説明

トナー収容容器

【課題】トナーから遊離した遊離シリカを予めトナー収容室内で捕獲して、遊離シリカが現像ローラと層厚規制ブレードの間に挟まることを抑制できるトナー収容容器を提供すること。
【解決手段】トナー収容室2内のアジテータ6に、第1シート部材15と、第2シート部材16と、第3シート部材17とで、シリカを捕獲するための空間18を形成する。第2シート部材16には網目状の隙間が設けられ、アジテータ6が回転すると網目状の隙間から遊離シリカが空間18に入ってくる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外添剤が混合されたトナーを収容するトナー収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置において、現像器を備えたものが知られている。現像器は、トナーを収容するトナー収容室と、トナー収容室に対して開口を介して連通された現像室とを備えている。トナーは、トナー収容室に設けられたアジテータによって現像室に放出される。また、現像器は、供給ローラと、現像ローラと、層厚規制ブレードとを備えている。現像室内のトナーは、供給ローラの回転によって現像ローラに供給される。現像ローラ上に供給されたトナーは、現像ローラの回転に伴って層厚規制ブレードと現像ローラとの間に進入し、薄層化される。(例えば、特許文献1)。
【0003】
一方、現像器のトナー収容室に収容されるトナーは、一般的に外添剤としてのシリカを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−168957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の現像器としてのトナー収容容器を使用した画像形成装置は、トナーから遊離した遊離シリカが現像ローラと層厚規制ブレードの間に挟まり、良好に画像が形成できない恐れがあった。
【0006】
本発明の目的は、トナーから遊離した遊離シリカを予めトナー収容室内で捕獲して、遊離シリカが現像ローラと層厚規制ブレードの間に挟まることを抑制できるトナー収容容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載のトナー収容容器は、外添剤が混合されたトナーを収容するケースと、前記ケースに収容されたトナーを攪拌するアジテータと、を備え、前記アジテータは、前記ケースに回転可能に支持される基部と、前記基部に一端部を固定された第1シート部材と、前記基部に一端部を固定され、他端部が前記ケースの内部に摺接する第2シート部材と、前記第1シート部材の他端部と前記第2シート部材の他端部を連結する第3シート部材と、を備え、前記第2シート部材は、前記第1シート部材よりも前記基部の回転方向下流側に配置され、前記外添剤の粒子は通過させるが前記トナーの粒子は通過させない網目状隙間を有し、前記第1シート部材及び前記第3シート部材は、前記外添剤および前記トナーの粒子のいずれも通過させないように構成されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載のトナー収容容器の前記網目状隙間は、3μm〜5μmの隙間寸法を有するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載のトナー収容容器の前記第2シート部材は、前記第1シート部材及び前記第3シート部材と一体形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載のトナー収容容器の前記アジテータは、さらに、前記第1シート部材の前記基部の軸方向の一端部と前記第2シート部材の前記基部の軸方向の一端部と前記第3シート部材の前記基部の軸方向の一端部とを連結させる第4シート部材と、前記第1シート部材の前記基部の軸方向の他端部と前記第2シート部材の前記基部の軸方向の他端部と前記第3シート部材の前記基部の軸方向の他端部とを連結させる第5シート部材と、を備え、前記第4シート部材及び前記第5シート部材は、前記外添剤および前記トナーの粒子のいずれも通過させないように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のトナー収容容器では、アジテータにシリカを捕獲する空間を設けることで、トナーから遊離した遊離シリカをトナー収容室内で捕獲出来るため、この遊離シリカが現像ローラと層厚規制ブレードの間に挟まることを抑制できる。
【0012】
請求項2に記載のトナー収容容器では、シート部材の網目状隙間が3μm〜5μmの隙間寸法を有するように形成されている。これにより、より確実にシリカの粒子を捕獲することが出来る。
【0013】
請求項3に記載のトナー収容容器では、捕獲空間が一枚のシート部材で形成されるため、シート部材同士の貼着などの手間がかからない。
【0014】
請求項4に記載のトナー収容容器は、シート部材を増やして、遊離シリカを捕獲する空間を閉空間にすることにより、シリカの粒子を確実に捕獲空間に留めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】トナー収容容器の一実施形態を示す側断面図である。
【図2】アジテータの第1実施形態の構成を説明する斜視図である。
【図3】アジテータの第2実施形態の構成を説明する斜視図である。
【図4】アジテータの第3実施形態の構成を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の第1実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
<トナー収容容器>
【0017】
図1は、トナー収容容器1の一実施形態を示す側断面図である。図1における矢印はアジテータ6の回転方向を表す。また、以下の説明において、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」、上下方向を「上下」とする。
【0018】
トナー収容容器1は、開口4を介して連通するトナー収容室2と現像室3とを有するケース5と、アジテータ6と、現像ローラ11と、供給ローラ12と、層厚規制ブレード13とを備える。トナーは,外添剤としてシリカの微粒子が混合された非磁性の一成分トナーであり、トナー収容室2内に収容されている。
【0019】
アジテータ6は、トナー収容室2内に配置されるとともに図示しないモータによって回転駆動され、トナー収容室2内のトナーを攪拌・搬送し、開口4を介してトナーを現像室3に供給する。
【0020】
現像ローラ11は、現像室3内に配置され、トナーを担持するとともにそのトナーを図示しない感光体ドラムに向けて搬送する。
【0021】
供給ローラ12は、現像室3内に配置され、アジテータ6により開口4を介してトナー収容室2から供給されたトナーを、現像ローラ11との間で摩擦帯電させて現像ローラ11へ供給する。
【0022】
層厚規制ブレード13は、現像ローラ11上に供給されたトナーの厚みを規制する。現像ローラ11と層厚規制ブレード13の間に侵入したトナーは、摩擦帯電され薄層化される。
<アジテータ>
【0023】
図2は、アジテータ6の構成を説明する斜視図である。
【0024】
アジテータ6は、基部14と、第1シート部材15と、第2シート部材16と、第3シート部材17とを備える。
【0025】
基部14は、左右方向に延びる軸であり、その両端がケース5の側壁部(不図示)に回転可能に支持されている。
【0026】
第1シート部材15は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の可撓性の部材からなる。第1シート部材15は、基部14の軸方向のほぼ全幅にわたる幅寸法を有し、上下方向の一端部を貼着などによって基部14に固定されている。また、第1シート部材15は、第2シート部材16よりも、アジテータ6の回転方向上流側に設けられている。
【0027】
第2シート部材16は、合成樹脂などの線状部材を織り込んで形成された網目状部材からなる。網目状部材としては、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素繊維等を使用することが出来る。第2シート部材16は、基部14の軸方向のほぼ全幅にわたる幅寸法を有し、上下方向の一端部を貼着などによって基部14に固定されている。また、第2シート部材16は、第1シート部材15よりも、アジテータ6の回転方向下流側に設けられている。網目状部材の網目状の隙間は、シリカの粒子は通過させるが、トナーの粒子は通過させない隙間である。具体的には、網目状の隙間が、3μm〜5μmの範囲内の隙間寸法である。5μm以下としたのは、使用しているトナーの粒子径が約6μmであるためである。3μm以上としたのは、単体シリカの粒子径が約20nmであり、シリカ同士が凝集して数百nmくらいになることもあるためである。尚、この隙間寸法は、使用するトナーおよびシリカの粒子径により、適宜変更可能であり、この範囲に限定されない。
【0028】
第3シート部材17は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等の可撓性の部材からなる。第3シート部材17の一端部は、貼着などによって第1シート部材15の基部14に固定されていない他端部と連結されている。また第3シート部材17の他端部は、貼着などによって第2シート部材16の基部14に固定されていない他端部と連結されている。
【0029】
以上のように第1シート部材15と、第2シート部材16と、第3シート部材17とを連結させることで、シリカを捕獲するための空間18が形成される。この空間18の基部14の軸方向と直交する方向の断面は、図1に示すように略三角形となっている。
<実施形態の作用効果>
【0030】
アジテータ6は、第1シート部材15と、第2シート部材16と、第3シート部材17とで形成された空間18を有する。空間18は、アジテータが回転駆動されると、トナー収容室2の底壁部に溜まったトナーに入り込む。このとき、トナーから遊離した遊離シリカが、第2シート部材16の網目状の隙間を通って、空間18に入ってくる。網目状の隙間は、トナーの微粒子は通さないため、トナーの微粒子のみアジテータ6の回転により、第2シート部材16によって搬送される。すなわち、第2シート部材16は、底壁部の内面に摺接しながら回転するので、トナーが十分に搬送される。
【0031】
アジテータ6がさらに回転して空間18が開口4付近まで来たときは、一部のトナーが開口4を通って現像室3内に流れ込む。このとき、空間18に捕獲されたシリカは、空間18に留まったままである。よって、シリカが現像室3へ移動することはないため、シリカが層厚規制ブレード13と現像ローラ11の間に挟まって、画像形成に影響を与えることはない。
【0032】
第2シート部材16は、網目状隙間が3μm〜5μmの隙間寸法を有するように形成されている。隙間寸法が5μmより大きいと、トナーが第2シート部材16を通過してしまい、トナー収容室2内のトナーを良好に攪拌できない一方、隙間寸法が3μmより小さいと遊離シリカが空間18に入り難くなるためである。従って、3〜5μmの隙間寸法を有することにより、確実に遊離シリカのみを空間18に捕獲することができる。
<第2実施形態>
【0033】
図3は、アジテータ6の第2実施形態を説明する斜視図である。 図3に示すように、第1シート部材15と、第2シート部材16と、第3シート部材17とから形成された空間18を閉空間にしてもよい。具体的には、第1シート部材15の基部14の軸方向における一端部と、第2シート部材16の基部14の軸方向における一端部と、第3シート部材17の基部14の軸方向における一端部を貼着などによって連結させる第4シート部材19を設ける。また、第4シート部材19と同様に、第1シート部材15の基部14の軸方向における他端部と、第2シート部材16の基部の軸方向における他端部と、第3シート部材17の基部14の軸方向における他端部を貼着などによって連結させる第5シート部材20を設ける。
【0034】
第4シート部材19及び第5シート部材20を設けることで、閉空間が形成されるため、より確実にシリカを空間18に留めることが出来る。
<第3実施形態>
【0035】
図4は、アジテータ6の他の実施形態を説明する斜視図である。図4に示すように、実施形態1における第1シート部材15、第2シート部材16、第3シート部材17を一体形成してもよい。実施形態と同様にシリカを捕獲するための空間21ができ、トナーから遊離した遊離シリカをトナー収容室2内で捕獲出来るため、良好に画像を形成することが出来る。
<変形例>
【0036】
また、上記実施形態のトナー収容容器1は、現像ローラ11と、供給ローラ12と、層厚規制ブレード13を有しているが、本発明のトナー収容容器1は、これらに限定されるものではない。具体的には、本発明のトナー収容容器1は、現像ローラ11と、供給ローラ12と、層厚規制ブレード13を備えていなくてもよい。また、本発明のトナー収容容器1は、図示しない感光体ドラムをさらに備えていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 トナー収容容器
2 トナー収容室
3 現像室
6 アジテータ
11 現像ローラ
12 供給ローラ
13 層厚規制ブレード
14 基部
15 第1シート部材
16 第2シート部材
17 第3シート部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外添剤が混合されたトナーを収容するケースと、
前記ケースに収容されたトナーを攪拌するアジテータと、を備え、
前記アジテータは、
前記ケースに回転可能に支持される基部と、
前記基部に一端部を固定された第1シート部材と、
前記基部に一端部を固定され、他端部が前記ケースの内部に摺接する第2シート部材と、
前記第1シート部材の他端部と前記第2シート部材の他端部を連結する第3シート部材と、を備え、
前記第2シート部材は、前記第1シート部材よりも前記基部の回転方向下流側に配置され、前記外添剤の粒子は通過させるが前記トナーの粒子は通過させない網目状隙間を有し、
前記第1シート部材及び前記第3シート部材は、前記外添剤および前記トナーの粒子のいずれも通過させないように構成されることを特徴とする、トナー収容容器。
【請求項2】
前記網目状隙間は、3μm〜5μmの隙間寸法を有するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のトナー収容容器。
【請求項3】
前記第2シート部材は、前記第1シート部材及び前記第3シート部材と一体形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のトナー収容容器。
【請求項4】
前記アジテータは、さらに、前記第1シート部材の前記基部の軸方向の一端部と前記第2シート部材の前記基部の軸方向の一端部と前記第3シート部材の前記基部の軸方向の一端部とを連結させる第4シート部材と、
前記第1シート部材の前記基部の軸方向の他端部と前記第2シート部材の前記基部の軸方向の他端部と前記第3シート部材の前記基部の軸方向の他端部とを連結させる第5シート部材と、を備え、
前記第4シート部材及び前記第5シート部材は、前記外添剤および前記トナーの粒子のいずれも通過させないように構成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のトナー収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−103528(P2012−103528A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252522(P2010−252522)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】