説明

デューティ測定回路及びデューティ測定方法

【課題】 外部信号を用いずにクロック信号のデューティを正確に測定する。
【解決手段】 半導体装置20には、第1の回路ブロック1、第2の回路ブロック2、PLL部3、第1のデューティ測定回路4a及び4b、第2のデューティ測定回路5a及び5b、セレクタ6、及びI/Oレジスタ7が設けられている。第1の回路ブロック1に隣接して設けられた第1のデューティ測定回路4aは、第1の回路ブロック1に入力されるPLL信号の“High”レベル期間(TH)を測定する。第1の回路ブロック1に隣接して設けられた第2のデューティ測定回路5aは、第1の回路ブロック1に入力されるPLL信号の“Low”レベル期間(TL)を測定する。測定されたPLL信号の“High”レベル期間(TH)及びPLL信号の“Low”レベル期間(TL)から、第1の回路ブロック1に入力されるPLL信号のデューティを高精度に算出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック信号のデューティを測定するデューティ測定回路及びデューティ測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルLSIやSoC(System On a Chip)などの半導体装置では、種々のクロック供給回路が用いられ、PLL(Phase Locked Loop)回路(周波数逓倍回路とも呼称される)が多用されている。近年、半導体素子の微細化、高集積化の進展に伴い、クロック供給回路から出力されるクロック信号の高周波化が進行し、製造上のばらつきによる回路閾値の変化などにより、クロック信号の周波数及びデューティ変動が発生する可能性がある。このため、クロック信号の周波数及びデューティの高精度な測定が重要となっている。デューティ測定としては、クロック信号よりも数倍以上大きな周波数を有する外部サンプリングクロック信号を用いて、デューティの高精度な測定が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1などに記載されているクロック信号のデューティ測定では、半導体装置の内部で発生した信号だけではデューティを測定できないという問題点がある。また、最先端のデジタルLSIやSoCの場合、クロック信号が高周波数化されているので、より高速な外部サンプリングクロック信号が必要となるという問題点がある。そして、高精度なデューティ測定を行うためには回路構成が複雑になり、これらの回路を半導体装置内に設けた場合、半導体装置のコストが上昇し、一方、これらの回路を半導体装置外に設けた場合、評価コストが上昇するという問題点がある。更に、デジタルLSIやSoC内に設けられている複数の回路ブロックにそれぞれ供給されるクロック信号のデューティを高精度に測定できないという問題点がある。
【特許文献1】特開2001−124813号公報(頁13、図1、及び頁14、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、外部信号を用いずにクロック信号のデューティを正確に測定できるデューティ測定回路及びデューティ測定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様のデューティ測定回路は、発振器で発生された信号を逓倍してクロック信号を生成し、前記クロック信号を回路ブロックに出力するPLL部と、前記回路ブロックに隣接して設けられ、前記PLL部から出力された前記クロック信号を入力し、前記クロック信号の“High”レベル期間を測定する第1の測定手段と、前記回路ブロックに隣接して設けられ、前記PLL部から出力された前記クロック信号を反転し、反転した前記クロック信号を入力し、前記クロック信号の“Low”レベル期間を測定する第2の測定手段と具備することを特徴とする。
【0006】
更に、上記目的を達成するために、本発明の一態様のデューティ測定方法は、PLL部から出力され、発振器で発生された信号を逓倍したクロック信号が入力される回路ブロックに隣接して設けられ、複数の遅延手段及び第1のMUXを有し、前記クロック信号が入力される第1の測定手段を用い、前記第1のMUXに入力されたセレクタの制御信号にもとづいて前記複数の遅延手段の中から一つの遅延手段を選択して、前記クロック信号の“High”レベル期間を測定する工程と、前記回路ブロックに隣接して設けられ、前記クロック信号を入力し、複数の遅延手段及び前記第1のMUXと同一回路構成の第2のMUXを有する第2の測定手段を用い、前記第2のMUXに入力された前記セレクタの前記制御信号にもとづいて前記複数の遅延手段の中から一つの遅延手段を選択して、前記クロック信号の“Low”レベル期間を測定する工程と、前記“High”レベル期間及び前記“Low”レベル期間の値から前記クロック信号の前記“High”レベル期間のデューティ、前記“Low”レベル期間のデューティ、及びデューティ比を算出する工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外部信号を用いずにクロック信号のデューティを正確に測定できるデューティ測定回路及びデューティ測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、本発明の実施例1に係るデューティ測定回路及びデューティ測定方法について、図面を参照して説明する。図1は半導体装置の構成を示すブロック図である。本実施例では、SoCとしての半導体装置の内部2ケ所にデューティ測定回路を設けている。
【0010】
図1に示すように、半導体装置20には、第1の回路ブロック1、第2の回路ブロック2、PLL部3、第1のデューティ測定回路4a、第1のデューティ測定回路4b、第2のデューティ測定回路5a、第2のデューティ測定回路5b、セレクタ6、及びI/Oレジスタ7が設けられている。
【0011】
第1の回路ブロック1は、半導体装置20の左下端にPLL部3と隣接して設けられ、PLL部3から出力されるPLL信号を基準クロック信号(CLK)として用いて演算処理等を行う。第2の回路ブロック2は、半導体装置20の右上端にPLL部3と離間して設けられ、PLL部3から出力されるPLL信号を基準クロック信号(CLK)として用いて演算処理等を行う。
【0012】
PLL部3は、半導体装置20の下端に設けられ、CR発振器及びPLL回路を有し、CR発振器で発生された信号をPLL回路で逓倍し、基準クロック信号(CLK)としてのPLL信号を出力する。
【0013】
第1のデューティ測定回路4aは、第1の回路ブロック1に隣接して設けられ、第1の回路ブロック1に入力されるPLL信号の“High”レベル期間の測定を行う第1の測定手段として機能する。第1のデューティ測定回路4bは、第1のデューティ測定回路4aと同一回路構成を有し、第2の回路ブロック2に隣接して設けられ、第2の回路ブロック2に入力されるPLL信号の“High”レベル期間の測定を行う第1の測定手段として機能する。
【0014】
第2のデューティ測定回路5aは、第1のデューティ測定回路4a及び第1のデューティ測定回路4bとは回路構成が異なり、第1の回路ブロック1に隣接して設けられ、第1の回路ブロック1に入力されるPLL信号の“Low”レベル期間の測定を行う第2の測定手段として機能する。第2のデューティ測定回路5bは、第2のデューティ測定回路5aと同一回路構成を有し、第2の回路ブロック2に隣接して設けられ、第2の回路ブロック2に入力されるPLL信号の“Low”レベル期間の測定を行う第2の測定手段として機能する。
【0015】
セレクタ6は、PLL信号のデューティを測定するために必要な制御信号を生成し、その信号を第1のデューティ測定回路4a、第1のデューティ測定回路4b、及び第2のデューティ測定回路5a、第2のデューティ測定回路5bに出力する。I/Oレジスタ7は、第1のデューティ測定回路4a、第1のデューティ測定回路4bから出力された信号情報、及び第2のデューティ測定回路5a、第2のデューティ測定回路5bから出力された信号情報を記憶し、あわせてその信号を半導体装置20の外部に出力する。
【0016】
次に、デューティ測定回路の構成について図2及び図3を参照して説明する、図2は第1のデューティ測定回路を示すブロック図、図3は第2のデューティ測定回路を示すブロック図である。
【0017】
図2に示すように、第1のデューティ測定回路4a及び第1のデューティ測定回路4bは、リセット機能付きフリップフロップ8、フリップフロップ8a、フリップフロップ8b、MUX(Multiplexer)10a、MUX10b、インバータ11a、インバータ11b、XOR(Ex−OR)12、遅延回路DA1、遅延回路DA2、遅延回路DAn、遅延回路DB1、遅延回路DB2、及び遅延回路DBnから構成されている。
【0018】
リセット機能付きフリップフロップ8は、PLL信号(CLK)をクロックとして入力し、出力された信号はインバータ11aで反転され、反転された信号が再度データとして入力される。そして、リセット機能付きフリップフロップ8は、リセット信号を入力して、リセット信号の信号レベルに応じて、デューティ測定時には信号A11を出力し、半導体装置20の通常動作時には動作を停止する。
【0019】
遅延回路DA1、遅延回路DA2、及び遅延回路DAnは、リセット機能付きフリップフロップ8とMUX10aの間に並列してn個設けられ、リセット機能付きフリップフロップ8から出力された信号A11を遅延させる役目をする。そして、遅延回路DA2は遅延回路DA1よりも信号A11を遅延させ、遅延回路DAnは信号A11を最大遅延させる。
【0020】
ここで、遅延回路DA1、遅延回路DA2、及び遅延回路DAnには、例えば、第1の回路ブロック1及び第2の回路ブロック2などに配置されるインバータを最小遅延単位とするインバータチェーンを用いるのが好ましい。そして、インバータチェーンを構成するインバータの数はそれぞれ偶数個に設定するのが好ましい。
【0021】
MUX10aは、遅延回路DA1、遅延回路DA2、及び遅延回路DAnと遅延回路DB1、遅延回路DB2、及び遅延回路DBnの間に設けられ、セレクタ6から出力されたセレクタの制御信号SELA11を入力し、この制御信号にもとづいて遅延回路DA1、遅延回路DA2、或いは遅延回路DAnにより遅延された信号A11を選択して、信号B11として出力する。
【0022】
遅延回路DB1、遅延回路DB2、及び遅延回路DBnは、MUX10aとMUX10bの間に並列してn個設けられ、MUX10aから出力された信号B11を遅延させる役目をする。そして、遅延回路DB2は遅延回路DB1よりも信号B11を遅延させ、遅延回路DBnは信号B11を最大遅延させる。
【0023】
ここで、遅延回路DB1、遅延回路DB2、及び遅延回路DBnには、例えば、第1の回路ブロック1及び第2の回路ブロック2などに配置されるインバータを最小遅延単位とするインバータチェーンを用いるのが好ましい。そして、インバータチェーンを構成するインバータの数はそれぞれ偶数個に設定するのが好ましい。
【0024】
また、遅延回路DA1、遅延回路DA2、及び遅延回路DAnと、遅延回路DB1、遅延回路DB2、及び遅延回路DBnの遅延時間は、PLL信号(CLK)の1周期の時間よりも短いのが好ましい。更に、遅延回路DA1、遅延回路DA2、及び遅延回路DAnと、遅延回路DB1、遅延回路DB2、及び遅延回路DBnの遅延時間の算出方法は、例えば、デバイスデータから回路シミュレータであるSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)を用いて算出する、或いはTEG(Test Element Group)評価から得られるデータなどを用いてもよい。
【0025】
MUX10bは、遅延回路DB1、遅延回路DB2、及び遅延回路DBnとフリップフロップ8bの間に設けられ、セレクタ6から出力されたセレクタの制御信号SELB11を入力し、この制御信号にもとづいて遅延回路DB1、遅延回路DB2、或いは遅延回路DBnにより遅延された信号B11を選択して、信号B12として出力する。
【0026】
フリップフロップ8aは、MUX10aとEOR(Ex−OR)12の間に設けられ、信号B11をデータとして入力し、PLL信号(CLK)をインバータ11bにより反転した信号をクロックとして入力し、出力信号をEOR(Ex−OR)12に出力する。フリップフロップ8bは、MUX10bとEOR(Ex−OR)12の間に設けられ、信号B12をデータとして入力し、PLL信号(CLK)をインバータ11bにより反転した信号をクロックとして入力し、出力信号をEOR(Ex−OR)12に出力する。
【0027】
EOR(Ex−OR)12は、フリップフロップ8a及びフリップフロップ8bから出力された信号を入力し、論理演算した信号C11をI/Oレジスタ7に出力する。ここで、EOR(Ex−OR)12は、フリップフロップ8aの出力信号レベルとフリップフロップ8aの出力信号レベルとが異なる場合、“High”レベルの信号を出力し、フリップフロップ8aの出力信号レベルとフリップフロップ8aの出力信号レベルとが同一の場合、“Low”レベルの信号を出力する。
【0028】
図3に示すように、第2のデューティ測定回路5a及び第2のデューティ測定回路5bは、リセット機能付きフリップフロップ8、フリップフロップ8a、フリップフロップ8b、MUX10a、MUX10b、インバータ11a、インバータ11c、XOR(Ex−OR)12、遅延回路DA1、遅延回路DA2、遅延回路DAn、遅延回路DB1、遅延回路DB2、及び遅延回路DBnから構成されている。ここで、第2のデューティ測定回路5は、第1のデューティ測定回路4内のインバータ11bを省き、フリップフロップ8に入力されるPLL信号(CLK)を反転するために新たにインバータ11cを設けたものであり、第1のデューティ測定回路4と同一部分の説明は省略する。
【0029】
リセット機能付きフリップフロップ8は、PLL信号(CLK)をインバータ11cにより反転した信号をクロックとして入力し、出力された信号はインバータ11aで反転され、反転された信号が再度データとして入力される。そして、リセット機能付きフリップフロップ8は、リセット信号を入力して、リセット信号の信号レベルに応じて、デューティ測定時には信号A21を出力し、半導体装置20の通常動作時には動作を停止する。
【0030】
遅延回路DA1、遅延回路DA2、及び遅延回路DAnは、リセット機能付きフリップフロップ8とMUX10aの間に並列してn個設けられ、リセット機能付きフリップフロップ8から出力された信号A21を遅延させる役目をする。MUX10aは、セレクタ6から出力されたセレクタの制御信号SELA21を入力し、この制御信号にもとづいて遅延回路DA1、遅延回路DA2、或いは遅延回路DAnにより遅延された信号A21を選択して、信号B21として出力する。
【0031】
遅延回路DB1、遅延回路DB2、及び遅延回路DBnは、MUX10aから出力された信号B21を遅延させる役目をする。MUX10bは、セレクタ6から出力されたセレクタの制御信号SELB21を入力し、この制御信号にもとづいて遅延回路DB1、遅延回路DB2、或いは遅延回路DBnにより遅延された信号B21を選択して、信号B22として出力する。
【0032】
フリップフロップ8aは、信号B21をデータとして入力し、PLL信号(CLK)をクロックとして入力し、出力信号をEOR(Ex−OR)12に出力する。フリップフロップ8bは、信号B22をデータとして入力し、PLL信号(CLK)をクロックとして入力し、出力信号をEOR(Ex−OR)12に出力する。EOR(Ex−OR)12は、フリップフロップ8a及びフリップフロップ8bから出力された信号を入力し、論理演算した信号C21をI/Oレジスタ7に出力する。
【0033】
次に、デューティ測定回路の動作について図4乃至図7を参照して説明する、図4及び図5は第1のデューティ測定回路の動作を示すタイミングチャート、図6及び図7は第2のデューティ測定回路の動作を示すタイミングチャートである。ここで、図4及び図5は、MUXbに接続する遅延回路としてインバータチェーン数が比較的少ないものを選択した場合のタイミングチャートであり、図5及び図7は、MUXbに接続する遅延回路を比較的インバータチェーン数の多いものを選択した場合のタイミングチャートである。
【0034】
図4に示すように、まず、セレクタの制御信号SELA11にもとづいて、例えば、遅延回路DA1を選択し、セレクタの制御信号SELB11にもとづいて、例えば、遅延回路DB1を選択しておく。
【0035】
次に、リセット信号にもとづいてリセット付きフリップフロップ8のリセットの解除を行い、リセット付きフリップフロップ8はPLL信号(CLK)をクロックとして入力し、信号A11を出力する。ここで、PLL信号(CLK)が“Low”から“High“に立ち上がる時に信号A11はデータを反転するので、信号A11はPLL信号(CLK)よりも2倍の周期を有する。
【0036】
続いて、信号A11は遅延回路DA1により遅延され、MUX10aから遅延された信号B11が出力され、信号B11は遅延回路DB1により遅延され、MUX10bから遅延された信号B12が出力される。ここで、信号B12の遅延は比較的少ないので、PLL信号(CLK)に対する信号B12の遅れはPLL信号(CLK)の1周期内に収まっている。
【0037】
そして、PLL信号(CLK)の反転信号が“Low”から“High“に立ち上がる時、信号B11及び信号B12の信号レベルはともに”High“或いは”Low“になっている。信号B11が”High“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)の反転信号が入力され、フリップフロップ8aから出力される信号は”High“レベルとなり、信号B12が”High“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)の反転信号が入力され、フリップフロップ8bから出力される信号は”High“レベルとなる。
【0038】
一方、信号B11が”Low“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)の反転信号が入力され、フリップフロップ8aから出力される信号は”Low“レベルとなり、信号B12が”Low“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)の反転信号が入力され、フリップフロップ8bから出力される信号は”Low“レベルとなる。
【0039】
このため、XOR(Ex−OR)12から出力される信号C11の信号レベルは“Low”レベルとなる。
【0040】
次に、図5に示すように、セレクタの制御信号SELB11にもとづいて遅延時間の長い遅延回路、例えば、遅延回路DBnを選択した場合、信号B12の遅延は比較的大きいので、PLL信号(CLK)に対する信号B12の遅れはPLL信号(CLK)の1周期内に収まらない。
【0041】
PLL信号(CLK)の反転信号が“Low”から“High“に立ち上がる時、信号B11の信号レベルが”High“であれば信号B12の信号レベルが”Low“となり、信号B11の信号レベルが”Low“であれば信号B12の信号レベルが”High“となる。
【0042】
信号B11が”High“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)の反転信号が入力され、フリップフロップ8aから出力される信号は”High“レベルとなり、信号B12が”Low“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)の反転信号が入力され、フリップフロップ8bから出力される信号は”Low“レベルとなる。
【0043】
一方、信号B11が”Low“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)の反転信号が入力され、フリップフロップ8aから出力される信号は”Low“レベルとなり、信号B12が”High“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)の反転信号が入力され、フリップフロップ8bから出力される信号は”High“レベルとなる。
【0044】
このため、XOR(Ex−OR)12から出力される信号C11の信号レベルは“High”レベルとなる。次に、セレクタの制御信号SELB11にもとづいて、信号C11の信号レベルを“High”レベルにする最小の遅延時間を有する遅延回路を選択する。選択された遅延回路の遅延時間がPLL信号(CLK)の“High”レベル期間(TH)となるので、PLL信号(CLK)の“High”レベル期間(TH)を算出することができる。この場合、選択された遅延回路の遅延時間に対して、MUX10bの遅延時間は十分短いのでこの遅延時間を考慮しなくてもよい。
【0045】
図6に示すように、まず、セレクタの制御信号SELA21にもとづいて、例えば、遅延回路DA1を選択し、セレクタの制御信号SELB21にもとづいて、例えば、遅延回路DB1を選択しておく。
【0046】
次に、リセット信号にもとづいてリセット付きフリップフロップ8のリセットの解除を行い、リセット付きフリップフロップ8はインバータ11cによりPLL信号(CLK)を反転した信号をクロックとして入力し、信号A21を出力する。ここで、PLL信号(CLK)を反転した信号が“Low”から“High“に立ち上がる時に信号A21はデータを反転するので、信号A21はPLL信号(CLK)よりも2倍の周期を有する。
【0047】
続いて、信号A21は遅延回路DA1により遅延され、MUX10aから遅延された信号B21が出力され、信号B21は遅延回路DB1により遅延され、MUX10bから遅延された信号B22が出力される。ここで、信号B22の遅延は比較的少ないので、PLL信号(CLK)を反転した信号に対する信号B22の遅れはPLL信号(CLK)の1周期内に収まっている。
【0048】
そして、PLL信号(CLK)が“Low”から“High“に立ち上がる時、信号B21及び信号B22の信号レベルはともに”Low“或いは”High“になっている。信号B21が”Low“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)が入力され、フリップフロップ8aから出力される信号は”Low“レベルとなり、信号B22が”Low“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)が入力され、フリップフロップ8bから出力される信号は”Low“レベルとなる。
【0049】
一方、信号B21が”High“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)が入力され、フリップフロップ8aから出力される信号は”High“レベルとなり、信号B22が”High“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)が入力され、フリップフロップ8bから出力される信号は”High“レベルとなる。
【0050】
このため、XOR(Ex−OR)12から出力される信号C11の信号レベルは“Low”レベルとなる。
【0051】
次に、図7に示すように、セレクタの制御信号SELB21にもとづいて遅延時間の長い遅延回路、例えば、遅延回路DBnを選択した場合、信号B22の遅延は比較的大きいので、PLL信号(CLK)を反転した信号に対する信号B22の遅れはPLL信号(CLK)を反転した信号の1周期内に収まらない。
【0052】
PLL信号(CLK)が“Low”から“High“に立ち上がる時、信号B21の信号レベルが”Low“であれば信号B22の信号レベルが”High“となり、信号B21の信号レベルが”High“であれば信号B11の信号レベルが”Low“となる。
【0053】
信号B21が”Low“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)が入力され、フリップフロップ8aから出力される信号は”Low“レベルとなり、信号B22が”High“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)が入力され、フリップフロップ8bから出力される信号は”High“レベルとなる。
【0054】
一方、信号B21が”High“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)が入力され、フリップフロップ8aから出力される信号は”High“レベルとなり、信号B22が”Low“レベルの時、“Low”から“High“に立ち上がるPLL信号(CLK)が入力され、フリップフロップ8bから出力される信号は”Low“レベルとなる。
【0055】
このため、XOR(Ex−OR)12から出力される信号C21の信号レベルは“High”レベルとなる。次に、セレクタの制御信号SELB21にもとづいて、信号C21の信号レベルを“High”レベルにする最小の遅延時間を有する遅延回路を選択する。選択された遅延回路の遅延時間がPLL信号(CLK)の“Low”レベル期間(TL)となるので、PLL信号(CLK)の“Low”レベル期間(TL)を算出することができる。この場合、選択された遅延回路の遅延時間に対して、MUX10bの遅延時間は十分短いのでこの遅延時間を考慮しなくてもよい。
【0056】
PLL信号(CLK)の“High”レベル期間のデューティ(DH)及び“Low”レベル期間のデューティ(DL)は、それぞれ、
DH={TH/(TH+TL)}×100(%)・・・・・・・・式(1)
DL={TL/(TH+TL)}×100(%)・・・・・・・・式(2)
と表すことがでる。
【0057】
そして、第1のデューティ測定回路4で測定されたPLL信号(CLK)の“High”レベル期間(TH)の値及び第2のデューティ測定回路5で測定されたPLL信号(CLK)の“Low”レベル期間(TL)の値を、式(1)及び式(2)に代入することにより、デューティ(DH)及びデューティ(DL)をそれぞれ高精度に算出でき、PLL信号(CLK)のデューティ比はDH、DLで表すことができる。
【0058】
ここで、遅延回路を構成するインバータの遅延時間をTd、PLL信号(CLK)の“High”レベル期間(TH)の測定で最終的に選択された遅延回路のインバータの数をNh、PLL信号(CLK)の“Low”レベル期間(TL)の測定で最終的に選択された遅延回路のインバータの数をNl、MUX10aの遅延時間をDmuxa、MUX10bの遅延時間をDmuxbとすると、PLL信号(CLK)のデューティ測定精度を求めるときの最小分解能(Ds)は、
Ds=Td/[2×{(Dmuxa+Dmuxb)+Td×(Nh+Nl)}]・・・・・・・・式(3)
と表され、{Td×(Nh+Nl)}>>(Dmuxa+Dmuxb)であるから、
Ds≒Td/[2×{Td×(Nh+Nl)}]=1/2(Nh+Nl)・・・・・・・・・・式(4)
と表すことができ、例えば、遅延回路を構成するインバータの遅延時間(Td)が10psで、SoCとしての半導体装置20のPLL信号(CLK)が1GHzの場合、最小分解能(Ds)は0.5%となる。
【0059】
上述したように、本実施例のデューティ測定回路及びデューティ測定方法では、基準クロック信号(CLK)としてのPLL信号を発生するPLL部3に隣接する第1の回路ブロック1には、第1の回路ブロック1に入力されるPLL信号の“High”レベル期間を測定する第1のデューティ測定回路4a及び“Low”レベル期間を測定する第2のデューティ測定回路5aが設けられ、PLL部3と離間する第2の回路ブロック2には、第2の回路ブロック2に入力されるPLL信号の“High”レベル期間を測定する第1のデューティ測定回路4b及び“Low”レベル期間を測定する第2のデューティ測定回路5bが設けられている。そして、第1のデューティ測定回路4a、第1のデューティ測定回路4b、第2のデューティ測定回路5a、及び第2のデューティ測定回路5bには、n個の遅延回路が設けられ、セレクタの制御信号にもとづいて最小の遅延時間を有する遅延回路を選択し、これをPLL信号の“High”レベル期間或いは“Low”レベル期間として算出している。
【0060】
このため、従来のように内部クロック信号(CLK)よりも数倍以上大きな周波数を有する外部サンプリングクロック信号を用いることなく、半導体装置20内の信号だけを用いて基準クロック信号であるPLL信号(CLK)のデューティ測定を高精度に行うことができる。また、従来よりも回路構成が比較的簡略であり、デューティ測定を簡略にでき、高価な測定装置を用いる必要がない。更に、半導体装置20内に設けられた複数の回路ブロックにそれぞれ供給される基準クロック信号であるPLL信号(CLK)のデューティ測定を同時に測定できる。
【0061】
本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々、変更してもよい。
【0062】
例えば、本実施例では、遅延回路にインバータチェーンを用いているが、抵抗やRC遅延回路などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体装置を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例1に係る第1のデューティ測定回路を示すブロック図。
【図3】本発明の実施例1に係る第2のデューティ測定回路を示すブロック図。
【図4】本発明の実施例1に係る第1のデューティ測定回路の動作を示すタイミングチャート。
【図5】本発明の実施例1に係る第1のデューティ測定回路の動作を示すタイミングチャート。
【図6】本発明の実施例1に係る第1のデューティ測定回路の動作を示すタイミングチャート。
【図7】本発明の実施例1に係る第1のデューティ測定回路の動作を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0064】
1 第1の回路ブロック
2 第2の回路ブロック
3 PLL部
4a、4b 第1のデューティ測定回路
5a、5b 第2のデューティ測定回路
6 セレクタ
7 I/Oレジスタ
8 リセット機能付きフリップフロップ
8a、8b フリップフロップ
10a、10b MUX
11a、11b、11c インバータ
12 XOR(Ex−OR)
20 半導体装置
DA1、DA2、DAn、DB1、DB2、DBn 遅延回路
SELA11、SELB11、SELA21、SELB21 セレクタの制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振器で発生された信号を逓倍してクロック信号を生成し、前記クロック信号を回路ブロックに出力するPLL部と、
前記回路ブロックに隣接して設けられ、前記PLL部から出力された前記クロック信号を入力し、前記クロック信号の“High”レベル期間を測定する第1の測定手段と、
前記回路ブロックに隣接して設けられ、前記PLL部から出力された前記クロック信号を反転し、反転した前記クロック信号を入力し、前記クロック信号の“Low”レベル期間を測定する第2の測定手段と、
具備することを特徴とするデューティ測定回路。
【請求項2】
発振器で発生された信号を逓倍してクロック信号を生成し、前記クロック信号を回路ブロックに出力するPLL部と、
制御信号を生成するセレクタと、
前記回路ブロックに隣接して設けられ、前記PLL部から出力された前記クロック信号を入力し、複数の遅延手段を有し、前記セレクタから出力された前記制御信号にもとづいて前記複数の遅延手段の中から一つの遅延手段を選択して、前記クロック信号の“High”レベル期間を測定する第1の測定手段と、
前記回路ブロックに隣接して設けられ、前記PLL部から出力された前記クロック信号を反転し、反転した前記クロック信号を入力し、前記複数の遅延手段を有し、前記セレクタから出力された前記制御信号にもとづいて前記複数の遅延手段の中から一つの遅延手段を選択して、前記クロック信号の“Low”レベル期間を測定する第2の測定手段と、
具備することを特徴とするデューティ測定回路。
【請求項3】
発振器で発生された信号を逓倍してクロック信号を生成し、前記クロック信号を回路ブロックに出力するPLL部と、
制御信号を生成するセレクタと、
前記回路ブロックに隣接して設けられ、前記PLL部から出力された前記クロック信号を入力し、複数の遅延手段及び第1のMUXを有し、前記セレクタから出力され、前記第1のMUXに入力された前記制御信号にもとづいて前記複数の遅延手段の中から一つの遅延手段を選択して、前記クロック信号の“High”レベル期間を測定する第1の測定手段と、
前記回路ブロックに隣接して設けられ、前記PLL部から出力された前記クロック信号を反転し、反転した前記クロック信号を入力し、前記複数の遅延手段及び前記第1のMUXと同一回路構成の第2のMUXを有し、前記セレクタから出力され、前記第2のMUXに入力された前記制御信号にもとづいて、前記複数の遅延手段の中から一つの遅延手段を選択して、前記クロック信号の“Low”レベル期間を測定する第2の測定手段と、
具備することを特徴とするデューティ測定回路。
【請求項4】
前記遅延手段は、インバータチェーンから構成される遅延回路であることを特徴とする請求項2又は3に記載のデューティ測定回路。
【請求項5】
PLL部から出力され、発振器で発生された信号を逓倍したクロック信号が入力される回路ブロックに隣接して設けられ、複数の遅延手段及び第1のMUXを有し、前記クロック信号が入力される第1の測定手段を用い、前記第1のMUXに入力されたセレクタの制御信号にもとづいて前記複数の遅延手段の中から一つの遅延手段を選択して、前記クロック信号の“High”レベル期間を測定する工程と、
前記回路ブロックに隣接して設けられ、前記クロック信号を入力し、複数の遅延手段及び前記第1のMUXと同一回路構成の第2のMUXを有する第2の測定手段を用い、前記第2のMUXに入力された前記セレクタの前記制御信号にもとづいて前記複数の遅延手段の中から一つの遅延手段を選択して、前記クロック信号の“Low”レベル期間を測定する工程と、
前記“High”レベル期間及び前記“Low”レベル期間の値から前記クロック信号の前記“High”レベル期間のデューティ、前記“Low”レベル期間のデューティ、及びデューティ比を算出する工程と、
を具備することを特徴とするデューティ測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−201021(P2006−201021A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12655(P2005−12655)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】