説明

データを出力する装置から電源の供給を受けるデータ記録装置及び同装置のデータ記録方法。

【課題】 RS−232Cによるデータの処理及び記録においてこの処理・記録に必要な電源をRS−232Cの信号用電流をから得る。
【解決手段】 RS−232Cコネクタ2が入力された信号電流から通信部3を介してCPU7に出力し、当該CPU7で処理したデータは記憶部8に記憶する。一方CPU7や記憶部8の動作を行わせる電源はRS−232Cの信号電流から取得する。この信号電流から取り出す電流は多くとも10mA程度であるため、CPU7は作動時5mA程度、待機時1mA程度の低消費電力型を用い、かつRS−232Cの信号電流の電圧の変化を監視し、上記電流が取得できる電圧の時のみCPU7を作動させ、電圧が低下したときは当該CPU7を待機させ電圧の回復を待って作動を再開する。この動作を繰り返すことにより出力されたデータを記憶部8に記録させる。記録したデータは汎用性の高いUSB端子を用いてパソコンに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯型のデータ記録装置に係り、特に計量装置等の各種計測機器からのデータを入力する際にこれら計量装置等、データを出力する装置から電源の供給も受けるよう構成したデータ記録装置及び同装置のデータ記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子天秤と称される電磁平衡式秤量装置、ロードセル式秤、静電容量式秤等、計量結果を例えばデジタルデータとして出力する装置においては、この計量データをパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」とする)に取り込んで記録したり、或いはこのデータを解析処理したり、二次加工する等、パソコンを有効に利用してデータを処理することができる。
【0003】
パソコンに対するデータの出力方法として最も一般的な方法は、前記計量機器とパソコンをUSBケーブル等の通信ケーブルで接続して、計量機器で計測したデータをパソコンに転送する方法である。この方法はリアルタイムでデータが転送できる反面、計量機器の配置部或いはその近傍にパソコンを配置する空間を確保する必要があり、かつまた計量機器の配置環境によってはパソコンの配置環境としては不向きな場合があるなど、万能な方法ではない。
【0004】
このような点を踏まえて、特定の記録媒体を用い、この記録媒体に計量装置のデータを一旦記録し、このデータを記録した記録媒体をパソコンに接続して当該データをパソコンに出力する方法が用いられている。この種の記録媒体としてはSDカード、USBメモリ等が一般的である。
【0005】
また、下記特許文献記載のようにこれらの記録媒体をより効果的に利用する発明・考案が提案されている。
【特許文献1】実用新案登録第3144574
【特許文献2】特開2006−084364
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の考案は記録媒体としてUSBメモリを用いてデジタル指示計のデータをパソコン等に転送する構成を示し、特許文献2記載の発明は、メモリカード、SDスティック等の各種記憶媒体をデータ記録装置に装着し、この状態で記録媒体にデータを記録する構成となっている。
【0007】
上記特許文献記載の考案、発明のうち特に特許文献2に記載の発明は、データ記録装置においてデータのアナログ/デジタル変換等、ある程度のデータ処理が可能であること、SDカードを始めとする各種記憶媒体によりパソコンに対して簡単にデータの出力が可能であること等の利点を有する。
【0008】
然し、この種の汎用メモリにデータを記録する為には、例えばSDカードでれあれば数十mA、最大100mA程度の消費電力となるなど、相当量の電力を必要とする。このため電力確保のためデータ記録装置に対して電源として電池を搭載するか、或いは電子秤の等のデータ出力側から電源の供給を受ける必要がある。
【0009】
また、電源確保のためデータ記録装置内にACアダプタを内蔵する方式も考えられるが、この方式ではデータ記録装置の使用環境下でAC電源を確保しなければならず、かつ装置そのものも大型、大重量化して装置としての携帯性が大きく損なわれることになる。
【0010】
この様な観点から特許文献2に記載の発明においては電源確保の方法として、RS232Cのコネクタを利用してデータを出力する測定装置側から電力の供給を受ける構成が示されている。
【0011】
上記の方法を実施する場合、電子秤等のデータを出力する装置の側のRS232Cのコネクタを電力の供給も可能なコネクタに仕様を変更する必要があり、この仕様になっていないコネクタの装置に対しては上記データ記録装置は使用することができないという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記技術の問題点に鑑み構成されたものである。
即ち本発明は、RS232Cに準拠する通信規格において、RS232Cの信号線から電流を取得する手段を有するデータ記録装置であって、RS232Cを介して信号を受信したときの電源電圧を確認する手段と、記憶手段と、この記憶手段にデータを記録する動作を行う事の可否を決定する手段とを有し、これらの手段によりデータ信号を送信する微弱な電流を用いて記録手段にデータを記録するデータ記録装置及び同装置おデータ記録方法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
RS232Cの信号線は電力を供給するラインを別途構成する必要がないため、本発明に係る装置はRS232Cの端子を有する全ての装置に対して接続可能であり、装置の汎用性が極めて高い。
【0014】
また出力側端子としてUSB端子を設置しているため、殆ど全てのパソコンに対してデータを出力することができる。
【0015】
装置内に電源手段を設けていないため装置全体を軽量小型化することができ、携帯性に優れた装置とすることができる。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明に係るデータ記録装置の構成を示す。
データ記録装置1のうち、符号2は電子秤等、データを出力する装置と接続するRS−232Cコネクタである。通信を行うRS−232Cは電力供給用のラインが設置されていない一般的通信媒体であるため、このコネクタ2も電力供給部を持たない一般的なRS−232Cコネクタである。
【0017】
RS−232Cコネクタ2に対しては、これに後続して通信部3と電力取得部4が設けられている。このうち通信部3は後述する回路構成の説明にあるように高入力インピーダンスの回路構成となっている。
【0018】
電力取得部4はRS−232Cの通信規格において数mAの微弱な電流をデータの記録用電源として利用する手段であり、電力の取得方法及び取得した電力を用いたデータの記録方法は後で詳述する。
【0019】
符号5は表示部、6は操作部であり、表示部5はLCD等の省電力型のディスプレイを用いており、接続した装置からのデータを表示したり、操作部6により設定された事項を表示したりするのに利用される。
【0020】
演算処理部(以下「CPU」とする)7では取得したデータの解析だけではなく、RS−232Cによる信号(データ)の有無や、電圧の変化に対応して自己の動作の開始、或いは待機(スタンバイ)が行えるよう設定されている。なお、このCPUはRS−232Cの信号電流から取得する電圧との関係により低消費電流のものを用いる。例えば作動時5mA、待機時1mA以下程度の低消費電流のものが好適である。
取得されたデータは記憶部8に格納される。なお記憶部8は電源のない状態でもデータを保持する不揮発性メモリ(EEPROM)としておく。
【0021】
符号9で示す通信部は主としてデータ出力用の通信部である。またデータ出力用端子としてはUSBコネクタ10が設けられている。一般的にUSBコネクタは殆ど全てのパソコンに設けられており、かつノート型パソコン等では装置の小型化、軽量化等のためUSBコネクタのみが設けられている場合も多い。このためUSBコネクタ10を設けておけば殆ど全てのパソコンに対してデータを出力することができる。
【0022】
図2は上記構成の装置におけるデータの取得および電力の取得を中心とした装置の作動状態の一例を示す。
【0023】
まずRS−232Cによるデータ及び電力の取得における電流と電圧は以下のような関係にあり、本願発明もこの関係に基づいて構成されている。
通常RS−232Cの信号線からは電源としては数mA程度の微弱な電流しか取得することができない。例えば出力TXDにおける電圧が9Vであるとすると、この電圧を印加する電流から9mAを取り出すとTXDは4Vに低下してしまう。このため、本発明では前記CPU7は基本的に省電力のスタンバイ状態(消費電力1mA程度)とし、データの信号を受けると直ちに作動状態(例えば消費電力5mA程度)に復帰し、短時間(例えば数十msec程度)で処理を行い、その後直ちにスタンバイ状態に入る。この動作を順次繰り返すことによりRS−232Cによりデータの取得とこのデータ取得用の電源を確保することをその機能の中心とするものである。
【0024】
以下作動状態を図2及び図3を中心にして説明する。
図2において、本装置をデータの出力対象である計量機器(電子秤)とRS−232Cで接続すると電源が投入され(S1)、表示部5において本装置が現在記録しているデータの数等、本装置の状態を示す(S2)。
【0025】
この後CPU7はスタンバイ状態に移行し待機している(S3)。RS−232Cからの信号を受信すると(S4)、前記CPU7は作動状態に復帰し受信したデータを解析する(S5)と共に、電力取得部4を介して取得された電源電圧の確認を行う(S6)。この場合、動作用の電圧を確保した時間帯において一回の動作でデータ処理が完了すれば、処理の完了したデータは記憶部8(EEPROM)に記録される(S7)。
【0026】
他方、処理に時間がかかり電圧を確保した特定の時間帯では処理が完了しない場合にはCPU7の作動時間と待機時間を以下の方法により交互に設定し何回かに分けて処理を行う。
【0027】
即ち、電源取得部4を介して取得した電源電圧をCPU7で監視しておき(図2のステップS6)、例えば電源電圧が4V以下に低下していた場合にはCPU7(自己)を一定時間(例えば100msec)待機状態(図2のステップS8)として電源の回復を待ち、再度電源電圧を監視し電圧が回復していれば処理動作を再開する。
【0028】
図3はCPU7の動作と待機の状態の一例を示す。
前回の動作の後100msec待機し、時間T1 において動作を開始し、100msec経過して電源電圧が動作電圧の5V近辺まで低下した時間T2 おいて待機に入り、100msec経過して電源電圧が10V程度に回復した時間T3 において動作を再開し100msec経過して電源電圧が動作電圧の5V近辺まで再度低下した時間T4 において待機する。
但し上記動作は本件発明に係る装置が最も安全かつ確実に動作できる範囲の電圧を示しているものであって、各電圧を上記電圧の最低限約半分とした状態でもほぼ確実に動作することが確認されている。
【0029】
即ち、前回の動作の後100msec待機し、時間T1 において動作を開始し、100msec経過して電源電圧が動作電圧の約3V近辺まで低下した時間T2 おいて待機に入り、100msec経過して電源電圧が約5V程度に回復した時間T3 において動作を再開し、100msec経過して電源電圧が動作電圧の約3V近辺まで再度低下した時間T4 において待機するルーチンであっても確実にCPU7は動作することが確認されている。
【0030】
このようにCPU7の待機と動作を交互に組み合わせることより、RS−232Cケーブルから直接取得できる微弱な電力を用いて信号を記憶部8に記録することができる。
【0031】
RS−232Cの信号線TXD(出力)が、Hi(+5V〜+15V)、Lo(−5V〜−15V)のシリアル信号で通信を行うことを利用して、ダイオードブリッジ回路やアナログスイッチ回路を利用した回路で電力を取得することができる。
【0032】
図4はダイオードD1乃至D4によりダイオードプリッジ回路を構成し、この回路を利用した電力取得回路の構成例を示している。
この回路構成においては信号線TXDとシグナルグランドSG(0V)の間で上記ダイオードブリッジを構成すれば電力供給用のラインを別途設定しなくてもRS−232Cを経由して電力を取得することができる。
【0033】
まず信号線TXDがHi(プラス)であるとき、電流はTXD・D2・負荷・D3・SGの順に流れるため、Vaはプラスとなる。
TXDがLo(マイナス)であるとき、電流はSG・D4・負荷・D3・TXDの経路で流れため、Vaはやはりプラスとなる。
【0034】
以上から、VaはTXDのHi(プラス)・Lo(マイナス)に関わらずプラスとなり、この電源をコンデンサC1にチャージすることにより安定した電源を確保することが可能となる。
なお通信部3においては、トランジスタを利用した電圧変換によりTXDの電圧をCPU7の電圧レベルVddに変化させ、入力RXDとしてデータ処理を実行する。
【0035】
図5は本発明に係るデータ記録装置と計量機器の接続状態の一例を示す。
データ記録装置1は例えば図示の如く手のひらに入る程度のコンパクトな形状に形成され、高い携帯性を有するよう構成されている。計量機器としての電子秤11とデータ記録装置1はRS−232Cケーブル12で接続されており、電子秤11から出力された計量データをRS−232Cコネクタ2を介して入力すると共に、上記方法により電力も取得する。
【0036】
データの入力個数、データの内容等は所定のボタン1B(図1の操作部6に対応)を用いて表示部1A(図1の表示部5に対応)に適宜表示することができる。
データの入力が完了したならばデータ記録装置1のUSB端子10をパソコンのUSB端子に接続し、記録しているデータをパソコンに出力する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上、本発明る係るデータ記録装置に対するデータ出力側の装置を電子秤等の計量装置を例に説明したが、RS−232C規格を用いてデータ通信を行う装置に関しては全ての装置に対して本発明に係るデータ記録装置を使用することが可能である。
【0038】
また実施例ではデータ出力用端子としてUSB端子を設けた装置が示されているが、データを入力する装置にRS−232C端子が設けられている場合には、RS−232C端子2を出力端子としてデータの出力を行うように構成したり、USB端子しか持たない装置にには使用不能であるが、出力用のUSB端子を廃止することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るデータ記録装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るデータ記録装置の作動状態を示すフロー図である。
【図3】電圧の変化に対応してCPUの作動と待機の状態を時系列に示す線図である。
【図4】電力取得部の構成例を示す回路図である。
【図5】本発明に係るデータ記録装置と電子秤との接続状態を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 データ記録装置
1A (データ記録装置の)表示部
1B (データ記録装置の)押しボタン
2 RS−232Cコネクタ(端子)
3 通信部
4 電力取得部
5 表示部
6 操作部
7 演算処理部(CPU)
8 記憶部
9 通信部
10 USBコネクタ(端子)
11 電子秤
12 RS−232Cケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたデータを処理する装置と、データを出力しかつRS−232Cに準拠するデータ出力端子を有する装置との間でデータの転送または記録に用いられる装置であって、RS−232Cの信号電流からデータの信号を取得する通信部と、この信号電流から内部回路作動用の電力を取得する電力取得部とを有することを特徴とするデータを出力する装置から電源の供給を受けるデータ記録装置。
【請求項2】
RS−232Cの信号電流の電圧を監視する手段と、この監視手段により検出された信号電流の電圧に対応して信号処理の実行動作または設定された電圧に回復するまでの待機動作を決定する手段とを有することを特徴とする請求項1記載のデータを出力する装置から電源の供給を受けるデータ記録装置。
【請求項3】
前記電力取得部においては電力取得手段としてRS−232Cの出力TXDとシグナルグランドSGとの間に形成されたダイオードブリッジと、このダイオードブリッジに接続するコンデンサとから成る回路を有することを特徴とする請求項1記載のデータを出力する装置から電源の供給を受けるデータ記録装置。
【請求項4】
データを処理する装置に対して記録されたデータを出力する端子はUSB端子であることを特徴とする請求項1記載のデータを出力する装置から電源の供給を受けるデータ記録装置。
【請求項5】
RS−232C規格に準拠してデータをシリアル通信するデータ通信方法におけるデータの記録方法であって、RS−232Cの信号電流の電圧を監視し、当該電流の電圧がCPUの動作に必要な電圧以上であるときCPUは動作し、かつ最低限必要な電圧にほぼ等しい電圧にまで低下したときはCPUは待機状態となり、電圧の回復を待ってCPUは再度動作し、この動作と待機を交互に繰り返すことによりデータの処理と記録を行うことを特徴とするデータを出力する装置から電源の供給を受けるデータ記録装置のデータ記録方法。
【請求項6】
前記CPUの消費電力は、作動時約5mA、待機時約1mA以下の低消費電力型であって、RS−232Cの信号電流の電圧が約5vの時に作動を開始し、かつ当該作動により電圧が約3Vに低下したときに待機状態となり、この待機状態により前記電圧が再度約5Vに上昇した時に作動を再開し、この条件で作動と待機を交互に繰り返すことにより長時間におけるデータ処理を可能としたことを特徴とする請求項5記載のデータを出力する装置から電源の供給を受けるデータ記録装置のデータ記録方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−12994(P2011−12994A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155161(P2009−155161)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000127570)株式会社エー・アンド・デイ (136)
【Fターム(参考)】