説明

データ通信装置および電子機器

【課題】 装置を小型化すること。
【解決手段】 データ通信装置の発光ダイオード11は、通電により光を出力する。送信回路13は、送信データに基づいて発光ダイオード11に順バイアスを印加する。分離回路14は、送信回路13により発光ダイオード11に順バイアスが印加されていないときの発光ダイオード11に発生する電圧に応じて変化する電圧を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ通信装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオードを用いるデータ通信装置の通信方式には、パソコン、携帯電話などの電子機器に採用されているIrDA(InfraRed Data Association)により規格化された赤外線通信方式などがある。このIrDAにより規格化された赤外線通信方式では、データ送信のために発光させる発光ダイオードと、他の電子機器の発光ダイオードからの光を受光するフォトセンサとを使用する。
【0003】
なお、フォトセンサも発光ダイオードも、基本的にPN接合をもつ半導体素子である。このため、特許文献1に開示されているように、発光ダイオードを用いて光を受光させることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2001−119063号公報(要約、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、図面など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の赤外線通信方式の装置に使用される発光ダイオードやフォトセンサは、通信機能を有する他の電子機器と通信をするために、電子機器の表面に配設しなければならない。そのため、電子機器にIrDAにより規格化された赤外線通信機能を設けることは、電子機器の小型化を阻害したり、スペースの利用効率を制限したりしてしまうことになる。また、コストアップの要因になってしまう。
【0006】
なお、電子機器には、一般的に、電源ランプなどの発光部分を有しており、この発光部分としては、通常、可視光を出力する発光ダイオードが採用される。したがって、データの送信機能を具備しない電子機器であっても、データの受信機能を設ける場合には、表示部には可視光を発光する発光ダイオードを具備させ、データ受信部にはフォトセンサを具備させる必要があり、上述した例と同様の問題が生じる。
【0007】
一方、特許文献1に記載されている技術は、単に1つのLEDを発光素子および受光センサとして利用するものであり、通信することはまったく考慮しておらず、また通信の際の種々の問題点を解決してはいない。
【0008】
本発明は、小型化が可能になるデータ通信装置および電子機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るデータ通信装置は、通電により光を出力する発光ダイオードと、送信データに基づいて発光ダイオードに順バイアスを印加する送信回路と、発光ダイオードに順バイアスが印加されていないときの発光ダイオードに発生する電圧に応じて変化する電圧を出力する分離回路と、を有し、送信回路によって発光ダイオードから送信用の光データを発信し、分離回路によって発光ダイオードが受信した光をデータとして取り出すものである。
【0010】
この構成を採用すれば、送信データに基づいて発光ダイオードを発光させ、その発光が制御される発光ダイオードに入力される光信号に対応する電圧信号を生成することができる。1つの発光ダイオードで通信が可能となる。したがって、データ通信装置を小型化することが可能になる。
【0011】
本発明に係るデータ通信装置は、上述した発明の構成に加えて、送信回路が、送信データに基づいて発光ダイオードに印加する順バイアスを間欠的に印加するものである。
【0012】
この構成を採用すれば、送信データに基づいて発光ダイオードを発光させる期間においても、順バイアスが印加されていないタイミングにおいて、その発光ダイオードを用いてデータを受信することができる。よって、発光ダイオードをデータ毎にパルス列駆動し、全二重通信が可能となる。
【0013】
本発明に係るデータ通信装置は、上述した発明の各構成に加えて、発光ダイオードのアノードとカソードとの間に接続される並列コンデンサを有するものである。
【0014】
この構成を採用すれば、発光ダイオードのPN接合部に蓄積されたキャリアを、並列コンデンサにより速やかにキャンセルすることができる。その結果、発光ダイオードに順バイアスを印加し終えた直後に、その蓄積キャリアに起因する大きなノイズ電圧が分離回路から出力されないようにすることができる。特に、全二重通信においては、発光ダイオードをデータ毎にパルス列駆動している期間においても、フィルタ回路から受信した光信号に応じた好適な電圧を出力することができる。
【0015】
本発明に係るデータ通信装置は、上述した発明の各構成に加えて、送信回路が、発光ダイオードのカソードにベースが接続され且つ発光ダイオードのアノードにコレクタが接続されるPNPトランジスタを有し、発光ダイオードに順バイアスを印加するときには、発光ダイオードのカソードおよびPNPトランジスタのベースの電位をPNPトランジスタのエミッタの電圧より低く制御してPNPトランジスタをオン状態にするものであり、分離回路が、発光ダイオードのアノードに接続されるものである。
【0016】
この構成を採用すれば、発光ダイオードに順バイアスを印加していないときには、発光ダイオードのアノードの電位を不定にすることができる。発光ダイオードは、順バイアスを印加していないときには、それに入射される光に応じた電圧を分離回路へ出力することができる。
【0017】
本発明に係るデータ通信装置は、上述した発明の各構成に加えて、分離回路が、分離トランジスタと、分離トランジスタのベースと発光ダイオードのアノードとの間に接続される直流除去コンデンサと、分離トランジスタのベースに接続される一対の抵抗素子を有し、発光ダイオードに所定の光量の光が入射されているか否かに応じて分離トランジスタが電流増幅動作をするように、分離トランジスタの動作電位を設定する動作点設定回路と、分離トランジスタのコレクタに接続される分離抵抗素子と、を有するものである。
【0018】
この構成を採用すれば、発光ダイオードを発光させるときのアノードの電圧変化により、分離回路から出力される電圧信号が変化し難くなるようにすることができる。分離抵抗素子の電圧変化に基づいて分離回路から出力される電圧信号を、発光ダイオードに入射される光に応じて変化する信号とすることができる。
【0019】
本発明に係るデータ通信装置は、上述した発明の各構成に加えて、分離回路が、分離トランジスタのベースにコレクタが接続され且つベースが直流除去コンデンサに接続される増幅トランジスタと、分離抵抗素子の電圧から高周波成分を除去するローパスフィルタ回路と、を有するものである。
【0020】
この構成を採用すれば、送信回路が発光ダイオードに順バイアスに印加する期間と、発光ダイオードがデータに基づく光信号を受光する期間とが重なったりあるいは連続したりして、分離回路に入力される光信号に基づくパルス幅が狭くなったりしたとしても、分離回路は、そのような影響が無い場合と同等の電圧信号を出力することが可能となる。
【0021】
本発明に係るデータ通信装置は、上述した発明の各構成に加えて、ローパスフィルタ回路が、送信回路が発光ダイオードに順バイアスを印加する周期とは異なる周期の周波数成分を通過させるものである。
【0022】
この構成を採用すれば、発光ダイオードを用いてデータを送受信する2つのデータ通信装置において、互いに異なる周波数の光信号によりデータを送受することができる。また、2つのデータ通信装置が互いに異なる周波数の光信号によりデータを送受することで、光信号の位相が完全に一致し続けてしまうことがなくなる。
【0023】
本発明に係るデータ通信装置は、上述した発明の各構成に加えて、分離回路の出力電圧の波形と、発光ダイオードに順バイアスを印加するための発光制御信号の波形とを比較し、これらが不一致である場合には、エラー信号を出力する差動オペアンプを有するものである。
【0024】
この構成を採用すれば、たとえば、送信回路の制御に基づいて発光ダイオードから出力される光信号を受信した他のデータ通信装置がその受信データに基づく光信号を返送することで、データを送信するデータ通信装置は、データが正しく当該他のデータ通信装置へ送信されているか否かを、データの送信をしながら判断することが可能となる。
【0025】
本発明に係るデータ通信装置は、上述した発明の各構成に加えて、発光ダイオードが、可視光を発光するものである。
【0026】
この構成を採用すれば、可視光を発光する発光ダイオードを用いて、データの送受信が可能となる。
【0027】
本発明に係る他のデータ通信装置は、通電により可視光を出力する発光ダイオードと、発光ダイオードを発光させるために発光ダイオードに順バイアスを印加する表示回路と、発光ダイオードに順バイアスが印加されていないときの発光ダイオードに発生する電圧に応じて変化する電圧を出力する分離回路と、を有し、表示回路によって発光ダイオードを発光し、分離回路によって発光ダイオードが受信した光をデータとして取り出すものである。
【0028】
この構成を採用すれば、発光ダイオードを発光させ、その発光が制御される発光ダイオードに入力される光信号に対応する電圧信号を生成することができる。したがって、可視光の発光が制御される発光ダイオードを用いて、データを受信することができるので、データ通信装置を小型化できる。
【0029】
本発明に係る電子機器は、上述した発明の各構成に係るデータ通信装置と、このデータ通信装置によるデータ通信を制御する制御手段と、を有するものである。
【0030】
この構成を採用すれば、電子機器は、発光が制御される発光ダイオードを用いて、データを受信することができる。このため、電子機器を小型化できる。
【0031】
本発明に係る電子機器は、上述した発明の構成に加えて、電子機器が、人が手に持って振ることで残像を形成する残像形成具、表示パネル装置、電子ロック装置、キーユニット、放送受信機、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、照明機器、冷暖房機器、給湯機器、電子レンジ、カメラ、家電機器、自動車、オートバイ、携帯電話端末、携帯情報機器、携帯ゲーム機器および評価ボードの中から選択された1つの装置であるものである。
【0032】
この構成を採用すれば、各種の電子機器において、発光ダイオードを用いてデータ受信が可能となり、装置の小型化が可能となる。
【発明の効果】
【0033】
本発明では、発光が制御される発光ダイオードを用いて、データを受信することができるので、装置を小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態に係るデータ通信装置および電子機器を、図面に基づいて説明する。データ通信装置は、電子機器の一部として説明する。
【0035】
なお、実施の形態1および2は、データ通信機能を有する汎用的な電子機器の例で説明する。実施の形態3は、バーサライタを電子機器の1つの具体例として説明する。実施の形態4は、表示パネル装置を電子機器の1つの具体例として説明する。
【0036】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るデータ通信機能を有する電子機器を示す構成図である。電子機器は、マイクロコンピュータ1を有する。マイクロコンピュータ1は、入力端子2と、出力端子3とを有する。入力端子2および出力端子3は、マイクロコンピュータ1の入出力ポート4に接続される。
【0037】
入出力ポート4は、設定されたデジタル値に応じた電圧レベルを出力する。具体的にはたとえば、入出力ポート4は、デジタル値「0」が設定されると、出力端子3をグランド電位に制御し、デジタル値「1」が設定されると、出力端子3を電源電位に制御する。また、入出力ポート4は、入力端子2の電圧レベルに応じたデジタル値を出力する。具体的にはたとえば、入出力ポート4は、入力端子2がグランド電位である場合、デジタル値「0」を出力し、入力端子2が電源電位である場合、デジタル値「1」を出力する。
【0038】
また、マイクロコンピュータ1には、制御手段の一部としての送信制御部5と、制御手段の一部としての受信制御部6と、が実現される。送信制御部5は、データを送信するために所定の通信手順にて入出力ポート4へデジタル値を設定する。受信制御部6は、入出力ポート4が出力するデジタル値を読み込み、所定の通信手順に基づいてこれを解読し、受信データを生成する。
【0039】
なお、この送信制御部5と受信制御部6とは、マイクロコンピュータ1内の図示外のメモリに記憶される通信制御プログラムを、図示外の中央処理装置が実行することにより実現される。通信制御プログラムは、電子機器の出荷前に予めマイクロコンピュータ1の当該メモリに書き込まれていても、電子機器の出荷後にユーザなどによりマイクロコンピュータ1の当該メモリに書き込まれていてもよい。また、出荷後にマイクロコンピュータ1のメモリに通信制御プログラムを書き込む場合、その通信制御プログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶されているものを当該マイクロコンピュータ1で読み込んだり、あるいは、電気通信回線などの伝送媒体を介して当該マイクロコンピュータ1によりサーバなどからダウンロードしたりしたものであってもよい。
【0040】
また、電子機器は、マイクロコンピュータ1の他に、1つの発光ダイオード11と、並列コンデンサ12と、送信回路13と、分離回路14と、を有する。
【0041】
発光ダイオード11は、P型半導体とN型半導体が接合された構造を有するものであり、P型半導体側のアノードの電位がN型半導体側のカソードの電位より高くなる順バイアスが印加されると、発光する。発光ダイオード11は、逆バイアスあるいはバイアスが印加されていない状態では、消灯する。なお、この実施の形態では、発光ダイオード11は、赤外線を出力する。
【0042】
また、発光ダイオード11は、そのPN接合部に光が入射すると、光励起現象により、PN接合部付近において正孔と電子とが分離生成される。光励起現象により生成された正孔は、アノード側へ拡散し、P型半導体に蓄積される。光励起現象により生成された電子は、カソード側へ拡散し、N型半導体に蓄積される。この正孔と電子の生成分離により、発光ダイオード11には、電流が流れる。
【0043】
並列コンデンサ12は、発光ダイオード11に並列に接続される。並列コンデンサ12の一端は、発光ダイオード11のアノードに接続され、且つ、他端はカソードに接続される。
【0044】
発光ダイオード11のカソードおよび並列コンデンサ12の一端は、マイクロコンピュータ1の出力端子3に接続される。
【0045】
送信回路13は、PNPトランジスタ21と、第一抵抗素子22と、第二抵抗素子23と、保護抵抗素子24と、を有する。
【0046】
PNPトランジスタ21は、エミッタの電位よりベースの電位が所定の電圧以上低くなると、オン状態になり、エミッタからコレクタへ電流が流れる。PNPトランジスタ21のエミッタは、電源に接続される。PNPトランジスタ21のコレクタは、保護抵抗素子24の一端に接続される。保護抵抗素子24の他端は、発光ダイオード11のアノードおよび並列コンデンサ12の他端に接続される。
【0047】
PNPトランジスタ21のベースは、第一抵抗素子22の一端と、第二抵抗素子23の一端とに接続される。第一抵抗素子22の他端は、電源に接続される。第二抵抗素子23の他端は、発光ダイオード11のカソードおよび並列コンデンサ12の一端とともに、マイクロコンピュータ1の出力端子3に接続される。
【0048】
このように送信回路13が接続されると、マイクロコンピュータ1の出力端子3がたとえば電源電位であるときには、PNPトランジスタ21のベースの電位は、エミッタの電位と略等しくなり、PNPトランジスタ21は、オフ状態となる。このとき、PNPトランジスタ21のエミッタからコレクタへ電流は流れない。よって、発光ダイオード11は、消灯する。
【0049】
逆に、マイクロコンピュータ1の出力端子3がたとえばグランド電位であると、第一抵抗素子22および第二抵抗素子23に電流が流れる。PNPトランジスタ21のベースの電位は、電源電圧をこの第一抵抗素子22および第二抵抗素子23の抵抗値比にて分圧した電位となる。これによって、PNPトランジスタ21は、オン状態となり、PNPトランジスタ21のエミッタからコレクタへ電流が流れる。この電流は、発光ダイオード11および並列コンデンサ12を介して、マイクロコンピュータ1の出力端子3へ流れる。発光ダイオード11は、点灯する。
【0050】
発光ダイオード11は、マイクロコンピュータ1の出力端子3がグランド電位であるときには、点灯し、出力端子3が電源電位であるときには、消灯する。すなわち、発光ダイオード11は、マイクロコンピュータ1により発光が制御可能となる。
【0051】
分離回路14は、直流除去コンデンサ31と、増幅回路32と、一対の抵抗素子の中の一方および動作点設定回路としての第三抵抗素子33と、一対の抵抗素子の中の他方および動作点設定回路としての第四抵抗素子34と、分離トランジスタ35と、分離抵抗素子36と、ローパスフィルタ回路37と、出力回路38と、を有する。
【0052】
直流除去コンデンサ31の一端は、発光ダイオード11のアノードに接続される。
【0053】
分離トランジスタ35は、NPNトランジスタである。NPNトランジスタは、ベースの電位がエミッタの電位より所定の電圧以上高くなると、オン状態になり、コレクタからエミッタへ電流が流れる。分離トランジスタ35のエミッタは、グランドに接続される。分離トランジスタ35のコレクタは、分離抵抗素子36の一端に接続される。分離抵抗素子36の他端は、電源に接続される。
【0054】
分離トランジスタ35のベースは、第三抵抗素子33の一端と、第四抵抗素子34の一端とに接続される。第三抵抗素子33の他端は、電源に接続される。第四抵抗素子34の他端は、グランドに接続される。したがって、分離トランジスタ35のベースの電位は、電源電圧を、第三抵抗素子33の抵抗値と第四抵抗素子34の抵抗値との比で分割した電位となる。分離トランジスタ35がオン状態となると、分離トランジスタ35のベース−エミッタ間電圧は固定されているので、分離トランジスタ35には、ベース電流に応じたコレクタ電流が流れる。このとき、分離トランジスタ35は、電流増幅モードで動作する。
【0055】
増幅回路32は、増幅トランジスタ41と、第五抵抗素子42と、第六抵抗素子43と、第七抵抗素子44と、第一コンデンサ45と、第八抵抗素子46と、を有する。
【0056】
増幅トランジスタ41は、NPNトランジスタである。増幅トランジスタ41のコレクタには、第五抵抗素子42の一端と、第六抵抗素子43の一端と、第八抵抗素子46の一端とが接続される。第八抵抗素子46の他端は、分離トランジスタ35のベースに接続される。
【0057】
また、第五抵抗素子42の他端は、電源に接続される。第六抵抗素子43の他端は、直流除去コンデンサ31の他端に接続される。また、第六抵抗素子43の他端は、増幅トランジスタ41のベースに接続される。増幅トランジスタ41のエミッタには、第七抵抗素子44の一端と、第一コンデンサ45の一端とが接続される。第七抵抗素子44の他端と、第一コンデンサ45の他端とは、グランドに接続される。
【0058】
分離トランジスタ35のベース電位は、所定の電位となっている。直流除去コンデンサ31に電流が流れない定常状態では、直流除去コンデンサ31の他端の電位は、分離トランジスタ35のベース電位と略等しい電位となる。
【0059】
直流除去コンデンサ31から増幅トランジスタ41のベースへ向かう電流が流れると、増幅トランジスタ41のベース電流が増加し、コレクタ電流が増加し、第五抵抗素子42の増幅トランジスタ41側の端子電位が下がる。その結果、第八抵抗素子46には、分離トランジスタ35側から増幅トランジスタ41側へ向かう電流が流れる。第八抵抗素子46に流れる電流は、直流除去コンデンサ31から増幅トランジスタ41のベースへ向かう電流に比べて大きい。
【0060】
第八抵抗素子46に分離トランジスタ35側から増幅トランジスタ41側へ向かう電流が流れると、その分、分離トランジスタ35のベース電流が減少する。分離トランジスタ35のコレクタ電流も減少する。その結果、分離抵抗素子36に発生する電圧は減少する。
【0061】
つまり、直流除去コンデンサ31から分離トランジスタ35のベースへ向かう電流が流れると、増幅トランジスタ41により増幅した電流が分離トランジスタ35側から増幅トランジスタ41側に向かって第八抵抗素子46に流れ、分離トランジスタ35のコレクタ電流が減少し、分離抵抗素子36に発生する電圧が減少し、分離トランジスタ35のコレクタ電圧が上昇する。
【0062】
逆に、増幅トランジスタ41のベースから直流除去コンデンサ31へ向かう電流が流れると、増幅トランジスタ41のベース電流が減少し、コレクタ電流も減少する。この結果、第五抵抗素子42の電圧は小さくなり、増幅トランジスタ41のコレクタ電位は、上昇する。よって、第五抵抗素子42の増幅トランジスタ41側の端子電位は上がる。その結果、第八抵抗素子46には、増幅トランジスタ41側から分離トランジスタ35側へ向かう電流が流れる。
【0063】
第八抵抗素子46に増幅トランジスタ41側から分離トランジスタ35側へ向かう電流が流れると、その分、分離トランジスタ35のベース電流は、増加する。しかしながら、分離トランジスタ35は、定常状態において既にオン状態にあり、コレクタ電圧は0Vになっている。したがって、分離トランジスタ35のコレクタ電流が増加しても、コレクタ電圧は0Vのまま変化しない。
【0064】
このように、分離トランジスタ35のコレクタに発生する電圧は、直流除去コンデンサ31から増幅トランジスタ41のベースへ向かう電流が流れるときには、定常状態における電圧0Vから上昇し、有限電圧が発生する。逆に、増幅トランジスタ41のベースから直流除去コンデンサ31へ向かう電流が流れるときには、定常電圧0Vを維持する。
【0065】
分離抵抗素子36が接続されるローパスフィルタ回路37は、フィルタダイオード51と、フィルタコンデンサ52と、フィルタ抵抗素子53とを有する。フィルタダイオード51のアノードは、分離トランジスタ35のコレクタおよび分離抵抗素子36の一端に接続される。フィルタダイオード51のカソードは、フィルタコンデンサ52の一端と、フィルタ抵抗素子53の一端とに接続される。フィルタコンデンサ52の他端と、フィルタ抵抗素子53の他端とは、グランドに接続される。
【0066】
出力回路38は、出力トランジスタ61と、出力抵抗素子62と、第九抵抗素子63と、第十抵抗素子64と、を有する。出力トランジスタ61は、NPNトランジスタである。出力トランジスタ61のコレクタは、出力抵抗素子62の一端と、マイクロコンピュータ1の入力端子2とに接続される。出力抵抗素子62の他端は、電源に接続される。出力トランジスタ61のエミッタは、グランドに接続される。
【0067】
出力トランジスタ61のベースには、第九抵抗素子63の一端と、第十抵抗素子64の一端と、が接続される。第九抵抗素子63の他端は、フィルタダイオード51のカソードに接続される。第十抵抗素子64の他端は、グランドに接続される。
【0068】
分離抵抗素子36に発生する電圧が減少して分離トランジスタ35のコレクタ電位が上昇すると、フィルタダイオード51のカソードの電位も追従して上昇する。また、分離抵抗素子36に発生する電圧が増加して分離トランジスタ35のコレクタ電位が降下すると、フィルタダイオード51のカソードの電位も追従して降下する。
【0069】
フィルタダイオード51のカソードと、グランドとの間には、フィルタコンデンサ52と、フィルタ抵抗素子53とが並列に接続される。フィルタコンデンサ52およびフィルタ抵抗素子53は、ローパスフィルタとして機能する。したがって、出力トランジスタ61のベース電位は、フィルタダイオード51のアノードの電位変化から、高周波成分を除いた電位変化となる。
【0070】
出力トランジスタ61は、ベース−エミッタ間電圧が所定の電位差以上になると、オン状態となる。出力トランジスタ61がオン状態になると、出力抵抗素子62に電圧が発生し、マイクロコンピュータ1の入力端子2の電位は、下がる。
【0071】
次に、以上の構成を有する実施の形態1に係る電子機器の発光動作および受光動作を、全二重データ通信を例として説明する。
【0072】
図2は、図1の電子機器を全二重データ通信動作をさせた場合の信号波形を示すタイミングチャートである。波形aは、マイクロコンピュータ1の出力端子3の電位の波形であり、波形bは、通信相手側となる他の電子機器から放射され、発光ダイオード11に入射する発光信号波形である。波形cは、増幅トランジスタ41のコレクタ電位の波形である。波形dは、分離トランジスタ35のコレクタ電位の波形である。波形eは、第九抵抗素子63の一端の電位の波形である。波形fは、マイクロコンピュータ1の入力端子2の波形である。
【0073】
送信データに基づいて発光ダイオード11を発光させる場合、マイクロコンピュータ1に実現される送信制御部5は、1つの送信データ毎に、出力端子3から、たとえば38kHzで変調される複数のパルスからなるパルス列を出力する。これにより、マイクロコンピュータ1の出力端子3の電位は、図2の波形aに示すように変化する。なお、パルス列の全体の長さは、たとえば600マイクロ秒程度であればよい。このような仕様とすることで、電子機器とそのリモコンユニットとの間の赤外線通信と同様の通信が可能となる。
【0074】
各パルスにより、マイクロコンピュータ1の出力端子3がハイレベル(たとえば電源電位)からローレベル(たとえばグランド電位)へ変化すると、PNPトランジスタ21の動作状態がオフ状態からオン状態へ変化し、このPNPトランジスタ21のコレクタ電流により発光ダイオード11は、点灯する。発光ダイオード11には、送信データに基づく順バイアスが間欠的に印加される。
【0075】
また、マイクロコンピュータ1の出力端子3がローレベル(たとえばグランド電位)からハイレベル(たとえば電源電位)へ変化すると、PNPトランジスタ21の動作状態がオン状態からオフ状態へ変化し、発光ダイオード11は、消灯する。
【0076】
このように、電子機器は、送信データに基づいて、発光ダイオード11をパルス駆動により点滅させることができる。よって、電子機器は、発光ダイオード11をパルス駆動により点滅させることで、他の電子機器へ、送信データに基づく送信信号を無線送信することができる。
【0077】
図2の波形bに示すように、他の電子機器からのパルス駆動による光信号が発光ダイオード11へ入射されると、発光ダイオード11には、そのPN接合部付近における正孔と電子との分離生成により、アノード側にブラス電位(正孔)、カソード側にマイナス電位(電子)が蓄積される。発光ダイオード11に回路を接続すると、アノード側より電流が流れる。なお、この図2の波形bにおいて、光信号の周波数はたとえば19kHzである。
【0078】
発光ダイオード11で発生した電流は、直流除去コンデンサ31を介して増幅トランジスタ41のベース側へ流れる。また、その電流は増幅トランジスタ41により増幅されその増幅された電流は分離トランジスタ35側から増幅トランジスタ41側に向かって第八抵抗素子46に流れる。すると、分離トランジスタ35のコレクタ電流が減少し、分離抵抗素子36に発生する電圧が大きく減少する。分離トランジスタ35のコレクタ電圧は上昇する。
【0079】
したがって、出力トランジスタ61のベース電位は、この分離トランジスタ35のコレクタ電位の上昇に追従して上昇し、出力トランジスタ61は、オフ状態からオン状態となる。よって、出力抵抗素子62に電圧が発生し、マイクロコンピュータ1の入力端子2の電位は、下がる。
【0080】
また、図2の波形bに示すように、発光ダイオード11に光信号が入射されなくなると、発光ダイオード11と増幅トランジスタ41のベースとの間に電流は流れなくなる。増幅トランジスタ41および分離トランジスタ35は、定常状態に戻る。分離抵抗素子36に発生する電圧は、オン状態にある分離トランジスタ35のコレクタ電流による電圧を発生する。分離トランジスタ35のコレクタ電位は、定常状態に戻る。
【0081】
したがって、出力トランジスタ61のベース電位は、この定常状態における分離トランジスタ35のコレクタ電位まで降下する。出力トランジスタ61は、オン状態からオフ状態となり、出力抵抗素子62に電圧が発生しなくなる。また、マイクロコンピュータ1の入力端子2の電位は、上がる。
【0082】
マイクロコンピュータ1の受信制御部6は、入出力ポート4から入力端子2の電位レベルに応じたデジタル値を取得する。これにより、受信制御部6は、他の電子機器からの光信号に基づくデータを無線受信することができる。
【0083】
なお、送信制御部5が出力端子3をパルス駆動している最中に、発光ダイオード11にパルス列による光信号が入射された場合、図2に示すように、送信制御部5が出力端子3をローレベルに制御する期間と次のローレベル制御期間との間の、送信制御部5が出力端子3をローレベルに制御しない期間が、受光信号と重なる状態が発生する。
【0084】
この無制御期間において発光ダイオード11に光信号が入射され、重なり状態が発生すると、発光ダイオード11にはその光信号に応じた電流が流れる。また、分離抵抗素子36の電圧は、光信号の入射により減少する。出力トランジスタ61は、オン状態となり、出力抵抗素子62に電圧が発生する。
【0085】
また、発光ダイオード11に流れる電流は増幅トランジスタ41により増幅され、分離抵抗素子36の電圧は、その増幅された電流にしたがって変化する。分離抵抗素子36と出力トランジスタ61との間には、ローパスフィルタ回路37が配設される。したがって、送信制御部5が出力端子3をパルス駆動している最中の無制御期間において発光ダイオード11に光信号が入射された場合であっても、出力抵抗素子62の電圧は、送信制御部5が出力端子3をパルス駆動していない期間と同様にデジタル的に変化する。
【0086】
その結果、受信制御部6は、送信制御部5が通信データに基づいて発光ダイオード11を点滅制御している期間において、他の電子機器からの光信号に基づくデータを無線受信することができる。電子機器は、他の電子機器との間で、全二重データ通信が可能となる。なお、半二重データ通信も可能である。
【0087】
また、この実施の形態1では、図2に示すように、送信制御部5が発光ダイオード11の点滅制御する周波数は38kHzであり、他の電子機器から受光する光信号の周波数は19kHzである。このように、互いに通信する2つの電子機器において、光信号の周波数を互いに異なるものとすることには、以下の意味がある。
【0088】
すなわち、送信制御部5が出力端子3をパルス駆動によりハイレベルとローレベルとの間で切り換えるとき、発光ダイオード11のアノードの電位は、その制御により変動する。その結果、図2の波形cに示すように、増幅トランジスタ41のコレクタ電位は、定常状態のレベルと、それよりも高い電圧レベルとの間で変動する。図2の波形dに示すように、この増幅トランジスタ41のコレクタ電位の変動により、分離抵抗素子36に発生する電圧は殆ど変動しないものの、発光ダイオード11を発光させている期間においては、分離抵抗素子36に発生する電圧は、発光ダイオード11か受光する光信号に応じたレベルとはならない。
【0089】
そして、互いに通信する2つの電子機器においてパルスの周期が一致している場合、それらの位相が完全に一致してしまうと、発光ダイオード11は他の電子機器からの光信号を受光しているにもかかわらず、分離抵抗素子36の電圧が、その受光した光信号に応じて変化しなくなってしまう。つまり、受光する光信号に基づく分離抵抗素子36の電圧変化をまったく得られなくなってしまう。
【0090】
これに対して、この実施の形態1のように、互いに通信する2つの電子機器において、光信号の周波数を互いに異なるものとすることで、図2に示すように、他の電子機器からの光信号に基づく分離抵抗素子36の電圧変化を必ず得ることができるようになる。
【0091】
また、上述したように、発光ダイオード11に流れる電流は増幅トランジスタ41により増幅され、分離抵抗素子36の電圧は、その増幅された電流にしたがって変化する。分離抵抗素子36と出力トランジスタ61との間には、ローパスフィルタ回路37が配設される。したがって、発光ダイオード11を発光させている期間と、発光ダイオード11に光信号が入射される期間とが一致し、その結果として図2の波形dに示すように、受光信号に基づく分離抵抗素子36の電圧変化が部分的に得られないような場合であっても、出力抵抗素子62の出力電圧として、そのような欠損がない場合と同様の電圧波形を出力することができる。
【0092】
なお、互いに通信する2つの電子機器において一方のパルスの周波数を1とした場合、他方のパルスの周波数を0.5〜1.5倍とするのが好ましく、さらに0.75〜1.25倍とするのが更に好ましい。
【0093】
また、この実施の形態1では、発光ダイオード11には、並列コンデンサ12が並列に接続されている。発光ダイオード11は、それに印加される電圧が順方向から逆方向へ切り換えられた後、短時間、少数キャリア蓄積効果による電流が流れる。この電流は、発光ダイオード11のカソードからアノードに向かう向きである。
【0094】
並列コンデンサ12が無い場合、この発光ダイオード11に流れる少数キャリア蓄積効果による電流は、直流除去コンデンサ31を介して増幅トランジスタ41のベース側へ流れる。その結果、発光ダイオード11に光信号に基づく電流が流れる場合と同様に、分離抵抗素子36に発生する電圧が減少してしまう。分離抵抗素子36に発生する電圧は、発光ダイオード11が光信号を受信していないときであっても、発光ダイオード11が光信号を受信したときと同様に変化してしまう。
【0095】
しかし、発光ダイオード11に並列に並列コンデンサ12を接続すると、発光ダイオード11に流れる少数キャリア蓄積効果による短時間の電流は、発光ダイオード11と並列コンデンサ12とで構成されるループ内を流れる。その結果、発光ダイオード11が光信号を受信していないときに、分離抵抗素子36に発生する電圧が、発光ダイオード11が光信号を受信したときと同様に変化してしまわないようにすることができる。
【0096】
以上のように、この実施の形態1によれば、1つの発光ダイオード11を送信データに基づいて発光させ、且つ、その発光ダイオード11に入射する光信号に基づくデータを受信することができる。よって、装置を小型化できる。また、全二重データ通信および半二重データ通信が可能である。
【0097】
なお、半二重データ通信の場合、送信データに基づいて発光ダイオード11を発光させる期間と、発光ダイオード11に受信データに基づく光信号が入射される期間とが重なることはない。そのため、たとえば分離回路14を直流除去コンデンサ31、第三抵抗素子33、第四抵抗素子34および分離トランジスタ35のみの構成としたり、ローパスフィルタ回路37をなくしたりした簡便な構成とすることも可能である。
【0098】
実施の形態2.
図3は、本発明の実施の形態2に係るデータ通信機能を有する電子機器を示す構成図である。実施の形態2に係る電子機器は、送信データが正しく送信されているか否かを判断する機能を有する。
【0099】
マイクロコンピュータ1は、入力端子2および出力端子3に加えて、他の入力端子7を有する。マイクロコンピュータ1には、送信制御部5および受信制御部6に加えて、エラー判断部8が実現される。
【0100】
また、電子機器は、擬似受信信号生成回路15と、比較回路16と、を有する。
【0101】
擬似受信信号生成回路15は、擬似入力段回路71と、擬似ローパスフィルタ回路72と、擬似出力回路73と、を有する。
【0102】
擬似入力段回路71は、入力段トランジスタ81と、第十一抵抗素子82と、第十二抵抗素子83と、入力段抵抗素子84と、を有する。入力段トランジスタ81は、NPNトランジスタである。入力段トランジスタ81のベースには、第十一抵抗素子82の一端と、第十二抵抗素子83の一端とが接続される。第十一抵抗素子82の他端は、マイクロコンピュータ1の出力端子3に接続される。第十二抵抗素子83の他端は、入力段トランジスタ81のエミッタとともにグランドに接続される。入力段トランジスタ81のコレクタには、入力段抵抗素子84の一端が接続される。入力段抵抗素子84の他端は、電源に接続される。
【0103】
擬似ローパスフィルタ回路72は、擬似フィルタダイオード91と、擬似フィルタコンデンサ92と、擬似フィルタ抵抗素子93と、を有する。擬似フィルタダイオード91のアノードは、入力段トランジスタ81のコレクタに接続される。擬似フィルタダイオード91のカソードには、擬似フィルタコンデンサ92の一端と、擬似フィルタ抵抗素子93の一端とが接続される。擬似フィルタコンデンサ92の他端と、擬似フィルタ抵抗素子93の他端は、グランドに接続される。
【0104】
擬似出力回路73は、擬似出力トランジスタ101と、擬似出力抵抗素子102と、第十三抵抗素子103と、第十四抵抗素子104とを有する。擬似出力トランジスタ101は、NPNトランジスタである。擬似出力トランジスタ101のコレクタは、擬似出力抵抗素子102の一端に接続される。擬似出力抵抗素子102の他端は、電源に接続される。擬似出力トランジスタ101のエミッタは、グランドに接続される。
【0105】
擬似出力トランジスタ101のベースには、第十三抵抗素子103の一端と、第十四抵抗素子104の一端と、が接続される。第十三抵抗素子103の他端は、擬似フィルタダイオード91のカソードに接続される。第十四抵抗素子104の他端は、グランドに接続される。
【0106】
比較回路16は、差動オペアンプ111と、第十五抵抗素子112と、第十六抵抗素子113と、第十七抵抗素子114と、第十八抵抗素子115と、を有する。
【0107】
差動オペアンプ111の非反転入力端子には、第十五抵抗素子112の一端と、第十六抵抗素子113の一端とが接続される。第十五抵抗素子112の他端は、擬似出力トランジスタ101のエミッタに接続される。第十六抵抗素子113の他端は、グランドに接続される。
【0108】
差動オペアンプ111の反転入力端子には、第十七抵抗素子114の一端と、第十八抵抗素子115の一端とが接続される。第十七抵抗素子114の他端は、出力トランジスタ61のエミッタに接続される。第十八抵抗素子115の他端は、差動オペアンプ111の出力に接続される。差動オペアンプ111の出力は、マイクロコンピュータ1の他の入力端子7に接続される。
【0109】
エラー判断部8は、他の入力端子7の入力電圧レベルに応じて入出力ポート4が出力するデジタル値を取得する。エラー判断部8は、このデジタル値に基づいて、エラーを判断する。
【0110】
上述した以外の構成要素は、実施の形態1の同名の構成要素と同じ機能を有するものであり、実施の形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0111】
次に、以上の構成を有する実施の形態2に係る電子機器の動作を説明する。
【0112】
図4は、図3の電子機器を全二重データ通信動作をさせた場合の一部の信号波形を示すタイミングチャートである。波形aは、マイクロコンピュータ1の出力端子3の電位の波形である。波形bは、この電子機器から送信されたデータを他の電子機器が受信し、その受信したデータを送り返すことで発光ダイオード11に入射する光信号の発光信号波形である。波形cは、エラーを含む増幅トランジスタ41のコレクタ電位の波形である。波形fは、マイクロコンピュータ1の入力端子2の波形である。波形gは、擬似受信信号生成回路15の出力電圧波形である。hは、差動オペアンプ111の出力電圧波形である。
【0113】
マイクロコンピュータ1に実現される送信制御部5が、出力端子3から、たとえば38kHzで変調される複数のパルスからなるパルス列を出力すると、発光ダイオード11は、それに追従して点滅する。
【0114】
また、擬似受信信号生成回路15の入力段トランジスタ81は、マイクロコンピュータ1の出力端子3がハイレベルになるとオン状態になり、出力端子3がローレベルになるとオフ状態になる。入力段トランジスタ81のオン状態とオフ状態との間での切替に基づいて、入力段抵抗素子84により擬似フィルタダイオード91のアノードの電位は、ハイレベルとローレベルとの間で切り替わる。
【0115】
擬似フィルタダイオード91のカソードと擬似出力回路73との間には、擬似フィルタコンデンサ92と、擬似フィルタ抵抗素子93とによるローパスフィルタが接続される。したがって、擬似出力トランジスタ101のベース電位は、擬似フィルタダイオード91のアノードの電位変化から、高周波成分を除いた電位変化となる。
【0116】
擬似フィルタダイオード91が、そのベース電位の変化によりオン状態とオフ状態との間で切り替わると、擬似受信信号生成回路15から出力される電圧は、図4の波形gに示すように変化する。
【0117】
差動オペアンプ111には、この擬似受信信号生成回路15の出力電圧と、出力回路38の出力電圧とが入力される。差動オペアンプ111は、擬似受信信号生成回路15の出力電圧を基準として、出力回路38の出力電圧の基準電圧に対する差分電圧が大きくなると、その出力の電圧をハイレベルに制御する。マイクロコンピュータ1の他の入力端子7には、この差動オペアンプ111の出力が入力される。
【0118】
したがって、図4の4番目のデータ波形(波形f)に示すように、他の電子機器が受信したデータを送り返す光信号に基づいて、出力回路38から出力される電圧波形fが本来の波形(波形gと同じ波形)とは異なるエラーを含んだ波形fmとなった場合、差動オペアンプ111の出力は、ローレベルからハイレベルに変化する。図4の6番目のデータ波形hに示すように、差動オペアンプ111の出力はハイレベルとなる。
【0119】
差動オペアンプ111の出力は、マイクロコンピュータ1の他の入力端子7に入力される。入出力ポート4は、他の入力端子7に入力される入力電圧に応じたデジタル値を出力する。エラー判断部8は、他の入力端子7の電圧に基づくデジタル値を取得し、エラーを判断する。
【0120】
以上のように、この実施の形態2によれば、送信回路13の制御に基づいて発光ダイオード11から出力される光信号を受信した他の電子機器がその受信データに基づく光信号を返送することで、データを送信する電子機器は、データが正しく当該他の電子機器へ送信されているか否かを、差動オペアンプ111の出力に基づいて、データの送信をしながら判断することができる。電子機器は、すべての送信データが相手側の他の電子機器に正しく受信されたか否かを、送信データ毎に判断することができる。これにより、通信状態の正確な検証が可能となり、送信したデータの信頼性を確保できる。
【0121】
なお、上記実施の形態2では、図4の波形fおよび波形gとは、位相が一致している。しかしながら、実際にはデータが電子機器間で行き来するのには時間がかかる。図3の構成のままでは、波形fは、帰ってきた受光信号に基づくものであり、発光信号に基づいて形成されるので、波形gより位相が遅れる。その場合、たとえばマイクロコンピュータ1の出力端子3から差動オペアンプ111の非反転入力端子までの間に、その波形fの遅延時間に相当する時間の遅延を生じさせる遅延素子を配設すればよい。この他にもたとえば、遅延素子の配設に加え、マイクロコンピュータ1において動作するエラー判断部8は、差動オペアンプ111の出力レベルが連続して所定の複数回にわたってハイレベルであることを確認したら、エラーと判断するようにしたり、あるいは、差動オペアンプ111の出力のサンプリングデータのハイレベルの連続回数がそれまでの連続回数とは異なる回数となったら、エラーと判断するようにしたりすればよい。
【0122】
また、上記実施の形態1および2では、発光ダイオード11として赤外線を発光するものを使用している。この他にもたとえば、発光ダイオード11には、赤色などの可視光を発光するものであってもよい。可視光発光ダイオードを使用した場合、さらに、その発光ダイオード11は、データの送受信の他に、装置の電源状態などを表示するものとして兼用したり、カメラのAF(Auto Focus)補助光を照射するものとして兼用したりすることができる。また、懐中電灯などで使用される発光ダイオードは、光を拡散して発光する特性を有するものがあり、そのような発光ダイオードを用いることで、互いに通信する2つの電子機器の通信時の相互位置に柔軟性を持たせたり、1つの電子機器が2つ以上の他の電子機器に対して同時にデータを送信したりすることが可能となる。
【0123】
特に、電子機器において、可視光発光ダイオードは殆ど必ず1個は使用されているので、その可視光発光ダイオードを通信用にも利用することで、電子機器の表面の占有面積を増やすことなく、安いコストで、光通信システムを構築することが可能になる。
【0124】
実施の形態3.
図5は、本発明の実施の形態3に係る電子機器の一種であるバーサライタの正面図である。図6は、図5のバーサライタの背面図である。図7は、バーサライタに内蔵される電子回路のブロック図である。バーサライタは、残像形成具の一種である。
【0125】
バーサライタの筐体121は、略棒形状を有する。筐体121の長手方向一端に、発光ダイオード11が配設される。また、筐体121の長手方向に沿って複数の表示LED(Light Emitting Diode)122が配列される。表示LED122は、たとえば赤色に発光する。バーサライタの筐体121には、さらに電源スイッチ123と、スキャンボタン124と、が配設される。
【0126】
電源スイッチ123は、電源OFF、表示モードの電源ON、スキャンモードの電源ONに切り替わる3接点スライドスイッチである。
【0127】
スキャンボタン124は、押下されることで接点が閉じるボタンスイッチである。
【0128】
バーサライタの筐体121内部には、図7に示す電子回路が内蔵される。電子回路は、マイクロコンピュータ1を有する。マイクロコンピュータ1には、送信制御部5および受信制御部6の他に、モード判断部131、メモリ132、通信制御部133、読込制御部134、発光制御部135などが実現される。また、マイクロコンピュータ1には、電源スイッチ123、スキャンボタン124、送信回路13、発光ダイオード11、並列コンデンサ12、分離回路14、受光回路137、発光回路138、マルチプレクサ139などが接続される。
【0129】
なお、送信回路13、発光ダイオード11、並列コンデンサ12、分離回路14、送信制御部5および受信制御部6は、実施の形態1の同名の構成要素と同じ機能を有するものであり、実施の形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0130】
メモリ132は、複数の表示LED122の発光制御に使用する画像データを記憶する。
【0131】
通信制御部133は、送信制御部5および受信制御部6の動作を管理し、メモリ132に記憶されている画像データを送信制御部5に送信させたり、受信制御部6が受信したデータを画像データとしてメモリ132に記憶させたりする。
【0132】
マルチプレクサ139は、複数の表示LED122に接続される。マルチプレクサ139は、マイクロコンピュータ1からの選択信号に基づいて、各表示LED122を個別に選択する。マルチプレクサ139は、発光する表示LED122、あるいは受光する表示LED122を、マイクロコンピュータ1からの選択信号に基づいて選択する。
【0133】
発光回路138は、マルチプレクサ139により発光のために選択された表示LED122に対して順バイアスを印加する。これにより、マルチプレクサ139により発光のために選択された表示LED122は、発光する。
【0134】
受光回路137は、マルチプレクサ139により受光のために選択された1つの表示LED122の、受光光量に応じたデジタル値を出力する。
【0135】
読込制御部134は、入出力ポート4を介して、発光回路138、受光回路137、マルチプレクサ139を制御する。読込制御部134は、複数の表示LED122により画像を読込み、この画像に応じた画像データをメモリ132に保存する。
【0136】
発光制御部135は、入出力ポート4を介して、発光回路138、受光回路137、マルチプレクサ139を制御する。発光制御部135は、メモリ132に記憶される画像データに基づいて、バーサライタの振りに同期させて複数の表示LED122の発光を個別に制御する。
【0137】
モード判断部131は、電源スイッチ123およびスキャンボタン124の操作に基づいて、バーサライタの動作モードを判断する。バーサライタの動作モードには、発光モード、読込モード、送信モード、受信モードがある。
【0138】
読込モードは、複数の表示LED122により画像データを読み込むモードである。
【0139】
発光モードは、バーサライタの振りに合わせて、メモリ132に記憶される画像データに基づいて複数の表示LED122を発光させるモードである。
【0140】
送信モードは、メモリ132に記憶されている画像データを、発光ダイオード11から送信するモードである。
【0141】
受信モードは、発光ダイオード11が受信した光信号に基づく画像データを、メモリ132に保存するモードである。
【0142】
次に以上の構成を有する、実施の形態3に係るバーサライタの動作を説明する。以下、読込モード、発光モード、送信モード、受信モードの順番に説明する。
【0143】
モード判断部131は、電源スイッチ123がスキャンモードの電源ONである場合であって、且つ、スキャンボタン124がたとえば3秒以上連続して押下されたら、読込モードと判断し、読込制御部134に読込処理を指示する。読込制御部134は、画像の読込み処理を開始する。
【0144】
画像を読み込む場合、ユーザは、たとえば白地の紙に黒ペンで書いた文字(絵)の上に、バーサライタを置く。このとき、複数の表示LED122が紙面側(文字や絵などに向く方向)となるように置く。
【0145】
読込制御部134は、まず、たとえば発光ダイオード11に最も近い表示LED122を点灯させる選択信号をマルチプレクサ139へ出力する。これにより、選択された表示LED122は、点灯する。
【0146】
読込制御部134は、点灯させた表示LED122の隣の表示LED122を、受光回路137へ接続させる選択信号をマルチプレクサ139へ出力する。隣の表示LED122は、点灯する表示LED122の光が紙面にて反射された光を受光する。受光回路137は、隣の表示LED122の受光レベルに応じた値を有するデジタル値を出力する。
【0147】
読込制御部134は、受光回路137から出力されるデジタル値を読み込み、これをメモリ132に保存する。この保存終了後、読込制御部134は、点灯させた表示LED122を消灯する。これにより、メモリ132には画像データの1ピクセル分のデータが記憶される。
【0148】
最初の読み込みが完了すると、読込制御部134は、次に、先ほど読込みに使用した表示LED122を、発光回路138へ接続させ、さらにその隣の表示LED122を受光回路137へ接続させる選択信号をマルチプレクサ139へ出力する。その後、読込制御部134は、受光回路137から出力されるデジタル値を読込み、これをメモリ132に保存する。この保存終了後、読込制御部134は、点灯させた表示LED122を消灯する。これにより、メモリ132には画像データの2ピクセル分のデータが記憶される。
【0149】
読込制御部134は、すべての表示LED122について上述した制御を表示LED122毎に順番に実行する。これにより、メモリ132には、複数の表示LED122の1列分の画像データが記憶される。また、読込制御部134は、この1列分の画像データの読込み処理を、繰り返し実行する。したがって、ユーザがバーサライタにより紙面をなぞるように移動させることで、メモリ132には、白地の紙に黒ペンで書いた文字(絵)に対応する画像データが保存される。
【0150】
モード判断部131は、たとえば、電源スイッチ123が表示モードの電源ONであるとき、発光モードと判断し、発光制御部135に発光処理を指示する。
【0151】
発光制御部135は、バーサライタが左あるいは右に振られ始めると、メモリ132から1列目の画像データを読込む。発光制御部135は、その1列目の画像データに基づいて、発光回路138に接続する表示LED122の選択信号をマルチプレクサ139へ出力する。これにより、選択された表示LED122が点灯する。
【0152】
また、発光制御部135は、バーサライタの振りに合わせて、2列目の画像データをメモリ132から読み込む。メモリ132から2列目の画像データを読み込んだら、発光制御部135は、その2列目の画像データに基づいて、発光回路138に接続する表示LED122の選択信号をマルチプレクサ139へ出力する。これにより、選択された表示LED122が点灯する。
【0153】
発光制御部135は、バーサライタの振りに合わせて、メモリ132からの1列分の画像データの読込み処理と、マルチプレクサ139への選択信号の出力処理とを、1列毎に順番に実行する。
【0154】
また、発光制御部135は、バーサライタの振り方向が変化したら、メモリ132から、前回とは逆の順番で1列毎の画像データの読込み処理と、マルチプレクサ139への選択信号の出力処理とを、1列毎に順番に実行する。
【0155】
これにより、複数の表示LED122は、バーサライタの振りに合わせて、点灯あるいは消灯する。複数の表示LED122は、画像データにしたがって点灯あるいは消灯する。その結果、バーサライタが触られている空間には、複数の表示LED122の点滅により、画像データに基づく残像が形成される。
【0156】
モード判断部131は、電源スイッチ123がスキャンモードの電源ONである場合であって、且つ、スキャンボタン124が3秒より短く操作されたら、送信モードと判断し、メモリ132に記憶されている画像データの送信処理を通信制御部133に指示する。
【0157】
送信モードであるとき、通信制御部133は、送信制御部5へ送信要求信号の送信を指示する。送信制御部5は、発光ダイオード11をパルス駆動により間欠的に発光させる。
【0158】
送信先の他のバーサライタは、その送信要求信号に基づく発光ダイオード11の光を受光すると、当該他のバーサライタの発光ダイオード11をパルス駆動により間欠的に発光させる。受信制御部6は、当該他のバーサライタの発光ダイオード11の発光に基づいて、送信が許可されたと判断し、それを通信制御部133へ通知する。なお、通信制御部133は、所定の期間、受信制御部6から送信許可通知が無い場合、送信処理を中断するようにしてもよい。
【0159】
送信が許可されると、通信制御部133は、まず、送信要求のためにパルス駆動により間欠的に点灯させていた発光ダイオード11を消灯させる。その後、通信制御部133は、メモリ132に記憶されている画像データの最初の1バイト分のピクセルデータを読み込む。通信制御部133は、読み込んだ1バイト分のピクセルデータを送信制御部5へ供給する。
【0160】
送信制御部5は、供給された1バイト分のピクセルデータの値に応じた所定のパターンにより発光ダイオード11を発光させ、供給された1バイト分のピクセルデータを送信する。
【0161】
図8は、図5のバーサライタと他のバーサライタとの間で画像データを送受する際に実行される通信シーケンスを示すタイミングチャートである。この図8の例では、送信制御部5は、(A)に示すように、調歩同期通信(非同期通信)によりデータを送信する。送信制御部5は、まずスタートビット“0”を送信し、続いて1バイト(8ビット)のピクセルデータを送信し、続いてストップビット“1”を送信する。
【0162】
他のバーサライタは、1バイトのピクセルデータを受信したら、(C)に示すように、送信禁止信号を送信する。具体的には、発光ダイオード11を消灯する。また、他のバーサライタは、受信した1バイトのピクセルデータをメモリ132に保存したら、発光ダイオード11をパルス駆動により間欠的に点灯させ、次の1バイトのピクセルデータの送信を許可する。
【0163】
通信制御部133は、この発光ダイオード11のパルス駆動による間欠的な点灯に基づいて受信制御部6から送信許可が通知されると、メモリ132に記憶されている画像データの次の1バイトのピクセルデータを読み込み、それを送信制御部5に送信させる。
【0164】
通信制御部133は、1バイトのピクセルデータ毎に、上述した画像データの送信処理を繰り返す。そして、メモリ132に記憶される1つの画像データのすべてのピクセルデータの送信が完了すると、通信制御部133は、送信制御部5へデータ転送終了信号の送信を指示する。送信制御部5は、発光ダイオード11を、データ転送終了を通知するための所定のパターンでパルス駆動により間欠的に発光させる。
【0165】
これにより、バーサライタは、発光ダイオード11を用いて、メモリ132に記憶される画像データを他のバーサライタへ送信することができる。
【0166】
モード判断部131は、電源スイッチ123がスキャンモードの電源ONである場合であって、且つ、スキャンボタン124が操作されないままに、他のバーサライタからの送信要求を意味する所定のパターンを受光すると、受信モードと判断し、通信制御部133に発光ダイオード11が受信した信号に基づく画像データをメモリ132に保存する処理を指示する。
【0167】
受信モードであるとき、通信制御部133は、図8(C)に示すように、まず、送信制御部5へ送信許可信号の送信を指示する。送信制御部5は、発光ダイオード11をパルス駆動により間欠的に発光させる。
【0168】
その後、受信制御部6は、所定の発光パターンの光を発光ダイオード11が受信したら、その受光パターンに応じた値を通信制御部133へ供給する。通信制御部133は、受信制御部6から図8(D)に示すように受光パターンに応じた値が供給されると、送信制御部5へ送信禁止信号の送信を指示し、送信する。送信制御部5は、発光ダイオード11を消灯させる。
【0169】
送信禁止信号の送信を指示した後、通信制御部133は、受信制御部6から供給された値をメモリ132に保存する。受信データのメモリ132への保存が終了すると、通信制御部133は、送信制御部5へ送信許可信号の送信を指示する。送信制御部5は、発光ダイオード11をパルス駆動により間欠的に発光させる。
【0170】
これにより、通信制御部133は、1バイト分のピクセルデータ毎に順番に、画像データを受信し、メモリ132に保存することができる。
【0171】
また、受信制御部6は、データ転送終了を意味する所定の発光パターンの光を発光ダイオード11が受信したら、データ転送終了を送信制御部5へ通知する。送信制御部5は、送信制御部5へ送信禁止信号の送信を指示する。送信制御部5は、発光ダイオード11を消灯させる。
【0172】
これにより、メモリ132には、発光ダイオード11により受信した1つの画像データが保存される。
【0173】
なお、送信制御部5は、受信したすべてのバイトデータを加算し、その演算結果を受信データのチェックサムデータとして、送信元のバーサライタへ送信するようにしてもよい。これにより、送信元のバーサライタは、画像データが正しく送信されたか否かを判断することができる。
【0174】
以上のように、この実施の形態3に係るバーサライタは、1つの発光ダイオード11を用いて、他のバーサライタとの間でメモリ132に保存される画像データを送受することができる。
【0175】
また、この実施の形態3に係るバーサライタは、図7に示すように、分離回路14と受光回路137とは同じ入力端子に接続されている。つまり、画像読込み時のマイクロコンピュータ1への画像データの入力と、画像データ受信時のマイクロコンピュータ1への画像データの入力とを共にシリアル入力とすることで、入力端子を共通化している。このため、マイクロコンピュータ1の必要ピン数を減らすことができる。
【0176】
なお、この実施の形態3では、バーサライタは、手でもって振ることで、画像データに基づく残像を形成するものである。この他にもたとえば、機械により自動的に振られたり、回転したりする残像形成具であってもよい。
【0177】
実施の形態4.
図9は、本発明の実施の形態4に係る電子機器の一種である表示パネル装置141と、それに付属する入力ペン142とを示す正面図である。図10は、表示パネル装置141の電子回路のブロック図である。
【0178】
表示パネル装置141は、複数の発光ダイオード11を有する。複数の発光ダイオード11は、たとえば8行×8列に縦横のマトリックス形状に配列されている。発光ダイオード11は、たとえば赤色の可視光を発光する。
【0179】
表示パネル装置141は、また、マイクロコンピュータ1を有する。マイクロコンピュータ1は、メモリ146を有する。メモリ146には、発光ダイオード11毎のビットデータからなる表示データを記憶する。マイクロコンピュータ1には、受信制御部6とともに、表示制御部147と、データ更新部148とが実現される。また、マイクロコンピュータ1には、表示回路149、発光ダイオード11、並列コンデンサ12、分離回路14などが、発光ダイオード11の数と同数接続される。表示回路149、並列コンデンサ12および分離回路14は、発光ダイオード11毎に設けられる。
【0180】
表示回路149は、PNPトランジスタ21と、第一抵抗素子22と、第二抵抗素子23と、保護抵抗素子24と、を有する。
【0181】
PNPトランジスタ21は、エミッタの電位よりベースの電位が低くなると、オン状態になり、エミッタからコレクタへ電流が流れる。PNPトランジスタ21のエミッタは、電源に接続される。PNPトランジスタ21のコレクタは、保護抵抗素子24の一端に接続される。保護抵抗素子24の他端は、発光ダイオード11のアノードおよび並列コンデンサ12の他端に接続される。
【0182】
PNPトランジスタ21のベースは、第一抵抗素子22の一端と、第二抵抗素子23の一端とに接続される。第一抵抗素子22の他端は、電源に接続される。第二抵抗素子23の他端は、発光ダイオード11のカソードおよび並列コンデンサ12の一端とともに、マイクロコンピュータ1の出力端子3に接続される。
【0183】
表示制御部147は、メモリ146に記憶される表示データに基づいて、複数の発光ダイオード11の点灯を制御する。
【0184】
データ更新部148は、受信制御部6が各発光ダイオード11の受光に基づいて出力する受信データに基づいて、その発光ダイオード11に対応するビットデータを更新する。
【0185】
なお、上述した以外の構成要素は、実施の形態1の同名の構成要素と同じ機能を有するものであり、実施の形態1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0186】
次に以上の構成を有する、実施の形態4に係る表示パネル装置の動作を説明する。
【0187】
表示制御部147は、メモリ146に記憶されている表示データを読み込む。表示制御部147は、表示データの中、発光ダイオード11の点灯に対応するビットデータとなっている出力端子3を間欠的にローレベルに制御する。
【0188】
出力端子3がローレベルに制御されると、表示回路149のPNPトランジスタ21は、オン状態となる。その結果、このPNPトランジスタ21のコレクタ電流により、発光ダイオード11は、発光する。出力端子3が間欠的にローレベルに制御されることで、発光ダイオード11は、間欠的に発光する。
【0189】
なお、出力端子3を、たとえば周波数38kHz、50%のデューティ比で間欠的にローレベルに制御すると、発光ダイオード11は間欠的に点灯しているにも拘らず、人の目には連続的に点灯しているように見える。
【0190】
図11は、表示パネル装置141の1つの発光ダイオード11と、入力ペン142との間で実行される通信手順を示すシーケンスである。
【0191】
入力ペン142は、発光ダイオード11と同一波長の可視光を出力する書込LED151と、ペン切替スイッチ152と、発光ボタン153とを有する。
【0192】
入力ペン142は、ペン切替スイッチ152により「ペン(書込み)」が選択されている状態で、発光ボタン153が操作されると、所定の書込みデータを送信する。入力ペン142は、たとえば「100」の書込みデータを2回連続して送信する。
【0193】
このような書込みデータに基づく光信号が入力されると、受信制御部6は、分離回路14の出力に基づいて書込みデータを生成する。受信制御部6により2つの書込みデータが連続して生成されると、データ更新部148は、メモリ146に記憶されている、その書込みのあった発光ダイオード11に対応するビットデータを、点灯を意味する値へ変更する。
【0194】
これにより、入力ペン142により書込みデータが書き込まれた発光ダイオード11は、点灯する。但し、実際には、発光ダイオード11は、間欠的に点灯するが、人の目には残像効果により常時点灯しているように見える。
【0195】
入力ペン142は、ペン切替スイッチ152により「消しゴム(消去)」が選択されている状態で、発光ボタン153が操作されると、所定の消去データを送信する。入力ペン142は、たとえば「011」の消去データを2回連続して送信する。
【0196】
このような消去データに基づく光信号が入力されると、受信制御部6は、分離回路14の出力に基づいて消去データを生成する。受信制御部6により2つの消去データが連続して生成されると、データ更新部148は、メモリ146に記憶されている、その書込みのあった発光ダイオード11に対応するビットデータを、消灯を意味する値へ変更する。
【0197】
これにより、入力ペン142により消去データが書き込まれた発光ダイオード11は、消灯する。
【0198】
以上のように、この実施の形態4に係る表示パネル装置141は、マトリックス状に配列された複数の発光ダイオード11のそれぞれに対して、入力ペン142を用いて書込みデータを書き込むことで、その書き込んだ発光ダイオード11を点灯させる。また、発光ダイオード11は点灯時には間欠的に点灯するので、その点灯期間に入力ペン142を用いて消去データを書き込むことで、その書き込んだ発光ダイオード11を消灯させることができる。
【0199】
表示パネル装置141の複数の発光ダイオード11は、1つずつ入力ペン142により自由に点灯させたり消灯させたりすることができる。つまり、表示パネル装置141上に入力ペン142を用いて自由に好きな文字や絵を描き、その描いた通りに複数の発光ダイオード11を点灯させることが可能となる。
【0200】
以上の各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0201】
上記実施の形態1および2では、電子機器の通信を例として説明している。上記実施の形態3では、残像形成具の一種であるバーサライタの通信を例として説明している。上記実施の形態4では、表示パネル装置と入力キーとの通信を例として説明している。
【0202】
この他にもたとえば、本発明は、ドアの開錠および施錠を制御する電子ロック装置や、それと組合せて使用されるキーユニットなどに適用し、それらの認証のための通信に適用することができる。図12は、本発明の実施の形態の変形例である電子ロック装置151と、キーユニット152とを示す説明図である。電子ロック装置151は、発光ダイオード11を有する。また、キーユニット152も、発光ダイオード11を有する。
【0203】
このような電子ロック装置151と、キーユニット152とは、たとえば図13に示すようにキー認証コードと、暗証番号コードとを送受すればよい。図13は、図12の電子ロック装置151とキーユニット152との間で実行される通信手順を示すシーケンスである。
【0204】
具体的にはたとえば、キーユニット152は、キー照合ボタン153の操作に基づいて、まず、送信要求の発光信号を出力する。キーユニット152の発光ダイオード11は、パルス駆動により間欠的に発光する。
【0205】
この送信要求の発光信号を受光すると、電子ロック装置151は、送信許可の発光信号を出力する。電子ロック装置151の発光ダイオード11は、パルス駆動により間欠的に発光する。
【0206】
送信許可の発光信号を受光すると、キーユニット152は、発光期間と、無発光期間との繰り返しにより発光ダイオード11を周期的に発光させる。これは、同期クロック信号となる。なお、発光ダイオード11は、発光期間においても、パルス駆動により間欠的に発光する。
【0207】
電子ロック装置151は、このキーユニット152の同期クロック信号を受信すると、その同期クロック信号の周期に同期させて、予めメーカなどにより登録されている電子ロック装置151に固有のキー認証コードを送信する。図13の例では「10001100(=8Ch)」である。
【0208】
キー認証コードを受信すると、キーユニット152は、その受信したキー認証コードが自分か対応する電子ロック装置151のものであるか否かを判断する。
【0209】
また、電子ロック装置151は、キー認証コードを送信した後、同期クロック信号を送信する。
【0210】
キーユニット152は、先のキー認証コードの一致判定において一致すると判断している場合、この電子ロック装置151の同期クロック信号を受信すると、その同期クロック信号の周期に同期させて、予めユーザにより登録されているキーユニット152に固有の暗証番号コードを送信する。図13の例では「11010101(=D5h)」である。
【0211】
なお、先のキー認証コードの一致判定において一致すると判断しなかった場合、キーユニット152は、電子ロック装置151の同期クロック信号を受信したとしても、暗証番号コードを送信しない。
【0212】
暗証番号コードを受信すると、電子ロック装置151は、その受信した暗証番号コードがユーザにより予め登録されたものであるか否かを判断する。そして、受信した暗証番号コードが予め登録されているものと一致する場合、電子ロック装置151は、ドアを開錠する。一致しない場合、電子ロック装置151は、ドアを施錠したままとする。
【0213】
以上の認証処理により、電子ロック装置151は、予め登録されたキーユニット152のみを認証し、ドアを開錠することができる。
【0214】
なお、キー認証コードを電子ロック装置151からキーユニット152へ送信することには以下の意味がある。たとえば、キー認証コードをキーユニット152から送信する仕様とした場合、キーユニット152を盗めば、その出力信号に基づいてキー認証コードを容易に入出することが可能となってしまう。キー認証コードを電子ロック装置151からキーユニット152へ送信することで、キーユニット152から、キー認証コードに基づく光信号が出力されなくなる。また、キーユニット152は、キー認証コードの一致を判断しなければ、暗証番号コードに基づく信号を送信しない。これにより、キーユニット152の紛失などによるセキュリティの低下を抑制することができる。
【0215】
さらに他にもたとえば、本発明は、テレビなどの各種の放送受信機、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、照明機器、冷暖房機器、給湯機器、電子レンジ、カメラ、家電機器、自動車、オートバイ、携帯電話端末、携帯情報機器、携帯ゲーム機器、評価ボードなどに利用することができる。たとえば、カメラでは、AF(Auto Focus)補助光用LEDを利用して、カメラの制御基板に実装された内蔵EEPROMのデータを、それをカメラ本体から取り出したり、プローブなどを接続したりすることなく、読み出したり、書き込んだりすることが可能となる。
【0216】
上記各実施の形態では、発光ダイオード11を点灯させる駆動トランジスタとして、PNPトランジスタを使用している。この他にもたとえば、通信速度などが遅くても構わない場合などにあっては、PNPトランジスタの替わりに、FET(Field Effect Transistor)などを使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本発明は、発光ダイオードを有する電子機器などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る電子機器を示す構成図である。
【図2】図2は、図1の電子機器を全二重データ通信動作をさせた場合の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図3】図3は、本発明の実施の形態2に係る電子機器を示す構成図である。
【図4】図4は、図3の電子機器を全二重データ通信動作をさせた場合の一部の信号波形を示すタイミングチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施の形態3に係る電子機器の一種であるバーサライタの正面図である。
【図6】図6は、図5のバーサライタの背面図である。
【図7】図7は、バーサライタに内蔵される電子回路のブロック図である。
【図8】図8は、図5のバーサライタと他のバーサライタとの間で画像データを送受する際に実行される通信シーケンスを示すタイミングチャートである。
【図9】図9は、本発明の実施の形態4に係る電子機器の一種である表示パネル装置と、それに付属する入力ペンとを示す正面図である。
【図10】図10は、表示パネル装置の電子回路のブロック図である。
【図11】図11は、表示パネル装置の1つの発光ダイオードと、入力ペンとの間で実行される通信手順を示すシーケンスである。
【図12】図12は、本発明の実施の形態の変形例である電子ロック装置と、キーユニットとを示す説明図である。
【図13】図13は、図12の電子ロック装置とキーユニットとの間で実行される通信手順を示すシーケンスである。
【符号の説明】
【0219】
5 送信制御部(制御手段の一部)
6 受信制御部(制御手段の一部)
11 発光ダイオード
12 並列コンデンサ
13 送信回路
14 分離回路
21 PNPトランジスタ
31 直流除去コンデンサ
33 第三抵抗素子(一対の抵抗素子の中の一方、動作点設定回路)
34 第四抵抗素子(一対の抵抗素子の中の他方、動作点設定回路)
35 分離トランジスタ
36 分離抵抗素子
37 ローパスフィルタ回路
41 増幅トランジスタ
111 差動オペアンプ
149 表示回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により光を出力する発光ダイオードと、
送信データに基づいて上記発光ダイオードに順バイアスを印加する送信回路と、
上記発光ダイオードに順バイアスが印加されていないときの上記発光ダイオードに発生する電圧に応じて変化する電圧を出力する分離回路と、
を有し、上記送信回路によって上記発光ダイオードから送信用の光データを発信し、上記分離回路によって上記発光ダイオードが受信した光をデータとして取り出すことを特徴とするデータ通信装置。
【請求項2】
前記送信回路は、送信データに基づいて上記発光ダイオードに印加する順バイアスを間欠的に印加すること、
を特徴とする請求項1記載のデータ通信装置。
【請求項3】
前記発光ダイオードのアノードとカソードとの間に接続される並列コンデンサを有することを特徴とする請求項1または2記載のデータ通信装置。
【請求項4】
前記送信回路は、前記発光ダイオードのカソードにベースが接続され且つ前記発光ダイオードのアノードにコレクタが接続されるPNPトランジスタを有し、前記発光ダイオードに順バイアスを印加するときには、前記発光ダイオードのカソードおよび上記PNPトランジスタのベースの電位を上記PNPトランジスタのエミッタの電圧より低く制御して上記PNPトランジスタをオン状態にするものであり、
前記分離回路は、前記発光ダイオードのアノードに接続されること、
を特徴とする請求項1から3の中のいずれか1項記載のデータ通信装置。
【請求項5】
前記分離回路は、
分離トランジスタと、
上記分離トランジスタのベースと前記発光ダイオードのアノードとの間に接続される直流除去コンデンサと、
上記分離トランジスタのベースに接続される一対の抵抗素子を有し、前記発光ダイオードに所定の光量の光が入射されているか否かに応じて上記分離トランジスタが電流増幅動作をするように、上記分離トランジスタの動作電位を設定する動作点設定回路と、
上記分離トランジスタのコレクタに接続される分離抵抗素子と、
を有することを特徴とする請求項1から4の中のいずれか1項記載のデータ通信装置。
【請求項6】
前記分離回路は、
前記分離トランジスタのベースにコレクタが接続され且つベースが前記直流除去コンデンサに接続される増幅トランジスタと、
前記分離抵抗素子の電圧から高周波成分を除去するローパスフィルタ回路と、
を有することを特徴とする請求項5項記載のデータ通信装置。
【請求項7】
前記ローパスフィルタ回路は、前記送信回路が前記発光ダイオードに順バイアスを印加する周期とは異なる周期の周波数成分を通過させるものであることを特徴とする請求項6記載のデータ通信装置。
【請求項8】
前記分離回路の出力電圧の波形と、前記発光ダイオードに順バイアスを印加するための発光制御信号の波形とを比較し、これらが不一致である場合には、エラー信号を出力する差動オペアンプを有することを特徴とする請求項1から7の中のいずれか1項記載のデータ通信装置。
【請求項9】
前記発光ダイオードは、可視光を発光するものであることを特徴とする請求項1から8の中のいずれか1項記載のデータ通信装置。
【請求項10】
通電により可視光を出力する発光ダイオードと、
上記発光ダイオードを発光させるために上記発光ダイオードに順バイアスを印加する表示回路と、
上記発光ダイオードに順バイアスが印加されていないときの上記発光ダイオードに発生する電圧に応じて変化する電圧を出力する分離回路と、
を有し、上記表示回路によって上記発光ダイオードを発光し、上記分離回路によって上記発光ダイオードが受信した光をデータとして取り出すことを特徴とするデータ通信装置。
【請求項11】
請求項1から10の中のいずれか1項記載のデータ通信装置と、
このデータ通信装置によるデータ通信を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項12】
前記電子機器は、人が手に持って振ることで残像を形成する残像形成具、表示パネル装置、電子ロック装置、キーユニット、放送受信機、パーソナルコンピュータ、ゲーム機器、照明機器、冷暖房機器、給湯機器、電子レンジ、カメラ、家電機器、自動車、オートバイ、携帯電話端末、携帯情報機器、携帯ゲーム機器および評価ボードの中から選択された1つの装置であることを特徴とする請求項11記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−332909(P2006−332909A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151513(P2005−151513)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000227364)日東光学株式会社 (151)
【Fターム(参考)】