体例には、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、粘土、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、ケイ酸カルシウム水和物、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、及びリン酸カルシウムが含まれる。二酸化ケイ素、二酸化チタン、及び酸化ジルコニウムが好ましく、特に、二酸化ケイ素が好ましい。有機化合物(ポリマー)の具体例には、シリコーン樹脂、フルオロ樹脂及びアクリル樹脂が含まれる。アクリル樹脂が好ましい。
【0047】
当該TACフィルムは、溶剤流延法を用いて作製することが好ましい。より詳細には、その溶剤流延法には、支持体上に溶剤供給装置(ダイ)のスリットから供給されるポリマー溶液を流延し、その流延層を乾燥してフィルムに形成する工程が含まれる。大規模な生産では、当該方法は、例えば、連続可動バンド搬送機(例えば、無端ベルト)又は連続回転ドラム上にポリマー溶液(例えば、三酢酸セルロースのドープ)を流延し、次いで流延層の溶剤を蒸発させる工程によって行ってもよい。
【0048】
いかなる支持体も、その支持体上に形成されるフィルムがそこから剥離可能である限り、当該溶剤流延法に使用されてよい。金属及びガラス板以外の支持体(例えば、プラスチックフィルム)は、その支持体が前記特性を有する限り、使用することが可能である。いかなるダイも、それが均一な速度で溶液を供給することができる限り、使用されてよい。更に、当該溶液をダイに供給する方法として、当該溶液を、ポンプを用いて均一な速度で供給する方法が採用されてもよい。小規模生産では、適当な量で当該溶液を保持できるダイが、使用されてよい。
【0049】
溶剤流延法に使用されるポリマーは、溶剤に溶解できることが必要である。更に、当該ポリマーから形成されるフィルムは、一般に、光学製品の用途の場合には、高透明度で、かつ光学異方性を殆ど有しないことが要求される。更に又、当該ポリマーは、吸収剤との相溶性を有することが好ましい。溶剤流延法に使用されるポリマーとしては、三酢酸セルロースが好ましい。しかしながら、他のポリマーも、それが前記条件を満足する限り、使用することができる。
【0050】
当該ポリマーとして三酢酸セルロースが使用される場合には、ジクロロメタンとメタノールとの混合溶剤が、一般に用いられる。イソプロピルアルコール及びn−ブチルアルコールのような他の溶剤も、三酢酸セルロースが沈殿しない限り(例えば、ドープの調製手順時又はドープへの粒子の添加時に)、使用することができる。当該ドープにおける三酢酸セルロースと溶剤の比率は、重量で10:90〜30:70(三酢酸セルロース:溶剤)であることが好ましい。
【0051】
本発明に使用できるポリカーボネート樹脂は、その化学的及び物理的特性の点で、芳香族カーボネートであることが好ましく、特に、ビスフェノールAタイプのポリカーボネートが好ましい。それらのうち、ベンゼン環、シクロヘキサン環又は脂肪族炭化水素基がビスフェノールAの部分に導入されているビスフェノールAタイプの誘導体が、より好ましい。これらの基の少なくとも1個が中央の炭素原子に対して対称的に導入されている誘導体を製造使用することによって得られるカーボネートが、特に好ましい。例えば、ビスフェノールAの中央の炭素原子に結合している2個のメチル基が、中央の炭素原子に対して対照的にメチル基又はフェニル基のような置換基によって置換されているビスフェノールAのそれぞれのベンゼン環のフェニル基又は水素原子によって置換されているようなカーボネートを作製使用することによって得られるポリカーボネートが、好ましく使用される。具体的には、4,4´−ジヒドロキシ−ジフェニルアルカン又はそのハロゲン置換誘導体、例えば、4,4´−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエタン又は4,4´−ジヒドロキシ−ジフェニルブタンからホスゲン法あるいはエステル交換法を経て得られるものである。
【0052】
当該ポリカーボネート樹脂は、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂又は酢酸セルロース系樹脂のような他の透明樹脂との混合形態で用いられてもよい。酢酸セルロース系フィルムの少なくとも一方側は、ポリカーボネート樹脂で積層されていてもよい。本発明に使用できるポリカーボネート系樹脂フィルムの製造法は、特に限定されない。押出法、溶剤流延法及びカレンダー法のいずれによって作製されたフィルムも、使用されてよい。一軸延伸されたフィルム又は二軸延伸されたフィルムのいずれが、使用されてもよい。溶剤流延フィルムは、表面の細かさ及び光学等方性に優れるとの観点で、好ましい。
【0053】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂フィルムは、110℃以上(好ましくは、120℃以上)のガラス転移温度、及び23℃の水中に24時間浸漬した後に含水量を測定したときに、0.3%以下(好ましくは、0.2%以下)の吸水量を有する。
【0054】
その他の好ましい材料は、種々な塗布法によって非グレア層を塗布する場合における耐熱性、耐溶剤性、機械加工性、機械的強度などの観点から、透明支持体材料に係るPETである。特に好ましい実施態様では、本発明のグレア防止塗膜は、前記した透明ポリマーフィルムの少なくとも一方側に塗布される。かかる実施態様でのグレア防止フィルムは、偏光要素の保護フィルムとしても好都合に使用されるが、当該偏光要素には、偏光板の片側又は両側に供えられた偏光板及び保護フィルムが含まれている。
【0055】
本発明の使用態様は、LCDディスプレーのようなディスプレーにおける本発明フィルムの使用や、接触スクリーンディプレーにわたる。偏光要素には、本発明のグレア防止フィルムが容易に使用でき、また、そのグレア防止の特徴が接触スクリーンディスプレーに重要であることも、明らかである。
【0056】
本発明の更なる態様には、130未満の光沢値、少なくとも90%の透過率、及び50未満の透過曇り値が要求される高鮮明度の用途を含む、種々な用途に有用となるように、透過曇り、光沢及び高度な透明性に適切なバランスを有するグレア防止フィルムが含まれる。
【実施例】
【0057】
以下の実施例では、本発明による光学フィルムの製造について説明する。
【0058】
材料
UV放射線硬化性ウレタンアクリレートオリゴマー、CN968は、Sartmer 社から入手した。開始剤、Irgacure907は、Ciba-Geigy 社から入手した。硬化ランプは、Fusion UV Systems 社製のD電球であった。ポリアミド粒子、Orgasol 3501 EX NAT 1(P1、平均粒度10μm)は、ATOFINA Chemicals 社から入手した。層状粘土粒子、Claytone HT(P2、平均粒度4μm)は、Southern Clay Products 社から入手した。全ての塗膜は、3.2ミル厚のTACであった。
【0059】
曇り度及び光沢度の測定
曇り度は、ASTM D−1003及びJIS K−7105法に準じて、BYK Gardner Haze−Gard Plus装置を用いて測定した。光沢度は、ASTM D523、ASTM D2457、ISO 2813及びJIS Z 8741法に準じて、BYK Gardner micro Tri光沢計を用いて(60度角で)測定した。後記の表における曇り度及び光沢度のデータは、各サンプルに関する複数読出しからの平均値を表す。
【0060】
比較例1〜5及び実施例6〜9(グレア防止塗膜
比較例1のグレア防止溶液を、10gのn−酢酸プロピル中に10gのCN−968を溶解させて調製した。この溶液に、0.2gのOrgasol 3501 EX D NAT1ナイロンビーズを添加し、十分に混合して、分散体を作製した。最後に、0.2gのIrgacure 907をこの分散体中に溶解させた。当該溶液を、TAC上に塗布、乾燥し、0.4J/cm2で硬化させて、公称乾燥付着量10.8g/cm2(1000mg/ft2)のグレア防止塗膜を得た。残りの比較例は、以下の表1に示す適当な配合に変更することを除いて、同様に調製した。
【0061】
本発明実施例6のグレア防止溶液を、10gのn−酢酸プロピル中に24gのUV硬化性オリゴマーCN−968を溶解させて調製した。この溶液に、1.2gの粘土粒子、7.3gのトルエン及び7.3gのメタノールを添加することによって、分散体を作製した。最後に、0.5gのIrgacure 907を添加して、十分に混合した。当該溶液を、TAC上に塗布、乾燥し、0.4J/cm2で硬化させて、公称乾燥付着量10.8g/cm2(1000mg/ft2)のグレア防止塗膜を得た。
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示されるように、層状粘土粒子は、比較光沢値での曇り値を低下させるという点で、比較のナイロン粒子に優る利点を有する。比較例1と実施例6、及び比較例2と実施例7を比較すると、この層状粘土粒子は、同じ曇り度の不利益無しに、グレアを減少させるという良好な働きをしていることが、明らかである。
【0064】
本発明について、本発明の好ましい実施態様を特に参照して、詳細に述べてきたが、その変更及び修正も、本発明の技術的範囲に入るということが理解されよう。本明細書中に言及した特許及び他の文献の全ての内容は、これを参照したことにより本明細書中に含まれることとなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化バインダー中に層状粘土粒子を含有する層を含んでなる光学フィルム。
【請求項2】
前記放射線硬化バインダーが多価アルコールから誘導される多官能性のアクリル化合物を含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記放射線硬化バインダーが、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートから選ばれる反復基を含む、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記放射線硬化バインダーがペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートから選ばれる反復基を含む、請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記放射線硬化バインダーが低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂から誘導されるアクリレート及びメタクリレートのオリゴマーを含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記放射線硬化バインダーがウレタンアクリレート化合物を含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記放射線硬化バインダーがイソホロンジイソシアネートから誘導される脂肪族ウレタンアクリレートを含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記放射線硬化バインダーが脂肪族ポリエステルポリオールから誘導されるポリウレタンアクリレートを含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記粒子が層状有機変性粘土粒子を含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記粒子が1〜10μmの平均粒度を有する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記粒子が層の少なくとも2重量%の量で存在する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項12】
前記粒子が層の50重量%未満の量で存在する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記粘土の量が100未満の光沢度を与えるのに十分な量である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項14】
前記粘土の量が80未満の光沢度を与えるのに十分な量である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項15】
前記粘土の量が60未満の光沢度を与えるのに十分な量である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項16】
前記粘土の量が30未満の曇り度を与えるのに十分な量である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項17】
前記粘土の量が20未満の曇り度を与えるのに十分な量である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項18】
前記粘土の量が15未満の曇り度を与えるのに十分な量である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項19】
前記粘土の量が20未満の曇り度を与えるのに十分な量である、請求項14に記載の光学フィルム。
【請求項20】
シリコーンアクリレート滑剤を更に含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項21】
前記シリコーンアクリレート滑剤がメタクリロキシ官能性のシリコーンポリエーテルコポリマーである、請求項13に記載の光学フィルム。
【請求項22】
前記フィルムが透明ポリマー支持体上に付着されている、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項23】
前記支持体が、三酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、二酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、芳香族ポリアミド、ポリオレフィン、塩化ビニルから誘導されるポリマー、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリノルボルネン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、及び(メタ)アクリロニトリルからなる群より選ばれる、請求項22に記載の光学フィルム。
【請求項24】
前記支持体が、三酢酸セルロースである、請求項22に記載の光学フィルム。
【請求項25】
全光透過率が90%を超える、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項26】
ペンタエリスリトール官能性の脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート誘導体の混合物から誘導される放射線硬化バインダーを含有する層を含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項27】
前記混合物がペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート官能性の脂肪族ウレタンを含む、請求項26に記載の光学フィルム。
【請求項28】
イソホロンジイソシアネートから誘導される放射線硬化バインダーを含有する層を含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項29】
放射線硬化性ウレタンアクリレートオリゴマー、層状粘土粒子、放射線感光性硬化剤、及び有機溶剤を含む塗布分散体。
【請求項30】
前記粘土が有機で変性されている、請求項29に記載の塗布分散体。
【請求項31】
前記有機溶剤がエステル溶剤及び芳香族炭化水素を含む、請求項29に記載の塗布分散体。
【請求項32】
前記放射線感光性硬化剤がUV感光性硬化開始剤を含む、請求項29に記載の塗布分散体。
【請求項33】
可撓性の透明なポリマー支持体を準備すること、当該支持体に、有機溶剤中に多官能性アクリル化合物、層状粘土粒子を含む放射線硬化性バインダー塗膜を塗布すること、そして当該塗膜を放射線硬化させて層を形成することを含んでなる、光学フィルムの形成方法。
【請求項34】
前記塗膜がシリコーンアクリレートを更に含む、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項35】
前記放射線硬化性バインダーが、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートから選ばれる反復基を含む、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項36】
前記放射線硬化性バインダーがペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートから選ばれる反復基を含む、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項37】
前記放射線硬化性バインダーが低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂から誘導されるアクリレート及びメタクリレートのオリゴマーを含む、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項38】
前記放射線硬化性バインダーがウレタンアクリレート含有化合物を含む、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項39】
前記放射線硬化性バインダーがイソホロンジイソシアネートから誘導される脂肪族ウレタンアクリレートを含む、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項40】
前記放射線硬化性バインダーが脂肪族ポリエステルポリオールから誘導されるポリウレタンアクリレートを含む、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項41】
前記粒子が有機で変性された粘土粒子を含む、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項42】
前記粒子が2〜10μmの平均粒度を有する、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項43】
前記粒子が層の少なくとも2重量%の乾燥量で存在している、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項44】
前記粒子が層の50重量%未満の乾燥量で存在している、請求項33に記載の光学フィルムの形成方法。
【請求項45】
請求項1に記載の光学フィルムを含むLCD装置。
【請求項46】
請求項27に記載の光学フィルムを含むLCD装置。
【請求項47】
請求項1に記載の光学フィルムを含む接触スクリーンディスプレー。
【請求項48】
請求項27に記載の光学フィルムを含む接触スクリーンディスプレー。

【公表番号】特表2007−512547(P2007−512547A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536660(P2006−536660)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2004/033415
【国際公開番号】WO2005/043203
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】