説明

デジタル放送受信装置

【課題】
12セグから1セグへのモード切替えの際の空白時間を低減させる。
【解決手段】
本発明のデジタル放送受信装置は、12セグ放送データから第1の映像データを復号する第1の復号部と、1セグ放送データから第2の映像データを復号する第2の復号部と、前記第1、第2の映像データのいずれかを映像表示部に出力する切替部と、前記切替部を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記第1の復号部が前記第1の放送データを復号して前記切替部が前記第1の映像データを前記映像表示部に出力しているときに電界強度が低下すると、前記第2の復号部に前記第2の映像データの復号を開始させ、前記第1の放送データの符号誤りが増大すると、前記切替部に前記第1の映像データから第2の映像データの出力に切り替えさせるので、12セグ放送から1セグ放送に切り替える際の空白時間を低減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上波デジタル放送を受信するデジタル放送受信装置に関し、特に、放送データの状態に応じて1セグ・12セグ放送の切替えを行うデジタル放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョンの地上波デジタル放送では、1チャネル内で複数番組の放送データが周波数分割により多重伝送される。具体的には、1チャネル6MHz内の伝送帯域は13セグメントに分割され、さらに12セグメントと1セグメントに分けられる。ここで、セグメント数が多いほどデータの伝送容量は大きくなる。よって、12セグメント放送(以下、12セグ放送)は、固定体向けの高解像度の映像伝送に用いられる。一方、1セグメント放送(以下、1セグ放送)は、移動体向けの低解像度の映像伝送に用いられる。
【0003】
地上波デジタル放送では、放送データはOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直行周波数分割多重)方式により変調される。そして、誤り訂正符号により放送データの正確性が確保される。ここで、変調方式や誤り訂正符号の符号化率は、セグメントごとに設定できる。よって、移動体向けの1セグ放送では、符号誤りに対し12セグ放送よりも高い耐性を有する変調方式と符号化率が用いられる。
【0004】
地上波デジタル放送を受信可能なテレビジョン装置は、種々の態様で提供される。たとえば、家庭内に設置される固定体や、携帯端末や自動車等の車両に搭載される移動体として提供される。移動体のうち車載テレビジョン装置においては近時、エンタテインメント性が求められる。よって、高解像度で高品質な映像に対する要望が強い。このため、移動体向けの1セグ放送だけでなく、本来固定体向けである12セグ放送も視聴できる車載テレビジョン装置が提供されている。特許文献1には、かかる車載テレビジョン装置について記載されている。
【0005】
しかし、車載テレビジョン装置の場合、車両の移動に伴い電界強度が変動する。一般に電界強度が低下すると、C/N比(搬送波雑音比)が低下する。すると、放送データの符号誤りの増大につながる。12セグ放送で使用する符号化率や変調方式は、上述したように符号誤りに対する耐性が1セグ放送ほど高くない。よって、符号誤りが頻発すると、映像や音声の品質が悪化し、視聴に支障をきたすおそれがある。このため、12セグ放送を視聴するための動作モード(以下、12セグモードという)で動作中に符号誤りが頻発するときには、1セグ放送を視聴するための動作モード(以下、1セグモードという)に切り替える方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−336079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、放送データの復号には、圧縮されたデータの伸張処理や、誤り訂正符号による符号誤りの訂正処理が含まれる。よって、データ伝送量と復号用プロセッサの処理能力に応じた処理時間がかかる。すると、1セグモードに切り替えられたときに、復号開始から映像出力までにある程度の遅延が生じる。特に、1セグ放送は12セグ放送より高い符号化率を用いるので、データの伝送容量が少ない割には処理時間が長くなる。すると、次のような事態が生じる。まず、12セグモードで符号誤りが増大すると映像品質が低下し、視聴が困難になる。それから1セグモードに切り替えられ、上記遅延時間に起因して映像・音声が出力されない空白時間ができる。特に、映像の方がデータの伝送容量が多く、処理時間を要するため、映像の空白時間が顕著になる。例えば映像の空白時間は、5秒以上にわたる場合もある。すると、使用者に不快感を与えるおそれがある。
【0008】
この点、12セグ、1セグ放送ごとに復号専用のプロセッサを備え、常時並行して動作させれば問題はない。しかし一方では、車載テレビジョン装置には省スペース化と低コスト化が強く求められる。よって、復号専用のプロセッサを並存させるのは、機器サイズ、コストの両面で困難である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、車載テレビジョン装置における12セグから1セグへのモード切替えの際の空白時間を短縮できる、小型かつ低廉なデジタル放送受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面によれば、車両に搭載され、所定周波数を分割したセグメントにより多重伝送された放送データを受信するデジタル放送受信装置であって、第1の数の周波数セグメント群により送信される第1の放送データから第1の映像データを復号する第1の復号部と、前記第1の数より少ない第2の数の周波数セグメント群により送信される第2の放送データから第2の映像データを復号する第2の復号部と、前記第1、第2の映像データのいずれかを映像表示部に出力する切替部と、前記切替部を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記第1の復号部が前記第1の放送データを復号して前記切替部が前記第1の映像データを前記映像表示部に出力しているときに電界強度が低下すると、前記第2の復号部に前記第2の映像データの復号を開始させ、前記第1の放送データの符号誤りが増大すると、前記切替部に前記第1の映像データから第2の映像データの出力に切り替えさせるデジタル放送受信装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、12セグから1セグへのモード切替えの際の空白時間を短縮できる、小型かつ低廉な車載用のデジタル放送受信装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態における車載電子機器の概観を説明する図である。
【図2】車載電子機器10の構成を説明する図である。
【図3】復号部16の詳細な構成を説明する図である。
【図4】車載電子機器10の動作手順を説明するフローチャート図である。
【図5】モード切替えを行うときの動作手順を説明するフローチャート図である。
【図6】復号部16の動作タイミングを示すタイミングチャート図である。
【図7】変形例の動作手順を説明するフローチャート図である。
【図8】C/N比低下率と符号誤り発生率の基準値の対応関係について説明する図である。
【図9】C/N比低下率と符号誤り発生率の基準値について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0014】
本実施形態では、デジタル放送受信装置は車載テレビジョン装置に用いられる。デジタル放送受信装置は、地上デジタル波による1セグ放送と12セグ放送とを受信し、それぞれの映像・音声を出力する。また、車載テレビジョン装置は、カーナビゲーション装置と一体構成される。以下では、カーナビゲーションと一体構成された車載電子機器として説明する。
【0015】
図1は、本実施形態における車載電子機器の概観を説明する図である。図1(A)には正面図が、図1(B)には同側面図が示される。
【0016】
車載電子機器10は、表示パネル2と筐体1とからなる。表示パネル2は表示部3と操作ボタン4bとを有し、ユーザインターフェースを提供する。筐体1は、車載電子機器10の各種機能を実現するための電子回路を収容する。車載電子機器10は、車室内運転席及び助手席前方のインストルメントパネルに、筐体1が埋設された状態で設置される。また、表示パネル2は、筐体1の前面部に対し傾動可能に設けられる。これにより使用者は、表示パネル2の角度を適宜に調節できる。
【0017】
表示部3は、地図情報やテレビジョン映像を表示する。表示部3は、たとえば液晶表示パネルまたは有機ELパネルで構成される。操作ボタン4bには、車載電子機器10の各種機能が割り当てられる。また、表示部3にはタッチパネル4aが備えられる。表示部3が操作メニューを表示すると、これらに対する使用者の手指の接触をタッチパネル4aが検知する。タッチパネル4aと操作ボタン4bにより、カーナビゲーションとテレビジョンの切替え、テレビジョンのチャネルなどが入力される。このように、タッチパネル4aと操作ボタン4bは操作入力部4を構成する。
【0018】
車載電子機器10には、表示パネル2のほかに追加の表示パネルを設けてもよい。この場合、追加の表示パネルは、例えば筐体1から離間して後部座席前方部に設けられる。また、地上デジタル波を受信するアンテナは車載電子機器10の外部に設けられる。たとえば、車両のウインドシールドにアンテナパターンとして設けられる。さらに、テレビジョン音声やカーナビゲーション音声は、車室内に設置されるスピーカから出力される。
【0019】
図2は、車載電子機器10の構成を説明する図である。車載電子機器10は、デジタル放送受信装置10aとして、チューナ12、復調部14、復号部16を有する。テレビジョン機能は、デジタル放送受信装置10aと再生部20により実現される。また、車載電子機器10は、ナビゲーション機能を実現する、ナビゲーション制御部18、記憶部19を有する。表示部3、操作入力部4は、各機能共通である。
【0020】
車載電子機器10全体としては、ナビゲーション制御部18が全体の動作の制御を司る。ナビゲーション制御部18は、使用者の選択に応じてカーナビゲーションとテレビジョンの動作切替えを行う。使用者が操作入力部4に対しいずれかの機能を選択入力すると、これに対応した機能選択信号がナビゲーション制御部18に送られる。テレビジョン機能が選択されたときには、ナビゲーション制御部18から復号部16にテレビジョン起動指示信号が送られる。復号部16はこれに応答して、チューナ12、復調部14に起動指示信号を送る。また、使用者が操作入力部4に受信したチャネルを入力すると、ナビゲーション制御部18から復号部16にチャネル選択信号が送られる。すると復号部16はこれをチューナ12に送る。なお、復号部16の詳細な構成については後述する。
【0021】
まず、テレビジョンが起動された場合の動作を説明する。
【0022】
アンテナ11が地上デジタル波を受信すると、受信波がチューナ12に入力される。チューナ12は、起動指示信号に応答して起動し、チャネル選択信号に対応するチャネルの放送波を検波する。地上デジタル波では、UHF帯域における6MHz帯域が1チャネルとして割り当てられる。そしてチューナ12は、検波した放送波を中間周波数にダウンコンバートして、増幅する。
【0023】
復調部14は、起動指示信号に応答して起動すると、チューナ12が出力する放送波を復調して放送データ(デジタルデータ)を抽出する。放送データには、映像データと音声データとが含まれる。OFDM方式では、セグメントに応じて異なる変調方式が用いられる。1セグ放送ではQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)方式が用いられる。また、12セグ放送では、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)や64QAM方式が用いられる。復調部14は、それぞれの変調方式に応じて放送データを復調する。ここで得られる放送データは、送信前に符号化されたデータである。また、復調部14は、放送波のレベルに基づいて、C/N比を算出する。このとき、マルチパスの影響を排除するような演算が行われる。
【0024】
復号部16は、後に詳述するように、復調された放送データに対し復号処理を行い、符号化前の放送データを復号する。
【0025】
復号された放送データのうち映像データは、ナビゲーション制御部18に出力される。ナビゲーション制御部18は映像データのコントラスト、色変換等を行って、表示部3に映像信号を出力する。すると、表示部3が映像信号に対応した映像を出力する。ここにおいて、ナビゲーション制御部18と表示部3とが「映像表示部」に対応する。
【0026】
また、復号部16により復号された放送データのうち音声データは、再生部20に入力される。再生部20は、デジタル/アナログ変換により音声信号を生成して、電力増幅を行う。増幅された音声信号は、車室内に設けられるスピーカ22に出力される。スピーカ22は音声信号に対応した音声を出力する。
【0027】
次に、カーナビゲーションが起動された場合の動作について説明する。
ナビゲーション制御部18は、地図情報に基づき、入力される目的地への経路探索・誘導のための演算処理を行う。地図情報は、記憶部19に格納される。また、目的地は、操作入力部4から使用者により入力される。そして、ナビゲーション制御部18は、目的地までの経路や誘導情報を表示部3に表示させる。あるいは、再生部20に音声出力させる。かかるナビゲーション制御部18は、マイクロコンピュータで構成される。また記憶部19は、ハードディスクや書き換え可能な記憶媒体で構成される。
【0028】
図3は、復号部16の詳細な構成を説明する図である。復号部16は、12セグ放送用の復号部(12セグ復号部)30と、1セグ放送用の復号部(1セグ復号部)34とを有する。さらに、これらにより復号される1セグ・12セグ放送データを選択的に出力する切替部38を有する。また、復号部16は、切替部38を制御する制御部36を有する。
【0029】
12セグ復号部30は、後述の処理を実行するDSP(Digital Signal Processor)により構成される。また、1セグ放送復号部34と制御部36はそれぞれ、復号処理や後述する制御処理を実行するCPU32(Central Processing Unit)により構成される。CPU32の処理動作を記述したプログラムとOS(Operating System)とは、予めROM(Read Only Memory)40に格納される。CPU32は各プログラムにおける演算処理をRAM(Random Access Memory)42を作業領域と実行する。また、切替部38は、一例としてスイッチングトランジスタで構成される。
【0030】
12セグ復号部30は、復調部14により復調された放送データから12セグ放送データを抽出する。この放送データは映像データや音声データを含む。映像データや音声データには、放送局で変調前に誤り訂正符号の符号化、データ圧縮、データ結合を含む符号化処理が行われている。よって、12セグ復号部30は、誤り訂正符号の復号、これを用いた誤り訂正処理、データ伸張処理を行って、もとの映像データと音声データを復号する。誤り訂正処理では、符号誤りの有無を制御部36の要求に応じて通知する。12セグ復号部30は、こうした処理を行うASIC(Application Specific Integrated Circuit)やDSP(Digital Signal Processor)により構成される。
【0031】
1セグ復号部34は、復調された放送データから1セグ放送データを抽出する。そして、上記同様の誤り訂正符号の復号、これを用いた誤り訂正処理、データ伸張処理を行って、もとの映像データと音声データを復号する。
【0032】
制御部38は、復調部14からC/N比を取得する。ここで、C/N比は電界強度を示すパラメータとして用いられる。そして制御部38は、12セグモードで動作中に電界強度や符号誤りの頻度に基づいて1セグモードへの切替えを判断する。そして、切替部38に切替制御信号を送り、その切替動作を制御する。この動作は後に詳述する。
【0033】
また制御部36は、EPG (Electronic Program Guide)などの画像データを生成し、ナビゲーション制御部18に出力する。こうした画像データは、ナビゲーション制御部18で表示映像と合成される。さらに制御部38は、ナビゲーション制御部18から起動指示信号を受け取ると、これをチューナ12、復調部14に送る。また制御部38は、ナビゲーション制御部18からチャネル選択信号を受け取ると、これをチューナ12に送る。このように制御部38は、テレビジョン機能を制御するために、ナビゲーション制御部18との通信を行う。
【0034】
このように、CUP32は1セグ復号部34と制御部36の動作をマルチプログラミングにより時分割で実行する。よって、1セグ復号部34をCPU32と別構成とする場合より機器サイズとコストを低減できる。
【0035】
図4は、テレビジョン装置として動作するときの車載電子機器10の動作手順を説明するフローチャート図である。図4の手順は、テレビジョンが起動されたときに実行される。ここでは、初期設定として12セグモードが実行される。
【0036】
チューナ12は、選択されたチャネルの放送波を受信する(S2)。復調部14は、セグメントごとの変調方式に応じて放送データを復調する(S4)。復号部16は、復号処理を行って12セグ放送データ(映像データ、音声データ)を復号する(S6)。そして、切替部38は復号された12セグ放送データのうち映像データをナビゲーション制御部18に、音声データを再生部20に出力する(S8)。そして、ナビゲーション制御部18は表示部3に映像出力させ、再生部20はスピーカ22に音声を出力させる。
【0037】
車載電子機器10が12セグモードで動作中に電界強度が低下すると、放送データの符号誤りが頻発するようになる。すると、映像・音声の出力に支障をきたす。一方、1セグ放送では、12セグ放送より符号誤りに高い耐性を有する符号化率が用いられる。よって、弱電界でも映像・音声を維持できる。よって、12セグモードで符号誤りが頻発すると、1セグモードに切り替えることで、映像・音声を維持できる。ところでこのとき、1セグモードでは、データの伝送容量の割に符号誤りの訂正を含む復号処理に時間を要する。すると、復号開始から映像出力まである程度遅延する。よって、本実施形態では、次のように2段階の動作で12セグから1セグにモードを切り替える。ここで、図5、図6を用いて、かかる動作について説明する。
【0038】
図5は、12セグから1セグにモード切替えを行うときの動作手順を説明するフローチャート図である。図5の手順は、図4の手順S10で12セグ放送の映像出力が開始されると実行される。図6は、復号部16の動作タイミングを示すタイミングチャート図である。図6(A)では、横軸に時間を示し、1セグ復号部34による1セグ放送データの復号処理、1セグ復号部34による1セグ放送データの出力、及び切替部38による出力切替えのタイミングを示す。なお、ここでは特に、放送データのうち処理時間が長い映像データの処理タイミングを示す。
【0039】
制御部32は、マルチプロセスにより電界強度監視手順(図5のS20〜S23)と、符号誤り監視手順(S30〜S36)を時分割で実行する。
【0040】
まず、電界強度監視手順では、制御部32は、定期的に(例えば100ミリ秒ごとに)、C/N比を取得する(S20)。そして、C/N比が予め定めた基準値以下のときに(S21のYes)、C/N比が基準値を下回った割合(以下、C/N比低下率という)を算出する(S22)。手順S21で参照される基準値は、12セグ放送における符号誤りが頻発するような電界強度である。たとえば、19〜21dBの範囲で任意の値を用いることができる。また、手順S22では、C/N比低下率は、C/N比が基準値を下回った時間を積算し、所定の監視時間内における割合として求められる。ここで、監視時間は、本手順の処理周期である100ミリ秒より長い、たとえば数百ミリ秒〜2秒程度の範囲の任意の時間が用いられる。
【0041】
そして、制御部32は、C/N比低下率が基準値以上となったときに(S23のYes)、1セグ復号部34に1セグ放送データの復号を開始させる(S24、図6(A)の時間t1)。このとき、基準値は、符号化誤りが頻発するようなC/N比低下率であって任意の値(例えば30%)が用いられる。そして、1セグ復号部34は復号が終了した放送データを切替部38に出力する(時間t2)。
【0042】
一方、符号誤り監視手順では、制御部32は、定期的に(例えば100ミリ秒ごと)、符号誤りの有無を12セグ復号部30から取得する(図5のS30)。そして、符号誤りが検出されたときには(S32のYES)、符号誤り発生率を算出する(S36)。符号誤り発生率は、符号誤りが発生した時間を積算し、所定の監視時間内における割合として求められる。ここで、監視時間は、本手順の処理周期である100ミリ秒より長い、たとえば数百ミリ秒〜2秒程度の範囲の任意の時間が用いられる。そして、符号誤り発生率が基準値以上となると(S38のYes)、1セグ放送データの出力に切り替える(S40、図6(A)の時間t3)。またここでは、符号誤り発生率の基準値としては、映像の視聴に支障をきたすような値であって任意に設定される値(たとえば10%)が用いられる。
【0043】
上記手順で1セグ放送データの復号を開始した後、強電界領域に入り12セグ放送データの符号誤りが減少することがある。かかる場合には、図5の手順S38での判断結果は「No」である。よってこのとき、制御部32は、1セグ復号部34に1セグ放送データの復号を停止させる(S42)。そして、切替部38を12セグ放送データの出力に切り替える(S44)。
【0044】
上記の手順のように、車載電子機器10は、符号誤りの発生率に基づく切替えに先立って1セグ放送データの復号を開始させる。そうすることにより、1セグ復号部34が1セグ放送データの復号を開始したとき(図6の時間t1)から復号された放送データの出力するとき(時間t2)まで時間がかかったとしても、切替部38による12セグ放送データから1セグ放送データへの出力切替えをこれより遅らせることができる(時間t3)。よって、映像の空白時間をなくすことができる。このことは、図6(B)との比較により示される。
【0045】
図6(B)では、従来技術における、1セグ復号部34による1セグ放送データの復号処理、1セグ復号部34からの1セグ放送データの出力、及び切替部38の切替え処理のタイミングを示す。従来は、符号誤り発生率が基準値以上となったときに1セグ放送データの復号を開始し、それとともに切替部38の出力を切り替えていた(時間t3)。そして、復号処理時間の経過後に放送データが出力されていた(時間t4)。すると、時間t3から時間t4までは映像の空白時間が生じてしまう。この点、図6(A)に示したように、本実施形態によればかかる空白時間をなくすことができる。あるいは、1セグ映像データの出力タイミング(時間t2)が映像データ切替えのタイミング(時間t3)より遅れたとしても、1セグ放送データの復号開始を早めた(時間t1)ことにより、空白時間を短縮できる。よって、使用者に不快感を与えるおそれを低減できる。
【0046】
また、図5、図6(A)で示したように、C/N比低下率が基準値を下回っている間、つまり強電界領域にいる間は、制御部36は1セグ復号部34に1セグ放送データの復号を行わせない。また、一旦12セグモードに切り替えてからでも、強電界に復帰したら1セグ放送データの復号を停止する。よって、1セグ放送データの復号を行わないときにはCPU32はそのほかの動作を実行できる。このように、CPU32の処理能力を有効活用できるので、回路規模とコストを最小限におさえることができる。
【0047】
ところで、上記手順では、電界強度の境界領域にいるとき、つまりC/N比低下率が基準値付近で変動するようなときには、1セグ・12セグ間のモード切替えが頻発する場合がある。すると、映像や音声が頻繁に切り替わり、そのことにより使用者が不快感を覚えるおそれがある。よって、電界強度の境界領域では、一旦1セグモードに切り替えた後は、符号誤り発生率の基準値を高くする。そうすることにより、頻繁に画面が切り替わることを防止できる。
【0048】
図7は、かかる手順が追加されたフローチャート図である。図5に手順S39が追加されたものである。すなわち、制御部36は、手順S38で切替部38の出力を切り替えた後、符号誤り発生率の基準値を10%からこれより大きい値、例えば20%に増加させる。そうすることにより、次の処理サイクルでは符号誤りの発生率が基準値以下になりにくくなる。よって、1セグモードが維持され、頻繁な切替えが生じることを防止できる。
【0049】
さらにこのとき、C/N比低下率に基づいて符号誤り発生率の基準値を変更することができる。このときのC/N比低下率と符号誤り発生率の基準値との対応関係の例が、図8に示される。たとえば図8(A)に示すように、C/N比低下率が30%を下回っているときには、強電界領域にいることを意味する。すると、符号誤り発生率が上昇する蓋然性は小さい。かかる場合には、符号誤り発生率の基準値を変更しない。一方、C/N比低下率が30%以上のときには、弱電界領域であることを意味する。すると、符号誤り発生率が上昇する蓋然性が大きい。かかる場合には、符号誤り発生率の基準値を大きくする(たとえば20%)。そうすることにより、1セグモードが維持され、頻繁な切替えが生じることを防止できる。
【0050】
また、図8(B)に示すようなマップデータを用い、C/N比低下率30%を境界として符号誤り発生率が線形に変化するようにしてもよい。なお、図8(A)、(B)で示した対応関係は予めROM40に格納される。また、かかる対応関係はここに示した具体的な数値に限定されない。
【0051】
さらに、1セグ、12セグいずれのモードを重視するかを、使用者が設定できるようにすることもできる。次に述べる変形例では、使用者が重視するモードを設定できるようにする。具体的には、表示部3に映像の画質を重視するモード(12セグ重視のモード)と、映像の空白を避けるモード(1セグ重視のモード)とを選択肢として表示させる。そして、使用者が操作入力部4によりいずれかを選択入力する。そして、1セグ、12セグいずれかの選択されたモードで動作する割合を多くする。かかる設定は、制御部36がC/N比低下率の基準値と符号誤り発生率の基準値とを変化させることで可能となる。
【0052】
図9は、C/N比低下率と符号誤り発生率の基準値について説明する図である。上述の実施形態では、1セグ放送データの復号を開始するためのC/N比低下率の基準値が30%、放送データの出力を変更するための符号誤りの発生率の基準値が10%の場合を示した。これに対し、12セグ重視のモードの場合には、C/N比低下率の基準値、符号誤り発生率の基準値ともに大きくする。たとえば、C/N比低下率の基準値を50%、符号誤り発生率の基準値を20%とする。そうすることにより、C/N比低下率、符号誤り発生率がともに大きく上昇しない限りは、車載電子機器10は12セグモードを維持できる。一方、1セグ重視のモードの場合には、C/N比低下率の基準値、符号誤り発生率の基準値ともに小さくする。たとえば、C/N比低下率の基準値を10%、符号誤り発生率の基準値を5%とする。そうすることにより、C/N比低下率が少々上昇しただけで1セグ放送データの復号を開始でき、符号誤り発生率が少々上昇しただけで1セグ放送データの出力に切り替わるので、車載電子機器10は1セグモードに移行できる。そして、C/N比低下率の基準値、符号誤り発生率の基準値ともに大幅に改善されない限りは、1セグモードを維持できる。
【0053】
なお、ここに示した基準値は一例であって、本変形例はこれらの数値に限定されない。また、これらの基準値は予めROM40に格納される。そして、かかる基準値の変更は、1セグ重視あるいは12セグ重視のモード切替えは、テレビジョンが起動されたときに、図4の手順の任意の箇所(例えば手順S2の前)に実行する。そうすることで、電界強度が変化したときに、使用者が選択したモードで動作できる。
【0054】
なお、テレビジョンの地上波デジタル放送では、12セグモードと1セグモードで同じ番組が放送されるサイマル放送と、異なる番組が放送される非サイマル放送とがある。サイマル放送のときに12セグモードから1セグモードに切り替えると、同じ番組を視聴できる。一方、非サイマル放送のときに12セグモードから1セグモードに切り替えると、異なる番組が表示される。すると、使用者は不都合を感じるおそれがある。
【0055】
かかる問題を解決するための本実施形態の更なる変形例について説明する。制御部36は、12セグ復号部30からEPGを取得して、サイマル・非サイマル放送を判断する。そして、サイマル放送のときには上述したモード切替を実行し、非サイマル放送のときにはモード切替を実行しない。あるいは、制御部36は12セグ復号部30から復号された音声データを取得し、1セグ復号部34が復号した音声データと比較することでサイマル・非サイマル放送を判断してもよい。その場合も、判断結果に応じてモード切替えを実行する・しないを制御する。そうすることにより、使用者が不都合を感じることを防止できる。
【0056】
上述の実施形態では、電界強度の低下を検出する方法として、C/N比低下率、つまり監視時間内でC/N比が基準値以下となった時間割合を用いた。しかし電界強度の低下を検出する方法は、これに限られない。たとえば、監視時間内でC/N比が基準値以下になった回数を用いてもよい。また、電界強度そのものを計測して予め定めた基準値と比較し、監視時間内で基準値以下となった時間割合や回数を用いてもよい。また上述の実施形態では、符号誤りの増加を検出する方法として符号誤り発生率、つまり監視時間内で符号誤りが発生した時間割合を用いた。しかしこれ以外にも、たとえば監視時間内で符号誤りが発生した回数を用いてもよい。
【0057】
また上述の説明では、車載電子機器にてカーナビゲーションと一体化されたデジタル放送受信装置を例として示した。しかし本実施形態におけるデジタル放送受信装置は、テレビジョン装置単独で車両に搭載される構成にも適用できる。その場合においても、12セグ放送から1セグ放送に切り替える際の空白時間を低減させることが可能となる。
【0058】
以上、説明したとおり、本実施形態のデジタル放送受信装置によれば、12セグ放送から1セグ放送に切り替える際の空白時間を低減させることが、小型かつ低廉な構成で可能となる。
【符号の説明】
【0059】
3:表示部、4:操作入力部、10:車載電子機器、10a:デジタル放送受信装置、11:アンテナ、12:チューナ、14:復調部、16:復号部、18:ナビゲーション制御部、30:12セグ復号部、34:1セグ復号部、36:制御部、38:切替部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、所定周波数を分割したセグメントにより多重伝送された放送データを受信するデジタル放送受信装置であって、
第1の数の周波数セグメントにより送信される第1の放送データから第1の映像データを復号する第1の復号部と、
前記第1の数より少ない第2の数の周波数セグメントにより送信される第2の放送データから第2の映像データを復号する第2の復号部と、
前記第1、第2の映像データのいずれかを映像表示部に出力する切替部と、
前記切替部を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記第1の復号部が前記第1の放送データを復号して前記切替部が前記第1の映像データを前記映像表示部に出力しているときに電界強度が低下すると、前記第2の復号部に前記第2の映像データの復号を開始させ、前記第1の放送データの符号誤りが増大すると、前記切替部に前記第1の映像データから第2の映像データの出力に切り替えさせることを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御部は、C/N比が基準値以下となった時間の割合が第1の基準値以上のときに前記電界強度の低下を検出し、前記符号誤りの発生率が第2の基準値以上のときに前記符号誤りの増大を検出することを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御部は、前記第2の映像データの出力に切り替えた後に、前記第2の基準値を大きくすることを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記制御部は、選択入力に基づいて前記第1、第2の基準値を変更することを特徴とするデジタル放送受信装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第2の放送データは、前記第1の放送データより高い符号化率で符号化されたデータを有することを特徴とするデジタル放送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−258670(P2010−258670A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105139(P2009−105139)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】