説明

デバイスパターン形成方法、デバイスパターン、およびデバイスパターン形成装置

【課題】液体吐出ヘッドを用いたデバイスパターン形成方法において、製造工程および製造コストを抑えつつ、基板上に均一な膜厚のデバイスパターンを形成可能にする。
【解決手段】液体吐出ヘッドと基板とを相対的に移動させつつ基板上に、液体吐出ヘッドから液体を吐出させてデバイスパターンPT12を形成する。このデバイスパターンPT12の形成は、予め設定した一定の幅および長さを有する基本パターンPTを形成すると共に、基本パターンPTの少なくとも一部に連結されるように突出パターンPT13を形成することにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドから吐出される液滴を基板上に着弾させることによって形成されるデバイスパターン、そのデバイスパターン形成方法およびデバイスパターン形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に電子回路などのデバイスパターンを形成する方法としては、フォトリソグラフィ法、スクリーン印刷法などが知られている。これらの方法は、いずれもデバイスパターンの原版となる版を作製し、その版に形成されるパターンを基板上に転写もしくは投影するものとなっている。
【0003】
また、デバイスパターンの構成成分を含有した液滴を液体吐出ヘッドから基板上に直接吐出することによりデバイスパターンを形成する、いわゆるインクジェット方式のパターン形成方法も実施されつつある。このインクジェット方式によるパターン形成方法は、基板上のパターン形成位置に液滴を着弾させてパターンを形成することから、版を必要とせず、多品種少量生産に容易に対応することができるものとして注目されている。
【0004】
一方、近年の電子回路などの高密度化に伴ない、デバイスパターンには微細化および細線化が求められる傾向にある。しかし、現在のインクジェット方式によるパターン形成方法では、微細なデバイスパターンの形成において、デバイスパターンのパターン精度を十分に出すことが難しく、必要とするデバイス特性を得ることが困難になりつつある。そこで、特許文献1及び特許文献2では、基板上にデバイスパターンの形状に応じたバンクを作製し、バンク内に液滴を吐出することによって、バンク形状に準じたデバイスパターンを形成する方法が開示されている。また、特許文献3には、基板上に所定ピッチで複数の液滴を互いに間隙をあけて吐出し、吐出した液滴を基板上で濡れ拡がらせて互いに重ならせることにより、液滴により形成される線状体の線幅を変更する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、インクジェット方式によって基板上に吐出された微小液体の乾燥は速く、特に、基板上の塗布領域における端部は、他の部分より速く乾燥するため、形成されたパターン内に乾燥時間差が生じる。この乾燥時間差は、パターン内の膜厚ムラを引き起こし、導電率、抵抗値などの電気特性の不均一を惹起させる。こうした不具合を解消する技術として、特許文献4には、所定のデバイスパターン形成領域の外側にデバイスパターンと電気的に分離されたデバイスパターンをインクジェット方式により形成することが開示されている。
【0006】
また、デバイスパターンには、様々なパターン幅やパターン形状が要求される。このため、インクジェット方式により、デバイスパターンを形成する場合には、基板の表面に親液性や撥液性など与えるための処理、液滴材料の選択、および吐出された液滴量などの制御が行われている。しかし、このような処理および制御にあっても、デバイスパターンのパターン幅を幅広化したり、デバイスパターン縁部形状に凹凸を生じさせずに安定化させたりすることは困難である。このため、特許文献5には、最初の工程で複数のパターンを形成し、次工程で最初の複数のパターン間に液滴を吐出して一体化させることにより、幅広で縁部形状の良好なデバイスパターンを形成するという方法が提案されている。
【0007】
また、特許文献6には、隔壁によって画成されたパターン形成領域に対し、ノズルを複数回走査させながら液滴を吐出させ、それらの液滴をパターン内で濡れ拡がらせることにより、所望のパターン幅を得る技術が開示されている。
【0008】
さらに、特許文献7には、インクジェット方式によって、直線パターン、傾斜線パターンのいずれにおいても、断線のない連続性に優れたパターンを形成する技術が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−330164号公報
【特許文献2】特開2004−337780号公報
【特許文献3】特開2003−266669号公報
【特許文献4】特開2005−013986号公報
【特許文献5】特開2004−290958号公報
【特許文献6】特開2004−358298号公報
【特許文献7】特開2004−000915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記各特許文献には以下のような問題が存在する。
【0011】
特許文献1および2に開示されているように、基板上にバンクを形成しバンク内に液滴を吐出する方法では、基板上に予めフォトリソグラフィ法や印刷法等を用いてバンクを形成する必要がある。このため、バンクを形成するためのパターンの版を作製しなければならず、多品種少量生産への対応が容易であるというインクジェット方式特有の利点が損なわれる。さらに、基板上にバンクを作製する工程が必要となることから、コストアップ、歩留り低下を招く虞もある。
【0012】
特許文献3に開示されているように、基板上に所定ピッチで複数の液滴を互いに間隙をあけて吐出する方法では、デバイスパターンの幅を制御することは可能であるが、パターンの長さ方向に対する膜厚分布の制御が困難になる。すなわち、特許文献3に開示の技術では、デバイスパターンの中央部と端部とで膜厚に差が生じてしまい、要求される電気特性が得られないことがある。
【0013】
また、特許文献4に開示の技術では、基板上の所定パターン形成領域の外側に液滴を吐出してダミーパターンを形成する領域(ダミー領域)が必要になるため、ダミー領域分だけ基板を大きくする必要がある。また、パターン形成領域の外側にダミー領域を形成する必要上、パターン形成領域の外側に他のデバイスパターンを形成することが困難になるという問題も生じる。
【0014】
また、特許文献5に開示の技術では、最初の工程と次工程の間に分散媒の除去を行なうために乾燥処理工程が必要になり、そのための時間も必要となる。
【0015】
また、特許文献6に記載の方式では、パターン形成領域の境界に隔壁を設ける必要があるため、特許文献1および特許文献2と同様の問題が生じる。
【0016】
特許文献7に記載の方式では、配線パターンの導通不良に対する解決方法として液滴を吐出するものであり、パターン形状の不良に対するものでパターン内の膜厚均一性に対しては改善できないものであった。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、パターン形成以外の他の工程を不要とし、かつパターン形成の自由度の低下、基板の大型化などを招くことなく、均一な膜圧のデバイスパターンを提供可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記目的を達成するために、本発明は以下の構成を備える。
【0019】
すなわち、本発明の第1の形態は、液体吐出ヘッドと基板とを相対的に移動させつつ、前記液体吐出ヘッドから基板上にパターン形成用溶液を吐出してデバイスパターンを形成するデバイスパターン形成方法であって、予め設定した一定の幅および長さを有する基本パターンを形成する基本パターン形成工程と、前記基本パターンに連結されると共に外部に突出する突出パターンを、前記基本パターンの少なくとも一部に形成する突出パターン形成工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明の第2の形態は、液体吐出ヘッドと基板とを相対的に移動させつつ、前記液体吐出ヘッドから基板上にパターン形成用溶液を吐出することにより前記基板上に形成されるデバイスパターンであって、予め設定した一定の幅および長さを有する基本パターンと、前記基本パターンに連結されると共に外部に突出する突出パターンと、からなることを特徴とする。
【0021】
本発明の第3の形態は、液滴を吐出するノズルを複数配列した液体吐出ヘッドと、この液体吐出ヘッドと基板とを相対的に移動させる移動手段と、前記両液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する制御手段と、を備えたデバイスパターン形成装置であって、前記制御手段は、前記基板と前記液体吐出ヘッドとの相対移動時において、前記複数のノズルのうち一定数のノズルから液滴を吐出させることにより、前記基板上に予め設定した一定の幅および長さを有する基本パターンを形成させると共に、前記液体吐出ヘッドが前記基板上の予め設定した位置に達した時点で、前記複数のノズルの中の少なくとも1つのノズルから液滴を吐出させることにより、前記基本パターンと連結しかつ外部に突出する突出パターンを形成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、一定の幅および長さを有する基本パターンの一部に外方へと突出する突出パターンを形成することにより、膜厚均一性に優れたデバイスパターンを形成することが可能となる。このため、製造工程の単純化、製造コストの低減を図ることが可能になると共に、基板を大型化することなく、自由度の高いパターン形成が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るデバイスパターン形成方法、デバイスパターン形成装置、およびデバイスパターンの実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
まず、図1および図2に基づき、本発明の実施形態に適用するデバイスパターン形成装置の構成を説明する。図1は、本実施形態におけるデバイスパターン形成装置の外観構成を概略的に示す斜視図である。
ここに示すデバイスパターン形成装置は、走査方向(X方向)に沿って往復移動するキャリッジ109と、デバイスパターンを形成するための基板100が搭載されるステージ103などを有している。このキャリッジ109には、基板100上にデバイスパターン形成用溶液を吐出する液体吐出ヘッド120、130がX方向に沿って配置されている。さらに、両液体吐出ヘッド120、130には、デバイスパターン形成用溶液をそれぞれ供給するためのタンク(不図示)がキャリッジに搭載されている。各液体吐出ヘッド120,130内には、タンク内のパターン形成用溶液が供給される共通液室が形成されると共に、共通液室に連通する複数の液路と、その液路の末端に形成される開口部である吐出口と、各液路内に配置された吐出エネルギ発生素子とからなる。このエネルギ発生素子としては、電気機械変換素子(ピエゾ)あるいは電気熱変換素子(ヒータ)などが知られており、いずれを選択するかは、適用するパターン形成用溶液の構成材料の種類や粘度などに応じて決定すれば良い。本発明では、前記液路、吐出口、およびエネルギ発生素子とを含む部分をノズルと称す。液体吐出ヘッド120,130に形成される複数のノズルは、走査方向(X方向)と交わる方向(ここでは、直交する方向)に配置され、これらのノズルによってノズル列が構成されている。このノズル列は、走査方向と直交するY方向にの延在しているのが良い。また、各ヘッドに複数のノズル列が配置されていてもよい。
【0025】
また、デバイスパターン形成装置には、キャリッジ109を往走査および復走査させる動力源としてCRリニアモータ(キャリッジリニアモータ)101が設けられている。さらに、基板100をY方向へと移動させる基板移動手段として、ステージ103とこれを移動させるLFリニアモータ(ラインフィードリニアモータ)102とが設けられている。LFリニアモータ102は定盤108に確固に固定されており、ステージ103が移動しても、基板100を載せるステージ103の上面を、定盤108の上面に対して常に平行に保ち得るようになっている。一方、CRリニアモータ101は、定盤108の上に立設された高い剛性を有するベース104および105に固定されている。
【0026】
また、CRリニアモータ101およびLFリニアモータ102にはそれぞれリニアエンコーダ111、112および原点センサ106、107が内蔵されている。リニアエンコーダ111、112および原点センサ106、107の出力は、各リニアモータの駆動時のサーボ制御入力として利用される。さらに、キャリッジ側のリニアエンコーダ111は溶液の吐出タイミングの生成にも利用される。エンコーダの分解能は0.5μmと高精度であるため、数10μm幅のデバイスパターンを形成するには充分である。
また、ここでは特に図示しないが、このデバイスパターン形成装置には、ステージ103の上面と直交する方向(Z方向)へとキャリッジ109を微小に昇降させる昇降機構が設けられている。この昇降機構によって基板上面または基板上に形成されたデバイスパターンとの間隔を調整することができる。
【0027】
さらに、本実施形態におけるデバイスパターン形成装置には、ホスト装置として不図示のパーソナルコンピュータが接続されている。このパーソナルコンピュータから送られた図形情報(デバイスパターン形成情報)に基づいて、デバイスパターン形成装置は、ステージ103をLFモータ102によって所定の位置に移動させる。また、キャリッジ109をCRリニアモータ101で走査させながら、基板上の所定位置にヘッドからデバイスパターン形成用溶液を吐出させ、デバイスパターンを形成する。
【0028】
次に、本実施形態のデバイスパターン形成装置の制御系について説明する。
図2は、本実施形態のデバイスパターン形成装置における制御系の全体構成を概略的に示すブロック図である。機構部46は、液体吐出ヘッド120,130を搭載したキャリッジ109を主走査方向に移動させるためのCRリニアモータ101、基板100を搭載したステージ103を搬送するLFリニアモータ102などを備えている。
【0029】
主制御部44は、液体吐出ヘッド120,130および機構部46等をはじめとする本実施形態におけるデバイスパターン形成装置全体を制御する中枢部分である。この主制御部44は、CPUおよび動作プログラムなどを格納してなるROM、種々のデータの書き込みおよび読み出しを可能とする作業用RAMなどを備えている。
主制御部44は、機構部46に対し制御信号を出力してキャリッジ109やステージ103等の制御を行うと共に、ヘッド制御部42、メモリ制御部50および描画位置信号発生部41などとの間でも信号の授受を行い、液体吐出ヘッド120の駆動を制御する。I/F部47は、不図示のパーソナルコンピュータとデバイスパターン形成装置とのインターフェース部分である。このI/F部47は、パーソナルコンピュータなどのホスト装置からコマンドおよびパターン形成データの受信を行う。メモリ制御部50は、I/F部47から入力されたコマンドを主制御部44に転送すると共に、主制御部44の制御の下で、パターン形成データをバッファメモリ45に書き込むようアドレス信号と書き込みタイミング信号を生成する。
【0030】
さらに、主制御部44は、I/F部47から入力されたコマンドを解析し、その解析結果により描画速度や描画解像度などのパターン形成条件を設定する。そして、主制御部44は、そのパターン形成条件に基づき機構部46および位置信号発生部41を制御して、所定の条件でパターン形成動作を実行させる。
また、不図示のパソコンから受信したパターン形成データは、バッファメモリ45に記憶された後、主制御部44から指令を受けたメモリ制御部50の制御により、ヘッド制御部42に転送される。
ヘッド制御部42は、描画位置信号発生部41から出力される描画位置信号に同期して、バッファメモリ45から転送されたパターン形成データに従い、液体吐出ヘッド120,130の各ノズルを駆動し、デバイスパターンの形成を行う。
【0031】
ここで、本実施形態に用いられる基板100およびパターン形成用溶液について説明する。
【0032】
デバイスパターンを形成する基板100としては、ガラス、石英基板、Siウェハー、金属基板、またはプラスチック基板などを用いることができる。また、これらの基板上に金属膜、有機膜等の下地膜を形成し、さらに、下地膜をパターニングしたものを用いても良い。
【0033】
デバイスパターンを形成する基板表面には必要に応じて撥水処理を行なう。例えば、インクジェットヘッドより吐出された液滴が基板表面において濡れ拡がってしまい、パターン形状を維持することが難しい場合には、基板表面に撥水処理を行なう必要がある。基板上への撥水処理方法としては、CF4プラズマ処理による方法、カップリング剤コーティングによる方法などが挙げられる。基板上への処理が簡易であり、処理コストが安価である場合には、カップリング剤コーティングが好ましい。コーティング方法としては、スプレーコート、ディップコート、スピンコートあるいは蒸着などが挙げられ、これらの中から、コーティング厚、コーティング材料、基板種類、デバイス等に応じて適宜選択すれば良い。
【0034】
また、インクジェットヘッドより吐出されるパターン形成用溶液は、目的とするデバイスに合わせて選択する。例えば、導電性デバイスパターンを形成する場合には導電膜配線用溶液を選択し、電子放出源を形成する場合には電子放出源形成用溶液を選択すれば良い。具体的には、導電性デバイスパターンには、導電性微粒子を分散させた分散溶液、金属錯体を溶解させた錯体溶液などが挙げられ、電子放出源には、金属錯体を溶解させた錯体溶液、ナノ粒子を分散させた分散溶液が挙げられる。導電性微粒子、ナノ粒子を分散させた分散溶液の場合、導電性微粒子材料としては金、銀、銅、白金、パラジウムなどのいずれかを含有する金属微粒子などが挙げられる。ナノ粒子材料としては、カーボンナノチューブ、金ナノ粒子などのいずれかを含有するナノ粒子が挙げられる。金属錯体としては、銀、銅、インジウム、スズ、パラジウム、ニッケルの錯体のいずれかを含有する金属錯体が挙げられる。
【0035】
導電性微粒子、ナノ粒子と混合する溶液としては、導電性微粒子、ナノ粒子であって、それらが凝集を生じることなく分散できるものであれば良く、また、金属錯体と混合する溶液としては、金属錯体であってそれが析出することなく溶解するものであれば良い。
【0036】
例えば、導電性微粒子、ナノ粒子と混合させる溶液としては、水、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が挙げられる。また、エチレングリコール、ジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル化合物、あるいはトルエン、キシレンなどの炭化水素系化合物なども挙げられる。これらの中からデバイスパターン特性、液体吐出ヘッド、デバイスパターン幅、基板表面特性などに応じて、単独もしくは混合溶液として使用すれば良い。導電性粒子の分散質濃度は0.5〜30wt%が好ましく、これらの範囲内で、導電膜膜厚、特性に応じて適宜適正な値に調整すれば良い。導電性粒子の粒径や溶媒などによっては分散性を調整するために界面活性剤などを微量添加することが好ましい。また、インクジェット法による吐出を安定して行なうためには、パターン形成用溶液の表面張力、粘度を調整する必要がある。表面張力、粘度の調整には、アルコール、エーテル、ケトン等の有機溶媒の他、表面張力調整のためのフッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの界面活性剤を微量添加しても良い。
【0037】
分散溶液の粘度は、1〜30mPa・sであることが好ましい。インクジェット法により基板上に溶液を吐出するためには、上記粘度に溶媒濃度を変更することにより調整する。
【0038】
金属錯体を溶解させた錯体溶液の場合、適用する溶媒としては、例えば、水、アルコール類、エーテル化合物などが挙げられる。これらの中からデバイスパターン特性、液体吐出ヘッド、基板表面特性及び金属錯体溶解性などに応じて適宜調整すれば良い。金属錯体の場合、有機溶媒に対する溶解度が低いため、有機溶媒との混合比率を低く抑える必要がある。
【0039】
基板100上に吐出されたデバイスパターンの形状を安定化させるために、パターン形成溶液中には、溶媒に溶解する固形分を微量添加することが好ましい。溶媒の主成分がキシレン、トルエンなどの有機溶媒である場合、固形分としては、アクリル樹脂などが挙げられる。また、液滴溶媒の主成分が水である場合、固形分としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。これらの添加量は溶媒の種類、溶液の粘度等に応じて調整すれば良い。
【0040】
次に、本発明の第1の実施形態におけるデバイスパターンの形成方法によって形成されるデバイスパターンの平面形状及び膜厚分布について図面に基づき説明する。
図3は直線的な中心線L1に沿って直線状のデバイスパターンを従来のインクジェット法により形成した場合のデバイスパターン1の平面図である。また、図4は直線状デバイスパターンの長さ方向における理想的な膜厚分布を示す縦断側面図、図5は従来のインクジェット法により直線状のデバイスパターンの膜厚分布の一例を示す縦断側面図である。図6はこの第1の実施形態によって形成された直線的なパターンの膜厚分布の一例を示す縦断側面図、図7は図6に示すパターンの平面図である。
【0041】
直線状デバイスパターンPTの長さ方向に対するパターン膜厚分布は、図4に示すように長さ方向に対してパターン端部と中央部で膜厚差がないことが好ましい。しかし、パターン形成用溶液の主溶媒が低沸点溶媒などの乾燥しにくい溶媒であった場合、図3に示すような従来のパターン形成方法でデバイスパターンを形成すると、そのパターンの長さ方向に対するパターン膜厚分布は、図5に示すように不均一になる。すなわち、図5に示すパターン膜厚分布11では、パターン端部の厚さ(t1)が厚くなる一方、パターン中央部の厚さ(t2)は薄くなり、膜厚均一性が図4に示したデバイスパターンPT10に比べて大幅に低下する。このように、パターンの長さ方向に生じる膜厚の不均一は、デバイスの特性を劣化させる要因となる。
【0042】
これに対し、この第1の実施形態においては、図3に示す直線状デバイスパターンと同様のパターンを基本パターン部PTとし、その基本パターン部PTの中央部に、図7に示すような幅方向(w方向)に突出する円弧状の突出パターン部PT13を形成する。本例では、基本パターン部PTの中央部の2辺から外方(w方向)へと突出する2個の突出パターン部PT13を形成している。つまり、この第1の実施形態のデバイスパターンPT12は、1ドット分の幅を有する基本パターン部PTと、これに連結された2ドット分の突出パターン部PT13とにより構成される。これらのパターン部PT,PT15は、液体吐出ヘッドと、基板100とを相対移動(走査)させつつ、液体吐出ヘッド120からパターン形成用の溶液を液滴として吐出させることによって形成する。なお、この突出パターン部PT13が、基本パターンPTから突出する量hは、基本パターンPTの幅wの0.2倍以上であることが望ましい。
【0043】
基板100と液体吐出ヘッド120との相対移動を行う方法(走査方法)としては、液体吐出ヘッドのみを移動させる方法(第1の走査方法)、基板100のみを移動させる方法(第2の走査方法)がある。さらに、基板100と液体吐出ヘッドの双方を移動させる方法(第3の走査方法)もある。第1の走査方法によってX方向に延在するデバイスパターンを形成する場合には、液体吐出ヘッド100を主走査方向(X)へと移動させながら、液体吐出ヘッドのノズル列の中の隣接する3つのノズルより液滴を吐出させることによって形成する。すなわち、基本パターン部PTを3ノズルの中の中央のノズルを用いて形成し、突出パターン部PT13を中央のノズルに隣接する2個のノズルを用いて形成する。また、X方向に延在するデバイスパターンを第2の走査方法を用いて形成する場合には、形成すべきデバイスパターンの長さに応じた範囲のノズルを用い、各ノズルから同時に液滴を吐出することによって基本パターン部PT形成する。さらに、中央部のノズルから基本パターン部PTの形成前後において2回液滴を吐出させることによって突出パターン部PT13を形成する。また、第3の走査方法は、デバイスパターンをX方向(主走査方向)とY方向(基板移動方向)の合成方向にパターンを形成する際に使用する。この場合、複数のノズルを用いて基本パターン部PTを形成すると共に、突出パターン部PT13を2個のノズルを用いて形成する。
【0044】
このように、基本パターン部PTの中央部に突出パターン部PT13を形成することにより、突出パターン部PT13における溶液と、基本パターン部PTの中央部の溶液とが表面張力によって引き合い、デバイスパターンPT12の中央部にも溶液が集められる。その結果、デバイスパターンPT12は、図6に示すように、端部と中央部とで膜厚差が大幅に減少し、その膜厚分布は、図5に示したデバイスパターンPT11に比べて大幅に改善される。
【0045】
また、パターン形成用溶液の主成分が高沸点溶媒であった場合、直線状のデバイスパターンの長さ方向に対する膜厚分布は、図8に示すようになる。すなわち、図8に示すパターンPT14では、パターン中央部の膜厚t3が厚く、パターン端部で膜厚t4が薄くなり、膜厚均一性が図4に示したデバイスパターンPT10に比べて大幅に低下する。このような膜厚の不均一もデバイス特性を劣化させる要因となる。
【0046】
そこで、この第1の実施形態では、パターン形成用溶液に高沸点溶媒を用いる場合、図10に示すようなデバイスパターンPT15を形成する。このデバイスパターンPT15は、図3に示す基本パターンPTの両端部に、それぞれ、図10に示すような外方へ突出する円弧状の突出パターン部PT16を2個ずつ形成したものとなっている。つまり、本例におけるデバイスパターンPT15は、基本パターン部PTとこれに連結された4個の突出パターン部PT16とにより構成されている。これらのパターンPT,PT16も、図7に示すデバイスパターンPT12と同様に、液体吐出ヘッド120と、基板100とを相対移動(走査)させることによって形成する。基板100と液体吐出ヘッド120との相対移動を行う方法としては、前述の第1〜第3の走査方法のいずれの方法を採ることも可能である。なお、この突出パターン部PT13においては、基本パターンPTから突出する量iまたはjのうち、少なくとも一方が基本パターンPTの幅wの0.2倍以上であることが望ましい。
【0047】
このようにして基本パターン部PTの両端部に突出パターン部PT16を形成することにより、突出パターン部PT16における溶液と、基本パターン部PTの端部の溶液とが表面張力によって引き合い、デバイスパターンPT15の両端部にも溶液が集まる。その結果、デバイスパターンPT15は、図9に示すように、端部と中央部とで膜厚差の少ないほぼ均一な膜厚が形成され、その膜厚分布は図4に示したデバイスパターンPT10に比べて大幅に改善される。
【0048】
このように本実施形態によれば、1ドット分の幅を有する直線状のデバイスパターンの形成において、基本パターン部の中の膜厚が減少する傾向にある箇所に突出パターン部を形成することにより、均一な膜厚分布のデバイスパターンを形成ことができる。このため、デバイスサイズ、デバイス材料、デバイス形状などに拘わりなく、デバイスパターンには、所期の特性を得ることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図11および図12に基づき説明する。
この第2の実施形態は、高沸点溶媒を用いたパターン形成用溶液により、図11および図12に示すような屈曲した中心線L2に沿って、デバイスパターンPTを形成するものである。図11に示すデバイスパターンPT17には、基本パターン部PT18と、これに連結するよう形成した突出パターン部PT19とにより構成されている。基本パターンPT18は、3本の直線を連結したクランク状の中心線L2に沿って形成され、1ドット分の幅を有している。また、突出パターン部PT19は、基本パターンPT18の各角部に連結されて円弧状をなしている。なお、このデバイスパターンPT17の形成時における液体吐出ヘッド120と基板100との相対移動は、前述の第1ないし第3の走査方法のいずれかを適用すれば良い。パターン形成用溶液の主成分として高沸点溶媒を用いているため、突出パターン部PT19が形成されていない場合には、各角部においてデバイスパターンの膜厚が薄くなる可能性が高い。しかし、本例では基本パターン部PT18の各角部に突出パターン部PT19を形成するため、この突出パターン部PT19の溶液と、基本パターン部PT18の溶液とがその表面張力によって互いに引き合い、角部にも溶液を集めることができる。その結果、デバイスパターン全体に亘って均一な膜厚を得ることができ、所期のデバイス特性を得ることができる。
【0050】
また、図12に示すデバイスパターンPT20は、基本パターンPT18の角部に2個の円弧状の突出パターン部PT19を形成したものである。基本パターンの各直線部分の長さが長い場合、基板表面の親液性が高い場合などには、上記のように角部に複数個の突出パターンを形成することが有効である。なお、図12では、各角部に対して2個の突出パターン部PT19を形成しているが、その他の数の突出パターン部を互いに連結するよう形成することも可能である。
【0051】
(本発明の第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図13および図14に基づき説明する。
図13に示すデバイスパターンPT22は、低沸点溶媒のような乾燥し易い溶媒を含むパターン形成用溶液で形成されており、基本パターン部PT23と、この基本パターン部PT23に連結した突出パターン部PT24とから構成されている。基本パターン部は、複数ドット分の幅wを有している。また、突出パターン部PT24は、この基本パターン部PT23の側辺部中央に形成されている。本例においても、液体吐出ヘッド120と基板100との相対移動は、前述の第1〜第3の走査方法のいずれかを採用することが可能である。例えば、第1の走査方法を用いて、X方向に延在するデバイスパターンを形成する場合には、液体吐出ヘッド120に形成されるノズル列の中の隣接する3つのノズルを用いて形成する。すなわち、基本パターン部PT23を隣接する2つのノズルから液滴を吐出して2ドット分の幅を有するパターンを形成すると共に、残りの1つのノズルから液滴を吐出して円弧状の突出パターン部PT24を形成する。これにより、1回の走査で各パターン部PT23,PT24を形成することができる。このデバイスパターンPT22によれば、突出パターン部PT24の溶液と基本パターン部PT23の中央部の溶液とが表面張力によって引き合うため、低沸点溶媒をパターン形成用溶液であっても、均一な膜厚のデバイスパターンを形成することができる。なお、この突出パターン部PT13が、基本パターンPTから突出する量hは、基本パターンPTの幅wの0.2倍以上であることが望ましい。
【0052】
また、高沸点溶媒のような乾燥しにくい溶媒を含む溶液で、複数ドット分の幅を有するデバイスパターンを形成する場合には、図14に示すように、複数ドット分の幅を有する基本パターン部PT23の端部に、突出パターン部PT26を形成すれば良い。このデバイスパターンPT25にあっても、その延在方向がX方向である場合には、隣接する3つのノズルを用いて形成することができる。このデバイスパターンPT25によれば、高沸点溶媒を用いたパターン形成用溶液を用いた場合にも、均一なデバイスパターンを形成することができる。なお、突出パターン部PT26が基本パターンPTから突出する量iまたはjは、少なくとも一方が基本パターンPTの幅wの0.2倍以上であることが望ましい。
【0053】
また、図13および図14に示すような、複数ドット分の幅を有する基本パターンPT23を形成する場合、前述のように、1回の走査によってパターンの形成を完了することが望ましい。しかし、デバイスパターンの形状、溶液材料などに応じて、複数回の走査を行うことにより、デバイスパターンを形成することも可能である。
【0054】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を図15に基づき説明する。
上記各実施形態では、デバイスパターンを形成するパターン形成用溶液の溶媒が、高沸点溶媒であるか、低沸点溶媒であるかに応じて、突出パターン部を直線状のデバイスパターンの中央部に形成するか、端部に形成するかを決定するようにした。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、使用するパターン形成溶液の種類、基板表面の親液性、撥液性、パターンのサイズなどに応じて、突出パターン部の形成位置、形状などを適宜設定することができる。すなわち、膜厚が薄くなる傾向にある部分に対して突出パターン部を形成することが望ましく、その一例を図13に示す。
【0055】
図13に示すデバイスパターンPT26は、1ドット分または複数ドット分の幅で形成された基本パターン部PT23と、この基本パターン部PT27の両側辺部および両端部に形成した突出パターン部とから構成されている。本例では、突出パターン部として、基本パターン部PT23の両側辺部に2個の突出パターン部PT28が形成されると共に、基本パターン部PT23の両端部に4個ずつ突出パターン部PT29が形成されている。つまり、合計10個の突出パターン部が、基本パターン部PT27の中で膜厚の低下する傾向にある箇所に形成されている。
【0056】
前述のように、高沸点溶媒を用いた場合には、直線状の基本パターンのうち端部の膜厚が低下する傾向にある。このため、端部の膜厚を増大させるべく両端部に複数個の突出パターンを形成すると、その突出パターン部PT29の溶液と基本パターン部PT27とが表面張力によって引き合い、中央部の溶液が減少して膜厚が低下する場合もある。このため、端部だけでなく中央部にも突出パターン部を形成することによって、膜厚全体を均一化させることができる。また逆に、低沸点溶媒を用いる場合に、中央部に突出パターン部を形成すると、中央部に溶液が集まり過ぎ、両端部の溶液が減少する可能性がある。この場合には、両端部にも突出パターン部を形成することによって、デバイスパターン全体の膜厚を均一化することが可能となる。
【0057】
なお、以上の説明においては、基板100に対して液体吐出ヘッドを動かす構造となっているが、液体吐出ヘッド120,130を固定して、基板100を動かすように構成することも可能である。
【0058】
また、上記実施形態では液体吐出ヘッド120のみを用いてデバイスパターンを形成した場合を示したが、液体吐出ヘッド130を併用してデバイスパターンを形成することも可能であり、使用する液体吐出ヘッドの数は、必要に応じて適宜設定可能である。
【0059】
(第1の実施例)
次に、上記実施形態に基づき、デバイスパターンとして電子放出源パターンを形成した例を具体的に説明する。
【0060】
電子放出源パターンを形成する液滴材料としては、溶媒として水、イソプロピルアルコール、エチレングリコールを用い、溶質としてパラジウム錯体、ポリビニルアルコールを用いた。液滴材料を調整するにあたり、予めポリビニルアルコール1重量%水溶液を調整した。水に対しパラジウム錯体を10重量%となるように溶解させた後、ポリビニルアルコール1重量%水溶液、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、水の順序で混合した。それぞれの混合量は、各溶媒及び溶質の濃度が、水71.2重量%、イソプロピルアルコール20重量%、エチレングリコール5重量%、パラジウム錯体3.5重量%、ポリビニルアルコール0.3重量%となるようにした。溶媒および溶質を混合した後、十分に混合させるために24時間密閉容器に入れて攪拌を行なった。攪拌を行なった溶液を4時間放置した後に濾過し、錯体溶液とした。錯体溶液をシリンジ中に入れ、吐出エネルギ発生素子としてピエゾを用いた液体吐出ヘッドに充填した。この液体吐出ヘッドとしては、一定の配列ピッチでノズルを配した2列のノズル列を備え、一方のノズル列と他方のノズル列とで、各ノズルの配列位置をノズル配列方向において1/2ピッチだけずらしたものを使用した。液体吐出ヘッドのノズルより液滴が吐出できるように錯体溶液をシリンジより押し出し、液体吐出ヘッドの吐出口形成面よりはみ出した錯体溶液をワイピングすることにより除去した。その後、液体吐出ヘッドの一方のノズル列より20plの液滴が吐出できるように、ピエゾの駆動電圧を18.5Vに調整した。また、液体吐出ヘッドの他方のノズル列における各ノズルに対しては、4plの液滴が吐出できるように駆動波形(パルス幅)を変更すると共に、ピエゾの駆動電圧を14.0Vに調整した。
【0061】
基板としては、予め所定の配線パターンが形成されたガラス基板を用意した。ガラス基板表面上には、予めシリコーン系シランカップリング剤を用いて表面処理を行なった。シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシランを用いた。表面処理はスピンコート法により行ない、メタノールを用いて3倍希釈してコートした。スピンコート後、基板表面上のシリコーン系シランカップリング剤を固定するために100℃−30分間オーブン中で加熱処理した。表面処理確認を行なうために、配線パターンが形成されていないガラス基板表面の濡れ性を評価したところ、水の接触角で67°〜73°であった。
【0062】
液体吐出ヘッドを搭載した前述のデバイスパターン形成装置のステージ103上にガラス基板100を置き、動作中にずれが生じないように固定した。ガラス基板100と液体吐出ヘッド120の吐出口形成面とが接触しないように、吐出口形成面と基板表面との隙間を0.5mmに調整した。この後、液体吐出ヘッドを走査させて配線パターンの間隙に液体吐出ヘッドより錯体溶液を吐出した。この際、直線状の電子放出源パターンを形成すべく、基本パターン部PTの形成領域に20plの液滴を12発吐出した。また、基本パターンの中央部には、突出パターン部として4plの液滴を4発吐出した。パターン形成後、オーブンを用いて100℃の温度で10分間の熱処理を行なった。
【0063】
光学顕微鏡を用いて熱処理後のデバイスパターン形状を測定したところ、パターンサイズは、パターン幅が52μm、パターン長さが163μmであった。突出パターン部の基本パターン部からの突出量は、幅方向に対して15μmであった。
パターンの膜厚分布測定は、干渉形状測定装置を用いて行なった。膜厚分布はパターン中央部が最も薄く0.08μmであった。また、図7に示すパターン長さ方向(パターンの中心線L1に沿う方向)で膜厚が最も厚い箇所はパターン両端よりほぼ20μmの部位となっており、その膜厚は0.10μmであった。よって、中央部と端部との膜厚は、0.02μmに抑えられた。
【0064】
また、基板外周部などにおいて同様の幅および長さを有し、かつ突出パターン部を形成していないデバイスパターンの膜厚を測定したところ、膜厚が最も厚い箇所はパターン中央部で膜厚は0.14μmであった。また、パターン両端より20μmの部位が最も膜厚の薄くなっており、その膜厚は0.05μmであった。よって、最大膜厚と最小膜厚との差は0.09μmとなった。
【0065】
以上の測定結果から明らかなように、上記実施形態に従ってデバイスパターンに突出パターン部を形成した場合には、突出パターン部を形成しない場合に比べ、デバイスパターン内の最大膜厚差は大幅に低減された。
【0066】
(第2の実施例)
次に、上記実施形態に基づき、デバイスパターンとして導体からなる配線パターンを形成した例を具体的に説明する。
この配線パターンを形成するパターン形成用溶液としては、金属ナノ粒子含有コロイド溶液を用いた。金属ナノ粒子としては、金ナノ粒子を用いた。金ナノ粒子をα−テルピネオール中に分散させた金ナノ粒子コロイド溶液を用意した。この金ナノ粒子コロイド溶液に対し、1−ブチルアルコールとジエチレングリコールとを重量比率で3:1となるように混合した混合溶液を加えた。混合溶液添加調整後の金ナノ粒子濃度は、10重量%であった。調整した溶液を軽く攪拌させることにより金ナノ粒子コロイド溶液と混合溶媒とを混合させ、ナノ粒子分散溶液とした。ナノ粒子分散溶液をシリンジ中に入れ、上記第1実施例と同様のピエゾを用いた液体吐出ヘッドに充填した。この液体吐出ヘッドのノズルより、液滴が吐出できるようにナノ粒子分散溶液をシリンジより押し出し、吐出口形成面よりはみ出したナノ粒子分散溶液をワイピングすることにより除去した。その後、液体吐出ヘッドの一方のノズル列より15plの液滴が吐出できるように、ピエゾの駆動電圧を24.5Vに調整した。また、液体吐出ヘッドの他方のノズル列における各ノズルに対しては、8plの液滴が吐出できるように駆動波形(パルス幅)を変更すると共に、ピエゾの駆動電圧を16.0Vに調整した。
【0067】
基板としては、ガラス基板を用意した。ガラス基板表面上には、予めシリコーン系シランカップリング剤を用いて表面処理を行なった。シランカップリング剤としては、アルコキシシランであるテトラメトキシシランを用いた。表面処理はスピンコート法により行なった。スピンコート後、基板表面上のシリコーン系シランカップリング剤を固定するために120℃−30分間オーブン中で加熱処理した。表面処理確認を行なうために、ガラス基板表面の濡れ性を評価したところ、水の接触角で80°〜84°であった。
【0068】
液体吐出ヘッドを搭載したデバイスパターン形成装置のステージ103上にガラス基板100を置き、動作中にずれが生じないようにステージ吸着穴よりガラス基板100を吸引して固定した。ガラス基板100と液体吐出ヘッド120の吐出口形成面とが接しないように、吐出口形成面と基板表面との隙間を0.5mmに調整した。この後、液体吐出ヘッド120を走査させて配線パターン間隙に液体吐出ヘッドより分散溶液を吐出した。この際、図15の直線状の配線パターンを形成すべく、基本パターン部PT27の形成領域に15plの液滴を8μm刻みで40発吐出した。また、基本パターン部PTの中間部には、吐出パターン部として、5plの液滴を80μm刻みで6発吐出した。なお、図15では、2つの(2発の)突出パターン部PT28を形成した場合を示しているが、本例では、基本パターン部PT27の両側辺に対して3発ずつ、合計6発の液滴を吐出して6個の突出パターン部を形成した。この後、さらに、基本パターン部PT27の各端部に、図15の突出パターンPT29と同様に、4個の突出パターン(合計8個)の突出パターンを形成した。この端部に形成される8個の突出パターンのそれぞれは、5plの液滴によって形成した。
【0069】
上記のようにして配線パターンを形成した後、オーブンを用いて熱処理を行なった。熱処理は、最初に150℃の温度で40分間行ない、続いて380℃の温度で30分間の熱処理を行なった。
【0070】
光学顕微鏡を用いて熱処理後の配線パターン形状を測定したところ、パターンサイズは、パターン幅が43μm、パターン長さが357μmであった。突出パターン部の基本パターン部からの突出量は、長さ方向に対して20μm、幅方向に対して15μmであった。
【0071】
パターンの膜厚を干渉形状測定装置を用いて測定したところ、膜厚分布はパターン中央部が最も厚く0.54μmであった。また、パターン長さ方向での膜厚が最も薄い箇所はパターン両端からほぼ17μmの箇所となっており、その膜厚は0.51μmであった。すなわち、最大膜厚と最小膜厚との差は、0.03μmとなった。
【0072】
これに対し、また、基板外周部などに位置する同様の長さおよび幅を有し、かつ突出パターン部を形成していない配線パターンについて膜厚を測定したところ、膜厚が最も厚い箇所はパターン中央部であり、その膜厚は0.73μmであった。また、パターン両端より17μmの部位が最も膜厚が薄くなっており、その膜厚は0.32μmであった。従って、最大膜厚と最小膜厚との差は、0.41μmとなった。
【0073】
以上の測定結果から明らかなように、上記実施形態に従って配線パターンに突出パターン部を形成した場合には、突出パターン部を形成しない場合に比べ、配線パターン内の最大膜厚差は大幅に低減された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施形態におけるデバイスパターン形成装置の外観構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】本実施形態のデバイスパターン形成装置における制御系の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】従来のインクジェット法により形成されたデバイスパターンの一例を示す平面図である。
【図4】デバイスパターンの長さ方向における理想的な膜厚分布を示す縦断側面図である。
【図5】従来のインクジェット法により形成されたデバイスパターンの膜厚分布の一例を示す縦断側面図であり、パターン形成用溶液の主成分が低沸点溶媒である場合を示している。
【図6】本発明の第1の実施形態によって形成されたデバイスパターンの膜厚分布の一例を示す縦断側面図であり、パターン形成用溶液の主成分が低沸点溶媒である場合を示している。
【図7】図6に示すデバイスパターンの平面図である。
【図8】従来のインクジェット法により形成されたデバイスパターンの膜厚分布の一例を示す縦断側面図であり、パターン形成用溶液の主成分が高沸点溶媒である場合を示している。
【図9】本発明の第1の実施形態によって形成されたデバイスパターンの膜厚分布の一例を示す縦断側面図であり、パターン形成用溶液の主成分が高沸点溶媒である場合を示している。
【図10】図9に示すパターンの平面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態によって形成されたデバイスパターンの一例を示す平面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態によって形成されたデバイスパターンの他の例を示す平面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態によって形成されたデバイスパターンの一例を示す平面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態によって形成されたデバイスパターンの他の例を示す平面図である。
【図15】本発明の第4の実施形態によって形成されたデバイスパターンの一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0075】
44 主制御部
41 描画位置信号発生部
42 ヘッド制御部
100 基板
101 キャリッジリニアモータ
102 ラインフィードリニアモータ
103 ステージ
109 キャリッジ
120,130 液体吐出ヘッド
PT12、PT15 デバイスパターン
PT17、PT20 デバイスパターン
PT22、PT25 デバイスパターン
PT26 デバイスパターン
PT 基本パターン部
PT18 基本パターン部
PT23 基本パターン部
PT27 基本パターン部
PT13、PT16 突出パターン部
PT19、PT21 突出パターン部
PT24、PT26 突出パターン部
PT28、PT29 突出パターン部
w パターン幅
h 突出パターン部の突出量
i 突出パターン部の幅方向における突出量
j 突出パターン部の長さ方向における突出量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドと基板とを相対的に移動させつつ、前記液体吐出ヘッドから基板上にパターン形成用溶液を吐出してデバイスパターンを形成するデバイスパターン形成方法であって、
予め設定した形状の基本パターンを形成する基本パターン形成工程と、
前記基本パターンに連結されると共に外部に突出する突出パターンを、前記基本パターンの少なくとも一部に形成する突出パターン形成工程と、
を備えたことを特徴とするデバイスパターンの形成方法。
【請求項2】
前記突出パターン形成工程では、前記基本パターンの条件に応じた位置に、前記突出パターンを形成することを特徴とする請求項1に記載のデバイスパターンの形成方法。
【請求項3】
前記突出パターン形成工程では、前記突出パターンを、前記基本パターンの中で他の部分より膜厚が減少する傾向にある部分に形成することを特徴とする請求項1または2に記載のデバイスパターン形成方法。
【請求項4】
前記突出パターン形成工程では、前記パターン形成用溶液が、低沸点溶媒を主溶媒とする場合に、前記突出パターンを、前記基本パターンの中央部に形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のデバイスパターン形成方法。
【請求項5】
前記突出パターン形成工程では、前記パターン形成用溶液が、高沸点溶媒を主溶媒とする場合に、前記突出パターンを、前記基本パターンの端部に形成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のデバイスパターン形成方法。
【請求項6】
前記突出パターン形成工程では、前記基本パターンの屈曲部に前記突出パターンを形成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のデバイスパターン形成方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のデバイスパターン形成方法によって形成されたことを特徴とするデバイスパターン。
【請求項8】
前記基本パターン部に連結される前記突出パターン部の突出幅は、前記デバイスパターンの幅の0.2倍以上であることを特徴とする請求項7に記載のデバイスパターン。
【請求項9】
液滴を吐出するノズルを複数配列した液体吐出ヘッドと、この液体吐出ヘッドと基板とを相対的に移動させる移動手段と、前記両液体吐出ヘッドの吐出動作を制御する制御手段と、を備えたデバイスパターン形成装置であって、
前記制御手段は、前記基板と前記液体吐出ヘッドとの相対移動時において、前記複数のノズルのうち一定数のノズルから液滴を吐出させることにより、前記基板上に予め設定した形状の基本パターンを形成させると共に、前記液体吐出ヘッドが前記基板上の予め設定した位置に達した時点で、前記複数のノズルの中の少なくとも1つのノズルから液滴を吐出させることにより、前記基本パターンと連結しかつ外部に突出する突出パターンを形成させることを特徴とするデバイスパターン形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2007−335460(P2007−335460A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162417(P2006−162417)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】