説明

データ配信装置

【課題】複数の配信先にSATA信号を伝送・配信するに当たり高い耐ノイズ性と高いデータビットレートを有する信号をより高速で長い距離伝送させて配信でき、経路の切替により1対多の接続構成を実現できるデータ配信装置を提供する。
【解決手段】データ配信装置10では、データサーバ装置11と複数のクライアント装置21〜23が光ケーブル17で接続され、各クライアント装置にデータが配信される。データサーバ装置は、データ送信手段12と時刻同期用情報を生成・付加するE/O変換部13を備える。各クライアント装置は個別の光スイッチ31を介して光ケーブルに順次に接続される。各クライアント装置は、データベース装置側から送られてくるデータと時刻同期用情報を含む信号から時刻同期用情報を取り出し、当該クライアント装置に対応する光スイッチの接続状態を下流側の光伝送路に接続する光スイッチ接続制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータ配信装置に関し、特に、SATA信号を電気信号から光信号に変換して伝送距離の延長を可能にしかつ光スイッチを利用して大容量のデータを効率よく配信先に配信するデータ配信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のSATA(Serial ATA)信号の伝送装置の構成を図7と図8を参照して説明する。SATA信号の伝送では、ハードディスク・ドライブ(HDD)の取付け構造に応じて、PC(Personal Computer)内蔵型の接続構成(図7)と、PC外付け型の接続構成(図8)とが存在している。図7に示された接続構成は、PCマザーボード101と内蔵HDD102とを接続するSATAケーブル103で接続する構成である。この場合、SATAケーブル103のケーブル長は規格上1mまでと定められている。また図8に示された接続構成は、PC104と外付けHDD105とをeSATAケーブル(拡張型(External)のSATAケーブル)106で接続する構成である。この場合にも、eSATAケーブル106のケーブル長は制限を受け、規格上では2mが限界である。
【0003】
上記のごとく、SATAケーブル103およびeSATAケーブル106のいずれもケーブル長が規格上制限を受ける理由は、高速信号(例えば3Gbps)であるので、減衰が大きく生じること、およびノイズが混入されることにある。
【0004】
さらに上記の接続構成によれば、HDDが内蔵型であっても、または外付け型であってもケーブルによる被接続物同士の接続関係は1:1の関係である。
【0005】
本発明に関連する基礎的な従来技術として特許文献1を挙げることができる。特許文献1は、パケット通信方式に係る光制御式光路切替型データ配信装置を開示している。このデータ配信装置では、データサーバ装置から複数のクライアント装置の中から選択された1つ以上の特定のクライアント装置に対してデータを提供する装置である。このデータ配信装置のデータ通信部では、光スイッチ、光信号路、光信号送信部、光信号受信部、およびデータ送受信制御部から構成されている。すなわちデータ通信部では、通信される信号の形態は電気ではなく光であり、光信号の配信は光スイッチで行われている。
【特許文献1】特開2005−265986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の一般的なSATA信号伝送装置は、電気信号でデータをシリアル形式で配信を行う。この伝送装置の技術によれば、電気的パラレル信号をシリアル信号に変換し、データビットレートを高めることを実現している。データビットレートは、例えば、SATAI信号では〜1.5Gbps、SATAII信号では〜3Gbpsである。しかしながら、上記伝送装置によれば、信号伝送の高速性が原因になって、前述のごとく接続構成が1:1となりかつ伝送距離が短いという物理的な欠点を有し、さらにノイズに対する耐性が低くエラーを起こしやすいという信頼性上の欠点を有していた。そのため、PC等が遠隔に存在するHDDに格納されるデータにアクセスする場合には、当該HDDに対して他のPC等の他の通信手段、例えばイーサーネット等を有する機器を接続し、当該機器を介して通信を行う必要があった。
【0007】
そこで、他の信号伝送形式を採用し簡単な装置構成によってSATA信号の伝送に関する上記の欠点を解消することが望まれる。
【0008】
本発明の目的は、複数の配信先にSATA信号を伝送・配信するに当たって、高い耐ノイズ性と高いデータビットレートを有する信号をより高速で長い距離伝送させて配信することができ、さらに経路の切替により1対多の接続構成を実現することができるデータ配信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るデータ配信装置は上記の目的を達成するために次のように構成される。
【0010】
第1のデータ配信装置(請求項1に対応)は、データサーバ装置と少なくとも2台のクライアント装置とが1本の伝送路で接続され、この伝送路を経由してデータサーバ装置から少なくとも2台のクライアント装置の各々に対してデータが配信されるデータ配信装置であって、データサーバ装置はデータを送出するデータ送信手段(eSATA HDD)と時刻同期用情報を生成・付加する電気/光変換手段(E/O変換部)を備え、伝送路は電気/光変換手段の出力端に接続される光伝送路(光ケーブル)であり、そして、少なくとも2台のクライアント装置の各々は個別の光スイッチを介して光伝送路に順次に接続されている。また光スイッチは、初期接続状態では、クライアント装置側に接続された状態にある。さらに、少なくとも2台のクライアント装置の各々は、データベース装置側から送られてくるデータと時刻同期用情報を含む信号から時刻同期用情報を取り出すと共に、当該クライアント装置に対応する光スイッチの接続状態を下流側の光伝送路に接続する光スイッチ接続制御手段を備える。以上の構成において、少なくとも2台のクライアント装置では、光伝送路上の上流側のクライアント装置から、光スイッチ接続制御手段により、順次に光スイッチの接続状態を制御して時刻同期用情報を取得するように構成される。
【0011】
上記構成では、データを送信するデータサーバ装置とデータを受信するクライアント側の装置との間光伝送路すなわち1本の光ケーブルで接続され、さらにこの1本の光ケーブルには上流側から下流側に向かって複数のクライアント装置がそれぞれの光スイッチを介して接続されている。1本の光ケーブルを介した上記の接続構成において、1つのデータサーバ装置と複数または多数のクライアント装置とを接続することが可能となる。またデータサーバ装置から送信するデータ(時刻同期信号を含む)は複数のクライアント装置の各々で、光スイッチ接続制御手段により上流側から光スイッチの接続状態を制御して順次に時刻同期信号を取り込むように構成されている。複数のクライアント装置における光スイッチ接続制御手段は、電気/光変換部内の所定の機能部と、クライアントPC内の所定の機能部とによって構成されている。
【0012】
第2のデータ配信装置(請求項2に対応)は、上記の第1の構成において、好ましくは、時刻同期用情報は、電気/光変換手段に備えられた時刻同期用信号生成回路によって生成される時刻信号であることで特徴づけられる。
【0013】
第3のデータ配信装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、時刻同期用情報は、電気/光変換手段に付設されたPCによって設定される時刻同期プロトコルであることで特徴づけられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、SATA信号(データ)を配信元(データサーバ装置)から配信先(クライアント装置)へ配信するデータ配信装置において、データ伝送路を光伝送路として、かつ光伝送路には各クライアント装置への接続を可能にする複数の光スイッチを設け、複数の光スイッチの接続状態を上流側から下流側に向かって順次に制御することにより、複数の配信先にSATA信号(データ)を伝送・配信するに当たり、高い耐ノイズ性と高いデータビットレートを有する信号をより高速で長い距離伝送させて配信することができる共に、光伝送路を各光スイッチの切替動作に基づいて、配信元と配信先の間の接続関係において1対多の接続構成を実現することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図4を参照して本発明の第1の実施形態に係るデータ配信装置を説明する。第1実施形態に係るデータ配信装置は、時刻同期信号生成回路を実装した方式による装置である。図1は第1実施形態に係るデータ配信装置10のシステム構成の概要を示し、図2は同装置の詳細な機能構成を示し、図3は同装置の初期化シーケンスの第1の初期化状態を示し、図4は同装置の初期化シーケンスの第2の初期化状態を示す。
【0017】
データ配信装置10は、全光データ配信システムにおけるSATA信号伝送制御システムを備えている。ここで、SATAは「Serial ATA」の意味であり、伝送ケーブルおよびコネクタの規格である。
【0018】
図1において、ブロック11は、クライアント装置に対してデータの配信を行う送信側のデータサーバ装置である。データサーバ装置11は、データ送信部(eSATA HDDを含む)12とE/O変換部(E/O変換ボード)13を備えている。データ送信部12は、クライアント装置側へ送信する通信データを電気信号形式で出力する。E/O変換部13は、電気信号(Erectric Signal)を所定の光信号(Optical Signal)に変換する機能を有する変換ボードである。E/O変換部13はE/O変換器14と時刻同期用信号生成回路(CPU)15を備えている。E/O変換器14は、その入力部に通信データである電気信号が入力され、その後に変換処理が行われ、その出力部から光信号が出力される。従って、図1において、データ送信部12とE/O変換器13との間の太線で描かれた信号伝送路16は電気ケーブルであり、E/O変換器14の出力部から延びる細い線で描かれた信号伝送路17は光ケーブル(光伝送路)である。電気ケーブル16は、その規格上、ケーブル長が短くなるように制限されている。光ケーブル17は規格の上でケーブル長の制限を受けない。光ケーブル17では、例えば、波長が1550nmの光によるシリアル信号が伝送される。
【0019】
E/O変換器14から出力される上記の光信号には、データ送信部12から与えられる通信データと、時刻同期用信号生成回路15から与えられる時刻同期信号とが含まれている。
【0020】
光ケーブル17の下流側には、光信号を受信する受信側装置として、例えば3台のクライアント装置21,22,23が直列接続の関係で接続されている。3台のクライアント装置21〜23はすべて同じ装置構成を有している。クライアント装置21〜23の各々は、1本の光ケーブル17上に配置される光スイッチ31と、E/O変換部32と、クライアントPC33とから構成されている。光スイッチ31は、所定条件下でオン・オフしその接続状態を制御されことにより、データサーバ装置11側から送られてくる光信号を、各クライアント装置に取り込むための、または上流側から下流側に送るためのスイッチ手段である。E/O変換部32は、電気信号から光信号または光信号から電気信号へ変換する機能を有する変換ボードである。E/O変換部32は、光スイッチ31からクライアントPC33へ信号を送る場合に光信号を電気信号に変換するE/O変換器32aと、クライアントPC33から光スイッチ31に対して信号を送る場合に電気信号を光信号に変換するE/O変換器32bとを備える。クライアント装置21〜23において、34は電気ケーブルであり、35は光ケーブルである。
【0021】
なお上記の光スイッチ31の構成の詳細については、例えば前述した特許文献1(特開2005−265986号公報)に記載されている。
【0022】
受信側装置では、光ケーブル17を伝送されてくる光信号は、クライアント装置21〜23の各々の光スイッチ31を上流側から所定条件下でオン・オフさせることにより、上流側に位置するクライアント装置21から順次に所要の光信号を受信できるように構成されている。上記のクライアント装置21〜23の各々では、時刻同期作用に基づいて、自分で必要な情報を取り込む。すなわち、送信側のデータサーバ装置11においてE/O変換部13で時刻同期用信号生成回路15によって定期的に同期信号を発信することにより、クライアント装置21〜23の各々はそのE/O変換部32で時刻同期を行う。各クライアントPC33は、予めプログラミングされた時分割管理機能によって光スイッチ31の切替タイミングを自ら制御し、他のクライアント装置との間で光ケーブル17(光伝送路)の占有時間が競合しないようにアクセス競合制御を行う。E/O変換部32での「時刻同期」を実行する機能部と、クライアントPC33での時分割管理機能を実行する機能部とによって、光スイッチ接続制御手段が構成される。
【0023】
上記のデータ配信装置10のシステム構成では、1台のデータサーバ装置11に対して、1本の光ケーブル17を介して3台のクライアント装置21〜23が接続されるという1:3の接続構成を有している。クライアント装置の台数は3には限られず、一般的には任意の多数の台数を選択することができる。
【0024】
次に、図2に従って、上記のデータ配信装置10の各部の内部機能の構成を詳細に説明する。
【0025】
図2では、データサーバ装置11内のデータ送信部12とE/O変換部13の内部構成と、クライアント装置21のE/O変換部32とクライアントPC33の内部構成が示されている。
【0026】
なおクライアント装置22,23の内部構成は、クライアント装置21の内部構成とまったく同じであるので、図示と説明を省略する。
【0027】
データ送信部12は、eSATA HDD(データ格納部)41とeSATAコントローラ42とから構成される。
【0028】
eSATAコントローラ42については、通常のPCマザーボードに実装されているSATAコントローラであり、SATA HDDの制御を行う。本実施形態の場合には、光ケーブル35の端部の先にeSATA HDD41をを配置している。この構成に基づくeSATA HDD41の動作は、SATAコントローラから見て、あくまでもローカル上にSATA HDDが存在する場合と同等の動作になる。
【0029】
E/O変換部13は、パケッタイザー43と時刻信号生成ドライバ44とRTC45とE/O変換器14とから構成されている。
【0030】
パケッタイザー43は、光伝送路およびE/O(またはO/E)の変換でエラーを考慮し、SATA制御信号をパケット化し、エラーチェック、エラー訂正が行える仕組みである。時刻信号生成ドライバ44は、eSATA HDD42の側に配置され、時刻信号生成を行う。時刻信号生成ドライバ44は、定期的に時刻信号を発信し、クライアント装置21〜23の各クライアントPC側の時刻信号受信ドライバに時刻情報を引き渡す。時刻信号を受信したクライアントPCは、同期化された時刻を元に光スイッチの切替タイミングを生成する。またRTC45は、リアルタイムクロックであり、時刻同期に使用される。またE/O変換器14は、パケッタイザー43から供給される電気信号を光信号に変換し、光ケーブル35に送出する。
【0031】
時刻信号生成ドライバ44とRTC45からなる部分は、前述した時刻同期用信号生成回路15に対応している。
【0032】
クライアント装置21側のE/O変換部32は、E/O変換器32a,32bと、CPU46と、RTC47と、パケッタイザー48と、送信バッファ49と、時刻信号受信ドライバ50と、時刻同期コントローラ51とから構成されている。
【0033】
2つのE/O変換器32a,32bは、それぞれ電気信号と光信号との間で双方向に変換する機能を有している。E/O変換器32aは、光ケーブル35上に配置された光スイッチ31からの光信号を電気信号に変換してパケッタイザー48に供給する。E/O変換器32bは、CPU46から与えられる電気信号(光スイッチ切替タイミング信号)を光信号に変換して光スイッチ31に供給する。光スイッチ31は、E/O変換器32bから与えられる光信号に基づいてオン・オフを切り替えられる。ここで信号伝送路35は前述の通り光ケーブルである。E/O変換器32bから光スイッチ31への光ケーブル35で伝送される光信号の波長は好ましくは950nmである。
【0034】
パケッタイザー48とRTC47の各機能は先に説明した機能と基本的に同じである。また特にパケッタイザー48は、E/O変換器32aから与えられた信号内の時刻信号パケットを解析する。さらに時刻信号受信ドライバ50は、パケッタイザー48によって解析された時刻信号パケットから時刻情報を得る。時刻同期コントローラ51は、時刻同期信号により同期化された時刻に基づいて光スイッチ切替タイミング信号を生成し、eSATA HDD42へのアクセス可否を判断し、SATA信号の送信制御を行う。
【0035】
送信バッファ49は、光スイッチ31の状態に基づいて光ケーブル17が切り離されている状態の時において、ASATA制御信号を一時的に蓄積するためのバッファである。
【0036】
またCPU46は、クライアントPC33から供給される光スイッチ制御光制御用のコマンドを受信し、このコマンドを解析する。CPU46は、E/O変換器32bに対して光スイッチ制御用制御光のオン・オフを指示する。さらにCPU46は、データ送信部12側のE/O変換部13から送信されてくる時刻信号を解釈し、RTC47を制御して、時期同期を取る機能を有している。
【0037】
クライアントPC33は、機能要素として、SATAコントローラ52と、ファイルシステムコントローラ53と、データアクセスアプリケーション54と、アクセスフックコントローラと、光スイッチ制御SCI(Serial Communication Interface)ドライバ56と、RS−232C57とから構成されている。
【0038】
SATAコントローラ52はクライアントPC33側のコントローラであり、先に説明したデータサーバ装置11側のデータ送信部12に設けられたものと基本的に同じ機能を有する。データアクセスアプリケーション54は、クライアントPC33のOS上で動作するアプリケーションであり、データ送信部12におけるeSATA HDD42の共有データをアクセスする機能を有している。例えば、医療機関での運営を考慮すると、CTスキャン画像データの閲覧アプリケーションのようなものが想定される。
【0039】
またファイルシステムコントローラ53は、OSが提供するファイルシステムアクセス機能に重ねて提供される機能であり、データアクセスアプリケーション54からeSATA HDD42に対してアクセスがあった場合において、アクセスフックコントローラ55に対してアクセスの通知を行う。アクセスの応答(データ送信)については、そのままスルーさせ、データアクセスアプリケーション54にデータを引き渡す。なおデバイスの認識については、ハードウェア的にローカルデバイスとして認識させるものとする。
【0040】
上記のアクセスフックコントローラ55は、ファイルシステムコントローラ53から受け取った通知により、光スイッチ制御SCIドライバ56を介して、RS−232C57にてE/O変換部32へのコマンドを発行し、当該コマンドにより光スイッチ制御光(波長950nmの光)を制御する機能を有する。
【0041】
また光スイッチ制御SICドライバ56は、E/O変換部(E/O変換ボード)32に実装される光スイッチ制御光出力用E/Oデバイス(E/O変換器32b)を制御するためのコマンド送受信インターフェース(RS−232C57)を制御するためのドライバである。
【0042】
次に図3および図4を参照して、図1および図2で説明したデータ配信装置10の特徴的動作すなわち初期化シーケンスの例を説明する。図3および図4において、図1および図2で説明した要素と同一の要素には同一の符号を付している。
【0043】
データ配信装置10における「初期化シーケンス」とは、データ配信装置10での初期状態において、クライアント装置21〜23の側で光スイッチ31のすべてをクライアント装置側にデータを流せる方向に初期化する処理手順を意味する。換言すると、初期化シーケンスによって、光ケーブル17において上流側から下流側に向かって接続される3台のクライアント装置21〜23では、eSATA HDD42(データ送信部12)に近い上流側のクライアント装置から常に通信が可能になる状態にセットされる。なおクライアント装置21〜23の各光スイッチ31は、最初の状態では、図3に示されるようにクライアント装置側に接続されている。
【0044】
図3に示した第1の初期化状態では、クライアント装置21で光スイッチ31を経由してデータサーバ装置11から送られてくるデータ(同期時刻信号を含む)をクライアント装置21側に取り込み、その後下流側のクライアント装置にデータを流すように光スイッチ31を切り替える初期化状態が示される。このとき、下流側のクライアント装置22,23には初期状態においてデータは送られず、いずれも同期時刻信号受信の待ち状態になっている。
【0045】
図3に示された初期化状態では、データサーバ装置11では、E/O変換部13では定期的に同期時刻信号を発信する。これに対して、クライアント装置21〜23の側では、まず最初に、もっとも上流側のクライアント装置21において、そのE/O変換部32の時刻信号受信ドライバ50で同期時刻信号を受信し、同期用基準信号としてRTC47に保持させる。同時に、時刻同期コントローラ51の光スイッチ切替タイミング管理機能(プログラム51a)を始動させる。タイミング管理機能によって、クライアント装置21では自立制御状態になる。これにより、クライアント装置21の光スイッチ31を下流側の光ケーブル17に接続し、後続するクライアント装置22に対して同期時刻信号を到達させる。この状態が図4に示されており、こうして第2の初期化状態が生成される。その後、図4に示された第2の初期化状態において、上記の処理がクライアント装置22について繰り返され、クライアント装置22が同期時刻信号を取得し、次のクライアント装置23の初期化に状態が移行する。こうして、上記の処理がクライアント装置ごとに繰り返され、クライアント装置21〜23のすべてが同期時刻信号を取得し、システム全体の初期化が行われる。
【0046】
上記の初期化シーケンスにおいて、同期時刻信号の送信タイミングおよび光スイッチ切替タイミングは、光スイッチ31の切替時間、光ケーブル17の負荷状態、OSからのSATAデバイス制御方式、システムに要求されるパフォーマンス等を考慮し、最適なパラメータ選択を実験的に検討して設定される。
【0047】
次に図5と図6を参照して本発明の第2の実施形態に係るデータ配信装置を説明する。第2実施形態に係るデータ配信装置は、時刻同期プロトコル方式による装置である。図5は第2実施形態に係るデータ配信装置60のシステム構成の概要を示し、図7は同装置の詳細な機能構成を示す。図5および図6において、第1実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。以下では第2実施形態に係るデータ配信装置60の特徴的な構成および機能を説明する。
【0048】
図5に示す時刻同期プロトコル方式ののデータ配信装置60では、データサーバ装置11において、データ送信部(eSATA HDD)12と、E/O変換部13とを備える。またE/O変換部13では、E/O変換器14を備える。このE/O変換部13に対して、時刻同期プロトコル62を内蔵するPC61が接続されている。PC61内の時刻同期プロトコル62の機能部分は、装置構成上、E/O変換器14に接続されている。データ受信側のクライアント装置21〜23および光ケーブル17に配置された3つの光スイッチ31に関する概要的な構成は、第1実施形態で説明した構成と同じである。
【0049】
図5に示された概要的な構成において、データサーバ装置11の側では、PC61の時間を基準とし、時刻同期プロトコル62に基づいて、クライアント装置21〜22の各々のクライアントPC33の時刻を同期させる。クライアント装置21〜23の各クライアントPC33は、予めプログラミングされた時分割管理機能と同期されたPCの時刻により光スイッチ31の切替タイミングを自ら制御し、他のクライアント装置との間で光ケーブル17の占有時間が競合しないようにアクセス競合制御を行う。
【0050】
次に図6を参照してデータ配信装置60の特徴部の詳細な構成を説明する。図6が先に説明した図2と同様な図面である。図6に示したデータ配信装置60では、データサーバ装置11側のデータ送信部(eSATA HDD)12とE/O変換部13、光ケーブル17、クライアント装置21側の光スイッチ31とE/O変換部32とクライアントPC33とが示されている。
【0051】
上記のデータサーバ装置11側のE/O変換部13では、前述したPC61の時刻同期プロトコル62が付加され、また前述したパケッタイザー43とE/O変換器14に加えてプロトコルMUXドライバ(CPU)63とRS−232C64とが設けられる。この構成において、PC61の時刻同期プロトコル62の機能部からRS−232C64を経由してプロトコルMUXドライバ63に対して当該プロトコルが提供される。プロトコルMUXドライバ63は、時刻同期プロトコルを多重化し、クライアント装置21〜23の各クライアントPC33側の時刻同期処理部に対して時刻情報を引き渡すための手段である。
【0052】
クライアント装置21側のE/O変換部32では、前述したE/O変換器32a,32bとCPU46とパケッタイザー48と送信バッファ49に対して、送信制御部65と時刻同期プロトコル受信ドライバ66が付設されている。時刻同期プロトコル受信ドライバ66は、パケッタイザー48によって解析された多重化時刻信号パケットから時刻情報を取り出す。送信制御部65は、時刻同期信号により同期化された時刻に基づいて光スイッチ切替タイミング信号を生成し、eSATA HDD42へのアクセス可否を判断し、SATA信号の送信制御を行う。
【0053】
またクライアント装置21側のクライアントPC33では、前述したSATAコントローラ52とファイルシステムコントローラ53とデータアクセスアプリケーション54とアクセスフックコントローラ55と光スイッチ制御SCIドライバ56とRS−232C57に対して、時刻同期処理部67と時刻同期コントローラ68が付設されている。
【0054】
時刻同期処理部67は、データサーバ装置11側から送信されてくる時刻同期プロトコルを処理し、クライアントPC33の時刻を上記PC62の時刻に同期させる。
【0055】
時刻同期コントローラ68は、時刻同期プロトコルにより同期化された時刻に基づき、光スイッチタイミング信号を生成し、データサーバ装置11へのアクセス可否を判断し、SATA信号の送信制御を行う。併せて、SATAのバッファリングされたデータの送受信を行う制御を実行する。
【0056】
上記の構成において、クライアント装置22,23についてもクライアント装置21と同様な構成を有している。上記構成を有するデータ配信装置60において、時刻同期プロトコルによる時間同期と時分割制御についての初期化シーケンスは、図3と図4を参照して説明した第1実施形態における初期化シーケンスと基本的に同じである。
【0057】
以上の実施形態で説明された構成および配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、データ配信装置で、SATA信号を光信号に変換して光伝送路と光スイッチを利用して伝送し、伝送距離を延ばし、大容量のデータを効率よく1対多の接続構成で配信先に配信するのに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るデータ配信装置の第1実施形態のシステム構成の概要を示す全体構成図である。
【図2】第1実施形態に係るデータ配信装置の機能構成の詳細な構成図である。
【図3】第1実施形態に係るデータ配信装置の初期化シーケンスの第1の初期化状態を示す図である。
【図4】第1実施形態に係るデータ配信装置の初期化シーケンスの第2の初期化状態を示す図である。
【図5】本発明に係るデータ配信装置の第2実施形態のシステム構成の概要を示す全体構成図である。
【図6】第2実施形態に係るデータ配信装置の機能構成の詳細な構成図である。
【図7】従来のSATA信号の伝送装置の第1の構成例を示す図である。
【図8】従来のSATA信号の伝送装置の第2の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
10 データ配信装置
11 データサーバ装置
12 データ送信部
13 E/O変換部
14 E/O変換器
16 電気ケーブル
17 光ケーブル
21,22,23 クライアント装置
60 データ配信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データサーバ装置と少なくとも2台のクライアント装置とが1本の伝送路で接続され、前記伝送路を経由して前記データサーバ装置から少なくとも2台の前記クライアント装置の各々に対してデータが配信されるデータ配信装置であって、
前記データサーバ装置はデータを送出するデータ送信手段と時刻同期用情報を生成・付加する電気/光変換手段を備え、前記伝送路は前記電気/光変換手段の出力端に接続される光伝送路であり、そして、少なくとも2台の前記クライアント装置の各々は個別の光スイッチを介して前記光伝送路に順次に接続されており、
前記光スイッチは、初期接続状態では、前記クライアント装置側に接続された状態にあり、
少なくとも2台の前記クライアント装置の各々は、前記データベース装置側から送られてくる前記データと前記時刻同期用情報を含む信号から前記時刻同期用情報を取り出すと共に、当該クライアント装置に対応する前記光スイッチの接続状態を下流側の前記光伝送路に接続する光スイッチ接続制御手段を備え、
少なくとも2台の前記クライアント装置では、前記光伝送路上の上流側の前記クライアント装置から、前記光スイッチ接続制御手段により、順次に光スイッチの接続状態を制御して前記時刻同期用情報を取得する、
ことを特徴とするデータ配信装置。
【請求項2】
前記時刻同期用情報は、前記電気/光変換手段に備えられた時刻同期用信号生成回路によって生成される時刻信号であることを特徴とする請求項1記載のデータ配信装置。
【請求項3】
前記時刻同期用情報は、前記電気/光変換手段に付設されたPCによって設定される時刻同期プロトコルであることを特徴とする請求項1記載のデータ配信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−148092(P2008−148092A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334233(P2006−334233)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【出願人】(503184234)株式会社インターエナジー (20)
【Fターム(参考)】