説明

トイレシステム

【課題】トイレ55内のユーザ57に対してスピーカL,Rより出力するオーディオのチャンネルを適切化する。
【解決手段】ユーザ57が水タンク44側及びその反対側へ向いているときを後ろ向き及び前向きと定義する。人体接近センサー14は、トイレ55の壁や床の所定位置に仕掛けられ、便座42へのユーザ57の接近度を検出する。着座センサー16は、便座42へのユーザ57の接触や体重に基づき便座42への着座を検出する。コントロールマイコン21は、ユーザの接近度又は着座の存否に基づきユーザ57の向きを検出して、オーディオ信号切替部34の切替位置を制御する。オーディオ信号切替部34は、ユーザ57が前向きである場合は、左右の各チャンネルのオーディオ信号をそれぞれスピーカL,Rへ送る。オーディオ信号切替部34は、ユーザ57が後ろ向きである場合は、左右の各チャンネルのオーディオ信号をそれぞれスピーカR,Lへ送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ内に配備された左右のスピーカからオーディオを出力するトイレシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、便器に左右のスピーカを装備して、トイレ内で音楽等を聴取したり、便器洗浄擬音を出力したりすることを開示する。
【特許文献1】特開2004−113388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ユーザが男性である場合、立ち姿勢で用を足すときと、座り姿勢で用を足すときとでは、トイレ内でのユーザの向きは相互に反対となる。
【0004】
特許文献1のトイレ用オーディオ装置では、左右の各チャンネルのオーディオ信号は、トイレ内でのユーザの向きに関係なく、基準の向きに対して左右に配備されるスピーカへ固定的にそれぞれ送られるようになっており、ユーザが、トイレ内で基準の向きと逆向きとなっている場合には、ユーザは、左右のオーディオを逆に聞くことになってしまう。
【0005】
本発明の目的は、トイレ内のユーザの向きに関係なく、左右の各チャンネルのオーディオをスピーカより左右を的確にして放音できるようにしたトイレシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトイレシステムはトイレ装置とトイレ用オーディオ装置とを備える。トイレ装置は、ユーザが便座に着座したことを検出する着座検出手段及びトイレ内のユーザの存否を検出する人体検出手段を有する。トイレ用オーディオ装置は、左右チャンネルのオーディオ信号を生成するオーディオ信号生成手段、及びトイレ内に配備されチャンネル別の各オーディオ信号に係るオーディオを出力する左右のスピーカを有する。
【0007】
トイレ用オーディオ装置は、着座検出手段及び人体検出手段の出力に基づきユーザの基準の向き及びその反対向きのどちらに向いているかを検出する向き検出手段と、該向き検出手段の出力に基づき左及び右スピーカへ送るオーディオ信号を切り替えるオーディオ信号切替手段と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、便座へのユーザの着座や、便座へのユーザの接近に基づきトイレ内のユーザの向きを検出して、左右の各チャンネルのオーディオ信号が、トイレ内のユーザの向きに応じて、該向きに対応する側のスピーカへ送られる。結果、ユーザは、トイレ内において、向きに関係なく、左右の各チャンネルのオーディオを正しく聴取することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1はトイレ装置10の構成図である。コントロールマイコン11は、操作キー12、送受信部13、人体接近センサー14、メカニカルスイッチ15、及び着座センサー16よりそれぞれの入力信号を受け取り、送受信部13へは、出力信号も供給するようになっている。コントロールマイコン11は、また、トイレ機能制御部17の各種機能を制御するための制御信号をトイレ機能制御部17へ出力する。
【0010】
操作キー12は、便器40(図5)自体又は便器40に腰掛けたユーザ57(図5)が手を伸ばして届く距離内のトイレ55(図5)の壁に取り付けられ、ユーザ57がトイレ55内のユーザ57における各種機能に係る調整又は実行のための操作を行なうようになっている。ユーザ57が操作キー12から出せる指示には、例えば、便座の暖房温度の調整、トイレ55内の暖房温度の調整、及び洗浄水の噴射等が含まれる。
【0011】
送受信部13は、電波、赤外線又は光によりリモコン(図示せず。操作キー12における指示と同一の、別の、又は操作キー12の指示にさらに追加された指示を出せるものであってもよい。)からの指示を受信したり、後述のトイレ用オーディオ装置20の受信部23へデータを送信したりするようになっている。コントロールマイコン11は送受信部13と接続されており、送受信部13は、コントロールマイコン11からの送信データを無線送信するとともに、無線受信したデータをコントロールマイコン11へ送る。
【0012】
人体接近センサー14は、トイレ55内のユーザの位置を検出して、検出したユーザ位置から便座42(図3)へのユーザ57の接近を検出する。人体接近センサー14は、トイレ55内のユーザの存否を検出することができる。トイレ機能制御部17が実現する機能は、例えば、便座42の暖房温度、トイレ55内の暖房温度、及び洗浄水の噴射等であり、トイレ機能制御部17は、コントロールマイコン11から送られて来る各種の制御信号に基づきこれら機能を実行及び調整する。
【0013】
メカニカルスイッチ15は、可動部分を含むスイッチであり、その具体例は、後で図3において説明する便座用リミットスイッチ51及び蓋用リミットスイッチ52である。着座センサー16は、例えば便座42(図3)に埋設された圧電素子から成り、便座42にかかるユーザの体重に起因する荷重に基づき便座42へのユーザの着座及び非着座を検出する。着座センサー16は、便座42の上面の所定部位に露出し、人体との接触に因る通電状態に基づき便座42へのユーザの着座及び非着座を検出するものであってもよい。
【0014】
図2はオーディオ装置20の構成図である。オーディオ装置20は、典型的には、全体がトイレ55(図5)内に配備されるが、少なくともスピーカL,R(L,Rは基準の配置における左及び右をそれぞれ意味するものとする。)及び操作キー22を含む一部のみの要素はトイレ55内に残し、他の要素はトイレ55の外(トイレ天井の上、トイレ床下、及びトイレ壁内を含む。)に配備することも可能である。
【0015】
コントロールマイコン21は、操作キー22及び受信部23から信号を入力される。操作キー22は、オーディオ装置20の本体のハウジングに装備され、オーディオ装置20に対する種々の指示を入力自在になっている。オーディオ装置20は、ユーザが操作キー22からの指示と同一の、別の、又は操作キー22の指示にさらに追加された指示を出せるリモコン(図示せず)を備えており、該リモコンからのユーザ指示は、電波又は赤外線を介して受信部23に受信され、さらに、受信部23からコントロールマイコン21へ送られるようになっている。受信部23は、また、トイレ装置10の送受信部13から人体接近センサー14のユーザ位置情報を受信するようになっており、該情報もコントロールマイコン21へ送られる。
【0016】
DSP(Digital Signal Processor)27は、コントロールマイコン21から所定の楽曲の再生等の各種指示を受けるとともに、コントロールマイコン21へ各種情報を送るようになっている。再生データ蓄積部30は、例えば、挿抜自在のメモリカード、内蔵HDD、又は内蔵不揮発性メモリ等であり、複数の楽曲に係るデータを記録されている。DSP27は、楽曲を再生する際は、再生データ蓄積部30から該当するデータを読み出して、復号し、復号後の左右の各チャンネルのデジタルオーディオ信号をDAC31へ出力する。
【0017】
DAC31は、DSP27からの左右の各チャンネルのデジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号へ変換し、音量調整部29へ出力する。音量調整部29は、コントロールマイコン21からの左右の音量制御信号を受付け、該左右の音量制御信号に基づく利得で左右の各チャンネルのアナログオーディオ信号をそれぞれ増幅し、オーディオ信号切替部34へ出力する。
【0018】
オーディオ信号切替部34は、音量調整部29からの左右の各チャンネルのアナログオーディオ信号の各出力先を、コントロールマイコン21からの制御信号に基づき、制御する。左右の各チャンネルのアナログオーディオ信号は、オーディオ信号切替部34の第1の切替位置では、それぞれ増幅器36a,36bへ出力され、また、第2の切替位置では、それぞれ増幅器36b,36aへ出力される。増幅器36a,36bは、オーディオ信号切替部34からのオーディオ信号を増幅して、スピーカL,Rへ送る。
【0019】
後の図5において「基準の向き」について説明するが、コントロールマイコン21は、人体接近センサー14又は着座センサー16(図1)の出力信号からトイレ55内のユーザ57の向きを検出し、ユーザ57が基準の向きに向いている場合には、オーディオ信号切替部34を第1の切替位置へ切り替える。また、ユーザ57が基準の向きとは反対向きへ向いている場合には、オーディオ信号切替部34を第2の切替位置へ切り替える。
【0020】
図2の例では、スピーカL,Rへ送る左右の各チャンネルのオーディオ信号を切り替えるためのオーディオ信号切替部34は音量調整部29−増幅器36a,36b間に介在しているが、オーディオ信号切替部34はDAC31−音量調整部29間に介在させることもできる。しかし、その場合、コントロールマイコン21から音量調整部29へ送られる左右の音量制御信号は、オーディオ信号切替部34の第1の切替位置の時と第2の切替位置の時とで左右逆の信号線で送られる。
【0021】
また、スピーカL,Rへ送る左右の各チャンネルのオーディオ信号の切替は、オーディオ信号切替部34を省略して、DSP27が実施することも可能である。DSP27からDAC31への左右の各チャンネルのオーディオ信号の送信は、同一の信号線を時分割で使用するようになっている。したがって、スピーカL,Rへそれぞれ左右の各チャンネルのオーディオ信号を送信する場合に対して、スピーカL,Rへそれぞれ右及び左のチャンネルのオーディオ信号を送信する場合には、DSP27からDAC31へ送るオーディオ信号のタイムスロットを逆に割り当てればよい。そして、スピーカL,Rへそれぞれ左右の各チャンネルのオーディオ信号を送信する場合と、スピーカL,Rへそれぞれ右及び左のチャンネルのオーディオ信号を送信する場合とで、コントロールマイコン21から音量調整部29へ送る左右の音量制御信号は相互に左右逆の信号線で送られる。
【0022】
図3は便器用部位を検出するメカニカルスイッチ15の構成図である。該メカニカルスイッチ15は、便座用リミットスイッチ51及び蓋用リミットスイッチ52を含む。図3の例では、便座用リミットスイッチ51及び蓋用リミットスイッチ52は、それぞれロッドを上方へ突出した状態ではオフ、下方へ押し込まれた状態ではオンとなるものとして、説明するが、逆の設定でもかまわない。
【0023】
便器40は、便器本体41、便座42、蓋43及び水タンク44を備えている。説明の便宜上、便器40において水タンク44側を後方、及び水タンク44とは反対側を前方と定義する。
【0024】
便器本体41は下面においてトイレ55の床に固定される。便座42は、後端部において枢支され、便器本体41の上面に載置される閉じ位置(図3の右側の上から1番目及び2番目に図示した位置)と、前端部を便器本体41から引き上げられた開き位置(図3の右側の上から3番目に図示した位置)との間で回動自在になっている。
【0025】
蓋43は、後端部において枢支され、便座42の上面に載置される閉じ位置(図3の右側の上から1番目に図示した位置)と、前端部を便器本体41から引き上げられた開き位置(図3の右側の上から2番目及び3番目に図示した位置)との間で回動自在になっている。便座42は蓋43の下側に配置されるので、便座42の開き位置では蓋43は必ず開き位置にあり、蓋43の閉じ位置では便座42は必ず閉じ位置にある。
【0026】
便座42及び蓋43は、後端部において一体的に回動する操作片47,48をそれぞれ有しており、便座用リミットスイッチ51及び蓋用リミットスイッチ52はそれぞれ操作片47,48からの押し込み及び押し込み解除に応じて、オン、オフを切り替えられるようになっている。
【0027】
便座用リミットスイッチ51は、便座42の開き位置では、操作片47により下方へ押し込まれて、オン位置となり、また、便座42の閉じ位置では、操作片47からの下方押し込みを解除されて、オフ位置となる。蓋用リミットスイッチ52は、蓋43の開き位置では、操作片48により下方へ押し込まれて、オン位置となり、また、蓋43の閉じ位置では、操作片48からの下方押し込みを解除されて、オフ位置となる。
【0028】
人がトイレ55において立ち姿勢で用を足す場合には、該人は後ろ向きとなるとともに、便座42及び蓋43は共に開き位置になる(図3の右側の上から3番目に図示した位置)。人がトイレ55において便座42に腰掛けた姿勢で用を足す場合には、該人は前向きとなるとともに、便座42及び蓋43はそれぞれ閉じ位置及び開き位置になる(図3の右側の上から2番目に図示した位置)。したがって、便座用リミットスイッチ51及び蓋用リミットスイッチ52のオン・オフ位置からトイレ55内の人の向きを検出することができる。
【0029】
人体接近センサー14及び着座センサー16は、便座用リミットスイッチ51及び蓋用リミットスイッチ52のような可動部を含むスイッチとは区別され、可動部無しの構造となっている。人体接近センサー14は、トイレ55内の1個又は複数の所定位置に仕掛けられ、トイレ55内におけるユーザ位置、したがって、便座42へのユーザの接近を検出するものとなっている。人体接近センサー14は、例えば光方式の構成の場合には、トイレ55の天井、床及び壁並びに便器40の単一又は複数の所定部位に分布して配備し、放出光の反射量又は進行先への光到達量を検出して、トイレ55内の各空間部位における人体部分の存否を検出するようなものとすることができる。
【0030】
また、人体接近センサー14は、トイレ55内におけるユーザ位置を、例えば高さ方向又は前後方向へ検出するものとなっている。これにより、人体接近センサー14は着座センサー16を兼ねることもできる。人体接近センサー14は、例えば、トイレ55内のユーザ位置が低いときは、ユーザは便座42に腰掛けていると判断する。また、トイレ55内のユーザ位置が高いときは、ユーザはトイレ55内で立っていると判断する。さらに、トイレ55内のユーザ位置がトイレ55の前後方向へ便器40に近づいたものとなっているときは、ユーザは便座42に腰掛けていると判断される。また、トイレ55の前後方向へ便器40から離れているときは、ユーザはトイレ55内で立っていると判断される。
【0031】
人体接近センサー14は、荷重検知方式の構成を採ることもできる。その場合には、人体接近センサー14は、トイレ55内の床の所定部位に埋設され、ユーザが該所定部位を踏んだときの体重に起因する荷重に基づき、該所定部位におけるユーザの存否を検出する。
【0032】
着座センサー16は、例えば圧電素子から成る。着座センサー16は、便座42に仕掛けられて、便座42へのユーザの体重に起因する荷重の有無から着座を検出する。便座42に仕掛けられた着座センサー16には、ユーザが便座42に腰掛けている場合には、所定の荷重がかかり、ユーザが立っている場合には、荷重がかからない。
【0033】
トイレ55内のユーザの向きは、人体接近センサー14、メカニカルセンサー15及び/又は着座センサー16の出力に基づき検出できる。着座センサー16は、また、トイレ55内のユーザ位置を検出するものとして、人体接近センサー14の概念内に包摂してもよい。
【0034】
人がトイレ55に不存在である場合は、節電を図るために、オーディオ装置20を作動停止したり、トイレ機能制御部17内の幾つかの機能について作動停止することが望ましい。蓋43が閉じ位置にある場合は(図3の右側の上から1番目に図示した位置)、トイレ55は人が不存在と推測できるので、蓋用リミットスイッチ52のオン・オフ位置からトイレ55における人の存否を検出することができる。1個又は複数配備された人体接近センサー14がユーザ位置を検出できなかった場合は、トイレ55内にユーザは不存在であると判断することができる。さらに、人体接近センサー14によりユーザ位置が検出できず、また、着座センサー16が不着座を検出している場合には、トイレ55内にユーザは不存在であると判断することができる。
【0035】
人体接近センサー14、メカニカルセンサー15及び/又は着座センサー16の出力からトイレ55内に人が存在すると判断する場合には、オーディオ装置20を作動状態し、ユーザがオーディオ装置20を利用できるようにする。また、トイレ55内に人が存在しないと判断する場合には、オーディオ装置20を全面的又は部分的な作動停止状態にして、節電を図る。
【0036】
図4はトイレ55におけるスピーカL,Rの種々の取付け位置を示している。以下、説明の便宜上、トイレ55の前後方向を便器40についての前述の前後方向に一致させて定義する。すなわち、水タンク44から便器本体41への方向をトイレ55の前方向、便器本体41から水タンク44への方向をトイレ55の後ろ方向と定義する。図4(a)〜(d)のいずれもスピーカL,Rの高さは相互に等しくなっている。
【0037】
図4(a)では、スピーカL,Rは、水タンク44の後面部のそれぞれ左側及び右側に後方へ向けて取り付けられている。図4(b)では、スピーカL,Rは、それぞれ便器本体41の左右の側面部にそれぞれ左方及び右方へ向けて取り付けられている。
【0038】
図4(c)では、スピーカL,Rは、それぞれトイレ55の左右の側壁においてそれぞれ右方及び左方へ向けて取り付けられている。図4(d)では、スピーカL,Rは、それぞれトイレ55の前壁において後方へ向けて取り付けられている。
【0039】
図5はユーザ57が便器40に腰掛けた姿勢で用を足している場合にスピーカL,Rから放音される音を説明するものである。図5及び後述の図6において、左音とは左チャンネルのオーディオ信号の出力音を意味し、右音とは右チャンネルのオーディオ信号の出力音を意味するものとする。さらに、スピーカL,Rの取り付け位置に関して、図5(a)〜(d)及び図6(a)〜(d)はそれぞれ図4(a)〜(d)に対応したものとなっている。
【0040】
ユーザ57が便器40に腰掛けた姿勢で用を足している場合には、図5(a)〜(d)に示されるように、ユーザ57は前向きとなっており、このことは人体接近センサー14又はメカニカルスイッチ15(図1)の出力に基づき検出される。結果、オーディオ信号切替部34(図2)は第1の切替位置となり、スピーカL,Rからはそれぞれ左右の各チャンネルのオーディオ信号に対応する左音及び右音が出力される。この時の左音及び右音は、トイレ55内で前向きとなっているユーザ57の左耳58l及び右耳58rに整合している。
【0041】
図6はユーザ57がトイレ55において立ち姿勢で用を足している場合にスピーカL,Rから放音される音を説明するものである。ユーザ57が立ち姿勢で用を足している場合には、図6(a)〜(d)に示されるように、ユーザ57は後ろ向きとなっており、このことは人体接近センサー14又はメカニカルスイッチ15(図1)の出力に基づき検出される。結果、オーディオ信号切替部34(図2)は第2の切替位置となり、スピーカL,Rからはそれぞれ右及び左のチャンネルのオーディオ信号に対応する右音及び左音が出力される。この時の左音及び右音は、トイレ55内で後ろ向きとなっているユーザ57の左耳58l及び右耳58rに整合している。
【0042】
図7はトイレシステム75のブロック図である。トイレシステム75はトイレ装置76及びトイレ用オーディオ装置77を備えている。前述のトイレ装置10及びオーディオ装置20はそれぞれトイレ装置76及びトイレ用オーディオ装置77の具体例である。
【0043】
トイレ装置76は着座検出手段80及び人体検出手段81を有している。着座検出手段80は、ユーザが便座に着座したことを検出する。人体検出手段81は、トイレ内の人体の存否を検出する。前述の人体接近センサー14及び着座センサー16(図1)はそれぞれ着座検出手段80及び人体検出手段81の具体例である。
【0044】
トイレ用オーディオ装置77はオーディオ信号生成手段84及びスピーカ85a,85bを有している。オーディオ信号生成手段84は、左右チャンネルのオーディオ信号を生成する。少なくとも2個のスピーカ85a,85bは、トイレ内において左右方向一方及び他方の側にそれぞれ配備され、別々のチャンネルのオーディオ信号を供給されて、該供給されたオーディオ信号に係るオーディオを出力する。
【0045】
トイレ用オーディオ装置77は、さらに、向き検出手段88及びオーディオ信号切替手段89を有している。向き検出手段88は、着座検出手段80及び人体検出手段81の出力に基づきユーザがトイレ内で基準の向き及びその反対向きのどちらに向いているかを検出する。オーディオ信号切替手段89は、向き検出手段88の出力に基づき各スピーカ85a,85bへ送るオーディオ信号のチャンネルを切り替える。
【0046】
基準の向き及びその反対向きとは、例えば図4において前述した前向き及び後ろ向きである。その場合、一方及び他方の側に配備されるスピーカ85a,85bはそれぞれスピーカL,Rに対応する。向き検出手段88は、着座検出手段80又は人体検出手段81の一方の出力のみに基づきトイレにおけるユーザの向きを検出してもよいし、着座検出手段80及び人体検出手段81の両方の出力に基づきトイレにおけるユーザの向きを検出してもよい。
【0047】
なお、着座検出手段80の出力のみに基づきユーザ向きを検出するトイレシステム75では、着座検出手段80が便座へのユーザの不着座を検出している場合は、ユーザがトイレ内にいなくても、ユーザは起立姿勢にあるとして、起立姿勢時のユーザ向きに対する左右に対応する左右のチャンネルのオーディオがスピーカ85a,85bから流れることになるが、ユーザがトイレ内に存在しなければ、スピーカ85a,85bから流れるオーディオの左右のチャンネルがユーザ向きに対する左右に対応していなくても、それについての不具合はない。また、後述するように、ユーザがトイレに不存在である期間、トイレ用オーディオ装置77の作動が中止される場合には、オーディオ信号切替手段89におけるチャンネル切替の適否について問題は起こらない。人体検出手段81の出力のみに基づきユーザ向きを検出するトイレシステム75についても同様である。
【0048】
着座検出手段80は、便座へのユーザの着座及び不着座を検出するのに対し、人体検出手段81は、現在のユーザ位置に基づきユーザから便器までの距離が基準内にあるか否かを検出することになる。すなわち、ユーザ距離が該基準内にあれば、ユーザは着座していると判断でき、基準外であれば、起立していると判断できる。
【0049】
こうして、トイレシステム75は、トイレ内におけるユーザの向きに関係なく、ユーザの向きに対する左右に一致した左右チャンネルのオーディオをスピーカ85a,85bから流すことができる。
【0050】
トイレ用オーディオ装置77は、さらに、作動停止手段93を有することができる。トイレ内のユーザの存否は人体検出手段81の出力に基づき検出される。作動停止手段93は、トイレ内にユーザが不存在である場合には、トイレ用オーディオ装置77の作動を停止する。また、作動停止の方法は、着座検出手段80がトイレ内のユーザの存在を検出してから所定時間(たとえば、20分)後に、停止させてもいい。そうすることにより、人体検出手段80が故障等の場合、所定時間後に確実に停止させることができる。
【0051】
作動停止手段93によるトイレ用オーディオ装置77の作動停止は、全面的な作動停止だけでなく、部分的な作動停止も概念内に含むものとする。トイレ用オーディオ装置77の部分的な作動停止は、例えば、オーディオ信号生成手段84、スピーカ85a,85b、オーディオ信号切替手段89、及び向き検出手段88の少なくとも1個以上の作動を停止させることを意味する。存否検出手段92及び作動停止手段93は、トイレ用オーディオ装置77の次の作動再開に備えて、作動停止させないのが通常である。オーディオ信号の流れに関してスピーカ85a,85bより上流側の素子の作動が停止すれば、スピーカ85a,85bは、作動状態であっても、一般的には、オーディオ出力を行なわない。作動停止手段93によるトイレ用オーディオ装置77の作動停止により、トイレ用オーディオ装置77の電力消費量を抑制することができる。
【0052】
典型的には、作動停止手段93によるトイレ用オーディオ装置77の作動再開は、存否検出手段92がトイレ内へのユーザの進入を察知した後、実施される。ユーザの存否は、着座検出手段80又は人体検出手段81の出力に代えて、トイレの電灯の点灯状態やトイレの換気扇の作動状態に基づきトイレにおけるユーザの存否を検出することができる。
【0053】
好ましくは、オーディオ信号切替手段89は、着座検出手段80がユーザの不着座を検出してから所定時間内はオーディオ信号のチャンネルの切替状態を継続する。該所定時間は、例えば、ユーザが便座より立ち上がってからトイレを出るまでにかかる相当時間として設定される。
【0054】
トイレの出入り口のドアが、着座時のユーザの向きの前方にある場合には、ユーザは、立ち上がり後のほとんどの時間、着座時と同一の向きとなっていて、その向きでトイレから退出する。向き検出手段88は、該所定時間内はオーディオ信号切替手段89の切替状態を継続することにより、ユーザは、自分の向きに対する左右に合致する左右チャンネルのオーディオをトイレからの退出時まで聞くことができる。
【0055】
なお、典型的には、トイレシステム75では、該所定時間経過後は、トイレ内には、ユーザが存在しないので、オーディオ信号切替手段89は、左右チャンネルのオーディオ信号について、該所定時間前と同一の切替状態を維持しても、デフォルトの切替状態に戻しても、特に問題は少ない。特に、ユーザがトイレ内に不存在である期間には、トイレ用オーディオ装置77の作動を停止させる場合には、スピーカ85a,85bからのオーディオ出力が停止されるので、オーディオ信号切替手段89における不適格なチャンネル切替に因る問題は小さい。
【0056】
本発明を種々の具体例について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、それら具体例における各構成要素を変形して具体化できる。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、具体例に開示されている複数の構成要素を便宜、組み合わせて、追加したり、いくつかの構成要素を削除したりして、種々の発明を形成することができる。さらに、開示した種々の形態間で、所定の構成要素を選択し、それらを組み合わせても、種々の発明を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】トイレ装置の構成図である。
【図2】オーディオ装置の構成図である。
【図3】便器用部位を検出するメカニカルスイッチの構成図である。
【図4】トイレにおける各スピーカの種々の取付け位置を示す図である。
【図5】ユーザが便器に腰掛けた姿勢で用を足している場合に各スピーカから放音される音の説明図である。
【図6】ユーザがトイレにおいて立ち姿勢で用を足している場合に各スピーカから放音される音の説明図である。
【図7】トイレシステムのブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
75:トイレシステム、76:トイレ装置、77:トイレ用オーディオ装置、80:着座検出手段、81:人体検出手段、84:オーディオ信号生成手段、85a,85b:スピーカ、88:向き検出手段、89:オーディオ信号切替手段、92:存否検出手段、93:作動停止手段。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが便座に着座したことを検出する着座検出手段と、トイレ内の人体の存否を検出する人体検出手段を有するトイレ装置と、
左右チャンネルのオーディオ信号を生成するオーディオ信号生成手段及びトイレ内に配備されチャンネル別の各オーディオ信号に係るオーディオを出力する左右のスピーカを有するトイレ用オーディオ装置と、
を備えたトイレシステムであって、
前記トイレ用オーディオ装置は、
前記着座検出手段及び前記人体検出手段の出力に基づきユーザがトイレ内で基準の向き及びその反対向きのどちらに向いているかを検出する向き検出手段と、
該向き検出手段の出力に基づき前記各スピーカへ送るオーディオ信号のチャンネルを切り替えるオーディオ信号切替手段と、
を有していることを特徴とするトイレシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のトイレシステムにおいて、
前記トイレ用オーディオ装置は、
前記着座検出手段又は前記人体検出手段の出力に基づいて、
トイレ内にユーザが不存在である場合には、前記トイレ用オーディオ装置の作動を停止する作動停止手段と、
を有していることを特徴とするトイレシステム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のトイレシステムにおいて、
前記オーディオ信号切替手段は、前記着座検出手段がユーザの不着座を検出してから所定時間内は、オーディオ信号のチャンネルの切替状態を継続することを特徴とするトイレシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−99910(P2008−99910A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285409(P2006−285409)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【出願人】(301068491)TOTOウォシュレットテクノ株式会社 (10)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】