説明

データ処理装置、クライアント装置、及びデータ処理システム

【課題】データ処理装置及びクライアント装置におけるパケットの送受信回数を増大させることなく、クライアント装置がデータ処理装置の電力モードを把握することが可能なデータ処理装置を提供する。
【解決手段】MFP1は、クライアント装置3から送信されたプリント要求に応じてプリント処理を行うプリンタ11と、通常モードにおいてプリンタ11に対して電力を供給し、省電力モードにおいてプリンタ11に対する電力の供給を停止する電力制御部23と、省電力モードにおいて、通常モードへ復帰するタイミングを問い合わせる問合パケットをクライアント装置3から受信した場合、復帰するタイミングを示す時間情報を含む応答パケットを返信するネットワークI/F16とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力機能を備えたデータ処理装置、該データ処理装置に対して処理要求を行うクライアント装置、該データ処理装置及び該クライアント装置を備えるデータ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタ、複合機等、データ処理を行うデータ処理装置が広く知られている。データ処理装置の中には、クライアント装置からデータ処理の要求がない時間帯、又は、処理要求が所定時間なかった場合等に、処理手段に対する電力の供給を停止して省電力モードへ移行する装置がある。また、省電力モードにおいてクライアント装置から処理要求を受信した場合、通常モードに復帰して処理を行うデータ処理装置がある。
【0003】
処理要求により復帰する上記のデータ処理装置に対して、クライアント装置は、データ処理装置の電力モードを把握できないため、電力モードに関わらず処理要求を送信する。このため、データ処理装置は、省電力モードへ移行しても、処理要求によって直ぐに通常モードに復帰し、省電力状態を保つことができない場合がある。この場合、省電力効率が低下してしまう。そこで、下記特許文献1には、クライアント装置が定期的にデータ処理装置の電力モードを確認するシステムが記載されている。
【0004】
特許文献1に記載されたシステムでは、まず、データ処理装置が省電力モードへ移行する際に、移行通知をクライアント装置へ送信する。その後、クライアント装置は、データ処理装置が省電力モードであるか否かを確認するパケットをデータ処理装置へ定期的に送信する。この確認のパケットに対して、データ処理装置は、省電力モードである場合はその旨の応答を行い、通常モードである場合は応答を行わない。これにより、クライアント装置は、確認を行った時点におけるデータ処理装置の電力モードを把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−41052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のシステムでは、データ処理装置が省電力モードである間、定期的にデータ処理装置とクライアント装置との間でパケットの送受信が行われる。特に、1台のデータ処理装置に対して、複数のクライアント装置がネットワークを介して接続されている場合、データ処理装置は、省電力モードにおいて、各クライアント装置との間でパケットの送受信をそれぞれ定期的に行う必要がある。このため、省電力モードでは、データ処理装置及びクライアント装置が、それぞれパケットの送受信処理を定期的に行うことになる。従って、データ処理装置及びクライアント装置における処理負荷が増大し、データ処理装置及びクライアント装置を含むシステム全体として、効率が悪くなる。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、データ処理装置及びクライアント装置におけるパケットの送受信回数を増大させることなく、クライアント装置がデータ処理装置の電力モードを把握することが可能なデータ処理装置、クライアント装置、及びこれらを備えるデータ処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るデータ処理装置は、クライアント装置から送信された処理要求に応じてデータ処理を行う処理部と、通常モードにおいて処理部に対して電力を供給し、省電力モードにおいて処理部に対する電力の供給を停止する電力制御部と、省電力モードにおいて、通常モードへ復帰するタイミングの問合せをクライアント装置から受信した場合、復帰するタイミングを示す時間情報を返信する通信部とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るデータ処理装置によれば、通常モードにおいては、クライアント装置から送信される処理要求に応じてデータ処理が行われる。省電力モードにおいては、データ処理を行う処理部に対する電力の供給が停止され、省電力化を図ることができる。この省電力モードにおいて、通常モードへ復帰するタイミングの問合せが受信された場合、復帰するタイミングを示す時間情報がクライアント装置へ返信される。これにより、データ処理装置が、時間情報を含むパケットを1回返信すれば、クライアント装置は、データ処理装置が省電力モードであることを把握し、更に、復帰するタイミングを把握することができる。従って、データ処理装置及びクライアント装置におけるパケットの送受信回数を増大させることなく、クライアント装置がデータ処理装置の電力モードを把握することが可能となる。
【0010】
本発明に係るデータ処理装置では、電力制御部が、設定された時刻に省電力モードから通常モードへ自機を復帰させ、通信部は、省電力モードにおいて問合せを受信した場合、上記時間情報として、設定された時刻を示す時間情報を返信することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、省電力モードにおいて、復帰するタイミングの問合せが受信された場合、通常モードへ復帰するように設定された時刻を示す時間情報がクライアント装置へ返信される。これにより、データ処理装置が、時間情報を含むパケットを1回返信すれば、クライアント装置は、データ処理装置が省電力モードであることを把握し、更に、データ処理装置が復帰する時刻を把握することができる。
【0012】
本発明に係るデータ処理装置では、通信部が、省電力モードにおいて処理要求を受信した場合、通常モードに復帰させるための復帰信号を出力し、電力制御部は、通信部から復帰信号が出力された場合、処理部に対して電力の供給を開始して通常モードに復帰させ、通信部は、省電力モードにおいて問合せを受信した場合、上記時間情報として、自機が処理要求を受信してから通常モードに復帰するまでにかかる時間を示す時間情報を返信することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、クライアント装置から送信された処理要求が、省電力モードにおいて受信された場合、復帰信号が出力され、この復帰信号に応じて処理部に対する電力の供給が開始され、自機が通常モードに復帰する。省電力モードにおいて問合せが受信された場合、自機が処理要求を受信してから通常モードに復帰するまでにかかる時間を示す時間情報がクライアント装置へ返信される。これにより、データ処理装置が、時間情報を含むパケットを1回返信すれば、クライアント装置は、データ処理装置が省電力モードであることを把握し、更に、データ処理装置に処理要求を送信してから、データ処理装置が通常モードに復帰するまでの時間を把握することができる。
【0014】
本発明に係るデータ処理装置では、通信部が、通常モードにおいて処理要求に対する応答を行い、省電力モードにおいて電力の供給が停止されることにより、応答が不可能となる通常応答部と、省電力モードにおいて問合せを受信した場合、時間情報を返信する代理応答部とを有することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、通常モードにおいては、通常応答部によって応答が行われ、省電力モードでは、通常応答部の通電が停止される。これにより、より省電力化を図ることができる。一方で、省電力モードでは、通常応答部による応答が不可能になるが、上記問合せに対しては、代理応答部によって時間情報の返信が行われる。このため、省電力化を図ると共に、問合せに対する応答機能を発揮することが可能となる。
【0016】
本発明に係るデータ処理装置では、通信部が、SNMPプロトコルに従って、時間情報を返信することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、一般的に用いられているプロトコルを利用するので、比較的容易に本発明に係るデータ処理装置を構成することができる。
【0018】
本発明に係るクライアント装置は、上記データ処理装置に対して、処理要求を行うクライアント装置であって、データ処理装置が省電力モードから通常モードへ復帰するタイミングの問合せを該データ処理装置へ送信する送信部と、送信部によって送信された問合せに対して返信された、復帰するタイミングを示す時間情報を受信する受信部と、受信部によって受信された時間情報に基づいて処理要求を行う要求部とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るクライアント装置によれば、データ処理装置が通常モードへ復帰するタイミングの問合せが、該データ処理装置に送信され、問合せに対してデータ処理装置から返信された時間情報が受信される。これにより、データ処理装置が、時間情報を含むパケットを1回返信すれば、クライアント装置は、データ処理装置が省電力モードであることを把握し、更に、復帰するタイミングを把握することができる。従って、データ処理装置及びクライアント装置におけるパケットの送受信回数を増大させることなく、クライアント装置がデータ処理装置の電力モードを把握することが可能となる。そして、時間情報によって示された、データ処理装置が復帰するタイミングに基づいて、処理要求が行われるので、パケットの送受信回数を増大させることなく、処理要求を行うことができる。
【0020】
本発明に係るクライアント装置では、受信部は、時間情報として、データ処理装置が省電力モードから通常モードへ復帰する時刻を示す時間情報を受信し、要求部は、時間情報が示す時刻が経過した後に、データ処理装置に対して処理要求を行うことが好ましい。
【0021】
この構成によれば、時間情報として、データ処理装置が省電力モードから通常モードへ復帰する時刻が、クライアント装置に提供される。これにより、パケットの送受信回数を増大させることなく、データ処理装置が復帰する時刻を把握することができる。そして、データ処理装置が復帰する時刻が経過した後に、データ処理装置に対して処理要求が行われる。すなわち、データ処理装置が通常モードに復帰した後に、処理要求が行われる。これにより、データ処理装置が省電力モードであるときに処理要求が送信されることを防止できる。その結果、クライアント装置が送信する処理要求のために、データ処理装置が通常モードへ復帰してしまうことを防止できる。また、データ処理装置が復帰したタイミングを逃さずに、処理要求を行うことができる。
【0022】
本発明に係るクライアント装置では、受信部は、時間情報として、データ処理装置が処理要求を受信してから通常モードに復帰するまでにかかる時間を示す時間情報を受信し、要求部は、処理要求を送信してから時間情報が示す時間が経過した後に、処理要求の再送又は処理要求に付随するパケットの送信を行うことが好ましい。
【0023】
この構成によれば、時間情報として、データ処理装置が処理要求を受信してから通常モードに復帰するまでにかかる時間が、クライアント装置に提供される。そして、処理要求が送信されてから、時間情報が示す時間が経過した後に、処理要求の再送又は処理要求に付随するパケットの送信が行われる。一般的に、処理要求が送信された後、データ処理装置からの応答が所定時間以内に無い場合、クライアント装置は、応答が得られるまで処理要求を再送し続けるので、パケットの送受信回数が増大する。これに対して、処理要求が送信されてから、時間情報が示す時間が経過した後に、処理要求の再送又は処理要求に付随するパケットの送信が行われるので、パケットの送受信回数を増大させることなく、データ処理装置が復帰したタイミングで処理要求を行うことができる。
【0024】
本発明に係るデータ処理システムは、データ処理装置が復帰するタイミングの問合せを送信する上記のクライアント装置と、該問合せに対して復帰するタイミングを示す時間情報を返信する上記のデータ処理装置とを備えることを特徴とする。
【0025】
本発明に係るデータ処理システムによれば、省電力モードにおいて、通常モードへ復帰するタイミングの問合せがクライアント装置からデータ処理装置へ送信された場合、復帰するタイミングを示す時間情報がデータ処理装置からクライアント装置へ返信される。従って、上述したように、データ処理装置及びクライアント装置におけるパケットの送受信回数を増大させることなく、クライアント装置がデータ処理装置の電力モードを把握することが可能となる。そして、時間情報によって示された、データ処理装置が復帰するタイミングに基づいて、処理要求が行われるので、パケットの送受信回数を増大させることなく、処理要求を行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、データ処理装置及びクライアント装置におけるパケットの送受信回数を増大させることなく、クライアント装置がデータ処理装置の電力モードを把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態に係るMFP、クライアント装置、及びこれらを備えるデータ処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】MFP及びクライアント装置の要部の構成を示すブロック図である。
【図3】MFPの代理応答部による応答処理を行う手順を示すフローチャートである。
【図4】クライアント装置による処理要求を行う際の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ここでは、実施形態に係るデータ処理装置をネットワーク複合機(MFP)に適用した場合を例にして説明する。まず、図1を参照して実施形態に係るMFP1、クライアント装置3、及びこれらを備えるデータ処理システム5の構成について説明する。図1は、MFP1、クライアント装置3、及び、データ処理システム5の構成を示すブロック図である。
【0029】
MFP1は、プリント、スキャン、FAX(ファクシミリ)、及び、IFAX(インターネットFAX)を含む画像処理を行う複合機である。このMFP1は、LAN(ローカルエリアネットワーク)90を介してクライアント装置3と接続されている。クライアント装置3は、パーソナルコンピュータ等であり、MFP1に対して上記の画像処理の要求を行う。MFP1は、クライアント装置3から送信された処理要求に応じて画像処理を行う。なお、データ処理システム5は、1台のクライアント装置3だけでなく、LAN90に接続された複数のクライアント装置3を備えていてもよい。
【0030】
MFP1は、利用が所定時間なされなかった場合に、画像処理を行う処理部に対する電力の供給を停止して、省電力モードへ移行する。本実施形態に係るMFP1は、省電力モードにおいて、処理部に対する電力の供給を開始して通常モードに復帰するタイミングについての問合せをクライアント装置3から受信した場合、通常モードに復帰する予定の時刻を示す時間情報を返信する。
【0031】
引き続いて、具体的にMFP1の構成について説明する。図1に示されるように、MFP1は、各種の画像処理を実行するために、スキャナ10、プリンタ11、FAX制御部12、及びI−FAX制御部13を備えている。
【0032】
スキャナ10は、CCD等によって構成され、原稿を光学的に読み取って画像データを生成する。スキャナ10は、クライアント装置3からスキャン要求が行われた場合、スキャン要求に応じて、MFP1にセットされた原稿の画像データを生成する。このスキャナ10は、特許請求の範囲に記載の処理部として機能する。
【0033】
プリンタ11は、例えば、電子写真方式により印刷を行うプリンタであり、画像データを用紙に印刷する。このプリンタ11は、クライアント装置3からプリント要求が行われた場合、プリント要求に応じて、プリントデータを用紙に印刷する。このプリンタ11は、特許請求の範囲に記載の処理部として機能する。
【0034】
FAX制御部12は、MFP1が備えるNCU(Network Control Unit)14及びモデム15を制御して、公衆電話回線(PSTN)91を介したFAXの送受信を行う。FAX制御部12は、クライアント装置3からFAXの送信要求が行われた場合、FAXの送信要求に応じて、NCU14及びモデム15を制御してFAXの送信を行う。このFAX制御部12、NCU14、及びモデム15は、特許請求の範囲に記載の処理部として機能する。
【0035】
I−FAX制御部13は、画像データが添付された電子メールを生成し、生成した電子メールをMFP1が備えるネットワークI/F16によって送信させる。これにより、I−FAXの送信が行われる。I−FAXの受信は、I−FAX制御部13が、ネットワークI/F16によって受信された電子メールから添付された画像データを取得することにより行われる。I−FAX制御部13は、クライアント装置3からI−FAXの送信要求が行われた場合、I−FAXの送信要求に応じて、ネットワークI/F16にI−FAXの送信を実行させる。このI−FAX制御部13及びネットワークI/F16は、特許請求の範囲に記載の処理部として機能する。
【0036】
上記の各構成要素が画像処理を実行するために、MFP1は、コーディック17及び画像記憶部18を有している。コーディック17は、スキャナ10によって生成された画像データを符号化圧縮し、符号化圧縮されている画像データを復号化する。画像記憶部17は、コーディック18によって符号化圧縮された画像データ、FAXデータ、I−FAXデータ、クライアント装置3から送信されたプリントデータ等を記憶する。
【0037】
また、MFP1は、ユーザから各種の操作を受け付けるために、操作部19及び表示部20を備えている。操作部19は、ユーザから操作を受け付ける各種のキーを有している。表示部20は、ディスプレイであり、各種の情報を表示する。
【0038】
MFP1は、ユーザからクライアント装置3を介してWebアクセスを受け付けるために、Webサーバ21を備えている。Webサーバ21は、クライアント装置3から送信されるHTTPタスクの処理要求に応じて、HTTPタスクを実行する。このため、Webサーバ21は、特許請求の範囲に記載の処理部として機能する。Webサーバ21が、THHPタスクを実行することにより、Webページの情報、ハードディスクに記憶されている画像データ等がクライアント装置3に提供され、クライアント装置3のディスプレイに、Webページ、画像データ等が表示される。
【0039】
MFP1は、上記の各構成要素を統合的に制御するための制御部22を備える。制御部22は、物理的には、演算を行うCPU、CPUに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM等により構成されている。
【0040】
この制御部22の機能的な構成について、図2を参照して説明する。図2は、MFP1及びクライアント装置3の要部の構成を示すブロック図である。なお、図2においては、MFP1が備える構成要素のうち、ネットワークI/F16及び制御部22以外の構成要素を省略している。
【0041】
MFP1が備える制御部22は、機能的な構成要素として、電力制御部23を備える。電力制御部23は、MFP1の電力モードを制御する。電力制御部23は、通常モードでは、MFP1の全ての構成要素に対して電力を供給する。このため、MFP1は、通常モードにおいて、各種の画像処理をクライアント装置3の要求に応じて実行することができる。
【0042】
一方、電力制御部23は、省電力モードでは、画像処理を行う処理部を含む各構成要素に対する電力の供給を停止する。但し、電力制御部23は、省電力モードにおいて、FAXの着呼を検出するために、NCU14の一部には電力を供給する。また、電力制御部23は、省電力モードにおいて、パケットの受信を検出し、一部のパケットについては応答処理を行うために、ネットワークI/F16の一部には電力を供給する。
【0043】
電力制御部23は、利用が所定時間なされなかった場合、すなわち、所定時間、ユーザから処理要求等の各種の操作を受け付けなかった場合に、電力の供給を停止して、自機を省電力モードに移行させる。電力制御部23は、省電力モードへ移行する際、RTC(Real Time Clock)等を利用して、省電力モードから通常モードへ復帰する時刻を設定してから電力の供給を停止して、自機を省電力モードに移行させる。そして、電力制御部23は、設定された時刻に電力の供給を開始して、通常モードに自機を復帰させる。
【0044】
電力制御部23は、例えば、予め定められた所定の時刻を復帰時刻に設定する。また、電力制御部23は、例えば、省電力モードに移行する時点から所定時間後の時刻を復帰時刻に設定してもよい。また、電力制御部23は、例えば、MFP1において定期的に行う処理が有る場合、該処理が行われる予定の時刻を復帰時刻に設定してもよい。なお、定期的に行う処理には、例えば、POP(Post Office Protocol)受信、画像データのバックアップ、NTP(Network Time Protocol)等がある。
【0045】
図2に示されるように、MFP1が有するネットワークI/F16は、通常応答部24及び代理応答部25を備える。また、ネットワークI/F16は、特許請求の範囲に記載の通信部として機能する。代理応答部25は、パケットを送受信するためのPHY回路を有し、通常モードでは、受信したパケットを通常応答部24へ出力し、通常応答部24から出力されたパケットを外部機器へ送信する。通常応答部24は、MAC回路を含んで構成され、代理応答部25から出力されたパケットに対する応答パケットを生成し、代理応答部25へ出力する。
【0046】
省電力モードでは、通常応答部24に対する電力の供給が停止される。これにより、省電力化を図ることができる。一方、省電力モードにおいて通常応答部24が機能しなくなるので、通常応答部24の代理として代理応答部25を機能させるために、代理応答部25には省電力モードにおいても電力が供給される。
【0047】
この代理応答部25は、消費電力及びコストを抑えるために、比較的スペックの低いCPU、ROM、RAMを利用して構成されている。このため、代理応答部25の通信機能は、通常応答部24より制限されており、代理応答部24は、スキャン要求、プリント要求、FAXの送信要求、I−FAXの送信要求等を含む処理要求に対しては、代理応答することができない。代理応答部25による代理応答が可能なパケットは、本実施形態では、SNMPパケット、ICMPパケット、及びARPパケット等である。
【0048】
なお、SNMPパケットは、SNMP(Simple Network Management Protocol)によって、MFP1のステータス情報を要求するパケットである。ステータス情報は、ジョブの蓄積状況、用紙カセット内の用紙の有無、トナーの有無等の情報である。ICMPパケットは、ICMP(Internet Control Message Protocol)によって、接続状況を確認するために相手からの応答を要求するパケットである。ARPパケットは、ARP(Address Resolution Protocol)によって、MACアドレスを問い合わせるために応答を要求するパケットである。
【0049】
代理応答部25は、省電力モードにおいて上記のパケットに対して代理応答するために、予め、応答パケットを記憶する。具体的には、代理応答部25は、SNMPパケット、ICMPパケット、及びARPパケットについて、通常モードにおいて受信したパケットと、通常応答部24によって生成された応答パケットとを対応付けて記憶する。そして、代理応答部25は、省電力モードにおいて、記憶したパケットと同じパケットを受信した場合、該パケットと対応付けて記憶された応答パケットを返信する。
【0050】
代理応答部25が受信するSNMPパケットには、通常モードへ復帰するタイミングを問い合わせる問合パケットが含まれる。代理応答部25は、この問合パケットに応答するために、例えば、自機が省電力モードへ移行する際に、電力制御部23によって設定された復帰時刻を入力し、復帰時刻を示す時間情報を含む応答パケットを問合パケットと対応付けて記憶する。この応答パケットは、SNMPプロトコルに従って生成される。
【0051】
そして、代理応答部25は、省電力モードにおいて、問合パケットを受信した場合、記憶した応答パケットを返信する。これにより、クライアント装置3からMFP1が復帰するタイミングの問合せが送信された場合、MFP1は、復帰する時刻を示す時間情報を含む応答パケットを、SNMPプロトコルに従って返信することができる。
【0052】
受信したパケットが記憶したパケットと異なり、かつ、問合パケットではない場合、代理応答部25は、応答することができないので、復帰信号を電力制御部23へ出力する。すなわち、代理応答部25は、処理要求を受信した場合、応答することができないので、復帰信号を電力制御部23へ出力する。復帰信号を入力した電力制御部23は、各構成要素に対する電力の供給を開始し、自機を通常モードに復帰させる。その後、処理要求に応じた処理が行われる。なお、MFP1は、通常モードにおいて問合パケットを受信した場合、通常モードである旨を返信してもよい。
【0053】
次に、図2を引き続いて参照し、クライアント装置3の構成について説明する。クライアント装置3は、ユーザが操作して各種の処理要求をMFP1へ送信するために、制御部31とネットワークI/F32とを備える。
【0054】
制御部31は、ユーザから処理要求の操作を受け付けた場合に、MFP1が通常モードへ復帰するタイミングを問い合わせる問合パケットをネットワークI/F32によって、MFP1へ送信させる。制御部31の制御により、ネットワークI/F32は、問合パケットをMFP1へ送信する。その後、ネットワークI/F32は、問合パケットに対してMFP1から返信された応答パケットを受信する。このため、ネットワークI/F32は、特許請求の範囲に記載の送信部及び受信部として機能する。
【0055】
制御部31は、ネットワークI/F32によって受信された応答パケットに含まれる時間情報に基づいて、処理要求を行う。このため、制御部31は、特許請求の範囲に記載の要求部として機能する。具体的には、制御部31は、時間情報が示す時刻が経過した後に、処理要求をネットワークI/F32に送信させる。これにより、クライアント装置3は、MFP1が通常モードに復帰した後に、処理要求を送信することができる。
【0056】
引き続いて、MFP1の動作について説明する。ここでは、図3を参照して、省電力モードにおける代理応答部25による応答処理について説明する。図3は、応答処理を行う手順を示すフローチャートである。
【0057】
まず、ステップS101では、クライアント装置3から送信された問合パケットが、MFP1の代理応答部25によって受信される。問合パケットは代理応答部25において記憶され、応答可能であるため、問合パケットの受信に続いて、ステップS102では、時間情報を含む応答パケットが、代理応答部25によってクライアント装置3へ返信される。以上の処理により、MFP1が復帰するタイミングの問合せに対して、復帰する時刻を示す時間情報をクライアント装置3に提供することができる。
【0058】
次に、クライアント装置3の動作について説明する。ここでは、図4を参照して、クライアント装置3が、MFP1に対して処理要求を行う際の手順について説明する。図4は、クライアント装置3による処理要求を行う際の手順を示すフローチャートである。本処理は、クライアント装置3がユーザから処理要求の操作を受け付けた場合に行われる。
【0059】
まず、ステップS201では、MFP1が復帰するタイミングを問い合わせる問合パケットが、クライアント装置3からMFP1へ送信される。次に、ステップS202では、MFP1から返信された応答パケットが、クライアント装置3において受信される。そして、ステップS203では、応答パケットに含まれる時間情報から、MFP1が復帰する時刻が特定される。
【0060】
クライアント装置3は、MFP1が復帰する時刻まで待機し(ステップS204)、MFP1が復帰する時刻が経過した後、ステップS205において、プリントジョブ等の処理要求が、クライアント装置3からMFP1へ送信される。以上の処理により、MFP1が通常モードに復帰した後に、処理要求を送信することができる。
【0061】
なお、上記クライアント装置3としての機能は、記録媒体に記録されたプログラムであって、問合パケットを送信する送信モジュールと、応答パケットを受信する受信モジュールと、応答パケットに含まれる時間情報に基づいて処理要求を行う要求モジュールを含むプログラムをコンピュータにインストールすることにより発揮させることができる。
【0062】
以上説明した本実施形態に係るMFP1及びクライアント装置3によれば、MFP1が省電力モードにおいて、通常モードへ復帰するタイミングの問合せをクライアント装置3から受信した場合、復帰するタイミングを示す時間情報がクライアント装置3へ返信される。これにより、MFP1が時間情報を含むパケットを1回返信すれば、クライアント装置3は、MFP1が省電力モードであることを把握し、更に、復帰するタイミングを把握することができる。従って、データ処理装置及びクライアント装置におけるパケットの送受信回数を増大させることなく、クライアント装置がデータ処理装置の電力モードを把握することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、時間情報として、通常モードへ復帰するように設定された時刻を示す時間情報がクライアント装置3に提供される。これにより、パケットの送受信回数を増大させることなく、クライアント装置3が復帰する時刻を把握することができる。そして、クライアント装置3が復帰する時刻が経過した後に、MFP1に対して処理要求が行われので、データ処理装置が通常モードに復帰した後に、処理要求を行うことができる。これにより、MFP1が省電力モードであるときに処理要求が送信されることを防止できる。その結果、クライアント装置3が送信する処理要求のために、MFP1が通常モードへ復帰してしまうことを防止し、省電力効率の低下を防止することができる。また、データ処理装置が復帰したタイミングを逃さずに、処理要求を行うことができる。
【0064】
また、MFP1では、通常モードにおいては、通常応答部24によって応答が行われ、省電力モードでは、通常応答部24の通電が停止される。これにより、より省電力化を図ることができる。一方で、省電力モードでは、通常応答部24による応答が不可能になるが、上記問合せに対しては、代理応答部25によって時間情報の返信が行われる。このため、省電力化を図ると共に、問合せに対する応答機能を発揮することが可能となる。
【0065】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、MFP1が、時間情報として通常モードへ復帰する時刻を返信することとしたが、これに限られない。例えば、MFP1は、省電力モードにおいて処理要求を受信してから通常モードに復帰するまでにかかる時間を時間情報として返信してもよい。この場合、クライアント装置3は、MFP1が省電力モードであることを把握し、更に、MFP1に処理要求を送信してから、MFP1が通常モードに復帰するタイミングを把握することができる。
【0066】
MFP1が処理要求を受信してから復帰するまでは、処理要求に対する応答を返信することができない。このため、クライアント装置3が、クライアント装置3が省電力モードであること、及び、処理要求を送信してからMFP1が復帰するタイミングを把握していない場合は、応答が帰って来ないと判断して、応答が帰ってくるまで、処理要求を再送し続ける虞がある。これに対して、変形例に係る上記のクライアント装置3は、処理要求を送信した後、MFP1が復帰するまで待機し、処理要求を送信してから時間情報が示す時間が経過した後に、処理要求に付随するパケットの送信を行う。処理要求に付随するパケットは、例えば、処理要求がプリント要求である場合、プリントデータ、プリント用の制御コマンド等を含むパケットである。このように、変形例に係るクライアント装置3では、処理要求を送信してから時間情報が示す時間が経過するまで待機するので、パケットの送受信回数を増大させることなく、MFP1が復帰したタイミングで処理要求を行うことができる。
【0067】
また、上記実施形態では、省電力モードにおいて通常応答部24の通電を停止し、代理応答部25が応答パケットを返信することとしたが、これに限られない。省電力モードにおいてネットワークI/F16全体に対して電力を供給し、ネットワークI/F16が応答パケットを返信することとしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、LAN90を介してクライアント装置3に接続されたMFP1が1台であったが、複数のMFP1がクライアント装置3に接続されていてもよい。この場合、クライアント装置3は、複数のMFP1に対して問合パケットを送信し、各MFP1から復帰する時刻を示す時間情報を含む応答パケットを受信してもよい。更に、クライアント装置3は、受信した複数の時間情報に基づいて、復帰する時刻が最も早いMFP1を特定し、該MFP1が復帰する時刻まで待機し、該MFP1に処理要求を送信することとしてもよい。また、クライアント装置3は、複数のMFP1に対して問合パケットを送信した後、通常モードである旨の応答パケットを受信した場合、該応答パケットの送信元であるMFP1に処理要求を送信してもよい。これにより、通常モードであるMFP1に処理要求を送信することができる。
【0069】
なお、上記実施形態では、ユーザから処理要求の操作があった場合に、クライアント装置3が問合パケットを送信することとしたが、ユーザが問合せをしない旨を選択した場合は、問合せをせずに、処理要求を送信するようにクライアント装置3を構成してもよい。これにより、ユーザが、直ぐに処理要求を行いたい場合に、直ちに処理要求を行い、MFP1を復帰させることができる。
【符号の説明】
【0070】
1 MFP
10 スキャナ
11 プリンタ
12 FAX制御部
13 I−FAX制御部
14 NCU
15 モデム
16 ネットワークI/F
22 制御部
23 電力制御部
24 通常応答部
25 代理応答部
3 クライアント装置
31 制御部
32 ネットワークI/F
5 データ処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアント装置から送信された処理要求に応じてデータ処理を行う処理部と、
通常モードにおいて前記処理部に対して電力を供給し、省電力モードにおいて前記処理部に対する電力の供給を停止する電力制御部と、
前記省電力モードにおいて、前記通常モードへ復帰するタイミングの問合せを前記クライアント装置から受信した場合、復帰するタイミングを示す時間情報を返信する通信部と、
を備えることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記電力制御部は、設定された時刻に前記省電力モードから前記通常モードへ自機を復帰させ、
前記通信部は、前記省電力モードにおいて前記問合せを受信した場合、前記時間情報として、前記設定された時刻を示す時間情報を返信することを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
前記通信部は、前記省電力モードにおいて前記処理要求を受信した場合、前記通常モードに復帰させるための復帰信号を出力し、
前記電力制御部は、前記通信部から前記復帰信号が出力された場合、前記処理部に対して電力の供給を開始して前記通常モードに復帰させ、
前記通信部は、前記省電力モードにおいて前記問合せを受信した場合、前記時間情報として、自機が前記処理要求を受信してから前記通常モードに復帰するまでにかかる時間を示す時間情報を返信することを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項4】
前記通信部は、
前記通常モードにおいて前記処理要求に対する応答を行い、前記省電力モードにおいて電力の供給が停止されることにより、前記応答が不可能となる通常応答部と、
前記省電力モードにおいて前記問合せを受信した場合、前記時間情報を返信する代理応答部と、
を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
前記通信部は、SNMPプロトコルに従って、前記時間情報を返信することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のデータ処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載のデータ処理装置に対して、前記処理要求を行うクライアント装置であって、
前記データ処理装置が前記省電力モードから前記通常モードへ復帰するタイミングの問合せを該データ処理装置へ送信する送信部と、
前記送信部によって送信された問合せに対して返信された、復帰するタイミングを示す時間情報を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された時間情報に基づいて前記処理要求を行う要求部と、
を備えることを特徴とするクライアント装置。
【請求項7】
前記受信部は、前記時間情報として、前記データ処理装置が前記省電力モードから前記通常モードへ復帰する時刻を示す時間情報を受信し、
前記要求部は、前記時間情報が示す時刻が経過した後に、前記データ処理装置に対して前記処理要求を行うことを特徴とする請求項6に記載のクライアント装置。
【請求項8】
前記受信部は、前記時間情報として、前記データ処理装置が前記処理要求を受信してから前記通常モードに復帰するまでにかかる時間を示す時間情報を受信し、
前記要求部は、前記処理要求を送信してから前記時間情報が示す時間が経過した後に、前記処理要求の再送又は前記処理要求に付随するパケットの送信を行うことを特徴とする請求項6に記載のクライアント装置。
【請求項9】
請求項1に記載のデータ処理装置と、請求項6に記載のクライアント装置と、を備えるデータ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−160086(P2012−160086A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20165(P2011−20165)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】