説明

デュアルフィード噴霧器用液分配器を備えた乾式煙道ガス脱硫システム

支持部材(161)と、支持部材(161)に回転可能に結合された噴霧盤(162)と、試薬スラリー(163a)を送達領域(165)に送達するための第1供給ライン(163)と、希釈液(164a)を送達領域(165)に送達するための第2供給ライン(164)とを有する、噴霧乾燥吸収器で用いられる噴霧器システム(160)。送達領域(165)は、試薬スラリー(163a)と希釈液(164a)の相互作用によって生じるスケールの形成を低減するべく噴霧器システム(160)内に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年12月12日に出願した米国特許仮出願第61/122,227号の優先権を主張するものであり、ここで参照することによりその記載の全てを本書に含める。
【0002】
本発明は、一般に、デュアルフィード噴霧器用液分配器(dual feed atomizer liquid distributor)に関し、より詳しくは、デュアルフィード噴霧器用液分配器が設けられた、煙道ガス流を処理するための乾式煙道ガス脱硫システムに関する。
【背景技術】
【0003】
燃料の燃焼、特に化石燃料や廃棄物のような炭素質材料の燃焼は、水銀(Hg)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)のような不純物や、フライアッシュのような粒子を含む煙道ガス流を生じるが、これらの不純物や粒子は、煙道ガスを環境に放出する前に、許容可能なレベルまで低減または除去する必要がある。多くの管轄区域において設けられている規制に応じて、煙道ガスに含まれる不純物や粒子を除去または低減するべく多くのプロセスや装置が開発されている。
【0004】
燃料の燃焼によって蒸気を生成するボイラーから、煙道ガス粒子、Hg、NOx、及びSOx不純物を低減する典型的な方法は、煙道ガス処理装置を用いるものである。そのような装置には、静電集塵器(ESP)、布フィルターバッグハウス、触媒システム、湿式煙道ガス脱硫システム(wet flue gas desulfurization system)、及び/または、乾式煙道ガス脱硫システム(dry flue gas desulfurization system)が含まれる(湿式煙道ガス脱硫システム及び乾式煙道ガス脱硫システムを、それぞれ、WFGD及びDFGDという)。
【0005】
いくつかの煙道ガス流処理システムでは、DFGDシステムを用い、試薬スラリーまたは溶液を煙道ガスに接触させ、その中のSOxと反応させることで、SOxのような酸性成分の除去促進が図られている。現在のDFGDシステムは、試薬スラリーを(典型的には希釈液と共に)受領する噴霧器システムを有する噴霧乾燥吸収器を用いている。
【0006】
希釈液と共に試薬スラリーまたは溶液を噴霧器システムに供給すると、供給管内にスケールが形成される。スケールが形成されると、清掃及び保守のためにプラントやシステムが停止されることとなる。理解されるように、プラントまたはシステムの停止、及び、それに関連するシステム及び/またはプラントの清掃及び保守には、時間及びコストがかかる。噴霧器システムにおけるスケールの形成を低減するシステム及びプロセスによって、清掃や保守のためにプラントやシステムを停止させる回数が少なくなる。
【発明の概要】
【0007】
本書にて説明される側面によると、支持部材と、前記支持部材に回転可能に結合された噴霧盤と、試薬スラリーを送達領域に送達するための第1供給ラインと、希釈液を前記送達領域に送達するための第2供給ラインとを有する、噴霧乾燥吸収器で用いられる噴霧器システムであって、前記送達領域は、前記試薬スラリーと前記希釈液の相互作用によって生じるスケールの形成を低減するべく当該噴霧器システム内に配置されている噴霧器システムが提供される。
【0008】
本書にて説明される別の側面によると、噴霧器システムにおけるスケールの形成を低減する方法であって、支持部材と、送達領域と、噴霧盤と、第1供給ラインと、第2供給ラインとを有する噴霧器システムを煙道ガス処理システムに設けるステップと、試薬スラリーを前記噴霧器システムに送り、前記試薬スラリーが前記第1供給ラインを通じて前記送達領域に送達されるようにするステップと、希釈液を前記噴霧器システムに送り、前記希釈液が前記第2供給ラインを通じて前記送達領域に送達されるようにするステップと、前記試薬スラリーと前記希釈液の相互作用によって生じるスケールの形成を低減するべく前記噴霧器システム内に前記送達領域を配置するステップとを有する方法が提供される。
【0009】
上記の及び他の特徴は、以下の図面及び詳細な説明によって例示される。
【0010】
次に、実施形態を示す図面を参照する。これら図面において、同様の要素は同様の符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本書で説明される実施形態に基づく煙道ガス流処理システムの模式図である。
【図2】本書で説明される実施形態に基づく噴霧器システムの断面ブロック図である。
【図3】本書で説明される実施形態に基づく噴霧器システムの断面ブロック図である。
【図4】本書で説明される実施形態に基づく噴霧器システムの断面ブロック図である。
【図4A】図4に示した噴霧器システムの単純化したブロック図である。
【図5】本書で説明される実施形態に基づく噴霧器システムの断面ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、石炭などの燃料112を燃焼して煙道ガス流114を生成する燃焼室110を有する煙道ガス流処理システム100を示している。煙道ガス流114は、限定するものではないが、粒子、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、水銀、二酸化炭素(CO)などの汚染物質を含み得る。煙突120または他の排気装置から環境に放出される前に、煙道ガス流114は、通常、その中に含まれる汚染物質を除去または低減するための処理を受ける。
【0013】
一実施形態では、図1に示すように、煙道ガス流114は噴霧乾燥吸収器130へ進む。図1には示されていないが、噴霧乾燥吸収器130に導入される前に、煙道ガス流114は、空気予熱器などの1または複数の装置を通過してもよい。
【0014】
噴霧乾燥吸収器130において、煙道ガス流114は、SOx、塩化水素(HCl)、フッ化水素(HF)、及び臭化水素(HBr)などの酸性成分を煙道ガス流から除去し、酸性ガスのレベルが低減された煙道ガス流140を生成するのを促進する試薬と相互作用する。図1に示すように、酸性ガスのレベルが低減された煙道ガス流140は、煙突120を介して環境に放出される前に、粒子除去装置150に供給される。粒子除去装置150は、バッグハウス(bag house)、静電集塵器(ESP)、機械式集塵器などであってよい。煙道ガス流処理システム100は、本実施形態において説明される処理によって限定されるものではなく、酸性ガスのレベルが低減された煙道ガス流140は、他の煙道ガス処理装置(限定するものではないが、NOx除去装置、冷却塔、空気予熱器などを含む)を通ってもよい。
【0015】
煙道ガス流114からの酸性成分の除去は、排出規制に従うためによくなされる。一実施形態では、煙道ガス流114中に存在する酸性成分は、煙道ガス流を噴霧乾燥吸収器130に供給し、そこで噴霧器システム160によって生成された霧状の試薬132と接触させることによって除去される。霧状の試薬132は、煙道ガス流114中に存在する酸性成分の吸収を促進する。
【0016】
図2〜図5に示すように、噴霧器システム160は、支持部材161に回転可能に結合された噴霧盤162を有する。一例では、支持部材161は、固定したハウジング161b内に格納された回転軸161aを有し、噴霧盤162はこの回転軸に結合される。この噴霧器システム160は、第1供給ライン163と第2供給ライン164とを有するデュアルフィードシステムである。
【0017】
第1供給ライン163は、試薬スラリーまたは溶液163a(以下、試薬スラリーという)を、噴霧器システム160内の送達領域165へ送達する。試薬スラリー163aは、水などの液体と、煙道ガス流114からの酸性成分の吸収及び除去を促進する任意の試薬とを含み得る。一例では、試薬スラリー163aは、試薬として石灰(水酸化カルシウム)を含んでもよい。別の例において、試薬スラリー163aは、試薬として活性炭を含んでもよい。更に別の例において、試薬スラリー163aは、試薬として石灰と活性炭の組み合わせを含んでもよい。
【0018】
第2供給ライン164は、希釈液164aを噴霧器システム160内の送達領域165へ送達する。一実施形態において、希釈液164aは水である。別の実施形態において、希釈液164aは、煙道ガス流処理システム100内の冷却塔(図示せず)からの未処理の水である。更に別の実施形態において、希釈液164aは、処理された淡水(飲料水)、あるいは、冷却塔、井戸、川からの未処理の水、または煙道ガス流処理システム100内の若しくはそれを補助する処理プロセスからの他の排水とすることができる。
【0019】
一実施形態において、試薬スラリー163a及び希釈液164aは、等しい流量で噴霧器システム160に送られる。試薬スラリー163a及び希釈液164aの流量は、システム毎に異なってもよく、ユーザの要望、噴霧器システム160の用途、及び噴霧器システムの能力(例えば、大きさやパワー)に応じて変わり得る。
【0020】
一例では、試薬スラリー163a及び希釈液164aは、合わせたトータルの流量が200ガロン/分(gpm)を越えない、等しい流量で噴霧器システムに送られる。例えば、試薬スラリー163aを100gpmの流量で供給し、希釈液164aを100gpmの流量で供給し、トータルの流量が200gpmとなるようにしてもよい。流量はこの点について限定されず、試薬スラリー163a及び希釈液164aを、約200gpm以下の任意の組み合わせの流量(例えば、試薬スラリーの流量が10gpmで、希釈液の流量が10gpm;試薬スラリーの流量が50gpmで、希釈液の流量が50gpm)で供給することができる。
【0021】
別の実施形態において、試薬スラリー163a及び希釈液164aは、異なる流量で噴霧器システム160に送られる。試薬スラリー163a及び希釈液164aの流量は、システム毎に異なってもよく、ユーザの要望、噴霧器システム160の用途、及び噴霧器システムの能力(例えば、大きさやパワー)に応じて変わり得る。
【0022】
一例では、試薬スラリー163a及び希釈液164aは、合わせたトータルの流量が200ガロン/分(gpm)を越えない、異なる流量で噴霧器システム160に送られる。例えば、試薬スラリー163aを約50gpmの流量で供給し、希釈液164aを約150gpmの流量で供給し、トータルの流量が約200gpmとなるようにしてもよい。流量はこの点について限定されず、試薬スラリー163a及び希釈液164aを、約200gpm以下の任意の組み合わせの流量(例えば、試薬スラリーの流量が約10gpmで、希釈液の流量が約25gpm;試薬スラリーの流量が約50gpmで、希釈液の流量が約60gpm;試薬スラリーの流量が約18gpmで、希釈液の流量が約28gpm;試薬スラリーの流量が約22gpmで、希釈液の流量が約19gpm;試薬スラリーの流量が約19gpmで、希釈液の流量が約25gpm;試薬スラリーの流量が約17gpmで、希釈液の流量が約24gpm)で供給することができる。
【0023】
試薬スラリー163a及び希釈液164aの流量は、図2に示すように、1または複数の弁210と通信可能なコントローラ200によって制御することができる。コントローラ200は、試薬スラリー163a及び希釈液164aの流量を制御するべく予めプログラムされていてもよい。或いは、オペレータコマンド220により、コントローラ200に指示を与えることによって流量を変えたり設定したりしてもよい。例えば、コントローラ200は、より多くの、または、より少ない試薬スラリー163及び/または希釈液164aが噴霧器システム160に供給されるように、弁210の一つまたは両方を選択的に開閉することができる。尚、コントローラ200、弁210及びオペレータコマンド220は、図2にしか図示していないが、本明細書に示したいずれの実施形態でも採用し得るものである。
【0024】
送達領域165は、試薬スラリー163aと希釈液164aの相互作用により生じるスケールの形成を低減するべく噴霧器システム160内に配置される。送達領域165は、噴霧器システム160において生じるスケール堆積を減らすため、噴霧盤162に近接して配置される。
【0025】
一般に知られているように、試薬スラリー163aと希釈液164aが相互作用すると、スケール堆積が形成される。スケール堆積の形成により噴霧器システム160が詰まり、保守及び清掃のため噴霧器システムを定期的に停止することが必要となる。試薬スラリー163aと希釈液164aを噴霧器システム160内で極力長い間分けて維持すると、スケールの形成が低減されることがわかった。
【0026】
試薬スラリー163aと希釈液164aを分ける一つの方法は、噴霧盤162に近接して配置された送達領域165への試薬スラリー及び希釈液の各々の送達を独立に制御し、送達された試薬スラリー及び希釈液が噴霧盤162で霧化されて霧状の試薬132が形成されるようにすることである。
【0027】
特定の例では、図2に示すように、送達領域165は、噴霧盤162の表面の上方且つ当該表面に近接した位置に配置された、固定した装置からなる。送達領域165は、噴霧盤162の表面に近接した、溝、導管、または複数のオリフィスを有する、固定板であってよい。この実施形態では、試薬スラリー163a及び希釈液164aは、それぞれ、第1供給ライン163及び第2供給ライン164を介して、送達領域165に別個に送達される。送達領域165に送達されると、試薬スラリー163aと希釈液164aは相互作用し、噴霧液170として噴霧盤162に供給され、そこで霧化されて霧状の試薬132を生成する。
【0028】
別の例では、図3に示すように、送達領域165は、噴霧器システム160の液分配器167の内部室166からなる。液分配器167は、噴霧盤162の表面の上方且つ当該表面に近接した位置において、支持部材161に結合されている。一実施形態では、液分配器167は、固定したハウジング161bに固定されている。噴霧器システム160は、説明した特定の装置に限定されるものではなく、液分配器167を支持部材161に回転可能に結合することも考えられる。
【0029】
図3に示すように、第1供給ライン163は、液分配器167の内部室166に試薬スラリー163aを送達する。希釈液164aは、第2供給ライン164を介して、別個に且つ独立して、液分配器167の内部室166に送達される。試薬スラリー163a及び希釈液164aは、液分配器167の内部室166内で相互作用し、その後、噴霧盤162に送られて霧化される。
【0030】
一実施形態において、液分配器167は開口168を有する。この開口168は、液分配器167の内部室166から液分配器の外側部分169へ延在している。開口168は、噴霧盤162に近接した位置に配置される。図3では、支持部材161の右側に配置された開口168が図示されているが、噴霧器システム160はこの点について限定されるものではなく、開口168は、噴霧盤162に近接した液分配器の外側部分169の任意の点に配置してもよい。
【0031】
図3において、試薬スラリー163a及び希釈液164aは、液分配器167の内部室166に供給され、そこで接触し相互作用して噴霧液170を形成する。噴霧液170は、開口168を通って流れ、液分配器167の内部室166から噴霧盤162へと出ていく。噴霧液170は噴霧盤162によって霧化され、霧状の試薬132を生成する。
【0032】
別の実施形態において、図4に示すように、液分配器167は第1の開口168と第2の開口168’とを有する。第1及び第2の開口168、168’の各々は、液分配器167の内部室166から外側部分169へ延在する。図4に示すように、第1の開口は第1供給ライン163の反対側に位置し、第2の開口168’は第2供給ライン164の反対側に位置している。第1及び第2の開口168,168’のいずれも噴霧盤162に近接して配置される。
【0033】
図4Aは、図4のブロック図を単純化して示している。図4Aに詳しく示されているように、液分配器167の内部室166は、第1の開口168と第2の開口168’との間に位置するバリア172を有し得る。バリア172は、液分配器の内部室166に送達された試薬スラリー163aと希釈液164aとの相互作用を分離する。
【0034】
一実施形態において、バリア172は、液分配器167の内部室166において試薬スラリー163aが希釈液164aと相互作用するのに応じて形成されるスケールバリアであってよい。スケールバリア172は、希釈液164aから試薬スラリー163aを分離し、噴霧液の大部分が液分配器167の外側部分169を越えて形成されるようにする。尚、図4及び図4Aには2つの開口168、168’しか示されていないが、液分配器はこの点について限定されるものではなく、2より多くの開口があってもよい。
【0035】
試薬スラリー163a及び希釈液164aの流量の制御によって、スケールバリア172の形成がなされる。流量の制御により、噴霧器システム160または煙道ガス処理システム100の停止を必要とするような、大量のスケール堆積の形成なしに、液分配器167の内部室166内にスケールバリア172を形成することができる。
【0036】
液分配器167の内部室166内にスケールバリア172が形成された後、液分配器167の内部室166に送達された試薬スラリー163aは、希釈液164aと反応することなく、第1の開口168を通って出て、噴霧盤162へと流れる。同様に、液分配器167の内部室166に送達された希釈液164aは、試薬スラリー163aと反応することなく、第2の開口168’を通って出て、噴霧盤162へと流れる。試薬スラリー163aと希釈液164aは噴霧盤162において相互作用し、噴霧液170を形成する。噴霧液170は霧化され、霧状の試薬132を形成する。
【0037】
別の実施形態では、バリア172は、噴霧器システム160の組み立て時、あるいは、改良時に液分配器167の内部室166内に設置される製造されたバリアである。製造されたバリアは、スケールバリアと同様に機能し、試薬スラリー163aを希釈液164aから分離し、試薬スラリーが液分配器167の内部室166に入り第1の開口168から出て、希釈液が内部室に入り第2の開口168’から出るのを可能とする。
【0038】
図5に示すように、別の実施形態において、第1の開口168と第2の開口168’は互いに同心状に配置される。第1の開口168及び第2の開口168’を同心状に配置することで、試薬スラリー163aと希釈液164aを別個に噴霧盤162へ送り、そこで霧化して霧状の試薬132を形成することができる。
【0039】
第1の開口168と第2の開口168’をこのように配置することで、試薬スラリー163aと希釈液164aの流量が等しくなくても、噴霧器システム160は、問題なく動作することができる。例えば、第1の開口168と第2の開口168’をこのように配置することで、噴霧盤162は、不安定さ、即ち振動がほとんどまたは全くなく回転することができる。
【0040】
希釈液164aと試薬スラリー163aを別々に送達することで、保守及び清掃のために噴霧器システムを停止する必要が少なくなり、それによって噴霧器システム及び煙道ガス流処理システム100の連続的な運転が促進される。更に、希釈液164a及び試薬スラリー163aの流量の制御によって、噴霧器システム160が、噴霧盤162の振動のような乱れをほとんどまたは全く生じることなく動作することが可能となる。
【0041】
以下の例は、煙道ガス流処理システムに用いられる本開示に基づく噴霧器システムの一実施形態を例示する。
【0042】
例1
ここに開示された実施形態に基づく噴霧器システムの解析のため、2つの供給ラインが結合された液分配器を有する噴霧器システムを、噴霧乾燥吸収器に設置した。第1供給ラインは水酸化カルシウムと水を含む試薬スラリーを送り、第2供給ラインは煙道ガス処理システムの冷却塔からの排水を含む希釈液を送った。液分配器は少なくとも2つの開口を有し、これら開口の一つは第1供給ラインの反対側に位置し、これら開口の第2のものは第2供給ラインの反対側に位置した。
【0043】
試薬スラリー及び希釈液は液分配器に送られ、相互作用して液分配器内にスケールバリアを形成し、それ以降液分配器に入る試薬スラリーと希釈液が互いに分離して維持されるようにした。試薬スラリーは第1供給ラインの反対側の開口を通じて液分配器から出ていき、希釈液は第2供給ラインの反対側の開口を通じて液分配器から出ていった。液分配器を出た後、試薬スラリーと希釈液は相互作用し、噴霧盤で霧化されて霧状の試薬を形成した。
【0044】
噴霧器システムに動作上の乱れが生じないか、及び、清掃及び保守の間隔を遅れさせることができるか確認するため、6回の個別の試行を行った。
【0045】
6回の試行の各々において、試薬スラリーと希釈液の流量は同じではなかった。1回目の試行では、試薬スラリーの流量は18.93ガロン/分(gpm)であり、希釈液の流量は28.17gpmであった。2回目の試行では、試薬スラリーの流量は22.4gpmであり、希釈液の流量は19gpmであった。3回目の試行では、試薬スラリーの流量は19gpmであり、希釈液の流量は25gpmであった。4回目の試行では、試薬スラリーの流量は17.85gpmであり、希釈液の流量は24.67gpmであった。5回目の試行では、試薬スラリーの流量は13.17gpmであり、希釈液の流量は22.39gpmであった。6回目の試行では、試薬スラリーの流量は12.21gpmであり、希釈液の流量は28.43gpmであった。これらの試行は、約6週間に渡って行われた。
【0046】
表1は、様々な流量と結果として生じた噴霧盤の振動とを示す。試行と試行の間、または、6回目の最後の試行の後の噴霧器システムの清掃または保守は必要なかった。チャート1は、弁の開度(弁が開かれたパーセント)と希釈液及び試薬スラリーの流量との関係を示している。
【表1】

【表2】

【0047】
本発明を様々な実施形態を参照して説明したが、当業者には理解されるように、本発明の範囲を逸脱することなく様々な変更が可能であり、その要素を等価物で置換することができる。更に、本発明の本質的範囲を逸脱することなく、本発明の教示に従って特定の状態または材料を適合させるべく様々な改変が可能である。従って、本発明は、本発明を実施するための最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に属する全ての実施形態を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
前記支持部材に回転可能に結合された噴霧盤と、
試薬スラリーを送達領域に送達するための第1供給ラインと、
希釈液を前記送達領域に送達するための第2供給ラインと
を有する、噴霧乾燥吸収器で用いられる噴霧器システムであって、
前記送達領域は、前記試薬スラリーと前記希釈液の相互作用によって生じるスケールの形成を低減するべく当該噴霧器システム内に配置されている噴霧器システム。
【請求項2】
前記送達領域は、前記噴霧盤の上方に配置された固定板であることを特徴とする請求項1に記載の噴霧器システム。
【請求項3】
前記噴霧盤の上方の位置において前記支持部材に固定された、内部室と少なくとも一つの開口とを有する液分配器を更に有し、
前記送達領域は前記内部室内に配置され、
前記開口は前記内部室から前記液分配器の外側部分へ延在し、当該開口は前記噴霧盤の近傍に位置していることを特徴とする請求項1に記載の噴霧器システム。
【請求項4】
前記少なくとも一つの開口は、前記液分配器に設けられた第1の開口と第2の開口とを含み、前記第1及び第2の開口の各々は、前記内部室から前記液分配器の外側部分へ延在し、これら第1及び第2の開口は前記噴霧盤の近傍に位置していることを特徴とする請求項3に記載の噴霧器システム。
【請求項5】
前記第1の開口は前記第2の開口と同心状に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の噴霧器システム。
【請求項6】
前記液分配器の前記第1の開口は前記第1供給ラインの反対側に配置され、前記液分配器の前記第2の開口は前記第2供給ラインの反対側に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の噴霧器システム。
【請求項7】
前記試薬スラリーは、前記液分配器の前記内部室において前記希釈液に接触して前記内部室内にスケールバリアを形成し、前記スケールバリアは前記液分配器の前記内部室における前記試薬スラリーと前記希釈液の更なる相互作用を分離することを特徴とする請求項6に記載の噴霧器システム。
【請求項8】
前記液分配器の前記内部室に配置された製造されたバリアを更に有し、前記製造されたバリアは前記液分配器の前記内部室における前記試薬スラリーと前記希釈液の相互作用を分離することを特徴とする請求項6に記載の噴霧器システム。
【請求項9】
コントローラと少なくとも一つの弁とを更に有し、前記コントローラは前記試薬スラリー及び前記希釈液の前記送達領域への流量を制御するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の噴霧器システム。
【請求項10】
前記試薬スラリーは水酸化カルシウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の噴霧器システム。
【請求項11】
噴霧器システムにおけるスケールの形成を低減する方法であって、
支持部材と、送達領域と、噴霧盤と、第1供給ラインと、第2供給ラインとを有する噴霧器システムを煙道ガス処理システムに設けるステップと、
試薬スラリーを前記噴霧器システムに送り、前記試薬スラリーが前記第1供給ラインを通じて前記送達領域に送達されるようにするステップと、
希釈液を前記噴霧器システムに送り、前記希釈液が前記第2供給ラインを通じて前記送達領域に送達されるようにするステップと、
前記試薬スラリーと前記希釈液の相互作用によって生じるスケールの形成を低減するべく前記噴霧器システム内に前記送達領域を配置するステップと
を有する方法。
【請求項12】
前記試薬スラリーと前記希釈液は、異なる流量で前記噴霧器システムに送られることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試薬スラリーと前記希釈液は、等しい流量で前記噴霧器システムに送られることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記噴霧盤の上方の位置において前記噴霧器システムに液分配器を固定するステップを更に有し、
前記液分配器は、内部室と、前記内部室から前記液分配器の外側部分へ延在し前記噴霧盤の近傍に位置する少なくとも一つの開口とを有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記液分配器の前記内部室に前記第1供給ライン及び前記第2供給ラインを提供するステップと、
前記試薬スラリーを前記第1供給ラインを通じて前記液分配器の前記内部室へ送達するステップと、
前記希釈液を前記第2供給ラインを通じて前記液分配器の前記内部室へ送達するステップと
を更に有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記液分配器の前記内部室において前記試薬スラリーと前記希釈液とを混合し噴霧液を形成するステップと、
前記噴霧液を前記液分配器の前記少なくとも一つの開口を通じて前記噴霧盤へ送達するステップと
を更に有することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも一つの開口は第1の開口と第2の開口とを含み、
当該方法は、
前記液分配器の前記内部室において前記試薬スラリーと前記希釈液とを混合するステップと、
前記内部室内にスケールバリアを形成するステップと
を更に有し、
前記スケールバリアは前記液分配器の前記内部室における前記試薬スラリーと前記希釈液の更なる相互作用を分離することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記液分配器の前記第1の開口は前記第1供給ラインの反対側に配置され、前記液分配器の前記第2の開口は前記第2供給ラインの反対側に配置されていることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記試薬スラリーと前記希釈液が前記スケールバリアによって分かれて維持されるように、前記試薬スラリーと前記希釈液を前記液分配器の前記内部室へ送達するステップと、
前記試薬スラリーを前記第1の開口を通じて前記噴霧盤へ流すステップと、
前記希釈液を前記第2の開口を通じて前記噴霧盤へ流すステップと
を更に有することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記噴霧盤において前記試薬スラリーと前記希釈液とを混合するステップを更に有することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも一つの開口は第1の開口と第2の開口とを含み、
当該方法は、
製造されたバリアを前記液分配器の前記内部室に配置するステップを更に有し、
前記製造されたバリアは前記液分配器の前記内部室における前記試薬スラリーと前記希釈液の相互作用を分離することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも一つの開口は第1の開口と第2の開口とを含み、
前記第1の開口は前記第2の開口と同心状に配置されていることを特徴とする請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−515638(P2012−515638A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539726(P2011−539726)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/066736
【国際公開番号】WO2010/068563
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】