ディスペンサ陰極
【課題】時間的にも空間的にも均一な電子ビームを供給する電子源を提供する。さらに、射出面積の小さい電子源を提供する。
【解決手段】射出面4と、加熱されたときに仕事関数の低い粒子を放出する材料のためのリザーバ2と、このリザーバ2から前記射出面4への仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするための少なくとも1つの通路7とを有するディスペンサ陰極であって、前記射出面4は、少なくとも1つの射出エリア9と、射出を抑える材料でカバーされ、前記射出エリア9を囲んでいる少なくとも1つの非射出エリア8とを有している。前記非射出エリア8は、少なくとも1つの通路7を有しており、前記通路7は、前記リザーバ2と前記非射出エリア8とを接続し、前記リザーバ2から前記射出エリア9への仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするために、射出エリア9から拡散長の距離だけ離れて延びている。
【解決手段】射出面4と、加熱されたときに仕事関数の低い粒子を放出する材料のためのリザーバ2と、このリザーバ2から前記射出面4への仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするための少なくとも1つの通路7とを有するディスペンサ陰極であって、前記射出面4は、少なくとも1つの射出エリア9と、射出を抑える材料でカバーされ、前記射出エリア9を囲んでいる少なくとも1つの非射出エリア8とを有している。前記非射出エリア8は、少なくとも1つの通路7を有しており、前記通路7は、前記リザーバ2と前記非射出エリア8とを接続し、前記リザーバ2から前記射出エリア9への仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするために、射出エリア9から拡散長の距離だけ離れて延びている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、リソグラフィーシステム、より詳細には、複合ビームリソグラフィーシステムで用いる熱陰極に関する。
【背景技術】
【0002】
熱陰極、より詳細には、制御された多孔性のディスペンサ形式の熱陰極が、本分野で良く知られている。ディスペンサ陰極は、例えば、テレビ受信機、コンピューター用モニター、並びに電子レンジに共通して使用されている。このようなディスペンサ陰極は、仕事関数の低い材料が充填されたキャビティを有するリザーバ及び射出面が設けられた陰極本体と、仕事関数の低い粒子をリザーバから射出面の射出エリアに拡散させ、熱電子を射出させるのに必要とされる熱を発生させるための過熱部材とを通常は有している。一般的には、射出面は、全体に渡って射出エリアとして使用されている。
【0003】
本分野で知られているリザーバには種々の形式がある。第1の形式のリザーバにでは、キャビティには、多孔性のマトリックスが充填され、このマトリックスの孔には、仕事関数の低い粒子、例えばBa,Ca,Srのようなアルカリ性のアース金属(earth metal)の合成物が充填されている。このようなディスペンサ陰極では、多孔質のマトリックスの一面が、射出面として通常は機能する。陰極を加熱することにより、多孔質のマトリックスから射出面へと仕事関数の低い粒子が放出され、熱電子が射出されるであろう。
【0004】
第2のタイプのリザーバでは、仕事関数の低い材料は、多孔質のマトリックスの後方のスペースに存在している。動作中に、仕事関数の低い粒子、例えば、Ba又はBaOは、孔中に発生若しくは放出され、多孔質のマトリックスの後方のスペースから供給される。そして、仕事関数の低い粒子は、多孔質のマトリックスの孔を通って移動し、射出面からの適切な射出を確実にする射出面の適用範囲を十分に維持するように、十分な量で射出面に供給される。
【0005】
これら形式の陰極の輝度を高めるために、多孔質のマトリックスの上面には、通常は金属からなるマトリックスの面全体に渡ってコーティングが施されている。かくして、射出面の全体が射出エリアになっている。前記コーティングは、いくつかの層を通常は有しており、これら層のうちの少なくとも1つは、仕事関数の低い材料でできている。今日では、前記コーティング層用に最も広く使用されている仕事関数の低い材料は、スカンデット合成物を含んでいる。スカンデットのディスペンサ陰極の適切な製造技術並びに部品は、例えば、米国特許4.007.393、4.350.920、4.594.220、5.064.397、5.261.845、5.264.757、5.314.364、5.407.633、並びに6.348.756に開示されている。これらの文書は、全てが完全に説明されているかのように言及されて組み込まれている。
【0006】
これら既知の陰極では、孔間の接続は任意にもたらされている。本来の結果によると、活動材料が射出面に到達するように移動されなければならないパスの長さは、マトリックス層の厚さより長いことが可能である。これが、従来のディスペンサ陰極の寿命並びに射出を制限している。さらに、前記孔は、射出面に延びており、射出面全体に渡って比較的大きな射出エリアを形成している。
【0007】
米国特許A4.101.800は、マトリックス層の上面に、穿孔された薄いホイルが設けられた制御された多孔性のディスペンサ陰極を開示している。このホイルは、耐火性金属で形成されている。活動材料は、ホイルの面をコーティングするように、穿孔したホイルの孔を通って移動する。かくして、このホイルは、陰極の射出面としての役割を果たす。この陰極ではまた、射出面全体が、射出エリアである。
【0008】
このコンセプトの更なる改良点が、米国特許A4.310.603に開示されている。この文書で開示されているディスペンサ陰極は、仕事関数の低い材料を収容するリザーバを有する陰極本体と、リザーバの一側の陰極本体に位置された加熱部材とを有している。リザーバの他側は、射出側面を規定している。リザーバの射出側面には、リザーバをカバーし、陰極本体に溶接され、タングステン若しくはモリブデンで好ましくは形成された、孔を有したホイルが設けられている。このホイルには、射出エリアを形成している、仕事関数の低い材料からなる被膜が部分的に設けられている。また、ホイルには、遮断グリッドを形成している非射出材料が部分的に設けられている。仕事関数の低いコーティングが、低い仕事関数Ф、かくして、射出エリアの高射出率を確立している。この陰極では、全ての孔が、大きな射出エリアに位置されている。
【0009】
上述されたこれら制御された多孔性のディスペンサ陰極では、孔間のピッチのディメンションが、活動材料のパスの長さを規定している。しかし、射出面の孔は、また、陰極からの放射の激しい不均一を生じさせる。さらに、射出面は、ほぼ全体に渡って射出エリアとして動作する。
【0010】
さらに、本発明は、リソグラフィーシステム、電気顕微鏡、検査システムのような電子ビーム露光装置の、ディスペンサ形式の陰極の使用に関する。これら電子ビーム装置では、LaB6射出源(LaB6-source)、電界射出体(field emitter)、若しくはショットキー形式(Schotky-type)の射出体が使用されている。これら装置の多くは、比較的小さなディメンションの均一の電子源を必要としているように、比較的小さな電流を必要としている。従って、電子ビーム装置の高輝度のディスペンサ陰極の使用は些細なことではない。従来技術のディスペンサ陰極の直径は、例えば、LaB6射出源若しくは電界射出源の直径よりも100ないし10,000倍である。かくして、射出電流は、電子ビーム装置のためには高すぎる。さらに、より多くの電子が同じ期間に射出されるので、クーロン力の相互作用は、既知のディスペンサ陰極を使用したときに、装置の解像度を減じてしまう。
【0011】
この問題は、単一源の複合電子ビームシステムに特に関係している。この問題を克服する試みとして、特に単一源の複合電子ビームシステムにおいて、制限された射出エリアの発散電子ビームが使用されている。このようなシステムの例が、例えば、キャノンによる米国特許5.834.783、5.905.267、5.981.954と、完全に説明されているかのように言及されて組み込まれている本出願による米国特許仮出願60/422.758とに開示されている。いわゆる三極管のセットアップが、発散電子ビームを得るために最も頻繁に使用されている。2つの電極によって形成され、これらの反対側に帯電し、射出陰極面に近接近した電界の向きの線が、射出された電子の一部のみを使用して、拡大する電子ビームを形成する。しかし、電子が発散される前に、電子の個々の軌跡は、最初に収束して、クロスオーバーを通過する。これは、比較的強いクーロン力の相互作用を起こし、この結果、エネルギーの広がりを高める。かくして、この抽出アプローチが、特に、電子ビームリソグラフィーシステムのような高解像度システムにおいて問題を引き起こしている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、時間的にもスペース的にも均一な均一電子ビームを供給する電子源を提供することである。
【0013】
さらに、本発明の目的は、射出エリアが比較的小さい電子源を提供することである。
【0014】
さらに、本発明の目的は、エネルギーの供給を制限する電子源を提供することである。
【0015】
上記課題のために、本発明は、電子を射出するための少なくとも1つの射出エリアと、射出を抑える材料でカバーされ、かつ前記射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有する射出面と、加熱されたときに仕事関数の低い粒子を放出する材料のためのリザーバと、このリザーバから前記射出面に仕事関数の低い粒子を拡散可能にするように、前記リザーバと前記射出面とを接続している少なくとも1つの通路とを具備し、前記少なくとも1つの通路は、前記リザーバから前記射出エリアに仕事関数の低い粒子を拡散可能にするように、前記射出エリアに、射出エリアから拡散長の距離だけ離れて延びているディスペンサ陰極を提供している。
【0016】
明瞭な境界線を有する射出エリアとこの射出エリアの側面に延びている通路とを適用させることにより、空間的に均一で、高解像度の電子ビームシステムでの適用に適したディスペンサ陰極を得ることが可能であることが判る。
【0017】
一実施形態では、射出エリアが、仕事関数の低い粒子を阻止するためのブロック層を有している。このブロック層は、通路を通らない仕事関数の低い粒子が射出エリアに到達するのを防止している。このようにして、射出エリアは、混乱せずに均一さをとどめている。これは、空間的に均一な電子ビームを生じさせる。
【0018】
さらなる実施形態では、ディスペンサ陰極が、リザーバの射出側をカバーする膜を有しており、この膜は、仕事関数の低い粒子に対してほぼ非透過である。このようにして、明確な射出エリアと明確な非射出エリアとが形成されることができる。
【0019】
他の実施形態では、膜が、射出側面と陰極側面(即ち、リザーバに向けられた側面)とを有している。この射出側面は、少なくとも1つの射出エリアと前記少なくとも1つの射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有している。前記射出エリアは、仕事関数の低い材料でコーティングされ、前記非射出エリアは、射出を抑える材料でコーティングされている。
【0020】
膜が設けられたディスペンサ陰極の一実施形態では、この膜は、前記リザーバの射出側面をカバーしている金属膜である。この膜には、前記仕事関数の低い粒子のための通路を与えている前記非射出エリアに穿孔が設けられている。
【0021】
一実施形態では、前記通路は、前記射出エリア近くに延びている。この実施形態では、通路は、射出エリアに隣接して延びていることが好ましい。これは、仕事関数の低い粒子が射出エリアに到達するのを簡単にさせ、拡散を簡単に制御可能にさせている。
【0022】
本発明のディスペンサ陰極の一実施形態では、ディスペンサ陰極は、複数の通路を有している。これら全ての通路は、前記非射出エリアに延びている。
【0023】
本発明の他の実施形態では、射出面が、少なくとも1つの凸面を有している。これは、発散ビームを形成するのを助けている。更なる実施形態では、射出面が射出エリアの位置で凸形状である。ディスペンサ陰極が、高解像度の電子ビームシステム内で使用されたときに、電子ビームの交差混合を避けるように発散電子ビームを使用することが好ましい。この発散電子ビームの使用が、電子ビームのエネルギー供給機能を拡大させている。
【0024】
本発明のディスペンサ陰極の他の実施形態で、ディスペンサ陰極には、前記射出エリアを支持するための支持構造部がさらに設けられている。このようにして、射出エリアは、動作中に適切に規定されたままである。一実施形態では、支持構造部が、射出エリアの位置で、前記リザーバまで延びている支柱を有している。この支柱は、明確な射出エリアを与える簡単な方法を提供している。
【0025】
本発明のディスペンサ陰極の更なる実施形態では、支柱が、射出面の上形成部を有している。この支柱の上形成部は、射出エリアを規定している。
【0026】
さらに、前記支柱を有するディスペンサ陰極の更なる実施形態では、通路が、前記支柱の一側に沿って延びている。この実施形態では、この通路を形成する簡単な方法は、リザーバの自由な起立状態若しくはほぼ自由な起立状態の支柱を与えることにある。このようにして、支柱の側壁は、通路の壁を与えている。このように、支柱は2つの機能を有している。第1の機能は、射出エリアを規定することである。支柱の第2の機能は、仕事関数の低い粒子のための通路に対する境界線を規定することである。
【0027】
本発明の他の態様は、加熱されたときに仕事関数の低い粒子を放出する材料のためのリザーバと、仕事関数の低い粒子を阻止するたのブロック層を有する、電子を射出するための少なくとも1つの射出エリアと、射出を抑える材料でカバーされ、前記射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有する射出面と、前記リザーバから前記射出面に仕事関数の低い粒子を拡散可能にするように、前記リザーバと前記射出面とを接続している少なくとも1つの通路とを具備するディスペンサ陰極に関する。
【0028】
前記ブロック層は、仕事関数の低い粒子が、他方のパス、次に通路によって規定されたパスを通って射出エリアに到達するのを防止している。このようにして、射出エリアは、動作中に明瞭に規定された状態のままである。
【0029】
このディスペンサ陰極の一実施形態では、少なくとも1つの通路は、仕事関数の低い粒子が、前記リザーバから前記射出エリアへと拡散可能なように、前記非射出エリアに、射出エリアから拡散長の距離だけ離れて延びている(又は、延長し(discharges)、延びている(flows out)。
【0030】
他の実施形態では、本発明のディスペンサ陰極は、射出エリアが上方に設けられた抽出電極をさらに有している。この抽出電極は、射出された電子に対して負のレンズとして機能する静電場を与えるように設けられている。
【0031】
上述したディスペンサ陰極の一実施形態では、ディスペンサ陰極は、射出面を実質的に囲んでいる壁をさらに有している。この壁は、電子ビームの均一性を高めるために追加されている。一実施形態では、この壁は、射出面と前記射出エリアから拡散長の距離内にある1つ、又は複数の通路とを囲んでいる。一実施形態では、前記壁は、約20ないし25度、好ましくはピアス角度で前記射出エリアから延びている。特に規定の角度で傾斜したこの壁の利点は、均一なE領域のための射出の均一性における改良点である。実際、射出エリアは、スムーズなE領域を形成するように、できるだけ連続的に壁内にある。一実施形態の壁には、壁が射出エリアに重なる位置に、チャネルの1つ以上の通路が設けられている。
【0032】
ディスペンサ陰極の一実施形態では、射出面は、この射出面の凹部に対してディスペンサ陰極の面のレベルの下に位置されている。このディスペンサ陰極の一実施形態では、前記凹部の壁は、射出面に対して約20ないし25度、好ましくはピアス角度で傾斜している。
【0033】
本発明の一実施形態では、ディスペンサ陰極は、前記射出エリアを加熱するように少なくとも1つのヒータをさらに有している。
【0034】
他の又はこのような実施形態では、ディスペンサが、前記仕事関数の低い粒子を加熱するように少なくとも1つのヒータをさらに有している。
【0035】
本発明は、電子を射出するための射出エリアを有する陰極に関する。この射出エリアは、前記射出エリアを囲んでいる壁内にある。この壁は導電性である。一実施形態では、前記壁は射出を抑える導電性の材料でカバーされている。更なる実施形態では、壁は、導電体であるか、導電体でカバーされている。
【0036】
この陰極の一実施形態では、前記壁は、射出エリアに対して約20ないし25度の角度で実質的に延びている。
【0037】
この陰極の他の実施形態では、この陰極は、仕事関数の低い粒子を収容する少なくとも1つのリザーバと少なくとも1つの通路、又はチャネルをさらに有している。
【0038】
前記通路、又はチャネルは、前記リザーバ内の仕事関数の低い粒子が通路に入ることを可能にする入口と、前記射出エリアの拡散長の距離だけ離れたところの、前記壁面の出口とを有している。
【0039】
この発明は、上述したように、複数のディスペンサ陰極又は陰極を有する、複数の電子ビームを発生させるための電子源にさらに関する。
【0040】
この発明は、本発明のディスペンサ陰極を有するリソグラフィーシステムに関する。
【0041】
一実施形態では、このリソグラフィーシステムは、ディスペンサ陰極によって発生される電子ビームを複数の小電子ビームに分割するためのビームスプリッター手段と、各小電子ビームをほぼ別々に変調するためのモジュレータ手段と、所定のパターンに従って小ビームを変調するための前記モジュレータ手段を制御するための制御手段とをさらに有している。
【0042】
本発明は、単に、この発明の好ましい実施形態を説明し、この発明の保護の範囲を限定しないように意図された以下の図面を参照して説明されているであろう。
【0043】
図において、同参照符号の構成部品は、同じ又は対応する機能を示している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の陰極の断面を示している。
【図2a】図1の陰極の、本発明とは異なる態様を示した射出面の上面図を示している。
【図2b】図1の陰極の、本発明とは異なる態様を示した射出面の上面図を示している。
【図3】支持構造部が射出エリアを支持した状態の本発明の陰極の断面を示している。
【図4】図3の陰極の上面図を示している。
【図5】多孔性の金属リザーバを有する本発明の陰極の射出部分の断面を示している。
【図6】本発明の陰極の他の実施形態の断面を示している。
【図7】凸状の射出面を有する陰極の断面を示している。
【図8】湾曲した射出面を有する陰極の他の実施形態の断面を示している。
【図9】ピアス角度Pの周壁を有する本発明の陰極の一実施形態を示している。
【図10】支柱を有する図9の陰極の他の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明のディスペンサ陰極の第1の実施形態を示している。このディスペンサ陰極は、陰極本体1を有しており、この陰極本体の上部は、合生物が充填されたリザーバ2を形成している。この合成物は、加熱部材3によって加熱されたときに、少なくとも一種類の仕事関数の低い粒子を、リザーバ2の射出側面4へ与える。リザーバ2の射出側面4は、図1のディスペンサ陰極の上面図を示している図2a並びに図2bに見られるように、2つの形式のエリアに分けられている。
【0046】
前記射出側面4の第1の形式のエリアは、電子の射出のために応答可能である射出エリア9である。この射出エリアは、イリジウム、オスミウム、又は他の白金族金属のような仕事関数の低い材料、若しくはスカンデット(scandate)で通常コーティングされている。このような材料若しくは合成物は、この分野における熟練者に知られている。
【0047】
前記射出側面4の第2の形式のエリアは、前記射出エリア9を囲んでいる非射出エリア8である。この非射出エリアは、ジルコニウム又はグラファイトのような射出を抑える材料でコーティングされている。
【0048】
前記射出エリアを囲んでいる非射出エリアは、射出エリアの面積を制限するために設けられている。このようにして、制限されたサイズの射出源を有する陰極を与えることが可能である。実際の適用では、射出エリアは、約100ミクーロン×100ミクーロンのサイズ以下であろう。
【0049】
このディスペンサ陰極には、膜6、好ましくは、金属膜が、リザーバ2の前記射出側面に設けられている。この膜は、電子の射出の均一性を確実にしている。前記射出エリア9内での膜6の両面間での直接的な接続はない。射出エリア9の位置で、前記膜は、リザーバからの仕事関数の低い粒子に対してほぼ不透過である。これは、例えば、仕事関数の低い材料に対してほぼ不透過である、金属膜を形成することによって達成されることができる。他の実施形態は、射出エリアの位置で、前記膜にほぼ不透過の層を設けている。
【0050】
前記膜6は、この膜6を貫通し、前記リザーバ2と膜6の射出面側4とを接続している1つ以上の通路7、好ましくは孔を有している。前記通路7は、電子の射出を高めるために、リザーバからの仕事関数の低い粒子を、リザーバ2から射出エリア9に拡散させることを可能にしている。
【0051】
前記射出側で、前記膜6には、射出エリアを規定している、仕事関数の低い材料からなる層9と、非射出エリアを規定している、射出を抑える材料からなる層8とが設けられている。
【0052】
前記構造の上面図が、図2aに示されている。さらに、少なくとも1つの通路7と射出エリア9に属する所定の位置との間の適切な距離を選択することによって、仕事関数の低い材料2の連続的な供給を確実にしている。この距離は、前記リザーバ2からもたらされる仕事関数の低い粒子の最長拡散長よりも短いことが必要である。前記射出の更なる増加は、仕事関数の低い材料からなる少なくとも1つの層9で、前記第1のエリアをコーティングすることによって確立される。
【0053】
図2bは、膜6の上面図を示している。この膜6は、前記射出エリアから拡散長の距離だけ離れたところに透孔を有しており、この膜は、また、金属膜であることが好ましい。適切な金属は、タングステン並びにモリブデンのような耐熱性金属である。前記リザーバから射出側面へと拡散される仕事関数の低い粒子は、前記孔7を介してのみ前記膜を通ることができる。
【0054】
前記ヒータを使用して、前記仕事関数の低い粒子が、前記リザーバから放出される。これら粒子は、前記膜の孔を通って前記射出エリアへと拡散される。この射出エリアのところで、電子が放出される。抽出電極を使用することによって、これら電子は加速される。
【0055】
図3は、本発明の第2の実施形態を示している。ディスペンサ陰極もまた、上部がリザーバ2を形成している陰極本体1と加熱部材3とを有している。ディスペンサ陰極の射出面4は、本発明の第1の実施形態のディスペンサ陰極と同じ仕事原則で射出エリア9と非射出エリア8とを有している。即ち、仕事関数の低い粒子は、射出エリア9を囲んでいる非射出エリア8を経て射出エリア9に供給され、この射出エリア9から射出される。しかし、この特別な実施形態では、膜6の代わりに、仕事関数の低い粒子のための射出エリアは、支持構造部10によって前記射出面4の下に非多孔性が直接果たされている。この支持構造部10は、柱形状であることが好ましく、前記リザーバを貫通して延びている。この実施形態では、通路が、前記射出エリアに隣接して通っている。
【0056】
この実施形態では、リザーバ2は、これの孔隙に仕事関数の低い材料を含んだ多孔性の材料で充填されている。これは、前記射出面への仕事関数の低い粒子の供給を高めている。前記非射出エリア8は、射出を抑える材料からなる少なくとも1つの層8でコーティングされており、これによって、前記射出エリアからの電子の射出を非常に減じている。さらに電子の射出を高めるために、仕事関数の低い材料からなるコーティング層9が、前記射出支柱10の上端に設けられている。この実施形態の上面図は、図4で示されている。
【0057】
前記支柱10は、実質的に自由に起立した(free standing)構造部であり、かくして、この支柱の周りには通路が設けられている。図4の上面図で、通路7が、支柱10を全体的に、かくして全体に射出エリア9を囲んでいるのを明瞭に見ることができる。
【0058】
前記支持構造部10は、金属でできていることが好ましい。可能な候補は、モリブデン並びにタングステンのような耐熱性金属である。
【0059】
図5は、仕事関数の低い材料1を含んだ多孔性の材料を示す本発明のディスペンサ陰極の一実施形態を示している。この実施形態では、多孔性のタングステンが、仕事関数の低い材料を含むのに使用されている。リザーバの前記射出側に、孔、即ち穿孔7を有した膜6が設けられている。この膜は、射出を抑える材料8でコーティングされた非射出エリアと、仕事関数の低い材料でコーティングされた射出エリア9とを有している。この実施形態では、仕事関数の低い粒子のための通路を形成している孔7は、射出エリア近くに直接設けられている。さらに、射出面近くに位置され、かくして電子の射出ビームを発散させる射出源が設けられている抽出電極11が示されている。前記射出エリア9の幅は、約40μmであるが、示されている全体的なエリアの幅は、約1mmである。
【0060】
図6は、本発明のディスペンサ陰極の他の実施形態を示している。この実施形態では、射出面が、凸形状の湾曲面である。リザーバは、これの孔隙内に、仕事関数の低い材料1を含んだ多孔性のタングステンを収容している。この多孔性のタングステンには、仕事関数の低い粒子に対してほぼ非透過であるタングステンの膜が設けられている。この膜は、仕事関数の低い粒子のための通路を形成する孔7を有している。再び、前記射出エリア9は、仕事関数の低い材料、例えば、スカンデット合成物でコーティングされている。膜6の残りのエリア8は、射出を抑える材料でコーティングされている。凸形状の面を使用して、ディスペンサ陰極は、1つの仮想原点(virtual origin)を有する、電子のほぼ完全な発散ビームを射出する。
【0061】
図7は、多孔性のタングステンが充填されたリザーバ内に自由な起立状態のタングステンの支柱10を有する、本発明に従ったディスペンサ陰極の一実施形態を示している。このリザーバには、タングステンの孔隙1内に仕事関数の低い材料が与えられている。前記支柱10が自由な起立状態であるため、仕事関数の低い粒子が、支柱10の側面7に沿って通ることができる。かくして、この支柱は、粒子を射出エリア9へと拡散させ得るための通路7を与えている。
【0062】
図8は、本発明に従ったディスペンサ陰極の他の実施形態を示している。この実施形態で、円錐形状の陰極には、タングステンからなる自由な起立状態の支柱10が設けられている。この自由な起立状態の支柱を囲むように、前記リザーバには、多孔性のタングステン1が設けられている。孔隙もまた、示されていないヒータを使用して放出される仕事関数の低い材料を含んでいる。前記円錐形状に凸面が与えられているため、並びに、射出エリア9のサイズが小さいため、この射出源は、発散電子ビームを与える。前記支柱10は、円筒形であることが好ましい。射出エリアの側端9は、仕事関数の低い材料、例えば、スカンデット合成物でコーティングされている。残りのエリア8は、射出を抑える材料でコーティングされている。
【0063】
図9は、仕事関数の低い材料でコーティングされ、さらなる仕事関数の低い材料を前記射出エリア9に到達させ得るための通路7によって囲まれた、本発明の陰極の一実施形態を示している。この特定の実施形態では、陰極は、前記放出エリアを囲み、かつ上述された射出を抑える材料でコーティングされた、又はこの材料で形成された凹型若しくは円錐形状の壁面8を有している。この壁面は、導電性の材料でコーティングされているか、このような材料で形成されていることが好ましい。このようにして、細いビームを生じさせるレンズ効果が与えられた電気のE領域(E-field)が、図9に示されているように延びている。
【0064】
前記壁面の角度Pは、ピアス(Pierce)角度に等しい。多くの場合、角度Pは、20ないし25度であり、好ましくは22ないし23度である。好ましい実施形態では、角度Pは、約22,5度である。
【0065】
図10は、支柱の射出エリア9が陰極の面12の下に全体的に設けられた陰極の他の実施形態を示している。この射出エリアは、円錐形状の壁面によって、射出エリア9に対して約1ピアス角度Pで囲まれている。レンズ効果の得られる適合されたE領域もまた、図示されたように延びているだろう。前記壁面は、電気的な導電性の面を有し、かつ射出を抑えることが好ましい。
【0066】
この実施形態の前記壁面8は、前記射出エリアにほぼ連続的に入っている。仕事関数の低い粒子のための通路、即ちチャネルは、E領域(電場)にできるだけ干渉しないことが好ましい。実際に、熟考された実施形態では、射出エリアは、前記壁面に円滑に入っている。この壁面に、射出エリアが、壁面に重なる若しくはこの壁面内に入っているところに、幾つかの小さな孔が、仕事関数の低い粒子を含むリザーバまで形成されている。
【0067】
上述された複数の陰極は、組み合わされることができ、この結果、複合ビーム陰極を得ることができる。
【0068】
以上の説明には、好ましい実施形態の動作の説明が含まれており、本発明の範囲を制限することを意味するものではないことは理解されている。本発明の範囲は、以上のクレームによってのみ限定される。以上の説明から、多くの変形例が、本発明の精神並びに範囲によってこれから包含されるであろうことは当業者には明らかであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、リソグラフィーシステム、より詳細には、複合ビームリソグラフィーシステムで用いる熱陰極に関する。
【背景技術】
【0002】
熱陰極、より詳細には、制御された多孔性のディスペンサ形式の熱陰極が、本分野で良く知られている。ディスペンサ陰極は、例えば、テレビ受信機、コンピューター用モニター、並びに電子レンジに共通して使用されている。このようなディスペンサ陰極は、仕事関数の低い材料が充填されたキャビティを有するリザーバ及び射出面が設けられた陰極本体と、仕事関数の低い粒子をリザーバから射出面の射出エリアに拡散させ、熱電子を射出させるのに必要とされる熱を発生させるための過熱部材とを通常は有している。一般的には、射出面は、全体に渡って射出エリアとして使用されている。
【0003】
本分野で知られているリザーバには種々の形式がある。第1の形式のリザーバにでは、キャビティには、多孔性のマトリックスが充填され、このマトリックスの孔には、仕事関数の低い粒子、例えばBa,Ca,Srのようなアルカリ性のアース金属(earth metal)の合成物が充填されている。このようなディスペンサ陰極では、多孔質のマトリックスの一面が、射出面として通常は機能する。陰極を加熱することにより、多孔質のマトリックスから射出面へと仕事関数の低い粒子が放出され、熱電子が射出されるであろう。
【0004】
第2のタイプのリザーバでは、仕事関数の低い材料は、多孔質のマトリックスの後方のスペースに存在している。動作中に、仕事関数の低い粒子、例えば、Ba又はBaOは、孔中に発生若しくは放出され、多孔質のマトリックスの後方のスペースから供給される。そして、仕事関数の低い粒子は、多孔質のマトリックスの孔を通って移動し、射出面からの適切な射出を確実にする射出面の適用範囲を十分に維持するように、十分な量で射出面に供給される。
【0005】
これら形式の陰極の輝度を高めるために、多孔質のマトリックスの上面には、通常は金属からなるマトリックスの面全体に渡ってコーティングが施されている。かくして、射出面の全体が射出エリアになっている。前記コーティングは、いくつかの層を通常は有しており、これら層のうちの少なくとも1つは、仕事関数の低い材料でできている。今日では、前記コーティング層用に最も広く使用されている仕事関数の低い材料は、スカンデット合成物を含んでいる。スカンデットのディスペンサ陰極の適切な製造技術並びに部品は、例えば、米国特許4.007.393、4.350.920、4.594.220、5.064.397、5.261.845、5.264.757、5.314.364、5.407.633、並びに6.348.756に開示されている。これらの文書は、全てが完全に説明されているかのように言及されて組み込まれている。
【0006】
これら既知の陰極では、孔間の接続は任意にもたらされている。本来の結果によると、活動材料が射出面に到達するように移動されなければならないパスの長さは、マトリックス層の厚さより長いことが可能である。これが、従来のディスペンサ陰極の寿命並びに射出を制限している。さらに、前記孔は、射出面に延びており、射出面全体に渡って比較的大きな射出エリアを形成している。
【0007】
米国特許A4.101.800は、マトリックス層の上面に、穿孔された薄いホイルが設けられた制御された多孔性のディスペンサ陰極を開示している。このホイルは、耐火性金属で形成されている。活動材料は、ホイルの面をコーティングするように、穿孔したホイルの孔を通って移動する。かくして、このホイルは、陰極の射出面としての役割を果たす。この陰極ではまた、射出面全体が、射出エリアである。
【0008】
このコンセプトの更なる改良点が、米国特許A4.310.603に開示されている。この文書で開示されているディスペンサ陰極は、仕事関数の低い材料を収容するリザーバを有する陰極本体と、リザーバの一側の陰極本体に位置された加熱部材とを有している。リザーバの他側は、射出側面を規定している。リザーバの射出側面には、リザーバをカバーし、陰極本体に溶接され、タングステン若しくはモリブデンで好ましくは形成された、孔を有したホイルが設けられている。このホイルには、射出エリアを形成している、仕事関数の低い材料からなる被膜が部分的に設けられている。また、ホイルには、遮断グリッドを形成している非射出材料が部分的に設けられている。仕事関数の低いコーティングが、低い仕事関数Ф、かくして、射出エリアの高射出率を確立している。この陰極では、全ての孔が、大きな射出エリアに位置されている。
【0009】
上述されたこれら制御された多孔性のディスペンサ陰極では、孔間のピッチのディメンションが、活動材料のパスの長さを規定している。しかし、射出面の孔は、また、陰極からの放射の激しい不均一を生じさせる。さらに、射出面は、ほぼ全体に渡って射出エリアとして動作する。
【0010】
さらに、本発明は、リソグラフィーシステム、電気顕微鏡、検査システムのような電子ビーム露光装置の、ディスペンサ形式の陰極の使用に関する。これら電子ビーム装置では、LaB6射出源(LaB6-source)、電界射出体(field emitter)、若しくはショットキー形式(Schotky-type)の射出体が使用されている。これら装置の多くは、比較的小さなディメンションの均一の電子源を必要としているように、比較的小さな電流を必要としている。従って、電子ビーム装置の高輝度のディスペンサ陰極の使用は些細なことではない。従来技術のディスペンサ陰極の直径は、例えば、LaB6射出源若しくは電界射出源の直径よりも100ないし10,000倍である。かくして、射出電流は、電子ビーム装置のためには高すぎる。さらに、より多くの電子が同じ期間に射出されるので、クーロン力の相互作用は、既知のディスペンサ陰極を使用したときに、装置の解像度を減じてしまう。
【0011】
この問題は、単一源の複合電子ビームシステムに特に関係している。この問題を克服する試みとして、特に単一源の複合電子ビームシステムにおいて、制限された射出エリアの発散電子ビームが使用されている。このようなシステムの例が、例えば、キャノンによる米国特許5.834.783、5.905.267、5.981.954と、完全に説明されているかのように言及されて組み込まれている本出願による米国特許仮出願60/422.758とに開示されている。いわゆる三極管のセットアップが、発散電子ビームを得るために最も頻繁に使用されている。2つの電極によって形成され、これらの反対側に帯電し、射出陰極面に近接近した電界の向きの線が、射出された電子の一部のみを使用して、拡大する電子ビームを形成する。しかし、電子が発散される前に、電子の個々の軌跡は、最初に収束して、クロスオーバーを通過する。これは、比較的強いクーロン力の相互作用を起こし、この結果、エネルギーの広がりを高める。かくして、この抽出アプローチが、特に、電子ビームリソグラフィーシステムのような高解像度システムにおいて問題を引き起こしている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、時間的にもスペース的にも均一な均一電子ビームを供給する電子源を提供することである。
【0013】
さらに、本発明の目的は、射出エリアが比較的小さい電子源を提供することである。
【0014】
さらに、本発明の目的は、エネルギーの供給を制限する電子源を提供することである。
【0015】
上記課題のために、本発明は、電子を射出するための少なくとも1つの射出エリアと、射出を抑える材料でカバーされ、かつ前記射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有する射出面と、加熱されたときに仕事関数の低い粒子を放出する材料のためのリザーバと、このリザーバから前記射出面に仕事関数の低い粒子を拡散可能にするように、前記リザーバと前記射出面とを接続している少なくとも1つの通路とを具備し、前記少なくとも1つの通路は、前記リザーバから前記射出エリアに仕事関数の低い粒子を拡散可能にするように、前記射出エリアに、射出エリアから拡散長の距離だけ離れて延びているディスペンサ陰極を提供している。
【0016】
明瞭な境界線を有する射出エリアとこの射出エリアの側面に延びている通路とを適用させることにより、空間的に均一で、高解像度の電子ビームシステムでの適用に適したディスペンサ陰極を得ることが可能であることが判る。
【0017】
一実施形態では、射出エリアが、仕事関数の低い粒子を阻止するためのブロック層を有している。このブロック層は、通路を通らない仕事関数の低い粒子が射出エリアに到達するのを防止している。このようにして、射出エリアは、混乱せずに均一さをとどめている。これは、空間的に均一な電子ビームを生じさせる。
【0018】
さらなる実施形態では、ディスペンサ陰極が、リザーバの射出側をカバーする膜を有しており、この膜は、仕事関数の低い粒子に対してほぼ非透過である。このようにして、明確な射出エリアと明確な非射出エリアとが形成されることができる。
【0019】
他の実施形態では、膜が、射出側面と陰極側面(即ち、リザーバに向けられた側面)とを有している。この射出側面は、少なくとも1つの射出エリアと前記少なくとも1つの射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有している。前記射出エリアは、仕事関数の低い材料でコーティングされ、前記非射出エリアは、射出を抑える材料でコーティングされている。
【0020】
膜が設けられたディスペンサ陰極の一実施形態では、この膜は、前記リザーバの射出側面をカバーしている金属膜である。この膜には、前記仕事関数の低い粒子のための通路を与えている前記非射出エリアに穿孔が設けられている。
【0021】
一実施形態では、前記通路は、前記射出エリア近くに延びている。この実施形態では、通路は、射出エリアに隣接して延びていることが好ましい。これは、仕事関数の低い粒子が射出エリアに到達するのを簡単にさせ、拡散を簡単に制御可能にさせている。
【0022】
本発明のディスペンサ陰極の一実施形態では、ディスペンサ陰極は、複数の通路を有している。これら全ての通路は、前記非射出エリアに延びている。
【0023】
本発明の他の実施形態では、射出面が、少なくとも1つの凸面を有している。これは、発散ビームを形成するのを助けている。更なる実施形態では、射出面が射出エリアの位置で凸形状である。ディスペンサ陰極が、高解像度の電子ビームシステム内で使用されたときに、電子ビームの交差混合を避けるように発散電子ビームを使用することが好ましい。この発散電子ビームの使用が、電子ビームのエネルギー供給機能を拡大させている。
【0024】
本発明のディスペンサ陰極の他の実施形態で、ディスペンサ陰極には、前記射出エリアを支持するための支持構造部がさらに設けられている。このようにして、射出エリアは、動作中に適切に規定されたままである。一実施形態では、支持構造部が、射出エリアの位置で、前記リザーバまで延びている支柱を有している。この支柱は、明確な射出エリアを与える簡単な方法を提供している。
【0025】
本発明のディスペンサ陰極の更なる実施形態では、支柱が、射出面の上形成部を有している。この支柱の上形成部は、射出エリアを規定している。
【0026】
さらに、前記支柱を有するディスペンサ陰極の更なる実施形態では、通路が、前記支柱の一側に沿って延びている。この実施形態では、この通路を形成する簡単な方法は、リザーバの自由な起立状態若しくはほぼ自由な起立状態の支柱を与えることにある。このようにして、支柱の側壁は、通路の壁を与えている。このように、支柱は2つの機能を有している。第1の機能は、射出エリアを規定することである。支柱の第2の機能は、仕事関数の低い粒子のための通路に対する境界線を規定することである。
【0027】
本発明の他の態様は、加熱されたときに仕事関数の低い粒子を放出する材料のためのリザーバと、仕事関数の低い粒子を阻止するたのブロック層を有する、電子を射出するための少なくとも1つの射出エリアと、射出を抑える材料でカバーされ、前記射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有する射出面と、前記リザーバから前記射出面に仕事関数の低い粒子を拡散可能にするように、前記リザーバと前記射出面とを接続している少なくとも1つの通路とを具備するディスペンサ陰極に関する。
【0028】
前記ブロック層は、仕事関数の低い粒子が、他方のパス、次に通路によって規定されたパスを通って射出エリアに到達するのを防止している。このようにして、射出エリアは、動作中に明瞭に規定された状態のままである。
【0029】
このディスペンサ陰極の一実施形態では、少なくとも1つの通路は、仕事関数の低い粒子が、前記リザーバから前記射出エリアへと拡散可能なように、前記非射出エリアに、射出エリアから拡散長の距離だけ離れて延びている(又は、延長し(discharges)、延びている(flows out)。
【0030】
他の実施形態では、本発明のディスペンサ陰極は、射出エリアが上方に設けられた抽出電極をさらに有している。この抽出電極は、射出された電子に対して負のレンズとして機能する静電場を与えるように設けられている。
【0031】
上述したディスペンサ陰極の一実施形態では、ディスペンサ陰極は、射出面を実質的に囲んでいる壁をさらに有している。この壁は、電子ビームの均一性を高めるために追加されている。一実施形態では、この壁は、射出面と前記射出エリアから拡散長の距離内にある1つ、又は複数の通路とを囲んでいる。一実施形態では、前記壁は、約20ないし25度、好ましくはピアス角度で前記射出エリアから延びている。特に規定の角度で傾斜したこの壁の利点は、均一なE領域のための射出の均一性における改良点である。実際、射出エリアは、スムーズなE領域を形成するように、できるだけ連続的に壁内にある。一実施形態の壁には、壁が射出エリアに重なる位置に、チャネルの1つ以上の通路が設けられている。
【0032】
ディスペンサ陰極の一実施形態では、射出面は、この射出面の凹部に対してディスペンサ陰極の面のレベルの下に位置されている。このディスペンサ陰極の一実施形態では、前記凹部の壁は、射出面に対して約20ないし25度、好ましくはピアス角度で傾斜している。
【0033】
本発明の一実施形態では、ディスペンサ陰極は、前記射出エリアを加熱するように少なくとも1つのヒータをさらに有している。
【0034】
他の又はこのような実施形態では、ディスペンサが、前記仕事関数の低い粒子を加熱するように少なくとも1つのヒータをさらに有している。
【0035】
本発明は、電子を射出するための射出エリアを有する陰極に関する。この射出エリアは、前記射出エリアを囲んでいる壁内にある。この壁は導電性である。一実施形態では、前記壁は射出を抑える導電性の材料でカバーされている。更なる実施形態では、壁は、導電体であるか、導電体でカバーされている。
【0036】
この陰極の一実施形態では、前記壁は、射出エリアに対して約20ないし25度の角度で実質的に延びている。
【0037】
この陰極の他の実施形態では、この陰極は、仕事関数の低い粒子を収容する少なくとも1つのリザーバと少なくとも1つの通路、又はチャネルをさらに有している。
【0038】
前記通路、又はチャネルは、前記リザーバ内の仕事関数の低い粒子が通路に入ることを可能にする入口と、前記射出エリアの拡散長の距離だけ離れたところの、前記壁面の出口とを有している。
【0039】
この発明は、上述したように、複数のディスペンサ陰極又は陰極を有する、複数の電子ビームを発生させるための電子源にさらに関する。
【0040】
この発明は、本発明のディスペンサ陰極を有するリソグラフィーシステムに関する。
【0041】
一実施形態では、このリソグラフィーシステムは、ディスペンサ陰極によって発生される電子ビームを複数の小電子ビームに分割するためのビームスプリッター手段と、各小電子ビームをほぼ別々に変調するためのモジュレータ手段と、所定のパターンに従って小ビームを変調するための前記モジュレータ手段を制御するための制御手段とをさらに有している。
【0042】
本発明は、単に、この発明の好ましい実施形態を説明し、この発明の保護の範囲を限定しないように意図された以下の図面を参照して説明されているであろう。
【0043】
図において、同参照符号の構成部品は、同じ又は対応する機能を示している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の陰極の断面を示している。
【図2a】図1の陰極の、本発明とは異なる態様を示した射出面の上面図を示している。
【図2b】図1の陰極の、本発明とは異なる態様を示した射出面の上面図を示している。
【図3】支持構造部が射出エリアを支持した状態の本発明の陰極の断面を示している。
【図4】図3の陰極の上面図を示している。
【図5】多孔性の金属リザーバを有する本発明の陰極の射出部分の断面を示している。
【図6】本発明の陰極の他の実施形態の断面を示している。
【図7】凸状の射出面を有する陰極の断面を示している。
【図8】湾曲した射出面を有する陰極の他の実施形態の断面を示している。
【図9】ピアス角度Pの周壁を有する本発明の陰極の一実施形態を示している。
【図10】支柱を有する図9の陰極の他の実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、本発明のディスペンサ陰極の第1の実施形態を示している。このディスペンサ陰極は、陰極本体1を有しており、この陰極本体の上部は、合生物が充填されたリザーバ2を形成している。この合成物は、加熱部材3によって加熱されたときに、少なくとも一種類の仕事関数の低い粒子を、リザーバ2の射出側面4へ与える。リザーバ2の射出側面4は、図1のディスペンサ陰極の上面図を示している図2a並びに図2bに見られるように、2つの形式のエリアに分けられている。
【0046】
前記射出側面4の第1の形式のエリアは、電子の射出のために応答可能である射出エリア9である。この射出エリアは、イリジウム、オスミウム、又は他の白金族金属のような仕事関数の低い材料、若しくはスカンデット(scandate)で通常コーティングされている。このような材料若しくは合成物は、この分野における熟練者に知られている。
【0047】
前記射出側面4の第2の形式のエリアは、前記射出エリア9を囲んでいる非射出エリア8である。この非射出エリアは、ジルコニウム又はグラファイトのような射出を抑える材料でコーティングされている。
【0048】
前記射出エリアを囲んでいる非射出エリアは、射出エリアの面積を制限するために設けられている。このようにして、制限されたサイズの射出源を有する陰極を与えることが可能である。実際の適用では、射出エリアは、約100ミクーロン×100ミクーロンのサイズ以下であろう。
【0049】
このディスペンサ陰極には、膜6、好ましくは、金属膜が、リザーバ2の前記射出側面に設けられている。この膜は、電子の射出の均一性を確実にしている。前記射出エリア9内での膜6の両面間での直接的な接続はない。射出エリア9の位置で、前記膜は、リザーバからの仕事関数の低い粒子に対してほぼ不透過である。これは、例えば、仕事関数の低い材料に対してほぼ不透過である、金属膜を形成することによって達成されることができる。他の実施形態は、射出エリアの位置で、前記膜にほぼ不透過の層を設けている。
【0050】
前記膜6は、この膜6を貫通し、前記リザーバ2と膜6の射出面側4とを接続している1つ以上の通路7、好ましくは孔を有している。前記通路7は、電子の射出を高めるために、リザーバからの仕事関数の低い粒子を、リザーバ2から射出エリア9に拡散させることを可能にしている。
【0051】
前記射出側で、前記膜6には、射出エリアを規定している、仕事関数の低い材料からなる層9と、非射出エリアを規定している、射出を抑える材料からなる層8とが設けられている。
【0052】
前記構造の上面図が、図2aに示されている。さらに、少なくとも1つの通路7と射出エリア9に属する所定の位置との間の適切な距離を選択することによって、仕事関数の低い材料2の連続的な供給を確実にしている。この距離は、前記リザーバ2からもたらされる仕事関数の低い粒子の最長拡散長よりも短いことが必要である。前記射出の更なる増加は、仕事関数の低い材料からなる少なくとも1つの層9で、前記第1のエリアをコーティングすることによって確立される。
【0053】
図2bは、膜6の上面図を示している。この膜6は、前記射出エリアから拡散長の距離だけ離れたところに透孔を有しており、この膜は、また、金属膜であることが好ましい。適切な金属は、タングステン並びにモリブデンのような耐熱性金属である。前記リザーバから射出側面へと拡散される仕事関数の低い粒子は、前記孔7を介してのみ前記膜を通ることができる。
【0054】
前記ヒータを使用して、前記仕事関数の低い粒子が、前記リザーバから放出される。これら粒子は、前記膜の孔を通って前記射出エリアへと拡散される。この射出エリアのところで、電子が放出される。抽出電極を使用することによって、これら電子は加速される。
【0055】
図3は、本発明の第2の実施形態を示している。ディスペンサ陰極もまた、上部がリザーバ2を形成している陰極本体1と加熱部材3とを有している。ディスペンサ陰極の射出面4は、本発明の第1の実施形態のディスペンサ陰極と同じ仕事原則で射出エリア9と非射出エリア8とを有している。即ち、仕事関数の低い粒子は、射出エリア9を囲んでいる非射出エリア8を経て射出エリア9に供給され、この射出エリア9から射出される。しかし、この特別な実施形態では、膜6の代わりに、仕事関数の低い粒子のための射出エリアは、支持構造部10によって前記射出面4の下に非多孔性が直接果たされている。この支持構造部10は、柱形状であることが好ましく、前記リザーバを貫通して延びている。この実施形態では、通路が、前記射出エリアに隣接して通っている。
【0056】
この実施形態では、リザーバ2は、これの孔隙に仕事関数の低い材料を含んだ多孔性の材料で充填されている。これは、前記射出面への仕事関数の低い粒子の供給を高めている。前記非射出エリア8は、射出を抑える材料からなる少なくとも1つの層8でコーティングされており、これによって、前記射出エリアからの電子の射出を非常に減じている。さらに電子の射出を高めるために、仕事関数の低い材料からなるコーティング層9が、前記射出支柱10の上端に設けられている。この実施形態の上面図は、図4で示されている。
【0057】
前記支柱10は、実質的に自由に起立した(free standing)構造部であり、かくして、この支柱の周りには通路が設けられている。図4の上面図で、通路7が、支柱10を全体的に、かくして全体に射出エリア9を囲んでいるのを明瞭に見ることができる。
【0058】
前記支持構造部10は、金属でできていることが好ましい。可能な候補は、モリブデン並びにタングステンのような耐熱性金属である。
【0059】
図5は、仕事関数の低い材料1を含んだ多孔性の材料を示す本発明のディスペンサ陰極の一実施形態を示している。この実施形態では、多孔性のタングステンが、仕事関数の低い材料を含むのに使用されている。リザーバの前記射出側に、孔、即ち穿孔7を有した膜6が設けられている。この膜は、射出を抑える材料8でコーティングされた非射出エリアと、仕事関数の低い材料でコーティングされた射出エリア9とを有している。この実施形態では、仕事関数の低い粒子のための通路を形成している孔7は、射出エリア近くに直接設けられている。さらに、射出面近くに位置され、かくして電子の射出ビームを発散させる射出源が設けられている抽出電極11が示されている。前記射出エリア9の幅は、約40μmであるが、示されている全体的なエリアの幅は、約1mmである。
【0060】
図6は、本発明のディスペンサ陰極の他の実施形態を示している。この実施形態では、射出面が、凸形状の湾曲面である。リザーバは、これの孔隙内に、仕事関数の低い材料1を含んだ多孔性のタングステンを収容している。この多孔性のタングステンには、仕事関数の低い粒子に対してほぼ非透過であるタングステンの膜が設けられている。この膜は、仕事関数の低い粒子のための通路を形成する孔7を有している。再び、前記射出エリア9は、仕事関数の低い材料、例えば、スカンデット合成物でコーティングされている。膜6の残りのエリア8は、射出を抑える材料でコーティングされている。凸形状の面を使用して、ディスペンサ陰極は、1つの仮想原点(virtual origin)を有する、電子のほぼ完全な発散ビームを射出する。
【0061】
図7は、多孔性のタングステンが充填されたリザーバ内に自由な起立状態のタングステンの支柱10を有する、本発明に従ったディスペンサ陰極の一実施形態を示している。このリザーバには、タングステンの孔隙1内に仕事関数の低い材料が与えられている。前記支柱10が自由な起立状態であるため、仕事関数の低い粒子が、支柱10の側面7に沿って通ることができる。かくして、この支柱は、粒子を射出エリア9へと拡散させ得るための通路7を与えている。
【0062】
図8は、本発明に従ったディスペンサ陰極の他の実施形態を示している。この実施形態で、円錐形状の陰極には、タングステンからなる自由な起立状態の支柱10が設けられている。この自由な起立状態の支柱を囲むように、前記リザーバには、多孔性のタングステン1が設けられている。孔隙もまた、示されていないヒータを使用して放出される仕事関数の低い材料を含んでいる。前記円錐形状に凸面が与えられているため、並びに、射出エリア9のサイズが小さいため、この射出源は、発散電子ビームを与える。前記支柱10は、円筒形であることが好ましい。射出エリアの側端9は、仕事関数の低い材料、例えば、スカンデット合成物でコーティングされている。残りのエリア8は、射出を抑える材料でコーティングされている。
【0063】
図9は、仕事関数の低い材料でコーティングされ、さらなる仕事関数の低い材料を前記射出エリア9に到達させ得るための通路7によって囲まれた、本発明の陰極の一実施形態を示している。この特定の実施形態では、陰極は、前記放出エリアを囲み、かつ上述された射出を抑える材料でコーティングされた、又はこの材料で形成された凹型若しくは円錐形状の壁面8を有している。この壁面は、導電性の材料でコーティングされているか、このような材料で形成されていることが好ましい。このようにして、細いビームを生じさせるレンズ効果が与えられた電気のE領域(E-field)が、図9に示されているように延びている。
【0064】
前記壁面の角度Pは、ピアス(Pierce)角度に等しい。多くの場合、角度Pは、20ないし25度であり、好ましくは22ないし23度である。好ましい実施形態では、角度Pは、約22,5度である。
【0065】
図10は、支柱の射出エリア9が陰極の面12の下に全体的に設けられた陰極の他の実施形態を示している。この射出エリアは、円錐形状の壁面によって、射出エリア9に対して約1ピアス角度Pで囲まれている。レンズ効果の得られる適合されたE領域もまた、図示されたように延びているだろう。前記壁面は、電気的な導電性の面を有し、かつ射出を抑えることが好ましい。
【0066】
この実施形態の前記壁面8は、前記射出エリアにほぼ連続的に入っている。仕事関数の低い粒子のための通路、即ちチャネルは、E領域(電場)にできるだけ干渉しないことが好ましい。実際に、熟考された実施形態では、射出エリアは、前記壁面に円滑に入っている。この壁面に、射出エリアが、壁面に重なる若しくはこの壁面内に入っているところに、幾つかの小さな孔が、仕事関数の低い粒子を含むリザーバまで形成されている。
【0067】
上述された複数の陰極は、組み合わされることができ、この結果、複合ビーム陰極を得ることができる。
【0068】
以上の説明には、好ましい実施形態の動作の説明が含まれており、本発明の範囲を制限することを意味するものではないことは理解されている。本発明の範囲は、以上のクレームによってのみ限定される。以上の説明から、多くの変形例が、本発明の精神並びに範囲によってこれから包含されるであろうことは当業者には明らかであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を射出するための少なくとも1つの射出エリアと、射出を抑える材料でカバーされ、前記射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有する射出面と、
加熱されたときに仕事関数の低い粒子を放出する材料のためのリザーバと、
このリザーバから前記射出面への仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするように、前記リザーバと前記射出面とを接続している少なくとも1つの通路とを具備し、前記少なくとも1つの通路は、前記リザーバから前記射出エリアへの仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするように、前記非射出エリアに射出エリアから拡散長の距離だけ離れて延びているディスペンサ陰極。
【請求項2】
前記射出エリアは、仕事関数の低い粒子を阻止するためのブロック層を有している請求項1のディスペンサ陰極。
【請求項3】
前記リザーバの射出側をカバーしている膜を有し、この膜は、仕事関数の低い粒子に対してほぼ不透過である請求項1又は2のディスペンサ陰極。
【請求項4】
前記膜は、射出側面と陰極側面とを有しており、この射出側面は、少なくとも1つの射出エリアと前記少なくとも1つの射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有しており、前記射出エリアは、仕事関数の低い材料でコーティングされ、前記非射出エリアは、射出を抑える材料でコーティングされている請求項2のディスペンサ陰極。
【請求項5】
前記膜は、前記リザーバの射出側をカバーしている金属膜であり、仕事関数の低い粒子のための複数の通路を形成している前記非射出エリアに穿孔が設けられている請求項3又は4のディスペンサ陰極。
【請求項6】
前記通路は、前記射出エリア近くに延びている前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項7】
複数の通路を有し、これらほぼ全ての通路は、前記非射出エリアに延びている前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項8】
前記射出面は、少なくとも1つの凸面を有している前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項9】
前記射出面は、前記射出エリアの位置で凸形状である請求項8のディスペンサ陰極。
【請求項10】
前記射出エリアを支持するための支持構造部がさらに設けられている前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項11】
前記支持構造部は、射出エリアの位置で、前記リザーバまで延びている支柱を有している請求項10のディスペンサ陰極。
【請求項12】
前記支柱は、前記射出面の上形成部を有している請求項11のディスペンサ陰極。
【請求項13】
前記支柱の上形成部は、射出エリアを形成している請求項12のディスペンサ陰極。
【請求項14】
前記通路は、前記支柱の側面に沿って延びている請求項11ないし13のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項15】
前記支柱は、側壁を有しており、この側壁は、通路の壁面を形成している請求項14のディスペンサ陰極。
【請求項16】
加熱されたときに仕事関数の低い粒子を放出する材料のためのリザーバと、
仕事関数の低い粒子を阻止するためのブロック層を有する、電子を射出するための少なくとも1つの射出エリアと、射出を抑える材料でカバーされ、前記射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有する射出面と、
前記リザーバから前記射出面への仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするように、前記リザーバと前記射出面とを接続している少なくとも1つの通路とを具備するディスペンサ陰極。
【請求項17】
前記少なくとも1つの通路は、前記非射出エリアに延び、また、前記リザーバから射出エリアへと仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするように前記射出エリアから拡散長の距離内で延びている請求項16ディスペンサ陰極。
【請求項18】
前記射出エリアの上方に設けられた抽出電極をさらに具備し、この抽出電極は、動作中に、射出された電子に対して負のレンズとして機能する静電場を与えるように設けられている前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項19】
前記射出エリアを実質的に囲んでいる壁面をさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項20】
前記射出エリアは、前記壁面内にある請求項19のディスペンサ陰極。
【請求項21】
前記壁面は、前記射出面と、前記射出エリアから拡散長の距離内の1つの、若しくは複数の前記通路とを囲んでいる請求項19又は20のディスペンサ陰極。
【請求項22】
前記壁面は、約20ないし25度、好ましくは約ピアス角度で電気射出エリアから延びている請求項19ないし21のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項23】
前記射出面は、この射出面の凹部に対してディスペンサ陰極の面のレベルの下に設けられている前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項24】
前記凹部の壁面は、約20ないし25度、好ましくは約ピアス角度で傾斜している請求項23のディスペンサ陰極。
【請求項25】
前記射出エリアを加熱するために少なくとも1つのヒータをさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項26】
前記仕事関数の低い粒子を加熱するために少なくとも1つのヒータをさらに具備している前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項27】
前記射出エリアは、この射出エリアを囲んでいる壁面内にあり、この壁面は導電性である、電子を射出するための射出エリアを具備する陰極。
【請求項28】
前記壁面は、前記射出エリアに対して約20ないし25度の角度で実質的に延びている請求項27の陰極。
【請求項29】
陰極は、仕事関数の低い粒子を収容する少なくとも1つのリザーバと、複数の通路とを有しており、これら通路は、前記リザーバ内の仕事関数の低い粒子が通路に入ることを可能にする入口と、前記射出エリアの拡散長の距離だけ離れたところの、前記壁面の出口とを有している請求項28の陰極。
【請求項30】
前記全ての請求項のいずれか1に従った複数のディスペンサ陰極を具備する、複数の電子ビームを発生させるための電子源。
【請求項31】
前記全ての請求項のいずれか1の、少なくとも1つのディスペンサ陰極を具備するリソグラフィーシステム。
【請求項32】
ディスペンサ陰極によって発生される電子ビームを複数の小電子ビームに分割するためのビームスプリッター手段と、各小電子ビームをほぼ別々に変調するためのモジュレータ手段と、所定のパターンに従って小ビームを変調するための前記モジュレータ手段を制御するための制御手段とをさらに具備する請求項31のリソグラフィーシステム。
【請求項33】
前記全ての請求項のいずれか1に従ったリソグラフィーシステムを使用して処理された半導体ウエハ。
【請求項34】
前記全ての請求項のいずれか1に従ったリソグラフィーシステムを使用して半導体ウエハを処理するための方法。
【請求項1】
電子を射出するための少なくとも1つの射出エリアと、射出を抑える材料でカバーされ、前記射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有する射出面と、
加熱されたときに仕事関数の低い粒子を放出する材料のためのリザーバと、
このリザーバから前記射出面への仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするように、前記リザーバと前記射出面とを接続している少なくとも1つの通路とを具備し、前記少なくとも1つの通路は、前記リザーバから前記射出エリアへの仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするように、前記非射出エリアに射出エリアから拡散長の距離だけ離れて延びているディスペンサ陰極。
【請求項2】
前記射出エリアは、仕事関数の低い粒子を阻止するためのブロック層を有している請求項1のディスペンサ陰極。
【請求項3】
前記リザーバの射出側をカバーしている膜を有し、この膜は、仕事関数の低い粒子に対してほぼ不透過である請求項1又は2のディスペンサ陰極。
【請求項4】
前記膜は、射出側面と陰極側面とを有しており、この射出側面は、少なくとも1つの射出エリアと前記少なくとも1つの射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有しており、前記射出エリアは、仕事関数の低い材料でコーティングされ、前記非射出エリアは、射出を抑える材料でコーティングされている請求項2のディスペンサ陰極。
【請求項5】
前記膜は、前記リザーバの射出側をカバーしている金属膜であり、仕事関数の低い粒子のための複数の通路を形成している前記非射出エリアに穿孔が設けられている請求項3又は4のディスペンサ陰極。
【請求項6】
前記通路は、前記射出エリア近くに延びている前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項7】
複数の通路を有し、これらほぼ全ての通路は、前記非射出エリアに延びている前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項8】
前記射出面は、少なくとも1つの凸面を有している前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項9】
前記射出面は、前記射出エリアの位置で凸形状である請求項8のディスペンサ陰極。
【請求項10】
前記射出エリアを支持するための支持構造部がさらに設けられている前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項11】
前記支持構造部は、射出エリアの位置で、前記リザーバまで延びている支柱を有している請求項10のディスペンサ陰極。
【請求項12】
前記支柱は、前記射出面の上形成部を有している請求項11のディスペンサ陰極。
【請求項13】
前記支柱の上形成部は、射出エリアを形成している請求項12のディスペンサ陰極。
【請求項14】
前記通路は、前記支柱の側面に沿って延びている請求項11ないし13のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項15】
前記支柱は、側壁を有しており、この側壁は、通路の壁面を形成している請求項14のディスペンサ陰極。
【請求項16】
加熱されたときに仕事関数の低い粒子を放出する材料のためのリザーバと、
仕事関数の低い粒子を阻止するためのブロック層を有する、電子を射出するための少なくとも1つの射出エリアと、射出を抑える材料でカバーされ、前記射出エリアを囲んでいる少なくとも1つの非射出エリアとを有する射出面と、
前記リザーバから前記射出面への仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするように、前記リザーバと前記射出面とを接続している少なくとも1つの通路とを具備するディスペンサ陰極。
【請求項17】
前記少なくとも1つの通路は、前記非射出エリアに延び、また、前記リザーバから射出エリアへと仕事関数の低い粒子の拡散を可能にするように前記射出エリアから拡散長の距離内で延びている請求項16ディスペンサ陰極。
【請求項18】
前記射出エリアの上方に設けられた抽出電極をさらに具備し、この抽出電極は、動作中に、射出された電子に対して負のレンズとして機能する静電場を与えるように設けられている前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項19】
前記射出エリアを実質的に囲んでいる壁面をさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項20】
前記射出エリアは、前記壁面内にある請求項19のディスペンサ陰極。
【請求項21】
前記壁面は、前記射出面と、前記射出エリアから拡散長の距離内の1つの、若しくは複数の前記通路とを囲んでいる請求項19又は20のディスペンサ陰極。
【請求項22】
前記壁面は、約20ないし25度、好ましくは約ピアス角度で電気射出エリアから延びている請求項19ないし21のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項23】
前記射出面は、この射出面の凹部に対してディスペンサ陰極の面のレベルの下に設けられている前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項24】
前記凹部の壁面は、約20ないし25度、好ましくは約ピアス角度で傾斜している請求項23のディスペンサ陰極。
【請求項25】
前記射出エリアを加熱するために少なくとも1つのヒータをさらに具備する前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項26】
前記仕事関数の低い粒子を加熱するために少なくとも1つのヒータをさらに具備している前記全ての請求項のいずれか1のディスペンサ陰極。
【請求項27】
前記射出エリアは、この射出エリアを囲んでいる壁面内にあり、この壁面は導電性である、電子を射出するための射出エリアを具備する陰極。
【請求項28】
前記壁面は、前記射出エリアに対して約20ないし25度の角度で実質的に延びている請求項27の陰極。
【請求項29】
陰極は、仕事関数の低い粒子を収容する少なくとも1つのリザーバと、複数の通路とを有しており、これら通路は、前記リザーバ内の仕事関数の低い粒子が通路に入ることを可能にする入口と、前記射出エリアの拡散長の距離だけ離れたところの、前記壁面の出口とを有している請求項28の陰極。
【請求項30】
前記全ての請求項のいずれか1に従った複数のディスペンサ陰極を具備する、複数の電子ビームを発生させるための電子源。
【請求項31】
前記全ての請求項のいずれか1の、少なくとも1つのディスペンサ陰極を具備するリソグラフィーシステム。
【請求項32】
ディスペンサ陰極によって発生される電子ビームを複数の小電子ビームに分割するためのビームスプリッター手段と、各小電子ビームをほぼ別々に変調するためのモジュレータ手段と、所定のパターンに従って小ビームを変調するための前記モジュレータ手段を制御するための制御手段とをさらに具備する請求項31のリソグラフィーシステム。
【請求項33】
前記全ての請求項のいずれか1に従ったリソグラフィーシステムを使用して処理された半導体ウエハ。
【請求項34】
前記全ての請求項のいずれか1に従ったリソグラフィーシステムを使用して半導体ウエハを処理するための方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2a】
【図2b】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−40398(P2011−40398A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−196655(P2010−196655)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【分割の表示】特願2006−502750(P2006−502750)の分割
【原出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【出願人】(505152479)マッパー・リソグラフィー・アイピー・ビー.ブイ. (55)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196655(P2010−196655)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【分割の表示】特願2006−502750(P2006−502750)の分割
【原出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【出願人】(505152479)マッパー・リソグラフィー・アイピー・ビー.ブイ. (55)
【Fターム(参考)】
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