ディップスピン塗装装置のバスケット、ディップスピン塗装装置および塗装ライン
【課題】浸漬塗装処理を施したワークを排出する際、ワークの落下距離を小さくすることで、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることを目的とする。
【解決手段】ワークWを塗料に浸漬した後、塗料から出して回転させることで、ワークWの表面に塗料を付着させるディップスピン塗装装置に用いるバスケット2である。バスケット2は、ワークWが収容される有底円筒形状のバスケット本体3と、バスケット本体3の底部5に形成され、内側から外側に向かって上方に傾斜するすり鉢形状の斜面6と、底部5に設けられ、塗料が付着したワークWを排出するための排出口7と、排出口7を開閉する栓12とを備える。排出口7は、底部5のうち、斜面6の内側に設けられることを特徴とする。
【解決手段】ワークWを塗料に浸漬した後、塗料から出して回転させることで、ワークWの表面に塗料を付着させるディップスピン塗装装置に用いるバスケット2である。バスケット2は、ワークWが収容される有底円筒形状のバスケット本体3と、バスケット本体3の底部5に形成され、内側から外側に向かって上方に傾斜するすり鉢形状の斜面6と、底部5に設けられ、塗料が付着したワークWを排出するための排出口7と、排出口7を開閉する栓12とを備える。排出口7は、底部5のうち、斜面6の内側に設けられることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディップスピン塗装装置に用いるバスケットおよびこのようなバスケットを用いたディップスピン塗装装置ならびに塗装ラインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ねじやワッシャ等の金属物品には防錆処理が施される。環境問題に配慮するため、亜鉛メッキの耐食性処理として、六価クロメート処理から三価クロメート処理への代替が進められている。しかしながら、クロムを含まないクロムフリーの亜鉛メッキ技術が望まれている。
【0003】
一方、亜鉛メッキに代わるクロムフリー化技術として、ディップスピン塗装装置を用いて、バインダ中に金属粒子を分散させた塗料(防錆剤)を金属物品の表面に付着させる方法が知られている。
【0004】
ディップスピン塗装装置は、ねじやワッシャ等の金属系小物部品であるワークを収容するバスケットを、装置下部の塗料槽に入れた塗料に浸漬した後、塗料から引き揚げて高速回転させることで、ワークの表面に付着した余分な塗料を遠心脱液する装置である。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
浸漬塗装処理がなされて表面に塗料が付着したワークは、バスケットから排出される。そして、次の焼付・乾燥工程に送られて、表面の塗膜が乾燥される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願WO2007/070511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたような、ディップスピン塗装装置を用いた塗装ラインでは、表面の塗膜が乾燥していないワークをバスケットから排出する際、バスケットを180度反転させているため、ワークの落下距離が大きくなり、未乾燥の塗膜が傷つく虞がある。
【0008】
そこで、本発明では、ワークを排出する際におけるワークの落下距離を小さくすることで、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明によると、ワークを塗料に浸漬した後、塗料から出して回転させることで、ワークの表面に塗料を付着させるディップスピン塗装装置に用いるバスケットであって、前記ワークが収容される有底円筒形状のバスケット本体と、前記バスケット本体の底部に形成され、内側から外側に向かって上方に傾斜するすり鉢形状の斜面と、前記底部に設けられ、塗料が付着した前記ワークを排出するための排出口と、前記排出口を開閉する蓋部材とを備え、前記排出口は、前記底部のうち、前記斜面の内側に設けられたことを特徴とする。
【0010】
このようなバスケットによると、塗料が付着したワークを排出するための排出口がバスケット本体の底部に設けられているので、バスケットを180度反転させてワークを排出する必要がなくなり、ワークの落下距離を小さくすることができる。
したがって、浸漬塗装処理が済んで、表面に塗料が付着したワークをバスケットから排出する際、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることができる。
バスケット本体の底部に形成された斜面の内側で、斜面と連続して排出口を設けた場合、ワークを円滑に排出口から排出することができる。なお、排出口を斜面と不連続に設けることもできる。
【0011】
上述したバスケットにおいて、前記蓋部材は、前記バスケット本体に対して相対的に上下動する栓であることを特徴とする。
【0012】
このようなバスケットによると、蓋部材が、バスケット本体に対して相対的に上下動することで排出口を開閉する栓であることにより、栓がバスケット本体の内側で相対的に上昇して排出口を開放する場合、ワークの落下距離を小さく設定することができる。栓がバスケット本体の底部から相対的に下降して排出口を開放する場合、ワークの落下距離を実質的に栓の下降ストロークまで小さく設定することができる。
したがって、ワークの落下距離をより小さく設定することが可能となり、完成した製品の品質をより一層向上させることができる。
なお、バスケット本体に対して相対的に上下動する栓とは、少なくともバスケット本体または栓の一方を固定して他方を上下動させること、またはバスケット本体と栓の両方を上下動させることで、バスケット本体に対する栓の相対的な位置を変化させて、バスケット底部の排出口を開閉することを意味する。
【0013】
さらに、前記栓は、外側から内側に向かって上方に傾斜する斜面を有することを特徴とする。
【0014】
このようなバスケットによると、バスケット本体の斜面とは逆向きの傾斜を有する斜面を栓に設けたことにより、表面に未乾燥の塗装が付着したワークをバスケットの排出口から排出する際、栓の斜面を利用して、ワークを円滑に排出することができる。
バスケット本体に対して栓が相対的に上昇することで排出口を開放する構成の場合、栓を覆ってバスケットの底部にワークが堆積しても、栓が相対的に上昇すると、栓の斜面を滑ってワークが落下した後、バスケット本体の斜面を滑ってワークが落下するので、ワークの排出を円滑に行うことができる。
バスケット本体に対して栓が相対的に下降することで排出口を開放する構成の場合、バスケット本体の斜面を滑り、排出口から落下したワークは、栓の斜面を滑って広がることになる。したがって、排出されたワーク同士の重なりを少なくすることができる。
【0015】
上述したバスケットにおいて、前記バスケットの内部を周方向に等分割する仕切りを設けたことを特徴とする。
【0016】
このようなバスケットによると、仕切りによって等分割されたバスケット本体内部に等量のワークを収容することにより、バスケット自体や内容物の重心が大きく変動することを防止することができる。したがって、ワークを収容したバスケットを塗料に浸漬した後、塗料から引き揚げて高速回転させる際、バスケットの動バランスを取ることができる。
【0017】
上述した課題を解決するため、本発明は、塗料を入れる塗料槽と、上述したバスケットと、前記塗料槽または前記バスケットの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記バスケットを前記塗料槽内の塗料に浸漬させた後、前記塗料から引き揚げる移動装置と、前記塗料から引き揚げた前記バスケットを回転させるバスケット回転装置と、前記バスケットの蓋部材を開閉する開閉機構と、前記バスケットの排出口から排出されるワークを、前記バスケットの下方で受け取るワーク受取部とを含むディップスピン塗装装置を提供する。
【0018】
このようなディップスピン塗装装置によると、移動装置によって、ワークを収容したバスケットと塗料を入れた塗料槽の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、バスケットを塗料に浸漬させた後、塗料から引き揚げる。その後、バスケット回転装置によって、塗料から引き揚げたバスケットを高速回転させ、ワークの表面に付着した余分な塗料を遠心脱液する。そして、バスケットの蓋部材を開閉する開閉機構によって、バスケットの排出口を開放して、排出口から排出されるワークをワーク受取部で受け取る。
上述したように、塗料が付着したワークを排出するための排出口がバスケット本体の底部に設けられているので、バスケットを180度反転させてワークを排出する必要がなくなり、ワークの落下距離を小さくすることができる。
【0019】
上述した課題を解決するため、本発明は、ワークを供給するワーク供給ステーションと、ワークにディップスピン塗装を施す浸漬塗装ステーションと、塗料が付着したワークを搬出するワーク搬出ステーションとを含む塗装ラインであって、
上述したバスケットと、
前記バスケットを前記各ステーション間で搬送するバスケット搬送装置と、
前記ワーク供給ステーションにおいて、前記バスケットにワークを供給するワーク供給装置と、前記浸漬塗装ステーションに設置され、塗料を入れる塗料槽と、前記塗料槽または前記バスケットの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記バスケットを前記塗料槽内の塗料に浸漬させた後、前記塗料から引き揚げる移動装置と、前記塗料から引き揚げた前記バスケットを回転させるバスケット回転装置とを含むディップスピン塗装装置と、
前記ワーク搬出ステーションに設けられ、前記バスケットの排出口から排出されるワークを前記バスケットの下方で受け取るワーク受取部と、
前記ワーク受取部の上で、前記バスケットの蓋部材を開閉する開閉機構と、
を含む塗装ラインを提供する。
【0020】
このような塗装ラインによると、ワークを収容したバスケットは、バスケット搬送装置によって、ワーク供給ステーション、浸漬塗装ステーション、ワーク搬出ステーションの間で搬送される。その間、ワーク供給ステーションでは、ワーク供給装置によりバスケットにワークが供給され、浸漬塗装ステーションでは、ディップスピン塗装装置によりワークに浸漬塗装処理が施され、ワーク搬出ステーションでは、開閉機構によって開放されたバスケットの排出口から排出されたワークをワーク受取部で受け取る。
上述したように、塗料が付着したワークを排出するための排出口がバスケット本体の底部に設けられているので、バスケットを180度反転させてワークを排出する必要がなくなり、ワークの落下距離を小さくすることができる。
【0021】
上述した塗装ラインにおいて、前記ワーク供給ステーションと、前記浸漬塗装ステーションと、前記ワーク搬出ステーションが、円周上に等間隔で配置されたことを特徴とする。
【0022】
このような塗装ラインによると、各ステーションを円周上に等間隔で配置したことにより、ステーション間でのバスケットの搬送を公転動作により行うことができ、また、各ステーションに位置する各バスケットを同期して公転動作させ、次のステーションへ搬送することができる。したがって、ワークの供給から搬出までの全処理工程に要する時間を短縮することが可能となる。さらに、各ステーション間におけるバスケットの移動距離が等しくなるので、バスケットの移動時間の調整に要するタイムロスが発生せず、浸漬塗装ステーションにおけるワークの浸漬塗装処理を行う間、ワーク供給ステーションとワーク搬出ステーションでは、それぞれワークの供給と搬出を同時に並行して行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、塗料が付着したワークを排出するための排出口がバスケット本体の底部に設けられているので、バスケットを180度反転させてワークを排出する必要がなくなり、ワークの落下距離を小さくすることができる。
したがって、浸漬塗装処理が済んで、表面に塗料が付着したワークをバスケットから排出する際、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗装ラインの平面図である。
【図2】図1のI−I断面図であり、ワーク供給ステーションと浸漬塗装ステーションを示す。
【図3】図1のII−II断面図であり、浸漬塗装ステーションとワーク搬出ステーションを示す。
【図4】バスケット搬送装置の説明図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るバスケットの説明図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図6】浸漬塗装ステーションにおけるバスケットの動作を説明する説明図である。
【図7】浸漬塗装ステーションにおけるバスケットの動作を説明する説明図である。
【図8】浸漬塗装ステーションにおけるバスケットの動作を説明する説明図である。
【図9】浸漬塗装ステーションにおけるバスケットの動作を説明する説明図である。
【図10】浸漬塗装ステーションにおけるバスケットの動作を説明する説明図である。
【図11】バスケット底部の排出口を開放する動作を説明する説明図であり、(a)は蓋部材である栓が開く前の状態、(b)は栓が開いた後の状態を示す。
【図12】バスケット底部の排出口を開閉する蓋部材の変形例を示す図である。
【図13】バスケット底部の排出口を開閉する蓋部材の変形例を示す図である。
【図14】バスケット底部の排出口を開閉する蓋部材の変形例を示す図である。
【図15】バスケット底部の排出口を開閉する蓋部材の変形例を示す図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係るディップスピン塗装装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
初めに、亜鉛メッキに代えて、バインダ中に金属粒子を分散させた塗料(防錆剤)を金属物品の表面に塗装する防錆処理方法について簡単に説明する。
【0026】
このような防錆処理方法では、例えば、鉄製のワークに対して、ベースコート塗装とトップコート塗装を含む塗装処理が行われる。ベースコート塗装は2回繰り返して行われ、それぞれの塗装処理の後に焼付・乾燥工程が行われる2コート・2ベークを基本とする。トップコート塗装は通常1回行われ、塗装処理の後に焼付・乾燥工程が行われる。
【0027】
<前処理>
塗装に際して、ワークは、表面に汚れがないこと、よく乾燥していること、埃や油脂の付着がないことが非常に重要になる。そのため、前処理として、脱脂処理、ショットブラスト処理、リン酸亜鉛処理をワークに施す。
【0028】
<ベースコート塗装処理>
ベースコート塗装に用いる塗料(防錆剤)は、亜鉛フレークとバインダーを含む。
ベースコート塗装は、後述するディップスピン塗装装置を用いて行う。
ディップスピン塗装装置による浸漬塗装処理がなされ表面に塗料が付着したワークは、乾燥炉へ搬送され、焼付・乾燥工程を経て、表面の塗膜が乾燥される。
【0029】
<トップコート塗装処理>
トップコート塗装はベースコートの犠牲防食機能をより強化し、コーティングされた製品の寿命をさらに延ばすためのものである。
トップコート塗装に用いる塗料は、ワークの種類に応じて、有機系または無機系の有色又はクリアー塗料を使用する。
【0030】
トップコート塗装は、ベースコート塗装と同様、後述するディップスピン塗装装置を用いて行われ、焼付・乾燥工程を経て、表面の塗膜が乾燥される。
【0031】
次に、本発明の一実施形態に係る塗装ラインをベースコート塗装処理ラインに適用した例について説明する。
【0032】
図1から図3に示すように、本実施形態に係る塗装ライン1は、平面視で円形に配置されており、ワーク供給ステーションAと、浸漬塗装ステーションBと、ワーク搬出ステーションCとを含んで構成される。各ステーションは、円周上に等間隔、すなわち120度の間隔で配置される。
ワークWが収容されるバスケット2は、後述するバスケット搬送装置20によって、ワーク供給ステーションA、浸漬塗装ステーションB、ワーク搬出ステーションCの順に搬送されるとともに、各ステーションにおける所定位置で停止する間に様々な処理がなされる。そして、ワーク搬出ステーションCでバスケット2内のワークWが排出される。排出されたワークWは、ワーク受取部の一例としてのコンベア50上で受け取られ、乾燥炉55に搬送される。
ワークWが排出された後、バスケット搬送装置20は、ワーク搬出ステーションCからワーク供給ステーションAへとバスケット2を搬送する。このように、バスケット搬送装置20は、バスケット2を保持した状態で塗装ライン1に沿った円周上を移動する。
【0033】
次に、塗装ライン1の各部の構成について説明する。
【0034】
<バスケット搬送装置>
図1および図4に示すように、バスケット搬送装置20は、塗装ライン1の中央に設けられたモータMと、このモータMとギアで噛合して回転駆動される回転盤21と、回転盤21の上に固定され、円周上に等間隔で3組配置された平面視C字形の支持枠22と、各支持枠22の両端にそれぞれ固定され、挿入爪23を進退自在且つ上下動自在に移動させる爪移動機構24とを含む。
【0035】
図4(a)および図4(b)に示すように、爪移動機構24は、挿入爪23を進退自在に移動させるエアシリンダ25と、このエアシリンダ25の作動方向と平行に設けられており、挿入爪23の前進および後退移動を案内するレール26と、挿入爪23を上下に移動させる昇降用エアシリンダ27と、挿入爪23の上昇および下降移動を案内するレール(図示せず)と、塗装ライン1の中央に設けられており、エアシリンダ25および昇降用エアシリンダ27にエアを供給するためのスイベル式エアージョイント(図示せず)および切替バルブ(図示せず)とを含む。
【0036】
挿入爪23は、後述するバスケット2のフランジ部4と係合可能な上爪および下爪を有し、少なくとも下爪は、平面視で円形の蓋10をグラつくことなく保持できるように、平面視でV字に凹んだ輪郭を有している。
【0037】
<バスケット>
図5(b)に示すように、バスケット2は、ワークWを収容する有底円筒形状のバスケット本体3と、バスケット本体3の底部5に形成され、内側から外側に向かって45度の角度で上方に傾斜するすり鉢形状の斜面6と、底部5に設けられ、塗料が付着したワークWを排出するための排出口7と、排出口7を開閉する蓋部材としての栓12から主に構成される。
バスケット2は、外周壁に多数のパンチ穴8が形成されたパンチングメタルまたはメッシュ地の外周壁を有する構成として、処理するワークの種類に応じて使い分けられる。必要に応じて、パンチングメタルとメッシュ地の両方を重ねて使用することもできる。
【0038】
図4(a)および図5(b)に示すように、バスケット本体3は、上部が円形の蓋10で覆われている。蓋10はバスケット本体3にネジ等で固定されている。
蓋10は、外周部に円形のフランジ部4が設けられているとともに、中央にはワークWを供給するための3つの開口部11が等間隔に設けられている。
さらに、蓋10の中心部では、栓12のシャフト15が上下に貫通して延びている。
【0039】
バスケット2の排出口7は、バスケット本体3の底部5のうち、斜面6の内側に形成されている。排出口7は斜面6と連続して形成されており、斜面6を滑って落下するワークWが排出口7へと導かれるようになっている。
【0040】
図5(b)に示すように、バスケット2の排出口7は、栓12によって閉じられている。
栓12は、バスケット本体3の斜面6とは逆向きに外側から内側に向かって45度の角度で上方に傾斜する斜面13を有する栓本体14と、栓本体14に固定され、バスケット本体3の内部を上下に延びるシャフト15と、シャフト15の上端に形成され、後述する開閉機構30の爪31と係合する係合部16と、シャフト15がその内部を通り、伸縮自在に重なる2つの筒部17と、蓋10と栓本体14との間に介在して、栓本体14をバスケット本体3の排出口7に向けて付勢するばね18と、蓋10の中心部に固定されてシャフト15の上下動を案内するとともに、ばね18の一端を受けるばね座を形成する案内部材19とから構成される。
【0041】
図5(a)に示すように、バスケット本体3の内部は、3枚の仕切りPによって周方向に三等分されている。各仕切りPは、栓本体14が上昇した場合でも、蓋10よりも下位に位置する高さ寸法になっている。
なお、仕切りPの枚数は、図示したように3枚に限定されず、処理するワークWの種類に応じて、2枚や4枚等適宜設定することができる。
【0042】
<開閉機構>
図1に示すように、開閉機構30は、ワーク搬出ステーションCに設けられ、長尺で先端が分岐した爪31と、この爪31を進退自在に移動させるエアシリンダ(図示せず)と、バスケット2を保持した状態で昇降可能に構成されたバスケット搬送装置20の爪移動機構24とを含む。爪31は、エアシリンダの作動により、栓12の係合部16と係合・離脱可能となっている。
そして、図11(a)および図11(b)に示すように、バスケット2は、栓12の係合部16に開閉機構30の爪31が係合した状態で、バスケット本体3が栓12に対して相対的に押し下げられることにより、バスケット2の排出口7が開放される構成となっている。
また、栓12の係合部16に開閉機構30の爪31が係合した状態で、バスケット本体3が栓12に対して相対的に押し上げられることにより、排出口7が閉じられる構成となっている。
なお、栓本体14の上昇ストロークを大きくするため、爪31を昇降させるための昇降用エアシリンダ(図示せず)を設け、バスケット2の下降に合わせて爪31を上昇させてもよい。
【0043】
<ワーク供給ステーション>
図1および図2に示すように、ワーク供給ステーションAは、振動フィーダ35と、計量・分割投入機構36と、ホッパ37とを含むワーク供給装置38を備えている。ホッパ37は、一回に供給されるワークWを三等分して、バスケット2の蓋10に設けた3つの開口部11から等量ずつ投入することで、仕切りPによって区画されたバスケット本体3内部の各スペースにワークWを均等に分配するようになっている。詳細には、ホッパ37は120度ずつ回転可能に構成され、下部に3台の小型ダンパ(図示せず)を有している。ホッパ37の回転により計量・分割投入機構36から供給されたワークWを3台の小型ダンパに等量ずつ滞留させた後、バスケット2の3つの開口部11の上からワークWを投入するように構成される。
なお、ホッパ37は、バスケット搬送装置20に保持されたバスケット2が停止する所定位置において、バスケット2の上部に設けられている。
【0044】
<浸漬塗装ステーション>
図1から図3に示すように、浸漬塗装ステーションBは、ディップスピン塗装装置40を備えている。
ディップスピン塗装装置40は、塗料を入れる塗料槽41と、供給管と戻り管によって塗料槽41と接続され、塗料を循環供給するための温調・撹拌用タンク42と、塗料槽41をバスケット2に対して上下動させて、バスケットを塗料槽41内の塗料に浸漬させた後、塗料から引き揚げる移動装置としてのエアリフタ43と、塗料から引き揚げたバスケット2を高速回転させるバスケット回転装置44と、バスケット傾動装置(図示せず)とを含み構成される。
【0045】
塗料槽41はエアリフタ43の上に載置されている。そして、図1に示すように、塗料槽41は、温調・撹拌用タンク42と接続されており、塗料の温度管理がなされるとともに、亜鉛フレークが沈澱しないように所定の速度で塗料が撹拌される。なお、塗料の供給は温調・撹拌用タンク42を通して行われる。
エアリフタ43はエアバッグ(図示せず)を備えており、このエアバッグに供給するエアの量を調整することで、バスケット2に対する塗料槽41の相対的な高さ位置を変化させることができるようになっている。
バスケット回転装置44は、バスケット2を保持するチャック機構45と、このチャック機構45によって保持したバスケット2を、5〜20rpmの低速回転と300〜500rpmの高速回転で切り換えて正逆方向に回転させるモータ46を含む。
バスケット傾動装置(図示せず)は、回転中心RCを中心としてバスケット回転装置44を傾動させる公知の機構を備える。バスケット傾動装置は、60〜85度の角度でバスケット回転装置44を傾動可能に構成される。
なお、バスケット搬送装置20に保持されたバスケット2が停止する所定位置において、バスケット回転装置44のチャック機構45はバスケット2の真上に位置し、塗料槽41はバスケット2の真下に位置する。
【0046】
<ワーク搬出ステーション>
図1および図3に示すように、ワーク搬出ステーションCは、上述した開閉機構30の爪31と、この爪31を進退自在に移動させるエアシリンダ(図示せず)と、ワーク受取部としてのコンベア50とを備えている。
バスケット搬送装置20に保持されたバスケット2が停止する所定位置において、爪31はバスケット2の上方に位置しており、コンベア50はバスケット2の下方位置から乾燥炉55まで延びている。コンベア50は、水平方向に所定角度の範囲内で揺動可能に構成される。
【0047】
以上に述べた各装置は、制御装置(図示せず)によって、次に説明する各順の動作を行うように制御される。
【0048】
以上に述べた塗装ライン1の動作について、各ステーションごとに詳細に述べる。
【0049】
<ワーク供給ステーションでの動作>
図1および図2に示すように、ワークWは、ワーク供給装置38によりバスケット2の蓋10に設けた3つの開口部11から投入される。一回に供給されるワークWは、ホッパ37によって三等分され、各開口部11から等量ずつ投入されることで、仕切りPによって区画されたバスケット本体3内部の各スペースに均等に分配される。
ワークWの投入が終わると、塗装ライン1の中央に設けたモータMが回転して、回転盤21が120度分だけ回転駆動される。この回転盤21の回転により、ワークWの投入を終えたバスケット2は、ワーク供給ステーションAから浸漬塗装ステーションBへと移動する。
【0050】
<浸漬塗装ステーションでの動作>
図6から図10を参照して、浸漬塗装ステーションBでの動作を説明する。なお、これらの図面においては、説明の便宜上、バスケット搬送装置20の爪移動機構24を90度回転させた位置で示している。
【0051】
図6に示すように、浸漬塗装ステーションBにおいて、バスケット搬送装置20に保持されたバスケット2は、爪移動機構24の昇降用エアシリンダ27(図4(b)参照)が作動することで、バスケット2のフランジ部4の内周がバスケット回転装置44のチャック機構45のチャック部45Aと対面する位置まで上昇する。
次に、図7に示すように、チャック部45Aが拡径してバスケット2の蓋10をチャックすることによりバスケット2を保持する。図8に示すように、チャック機構45がバスケット2を保持したままの状態でバスケット搬送装置20の2つの挿入爪23が後退すると、バスケット2がバスケット搬送装置20からディップスピン塗装装置40に持ち替えられる。浸漬塗装処理がなされる間、バスケット搬送装置20は、2つの挿入爪23が後退した状態で待機する。
【0052】
続いて、図9に示すように、エアリフタ43のエアバッグ(図示せず)にエアが供給されると、エアリフタ43が上昇し、塗料槽41がバスケット2に対して上昇する。バスケット2内のワークWを塗料槽41内の塗料の液面よりも下方に位置させ、ワークWを塗料に浸漬する。この間、バスケット回転装置44のモータ46により、5〜20rpmの速度で正逆方向にバスケット2を低速回転させ、ワークW全体に塗料を付着させる。
ワークWを所定時間塗料に浸漬させた後、エアバッグ(図示せず)のエア圧を調整することでエアリフタ43を下降させ、バスケット2を塗料から引き揚げる。このような浸漬塗装処理により、バスケット2内のワークWは、表面に塗膜が形成される。
【0053】
図3に示すように、塗料から引き揚げられたバスケット2は、処理するワークWの種類に応じて、バスケット傾動装置(図示せず)によって60〜85度の角度で傾動される。
バスケット2の傾動後、バスケット2は、モータ46により5〜20rpmの速度で低速回転される。このようにバスケット2を傾動させた状態で低速回転させることで、ワークWが凹部を有する等複雑な形状である場合でも、凹部に溜まった塗料を排出したり、エアーポケットを形成する凹部内へ確実に塗料を付着させたりすることができる。
なお、処理するワークWの種類によっては、バスケット2の傾動は不要である。
その後、バスケット傾動装置(図示せず)はバスケット2を垂直位置に戻す。
【0054】
次に、図10に示すように、エアリフタ43が再度上昇して、バスケット2の底部5が塗料の液面よりも僅かに上位になる位置まで塗料槽41を上昇させる。この位置において、モータ46により、バスケット2を300〜500rpmの速度で高速回転させる。
バスケット2を高速回転させると、バスケット本体3の底部5に貯まったワークWは、斜面6上を転がりながら外側へと移動し、遠心脱液される。そして、ワークWの表面には、塗膜が均一な厚さで形成される。ワークWが斜面6上で転がることによって、ワークWの凹部からの塗料の排出や凹部内への塗料の付着を確実に行うことができる。
【0055】
ワークWから遠心脱液された余分な塗料は、バスケット本体3の外周面に形成された多数の開口から排出され、塗料槽41の壁面に衝突した後、塗料槽41に戻る。そのため、塗料槽41の外部に塗料が排出されることはない。
さらに、塗料の供給を温調・撹拌用タンク42で行うことができるので、塗装ライン1の稼働を停止した上で塗料槽41に塗料を供給する必要がなくなり、タイムロスをなくすことができる。
【0056】
図5(a)に示すように、ワークWは、仕切りPによって円周方向に三等分に区画された各スペースに等量ずつ収容されているので、バスケット2を高速回転させる場合でも、バスケット2の動バランスを取ることができる。
【0057】
遠心脱液処理が終わると、図6に示すように、エアリフタ43が下降して、バスケット2の底部5よりも低い位置に塗料槽41を下降させる。塗料槽41を下降させる間、バスケット搬送装置20の2つの挿入爪23が前進して、バスケット2のフランジ部4と係合する。そして、ディップスピン塗装装置40のチャック機構45がバスケット2の蓋10から離脱する。この状態で2つの挿入爪23が下降して、バスケット2がバスケット搬送装置20に持ち替えられる。
【0058】
図1に示すように、浸漬塗装ステーションBでの処理が終わると、モータMが回転して、回転盤21が120度分だけ回転駆動される。この回転盤21の回転により、ワークWの浸漬塗装処理を終えたバスケット2は、浸漬塗装ステーションBからワーク搬出ステーションCへと移動する。
【0059】
<ワーク搬出ステーションでの動作>
バスケット搬送装置20に保持され、ワーク搬出ステーションCへと移動したバスケット2は、ワーク受取部としてのコンベア50の上で排出される。
図1および図11に示すように、ワーク搬出ステーションCにおいて、バスケット搬送装置20に保持されたバスケット2が所定位置で停止すると、開閉機構30の爪31が前進して栓12の係合部16に係合する。そして、バスケット搬送装置20の爪移動機構24が2つの挿入爪23を下降させると、バスケット2が下降する。すなわち、栓本体14はバスケット本体3に対して相対的に上昇することになる。その結果、バスケット本体3の底部5に設けられた排出口7が開放され、ワークWがコンベア50の上に排出される。
【0060】
図11(a)に示すように、浸漬塗装ステーションBから搬送されたバスケット2内のワークWは、遠心力の作用によりバスケット2の外側に寄った状態で堆積している。この状態で栓本体14が上昇すると、図11(b)に示すように、ワークWはバスケット本体3の斜面6を滑り、排出口7へと円滑に導かれることになる。
ワークWが栓本体14の上に堆積する場合でも、バスケット本体3の斜面6と逆向きの傾斜を有する斜面13を栓本体14に設けたことにより、ワークWを円滑に排出することができる。つまり、栓本体14が上昇すると、栓本体14の斜面13を滑ってワークWが落下した後、バスケット本体3の斜面6を滑ってワークWが落下するので、ワークWの排出を円滑に行うことができる。
【0061】
このように、ワークWの排出を行うための排出口7をバスケット本体3の底部5に設けるとともに、バスケット本体3に対して相対的に上昇することで排出口7を開放する栓本体14を設けたことにより、ワークWの落下距離hを小さくすることができる。つまり、下降したバスケット2の底部5とコンベア50の上面との間の落下距離hは、バスケット2から排出されて堆積したワークWがコンベア50上を搬送される際、バスケット2の底部5に接触せずに搬送できる高さまで小さく設定できるので、従来のようにバスケット2を180度反転させてワークWを排出する構成と比較すると、落下距離hを大幅に小さくすることができる。
なお、栓本体14を上昇させる速度を遅く設定すると、回転移動するコンベア50上に堆積するワークWの高さを低くすることができるので、落下距離hをより小さくすることが可能となる。
このようにワークWの落下距離hを小さくすることで、浸漬塗装処理が済んで、表面に塗料が付着したワークWをバスケット2から排出する際、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることができる。
【0062】
ワークWの排出が終わると、バスケット搬送装置20の爪移動機構24が2つの挿入爪23を上昇させて、バスケット2を上昇させる。そして、開閉機構30の爪31が後退する。バスケット2が上昇すると、バスケット本体3に対する栓本体14の相対的な高さ位置が変化して、排出口7が閉じられる。
その後、塗装ライン1の中央に設けたモータMが回転して、回転盤21が120度分だけ回転駆動される。この回転盤21の回転により、ワークWの排出を終えたバスケット2は、ワーク搬出ステーションCからワーク供給ステーションAへと移動する。以後は、同様の処理工程を繰り返す。
【0063】
一方、コンベア50上に排出された未乾燥のワークWは、乾燥炉55(図1参照)へ搬送され、焼付・乾燥工程を経て、表面の塗膜が乾燥される。コンベア50は水平方向に所定角度の範囲内で首振りしながらワークWを搬送するので、ワークW同士の重なりを少なくし乾燥炉55の幅を有効に利用して、焼付・乾燥工程を行うことができる。
焼付・乾燥工程を終えて1回目のベースコート塗装が施されたワークWは、再度塗装ライン1のワーク供給ステーションAから順番に供給され、2回目のベースコート塗装処理がなされる。そして、2回のベースコート塗装と焼付・乾燥工程が完了すると、ワークWは次のトップコート塗装処理へと搬送される。
【0064】
塗装ライン1では、3つのバスケット2が円周上に等間隔で保持され、それぞれワーク供給ステーションA、浸漬塗装ステーションB、ワーク搬出ステーションCでの処理が同時に並行して行われる。そして、各ステーションでの処理が終了すると、バスケット搬送装置20が3つのバスケット2を同時に次のステーションへと搬送する。
【0065】
本実施形態の塗装ライン1によると、下記のような優れた効果を奏する。
(1)塗料が付着したワークWを排出するための排出口7がバスケット本体3の底部5に設けられているので、ワークWの落下距離hを小さくすることができる。そのため、浸漬塗装処理が済んで、表面に塗料が付着したワークWをバスケット2から排出する際、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることができる。
(2)栓本体14がバスケット本体3の内側で相対的に上昇して排出口7を開放する構成のため、ワークWの落下距離hをより小さく設定することが可能となり、完成した製品の品質をより一層向上させることができる。
(3)バスケット本体3の斜面6とは逆向きの傾斜を有する斜面13を栓本体14に設けたことにより、ワークWをバスケット2の排出口7から排出する際、栓本体14の斜面13を利用して、ワークWを円滑に排出することができる。
(4)バスケット本体3の内部が仕切りPによって周方向に三等分され、それぞれに等量のワークが収容されることにより、バスケット2自体や内容物であるワークWの重心が大きく変動することを防止することができる。したがって、ワークWを収容したバスケット2を高速回転させる際も、バスケット2の動バランスを取ることができるので、ハンマリング現象に起因した大きな振動がディップスピン塗装装置40に発生することを防止できる。
(5)ワーク供給ステーションA、浸漬塗装ステーションB、ワーク搬出ステーションCを円周上に等間隔で配置したことにより、ステーション間でのバスケット2の搬送を公転動作により行うことができ、また、各ステーションに位置する各バスケット2を同期して公転動作させ、次のステーションへ搬送することができる。したがって、ワークWの供給から搬出までの全処理工程に要する時間を短縮することが可能となる。さらに、各ステーション間におけるバスケット2の移動距離が等しくなるので、バスケット2の移動時間の調整に要するタイムロスが発生せず、各ステーションで同時並行して行った処理が終了した後、3つのバスケット2を一度に次のステーションへ搬送することができる。したがって、高効率で自動化を実現することができる。
【0066】
(6)ワークWを塗料に浸漬する間、バスケット回転装置44のモータ46により、バスケット2を正逆方向に低速回転させるため、ワークWの表面に塗料を付着させることができる。
(7)バスケット本体3の底部5にすり鉢形状の斜面6を設けたことにより、バスケット2を高速回転させると、バスケット本体3の底に貯まったワークWが斜面6上を転がりながら外側へと移動するので、ワークWの凹部からの塗料の排出や凹部内への塗料の付着を確実に行うことができる。
(8)ディップスピン塗装装置40は、塗料から引き揚げたバスケット2を傾動させた後、低速回転させるので、ワークWの凹部に溜まった塗料を排出したり、エアーポケットを形成する凹部内へ確実に塗料を付着させたりすることができる。
(9)ワークWから遠心脱液された余分な塗料は、塗料槽41の壁面に衝突した後に塗料槽41に戻るので、塗料槽41の外部に塗料が排出されることがなくなる。したがって、排液処理を必要としないクローズ化した塗装ライン1を構築できる。
(10)塗料槽41と接続される温調・撹拌用タンク42をディップスピン塗装装置40の外部に設置し、塗料の供給を温調・撹拌用タンク42で行うことができるので、塗装ライン1の稼働を停止した上で塗料槽41に塗料を供給する必要がなくなり、塗料の供給に要するタイムロスをなくすことができる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態に係る塗装ライン1について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
例えば、バスケット搬送装置20は回転盤21を用いた構成に限定されず、支持枠22がレールに沿って移動する構成等、他の如何なる公知の構成を用いることもできる。また、爪移動機構24の挿入爪23および開閉機構30の爪31は、エアシリンダではなく、油圧シリンダ等の他の公知の機構を用いて移動させることもできる。塗料槽41を昇降させるエアリフタ43も、エアシリンダや油圧シリンダを含む他の公知の機構を用いることができる。また、バスケット2を塗料槽41に対して相対的に移動させる移動装置として、バスケット回転装置44のチャック機構45が上下動する構成としてもよい。もちろん、上下動するチャック機構45とエアリフタ43によって、移動装置を構成することもできる。バスケット2を保持する構成として、バスケット搬送装置20の爪移動機構24やディップスピン塗装装置40に設けたバスケット回転装置44のチャック機構45は、上述した実施形態の例に限定されず、他の如何なる公知の構成を用いることもできる。
【0068】
バスケット本体3の内部を周方向に等分割する仕切りPの枚数も、処理するワークWの種類に応じて適宜増減することができる。バスケット本体3の底部5に設けた斜面6の傾斜角度や栓本体14の斜面13の傾斜角度も45度に限定されず、適宜設計変更することができる。バスケット本体3の斜面6の傾斜角度を大きくすると、遠心力の作用によりバスケット2の外周側に集ったワークWの排出を確実に行うことができる。
上述した実施形態において、複数回にわたるベースコート塗装処理とトップコート塗装処理に合わせて、適宜必要数の塗装ライン1を設けることもできる。例えば、塗装ライン1を2つ設け、1回目のベースコート塗装処理と2回目のベースコート塗装処理を異なる塗装ライン1で行うことも可能である。また、塗料槽41内の塗料を入れ替えることで、ベースコート塗装処理とトップコート塗装処理の両方を1つの塗装ライン1で行うこともできる。さらに、塗料槽41に入れる塗料を変更することで、防錆処理以外の様々な塗装処理に塗装ライン1を用いることが可能である。
【0069】
以下、図12から図15を参照して、バスケット2の変形例を説明する。
図12(a)および図12(b)に示すように、バスケット60は、バスケット本体63の底部65に設けた排出口67が底板61によって開閉される。底板61は、バスケット本体63の底部65の一端に設けたヒンジ68に接続される。そして、ピストンロッド69が底板61を下から支持することで、排出口67が閉じられる。
バスケット60からワークWを排出する際は、図12(b)に示すように、ピストンロッド69を縮ませる。ピストンロッド69が縮むと、底板61の自重とワークWの重さにより、ヒンジ68を中心として底板61が回転して排出口67が開放される。
バスケット60内のワークWは、バスケット本体63の斜面66を滑って落下した後、排出口67からコンベア50の上に排出される。
このような構成によると、ワークWを排出するための排出口67がバスケット本体63の底部65に設けられているので、バスケット60を180度反転させてワークWを排出する構成と比較すると、ワークWの落下距離hを小さくすることができる。そのため、浸漬塗装処理が済んで、表面に塗料が付着したワークWをバスケット60から排出する際、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることができる。
【0070】
図13に示すバスケット60´は、底板61a,61bが2枚設けられている点を除くと、バスケット60と同様の構成である。
図13(a)および図13(b)に示すように、バスケット60´は、バスケット本体63の底部65に設けた排出口67が2枚の底板61a,61bによって開閉される。各底板61a,61bは、バスケット本体63の底部65の両端に設けたヒンジ68にそれぞれ接続される。そして、2つのピストンロッド69が底板61a,61bを下から支持することで、排出口67が閉じられる。
バスケット60´からワークWを排出する際は、図13(b)に示すように、2つのピストンロッド69を縮ませる。ピストンロッド69が縮むと、底板61a,61bの自重とワークWの重さにより、ヒンジ68を中心として底板61a,61bが回転して排出口67が開放される。
このような構成によると、2枚の底板61a,61bが両開き式であるため、図12に示すバスケット60と比較すると、ヒンジ68を支点として回転する底板61a,61bの軌跡を小さくすることができる。そのため、ワークWの落下距離hをより小さくすることが可能となり、完成した製品の品質をより一層向上させることができる。
【0071】
図14に示すように、上述したバスケット2において、栓本体14をバスケット本体3に対して相対的に下降させることで、バスケット2の排出口7を開放することもできる。
このような構成によると、バスケット本体3の斜面6を滑り、排出口7から落下したワークWは、栓本体14の斜面13を滑って広がることになる。したがって、コンベア50の上に排出されたワークW同士の重なりを少なくすることができる。
【0072】
さらに、図15に示すように、上述したバスケット2において、栓本体14に代えて形状の異なる栓本体74を設けることもできる。
栓本体74は、バスケット本体3の斜面6と逆向きに傾斜する斜面73と、この斜面73の外周部に設けられ、バスケット本体3の斜面6に連続する斜面76とを含む。
なお、栓本体74の斜面73と斜面76の間のスペースは、排出時にワークWが残らない程度の寸法に設定するのが望ましい。
斜面76を栓本体74の斜面73の外周部に設けたことにより、栓本体74をバスケット本体3に対して相対的に上昇させてバスケット2の排出口7を開放すると、斜面76にワークWが引っ掛かり、ワークWが持ち上げられて姿勢を変えながら落下するので、ワークWが凹部を有する等複雑な形状である場合でも、凹部に溜まった塗料を排出することができる。
【0073】
次に、図16を参照して、本発明の別の実施形態に係るディップスピン塗装装置について説明する。本実施形態においては、上述した実施形態と同様の構成要素を同一の参照符号を用いて参照し、詳細な説明は省略する。
【0074】
図16に示すディップスピン塗装装置80は、上述した塗装ライン1の浸漬塗装ステーションBに設けたディップスピン塗装装置40と同様の構成を有する。塗装ライン1においては、ディップスピン塗装装置40が、ワークWの供給を行うワーク供給ステーションAやワークWの排出を行うワーク搬出ステーションCとは異なる浸漬塗装ステーションBに設置されている。これに対して、本実施形態に係るディップスピン塗装装置80は、ワークWの供給から排出までを含めて、一つのステーションで行うことを特徴とする。
【0075】
ワークWを収容したバスケット2が、ディップスピン塗装装置80のワーク供給部(図示せず)から塗料槽41の上部へ移動すると、チャック機構45がバスケット2の蓋10を保持する。
そして、移動装置としてのエアリフタ43が上昇し、塗料槽41がバスケット2に対して相対的に上昇することで、バスケット2内のワークWを塗料に浸漬する。この間、バスケット2を正逆方向に低速回転させ、ワークWの表面に塗料を付着させる。
所定時間経過後にバスケット2を塗料から引き揚げ、バスケット傾動装置(図示せず)やバスケット回転装置44による一連の遠心脱液処理を行う。
ディップスピン塗装装置80による一連の浸漬塗装処理が済むと、バスケット2に収容されたワークWの表面には均一な厚さの塗膜が形成される。バスケット2は、チャック機構45からバスケット搬送装置(図示せず)に持ち替えられる。
【0076】
バスケット搬送装置(図示せず)は、バスケット2をレール82に沿ってワーク排出部85まで移動する。
ワーク排出部85においては、開閉機構30の爪31が栓12の係合部16と係合した状態で、バスケット搬送装置(図示せず)がバスケット2を下降させる。その結果、バスケット本体3に対して相対的に栓本体14が上昇することになるので、バスケット本体3の底部5に設けられた排出口7が開放され、ワーク受取部としてのコンベア50の上にワークWが排出される。
バスケット2から排出されたワークWは、コンベア50によって、ディップスピン塗装装置80から乾燥炉(図示せず)へと搬出される。
【0077】
このようなディップスピン塗装装置80によると、上述した実施形態に係る塗装ライン1と共通する構成要素については、同様の効果を奏する。
【0078】
以上、本発明の一実施形態に係るディップスピン塗装装置80について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 塗装ライン
2 バスケット
3 バスケット本体
5 底部
6 斜面
7 排出口
12 栓(蓋部材)
13 斜面
20 バスケット搬送装置
30 開閉機構
38 ワーク供給装置
40 ディップスピン塗装装置
41 塗料槽
43 エアリフタ(移動装置)
44 バスケット回転装置
50 コンベア(ワーク受取部)
80 ディップスピン塗装装置
A ワーク供給ステーション
B 浸漬塗装ステーション
C ワーク搬出ステーション
W ワーク
P 仕切り
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディップスピン塗装装置に用いるバスケットおよびこのようなバスケットを用いたディップスピン塗装装置ならびに塗装ラインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ねじやワッシャ等の金属物品には防錆処理が施される。環境問題に配慮するため、亜鉛メッキの耐食性処理として、六価クロメート処理から三価クロメート処理への代替が進められている。しかしながら、クロムを含まないクロムフリーの亜鉛メッキ技術が望まれている。
【0003】
一方、亜鉛メッキに代わるクロムフリー化技術として、ディップスピン塗装装置を用いて、バインダ中に金属粒子を分散させた塗料(防錆剤)を金属物品の表面に付着させる方法が知られている。
【0004】
ディップスピン塗装装置は、ねじやワッシャ等の金属系小物部品であるワークを収容するバスケットを、装置下部の塗料槽に入れた塗料に浸漬した後、塗料から引き揚げて高速回転させることで、ワークの表面に付着した余分な塗料を遠心脱液する装置である。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
浸漬塗装処理がなされて表面に塗料が付着したワークは、バスケットから排出される。そして、次の焼付・乾燥工程に送られて、表面の塗膜が乾燥される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願WO2007/070511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたような、ディップスピン塗装装置を用いた塗装ラインでは、表面の塗膜が乾燥していないワークをバスケットから排出する際、バスケットを180度反転させているため、ワークの落下距離が大きくなり、未乾燥の塗膜が傷つく虞がある。
【0008】
そこで、本発明では、ワークを排出する際におけるワークの落下距離を小さくすることで、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明によると、ワークを塗料に浸漬した後、塗料から出して回転させることで、ワークの表面に塗料を付着させるディップスピン塗装装置に用いるバスケットであって、前記ワークが収容される有底円筒形状のバスケット本体と、前記バスケット本体の底部に形成され、内側から外側に向かって上方に傾斜するすり鉢形状の斜面と、前記底部に設けられ、塗料が付着した前記ワークを排出するための排出口と、前記排出口を開閉する蓋部材とを備え、前記排出口は、前記底部のうち、前記斜面の内側に設けられたことを特徴とする。
【0010】
このようなバスケットによると、塗料が付着したワークを排出するための排出口がバスケット本体の底部に設けられているので、バスケットを180度反転させてワークを排出する必要がなくなり、ワークの落下距離を小さくすることができる。
したがって、浸漬塗装処理が済んで、表面に塗料が付着したワークをバスケットから排出する際、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることができる。
バスケット本体の底部に形成された斜面の内側で、斜面と連続して排出口を設けた場合、ワークを円滑に排出口から排出することができる。なお、排出口を斜面と不連続に設けることもできる。
【0011】
上述したバスケットにおいて、前記蓋部材は、前記バスケット本体に対して相対的に上下動する栓であることを特徴とする。
【0012】
このようなバスケットによると、蓋部材が、バスケット本体に対して相対的に上下動することで排出口を開閉する栓であることにより、栓がバスケット本体の内側で相対的に上昇して排出口を開放する場合、ワークの落下距離を小さく設定することができる。栓がバスケット本体の底部から相対的に下降して排出口を開放する場合、ワークの落下距離を実質的に栓の下降ストロークまで小さく設定することができる。
したがって、ワークの落下距離をより小さく設定することが可能となり、完成した製品の品質をより一層向上させることができる。
なお、バスケット本体に対して相対的に上下動する栓とは、少なくともバスケット本体または栓の一方を固定して他方を上下動させること、またはバスケット本体と栓の両方を上下動させることで、バスケット本体に対する栓の相対的な位置を変化させて、バスケット底部の排出口を開閉することを意味する。
【0013】
さらに、前記栓は、外側から内側に向かって上方に傾斜する斜面を有することを特徴とする。
【0014】
このようなバスケットによると、バスケット本体の斜面とは逆向きの傾斜を有する斜面を栓に設けたことにより、表面に未乾燥の塗装が付着したワークをバスケットの排出口から排出する際、栓の斜面を利用して、ワークを円滑に排出することができる。
バスケット本体に対して栓が相対的に上昇することで排出口を開放する構成の場合、栓を覆ってバスケットの底部にワークが堆積しても、栓が相対的に上昇すると、栓の斜面を滑ってワークが落下した後、バスケット本体の斜面を滑ってワークが落下するので、ワークの排出を円滑に行うことができる。
バスケット本体に対して栓が相対的に下降することで排出口を開放する構成の場合、バスケット本体の斜面を滑り、排出口から落下したワークは、栓の斜面を滑って広がることになる。したがって、排出されたワーク同士の重なりを少なくすることができる。
【0015】
上述したバスケットにおいて、前記バスケットの内部を周方向に等分割する仕切りを設けたことを特徴とする。
【0016】
このようなバスケットによると、仕切りによって等分割されたバスケット本体内部に等量のワークを収容することにより、バスケット自体や内容物の重心が大きく変動することを防止することができる。したがって、ワークを収容したバスケットを塗料に浸漬した後、塗料から引き揚げて高速回転させる際、バスケットの動バランスを取ることができる。
【0017】
上述した課題を解決するため、本発明は、塗料を入れる塗料槽と、上述したバスケットと、前記塗料槽または前記バスケットの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記バスケットを前記塗料槽内の塗料に浸漬させた後、前記塗料から引き揚げる移動装置と、前記塗料から引き揚げた前記バスケットを回転させるバスケット回転装置と、前記バスケットの蓋部材を開閉する開閉機構と、前記バスケットの排出口から排出されるワークを、前記バスケットの下方で受け取るワーク受取部とを含むディップスピン塗装装置を提供する。
【0018】
このようなディップスピン塗装装置によると、移動装置によって、ワークを収容したバスケットと塗料を入れた塗料槽の少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、バスケットを塗料に浸漬させた後、塗料から引き揚げる。その後、バスケット回転装置によって、塗料から引き揚げたバスケットを高速回転させ、ワークの表面に付着した余分な塗料を遠心脱液する。そして、バスケットの蓋部材を開閉する開閉機構によって、バスケットの排出口を開放して、排出口から排出されるワークをワーク受取部で受け取る。
上述したように、塗料が付着したワークを排出するための排出口がバスケット本体の底部に設けられているので、バスケットを180度反転させてワークを排出する必要がなくなり、ワークの落下距離を小さくすることができる。
【0019】
上述した課題を解決するため、本発明は、ワークを供給するワーク供給ステーションと、ワークにディップスピン塗装を施す浸漬塗装ステーションと、塗料が付着したワークを搬出するワーク搬出ステーションとを含む塗装ラインであって、
上述したバスケットと、
前記バスケットを前記各ステーション間で搬送するバスケット搬送装置と、
前記ワーク供給ステーションにおいて、前記バスケットにワークを供給するワーク供給装置と、前記浸漬塗装ステーションに設置され、塗料を入れる塗料槽と、前記塗料槽または前記バスケットの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記バスケットを前記塗料槽内の塗料に浸漬させた後、前記塗料から引き揚げる移動装置と、前記塗料から引き揚げた前記バスケットを回転させるバスケット回転装置とを含むディップスピン塗装装置と、
前記ワーク搬出ステーションに設けられ、前記バスケットの排出口から排出されるワークを前記バスケットの下方で受け取るワーク受取部と、
前記ワーク受取部の上で、前記バスケットの蓋部材を開閉する開閉機構と、
を含む塗装ラインを提供する。
【0020】
このような塗装ラインによると、ワークを収容したバスケットは、バスケット搬送装置によって、ワーク供給ステーション、浸漬塗装ステーション、ワーク搬出ステーションの間で搬送される。その間、ワーク供給ステーションでは、ワーク供給装置によりバスケットにワークが供給され、浸漬塗装ステーションでは、ディップスピン塗装装置によりワークに浸漬塗装処理が施され、ワーク搬出ステーションでは、開閉機構によって開放されたバスケットの排出口から排出されたワークをワーク受取部で受け取る。
上述したように、塗料が付着したワークを排出するための排出口がバスケット本体の底部に設けられているので、バスケットを180度反転させてワークを排出する必要がなくなり、ワークの落下距離を小さくすることができる。
【0021】
上述した塗装ラインにおいて、前記ワーク供給ステーションと、前記浸漬塗装ステーションと、前記ワーク搬出ステーションが、円周上に等間隔で配置されたことを特徴とする。
【0022】
このような塗装ラインによると、各ステーションを円周上に等間隔で配置したことにより、ステーション間でのバスケットの搬送を公転動作により行うことができ、また、各ステーションに位置する各バスケットを同期して公転動作させ、次のステーションへ搬送することができる。したがって、ワークの供給から搬出までの全処理工程に要する時間を短縮することが可能となる。さらに、各ステーション間におけるバスケットの移動距離が等しくなるので、バスケットの移動時間の調整に要するタイムロスが発生せず、浸漬塗装ステーションにおけるワークの浸漬塗装処理を行う間、ワーク供給ステーションとワーク搬出ステーションでは、それぞれワークの供給と搬出を同時に並行して行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、塗料が付着したワークを排出するための排出口がバスケット本体の底部に設けられているので、バスケットを180度反転させてワークを排出する必要がなくなり、ワークの落下距離を小さくすることができる。
したがって、浸漬塗装処理が済んで、表面に塗料が付着したワークをバスケットから排出する際、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗装ラインの平面図である。
【図2】図1のI−I断面図であり、ワーク供給ステーションと浸漬塗装ステーションを示す。
【図3】図1のII−II断面図であり、浸漬塗装ステーションとワーク搬出ステーションを示す。
【図4】バスケット搬送装置の説明図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るバスケットの説明図であり、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図6】浸漬塗装ステーションにおけるバスケットの動作を説明する説明図である。
【図7】浸漬塗装ステーションにおけるバスケットの動作を説明する説明図である。
【図8】浸漬塗装ステーションにおけるバスケットの動作を説明する説明図である。
【図9】浸漬塗装ステーションにおけるバスケットの動作を説明する説明図である。
【図10】浸漬塗装ステーションにおけるバスケットの動作を説明する説明図である。
【図11】バスケット底部の排出口を開放する動作を説明する説明図であり、(a)は蓋部材である栓が開く前の状態、(b)は栓が開いた後の状態を示す。
【図12】バスケット底部の排出口を開閉する蓋部材の変形例を示す図である。
【図13】バスケット底部の排出口を開閉する蓋部材の変形例を示す図である。
【図14】バスケット底部の排出口を開閉する蓋部材の変形例を示す図である。
【図15】バスケット底部の排出口を開閉する蓋部材の変形例を示す図である。
【図16】本発明の他の実施形態に係るディップスピン塗装装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
初めに、亜鉛メッキに代えて、バインダ中に金属粒子を分散させた塗料(防錆剤)を金属物品の表面に塗装する防錆処理方法について簡単に説明する。
【0026】
このような防錆処理方法では、例えば、鉄製のワークに対して、ベースコート塗装とトップコート塗装を含む塗装処理が行われる。ベースコート塗装は2回繰り返して行われ、それぞれの塗装処理の後に焼付・乾燥工程が行われる2コート・2ベークを基本とする。トップコート塗装は通常1回行われ、塗装処理の後に焼付・乾燥工程が行われる。
【0027】
<前処理>
塗装に際して、ワークは、表面に汚れがないこと、よく乾燥していること、埃や油脂の付着がないことが非常に重要になる。そのため、前処理として、脱脂処理、ショットブラスト処理、リン酸亜鉛処理をワークに施す。
【0028】
<ベースコート塗装処理>
ベースコート塗装に用いる塗料(防錆剤)は、亜鉛フレークとバインダーを含む。
ベースコート塗装は、後述するディップスピン塗装装置を用いて行う。
ディップスピン塗装装置による浸漬塗装処理がなされ表面に塗料が付着したワークは、乾燥炉へ搬送され、焼付・乾燥工程を経て、表面の塗膜が乾燥される。
【0029】
<トップコート塗装処理>
トップコート塗装はベースコートの犠牲防食機能をより強化し、コーティングされた製品の寿命をさらに延ばすためのものである。
トップコート塗装に用いる塗料は、ワークの種類に応じて、有機系または無機系の有色又はクリアー塗料を使用する。
【0030】
トップコート塗装は、ベースコート塗装と同様、後述するディップスピン塗装装置を用いて行われ、焼付・乾燥工程を経て、表面の塗膜が乾燥される。
【0031】
次に、本発明の一実施形態に係る塗装ラインをベースコート塗装処理ラインに適用した例について説明する。
【0032】
図1から図3に示すように、本実施形態に係る塗装ライン1は、平面視で円形に配置されており、ワーク供給ステーションAと、浸漬塗装ステーションBと、ワーク搬出ステーションCとを含んで構成される。各ステーションは、円周上に等間隔、すなわち120度の間隔で配置される。
ワークWが収容されるバスケット2は、後述するバスケット搬送装置20によって、ワーク供給ステーションA、浸漬塗装ステーションB、ワーク搬出ステーションCの順に搬送されるとともに、各ステーションにおける所定位置で停止する間に様々な処理がなされる。そして、ワーク搬出ステーションCでバスケット2内のワークWが排出される。排出されたワークWは、ワーク受取部の一例としてのコンベア50上で受け取られ、乾燥炉55に搬送される。
ワークWが排出された後、バスケット搬送装置20は、ワーク搬出ステーションCからワーク供給ステーションAへとバスケット2を搬送する。このように、バスケット搬送装置20は、バスケット2を保持した状態で塗装ライン1に沿った円周上を移動する。
【0033】
次に、塗装ライン1の各部の構成について説明する。
【0034】
<バスケット搬送装置>
図1および図4に示すように、バスケット搬送装置20は、塗装ライン1の中央に設けられたモータMと、このモータMとギアで噛合して回転駆動される回転盤21と、回転盤21の上に固定され、円周上に等間隔で3組配置された平面視C字形の支持枠22と、各支持枠22の両端にそれぞれ固定され、挿入爪23を進退自在且つ上下動自在に移動させる爪移動機構24とを含む。
【0035】
図4(a)および図4(b)に示すように、爪移動機構24は、挿入爪23を進退自在に移動させるエアシリンダ25と、このエアシリンダ25の作動方向と平行に設けられており、挿入爪23の前進および後退移動を案内するレール26と、挿入爪23を上下に移動させる昇降用エアシリンダ27と、挿入爪23の上昇および下降移動を案内するレール(図示せず)と、塗装ライン1の中央に設けられており、エアシリンダ25および昇降用エアシリンダ27にエアを供給するためのスイベル式エアージョイント(図示せず)および切替バルブ(図示せず)とを含む。
【0036】
挿入爪23は、後述するバスケット2のフランジ部4と係合可能な上爪および下爪を有し、少なくとも下爪は、平面視で円形の蓋10をグラつくことなく保持できるように、平面視でV字に凹んだ輪郭を有している。
【0037】
<バスケット>
図5(b)に示すように、バスケット2は、ワークWを収容する有底円筒形状のバスケット本体3と、バスケット本体3の底部5に形成され、内側から外側に向かって45度の角度で上方に傾斜するすり鉢形状の斜面6と、底部5に設けられ、塗料が付着したワークWを排出するための排出口7と、排出口7を開閉する蓋部材としての栓12から主に構成される。
バスケット2は、外周壁に多数のパンチ穴8が形成されたパンチングメタルまたはメッシュ地の外周壁を有する構成として、処理するワークの種類に応じて使い分けられる。必要に応じて、パンチングメタルとメッシュ地の両方を重ねて使用することもできる。
【0038】
図4(a)および図5(b)に示すように、バスケット本体3は、上部が円形の蓋10で覆われている。蓋10はバスケット本体3にネジ等で固定されている。
蓋10は、外周部に円形のフランジ部4が設けられているとともに、中央にはワークWを供給するための3つの開口部11が等間隔に設けられている。
さらに、蓋10の中心部では、栓12のシャフト15が上下に貫通して延びている。
【0039】
バスケット2の排出口7は、バスケット本体3の底部5のうち、斜面6の内側に形成されている。排出口7は斜面6と連続して形成されており、斜面6を滑って落下するワークWが排出口7へと導かれるようになっている。
【0040】
図5(b)に示すように、バスケット2の排出口7は、栓12によって閉じられている。
栓12は、バスケット本体3の斜面6とは逆向きに外側から内側に向かって45度の角度で上方に傾斜する斜面13を有する栓本体14と、栓本体14に固定され、バスケット本体3の内部を上下に延びるシャフト15と、シャフト15の上端に形成され、後述する開閉機構30の爪31と係合する係合部16と、シャフト15がその内部を通り、伸縮自在に重なる2つの筒部17と、蓋10と栓本体14との間に介在して、栓本体14をバスケット本体3の排出口7に向けて付勢するばね18と、蓋10の中心部に固定されてシャフト15の上下動を案内するとともに、ばね18の一端を受けるばね座を形成する案内部材19とから構成される。
【0041】
図5(a)に示すように、バスケット本体3の内部は、3枚の仕切りPによって周方向に三等分されている。各仕切りPは、栓本体14が上昇した場合でも、蓋10よりも下位に位置する高さ寸法になっている。
なお、仕切りPの枚数は、図示したように3枚に限定されず、処理するワークWの種類に応じて、2枚や4枚等適宜設定することができる。
【0042】
<開閉機構>
図1に示すように、開閉機構30は、ワーク搬出ステーションCに設けられ、長尺で先端が分岐した爪31と、この爪31を進退自在に移動させるエアシリンダ(図示せず)と、バスケット2を保持した状態で昇降可能に構成されたバスケット搬送装置20の爪移動機構24とを含む。爪31は、エアシリンダの作動により、栓12の係合部16と係合・離脱可能となっている。
そして、図11(a)および図11(b)に示すように、バスケット2は、栓12の係合部16に開閉機構30の爪31が係合した状態で、バスケット本体3が栓12に対して相対的に押し下げられることにより、バスケット2の排出口7が開放される構成となっている。
また、栓12の係合部16に開閉機構30の爪31が係合した状態で、バスケット本体3が栓12に対して相対的に押し上げられることにより、排出口7が閉じられる構成となっている。
なお、栓本体14の上昇ストロークを大きくするため、爪31を昇降させるための昇降用エアシリンダ(図示せず)を設け、バスケット2の下降に合わせて爪31を上昇させてもよい。
【0043】
<ワーク供給ステーション>
図1および図2に示すように、ワーク供給ステーションAは、振動フィーダ35と、計量・分割投入機構36と、ホッパ37とを含むワーク供給装置38を備えている。ホッパ37は、一回に供給されるワークWを三等分して、バスケット2の蓋10に設けた3つの開口部11から等量ずつ投入することで、仕切りPによって区画されたバスケット本体3内部の各スペースにワークWを均等に分配するようになっている。詳細には、ホッパ37は120度ずつ回転可能に構成され、下部に3台の小型ダンパ(図示せず)を有している。ホッパ37の回転により計量・分割投入機構36から供給されたワークWを3台の小型ダンパに等量ずつ滞留させた後、バスケット2の3つの開口部11の上からワークWを投入するように構成される。
なお、ホッパ37は、バスケット搬送装置20に保持されたバスケット2が停止する所定位置において、バスケット2の上部に設けられている。
【0044】
<浸漬塗装ステーション>
図1から図3に示すように、浸漬塗装ステーションBは、ディップスピン塗装装置40を備えている。
ディップスピン塗装装置40は、塗料を入れる塗料槽41と、供給管と戻り管によって塗料槽41と接続され、塗料を循環供給するための温調・撹拌用タンク42と、塗料槽41をバスケット2に対して上下動させて、バスケットを塗料槽41内の塗料に浸漬させた後、塗料から引き揚げる移動装置としてのエアリフタ43と、塗料から引き揚げたバスケット2を高速回転させるバスケット回転装置44と、バスケット傾動装置(図示せず)とを含み構成される。
【0045】
塗料槽41はエアリフタ43の上に載置されている。そして、図1に示すように、塗料槽41は、温調・撹拌用タンク42と接続されており、塗料の温度管理がなされるとともに、亜鉛フレークが沈澱しないように所定の速度で塗料が撹拌される。なお、塗料の供給は温調・撹拌用タンク42を通して行われる。
エアリフタ43はエアバッグ(図示せず)を備えており、このエアバッグに供給するエアの量を調整することで、バスケット2に対する塗料槽41の相対的な高さ位置を変化させることができるようになっている。
バスケット回転装置44は、バスケット2を保持するチャック機構45と、このチャック機構45によって保持したバスケット2を、5〜20rpmの低速回転と300〜500rpmの高速回転で切り換えて正逆方向に回転させるモータ46を含む。
バスケット傾動装置(図示せず)は、回転中心RCを中心としてバスケット回転装置44を傾動させる公知の機構を備える。バスケット傾動装置は、60〜85度の角度でバスケット回転装置44を傾動可能に構成される。
なお、バスケット搬送装置20に保持されたバスケット2が停止する所定位置において、バスケット回転装置44のチャック機構45はバスケット2の真上に位置し、塗料槽41はバスケット2の真下に位置する。
【0046】
<ワーク搬出ステーション>
図1および図3に示すように、ワーク搬出ステーションCは、上述した開閉機構30の爪31と、この爪31を進退自在に移動させるエアシリンダ(図示せず)と、ワーク受取部としてのコンベア50とを備えている。
バスケット搬送装置20に保持されたバスケット2が停止する所定位置において、爪31はバスケット2の上方に位置しており、コンベア50はバスケット2の下方位置から乾燥炉55まで延びている。コンベア50は、水平方向に所定角度の範囲内で揺動可能に構成される。
【0047】
以上に述べた各装置は、制御装置(図示せず)によって、次に説明する各順の動作を行うように制御される。
【0048】
以上に述べた塗装ライン1の動作について、各ステーションごとに詳細に述べる。
【0049】
<ワーク供給ステーションでの動作>
図1および図2に示すように、ワークWは、ワーク供給装置38によりバスケット2の蓋10に設けた3つの開口部11から投入される。一回に供給されるワークWは、ホッパ37によって三等分され、各開口部11から等量ずつ投入されることで、仕切りPによって区画されたバスケット本体3内部の各スペースに均等に分配される。
ワークWの投入が終わると、塗装ライン1の中央に設けたモータMが回転して、回転盤21が120度分だけ回転駆動される。この回転盤21の回転により、ワークWの投入を終えたバスケット2は、ワーク供給ステーションAから浸漬塗装ステーションBへと移動する。
【0050】
<浸漬塗装ステーションでの動作>
図6から図10を参照して、浸漬塗装ステーションBでの動作を説明する。なお、これらの図面においては、説明の便宜上、バスケット搬送装置20の爪移動機構24を90度回転させた位置で示している。
【0051】
図6に示すように、浸漬塗装ステーションBにおいて、バスケット搬送装置20に保持されたバスケット2は、爪移動機構24の昇降用エアシリンダ27(図4(b)参照)が作動することで、バスケット2のフランジ部4の内周がバスケット回転装置44のチャック機構45のチャック部45Aと対面する位置まで上昇する。
次に、図7に示すように、チャック部45Aが拡径してバスケット2の蓋10をチャックすることによりバスケット2を保持する。図8に示すように、チャック機構45がバスケット2を保持したままの状態でバスケット搬送装置20の2つの挿入爪23が後退すると、バスケット2がバスケット搬送装置20からディップスピン塗装装置40に持ち替えられる。浸漬塗装処理がなされる間、バスケット搬送装置20は、2つの挿入爪23が後退した状態で待機する。
【0052】
続いて、図9に示すように、エアリフタ43のエアバッグ(図示せず)にエアが供給されると、エアリフタ43が上昇し、塗料槽41がバスケット2に対して上昇する。バスケット2内のワークWを塗料槽41内の塗料の液面よりも下方に位置させ、ワークWを塗料に浸漬する。この間、バスケット回転装置44のモータ46により、5〜20rpmの速度で正逆方向にバスケット2を低速回転させ、ワークW全体に塗料を付着させる。
ワークWを所定時間塗料に浸漬させた後、エアバッグ(図示せず)のエア圧を調整することでエアリフタ43を下降させ、バスケット2を塗料から引き揚げる。このような浸漬塗装処理により、バスケット2内のワークWは、表面に塗膜が形成される。
【0053】
図3に示すように、塗料から引き揚げられたバスケット2は、処理するワークWの種類に応じて、バスケット傾動装置(図示せず)によって60〜85度の角度で傾動される。
バスケット2の傾動後、バスケット2は、モータ46により5〜20rpmの速度で低速回転される。このようにバスケット2を傾動させた状態で低速回転させることで、ワークWが凹部を有する等複雑な形状である場合でも、凹部に溜まった塗料を排出したり、エアーポケットを形成する凹部内へ確実に塗料を付着させたりすることができる。
なお、処理するワークWの種類によっては、バスケット2の傾動は不要である。
その後、バスケット傾動装置(図示せず)はバスケット2を垂直位置に戻す。
【0054】
次に、図10に示すように、エアリフタ43が再度上昇して、バスケット2の底部5が塗料の液面よりも僅かに上位になる位置まで塗料槽41を上昇させる。この位置において、モータ46により、バスケット2を300〜500rpmの速度で高速回転させる。
バスケット2を高速回転させると、バスケット本体3の底部5に貯まったワークWは、斜面6上を転がりながら外側へと移動し、遠心脱液される。そして、ワークWの表面には、塗膜が均一な厚さで形成される。ワークWが斜面6上で転がることによって、ワークWの凹部からの塗料の排出や凹部内への塗料の付着を確実に行うことができる。
【0055】
ワークWから遠心脱液された余分な塗料は、バスケット本体3の外周面に形成された多数の開口から排出され、塗料槽41の壁面に衝突した後、塗料槽41に戻る。そのため、塗料槽41の外部に塗料が排出されることはない。
さらに、塗料の供給を温調・撹拌用タンク42で行うことができるので、塗装ライン1の稼働を停止した上で塗料槽41に塗料を供給する必要がなくなり、タイムロスをなくすことができる。
【0056】
図5(a)に示すように、ワークWは、仕切りPによって円周方向に三等分に区画された各スペースに等量ずつ収容されているので、バスケット2を高速回転させる場合でも、バスケット2の動バランスを取ることができる。
【0057】
遠心脱液処理が終わると、図6に示すように、エアリフタ43が下降して、バスケット2の底部5よりも低い位置に塗料槽41を下降させる。塗料槽41を下降させる間、バスケット搬送装置20の2つの挿入爪23が前進して、バスケット2のフランジ部4と係合する。そして、ディップスピン塗装装置40のチャック機構45がバスケット2の蓋10から離脱する。この状態で2つの挿入爪23が下降して、バスケット2がバスケット搬送装置20に持ち替えられる。
【0058】
図1に示すように、浸漬塗装ステーションBでの処理が終わると、モータMが回転して、回転盤21が120度分だけ回転駆動される。この回転盤21の回転により、ワークWの浸漬塗装処理を終えたバスケット2は、浸漬塗装ステーションBからワーク搬出ステーションCへと移動する。
【0059】
<ワーク搬出ステーションでの動作>
バスケット搬送装置20に保持され、ワーク搬出ステーションCへと移動したバスケット2は、ワーク受取部としてのコンベア50の上で排出される。
図1および図11に示すように、ワーク搬出ステーションCにおいて、バスケット搬送装置20に保持されたバスケット2が所定位置で停止すると、開閉機構30の爪31が前進して栓12の係合部16に係合する。そして、バスケット搬送装置20の爪移動機構24が2つの挿入爪23を下降させると、バスケット2が下降する。すなわち、栓本体14はバスケット本体3に対して相対的に上昇することになる。その結果、バスケット本体3の底部5に設けられた排出口7が開放され、ワークWがコンベア50の上に排出される。
【0060】
図11(a)に示すように、浸漬塗装ステーションBから搬送されたバスケット2内のワークWは、遠心力の作用によりバスケット2の外側に寄った状態で堆積している。この状態で栓本体14が上昇すると、図11(b)に示すように、ワークWはバスケット本体3の斜面6を滑り、排出口7へと円滑に導かれることになる。
ワークWが栓本体14の上に堆積する場合でも、バスケット本体3の斜面6と逆向きの傾斜を有する斜面13を栓本体14に設けたことにより、ワークWを円滑に排出することができる。つまり、栓本体14が上昇すると、栓本体14の斜面13を滑ってワークWが落下した後、バスケット本体3の斜面6を滑ってワークWが落下するので、ワークWの排出を円滑に行うことができる。
【0061】
このように、ワークWの排出を行うための排出口7をバスケット本体3の底部5に設けるとともに、バスケット本体3に対して相対的に上昇することで排出口7を開放する栓本体14を設けたことにより、ワークWの落下距離hを小さくすることができる。つまり、下降したバスケット2の底部5とコンベア50の上面との間の落下距離hは、バスケット2から排出されて堆積したワークWがコンベア50上を搬送される際、バスケット2の底部5に接触せずに搬送できる高さまで小さく設定できるので、従来のようにバスケット2を180度反転させてワークWを排出する構成と比較すると、落下距離hを大幅に小さくすることができる。
なお、栓本体14を上昇させる速度を遅く設定すると、回転移動するコンベア50上に堆積するワークWの高さを低くすることができるので、落下距離hをより小さくすることが可能となる。
このようにワークWの落下距離hを小さくすることで、浸漬塗装処理が済んで、表面に塗料が付着したワークWをバスケット2から排出する際、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることができる。
【0062】
ワークWの排出が終わると、バスケット搬送装置20の爪移動機構24が2つの挿入爪23を上昇させて、バスケット2を上昇させる。そして、開閉機構30の爪31が後退する。バスケット2が上昇すると、バスケット本体3に対する栓本体14の相対的な高さ位置が変化して、排出口7が閉じられる。
その後、塗装ライン1の中央に設けたモータMが回転して、回転盤21が120度分だけ回転駆動される。この回転盤21の回転により、ワークWの排出を終えたバスケット2は、ワーク搬出ステーションCからワーク供給ステーションAへと移動する。以後は、同様の処理工程を繰り返す。
【0063】
一方、コンベア50上に排出された未乾燥のワークWは、乾燥炉55(図1参照)へ搬送され、焼付・乾燥工程を経て、表面の塗膜が乾燥される。コンベア50は水平方向に所定角度の範囲内で首振りしながらワークWを搬送するので、ワークW同士の重なりを少なくし乾燥炉55の幅を有効に利用して、焼付・乾燥工程を行うことができる。
焼付・乾燥工程を終えて1回目のベースコート塗装が施されたワークWは、再度塗装ライン1のワーク供給ステーションAから順番に供給され、2回目のベースコート塗装処理がなされる。そして、2回のベースコート塗装と焼付・乾燥工程が完了すると、ワークWは次のトップコート塗装処理へと搬送される。
【0064】
塗装ライン1では、3つのバスケット2が円周上に等間隔で保持され、それぞれワーク供給ステーションA、浸漬塗装ステーションB、ワーク搬出ステーションCでの処理が同時に並行して行われる。そして、各ステーションでの処理が終了すると、バスケット搬送装置20が3つのバスケット2を同時に次のステーションへと搬送する。
【0065】
本実施形態の塗装ライン1によると、下記のような優れた効果を奏する。
(1)塗料が付着したワークWを排出するための排出口7がバスケット本体3の底部5に設けられているので、ワークWの落下距離hを小さくすることができる。そのため、浸漬塗装処理が済んで、表面に塗料が付着したワークWをバスケット2から排出する際、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることができる。
(2)栓本体14がバスケット本体3の内側で相対的に上昇して排出口7を開放する構成のため、ワークWの落下距離hをより小さく設定することが可能となり、完成した製品の品質をより一層向上させることができる。
(3)バスケット本体3の斜面6とは逆向きの傾斜を有する斜面13を栓本体14に設けたことにより、ワークWをバスケット2の排出口7から排出する際、栓本体14の斜面13を利用して、ワークWを円滑に排出することができる。
(4)バスケット本体3の内部が仕切りPによって周方向に三等分され、それぞれに等量のワークが収容されることにより、バスケット2自体や内容物であるワークWの重心が大きく変動することを防止することができる。したがって、ワークWを収容したバスケット2を高速回転させる際も、バスケット2の動バランスを取ることができるので、ハンマリング現象に起因した大きな振動がディップスピン塗装装置40に発生することを防止できる。
(5)ワーク供給ステーションA、浸漬塗装ステーションB、ワーク搬出ステーションCを円周上に等間隔で配置したことにより、ステーション間でのバスケット2の搬送を公転動作により行うことができ、また、各ステーションに位置する各バスケット2を同期して公転動作させ、次のステーションへ搬送することができる。したがって、ワークWの供給から搬出までの全処理工程に要する時間を短縮することが可能となる。さらに、各ステーション間におけるバスケット2の移動距離が等しくなるので、バスケット2の移動時間の調整に要するタイムロスが発生せず、各ステーションで同時並行して行った処理が終了した後、3つのバスケット2を一度に次のステーションへ搬送することができる。したがって、高効率で自動化を実現することができる。
【0066】
(6)ワークWを塗料に浸漬する間、バスケット回転装置44のモータ46により、バスケット2を正逆方向に低速回転させるため、ワークWの表面に塗料を付着させることができる。
(7)バスケット本体3の底部5にすり鉢形状の斜面6を設けたことにより、バスケット2を高速回転させると、バスケット本体3の底に貯まったワークWが斜面6上を転がりながら外側へと移動するので、ワークWの凹部からの塗料の排出や凹部内への塗料の付着を確実に行うことができる。
(8)ディップスピン塗装装置40は、塗料から引き揚げたバスケット2を傾動させた後、低速回転させるので、ワークWの凹部に溜まった塗料を排出したり、エアーポケットを形成する凹部内へ確実に塗料を付着させたりすることができる。
(9)ワークWから遠心脱液された余分な塗料は、塗料槽41の壁面に衝突した後に塗料槽41に戻るので、塗料槽41の外部に塗料が排出されることがなくなる。したがって、排液処理を必要としないクローズ化した塗装ライン1を構築できる。
(10)塗料槽41と接続される温調・撹拌用タンク42をディップスピン塗装装置40の外部に設置し、塗料の供給を温調・撹拌用タンク42で行うことができるので、塗装ライン1の稼働を停止した上で塗料槽41に塗料を供給する必要がなくなり、塗料の供給に要するタイムロスをなくすことができる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態に係る塗装ライン1について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
例えば、バスケット搬送装置20は回転盤21を用いた構成に限定されず、支持枠22がレールに沿って移動する構成等、他の如何なる公知の構成を用いることもできる。また、爪移動機構24の挿入爪23および開閉機構30の爪31は、エアシリンダではなく、油圧シリンダ等の他の公知の機構を用いて移動させることもできる。塗料槽41を昇降させるエアリフタ43も、エアシリンダや油圧シリンダを含む他の公知の機構を用いることができる。また、バスケット2を塗料槽41に対して相対的に移動させる移動装置として、バスケット回転装置44のチャック機構45が上下動する構成としてもよい。もちろん、上下動するチャック機構45とエアリフタ43によって、移動装置を構成することもできる。バスケット2を保持する構成として、バスケット搬送装置20の爪移動機構24やディップスピン塗装装置40に設けたバスケット回転装置44のチャック機構45は、上述した実施形態の例に限定されず、他の如何なる公知の構成を用いることもできる。
【0068】
バスケット本体3の内部を周方向に等分割する仕切りPの枚数も、処理するワークWの種類に応じて適宜増減することができる。バスケット本体3の底部5に設けた斜面6の傾斜角度や栓本体14の斜面13の傾斜角度も45度に限定されず、適宜設計変更することができる。バスケット本体3の斜面6の傾斜角度を大きくすると、遠心力の作用によりバスケット2の外周側に集ったワークWの排出を確実に行うことができる。
上述した実施形態において、複数回にわたるベースコート塗装処理とトップコート塗装処理に合わせて、適宜必要数の塗装ライン1を設けることもできる。例えば、塗装ライン1を2つ設け、1回目のベースコート塗装処理と2回目のベースコート塗装処理を異なる塗装ライン1で行うことも可能である。また、塗料槽41内の塗料を入れ替えることで、ベースコート塗装処理とトップコート塗装処理の両方を1つの塗装ライン1で行うこともできる。さらに、塗料槽41に入れる塗料を変更することで、防錆処理以外の様々な塗装処理に塗装ライン1を用いることが可能である。
【0069】
以下、図12から図15を参照して、バスケット2の変形例を説明する。
図12(a)および図12(b)に示すように、バスケット60は、バスケット本体63の底部65に設けた排出口67が底板61によって開閉される。底板61は、バスケット本体63の底部65の一端に設けたヒンジ68に接続される。そして、ピストンロッド69が底板61を下から支持することで、排出口67が閉じられる。
バスケット60からワークWを排出する際は、図12(b)に示すように、ピストンロッド69を縮ませる。ピストンロッド69が縮むと、底板61の自重とワークWの重さにより、ヒンジ68を中心として底板61が回転して排出口67が開放される。
バスケット60内のワークWは、バスケット本体63の斜面66を滑って落下した後、排出口67からコンベア50の上に排出される。
このような構成によると、ワークWを排出するための排出口67がバスケット本体63の底部65に設けられているので、バスケット60を180度反転させてワークWを排出する構成と比較すると、ワークWの落下距離hを小さくすることができる。そのため、浸漬塗装処理が済んで、表面に塗料が付着したワークWをバスケット60から排出する際、未乾燥の塗膜を傷つけることを防止し、完成した製品の品質を向上させることができる。
【0070】
図13に示すバスケット60´は、底板61a,61bが2枚設けられている点を除くと、バスケット60と同様の構成である。
図13(a)および図13(b)に示すように、バスケット60´は、バスケット本体63の底部65に設けた排出口67が2枚の底板61a,61bによって開閉される。各底板61a,61bは、バスケット本体63の底部65の両端に設けたヒンジ68にそれぞれ接続される。そして、2つのピストンロッド69が底板61a,61bを下から支持することで、排出口67が閉じられる。
バスケット60´からワークWを排出する際は、図13(b)に示すように、2つのピストンロッド69を縮ませる。ピストンロッド69が縮むと、底板61a,61bの自重とワークWの重さにより、ヒンジ68を中心として底板61a,61bが回転して排出口67が開放される。
このような構成によると、2枚の底板61a,61bが両開き式であるため、図12に示すバスケット60と比較すると、ヒンジ68を支点として回転する底板61a,61bの軌跡を小さくすることができる。そのため、ワークWの落下距離hをより小さくすることが可能となり、完成した製品の品質をより一層向上させることができる。
【0071】
図14に示すように、上述したバスケット2において、栓本体14をバスケット本体3に対して相対的に下降させることで、バスケット2の排出口7を開放することもできる。
このような構成によると、バスケット本体3の斜面6を滑り、排出口7から落下したワークWは、栓本体14の斜面13を滑って広がることになる。したがって、コンベア50の上に排出されたワークW同士の重なりを少なくすることができる。
【0072】
さらに、図15に示すように、上述したバスケット2において、栓本体14に代えて形状の異なる栓本体74を設けることもできる。
栓本体74は、バスケット本体3の斜面6と逆向きに傾斜する斜面73と、この斜面73の外周部に設けられ、バスケット本体3の斜面6に連続する斜面76とを含む。
なお、栓本体74の斜面73と斜面76の間のスペースは、排出時にワークWが残らない程度の寸法に設定するのが望ましい。
斜面76を栓本体74の斜面73の外周部に設けたことにより、栓本体74をバスケット本体3に対して相対的に上昇させてバスケット2の排出口7を開放すると、斜面76にワークWが引っ掛かり、ワークWが持ち上げられて姿勢を変えながら落下するので、ワークWが凹部を有する等複雑な形状である場合でも、凹部に溜まった塗料を排出することができる。
【0073】
次に、図16を参照して、本発明の別の実施形態に係るディップスピン塗装装置について説明する。本実施形態においては、上述した実施形態と同様の構成要素を同一の参照符号を用いて参照し、詳細な説明は省略する。
【0074】
図16に示すディップスピン塗装装置80は、上述した塗装ライン1の浸漬塗装ステーションBに設けたディップスピン塗装装置40と同様の構成を有する。塗装ライン1においては、ディップスピン塗装装置40が、ワークWの供給を行うワーク供給ステーションAやワークWの排出を行うワーク搬出ステーションCとは異なる浸漬塗装ステーションBに設置されている。これに対して、本実施形態に係るディップスピン塗装装置80は、ワークWの供給から排出までを含めて、一つのステーションで行うことを特徴とする。
【0075】
ワークWを収容したバスケット2が、ディップスピン塗装装置80のワーク供給部(図示せず)から塗料槽41の上部へ移動すると、チャック機構45がバスケット2の蓋10を保持する。
そして、移動装置としてのエアリフタ43が上昇し、塗料槽41がバスケット2に対して相対的に上昇することで、バスケット2内のワークWを塗料に浸漬する。この間、バスケット2を正逆方向に低速回転させ、ワークWの表面に塗料を付着させる。
所定時間経過後にバスケット2を塗料から引き揚げ、バスケット傾動装置(図示せず)やバスケット回転装置44による一連の遠心脱液処理を行う。
ディップスピン塗装装置80による一連の浸漬塗装処理が済むと、バスケット2に収容されたワークWの表面には均一な厚さの塗膜が形成される。バスケット2は、チャック機構45からバスケット搬送装置(図示せず)に持ち替えられる。
【0076】
バスケット搬送装置(図示せず)は、バスケット2をレール82に沿ってワーク排出部85まで移動する。
ワーク排出部85においては、開閉機構30の爪31が栓12の係合部16と係合した状態で、バスケット搬送装置(図示せず)がバスケット2を下降させる。その結果、バスケット本体3に対して相対的に栓本体14が上昇することになるので、バスケット本体3の底部5に設けられた排出口7が開放され、ワーク受取部としてのコンベア50の上にワークWが排出される。
バスケット2から排出されたワークWは、コンベア50によって、ディップスピン塗装装置80から乾燥炉(図示せず)へと搬出される。
【0077】
このようなディップスピン塗装装置80によると、上述した実施形態に係る塗装ライン1と共通する構成要素については、同様の効果を奏する。
【0078】
以上、本発明の一実施形態に係るディップスピン塗装装置80について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 塗装ライン
2 バスケット
3 バスケット本体
5 底部
6 斜面
7 排出口
12 栓(蓋部材)
13 斜面
20 バスケット搬送装置
30 開閉機構
38 ワーク供給装置
40 ディップスピン塗装装置
41 塗料槽
43 エアリフタ(移動装置)
44 バスケット回転装置
50 コンベア(ワーク受取部)
80 ディップスピン塗装装置
A ワーク供給ステーション
B 浸漬塗装ステーション
C ワーク搬出ステーション
W ワーク
P 仕切り
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを塗料に浸漬した後、塗料から出して回転させることで、ワークの表面に塗料を付着させるディップスピン塗装装置に用いるバスケットであって、
前記ワークが収容される有底円筒形状のバスケット本体と、前記バスケット本体の底部に形成され、内側から外側に向かって上方に傾斜するすり鉢形状の斜面と、前記底部に設けられ、塗料が付着した前記ワークを排出するための排出口と、前記排出口を開閉する蓋部材とを備え、
前記排出口は、前記底部のうち、前記斜面の内側に設けられたことを特徴とするバスケット。
【請求項2】
前記蓋部材は、前記バスケット本体に対して相対的に上下動する栓であることを特徴とする請求項1に記載のバスケット。
【請求項3】
前記栓は、外側から内側に向かって上方に傾斜する斜面を有することを特徴とする請求項2に記載のバスケット。
【請求項4】
前記バスケットの内部を周方向に等分割する仕切りを設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバスケット。
【請求項5】
塗料を入れる塗料槽と、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバスケットと、
前記塗料槽または前記バスケットの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記バスケットを前記塗料槽内の塗料に浸漬させた後、前記塗料から引き揚げる移動装置と、
前記塗料から引き揚げた前記バスケットを回転させるバスケット回転装置と、
前記バスケットの蓋部材を開閉する開閉機構と、
前記バスケットの排出口から排出されるワークを、前記バスケットの下方で受け取るワーク受取部と、
を含むことを特徴とするディップスピン塗装装置。
【請求項6】
ワークを供給するワーク供給ステーションと、ワークにディップスピン塗装を施す浸漬塗装ステーションと、塗料が付着したワークを搬出するワーク搬出ステーションとを含む塗装ラインであって、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバスケットと、
前記バスケットを前記各ステーション間で搬送するバスケット搬送装置と、
前記ワーク供給ステーションにおいて、前記バスケットにワークを供給するワーク供給装置と、
前記浸漬塗装ステーションに設置され、塗料を入れる塗料槽と、前記塗料槽または前記バスケットの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記バスケットを前記塗料槽内の塗料に浸漬させた後、前記塗料から引き揚げる移動装置と、前記塗料から引き揚げた前記バスケットを回転させるバスケット回転装置とを含むディップスピン塗装装置と、
前記ワーク搬出ステーションに設けられ、前記バスケットの排出口から排出されるワークを前記バスケットの下方で受け取るワーク受取部と、
前記ワーク受取部の上で、前記バスケットの蓋部材を開閉する開閉機構と、
を含むことを特徴とする塗装ライン。
【請求項7】
前記ワーク供給ステーションと、前記浸漬塗装ステーションと、前記ワーク搬出ステーションが、円周上に等間隔で配置されたことを特徴とする請求項6に記載の塗装ライン。
【請求項1】
ワークを塗料に浸漬した後、塗料から出して回転させることで、ワークの表面に塗料を付着させるディップスピン塗装装置に用いるバスケットであって、
前記ワークが収容される有底円筒形状のバスケット本体と、前記バスケット本体の底部に形成され、内側から外側に向かって上方に傾斜するすり鉢形状の斜面と、前記底部に設けられ、塗料が付着した前記ワークを排出するための排出口と、前記排出口を開閉する蓋部材とを備え、
前記排出口は、前記底部のうち、前記斜面の内側に設けられたことを特徴とするバスケット。
【請求項2】
前記蓋部材は、前記バスケット本体に対して相対的に上下動する栓であることを特徴とする請求項1に記載のバスケット。
【請求項3】
前記栓は、外側から内側に向かって上方に傾斜する斜面を有することを特徴とする請求項2に記載のバスケット。
【請求項4】
前記バスケットの内部を周方向に等分割する仕切りを設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバスケット。
【請求項5】
塗料を入れる塗料槽と、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバスケットと、
前記塗料槽または前記バスケットの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記バスケットを前記塗料槽内の塗料に浸漬させた後、前記塗料から引き揚げる移動装置と、
前記塗料から引き揚げた前記バスケットを回転させるバスケット回転装置と、
前記バスケットの蓋部材を開閉する開閉機構と、
前記バスケットの排出口から排出されるワークを、前記バスケットの下方で受け取るワーク受取部と、
を含むことを特徴とするディップスピン塗装装置。
【請求項6】
ワークを供給するワーク供給ステーションと、ワークにディップスピン塗装を施す浸漬塗装ステーションと、塗料が付着したワークを搬出するワーク搬出ステーションとを含む塗装ラインであって、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバスケットと、
前記バスケットを前記各ステーション間で搬送するバスケット搬送装置と、
前記ワーク供給ステーションにおいて、前記バスケットにワークを供給するワーク供給装置と、
前記浸漬塗装ステーションに設置され、塗料を入れる塗料槽と、前記塗料槽または前記バスケットの少なくとも一方を他方に対して相対的に移動させて、前記バスケットを前記塗料槽内の塗料に浸漬させた後、前記塗料から引き揚げる移動装置と、前記塗料から引き揚げた前記バスケットを回転させるバスケット回転装置とを含むディップスピン塗装装置と、
前記ワーク搬出ステーションに設けられ、前記バスケットの排出口から排出されるワークを前記バスケットの下方で受け取るワーク受取部と、
前記ワーク受取部の上で、前記バスケットの蓋部材を開閉する開閉機構と、
を含むことを特徴とする塗装ライン。
【請求項7】
前記ワーク供給ステーションと、前記浸漬塗装ステーションと、前記ワーク搬出ステーションが、円周上に等間隔で配置されたことを特徴とする請求項6に記載の塗装ライン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−577(P2011−577A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148018(P2009−148018)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(593152982)株式会社エース設備 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(593152982)株式会社エース設備 (1)
【Fターム(参考)】
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