説明

デフキャリヤの支持構造

【課題】部品点数を増加させることなくデフうなり音を低減させる。
【解決手段】サスペンションメンバ100にデフキャリヤを搭載している。デフキャリヤの振動はサスペンションメンバ100に伝達される。サスペンションメンバ100が振動することで、サスペンションメンバ100のサブメンバ110のフランジ116が共振して上下に大きく変形し、大きなデフうなり音が発生する。そこで、サスペンションメンバ100のサブメンバ110のフランジ116の中央部に切取部118を形成することで、フランジ116の共振による変形を抑制し、デフうなり音を低減させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デフキャリヤの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーユニットを搭載したサブフレームが共振し、こもり音が発生する。このようなこもり音を低減させるため、パワーユニットの振動がサブフレームへ伝達する振動伝達力に着目し、この振動伝達力に対するサブフレーム振動感度が鈍くなるようにサブフレームの共振モードをうまくコントロールすることで、この振動伝達力の車体への伝達を低減させ、こもり音の低減を実現した車体用サブフレーム支持装置が提案されている。(例えば、特許文献1)。
【0003】
さて、デフキャリヤを搭載したサスペンションメンバでは、サスペンションメンバの上端フランジ、又は下端フランジに共振が発生し、サスペンションメンバの振動増幅作用により、所謂、デフうなり音が発生する。よって、このようなデフうなり音を低減させることが求められている。
【0004】
しかし、フランジの変形を抑制させるダンパーの追加やリインフォースによる補強などの従来の対策方法では、部品点数の増加に伴う重量アップやコストアップが発生する。
【特許文献1】特開2002−274195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、部品点数を増加させることなくデフうなり音を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載のデフキャリヤの支持構造は、車体に取り付けられ、デフキャリヤを支持する支持部材と、前記支持部材の端部に設けられたフランジと、前記フランジの一部を切り取って形成した切取部と、を備えることを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載のデフキャリヤの支持構造では、支持部材が車体に取り付けられ、この支持部材にデフキャリヤが支持されている。また、支持部材の端部には、支持部材の強度アップのためフランジが設けられている。
【0008】
さて、デフキャリヤの振動は支持部材に伝達する。支持部材に振動が伝達すると、支持部材の端部に形成したフランジが共振して大きく変形し振動増幅する。このため、デフうなり音が発生する。
【0009】
よって、フランジの一部を切り取って切取部を形成することで、支持部材を強度アップしつつ、フランジの共振を抑制し、デフうなり音を低減させている。つまり、部品点数が増加することなく、デフうなり音が低減している。
【0010】
請求項2に記載のデフキャリヤの支持構造は、請求項1に記載のデフキャリヤの支持構造において、前記支持部材は、前記車体に取り付けられ、前記デフキャリヤを支持する第一支持部材と、前記第一支持部材に支持され、前記デフキャリヤを支持する第二支持部材と、を有し、前記第二支持部材の端部に前記フランジが設けられ、該フランジに前記切取部が形成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載のデフキャリヤの支持構造では、第二支部部材は、第一支持部材に支持されており、車体には取り付けられてない。つまり、第二支持部材はデフキャリヤを支持可能な程度の強度を有していれば良い。したがって、切取部が形成されたフランジであっても、十分に大きな強度アップ効果が得られる。
【0012】
請求項3に記載のデフキャリヤの支持構造は、請求項1、又は請求項2に記載のデフキャリヤの支持構造において、前記切取部は、前記フランジの張り出し方向と直交する長手方向の中央部分に形成したことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載のデフキャリヤの支持構造では、切取部をフランジの張り出し方向と直交する長手方向の中央部分に形成している。つまり、共振して大きく変形するフランジの中央部分を切り取っているので、共振の抑制効果がより高い。
【0014】
請求項4に記載のデフキャリヤの支持構造は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデフキャリヤの支持構造において、前記切取部は、前記フランジの根元部分を残すように、該フランジの一部を切り取って形成したことを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載のデフキャリヤの支持構造では、フランジの根元部分を残すように、フランジの一部を切り取って切取部を形成している。よって、切取部が形成されたフランジであっても、強度アップ効果が高い。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、デフキャリヤを支持する支持部材の端部に形成されたフランジに切取部を形成することで、部品点数が増加することなくフランジの共振が抑制され、デフうなり音が低減する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第一実施形態に係るサスペンションメンバ100について図面を参照しながら説明する。なお、各図において、車体の前方を矢印Fで、後方を矢印Rで、上方を矢印UPで、左方を矢印LHで、右方を矢印RHそれぞれ示している。また、車体の幅方向は、矢印LH,RHの方向である。
【0018】
図1と図2とに示すように、自動車の車体10のフレーム12にサスペンションメンバ100が取り付けられている。このサスペンションメンバ100には、デフキャリヤ20が搭載されている。
【0019】
デフキャリヤ20は、内部に差動装置(図示略)を備えている。差動装置には、車体10の前後方向を長手方向とするプロペラシャフト22が連結されると共に、車体10の幅方向を長手方向とする左右のドライブシャフト24,26が連結されている。
【0020】
そして、この差動装置によって、プロペラシャフトによって伝達されたエンジン(図示略)のトルクを、左右のドライブシャフト(図示略)を介して左右の後輪(図示省略)に伝達すると共に、コーナーリング時に左右の後輪(図示略)の回転差を調整し、スムーズに曲がれるようにする。
【0021】
図3に示すように、デフキャリヤ20を搭載するサスペンションメンバ100は、メインメンバ120とサブメンバ110とで構成されている。
【0022】
メインメンバ120は、車体10(図1参照)の幅方向を長手方向とするリヤメンバ122を備えている。リヤメンバ122の上部の中央部分には凹部128が形成されている。リヤメンバ122の上部の左右の端部は、フレーム12(図1参照)に取り付けるためのマウント部124,126となっている。
【0023】
図2と図3とに示すように、リヤメンバ122の下部の左右の端部から前方に向かって、レフトメンバ134とライトメンバ136とが延びている。レフトメンバ134及びライトメンバ136の前方部分は上方に傾斜し、前方の端部はフレーム12(図1参照)に取り付けるためのマウント部144,146となっている。
【0024】
前述したリヤメンバ122の凹部128には、サブメンバ110が溶接接合されている。サブメンバ110は、凹部128と略同形状をした板金からなり、二つの孔112,114が形成されている。サブメンバ110は、車体10(図1参照)の幅方向が長手方向であり、サブメンバ110(板金)の厚み方向は車体10の前後方向となる。
【0025】
また、図3と図4に示すように、サブメンバ110の強度を上げるため、サブメンバ110の上端部が、略L字状に折り曲げられ、フランジ116を設けている。なお、フランジ116は車体10の前方向に張り出している。
【0026】
フランジ116には、根元部分を残すように切り取った切取部118が形成されている。また、切取部118は、フランジ116の長手方向(車体10の幅方向)の両端部分を残すように、中央部分を切り取って形成している。
【0027】
また、サブメンバ110は、フレーム12とは接触しておらず、サブメンバ110のフランジ116とフレーム12との間には隙間があいている。
【0028】
図1に示すように、デフキャリヤ20は、前方の左右の端部がメインメンバ120のレフトメンバ134のマウント部144及びライトメンバ136のマウント部146に固定されている。更に、デフキャリヤ20の後端部から後方に突出する突出部28が、サブメンバ110の孔112に入って固定されている。(もう一方114の孔は、本実施形態の場合は使用していない)。
【0029】
つまり、デフキャリヤ20は、サスペンションメンバ100のメインメンバ120と、このメインメンバ120に支持されているサブメンバ110と、で支持されている。そして、サスペンションメンバ100は、メインメンバ120のマウント部124,126、144,146(図3も参照)の四箇所で、フレーム12に吊り下がるように取り付けられている。
【0030】
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0031】
図1と図2とに示すように、エンジン(図示略)のトルクがプロペラシャフト(図示略)を介して、デフキャリヤ20の中の差動装置に伝達され、差動装置によって左右のドライブシャフト(図示略)を介して左右の後輪(図示略)に分配される。
【0032】
このとき、デフキャリヤ20に振動が発生する。この振動は、デフキャリヤ20を支持しているサスペンションメンバ100に伝達される。そして、サスペンションメンバ100が振動することで、所謂、デフうなり音が発生する。
【0033】
さて、コンピューターシミュレーションなどの分析によって、図3と図4とに示す、サスペンションメンバ100のサブメンバ110のフランジ116が共振して上下に大きく変形して振動増幅し、大きなデフうなり音が発生していることが判った。また、フランジ116の長手方向の中央部分が最も変形していることが判った。
【0034】
そこで、本実施形態では、サスペンションメンバ100のサブメンバ110のフランジ116の長手方向の中央部分に切取部118を形成することで、フランジ116の共振による変形を抑制し、デフうなり音を低減させている。
【0035】
なお、フランジ116に切取部118を形成しても、フランジ116の中央部分の幅が狭くなっているだけで、サブメンバ110の上部の端部の長手方向(車体10の幅方向)の全域に亘って、フランジ116は設けられている。更に、サスペンションメンバ100のサブメンバ110は、デフキャリヤ20を支持しているが、フレーム12には直接取り付けられていない。つまり、サブメンバ110はデフキャリヤ20を支持する強度を有していればよい。
【0036】
したがって、切取部118が形成されたフランジ116であっても、フランジ116を設けることによる強度アップ効果が十分に得られている。すなわち、サスペンションメンバ100は、十分問題のない強度を有している。
【0037】
更に、共振によって大きく変形するフランジ116の長手方向の中央部分を切り取って切取部118を形成しているので、共振の抑制効果が非常に高い。
【0038】
なお、フランジの変形を抑制させるダンパーの追加やリインフォースによる補強などでも、フランジの共振を抑制することは可能であると考えるが、このような方法は、部品点数の増加に伴う重量アップやコストアップ(工数増加も含む)が発生する。
【0039】
これに対し、本実施形態の方法は、部品点数の増加に伴う重量アップやコストアップが発生することなく、サスペンションメンバ100のサブメンバ110のフランジ116の共振を抑制し、デフうなり音を低減できる。
【0040】
つぎに、サスペンションメンバ100のサブメンバ110のフランジ116に切取部118を形成した場合と形成しない場合とで、サスペンションメンバ110の振動を比較した結果について説明する。
【0041】
図7に示すグラフは、横軸が周波数を示し、縦軸はサスペンションメンバ110の振動レベルを示している。そして、実線はフランジ116に切取部118が有る場合を示し、点線はフランジに切取部118が無い場合を示している。
【0042】
切取部有り(実線)と切取部無し(点線)とを比較すると判るように、切取部無し(点線)では、約700Hzを頂点するピーク部Zがあるが、切取部有り(実線)ではこのピーク部Zがほぼ消滅し、デフうなり音が大きく低減することが判る。
【0043】
このように、図7のグラフから、サスペンションメンバ100のサブメンバ110のフランジ116の長手方向の中央部分に切取部118を形成することで、デフうなり音が低減することが判る。
【0044】
つぎに、本発明の第二実施形態に係るサスペンションメンバについて図面を参照しながら説明する。なお、第一実施形態と同一の部材は同一の名称とし、重複する説明は省略する。
【0045】
図5に示すように、モノコック車の車体11のボディ13にサスペンションメンバ200が取り付けられている。また、サスペンションメンバ200には、デフキャリヤ21が搭載されている。また、サスペンションメンバ200は、メインメンバ220とサブメンバ210で構成されている。
【0046】
メインメンバ220は、下から見ると全体が略矩形状の枠形状(井形形状)となっている。メインメンバ220の四隅部分はボディ13に取り付けるためのマウント部224,226,244,246となっている。また、メインメンバ220の前方部には車体11の幅方向を長手方向とするフロントクロス252を有し、後方部には車体の幅方向を長手方向とするリヤクロス254を有している。
【0047】
図6にも示すように、リヤクロス254にサブメンバ210が溶接されている。サブメンバ210は板金からなり、二つの孔212,214が形成されている。サブメンバ210は、車体11(図5参照)の幅方向が長手方向であり、サブメンバ110(板金)の厚み方向は車体の長手方向となる。
【0048】
また、サブメンバ210の強度を上げるため、サブメンバ210の下端部と側端部とがL字状に折り曲げられフランジ216が形成されている。更に、このフランジ216の下端部216Aに、フランジ216の根元部分を残すように、切取部218が形成されている。切取部218は、フランジ216の下端部216の長手方向(車体11の幅方向)の中央部分を切り取って形成している。
【0049】
図5に示すように、デフキャリヤ21は、前方の左右の端部がメインメンバ220のフロントクロス252に固定されている。更に、デフキャリヤ21の後部から後方に突出する二つの突出部(図示略)が、それぞれサブメンバ210の孔212,214に入って固定されている。
【0050】
つまり、デフキャリヤ21は、サスペンションメンバ200の、メインメンバ220と、このメインメンバ220に支持されているサブメンバ210とに支持されている。そして、サスペンションメンバ200は、メイボディ220の四隅のマウント部224,226,244,246の四箇所でボディ13に吊り下がるように取り付けられている。
【0051】
つぎに、本実施形態の作用について説明する。
【0052】
本実施形態も第一実施形態と同様に、図6に示すように、サスペンションメンバ200のサブメンバ210のフランジ216の下端部216Aに切取部218を形成することで、フランジ216の共振による変形を抑制し、デフうなり音を低減させている。
【0053】
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0054】
例えば、上記実施形態では、フランジの長手方向の中央部分を、根元部分を残すように切り取ることで、切取部を形成したが、これに限定されない。例えば、複数箇所に分割して切り取って、複数の切取部を形成しても良い。或いは、円形や四角形などの孔をあけても良い。要は、フランジの一部を切り取って、フランジの共振を抑制できれば良く、どのような切り取り方をしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第一実施形態のサスペンションメンバをフレームに取り付け、下からから見た斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態のサスペンションメンバをフレームに取り付け、上からから見た斜視図である。
【図3】本発明の第一実施形態のサスペンションメンバの斜視図である。
【図4】本発明の第一実施形態のサスペンションメンバのフランジの端部部分の拡大図である。
【図5】本発明の第二実施形態のサスペンションメンバをボディに取り付け、下からから見た斜視図である。
【図6】本発明の第二実施形態のサスペンションメンバを下からから見た斜視図である。
【図7】切取部の有無によるデフうなり音の差を示すグラフである。
【符号の説明】
【0056】
10 車体
11 車体
12 フレーム
13 ボディ
20 デフキャリヤ
21 デフキャリヤ
100 サスペンションメンバ(支持部材)
110 サブメンバ(第二支持部材)
116 フランジ
118 切取部
120 メインメンバ(第一支持部材)
200 サスペンションメンバ(支持部材)
210 サブメンバ(第二支持部材)
216 フランジ
218 切取部
220 メインメンバ(第一支持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられ、デフキャリヤを支持する支持部材と、
前記支持部材の端部に設けられたフランジと、
前記フランジの一部を切り取って形成した切取部と、
を備えることを特徴とするデフキャリヤの支持構造。
【請求項2】
前記支持部材は、
前記車体に取り付けられ、前記デフキャリヤを支持する第一支持部材と、
前記第一支持部材に支持され、前記デフキャリヤを支持する第二支持部材と、
を有し、
前記第二支持部材の端部に前記フランジが設けられ、該フランジに前記切取部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のデフキャリヤの支持構造。
【請求項3】
前記切取部は、前記フランジの張り出し方向と直交する長手方向の中央部分に形成したことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載のデフキャリヤの支持構造。
【請求項4】
前記切取部は、前記フランジの根元部分を残すように、該フランジの一部を切り取って形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のデフキャリヤの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−269266(P2007−269266A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99901(P2006−99901)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】