説明

デハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット

【課題】cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を迅速、簡便且つ高感度で検出することを可能にするデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセットを提供する。
【解決手段】標的領域(A)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(I)と、標的配列(B)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(II)及び標的配列(C)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(III)から選ばれる少なくとも一方のプライマーセットと、を含むデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセットに関する。
【背景技術】
【0002】
トリクロロエチレン(TCE)やテトラクロロエチレン(PCE)等に代表される揮発性有機塩素化合物(VOC)の使用による土壌汚染や水質汚濁の発生に対応するための方策の一つとして、バイオレメディエーションが挙げられる。バイオレメディエーションは、汚染サイトに存在しない菌を外部から持ち込むバイオオーギュメンテーションと汚染サイトに存在する菌を利用するバイオスティミュレーションに区分される。
【0003】
塩素化エチレン類に対する嫌気性バイオスティミュレーションを実施した場合には、速やかにcis−1,2−ジクロロエチレン(cis−1,2−DCE)まで微生物分解が進行する。cis−1,2−DCEは、その後の微生物分解により塩化ビニルモノマーを経由して、毒性のないエチレンにさらに還元し、分解される。増殖速度の遅い細菌であるデハロコッコイデス(Dehalococcoides)属の一部の細菌が、cis−1,2−DCEの還元及び分解に関与する唯一の嫌気性微生物として知られている。
【0004】
塩化ビニルモノマーは、強い発ガン性を有し、その毒性はPCE、TCE又はDCEよりも高い。
PCEやTCEなどの汚染物質を浄化するために嫌気性バイオスティミュレーションを適用した場合、cis−1,2−DCE以降の分解が思うように進まず、より毒性の高い塩化ビニルモノマーが土壌中または地下水中に長期間蓄積する結果となっているケースが多々見受けられる。
【0005】
そのため、嫌気性バイオスティミュレーションによる浄化方法の適合性を判断する際には、cis−1,2−DCEや塩化ビニルモノマーの脱塩素化反応を行うデハロコッコイデス属細菌の汚染サイトにおける存在の有無等を、核酸増幅によるDNA検出技術により、予め確かめることが重要となる。
デハロコッコイデス属細菌の汚染サイトにおける存在の有無を検出する方法として、デハロコッコイデス属細菌の16S rRNA遺伝子を標的として、Real-time PCR法により定量分析を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、cis−1,2−DCE分解遺伝子として、デハロコッコイデス属 VS株の保有するvcrA遺伝子及びデハロコッコイデス属 BAV1株の保有するbvcA遺伝子がそれぞれ報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
核酸増幅方法としては、PCR法のほかに、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法が知られており、該LAMP法を用いて、迅速且つ正確にE型肝炎ウイルスを検出する方法等が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−154521号公報
【特許文献2】特開2008−154566号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ritalahti, K. M. et al., Applied and Environmental Microbiology,(2006) vol.72,2765−2774
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び非特許文献1には、Real-time PCR法を用いた核酸増幅方法が記載されている。しかしながら、Real-time PCR法を用いるためには、特定の施設のみでの使用に限られるLightCyclerやSmartCycler等の高価な機器が必要とされ、簡便性に欠けるという問題点がある。
また、上記特許文献1及び非特許文献1に記載のプライマーは、Real-time PCR法用のプライマーであるため、LAMP法のプライマーセットとして用いることはできない。
【0010】
特許文献2には、LAMP法を用いたE型肝炎ウイルスの検出方法が記載されているが、ここに記載されているプライマーセットは、E型肝炎ウイルスの検出のためのプライマーセットであり、当然のことながら他の生物の核酸増幅方法には利用することができない。また、特許文献2に記載のプライマーを用いた方法では、濁度測定により、簡便に増幅の有無を確認する定性評価を行うことは可能であるが、定量評価を行うことはできない。さらに、土壌又は地下水から得られたサンプルを用いて、LAMP法により核酸増幅を行ったという例はこれまでのところ知られていない。
【0011】
これらの現状を踏まえ、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の存在を、土壌汚染対策を実施している敷地あるいはサイト内等の様々な場所において高い感度で、迅速且つ簡便に検出するとともに、定量できる方法の開発が待ち望まれていた。
【0012】
本発明は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、高い感度で、迅速且つ簡便に検出することを可能にするデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット、これを用いるデハロコッコイデス属細菌の検出方法を提供することを課題とする。また、本発明は、当該検出方法を用いた浄化対象領域の浄化計画を設計する方法を提供することを課題とする。また、本発明は、当該検出方法を用いた浄化対象領域の浄化方法を提供することを課題とする。さらに本発明は、当該検出用プライマーセットを用いたデハロコッコイデス属細菌検出用試薬キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下のとおりである。
<1> デハロコッコイデス属細菌における16S rRNA遺伝子をコードする配列番号1で示される塩基配列のうち315番目から1410番目の塩基配列に含まれる標的領域(A)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(I)と、
デハロコッコイデス属細菌におけるbvcA遺伝子をコードする配列番号2で示される塩基配列のうち508番目から1260番目の塩基配列に含まれる標的配列(B)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(II)及びvcrA遺伝子をコードする配列番号3で示される塩基配列のうち1260番目から1684番目の塩基配列に含まれる標的配列(C)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(III)から選ばれる少なくとも一方のプライマーセットと、
を含むデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。
<2> 前記標的配列(A)が配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7で表される塩基配列を含み、前記標的配列(B)が配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11で表される塩基配列を含み、前記標的配列(C)が配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15で表される塩基配列を含む<1>に記載のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。
<3> 前記プライマーセット(I)が、配列番号16から配列番号19で表される塩基配列を含む<1>又は<2>に記載のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。
<4> 前記プライマーセット(II)が、配列番号20から配列番号23で表される塩基配列を含む<1>から<3>のいずれかに記載のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。
<5> 前記プライマーセット(III)が、配列番号24から配列番号27で表される塩基配列を含む<1>から<4>のいずれかに記載のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。
<6> <1>から<5>のいずれかに記載のプライマーセットを用いて、LAMP法により試料核酸を増幅して、デハロコッコイデス属細菌を検出することを含むデハロコッコイデス属細菌の検出方法。
<7> 前記検出が、濁度又は蛍光強度を測定することを含む<6>に記載のデハロコッコイデス属細菌の検出方法。
<8> さらに、前記検出することにより得られた結果に基づいて、デハロコッコイデス属細菌を定量することを含む<6>又は<7>に記載のデハロコッコイデス属細菌の検出方法。
<9> 浄化対象領域からの試料核酸を準備すること、
該試料核酸から<6>から<8>のいずれかに記載の検出方法を用いてデハロコッコイデス属細菌を検出すること、及び
検出結果に基づき土壌又は地下水の浄化期間を算出することを含む浄化対象領域の浄化計画を設計する方法。
<10> (I)浄化対象領域から得られた評価用試料を用いて、cis−1,2−DCEの濃度を測定すること、
(II)<6>から<8>のいずれかに記載の検出方法を用いて、前記評価用試料中のデハロコッコイデス属細菌を検出すること、
(III)前記検出方法により検出された前記デハロコッコイデス属細菌の細菌数を算出すること、
(IV)前記検出方法により検出された前記デハロコッコイデス属細菌によるcis−1,2−DCEの分解速度を算出すること、
(V)前記算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数と前記算出されたcis−1,2−DCE分解速度とに基づき、前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な施工期間を算出すること、及び
(VI)前記浄化に必要な施工期間に基づき、浄化のための工法を選択し実行することを含む浄化対象領域の浄化方法。
<11> 前記(I)の後に、<6>から<8>のいずれかに記載の検出方法を用いて、前記評価用試料中のデハロコッコイデス属細菌を検出すること、
前記検出方法により検出された前記デハロコッコイデス属細菌の細菌数を算出すること、
前記算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数に基づき、デハロコッコイデス属細菌によるcis−1,2−DCEの分解速度を予測すること、
前記算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数及び前記予測されたcis−1,2−DCE分解速度に基づき、前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な予測施工期間を得ること、
前記予測施工期間を得た後に、前記(II)から前記(IV)を行うこと、
前記(II)から前記(IV)で得られた結果に基づき、前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な施工期間を確認すること、
前記(VI)を行うこと、
を含む<10>に記載の浄化対象領域の浄化方法。
<12> さらに、前記(VI)の後に、前記浄化対象領域のcis−1,2−DCEの濃度をモニタリングすること、及び
<6>から<8>のいずれかに記載の検出方法を用いて、前記浄化対象領域のデハロコッコイデス属細菌の細菌数をモニタリングすることを含む<10>又は<11>に記載の浄化対象領域の浄化方法。
<13> <1>から<5>のいずれかに記載のプライマーセットを含むデハロコッコイデス属細菌検出用試薬キット。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、迅速、簡便且つ高感度で検出することを可能にするデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット、これを用いるデハロコッコイデス属細菌の検出方法を提供することができる。また、本発明は、当該検出方法を用いた浄化対象領域の浄化計画を設計する方法を提供することができる。また、本発明は、当該検出方法を用いた浄化対象領域の浄化方法を提供することができる。さらに本発明は、当該検出用プライマーセットを用いたデハロコッコイデス属細菌検出用試薬キットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明にかかるデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセットは、デハロコッコイデス属細菌における16S rRNA遺伝子をコードする配列番号1で示される塩基配列のうち315番目から1410番目の塩基配列に含まれる標的領域(A)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(I)と、デハロコッコイデス属細菌におけるbvcA遺伝子をコードする配列番号2で示される塩基配列のうち508番目から1260番目の塩基配列に含まれる標的配列(B)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(II)及びvcrA遺伝子をコードする配列番号3で示される塩基配列のうち1260番目から1684番目の塩基配列に含まれる標的配列(C)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(III)から選ばれる少なくとも一方のプライマーセットと、を含むものである。
本発明にかかるデハロコッコイデス属細菌の検出方法は、前記デハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセットを用いてcis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を検出することを含む方法である。
本発明にかかる浄化対象領域の浄化計画を設計する方法は、浄化対象領域からの試料核酸を準備すること、該試料核酸から前記検出方法を用いてデハロコッコイデス属細菌を検出すること、及び検出結果に基づき土壌又は地下水の浄化期間を算出することを含む方法である。
本発明にかかるデハロコッコイデス属細菌検出用試薬キットは、デハロコッコイデス属細菌を検出するためのプライマーセットを含むものである。
【0016】
本発明において、検出対象となる試料中の試料核酸又はプライマーの個々の配列に関して、これら互いの相補的な関係に基づいて記述された事項は、特に断らない限り、それぞれの配列と、各配列に対して相補的な配列とについても適用される。各配列に対して相補的な当該配列について本発明の事項を適用する際には、当該相補的な配列が認識する配列について、当業者にとっての技術常識の範囲内で、対応する本明細書に記載された配列に相補的な配列として、明細書全体を読み替えるものとする。
【0017】
本発明においてLAMP法とは、Loop−Mediated Isothermal Amplificationの略であり、4種類のプライマー(即ち、FIPプライマー、F3プライマー、B3プライマー及びBIPプライマー)で構成されるプライマーセットを用いて、一定温度で反応させて試料核酸を増幅させる方法である。本発明において使用されるLAMP法は一般的に当業者に公知の方法、またはその一部を改変した方法などを含んでよい。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、地下水とは、地中の土砂や岩石のすきまや割れ目などに存在する水の総称を意味する。
本明細書において、バイオスティミュレーションとは、土着微生物を活性化させて浄化する方法を意味し、例えば、汚染土壌や地下水に生息する、油分を分解する能力を有する微生物に、栄養剤となる化合物を与えて微生物を増殖、活性化させ、汚染物質である油分の分解を促進する方法などを含む。
本明細書において、バイオオーグメンテーションとは、外来微生物及び栄養剤となる化合物を導入して浄化する方法を意味し、例えば、外部で大量に増殖、活性化させた、油分を分解する能力を有する微生物を、栄養剤となる化合物と共に汚染土壌又は地下水に注入して浄化する方法などを含む。
本明細書において、細菌数とは、LAMP法により検出される標的領域のコピー数を意味する。
以下、本発明について説明する。
【0018】
<デハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット>
本発明のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット(以下、単に「検出用プライマーセット」ともいう。)は、デハロコッコイデス属細菌における16S rRNA遺伝子をコードする配列番号1で示される塩基配列のうち315番目から1410番目の塩基配列に含まれる標的領域(A)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(I)と、デハロコッコイデス属細菌におけるbvcA遺伝子をコードする配列番号2で示される塩基配列のうち508番目から1260番目の塩基配列に含まれる標的配列(B)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(II)及びvcrA遺伝子をコードする配列番号3で示される塩基配列のうち1260番目から1684番目の塩基配列に含まれる標的配列(C)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(III)から選ばれる少なくとも一方のプライマーセットとを含む検出用プライマーセットである。
【0019】
本発明の検出用プライマーセットは、デハロコッコイデス属細菌における16S rRNA遺伝子と、デハロコッコイデス属細菌におけるbvcA遺伝子及びvcrA遺伝子から選ばれる少なくとも一方の遺伝子とのそれぞれにおける特定の標的配列をLAMP法により増幅するものである。
すなわち、前記標的領域(A)と、前記標的領域(B)及び前記標的領域(C)から選ばれる少なくとも一方の標的領域とを増幅させることにより、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の存在を適正に評価することが可能になると推測される。加えて、プライマーセット(I)と、前記プライマーセット(II)及び前記プライマーセット(III)から選ばれる少なくとも一方のプライマーセットとを用いることにより、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、迅速、簡便且つ高感度で検出することが可能になると推測される。
【0020】
配列表の配列番号1で示される塩基配列は、NCBIのGenBank accession No.AF004928の1番目から1434番目の塩基からなる塩基配列であり、デハロコッコイデス・エテノジェネス(Dehalococcoides ethenogenes)由来の16S rRNA遺伝子をコードする部分的な塩基配列である。該塩基配列に含まれる標的領域(A)を標的とすることにより、検出対象となる試料中に含まれるデハロコッコイデス属細菌の存在を漏れなく拾うことができるものと推測される。
【0021】
標的領域(A)は、配列番号1で示される塩基配列のうち、315番目から1410番目の塩基からなる塩基配列に含まれる領域であり、その範囲の全部又は一部とすることができる。
また、標的領域(A)は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の存在をより適正に評価するという観点より、下記表1に示される配列表の配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7で表される塩基配列を含んでいることが好ましい。
【0022】
【表1】

【0023】
プライマーセット(I)は、前記標的配列(A)をLAMP法により増幅させるプライマーセットである。
【0024】
プライマーセット(I)におけるF3プライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、10mer〜40merであることが好ましく、16mer〜30merであることがより好ましく、18mer〜23merであることがさらに好ましい。
【0025】
プライマーセット(I)におけるB3プライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、10mer〜40merであることが好ましく、16mer〜30merであることがより好ましく、18mer〜23merであることがさらに好ましい。
【0026】
プライマーセット(I)におけるFIPプライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、30mer〜60merであることが好ましく、35mer〜55merであることがより好ましく、40mer〜50merであることがさらに好ましい。
【0027】
プライマーセット(I)におけるBIPプライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、30mer〜60merであることが好ましく、35mer〜55merであることがより好ましく、40mer〜50merであることがさらに好ましい。
【0028】
プライマーセット(I)は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、下記表2に示される配列表の配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19で表される各塩基配列を有する4種のプライマーを少なくとも含むものであることが好ましい。なお、プライマーセット(I)は、前記4種のプライマーの他に、標的領域(A)にハイブリダイズするものの、前記4種のプライマーとは異なる塩基配列を有するプライマーを含んでいてもよい。
【0029】
検出感度の観点より、プライマーセット(I)は、配列表の配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19で表される各塩基配列からなる4種のプライマーより成るものであることが更に好ましい。なお、プライマーセット(I)はこれら4種のプライマーで構成されていればよく、前記4種のプライマーと同種のプライマーがさらに含まれていてもよい。
【0030】
【表2】

【0031】
本発明における前記プライマーセット(I)としては、例えば配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19で表される各塩基配列からなる4種のプライマーのぞれぞれと相同性が認められる各塩基配列からなる4種のオリゴヌクレオチドより成るセットも、本発明におけるプライマーセット(I)に包含される。
相同性が認められるとは、例えば配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19で表される各塩基配列からなる4種のプライマーのぞれぞれと同等程度の作用を示せばよい。好ましくは配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19で表される各塩基配列からなる4種のプライマーとそれぞれ、80%以上の相同性、より好ましくは90%以上の相同性、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する4種のプライマーで構成されるプライマーセットが挙げられる。80%以上の相同性を示すことにより、前記標的領域(A)を迅速、簡便且つ高感度で増幅することができる等の利点がある。
【0032】
また、本発明における前記プライマーセット(I)としては、例えば配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19で表される各塩基配列からなる4種のプライマーのぞれぞれと同等程度の作用を示すものであれば、配列番号16の相補配列、配列番号17の相補配列、配列番号18の相補配列及び配列番号19の相補配列で表される各塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする4種のオリゴヌクレオチドより成るセットも本発明におけるプライマーセット(I)に包含される。
【0033】
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd (J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989) に記載の方法等に従って行うことができる。
ストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19mM〜約40mM、好ましくは約19mM〜約20mMで、温度が約50℃〜約70℃、好ましくは約60℃〜約65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合がもっとも好ましい。
【0034】
さらに、本発明における前記プライマーセット(I)としては、例えば配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19で表される各塩基配列からなる4種のプライマーのそれぞれと同等程度の作用を示すものであれば、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19で表される各塩基配列に塩基が挿入、欠失又は置換した4種のオリゴヌクレオチドのセットも、本発明におけるプライマーセット(I)に包含される。
塩基が挿入、欠失又は置換されている場合、その挿入、欠失又は置換の位置は、特に限定されない。挿入、欠失又は置換した塩基の数としては1塩基又は2塩基以上が挙げられ、プライマーセットに含まれる各プライマーそれぞれの全体の長さによって異なるが、例えば1塩基〜10塩基、好ましくは1塩基〜5塩基が挙げられる。
【0035】
配列表の配列番号2で示される塩基配列は、NCBIのGenBank accession No.AY563562の1番目から1551番目の塩基からなる塩基配列であり、デハロコッコイデス属 BAV株のbvcA遺伝子をコードする塩基配列である。bvcA遺伝子は、塩化ビニルからエチレンへの脱塩素反応を担う酵素をコードしている。該遺伝子をコードする塩基配列に含まれる標的領域(B)を標的とすることにより、検出対象となる試料中に含まれるcis−1,2−DCE分解能を有する細菌の存在を漏れなく拾うことができるものと推測される。
【0036】
標的領域(B)は、配列番号2で示される塩基配列のうち、508番目から1260番目の塩基からなる塩基配列に含まれる領域であり、その範囲の全部又は一部とすることができる。
また、標的領域(B)は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の存在をより適正に評価するという観点より、下記表3に示される配列表の配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11で表される塩基配列を含んでいることが好ましい。
【0037】
【表3】

【0038】
プライマーセット(II)は、前記標的配列(B)をLAMP法により増幅させるプライマーセットである。
【0039】
プライマーセット(II)におけるF3プライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、10mer〜40merであることが好ましく、16mer〜30merであることがより好ましく、18mer〜23merであることがさらに好ましい。
【0040】
プライマーセット(II)におけるB3プライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、10mer〜40merであることが好ましく、16mer〜30merであることがより好ましく、18mer〜23merであることがさらに好ましい。
【0041】
プライマーセット(II)におけるFIPプライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、30mer〜60merであることが好ましく、35mer〜55merであることがより好ましく、40mer〜50merであることがさらに好ましい。
【0042】
プライマーセット(II)におけるBIPプライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、30mer〜60merであることが好ましく、35mer〜55merであることがより好ましく、40mer〜50merであることがさらに好ましい。
【0043】
プライマーセット(II)は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、下記表4に示される配列表の配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23で表される各塩基配列を有する4種のプライマー、又は下記表5に示される配列表の配列番号24、配列番号25、配列番号26及び配列番号27で表される各塩基配列を有する4種のプライマーのいずれかを含むものであることが好ましい。
なお、プライマーセット(II)は、前記4種のプライマーの他に、標的領域(B)にハイブリダイズするものの、前記4種のプライマーとは異なる塩基配列を有するプライマーを含んでいてもよい。
【0044】
検出感度の観点より、プライマーセット(II)は、配列表の配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23で表される各塩基配列からなる4種のプライマーを含むものであることが更に好ましい。また、プライマーセット(II)は、配列表の配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23で表される各塩基配列からなる4種のプライマーより成るものであることが最も好ましい。なお、プライマーセット(II)はこれら4種のプライマーで構成されていればよく、前記4種のプライマーと同種のプライマーがさらに含まれていてもよい。
【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
本発明における前記プライマーセット(II)としては、例えば配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23で表される各塩基配列からなる4種のプライマー又は、配列番号24、配列番号25、配列番号26及び配列番号27で表される各塩基配列からなる4種のプライマーのぞれぞれと相同性が認められる各塩基配列からなる4種のオリゴヌクレオチドより成るセットも、本発明におけるプライマーセット(II)に包含される。
なお、相同性の程度等については、前記プライマーセット(I)についての説明を引用するものとする。
【0048】
また、本発明における前記プライマーセット(II)としては、例えば配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23で表される各塩基配列からなる4種のプライマー又は、配列番号24、配列番号25、配列番号26及び配列番号27で表される各塩基配列からなる4種のプライマーのぞれぞれと同等程度の作用を示すものであれば、配列番号20の相補配列、配列番号21の相補配列、配列番号22の相補配列及び配列番号23の相補配列で表される各塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする4種のオリゴヌクレオチドより成るセットも本発明におけるプライマーセット(II)に包含される。
なお、ハイブリダイゼーションやストリンジェントの条件については、前記プライマーセット(I)についての説明を引用するものとする。
【0049】
さらに、本発明における前記プライマーセット(II)としては、例えば配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23で表される各塩基配列からなる4種のプライマー又は、配列番号24、配列番号25、配列番号26及び配列番号27で表される各塩基配列からなる4種のプライマーのぞれぞれと同等程度の作用を示すものであれば、配列番号20、配列番号21、配列番号22及び配列番号23で表される各塩基配列に塩基が挿入、欠失又は置換した4種のオリゴヌクレオチドのセットも、本発明におけるプライマーセット(II)に包含される。
なお、挿入、欠失又は置換等の範囲については、前記プライマーセット(I)についての説明を引用するものとする。
【0050】
配列表の配列番号3で示される塩基配列は、NCBIのGenBank accession No.AY322364の1番目から1980番目の塩基からなる塩基配列であり、デハロコッコイデス属 VS株のvcrA遺伝子をコードする塩基配列である。vcrA遺伝子は、bvcA遺伝子と同様に塩化ビニルからエチレンへの脱塩素反応を担う酵素をコードしている。該遺伝子をコードする塩基配列に含まれる標的領域(C)を標的とすることにより、検出対象となる試料中に含まれるcis−1,2−DCE分解能を有する細菌の存在を漏れなく拾うことができるものと推測される。
【0051】
標的領域(C)は、配列番号3で示される塩基配列のうち、1260番目から1684番目の塩基からなる塩基配列に含まれる領域であり、その範囲の全部又は一部とすることができる。
また、標的領域(C)は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の存在をより適正に評価するという観点より、下記表6に示される配列表の配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15で表される塩基配列を含んでいることが好ましい。
【0052】
【表6】

【0053】
プライマーセット(III)は、前記標的配列(C)をLAMP法により増幅させるプライマーセットである。
【0054】
プライマーセット(III)におけるF3プライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、10mer〜40merであることが好ましく、15mer〜30merであることがより好ましく、18mer〜23merであることがさらに好ましい。
【0055】
プライマーセット(III)におけるB3プライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、10mer〜40merであることが好ましく、15mer〜30merであることがより好ましく、18mer〜23merであることがさらに好ましい。
【0056】
プライマーセット(III)におけるFIPプライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、30mer〜60merであることが好ましく、35mer〜55merであることがより好ましく、40mer〜50merであることがさらに好ましい。
【0057】
プライマーセット(III)におけるBIPプライマーの塩基数は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、30mer〜60merであることが好ましく、35mer〜55merであることがより好ましく、40mer〜50merであることがさらに好ましい。
【0058】
プライマーセット(III)は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速、簡便且つ高感度で検出することができるという観点より、下記表7に示される配列表の配列番号28、配列番号29、配列番号30及び配列番号31で表される各塩基配列を有する4種のプライマーを少なくとも含むものであることが好ましい。なお、プライマーセット(III)は、前記4種のプライマーの他に、標的領域(C)にハイブリダイズするものの、前記4種のプライマーとは異なる塩基配列を有するプライマーを含んでいてもよい。
【0059】
検出感度の観点より、プライマーセット(III)は、配列表の配列番号28、配列番号29、配列番号30及び配列番号31で表される各塩基配列からなる4種のプライマーより成るものであることが更に好ましい。なお、プライマーセット(III)はこれら4種のプライマーで構成されていればよく、前記4種のプライマーと同種のプライマーがさらに含まれていてもよい。
【0060】
【表7】



【0061】
本発明における前記プライマーセット(III)としては、例えば配列番号28、配列番号29、配列番号30及び配列番号31で表される各塩基配列からなる4種のプライマーのぞれぞれと相同性が認められる各塩基配列からなる4種のオリゴヌクレオチドより成るセットも、本発明におけるプライマーセット(III)に包含される。
なお、相同性の程度等については、前記プライマーセット(I)についての説明を引用するものとする。
【0062】
また、本発明における前記プライマーセット(III)としては、例えば配列番号28、配列番号29、配列番号30及び配列番号31で表される各塩基配列からなる4種のプライマーのぞれぞれと同等程度の作用を示すものであれば、配列番号28の相補配列、配列番号29の相補配列、配列番号30の相補配列及び配列番号31の相補配列で表される各塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする4種のオリゴヌクレオチドより成るセットも本発明におけるプライマーセット(III)に包含される。
なお、ハイブリダイゼーションやストリンジェントの条件については、前記プライマーセット(I)についての説明を引用するものとする。
【0063】
さらに、本発明における前記プライマーセット(III)としては、配列番号28、配列番号29、配列番号30及び配列番号31で表される各塩基配列からなる4種のプライマーのぞれぞれと同等程度の作用を示すものであれば、配列番号28、配列番号29、配列番号30及び配列番号31で表される各塩基配列に塩基が挿入、欠失又は置換した4種のオリゴヌクレオチドのセットも、本発明におけるプライマーセット(III)に包含される。
なお、挿入、欠失又は置換等の範囲については、前記プライマーセット(I)についての説明を引用するものとする。
【0064】
本発明のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセットは、前記プライマーセット(I)と、前記プライマーセット(II)及び前記プライマーセット(III)から選ばれる少なくとも一方のプライマーセットとを含む。
cis−1,2−DCE分解に関連する遺伝子をコードする塩基配列を増幅可能な、前記プライマーセット(II)又は前記プライマーセット(III)を含むことにより、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を高感度で検出することが可能になると推測される。
【0065】
本発明のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセットの好ましい態様としては、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、より迅速に、より高感度で且つ簡便に検出することができるという観点より、前記プライマーセット(I)に加えて、前記プライマーセット(II)及び前記プライマーセット(III)を含む。
【0066】
前記検出用プライマーセットは、デハロコッコイデス属細菌の検出方法に使用することができる。デハロコッコイデス属細菌の検出方法について、以下に説明する。
【0067】
<デハロコッコイデス属細菌の検出方法>
本発明にかかるデハロコッコイデス属細菌の検出方法(以下、単に「検出方法」ともいう。)は、前記検出用プライマーセットを用いて、LAMP法により試料核酸を増幅して、デハロコッコイデス属細菌を検出することを含むデハロコッコイデス属細菌の検出方法である。
本発明にかかるデハロコッコイデス属細菌の検出方法は、前記検出用プライマーセットを用いて、LAMP法による試料核酸の増幅をすることにより、デハロコッコイデス属細菌を検出するものである。当該検出方法により、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を高い感度で、迅速且つ簡便に検出することができる。
【0068】
試料核酸は、検出対象となる試料から公知の方法に従い準備することが可能である。準備する方法としては、検出対象となる試料からの試料核酸を調製するものであれば、どのような方法でもよく、例えば化学的溶菌(Proteinase Kなど)処理、物理的破砕(ビーズ破砕など)処理、アルカリ溶解、ボイリングなどの方法で単離した核酸を、フェノール・クロロホルム抽出、磁性ビーズ、シリカメンブレンなどを用いて精製する方法が挙げられる。
【0069】
抽出する方法としては、特に制限はされないが、例えばフェノール−クロロホルム法などの液−液抽出法、担体を用いる固−液抽出法などを使用することができる。また、市販の核酸抽出キットISOIL for Beads Beating(ニッポンジーン製)、Extrap Soil DNA Kit Plus ver.2(日鉄環境エンジニアリング製)などを利用することも可能である。
【0070】
検出対象となる試料は、血液、組織、細胞、動物、植物のような生体由来試料、食品、排水、土壌又は地下水等の広範囲な場所から採取することができるが、バイオスティミレーションを実施するという観点から、デハロコッコイデス属細菌が本来存在しうる土壌又は地下水から採取することが好ましい。
採取の方法は、特に限定されない。例えば、土壌から試料を採取する場合にはロータリーボーリング、打撃貫入式ボーリング、ハンドオーガを利用する方法を用いることができる。地下水から試料を採取する場合には後述する井戸からエアーリフトポンプ、水中ポンプ、ピストンポンプ、ベーラーなどを利用する方法を用いることができる。土壌又は地下水から採取するという観点からは分析試料の二次汚染を防止する方法により採取するという観点より、ボーリング時にはケーシングやセメンチングを実施することが好ましい。
【0071】
試料核酸を、LAMP法により増幅させる場合には、例えば、次のような条件で行うことが好ましい。
LAMP法により試料核酸を増幅させる場合の温度としては、例えば約60℃〜約65℃が挙げられ、62℃〜64℃であることが好ましい。
反応時間としては、例えば0.5時間〜1.5時間が挙げられ、1時間〜1.4時間がより好ましい。
【0072】
試料核酸を増幅させる際に使用する試薬としては前記プライマーセットの他に、ポリメラーゼ、バッファー、dNTPs、MgSO等が挙げられる。
使用する試薬の濃度は、反応容量、反応時間などに合わせて適宜調製することが可能である。
【0073】
試料核酸を増幅させる際に使用するポリメラーゼは、公知のものを適宜使用することができる。例えば、Bst DNA Polymerase(栄研化学社製)、Csa DNA Polymerase(ニッポンジーン社製)などを使用することができる。
正確な濁度又は蛍光強度の測定を行うという観点からは、前記プライマーセット及び前記ポリメラーゼを除く、核酸増幅に必要な全ての試薬が混合されたReaction Mix.(RM)(栄研化学社製)を用いることが好ましい。
【0074】
なお、プライマーセットとしては、前述した検出用プライマーセットについての説明を引用するものとする。
【0075】
デハロコッコイデス属細菌を検出することは、前記検出用プライマーセットを用いてLAMP法により増幅させた増幅産物の有無を確認することを含む。前記検出用プライマーセットを用いることによりcis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を高い感度で迅速且つ簡便に検出することが可能となる。
前記検出用プライマーセットを用いてLAMP法により増幅させた増幅産物の有無を確認することは、例えば単に増幅産物の有無を検出することだけではなく、該増幅産物の量を測定すること等を含んでいてもよい。
前記増幅産物の有無を確認するための方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、濁度を測定する方法、蛍光目視検出方法、増幅された塩基配列を特異的に認識する標識オリゴヌクレオチドや蛍光性インターカレーターを用いる方法、反応終了後の反応液をそのままアガロースゲル電気泳動にかける方法などによって確認することができる。
【0076】
前記検出の好ましい態様としては、濁度又は蛍光強度を測定することが含まれる。
濁度を測定することは、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の存在を、土壌汚染対策を実施している敷地あるいはサイト内等の仮設された施設等においても簡便に測定することができるとともに、迅速且つ高感度に検出することもできるという点で好ましい。
【0077】
濁度を測定するための方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、Loopamp濁度測定装置RT−160C(栄研化学社製)、Loopampリアルタイム濁度測定装置LA−200(テラメックス株式会社製)、Realoop−30(モリテックス社製)等を使用することにより、濁度を測定することができる。蛍光強度を測定するための方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、GenieII(ニッポンジーン社製)等を使用することにより、蛍光強度を測定することができる。
【0078】
本発明のデハロコッコイデス属細菌の検出方法の好ましい態様としては、前記検出することにより得られた結果に基づいて、デハロコッコイデス属細菌を定量することが挙げられる。
このようなデハロコッコイデス属細菌の定量は、前記検出用プライマーセットを用いて得られた前記増幅産物の量の測定結果に基づいて行うものであるため、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の量を正確に把握することができる。
前記デハロコッコイデス属細菌の定量は、例えば、増幅産物の量を単に測定するものであってもよく、該増幅産物から具体的なcis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の細菌数を算出するものであってもよい。
前記増幅産物の量を測定する方法としては、特に制限されず公知の方法を用いることができる。例えば、一例として、前記検出することにより得られた結果に基づいて、検量線を作成して定量する方法、内部標準を用いる方法、段階希釈試料を用いたMPN(最確値)法等の公知の方法が挙げられる。
【0079】
前記検量線を作成して定量する方法は、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の存在量を正確に把握できるというだけではなく、簡便であるという点でも好ましい。
ここで、検量線を作成して定量する方法の場合、前記試料核酸について、LAMP法で検出する対象領域を含む領域をPCR法により増幅させ、増幅産物量を測定した試料を適宜希釈し、例えば一反応あたり1×10、1×10、1×10、1×10、1×10コピーずつ添加した系を調製してLAMP法を行うことにより、定量のための検量線が作成できる。ただし、検量線の作成方法は、これに制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
【0080】
前記増幅産物の量から具体的なcis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の細菌数を算出する場合には、前記検量線を作成して定量する方法に続き、測定時の希釈倍率や土壌含水比から地下水1ml当り、あるいは乾燥土壌1g当りの細菌数として算出する。なお、前記細菌数の算出方法は、これに限定されるものではない。
前記デハロコッコイデス属細菌の検出方法は、各種試料中におけるデハロコッコイデス属細菌の検出、浄化対象領域の浄化計画を設計する方法などの様々な方法に使用することができる。デハロコッコイデス属細菌の検出方法を用いて浄化対象領域の浄化計画を設計する方法について、以下に説明する。
【0081】
<浄化対象領域の浄化計画を設計する方法>
浄化対象領域の浄化計画を設計する方法としては、浄化対象領域からの試料核酸を準備すること、該試料核酸から前記検出方法を用いてデハロコッコイデス属細菌を検出すること、及び検出結果に基づき土壌又は地下水の浄化期間を算出することを含む。
本発明の浄化対象領域の浄化計画を設計する方法は、前記プライマーセットを用いた前記検出方法を、土壌又は地下水の浄化期間の算出に適用するものである。前記検出方法を適用することにより、浄化対象領域に存在するcis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を、高い感度で、迅速且つ簡便に検出できる。これにより、前記デハロコッコイデス属細菌によって土壌又は地下水の浄化を行う期間をより正確に算出することができるため、成功確度の高い浄化対象領域の浄化計画を、迅速に立てることが可能になる。
【0082】
本発明において浄化対象領域とは、揮発性有機塩素化合物(VOC)、重金属類、農薬、PCB、油等の汚染物質による汚染が疑われる領域を意味する。具体的には、前記汚染物質よる汚染が疑われる土壌、前記汚染物質による汚染が疑われる地下水等が挙げられる。中でも前記汚染物質としては、揮発性有機塩素化合物(VOC)が挙げられ、特に、PCE、TCE、DCE、cis−1,2−DCEが挙げられる。
【0083】
本発明において浄化とは、土壌又は地下水における前記汚染物質の濃度を、土壌汚染対策法に定められた基準以下とすることを意味する。具体的には、該汚染物質を分解し、該汚染物質の濃度を低減させることが挙げられる。基準としては具体的には、土壌においては土壌含有量基準、土壌溶出量基準が挙げられ、地下水においては地下水基準が挙げられる。
浄化計画とは、前記汚染物質による土壌汚染や水質汚濁の発生が確認された場所である浄化対象領域において、土壌汚染や水質汚濁を浄化するために立案された計画を意味する。具体的には、井戸配置の計画や地下水の揚水処理装置の設計等が挙げられる。また、前記浄化計画には、浄化対象領域の土壌汚染や水質汚濁に関する基本事項、施工数量、浄化品質、施工期間、薬剤量、薬剤注入条件、注入およびモニタリングに関する工程管理、資機材、施工費用、安全管理、周辺環境管理を含む計画等が包含される。
揮発性有機塩素化合物(VOC)等の汚染物質の使用による土壌汚染や水質汚濁の発生の確認は、例えば、土壌汚染対策法に基づく表層ガス調査等により行うことができる。
【0084】
浄化対象領域からの試料核酸の準備としては、浄化対象領域から、検出対象となる試料を採取し、該試料中から試料核酸を調製すること等が挙げられる。
検出対象となる試料を採取する方法や、該試料中から試料核酸を調製する方法については、前記検出方法においての説明を引用するものとする。
また、前記試料核酸から前記検出方法を用いてデハロコッコイデス属細菌を検出することについても、前記検出方法においての説明を引用するものとする。
【0085】
前記検出結果に基づき土壌又は地下水の浄化期間を算出するとは、前記検出方法で得られた結果に基づき、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の細菌数と、該デハロコッコイデス属細菌によるcis−1,2−DCEの分解速度と、エチレン生成濃度とを算出し、該デハロコッコイデス属細菌がcis−1,2−DCEをエチレンに分解するまでの期間を算出することを意味する。
【0086】
前記cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の細菌数を算出する方法としては、前記検量線を作成して定量する方法を含む。具体的には、前記検量線を作成して定量する方法に続き、測定時の希釈倍率や土壌含水比から地下水1ml当り、あるいは乾燥土壌1g当りの細菌数として算出する等の方法により、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の数を算出することができる。
【0087】
cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌によるcis−1,2−DCEの分解速度を算出する方法としては、公知の方法を使用することができ、特に制限はされるものではない。例えば、浄化対象領域の一部区画において井戸に浄化薬剤の注入を行い、一定期間経過後のデハロコッコイデス属細菌の細菌数と、PCE、TCE及びcis−1,2−DCEの濃度とを測定し、cis−1,2−DCE分解速度を算出する方法、あるいは同じく一定期間経過後のエチレン生成速度からcis−1,2−DCE分解量を算出する方法等により、cis−1,2−DCE分解速度の算出を行うことができる。また、浄化対象領域で浄化施工前にデハロコッコイデス属細菌を確認し、デハロコッコイデス属細菌の細菌数に、前記浄化対象領域以外で得られたデハロコッコイデス属細菌に基づく既往のcis−1,2−DCE分解速度を乗じることにより算出を行うことができる。
ここで前記浄化薬剤としては、後述するバイオスティミュレーション用薬剤が挙げられる。
前記井戸としては公知のものを使用することができる。また、その設置方法などについては公知の方法を適用することができる。例えば、特開2011-099212号公報に記載されたものを適用することができる。
【0088】
上記で得られた前記cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の細菌数と、該細菌によるcis−1,2−DCEの分解速度との結果より、該細菌による土壌又は地下水の浄化期間の算出を行う方法としては、公知の方法を使用することができ、特に制限されるものではない。例えば、上記で得られた前記cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の細菌数と、該細菌によるcis−1,2−DCE分解速度との結果より、PCE、TCE等の各VOCの分解の過程で生じるcis−1,2−DCEの濃度を算出する。その後、算出により得られたcis−1,2−DCEの濃度及び現在の土壌又は地下水中のcis−1,2−DCEの濃度より、浄化対象領域で分解が必要なcis−1,2−DCEの総量を算出する。この結果及び浄化対象領域におけるデハロコッコイデス属細菌によるcis−1,2−DCE分解速度より、デハロコッコイデス属細菌による土壌又は地下水の浄化期間の算出を行うことができる。
【0089】
また、本発明における浄化対象領域の浄化計画を設計する方法の好ましい態様としては、算出したデハロコッコイデス属細菌による土壌又は地下水の浄化に必要な施工期間及び浄化のための目標期間を比較することと、具体的な浄化のための方法を設計することとをさらに含んでいてもよい。
前記浄化に必要な施工期間を算出する方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、浄化に必要な施工期間は、上記で算出した前記浄化期間に加え、準備工事又は浄化実施後のモニタリングに必要な期間等を加味することにより算出することが可能である。
前記浄化のための目標期間としては、土壌汚染対策法に定められている汚染物質の暴露リスクの遮断についての緊急性から求められる期間、浄化対象領域における土地の形質変更を伴う土地利用計画又は形質変更の実施予定時期を考慮して許容される期間などが挙げられる。
【0090】
前記具体的な浄化のための方法を設計することは、前記浄化期間と、前記浄化のための目標期間とを比較した結果を用いて、バイオスティミュレーションの施工又はバイオスティミュレーション以外の方法の施工のいずれかを選択することを含む。
前記具体的な浄化のための方法の設計としては、例えば、前記浄化のための目標期間の方が、前記浄化のための目標期間に比べて短い場合には、前記具体的な浄化のための方法として、バイオスティミュレーションを施工する。一方、前記浄化期間の方が、前記浄化のための目標期間に比べて長い場合には、前記具体的な浄化のための方法として、バイオスティミュレーション以外の方法(例えば、汚染部分の掘削除去など)を施工する。
【0091】
前記バイオスティミュレーションの施工とは、特に限定はされないが、例えばバイオスティミュレーション用薬剤(以下、単に「薬剤」とも言う。)の注入と、デハロコッコイデス属細菌の細菌数やVOC濃度の観測とを行うことを目的として浄化対象領域に井戸を設置すること、バイオスティミュレーション用薬剤を該井戸から注入すること、汚染物質の分解促進を行うこと、デハロコッコイデス属細菌の細菌数およびVOC濃度をモニタリングすること等が挙げられる。
前記バイオスティミュレーション用薬剤としては、易生分解性の有機性物質および栄養塩類であれば特に限定されないが、例えばポリ乳酸エステル、酵母抽出物質、高級脂肪酸エステルなどの有機物および硝酸アンモニウム、尿素、リン酸一水素カリウムなどの栄養塩類が挙げられる。
【0092】
前記薬剤浸透評価とは、特に限定はされないが、例えば前記井戸に試験的に前記薬剤を注入し、注入速度、周辺井戸までの到達範囲、到達濃度などを評価すること等が挙げられる。
前記薬剤移流解析とは、特に限定はされないが、例えば調査から得られた浄化対象領域の地盤条件に基づいて移流拡散解析を行うことにより、前記薬剤の浸透速度、浸透範囲、滞留時間及び濃度などを解析するもの等が挙げられる。
【0093】
前記バイオスティミュレーションの施工には、薬剤浸透評価及び薬剤移流解析を前記バイオスティミュレーションの施工の前に行うことを含んでいてもよい。
バイオスティミュレーション以外の方法の施工としては、バイオオーギュメンテーションや、特開2011−167646号公報に記載のような酸化剤を用いて浄化する方法などが挙げられる。
バイオオーギュメンテーションの施工は、特開2009-213427号公報等に記載の方法に従い実施することができる。
【0094】
<浄化対象領域の浄化方法>
浄化対象領域の浄化方法としては、(I)浄化対象領域から得られた評価用試料を用いて、cis−1,2−DCEの濃度を測定すること(cis−1,2−DCE濃度測定工程)、(II)前記検出方法を用いて、前記評価用試料中のデハロコッコイデス属細菌を検出すること(細菌の検出工程)、(III)前記検出方法により検出された前記デハロコッコイデス属細菌の細菌数を算出すること(細菌数算出工程)、(IV)前記検出方法により検出された前記デハロコッコイデス属細菌によるcis−1,2−DCEの分解速度を算出すること(分解速度算出工程)、(V)前記算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数と前記算出されたcis−1,2−DCE分解速度とに基づき、前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な施工期間を算出すること(施工期間算出工程)、及び(VI)前記浄化に必要な施工期間に基づき、浄化のための工法を選択し実行すること(浄化工程)を含む。
【0095】
本発明の浄化対象領域の浄化方法は、前記プライマーセットを用いた前記検出方法を、浄化対象領域の浄化に適用するものである。前記検出方法を適用することにより、浄化対象領域に存在するcis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の細菌数を、高い感度で、迅速且つ簡便に検出できる。これにより、前記デハロコッコイデス属細菌によって行われる、浄化対象領域の浄化を行う期間をより正確に算出することができるため、成功確度の高い浄化のための工法を選択し実行することが可能になる。
【0096】
本発明において評価用試料とは、前記浄化対象領域に含まれるいずれかの場所から採取された試料を意味する。評価用試料の採取は、浄化対象領域において1ヶ所のみ行ってもよく、複数箇所で行ってもよい。評価用試料の採取量は、各種分析項目に必要な量に応じて決定すればよい。例えば、地下水中のデハロコッコイデス属細菌の検出時には、250mlの評価用試料を採取することが挙げられる。
【0097】
また、評価用試料を採取する場合、汚染物質が存在する所定の深さにおける評価用試料の採取を行えばよい。複数箇所から評価用試料を採取する場合には、所定の間隔、例えば、間隔1m或いはそれ以下、間隔5m、間隔10m、間隔30m等で行うことができる。
【0098】
評価用試料を採取する手段としては、公知の掘削装置を用いることができる。例えば特開2005-087840号公報に記載の装置や、興亜開発株式会社製のジオプローブ、株式会社ワイビーエム製のECO−3V等のように、所定の深さにおける評価用試料採取が可能であれば、いずれの装置を用いてもよい。なお、前記評価用試料を前記検出方法に供する場合には、前記評価用試料より、前記試料核酸を準備すればよい。前記試料核酸及び該試料核酸の準備の方法などについては、前記浄化対象領域の浄化計画を設計する方法においての説明を引用するものとする。
【0099】
なお、前記(I)cis−1,2−DCE濃度測定工程に用いられる評価用試料としては、何らの処理も施されていないものだけではなく、デハロコッコイデス属細菌の細菌数又はVOC濃度のモニタリングのために、前記バイオスティミュレーション用薬剤が予め注入されたものも包含する。
【0100】
cis−1,2−DCEの濃度測定は、公知の方法に従い測定することが可能である。例えば、「地下水に含まれる調査対象物質の量の測定方法を定める件」(平成15年3月6日環境省告示第17号)に準拠した方法等でcis−1,2−DCEの濃度を測定できる。
【0101】
前記浄化対象領域、前記検出方法を用いたデハロコッコイデス属細菌の検出、デハロコッコイデス属細菌の細菌数の算出及びデハロコッコイデス属細菌によるcis−1,2−DCE分解速度の算出については、前記浄化対象領域の浄化計画を設計する方法においての説明を引用するものとする。
【0102】
前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な施工期間の算出は、浄化対象領域におけるcis−1,2−DCEの濃度、算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数及び算出されたcis−1,2−DCE分解速度に基づき算出することができる。具体的には、浄化対象領域におけるcis−1,2−DCEの濃度を、cis−1,2−DCE分解速度あるいは算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数から算出されたcis−1,2−DCE分解速度あるいはエチレン生成速度から算出されたcis−1,2−DCE分解速度で除することにより施工期間を確認することができる。
【0103】
浄化のための工法としては、公知の方法を用いることができ、特に制限されない。例えば、バイオスティミュレーション、バイオオーグメンテーション又は特開2011−167646号公報に記載のような酸化剤を用いた工法、還元剤を用いた工法、揚水ばっ気法等が挙げられる。前記バイオスティミュレーションの工法については、前記浄化対象領域の浄化計画を設計する方法においての説明を引用するものとする。
【0104】
浄化対象領域の浄化方法のより好ましい態様として、前記(I)cis−1,2−DCE濃度測定工程の後に、前記検出方法を用いて、前記評価用試料中のデハロコッコイデス属細菌を検出すること(細菌の検出工程)、前記検出方法により検出された前記デハロコッコイデス属細菌の細菌数を算出すること(細菌数の算出工程)、前記算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数に基づき、デハロコッコイデス属細菌によるcis−1,2−DCEの分解速度を予測すること(分解速度予測工程)、前記算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数及び前記予測されたcis−1,2−DCE分解速度に基づき、前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な予測施工期間を得ること(施工期間予測工程)を行い、前記(II)細菌の検出工程から前記(IV)分解速度算出工程を行うこと、前記(II)から前記(IV)で得られた結果に基づき、前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な施工期間を確認すること(施工期間確認工程)、前記(VI)浄化工程と、を含んでいることが挙げられる。
【0105】
すなわち、浄化対象領域の浄化方法のより好ましい態様としては、前記(II)細菌の検出工程から前記(VI)浄化工程の前に、予め分解速度予測工程及び施工期間予測工程を行うことを含んでいてもよい。これにより、その後に行う施工期間確認工程の精度が高くなり、より最適な工法を選択することができるという利点がある。
より好ましい態様における(I)cis−1,2−DCE濃度測定工程、(II)細菌の検出工程、(III)細菌数の算出工程、(IV)分解速度算出工程及び(VI)浄化工程については、前記と同義である。また、より好ましい態様における前記細菌の検出工程及び前記細菌数の算出工程は、前記(II)細菌の検出工程及び(III)細菌数算出工程においての説明を引用するものとする。
【0106】
前記分解速度予測工程は、浄化対象領域における算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数に基づき分解速度を予測するものである。
前記施工期間予測工程は、浄化対象領域におけるcis−1,2−DCEの濃度、算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数及び予測されたcis−1,2−DCE分解速度に基づき施工期間を予測するものである。具体的には、浄化対象領域におけるcis−1,2−DCEの濃度を、算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数から予測されたcis−1,2−DCE分解速度で除することにより施工期間を予測することができる。デハロコッコイデス属細菌による予測されたcis−1,2−DCE分解速度については、過去に報告されている分解速度(例えば、He, J. et al., Applied and Environmental Microbiology,(2003) vol.69,996−1003等)を用いることができる。
【0107】
前記施工期間確認工程は、前記(II)細菌の検出工程から前記(IV)分解速度算出工程で得られた結果に基づき、前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な施工期間を確認するものである。すなわち、浄化対象領域におけるcis−1,2−DCEの濃度、算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数及び算出されたcis−1,2−DCE分解速度に基づき確認することができる。具体的には、浄化対象領域におけるcis−1,2−DCEの濃度を、cis−1,2−DCE分解速度で除すること、算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数から算出されたcis−1,2−DCE分解速度で除すること、又はエチレン生成速度から算出されたcis−1,2−DCE分解速度で除することにより施工期間を確認することができ、前記施工期間予測工程において予測した施工期間を適宜修正することが可能となる。
【0108】
なお、本発明にかかる浄化対象領域の浄化方法は、前記(I)cis−1,2−DCE濃度測定工程から前記(VI)浄化工程を含んでいればよい。前記(I)から前記(VI)の一連の工程には、前記(I)から前記(VI)の一連の工程に加えて再度前記(I)から前記(VI)の一連の工程を繰り返して行ってもよく、必要に応じて前記(I)から前記(VI)の一連の工程に加えて前記(I)から前記(VI)のうちの特定の工程のみを繰り返し行ってもよい。
【0109】
浄化対象領域の浄化方法のさらに好ましい態様としては、前記(VI)浄化工程の後に、前記浄化対象領域のcis−1,2−DCEの濃度をモニタリングすること(cis−1,2−DCE濃度モニタリング工程)、及び前記検出方法を用いて、前記浄化対象領域のデハロコッコイデス属細菌の細菌数をモニタリングすること(細菌数モニタリング工程)をさらに含んでいることが挙げられる。
【0110】
前記cis−1,2−DCE濃度モニタリング工程としては、前記(I)cis−1,2−DCE濃度測定工程において用いた方法と同様の方法を適用することにより、浄化のための工法を選択した後の前記浄化対象領域におけるcis−1,2−DCE濃度をモニタリングすることが可能となる。
【0111】
前記細菌数モニタリング工程としては、前記細菌数算出工程において用いた方法と同様の方法を適用することにより、浄化のための工法を選択した後の前記浄化対象領域における前記デハロコッコイデス属細菌の細菌数をモニタリングすることが可能となる。
前記cis−1,2−DCE濃度モニタリング工程及び前記細菌数モニタリング工程を行う場合には、前記浄化のための工法を実行後、1ヶ月〜3ヶ月ごとに行うことがより好ましい。
【0112】
浄化対象領域の浄化方法において、前記cis−1,2−DCE濃度モニタリング工程及び前記細菌数モニタリング工程を行うことにより、浄化対象領域における浄化の完了及び別工法への切り替えを判定することが可能となる。
【0113】
浄化対象領域における浄化の完了は、PCE、TCE、cis−1,2−DCE濃度により判定が可能である。例えば、地下水中のPCE濃度、TCE濃度、cis−1,2−DCE濃度がそれぞれ0.01mg/L以下、0.03mg/L以下、0.04mg/L以下である場合には、浄化対象領域における浄化は完了したものと判定することが可能となる。
【0114】
また、浄化施工開始時から90日後以降にcis−1,2−DCE濃度が低下が見られず、かつ細菌数に増加が見られず、かつ地下水中からエチレンが検出されない場合には、バイオオーグメンテーション、特開2011−167646号公報に記載のような酸化剤を用いて浄化する方法、還元剤を用いて浄化する方法、揚水ばっ気にて浄化する方法等の別工法に切り替えることを検討する。
【0115】
<デハロコッコイデス属細菌検出用試薬キット>
本発明のデハロコッコイデス属細菌検出用試薬キットは、上述したデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセットを含む。
本発明のデハロコッコイデス属細菌検出用試薬キットは、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセットを含むものである。そのためデハロコッコイデス属細菌検出用試薬キットを用いることにより、高感度で、迅速且つ簡便にcis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の検出を行うことができるなどの利点がある。
【0116】
本発明におけるデハロコッコイデス属細菌検出用試薬キットは、前記デハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセットの他に、本発明の検出方法における核酸増幅を行うのに必要とされる試薬をさらに含んでいてもよい。
試薬としては、前記プライマーセットの他に、ポリメラーゼ、バッファー、dNTPs、MgSO等が挙げられる。
なお、ポリメラーゼやバッファーについては、前述した検出方法においての説明を引用するものとする。
【0117】
プライマーセット及びその他の試薬は、別個に収容されていてもよいし、それらの一部が混合物とされていてもよい。また、プライマーセットは、4種のプライマーから成るものであるが、これら4種のプライマーは、それぞれ別個に収容されていてもよいし、それらの一部が混合物とされていてもよい。
なお、「別個に収容」とは、プライマーセット及びその他の試薬が、必要に応じて相互に非接触状態を維持できるように区分けされたものであればよく、必ずしも独立して取り扱い可能な個別の容器に収容される必要はない。4種のプライマーが別個に収容される場合も同様である。
【0118】
本発明のデハロコッコイデス属細菌検出用試薬キットは、前記プライマーセットを用いてcis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を検出することが記載された取扱い説明書、又は検出用試薬キットに含まれる若しくは追加的に含むことが可能な各種の試薬について記載された使用説明書を含むことが好ましい。
【実施例】
【0119】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
【0120】
[実施例1]プライマーセット(I−1)の評価
試料核酸を含む溶液(サンプル溶液)を、以下の方法により調製した。地下水試料を0.20μmポリカーボネイト製フィルターにて吸引ろ過し、微生物がトラップされたフィルターを、ビーズチューブに加えてビーズ破砕を行った。その後、DNA抽出キットExtrap Soil DNA Kit Plus ver.2(日鉄環境エンジニアリング社製)を用いてDNAを抽出し、サンプル溶液とした。
【0121】
次に、滅菌マイクロチューブに、表8に記載の試薬を混合し、マスターミックスを調製した。プライマーとして表9に示すプライマーを用いた。
【0122】
【表8】

【0123】
【表9】

【0124】
1テストサンプルにつき23.0μLを、Loopamp反応チューブに注入した。該反応チューブに、上記で調製したサンプル溶液を2μL添加し、全量を25μLにした。
反応チューブを、Loopamp濁度測定装置RT−160C(栄研化学社製)にセットし、63℃、80分反応させた後、ポリメラーゼを失活させるためにさらに80℃、5分反応させた。
【0125】
その結果、表9に記載のプライマーセットを使用した場合には、濁度増加量の微分値が0.008に達するまでの増幅立ち上がり時間が1×10コピーの系で2459秒と短かった。また、低濃度域における検出精度が、1×10コピーの系で3601秒と反応時間内での安定した検出が確認された。さらに、初期の遺伝子量に応じた増幅反応が、初期コピー数と立ち上がり時間との良好な相関関係(R=0.9935)を示し、優れていた。
【0126】
[実施例2から実施例4]プライマーセット(II−1)、(II−2)及び(III−1)の評価
実施例1において表9に記載のプライマーセットを、表10、表11及び表12に記載のプライマーセットに変更した以外は、実施例1と同様にして、表10、表11及び表12に記載のプライマーセットの評価を行った。
【0127】
【表10】

【0128】
【表11】

【0129】
【表12】

【0130】
その結果、表10に記載のプライマーセット(II−1)を使用した場合には、濁度増加量の微分値が0.008に達するまでの増幅立ち上がり時間が1×10コピーの系で1811秒と短かった。また、低濃度域における検出精度が、1×10コピーの系で2309秒と反応時間内での安定した検出が確認された。さらに、初期の遺伝子量に応じた増幅反応が、初期コピー数と立ち上がり時間との良好な相関関係(R=0.9461)を示し、優れていた。
【0131】
表11に記載のプライマーセット(II−2)を使用した場合には、濁度増加量の微分値が0.008に達するまでの増幅立ち上がり時間が1×10コピーの系で2676秒であったが、低濃度域における検出精度は、1×10コピーの系で3416秒と反応時間内での安定した検出が確認された。さらに、初期の遺伝子量に応じた増幅反応が、初期コピー数と立ち上がり時間との良好な相関関係(R=0.9906)を示し、好ましかった。
【0132】
また、表12に記載のプライマーセット(III−1)を使用した場合には、濁度増加量の微分値が0.008に達するまでの増幅立ち上がり時間が1×10コピーの系で1689秒と短かった。また、低濃度域における検出精度が、1×10コピーの系で3259秒と反応時間内での安定した検出が確認された。さらに、初期の遺伝子量に応じた増幅反応が、初期コピー数と立ち上がり時間との良好な相関関係(R=0.9963)を示し、優れていた。
【0133】
[実施例5]デハロコッコイデス属細菌の検出方法
TCE、cis−1,2−DCEにより汚染された地下水が存在するサイトにおいて、汚染された深度の帯水層に設置した複数の井戸より栄養薬剤(EDC、エコサイクル社製)を注入し、嫌気性バイオスティミュレーションによる浄化を行った。
サイトに設置した10箇所の観測井戸(観測井戸A〜観測井戸J)より採水器を用いて地下水試料(地下水A〜地下水J)を採取した。地下水試料を0.20μmポリカーボネイト製フィルターにて吸引ろ過し、微生物のトラップされたフィルターをビーズチューブに加えてビーズ破砕を行い、DNA抽出キットExtrap Soil DNA Kit Plus ver.2(日鉄環境エンジニアリング社製)を用いてDNAを抽出して試料核酸とした。
次に、上記表8に記載のマスターミックス23.0μLを、Loopamp反応チューブに注入した。ここで、プライマーとしては上記表9に記載のプライマーセットを用いた。該反応チューブに、上記で調製したサンプル溶液を2μL添加し、全量を25μLにした。反応チューブを、Loopamp濁度測定装置RT−160C(栄研化学社製)にセットし、63℃、80分反応させた後、ポリメラーゼを失活させるためにさらに80℃、5分反応させた。各反応チューブの濁度の増幅曲線から地下水試料中のデハロコッコイデス属細菌の細菌数を定量した。
【0134】
その結果、下記表13に示した通り、10箇所の観測井戸のいずれからもデハロコッコイデス属細菌が検出され、本サイトにおいて広範囲にデハロコッコイデス属細菌が存在していることが明らかとなった。なお、表9に記載のプライマーセットは、実施例5に記載の条件下においては、濁度増加量の微分値が0.008に達するまでの増幅立ち上がり時間が1×10コピーの系で2552秒と短かった。また、低濃度域における検出精度が、1×10コピーの系で、3717秒と反応時間内での安定した検出が確認された。さらに、初期の遺伝子量に応じた増幅反応が、初期コピー数と立ち上がり時間との良好な相関関係(R=0.9245)を示し、優れていた。
【0135】
【表13】

【0136】
[実施例6]地下水の浄化計画の設計方法
PCE、TCE、cis−1,2−DCEにより汚染された地下水が存在するサイトの一部区画において、汚染された深度の帯水層(PCE=0.01mg/L以下、TCE=0.01mg/L以下、cis−1,2−DCE=0.05mg/L、デハロコッコイデス属細菌の細菌数1.0×101copies/ml以下)に設置した井戸より栄養薬剤(EDC、エコサイクル社製)を注入する嫌気性バイオスティミュレーションを実施し、一定期間ごとにVOC類、デハロコッコイデス属細菌の細菌数の計測を行った。試料核酸の調製、LAMP法によるデハロコッコイデス属細菌の細菌数の定量は実施例1に準じて行った。
【0137】
薬剤注入箇所の近傍の井戸の地下水をモニタリングし、試験終了時までにデハロコッコイデス属細菌の細菌数は4.5×10copies/mlまで増加し(下記表14)、エチレン生成速度0.0007mg/L/day、cis−1,2−DCE分解速度0.0023mg/L/dayの結果が得られた。
以上の結果を用いることにより、本サイトにおいて最も高濃度の地点(PCE=0.02mg/L、TCE=0.04mg/L、cis−1,2−DCE=0.08mg/L)でcis−1,2−DCEの脱塩素化に必要な浄化期間は薬剤浸透後53日間と算出された。
本サイトでは、cis−1,2−DCEの分解速度とあわせ、薬剤注入後にデハロコッコイデス属細菌の細菌数がcis−1,2−DCEの完全脱塩素化が進む目安となる1×10copies/ml以上まで増加していたことから、嫌気バイオスティミュレーションによる地下水浄化が適用可能であると判断した。
【0138】
なお、表9に記載のプライマーセットは、実施例6に記載の条件下においては、濁度増加量の微分値が0.008に達するまでの増幅立ち上がり時間が1×10コピーの系で2469秒と短かった。また、低濃度域における検出精度が、1×10コピーの系で、3044秒と反応時間内での安定した検出が確認された。さらに、初期の遺伝子量に応じた増幅反応が、初期コピー数と立ち上がり時間との良好な相関関係(R=0.9684)を示し、優れていた。
【0139】
【表14】

【0140】
以上の結果より、本発明のプライマーセットを用いれば迅速、簡便且つ高感度でcis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌を検出することができることが明らかになった。また、本発明の検出方法を適用することにより、土壌又は地下水の浄化期間をより正確に算出することができるため、成功確度の高い浄化対象領域の浄化計画を、迅速に立てることが可能になるものと考えられる。また、本発明の検出方法を適用することにより、cis−1,2−DCE分解能を有するデハロコッコイデス属細菌の細菌数を、高い感度で、迅速且つ簡便に検出することができるため、浄化対象領域の浄化を行う期間をより正確に算出することができ、成功確度の高い浄化のための工法を選択し実行することが可能になるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デハロコッコイデス属細菌における16S rRNA遺伝子をコードする配列番号1で示される塩基配列のうち315番目から1410番目の塩基配列に含まれる標的領域(A)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(I)と、
デハロコッコイデス属細菌におけるbvcA遺伝子をコードする配列番号2で示される塩基配列のうち508番目から1260番目の塩基配列に含まれる標的配列(B)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(II)及びvcrA遺伝子をコードする配列番号3で示される塩基配列のうち1260番目から1684番目の塩基配列に含まれる標的配列(C)をLAMP法により増幅させるプライマーセット(III)から選ばれる少なくとも一方のプライマーセットと、
を含むデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。
【請求項2】
前記標的配列(A)が配列番号4、配列番号5、配列番号6及び配列番号7で表される塩基配列を含み、前記標的配列(B)が配列番号8、配列番号9、配列番号10及び配列番号11で表される塩基配列を含み、前記標的配列(C)が配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15で表される塩基配列を含む請求項1に記載のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。
【請求項3】
前記プライマーセット(I)が、配列番号16から配列番号19で表される塩基配列を含む請求項1又は請求項2に記載のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。
【請求項4】
前記プライマーセット(II)が、配列番号20から配列番号23で表される塩基配列を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。
【請求項5】
前記プライマーセット(III)が、配列番号28から配列番号31で表される塩基配列を含む請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のデハロコッコイデス属細菌検出用プライマーセット。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプライマーセットを用いて、LAMP法により試料核酸を増幅して、デハロコッコイデス属細菌を検出することを含むデハロコッコイデス属細菌の検出方法。
【請求項7】
前記検出が、濁度又は蛍光強度を測定することを含む請求項6に記載のデハロコッコイデス属細菌の検出方法。
【請求項8】
さらに、前記検出することにより得られた結果に基づいて、デハロコッコイデス属細菌を定量することを含む請求項6又は請求項7に記載のデハロコッコイデス属細菌の検出方法。
【請求項9】
浄化対象領域からの試料核酸を準備すること、
該試料核酸から請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の検出方法を用いてデハロコッコイデス属細菌を検出すること、及び
検出結果に基づき土壌又は地下水の浄化期間を算出することを含む浄化対象領域の浄化計画を設計する方法。
【請求項10】
(I)浄化対象領域から得られた評価用試料を用いて、cis−1,2−DCEの濃度を測定すること、
(II)請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の検出方法を用いて、前記評価用試料中のデハロコッコイデス属細菌を検出すること、
(III)前記検出方法により検出された前記デハロコッコイデス属細菌の細菌数を算出すること、
(IV)前記検出方法により検出された前記デハロコッコイデス属細菌によるcis−1,2−DCEの分解速度を算出すること、
(V)前記算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数と前記算出されたcis−1,2−DCE分解速度とに基づき、前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な施工期間を算出すること、及び
(VI)前記浄化に必要な施工期間に基づき、浄化のための工法を選択し実行することを含む浄化対象領域の浄化方法。
【請求項11】
前記(I)の後に、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の検出方法を用いて、前記評価用試料中のデハロコッコイデス属細菌を検出すること、
前記検出方法により検出された前記デハロコッコイデス属細菌の細菌数を算出すること、
前記算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数に基づき、デハロコッコイデス属細菌によるcis−1,2−DCEの分解速度を予測すること、
前記算出されたデハロコッコイデス属細菌の細菌数及び前記予測されたcis−1,2−DCE分解速度に基づき、前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な予測施工期間を得ること、
前記予測施工期間を得た後に、前記(II)から前記(IV)を行うこと、
前記(II)から前記(IV)で得られた結果に基づき、前記デハロコッコイデス属細菌による前記浄化対象領域の浄化に必要な施工期間を確認すること、
前記(VI)を行うこと、
を含む請求項10に記載の浄化対象領域の浄化方法。
【請求項12】
さらに、前記(VI)の後に、前記浄化対象領域のcis−1,2−DCEの濃度をモニタリングすること、及び
請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の検出方法を用いて、前記浄化対象領域のデハロコッコイデス属細菌の細菌数をモニタリングすることを含む請求項10又は請求項11に記載の浄化対象領域の浄化方法。
【請求項13】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプライマーセットを含むデハロコッコイデス属細菌検出用試薬キット。

【公開番号】特開2013−111001(P2013−111001A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259330(P2011−259330)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】