説明

デュアルモード水晶発振回路

【課題】Bモードの干渉を確実に抑制すると共に、3次と5次のオーバートーン振動を安定して実現できるデュアルモード水晶発振回路を提供する。
【解決手段】水晶振動子の基本波振動に対する3次のオーバートーン振動を発振する第1の発振手段と、水晶振動子の基本波振動に対する5次のオーバートーンを発振する第2の発振手段と、第1、第2の発振手段のいずれか一方と、水晶振動子との間に5次のオーバートーン振動の干渉を阻止する帯域制限手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振子を用いた発振器に係り、特にCモードとBモードの発振を高安定に行うデュアルモード水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水晶振動子としてSCカットの水晶振動子が注目されている。SCカットの水晶振動子はATカットの水晶振動子に比して高いQ値を得られ、かつ熱衝撃特性が良好で温度の急激な変化に対して良好な安定性を示し、特に温度の変化の激しい環境で使用する場合には望ましい特性を有する。一般に圧電結晶は、結晶軸に対して特定の切断角度においてのみ圧電振動を励振することができる。たとえば水晶の圧電特性を利用した水晶振動子の場合も、結晶軸に対して特定の切断角度において固有の振動特性を呈する。
【0003】
例えばSCカットの水晶振動子は、Cモードの発振の近傍で、かつその高域側の周波数にBモードの発振を生じる。これを用いて、CモードとBモードで発振するデュアルモード水晶発振回路が知られている。
【0004】
ここでBモードの振動のクリスタルインピーダンス(以下CIと略称する)の値は、Cモードのそれに等しいか場合によっては小さい。このため、実際に発振器を製作すると往々にしてBモードで発振してしまう問題がある。したがってSCカットの水晶振動子を用いる場合は、Cモードの振動を確実に励振するために、Bモードの振動を抑圧してそのCIをCモードのそれよりも大きくする必要がある。このために、水晶片の外形形状、保持位置等について種々の工夫を行なうことによって、Bモードの振動を抑制するようにしている。しかしながら、このようにしても温度変化によって、たとえばCモードとBモードとが結合して、突然、周波数が大幅に変動する、いわゆるジャンプ現象を生じる問題があった。このジャンプ現象が発生することによって、安定した両モードの発振を実現することが難しかった。さらに、同じ次数では、CモードとBモードの発振周波数が近く、発振周波数を選択することが難しかった。
【0005】
図8は上記従来のデュアルモード発振回路として、SCカットの水晶振動子6(以下水晶振動子6と略称する)を用いた、コルピッツ変形型のデュアルモード水晶発振回路1−1を示す図である。
【0006】
デュアルモード水晶発振回路1−1は、Cモードの発振回路部2−1と、Bモードの発振回路部3−1から構成される。
Cモードの発振回路部2−1において、発振増幅用としてのトランジスタTr4−1のベースはコンデンサC5の一端に接続され、コンデンサC5の他端は水晶振動子6の一端に接続される。水晶振動子6の他端はコンデンサC7の一端に接続される。トランジスタTr4−1のベース−接地間は、分割コンデンサCa、Cbの直列回路が接続され、分割コンデンサCa、Cbの接続点(分割点)とエミッタとの間に、帯域制限素子として例えばLC直列回路9−1が挿入される。
【0007】
トランジスタTr4−1は、容量性リアクタンスである分割コンデンサCa、Cbと、誘導性リアクタンスである水晶振動子6により、コルピッツ型発振回路を構成し、水晶振動子6の共振周波数に基づく発振周波数の発振波をコレクタ電圧として出力し、出力端Vocに発振波を出力する。さらに、LC直列回路9−1が分割点に接続されているのでコルピッツ型発振回路が変形している。LC直列回路9−1は、Cモードの3次オーバートーンで狭帯域の負性抵抗を得るためのものである。
【0008】
また可変容量ダイオードD8は、逆バイアス電圧を与えることによって、容量を変化させ、水晶振動子6に対する負荷容量を変化させることで発振周波数を調整する。
続いてBモードの発振回路部3−1は、発振増幅用としてのトランジスタTr4−2のベースはコンデンサC14の一端に接続され、コンデンサC14の他端は水晶振動子6の一端に接続される。水晶振動子6の他端はコンデンサC7の一端に接続される。トランジスタTr4−2のベース−接地間は、分割コンデンサCd、Ceの直列回路が接続され、分割コンデンサCd、Ceの接続点(分割点)とエミッタとの間に、帯域制限素子として例えばLC直列回路9−2が挿入される。
【0009】
トランジスタTr4−2は、容量性リアクタンスである分割コンデンサCd、Ceと、誘導性リアクタンスである水晶振動子6により、コルピッツ型発振回路を構成し、水晶振動子6の共振周波数に基づく発振周波数の発振波をコレクタ電流出力し、出力端VOBに発振波を出力する。さらに、LC直列回路9−2が分割点に接続されているのでコルピッツ型発振回路が変形している。またLC直列回路9−2は、Bモードの5次オーバートーンで狭帯域の負性抵抗を得るためのものである。
【0010】
以上のように構成されたデュアルモード水晶発振回路1−1は、CモードおよびBモードの発振周波数帯域おいて、負性抵抗の特性を示す部分が得られると、両モードの発振が実現できる可能性がある。
【0011】
ここで、デュアルモード水晶発振回路1−1のシミュレーションによる負性抵抗曲線を、図9に示す。なお縦軸は抵抗成分「Ω」を示し、横軸は周波数「MHz」を示す。また、測定箇所は図8の「T」である。負性抵抗は回路から水晶振動子を取り外した状態で測定する。水晶振動子を取り外したところに電流源と電流計を入れて、そのときの発振回路側の電圧をV2、もとの水晶振動子側(バリキャップがついている側)の電圧をV1、そのときに電流計の値をI_probe1.iとして負性抵抗を算出しています。すなわちNegR=real(V2−V1)/ I_probe1.iここでrealは実部を表現する。
【0012】
同図より、Cモードの発振周波数帯域およびBモードの発振周波数帯域おいて、負性抵抗成分が現れている。すなわちこの負性抵抗は(V2―V1)/iの実部の抵抗になっている。m1はCモードで10.00MHzの周波数で負性抵抗はー161.937Ω、m2はBモードで18.20MHzの周波数で負性抵抗はー39.145Ωである発振点をそれぞれに示す。
【0013】
図8の従来例によるデュアルモード水晶発振回路1−1は、負性抵抗が2箇所存在し、二つの発振周波数間に山とまではいかないが正の領域(最大値で30Ω程度)が存在する。この程度では周波数のジャンプが起こるので、Cモード発振とBモード発振の引き込み現象が生じて、安定的にデュアルモード発振を実現できない。
【0014】
ここで、上記問題点を解決する先行技術として、非特許文献1の文献が存在する。この文献によると、LC直列フィルタを付加したコルピッツ形水晶発振回路を左右に接続し、それぞれBモードとCモードが発振する。左右の回路がお互いに及ぼす影響を抑えるために、左右の回路の接続部には共振周波数がBモード側に3次のオーバートーンである5.46MHzとCモード側に5次オーバートーンである8.30MHzのLC直列フィルタを付加している。
【非特許文献1】榎本繁、張朝凱、竹野伸郎、大塚日出男、関根好文“次数の異なるCモードとBモードのオーバートーンを用いたデュアルモード水晶発振器”日本大学理工学部学術講演会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし上記従来の技術では、Bモードの発振周波数が水晶振動子の基本波振動の3次オーバートーンに対し、Cモードの発振周波数が水晶振動子の基本波振動の5次オーバートーンであったため、一般に使用される発振周波数と逆の関係となっており、用途が限定されるという欠点があった。
【0016】
そこで本発明は、上記実情に鑑み、Bモードの干渉を確実に抑制すると共に、Bモードの発振周波数が水晶振動子の基本波振動の5次オーバートーンになり、Cモードの発振周波数が水晶振動子の基本波振動の3次オーバートーンとなる水晶振動子の発振回路を用いたデュアルモード水晶発振回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決する本発明の一態様によれば、
水晶振動子の第1のモードのオーバートーンを発振する第1の発振手段と、
前記水晶振動子の第2のモードのオーバートーンを発振する第2の発振手段と、
前記第1、第2の発振手段のいずれか一方と、前記水晶振動子との間に前記のオーバートーンの干渉を阻止する帯域制限手段、を備えたことを特徴とするデュアルモード水晶発振回路である。
【0018】
これにより、高安定なデュアルモード水晶発振器を提供できる。
本発明の第2の態様によれば、
前記第1のモードはCモードの3次のオーバートーン振動であり、第2のモードはBモードの5次のオーバートーン振動である請求項1記載のデュアルモード水晶発振回路である。
【0019】
これにより、Cモードの3次及びBモードの5次のオーバートーンを安定的に発振できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のデュアルモード水晶発振回路によれば、水晶振動子の基本波振動に対する次数の異なるBモード、Cモードの発振を、安定して実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る、コルピッツ変形型の発振回路でSCカットの水晶振動子6(以下水晶振動子6と略称する)を用いた、デュアルモード水晶発振回路1−1を示す図である。
【0022】
デュアルモード水晶発振回路1−2は、Cモードの発振回路部2−2と、Bモードの発振回路部3−2から構成される。
Cモードの発振回路部2−2において、発振増幅用としてのトランジスタTr4−1のベースはコンデンサCc´とインダクタンスCc´とからなるLC直列回路18の一端に接続され、LC直列回路18の他端は水晶振動子6の一端に接続される。ここでLC直列回路18は帯域制限手段を構成する。水晶振動子6の他端はコンデンサC7の一端に接続され、コンデンサC7の他端は可変容量ダイオードD8を介して接地する。トランジスタTr4−1のベース−接地間は、分割コンデンサCa、Cbの直列回路が接続され、分割コンデンサCa、Cbの接続点(分割点)とエミッタとの間に、帯域制限素子として例えばLC直列回路9−1が挿入される。エミッタ−接地間は抵抗R10を介して接地される。コレクタはプルアップ抵抗R11と、コンデンサC12の一端が接続され、コンデンサC12の他端を出力端VOCとした構成になっている。なお、図中の符号Vcは電源、Rd5、Rd6、Rd7、Rd8はトランジスタバイアス抵抗、C13はバイパスコンデンサである。
【0023】
トランジスタTr4−1は、容量性リアクタンスである分割コンデンサCa、Cbと、誘導性リアクタンスである水晶振動子6により、コルピッツ型発振回路を構成し、水晶振動子6の共振周波数に基づく発振周波数の発振波をコレクタ電圧として出力し、出力端Vocに発振波を出力する。さらに、LC直列回路9−1が分割点に接続されているのでコルピッツ型発振回路が変形している。LC直列回路9−1は、Cモードの3次オーバートーンで狭帯域の負性抵抗を得るためのものである。
【0024】
また可変容量ダイオードD8は、逆バイアス電圧を与えることによって、容量を変化させ、水晶振動子6に対する負荷容量を変化させることで発振周波数を調整する。
続いてBモードの発振回路部3−2は、発振増幅用としてのトランジスタTr4−2のベースは水晶振動子6の一端に接続される。水晶振動子6の他端はコンデンサC7の一端に接続される。コンデンサC7の他端は可変容量ダイオードD8を介して接地する。トランジスタTr4−2のベース−接地間は、分割コンデンサCd、Ceの直列回路が接続され、分割コンデンサCd、Ceの接続点(分割点)とエミッタとの間に、帯域制限素子として例えばLC直列回路9−2が挿入される。エミッタ−接地間は抵抗R15を介して接地される。コレクタはプルアップ抵抗R16と、コンデンサC17の一端が接続され、コンデンサC17の他端を出力端VOBとした構成になっている。
【0025】
トランジスタTr4−2は、容量性リアクタンスである分割コンデンサCd、Ceと、誘導性リアクタンスである水晶振動子6により、コルピッツ型発振回路を構成し、水晶振動子6の共振周波数に基づく発振周波数の発振波をコレクタ電流出力し、出力端VOBに発振波を出力する。さらに、LC直列回路9−2が分割点に接続されているのでコルピッツ型発振回路が変形している。またLC直列回路9−2は、Bモードの5次オーバートーンで狭帯域の負性抵抗を得るためのものである。
【0026】
以上のように構成されたデュアルモード水晶発振回路1−2は、CモードおよびBモードの発振周波数帯域おいて、負性抵抗の特性を示す部分が得られると、両モードの発振が実現できる。また、Cモードの共振周波数(略10MHz)は、水晶振動子6の基本波振動の3次オーバートーンに対し、Bモードの共振周波数(略18.2MHz)は5次オーバートーンとなる。
【0027】
ここで、デュアルモード水晶発振回路1−2の負性抵抗曲線を、図2に示す。
同図より、Cモードの発振周波数帯域およびBモードの発振周波数帯域おいて、負性抵抗成分が現れている。すなわちこの負性抵抗は(V2―V1)/iの実部の抵抗になっている。
【0028】
すなわち図2は第1の実施例のインピーダンスの虚部11と実部(負性抵抗曲線)12を示す。これらは、実際の回路を測定器(インピーダンスアナライザ)で測定した実測値である。
【0029】
また、測定箇所は図1の「T」である。なお縦軸は抵抗値「Ω」を示し、横軸は周波数「MHz」を示す。
第1の実施例において帯域制限素子としてLC直列回路18を挿入することによって、BモードおよびCモードの発振周波数帯域において、負性抵抗成分が生じ、そしてこれらの負性抵抗成分の間に、正の抵抗成分が、Bモードの発振周波数帯域近傍に現れることが確認できた。これは負性抵抗曲線12に山13として示される。これにより、第1の実施例は、従来例では不可能であった安定的なデュアルモード発振を行うことができる。すなわち従来例においては、図9に示すように正の抵抗に山が生じなかったが、本発明の第1の実施例は図2の負性抵抗曲線12に示すように、正の抵抗に山13を生じ、デュアルモード発振をするので、従来例の前記問題が解消した。
【0030】
この正の抵抗成分に山が現れることによって、Bモードの発振による干渉を抑制すると共に、BモードおよびCモードの発振を安定して実現することができる。
以上の構成によるデュアルモード水晶発振回路2−2について、LC直列回路(9−1、9−2、18)のそれぞれの容量値を可変したときの負性抵抗特性について、実験結果を以下に記す。
【0031】
図3は、第1の実施例におけるCモードの発振回路部1−2における、LC直列回路9−1のCcの容量値を可変したときの負性抵抗曲線のシュミレーション値を示す図である。(なお、以下の図4、5、7もシュミレーション値である。)なお、Lcは10μHである。縦軸は抵抗値[Ω]を示し、横軸は周波数[MHz]を示す。また、曲線AはCcの容量値が13.7pF、曲線BはCcの容量値が14.2pF、曲線CはCcの容量値が14.7pFのときを示す。
【0032】
同図より曲線A、B、Cを比べると、容量を大きくするにしたがって、負性抵抗のピークが周波数の低い方に、わずかにズレることが確認できた。これより、Cモードの3次オーバートーンである、10MHz近傍での負性抵抗の周波数依存性は低いといえる。
【0033】
一方図4は、第1の実施例におけるBモードの発振回路部3−2における、LC直列回路9−2のCBの容量値を可変したときの負性抵抗曲線を示す図である。なお、LBは10μHである。縦軸は抵抗値[Ω]を示し、横軸は周波数[MHz]を示す。また、曲線DはCBの容量値が6pF、曲線EはCBの容量値が7pF、曲線FはCBの容量値が8pFのときを示す。
【0034】
同図より曲線Fと曲線D、Eを比べると、Bモードの5次オーバートーンである、18.2MHz近傍の抵抗成分の絶対値が、大幅に小さくなっていることが分かる。すなわち、Bモードの5次オーバートーンでの周波数変化に対する負性抵抗の変化が小さくなっている。これは曲線Fの方が、負性抵抗の絶対値のピークが小さくなるので、その周波数における増幅度が小さくなり、当該周波数にスプリアスが存在しても異常発振現象が起こり難いことを示す。また、Cモードの負性抵抗の変化と比べて変化の度合いが大きいことから、Bモードの5次オーバートーンである、18.2MHz近傍での負性抵抗の周波数依存性は高いといえる。
【0035】
さらに図5は、第1の実施例において、LC直列回路18のCc´の容量値を可変したときの負性抵抗曲線を示す図である。なお、Lc´は10μHである。縦軸は抵抗値[Ω]を示し、横軸は周波数[MHz]を示す。また、曲線GはCc´の容量値が19pF、曲線HはCc´の容量値が24pF、曲線IはCc´の容量値が29pFのときを示す。
【0036】
同図より曲線G、H、Iを比べると、容量を大きくするにしたがって、Cモードの3次オーバートーンである、10MHz近傍での負性抵抗のピークが、周波数の高い方に、わずかにずれることが確認できた。また、Bモードの5次オーバートーンである、18.2MHz近傍での負性抵抗の絶対値が、容量を大きくするにしたがって大きくなることが確認できた。さらに、これと対象位置の関係にある、18.2MHz近傍での正の抵抗成分の絶対値も大きくなることが確認できた。すなわち、LC直列回路18のCc´の容量値の変化は、両モードの発振回路部(2−2、3−2)における負性抵抗の変化に影響を与えることが確認できた。すなわちLC直列回路はCを19、24、29pFと大きくするに従って負性抵抗も大でかつBモードの前の正抵抗も山も高くなり、例えば、29pF(曲線I)のときには、正抵抗の山の値は約1KΩ弱にもなる。したがって、CモードとBモードのオーバートーンの引き込み現象が生じず、より高安定にデュアルモード発振を行う。
(第2の実施形態)
図6は本発明の第2の実施形態に係る、コルピッツ変形型とする発振回路でSCカットの水晶振動子6を用いた、デュアルモード水晶発振回路1−3を示す図である。本実施形態の特徴は、Bモードの発振回路部3−2において、水晶振動子6の一端側と、トランジスタTr4−2のベースとの間に、帯域制限素子として例えばLC直列回路18が挿入されていることである。このLC直列回路18は、Bモードの発振周波数におけるインピーダンスを高めるためのものである。
【0037】
本実施形態においても、図5と同様に、両モードの負性抵抗と、Bモードの5次オーバートーン近傍に、正の抵抗成分が現れるのが確認できた。このときのCc´の容量値を可変したときの負性抵抗曲線を図7に示す。また、測定箇所は図6の「T」である。なお縦軸は抵抗値[Ω]を示し、横軸は周波数[MHz]を示す。また、曲線JはCc´の容量値が0pF、曲線KはCc´の容量値が24pF、曲線LはCc´の容量値が48pFのときを示す。容量値の変化は、図5における変化と、ほぼ同様の変化を示すことが確認できた。なお、LC直列回路18のCがOpFのとき、すなわちCが存在しない時は曲線Iに示すようにデュアルモード発振はしない。
【0038】
したがってLC直列回路18は、どちらか一方のモードの発振回路部(2−2、3−2)に設けるだけで、Cモード3次オーバートーン、Bモード5次オーバートーンの両モードの発振を安定して実現することができる。
【0039】
なお、本発明の他の実施例として(LC回路からなる)帯域制限素子だけでなく、正抵抗の山を作るように一般的なインピーダンス素子を組み合わせて入れることでも、高安定にデュアルモード発振を起こすことは可能である。
【0040】
以上、本発明を適用した実施の形態を説明してきたが、トランジスタはバイポーラトランジスタに限らず、FETを使用してもよい。また、水晶振動子6はSCカット以外にITカットでもよい。さらに水晶振動子6およびその周辺回路を恒温槽内に収納する、OCXO(Oven Controlled Crystal Oscillator)を採用してもよい。
【0041】
また本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成を取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、コルピッツ変形型の発振回路でSCカットの水晶振動子を用いた、デュアルモード水晶発振回路を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る、負性抵抗曲線を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施態様において、モードの発振回路部における、LC直列回路のCcの容量値を可変したときの負性抵抗曲線を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施態様において、Bモードの発振回路部における、LC直列回路のCBの容量値を可変したときの負性抵抗曲線を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施態様において、Cモードの発振回路部における、干渉阻止用のLC直列回路のCc´の容量値を可変したときの負性抵抗曲線を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る、コルピッツ変形型とする発振回路でSCカットの水晶振動子を用いた、デュアルモード水晶発振回路を示す図である。
【図7】第2の実施態様におけるBモードの発振回路部における、LC直列回路のCc´の容量値を可変したときの負性抵抗曲線を示す図である。
【図8】従来のコルピッツ変形型の発振回路でSCカットの水晶振動子を用いた、デュアルモード水晶発振回路を示す図である。
【図9】上記従来回路に係る、負性抵抗曲線を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1−1,1−2 デュアルモード水晶発振回路
2−1,2−2 Cモードの発振回路部
3−1,3−2 Bモードの発振回路部
4−1,4−2 トランジスタ
5,7,12,13,14,17 コンデンサ
6 水晶振動子
8 可変容量ダイオード
9−1,9−2,18 LC直列回路
10,11,15,16 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子の第1のモードのオーバートーンを発振する第1の発振手段と、
前記水晶振動子の第2のモードのオーバートーンを発振する第2の発振手段と、
前記第1、第2の発振手段のいずれか一方と前記水晶振動子との間に前記のオーバートーンの干渉を阻止する帯域制限手段、
を備えたことを特徴とするデュアルモード水晶発振回路。
【請求項2】
前記第1のモードはCモードの3次のオーバートーンであり、第2のモードはBモードの5次のオーバートーンである請求項1記載のデュアルモード水晶発振回路。
【請求項3】
前記第1、第2の発振手段は変形コルピッツ型発振回路であることを特徴とする請求項1記載の水晶発振回路。
【請求項4】
前記第1の発振手段は第1のトランジスタのベースと接地間に第1の分割コンデンサが接続され、前記第1の分割コンデンサの中点と、前記第1のトランジスタのエミッタとの間に、第1の帯域制限手段を備え、
前記第2の発振手段は、第2のトランジスタのベースと接地間に第2の分割コンデンサが接続され、前記第2の分割コンデンサの中点と、前記第2のトランジスタのエミッタとの間に、第2の帯域制限手段を、備えたことを特徴とする請求項1記載のデュアルモード水晶発振回路。
【請求項5】
前記帯域制限手段は狭帯域のLC回路からなることを特徴とする請求項1または4記載のデュアルモード水晶発振回路。
【請求項6】
前記水晶振動子はSCカット水晶振動子であることを特徴とする請求項1記載のデュアルモード水晶発振回路。
【請求項7】
前記デュアルモード水晶発振回路は、恒温槽の内部に形成されたOCXOであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のデュアルモード水晶発振回路。
【請求項8】
水晶振動子の第1のモードのオーバートーンを発振する第1の発振手段と、
前記水晶振動子の第2のモードのオーバートーンを発振する第2の発振手段と、
前記第1、第2の発振手段のいずれか一方と前記水晶振動子との間に前記のオーバートーンの干渉を阻止するとともに、デュアルモード発振を行わせるインピーダンス素子を備えたことを特徴とするデュアルモード水晶発振回路。



【図1】
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【図6】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−274633(P2007−274633A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101009(P2006−101009)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】