説明

デュアルレート受信回路

【課題】通常モードとテストモードを適宜切り替える。
【解決手段】デュアルレート受信回路は、10Gbps用アンプ110の出力を遮断してスケルチ状態にするスケルチ回路120と、1Gbps用アンプ130の出力を遮断してスケルチ状態にするスケルチ回路140と、受信信号の振幅が基準振幅以下か否かを示すLOS信号210を出力するLOS検出回路200と、通常モード時には、LOS信号210と現在の受信信号のレートを示すレートセレクト信号500とに応じてスケルチ制御信号800,810を生成し、テストモード時には、LOS信号210によるスケルチ制御とレートセレクト信号500によるスケルチ制御のうち少なくとも一方を無効にしたスケルチ制御信号800,810を生成するゲート回路400,600,610,620,630,640とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信システムの受信機等に使用されるデュアルレート受信回路に係り、特にデュアルレート受信回路のスケルチ制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PON(Passive Optical Network)光通信システムは、局舎側終端装置(Optical Line Terminal:OLT)と複数の加入者側装置(Optical Network Unit:ONU)とパッシブな光スプリッタとで構成され、一つのOLTと複数のONUとを光スプリッタで結んでデータをやりとりするシステムである。このような光通信システムでは、光信号を受信して電流信号に変換する受光素子と、受光素子から出力された電流信号を電圧信号に変換するTIA(Trans-Impedance Amplifier)と、TIAから出力された電圧信号を一定の振幅まで増幅する後置増幅器である振幅制限増幅回路(Limiting Amplifier:LA)が用いられる。LAで一定の振幅に増幅された信号は、CDR(Clock Data Recovery)に送られる。CDRは、クロック信号の抽出、データ信号のリタイミング、データ信号の並列展開等を行い、出力信号をディジタル信号処理LSIに送る。
【0003】
現在PONシステムは1.25Gbpsのデータレートが商用化されているが、将来の大容量化に対応するため、10G−EPONと呼ばれる10.3125Gbpsのシステム開発が進められている。しかし、10G−EPONのサービスが実用化されても、全てのユーザが10.3125Gbpsの速度を必要とするわけではなく、1.25Gbps(以降1Gbpsと略する)と10.3125Gbps(以降10Gbpsと略する)が混在する可能性が大きい。その場合には、1台のOLTがデータレートの異なる複数のONUと結ばれることになり、OLTはレートの異なる信号を受信しなければならない。そのようなOLTでは、LAはそれぞれのレート用の出力ポートを持ち、それぞれ対応するCDRと接続される。
【0004】
CDRは、入力されたデータからクロックを抽出するためのPLL(Phase-Locked Loop)回路を持っているので、目的のレート以外の信号が入力されると、一旦その信号の周波数に合わせるように同期してしまい、次に目的のレートの信号が入力されたときの同期に時間がかかってしまうという問題があった。また、無信号区間においてLAからノイズが出力された場合にも、目的のレート以外の信号がCDRに入力されたことと同じになるので、同様の問題が生じる。このような問題を防ぐために、LAには出力信号を遮断、または一定の電圧レベルに固定するスケルチ回路が内蔵されている。
【0005】
一般に光受信システムにおいては、上述の無信号時のLAからのノイズを防ぐため、入力信号の振幅を検出するLOS(Loss of Signal)回路の出力がLAのスケルチ回路の制御に用いられる。バースト間の無信号区間や通信経路の故障等で信号断が生じた場合など、受信信号が基準レベルよりも小さくなるとLOS出力がイネーブルになり、スケルチ回路の機能をオンにしてLAの出力を一定レベルに固定する。
【0006】
このようなLAの例は非特許文献1に開示されている。非特許文献1に開示された図を元に一般化した接続を図3に示す。LA700は、前段の回路(不図示)から出力される信号を受信する入力バッファ101と、入力バッファ101から出力される信号を増幅するアンプ110と、アンプ110の出力をそのまま出力するか一定レベルに固定して出力するかを制御するスケルチ回路120と、スケルチ回路120から出力される信号を出力端子170に出力する出力バッファ150と、入力バッファ101の出力信号を入力とするLOS検出回路200とを備えている。ANDゲート400は、LOS検出回路200からのLOS出力信号210と、LOS出力信号を有効または無効にするための制御信号310との論理積をとった制御信号410を出力し、スケルチ回路120をオン/オフする。入力バッファ101の出力信号が基準レベルより小さくなるとLOS出力信号210がイネーブルになり、このとき制御信号310もイネーブル状態であれば、スケルチ回路120がオンになり、LA700の出力は一定レベルに固定される。
【0007】
光受信システムがデュアルレート対応の場合でも、同様に無信号時のスケルチ制御をLOS出力で行なうことができ、その場合はLOS出力に応じて10Gbps、1Gbps両方の出力を固定すればよい。しかし、デュアルレート対応システムでの特有の問題として、ある時刻に受信するのは10Gbpsまたは1Gbpsのどちらか一方のレートの信号だけであるが、受信していない側のレートの出力端子からも同じ信号が出力されてしまうという問題がある。その理由は、LA内部で入力信号を10Gbps用の回路と1Gbps用の回路に分配するからである。上述のように、CDRは、目的のレート以外の信号が入力されると、一旦その信号の周波数に合わせるように同期してしまい、次に目的のレートの信号が入力されたときの同期に時間がかかってしまう。
【0008】
この問題を防ぐためには、目的のレート以外のLA出力を遮断またはレベル固定する必要がある。デュアルレート受信システムおいては、現在の受信信号のレートを表す信号が得られれば、このレートを表す信号を用いて片方のレートの出力を遮断することができる。このようなシステムの例は参考文献2に開示されている。参考文献2では、受信したデータ信号からレートを判定する判定回路を用いて、現在のデータレートを表すレートセレクト信号を生成して、ゲート回路により信号の通過/遮断を行うようにしている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】MAX3761データシート,MAXIM社,<http://datasheets.maxim−ic.com/en/ds/MAX3761−MAX3762.pdf>,2008年
【非特許文献2】原一貴他,「1.25/10.3Gbit/s リセットレス・デュアルレートバーストモード受信器」,電子情報通信学会 2009年総合大会,B−10−101,2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上述べたように、無信号入力対応のスケルチ制御はLOS信号を用いて実現することができ、デュアルレート対応のスケルチ制御はレートセレクト信号を用いて実現することができ、目的以外の信号が出力されないようにスケルチ回路を制御することができる。
しかしながら、システム開発時やメンテナンス時に、無信号時におけるLAの出力状態や、受信信号のレートと異なるレート側の回路の出力状態を知りたい場合がある。このような要請にはこれまで述べた回路だけでは対応できない。すなわち、このような要請に対応するためには、LOS信号を有効または無効にする制御と、レートセレクト信号を有効または無効にする制御が必要になる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、通常モードとテストモードを適宜切り替えることができるデュアルレート受信回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、時分割された2つの異なるデータレートの信号を受信するデュアルレート受信回路において、信号入力端子に入力される受信信号を入力とする、第1のレートの信号増幅用の第1のアンプと、前記受信信号を入力とする、第2のレートの信号増幅用の第2のアンプと、第1のスケルチ制御信号に応じて、前記第1のアンプの出力信号を遮断してスケルチ状態にするかまたは前記第1のアンプの出力信号を第1のレート用の信号出力端子に出力する第1のスケルチ回路と、第2のスケルチ制御信号に応じて、前記第2のアンプの出力信号を遮断してスケルチ状態にするかまたは前記第2のアンプの出力信号を第2のレート用の信号出力端子に出力する第2のスケルチ回路と、前記受信信号の振幅があらかじめ定められた基準振幅以下か否かを示すLOS信号を出力する検出回路と、通常モード時には、前記LOS信号と、外部から入力される、現在の受信信号のレートを示すレートセレクト信号とに応じて前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、テストモード時には、前記LOS信号によるスケルチ制御と前記レートセレクト信号によるスケルチ制御のうち少なくとも一方を無効にした前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成するゲート回路とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のデュアルレート受信回路の1構成例において、前記ゲート回路は、前記LOS信号と外部から入力されるLOS有効無効制御信号との論理積の結果を基に前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することにより、前記LOS有効無効制御信号に応じて、前記LOS信号によるスケルチ制御を有効または無効にすることを選択可能としたことを特徴とするものである。
また、本発明のデュアルレート受信回路の1構成例において、前記ゲート回路は、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅より大の場合には、現在の受信信号のレートと異なるレート用の出力信号がスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅以下の場合には、前記第1、第2のレート用の出力信号が共にスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、前記LOS有効無効制御信号によって前記LOS信号によるスケルチ制御を無効にするテストモード時には、前記LOS信号の状態と無関係に、現在の受信信号のレートと異なるレート用の出力信号がスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のデュアルレート受信回路の1構成例において、前記ゲート回路は、前記レートセレクト信号と外部から入力されるレートセレクト有効無効制御信号との論理積の結果を基に前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することにより、前記レートセレクト有効無効制御信号に応じて、前記レートセレクト信号によるスケルチ制御を有効または無効にすることを選択可能としたことを特徴とするものである。
また、本発明のデュアルレート受信回路の1構成例において、前記ゲート回路は、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅より大の場合には、現在の受信信号のレートと異なるレート用の出力信号がスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅以下の場合には、前記第1、第2のレート用の出力信号が共にスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、前記レートセレクト有効無効制御信号によって前記レートセレクト信号によるスケルチ制御を無効にするテストモード時には、前記受信信号の振幅が基準振幅より大の場合に前記第1、第2のレート用の出力信号がスケルチ状態にならないよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することを選択可能としたことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のデュアルレート受信回路の1構成例において、前記ゲート回路は、前記LOS信号と外部から入力されるLOS有効無効制御信号との論理積の結果と、前記レートセレクト信号と外部から入力されるレートセレクト有効無効制御信号との論理積の結果との論理和をとることにより、前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することを特徴とするものである。
また、本発明のデュアルレート受信回路の1構成例において、前記ゲート回路は、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅より大の場合には、現在の受信信号のレートと異なるレート用の出力信号がスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅以下の場合には、前記第1、第2のレート用の出力信号が共にスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、前記LOS有効無効制御信号によって前記LOS信号によるスケルチ制御を無効にするテストモード時には、前記LOS信号の状態と無関係に、現在の受信信号のレートと異なるレート用の出力信号がスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、前記レートセレクト有効無効制御信号によって前記レートセレクト信号によるスケルチ制御を無効にするテストモード時には、前記受信信号の振幅が基準振幅より大の場合に前記第1、第2のレート用の出力信号がスケルチ状態にならないよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、前記LOS有効無効制御信号および前記レートセレクト有効無効制御信号によって前記LOS信号および前記レートセレクト信号によるスケルチ制御を無効にするテストモード時には、前記第1、第2のレート用の出力信号がスケルチ状態にならないよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のデュアルレート受信回路の1構成例において、前記ゲート回路は、一方の入力端子に前記LOS信号が入力され、他方の入力端子に前記LOS有効無効制御信号が入力される第1のANDゲートと、一方の入力端子に前記レートセレクト信号が入力され、他方の入力端子に前記レートセレクト有効無効制御信号が入力される第2のANDゲートと、前記レートセレクト信号を論理反転するインバータと、一方の入力端子に前記レートセレクト有効無効制御信号が入力され、他方の入力端子に前記インバータの出力信号が入力される第3のANDゲートと、一方の入力端子に前記第2のANDゲートの出力信号が入力され、他方の入力端子に前記第1のANDゲートの出力信号が入力され、前記第1のスケルチ制御信号を出力する第1のORゲートと、一方の入力端子に前記第3のANDゲートの出力信号が入力され、他方の入力端子に前記第1のANDゲートの出力信号が入力され、前記第2のスケルチ制御信号を出力する第2のORゲートとから構成されることを特徴とするものである。
また、本発明のデュアルレート受信回路の1構成例は、前記ANDゲートと前記ORゲートの代わりに、NANDゲートを用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、時分割された2つの異なるデータレートの信号を受信するデュアルレート受信回路において、通常モード時には、LOS信号と、外部から入力される、現在の受信信号のレートを示すレートセレクト信号とに応じて第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、テストモード時には、LOS信号によるスケルチ制御とレートセレクト信号によるスケルチ制御のうち少なくとも一方を無効にした第1、第2のスケルチ制御信号を生成するゲート回路を設け、第1、第2のスケルチ回路を制御することにより、受信信号のレートに対応した側の信号出力端子だけからデータを出力する機能と、無信号時にノイズが出力されるのを防ぐ機能を保持したまま、システムのテスト時には、LOS信号によるスケルチ制御とレートセレクト信号によるスケルチ制御のうち少なくとも一方を簡便に無効にすることができるので、必要に応じて様々なスケルチ制御を行うことができ、テストの簡便性とシステムのメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るデュアルレート受信回路の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るデュアルレート受信回路の構成を示すブロック図である。
【図3】従来のリミッティングアンプのLOS検出回路とスケルチ回路の接続を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るデュアルレート受信回路の構成を示すブロック図である。以下の説明において、論理レベルがハイレベルであることを“H”、ローレベルであることを“L”と表記する。デュアルレート受信回路は、デュアルレート対応リミッティングアンプ(LA)100と、ゲート回路とからなる。
【0020】
LA100は、前段のTIA等の回路(不図示)から信号入力端子102に入力される差動出力信号を受信する入力バッファ101と、入力バッファ101から出力される差動出力信号を増幅する10Gbps用アンプ110と、アンプ110から出力される差動出力信号を遮断して無信号出力状態にするか又はアンプ110から出力される差動出力信号をそのまま出力する10Gbps用スケルチ回路120と、入力バッファ101から出力される差動出力信号を増幅する1Gbps用アンプ130と、アンプ130から出力される差動出力信号を遮断して無信号出力状態にするか又はアンプ130から出力される差動出力信号をそのまま出力する1Gbps用スケルチ回路140と、スケルチ回路120から出力される差動出力信号を10Gbps用信号出力端子170に出力する10Gbps用出力バッファ150と、スケルチ回路140から出力される差動出力信号を1Gbps用信号出力端子180に出力する1Gbps用出力バッファ160と、入力バッファ101の出力信号が基準レベルよりも小さいか否かを検出するLOS検出回路200とを備えている。
【0021】
スケルチ回路120は、10Gbps用スケルチ制御信号入力端子125から入力されるディジタル制御信号に応じて、アンプ110の出力信号の通過または遮断を制御する。同様に、スケルチ回路140は、1Gbps用スケルチ制御信号入力端子145から入力されるディジタル制御信号に応じて、アンプ130の出力信号の通過または遮断を制御する。本実施の形態では、入力端子125と145に“H”が入力された時に、スケルチ状態、すなわち受信信号が遮断されるものとする。
【0022】
LOS検出回路200は、入力バッファ101の出力信号の振幅を検出し、この入力バッファ101の出力信号の振幅があらかじめ定められた基準振幅以下か否かを示すLOS信号210をLOS信号出力端子215から2値のディジタル信号で出力する。本実施の形態では、入力バッファ101の出力信号の振幅が基準振幅以下になったとき、LOS信号出力端子215から“H”が出力されるものとする。
【0023】
ゲート回路は、一方の入力端子にLOS信号210が入力され、他方の入力端子にLOS信号210による制御を有効または無効にする2値のディジタル制御信号であるLOS有効無効制御信号310が入力されるANDゲート400と、一方の入力端子に現在の受信信号のレートを示すレートセレクト信号500が入力され、他方の入力端子にレートセレクト信号500による制御を有効または無効にする2値のディジタル制御信号であるレートセレクト有効無効制御信号520が入力されるANDゲート600と、レートセレクト信号500を論理反転するインバータ620と、一方の入力端子にレートセレクト有効無効制御信号520が入力され、他方の入力端子にインバータ620の出力信号510が入力されるANDゲート610と、一方の入力端子にANDゲート600の出力信号530が入力され、他方の入力端子にANDゲート400の出力信号410が入力されるORゲート630と、一方の入力端子にANDゲート610の出力信号540が入力され、他方の入力端子にANDゲート400の出力信号410が入力されるORゲート640とを備えている。
【0024】
後段のディジタル制御LSI(不図示)は、現在の受信信号のレートを示すレートセレクト信号500を2値のディジタル信号で出力する。本実施の形態では、10Gbpsのときに“H”のレートセレクト信号500が入力され、1Gbpsのときに“L”のレートセレクト信号500が入力されるものとする。なお、本実施の形態のデュアルレート受信回路の前段には、上述のように受光素子とTIAとが設けられ、TIAから出力された受信信号が信号入力端子102に入力される。
【0025】
さらに、ゲート回路には、LOS信号210による制御を有効または無効にする2値のディジタル制御信号であるLOS有効無効制御信号310と、レートセレクト信号500による制御を有効または無効にする2値のディジタル制御信号であるレートセレクト有効無効制御信号520とが外部から与えられる。本実施の形態では、LOS有効無効制御信号310が“H”のときLOS信号210による制御が有効になり、LOS有効無効制御信号310が“L”のときLOS信号210による制御が無効になり、また、レートセレクト有効無効制御信号520が“H”のときレートセレクト信号500による制御が有効になり、レートセレクト有効無効制御信号520が“L”のときレートセレクト信号500による制御が無効になるものとして説明する。
【0026】
ANDゲート400は、LOS信号210とLOS有効無効制御信号310との論理積をとり、この論理積の結果を制御信号410として出力する。すなわち、LOS有効無効制御信号310が“H”のときにはLOS信号210に従って制御信号410の“H”/“L”が決定されるが、LOS有効無効制御信号310が“L”のときには制御信号410は常に“L”となり、LOS信号210による制御が無効になる。
【0027】
一方、ANDゲート600は、レートセレクト信号500とレートセレクト有効無効制御信号520との論理積をとり、この論理積の結果を制御信号530として出力する。ANDゲート610は、レートセレクト信号500をインバータ620で論理反転した信号510とレートセレクト有効無効制御信号520との論理積をとり、この論理積の結果を制御信号540として出力する。この論理演算により、レートセレクト有効無効制御信号520が“H”のときレートセレクト信号500が“H”であれば制御信号530は“H”、制御信号540は“L”となり、レートセレクト有効無効制御信号520が“H”のときレートセレクト信号500が“L”であれば制御信号530は“L”、制御信号540は“H”となり、レートセレクト信号500による制御が有効になる。レートセレクト有効無効制御信号520が“L”のときには制御信号530,540は常に“L”になり、レートセレクト信号500による制御が無効になる。
【0028】
ORゲート630は、制御信号410と制御信号530との論理和をとり、この論理和の結果を1Gbps用スケルチ制御信号800として出力する。同様に、ORゲート640は、制御信号410と制御信号540との論理和をとり、この論理和の結果を10Gbps用スケルチ制御信号810として出力する。
以上述べた制御論理を真理値表を用いて表すと表1のようになる。
【0029】
【表1】

【0030】
表1によると、以下のようになる。
(1)通常モード時(LOS有効無効制御信号310とレートセレクト有効無効制御信号520が共に“H”)に、入力バッファ101の出力振幅が基準振幅より大となる信号を受信している場合には(LOS信号210が“L”)、現在の受信信号のレートと異なるレート用のスケルチ制御信号(800又は810)が“H”になって、このレート用の出力がスケルチ回路(120または140)によって遮断されてスケルチ状態になる。例えば、レートセレクト信号500が“L”、すなわち現在の受信信号のレートが1Gbpsであれば、1Gbps用スケルチ制御信号800が“L”、10Gbps用スケルチ制御信号810が“H”になり、スケルチ回路120が10Gbps用出力を遮断する。
【0031】
(2)通常モード時に、入力バッファ101の出力振幅が基準振幅以下となる信号を受信している場合には(LOS信号210が“H”)、1Gbps用スケルチ制御信号800と10Gbps用スケルチ制御信号810が共に“H”になり、スケルチ回路120が10Gbps用出力を遮断し、スケルチ回路140が1Gbps用出力を遮断して、両方の出力がスケルチ状態になる。
【0032】
(3)テストモードであるLOS信号無効モード(LOS有効無効制御信号310が“L”、レートセレクト有効無効制御信号520が“H”)では、入力バッファ101の出力振幅が基準振幅以下となる信号を受信しても、現在の受信信号のレート用のスケルチ制御信号は“L”を維持し、現在の受信信号のレート用の出力はスケルチ状態にならない。
【0033】
(4)テストモードであるレートセレクト無効モード(LOS有効無効制御信号310が“H”、レートセレクト有効無効制御信号520が“L”)では、入力バッファ101の出力振幅が基準振幅より大となる信号を受信している場合(LOS信号210が“L”)、現在の受信信号のレートに関係なく、1Gbps用、10Gbps用の両方の出力がスケルチ状態にならない。
【0034】
(5)LOS信号無効モードとレートセレクト無効モードが共にオン(LOS有効無効制御信号310とレートセレクト有効無効制御信号520が共に“L”)のときは、LOS信号210およびレートセレクト信号500の状態に関係なく、1Gbps用、10Gbps用の両方の出力がスケルチ状態にならない。
【0035】
以上のように、本実施の形態では、通常モード時にはLOS信号210とレートセレクト信号500とに応じてスケルチ制御信号800,810を生成し、テストモード時には、LOS信号210によるスケルチ制御とレートセレクト信号500によるスケルチ制御のうち少なくとも一方を無効にしたスケルチ制御信号800,810を生成するゲート回路を設け、スケルチ回路120,140を制御することにより、受信信号のレートに対応した側の信号出力端子だけからデータを出力する機能と、無信号時にノイズが出力されるのを防ぐ機能を保持したまま、システムのテスト等の場合には、LOS信号210によるスケルチ制御とレートセレクト信号500によるスケルチ制御のうち少なくとも一方を簡便に無効にすることができるので、必要に応じて様々なスケルチ制御を行うことができ、テストの簡便性とシステムのメンテナンス性を向上させることができる。
【0036】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図2は本発明の第2の実施の形態に係るデュアルレート受信回路の構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。LA100の構成は、第1の実施の形態と同じである。
【0037】
本実施の形態のゲート回路は、一方の入力端子にLOS信号210が入力され、他方の入力端子にLOS有効無効制御信号310が入力されるNANDゲート401と、一方の入力端子にレートセレクト信号500が入力され、他方の入力端子にレートセレクト有効無効制御信号520が入力されるNANDゲート601と、両方の入力端子にレートセレクト信号500が入力され、レートセレクト信号500を論理反転するNANDゲート621と、一方の入力端子にレートセレクト有効無効制御信号520が入力され、他方の入力端子にNANDゲート621の出力信号511が入力されるNANDゲート611と、一方の入力端子にNANDゲート601の出力信号531が入力され、他方の入力端子にNANDゲート401の出力信号411が入力されるNANDゲート631と、一方の入力端子にNANDゲート611の出力信号541が入力され、他方の入力端子にNANDゲート401の出力信号411が入力されるNANDゲート641とを備えている。
【0038】
本実施の形態の制御論理は、第1の実施の形態の表1に示したとおりである。第1の実施の形態では、ANDゲートとORゲートを用いた回路を示したが、本実施の形態では第1の実施の形態と同じ論理をNANDゲートのみを用いて実現することができる。このように、本実施の形態では、使用するゲートをNANDゲートのみにすることができ、第1の実施の形態と比較してコストを低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、光通信システムの受信機等に使用されるデュアルレート受信回路に適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
100…デュアルレート対応リミッティングアンプ、101…入力バッファ、102…信号入力端子、110…10Gbps用アンプ、120…10Gbps用スケルチ回路、125…10Gbps用スケルチ制御信号入力端子、130…1Gbps用アンプ、140…1Gbps用スケルチ回路、145…1Gbps用スケルチ制御信号入力端子、150…10Gbps用出力バッファ、160…1Gbps用出力バッファ、170…10Gbps用信号出力端子、180…1Gbps用信号出力端子、200…LOS検出回路、210…LOS信号、215…LOS信号出力端子、310…LOS有効無効制御信号、400,600,610…ANDゲート、401,601,611,621,631,641…NANDゲート、500…レートセレクト信号、520…レートセレクト有効無効制御信号、620…インバータ、630,640…ORゲート、800…1Gbps用スケルチ制御信号、810…10Gbps用スケルチ制御信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時分割された2つの異なるデータレートの信号を受信するデュアルレート受信回路において、
信号入力端子に入力される受信信号を入力とする、第1のレートの信号増幅用の第1のアンプと、
前記受信信号を入力とする、第2のレートの信号増幅用の第2のアンプと、
第1のスケルチ制御信号に応じて、前記第1のアンプの出力信号を遮断してスケルチ状態にするかまたは前記第1のアンプの出力信号を第1のレート用の信号出力端子に出力する第1のスケルチ回路と、
第2のスケルチ制御信号に応じて、前記第2のアンプの出力信号を遮断してスケルチ状態にするかまたは前記第2のアンプの出力信号を第2のレート用の信号出力端子に出力する第2のスケルチ回路と、
前記受信信号の振幅があらかじめ定められた基準振幅以下か否かを示すLOS信号を出力する検出回路と、
通常モード時には、前記LOS信号と、外部から入力される、現在の受信信号のレートを示すレートセレクト信号とに応じて前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、テストモード時には、前記LOS信号によるスケルチ制御と前記レートセレクト信号によるスケルチ制御のうち少なくとも一方を無効にした前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成するゲート回路とを備えることを特徴とするデュアルレート受信回路。
【請求項2】
請求項1記載のデュアルレート受信回路において、
前記ゲート回路は、前記LOS信号と外部から入力されるLOS有効無効制御信号との論理積の結果を基に前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することにより、前記LOS有効無効制御信号に応じて、前記LOS信号によるスケルチ制御を有効または無効にすることを選択可能としたことを特徴とするデュアルレート受信回路。
【請求項3】
請求項2記載のデュアルレート受信回路において、
前記ゲート回路は、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅より大の場合には、現在の受信信号のレートと異なるレート用の出力信号がスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅以下の場合には、前記第1、第2のレート用の出力信号が共にスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、前記LOS有効無効制御信号によって前記LOS信号によるスケルチ制御を無効にするテストモード時には、前記LOS信号の状態と無関係に、現在の受信信号のレートと異なるレート用の出力信号がスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することを特徴とするデュアルレート受信回路。
【請求項4】
請求項1記載のデュアルレート受信回路において、
前記ゲート回路は、前記レートセレクト信号と外部から入力されるレートセレクト有効無効制御信号との論理積の結果を基に前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することにより、前記レートセレクト有効無効制御信号に応じて、前記レートセレクト信号によるスケルチ制御を有効または無効にすることを選択可能としたことを特徴とするデュアルレート受信回路。
【請求項5】
請求項4記載のデュアルレート受信回路において、
前記ゲート回路は、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅より大の場合には、現在の受信信号のレートと異なるレート用の出力信号がスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅以下の場合には、前記第1、第2のレート用の出力信号が共にスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、前記レートセレクト有効無効制御信号によって前記レートセレクト信号によるスケルチ制御を無効にするテストモード時には、前記受信信号の振幅が基準振幅より大の場合に前記第1、第2のレート用の出力信号がスケルチ状態にならないよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することを選択可能としたことを特徴とするデュアルレート受信回路。
【請求項6】
請求項1記載のデュアルレート受信回路において、
前記ゲート回路は、前記LOS信号と外部から入力されるLOS有効無効制御信号との論理積の結果と、前記レートセレクト信号と外部から入力されるレートセレクト有効無効制御信号との論理積の結果との論理和をとることにより、前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することを特徴とするデュアルレート受信回路。
【請求項7】
請求項6記載のデュアルレート受信回路において、
前記ゲート回路は、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅より大の場合には、現在の受信信号のレートと異なるレート用の出力信号がスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、通常モード時に前記受信信号の振幅が基準振幅以下の場合には、前記第1、第2のレート用の出力信号が共にスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、前記LOS有効無効制御信号によって前記LOS信号によるスケルチ制御を無効にするテストモード時には、前記LOS信号の状態と無関係に、現在の受信信号のレートと異なるレート用の出力信号がスケルチ状態になるよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、前記レートセレクト有効無効制御信号によって前記レートセレクト信号によるスケルチ制御を無効にするテストモード時には、前記受信信号の振幅が基準振幅より大の場合に前記第1、第2のレート用の出力信号がスケルチ状態にならないよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成し、前記LOS有効無効制御信号および前記レートセレクト有効無効制御信号によって前記LOS信号および前記レートセレクト信号によるスケルチ制御を無効にするテストモード時には、前記第1、第2のレート用の出力信号がスケルチ状態にならないよう前記第1、第2のスケルチ制御信号を生成することを特徴とするデュアルレート受信回路。
【請求項8】
請求項6または7記載のデュアルレート受信回路において、
前記ゲート回路は、
一方の入力端子に前記LOS信号が入力され、他方の入力端子に前記LOS有効無効制御信号が入力される第1のANDゲートと、
一方の入力端子に前記レートセレクト信号が入力され、他方の入力端子に前記レートセレクト有効無効制御信号が入力される第2のANDゲートと、
前記レートセレクト信号を論理反転するインバータと、
一方の入力端子に前記レートセレクト有効無効制御信号が入力され、他方の入力端子に前記インバータの出力信号が入力される第3のANDゲートと、
一方の入力端子に前記第2のANDゲートの出力信号が入力され、他方の入力端子に前記第1のANDゲートの出力信号が入力され、前記第1のスケルチ制御信号を出力する第1のORゲートと、
一方の入力端子に前記第3のANDゲートの出力信号が入力され、他方の入力端子に前記第1のANDゲートの出力信号が入力され、前記第2のスケルチ制御信号を出力する第2のORゲートとから構成されることを特徴とするデュアルレート受信回路。
【請求項9】
請求項8記載のデュアルレート受信回路において、
前記ANDゲートと前記ORゲートの代わりに、NANDゲートを用いることを特徴とするデュアルレート受信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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