説明

デュロキセチン遊離塩基の結晶形態

本発明は、結晶性デュロキセチン遊離塩基及びその新規多形形態に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性デュロキセチン遊離塩基、及びその新規多形形態に関する。
【背景技術】
【0002】
デュロキセチン、すなわちN−メチル−3−(1−ナフタレニルオキシ)−3−(2−チエニル)プロパナミンは、セロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害薬である。(+)デュロキセチンは抗うつ薬として治療に特に有用である。
【0003】
デュロキセチン及びその製造については、米国特許第5023269号及び同第4956388号、並びにTetrahedron Letters, 31, (49), 7101-04, 1990に記載されている。7つの異なる合成経路についても、Drugs of the Future 2000, 25(9) 907-916に記載がある。これらの合成は、鍵中間体の分割或いはまたケト基のアルコールへの立体特異的還元を伴うものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、結晶性デュロキセチン遊離塩基の分離は、これまで報告されている文献及び特許に記載のいずれの方法によっても達成されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
しかし、本発明によって、結晶性デュロキセチン遊離塩基が提供される。
さらに、本発明は、本明細書においてそれぞれ形態A、形態B及び形態Cと称するデュロキセチンの3つの異なる多形形態の調製方法を提供するが、これら3つの多形形態は、本発明のさらなる実施形態を表す。本明細書で使用する「デュロキセチン」とは好ましくは(+)デュロキセチンを指す。
【0006】
本発明によれば、図1に示すようなX線回折パターン又はそれと実質的に同一のX線回折パターンを示す結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態A、が提供される。さらに詳しくは、本発明の結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Aは、特徴的なピーク(2θ):9.70、10.88、13.03、15.61、19.19、19.55、19.88、21.94、22.16、26.95及び27.76°を含むX線回折パターンを示すことを特徴とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
また、X線回折により得られる、本発明の結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Aを特徴づけるデータを下記表1に示す。
【0008】
【表1】


【0009】
本発明によれば、図2に示すようなX線回折パターン又はそれと実質的に同一のX線回折パターンを示す結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態B、が提供される。さらに詳しくは、本発明の結晶性デュロキセチン遊離塩基形態Bは、特徴的なピーク(2θ):4.98、9.96、11.18、12.58、15.32、18.98、20.04、20.62、22.32、22.44、27.28及び30.30°を含むX線回折パターンを示すことを特徴とすることができる。
また、X線回折により得られる、本発明の結晶性デュロキセチン遊離塩基形態Bを特徴づけるデータを下記表2に示す。
【0010】
【表2】

【0011】
本発明によれば、図3に示すようなX線回折パターン又はそれと実質的に同一のX線回折パターンを示す結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態C、が提供される。さらに詳しくは、本発明の結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Cは、特徴的なピーク(2θ):12.23、13.49、16.90、18.28、20.37、22.61、27.22、27.40及び30.65°を含むX線回折パターンを示すことを特徴とすることができる。
また、X線回折により得られる、本発明の結晶性デュロキセチン遊離塩基形態Cを特徴づけるデータを下記表3に示す。
【0012】
【表3】

【0013】
また、本発明によって提供される結晶性デュロキセチン遊離塩基から調製される医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩が、本発明によって提供される。本発明によって提供される、医薬品として許容し得る好ましいデュロキセチンの塩には、塩酸デュロキセチン及びシュウ酸デュロキセチンが含まれ、特に好ましい塩は塩酸デュロキセチンである。
本発明によって提供される医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩の純度は、好ましくは少なくとも約99.5%w/wである。
【0014】
本発明によって提供される結晶性デュロキセチン遊離塩基は、シュウ酸塩、塩酸塩、ジ−p−トルイル酒石酸又はその他の好適な塩などのデュロキセチンの塩から調製することができる。本発明によればさらに、デュロキセチンの塩を水などの好適な媒体中に溶解する又は懸濁させること、アルカリ金属水酸化物などの好適な塩基、通例水酸化ナトリウムで中和すること、このようにして形成されるデュロキセチン遊離塩基を好適な溶媒中に抽出すること、前記溶媒を非溶媒で置換すること、及びこのようにして結晶性デュロキセチン遊離塩基を分離することを含む、結晶性デュロキセチン遊離塩基を製造する方法が提供される。
【0015】
本発明によって提供される結晶性デュロキセチン遊離塩基の全く異なる多形形態を相互変換することも可能である。したがって、本発明によって相互変換過程が提供され、それによって結晶性デュロキセチン遊離塩基の第2の多形形態が、全く異なる結晶性デュロキセチン遊離塩基の第1の多形形態から調製される。好ましくは、出発物質として使用される結晶性デュロキセチン遊離塩基の第1の多形形態を好適な低級アルコール溶媒、好ましくはメタノールに溶解又は懸濁し、そこから第2の多形形態を再結晶化させる。本明細書で後に詳しく説明するが、この相互変換過程は、好ましくは、結晶性デュロキセチン遊離塩基形態Aから形態Bを調製するために使用される。
【0016】
本発明の結晶性デュロキセチン遊離塩基の調製は、医薬品として許容し得る高純度のデュロキセチンの塩、特にシュウ酸デュロキセチン又は塩酸デュロキセチンの調製において結晶性デュロキセチン遊離塩基を有用な中間体として使用できるという利点がある。結晶性デュロキセチン遊離塩基から調製される医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩は有益な特性を示す。例えば、本発明によって提供されるような結晶性デュロキセチン遊離塩基から調製される塩酸デュロキセチンは、当技術分野で知られている従来技術によって調製される塩酸デュロキセチンに比べて、分解に対する抵抗が強い。
【0017】
本発明によれば、デュロキセチンの塩酸塩又はジ−p−トルイル酒石酸塩などのデュロキセチンの塩を水中に懸濁又は溶解すること、アルカリ金属水酸化物などの塩基、特に水酸化ナトリウムで中和すること、ジクロロメタンなどの実質上水と不混和性の溶媒中に抽出すること、前記実質上水と不混和性の溶媒を濃縮すること、前記実質上水と不混和性の溶媒をアセトンで置換すること、及びこのようにして結晶性デュロキセチン遊離塩基形態Aを分離することを含む、結晶性デュロキセチン遊離塩基形態Aを製造する方法がさらに提供される。結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Aは、粉末X線回折によって大体図1に示すように特徴づけられる。
【0018】
本発明によれば、結晶性デュロキセチン遊離塩基の第1の多形形態、通例デュロキセチン遊離塩基形態Aを低級アルコール溶媒、好ましくはメタノールに溶解又は懸濁すること、及びそこからデュロキセチン遊離塩基形態Bを再結晶化させることを含む、結晶性デュロキセチン遊離塩基形態Bを製造する方法がされに提供される。結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Bは、粉末X線回折によって大体図2に示されるように特徴づけられる。
【0019】
本発明によれば、デュロキセチンの塩酸塩又はジ−p−トルイル酒石酸塩などのデュロキセチンの塩を水中に懸濁又は溶解すること、アルカリ金属水酸化物などの塩基、特に水酸化ナトリウムで中和すること、ジクロロメタンなどの実質上水と不混和性の溶媒中に抽出すること、前記実質上水と不混和性の溶媒を濃縮すること、前記実質上水と不混和性の溶媒をイソプロパノールで置換すること、及びこのようにして結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Cを分離することを含む、結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Cを製造する方法がさらに提供される。結晶性デュロキセチン遊離塩基形態Cは、粉末X線回折によって大体図3に示すように特徴づけられる。
【0020】
また本発明によって、本発明によって提供されるような結晶性デュロキセチン遊離塩基をアセトンなどの水と混和性の溶媒に溶解又は懸濁させること、その溶液又は懸濁液に医薬品として許容し得る塩を形成するのに必要される医薬品として許容し得る酸を添加すること、必要とされる結晶形態のデュロキセチンの医薬品として許容し得る塩を分離することを含む、医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩を製造する方法が提供される。本発明によって提供されるような結晶性デュロキセチン遊離塩基の多形形態A、B又はCのいずれも、前記医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩を製造する方法の、結晶性デュロキセチン遊離塩基出発物質として使用することができる。
【0021】
本発明の結晶性デュロキセチン遊離塩基から調製することができる好適な酸付加塩には、医薬品として許容し得る有機又は無機酸で形成される当業者に良く知られている塩が含まれる。このような塩を形成するために通常使われる酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸及びリン酸などの無機酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、パラブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸及び酢酸などの有機酸、並びに関係する無機及び有機酸が挙げられる。したがって、医薬品として許容し得る塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸ニ水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩等が挙げられる。医薬品として許容し得る好ましい酸付加塩としては、塩酸及び臭化水素酸などの無機酸で形成される塩、並びにシュウ酸及びマレイン酸などの有機酸で形成される塩が挙げられる。特に好ましい酸付加塩は塩酸塩である。
【0022】
先に記載のように、デュロキセチンはセロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害薬である。本発明は、セロトニン及び/又はノルエピネフリン再取り込み阻害薬を投与することによって予防、軽減又は除去されるような疾患を罹患している又はそのような疾患に罹患しやすいヒトを含めた患者に投与するための、医薬品として許容し得る製剤を提供する。その製剤は、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩を治療上有効な量と、医薬品として許容し得るその担体、希釈剤又は賦形剤とを含む。
【0023】
本明細書で使用する「治療上有効な量」とは、セロトニン及び/又はノルエピネフリン再取り込み阻害薬の投与が必要であるような疾患を予防、軽減又は除去することができる、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩の量を意味する。
【0024】
「医薬品として許容し得る製剤」とは、その担体、希釈剤又は賦形剤が、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩と配合適性を有し、かつそれを投与される者に有害ではないということを意味する。
【0025】
本発明によって提供される医薬製剤は、良く知られておりかつ容易に入手できる原料を使って、知られている手順によって調製することができる。本発明によって提供される製剤の調製において、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩は、その担体、希釈剤又は賦形剤と混合することができる。本発明によって提供される製剤は、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳濁剤、液剤、シロップ剤、エアゾル剤、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩を、例えば重量で最大10%含む無軟膏剤、軟及び硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、滅菌注射剤及び滅菌包装散剤などの形態をとることができる。特に、カプセル剤は本発明に従った用途に好適な製剤であり、本明細書で後にその大体を実施例に関してより詳しく説明するが、そのようなカプセル剤は通例コーティングされたノンパレル種子を含む。
【0026】
好適な担体、賦形剤及び希釈剤の例の一部として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチル及びプロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油が挙げられる。前記製剤はさらに、滑沢剤、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、保存剤、甘味剤、又は矯味矯臭剤などを含むことができる。本発明の製剤は、当技術分野で良く知られている手順を採用して患者に投与した後、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩が、速放、徐放又は時限放出されるように製剤化することができる。
【0027】
前記製剤は好ましくは単位剤形に製剤化され、各用量は、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩を約5〜約500mg、通常約25〜約300mg含む。「単位剤形」とは、対象であるヒト及びその他の哺乳類用の1用量として好適な、物理的に分離している単位のことを言い、各単位は、所望の治療効果を生み出すよう計算された所定量の活性物質を、好適な医薬の担体と共に含む。
【0028】
本発明によって、治療用の、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩がさらに提供される。
【0029】
さらに、本発明は、本発明に記載したような、セロトニン及び/又はノルエピネフリン再取り込み阻害薬を投与することによって予防、軽減又は除去されるような疾患の治療用薬剤の製造用の、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩を提供する。
【0030】
さらに、本発明は、セロトニン及び/又はノルエピネフリン再取り込み阻害薬を投与することによって予防、軽減又は除去されるような疾患を、そのような疾患の治療を必要としている患者において治療する方法を提供する。その治療方法は、患者に、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩を、治療上有効な量投与することを含む。
【0031】
種々の生理学的機能が、脳のセロトニン作用性及びノルエピネフリン作用性神経系の影響を受けていることは証明済みである。このように、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである本発明の結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩は、肥満、うつ病、アルコール中毒、痛み、記憶喪失、不安及び喫煙などの神経系に関連する哺乳動物の種々の疾病の治療に役立つ。特に、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩は、うつ病の治療に役立つ。
【0032】
したがって、本発明の1つの好ましい態様においては、うつ病の治療薬製造用の、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩が提供される。
【0033】
したがって、本発明の1つの好ましい態様においては、そのような治療を必要としている患者においてうつ病を治療する方法が提供される。その方法は、患者に、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩を、治療上有効な量投与することを含む。
【0034】
本発明の1つの好ましい態様においては、本発明に従って投与される、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩の用量は、もちろん、その症例を取り巻く環境、投与経路、治療対象であるその状態及び同様の考慮すべき事柄などによって決まる。その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩は、経口、肛門内、経皮、皮下、静脈内、筋肉内又は鼻腔内経路を含む種々の経路によって投与することができる。1日の用量は通例、その大体を本明細書で先に記載したような随意形態A、B若しくはCのいずれかである結晶性デュロキセチン遊離塩基、又はその大体を本明細書で先に記載したような本発明によって提供される医薬品として許容し得る前記デュロキセチンの塩を、約0.01mg/kg〜約20mg/kg含有する。好ましい1日の用量は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgであり、理想的には約0.1mg/kg〜約5mg/kgである。
本発明を、図面及び本発明の範囲をなんら限定しない下記の実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0035】
前記X線回折パターンは、CuKα線源とシンチレーションカウンター検出器を備えたリガクのMiniflexX線回折装置で得た。スキャン速度は2度/分でその範囲は3〜45度とした。
(参考例)
((−)ジ−p−トルイル酒石酸デュロキセチンの調製)
1.ラセミ体デュロキセチン(100g)をメタノール(200ml)に添加した。
2.25〜30℃の温度で(−)ジ−p−トルオイル酒石酸(130g)をロットごとに添加した。
3.内容物を60〜65℃まで加熱し、1時間その温度を維持した。
4.真空下、45〜50℃でメタノールを完全に蒸留した。
5.残分にアセトン(1.5l)を添加し、25〜30℃で3時間撹拌した。
6.固形分を濾過して取り出し、アセトン(100ml)で洗浄後、真空下、45〜50℃で乾燥して見出しの化合物(80g)を得た。
【0036】
(実施例1)
(デュロキセチン遊離塩基(形態A)の調製)
1.前記参照例で調製した(−)ジ−p−トルイル酒石酸デュロキセチン(100g)に水(1l)を充填し、25〜30℃で15分間撹拌した。
2.あく液(水50mlに水酸化ナトリウム8gを溶解)を、ゆっくり添加し25〜30℃で10〜15分間撹拌した。
3.混合物を、塩化メチレン(500ml)で2回抽出した。
4.化合した塩化メチレン層を水(100ml)で洗浄した。
5.真空下、40℃を下回る温度で塩化メチレン蒸留除去し、アセトン(50ml)でストリッピングした。
6.残物をアセトン(1l)と共に、室温で1時間撹拌した。
7.固形分を濾過して取り出し、真空下、50〜55℃で乾燥してデュロキセチン塩基形態A(25g)を得た。
【0037】
(実施例2)
(デュロキセチン遊離塩基(形態B)の調製)
1.デュロキセチン遊離塩基形態A(10g)を、55〜60℃でメタノール(250ml)に溶解した。
2.溶液を室温まで冷却した。
3.溶液を室温で1時間撹拌した。
4.固形分を濾過して取り出し、メタノール(10ml)で洗浄した。
5.固形分を真空下、50〜55℃で乾燥してデュロキセチン遊離塩基形態B(7g)を得た。
【0038】
(実施例3)
(デュロキセチン遊離塩基(形態C)の調製)
1.前記参照例で調製した(−)ジ−p−トルイル酒石酸デュロキセチン(100g)に水(1l)を充填し、続いて25〜30℃で15分間撹拌した。
2.あく液(水50mlに水酸化ナトリウム8gを溶解)を、ゆっくり添加し25〜30℃で10〜15分間撹拌した。
3.混合物を、塩化メチレン(500ml)で2回抽出した。
4.化合した塩化メチレン層を水(100ml)で洗浄した。
5.真空下、40℃を下回る温度で塩化メチレン蒸留除去し、イソプロパノール(50ml)でストリッピングした。
6.残物をイソプロパノール(500ml)と共に、室温で1時間撹拌した。
7.固形分を濾過して取り出し、真空下、50〜55℃で乾燥してデュロキセチン遊離塩基形態C(25g)を得た。
【0039】
(実施例4)
(塩酸デュロキセチンの調製)
1.デュロキセチン遊離塩基形態A(25g)とアセトン(250ml)を25〜30℃で15分間撹拌した。
2.混合物のpHを、25〜30℃にて20%イソプロパノール塩酸で、2.0〜3.0に調整した。
3.固形分を濾過して取り出し、アセトン(100ml)で洗浄し、真空下、50〜55℃で乾燥して塩酸デュロキセチン(25g)を得た。
(実施例5)
(塩酸デュロキセチンの調製)
実施例4と類似の方法で、デュロキセチン遊離塩基形態Bを塩酸デュロキセチンに変換した。
【0040】
(実施例6)
デュロキセチンカプセル剤(本発明のデュロキセチン塩基)−60mg
【表4】

【0041】
(実施例7)
デュロキセチンカプセル剤(本発明のデュロキセチン塩基)−60mg
【表5】

【0042】
(実施例8)
塩酸デュロキセチンカプセル剤(本発明に従って提供される塩酸デュロキセチン)−60mg
【表6】

【0043】
(実施例9)
塩酸デュロキセチンカプセル剤(本発明に従って提供される塩酸デュロキセチン)−60mg
【表7】

【0044】
(実施例10)
従来技術によって製造された塩酸デュロキセチン及び本発明の結晶性デュロキセチン遊離塩基から製造された塩酸デュロキセチンに対する強制分解試験
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Aの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図2】結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Bの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図3】結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Cの粉末X線回折パターンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性デュロキセチン遊離塩基。
【請求項2】
図1に示すようなX線回折パターン又はそれと実質的に同一のX線回折パターンを示す、結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態A。
【請求項3】
特徴的なピーク(2θ):9.70、10.88、13.03、15.61、19.19、19.55、19.88、21.94、22.16、26.95及び27.76°を含むX線回折パターンを示すことを特徴とする、結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態A。
【請求項4】
図2に示すようなX線回折パターン又はそれと実質的に同一のX線回折パターンを示す結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態B。
【請求項5】
特徴的なピーク(2θ):4.98、9.96、11.18、12.58、15.32、18.98、20.04、20.62、22.32、22.44、27.28及び30.30°を含むX線回折パターンを示すことを特徴とする、結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態B。
【請求項6】
図3に示すようなX線回折パターン又はそれと実質的に同一のX線回折パターンを示す結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態C。
【請求項7】
特徴的なピーク(2θ):12.23、13.49、16.90、18.28、20.37、22.61、27.22、27.40及び30.65°を含むX線回折パターンを示すことを特徴とする、結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態C。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基から調製される、医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩。
【請求項9】
塩酸デュロキセチンである、請求項8記載の医薬品として許容し得る塩。
【請求項10】
シュウ酸デュロキセチンである、請求項8記載の医薬品として許容し得る塩。
【請求項11】
純度が少なくとも約99.5%w/wである、請求項8から10のいずれか1項記載の医薬品として許容し得る塩。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基をデュロキセチンの塩から製造する方法。
【請求項13】
前記塩がシュウ酸デュロキセチン、塩酸デュロキセチン及びジ−p−トルイル酒石酸デュロキセチン塩から成る群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
デュロキセチンの塩を好適な媒体中に溶解する又は懸濁させること、好適な塩基で中和すること、このようにして形成されるデュロキセチン遊離塩基を好適な溶媒中に抽出すること、前記溶媒を非溶媒で置換すること、及びこのように結晶性デュロキセチン遊離塩基を分離することを含む,
請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基を製造する方法。
【請求項15】
前記媒体が水を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記塩基がアルカリ金属水酸化物を含む、請求項14又は15記載の方法。
【請求項17】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
結晶性デュロキセチン遊離塩基の第2の多形形態がそれとは全く異なる結晶性デュロキセチン遊離塩基の第1の多形形態から調製される多形形態相互変換過程を含む、請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基を製造する方法。
【請求項19】
前記相互変換過程の出発物質として使用される結晶性デュロキセチン遊離塩基の第1の多形形態を好適な低級アルコール溶媒に溶解し、そこから第2の多形形態を再結晶化させる、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記低級アルコール溶媒がメタノールである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Bが結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Aから調製される、請求項18から20のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
デュロキセチンの塩を水中に懸濁又は溶解すること、塩基で中和すること、実質上水と不混和性の溶媒中に抽出すること、前記実質上水と不混和性の溶媒を濃縮すること、前記実質上水と不混和性の溶媒をアセトンで置換すること、及びこのようにして結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Aを分離することを含む、請求項2又は3に記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Aを製造する方法。
【請求項23】
前記デュロキセチンの塩が塩酸デュロキセチン又はジ−p−トルイル酒石酸デュロキセチンである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記塩基がアルカリ金属水酸化物である、請求項22又は23記載の方法。
【請求項25】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記水と不混和性の溶媒がジクロロメタンである、請求項22から25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
デュロキセチン遊離塩基、形態Aを低級アルコール溶媒に溶解又は懸濁させること、及びそこからデュロキセチン遊離塩基、形態Bを再結晶化させることを含む、請求項4又は5記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Bを製造する方法。
【請求項28】
前記低級アルコール溶媒がメタノールである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
デュロキセチンの塩を水中に懸濁又は溶解すること、塩基で中和すること、実質上水と不混和性の溶媒中に抽出すること、前記実質上水と不混和性の溶媒を濃縮すること、前記実質上水と不混和性の溶媒をイソプロパノールで置換すること、及びこのようにして結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Cを分離することを含む、結晶性デュロキセチン遊離塩基、形態Cを製造する方法。
【請求項30】
前記デュロキセチンの塩が塩酸デュロキセチン又はジ−p−トルイル酒石酸デュロキセチンである、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記塩基がアルカリ金属水酸化物である、請求項29又は30記載の方法。
【請求項32】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記水と不混和性の溶媒がジクロロメタンである、請求項29から32のいずれか1項記載の方法。
【請求項34】
請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基を水と混和性の溶媒に溶解又は懸濁させること、その溶液又は懸濁液に医薬品として許容し得る塩を形成するのに必要とされる医薬品として許容し得る酸を添加すること、必要とされる結晶形態のデュロキセチンの医薬品として許容し得る塩を分離することを含む、請求項8から11のいずれか1項記載の医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩を製造する方法。
【請求項35】
前記結晶性デュロキセチン遊離塩基が形態Aである、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記結晶性デュロキセチン遊離塩基が形態Bである、請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記結晶性デュロキセチン遊離塩基が形態Cである、請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記水と混和性の溶媒がアセトンである、請求項34から37のいずれか1項記載の方法。
【請求項39】
前記塩がシュウ酸デュロキセチンである、請求項34から38のいずれか1項記載の方法。
【請求項40】
前記塩が塩酸デュロキセチンである、請求項34から38のいずれか1項記載の方法。
【請求項41】
セロトニン及び/又はノルエピネフリン再取り込み阻害薬を投与することによって予防、軽減又は除去されるような疾患に罹患している又はそのような疾患に罹患しやすいヒトを含めた患者に投与するための、医薬品として許容し得る製剤であって、請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基、又は請求項8から11のいずれか1項記載の医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩を治療上有効な量と、医薬品として許容し得るその担体、希釈剤又は賦形剤とを含む、前記製剤。
【請求項42】
治療用の、請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基、又は請求項8から11に記載の医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩。
【請求項43】
セロトニン及び/又はノルエピネフリン再取り込み阻害薬を投与することによって予防、軽減又は除去されるような疾患の治療薬製造用の、請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基、又は請求項8から11のいずれか1項記載の医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩。
【請求項44】
セロトニン及び/又はノルエピネフリン再取り込み阻害薬を投与することによって予防、軽減又は除去されるような疾患を、そのような疾患の治療を必要としている患者において治療する方法であって、患者に、請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基又は請求項8から11のいずれか1項記載の医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩を、治療上有効な量投与することを含む、前記方法。
【請求項45】
うつ病治療薬製造用の、請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基又は請求項8から11のいずれか1項記載の医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩。
【請求項46】
うつ病の治療を必要としている患者においてうつ病を治療する方法であって、患者に、請求項1から7のいずれか1項記載の結晶性デュロキセチン遊離塩基、又は請求項8から11のいずれか1項記載の医薬品として許容し得るデュロキセチンの塩を、治療上有効な量投与することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−537223(P2007−537223A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512342(P2007−512342)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001825
【国際公開番号】WO2005/108386
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(501312451)シプラ・リミテッド (56)
【Fターム(参考)】