ディマースイッチ
【課題】前方照射から下方照射に切り換える際、意図せずパッシング操作してしまうのを抑制することができるディマースイッチを提供する。
【解決手段】前方照射位置、下方照射位置及びパッシング位置の間で操作可能なディマースイッチノブ5と、前方照射灯又は下方照射灯の切り替えを行わせる切換手段Dとを具備し、ディマースイッチノブ5の下方照射位置からパッシング位置への操作時、当該ディマースイッチノブ5を下方照射位置側へ付勢することにより自動的に復元可能とされたディマースイッチ2において、ディマースイッチノブ5は、その一方の揺動端で下方照射位置とされるとともに、他方の揺動端で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間にパッシング位置が設定されたものである。
【解決手段】前方照射位置、下方照射位置及びパッシング位置の間で操作可能なディマースイッチノブ5と、前方照射灯又は下方照射灯の切り替えを行わせる切換手段Dとを具備し、ディマースイッチノブ5の下方照射位置からパッシング位置への操作時、当該ディマースイッチノブ5を下方照射位置側へ付勢することにより自動的に復元可能とされたディマースイッチ2において、ディマースイッチノブ5は、その一方の揺動端で下方照射位置とされるとともに、他方の揺動端で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間にパッシング位置が設定されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が具備する前方照射灯及び下方照射灯を切換操作するためのディマースイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、二輪車用のディマースイッチは、ハンドルバーにおける把持グリップ近傍に取り付けられたスイッチケースに配設され、車両の前照灯を前方照射(ハイビーム)と下方照射(ロービーム)とに切換操作可能とされている。かかる前照灯は、下方照射すべく光軸を進行方向に対して下方に向けた下方照射灯と、前方照射すべく光軸を進行方向に対して略平行に向けた前方照射灯とから構成されており、下方照射灯が点灯すると下方を照射し、前方照射灯が点灯すると前方を照射し得るよう構成されている。
【0003】
ところで、ディマースイッチは、通常、前後方向に揺動可能なシーソー型のスイッチノブを有しており、運転者が当該ディマースイッチノブを後方側の位置(下方照射位置)とすれば、車両が搭載する切換回路における所定回路が導通して、下方照射灯を点灯させ下方照射状態とするとともに、前方側の位置(前方照射位置)とすれば、切換回路における他の回路が導通して、前方照射灯を点灯させ前方照射とし得るよう切換操作が可能とされていた。
【0004】
しかるに、従来のディマースイッチとして、下方照射位置にあるディマースイッチノブを更に後方側へ揺動させることにより、前方照射灯を一時的に点灯させてパッシングさせ得るよう構成されたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。すなわち、ディマースイッチノブを下方照射位置から前方に向かって揺動させると前方照射位置となるとともに、当該下方照射位置から後方に向かって揺動させるとパッシング位置となるよう設定されているのである。
【0005】
かかるディマースイッチによれば、パッシング操作時、指を離すとディマースイッチノブが自動的に元の位置(即ち、下方照射位置)まで揺動して復元するよう構成されており、この自動的な復元を図るべくねじりコイルばね(復元ばね)が設けられている。そして、ディマースイッチノブがパッシング位置まで揺動されると、ねじりコイルばねの一端が当該ディマースイッチノブと当接し、下方照射位置方向に付勢力が付与されるよう設定されており、これによりパッシング操作時の自動復元が可能とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−52989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のディマースイッチにおいては、ディマースイッチノブを下方照射位置から前方に向かって揺動させると前方照射位置となるよう設定されているとともに、当該下方照射位置から後方に向かって揺動させるとパッシング位置となって一時的に前方照射灯を点灯させるよう構成されているため、前方照射位置から下方照射位置までディマースイッチノブを操作する際、操作の勢いによって当該ディマースイッチノブをパッシング位置まで操作してしまう虞があった。
【0008】
例えば、走行中に対向車が迫ってくる状況において、前方照射から下方照射に切り換えるべく、ディマースイッチノブを前方照射位置から下方照射位置まで操作しようとした場合、操作の勢いにより不用意にパッシング位置まで操作してしまい、意図せずパッシング操作しまう虞があった。すなわち、従来のディマースイッチにおいては、ディマースイッチノブが後方に向かって揺動すると、前方照射位置、下方照射位置、パッシング位置の順となるよう設定されているため、運転者が前方照射から下方照射に切り換えようとしたにも関わらず一時的に前方照射(パッシング)させてしまう虞があったのである。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、前方照射から下方照射に切り換える際、意図せずパッシング操作してしまうのを抑制することができるディマースイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、車両が具備するスイッチケースに配設され、前方照射可能な前方照射灯を点灯させる前方照射位置、下方照射可能な下方照射灯を点灯させる下方照射位置、及び一時的に前記前方照射灯を点灯させるパッシング位置の間で操作可能なディマースイッチノブと、前記ディマースイッチノブの位置に応じて所定の回路を形成し、前記前方照射灯又は下方照射灯の切り替えを行わせる切換手段とを具備し、前記ディマースイッチノブの前記下方照射位置からパッシング位置への操作時、当該ディマースイッチノブを下方照射位置側へ付勢することにより自動的に復元可能とされたディマースイッチにおいて、前記ディマースイッチノブは、その一方の移動端で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間に前記パッシング位置が設定されたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のディマースイッチにおいて、前記切換手段は、前記ディマースイッチノブの操作と共に移動可能な可動接点及び当該可動接点と接触又は離間可能な固定接点を有するとともに、当該固定接点は、前記前方照射位置及びパッシング位置に対応する単一の第1固定接点と、前記下方照射位置に対応する単一の第2固定接点とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のディマースイッチにおいて、前記パッシング位置の途中に前記前方照射灯及び下方照射灯を同時に点灯させる同時点灯領域が設定されたことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3記載のディマースイッチにおいて、前記ディマースイッチノブと共に移動する移動体と、該移動体を摺動可能な摺動部と、前記移動体を前記摺動部に向かって付勢させる付勢部材とを有し、当該摺動部は、前記ディマースイッチノブが下方照射位置にあるとき前記移動体を保持させる第1位置、及び当該ディマースイッチノブが前方照射位置にあるとき前記移動体を保持させる第2位置がそれぞれ形成されるとともに、前記第1位置と第2位置との間には、当該第1位置から第2位置に向かって高くなる傾斜面が形成され、且つ、当該傾斜面における前記第2位置との境界部は他の傾斜面より傾斜角が大きく設定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、ディマースイッチノブは、その一方の移動端で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間にパッシング位置が設定されたので、前方照射から下方照射に切り換える際、意図せずパッシング操作してしまうのを抑制することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、切換手段は、ディマースイッチノブの操作と共に移動可能な可動接点及び当該可動接点と接触又は離間可能な固定接点を有するとともに、当該固定接点は、前方照射位置及びパッシング位置に対応する単一の第1固定接点と、下方照射位置に対応する単一の第2固定接点とを有するので、前方照射位置とパッシング位置とに対応した固定接点をそれぞれ具備させたものに比べ、接点の数を低減させることができ、部品点数を削減することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、パッシング位置の途中に前方照射灯及び下方照射灯を同時に点灯させる同時点灯領域が設定されたので、ディマースイッチノブが長時間に亘って同時点灯領域に留まってしまうのを防止することができる。すなわち、パッシング位置にあるディマースイッチノブは下方照射位置側へ付勢されていることから、当該パッシング位置の途中にある同時点灯領域で当該ディマースイッチノブが静止して長時間留まってしまうのを抑制できるのである。
【0017】
請求項4の発明によれば、第1位置と第2位置との間には、当該第1位置から第2位置に向かって高くなる傾斜面が形成され、且つ、当該傾斜面における第2位置との境界部は他の傾斜面より傾斜角が大きく設定されたので、パッシング操作時に意図せず前方照射位置までディマースイッチノブが操作されてしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るディマースイッチが適用されるスイッチケースの外観を示す正面図
【図2】同ディマースイッチが適用されるスイッチケースの外観を示す側面図
【図3】同ディマースイッチを示す3面図
【図4】(a)同ディマースイッチおけるディマースイッチノブが下方照射位置にある状態を示す側面図、(b)ディマースイッチノブが下方照射位置にあるときの接点の状態を示す模式図
【図5】(a)同ディマースイッチおけるディマースイッチノブがパッシング位置にある状態を示す側面図、(b)ディマースイッチノブがパッシング位置にあるときの接点の状態を示す模式図
【図6】(a)同ディマースイッチおけるディマースイッチノブが前方照射位置にある状態を示す側面図、(b)ディマースイッチノブが前方照射位置にあるときの接点の状態を示す模式図
【図7】同ディマースイッチおけるディマースイッチノブが下方照射位置にあるときの移動体の摺動部に対する位置関係を示す模式図
【図8】同ディマースイッチおけるディマースイッチノブがパッシング位置にあるときの移動体の摺動部に対する位置関係を示す模式図
【図9】同ディマースイッチおけるディマースイッチノブが前方照射位置にあるときの移動体の摺動部に対する位置関係を示す模式図
【図10】同ディマースイッチおける移動体と摺動部、及び接点における導通領域を示す模式図
【図11】本発明の他の実施の形態に係るディマースイッチが適用されるスイッチケースの外観を示す正面図
【図12】同ディマースイッチが適用されるスイッチケースの外観を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るディマースイッチは、車両が具備する前照灯である前方照射灯及び下方照射灯を切換操作するためのものであり、図1〜9に示すように、ディマースイッチノブ5と、切換手段Dとから主に構成され、二輪車の左側ハンドルバーHにおける把持グリップG近傍に取り付けられたスイッチケース1に配設されたものである。
【0020】
スイッチケース1は、前後2つの半割れ形状部品から成り、これら半割れ形状部品を左側ハンドルバーHに対して挟持させつつ合致させた後、ボルトなどにより締付固定して図1で示す如く取り付けられている。尚、スイッチケース1には、同図に示すように、本発明に係るディマースイッチ2の他、ウィンカを点滅操作するためのターンシグナルスイッチ3、及びホーンを作動するためのホーンスイッチ4などが配設されている。
【0021】
ディマースイッチ2の操作部を構成するディマースイッチノブ5は、例えば図3で示す如きケースfに組み付けられて軸Lを中心に揺動可能とされた樹脂成形品から成り、前方照射可能な前方照射灯を点灯させる前方照射位置(HI)(図6参照)、下方照射可能な下方照射灯を点灯させる下方照射位置(LO)(図4参照)、及び一時的に前方照射灯を点灯させるパッシング位置(PASS)(図5参照)の間で揺動操作可能とされている。なお、ディマースイッチノブ5には、その表裏面を貫通する貫通孔5aが形成されており、当該貫通孔5aに揺動の中心軸である軸Lが挿通されている。
【0022】
前方照射灯及び下方照射灯(何れも不図示)は、二輪車(車両)の前部に配設された前照灯を構成するもので、このうち前方照射灯は、前方照射すべく光軸を進行方向に対して略平行に向けられたものであるとともに、下方照射灯は、下方照射すべく光軸を進行方向に対して下方に向けられたものである。しかるに、ディマースイッチノブ5を前方照射位置(HI)及びパッシング位置(PASS)とすると、前方照射灯が点灯する一方、当該ディマースイッチノブ5を下方照射位置(LO)とすると、下方照射灯が点灯するようになっている。
【0023】
切換手段Dは、ディマースイッチノブ5の位置に応じて所定の回路を形成し、前方照射灯又は下方照射灯に対する点灯及び消灯の切り替えを行わせるもので、図4〜6に示すように、ディマースイッチノブ5の操作と共に移動可能な可動接点9a、9b、9cと、当該可動接点9a、9b、9cと接触又は離間可能な固定接点(第1固定接点6及び第2固定接点7)とを有するものである。かかる可動接点9a、9b、9cは、ディマースイッチノブ5側に形成されて当該ディマースイッチノブ5と共に動作可能とされるとともに、固定接点(第1固定接点6及び第2固定接点7)は、ケースf側における可動接点9a、9bと対向した面にそれぞれ形成されている。
【0024】
具体的には、可動接点9a、9b、9cは、ディマースイッチノブ5の側面に固定された金属製の接触子9に形成された凸状部位から成るものである。一方、ケースf側における第1固定接点6及び第2固定接点7の近傍には、接点9cと接触した状態とされるとともに、二輪車(車両)が搭載するバッテリ(電源)と電気的に接続された第3固定接点8が形成されている。なお、図4〜6に示すように、可動接点9cは、ディマースイッチノブ5を下方照射位置、パッシング位置及び前方照射位置の間で揺動させても、第3固定接点8との接触が保持されるようになっている。
【0025】
そして、ディマースイッチノブ5が下方照射位置にあるとき、図4に示すように、可動接点9aが第2固定接点7と接触した状態とされ、第3固定接点8と第2固定接点7とが導通して所定の回路が形成されることにより、下方照射灯が点灯する。また、ディマースイッチノブ5が前方照射位置にあるとき、図6に示すように、可動接点9bが第1固定接点6と接触した状態とされ、第3固定接点8と第1固定接点6とが導通して所定の回路が形成されることにより、前方照射灯が点灯する。
【0026】
ここで、本実施形態に係るディマースイッチノブ5は、その一方の移動端(前方への揺動端:図4参照)で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端(後方への揺動端:図6参照)で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間にパッシング位置が設定されている(図5参照)。これにより、下方照射位置にあるディマースイッチノブ5を前方に揺動操作すると、パッシング位置となって下方照射灯から前方照射灯に点灯を切り換えるようになっている。
【0027】
さらに、ディマースイッチノブ5は、下方照射位置からパッシング位置へ操作された時、下方照射位置側へ付勢されており、自動的に復元可能とされている。すなわち、ディマースイッチノブ5は、後述するスプリング12によって常時下方照射位置側に付勢されており、パッシング位置に操作した操作力を緩めると、自動的に下方照射位置まで戻って復元されるよう構成されているのである。そして、パッシング位置から更にディマースイッチノブ5を前方に揺動操作して前方照射位置に至らせると、当該ディマースイッチノブ5は前方照射位置にて保持され、前方照射灯の点灯が維持されることとなる。
【0028】
一方、図7〜9に示すように、ディマースイッチノブ5には、下方に開口した取付穴5bが形成されており、当該取付穴5bに移動体10及び付勢部材としてのスプリング12が配設されているとともに、ケースf側には、移動体10を摺動可能な摺動部11が形成されている。移動体10は、ディマースイッチノブ5と共に移動する金属製ボールから成るもので、スプリング12により摺動部11に向かって付勢されて組み付けられている。
【0029】
本実施形態に係る摺動部11は、図10に示すように、ディマースイッチノブ5が下方照射位置(LO)にあるとき移動体10を保持させる第1位置11a、及びディマースイッチノブ5が前方照射位置(HI)にあるとき移動体10を保持させる第2位置11bがそれぞれ形成されるとともに、第1位置11aと第2位置11bとの間には、当該第1位置11aから第2位置11bに向かって高くなる傾斜面11cが形成され、且つ、当該傾斜面11cにおける第2位置11bとの境界部11caは他の傾斜面11cより傾斜角が大きく設定されている。
【0030】
すなわち、ディマースイッチノブ5が下方照射位置にあるとき、移動体10は凹状の第1位置11aに嵌って保持されるとともに、当該ディマースイッチノブ5を揺動操作してパッシング位置(PASS)とすると、移動体10が傾斜面11cに沿って摺動する。このとき、移動体10は、スプリング12の付勢力によって傾斜面11c側に押圧されるので、ディマースイッチノブ5が下方照射側に向かって付勢されることとなり、自動復元が可能となっている。
【0031】
そして、更にディマースイッチノブ5を前方に揺動操作すると、移動体10が境界部11caに至り、そこからの前方照射位置側への揺動操作に対して所定の負荷を与えるようになっている。かかる所定の負荷に抗してディマースイッチノブ5を揺動操作すると、移動体10は傾斜面11cの頂部αを越え、凹状の第2位置11bに嵌って保持されるので、ディマースイッチノブ5が前方照射位置にて保持されることとなる。しかるに、ディマースイッチノブ5がパッシング位置にあるとき、移動体10は第1位置11aと傾斜面11cの頂部αとの間を摺動することとなる。
【0032】
ここで、下方照射灯から前方照射灯或いは前方照射灯から下方照射灯に点灯を切り換える際、両照射灯が同時に消灯してしまうのを防止するべく、本実施形態においては、図10に示すように、パッシング位置の途中(すなわち、移動体10が傾斜面11cにある状態)に前方照射灯及び下方照射灯を同時に点灯させる同時点灯領域βが設定されている。すなわち、ディマースイッチノブ5が下方照射位置にあるときの導通領域A(可動接点9aが第2固定接点7と接触した状態)と、パッシング位置にあるときの導通領域B(可動接点9bが第1固定接点6と接触した状態)とをオーバーラップさせ、同時点灯領域βを設定しているのである。なお、ディマースイッチノブ5が前方照射位置にあるときの導通領域Cにおいては、導通領域Bと同様、可動接点9bが第1固定接点6と接触した状態が維持される。
【0033】
上記実施形態によれば、ディマースイッチノブ5は、その一方の移動端(後方側の揺動端)で下方照射位置(LO)とされるとともに、他方の移動端(前方側の揺動端)で前方照射位置(HI)とされ、当該下方照射位置(LO)と前方照射位置(HI)との間にパッシング位置(PASS)が設定されたので、前方照射から下方照射に切り換える際、意図せずパッシング操作してしまうのを抑制することができる。
【0034】
すなわち、従来のディマースイッチの如く下方照射位置を挟んで前方照射位置とパッシング位置とが設定されている場合、前方照射から下方照射に切り換える際、一旦下方照射に切り替わるものの、操作の勢いによりパッシング位置まで操作してしまうと、下方照射位置から再び前方照射位置に至り、意図しないパッシングが行われてしまうのであるのに対し、本実施形態によれば、パッシング位置を挟んで前方照射位置と下方照射位置とが設定されているので、一旦下方照射に切り替わった後に操作の勢いにより再び前方照射となってしまうのを回避することができるのである。
【0035】
また、切換手段Dは、ディマースイッチノブ5の操作と共に移動可能な可動接点9a〜9c及び当該可動接点9a〜9cと接触又は離間可能な固定接点を有するとともに、当該固定接点は、前方照射位置及びパッシング位置に対応する単一の第1固定接点6と、下方照射位置に対応する単一の第2固定接点7とを有するので、前方照射位置とパッシング位置とに対応した固定接点をそれぞれ具備させたものに比べ、接点の数を低減させることができ、部品点数を削減することができる。
【0036】
さらに、固定接点の数を低減させることにより、そこから車両側に延設される配線の数も低減させることができる。特に、本実施形態によれば、第1固定接点6、第2固定接点7及び第3固定接点8からそれぞれ配線を延設させれば足りることから、ディマースイッチ2にパッシング操作機能を有しないもの(この場合、前方照射用、下方照射用、電源との接続用の配線の合計3本が必要とされる)との互換性を図ることができる。
【0037】
また更に、パッシング位置の途中に前方照射灯及び下方照射灯を同時に点灯させる同時点灯領域βが設定されたので、ディマースイッチノブ5が長時間に亘って同時点灯領域に留まってしまうのを防止することができる。すなわち、パッシング位置にあるディマースイッチノブ5は下方照射位置側へ付勢されていることから、当該パッシング位置の途中にある同時点灯領域βで当該ディマースイッチノブ5が静止して長時間留まってしまうのを抑制できるのである。
【0038】
また、第1位置11aと第2位置11bとの間には、当該第1位置11aから第2位置11bに向かって高くなる傾斜面11cが形成され、且つ、当該傾斜面11cにおける第2位置11bとの境界部11caは他の傾斜面11cより傾斜角が大きく設定されたので、パッシング位置と前方照射位置との間に節度を持たせることができ、パッシング操作時に意図せず前方照射位置までディマースイッチノブ5が操作されてしまうのを抑制することができる。
【0039】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図11及び図12に示すように、スイッチケース1の表面に沿って摺動し得るディマースイッチノブ5’を有したディマースイッチ2’としてもよい。この場合であっても、ディマースイッチノブ5’は、その一方の移動端(摺動端)で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端(摺動端)で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間にパッシング位置が設定されており、前方照射から下方照射に切り換える際、意図せずパッシング操作してしまうのを抑制することができる。
【0040】
また、ディマースイッチノブ5、5’の下方照射位置からパッシング位置への操作時、当該ディマースイッチノブ5、5’を下方照射位置側へ付勢することにより自動的に復元可能とする別個のスプリング(コイルスプリングやトーションバネ等)を具備するものとしてもよい。さらに、本実施形態においては、ケースfを筐体としてディマースイッチノブ5、5’等の部品が組み付けられてディマースイッチ2、2’を構成しているが、スイッチケース1を筐体として組み付けられるものに適用してもよい。なお、本実施形態においては、二輪車のディマースイッチに適用されているが、前方照射灯及び下方照射灯を備えそれらの切換操作が可能とされた他の車両(例えばATVなど)のスイッチケースに配設されたものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
ディマースイッチノブが、その一方の移動端で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間にパッシング位置が設定されたディマースイッチであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 スイッチケース
2 ディマースイッチ
3 ターンシグナルスイッチ
4 ホーンスイッチ
5 ディマースイッチノブ
6 第1固定接点
7 第2固定接点
8 第3固定接点
9 接触子
9a〜9c 可動接点
10 移動体
11 摺動部
12 スプリング(付勢部材)
D 切換手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が具備する前方照射灯及び下方照射灯を切換操作するためのディマースイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、二輪車用のディマースイッチは、ハンドルバーにおける把持グリップ近傍に取り付けられたスイッチケースに配設され、車両の前照灯を前方照射(ハイビーム)と下方照射(ロービーム)とに切換操作可能とされている。かかる前照灯は、下方照射すべく光軸を進行方向に対して下方に向けた下方照射灯と、前方照射すべく光軸を進行方向に対して略平行に向けた前方照射灯とから構成されており、下方照射灯が点灯すると下方を照射し、前方照射灯が点灯すると前方を照射し得るよう構成されている。
【0003】
ところで、ディマースイッチは、通常、前後方向に揺動可能なシーソー型のスイッチノブを有しており、運転者が当該ディマースイッチノブを後方側の位置(下方照射位置)とすれば、車両が搭載する切換回路における所定回路が導通して、下方照射灯を点灯させ下方照射状態とするとともに、前方側の位置(前方照射位置)とすれば、切換回路における他の回路が導通して、前方照射灯を点灯させ前方照射とし得るよう切換操作が可能とされていた。
【0004】
しかるに、従来のディマースイッチとして、下方照射位置にあるディマースイッチノブを更に後方側へ揺動させることにより、前方照射灯を一時的に点灯させてパッシングさせ得るよう構成されたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。すなわち、ディマースイッチノブを下方照射位置から前方に向かって揺動させると前方照射位置となるとともに、当該下方照射位置から後方に向かって揺動させるとパッシング位置となるよう設定されているのである。
【0005】
かかるディマースイッチによれば、パッシング操作時、指を離すとディマースイッチノブが自動的に元の位置(即ち、下方照射位置)まで揺動して復元するよう構成されており、この自動的な復元を図るべくねじりコイルばね(復元ばね)が設けられている。そして、ディマースイッチノブがパッシング位置まで揺動されると、ねじりコイルばねの一端が当該ディマースイッチノブと当接し、下方照射位置方向に付勢力が付与されるよう設定されており、これによりパッシング操作時の自動復元が可能とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−52989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のディマースイッチにおいては、ディマースイッチノブを下方照射位置から前方に向かって揺動させると前方照射位置となるよう設定されているとともに、当該下方照射位置から後方に向かって揺動させるとパッシング位置となって一時的に前方照射灯を点灯させるよう構成されているため、前方照射位置から下方照射位置までディマースイッチノブを操作する際、操作の勢いによって当該ディマースイッチノブをパッシング位置まで操作してしまう虞があった。
【0008】
例えば、走行中に対向車が迫ってくる状況において、前方照射から下方照射に切り換えるべく、ディマースイッチノブを前方照射位置から下方照射位置まで操作しようとした場合、操作の勢いにより不用意にパッシング位置まで操作してしまい、意図せずパッシング操作しまう虞があった。すなわち、従来のディマースイッチにおいては、ディマースイッチノブが後方に向かって揺動すると、前方照射位置、下方照射位置、パッシング位置の順となるよう設定されているため、運転者が前方照射から下方照射に切り換えようとしたにも関わらず一時的に前方照射(パッシング)させてしまう虞があったのである。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、前方照射から下方照射に切り換える際、意図せずパッシング操作してしまうのを抑制することができるディマースイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、車両が具備するスイッチケースに配設され、前方照射可能な前方照射灯を点灯させる前方照射位置、下方照射可能な下方照射灯を点灯させる下方照射位置、及び一時的に前記前方照射灯を点灯させるパッシング位置の間で操作可能なディマースイッチノブと、前記ディマースイッチノブの位置に応じて所定の回路を形成し、前記前方照射灯又は下方照射灯の切り替えを行わせる切換手段とを具備し、前記ディマースイッチノブの前記下方照射位置からパッシング位置への操作時、当該ディマースイッチノブを下方照射位置側へ付勢することにより自動的に復元可能とされたディマースイッチにおいて、前記ディマースイッチノブは、その一方の移動端で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間に前記パッシング位置が設定されたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のディマースイッチにおいて、前記切換手段は、前記ディマースイッチノブの操作と共に移動可能な可動接点及び当該可動接点と接触又は離間可能な固定接点を有するとともに、当該固定接点は、前記前方照射位置及びパッシング位置に対応する単一の第1固定接点と、前記下方照射位置に対応する単一の第2固定接点とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のディマースイッチにおいて、前記パッシング位置の途中に前記前方照射灯及び下方照射灯を同時に点灯させる同時点灯領域が設定されたことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3記載のディマースイッチにおいて、前記ディマースイッチノブと共に移動する移動体と、該移動体を摺動可能な摺動部と、前記移動体を前記摺動部に向かって付勢させる付勢部材とを有し、当該摺動部は、前記ディマースイッチノブが下方照射位置にあるとき前記移動体を保持させる第1位置、及び当該ディマースイッチノブが前方照射位置にあるとき前記移動体を保持させる第2位置がそれぞれ形成されるとともに、前記第1位置と第2位置との間には、当該第1位置から第2位置に向かって高くなる傾斜面が形成され、且つ、当該傾斜面における前記第2位置との境界部は他の傾斜面より傾斜角が大きく設定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、ディマースイッチノブは、その一方の移動端で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間にパッシング位置が設定されたので、前方照射から下方照射に切り換える際、意図せずパッシング操作してしまうのを抑制することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、切換手段は、ディマースイッチノブの操作と共に移動可能な可動接点及び当該可動接点と接触又は離間可能な固定接点を有するとともに、当該固定接点は、前方照射位置及びパッシング位置に対応する単一の第1固定接点と、下方照射位置に対応する単一の第2固定接点とを有するので、前方照射位置とパッシング位置とに対応した固定接点をそれぞれ具備させたものに比べ、接点の数を低減させることができ、部品点数を削減することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、パッシング位置の途中に前方照射灯及び下方照射灯を同時に点灯させる同時点灯領域が設定されたので、ディマースイッチノブが長時間に亘って同時点灯領域に留まってしまうのを防止することができる。すなわち、パッシング位置にあるディマースイッチノブは下方照射位置側へ付勢されていることから、当該パッシング位置の途中にある同時点灯領域で当該ディマースイッチノブが静止して長時間留まってしまうのを抑制できるのである。
【0017】
請求項4の発明によれば、第1位置と第2位置との間には、当該第1位置から第2位置に向かって高くなる傾斜面が形成され、且つ、当該傾斜面における第2位置との境界部は他の傾斜面より傾斜角が大きく設定されたので、パッシング操作時に意図せず前方照射位置までディマースイッチノブが操作されてしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係るディマースイッチが適用されるスイッチケースの外観を示す正面図
【図2】同ディマースイッチが適用されるスイッチケースの外観を示す側面図
【図3】同ディマースイッチを示す3面図
【図4】(a)同ディマースイッチおけるディマースイッチノブが下方照射位置にある状態を示す側面図、(b)ディマースイッチノブが下方照射位置にあるときの接点の状態を示す模式図
【図5】(a)同ディマースイッチおけるディマースイッチノブがパッシング位置にある状態を示す側面図、(b)ディマースイッチノブがパッシング位置にあるときの接点の状態を示す模式図
【図6】(a)同ディマースイッチおけるディマースイッチノブが前方照射位置にある状態を示す側面図、(b)ディマースイッチノブが前方照射位置にあるときの接点の状態を示す模式図
【図7】同ディマースイッチおけるディマースイッチノブが下方照射位置にあるときの移動体の摺動部に対する位置関係を示す模式図
【図8】同ディマースイッチおけるディマースイッチノブがパッシング位置にあるときの移動体の摺動部に対する位置関係を示す模式図
【図9】同ディマースイッチおけるディマースイッチノブが前方照射位置にあるときの移動体の摺動部に対する位置関係を示す模式図
【図10】同ディマースイッチおける移動体と摺動部、及び接点における導通領域を示す模式図
【図11】本発明の他の実施の形態に係るディマースイッチが適用されるスイッチケースの外観を示す正面図
【図12】同ディマースイッチが適用されるスイッチケースの外観を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るディマースイッチは、車両が具備する前照灯である前方照射灯及び下方照射灯を切換操作するためのものであり、図1〜9に示すように、ディマースイッチノブ5と、切換手段Dとから主に構成され、二輪車の左側ハンドルバーHにおける把持グリップG近傍に取り付けられたスイッチケース1に配設されたものである。
【0020】
スイッチケース1は、前後2つの半割れ形状部品から成り、これら半割れ形状部品を左側ハンドルバーHに対して挟持させつつ合致させた後、ボルトなどにより締付固定して図1で示す如く取り付けられている。尚、スイッチケース1には、同図に示すように、本発明に係るディマースイッチ2の他、ウィンカを点滅操作するためのターンシグナルスイッチ3、及びホーンを作動するためのホーンスイッチ4などが配設されている。
【0021】
ディマースイッチ2の操作部を構成するディマースイッチノブ5は、例えば図3で示す如きケースfに組み付けられて軸Lを中心に揺動可能とされた樹脂成形品から成り、前方照射可能な前方照射灯を点灯させる前方照射位置(HI)(図6参照)、下方照射可能な下方照射灯を点灯させる下方照射位置(LO)(図4参照)、及び一時的に前方照射灯を点灯させるパッシング位置(PASS)(図5参照)の間で揺動操作可能とされている。なお、ディマースイッチノブ5には、その表裏面を貫通する貫通孔5aが形成されており、当該貫通孔5aに揺動の中心軸である軸Lが挿通されている。
【0022】
前方照射灯及び下方照射灯(何れも不図示)は、二輪車(車両)の前部に配設された前照灯を構成するもので、このうち前方照射灯は、前方照射すべく光軸を進行方向に対して略平行に向けられたものであるとともに、下方照射灯は、下方照射すべく光軸を進行方向に対して下方に向けられたものである。しかるに、ディマースイッチノブ5を前方照射位置(HI)及びパッシング位置(PASS)とすると、前方照射灯が点灯する一方、当該ディマースイッチノブ5を下方照射位置(LO)とすると、下方照射灯が点灯するようになっている。
【0023】
切換手段Dは、ディマースイッチノブ5の位置に応じて所定の回路を形成し、前方照射灯又は下方照射灯に対する点灯及び消灯の切り替えを行わせるもので、図4〜6に示すように、ディマースイッチノブ5の操作と共に移動可能な可動接点9a、9b、9cと、当該可動接点9a、9b、9cと接触又は離間可能な固定接点(第1固定接点6及び第2固定接点7)とを有するものである。かかる可動接点9a、9b、9cは、ディマースイッチノブ5側に形成されて当該ディマースイッチノブ5と共に動作可能とされるとともに、固定接点(第1固定接点6及び第2固定接点7)は、ケースf側における可動接点9a、9bと対向した面にそれぞれ形成されている。
【0024】
具体的には、可動接点9a、9b、9cは、ディマースイッチノブ5の側面に固定された金属製の接触子9に形成された凸状部位から成るものである。一方、ケースf側における第1固定接点6及び第2固定接点7の近傍には、接点9cと接触した状態とされるとともに、二輪車(車両)が搭載するバッテリ(電源)と電気的に接続された第3固定接点8が形成されている。なお、図4〜6に示すように、可動接点9cは、ディマースイッチノブ5を下方照射位置、パッシング位置及び前方照射位置の間で揺動させても、第3固定接点8との接触が保持されるようになっている。
【0025】
そして、ディマースイッチノブ5が下方照射位置にあるとき、図4に示すように、可動接点9aが第2固定接点7と接触した状態とされ、第3固定接点8と第2固定接点7とが導通して所定の回路が形成されることにより、下方照射灯が点灯する。また、ディマースイッチノブ5が前方照射位置にあるとき、図6に示すように、可動接点9bが第1固定接点6と接触した状態とされ、第3固定接点8と第1固定接点6とが導通して所定の回路が形成されることにより、前方照射灯が点灯する。
【0026】
ここで、本実施形態に係るディマースイッチノブ5は、その一方の移動端(前方への揺動端:図4参照)で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端(後方への揺動端:図6参照)で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間にパッシング位置が設定されている(図5参照)。これにより、下方照射位置にあるディマースイッチノブ5を前方に揺動操作すると、パッシング位置となって下方照射灯から前方照射灯に点灯を切り換えるようになっている。
【0027】
さらに、ディマースイッチノブ5は、下方照射位置からパッシング位置へ操作された時、下方照射位置側へ付勢されており、自動的に復元可能とされている。すなわち、ディマースイッチノブ5は、後述するスプリング12によって常時下方照射位置側に付勢されており、パッシング位置に操作した操作力を緩めると、自動的に下方照射位置まで戻って復元されるよう構成されているのである。そして、パッシング位置から更にディマースイッチノブ5を前方に揺動操作して前方照射位置に至らせると、当該ディマースイッチノブ5は前方照射位置にて保持され、前方照射灯の点灯が維持されることとなる。
【0028】
一方、図7〜9に示すように、ディマースイッチノブ5には、下方に開口した取付穴5bが形成されており、当該取付穴5bに移動体10及び付勢部材としてのスプリング12が配設されているとともに、ケースf側には、移動体10を摺動可能な摺動部11が形成されている。移動体10は、ディマースイッチノブ5と共に移動する金属製ボールから成るもので、スプリング12により摺動部11に向かって付勢されて組み付けられている。
【0029】
本実施形態に係る摺動部11は、図10に示すように、ディマースイッチノブ5が下方照射位置(LO)にあるとき移動体10を保持させる第1位置11a、及びディマースイッチノブ5が前方照射位置(HI)にあるとき移動体10を保持させる第2位置11bがそれぞれ形成されるとともに、第1位置11aと第2位置11bとの間には、当該第1位置11aから第2位置11bに向かって高くなる傾斜面11cが形成され、且つ、当該傾斜面11cにおける第2位置11bとの境界部11caは他の傾斜面11cより傾斜角が大きく設定されている。
【0030】
すなわち、ディマースイッチノブ5が下方照射位置にあるとき、移動体10は凹状の第1位置11aに嵌って保持されるとともに、当該ディマースイッチノブ5を揺動操作してパッシング位置(PASS)とすると、移動体10が傾斜面11cに沿って摺動する。このとき、移動体10は、スプリング12の付勢力によって傾斜面11c側に押圧されるので、ディマースイッチノブ5が下方照射側に向かって付勢されることとなり、自動復元が可能となっている。
【0031】
そして、更にディマースイッチノブ5を前方に揺動操作すると、移動体10が境界部11caに至り、そこからの前方照射位置側への揺動操作に対して所定の負荷を与えるようになっている。かかる所定の負荷に抗してディマースイッチノブ5を揺動操作すると、移動体10は傾斜面11cの頂部αを越え、凹状の第2位置11bに嵌って保持されるので、ディマースイッチノブ5が前方照射位置にて保持されることとなる。しかるに、ディマースイッチノブ5がパッシング位置にあるとき、移動体10は第1位置11aと傾斜面11cの頂部αとの間を摺動することとなる。
【0032】
ここで、下方照射灯から前方照射灯或いは前方照射灯から下方照射灯に点灯を切り換える際、両照射灯が同時に消灯してしまうのを防止するべく、本実施形態においては、図10に示すように、パッシング位置の途中(すなわち、移動体10が傾斜面11cにある状態)に前方照射灯及び下方照射灯を同時に点灯させる同時点灯領域βが設定されている。すなわち、ディマースイッチノブ5が下方照射位置にあるときの導通領域A(可動接点9aが第2固定接点7と接触した状態)と、パッシング位置にあるときの導通領域B(可動接点9bが第1固定接点6と接触した状態)とをオーバーラップさせ、同時点灯領域βを設定しているのである。なお、ディマースイッチノブ5が前方照射位置にあるときの導通領域Cにおいては、導通領域Bと同様、可動接点9bが第1固定接点6と接触した状態が維持される。
【0033】
上記実施形態によれば、ディマースイッチノブ5は、その一方の移動端(後方側の揺動端)で下方照射位置(LO)とされるとともに、他方の移動端(前方側の揺動端)で前方照射位置(HI)とされ、当該下方照射位置(LO)と前方照射位置(HI)との間にパッシング位置(PASS)が設定されたので、前方照射から下方照射に切り換える際、意図せずパッシング操作してしまうのを抑制することができる。
【0034】
すなわち、従来のディマースイッチの如く下方照射位置を挟んで前方照射位置とパッシング位置とが設定されている場合、前方照射から下方照射に切り換える際、一旦下方照射に切り替わるものの、操作の勢いによりパッシング位置まで操作してしまうと、下方照射位置から再び前方照射位置に至り、意図しないパッシングが行われてしまうのであるのに対し、本実施形態によれば、パッシング位置を挟んで前方照射位置と下方照射位置とが設定されているので、一旦下方照射に切り替わった後に操作の勢いにより再び前方照射となってしまうのを回避することができるのである。
【0035】
また、切換手段Dは、ディマースイッチノブ5の操作と共に移動可能な可動接点9a〜9c及び当該可動接点9a〜9cと接触又は離間可能な固定接点を有するとともに、当該固定接点は、前方照射位置及びパッシング位置に対応する単一の第1固定接点6と、下方照射位置に対応する単一の第2固定接点7とを有するので、前方照射位置とパッシング位置とに対応した固定接点をそれぞれ具備させたものに比べ、接点の数を低減させることができ、部品点数を削減することができる。
【0036】
さらに、固定接点の数を低減させることにより、そこから車両側に延設される配線の数も低減させることができる。特に、本実施形態によれば、第1固定接点6、第2固定接点7及び第3固定接点8からそれぞれ配線を延設させれば足りることから、ディマースイッチ2にパッシング操作機能を有しないもの(この場合、前方照射用、下方照射用、電源との接続用の配線の合計3本が必要とされる)との互換性を図ることができる。
【0037】
また更に、パッシング位置の途中に前方照射灯及び下方照射灯を同時に点灯させる同時点灯領域βが設定されたので、ディマースイッチノブ5が長時間に亘って同時点灯領域に留まってしまうのを防止することができる。すなわち、パッシング位置にあるディマースイッチノブ5は下方照射位置側へ付勢されていることから、当該パッシング位置の途中にある同時点灯領域βで当該ディマースイッチノブ5が静止して長時間留まってしまうのを抑制できるのである。
【0038】
また、第1位置11aと第2位置11bとの間には、当該第1位置11aから第2位置11bに向かって高くなる傾斜面11cが形成され、且つ、当該傾斜面11cにおける第2位置11bとの境界部11caは他の傾斜面11cより傾斜角が大きく設定されたので、パッシング位置と前方照射位置との間に節度を持たせることができ、パッシング操作時に意図せず前方照射位置までディマースイッチノブ5が操作されてしまうのを抑制することができる。
【0039】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図11及び図12に示すように、スイッチケース1の表面に沿って摺動し得るディマースイッチノブ5’を有したディマースイッチ2’としてもよい。この場合であっても、ディマースイッチノブ5’は、その一方の移動端(摺動端)で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端(摺動端)で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間にパッシング位置が設定されており、前方照射から下方照射に切り換える際、意図せずパッシング操作してしまうのを抑制することができる。
【0040】
また、ディマースイッチノブ5、5’の下方照射位置からパッシング位置への操作時、当該ディマースイッチノブ5、5’を下方照射位置側へ付勢することにより自動的に復元可能とする別個のスプリング(コイルスプリングやトーションバネ等)を具備するものとしてもよい。さらに、本実施形態においては、ケースfを筐体としてディマースイッチノブ5、5’等の部品が組み付けられてディマースイッチ2、2’を構成しているが、スイッチケース1を筐体として組み付けられるものに適用してもよい。なお、本実施形態においては、二輪車のディマースイッチに適用されているが、前方照射灯及び下方照射灯を備えそれらの切換操作が可能とされた他の車両(例えばATVなど)のスイッチケースに配設されたものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
ディマースイッチノブが、その一方の移動端で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間にパッシング位置が設定されたディマースイッチであれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 スイッチケース
2 ディマースイッチ
3 ターンシグナルスイッチ
4 ホーンスイッチ
5 ディマースイッチノブ
6 第1固定接点
7 第2固定接点
8 第3固定接点
9 接触子
9a〜9c 可動接点
10 移動体
11 摺動部
12 スプリング(付勢部材)
D 切換手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が具備するスイッチケースに配設され、前方照射可能な前方照射灯を点灯させる前方照射位置、下方照射可能な下方照射灯を点灯させる下方照射位置、及び一時的に前記前方照射灯を点灯させるパッシング位置の間で操作可能なディマースイッチノブと、
前記ディマースイッチノブの位置に応じて所定の回路を形成し、前記前方照射灯又は下方照射灯の切り替えを行わせる切換手段と、
を具備し、前記ディマースイッチノブの前記下方照射位置からパッシング位置への操作時、当該ディマースイッチノブを下方照射位置側へ付勢することにより自動的に復元可能とされたディマースイッチにおいて、
前記ディマースイッチノブは、その一方の移動端で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間に前記パッシング位置が設定されたことを特徴とするディマースイッチ。
【請求項2】
前記切換手段は、前記ディマースイッチノブの操作と共に移動可能な可動接点及び当該可動接点と接触又は離間可能な固定接点を有するとともに、当該固定接点は、前記前方照射位置及びパッシング位置に対応する単一の第1固定接点と、前記下方照射位置に対応する単一の第2固定接点とを有することを特徴とする請求項1記載のディマースイッチ。
【請求項3】
前記パッシング位置の途中に前記前方照射灯及び下方照射灯を同時に点灯させる同時点灯領域が設定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のディマースイッチ。
【請求項4】
前記ディマースイッチノブと共に移動する移動体と、該移動体を摺動可能な摺動部と、前記移動体を前記摺動部に向かって付勢させる付勢部材とを有し、当該摺動部は、前記ディマースイッチノブが下方照射位置にあるとき前記移動体を保持させる第1位置、及び当該ディマースイッチノブが前方照射位置にあるとき前記移動体を保持させる第2位置がそれぞれ形成されるとともに、前記第1位置と第2位置との間には、当該第1位置から第2位置に向かって高くなる傾斜面が形成され、且つ、当該傾斜面における前記第2位置との境界部は他の傾斜面より傾斜角が大きく設定されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のディマースイッチ。
【請求項1】
車両が具備するスイッチケースに配設され、前方照射可能な前方照射灯を点灯させる前方照射位置、下方照射可能な下方照射灯を点灯させる下方照射位置、及び一時的に前記前方照射灯を点灯させるパッシング位置の間で操作可能なディマースイッチノブと、
前記ディマースイッチノブの位置に応じて所定の回路を形成し、前記前方照射灯又は下方照射灯の切り替えを行わせる切換手段と、
を具備し、前記ディマースイッチノブの前記下方照射位置からパッシング位置への操作時、当該ディマースイッチノブを下方照射位置側へ付勢することにより自動的に復元可能とされたディマースイッチにおいて、
前記ディマースイッチノブは、その一方の移動端で下方照射位置とされるとともに、他方の移動端で前方照射位置とされ、当該下方照射位置と前方照射位置との間に前記パッシング位置が設定されたことを特徴とするディマースイッチ。
【請求項2】
前記切換手段は、前記ディマースイッチノブの操作と共に移動可能な可動接点及び当該可動接点と接触又は離間可能な固定接点を有するとともに、当該固定接点は、前記前方照射位置及びパッシング位置に対応する単一の第1固定接点と、前記下方照射位置に対応する単一の第2固定接点とを有することを特徴とする請求項1記載のディマースイッチ。
【請求項3】
前記パッシング位置の途中に前記前方照射灯及び下方照射灯を同時に点灯させる同時点灯領域が設定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のディマースイッチ。
【請求項4】
前記ディマースイッチノブと共に移動する移動体と、該移動体を摺動可能な摺動部と、前記移動体を前記摺動部に向かって付勢させる付勢部材とを有し、当該摺動部は、前記ディマースイッチノブが下方照射位置にあるとき前記移動体を保持させる第1位置、及び当該ディマースイッチノブが前方照射位置にあるとき前記移動体を保持させる第2位置がそれぞれ形成されるとともに、前記第1位置と第2位置との間には、当該第1位置から第2位置に向かって高くなる傾斜面が形成され、且つ、当該傾斜面における前記第2位置との境界部は他の傾斜面より傾斜角が大きく設定されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載のディマースイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−224222(P2012−224222A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93886(P2011−93886)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】
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