データの連結合成方法及び連結合成プログラム
【課題】 対象面を複数に分割して撮影された赤外画像の温度分布データから、対象面に対応する赤外画像を容易に得ることができるデータの連結合成方法と連結合成プログラムを提供する。
【解決手段】 対象物をその一部を重複させて分割した複数のブロックの前記対象物の各点の温度データを記録したブロック毎の温度分布ファイルから、前記複数のブロックに対応する範囲の温度分布ファイルを生成するデータの連結合成方法において、前記重複部の各点の温度データに基づいて、前記重複部が最も良く重なる前記各点の相対的位置を決定するステップと、前記決定した相対的位置において、前記ブロック毎の温度分布ファイルを連結合成した一つの温度分布ファイルを生成するステップとを含むデータの連結合成方法と連結合成プログラム。
【解決手段】 対象物をその一部を重複させて分割した複数のブロックの前記対象物の各点の温度データを記録したブロック毎の温度分布ファイルから、前記複数のブロックに対応する範囲の温度分布ファイルを生成するデータの連結合成方法において、前記重複部の各点の温度データに基づいて、前記重複部が最も良く重なる前記各点の相対的位置を決定するステップと、前記決定した相対的位置において、前記ブロック毎の温度分布ファイルを連結合成した一つの温度分布ファイルを生成するステップとを含むデータの連結合成方法と連結合成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の各点の温度を示す温度分布データの取り扱い方法に関し、特に対象物を複数のブロックに分割してブロック毎に取得した温度分布データの取り扱い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象物であるコンクリート構造物等の面を赤外線カメラで撮影し、対象面の温度分布状態に基づいてコンクリート構造物等の欠陥の存在やその位置を検知する方法が知られている。この方法では、温度分布状態は赤外線カメラで得た温度データに基づいて画像化された赤外画像を観察して知得している。
【0003】
更に、通常のデジタルカメラで、コンクリート構造物等の大型対象物の対象面を複数のブロックに分割して撮影する際、隣接するブロック毎の一部の範囲を重複させて撮影したデジタル画像を2値化して、この2値化データに基づいて隣接する画像が丁度重なる連結位置を求め、この位置で隣接する画像を連結することによって対象面を一つの画像に合成する方法が知られている。
【0004】
また、相対的位置が既知であるデジタルカメラと赤外線カメラとを用い対象物を複数のブロックに分割して撮影し、各ブロックのデジタルカメラによる画像を用いて求めた連結位置とデジタルカメラと赤外線カメラとの相対的位置に基づいて同じブロックの赤外線カメラによる赤外画像の連結位置を求め、この連結位置で赤外画像を連結合成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−337493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象物の欠陥を赤外画像の観察によって検出するには、検出すべき欠陥の大きさに応じた分解能、即ち所定の撮影倍率が必要であり、そして欠陥状態を適切に判断するには、赤外画像に適当な範囲が含まれること、即ち適当な視野が必要であるが、これら二つは相反する条件である。
【0006】
これらの相反する条件を満たすために、対象面を複数のブロックに分割して互いに隣接するブロックの一部を含む赤外画像をそれぞれ撮影し、これら各ブロックの赤外画像を連結合成することが考えられる。これは、対象面を複数に分割し各ブロックの一部を重複して撮影した画像を連結して対象面の画像を生成する場合、重複部に含まれる複数の特徴点が一致するように各ブロックの画像の位置を調整することで実現できる。特徴点の決定はコンピュータによる自動抽出又は手動操作で指示し、画像位置の位置調整はコンピュータにより自動調整される。
【0007】
連結される画像が通常のデジタルカメラによる画像の場合、十分な解像度が得られるので上述の連結合成処理に際し支障は無いが、赤外線カメラによる画像の場合、赤外線カメラによる画像は通常のデジタルカメラによる画像に比べ解像度がかなり低いので、特徴点の自動抽出又は手動操作による指示が困難なことが多い。特徴点を手動操作で指示した際、指示した点が大きくばらつき、画像の連結位置の調整が上手くいかず、結果として連結された画像が不連続なものとなるという問題点があった。また、手動操作による特徴点の指示には長時間を要するという問題点もあった。
【0008】
上記問題点を解決する方法として特許文献1にデジタルカメラと赤外線カメラとを併用する方法が提案されているが、この提案例では、デジタルカメラと赤外線カメラとが必要であり、且つ2種類のカメラが既知の相対的位置に固定されていなければならず大掛かりな装置となる。更にデジタルカメラと赤外線カメラの2種類のカメラによる画像を用いて画像を連結するので連結に要する処理が複雑となり、処理時間が長くなると共に連結位置に誤差を生じ易いという欠点がある。
【0009】
また、検査対象物の欠陥の知得には、赤外画像の表示温度範囲、温度分解能等の表示条件を適切に設定することが必要であるが、表示条件の変更が必要な場合、撮影された複数のブロックのブロック毎に表示条件を変更して赤外画像を連結合成するでは多大な手間を要すると言う問題がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みて行われたものであり、対象面を複数に分割して撮影された赤外画像の温度分布データから、対象面の赤外画像を正確に生成することができ、また赤外画像の表示条件を変更した際、対象面に対応する赤外画像を容易に得ることができるデータの連結合成方法と連結合成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、対象物をその一部を重複させて分割した複数のブロックの前記対象物の各点の温度データを記録したブロック毎の温度分布ファイルから、前記複数のブロックに対応する範囲の温度分布ファイルを生成するデータの連結合成方法において、前記重複部の各点の温度データに基づいて、前記重複部が最も良く重なる前記各点の相対的位置を決定するステップと、前記決定した相対的位置において、前記ブロック毎の温度分布ファイルを連結合成した一つの温度分布ファイルを生成するステップとを含むことを特徴とするデータの連結合成方法を提供する。
【0012】
また、本発明のデータの連結合成方法は、前記ブロック毎の温度分布ファイルに基づいて前記対象物の各点の温度の分布状態を画像化して前記ブロック毎の赤外画像を生成するステップと、前記決定した相対的位置において、前記ブロック毎の赤外画像を連結合成して一つの赤外画像を生成するステップとを更に含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明のデータの連結合成方法では、前記相対的位置を決定するステップは、前記ブロック毎の温度分布ファイルの重複部の各点を所定の相対位置関係に対応付けるステップと、前記相対位置関係を所定の方法で変化させつつ、その各相対位置関係において対応する前記各点の温度データの差を求めるステップと、前記求めた差の分布のヒストグラムと平均値と標準偏差とに基づき、前記重複部が最も良く重なる相対位置関係を検出するステップとを含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明のデータの連結合成方法では、前記重複部が最も良く重なる相対位置関係を検出するステップは、前記差の分布が最も正規分布に近く且つ尖鋭度が高い分布である相対位置関係を検出するステップであることが好ましい。
【0015】
また、本発明のデータの連結合成方法では、前記ブロック毎の温度分布ファイルを連結合成するステップと前記ブロック毎の赤外画像を連結合成するステップとは、一つの連結合成指示に応じて実行されることが好ましい。
【0016】
また、本発明のデータの連結合成方法では、前記ブロック毎の温度分布ファイルは、赤外線カメラによって前記対象物のブロック毎に撮影することによって取得したファイルであることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記データの連結合成方法の各ステップをコンピュータに実行させる連結合成プログラムを提供する。
【0018】
また、本発明は、前記連結合成プログラムがインストールされた記憶部を有する赤外線カメラを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記連結合成プログラムがインストールされた記憶部を有するデータ処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、対象面を複数に分割して撮影された赤外画像の温度分布データから、対象面の赤外画像を正確に生成することができ、また赤外画像の表示条件を変更した際、対象面に対応する赤外画像を容易に得ることができるデータの連結合成方法と連結合成プログラムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に関し図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態にかかるシステムの構成を示すブロック図である。図2は、図1の赤外線カメラで撮影した赤外画像の一例を示す図である。図3は、赤外線カメラで図2の画像の下部に隣接するブロックを撮影した赤外画像を示す図である。図4は、図2の赤外画像のA−A´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。図5は、図3の赤外画像のB−B´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。図6は、本発明の実施の形態にかかるデータの連結合成方法の処理の流れを示すフローチャートである。図7は、図6のフローチャートによるデータの連結合成処理の概念を説明する図である。図8は、連結合成された赤外画像を示す図である。図9は、連結合成された赤外画像のC−C´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。図10は、表示温度範囲の変更前後の赤外画像の例を示し、(a)は変更前を、(b)は変更後の赤外画像をそれぞれ示す。図11は、本発明にかかる別のデータの連結合成方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【0023】
(実施の形態)
図1において、本発明にかかるシステムは、図示しない検査対象物を撮影する赤外線カメラ100と、赤外線カメラ100で撮影して得た検査対象物の各点の温度から求められた温度分布に基づいて欠陥解析やそれに付随する種々の処理を行う処理装置200とから構成されている。
【0024】
赤外線カメラ100の撮像部101は検査対象物の像を赤外撮像素子102上に結像する。赤外撮像素子102は赤外線領域に感度を有し、検査対象物の各部の温度に応じた信号を出力する。
【0025】
データ処理部103は赤外撮像素子102からの信号を受け、この信号をその大きさに応じた温度値に変換する。その結果、検査対象物の各部の温度を示す温度分布データが生成される。データ処理部103は更に、この温度分布データを画像化して表示部106に表示する。その結果、検査対象物の温度分布状態が可視化され、検査対象物の各部分の温度を容易に確認することが可能となる。
【0026】
ところで、画像化における画像表示のダイナミックレンジは赤外撮像素子102のダイナミックレンジに比べ狭い。このため、この画像化は赤外撮像素子102のダイナミックレンジ内から選択された一部の範囲について行われ、選択された範囲外の温度は上側に範囲外であること及び下側に範囲外であることが識別可能で、これら範囲内でのそれぞれの温度は識別不能な所定の方法で表示される。
【0027】
操作部104は赤外線カメラ100を操作するための各種の操作手段を有し、表示条件として画像化する温度範囲と表示温度分解能を設定するための表示温度設定部105が含まれる。データ処理部103は表示温度設定部105に設定された表示条件を読み取り、その表示条件である温度範囲と表示温度分解能で画像化し、表示部106に表示する。
【0028】
データ処理部103は、更に操作部104の所定の操作に応じて温度分布データ108と、表示温度設定部105に設定された表示条件109、即ち表示温度範囲と表示温度分解能とを記録部107に温度データ110として記録する。温度データ110は、記録部107の装脱自在な記憶媒体に記録される。
【0029】
処理装置200は、赤外線カメラ100から離れた場所(例えば、事務所内など)に設置され、赤外線カメラ100によって得た温度データ110に基づいて本発明にかかる画像処理を含む各種の処理を行う。処理装置200は、処理プログラムがインストールされた汎用のパーソナルコンピュータ等で良い。
【0030】
処理装置200は処理プログラム201を記憶した記憶部202の他、記録媒体が装脱自在で装着された記憶媒体から温度データ110を読み込む読込・記録部203、読み込んだ温度データ110を処理プログラム201に従って処理すると共に処理装置200の各部の動作を制御する演算部204、演算部204への入力部205、各種の表示を行う表示部206等で構成されている。
【0031】
データA(207)及びデータB(208)は夫々隣接する異なる場所の撮影によって得た温度データ110である。読込・記憶部203は、更に読み込まれたデータA(207)やデータB(208)が処理された結果の連結データ209を記録媒体に記録する。
【0032】
次に、赤外線カメラ100及び処理装置200からなるシステムを用いて、丘陵地の斜面の崩落を防止するためのコンクリート構造物を複数の所定の面積(以後、ブロックと記す)で撮影し、それぞれのブロックから得た温度分布データ108を用いてそれぞれ赤外画像を連結合成して一つの赤外画像に合成するデータの連結合成方法について説明する。広い面積を有するコンクリート構造物を一枚の画像で撮影したのでは詳細な温度分布データを得ることが出来ず、欠陥等の検出が難しくなるで、コンクリート構造物を所定の面積で複数のブロックの画像に分割して撮影し連結合成する。
【0033】
撮影する際に、コンクリート構造物全体を複数のブロックに分割し、隣接するブロックそれぞれを所定の割合以上(例えば20%程度以上)の重複部をもつ画像として赤外線カメラ100で撮影する。赤外線カメラ100は、その赤外撮像素子102の各ピクセルに対応する対象物の各点の温度を検知し、各点の位置に検知した温度に応じた色や輝度を表示することにより各点に対応した温度を画像として表示部106に表示する。そして、赤外線カメラ100に対して所定の記録操作をすることにより、ブロック毎の温度分布データ108が温度データ110の一部としてファイルに記録される。同時に表示温度設定部105に設定された表示条件、即ち表示温度範囲と表示温度分解能とが温度分布データ108と関連付けられて温度データ110の一部として同じファイルに記録される。
【0034】
なお、赤外線カメラ100による撮影は、同一環境条件下、同一撮影倍率で、コンクリート構造物全体に対して正対方向から行う。更に、表示温度設定部105には同一の表示条件を設定する。同一環境条件下には、日照、気温、湿度、風量、風向等が含まれる。これらを同一とするために、コンクリート構造物の撮影は短時間に連続して行うことが好ましい。気温変化が大きい時間帯は避け、安定してから更に所定時間経過してから行うことが好ましい。図2及び図3はこの様にして撮影されたコンクリート構造物の互いに隣接する位置にあるブロック毎の赤外画像である。図3は図2で撮影されたブロック(A)に対して直ぐ下に隣接するブロック(B)をブロック(A)の下部(図中の下方部)の一部(約20%)を重複させて撮影して得た赤外画像である。即ち、図3のブロック(B)の上部(図中の上方部)には図2のブロック(A)の下部が約20%含まれて撮影されている。
【0035】
図2の赤外画像のA−A´線に沿った温度分布、図3のB−B´線に沿った温度分布をそれぞれグラフ化して図4、図5にそれぞれ示す。
【0036】
赤外線カメラ100は、例えば−20〜500℃の温度測定範囲と0.02〜0.05℃の表示温度分解能で対象物の温度を検知する能力をもつ。また、検知した温度をそれに応じた色や輝度で表示部106に表示することができるが、この表示能力は前述の検知能力に匹敵するほどの能力は有していない。そこで、表示温度設定部105に表示条件として設定された表示温度範囲を、設定された表示温度分解能で画像化して表示する。
【0037】
表示温度範囲として、対象物の各部の温度が内包されると思われる温度範囲、例えば10〜30℃を設定する。この表示温度範囲の場合の表示温度分解能は最高でも0.08℃程度である。そして、前述の記録操作に応じてこの表示条件が表示条件109として温度データ110のファイルに記録される。
【0038】
次に、図2の赤外画像(A)と図3の赤外画像(B)とを一つの赤外画像に連結合成する方法を図6及び図7により詳説する。
【0039】
赤外画像A及びBの連結合成は、連結合成を実行するためのソフトウェアがインストールされた処理装置200に赤外画像Aに対応する温度データA(図1の207)と赤外画像Bに対応する温度データB(図1の208)とを読み込んで実行する。
【0040】
処理装置200に連結合成実行指示が入力され図6に示すフローチャートに従って連結合成処理が実行される。以下、各ステップに従って説明する。
【0041】
ステップ(S40)において、処理装置200は読込・記録部203で温度データA(207)と温度データB(208)とを読み込み、温度データA、及び温度データBの夫々の温度を同じく温度データA、及び温度データBの夫々に含まれている表示条件に従って画像化して赤外画像A(図2参照)と赤外画像B(図3参照)を表示部206に表示する。前述の如く、温度データA、及び温度データBの夫々に含まれている表示条件は原則として一致している。以下のステップでは、この表示された赤外画像A、及び赤外画像Bを対象として連結合成を行う。
【0042】
ステップ(S41)において、赤外画像Aと赤外画像Bとの重複部分が最も良く重なるように赤外画像Aと赤外画像Bをそれぞれ移動して相対的位置を決定する。今回の例では、赤外画像Bの撮影時に赤外画像Aの下部を約20%含むように撮影しているので、両画面(A,B)の約20%が重なるように想定的位置を決定する。図7(a)は重複部分が最も良く重なる状態に処理した際の概念的な図であり、51が赤外画像A、52が赤外画像B、網掛け部53が重複部をそれぞれ示している。なお、図7の各図は、重なり状態が分かり易いように重なり部分を上下方向に誇張すると共に、赤外画像Aと赤外画像Bの左右方向(図中の水平方向)の位置をズラして表示している。
【0043】
ステップ(S42)において、重複部53の赤外画像Aの各点A(i、j)の温度値と赤外画像Bの各点B(k,l)の温度値との差分C(i,j)を求める。なお、添字(i,j)、(k,l)は夫々赤外画像A、赤外画像Bにおける各点の位置を示すマトリックスである。(i,j)、(k,l)は共に重複部53の赤外画像B(52)の左上隅の点54の位置を(1,1)とし、重複部53に対応するピクセルの配列数に応じた値を最大値とする。ステップ(S42)の状態に於いてはi=k、j=lである。従って、差分C(i,j)はマトリックスの数に対応する個数だけ求められる。
【0044】
ステップ(S43)において、差分C(i,j)から求めたヒストグラムの各階級値毎の度数と、差分C(i,j)から算出した平均値Cavと分散Csgとを一組として記録する。
【0045】
ステップ(S44)において、赤外画像B(52)を赤外画像A(51)に対して1ピクセル分下方(図7(b)の矢印方向)に移動させる。その結果、赤外画像Aの点(i,j)に対応する赤外画像Bの点は(k,l+1)となり、赤外画像Aの点(i,jmax)に対応する赤外画像Bの点は存在しなくなる。
【0046】
ステップ(S45)において、赤外画像A(51)と赤外画像B(52)とが重なった部分が所定値以上存在しているかを検出し、存在していればステップ(S42)に戻り、ステップ(S42)からステップ(S45)を繰り返す。但し、2回目以降は重なり部分に対応するピクセル数がi個(k個)づつ減少するので求められる差分C(i,j)の個数がその分だけ少なくなる。ステップ(S42)からステップ(S45)の繰り返しの結果、ヒストグラムの各階級値毎の度数と差分C(i,j)の平均値Cav、分散Csgとの組が繰り返した回数の個数だけ算出され記録される。ステップ(S45)において、赤外画像A(51)と赤外画像B(52)との重なった部分が所定値以上存在していなければステップ(S46)に進む。
【0047】
ステップ(S46)において、前述のように赤外画像A、及び赤外画像Bの重なり状態を変化させながら求めた多数のヒストグラムデータと差分C(i,j)の平均値Cav、分散Csgとの組の夫々について、評価値Rを算出する。評価値Rは、多数の差分C(i,j)の分布、即ちヒストグラムの正規分布からのズレ、尖鋭度、平均値の理想平均値からのズレを総合的に評価するものである。赤外画像A(51)の重複部の画像と赤外画像B(52)の重複部の画像とが丁度重なり合う位置にあるとき、差分C(i,j)は全てゼロとなるはずである。実際には、様々な理由により生ずる誤差のためゼロとはならないが、差分C(i,j)の分布は平均値がゼロに近く、正規分布をなし且つ高い尖鋭度を示す。一方、丁度重なり合う位置からずれる程、平均値がずれ、正規分布からずれ、尖鋭度が低下する。
【0048】
多くの赤外画像について連結合成実験を行い、上記を確認すると共に重なり合う位置を高精度に検出できる評価値の算出方法を、式(1)のように決定した。評価値Rは最も良く重なり合う位置において最小値となる。
(1) R=(階級値×Σ(左記階級値の度数−正規分布(Cav、Csg)の左記階級値に対する理論度数)/重なり合うピクセル数)+(Csg×(Csg×C1+|m_fR1|))×C0)+|Cav|×C2
但し、C0、C1、C2は所定の値の係数であり、例えば、C0=1、C1=0.618、C2=1としたとき良好な結果が得られる。また、m_fR1は正規分布の対称度である。
なお、連結合成画像の使用目的に必要な連結精度に応じて、他の係数値を用いても良い。また、他の評価値算出方法を用いても良い。
【0049】
ステップ(S47)において、ステップ(S46)で求めた多数の評価値Rから最小値のRを選択し、その評価値Rに対応する赤外画像A(51)と赤外画像B(52)との相対的位置を求める。
【0050】
ステップ(S48)において、ステップ(S47)で求めた相対的位置に基づいて、赤外画像A(51)の温度分布データAと赤外画像B(52)の温度分布データBとを連結合成し、一つのファイルの連結温度分布データを生成し連結データ209として記憶装置に記録する。連結合成において、重複部53の各点の温度データは、例えば、赤外画像Aと赤外画像Bの対応する点の平均温度とする。
【0051】
ステップ(S49)において、ステップ(S47)で求めた相対的位置に基づいて、赤外画像A(51)と赤外画像B(52)とを連結合成して一つの連結赤外画像を生成し、この連結赤外画像を表示装置206に表示すると共に記録する。なお、ステップ(S48)で生成された連結温度分布データを画像化して表示しても良い。以上で赤外画像Aと赤外画像Bの連結合成処理を終了する。
【0052】
図8はステップ(S49)において連結合成された赤外画像である。図9はステップ(S48)において連結合成された赤外画像の温度分布データであって図8のC−C´線に沿った温度分布をグラフ化したものである。これは、図4と図5に示すグラフを最も良く重なる位置でつなぎ合わせたグラフである。
【0053】
この様に、分解能の高い温度分布データを用いて重複部が丁度重なる連結位置を求めるので精度良く連結合成位置を求めることができる。その結果、連結合成された赤外画像に不連続箇所を生じにくい。
【0054】
検査測定対象物の異常部位判定は、連結合成された赤外画像上で異常温度部や温度の不連続箇所を見いだすことで行われる。例えば、コンクリート構造物では、コンクリート表層部が剥離あるいは浮いた異常部位は、問題の無い健全部とは異なる温度となることが多い。また、ひび割れ箇所では温度が不連続に変化することが多い。検査対象物各部の温度範囲が比較的狭い場合や小さな浮きやひび割れなどの欠陥では、健全部と異常部位の温度差が小さいので、温度分解能が高いことが必要で、0.02〜0.03℃の分解能が必要となる場合もある。即ち、赤外線カメラ100で撮影した時に表示条件として記録された温度分解能以上の分解能が必要となる場合がある。また、撮影時に記録した表示温度範囲外の温度の分布を表示することが必要になることもある。
【0055】
その場合には、処理装置200において表示条件の設定を変更する。処理装置200は、変更された表示条件に基づいた赤外画像を生成し表示する。処理の詳細は後述するが、例えば、表示温度範囲を狭くすると共に表示温度分解能を高くするように設定を変更する。表示温度範囲と表示温度分解能とが連動する場合には、表示温度範囲を狭くすると、表示された赤外画像の表示温度分解能は、より高くなる。図10(b)は図10(a)の表示温度範囲を狭く変更した後の赤外画像である。図10(b)では表示温度範囲を狭めたことにより表示温度範囲外となり白く表示されている部分が図10(a)よりも増大している。
【0056】
赤外線カメラ100によって対象物を撮影して得られる温度データは、ブロック毎の独立した温度分布ファイルとして生成されているので、従来の表示条件の変更では、各ブロックを撮影した赤外画像毎に行うことが必要であった。本発明によれば、上述の如く各ブロックの温度分布データが一つに連結合成されるので、その後は一回の表示条件変更操作により連結された全ブロックの表示条件を変更することができる。その結果、表示条件を変更するための操作の手間や時間が大幅に減少し、操作性が飛躍的に向上する。
【0057】
2つの赤外画像の重複部の画像が丁度重なる位置を検出するのに、本実施の形態では2つの赤外画像の重複状態を1ピクセルづつ変化させて、各重複状態における対応ピクセルの温度値の差の分布に基づいて検出している。
【0058】
次に、本実施の形態において、更に処理時間を短縮する処理方法に付いて述べる。即ち、重複部のピクセルを、互いに隣接する所定数のピクセル、例えば50*50=2500ピクセルからなる複数のピクセル群に分け、各ピクセル群に含まれる全ピクセルの温度値の平均値を各ピクセル群の温度値とする。そして、各ピクセル群を単位として上述の処理を行い、評価値Rが最小の相対的位置を求める。
【0059】
更に、各ピクセル群を構成するピクセル数を少なく、例えば5*5=25ピクセルとして上述の処理を再度行う。その際、重複状態を変化させるのは、先に求めた相対的位置を基準として各ピクセル群の範囲だけとする。以下、これを繰り返すことにより上述の方法と同じ精度で丁度重なり合う位置を求めることができる。使用目的に応じて適当な大きさのピクセル群による処理で相対的位置検出処理を終了することができることは言うまでもない。
【0060】
更に、図6のステップ(S41)を、連結する2つの赤外画像の対応する点の夫々の赤外画像における大略の位置を複数組について手動操作により指示し、指示された対応する各点が一致するように前記2つの赤外画像の相対的位置を決定するステップとし、ステップ(S44)をその位置周囲の所定範囲で前記2つの赤外画像の相対位置関係を変化させるステップ、ステップ(S45)を相対位置関係の変化が前記所定範囲の全てについて終了したかを判断するステップとしても良い。ステップ(S44)の所定範囲は赤外画像において任意の点を繰り返し指示した時のバラツキの大きさを考慮して定めるが、赤外画像の分解能も考慮して大きめに定めることが好ましい。
【0061】
次に、本発明の実施の形態にかかる別のデータの連結合成方法の処理に関して図11のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0062】
前述の図6における、データの連結合成方法のステップ(S41)〜ステップ(S47)は、赤外画像を用いることなく、温度分布データ108だけを用いて行うことができる。図11はこの際のフローチャートを示すものである。即ち、ステップ(S40)の赤外画像を生成して表示することは省略することができる。その場合、ステップ(S41)では重複部の各点が最大限対応するように各点を対応させる。ステップ(S44)では各点の対応を1点分変化させる。ステップ(S45)では対応した点の数が所定値以上かを判定する。ステップ(S47)ではステップ(S46)で求めた評価値から最小のものを選択し、その時の各点の対応状態を求める。それ以外のステップは図6のフローチャートと同様の処理を行う。
【0063】
また、処理プログラムには表示条件を変更するための表示条件変更プログラムが含まれており、必要に応じて表示条件を任意に変更することができる。即ち、ステップ(S49)の処理が終了した後、表示条件変更プログラムを起動させて新たな表示条件(表示温度範囲、表示温度分解能)を入力して再表示指示操作をすると、連結温度分布データを新たな表示条件に基づいて画像化し表示する。或いは、ステップ(S41)からステップ(S48)までの適当な位置に表示条件変更プログラムによる処理を挿入して、ステップ(S49)では挿入されたステップで入力された新たな表示条件に基づいて連結温度分布データが画像化され表示されるようにすることもできる。
【0064】
データの連結合成処理は、いずれの実施の形態についても処理装置200ではなく、赤外線カメラ100にその機能を持たせても良い。即ち、赤外線カメラ100に処理プログラム201をインストールしておく。赤外線カメラ100で処理する負荷が大きくなるが、検査対象物のある現場において、連結画像を見ることが出来るので欠陥の状況を的確に知ることができ、その結果を踏まえて必要箇所を追加撮影するなど、更に詳細な検査を行うことができる。
【0065】
なお、上述の実施の形態は例に過ぎず、上述の構成や形状に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜修正、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態にかかるシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の赤外線カメラで撮影した赤外画像の一例を示す図である。
【図3】赤外線カメラで図2の画像の下部に隣接するブロックを撮影した赤外画像を示す図である。
【図4】図2の赤外画像のA−A´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。
【図5】図3の赤外画像のB−B´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかるデータの連結合成方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートによるデータの連結合成処理の概念を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態でデータの連結合成された赤外画像を示す図である。
【図9】データの連結合成された赤外画像のC−C´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。
【図10】表示温度範囲の変更前後の赤外画像の例を示し、(a)は変更前を、(b)は変更後の赤外画像をそれぞれ示す。
【図11】本発明にかかる別のデータの連結合成方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
51………赤外画像A
52………赤外画像B
53………重複部
54………基準点(1,1)
100……赤外線カメラ
101……撮像部
102……赤外撮像素子
103……データ処理部
104……操作部
105……表示温度設定部
106……表示部
107……記録部
108……温度分布データ
109……表示条件
110……温度データ
200……処理装置
201……処理プログラム
202……記憶部
203……読込・記録部
204……演算部
205……入力部
206……表示部
207……データA
208……データB
209……連結データ
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の各点の温度を示す温度分布データの取り扱い方法に関し、特に対象物を複数のブロックに分割してブロック毎に取得した温度分布データの取り扱い方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査対象物であるコンクリート構造物等の面を赤外線カメラで撮影し、対象面の温度分布状態に基づいてコンクリート構造物等の欠陥の存在やその位置を検知する方法が知られている。この方法では、温度分布状態は赤外線カメラで得た温度データに基づいて画像化された赤外画像を観察して知得している。
【0003】
更に、通常のデジタルカメラで、コンクリート構造物等の大型対象物の対象面を複数のブロックに分割して撮影する際、隣接するブロック毎の一部の範囲を重複させて撮影したデジタル画像を2値化して、この2値化データに基づいて隣接する画像が丁度重なる連結位置を求め、この位置で隣接する画像を連結することによって対象面を一つの画像に合成する方法が知られている。
【0004】
また、相対的位置が既知であるデジタルカメラと赤外線カメラとを用い対象物を複数のブロックに分割して撮影し、各ブロックのデジタルカメラによる画像を用いて求めた連結位置とデジタルカメラと赤外線カメラとの相対的位置に基づいて同じブロックの赤外線カメラによる赤外画像の連結位置を求め、この連結位置で赤外画像を連結合成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−337493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
対象物の欠陥を赤外画像の観察によって検出するには、検出すべき欠陥の大きさに応じた分解能、即ち所定の撮影倍率が必要であり、そして欠陥状態を適切に判断するには、赤外画像に適当な範囲が含まれること、即ち適当な視野が必要であるが、これら二つは相反する条件である。
【0006】
これらの相反する条件を満たすために、対象面を複数のブロックに分割して互いに隣接するブロックの一部を含む赤外画像をそれぞれ撮影し、これら各ブロックの赤外画像を連結合成することが考えられる。これは、対象面を複数に分割し各ブロックの一部を重複して撮影した画像を連結して対象面の画像を生成する場合、重複部に含まれる複数の特徴点が一致するように各ブロックの画像の位置を調整することで実現できる。特徴点の決定はコンピュータによる自動抽出又は手動操作で指示し、画像位置の位置調整はコンピュータにより自動調整される。
【0007】
連結される画像が通常のデジタルカメラによる画像の場合、十分な解像度が得られるので上述の連結合成処理に際し支障は無いが、赤外線カメラによる画像の場合、赤外線カメラによる画像は通常のデジタルカメラによる画像に比べ解像度がかなり低いので、特徴点の自動抽出又は手動操作による指示が困難なことが多い。特徴点を手動操作で指示した際、指示した点が大きくばらつき、画像の連結位置の調整が上手くいかず、結果として連結された画像が不連続なものとなるという問題点があった。また、手動操作による特徴点の指示には長時間を要するという問題点もあった。
【0008】
上記問題点を解決する方法として特許文献1にデジタルカメラと赤外線カメラとを併用する方法が提案されているが、この提案例では、デジタルカメラと赤外線カメラとが必要であり、且つ2種類のカメラが既知の相対的位置に固定されていなければならず大掛かりな装置となる。更にデジタルカメラと赤外線カメラの2種類のカメラによる画像を用いて画像を連結するので連結に要する処理が複雑となり、処理時間が長くなると共に連結位置に誤差を生じ易いという欠点がある。
【0009】
また、検査対象物の欠陥の知得には、赤外画像の表示温度範囲、温度分解能等の表示条件を適切に設定することが必要であるが、表示条件の変更が必要な場合、撮影された複数のブロックのブロック毎に表示条件を変更して赤外画像を連結合成するでは多大な手間を要すると言う問題がある。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みて行われたものであり、対象面を複数に分割して撮影された赤外画像の温度分布データから、対象面の赤外画像を正確に生成することができ、また赤外画像の表示条件を変更した際、対象面に対応する赤外画像を容易に得ることができるデータの連結合成方法と連結合成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、対象物をその一部を重複させて分割した複数のブロックの前記対象物の各点の温度データを記録したブロック毎の温度分布ファイルから、前記複数のブロックに対応する範囲の温度分布ファイルを生成するデータの連結合成方法において、前記重複部の各点の温度データに基づいて、前記重複部が最も良く重なる前記各点の相対的位置を決定するステップと、前記決定した相対的位置において、前記ブロック毎の温度分布ファイルを連結合成した一つの温度分布ファイルを生成するステップとを含むことを特徴とするデータの連結合成方法を提供する。
【0012】
また、本発明のデータの連結合成方法は、前記ブロック毎の温度分布ファイルに基づいて前記対象物の各点の温度の分布状態を画像化して前記ブロック毎の赤外画像を生成するステップと、前記決定した相対的位置において、前記ブロック毎の赤外画像を連結合成して一つの赤外画像を生成するステップとを更に含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明のデータの連結合成方法では、前記相対的位置を決定するステップは、前記ブロック毎の温度分布ファイルの重複部の各点を所定の相対位置関係に対応付けるステップと、前記相対位置関係を所定の方法で変化させつつ、その各相対位置関係において対応する前記各点の温度データの差を求めるステップと、前記求めた差の分布のヒストグラムと平均値と標準偏差とに基づき、前記重複部が最も良く重なる相対位置関係を検出するステップとを含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明のデータの連結合成方法では、前記重複部が最も良く重なる相対位置関係を検出するステップは、前記差の分布が最も正規分布に近く且つ尖鋭度が高い分布である相対位置関係を検出するステップであることが好ましい。
【0015】
また、本発明のデータの連結合成方法では、前記ブロック毎の温度分布ファイルを連結合成するステップと前記ブロック毎の赤外画像を連結合成するステップとは、一つの連結合成指示に応じて実行されることが好ましい。
【0016】
また、本発明のデータの連結合成方法では、前記ブロック毎の温度分布ファイルは、赤外線カメラによって前記対象物のブロック毎に撮影することによって取得したファイルであることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、前記データの連結合成方法の各ステップをコンピュータに実行させる連結合成プログラムを提供する。
【0018】
また、本発明は、前記連結合成プログラムがインストールされた記憶部を有する赤外線カメラを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記連結合成プログラムがインストールされた記憶部を有するデータ処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、対象面を複数に分割して撮影された赤外画像の温度分布データから、対象面の赤外画像を正確に生成することができ、また赤外画像の表示条件を変更した際、対象面に対応する赤外画像を容易に得ることができるデータの連結合成方法と連結合成プログラムを提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に関し図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態にかかるシステムの構成を示すブロック図である。図2は、図1の赤外線カメラで撮影した赤外画像の一例を示す図である。図3は、赤外線カメラで図2の画像の下部に隣接するブロックを撮影した赤外画像を示す図である。図4は、図2の赤外画像のA−A´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。図5は、図3の赤外画像のB−B´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。図6は、本発明の実施の形態にかかるデータの連結合成方法の処理の流れを示すフローチャートである。図7は、図6のフローチャートによるデータの連結合成処理の概念を説明する図である。図8は、連結合成された赤外画像を示す図である。図9は、連結合成された赤外画像のC−C´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。図10は、表示温度範囲の変更前後の赤外画像の例を示し、(a)は変更前を、(b)は変更後の赤外画像をそれぞれ示す。図11は、本発明にかかる別のデータの連結合成方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【0023】
(実施の形態)
図1において、本発明にかかるシステムは、図示しない検査対象物を撮影する赤外線カメラ100と、赤外線カメラ100で撮影して得た検査対象物の各点の温度から求められた温度分布に基づいて欠陥解析やそれに付随する種々の処理を行う処理装置200とから構成されている。
【0024】
赤外線カメラ100の撮像部101は検査対象物の像を赤外撮像素子102上に結像する。赤外撮像素子102は赤外線領域に感度を有し、検査対象物の各部の温度に応じた信号を出力する。
【0025】
データ処理部103は赤外撮像素子102からの信号を受け、この信号をその大きさに応じた温度値に変換する。その結果、検査対象物の各部の温度を示す温度分布データが生成される。データ処理部103は更に、この温度分布データを画像化して表示部106に表示する。その結果、検査対象物の温度分布状態が可視化され、検査対象物の各部分の温度を容易に確認することが可能となる。
【0026】
ところで、画像化における画像表示のダイナミックレンジは赤外撮像素子102のダイナミックレンジに比べ狭い。このため、この画像化は赤外撮像素子102のダイナミックレンジ内から選択された一部の範囲について行われ、選択された範囲外の温度は上側に範囲外であること及び下側に範囲外であることが識別可能で、これら範囲内でのそれぞれの温度は識別不能な所定の方法で表示される。
【0027】
操作部104は赤外線カメラ100を操作するための各種の操作手段を有し、表示条件として画像化する温度範囲と表示温度分解能を設定するための表示温度設定部105が含まれる。データ処理部103は表示温度設定部105に設定された表示条件を読み取り、その表示条件である温度範囲と表示温度分解能で画像化し、表示部106に表示する。
【0028】
データ処理部103は、更に操作部104の所定の操作に応じて温度分布データ108と、表示温度設定部105に設定された表示条件109、即ち表示温度範囲と表示温度分解能とを記録部107に温度データ110として記録する。温度データ110は、記録部107の装脱自在な記憶媒体に記録される。
【0029】
処理装置200は、赤外線カメラ100から離れた場所(例えば、事務所内など)に設置され、赤外線カメラ100によって得た温度データ110に基づいて本発明にかかる画像処理を含む各種の処理を行う。処理装置200は、処理プログラムがインストールされた汎用のパーソナルコンピュータ等で良い。
【0030】
処理装置200は処理プログラム201を記憶した記憶部202の他、記録媒体が装脱自在で装着された記憶媒体から温度データ110を読み込む読込・記録部203、読み込んだ温度データ110を処理プログラム201に従って処理すると共に処理装置200の各部の動作を制御する演算部204、演算部204への入力部205、各種の表示を行う表示部206等で構成されている。
【0031】
データA(207)及びデータB(208)は夫々隣接する異なる場所の撮影によって得た温度データ110である。読込・記憶部203は、更に読み込まれたデータA(207)やデータB(208)が処理された結果の連結データ209を記録媒体に記録する。
【0032】
次に、赤外線カメラ100及び処理装置200からなるシステムを用いて、丘陵地の斜面の崩落を防止するためのコンクリート構造物を複数の所定の面積(以後、ブロックと記す)で撮影し、それぞれのブロックから得た温度分布データ108を用いてそれぞれ赤外画像を連結合成して一つの赤外画像に合成するデータの連結合成方法について説明する。広い面積を有するコンクリート構造物を一枚の画像で撮影したのでは詳細な温度分布データを得ることが出来ず、欠陥等の検出が難しくなるで、コンクリート構造物を所定の面積で複数のブロックの画像に分割して撮影し連結合成する。
【0033】
撮影する際に、コンクリート構造物全体を複数のブロックに分割し、隣接するブロックそれぞれを所定の割合以上(例えば20%程度以上)の重複部をもつ画像として赤外線カメラ100で撮影する。赤外線カメラ100は、その赤外撮像素子102の各ピクセルに対応する対象物の各点の温度を検知し、各点の位置に検知した温度に応じた色や輝度を表示することにより各点に対応した温度を画像として表示部106に表示する。そして、赤外線カメラ100に対して所定の記録操作をすることにより、ブロック毎の温度分布データ108が温度データ110の一部としてファイルに記録される。同時に表示温度設定部105に設定された表示条件、即ち表示温度範囲と表示温度分解能とが温度分布データ108と関連付けられて温度データ110の一部として同じファイルに記録される。
【0034】
なお、赤外線カメラ100による撮影は、同一環境条件下、同一撮影倍率で、コンクリート構造物全体に対して正対方向から行う。更に、表示温度設定部105には同一の表示条件を設定する。同一環境条件下には、日照、気温、湿度、風量、風向等が含まれる。これらを同一とするために、コンクリート構造物の撮影は短時間に連続して行うことが好ましい。気温変化が大きい時間帯は避け、安定してから更に所定時間経過してから行うことが好ましい。図2及び図3はこの様にして撮影されたコンクリート構造物の互いに隣接する位置にあるブロック毎の赤外画像である。図3は図2で撮影されたブロック(A)に対して直ぐ下に隣接するブロック(B)をブロック(A)の下部(図中の下方部)の一部(約20%)を重複させて撮影して得た赤外画像である。即ち、図3のブロック(B)の上部(図中の上方部)には図2のブロック(A)の下部が約20%含まれて撮影されている。
【0035】
図2の赤外画像のA−A´線に沿った温度分布、図3のB−B´線に沿った温度分布をそれぞれグラフ化して図4、図5にそれぞれ示す。
【0036】
赤外線カメラ100は、例えば−20〜500℃の温度測定範囲と0.02〜0.05℃の表示温度分解能で対象物の温度を検知する能力をもつ。また、検知した温度をそれに応じた色や輝度で表示部106に表示することができるが、この表示能力は前述の検知能力に匹敵するほどの能力は有していない。そこで、表示温度設定部105に表示条件として設定された表示温度範囲を、設定された表示温度分解能で画像化して表示する。
【0037】
表示温度範囲として、対象物の各部の温度が内包されると思われる温度範囲、例えば10〜30℃を設定する。この表示温度範囲の場合の表示温度分解能は最高でも0.08℃程度である。そして、前述の記録操作に応じてこの表示条件が表示条件109として温度データ110のファイルに記録される。
【0038】
次に、図2の赤外画像(A)と図3の赤外画像(B)とを一つの赤外画像に連結合成する方法を図6及び図7により詳説する。
【0039】
赤外画像A及びBの連結合成は、連結合成を実行するためのソフトウェアがインストールされた処理装置200に赤外画像Aに対応する温度データA(図1の207)と赤外画像Bに対応する温度データB(図1の208)とを読み込んで実行する。
【0040】
処理装置200に連結合成実行指示が入力され図6に示すフローチャートに従って連結合成処理が実行される。以下、各ステップに従って説明する。
【0041】
ステップ(S40)において、処理装置200は読込・記録部203で温度データA(207)と温度データB(208)とを読み込み、温度データA、及び温度データBの夫々の温度を同じく温度データA、及び温度データBの夫々に含まれている表示条件に従って画像化して赤外画像A(図2参照)と赤外画像B(図3参照)を表示部206に表示する。前述の如く、温度データA、及び温度データBの夫々に含まれている表示条件は原則として一致している。以下のステップでは、この表示された赤外画像A、及び赤外画像Bを対象として連結合成を行う。
【0042】
ステップ(S41)において、赤外画像Aと赤外画像Bとの重複部分が最も良く重なるように赤外画像Aと赤外画像Bをそれぞれ移動して相対的位置を決定する。今回の例では、赤外画像Bの撮影時に赤外画像Aの下部を約20%含むように撮影しているので、両画面(A,B)の約20%が重なるように想定的位置を決定する。図7(a)は重複部分が最も良く重なる状態に処理した際の概念的な図であり、51が赤外画像A、52が赤外画像B、網掛け部53が重複部をそれぞれ示している。なお、図7の各図は、重なり状態が分かり易いように重なり部分を上下方向に誇張すると共に、赤外画像Aと赤外画像Bの左右方向(図中の水平方向)の位置をズラして表示している。
【0043】
ステップ(S42)において、重複部53の赤外画像Aの各点A(i、j)の温度値と赤外画像Bの各点B(k,l)の温度値との差分C(i,j)を求める。なお、添字(i,j)、(k,l)は夫々赤外画像A、赤外画像Bにおける各点の位置を示すマトリックスである。(i,j)、(k,l)は共に重複部53の赤外画像B(52)の左上隅の点54の位置を(1,1)とし、重複部53に対応するピクセルの配列数に応じた値を最大値とする。ステップ(S42)の状態に於いてはi=k、j=lである。従って、差分C(i,j)はマトリックスの数に対応する個数だけ求められる。
【0044】
ステップ(S43)において、差分C(i,j)から求めたヒストグラムの各階級値毎の度数と、差分C(i,j)から算出した平均値Cavと分散Csgとを一組として記録する。
【0045】
ステップ(S44)において、赤外画像B(52)を赤外画像A(51)に対して1ピクセル分下方(図7(b)の矢印方向)に移動させる。その結果、赤外画像Aの点(i,j)に対応する赤外画像Bの点は(k,l+1)となり、赤外画像Aの点(i,jmax)に対応する赤外画像Bの点は存在しなくなる。
【0046】
ステップ(S45)において、赤外画像A(51)と赤外画像B(52)とが重なった部分が所定値以上存在しているかを検出し、存在していればステップ(S42)に戻り、ステップ(S42)からステップ(S45)を繰り返す。但し、2回目以降は重なり部分に対応するピクセル数がi個(k個)づつ減少するので求められる差分C(i,j)の個数がその分だけ少なくなる。ステップ(S42)からステップ(S45)の繰り返しの結果、ヒストグラムの各階級値毎の度数と差分C(i,j)の平均値Cav、分散Csgとの組が繰り返した回数の個数だけ算出され記録される。ステップ(S45)において、赤外画像A(51)と赤外画像B(52)との重なった部分が所定値以上存在していなければステップ(S46)に進む。
【0047】
ステップ(S46)において、前述のように赤外画像A、及び赤外画像Bの重なり状態を変化させながら求めた多数のヒストグラムデータと差分C(i,j)の平均値Cav、分散Csgとの組の夫々について、評価値Rを算出する。評価値Rは、多数の差分C(i,j)の分布、即ちヒストグラムの正規分布からのズレ、尖鋭度、平均値の理想平均値からのズレを総合的に評価するものである。赤外画像A(51)の重複部の画像と赤外画像B(52)の重複部の画像とが丁度重なり合う位置にあるとき、差分C(i,j)は全てゼロとなるはずである。実際には、様々な理由により生ずる誤差のためゼロとはならないが、差分C(i,j)の分布は平均値がゼロに近く、正規分布をなし且つ高い尖鋭度を示す。一方、丁度重なり合う位置からずれる程、平均値がずれ、正規分布からずれ、尖鋭度が低下する。
【0048】
多くの赤外画像について連結合成実験を行い、上記を確認すると共に重なり合う位置を高精度に検出できる評価値の算出方法を、式(1)のように決定した。評価値Rは最も良く重なり合う位置において最小値となる。
(1) R=(階級値×Σ(左記階級値の度数−正規分布(Cav、Csg)の左記階級値に対する理論度数)/重なり合うピクセル数)+(Csg×(Csg×C1+|m_fR1|))×C0)+|Cav|×C2
但し、C0、C1、C2は所定の値の係数であり、例えば、C0=1、C1=0.618、C2=1としたとき良好な結果が得られる。また、m_fR1は正規分布の対称度である。
なお、連結合成画像の使用目的に必要な連結精度に応じて、他の係数値を用いても良い。また、他の評価値算出方法を用いても良い。
【0049】
ステップ(S47)において、ステップ(S46)で求めた多数の評価値Rから最小値のRを選択し、その評価値Rに対応する赤外画像A(51)と赤外画像B(52)との相対的位置を求める。
【0050】
ステップ(S48)において、ステップ(S47)で求めた相対的位置に基づいて、赤外画像A(51)の温度分布データAと赤外画像B(52)の温度分布データBとを連結合成し、一つのファイルの連結温度分布データを生成し連結データ209として記憶装置に記録する。連結合成において、重複部53の各点の温度データは、例えば、赤外画像Aと赤外画像Bの対応する点の平均温度とする。
【0051】
ステップ(S49)において、ステップ(S47)で求めた相対的位置に基づいて、赤外画像A(51)と赤外画像B(52)とを連結合成して一つの連結赤外画像を生成し、この連結赤外画像を表示装置206に表示すると共に記録する。なお、ステップ(S48)で生成された連結温度分布データを画像化して表示しても良い。以上で赤外画像Aと赤外画像Bの連結合成処理を終了する。
【0052】
図8はステップ(S49)において連結合成された赤外画像である。図9はステップ(S48)において連結合成された赤外画像の温度分布データであって図8のC−C´線に沿った温度分布をグラフ化したものである。これは、図4と図5に示すグラフを最も良く重なる位置でつなぎ合わせたグラフである。
【0053】
この様に、分解能の高い温度分布データを用いて重複部が丁度重なる連結位置を求めるので精度良く連結合成位置を求めることができる。その結果、連結合成された赤外画像に不連続箇所を生じにくい。
【0054】
検査測定対象物の異常部位判定は、連結合成された赤外画像上で異常温度部や温度の不連続箇所を見いだすことで行われる。例えば、コンクリート構造物では、コンクリート表層部が剥離あるいは浮いた異常部位は、問題の無い健全部とは異なる温度となることが多い。また、ひび割れ箇所では温度が不連続に変化することが多い。検査対象物各部の温度範囲が比較的狭い場合や小さな浮きやひび割れなどの欠陥では、健全部と異常部位の温度差が小さいので、温度分解能が高いことが必要で、0.02〜0.03℃の分解能が必要となる場合もある。即ち、赤外線カメラ100で撮影した時に表示条件として記録された温度分解能以上の分解能が必要となる場合がある。また、撮影時に記録した表示温度範囲外の温度の分布を表示することが必要になることもある。
【0055】
その場合には、処理装置200において表示条件の設定を変更する。処理装置200は、変更された表示条件に基づいた赤外画像を生成し表示する。処理の詳細は後述するが、例えば、表示温度範囲を狭くすると共に表示温度分解能を高くするように設定を変更する。表示温度範囲と表示温度分解能とが連動する場合には、表示温度範囲を狭くすると、表示された赤外画像の表示温度分解能は、より高くなる。図10(b)は図10(a)の表示温度範囲を狭く変更した後の赤外画像である。図10(b)では表示温度範囲を狭めたことにより表示温度範囲外となり白く表示されている部分が図10(a)よりも増大している。
【0056】
赤外線カメラ100によって対象物を撮影して得られる温度データは、ブロック毎の独立した温度分布ファイルとして生成されているので、従来の表示条件の変更では、各ブロックを撮影した赤外画像毎に行うことが必要であった。本発明によれば、上述の如く各ブロックの温度分布データが一つに連結合成されるので、その後は一回の表示条件変更操作により連結された全ブロックの表示条件を変更することができる。その結果、表示条件を変更するための操作の手間や時間が大幅に減少し、操作性が飛躍的に向上する。
【0057】
2つの赤外画像の重複部の画像が丁度重なる位置を検出するのに、本実施の形態では2つの赤外画像の重複状態を1ピクセルづつ変化させて、各重複状態における対応ピクセルの温度値の差の分布に基づいて検出している。
【0058】
次に、本実施の形態において、更に処理時間を短縮する処理方法に付いて述べる。即ち、重複部のピクセルを、互いに隣接する所定数のピクセル、例えば50*50=2500ピクセルからなる複数のピクセル群に分け、各ピクセル群に含まれる全ピクセルの温度値の平均値を各ピクセル群の温度値とする。そして、各ピクセル群を単位として上述の処理を行い、評価値Rが最小の相対的位置を求める。
【0059】
更に、各ピクセル群を構成するピクセル数を少なく、例えば5*5=25ピクセルとして上述の処理を再度行う。その際、重複状態を変化させるのは、先に求めた相対的位置を基準として各ピクセル群の範囲だけとする。以下、これを繰り返すことにより上述の方法と同じ精度で丁度重なり合う位置を求めることができる。使用目的に応じて適当な大きさのピクセル群による処理で相対的位置検出処理を終了することができることは言うまでもない。
【0060】
更に、図6のステップ(S41)を、連結する2つの赤外画像の対応する点の夫々の赤外画像における大略の位置を複数組について手動操作により指示し、指示された対応する各点が一致するように前記2つの赤外画像の相対的位置を決定するステップとし、ステップ(S44)をその位置周囲の所定範囲で前記2つの赤外画像の相対位置関係を変化させるステップ、ステップ(S45)を相対位置関係の変化が前記所定範囲の全てについて終了したかを判断するステップとしても良い。ステップ(S44)の所定範囲は赤外画像において任意の点を繰り返し指示した時のバラツキの大きさを考慮して定めるが、赤外画像の分解能も考慮して大きめに定めることが好ましい。
【0061】
次に、本発明の実施の形態にかかる別のデータの連結合成方法の処理に関して図11のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0062】
前述の図6における、データの連結合成方法のステップ(S41)〜ステップ(S47)は、赤外画像を用いることなく、温度分布データ108だけを用いて行うことができる。図11はこの際のフローチャートを示すものである。即ち、ステップ(S40)の赤外画像を生成して表示することは省略することができる。その場合、ステップ(S41)では重複部の各点が最大限対応するように各点を対応させる。ステップ(S44)では各点の対応を1点分変化させる。ステップ(S45)では対応した点の数が所定値以上かを判定する。ステップ(S47)ではステップ(S46)で求めた評価値から最小のものを選択し、その時の各点の対応状態を求める。それ以外のステップは図6のフローチャートと同様の処理を行う。
【0063】
また、処理プログラムには表示条件を変更するための表示条件変更プログラムが含まれており、必要に応じて表示条件を任意に変更することができる。即ち、ステップ(S49)の処理が終了した後、表示条件変更プログラムを起動させて新たな表示条件(表示温度範囲、表示温度分解能)を入力して再表示指示操作をすると、連結温度分布データを新たな表示条件に基づいて画像化し表示する。或いは、ステップ(S41)からステップ(S48)までの適当な位置に表示条件変更プログラムによる処理を挿入して、ステップ(S49)では挿入されたステップで入力された新たな表示条件に基づいて連結温度分布データが画像化され表示されるようにすることもできる。
【0064】
データの連結合成処理は、いずれの実施の形態についても処理装置200ではなく、赤外線カメラ100にその機能を持たせても良い。即ち、赤外線カメラ100に処理プログラム201をインストールしておく。赤外線カメラ100で処理する負荷が大きくなるが、検査対象物のある現場において、連結画像を見ることが出来るので欠陥の状況を的確に知ることができ、その結果を踏まえて必要箇所を追加撮影するなど、更に詳細な検査を行うことができる。
【0065】
なお、上述の実施の形態は例に過ぎず、上述の構成や形状に限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜修正、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態にかかるシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の赤外線カメラで撮影した赤外画像の一例を示す図である。
【図3】赤外線カメラで図2の画像の下部に隣接するブロックを撮影した赤外画像を示す図である。
【図4】図2の赤外画像のA−A´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。
【図5】図3の赤外画像のB−B´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかるデータの連結合成方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートによるデータの連結合成処理の概念を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態でデータの連結合成された赤外画像を示す図である。
【図9】データの連結合成された赤外画像のC−C´線に沿った温度分布をグラフ化した図である。
【図10】表示温度範囲の変更前後の赤外画像の例を示し、(a)は変更前を、(b)は変更後の赤外画像をそれぞれ示す。
【図11】本発明にかかる別のデータの連結合成方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
51………赤外画像A
52………赤外画像B
53………重複部
54………基準点(1,1)
100……赤外線カメラ
101……撮像部
102……赤外撮像素子
103……データ処理部
104……操作部
105……表示温度設定部
106……表示部
107……記録部
108……温度分布データ
109……表示条件
110……温度データ
200……処理装置
201……処理プログラム
202……記憶部
203……読込・記録部
204……演算部
205……入力部
206……表示部
207……データA
208……データB
209……連結データ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物をその一部を重複させて分割した複数のブロックの前記対象物の各点の温度データを記録したブロック毎の温度分布ファイルから、前記複数のブロックに対応する範囲の温度分布ファイルを生成するデータの連結合成方法において、
前記重複部の各点の温度データに基づいて、前記重複部が最も良く重なる前記各点の相対的位置を決定するステップと、
前記決定した相対的位置において、前記ブロック毎の温度分布ファイルを連結合成した一つの温度分布ファイルを生成するステップとを含むことを特徴とするデータの連結合成方法。
【請求項2】
前記ブロック毎の温度分布ファイルに基づいて、前記対象物の各点の温度の分布状態を画像化して前記ブロック毎の赤外画像を生成するステップと、
前記決定した相対的位置において、前記ブロック毎の赤外画像を連結合成して一つの赤外画像を生成するステップとを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のデータの連結合成方法。
【請求項3】
前記相対的位置を決定するステップは、
前記ブロック毎の温度分布ファイルの重複部の各点を所定の相対位置関係に対応付けるステップと、
前記相対位置関係を所定の方法で変化させつつ、その各相対位置関係において対応する前記各点の温度データの差を求めるステップと、
前記求めた差の分布のヒストグラムと平均値と標準偏差とに基づき、前記重複部が最も良く重なる相対位置関係を検出するステップとを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のデータの連結合成方法。
【請求項4】
前記重複部が最も良く重なる相対位置関係を検出するステップは、
前記差の分布が最も正規分布に近く且つ尖鋭度が高い分布である相対位置関係を検出するステップであることを特徴とする請求項3に記載のデータの連結合成方法。
【請求項5】
前記ブロック毎の温度分布ファイルを連結合成するステップと前記ブロック毎の赤外画像を連結合成するステップとは、一つの連結合成指示に応じて実行されることを特徴とする請求項1または2に記載のデータの連結合成方法。
【請求項6】
前記ブロック毎の温度分布ファイルは、赤外線カメラにより前記対象物の前記ブロック毎に撮影することによって取得したファイルであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のデータの連結合成方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載のデータの連結合成方法をコンピュータに実行させる連結合成プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の連結合成プログラムがインストールされた記憶部を有する赤外線カメラ。
【請求項9】
請求項7に記載の連結合成プログラムがインストールされた記憶部を有するデータ処理装置。
【請求項1】
対象物をその一部を重複させて分割した複数のブロックの前記対象物の各点の温度データを記録したブロック毎の温度分布ファイルから、前記複数のブロックに対応する範囲の温度分布ファイルを生成するデータの連結合成方法において、
前記重複部の各点の温度データに基づいて、前記重複部が最も良く重なる前記各点の相対的位置を決定するステップと、
前記決定した相対的位置において、前記ブロック毎の温度分布ファイルを連結合成した一つの温度分布ファイルを生成するステップとを含むことを特徴とするデータの連結合成方法。
【請求項2】
前記ブロック毎の温度分布ファイルに基づいて、前記対象物の各点の温度の分布状態を画像化して前記ブロック毎の赤外画像を生成するステップと、
前記決定した相対的位置において、前記ブロック毎の赤外画像を連結合成して一つの赤外画像を生成するステップとを更に含むことを特徴とする請求項1に記載のデータの連結合成方法。
【請求項3】
前記相対的位置を決定するステップは、
前記ブロック毎の温度分布ファイルの重複部の各点を所定の相対位置関係に対応付けるステップと、
前記相対位置関係を所定の方法で変化させつつ、その各相対位置関係において対応する前記各点の温度データの差を求めるステップと、
前記求めた差の分布のヒストグラムと平均値と標準偏差とに基づき、前記重複部が最も良く重なる相対位置関係を検出するステップとを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のデータの連結合成方法。
【請求項4】
前記重複部が最も良く重なる相対位置関係を検出するステップは、
前記差の分布が最も正規分布に近く且つ尖鋭度が高い分布である相対位置関係を検出するステップであることを特徴とする請求項3に記載のデータの連結合成方法。
【請求項5】
前記ブロック毎の温度分布ファイルを連結合成するステップと前記ブロック毎の赤外画像を連結合成するステップとは、一つの連結合成指示に応じて実行されることを特徴とする請求項1または2に記載のデータの連結合成方法。
【請求項6】
前記ブロック毎の温度分布ファイルは、赤外線カメラにより前記対象物の前記ブロック毎に撮影することによって取得したファイルであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のデータの連結合成方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載のデータの連結合成方法をコンピュータに実行させる連結合成プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の連結合成プログラムがインストールされた記憶部を有する赤外線カメラ。
【請求項9】
請求項7に記載の連結合成プログラムがインストールされた記憶部を有するデータ処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−38701(P2006−38701A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220484(P2004−220484)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【出願人】(592217093)株式会社ニコンシステム (102)
【出願人】(594157418)株式会社ドーコン (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【出願人】(592217093)株式会社ニコンシステム (102)
【出願人】(594157418)株式会社ドーコン (20)
【Fターム(参考)】
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