説明

デジタル放送再生装置

【課題】最適な記憶容量でタイムシフト再生からタイムラグを生じることなくリアルタイム視聴に切替え可能なデジタル放送再生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】デジタル放送再生装置は、第一デジタル放送情報を再生する第一再生部と、第二デジタル放送情報を再生する第二再生部と、該第一デジタル放送情報および該第二デジタル放送情報を記憶する記憶部と、視聴中断の指示があった場合に該第二デジタル放送情報を該記憶部へ書き込み、視聴再開の指示があった場合に該第二デジタル放送情報を該第二再生部に再生させ、再生された該第二デジタル放送情報が受信中の第一デジタル放送情報に追いつく時間より前に第一デジタル放送情報を該記憶部へ書き込み開始し、再生された該第二デジタル放送情報が受信中の第二デジタル放送情報に追いついた時に該記憶部へ書き込んだ該第一デジタル放送情報を該第一再生部に再生させる制御部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル放送再生装置はデジタル放送を受信する受信部から受信したデジタル放送情報を視聴可能な情報に復調および復号する。例えば日本では、デジタル放送は1チャンネル分の周波数帯域を13分割して放送される。分割したそれぞれの領域はセグメントと呼ばれる。ワンセグ放送が運用される場合、フルセグ放送は分割した13のセグメントのうちの12のセグメントを用いて放送される。例えばフルセグ放送のビットレートを16Mbpsとすると、フルセグ放送のデジタル放送情報であるフルセグ放送データを1時間記憶する場合、記憶装置には少なくとも7.2GBの記憶容量が必要となる。
【0003】
デジタル放送の運用形態として、フルセグ放送とワンセグ放送で同一の番組が同時に放送されているサイマル放送がある。サイマル放送において、フルセグ放送に対応するワンセグ放送は、分割した13のセグメントのうちフルセグ放送で使用していない1つのセグメントを用いて放送される。ワンセグ放送はフルセグ放送に比べてセグメント数が少ないため、送信可能な単位時間当りのデータ量も小さくなる。例えばワンセグ放送のビットレートが約400kbpsであるとすると、ワンセグ放送のデジタル放送情報であるワンセグ放送データを1時間記憶する場合、記憶装置に必要な記憶容量は180MBとなる。つまりワンセグ放送データの記憶に必要な記憶容量はフルセグ放送データを記憶する場合に比べ1/40となる。
【0004】
デジタル放送をHDD(Hard Disk Drive)やメモリのようにランダムアクセス可能な記憶装置に記憶させることにより、タイムシフト再生が可能となる。タイムシフト再生はデジタル放送の視聴を中断している間に受信したデジタル放送データを記憶装置に一時記憶し、視聴再開後にリアルタイムの視聴に復帰するまで一時記憶したデータを早送り再生する方式である。
【0005】
タイムシフト再生を実現しようとする場合、携帯端末などの小型の装置では筐体の大きさにより実装可能な記憶装置の記憶容量が制限される。記憶領域の制限によりフルセグ放送データでの記憶が困難な場合、リアルタイムの視聴はフルセグ放送データで行い、視聴中断中の放送はワンセグ放送データで記憶する。これにより、タイムシフト再生を実現するために記憶するデータ量を小さくすることが出来る。
【0006】
以下の特許文献にはタイムシフト再生に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2001−216731号公報
【特許文献2】特開平2007−43358号公報
【特許文献3】特開平2007−251867号公報
【0008】
サイマル放送データを送信する放送局は放送コンテンツに対し、ワンセグ放送とフルセグ放送のそれぞれに符号化処理および変調処理を行い、放送データを送出する。ワンセグ放送とフルセグ放送の符号化処理および変調処理の違いにより、ワンセグ放送データは対応するフルセグ放送データよりも遅れて送信される。この送信遅延により、フルセグ放送視聴中断中の映像をワンセグ放送データで記憶しタイムシフト再生すると、ワンセグ放送データのタイムシフト再生からリアルタイムのフルセグ放送受信に復帰するときにタイムラグが発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一実施例では、最適な記憶容量でタイムシフト再生からタイムラグを生じることなくリアルタイム視聴に切替え可能なデジタル放送再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、デジタル放送を受信する受信部から受信した第一デジタル放送情報および第二デジタル放送情報を再生するデジタル放送再生装置は、該第一デジタル放送情報を再生すると共に該第一デジタル放送情報に含まれる再生時刻情報である第一時刻管理情報を抽出する第一再生部と、該第一デジタル放送情報に対応する該第二デジタル放送情報を再生すると共に該第二デジタル放送情報に含まれる再生時刻情報である第二時刻管理情報を抽出する第二再生部と、受信した該第一デジタル放送情報および該第二デジタル放送情報を記憶する記憶部と、視聴中断の指示があった場合に該受信部で受信した第二デジタル放送情報を該記憶部へ書き込み、視聴再開の指示があった場合に該記憶部へ書き込んだ該第二デジタル放送情報を該第二再生部に通常の視聴よりも高速に再生させ、受信した該第一デジタル放送情報から抽出した該第一時刻管理情報および再生した該第二デジタル放送情報から抽出した該第二時刻管理情報に基づいて、再生された該第二デジタル放送情報が受信中の第一デジタル放送情報に追いつくと推定される時間より第一時間前に第一デジタル放送情報を該記憶部へ書き込みを開始し、受信した該第二デジタル放送情報および再生された該第二デジタル放送情報からそれぞれ抽出した該第二時刻管理情報に基づいて、再生された該第二デジタル放送情報が受信中の第二デジタル放送情報に追いついた時に該記憶部へ書き込んだ該第一デジタル放送情報を該第一再生部に通常の視聴よりも高速に再生させる制御部を有する。
【発明の効果】
【0011】
実施形態によれば、最適な記憶容量でタイムシフト再生からタイムラグを生じることなくリアルタイム視聴に切替え可能なデジタル放送再生装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】デジタル放送再生装置の全体ブロック図である。
【図2】デジタル放送データの構造概略図である。
【図3】タイムシフト再生処理のフローチャート図である。
【図4】タイムシフト再生のタイミングチャート図である。
【図5】記憶部12における未再生記憶データ量の時間変化図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態について説明する。なお、各実施形態における構成の組み合わせも本発明の実施形態に含まれる。
【0014】
図1は本実施の形態に係るデジタル放送再生装置10の全体ブロック図である。デジタル放送再生装置10はワンセグチューナ1、フルセグチューナ2、ワンセグ復調部3、フルセグ復調部4、ワンセグ再生部23、フルセグ再生部24、セレクタ9、選択記憶制御部11、選択再生制御部13、記憶部12、制御部14を有する。
【0015】
ワンセグチューナ1は受信したワンセグ放送のうち1つの周波数帯に割り当てられたチャネルのワンセグ放送を選択し出力する。フルセグチューナ2は受信したフルセグ放送のうちワンセグチューナ1で選択したチャネルに対応するフルセグ放送を選択し出力する。
【0016】
ワンセグ復調部3はワンセグチューナ1で選択されたチャネルのワンセグ放送をデジタル信号に復調する。同様にフルセグ復調部4はフルセグチューナ2で選択されたチャネルのフルセグ放送をデジタル信号に復調する。
【0017】
ワンセグ再生部23はワンセグ放送データを再生すると共にワンセグ放送データの再生時刻情報であるPTS(Presentation Time Stamp)を抽出する。PTSはデータ再生時の時刻管理情報である。また、ワンセグ再生部23はワンセグデマックス5、ワンセグ復号部7を有する。PTSについては、図2の概略構成図に従って詳細に説明する。
【0018】
図2はデジタル放送における放送データ構造の概略構成図である。図2において、TS(Transport Stream)はいくつかの個々に符号化されたストリームをTSパケットと呼ばれる伝送単位で時分割多重したものである。時分割多重とは、映像や音声などの複数の信号を一つの伝送路で伝送するために、伝送路を時間で分割し、分割した時間のそれぞれに対して信号を割り当てて伝送する方式である。
【0019】
TSパケットはTSを構成する固定長のパケットである。TSパケットはそれぞれヘッダとペイロードを有する。ヘッダはPID(Packet ID)と呼ばれる識別番号を有する。ペイロードはデータを格納する。PIDの値は各ヘッダに対応するペイロードに格納されたデータの種類によって異なる。デジタル放送再生装置10はPIDにより、複数のTSパケットの中から1つのPESパケットに対応するTSパケットをフィルタリングすることが出来る。
【0020】
PES(Packetized Elementary Stream)パケットは1つのES(Elementary Stream)をパケット化したものである。同一のPIDを有するTSパケットのペイロードをつなぐことで1つのESを有するPESパケットを抽出することが出来る。図1のワンセグデマックス5およびフルセグデマックス6はPESパケットを抽出する。
【0021】
PESパケットはPESヘッダとESを有する。PESヘッダはPTS(Presentation Time Stamp)を有する。PTSは再生時の時刻管理情報である。図1のワンセグデマックス5およびフルセグデマックス6はPESパケットからPTS20、22を抽出する。
【0022】
PTSは時系列順に時刻情報が割り当てられているため、PTSの大小関係を比較することによりそれぞれのPESパケット内の映像データ、音声データを再生すべき時刻を把握することが出来る。
【0023】
図1の説明に戻る。ワンセグデマックス5は制御信号19に応じてワンセグ復調部3または選択再生制御部13から出力される復調後のワンセグ放送データを映像や音声等データの種類ごとに分離する。ワンセグデマックス5は制御信号19に応じて選択再生制御部13から出力されるワンセグ放送データを処理する場合に、リアルタイム視聴の場合よりも速い再生速度で分離処理することが出来る。
【0024】
ワンセグデマックス5は受信したワンセグ放送データからPTS値を抽出しPTS20として制御部14に出力する。PTS20はワンセグ復調部3および選択再生制御部13から受信するワンセグ放送データのPTS値の差分値であってもよいし、それぞれのPTS値であってもよい。また本実施例ではPTSをワンセグデマックス5で抽出するが、後述するワンセグ復号部7で抽出しても良い。
【0025】
ワンセグ復号部7はワンセグ放送データから分離した映像や音声等のデータ間のタイミングを調整し、視聴可能なデータに並べ替えて出力する。ワンセグ復号部7は復号処理したワンセグ放送データを一時記憶するメモリ等の記憶部を設けていても良い。復号処理済のワンセグ放送データを一時記憶することにより、フルセグ視聴からワンセグ視聴へ切り替える場合の処理遅延を解消することが出来る。
【0026】
フルセグ再生部24はフルセグ放送データを再生すると共にフルセグ放送データの再生時刻情報であるPTSを抽出する。フルセグ再生部24はフルセグデマックス6、フルセグ復号部8を有する。
【0027】
フルセグデマックス6は復調したフルセグ放送データを映像や音声等データの種類ごとに分離する分離部である。フルセグデマックス6は制御信号21に応じてフルセグ復調部4または選択再生制御部13から出力されるフルセグ放送データを分離処理する。フルセグデマックス6は制御信号21に応じて選択再生制御部13から出力されるフルセグ放送データを処理する場合に、リアルタイム視聴の場合よりも速い再生速度で分離処理することが出来る。
【0028】
フルセグデマックス6は受信したフルセグ放送データからPTS値を抽出しPTS22として制御部14に出力する。PTS22はフルセグ復調部4および選択再生制御部13から受信するフルセグ放送データのPTS値の差分値であってもよいし、それぞれのPTS値であってもよい。
【0029】
フルセグデマックス6はワンセグ放送情報のタイムシフト再生からフルセグ放送情報のタイムシフト再生に切り替わる前に情報処理済みのフルセグ放送情報を一時記憶するメモリ等の記憶部を有してもよい。情報処理済のフルセグ放送データを一時記憶することにより、ワンセグ視聴からフルセグ視聴へ切り替える場合の処理遅延を解消することが出来る。
【0030】
また本実施例ではPTSをフルセグデマックス6で抽出するが、後述するフルセグ復号部8で抽出しても良い。
【0031】
フルセグ復号部8はフルセグ放送データから分離した映像や音声等のデータ間のタイミングを調整し、視聴可能なデータに並べ替えて出力する。フルセグ復号部8は復号処理したフルセグ放送データを一時記憶するメモリ等の記憶部を有していても良い。復号処理済のフルセグ放送データを一時記憶することにより、ワンセグ視聴からフルセグ視聴へ切り替える場合の処理遅延を解消することが出来る。
【0032】
セレクタ9は制御部14から出力される選択信号15に応じてワンセグ復号部7またはフルセグ復号部8から出力される復号済みの放送データを選択し、モニタなどの出力装置へ出力する。
【0033】
選択記憶制御部11は制御部14から出力される選択信号16に応じてワンセグ復調部3またはフルセグ復調部4のいずれか一方の出力を選択し記憶部12に記憶させる。
【0034】
記憶部12は選択記憶制御部11から出力される復調後の放送データを記憶する。本実施例ではデマックス処理前のワンセグ放送データまたはフルセグ放送データを記憶するが、デマックス処理後のデータを記憶しても良い。デマックス後のデータを記憶することにより、記憶部12に記憶するデータ量を削減することが出来る。
【0035】
選択再生制御部13は制御部14から出力される選択信号17に応じて記憶部12からワンセグ放送データまたはフルセグ放送データを読み出す。選択再生制御部13はワンセグ放送データを読み出した場合はワンセグデマックス5に読み出したデータを送信する。選択再生制御部13はフルセグ放送データを読み出した場合はフルセグデマックス6に読み出したデータを送信する。
【0036】
制御部14は視聴中断後に受信したワンセグ放送データを記憶部12に記憶させる。制御部14は視聴再開した場合に記憶したワンセグ放送データを通常の視聴よりも高速にワンセグ再生部23にタイムシフト再生させる。制御部14は抽出したPTS20およびPTS22に基づいてタイムシフト再生されたワンセグ放送データが受信中のフルセグ放送に追いつく第一時間前にフルセグ放送データの記憶を開始させる。制御部14はPTS20に基づいてタイムシフト再生されたワンセグ放送データが受信中のワンセグ放送に追いつく時間に記憶部12へ記憶したフルセグ放送データをフルセグ再生部24にタイムシフト再生させる。制御部14の動作の詳細は図3のフローチャートに従って説明する。
【0037】
図3はデジタル放送再生装置10におけるタイムシフト再生処理のフローチャート図である。デジタル放送再生装置10において、制御部14はセレクタ9に対し、フルセグ再生部24から出力されるフルセグ放送データを出力するように選択信号15を出力する(S10)。フルセグ放送データの出力は視聴中断のユーザ指示信号18が入力されるまで続く(S11、NO)。
【0038】
視聴中断のユーザ指示信号18が制御部14に入力されると(S11、YES)、制御部14はワンセグ録画を開始するための選択信号16を選択記憶制御部11に出力する(S12)。選択記憶制御部11は選択信号16に応じてワンセグ復調部3から出力されるワンセグ放送データを選択し記憶部12に出力する。
【0039】
ワンセグ録画は視聴再開を指示するユーザ指示信号18が入力されるまで継続される(S13、NO)。視聴再開を指示するユーザ指示信号18が制御部14に入力されると(S13、YES)、制御部14はワンセグ放送データでタイムシフト再生を開始するための選択信号17を選択再生制御部13に出力する。選択再生制御部13は選択信号17に応じて記憶部12に記憶したワンセグ放送データを再生データとして選択し、ワンセグデマックス5にデータを出力する(S14)。制御部14は選択再生制御部13から出力されたワンセグ放送データを選択し、タイムシフト再生に対応する転送速度で出力するように制御信号19をワンセグデマックス5に出力する(S14)。制御部14はワンセグ復号部7から出力されるワンセグ放送データを選択し出力するように選択信号15をセレクタ9に出力する(S14)。
【0040】
フルセグ復調部4から出力されるリアルタイム受信中のフルセグ放送データに基づいてフルセグデマックス6により抽出されるPTS値をPTS1とする。選択再生制御部13から出力されるワンセグ放送データに基づいてワンセグデマックス5により抽出されるPTS値をPTS2とする。制御部14はPTS1とPTS2の差分(PTS1−PTS2)が制御部14にあらかじめ設定された閾値1以下になるまでワンセグ再生を継続する(S15、NO)。
【0041】
閾値1は制御部14にあらかじめ設定されている値である。フルセグ放送データとワンセグ放送データのタイムラグをTD、タイムシフト再生速度の早送り倍率をSとすると、閾値1はTD×Sに基づく値となる。すなわちPTSの差分が閾値1以下になる時間は、タイムシフト再生の再生速度と、フルセグ放送情報とワンセグ放送情報とのタイムラグに基づいて算出される。フルセグ放送とワンセグ放送の同一番組上の同一タイミングの映像、音声データに対応するPTSにオフセットがある場合には、このオフセットを加味した閾値を設定するものとする。また、出力データの表示時刻、復号処理遅延時間などを考慮して閾値1にマージンを持たせて設定しても良い。
【0042】
なお、PTSの差分が閾値1以下となったかどうかを判定する基準として、記憶部12に記憶している未再生のワンセグ放送データ量を用いても良い。タイムシフト再生速度の早送り倍率Sから未再生のワンセグ放送データ量が後どのくらいでゼロになるかを予測することが出来る。すなわちPTSの差分が閾値1以下になる時間は、記憶部12に記憶された未再生のワンセグ放送情報と、タイムシフト再生の再生速度に基づいて算出される。ワンセグ放送データ量がゼロになる時刻に応じて閾値1を設定することにより、PTSの差分を比較するときと同様にフルセグ放送データの記憶へと動作を切り替えるタイミングを判定することが出来る。
【0043】
制御部14はPTS1とPTS2の差分(PTS1−PTS2)が閾値1以下になると(S15、YES)、フルセグ録画を開始するための選択信号16を出力する(S16)。選択記憶制御部11はフルセグ復調部4から出力されるフルセグ放送データを選択し、記憶部12に出力する(S16)。
【0044】
ワンセグ復調部3から出力されるリアルタイム受信中のワンセグ放送データに基づいてワンセグデマックス5により抽出されるPTS値をPTS3とする。制御部14はPTS3とPTS2の差分(PTS3−PTS2)が制御部14にあらかじめ設定された閾値2以下になるまでワンセグ放送データのタイムシフト再生を継続する(S17、NO)。制御部14は(PTS3−PTS2)が閾値2以下になると(S17、YES)、フルセグ放送データでタイムシフト再生を開始するための選択信号17を選択再生制御部13に出力する(S18)。
【0045】
閾値2は制御部14にあらかじめ設定されている値である。フルセグ放送データによるタイムシフト再生に切り替えるタイミングは、ワンセグタイムシフト再生がワンセグリアルタイム視聴に追いつくタイミングである。よって閾値2の値は0となる。実際の閾値2はワンセグタイムシフト再生からフルセグタイムシフト再生へ切り替えるための処理時間などを考慮した値に設定する。
【0046】
選択再生制御部13は制御部14から選択信号17を受信すると記憶部12から出力されるフルセグ放送データを選択しフルセグデマックス6に出力する(S18)。制御部14は選択再生制御部13から出力されるフルセグ放送データを選択し、タイムシフト再生に対応する転送速度で放送データを出力するように制御信号21をフルセグデマックス6に出力する(S18)。制御部14はフルセグ放送に切り替えるための選択信号15を出力する(S18)。セレクタ9は選択信号15を受信すると、フルセグ復号部8から出力されるフルセグ放送データを選択し出力する(S18)。
【0047】
選択再生制御部13から出力されるフルセグ放送データに基づいてフルセグデマックス6が抽出するPTS値をPTS4とする。制御部14はPTS1とPTS4の差分(PTS1−PTS4)が制御部14にあらかじめ設定された閾値3以下になるまでフルセグ放送データのタイムシフト再生を継続する(S19、NO)。
【0048】
閾値3は制御部14にあらかじめ設定されている値である。リアルタイム視聴に切り替えるタイミングは、フルセグタイムシフト再生がフルセグリアルタイム視聴に追いつくタイミングである。よって閾値3の値は0となる。フルセグタイムシフト再生からフルセグリアルタイム視聴へ切り替えるための処理時間を考慮して閾値3を設定してもよい。
【0049】
制御部14は(PTS1−PTS4)が閾値3以下になると(S19、YES)、タイムシフト再生からリアルタイムのフルセグ視聴に切り替えるための制御信号21をフルセグデマックス6に出力する(S20)。フルセグデマックス6は制御信号21に応じてフルセグ復調部4から出力されるフルセグ放送データを選択し、出力する(S18)。
【0050】
すなわちデジタル放送を受信するワンセグチューナ1およびフルセグチューナ2から受信したフルセグ放送データおよびワンセグ放送データを再生するデジタル放送再生装置は、フルセグ放送データを再生すると共にフルセグ放送データに含まれる再生時刻情報であるPTS22を抽出するフルセグ再生部24と、フルセグ放送データに対応するワンセグ放送データを再生すると共にワンセグ放送データに含まれる再生時刻情報であるPTS20を抽出するワンセグ再生部23と、受信したフルセグ放送データおよびワンセグ放送データを記憶する記憶部12と、視聴中断の指示があった場合にワンセグチューナ1で受信したワンセグ放送データを記憶部12へ書き込み、視聴再開の指示があった場合に記憶部12へ書き込んだワンセグ放送データをワンセグ再生部23に通常の視聴よりも高速に再生させ、受信したフルセグ放送データから抽出したPTS22および再生したワンセグ放送データから抽出したPTS20に基づいて、再生されたワンセグ放送データが受信中のフルセグ放送データに追いつくと推定される時間より第一時間前にフルセグ放送データを記憶部12へ書き込みを開始し、受信したワンセグ放送データおよび再生されたワンセグ放送データからそれぞれ抽出したPTS20に基づいて、再生されたワンセグ放送データが受信中のワンセグ放送データに追いついた時に記憶部12へ書き込んだフルセグ放送データをフルセグ再生部24に通常の視聴よりも高速に再生させる制御部14を有する。
【0051】
以上の通りタイムシフト再生を録画したワンセグ放送データで実行し、ワンセグ放送とフルセグ放送とのタイムラグを補間するようにフルセグ放送データを録画再生することにより、最適な記憶容量でタイムシフト再生からタイムラグを生じることなくリアルタイム視聴に切替えるデジタル放送再生装置を提供することができる。
【0052】
なおデジタル放送再生装置10は図5に示す処理を実行するプロセッサを実装することにより、プロセッサによるプログラムの処理として図3に示す処理を実行することも可能である。
【0053】
図4は図3のフローチャートの処理を行った際のタイムシフト再生のタイミングチャート図を示したものである。横軸の時間は放送データの記憶状態および出力状態に応じて区間Aから区間Fに分けられる。
【0054】
図4においてフルセグ受信データ40はフルセグ復調部4からフルセグデマックス6に出力されるデータである。データ中の‘0’から‘28’の数字はそれぞれフルセグ受信データ40の表示時刻を表す。
【0055】
ワンセグ受信データ41はワンセグ復調部3からワンセグデマックス5に出力されるデータである。データ中の‘−3’から‘25’の数字はそれぞれワンセグ受信データ41の表示時刻を表す。同一番号を持つワンセグ受信データ41とフルセグ受信データ40は、番組上の同一タイミングの映像、音声データに対応する。
【0056】
フルセグ記憶データ42は記憶部12に一時記憶されるフルセグ放送データである。記憶部12は時刻T3から時刻T5までのフルセグ放送データをフルセグ記憶データ42として記憶する。
【0057】
ワンセグ記憶データ43は記憶部12に一時記憶されるワンセグ放送データである。記憶部12は時刻T1から時刻T4までのワンセグ放送データをフルセグ記憶データ42として記憶部12に記憶する。
【0058】
出力データ44はセレクタ9から出力される放送データを示すものである。以下、図4のタイミングチャート図を図3のフローチャートにおけるステップ番号に対応させて各区間の動作を説明する。
【0059】
区間Aにおいてセレクタ9は視聴中のフルセグ放送データを出力データ44として出力する(S10)。
【0060】
時刻T1において視聴が中断されると(S11、YES)、記憶部12は区間Bにおいてワンセグ記憶データ43の通り受信中のワンセグ放送データを記憶する(S12)。よって記憶部12に記憶される未再生のデータは徐々に増加する。
【0061】
時刻T2において視聴が再開されると(S13、YES)、選択再生制御部13はワンセグ記憶データ43の通り記憶部12に記憶したワンセグ放送データをワンセグ再生部23へ出力する(S14)。区間Cにおいてセレクタ9はワンセグ再生部23によりタイムシフト再生されたワンセグ放送データを出力データ44として出力する。よって区間Cにおいて記憶部12に記憶される未再生のデータは徐々に減少する。
【0062】
ワンセグデマックス5から出力されるPTSとフルセグデマックス6から出力されるPTSとの差分が閾値1以下になる時刻T3において(S15、YES)、記憶部12はフルセグ記憶データ42の通りフルセグ放送データの記憶を開始する(S16)。区間Dにおいて記憶部12に記憶されるフルセグ放送データは徐々に増加する。一方、区間Dにおいてセレクタ9はタイムシフト再生されたワンセグ放送データを出力データ44の通り出力する。単位時間当りのフルセグ放送データ量はワンセグ放送データ量よりも大きい。よって区間Dにおいて記憶部12に記憶される未再生のデータは徐々に増加する。
【0063】
ワンセグ復調部3から出力されるワンセグ放送データのPTS値と選択再生制御部13から出力されるワンセグ放送データのPTS値との差分が閾値2以下になる時刻T4において(S17、YES)、選択再生制御部13は記憶部12に記憶されたフルセグ放送データを出力データ44の通り通常より高速に出力していく(S18)。よって区間Eにおいて記憶部12に記憶される未再生のデータは徐々に減少する。
【0064】
受信中のフルセグ放送データのPTS値とタイムシフト再生されたフルセグ放送データのPTS値との差分が閾値3以下になる時刻T5において(S19、YES)、制御部14はフルセグタイムシフト再生からフルセグリアルタイム視聴に切り替える(S20)。区間Fにおいて、セレクタ9は受信中のフルセグ放送データを出力データ44の通り出力する。よって区間Fにおいて未再生の記憶データ量はゼロである。
【0065】
以上の通り録画したワンセグ放送データでタイムシフト再生を実行し、ワンセグ放送とフルセグ放送とのタイムラグを補間するようにフルセグ放送データを録画再生することにより、最適な記憶容量でタイムシフト再生からタイムラグを生じることなくリアルタイム視聴に切替えるデジタル放送再生装置を提供することができる。
【0066】
図5は記憶部12における未再生記憶データ量の時間変化図である。図5の横軸は時間である。図5の時刻T1、T2、T3、T4、T5はそれぞれ図4の時刻T1、T2、T3、T4、T5に対応している。
【0067】
図5のグラフ50は視聴中断中のデジタル放送データを全てフルセグ放送データで記憶した場合の記憶部12における未再生記憶データ量の時間変化である。グラフ50において、未再生の記憶データ量は視聴再開される時刻T2に最大値となる。
【0068】
図5のグラフ50は本実施例に係る方法でデジタル放送データを記憶した場合の記憶部12における見再生記憶データ量の時間変化である。本実施例では時刻T2における記憶量よりも時刻T4における未再生記憶データ量が大きくなっている。時刻T2、T4の未再生記憶データ量の大小関係は視聴中断時間によって異なる。
【0069】
時刻T2においてグラフ50とグラフ51を比較すると、グラフ51における未再生記憶データ量はグラフ50における未再生記憶データ量の1/40となる。
【0070】
以上の通り録画したワンセグ放送データでタイムシフト再生を実行し、ワンセグ放送とフルセグ放送とのタイムラグを補間するようにフルセグ放送データを録画再生することにより、最適な記憶容量でタイムシフト再生からタイムラグを生じることなくリアルタイム視聴に切替えるデジタル放送再生装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 ワンセグチューナ
2 フルセグチューナ
3 ワンセグ復調部
4 フルセグ復調部
5 ワンセグデマックス
6 フルセグデマックス
7 ワンセグ復号部
8 フルセグ復号部
9 セレクタ
10 デジタル放送再生装置
11 選択記憶制御部
12 記憶部
13 選択再生制御部
14 制御部
15、16、17 選択信号
18 ユーザ指示信号
20、22 PTS
19、21 制御信号
23 ワンセグ再生部
24 フルセグ再生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル放送を受信する受信部から受信した第一デジタル放送情報および第二デジタル放送情報を再生するデジタル放送再生装置であって、
該第一デジタル放送情報を再生すると共に該第一デジタル放送情報に含まれる再生時刻情報である第一時刻管理情報を抽出する第一再生部と、
該第一デジタル放送情報に対応する該第二デジタル放送情報を再生すると共に該第二デジタル放送情報に含まれる再生時刻情報である第二時刻管理情報を抽出する第二再生部と、
受信した該第一デジタル放送情報および該第二デジタル放送情報を記憶する記憶部と、
視聴中断の指示があった場合に該受信部で受信した第二デジタル放送情報を該記憶部へ書き込み、視聴再開の指示があった場合に該記憶部へ書き込んだ該第二デジタル放送情報を該第二再生部に通常の視聴よりも高速に再生させ、受信した該第一デジタル放送情報から抽出した該第一時刻管理情報および再生した該第二デジタル放送情報から抽出した該第二時刻管理情報に基づいて、再生された該第二デジタル放送情報が受信中の第一デジタル放送情報に追いつくと推定される時間より第一時間前に第一デジタル放送情報を該記憶部へ書き込みを開始し、受信した該第二デジタル放送情報および再生された該第二デジタル放送情報からそれぞれ抽出した該第二時刻管理情報に基づいて、再生された該第二デジタル放送情報が受信中の第二デジタル放送情報に追いついた時に該記憶部へ書き込んだ該第一デジタル放送情報を該第一再生部に通常の視聴よりも高速に再生させる制御部と
を有することを特徴とするデジタル放送再生装置。
【請求項2】
該第一時間は、通常の視聴よりも高速に再生する場合の再生速度と、受信した該第二デジタル放送情報と受信した該第一デジタル放送情報とのタイムラグに基づいて算出することを特徴とする、請求項1に記載のデジタル放送再生装置。
【請求項3】
該第一時間は、該記憶部へ書き込んだ未再生の該第二デジタル放送情報と、通常の視聴よりも高速に再生させる場合の再生速度に基づいて算出することを特徴とする、請求項1に記載のデジタル放送再生装置。
【請求項4】
該第一再生部は、該第二デジタル放送情報のタイムシフト再生から該第一デジタル放送情報のタイムシフト再生に切り替わる前に情報処理済みの該第一デジタル放送情報を一時記憶する記憶部を有することを特徴とする、請求項1に記載のデジタル放送再生装置。
【請求項5】
デジタル放送を受信する受信部から受信した第一デジタル放送情報および第二デジタル放送情報を再生し、該第一デジタル放送情報を再生すると共に該第一デジタル放送情報に含まれる再生時刻情報である第一時刻管理情報を抽出する第一再生部と、該第一デジタル放送情報に対応する該第二デジタル放送情報を再生すると共に該第二デジタル放送情報に含まれる再生時刻情報である第二時刻管理情報を抽出する第二再生部と、該第一デジタル放送情報および該第二デジタル放送情報を記憶する記憶部とを有するデジタル放送再生装置の制御方法であって、
視聴中断の指示があった場合に該受信部で受信した第二デジタル放送情報を該記憶部へ書き込み、
視聴再開の指示があった場合に該記憶部へ書き込んだ該第二デジタル放送情報を該第二再生部に通常の視聴よりも高速に再生させ、
受信した該第一デジタル放送情報から抽出した該第一時刻管理情報および再生した該第二デジタル放送情報から抽出した該第二時刻管理情報に基づいて、再生された該第二デジタル放送情報が受信中の第一デジタル放送情報に追いつくと推定される時間より第一時間前に第一デジタル放送情報を該記憶部へ書き込みを開始し、
受信した該第二デジタル放送情報および再生された該第二デジタル放送情報からそれぞれ抽出した該第二時刻管理情報に基づいて、再生された該第二デジタル放送情報が受信中の第二デジタル放送情報に追いついた時に該記憶部へ書き込んだ該第一デジタル放送情報を該第一再生部に通常の視聴よりも高速に再生させる
ことを特徴とするデジタル放送再生装置の制御方法。
【請求項6】
デジタル放送を受信する受信部から受信した第一デジタル放送情報および第二デジタル放送情報を再生し、該第一デジタル放送情報を再生すると共に該第一デジタル放送情報に含まれる再生時刻情報である第一時刻管理情報を抽出する第一再生部と、該第一デジタル放送情報に対応する該第二デジタル放送情報を再生すると共に該第二デジタル放送情報に含まれる再生時刻情報である第二時刻管理情報を抽出する第二再生部と、該第一デジタル放送情報および該第二デジタル放送情報を記憶する記憶部とを有するデジタル放送再生装置の制御プログラムであって、
視聴中断の指示があった場合に該受信部で受信した第二デジタル放送情報を該記憶部へ書き込むステップと、
視聴再開の指示があった場合に該記憶部へ書き込んだ該第二デジタル放送情報を該第二再生部に通常の視聴よりも高速に再生させるステップと、
受信した該第一デジタル放送情報から抽出した該第一時刻管理情報および再生した該第二デジタル放送情報から抽出した該第二時刻管理情報に基づいて、再生された該第二デジタル放送情報が受信中の第一デジタル放送情報に追いつくと推定される時間より第一時間前に第一デジタル放送情報を該記憶部へ書き込みを開始するステップと、
受信した該第二デジタル放送情報および再生された該第二デジタル放送情報からそれぞれ抽出した該第二時刻管理情報に基づいて、再生された該第二デジタル放送情報が受信中の第二デジタル放送情報に追いついた時に該記憶部へ書き込んだ該第一デジタル放送情報を該第一再生部に通常の視聴よりも高速に再生させるステップと
を有することを特徴とするデジタル放送再生装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−109435(P2011−109435A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262596(P2009−262596)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】