説明

デザインモデル製造方法、スプレー塗装材用無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液及び盛り付け加工用無溶剤型2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材

【課題】効率よく造形作業を行なうことが可能なデザインモデル製造方法及び該製造方法において好適に用いられるスプレー塗装材及び盛り付け加工用パテ材の提供。
【解決手段】発泡ポリスチレンブロックをモデル概略形状に貼り合わせて概略構造体を形成する貼り合わせ工程と、次いで、NC加工にて概略構造体をモデル概略形状に切削し、モデル下地を形成する粗削り工程と、次いで、モデル下地の表面へ無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液を2頭ガン式スプレー塗装機にて塗布する被覆工程と、次いで、樹脂液が硬化した表面へ無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂を自動混合吐出自動盛り付け機にて盛り付ける盛り付け工程と、次いで、樹脂が硬化した後、NC加工にてモデル形状に切削する仕上げ加工工程と、次いで、仕上げ加工された樹脂の硬化物表面へ塗料をスプレーする塗装工程とから成るデザインモデル製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、電車などの各種物品のデザインモデルの製造方法に関する。
自動車産業に於いて、デザインは販売量を左右する重要な要素の1つである。デザイナーがイメージした新車デザインを実物大の造形物とすることにて、そのデザインが明確化される。
デザイナーがイメージしたデザインを実物大の造形物とするには、幾多の工程を経ることになる。まず、デザイナーが新車のデザインをイラストにてイメージし、有望なデザインに対しては、クレー粘土にて3次元クレーモデルが作製され修正・検討がなされる。こうして実車形状の3次元クレーモデルとなることにより、第三者が各種角度から新車デザインを視覚で捕らえることが出来る様になり、デザインの共有化が図られる。
決定された新車デザイン形状は何時でも正確に再現し、量産に結びつけることが必要となる。そこで、この決定された新車モデルの形状をいつでも再現させる様にするために、クレーモデルの表面をレイアウトマシンにて計測し、データ化することで3次元CADデータとなる。
3次元CADデータと成った新車デザインは、パソコン画面に投影し、幾多の角度から視覚に捕らえることが出来る。また、CADデータをNC加工機に送り、切削加工すれば実車デザインの3次元造形物を再現することが出来る。当然、実車形状のデザインの再現であり内部構造までは伴わないものである。
新車デザインの発表会に展示する実車デザインモデルに、クレーモデルは使用されないのが、一般的である。クレー粘土は硬化することがなく、後日、削り取りや盛り付けにより修正し易い素材であるが、衝撃に対して変形し易いこと及び比重が大きく実車クレーモデルを移動させることが難しいためである。そこで、運び易く、変形しにくい軽量材料をNC加工にて実車デザインモデルが製作される。
本発明は、自動車の新規デザインを誰もが視覚に捕らえることが出来る実車デザインモデルを造形するために、造形樹脂材料と機器を適合させ、効率よく造形作業を行なうデザインモデル製造方法及び該製造方法において好適に用いられるスプレー塗装材用無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液及び盛り付け加工用無溶剤型2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
実車デザインモデル制作に関す従来技術は、大別して2つある。1つは、切削加工容易な合成木材(ケミカルブロック)を貼り合わせ、モデル概略形状にNC加工・塗装仕上げにて製作される方法である。2つ目は、発泡体ブロックをモデル概略形状にNC切削加工し、その表面に2液反応硬化性盛り付け樹脂が盛り付けされ、硬化後、NC加工にて実車デザイン形状と成し、塗装仕上げにて制作される方法である。
後者の方法である、コア材となる発泡体の表面へウレタン樹脂系盛り付け材を2液混合吐出機にて混合吐出し盛り付け、硬化後にNC切削加工にて実車大の大型デザインモデルを制作する方法は、特許文献1(特開2003−160632号公報)、特許文献2(特開2004−233744号公報)、特許文献3(特開2004−277722号公報)、特許文献4(特開2005−240017号公報)、特許文献5(特開2006−328365号公報)、特許文献6(特開2007−291371号公報)等に記載されている。
【0003】
発泡体の表面強度を補強するために、無発泡ポリウレタンをスプレーし、強化皮膜を作ることは従来技術にて公知である。たとえば、特許文献7(特開平7−179634号公報)ではポリスチレンフオームの表面にウレタンエラストマーを吹き付け、魚類や食肉等の生鮮食品を保冷輸送する容器に使用することが記載されている。また、特許文献8(特開平7−196841号公報)ではポリエチレン発泡体の表面へ2液反応性無溶剤型ウレタンをスプレー塗布し、ビル屋上のクッション性防水シートを形成することが記載されている。
【0004】
2液反応硬化性ウレタンに可塑剤を必須成分として使用することも公知である。特許文献9(特開平6−298896号公報)では、ポリイソシアネート成分とポリオール成分と可塑剤を必須成分として配合し、低粘度化することにて2液高圧スプレーを行うことが容易となる組成物が記載されている。また、特許文献10(特開2005−139255号公報)で2液型ポリウレタン組成物の主剤及び又は硬化剤に脂肪酸エステルを減粘剤として配合し高圧2液型吹き付け装置にてスプレーすることも記載されている。
【0005】
2液反応硬化性ウレタンに有機・無機揺変剤を配合しタレ止め性を付与し、立体形状物へスプレー塗装することも公知である。特許文献11(特開平5−123646号公報)では、ポリオール成分に有機・無機系揺変剤を配合した主剤とポリイソシアネート成分からなる硬化剤の2液を鉄道車両屋根へタレることなくスプレー塗装することが記載されている。
【0006】
2液急速硬化性ウレタン樹脂に関する樹脂組成に関しては、ウレタン業界にて広く知られている。つまり、ポリイソシアネートとポリオールの反応において、ポリオールに硬化促進触媒を配合することにより急速硬化性を付与出来る。また、ポリイソシアネートとポリアミンの反応は瞬間的に反応することも良く知られている。特許文献12(特開平5−200362号公報)では速硬化型ウレタン塗料の組成と性能について記載されている。
【0007】
2液反応硬化性ウレタンのスプレー装置に関しては、色々な装置が提案されている。特許文献13(特開平5−49977号公報)では2液ウレタンを現地塗装が簡単に出来るスプレーノズルを有するスタテイックミキサーを備えた可搬式2液塗装機が記載されている。また、高速硬化2液ウレタンの塗装用として、2液強制攪拌液圧スプレースタテイックが記載されている。また、高速成形するRIM成形はポリウレタンやポリウレアエラストマーの原料粘度が低い状態で2液衝突混合せしめ、モールドへ吐出し急速硬化せしめ、短時間に脱型する成型方式であり、この衝突混合後、ノズルチップより吐出噴霧させるスプレー方式が普及して来た。特許文献14(特開2003−103217号公報)や特許文献15(特開2002−292335号公報)では、芳香族アミンや脂肪族アミンのアルキレンオキサイド付加物からなるポリオール成分とポリイソシアネート成分からなる無溶剤系2液超速硬化型樹脂を2液衝突混合スプレー塗布し塗り床材施工に適用している。
【0008】
スプレーガンの構造に関しては、特許文献16(特開2000−140717号公報)にて、ノズル部位で2液混合噴出し得る2液混合式携帯用スプレーガンが提案されている。また、特許文献17(特開平9−24308号公報)では、イソシアネート化合物とアミン化合物のような硬化反応の速い樹脂をスプレーノズル先端で混合吐出スプレーし、ガン本体内に樹脂の硬化物が残留することの無い2液混合塗装用の高速硬化反応型スプレーガン及びそれによる塗装方法が提案されている。また特許文献18(特開平7−16504号公報)では、スプレーガン先端から圧縮空気と共に2液が噴出され、噴流中に混入している主剤塗料と硬化剤を微粒化して混合する外部混合式2液塗装装置とそのスプレーガンも提案されている。
【0009】
また、2液の液状衝突混合ではなく、スプレー噴霧ミスト混合も公知となっている。特許文献19(特開2008−66187号公報)では、2液性ウレタン樹脂溶液を含むインキを塗布し、その上に硬化触媒溶液または蒸気をインクジェットで噴霧し塗膜を急速硬化させる方法が記載されている。これは、アミン触媒硬化型塗料と称されるものであり、特許文献20(特開平5−220446号公報)に自動車鋼板の防錆塗装に応用されており、特許文献21(特開平8−60090号公報)にポリウレタン塗料の組成が記載されている。
【特許文献1】特開2003−160632号公報
【特許文献2】特開2004−233744号公報
【特許文献3】特開2004−277722号公報
【特許文献4】特開2005−240017号公報
【特許文献5】特開2006−328365号公報
【特許文献6】特開2007−291371号公報
【特許文献7】特開平7−179634号公報
【特許文献8】特開平7−196841号公報
【特許文献9】特開平6−298896号公報
【特許文献10】特開2005−139255号公報
【特許文献11】特開平5−123646号公報
【特許文献12】特開平5−200362号公報
【特許文献13】特開平5−49977号公報
【特許文献14】特開2003−103217号公報
【特許文献15】特開2002−292335号公報
【特許文献16】特開2000−140717号公報
【特許文献17】特開平9−24308号公報
【特許文献18】特開平7−16504号公報
【特許文献19】特開2008−66187号公報
【特許文献20】特開平5−220446号公報
【特許文献21】特開平8−60090号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実車デザインモデルは大型模型であり、その造形には各種材料を用いた各種造形工程を経るものである。幾多の工程部位に作業の煩雑性や短納期対応性や経済性の問題を伴うものである。
【0011】
従来技術による実車デザインモデルの造形では簡単に切削加工出来る素材が使用される。その代表的な素材は合成木材(ケミカルブロック)であり、ウレタン樹脂液やエポキシ樹脂液に中空バルーンや微細フィラーを添加し、モールド内で硬化せしめ、板状にした成形品である。この合成木材(ケミカルブロック)は木材のごとき節や割れ目、逆目がなく、木工用ハイスにて簡単にNC加工が出来、比重約0.7程度で比較的軽く、広く普及している。この合成木材(ケミカルブロック)成形品を切断・積層・貼り合わせにて、実車形状よりやや大き目に仕上げ、門型NC加工機にて切削加工し、ペーパー加工により切削面を平滑曲面に仕上げ、塗装して実車デザインモデルとする。
【0012】
この工法では合成木材を実車大に切断・積層・貼り付けるため、高価な合成木材の使用量が多くなり、また切断片やNC切削加工切子の発生量が多く、高価な合成木材の多くが産業廃棄物となり、経済性に劣ると言った課題がある。
また合成木材(ケミカルブロック)は比重約0.7程度で比較的軽量ではあるが、実車大の大型モデルにするとその重量が大きく、運搬しずらい課題もある。また合成木材を貼り合わせた継ぎ目が残留し、仕上げ塗装面に接合線が浮き出ることがあると言った課題もある。
【0013】
一方、成形品である硬質発泡ウレタンブロックを切断・積層・貼り合わせ、実車形状よりやや小さ目に仕上げ、門型NC加工機にて切削加工し、その粗削り表面に無溶剤型2液硬化性盛り付け用樹脂が手盛りされ、硬化後NC加工にて制作される工法もある。2液反応硬化性盛り付け樹脂とは、エポキシ樹脂液やウレタン樹脂液に中空バルーンや微細フィラーを添加した2成分系パテである。この2成分パテ材を混合し、NC加工された硬質発泡ウレタンブロックの表面に厚さ約5〜8cmに盛り付けし、硬化後にNC加工し、ペーパー加工にて切削面を平滑曲面に仕上げ、塗装して実車デザインモデルとする。
【0014】
この工法では、前記の合成木材を使用する工法と比較すると、合成木材(ケミカルブロック)よりも安価な硬質発泡ウレタンを使用するものであり、経済性が大幅に改善される。また硬質発泡ウレタンは発泡倍率が比較的小さく表面が比較的密な比重約0.04程度のグレードが使用されており、合成木材(ケミカルブロック)に比較して、軽量化される利点がある。また、実車形状にNC加工された硬質発泡ウレタンの表面に目止めが施され、2液反応硬化性盛り付け樹脂が盛り付けられ、硬化後、門型NCにて切削加工されるが、この時発生する切子は圧倒的に少ない利点がある。また、硬質発泡ウレタンブロックの貼り付け接合面が厚膜のシームレスな盛り付け材で被覆され、シームレスな模型表面に仕上がり、塗装後の仕上がりに下地コア材の接合線が完全に隠蔽される、と言った改善点がある。
【0015】
一方、実車大の大型デザインモデルをより軽量化、短納期化、安価に造形しようとする課題は根強いものである。実車大の大型デザインモデルの体積の大半を占めるのが、モデルの基礎となる下地材(コア材)である。この下地材として、最も安価で軽量な素材は比重約0.03程度の発泡ポリスチレンブロックである。この発泡ポリスチレンブロックを使用する大型デザインモデルの造形工法も公知である。しかしながら、発泡ポリスチレンブロックは指で押さえると簡単にへこむほどであり、下地材としては強度が不足する。最も安価で軽量な発泡ポリスチレンブロックを下地コア材として使いこなすには、発泡ポリスチレンブロックの表面に強靭性の優れた厚膜被覆を行い、下地コア材の強度不足を補強し、盛り付け材層や仕上げ塗装層を安定化させることが大きな課題である。
【0016】
発泡ポリスチレンブロックを下地材として用いる場合、発泡ポリスチレンブロックの表面に強靭性の優れた厚膜被覆を行う工程が長時間を要する様では、大きなメリットが出ない。そこで、この場合には、簡単なスプレー塗装にて、短時間に厚膜塗装が完結し、次工程である盛り付け工程へ即移行出来るようなシステムの導入が大きな課題である。
【0017】
また、パテ状の無溶剤型2液硬化性盛り付け用樹脂を混合し、実車大モデルに盛り付ける作業工程はとても手作業では実施困難である。2液硬化性盛り付け材を混合吐出機にて吐出し、モデル表面に盛り付けることも公知である。この場合、混合吐出機の吐出口を作業者の手作業で3次元形状のモデルの表面をなぞり、盛り付けされているのが現状である。この盛り付け作業も大変厄介であり、自動混合盛り付け機の吐出口が3次元形状のモデル表面をなぞり、自動混合吐出自動盛り付けを行うシステムを導入することが大きな課題である。
【0018】
パテ状の無溶剤型2液硬化性盛り付け樹脂は、エポキシ樹脂をベースにした場合、可使時間は2〜4時間・形状保持は約10時間以上・切削加工は早くて翌日となる。冬季には、硬化が大幅に遅れ、翌日切削加工が困難となり、作業場を終夜暖房にて加温し硬化の促進補助を行なっても、完全に硬化するまで数日かかる、となるケースはしばしばであり、短納期に対応しにくくなる。また、エポキシ樹脂ベースの盛り付け樹脂はアミン成分を硬化剤とするため、材料が皮膚に付着、硬化後の切削加工において切削粉が皮膚に付着して作業者が「アミンかぶれ」を引き起こすことがある。よって、パテ状の無溶剤型2液硬化性盛り付け用樹脂はウレタン樹脂がベースになって来た。
【0019】
ウレタン系盛り付け材に関しては、上記記載の幾多の公開特許で示されており、硬化性に優れ、かぶれは全くと言ってよいほど無く、好ましいベース樹脂となる。ウレタン系盛り付け材の弱点は、材料中の微量水分とポリイソシアネート成分が反応し、炭酸ガスを発生して気泡を生成することである。これを防止するために、乾燥剤として半水石膏粉や高価なウレタン用ゼオライト粉が配合される。この様な無機フィラーは、高速NC切削加工時、ハイスの刃を磨耗させ、徐々に切削性を阻害する。そこで、盛り付け材の切削加工性を高めるために中空樹脂バルーンが多配合されることになる。この中空樹脂バルーンは非常に高価であるため、中空樹脂バルーンの多配合は経済性を低下せしめる大きな要因となる。このように、ウレタン盛り付け材の高速切削加工性を向上せしめるために、中空樹脂バルーンの多配合に頼るのではなく、切削加工性に優れたウレタン樹脂組成物を開発することが大きな課題である。
【0020】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、従来技術よりも効率よく造形作業を行なうことが可能なデザインモデル製造方法及び該製造方法において好適に用いられるスプレー塗装材及び盛り付け加工用パテ材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するため、本発明は、デザインモデルを製造する方法において、発泡ポリスチレンブロック(A)をモデル概略形状に貼り合わせて概略構造体を形成する貼り合わせ工程(1)と、
次いで、NC加工にて前記概略構造体をモデル概略形状に切削し、モデル下地を形成する粗削り工程(2)と、
次いで、前記モデル下地の表面へ無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)を2頭ガン式スプレー塗装機にて塗布する被覆工程(3)と、
次いで、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)が硬化した表面へ無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)を自動混合吐出自動盛り付け機にて盛り付ける盛り付け工程(4)と、
次いで、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)が硬化した後、NC加工にてモデル形状に切削する仕上げ加工工程(5)と、
次いで、仕上げ加工された無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物加工表面へ塗料をスプレーし、デザインモデルを得る塗装工程(6)とから成ることを特徴とするデザインモデル製造方法を提供する。
【0022】
本発明のデザインモデル製造方法において、被覆工程(3)に使用される無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)が、多官能活性水素基含有成分(a)と多官能ポリイソシアネート成分(b)と可塑剤(c)とを必須成分とし、硬化段階で相分離した3次元網目構造を形成する無溶剤型2液反応硬化性ウレタンスプレー塗装材であることが好ましい。
【0023】
本発明のデザインモデル製造方法において、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)に使用される多官能活性水素基含有成分(a)の平均官能基数が3.0以上であり、多官能ポリイソシアネート成分(b)が平均官能基数2.3以上であり、NCO/活性水素比が0.75〜1.0、可使時間10秒以内、硬化物のショアーD硬度が70〜83であることが好ましい。
【0024】
本発明のデザインモデル製造方法において、被覆工程(3)で使用される2頭ガン式スプレー塗装機にて、主剤スプレー口から多官能活性水素基含有成分(a)を、硬化剤スプレー口から多官能ポリイソシアネート成分(b)を噴霧状にて吐出し、空気中で噴霧混合させ、前記モデル下地の表面に膜厚1〜10mmの範囲となるように塗布することが好ましい。
【0025】
本発明のデザインモデル製造方法において、盛り付け工程(4)に使用される無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)が、多官能ポリオール成分(r)と多官能ポリイソシアネート成分(s)と可塑剤(c)とを必須成分とし、硬化段階で相分離した3次元網目構造を形成する無溶剤型2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材であることが好ましい。
【0026】
本発明のデザインモデル製造方法において、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)に使用される多官能ポリオール成分(r)の平均官能基数が3.0以上、多官能ポリイソシアネート成分(s)の平均官能基数が2.3以上、NCO/OH比が0.75〜1.0であることが好ましい。
【0027】
本発明のデザインモデル製造方法において、盛り付け工程(4)に使用される自動混合吐出自動盛り付け機が、材料加圧減圧吸引装置と定量ポンプと2液自動混合吐出装置とを搭載し、自動混合吐出装置から耐圧ホースにて連結された吐出口がNC加工機のハイス保持部と切り替え装着され、CADデータにて3次元形状のモデル表面をなぞるべく自動制御されることが好ましい。
【0028】
また本発明は、多官能活性水素基含有成分(a)と、多官能ポリイソシアネート成分(b)と、可塑剤(c)とを必須成分とし、
多官能活性水素基含有成分(a)の平均官能基数が3.0以上であり、多官能ポリイソシアネート成分(b)が平均官能基数2.3以上であり、NCO/活性水素比が0.75〜1.0、可使時間10秒以内、硬化物のショアーD硬度が70〜83であり、硬化段階で相分離した3次元網目構造を形成することを特徴とするスプレー塗装材用無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液を提供する。
【0029】
また本発明は、多官能ポリオール成分(r)と、多官能ポリイソシアネート成分(s)と、可塑剤(c)とを必須成分とし、
多官能ポリオール成分(r)の平均官能基数が3.0以上、多官能ポリイソシアネート成分(s)の平均官能基数が2.3以上、NCO/OH比が0.75〜1.0であり、硬化段階で相分離した3次元網目構造を形成することを特徴とする盛り付け加工用無溶剤型2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材を提供する。
【発明の効果】
【0030】
本発明のデザインモデル製造方法は、発泡ポリスチレンブロック(A)をモデル概略形状に貼り合わせて概略構造体を形成する貼り合わせ工程(1)と、次いで、NC加工にて前記概略構造体をモデル概略形状に切削し、モデル下地を形成する粗削り工程(2)と、次いで、前記モデル下地の表面へ無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)を2頭ガン式スプレー塗装機にて塗布する被覆工程(3)と、次いで、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)が硬化した表面へ無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)を自動混合吐出自動盛り付け機にて盛り付ける盛り付け工程(4)と、次いで、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)が硬化した後、NC加工にてモデル形状に切削する仕上げ加工工程(5)と、次いで、仕上げ加工された無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物加工表面へ塗料をスプレーし、デザインモデルを得る塗装工程(6)とを行うことによって、デザインモデル製造工程を自動化・機械化でき、効率よくデザインモデルを製造することができるので、人件費等の製造コストを削減することができ、高品質のデザインモデルを安価に提供できる。
また、本発明の製造方法によれば、モデル下地として発泡ポリスチレンブロックを用いていることで、軽量で移動しやすいデザインモデルを製造することができる。
また、本発明の製造方法は、製造工程が簡単で次工程待ち時間が短く、高品質のデザインモデルを短時間で作製でき、デザインモデルの納期短縮を実現できる。
また、本発明の製造方法によれば、モデル下地の表面に、被覆工程(3)で形成される厚膜被覆、盛り付け工程(4)で形成される盛り付け用樹脂及び塗装工程(6)で形成される塗料を順に積層形成しているので、大型デザインモデルとしての形状保持に優れたデザインモデルを得ることができる。
また、本発明の製造方法によれば、発生する廃材を極力低減することが可能となり、経済性に優れている。
【0031】
本発明のスプレー塗装材用無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液は、多官能活性水素基含有成分(a)と、多官能ポリイソシアネート成分(b)と、可塑剤(c)とを必須成分とし、多官能活性水素基含有成分(a)の平均官能基数が3.0以上であり、多官能ポリイソシアネート成分(b)が平均官能基数2.3以上であり、NCO/活性水素比が0.75〜1.0、可使時間10秒以内、硬化物のショアーD硬度が70〜83であり、硬化段階で相分離した3次元網目構造を形成することを特徴とするものなので、スプレー塗装が容易にでき、また短時間硬化が可能であり、下地の表面に強靭性の優れた厚膜被覆を簡単に形成できる。
本発明のスプレー塗装材用無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液は、特に、本発明のデザインモデル製造方法の被覆工程(3)で用いる無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)として好適に使用でき、被覆工程(3)で用いることによって、発泡ポリスチレンからなるモデル下地の表面に強靭性の優れた厚膜被覆を簡単に形成できるので、高品質のデザインモデルを短時間で作製でき、デザインモデルの納期短縮を実現できる。
【0032】
本発明の盛り付け加工用無溶剤型2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材は、多官能ポリオール成分(r)と、多官能ポリイソシアネート成分(s)と、可塑剤(c)とを必須成分とし、多官能ポリオール成分(r)の平均官能基数が3.0以上、多官能ポリイソシアネート成分(s)の平均官能基数が2.3以上、NCO/OH比が0.75〜1.0であり、硬化段階で相分離した3次元網目構造を形成することを特徴とするものなので、自動混合吐出自動盛り付け機を用いて迅速に効率よく盛り付けることができ、硬化後の樹脂は高速切削に対応できる。
本発明の盛り付け加工用無溶剤型2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材は、特に、本発明のデザインモデル製造方法の盛り付け工程(4)で用いることによって、高品質のデザインモデルを短時間で作製でき、デザインモデルの納期短縮を実現できる。また、この樹脂(C)と仕上げ加工工程(5)におけるNC加工とを組み合わせることで、優れた寸法精度が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
なお、以下の実施形態及び実施例において、デザインモデルとして自動車のデザインモデルの製造方法を一例として説明しているが、本発明は自動車のデザインモデルの製造方法に限定されるものではなく、自動車以外の様々な物品、例えば、航空機や電車などのデザインモデルの製造方法に適用できることは言うまでもない。
図1は、本発明のデザインモデル製造方法を構成している各工程を、従来の製造方法(比較例)と対比して示したフロー図である。
本発明のデザインモデル製造方法は、発泡ポリスチレンブロック(A)をモデル概略形状に貼り合わせて概略構造体を形成する貼り合わせ工程(1)と、
次いで、NC加工にて前記概略構造体をモデル概略形状に切削し、モデル下地を形成する粗削り工程(2)と、
次いで、前記モデル下地の表面へ無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)を2頭ガン式スプレー塗装機にて塗布する被覆工程(3)と、
次いで、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)が硬化した表面へ無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)を自動混合吐出自動盛り付け機にて盛り付ける盛り付け工程(4)と、
次いで、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)が硬化した後、NC加工にてモデル形状に切削する仕上げ加工工程(5)と、
次いで、仕上げ加工された無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物加工表面へ塗料をスプレーし、デザインモデルを得る塗装工程(6)とから成ることを特徴としている。
【0034】
[ブロック貼り合わせ工程(1)]
実車大の大型デザインモデルを制作するには、まず土台となるコア材が必要である。大型デザインモデルに要求される課題は軽量化である。この大型デザインモデルの体積の大半を占めるのがコア材であるため、最も軽量なコア材を選定することが軽量化に結びつくものである。そこで、市販コア材として最も軽量で安価な発泡ポリスチレンブロックを選定するに至った。
従来、大型デザインモデルのコア材としては、合成木材(ケミカルブロック)や硬質発泡ウレタンブロックが使用されて来た。合成木材は比重約〜0.7〜でサイズは500×1500×200(t)mm、硬質発泡ウレタンブロックは比重約0.04でサイズは1000×1000×300(t)mmである。本発明に使用されるコア材は発泡ポリスチレンブロックであり、比重約0.03でサイズは1000×1000×300(t)mmにて大量に市販されている最も安価なブロック素材である。大型デザインモデルのコア材としては、軽量で大きなサイズであるほうが少人数で持ち運び・切断・設置・貼り合わせ作業が簡単で、切断・積層接合がかなり省略できるので優位性が高いのは言うまでもない。
【0035】
ブロック貼り合わせ工程(1)では、この発泡ポリスチレンブロック(A)を貼り合わせ、モデル概略形状を有する概略構造体を形成する。図2は、ブロック貼り合わせ工程(1)の概略を示す構成図である。図2中、符号1は発泡ポリスチレンブロック、2は接着剤を示す。この発泡ポリスチレンブロック(A)を貼り合わせるには接着剤2が使用され、発泡ポリスチレンを溶解・膨潤させない水系接着剤又は無溶剤系接着剤が使用される。
【0036】
工程(1)で発泡ポリスチレンブロックを切断・積層する時、切断片が多量発生し、非常にかさばった廃棄物となる。さらに次の工程(2)で切削加工された発泡ポリスチレンブロックの切削屑も多量発生し、かさばった廃棄物となる。これ等の廃棄物はメチレンクロライドやスチレンやリモネン液に投入すれば、直ちに溶解しその体積は激減し、廃棄物としての処分は非常に楽になる。一方、従来使用されているコア材である合成木材(ケミカルブロック)や硬質発泡ウレタンの切断片や切削加工屑も非常にかさばった廃棄物となり、その体積を大幅に低減する方法がなく、かさばったまま産業廃棄物として廃棄されているのが現状である。
【0037】
この様に下地コア材として、発泡ポリスチレンブロックを選定することにより、軽量化・安価のみならず、切断・積層・貼り付け作業や廃棄物処理において、従来使用されているコア材よりも様々な点で優位性がある。
【0038】
[荒削り工程(2)]
粗削り工程(2)は、工程(1)で発泡ポリスチレンブロック(A)を貼り合わせて作製した概略構造体を、NC加工機にて、実車モデルよりやや小さめに粗削りし、発泡ポリスチレンからなるモデル下地を作製する。図3は、粗削り工程(2)の概略を示す構成図である。図3中、符号3はNCマシン、4はハイス、5は発泡ポリスチレンブロック切削屑を示す。この粗削り工程(2)は、切削が容易な発泡ポリスチレンをNC加工機で粗削りするものなので、スピーディーに切削加工することができる。
【0039】
モデル下地に用いる発泡ポリスチレンは、合成木材や硬質発泡ウレタンブロックと比較して安価・軽量ではあるが、一方で硬度が低く、実車大の大型デザインモデルの軽量土台としては強度が不足すると言った欠点がある。自動車部品程度の大きさのデザインモデルであれば、持ち運びによる衝撃に対して、さほど問題になることはない。しかし、実車大の大型デザインモデルとなれば、軽量化されたとは言え、そこそこの重量と体積を有するため、運搬時の衝撃に対して十分な土台強度が必要となる。
【0040】
そこで、粗削り工程(2)で作製された実車形状のモデル下地の表面に、高強度樹脂被覆を施し、モデル表面の安定化を図ることが必要となり、次の被覆工程(3)が導入される。
【0041】
[被覆工程(3)]
この被覆工程(3)は、工程(2)で作製したモデル下地の表面に、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)をスプレー塗装にて被覆するものである。図4は、被覆工程(3)の概略を示す構成図である。図4中、符号6は塗装機、7は2頭ガン、8は主剤ストックタンク、9は硬化剤ストックタンク、10は2液急速硬化性ウレタン樹脂液(主剤)、11は2液急速硬化性ウレタン樹脂液(硬化剤)、12は主剤吸引圧送ポンプ、13は硬化剤吸引圧送ポンプ、14は主剤噴霧ミスト、15は硬化剤噴霧ミスト、16は2液急速硬化性ウレタン樹脂液被覆硬化層である。
この被覆工程(3)で用いる無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は、多官能活性水素基含有成分(a)と多官能ポリイソシアネート成分(b)と可塑剤(c)を必須成分とするものである。
【0042】
無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)に使用される多官能活性水素基含有成分(a)としては、分子内に活性水素基をもつポリアミン類や水酸基を持つポリオール類が挙げられる。
ポリアミン類としては、脂肪族ポリアミン類、芳香族ポリアミン類が挙げられる。脂肪族ポリアミン類としては、ポリエチレンポリアミン類、ポリメチレンジアミン類、脂環式ポリアミン類が挙げられる。
【0043】
ポリエチレンポリアミン類としてはジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、キシリレンジアミン(XDA)等が挙げられる。
ポリメチレンジアミン類としては、エチレンジアミン(EDA)、プロピレンジアミン(PDA)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、トリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)、ポリエーテルジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)、等が挙げられる。
脂環式ポリアミン類としては、メンセンジアミン(MDA)、イソホロンジアミン(IPDA)、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、4−アミノエチルピペラジン(AEP)等が挙げられる。
【0044】
芳香族ポリアミン類としては、メタフェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルメタン(DDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジクロロジフェニルメタン(MOCA)などが挙げられる。
【0045】
これらのポリアミン類は反応性が高く、空気中の炭酸ガスを吸収しアミン炭酸塩となり白沈を起こしやすいとか、皮膚刺激性が強くカブレの原因になりやすい。そこで、色々な変性が施され、分子量をやや高め、末端アミノ基を有する変性ポリアミンとして使用されることが多い。
【0046】
変成ポリアミンとしては、エポキシ樹脂と過剰のポリアミンとを反応させ、エポキシ基を全て消費させた分子末端アミノ基である活性水素基を持つアミンアダクト(ポリアミンエポキシ樹脂アダクト)類、また、ポリアミンにアルキレンオキサイドをアミン分子に部分付加せしめ、1級アミン・2級アミンを残存させたポリアミンアルキレンオキサイドアダクト類、また、ポリアミンにアクリロニトリルをアミン分子に対し部分付加せしめたシアノエチル化ポリアミン類、また、ポリアミンにアクリレートモノマーをアミン分子に対して付加せしめ、1級アミン・2級アミンを残存させたアクリレート変成ポリアミン類・ダイマー酸等のジカルボン酸に過剰のポリアミンを加え加熱脱水縮合することにより、分子中に1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基を有するポリアミド樹脂類等が挙げられる。
【0047】
ポリオール類としては、低分子ジオール類、低分子トリオール類、多価アルコール類、、ひまし油類、及びそれらのアルキレンオキサイド付加物類が挙げられる。また、低分子ポリアミンにアルキレンオキサイドを付加し、分子末端を水酸基としたアミンポリオール類やポリブタジエンポリオール類、アクリルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカプロラクタムポリオール類等が挙げられる。
【0048】
低分子ジオール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノール等が挙げられる。
【0049】
これら低分子ジオール類のアルキレンオキサイド付加物としては、各種分子量のポリエチレングリコール(PEG)、各種分子量のポリプロピレングリコール(PPG)等が挙げられる。また、ビスフェノールの各種主分子量のエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド付加物も挙げられる。ビスフェノールはエチレングリコールやプロピレングリコールよりもハードな骨格であり、そのアルキレンオキサイド付加物はPEGやPPGよりも硬度が発現しやすいポリオールである。エチレンオキサイド付加物は親水性が強く、分子末端は1級の水酸基となる。プロピレンオキサイド付加物はエチレンオキサイド付加物ほどの親水性はなく、分子末端は2級の水酸基となる。
【0050】
低分子トリオール類としては、グリセリンやトリメチロールプロパンが挙げられる。それらのアルキレンオキサイド付加物類としては、各種分子量のグリセリンエチレンオキサイド付加物・各種分子量のグリセリンプロピレンオキサイド付加物、各種分子量のトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物、各種分子量のトリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0051】
ジオールとトリオールの中間として、ひまし油類が挙げられ、その官能基数は約2.5程度である。また、水添ひまし油や、水酸基の一部を封じ約2官能化したひまし油誘導体も挙げられる。ひまし油はリシノレイン酸のトリグリセライドであり、長鎖脂肪酸鎖により強い疎水性を持ったポリオールである。これ等のエチレンオキサイド付加物やプロピレンオキサイド付加物も挙げられる。
【0052】
多価アルコール類としては、ショ糖等が挙げられ、さらにそれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0053】
アミンポリオール類としては、ポリアミンのアミノ基にアルキレンオキサイドを付加せしめ、分子末端を水酸基としたものである。ポリアミンのアミノ基は、アルキレンオキサイドの付加により分子内3級アミンと化し、分子内に塩基性窒素を内在した化合物である。分子中に内在する塩基性窒素は、自己触媒となってポリイソシアネートとの反応性が高くなる。アンモニアにエチレンオキサイドを付加せしめた3官能のトリエタノールアミンをはじめ、エチレンジアミンにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加せしめた各種分子量の4官能アルキレンオキサイドアダクト類、脂環式ポリアミンや芳香族ポリアミンにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加せしめた各種分子量の多官能アルキレンオキサイドアダクト類が挙げられ、その官能基数は3官能以上である。
【0054】
ポリブタジエンポリオール類とは、ブタジエン重合体の分子末端に水酸基を2個以上導入したものであり、最も疎水性に富んだポリオールとなる。
【0055】
アクリルポリオール類は、アクリルモノマーとヒドロキシエチルアクリレートモノマーを共重合させることにより、分子側鎖に2個以上の水酸基を導入したものであり、耐候性に優れたポリオールとなる。
【0056】
ポリエステルポリオール類としては、ジカルボン酸と過剰の低分子ポリオール類との脱水縮合反応にて得られ、分子末端を水酸基とした化合物である。
【0057】
低分子ポリオールの一部に3官能のグリセリンやトリメチロールプロパンを使用することにより、多官能化された各種分子量のポリエステルポリオールとなる。これは、主鎖にエステル結合を多く含むため、加水分解を受け易いものであるので、各種方策により耐加水分解性を付与することが望ましい。
【0058】
無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)に使用される多官能ポリイソシアネート成分(b)としては、芳香族ポリイソシアネート類、脂肪族ポリイソシアネート類、脂環式ポリイソシアネート類が挙げられ、芳香族ポリイソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が挙げられる。
【0059】
トリレンジイソシアネート(TDI)製造時の化学反応上、TDIは各種異性体の混合物として得られる。TDI−100は2,4−TDI 100%、TDI−80は2,4−TDI 80%・2,6−TDI 20%、TDI−65は2,4−TDI 65%・2,6−TDI 35%の組成である。
【0060】
トリレンジイソシアネート(TDI)は分子量が小さいので、揮発性があり刺激性があるため、ポリオールでジョイントした分子末端TDIプレポリマーとするとか、二量体・三量体の誘導体とし分子量を高めて、極めて揮発性のない変性体として使用される。ポリオールでジョイントする場合、3官能ポリオールを使用すれば、官能基数3.0の分子末端TDIプレポリマーとなり、多官能化が出来る。
【0061】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)も製造時の化学反応上、各種の多核体混合物として得られる。ピュアーMDI(純MDI)は蒸留して取り出され、釜残として残ったものがクルードMDI(粗MDI)であり、官能基数約2.3程度の多核体ポリイソシアネートである。
【0062】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)としては、ピュアーMDI(純MDI)が一般的であり、高純度のMDIで常温で結晶化しており、加温し液状化して使用せねばならず、多少使い難いものである。よって、液状化すべく、各種変性にて使用される場合が多い。クルードMDIは常温で液状であり扱い易い。ピュアーMDI(純MDI)もクルードMDI(粗MDI)も分子量がそこそこ大きいので、ほとんど揮発性がなく、刺激性は非常に少ない。MDIの変性体としては、ピュアーMDIの一部をポリオールでジョイントしたquasi−プレポリマーや、ポリカルボジイミド化変性したものは液状となり、扱い易くなる。
【0063】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XMDI)、リジンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしてはイソホロンジイソシアネート・水添MDI等が挙げられる。
【0064】
無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)に使用される第3の必須成分である可塑剤(c)としては、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチルアジペート(DOA)、PPGの両末端を低分子モノカルボン酸で封じたジエステル化物等が挙げられる。これら可塑剤(c)は反応性基を持たない常温で揮発性のない低粘度液状物である。
【0065】
無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)には、上述した必須成分以外に、必要に応じて、着色材、硬化触媒、酸化防止剤、消泡剤、タレ止め剤、増量剤として微細フィラーが配合されてもよい。
着色剤としては、顔料類、染料類、着色無機フィラー類等が挙げられる。
硬化触媒としては、金属系触媒とアミン触媒がある。金属系触媒としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジララウレート等が挙げられる。アミン系触媒としては、分子内に塩基性3級アミンを有するDABCO、DBU等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフエノール類やヒンダードアミン類が挙げられる。
消泡剤としては、シリコン系消泡剤が有効である。
タレ止め剤としては、アエロジルや微細雲母粉などが挙げられる。増量剤としては微細無機フィラー類として炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、等が挙げられる。
【0066】
これらの添加物を配合する場合、樹脂系に溶解しない比重の大きな無機顔料や微細無機フィラー類は経日沈降が起こりやすいので、再分散し易いものを選択するのが好ましい。よって、着色剤としては樹脂液に溶解する染料が好ましく、タレ止め剤としては少量でその効果が大きく沈降することのないアエロジルを配合するのが好ましい。微細無機フィラーを配合するとタレ止め性が発現するが、材料粘度が高くなりスプレー性が低下し沈降するので、多配合は好ましくない。
【0067】
無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)に使用される樹脂原料の反応性について説明する。
多官能活性水素基含有成分(a)に使用されるポリアミン類は最も活性に富み、ポリイソシアネートと接触した瞬間に化学反応を起こし、発熱・硬化する。その反応性は脂肪族ポリアミン類が早く、芳香族ポリアミンはやや遅い。よって、ポリアミンとしては芳香族ポリアミン類を用いることが好ましい。芳香族ポリアミン類の中でも、アミノ基の横に電子吸引性基を備えた4,4´−ジアミノ−3,3´−ジクロロジフェニルメタン(MOCA)は、芳香族アミン類の中でも活性が弱く、ポリイソシアネートとの反応は速いが瞬間的ではなく、魅力的な反応性を有する。しかし、毒性があるため、スプレー使用する材料には使用しないのが一般的である。芳香族アミノ基の横にアルキル基を備えた構造であるジエチルトリレンジアミン(DETDA)は、立体構造上アミノ基の反応性を阻害し、室温で液状なるため、急速硬化性を付与する有効なポリアミンである。
ポリアミンを変性した変性ポリアミン類は、変性前のポリアミンよりも反応性が低下する。よって、ポリイソシアネートとの急速硬化性を得るための材料として好適な場合が多い。
【0068】
ポリオール類は、ポリイソシアネートと急速に反応するものから緩やかに反応するものまで種類によってかなりの差異がある。ポリオール類の中でも反応性に富むのはアミンポリオールである。アミンポリオールの中でも分子末端1級水酸基であるポリアミン・エチレンオキサイド付加物が最も反応が早く、分子末端2級水酸基のポリアミン・プロピレンオキサイド付加物が次に早い。一方、分子内に塩基性窒素を含まない多官能ポリオール類は穏やかな反応性である。よって、硬化促進触媒の添加により、急速硬化させることは可能である。この反応性は分子量が小さいほど、官能基数が多いほど、分子末端水酸基が1級OHであるほど早く、活性に富むものである。
【0069】
本発明において用いる無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は、その可使時間が10秒以内に調整されたものである。よって、多官能活性水素基含有成分(a)には、瞬間的に反応する多官能ポリアミン類を反応の良い多官能アミンポリオールと共に併用使用し、反応性の緩やかな多官能ポリオールを使用する場合には、反応促進触媒を添加して使用される。
【0070】
無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)に多官能ポリアミン類を使用する場合は、あまりにも瞬間的に発熱反応を起こすため、比較的急速に反応する多官能アミンポリオール類で希釈して使用することが好ましい。反応性に富む成分と反応性に劣る成分との反応性の差があまりにもかけ離れると、未反応な液状の中に反応物が固体として析出し、均質な硬化物が得られにくくなる。よって、極力、配合原料の反応性を順次揃えることが必要である。上述した各種のポリアミン類及びポリオール類について、反応性の早いものから列挙すると、多官能脂肪族ポリアミン類、多官能脂肪族ポリアミン類変性体類、多官能芳香族ポリアミン類、多官能芳香族ポリアミの変性体類、エチレンオキサイド付加アミンポリオール類、プロピレンオキサイド付加アミンポリオール類、末端1級水酸基のポリオール類、末端2級水酸基のポリオール類の順となる。また、これらの活性水素基含有化合物の分子量やポリイソシアネートとの相容性も反応の速さを左右する要因となる。
【0071】
この様にして、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の多官能活性水素基含有成分(a)が構成されると、まず、最も早い反応性を持つ成分が多官能ポリイソシアネート成分(b)と発熱反応を起こす。引き続き、2番目に早い反応性を持つ成分が多官能ポリイソシアネート成分(b)と発熱反応を起こす。そして最も緩やかな反応性をもつ成分が硬化促進触媒の力と発熱に伴う樹脂系内の温度上昇の力を得て、急速に発熱反応を開始することになる。通常、系内液温が10℃上昇すると、硬化反応は倍程度促進されるものである。
【0072】
次に、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の多官能性について説明する。
本発明の無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)に使用される多官能活性水素基含有成分(a)は、平均官能基数が3.0以上であり、多官能ポリイソシアネート成分(b)は、平均官能基数2.3以上である。この様に多官能化することにより、硬化樹脂の分子内に分岐点を数多く持たせることができる。これによって、硬化樹脂の架橋密度が高くなり、密度の高い3次元網目構造を形成できるようになる。
【0073】
活性水素基含有成分及びポリイソシアネート成分を多官能化する手法は、種々考えられる。例えば、活性水素基含有成分に対しては3官能、4官能のポリオールを多用するとか、過剰の3官能ポリオールに2官能のポリイソシアネートを反応させた末端OH基のジョイントプレポリマーとする手法が挙げられる。また、ポリイソシアネート成分に対しては、官能基数2.3程度のクルードMDIを使用するとか、過剰の2官能ポリイソシアネートに3官能ポリオールを反応させて、末端NCO基のquasi−プレポリマーとすることなどが挙げられる。
【0074】
次に、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)のNCO/活性水素比について説明する。
NCO/活性水素比とは、使用量のポリイソシアネート成分中に存在するNCO基の総数と、それに見合った使用量の活性水素基含有成分中に存在する1級アミノ基・2級アミノ基・1級OH基・2級OH基の総数の比率のことを言う。これは、NCO/活性水素インデックスとも表現される。
【0075】
一般に、ポリウレタンのNCO/活性水素比は、1.0を中心に0.95〜1.05近辺にて分子鎖伸長が大きくなる様に設計されるものである。NCO/活性水素比が1.05以上の場合は、NCOが大過剰となり、過剰NCO成分が空気中の湿気と反応し、炭酸ガスを発生して硬化するため、発泡の原因となり好ましくない。一方、NCO/OH比が0.95以下となると、OH成分が過剰・NCO成分が不足し、分子鎖の伸張が停滞する結果、硬度不足を引き起こし、使用可能範囲から逸脱することになる。分子設計から見ると、主剤と硬化剤の官能基数が2.0に近いと多官能化されておらず、極力鎖伸長性を発揮せしめてポリウレタン独特の弾力性とか伸張性を引き出すためである。
本発明の無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は、NCO/活性水素比が0.75〜1.0の範囲である。好ましくは、NCO/活性水素比が0.8〜0.95の範囲である。
【0076】
本発明の無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は、ポリウレタン独特の弾力性とか伸張性を殺して、硬さや強靭性を発揮させるために、架橋密度を高め高硬度ウレタンとすべく主剤及び硬化剤の両者に多官能性を与え、NCO/活性水素比が1.0よりも小さい領域においてかなりの架橋を完成せしめ、十分な硬化物特性を発揮させるものである。即ち、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)を構成するポリイソシアネート成分と活性水素含有成分の両者を多官能化することにより、NCO/活性水素比が0.75〜1.0と1.0よりも小さな領域で十分な架橋が形成され、3次元網目構造を形成する。当然、NCO/活性水素比が0.75の場合、架橋は完璧ではなく、歯抜け部分が存在する。しかしながら、架橋密度があまりにも高いため、多少歯抜け部分が存在しても、使用目的の強度物性は保持出来る。これをより平たく表現すれば「ジャングルジムに組まれた鉄骨に一部が省略されても、ジャングルジムは崩れない」また「蜂の巣の一部壁を取り除いても、蜂の巣は崩れない」と言うことで説明出来る。
【0077】
NCO/活性水素比を上述の範囲に設定したことによって、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)を構成する多官能活性水素基含有成分(a)と多官能ポリイソシアネート成分(b)の使用可能混合比が幅広くなる。一方、2頭ガン式スプレー塗装は、急速硬化性樹脂に好適ではあるが、2成分が別個に供給されて、それぞれ噴霧状態にて外部混合される構造であるため、使用可能混合比が幅広いことが要求される。よって、本発明では、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)を2頭ガン式スプレー塗装することにより、幾多のメリットを出すシステムと成すことが出来た。
【0078】
次に、反応硬化段階での相分離3次元網目構造について説明する。
本発明の無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の第3番目の必須成分は可塑剤(c)であり、これは多官能活性水素基含有成分(a)に配合されても良いし、多官能ポリイソシアネート成分(b)に配合されても良い。或いは両方に分割配合されても良い。 無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)が硬化する初期段階では、3次元的に分子が伸長されて行く。この段階では無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の第3必須成分である可塑剤(c)は反応にあずからないため、3次元樹脂化し始めた樹脂からはみ出し、可塑剤(c)の分子微細集合体として分離し、3次元樹脂化構造の中に取り込まれて行く。これが、相分離である。この相分離は、樹脂化した蜂の巣骨格の中に、微細集合した可塑剤(c)が蜂の幼虫状態にて閉じ込められた状態と表現出来る。これによって、ウレタン硬化物のスキン層に守られていることもあって、可塑剤(c)が硬化物から簡単に経日的にブリードすることはなく、表面は滑らかな乾燥状態となる。
【0079】
この反応初期において、可塑剤(c)が樹脂から分子微細集合体として分離されることにより、樹脂自体は可塑剤大希釈状態から小希釈状態に変化し、イソシアネート基と反応の穏やかな水酸基が大接近し、ウレタン化反応が一層促進され、形状保持・後硬化段階にて強度発現が良好となる効果をもたらす。
この反応(ゲル化反応)時、樹脂の架橋結晶化と相分離によって無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の透明性は消失し、乱反射が増して白化する。この材料の色調変化をキャッチすることによって、ゲル化したことを肉眼で確認出来る。
【0080】
次に、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の硬化物の硬度について説明する。
本発明の無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の硬化物の硬度は、ショアーD硬度で70〜83の範囲であり、ウレタン樹脂としては高硬度の領域にある。ショアーD硬度が70未満になると、ウレタン独特の柔軟性が増加し、大型デザインモデルを製造する際に発泡ポリスチレンからなるモデル下地の機械強度を向上させる目的を十分達成することができず、モデルの機械強度が不足する。一方、ショアー硬度83を超える硬度を求めると、ハードな原料を多用せねばならないため、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の粘度が高くなり、スプレー性が低下するため、被覆工程(3)に支障をきたす恐れがある。
【0081】
本発明の無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)に使用される多官能活性水素基含有成分(a)および多官能ポリイソシアネート成分(b)は、多官能化されており、架橋密度が高いため、ショアーD硬度で70〜83の範囲の高硬度を発現させることが出来る。
【0082】
次に、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)のスプレー塗装について説明する。
一般的には、2液反応硬化性塗料は可使時間は数時間と十分作業出来る様に設定されているので、2液をハンドミキサー等にて混合し、カップガンにてエアースプレーするとか、エアアレススプレーすることは可能である。ところが、可使時間が5分を切ると、2液混合は出来ても、その後のスプレー塗布する作業時間が取れなくなり、一般的な塗装機では対応出来なくなる。さらに可使時間が1分を切るとハンドで混合している間にゲル化するため、ハンドでの混合自体が出来なくなり、塗装ところではない。
【0083】
そこで、機械混合にて直ちに吐出スプレーできる塗装機が必要となる。最も対応性のある塗装機はRIM成形にて発達した衝突混合吐出スプレー塗装機である。これは、スプレーガン先端部にて2液を衝突混合せしめ、即吐出噴霧スプレーするものである。よって、吐出が一端中断する時は、衝突混合させるスプレーガン先端部を洗浄し、硬化物の蓄積を避けることが必要である。吐出スプレーガンへは主剤液供給ホースと硬化剤液供給ホースと洗浄液供給ホースを接続せねばならないために、かなりの重量となり、ガンの取り扱いが難しくなる。
【0084】
本発明の無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は、可使時間10秒以内の急速硬化性を有するものである。これだけ急速にゲル化する材料を、形状の複雑なモデル下地の表面へ作業員がスプレーガンを持ってスプレー塗装を行なうとなると、スプレーガン内部で2液が衝突混合し、吐出するタイプのスプレー塗装機では、スプレー中断ごとにスプレーガン内部の洗浄を実施する必要があり、そのために主剤ホース・硬化剤ホースの他に、洗浄剤ホースを装備する構造となり、このように3本のホースを引きずったスプレーガンで塗装作業を行う場合には、非常に困難な作業となる。
【0085】
本発明の製造方法では、被覆工程(3)で使用するスプレー塗装機として、スプレーガン先端部で衝突混合吐出噴霧させるのではなく、2頭ガン方式の塗装機を用いる。2頭ガン式スプレー塗装とは、一方の吐出口から主剤をスプレー噴霧し、他方の吐出口から硬化剤をスプレー噴霧し、両者のスプレーパターン中心を同一になる様に調節した外部噴霧混合形式のスプレーガンを用いるものである。この塗装では、スプレーガンのそれぞれの吐出口からスプレー吐出された主剤噴霧と硬化剤噴霧とが空中にて接触混合され、その瞬間に下地コア材表面に叩きつけ重ねられて更に混合される。
【0086】
この2頭ガン式スプレー塗装機は、2液が塗装設備内部で混合されるものではなく、吐出噴霧後空気中または付着下地表面で混合されるから、塗装装置内部で生成した樹脂がゲル化することはない。また、塗装を一時中断する時、スプレーガン内部で混合されていないため、スプレーガンを洗浄する必要もなく、洗浄液供給ホースは不要となり、結果的にガンさばきしやすい塗装作業となる。当然ながら、塗装がすべて終了した時は、塗装機全ラインを洗浄すべきである。
【0087】
無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は、モデル下地の表面にスプレー塗装されるものであり、スプレーガンチップから吐出された瞬間、噴霧状になることが必要である。材料に粘りが強いと、いわゆるガン切れが悪くなり、糸を引く様な吐出現象が出現する。無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)に第3の必須成分として、可塑剤(c)を配合することにより、このガン切れが良好となり、良好な噴霧状にてスプレー塗装が出来る効果が生まれる。
【0088】
また、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は3次元形状のモデル下地の表面にスプレー塗装されるものであり、垂直面への塗装部位もある。その塗布膜厚は、通常の溶剤型塗料が数十ミクロンに対し、本発明の無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は数百ミクロンの塗り重ねとなる。塗り重ねのタイミングは、数秒遅らせた数回の塗り重ねにて、最終膜厚2〜5mmが得られる。1回のガン往復運行にて数百ミクロンの膜厚を乗せると、一般的には塗膜にタレ現象が発生する。しかし、本発明の樹脂液(B)は、可使時間10秒以内の急速硬化性を有しているために、大きくタレる間に増粘・ゲル化が起こり、結果的にタレ止め効果が発現する。とは言えど、垂直面に数百ミクロンもの膜厚となると、塗布瞬間から可使時間10秒の間の数秒間のうちに多少のタレ現象が発現することもある。よって、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)には、タレ防止を目的として、アエロジルや微細雲母粉が添加配合されることが好ましい。
【0089】
この様にして、被覆工程(3)において、モデル下地の表面にスプレー塗装された無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の硬化塗膜は、膜厚2〜5mmの強靭な厚膜補強層となる。その表面は軽くウエーブする状態であり、一般の溶剤型塗料による平滑面とはかなり異なる。つまり、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)を用いた被覆工程(3)は美装塗装を目的とするものではなく、あくまでもデザインモデルの表面には顔を出さないモデル下地の補強と言った機能発現を目的とする塗装であるため、硬化表面のウエーブは問題にはならない。
【0090】
被覆工程(3)で使用される無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は、2頭ガン式スプレー塗装機の主剤スプレー口から多官能活性水素含有成分(a)が、また硬化剤スプレー口から多官能ポリイソシアネート成分(b)が、それぞれ噴霧状にて吐出され、空気中で噴霧混合される。即ち、活性水素成分(a)とポリイソシアネート成分(b)をそれぞれ定量ポンプを経由して供給し、スプレー口から噴霧状に吐出し、それぞれのスプレーパターンが同一中心に同一パターン幅となるように調整される。これによって、空気中噴霧状にて設計したNCO/活性水素比に確実に混合されてモデル下地の表面に塗装されるものではあるが、パターン周辺部では多少の誤差が発生する。よって、たとえ、NCO/活性水素比に多少の誤差が発生しても、確実に硬化し目的の硬度範囲に収めることが出来る様に、2液混合比許容範囲を大きくすべく、分子設計されねばならない。本発明の無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は、構成する活性水素基含有成分やポリイソシアネート成分を多官能化することにて、この塗装時の混合誤差に十分対応出来る分子設計としたものである。また、2液が微細噴霧粒子状態で混合されるものであるから、2液を完全均一に攪拌混合する状態と比較すると、やや甘い混合である。よって、2液は混ざり易い親和性の高い組成とすることが好ましい。
【0091】
本発明の無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)は可使時間10秒以内と急速硬化するため、真冬でも5分後には形状保持しており、被覆工程(3)が終了した時点では、スプレー塗装スタート部位が既に十分な硬度を発現し、次工程に移行出来る状態となり、次工程待ち時間を殆ど無しとすることができる。
【0092】
無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)にこの様な急速硬化性を付与させることにより、当然ながら、硬化時の発熱も大きくなる。本発明では、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)をスプレー塗膜として重ね塗りするものであり、防水材や塗り床材の塗装の様に一度に3〜10mmの膜厚に塗装するものではなく、塗り重ねの間隔時に発熱が散らされることになる。よって、硬化時の発熱にて発泡ポリスチレンからなるモデル下地が融解・変形することはない。
【0093】
工程(2)で粗削りされた発泡ポリスチレンからなるモデル下地の表面と無溶剤型2液急速硬化性樹脂液(B)の硬化物被覆との接着は、物理的な接着となる。つまり、荒削りされたモデル下地の表面は粗面であり、その上に無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)が噴霧状でスプレーされ、モデル下地粗面に食い込む状態にて硬化する。言わゆるアンカー効果が発揮され、接合が完成する。自動車のモデル下地は、強い衝撃を受ける様な使われ方はなく、せいぜい移動中の振動や軽い衝撃を受ける程度であり、大切に注意深く運搬設置されるものである。よって、このような使われ方において、モデル下地の表面に形成された無溶剤型2液急速硬化性樹脂液(B)の硬化塗膜が簡単に剥離することはない。
【0094】
被覆工程(3)を実施し、得られる被覆済みモデル下地は、比較的柔らかい発泡ポリスチレンから成るモデル下地の表面を、比較的硬い無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の硬化物からなる補強用の被覆層で覆った状態であり、亀の甲羅に覆われた状態と表現出来る。この亀の甲羅は比較的硬く、靭性に富んだ高硬度ポリウレタンの厚膜である。これによって、軽量で硬い表面を保持したデザインモデルの土台が作製出来る。
【0095】
[盛り付け工程(4)]
本発明の製造方法では、次に、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)が硬化した表面へ無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)を自動混合吐出自動盛り付け機にて盛り付ける盛り付け工程(4)を行う。図5は、盛り付け工程(4)の概略を示す構成図である。図5中、符号17は盛り付け材(主剤)ドラム、18は2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(主剤)、19は盛り付け材(硬化剤)ドラム、20は2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(硬化剤)、21は主剤用加圧蓋、22は硬化剤用加圧蓋、23は盛り付け材(主剤)用定量ポンプ、24は盛り付け材(硬化剤)用定量ポンプ、25は盛り付け材混合吐出ポンプ、26は盛り付け材混合吐出ポンプ冷却装置、27は冷媒循環ライン、28は圧送用耐圧ホース、29は盛り付け材吐出口、30は2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂層、40は盛り付け用樹脂層形成後のデザインモデルである。
【0096】
この盛り付け工程(4)に使用される無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)は、多官能ポリオール成分(r)と多官能ポリイソシアネート成分(s)と可塑剤(c)を必須成分とする2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材である。
【0097】
この無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の多官能ポリオール成分(r)としては、エチレングリコール類、プロピレングリコール類、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイドアダクト類、アミンポリオール類、ビスフェノールアルキレンオキサイドアダクト類、多糖類のアルキレンオキサイドアダクト類、ポリエステルポリオール類、ひまし油誘導体類等が挙げられる。
【0098】
エチレングリコール類としては、各種分子量のポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。プロピレングリコール類としては、各種分子量のポリプロピレングリコール(PPG)が挙げられる。これらは2官能ポリオールである。
【0099】
トリメチロールプロパンアルキレンオキサイドアダクト類としては、各種分子量のトリメチロールプロパンエチレンオキサイドアダクト、メチロールプロパンプロピレンオキサイドアダクトが挙げられる。これらは官能基数3のポリオールである。
【0100】
アミンポリオール類としては、アンモニアにエチレンオキサイドを付加させたトリエタノールアミンをはじめ、エチレンジアミンのエチレンオキサイド付加物、エチレンジアミンのプロピレンオキサイド付加物、ポリエチレンポリアミン類のエチレンオキサイド付加物、ポリエチレンポリアミン類のプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらは官能基数3以上の多官能ポリオールである。これらは、1級または2級アミノ基にアルキレンオキサイドが付加し3級アミンとなり、分子末端がOH基となった構造である。
【0101】
ビスフェノールアルキレンオキサイドアダクト類としては、ビスフェノールのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールのプロピレンオキサイド付加物が挙げられ、これには各種分子量のものがある。これらは官能基数2のポリオール成分である。
【0102】
多糖類のアルキレンオキサイドアダクト類としては、ショ糖のエチレンオキサイド付加物、ショ糖のプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。これらは官能基数6のポリオールであり、各種分子量のものがある。
【0103】
ポリエステルポリオール類としては、低分子ポリオール類とジカルボン酸の脱水縮合反応により得られる、分子末端が水酸基とした化合物である。これらの官能基数は2以上である。
【0104】
ひまし油誘導体類としては、ひまし油、水添ひまし油、ひまし油エチレンオキサイド付加物、ひまし油プロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらの官能基数は約2.5程度である。
【0105】
無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)に使用される多官能ポリイソシアネート成分(s)として、官能基数2.0のポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添MDI、キシリレンジイソシアネート(XMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられる。
【0106】
トリレンジイソシアネート(TDI)にはT−80、T−60、T−100がある。トリレンジイソシアネート(TDI)は分子量が小さいので、揮発性があるため、ポリオールでジョイントした分子末端TDIプレポリマーとするとか、二量体・三量体の誘導体とし分子量を高めて、極めて揮発性のない変性体として使用される。ポリオールでジョイントする場合、3官能ポリオールを使用すれば、官能基数3.0の分子末端TDIプレポリマーとなり、多官能化が出来る。
【0107】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)としては、ピュアーMDIが一般的であり、高純度のMDIで常温で結晶しており、使い難いものである。よって、液状化すべく、各種変性にて使用される。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)製造工程にて、ピュアーMDIは蒸留され、釜残として残ったものがクルードMDIである。クルードMDIの組成は、MDIの多核体とピュアーMDIの混合物であり、常温で液体・平均官能基数約2.3のポリイソシアネートである。
MDIの変性体としては、ピュアーMDIの一部をポリオールでジョイントしたquasi−プレポリマーや、カルバジイミド変成体などが有効である。
【0108】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XMDI)、リジンジイソシアネート(HMDI)などが挙げられる。脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネートや水添MDI等が挙げられる。
【0109】
無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)に使用される第3の必須成分である可塑剤(c)としては、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジオクチルアジペート(DOA)、PEGやPPGの末端を低分子モノカルボン酸エステルとした化合物などが挙げられる。これ等可塑剤(c)は、反応性基を持たない常温で揮発性のない低粘度液状物である。可塑剤(c)は、多官能ポリオール成分(r)、多官能ポリイソシアネート成分(s)のどちらに配合されてもよい。或いは両方に配合しても良い。
【0110】
無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)には、上述した必須成分の他、着色剤、硬化触媒、酸化防止剤、消泡剤、タレ止め剤、増量材として微細フィラー、切削加工性向上を目的に中空樹脂バルーン等が添加される。
着色材としては、顔料類、染料類、着色無機フィラー類が挙げられる。
硬化触媒としては、金属系触媒とアミン系触媒がある。金属系触媒としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸ビスマス、オクチル酸鉛、ジブチルスズジラウレート等が挙げられる。アミン系触媒としては、分子内に塩基性3級アミンを内在するDABCOやDBU等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒンダードフエノール類やヒンダードアミン類が挙げられる。
消泡剤としては、シリコン系消泡剤が有効である。
タレ止め剤としては、アエロジルや微細雲母粉が挙げられる。
増量剤としては、微細無機フィラー類として炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク等が挙げられる。
中空樹脂バルーンとしては、フェノールバルーンやビニル樹脂バルーンが挙げられる。
【0111】
この様に、着色化・硬化速度調整・軽量化・切削性・タレ防止・気泡混入防止等を目的とした各種添加剤が多官能ポリオール成分(r)または及び多官能ポリイソシアネート成分(s)に配合され、遥変性を有するパテ状に仕上げられる。パテ状であるため経日変化として、中空バルーンの浮きや、微細フィラーの沈降は殆どない。幾多の原料を配合することにより、原料に含まれる微量水分が硬化時の発泡の原因となるので、原料を乾燥し、微量水分の混入を極力低減せねばならない。
【0112】
ポリイソシアネートは湿気と反応し、炭酸ガスを発生して固化するので、多官能ポリイソシアネート成分(s)に添加される原料はすべて脱水乾燥させて使用する。この脱水工程を省略すると、ポリイソシアネート成分(s)中に添加剤と共に多量の水分が取り込まれ、経日的に増粘・部分固化を引き起こし、使用時容器内表面が固くなっているとか、硬化物中に固化物が混入するとか、盛り付け機にて圧送困難となるとかの異常を引き起こすことになる。
【0113】
脱水された添加剤を配合されたポリイソシアネート成分(s)は、湿気に敏感なため、容器に詰められた後も湿気に極力触れない様に配慮せねばならない。たとえば、容器内を窒素置換して蓋をするとか、ビニール中袋に入れて封じ、容器に蓋をするとか、容器内のポリイソシアネート成分上面にポリシートで押さえ込み、空気との接触面積を激減させるとかの対策が必要である。
【0114】
ポリオール成分(r)とポリイソシアネート成分(s)からなる無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)は、可使時間10分〜30分の範囲に調整される。可使時間の調整は、ポリオール成分(r)に添加する硬化促進触媒量にて設定出来る。
【0115】
可使時間が10分未満であると、自動混合盛り付け機のトラブルや盛り付け個所の修正及び盛り付け後の自動混合盛り付け機部品の取り外し洗浄に対応出来なくなる。可使時間が30分を超えると、硬化が遅れ翌日切削加工が困難となる。
【0116】
本発明の無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)は、使用する多官能ポリオール成分(r)の平均官能基数が3.0以上、多官能ポリイソシアネート成分(s)の平均官能基数が2.3以上と多官能化されている。
【0117】
本発明の無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)は、必須成分である多官能ポリオール成分(r)と多官能ポリイソシアネート成分(s)とのNCO/OH比が0.75〜1.0の範囲と幅広く設定される。これはポリオール成分とポリイソシアネート成分が多官能化されているためである。
【0118】
無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の2成分が混合され、可使時間を過ぎるとゲル化し、3次元網目構造を取る。この時、第3の必須成分である可塑剤(c)は反応にあずからないため3次元樹脂化しはじめた樹脂からはみ出し、可塑剤(c)の分子微細集合体として3次元樹脂化構造の中に取り込まれて行く。これが相分離であり、この相分離については、工程(3)で使用される無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)と同じである。
【0119】
この無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物が、次の工程で切削加工される時、可塑剤(c)の相分離した3次元網目構造が切削性を大きく向上せしめる効果を発揮する。つまり、蜂の巣状に3次元網目構造を取るウレタン樹脂層を切削する時、蜂の巣の中にある可塑剤(c)の微粒子である液体を切削することになり、切削負荷が大幅に低減される。また、可塑剤(c)は切削加工時の滑剤効果を発揮し、高速NC加工を補助する。また、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物中に中空樹脂バルーンが配合されているため、中空樹脂バルーンを切削することになる。これは、中空樹脂バルーン中の気体を切削することであり、これも切削負荷を大幅に低減させることになる。無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物中に配合される増量用無機フィラーは、切削加工時、負荷を発生させ、ハイスの刃を磨耗させる要素が最も大きい。よって、切削加工に対し負荷のかかりにくいタルクを増量用無機フィラーとして使用することが好ましい。タルクはろう石の粉であり、コンクリートにろう石にて絵を描くことが出来るように硬度が低く、無機物の中では、切削抵抗が非常に少ない素材である。また、着色剤としては顔料を用いるよりは、染料を用いた方が切削性に対する負荷は小さくなる。この様に、切削加工性を向上せしめる幾多の要素を付与せしめることにより、高速NC加工に対応した盛り付け材を得ることができる。
【0120】
盛り付け工程(4)において、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の多官能ポリオール成分(r)と多官能ポリイソシアネート成分(s)の色を全く異なる色調にすべく、染料の色を替えて調整すれば、自動混合自動盛り付け機から吐出される無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の色調を肉眼で確認し、均一な所定の混合色であるか否かを目視することによって、2液が適正な配合で吐出されていることを確認することが出来る。また、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)がゲル化する時、相分離により白化現象を引き起こすので、その外観色調に白味が出るのことで、肉眼にてゲル化を確認することが出来る。
【0121】
無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)は、被覆工程(3)で作製された無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の硬化物表面上に盛り付けられるものである。つまり、ウレタン硬化樹脂面に反応硬化性ウレタンを乗せるものとなり、ウレタン樹脂とウレタン樹脂は接着性に優れていることから強固な接着が完成するため、この盛り付け用樹脂(C)の硬化物層が衝撃で剥離することは無い。よって、仕上げ加工工程(5)にて無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物層がNC切削加工されても、剥離することは全く無い。
【0122】
盛り付け工程(4)で作製された、盛り付け直後の無溶剤2液反応硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の膜厚は約15〜30mmの厚膜であり、その表面は凹凸に富んでいる。盛り付け後5〜10分でゲル化が進行し、表面のベトツキが消えて来る。このタイミングを見計らって、表面を軽く叩き押さえることで、盛り付け層間の気泡や下地と盛り付け材層間のわずかな気泡を叩き出し、下地との密着性を高め、盛り付け表面の凹凸を平滑化する。これにて盛り付けた膜厚は約20mm程度となる。完成した表面はウエーブの残留した粗面であるが、次工程にて切削するので問題はない。
【0123】
この様に、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)は、多官能ポリオール成分(r)と多官能ポリイソシアネート成分(s)とからなる2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材であり、ポリオール成分(r)とポリイソシアネート成分(s)の両者ともに中空樹脂バルーンや微細フィラーなどの添加剤が高配合された高粘度のパテ材である。当然、可塑剤(c)は多官能ポリオール成分(r)と多官能ポリイソシアネート成分(s)に配合されている。このパテ材を混合し、大型デザインモデルに盛り付けるために、自動混合吐出自動盛り付け機を使用する。
【0124】
盛り付け工程(4)に使用される自動混合吐出自動盛り付け機は、材料加圧減圧吸引装置・定量ポンプ・自動混合圧送装置・冷却装置・吐出口を搭載している。また、吐出口がCADデータにて3次元形状になぞるべく自動制御装置を搭載せしめることにより、自動盛り付けが可能である。
【0125】
盛り付け工程(4)に使用される無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)がポリオール成分(r)とポリイソシアネート成分(s)からなる2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材であり、これを自動混合吐出盛り付け機を用いて盛り付ける機構は次の通りである。
【0126】
盛り付け工程(4)で使用される自動混合吐出盛り付け機は、材料加圧吸引装置・定量ポンプ・2液混合押し出し装置・吐出口が耐圧ホースで連結された機構を搭載し、混合装置には冷却装置と混合内洗浄装置を備えている。
オープンドラム内のパテ材表面に中央吸引口を設けた加圧蓋を設置し、加圧プレスする。これにて、ドラム内のパテ材は、加圧蓋中央部の吸引口に押される。加圧蓋中央部の吸引口と定量ポンプの間を減圧とすることにより、高粘度パテ材はドラムから加圧力と吸引力とによって、加圧蓋中央部の吸引口を通じ、定量ポンプに吸引される。この様にして、主剤のドラムから主剤を、硬化剤のドラムから硬化剤を、それぞれ加圧吸引装置にて吸い上げ、それぞれ定量ポンプへ送られる。
【0127】
主剤用定量ポンプから設定量の主剤のパテ材を、硬化剤用定量ポンプから設定量の硬化剤のパテ材を混合押し出し装置へ圧送する。混合押し出し装置にて、設定量の主剤のパテ材と設定量の硬化剤のパテ材が機械混合されて押し出される。混合押し出し装置出口には耐圧ホースが接続され、数メーターの耐圧ホースの先端に盛り付け材用吐出口が設けられている。盛り付け材用吐出口から2液混合なされたパテ材が約1〜2リットル/分でゆっくりと吐出される。
【0128】
自動混合吐出盛り付け機の吐出口は、門型NCマシンのハイス設定部位と交換される仕組みとなり、吐出口はハイス先端と同様にモデルの表面をなぞるべく設定される。
【0129】
この様にして高粘度パテ材を容器ドラムから吸引・混合・吐出するが、高粘度パテ材であるために、非常に大きなシエアーがかかるものである。特に2液混合押し出し装置には相当大きなシエアーがかかり、摩擦熱による蓄熱にて吐出された2液混合パテ材の温度は上昇する。この温度上昇を極力一定に押さえるために、2液混合押し出し装置部位には冷却装置を設けている。それでも、連続吐出時には約20〜30℃程度材料温度が上昇する。よって、設定した可使時間よりも早くゲル化・硬化が進行する。材料温度が約10℃上昇すると、硬化スピードは約2倍となる。よって、設定した可使時間よりもやや早くゲル化・硬化が進行する。
【0130】
材料加圧吸引装置にて高粘度パテ材をドラムより吸い上げ、適正配合量にて2液パテ材を混合し、吐出口から押し出し、盛り付け作業終了時には、混合押し出し装置から多官能ポリオール成分(r)のみを押し出し、共洗いする。これによって、洗浄ライン、洗浄溶剤は不要である。
【0131】
吐出口の口金形状は、○形・□形・長方形など特に制限ないが、幅広に盛り付けるため、長方形が好ましい。よって、吐出口の口金部位はT字形状となる。
【0132】
自動混合吐出自動盛り付け機での盛り付け部位は、デザインモデル面であるから、窪み部位、盛り上がり部位、傾斜部位、垂直部位と多種多様である。またデザインモデルの端面まで盛り付けた時、自動的にサイド移行を行い、盛り付け層がある程度重なり合う様に調整されなければならない。
【0133】
この様な吐出口の自動制御はCADデータに組み見込まれるものである。その基になる微妙な動作は、吐出口の運行を手作業にて行う熟練作業者の垂直面に対する吐出口の運行方式、順次横にスライドする時の吐出口の運行方式、凹凸部位の吐出口の運行方式、その時の吐出口の角度・下地と吐出口の距離データを測定し、データとしてCADデータに組み込むことで実行可能である。
【0134】
吐出口をモデルの3次元形状になぞらせる自動制御用CADデータの基本は、粗削り工程(2)のCADデーターであり、これに手作業で獲得した吐出口の運行パターンをCADデーターに反映させて、盛り付け工程用のCADデータとすることができる。自動車の自動塗装において、塗装ロボットに指示するガンの運行を、熟練塗装工の塗装ガンさばきをデータ化し、塗装ロボットにデータ指令を施すのと同じである。
【0135】
盛り付け工程(4)に使用される自動混合吐出自動盛り付け機の基本形態は、門型NC加工機の回転刃先部位を盛り付け吐出部位に取り替えた構成となる。これによって、台座に大型デザインモデルを乗せ固定すれば、同一台座上で、盛り付け工程(4)と仕上げ加工工程(5)とが実施出来るようになる。
【0136】
一般に、3次元NC加工機は、ベットに水平運動を行なわせ、回転する刃先に垂直運動を行なわせ、両者の運動を制御することにて3次元形状の切削加工を行うものである。3次元NC加工機の刃先を吐出口装置に取り換えることとにより、自動制御された3次元形状盛り付けが可能となる。3次元NC加工機の刃先回転制御を自動混合吐出盛り付け機の吐出口角度制御に置き換えることによって、更なる高精度の自動盛り付けが可能となる。
【0137】
[切削仕上げ加工工程(5)]
切削仕上げ加工工程(5)は、盛り付け工程(4)にて製作された無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物表面を3次元NC加工機にて切削加工を施すものである。図6は、切削仕上げ加工工程(5)の概略を示す構成図である。図6中、符号31はNC加工用ハイス、32は2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂の切削加工屑、33は2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂硬化物仕上げ加工層、41は切削仕上げ加工を施したデザインモデルである。
無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物は、平均膜厚約20mmであり、最も薄い部位でも膜厚15mmはキープされた設計となる。よって、NC加工機により切削される層は、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物層であり、盛り付け材の下地である無溶剤型2液急速硬化性樹脂液(B)の硬化物層まで切削することはない。
【0138】
上述した通り、盛り付け材は中空樹脂バルーンや切削性に優れた微細フィラーが配合されたポリウレタン硬化物であり、木工用ハイスにて切削加工が簡単に出来るものである。切削加工面に微細な気泡跡や目だった不具合部位は多少発生するものである。この不具合部位は、必要に応じて無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)を手作業にて刷り込み、部分補修がなされる。
【0139】
こうして、切削仕上げ加工されたデザインモデルの表面は、完全フラットとは言い難く、微細なハイス運行跡の凹凸が残存する。そこで、この凹凸をペーパーがけしてフラットな平滑曲面に仕上げる必要がある。こうして、継ぎ目のない厚膜シームレスなデザインモデルの母体が完成する。
【0140】
[塗装工程(6)]
切削仕上げ加工されたデザインモデルは、次に、塗装工程(6)にて下塗り・中塗り・上塗り塗料がエアレススプレー塗装機にて3層に塗布され、下地が完全に隠蔽された実車と同じ色調に塗装される。図7は、塗装工程を経て得られたデザインモデルの断面図であり、図7中符号34は仕上げ塗膜塗料層(下塗・中塗・上塗)、35は2液硬化性盛り付け用ウレタン樹脂層、36は2液急速硬化性ウレタン樹脂層、37は発泡ポリスチレン層である。
【0141】
下地コア材である発泡ポリスチレン(A)の接合部位は、工程(3)による厚膜被覆層と工程(4)の厚膜盛り付け材層にて完全に遮断されているため、塗装表面へ浮き出ることは全く無い。これにて実車大大型デザインモデルが完成する。
【0142】
この様に、本発明者は、使用樹脂材料組成とそれを施工するマシンをうまくマッチングさせ、軽量化・製作スピード化・経済性を伴った大型デザインモデル造形工法システムを構築するに至った。
【実施例】
【0143】
以下、実施例により本発明の具体例を説明するが、以下の実施例は本発明の単なる例示であり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0144】
被覆工程(3)で使用される無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)、及びそれを構成する多官能活性水素基含有成分(a)と多官能ポリイソシアネート成分(b)の実施例を下記に示す。
【0145】
多官能活性水素基含有成分(a):実施例(1)
ジエチルトルエンジアミン(DETDA)を10部、エチレンジアミン・エチレンオキサイド4モル付加物を15部、エチレンジアミン・プロピレンオキサイド4モル付加物を15部、トリメチロールプロパン・エチレンオキサイド4モル付加物を15部、ひまし油を20部、ジオクチルアジペート(DOA)を24.9部、オクチル酸ビスマスを30ppm投入し30分混合して均一な溶液とした。次いで、アエロジル#200を0.1部を反応釜に投入し、攪拌しながらアエロジルを混合液中に分散せしめた。次いで、窒素置換後攪拌しながら反応釜内を真空ポンプにて減圧にした。徐々に昇温し、80〜90℃にて1時間脱水し、60℃以下に冷却後、消泡剤を1ppm部投入し攪拌混合した。こうして、淡褐色不透明液状の多官能活性水素基含有成分(a)を得た。
【0146】
多官能ポリイソシアネート成分(b):実施例(2)
配合釜に、クルードMDIとしてPAPI−135P(NCO=32%)95.0部、ジオクチルアジペート(DOA)を5.0部を投入し、室温にて攪拌均一混合した。こうして、褐色透明液液状の多官能ポリイソシアネート成分(b)を得た。
【0147】
無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)を用いたスプレー塗装:実施例(3)
実施例(1)の多官能活性水素基含有成分(a)を主剤ストックタンクへ仕込み、実施例(2)の多官能ポリイソシアネート成分(b)を硬化剤ストックタンクへ仕込み、ポンプにて循環しながら加温し、液温を約30℃に温調した。主剤の循環ラインを吐出ラインに切り替えて、耐圧ホースを経由し、主剤2頭ガン塗装機の吐出量を1成分ずつそれぞれ測定し、2液の吐出量が100:100(質量)の所定質量比とすべく前調整した。また同様にスプレーパターンが同一となる様に前調整した。次いで、2液を同時に発泡スチレンブロックの表面へスプレー噴霧した。
【0148】
多官能活性水素基含有成分(a)の実施例(1)は表1に、多官能ポリイソシアネート成分(b)の実施例(2)は表2に、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の性能一覧は表3にまとめた。表3中に記した評価項目の測定方法は、下記の通りである。
【0149】
【表1】

【0150】
【表2】

【0151】
【表3】

【0152】
<測定方法>
・可使時間:ゲル化するまでの時間をストップウォッチにて測定した。
・タックフリー:外気温20℃にてゲル化した塗膜の指触乾燥時間を測定した。
・発熱温度:発泡スチレン裏面より温度センサーを表面近くまで差込み、発熱温度を測定した。
・硬度:外気温約20℃で静置し、翌日ショアー硬度計にて表面硬度を測定した。
・膜厚:被覆塗装された発泡スチレンブロックを切断し、被覆層の平均膜厚をノギスにて測定した。
・硬化物概観:目視。
【0153】
盛り付け工程(4)で使用される無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)、及びそれを構成する多官能ポリオール成分(r)と多官能ポリイソシアネート成分(s)の実施例を下記に示す。
【0154】
多官能ポリオール成分(r):実施例(4)
ヒマシ油を35.0部、エチレンジアミン・プロピレンオキサイド4モル付加物を5.0部、エチレンジアミン・トリメチロールプロパン・プロピレンオキサイド4モル付加物を27部、ジオクチルアジペート(DOA)を15.0部、オクチル酸ビスマスを5ppm反応釜に投入し、30分混合して均一な溶液とした。次いで、アエロジル#200を0.5部、タルクを15.5部を反応釜に投入し、窒素置換後攪拌しながら反応釜内を真空ポンプにて減圧にし、徐々に昇温し、80〜90℃にて1時間脱水した。次いで、60℃以下に冷却後、中空樹脂バルーンを2.0部投入し混合後、消泡剤を1ppm部投入し攪拌しながら、真空ポンプにて減圧とし、脱気消泡した。こうして、パテ状の多官能ポリオール成分(r)を得た。
【0155】
多官能ポリイソシアネート成分(s):実施例(5)
クルードMDIとしてPAPI−135を64.0部、ジオクチルアジペート(DOA)を17.5部を混合釜に投入し、攪拌混合して均一とした。次いで乾燥したタルク15.5部を投入し、ゆっくり攪拌しながら液内へ混ぜ込み、引き続きアエロジル#200を0.5部を投入し、ゆっくり攪拌しながら液内へ混ぜ込み、更に中空樹脂バルーンを2.5部投入しゆっくり攪拌混合した。次いで消泡剤を1ppm添加し、真空ポンプにて釜内を減圧としてゆっくり混合しながら、消泡脱気し、パテ状の多官能ポリイソシアネート成分(s)を得た。
【0156】
無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(B):実施例(6)
自動混合吐出自動盛り付け機作動確認準備は次の通り行なった。
門形NC加工機のハイス保持部位を盛り付け材吐出口に交換設置し、前もって設置したデザインモデルCADデータにて吐出口がモデル表面をなぞるべく制御されていることを確認し、自動盛り付け装置部作動の確認を終えた。
【0157】
次いで、主剤圧縮吸引装置にドラム詰めされた実施例(4)の多官能ポリオール成分(r)をセットした。同様に硬化剤圧縮吸引装置にドラム詰めされた実施例(5)の多官能ポリイソシアネート成分(s)をセットした。主剤ドラム内の内径大の抑え蓋および硬化剤ドラム内の内径大の抑え蓋をプレスしながら、それぞれの蓋中央開口部に直結した耐圧ホース内を真空ポンプにて減圧とし、主剤ドラムからは主剤を、硬化剤ドラムからは硬化剤を吸い上げ、主剤用定量ポンプ、硬化剤用定量ポンプへ送った。主剤用定量ポンプ、硬化剤用定量ポンプよりの吐出量を所定配合比100:100(質量)になるべく調整した。混合装置内へ主剤・硬化剤を導入し、機械混合されて耐圧ホース経由吐出口先端へ圧送した。この時、混合装置を冷却し、混合シエアー蓄熱による温度上昇を極力低減させた。こうして主剤と硬化剤が適正配合にて混合圧送され吐出口の口金より、パテ状にて吐出した。まず、5kg程度を吐出し鼻きりとした。吐出された無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(B)は所定の色調を呈しており、色むら無く混合されていた。
【0158】
盛り付け材吐出スタートボタンと吐出口作動ボタンを同時に押し、自動混合自動盛り付けを開始した。吐出口は上下運動および左水平・垂直・右水平の180°に可動し、デザインモデル設置土台は水平左右運動を行い、被覆工程(3)にて製作された無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)の硬化物表面をなぞりながら、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)を吐出させ、盛り付けを行った。
【0159】
盛り付け終了後、盛り付け材表面がタックフリーになったことを確認し、盛り付け材の表面を手作業にて軽く手で叩き、下地層と盛り付け材層の間及び盛り付け材層間のわずかな気泡を排出せしめ、、盛り付け材表面の凹凸をやや滑らかになる様調整した。
【0160】
多官能ポリオール成分(r)の実施例(4)は表4に、多官能ポリイソシアネート成分(s)の実施例(5)は表5に、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の性能一覧は表6にまとめた。表6中に記した評価項目の測定方法は、下記の通りである。
【0161】
【表4】

【0162】
【表5】

【0163】
【表6】

【0164】
<評価方法>
・可使時間:ゲル化するまでの時間をストップウォッチにて測定した。
・タックフリー:外気温20℃にてゲル化した塗膜の指触乾燥時間を測定した。
・発熱温度:下地に温度センサーを設置し、発熱温度を測定した。
・硬度:外気温約20℃で静置し、翌日ショアーA硬度計にて表面硬度を測定した。
・膜厚:盛り付けられたされたモデル部位を垂直に切断し、盛り付け材層の平均膜厚をノギスにて測定した。
・硬化物概観:目視。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明のデザインモデル製造方法を構成している各工程を、従来の製造方法(比較例)と対比して示したフロー図である。
【図2】ブロック貼り合わせ工程(1)の概略を示す構成図である。
【図3】粗削り工程(2)の概略を示す構成図である。
【図4】被覆工程(3)の概略を示す構成図である。
【図5】盛り付け工程(4)の概略を示す構成図である。
【図6】切削仕上げ加工工程(5)の概略を示す構成図である。
【図7】塗装工程を経て得られたデザインモデルの断面図である。
【符号の説明】
【0166】
1 発泡ポリスチレンブロック
2 発泡ポリスチレン用接着剤
3 NCマシン
4 ハイス
5 発泡ポリスチレンブロック切削屑
6 塗装機
7 2頭ガン
8 主剤ストックタンク
9 硬化剤ストックタンク
10 2液急速硬化性ウレタン樹脂液(主剤)
11 2液急速硬化性ウレタン樹脂液(硬化剤)
12 主剤吸引圧送ポンプ
13 硬化剤吸引圧送ポンプ
14 主剤噴霧ミスト
15 硬化剤噴霧ミスト
16 2液急速硬化性ウレタン樹脂液被覆硬化層
17 盛り付け材(主剤)ドラム
18 2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(主剤)
19 盛り付け材(硬化剤)ドラム
20 2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(硬化剤)
21 主剤用加圧蓋
22 硬化剤用加圧蓋
23 盛り付け材(主剤)定量ポンプ
24 盛り付け材(硬化剤)定量ポンプ
25 盛り付け材混合吐出ポンプ
26 盛り付け材混合吐出ポンプ冷却装置
27 冷媒循環ライン
28 圧送用耐圧ホース
29 盛り付け材吐出口
30 2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂層
31 NC加工用ハイス
32 2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂の切削加工屑
33 2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂硬化物仕上げ加工層
34 仕上げ塗膜塗料層(下塗・中塗・上塗)
35 2液硬化性盛り付け用ウレタン樹脂層
36 2液急速硬化性ウレタン樹脂層
37 発泡ポリスチレン層
40 盛り付け用樹脂層形成後のデザインモデル
41 切削仕上げ加工を施したデザインモデル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デザインモデルを製造する方法において、
発泡ポリスチレンブロック(A)をモデル概略形状に貼り合わせて概略構造体を形成する貼り合わせ工程(1)と、
次いで、NC加工にて前記概略構造体をモデル概略形状に切削し、モデル下地を形成する粗削り工程(2)と、
次いで、前記モデル下地の表面へ無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)を2頭ガン式スプレー塗装機にて塗布する被覆工程(3)と、
次いで、無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)が硬化した表面へ無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)を自動混合吐出自動盛り付け機にて盛り付ける盛り付け工程(4)と、
次いで、無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)が硬化した後、NC加工にてモデル形状に切削する仕上げ加工工程(5)と、
次いで、仕上げ加工された無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)の硬化物加工表面へ塗料をスプレーし、デザインモデルを得る塗装工程(6)とから成ることを特徴とするデザインモデル製造方法。
【請求項2】
被覆工程(3)に使用される無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)が、多官能活性水素基含有成分(a)と多官能ポリイソシアネート成分(b)と可塑剤(c)とを必須成分とし、硬化段階で相分離した3次元網目構造を形成する無溶剤型2液反応硬化性ウレタンスプレー塗装材であることを特徴とする請求項1記載のデザインモデル製造方法。
【請求項3】
無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液(B)に使用される多官能活性水素基含有成分(a)の平均官能基数が3.0以上であり、多官能ポリイソシアネート成分(b)が平均官能基数2.3以上であり、NCO/活性水素比が0.75〜1.0、可使時間10秒以内、硬化物のショアーD硬度が70〜83であることを特徴とする請求項1又は2に記載のデザインモデル製造方法。
【請求項4】
被覆工程(3)で使用される2頭ガン式スプレー塗装機にて、主剤スプレー口から多官能活性水素基含有成分(a)を、硬化剤スプレー口から多官能ポリイソシアネート成分(b)を噴霧状にて吐出し、空気中で噴霧混合させ、前記モデル下地の表面に膜厚1〜10mmの範囲となるように塗布することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のデザインモデル製造方法。
【請求項5】
盛り付け工程(4)に使用される無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)が、多官能ポリオール成分(r)と多官能ポリイソシアネート成分(s)と可塑剤(c)とを必須成分とし、硬化段階で相分離した3次元網目構造を形成する無溶剤型2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のデザインモデル製造方法。
【請求項6】
無溶剤型2液硬化性ウレタン盛り付け用樹脂(C)に使用される多官能ポリオール成分(r)の平均官能基数が3.0以上、多官能ポリイソシアネート成分(s)の平均官能基数が2.3以上、NCO/OH比が0.75〜1.0であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のデザインモデル製造方法。
【請求項7】
盛り付け工程(4)に使用される自動混合吐出自動盛り付け機が、材料加圧減圧吸引装置と定量ポンプと2液自動混合吐出装置とを搭載し、自動混合吐出装置から耐圧ホースにて連結された吐出口がNC加工機のハイス保持部と切り替え装着され、CADデータにて3次元形状のモデル表面をなぞるべく自動制御されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のデザインモデル製造方法。
【請求項8】
多官能活性水素基含有成分(a)と、多官能ポリイソシアネート成分(b)と、可塑剤(c)とを必須成分とし、
多官能活性水素基含有成分(a)の平均官能基数が3.0以上であり、多官能ポリイソシアネート成分(b)が平均官能基数2.3以上であり、NCO/活性水素比が0.75〜1.0、可使時間10秒以内、硬化物のショアーD硬度が70〜83であり、硬化段階で相分離した3次元網目構造を形成することを特徴とするスプレー塗装材用無溶剤型2液急速硬化性ウレタン樹脂液。
【請求項9】
多官能ポリオール成分(r)と、多官能ポリイソシアネート成分(s)と、可塑剤(c)とを必須成分とし、
多官能ポリオール成分(r)の平均官能基数が3.0以上、多官能ポリイソシアネート成分(s)の平均官能基数が2.3以上、NCO/OH比が0.75〜1.0であり、硬化段階で相分離した3次元網目構造を形成することを特徴とする盛り付け加工用無溶剤型2液反応硬化性ウレタン樹脂パテ材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−139973(P2010−139973A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318549(P2008−318549)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(502410060)有限会社大井商事 (1)
【Fターム(参考)】