トラクション係数を低下させることによって大きい低速、中速および高速エンジン用のエンジンオイル組成物の燃料効率を向上させる方法
本発明は、基油間の動粘度の差が少なくとも30mm2/秒である異なる動粘度の少なくとも2種の基油を使用して油を調合し、そして1種以上の清浄剤を組成物に添加することにより油のトラクション係数を低下させることよって、大きい低速、中速および高速エンジン用のエンジンオイル組成物の燃料効率を向上させる方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加潤滑油調合物(又は添加剤を加えた潤滑油配合物)を使用する大きい低速、中速および高速エンジンの運転に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋および固定出力用途向けに設計されたディーゼルエンジンは、20以下のシリンダーを有する2サイクルか4サイクルかのどちらかであることができ、典型的には低速、中速または高速ディーゼルエンジンに分類される。これらのエンジンは、残留燃料油または重油から天然ガスまでの範囲の多種多様な燃料を燃やし(ディーゼル圧縮または火花点火)、舶用推進、海洋補助(船舶発電)、分散発電、および熱電併給(CHP)向けに最も一般的に用いられている。そのようなエンジンの潤滑は、全損(すなわち、シリンダー油によってシリンダーに直接供給される潤滑油)であるかまたは油だめを含む再循環であることができる。臨界エンジン部品の潤滑は、ピストンリング、シリンダーライナー、ベアリング、ピストン冷却、燃料ポンプ、エンジン制御水力学などを含む。燃料が典型的にはこれらのエンジンを運転する主要コストであり、船舶コンテナー輸送に用いられる典型的な12シリンダー、90cm口径低速ディーゼルエンジンは、$480/MTの今日の価格で年間約$33Mまでの重油を燃やすであろう。それ故、1%ほどの少ない燃料効率ゲインが船舶経営者に約$330kまでの年間節約をもたらすであろう。加えて、International Marine Organization(国際海事機関)、U.S.Environmental Protection Agency(米国環境保護庁)およびCalifornia Air Resources Board(カリフォルニア大気資源委員会)などの、政府機関は、これらのエンジンに対する排出物規定を法制化中である。燃料効率の向上は、相応に排出物(CO2、SOx、NOxおよび粒子状物質)を低減するだろうし、それは幾つかの排出権取引価値をもたらすはずである。
【0003】
金属−金属接触を防止するのに十分な油膜厚さを提供することに加えて、これらのエンジン用の潤滑油は、ピストンリングおよびシリンダーライナーの腐食摩耗を最小限にするために硫黄を含有する燃料の燃焼によって形成される酸を中和すること、燃料燃焼によっておよび生のまたは部分燃焼した燃料での潤滑油の汚染によって形成されるエンジンデポジットを最小限にすること、これらのエンジンにおける極端な熱による潤滑油の熱/酸化分解に抵抗すること、熱をエンジンから移動させることなどを含む、様々なその他のストレスに対処するように設計されている。
【0004】
長期的な必要条件は、潤滑油が、とりわけピストンおよびピストンリングなどの決定的に重要な構成要素に関して、エンジンの高温環境内で清浄度を維持しなければならないことである。生のおよび部分燃焼した燃料燃焼生成物、水、すすならびに油それ自体の熱/酸化分解物のエンジンにおける蓄積によるエンジン中のエンジンオイルの汚染は、エンジンオイルのエンジン清浄度性能を劣化させ得る。それ故、エンジンオイルは、良好な清浄度品質を有するように、かつ、汚染および熱/酸化分解によるそれらの品質の劣化に抵抗するように調合されることが望ましい。
【0005】
特許文献1は、液体の油混和性ポリイソブチレン(PIB)ならびに清浄剤、好ましくは過塩基性フェノレート、フェニレート、サリチレートまたはスルホネートの1つ以上、酸化防止剤、摩耗防止剤および分散剤を含む添加剤パッケージと組み合わせて中重質グループIもしくはグループII中性ベースオイル、典型的には300〜500−600SUS(約12mm2/秒以下の100℃でのKV)を含む海洋および固定低速ディーゼルエンジンにおける使用のための向上した清浄度および負荷容量ならびに低下したポートデポジット特性のディーゼルエンジンシリンダー油に関する。完成潤滑油は、範囲15〜25mm2/秒の100℃でのKVおよび範囲40〜100mg KOH/gの全塩基価を有する。
【0006】
酸化、硝化およびデポジット形成に対する油の耐性の増加によって立証されるような向上した寿命のガスエンジンオイルが特許文献2の主題である。当該特許のガスエンジンオイルは、主要量の潤滑粘度のベースオイルと、約250以下の全塩基価(TBN)を有する少なくとも1つのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩および前述の成分より低いTBNを有する第2アルカリもしくはアルカリ土類金属塩を含む清浄剤の混合物を含む少量の添加剤混合物とを含む低灰分ガスエンジンオイルである。この第2アルカリもしくはアルカリ土類金属塩のTBNは典型的には、前述の成分のそれの約半分以下であろう。
【0007】
特許文献3は、主要量の潤滑粘度のベースオイルならびに1つ以上の金属サリチレート清浄剤と1つ以上の金属フェノレートおよび/または金属スルホネート清浄剤との少量の混合物を含む天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に関する。
【0008】
潤滑油基油は、約5〜20cSt、より好ましくは約7〜16cSt、最も好ましくは約9〜13cStの100℃での動粘度を典型的には有するあらゆる天然または合成潤滑ベースオイル基材油留分である。好ましい実施形態においては、粘度指数向上剤の使用は、本発明調合物を製造するために使用される潤滑油ベースオイル留分からの100℃で粘度約20cSt以上の油の排除を可能にする。それ故、好ましいベースオイルは、たとえあったとしても、少量の重質留分;たとえば、たとえあったとしても、少量の100℃で粘度20cSt以上の潤滑油留分を含有するものである。
【0009】
潤滑油基油は、天然潤滑油、合成潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な潤滑油基油としては、原油の芳香族および極性成分を(溶媒抽出するよりもむしろ)水素化分解することによって製造される水素化分解体基油だけでなく、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化によって得られる基油が挙げられる。好適な基油としては、APIカテゴリーI、IIおよびIIIのものが挙げられ、ここで、飽和物レベルおよび粘度指数は、
グループI−それぞれ、90%未満および80〜120;
グループII−それぞれ、90%超および80〜120;ならびに
グループIII−それぞれ、90%超および120超
である。
【0010】
清浄剤の混合物は、少なくとも0.65重量%硫酸塩灰分の潤滑油を達成するのに十分な量でその他の金属塩または金属塩の群(下に列挙される)と組み合わせて使用される、約150超〜300以上、好ましくは約160〜300の高TBNを有する1つ以上の金属スルホネート、サリチレート、フェノレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第1金属塩または金属塩の群、約50超〜150、好ましくは約60〜120の中TBNを有する1つ以上の金属サリチレート、金属スルホネート、金属フェノレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第2金属塩または金属塩の群、ならびに約10〜50、好ましくは約20〜40のTBNを有する、中性または低TBNと同定される1つ以上の金属スルホネート、金属サリチレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第3金属塩または金属塩の群を含み、中プラス中性/低TBN清浄剤の総量は、約0.7容積%以上(活性成分)、好ましくは約0.9容積%以上(活性成分)、最も好ましくは約1容積%以上(活性成分)であり、ここで、中または低/中性TBN清浄剤の少なくとも1つは金属サリチレートであり、好ましくは中TBN清浄剤の少なくとも1つは金属サリチレートである。高TBN清浄剤の総量は、約0.3容積%以上(活性成分)、好ましくは約0.4容積%以上(活性成分)、最も好ましくは約0.5容積%(活性成分)である。混合物は、中または中性サリチレートが必須成分である状態で、少なくとも2つの異なるタイプの塩を含有する。高TBN清浄剤対中プラス中性/低TBN清浄剤の容積比(活性成分を基準とする)は、約0.15〜3.5、好ましくは0.2〜2、最も好ましくは約0.25〜1の範囲にある。
【0011】
清浄剤の混合物は、清浄剤混合物中の活性成分を基準として約10容積%以下の量で、好ましくは活性成分を基準として約8容積%以下、より好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として6容積%以下、最も好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として、約1.5〜5.0容積%の量で潤滑油調合物に添加される。好ましくは、すべてのTBNのうち使用される金属サリチレートの総量は、金属サリチレートの活性成分を基準として、0.5容積%〜4.5容積%の範囲にある。
【0012】
特許文献4は、100℃で約40cSt(mm2/秒)の粘度を有するPAOと、100℃で約2.0cSt(mm2/秒)以下の粘度を有するエステルとのブレンドであって、PAOとエステルとのブレンドがPAOの粘度指数以上の粘度指数を有するブレンドを含む完成自動車ギア潤滑油およびギアオイルの調製に有用な潤滑油組成物、自動車ギア潤滑組成物および流体に関する。この組成物は、増粘剤、酸化防止剤、阻害剤パッケージ、防錆添加剤、分散剤、清浄剤、摩擦改良剤、トラクション改良添加剤、乳化破壊剤、消泡剤、染料および曇り防止剤をさらに含有してもよい。
【0013】
特許文献5は、低、中および高TBN清浄剤の少なくとも2つ、好ましくはサリチル酸カルシウムを含む潤滑油組成物用の清浄剤添加剤に関する。この清浄剤は、グループII基油、グループIII基油またはワックス異性化体基油およびそれらの混合物の1つと、任意選択の少量の共基油とを含む潤滑油組成物中に存在する。共基油としては、ポリアルファオレフィンオリゴマーの低および中および高粘度油、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、その他の炭化水素油、補充のヒドロカルビル芳香族化合物などが挙げられる。
【0014】
特許文献6は、潤滑油が100℃で96(mm2/秒)超の第1基油と第2基油との間の粘度差の少なくとも2つの基油を含む、向上したマイクロピッチング特性のための潤滑油ブレンドに関する。少なくとも1つの基油は、6mm2/秒未満だが2mm2/秒超の粘度のポリアルファオレフィンであり、第2基油は、100℃で100mm2/秒超だが300mm2/秒未満の粘度の合成油である。第2基油は、高粘度ポリアルファオレフィンであることができる。
【0015】
特許文献7は、100℃で96cSt(mm2/秒)超の第1基油と第2基油と間の粘度差の少なくとも2つの基油を含む潤滑油ブレンドに関し、潤滑油は改善された排気を示す。このブレンドは、100℃で10cSt(mm2/秒)未満だが2cSt(mm2/秒)超の粘度を有する少なくとも1つの合成PAOと100℃で100cSt(mm2/秒)超だが300cSt(mm2/秒)未満の粘度を有する第2合成油とを含有する。潤滑油は、摩耗防止剤、酸化防止剤、消泡剤、乳化破壊剤、清浄剤、分散剤、金属不動態化剤、摩擦低減剤、防錆剤添加剤およびそれらの混合物を含有することができる。
【0016】
特許文献8は、少なくとも2つの基油を含む潤滑油であって、第1基油が100℃で40cSt(mm2/秒)超の粘度および少なくとも10%未満アルゴリズムで粘度の関数としての分子量分布(MWD):
MWD=0.2223+1.0232*log(cSt単位の100℃でのKv)
を有し、第2基油が100℃で10cSt(mm2/秒)未満の粘度を持った潤滑油に関する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で30cSt(mm2/秒)超である。好ましくは第1基材油は、メタロセン触媒PAO基油である。第2基材油は、GTL潤滑油、ワックス由来潤滑油、PAO、ブライトストック、PIBと一緒のブライトストック、グループI基油、グループII基油、グループII基油およびそれらの混合物から選択することができる。潤滑油は、清浄剤を含む添加剤を含有することができる。好ましくは第1基材油は、100℃で300cSt(mm2/秒)超の粘度を有し、第2基材油は、100℃で1.5cSt mm2/秒〜6cSt(mm2/秒)の粘度を有する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で96cSt(mm2/秒)超である。
【0017】
特許文献9は、少なくとも2つの基油を含む潤滑油であって、第1基油が100℃で少なくとも300cSt(mm2/秒)の粘度および少なくとも10%未満アルゴリズムで粘度の関数としての分子量分布(MWD):
MWD=0.2223+1.0232*log(cSt単位の100℃でのKV)
を有し、第2基油が100℃で100cSt(mm2/秒)未満の粘度を有する潤滑油に関する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で250cSt(mm2/秒)超である。好ましくは第1基材油は、メタロセン触媒PAO基油である。第2基材油は、GTL基油、ワックス由来基油、PAO、ブライトストック、PIBと一緒のブライトストック、グループI基油、グループII基油、グループIII基油、グループV基油、グループVI基油およびそれらの混合物から選択することができる。潤滑油は、清浄剤を含む添加剤を含有することができる。
【0018】
特許文献10は、清浄剤を含有する長寿命ガスエンジン潤滑油に関する。この潤滑油は、主要量の潤滑粘度のベースオイルならびに少量の1つ以上の金属スルホネートおよび/またはフェノレートと1つ以上の金属サリチレート清浄剤との混合物を含み、混合物中のすべての清浄剤は同じまたは実質的に同じ全塩基価(TBN)を有する。
【0019】
潤滑油基油は、約5〜20cSt(mm2/秒)、より好ましくは約7〜16cSt(mm2/秒)、最も好ましくは約9〜13cSt(mm2/秒)の100℃での動粘度を典型的には有するあらゆる天然または合成潤滑基油留分である。好ましい実施形態においては、粘度指数向上剤の使用は、本発明調合物を製造するために使用される潤滑油ベースオイル留分からの100℃で粘度20cSt(mm2/秒)以上の油の排除を可能にする。それ故、好ましいベースオイルは、たとえあったとしても、少量の重質留分;たとえば、たとえあったとしても、少量の100℃で粘度20cSt(mm2/秒)以上の潤滑油留分を含有するものである。
【0020】
潤滑油基油は、天然潤滑油、合成潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な潤滑油基油としては、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化によって得られる基油、ならびに原油の芳香族および極性成分を(溶媒抽出することよりもむしろ)水素化分解することによって製造される水素化分解物基油が挙げられる。好適な基油としては、APIカテゴリーI、IIおよびIIIのものが挙げられ、ここで、飽和物レベルおよび粘度指数は、
グループI−それぞれ、90%未満および80〜120;
グループII−それぞれ、90%超および80〜120;ならびに
グループIII−それぞれ、90%超および120超
である。
【0021】
清浄剤は、1つ以上の金属スルホネートおよび/または金属フェノレートと1つ以上の金属サリチレートとの混合物である。金属は、あらゆるアルカリもしくはアルカリ土類金属;たとえば、カルシウム、バリウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、より好ましくはカルシウム、バリウムおよびマグネシウムである。混合物に使用される金属塩のそれぞれが、混合物中のその他の金属塩と同じまたは実質的に同じTBNを有することが本発明潤滑油の特徴であり;したがって、この混合物は、1つ以上の金属塩のそれぞれが低TBN清浄剤であるか、またはそれぞれが中TBN清浄剤であるかまたはそれぞれが高TBN清浄剤である、1つ以上の金属サリチレートと組み合わせられた1つ以上の金属スルホネートおよび/または金属フェノレートを含むことができる。好ましくはそれぞれは低TBN清浄剤であり、各金属清浄剤は約100より下の同じまたは実質的に同じ類似のTBNを有する。本明細書および添付クレームの目的のためには、金属塩について、低TBNとは100未満のTBNを意味し;中TBNとは100〜250未満のTBNを意味し;そして高TBNとは約250以上のTBNを意味する。同じまたは実質的に類似のTBNとは、所与のTBNカテゴリー;たとえば、低、中および高内としてさえ、塩のTBNが同じTBNカテゴリー内に断じて入らないが絶対的には互いに近いことを意味する。したがって、スルホネートおよび/またはフェノレートと低TBNのサリチレートとの混合物は、100未満のTBNの塩で構成されるのみならず、各塩は、混合物中のその他の塩;たとえば、TBN64のサリチレートとペアにされたTBN60のスルホネート、またはTBN64のサリチレートとペアにされたTBN65のフェノレートのそれと実質的に同じTBNを有するであろう。したがって、個々の塩は、適用できるTBNカテゴリーの対極端での、または互いに実質的に変わるTBNを持たないであろう。
【0022】
塩のTBNは、約15%以下、好ましくは約12%以下、より好ましくは約10%以下だけ異なるであろう。
【0023】
1つ以上の金属スルホネートおよび/または金属フェノレート、ならびに1つ以上の金属サリチレートは、たとえば、5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20の重量比での混合物として清浄剤に利用される。
【0024】
清浄剤の混合物は、清浄剤混合物中の活性成分を基準として約10容積%以下の量で、好ましくは活性成分を基準として約8容積%以下、より好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として約6容積%以下、最も好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として約0.3容積%〜3容積%の量で潤滑油調合物に添加される。
【0025】
特許文献11は、ベースオイルおよび錯体の形態での油溶性の過塩基性清浄剤添加剤を含む、2ストローク・クロスヘッド海洋ディーゼルエンジン用の潤滑油であって、清浄剤の塩基性物質が2つ以上の界面活性剤で安定化されている潤滑油に関する。2つ以上の界面活性剤は、(1)硫化および/または非硫化フェノールならびにフェノール界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;(2)硫化および/または非硫化サリチル酸ならびにサリチル酸系界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;または(3)硫化または非硫化フェノール、硫化または非硫化サリチル酸である少なくとも3つの界面活性剤ならびにフェノールまたはサリチル酸系界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;または(4)硫化または非硫化フェノール、硫化または非硫化サリチル酸である少なくとも3つの界面活性剤ならびに少なくとも1つの硫酸界面活性剤の混合物であることができる。
【0026】
基油は、潤滑粘度の油であり、クロスヘッドエンジンのシステム潤滑に好適なあらゆる油であってもよい。潤滑油は好適には動物、植物または鉱物油であってもよい。好適には潤滑油は、ナフテン系ベース、パラフィン系ベースまたは混合ベースオイルなどの、石油由来潤滑油である。あるいは、潤滑油は合成潤滑油であってもよい。好適な合成潤滑油としては、ジ−オクチルアジペート、ジ−オクチルセバケートおよびトリデシルアジペートなどのジエステルを含む、合成エステル潤滑油、またはポリマー炭化水素潤滑油、たとえば、液体ポリイソブチレンおよびポリアルファオレフィンが挙げられる。一般的に、鉱油が用いられる。潤滑油は、一般に潤滑油組成物の60質量%超、典型的には70質量%超を占め、典型的には、2〜40mm2/秒、たとえば、3〜15mm2/秒の100℃での動粘度、および80〜100、たとえば、90〜95の粘度指数を有する。
【0027】
別のクラスの潤滑油は、精製プロセスが中間および重質留出物留分を高温および中圧で水素の存在下でさらに分解する、水素化分解油である。水素化分解油は典型的には、2〜40、たとえば、3〜15mm2/秒の100℃での動粘度、および典型的には100〜110、たとえば、105〜108の範囲の粘度指数を有する。
【0028】
ブライトストックは、28〜36mm2/秒の100℃での動粘度を一般に有する減圧残油から溶媒抽出され、脱瀝されている、そして潤滑油組成物の質量を基準として、30質量%未満、好ましくは20未満、より好ましくは15未満、最も好ましくは5質量%未満などの、10質量%未満の割合で典型的には使用されるベースオイルを意味する。
【0029】
特許文献12は、潤滑粘度の油、分散剤の、70〜45の範囲のTBN、油組成物の質量を基準として、0〜0.2質量%の窒素を有する少なくとも1つのサリチル酸カルシウムを含む清浄剤、および少量の1つ以上の共添加剤を含む清浄剤ガス燃料エンジン潤滑油に関する。ベースオイルは、あらゆる動物、植物もしくは鉱物油または合成油であることができる。ベースオイルは、組成物の60質量%超の割合で使用される。この油は典型的には、2〜40、たとえば、3〜15mm2/秒の100℃での粘度および80〜100の粘度指数を有する。100℃で2〜40mm2/秒の粘度および100〜110の粘度指数を有する水素化分解油をまた使用することができる。28〜36mm2/秒の100℃での粘度を有するブライトストックはまた、典型的には30質量%未満、好ましくは20未満、最も好ましくは5質量%未満の割合で使用することができる。
【0030】
特許文献13は、80〜120の粘度指数、少なくとも90質量%の飽和物、0.03質量%以下の硫黄および少なくとも1つの清浄剤を有する主要量の潤滑油を含む、95ppm超のホウ素含有率を有するガスエンジンオイルに関する。金属サリチレートが好ましい清浄剤である。
【0031】
特許文献14は、高粘度PAOなどの高粘度合成炭化水素、液体水素化ポリイソプレン、または100℃で40〜1000cSt(mm2/秒)の粘度を有するエチレン−アルファオレフィンコポリマー、100℃で1〜10cSt(mm2/秒)の粘度を有する低粘度合成炭化水素、任意選択的に100℃で1〜10cSt(mm2/秒)の粘度を有する低粘度エステル、および任意選択的に25重量%以下の添加剤パッケージを含有する潤滑油組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】米国特許第6,339,051号明細書
【特許文献2】米国特許第5,726,133号明細書
【特許文献3】米国特許第6,191,081号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0059563号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0191032号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0276355号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0289897号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0298990号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0207475号明細書
【特許文献10】米国特許第6,140,281号明細書
【特許文献11】米国特許第6,645,922号明細書
【特許文献12】米国特許第6,613,724号明細書
【特許文献13】米国特許第7,101,830号明細書
【特許文献14】米国特許第4,956,122号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、インターフェイス面(又は接触面)速度が少なくとも約3mm/秒、好ましくは少なくとも約10mm/秒に達する、潤滑油を使用して潤滑される、大きい低速、中速および高速エンジンの燃料経済性を、前記エンジンを潤滑することによりそのエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって向上させる方法に向けられている。
これは、100℃で、13〜30mm2/秒、好ましくは16〜30mm2/秒、より好ましくは18〜25mm2/秒、最も好ましくは20〜25mm2/秒の動粘度、および少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gの塩基価(BN)を有し、
2つの異なるベースオイル、
100℃で、2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の動粘度を有する、グループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイル、好ましくはグループIIIおよびグループIVベースオイル、より好ましくはグループIIIベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1ベースオイルと、100℃で、少なくとも38mm2/秒、好ましくは38〜1200mm2/秒、より好ましくは38〜600mm2/秒、さらにより好ましくは38〜300mm2/秒未満、最も好ましくは38〜150mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドを含むベースオイル、並びに
(活性成分に基づいて)潤滑油の6重量%を超えて40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%の全処理レベルで、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウムサリチレート、フェノレート、カルボキシレート、スルホネート、サリチレートとフェノレートとの混合物もしくはフェノレートとカルボキシレートとの混合物、好ましくはフェノレート、サリチレートおよびカルボキシレートまたはフェノレートとカルボキシレートとの混合物もしくはフェノレートとサリチレートとの混合物から選択される清浄剤
を含有する潤滑油を、エンジンオイルとして使用することによって達成され、
ここで、燃料経済性の向上は、二峰性ではない又はグループIおよび/またはグループII基油のみに基づく又は100℃で少なくとも38mm2/秒のKVを有するグループIV基油をまったく含有しない又は異なる清浄剤もしくは清浄剤混合物を含有するエンジンオイルのトラクション係数と比較して、その二峰性ブレンドを用いるそのエンジンオイルのトラクション係数がより低いことによって立証される。
【0034】
「表面速度」とは、エンジン中のインターフェイス面、たとえばシリンダー壁およびピストン、またはベアリングのインターフェイス面が、エンジンが動作するときに互いに通りすぎる速度を意味する。この表面速度は、インターフェイス面についての潤滑レジームが境界、流体力学的または混合(境界/流体力学的)であるかどうかに影響を及ぼす主な因子である。
【0035】
少なくとも約30mm/秒、好ましくは少なくとも60mm/秒、より好ましくは少なくとも75mm/秒、最も好ましくは少なくとも100mm/秒の表面速度に達するエンジンについては、第1ベースオイルは、100℃で、2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の動粘度を有するグループII、グループIIIおよびグループIV基油、好ましくはグループIIIおよびグループIV基油の1種以上であり、第2ベースオイルは、少なくとも38mm2/秒、好ましくは38〜1200mm2/秒、より好ましくは38〜600mm2/秒、さらにより好ましくは38〜300mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルの1種以上であり、清浄剤は、あらゆるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、サリチレート、フェノレート、スルホネート、カルボキシレートおよびそれらの混合物であることが可能であり、用いられる清浄剤の総量は、(活性成分に基づいて)潤滑油の6重量%を超えて40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、最も好ましくは12〜25重量%の範囲にあり、潤滑油は、少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのTBNおよび、100℃で6〜30mm2/秒、好ましくは8〜25mm2/秒、より好ましくは12〜20mm2/秒の動粘度を有する。
【0036】
少なくとも3mm/秒の表面速度に達するエンジンについての別の実施形態においては、第1ベースオイルは、100℃で2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒のKVを有する、1種以上のグループII、グループIIIおよびグループIV基油、好ましくはグループIIIおよびグループIV基油であり、第2ベースオイルは、100℃で38mm2/秒から300mm2/秒未満、好ましくは38〜150mm2/秒のKV(又は動粘度)を有する1種以上のグループIVベースオイルであり、清浄剤は、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、スルホネート清浄剤またはアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、フェノレートとスルホネートとの混合物であり、清浄剤の総量は、(活性成分に基づいて)潤滑油の6重量%を超えて40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、さらにより好ましくは12〜25重量%の範囲にあり、ここで、フェノレートは、潤滑油の総重量を基準として、5〜30重量%、好ましくは8〜30重量%、より好ましくは10〜30重量%の範囲の量で存在し、スルホネートは、1〜10重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜10重量%の範囲の量で存在し、潤滑油は、少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのBN、および100℃で13〜30mm2/秒、好ましくは16〜30mm2/秒、より好ましくは18〜25mm2/秒の動粘度を有する。
【0037】
別の実施形態において本発明は、
第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差が少なくとも30mm2/秒であり、100℃で2〜16mm2/秒の動粘度を有するグループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイルからなる群から選択される第1ベースオイルと、100℃で少なくとも38mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される第2ベースオイルと、並びに
潤滑油の総重量を基準として、6重量%を超えて40重量%まで(活性成分)の量での全処理レベルでアルカリおよび/またはアルカリ土類金属サリチレート、フェノレート、カルボキシレート、スルホネート、フェノレートとサリチレートとの混合物もしくはフェノレートとカルボキシレートとの混合物から選択される清浄剤
を含み、100℃で6〜30mm2/秒、好ましくは13〜30mm2/秒の動粘度、および少なくとも5mg KOH/gの塩基価を有する潤滑油を、エンジンオイルとして用いることにより、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも約3mm/秒、好ましくは少なくとも約30mm/秒の表面速度に達する、大きい低速、中速および高速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の向上は、グループIIベースオイル、グループIIIベースオイルもしくはグループIVベースオイルの単一ベースオイル成分を含む、又は30mm2/秒未満の第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差を有する同等の(又は相当する)ベースオイルのブレンドを含む又はグループIおよび/またはグループIIベースオイルのみに基づく又は100℃で少なくとも38mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルをまったく含有しない、100℃で同じ動粘度のエンジンオイルのトラクション係数より、そのエンジンオイルがより低いトラクション係数を有することによって立証される方法に向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】グループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)ならびにグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 300)をベースとする調合物(又は配合物)であって、すべてがフェノレートとスルホネートとの混合物を含む同じ清浄剤パッケージを利用し、すべての調合物が70の調合BNを有する清浄剤を含有し、ブレンドが対照油Aに対して動粘度の点で異なる調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を示す。
【図2】異なる清浄剤を利用する、100℃で20mm2/秒のKV(又は動粘度)にブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)をベースとする調合物であって、70の調合BNを有する清浄剤を含有する油調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)およびベースオイルの混合物だけを含有するブレンドである対照油B(Ref.B)に対して示す。
【図3A】フェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を利用する、異なる動粘度にブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよび2種の異なるグループIVベースオイル(PAO 150およびPAO 300)をベースとする調合物であって、すべての調合物が70の調合BNを有する清浄剤を含有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)に対して示す。
【図3B】異なるブレンド動粘度にブレンドされた、そしてフェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物(40および70の異なる調合物塩基価にブレンドされた)を利用する、グループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよび2つの異なるグループIVベースオイル(PAO 40およびPAO 150)をベースとする調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)(フェノレート/スルホネート清浄剤を含有する)およびグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルとグループIV(PAO 150)ベースオイルとのみのブレンドである対照油B(Ref.B)に対して示す。
【図4】フェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を利用する、異なる動粘度のグループIベースオイルのブレンドをベースとする調合物ならびに異なるブレンド動粘度にブレンドされた、そしてフェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を含有する、異なる動粘度のグループIVベースオイル(PAO 8およびPAO 40)のブレンドをベースとする調合物であって、70の調合BNを有する清浄剤を含有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)およびグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルとグループIV(PAO 150)ベースオイルとのみのブレンドである対照油B(Ref.B)に対して示す。
【図5】フェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を含有するグループI(12mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)をベースとする調合物ならびにフェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を含有するグループIV(PAO 40およびPAO 150)ベースオイルと混合された、異なる動粘度グループII(3mm2/秒および12mm2/秒)ベースオイルをベースとする調合物であって、すべての調合物が70の調合BNを有する清浄剤を含有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)およびグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルとグループIV(PAO 150)ベースオイルとのみのブレンドである対照油B(Ref.B)に対して示す。
【図6A】異なる清浄剤、フェノレート/サリチレートまたはフェノレート/スルホネートの混合物を利用する、20mm2/秒の100℃でのブレンドKVにブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIV(PAO 150)ベースオイルをベースとする調合物であって、すべての調合物が70の調合BNを有する清浄剤を含有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)に対して示す。
【図6B】フェノレートおよびカルボキシレート清浄剤かフェノレートおよびサリチレート清浄剤かのどちらかの混合物を用いるグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIV(PAO 150)ベースオイルをベースとする2つの調合物であって、70の調合BNを有する清浄剤を含有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)およびグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルとグループIV(PAO 150)ベースオイルとのみの混合物である対照油B(Ref.B)に対して示す。
【図7】フェノレート清浄剤のみかもしくはサリチレート清浄剤のみかまたは異なる比率でのサリチレート清浄剤とフェノレート清浄剤との混合物またはフェノレート、スルホネートおよびサリチレート清浄剤の混合物を利用する、100℃で20mm2/秒のブレンドKVにブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)をベースとする調合物であって、すべての調合物が70の調合BNを有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)に対して示す。
【図8】フェノレート清浄剤のみ、サリチレート清浄剤のみまたは異なる比率でのフェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を利用する、100℃で20mm2/秒のブレンドKVにブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)をベースとする調合物であって、すべての調合物が70の調合BNを有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)に対して示す。
【図9】すべてが100℃で20mm2/秒のKVおよび70のBNにブレンドされた、フェノレート清浄剤だけか異なる比率でのフェノレート清浄剤とスルホネート清浄剤との混合物かのどちらかを用いる、グループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)をベースとする調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)に対して示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の方法は、基油の二峰性混合物を利用する。本明細書において二峰性とは、それぞれが100℃で異なる動粘度を有する少なくとも2つの基油の混合物であって、二峰性ブレンド中の少なくとも2つの基油間の100℃での動粘度の差が少なくとも30mm2/秒である混合物を意味する。少なくとも2つの基油の混合物は、少なくとも38mm2/秒の100℃でのKVを有する1種以上の高動粘度グループIV基油と組み合わせて、その基油がAPI分類を用いてグループII、グループIIIおよびグループIV基油からなる群から選択される、2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の100℃での動粘度を有する1種以上の低動粘度基油を含む。
【0040】
本明細書でおよび添付特許請求の範囲で用いるところでは、用語「基油」および「ベースオイル」は、同意語としておよび同じ意味で用いられる。
【0041】
グループII基油は、90%以上の飽和物、0.03重量%以下の硫黄ならびに80以上および120未満の粘度指数を含有する油とAmerican Petroleum Institute(米国石油協会)によって分類されている。
【0042】
グループIII基油は、90%以上の飽和物、0.03%以下の硫黄および120以上の粘度指数を含有する油とAmerican Petroleum Instituteによって分類されている。グループIII基油は通常、減圧ガスオイル(又は軽油)などの、油原料油を水素化分解して不純物を除去し、かつ、存在する可能性があるすべての芳香族化合物を飽和させて非常に高い粘度指数の高パラフィン系潤滑油基材油を生成する工程、水素化分解基材油を、ノルマルパラフィンを異性化することによって分岐パラフィンへ転化する選択的接触水素化脱ロウ処理にかける工程、引き続き水素化精製してあらゆる残存芳香族化合物、硫黄、窒素またはオキシゲネートを除去する工程を含む3段階プロセスを用いて製造される。
【0043】
グループIII基材油はまた、(1)1つ以上のガス液化(GTL)物質;ならびに(2)合成ワックス、天然ワックスまたはワックス質原料から誘導される、水素化脱ロウ処理された、または水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理された基油および/またはベースオイルであって、ワックス質原料が、ガスオイル(又は軽油)、スラックワックス(天然油、鉱油もしくは合成油、たとえば、Fischer−Tropsch(フィッシャー−トロプシュ)原料油の溶媒脱ロウ処理に由来する)などの鉱油および/または非鉱油ワックス質原料油ならびにワックス質燃料ハイドロクラッカーボトム、ワックス質ラフィネート、水素化分解物、熱分解物、フ−ツ油もしくはその他の鉱物、鉱油などのワックス質基材油、または石炭液化もしくはシェール油から回収されるワックス質物質、約20個以上の、好ましくは約30個以上の炭素数の線状もしくは分岐ヒドロカルビル化合物などの非石油由来ワックス質物質さえならびにそのような基油および/またはベースオイルの混合物を含む基油および/またはベースオイルから誘導される基油および/またはベースオイルの1つまたは混合物を含む非従来的なまたは一般的でない基油および/またはベースオイルを包含する。
【0044】
GTL物質は、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレンおよびブチンなどのガス状炭素含有化合物、水素含有化合物および/または原料油としての成分から1つ以上の合成、結合、変換、転位、および/または分解/破壊的プロセスによって誘導される物質である。GTL基油および/またはベースオイルは、炭化水素;たとえば、それら自体、より簡単なガス状炭素含有化合物、水素含有化合物および/または原料油としての成分から誘導されるワックス質合成炭化水素から一般に誘導される潤滑粘度のGTL物質である。GTL基油および/またはベースオイルとしては、潤滑油沸点範囲で沸騰する油(1)たとえば、蒸留によってなど合成GTL物質から分離された/分留された、そしてその後低下した/低い流動点の潤滑油を製造するために、接触脱ロウ処理プロセス、または溶媒脱ロウ処理プロセスのどちらかまたは両方を含む最終ワックス処理工程にかけられた;(2)たとえば、水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された接触および/または溶媒脱ロウ処理された合成ワックスまたはワックス質炭化水素を含む、合成ワックス異性化体;(3)水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された接触および/または溶媒脱ロウ処理されたFischer−Tropsch(F−T)物質(すなわち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックスおよび可能な類似オキシゲネート);好ましくは水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/引き続き接触および/または溶媒脱ロウ脱ロウ処理されたF−Tワックス質炭化水素、または水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/引き続き接触(および/または溶媒)脱ロウ脱ロウ処理されたF−Tワックス、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0045】
GTL物質に由来するGTL基油および/またはベースオイル、とりわけ、水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/引き続き接触および/または溶媒脱ロウ処理されたワックスまたはワックス質原料、好ましくはF−T物質由来基油および/またはベースオイルは、100℃で約2mm2/秒〜約50mm2/秒の動粘度(ASTM D445)を有するとして典型的には特徴付けられる。それらは、−5℃〜約−40℃以下の流動点(ASTM D97)を有するとして典型的にはさらに特徴付けられる。それらはまた、約80〜約140以上の粘度指数(ASTM D2270)を有するとして典型的には特徴付けられる。
【0046】
加えて、GTL基油および/またはベースオイルは典型的には高パラフィン性(>90%飽和物)であり、非環状イソパラフィンと組み合わせてモノシクロパラフィンとマルチシクロパラフィンとの混合物を含有してもよい。そのような組み合わせにおけるナフテン系(すなわち、シクロパラフィン)含有率の比は、使用される触媒および温度とともに変動する。さらに、GTL基油および/またはベースオイルは典型的には、非常に低い硫黄および窒素含有率を有し、一般に約10ppm未満、より典型的には約5ppm未満のこれらの元素のそれぞれを含有する。F−T物質、とりわけF−Tワックスから得られるGTL基油および/またはベースオイルの硫黄および窒素含有率は、本質的に皆無である。加えて、リンおよび芳香族化合物の不在は、この物質を低SAP製品の調合にとりわけ好適にする。
【0047】
用語GTL基油および/またはベースオイルおよび/またはワックス異性化体基油および/またはベースオイルは、ターゲット動粘度を示すブレンドを製造するために製造プロセスにおいて回収されるような幅広い粘度範囲のそのような物質、そのような留分の2種以上の混合物、ならびに1種または2種以上の低粘度留分と1種又は2種以上のより高い粘度留分との混合物の各々の留分を包含すると理解されるべきである。
【0048】
GTL基油および/またはベースオイルが誘導される、GTL物質は好ましくは、F−T物質(すなわち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックス)である。
【0049】
好ましい実施形態においては、GTL基油および/またはベースオイルが誘導されるGTL物質は、F−T物質(すなわち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックス)である。スラリーF−T合成プロセスが、COおよび水素ならびに特に、より望ましいより高分子量パラフィンを製造するための高いSchultz−Flory速度論的アルファを提供するための触媒コバルト成分を含むF−T触媒を用いるものから原料を合成するために都合よく用いられてもよい。本プロセスはまた、当業者によく知られている。
【0050】
GTL基油および/またはベースオイル、水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理されたF−T物質由来基油、ならびにワックス異性化体または水素化脱ロウ処理体などの、ワックス由来の水素化脱ロウ処理された、もしくは水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理された基油の有用な組成物は、たとえば、米国特許第6,080,301号明細書;同第6,090,989号明細書、および同第6,165,949号明細書に列挙されている。
【0051】
本発明においてグループIII基材油としての使用にまた好適である、ワックス質原料から誘導される基油および/またはベースオイルは、鉱油、非鉱油、非石油、もしくは天然発生源、たとえばガスオイル、スラックワックス、ワックス質燃料ハイドロクラッカーボトム、炭化水素ラフィネート、天然ワックス、水素化分解物、熱分解物、フ−ツ油、石炭液化からのもしくはシェール油からのワックスの1つ以上などの原料油、またはその他の好適な鉱油、非鉱油、非石油、もしくは天然源由来ワックス質物質、約20個以上の、好ましくは約30個以上の炭素数の線状もしくは分岐ヒドロカルビル化合物、およびそのような異性化体/イソ脱ロウ体基油および/またはベースオイルの混合物の水素化脱ロウ処理された、または水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理されたワックス質原料油から誘導される潤滑粘度のパラフィン系流体である。
【0052】
スラックワックスは、溶媒または自動冷却脱ロウ処理によってF−Tワックス質油などの合成油または石油を含むあらゆるワックス質炭化水素油から回収されるワックスである。溶媒脱ロウ処理は、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、MEK/MIBKの混合物、MEKとトルエンとの混合物などの冷却された溶媒を用いるが、自動冷却脱ロウ処理は、プロパンまたはブタンなどの加圧液化低沸点炭化水素を用いる。
【0053】
F−Tワックス質油などの合成ワックス質油から確保されるスラックワックスは通常、ゼロまたは皆無の硫黄および/または窒素含有化合物含有率を有するであろう。石油から確保されるスラックワックスは、硫黄および窒素含有化合物を含有する可能性がある。そのようなヘテロ原子化合物は、水素異性化触媒のその後の被毒/不活性化を回避するためにたとえば水素化脱硫(HDS)および水素化脱窒素(HDN)によるような、水素化処理(そして水素化分解ではない)によって除去されなければならない。
【0054】
ワックス質基材油、たとえばスラックワックス、F−Tワックスまたはワックス質原料から潤滑油基油を製造するプロセスは、異性化プロセスと特徴付けられてもよい。スラックワックスが原料として使用される場合、それらは、さもなければ次工程で使用される水素異性化または水素化脱ロウ処理触媒を不活性化するであろう硫黄−および窒素−含有化合物を(触媒被毒または不活性化を効果的に回避するであろうレベルまで)下げるためにまたは除去するために当業者に既によく知られている条件下で予備水素化処理工程にかけられる必要がある可能性がある。F−Tワックスが使用される場合、そのようなワックスが痕跡量(約10ppm未満、またはより典型的には約5ppm未満〜皆無)の硫黄または窒素化合物含有率を有するにすぎないので、そのような予備処理は必要とされない。しかし、F−Tワックスを供給されるある水素化脱ロウ処理触媒は、オキシゲネートの除去のための前水素化処理から恩恵を受ける可能性があり、一方その他のものはオキシゲネート処理から恩恵を受ける可能性がある。水素異性化または水素化脱ロウ処理プロセスは、触媒の組み合わせ上で、または単一触媒上で行われてもよい。
【0055】
あらゆる必要とされる水素化脱窒素または水素化脱硫の後に、そのようなワックス質原料からの基油の製造のために用いられる水素処理は、潤滑油水素化分解(LHDC)触媒などの、非晶質の水素化分解/水素異性化触媒、たとえば、酸化物担体、たとえば、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ上にCo、Mo、Ni、W、Moなどを含有する触媒、または結晶質の水素化分解/水素異性化触媒、好ましくはゼオライト系触媒を使用してもよい。
【0056】
イソパラフィン系炭化水素ベースオイルを形成するための本明細書において開示されるn−パラフィンワックス質原料油の転化に有用な炭化水素転化触媒は、米国特許第4,906,350号明細書において開示されているような、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−12、ZSM−38、ZSM−48、Offretite、フェリエライト、ゼオライトベータ、ゼオライトシータ、およびゼオライトアルファなどの、ゼオライト触媒である。これらの触媒は、VIII族金属、特にパラジウムまたは白金と組み合わせて使用される。VIII族金属は、イオン交換などの、従来技法によってゼオライト触媒中へ組み入れられてもよい。
【0057】
一実施形態においては、ワックス質原料油の転化は、水素の存在下でPt/ゼオライトベータとPt/ZSM−23触媒との組み合わせ上で、または連続して使用されるそのような触媒上で行われてもよい。別の実施形態においては、潤滑油基油の製造プロセスは、Pt/ZSM−35などの、単一触媒上での水素異性化および脱ロウ処理を含む。その上別の実施形態においては、ワックス質原料は、1ステージか2ステージかのどちらかでVIII族金属担持ZSM−48、好ましくはVIII族貴金属担持ZSM−48、より好ましくはPt/ZSM−48を含む触媒上に供給することができる。あらゆる場合に、有用な炭化水素ベースオイル生成物を得ることができる。触媒ZSM−48は、米国特許第5,075,269号明細書に記載されている。
【0058】
脱ロウ処理工程は、必要なとき、溶媒脱ロウ処理、接触脱ロウ処理もしくは水素化脱ロウ処理プロセスの1つ以上または任意の順番でのそのようなプロセスの組み合わせを用いて成し遂げられてもよい。
【0059】
溶媒脱ロウ処理において、水素異性化体は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ME/MIBKの混合物、またはMEK/トルエンの混合物などの冷却された溶媒と接触させられ、そしてさらに、より高い流動点物質をワックス質固体として沈澱させるためにさらに冷却され、ワックス質固体は次に、ラフィネートである溶媒含有潤滑油留分から分離される。ラフィネートは典型的には、より多くのワックス固形分を除去するためにキサゲ面冷却装置でさらに冷却される。その少なくとも一部が水素異性化体を冷却してワックスを沈澱させるためにフラッシュされる、たとえば、液体プロパンと水素異性化体が混合される、プロパンなどの、低分子量炭化水素を使用する自動冷却脱ロウ処理をまた用いることができる。ワックスは、濾過、膜分離または遠心分離によってラフィネートから分離される。溶媒は次に、ラフィネートからストリップされ、ラフィネートは次に、本発明に有用な好ましい基油を製造するために分留される。
【0060】
接触脱ロウ処理において水素異性化体は、水素異性化体の流動点を下げるのに有効な条件で好適な脱ロウ処理触媒の存在下で水素と反応させられる。接触脱ロウ処理はまた、水素異性化体の一部をより低沸点物質に転化し、低沸点物質はより重質の基油留分から分離される。この基油留分は次に分留して2つ以上の基油にすることができる。より低沸点物質の分離は、所望の基油への重質基油留分物質の分留前か分留中かのどちらかに成し遂げられてもよい。
【0061】
水素異性化体の流動点を下げるであろうあらゆる脱ロウ処理触媒、および好ましくは水素異性化体からの潤滑油基油の大収量を提供するものが使用されてもよい。これらとしては、少なくとも1つの触媒金属成分と組み合わせられたときに、石油留分を脱ロウ処理するために有用と実証されている形状選択的なモレキュラーシーブが挙げられ、たとえば、フェリエライト、モルデナイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、シータワンまたはRONとしても知られるZSM−22、およびSAPOとして知られるシリコアルミノホスフェートが挙げられる。意外にも特に有効であることが分かった脱ロウ処理触媒は、H−モルデナイトと複合した、貴金属、好ましくはPtを含む。脱ロウ処理は、固定床、流動床またはスラリー床での触媒で成し遂げられてもよい。典型的な脱ロウ処理条件としては、約400〜600°Fの範囲の温度、500〜900psigの圧力、フロースルー反応器について1500〜3500SCF/BのH2処理比率および0.1〜10、好ましくは0.2〜2.0のLHSVが挙げられる。脱ロウ処理は典型的には、650〜750°Fの範囲の初期沸点を有する水素異性化体の40重量%以下、好ましくは30重量%以下をその初期沸点より下で沸騰する物質に転化するために行われる。
【0062】
二峰性混合物の第1基油はまた、本明細書および添付された特許請求の範囲の目的のためにポリアルファオレフィンと同定されるグループIV基油であることができる。
【0063】
ポリアルファオレフィン(PAO)は、一般に典型的には、ポリアルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマーまたはオリゴマーからなり、C2〜約C32アルファオレフィンを含み、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどのC8〜約C16アルファオレフィンが好ましいが、それらに限定されるものではない。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセンおよびポリ−1−ドデセンならびにそれらの混合物および混合オレフィン由来ポリオレフィンである。
【0064】
PAO流体は、たとえば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素と水、エタノール、プロパノールもしくはブタノールなどのアルコール、カルボン酸または酢酸エチルもしくはプロピオン酸エチルなどのエステルとの錯体を含むFriedel−Crafts(フリーデル−クラフツ)触媒などの重合触媒の存在下でのアルファオレフィンの重合によって便利に製造されてもよい。たとえば、米国特許第4,149,178号明細書または米国特許第3,382,291号明細書によって開示されている方法が本明細書において便利に用いられてもよい。PAO合成のその他の記載は、次の米国特許:第3,742,082号明細書、第3,769,363号明細書、第3,876,720号明細書、第4,239,930号明細書、第4,367,352号明細書、第4,413,156号明細書、第4,434,408号明細書、第4,910,355号明細書、第4,956,122号明細書、および第5,068,487号明細書に見いだされる。C14〜C18オレフィンの二量体は、米国特許第4,218,330号明細書に記載されている。
【0065】
本発明に有用なPAOはまた、メタロセン触媒作用によって製造することができる。メタロセン触媒PAO(mPAO)は、メタロセン触媒系による少なくとも2つのアルファオレフィンもしくはそれ以上から製造されたコポリマー、または単一のアルファオレフィン原料から製造されたホモポリマーであることができる。
【0066】
メタロセン触媒は、たとえば、メチルアルミノキサン(MAO)またはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレートまたはその他の等価の非配位アニオンなどの、非配位アニオンによって活性化されたまたは促進された単純メタロセン、置換メタロセンまたは架橋メタロセン触媒であることができる。mPAOおよびメタロセン触媒作用を用いるmPAOの製造方法は、国際公開第2009/123800号パンフレット、国際公開第2007/011832号パンフレット、および米国特許出願公開第2009/0036725号明細書に記載されている。
【0067】
コポリマーmPAO組成物は、C3〜C30範囲の少なくとも2つのアルファオレフィンから製造され、モノマーがポリマー中にランダムに分配されている。平均炭素数は少なくとも4.1であることが好ましい。有利には、エチレンおよびプロピレンは、原料中に存在する場合、個々に50重量%未満または好ましくは合わせて50重量%未満の量で存在する。本発明のコポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマーまたは適切な立体規則性のあらゆるその他の形態であることができる。
【0068】
mPAOはまた、C3〜C30線状アルファオレフィンから選択される少なくとも2つおよび26以下の異なる線状アルファオレフィンを含む混合原料線状アルファオレフィン(LAO)から製造することができる。好ましい実施形態においては、混合原料LAOは、アルミニウム触媒またはメタロセン触媒を使用するエチレン成長処理から得られる。成長オレフィンは、ほとんどC6〜C18LAOを含む。その他のプロセスからのLAOもまた使用することができる。
【0069】
ホモポリマーmPAO組成物は、C3〜C30範囲、好ましくはC3〜C16、最も好ましくはC3〜C14またはC3〜C12から選択される単一のアルファオレフィンから製造される。ホモポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマーまたは適切な立体規則性のあらゆるその他の形態であることができる。多くの場合立体規則性は、選択された重合触媒および重合反応条件によってまたは選択された水素化条件によって慎重に調整することができる。
【0070】
アルファオレフィンは、通常のLAO製造施設からかまたは製油所からのあらゆる成分から選択することができる。それは、ホモポリマーを製造するために単独で、またはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどを含む、製油所もしくは化学プラントから入手可能な別のLAOと、または専用の製造施設から製造された1−ヘキセンもしくは1−オクテンと一緒に使用することができる。別の実施形態においては、アルファオレフィンは、Fischer−Tropsch合成(米国特許第5,382,739号明細書に報告されているような)から製造されたアルファオレフィンから選択することができる。たとえば、C3〜C16アルファオレフィン、より好ましくは線状アルファオレフィンがホモポリマーを製造するために好適である。C4−およびC14−LAO、C6−およびC16−LAO、C8−、C10−、C12−LAO、またはC8−およびC14−LAO、C6−、C10−、C14−LAO、C4−およびC12−LAOなどの、その他の組み合わせがコポリマーを製造するために好適である。
【0071】
C3〜C30LAOから選択されるLAOの混合物またはC3〜C16LAOから選択される単一のLAOを含む原料は、潤滑油成分でのまたは機能性流体としての使用に好適な液体生成物を提供するためにオリゴマー化条件下で活性化メタロセン触媒と接触させられる。本発明はまた、C3〜C30範囲の少なくとも2つのアルファオレフィンから製造された、そしてモノマーがポリマー中にランダムに分配されたコポリマー組成物に関する。語句「少なくとも2つのアルファオレフィン」は、「少なくとも2つの異なるアルファオレフィン」を意味すると理解されるであろう(そして同様に「少なくとも3つのアルファオレフィン」は「少なくとも3つの異なるアルファオレフィン」などを意味する)。
【0072】
得られた生成物は、少なくとも2つのアルファオレフィンを含む本質的にランダムの液体コポリマーである。「本質的にランダムの」とは、生成物がランダムコポリマーであると当業者が考えるであろうことを意味する。同様に、用語「液体」は、周囲温度および圧力などの、温度および圧力の通常条件下で液体を意味すると当業者によって理解されるであろう。
【0073】
本プロセスは、非配位アニオン(NCA)(式2、下記)またはメチルアルミノキサン(MAO)1111(式3、下記)などの活性化剤と一緒にメタロセン化合物(式1、下記)を含む触媒系を用いる。
【化1】
【0074】
用語「触媒系」は、メタロセン/活性化剤ペアなどの、触媒前駆体/活性化剤ペアを意味すると本明細書では定義される。「触媒系」が活性化前のそのようなペアを記載するために用いられるとき、それは、活性化剤および、任意選択的に、共活性化剤(トリアルキルアルミニウム化合物などの)と一緒の活性化されていない触媒(プレ触媒)を意味する。それが活性化後のそのようなペアを記載するために用いられるとき、それは、活性化触媒および活性化剤またはその他の電荷バランス部分を意味する。さらに、この活性化「触媒系」は、共活性化剤および/またはその他の電荷バランス部分を任意選択的に含んでもよい。任意選択的におよび多くの場合、トリアルキルアルミニウム化合物などの、共活性化剤はまた、不純物捕捉剤として使用される。
【0075】
メタロセンは、上の式1に従った1つ以上の化合物から選択される。式1において、Mは、4族遷移金属、好ましくはジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)およびチタン(Ti)から選択され、L1およびL2は独立して、置換されていても非置換であってもよい、そして部分的に水素化されていてもよい、シクロペンタジエニル(「Cp」)、インデニル、およびフルオレニルから選択される。Aは、存在する場合、好ましい実施形態においてはジアルキルシリル、ジアルキルメチル、ジフェニルシリルまたはジフェニルメチル、エチレニル(−CH2−CH2)、アルキルエチレニル(−CR2−CR2)(ここで、アルキルは独立して、C1〜C16アルキルラジカルまたはフェニル、トリル、キシリルラジカルなどであることができる)から選択され、そして式中、2つのX基、XaおよびXbのそれぞれは独立して、ハライド、OR(Rは、好ましくはC1〜C5直鎖もしくは分岐鎖アルキル基から選択される、アルキル基である)、水素、C1〜C16アルキルまたはアリール基、ハロアルキルなどから選択される。通常、比較的より高度に置換されたメタロセンは、より高い触媒生産性およびより広い生成物粘度範囲を与え、したがって多くの場合より好ましい。
【0076】
ポリアルファオレフィンのどれも好ましくは、ASTM D1159によって測定されるように1.8以下、好ましくは1.7以下、好ましくは1.6以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1.4以下、好ましくは1.3以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、好ましくは1.0以下、好ましくは0.5以下、好ましくは0.1以下の臭素価を有する。必要ならば、ポリアルファオレフィンは、低臭素価を達成するために水素化することができる。
【0077】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)はいずれも、すべての規則正しい1、2−結合に加えて式4:
【化2】
(式中、j、kおよびmはそれぞれ、独立して、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22であり、nは、プロトンNMRによって測定されるように1〜350(好ましくは1〜300、好ましくは5〜50)の整数である)
で表されるモノマー単位を有してもよい。
【0078】
本明細書において記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、100,000以下、好ましくは100〜80,000、好ましくは250〜60,000、好ましくは280〜50,000、好ましくは336〜40,000g/モルのMw(重量平均分子量)を有する。
【0079】
本明細書において記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、50,000以下、好ましくは200〜40,000、好ましくは250〜30,000、好ましくは500〜20,000g/モルのMn(数平均分子量)を有する。
【0080】
本明細書において記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、1超および5未満、好ましくは4未満、好ましくは3未満、好ましくは2.5未満の分子量分布(MWD−Mw/Mn)を有する。mPAOのMWDは常に流体粘度の関数である。あるいは、本明細書において記載されるポリアルファオレフィンのどれもが好ましくは、流体粘度に依存して、1〜2.5、あるいは1〜3.5のMw/Mnを有する。
【0081】
重量平均MWと数平均MWとの比(=Mw/Mn)と定義される、分子量分布(MWD)は、「Principles of Polymer Systems」(Ferdinand Rodrigues,McGraw−Hill Book,1970による)において、p.115−144,Chapter 6,The Molecular Weight of Polymersに記載されているように、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。GPC溶媒は、30℃のカラム温度、1ml/分の流量、および1重量%の試料濃度で、安定剤なしのHPLC Gradeテトラヒドロフランであった、そしてColumn Setは、Phenogel 500 A,Linear,10E6Aである。
【0082】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが、分子量分布の実質的に小部分の高エンドテールを有してもよい。好ましくは、mPAOは、45,000ダルトン超の分子量を有するポリマーが5.0重量%以下である。さらにまたはあるいは、45,000ダルトン超の分子量を有するmPAOの量は、1.5重量%以下、または0.10重量%以下である。さらにまたはあるいは、60,000ダルトン超の分子量を有するmPAOの量は、0.5重量%以下、または0.20重量%以下、または0.1重量%以下である。45,000〜60,000の分子量での質量分率は、上記のような、GPCによって測定することができる。
【0083】
本発明の好ましい実施形態においては、本明細書において記載されるあらゆるPAOは、0℃未満(ASTM D97によって測定されるように)、好ましくは−10℃未満、好ましくは20℃未満、好ましくは−25℃未満、好ましくは−30℃未満、好ましくは−35℃未満、好ましくは−50℃未満、好ましくは−10℃〜−80℃、好ましくは−15℃〜−70℃の流動点を有してもよい。
【0084】
メタロセン触媒作用を用いて製造されるポリアルファオレフィンは、ASTM D445によって測定されるように約1.5〜約5,000cSt、好ましくは約2〜約3,000cSt、好ましくは約3cSt〜約1,000cSt、より好ましくは約4cSt〜約1,000cSt、その上より好ましくは約8cSt〜約500cStの100℃での動粘度を有してもよい。
【0085】
本発明に有用なPAOとしては、米国特許第4,827,064号明細書および米国特許第4,827,073号明細書に開示されているプロセスによって製造されるものが挙げられる。低原子価状態クロム触媒を用いて製造される、それらのPAO物質は、潤滑油基油としておよび、より高い粘度グレードで、VI(又は粘度指数)向上剤として有用であるための非常に望ましい特性をそれらに与える非常に高い粘度指数で特徴付けられるポリマーのオレフィンオリゴマーである。それらは、高粘度指数PAOまたはHVI−PAOと言われる。比較的低い分子量の高粘度PAO物質が潤滑油基油として有用であることが分かったが、より高い粘度の、典型的には100cSt以上、たとえば100〜1,000cStの範囲のPAOは従来のPAOおよびその他の合成および鉱油由来基油用の粘度指数向上剤として非常に有効であることが分かった。
【0086】
これらの高粘度PAO物質の様々な修正および変形がまた、言及される次の米国特許:第4,990,709号明細書、第5,254,274号明細書、第5,132,478号明細書、第4,912,272号明細書、第5,264,642号明細書、第5,243,114号明細書、第5,208,403号明細書、第5,057,235号明細書、第5,104,579号明細書、第4,943,383号明細書、第4,906,799号明細書に記載されている。これらのオリゴマーは、低原子価状態での担持金属である金属オリゴマー化触媒の存在下で1−オレフィンのオリゴマー化によって製造されるとして手短に要約することができる。好ましい触媒は、一酸化炭素を還元剤として使用するクロムの還元によって調製される、シリカ担体上の低原子価状態クロムを含む。オリゴマー化は、米国特許第4,827,064号明細書および同第4,827,073号明細書に記載されているように、生じるオリゴマーにとって望ましい粘度に応じて選択される温度で実施される。より高粘度物質は、約90℃より下のオリゴマー化温度がより高分子量オリゴマーを製造するために用いられている米国特許第5,012,020号明細書および米国特許第5,146,021号明細書に記載されているように製造されてもよい。すべての場合に、残存不飽和を減らすために必要なときに水素化後の、オリゴマーは、0.19未満の分岐指数(米国特許第4,827,064号明細書および同第4,827,073号明細書に定義されているような)を有する。概して、HVI−PAOは普通は約12〜5,000cStの範囲の粘度を有する。
【0087】
さらに、HVI−PAOは一般に、下記:C30〜C1300炭化水素は、0.19未満の分岐率、300〜45,000の重量平均分子量、300〜18,000の数平均分子量、1〜5の分子量分布を有する1つ以上で特徴付けることができる。特に好ましいHVI−PAOは、5〜5000mm2/秒の範囲の100℃粘度の流体である。別の実施形態においては、100℃で測定されるHVI−PAOオリゴマーの粘度は、3mm2/秒〜15,000mm2/秒の範囲である。さらに、3mm2/秒〜5000mm2/秒の100℃での粘度の流体は、130超のASTM方法D2270によって計算されるVIを有する。通常それらは130〜350の範囲である。流体はすべて−15℃より下の低い流動点を有する。
【0088】
HVI−PAOは、C6〜C20の1−アルケンからなる群から取られる、それだけでか混合物形態でかのどちらかでの、1−アルケンから製造されるポリマーまたはオリゴマーを含む炭化水素組成物としてさらに特徴付けることができる。原料の例は、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセンなど、またはC6〜C14の1−アルケンの混合物もしくはC6〜C20の1−アルケン、C6およびC12の1−アルケン、C6およびC14の1−アルケン、C6およびC16の1−アルケン、C6およびC18の1−アルケン、C8およびC10の1−アルケン、C8およびC12の1−アルケン、C8、C10およびC12の1−アルケン、ならびにその他の適切な組み合わせの混合物であることができる。
【0089】
潤滑油生成物は通常、600°Fより下で沸騰するもの、またはC20未満の炭素数のものなどのあらゆる低分子量組成物を、それらが重合反応から生成するかまたは出発原料から持ち込まれている場合に、除去するために蒸留される。
【0090】
重合またはオリゴマー化プロセスから直接製造される潤滑油流体は通常、不飽和二重結合を有するかまたはオレフィン分子構造を有する。二重結合または不飽和またはオレフィン成分の量は、臭素価(ASTM D1159)、臭素指数(ASTM D2710)などの、幾つかの方法、またはNMR、IRなどの、その他の好適な分析方法によって測定することができる。二重結合の量またはオレフィン組成物の量は、幾つかの因子−重合度、重合プロセス中に存在する水素の量および重合プロセスの停止工程に関与するその他の促進剤の量、またはプロセスにおいて存在するその他の試剤に依存する。通常、二重結合の量またはオレフィン成分の量は、重合のより高い程度、重合プロセスにおいて存在する水素ガスのより高い量、または停止工程に関与する促進剤のより高い量によって減少する。
【0091】
他のPAOと同様に、HVI−PAO流体の酸化安定性および光またはUV安定性は、不飽和二重結合の量またはオレフィン含有率が低下するときに向上する。それ故、ポリマーを、それらが高度の不飽和を有する場合にはさらに水素化処理することが必要である。通常、ASTM D1159によって測定されるような、5未満の臭素価の流体は、高品質基油用途向けに好適である。もちろん、臭素価が低ければ低いほど、潤滑油品質はより良好である。3または2未満の臭素価の流体が一般的である。最も好ましい範囲は、1未満または0.1未満である。不飽和度を下げるための水素化処理方法は、文献においてよく知られている(米国特許第4,827,073号明細書、実施例16)。あるHVI−PAO製品においては、重合から直接製造された流体は、100℃で150cSt超の粘度のものなど、非常に低い不飽和度を既に有する。それらは、5未満または2より下さえの臭素価を有する。これらの場合には、それは、水素化処理なしでそのまま使用することができるか、またはそれは、基油特性をさらに向上させるために水素化処理することができる。
【0092】
それらの製造に用いられるプロセスもしくは技法にかかわらず、PAO流体が本発明において有用な二峰性混合物の第1基油を構成する流体の唯一のものとしてか混合物の1つとして使用される場合、そのPAO流体は、低動粘度流体、2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の範囲の100℃でのKVのPAOである。
【0093】
低動粘度流体は、列挙された動粘度レベルを満たす単一基油で構成することができるかまたはそれぞれが列挙された動粘度限度を満たす、2種以上の基油/油で構成することができる。さらに、低動粘度流体は、生じた混合物ブレンドが、第1低動粘度基材油の粘度範囲として列挙された2〜16mm2/秒のターゲット低動粘度を示すという条件で、1種又は2種以上の高動粘度基材油/油、たとえば、100℃で100mm2/秒以上の動粘度の基材油/油などの、100℃で16mm2/秒超の動粘度の基材油/油と組み合わせられた、1種又は2種以上の低粘度基材油/油、たとえば100℃で2〜16mm2/秒の範囲の動粘度の基材油/油の混合物で構成することができる。
【0094】
二峰性ブレンドに使用される第2油は、高動粘度グループIV流体、すなわち、少なくとも38mm2/秒、好ましくは38〜1200mm2/秒、より好ましくは38〜600mm2/秒、さらにより好ましくは38〜300mm2/秒、最も好ましくは38〜150mm2/秒の範囲の100℃での動粘度のPAOである。
【0095】
PAOを議論するとき、たとえばPAO 150のようなPAOの呼称は、名目上150mm2/秒の100℃での動粘度のPAOを意味する。
【0096】
第2高動粘度油に関して、それは、列挙された動粘度限度を満たす単一PAO基油/油で構成することができるか、またはそれは、そのそれぞれが列挙された動粘度限度を満たす、2種以上のPAO基油/油で構成されてもよい。逆に、この第2高動粘度基油/油は、生じた混合物ブレンドが100℃で少なくとも38mm2/秒のターゲット高動粘度を満たすという条件で、1種又は2種以上の高動粘度PAO基油/油と混合された、1種又は2種以上のより低い動粘度PAO基油/油、たとえば100℃で38mm2/秒未満の動粘度の基材油/油の混合物であることができる。
【0097】
そのようなより高い動粘度PAO流体は、低動粘度PAO流体(二峰性混合物の第1油)の製造について前に列挙された同じ技法を用いて製造することができる。
【0098】
好ましくは、二峰性混合物の第2流体である高動粘度PAO流体は、メタロセン触媒作用または米国特許第4,827,064号明細書もしくは米国特許第4,827,073号明細書に記載されているプロセスを用いて製造される。
【0099】
PAOを製造するために用いられる技法またはプロセスにかかわらず、二峰性ブレンドの第2基油として使用されるPAO流体は、少なくとも38mm2/秒の100℃でのKVを有する高動粘度PAOである。
【0100】
本発明は、二峰性ブレンドの第1基油と第2基油との間に少なくとも30mm2/秒のKVの差が存在するという条件で、2種の異なるベースオイル、100℃で2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒のKVを有する、1種以上のグループII、グループIIIまたはグループIVベースオイル、好ましくはグループIIIまたはグループIVベースオイルである第1と、100℃で少なくとも38mm2/秒のKVを有する1種以上のグループIVベースオイルである第2との二峰性ブレンドを含む潤滑油を用いてトラクション係数のその低下を達成する。
【0101】
上に列挙された二峰性基油ブレンドを用いるトラクション係数の低下は、本明細書において前に提供されたような1種以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、フェノレート、スルホネート、サリチレートまたはカルボキシレート清浄剤の必要な存在に依存する。清浄剤は単一金属の塩である必要がなく、金属塩の混合物、たとえば、単に例として、限定されずに、ナトリウム塩および/またはリチウム塩および/またはカルシウム塩および/またはマグネシウム塩の混合物であることができる。
【0102】
本発明において、異なる表面速度でのトラクション係数は第1基油と第2基油とのおよび清浄剤との様々な組み合わせを使用することによって改善されることが発見された。
【0103】
少なくとも3mm/秒、好ましくは少なくとも10mm/秒の表面速度について、潤滑油の基油は、2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の100℃での動粘度を有するグループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイル、好ましくはグループIIIおよびグループIVベースオイル、より好ましくはグループIIIベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1基油と、少なくとも38mm2/秒、好ましくは38〜1200mm2/秒、より好ましくは38〜600mm2/秒、さらにより好ましくは38mm2/秒から300mm2/秒未満、最も好ましくは38〜150mm2/秒の100℃での動粘度を有するグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイルと、活性成分に基づいて6重量%を超えて40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%の量でのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウムサリチレート、フェノレート、カルボキシレート、スルホネート、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウムサリチレートおよびフェノレートの混合物またはアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウムフェノレートおよびカルボキシレート、好ましくはフェノレート、サリチレートおよびカルボキシレートの混合物ならびにフェノレートおよびカルボキシレートのまたはフェノレートおよびサリチレートの混合物から選択される清浄剤との二峰性ブレンドであり、ここで、清浄剤混合物についてフェノレートとカルボキシレートとの重量比又はフェノレートとサリチレートとの重量比は、6:1〜1:6、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2、最も好ましくは1:1である。潤滑油の総重量を基準として、潤滑油は、少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜70mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのTBN、および100℃で13〜30mm2/秒、好ましくは16〜30mm2/秒、より好ましくは18〜25mm2/秒、最も好ましくは20〜25mm2/秒の動粘度を有する。
【0104】
別の実施形態においては、少なくとも3mm/秒、好ましくは少なくとも10mm/秒の表面速度について、基油は、100℃で2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の動粘度を有する、グループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイル、好ましくはグループIIIベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1基油と、100℃で38mm2/秒から300mm2/秒未満、好ましくは38〜250mm2/秒、より好ましくは38〜150mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイルと、潤滑油の総重量を基準として、6重量%を超え40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、さらにより好ましくは12〜25重量%のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、スルホネートの混合物または、フェノレートとスルホネートとの重量比が5:1〜1:3、好ましくは4:1〜1:2、最も好ましくは4:1〜1:1の範囲にあるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、フェノレートおよびスルホネートの混合物から選択される清浄剤との二峰性ブレンドであり、この潤滑油は、少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのTBN、および100℃で13〜30mm2/秒、16〜30mm2/秒、より好ましくは18〜25mm2/秒の動粘度を有する。
【0105】
別の実施形態においては、少なくとも30mm/秒、好ましくは少なくとも60mm/秒、より好ましくは少なくとも75mm/秒、さらにより好ましくは少なくとも100mm/秒の表面速度について、潤滑油の基油は、100℃で2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の動粘度を有する、グループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイル、好ましくはグループIIIベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1基油と、100℃で少なくとも38mm2/秒、好ましくは38〜1200mm2/秒、より好ましくは38〜600mm2/秒、さらにより好ましくは38〜300mm2/秒、最も好ましくは38〜100mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイルと、潤滑油の重量を基準として6重量%を超え40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、最も好ましくは12〜25重量%(活性成分)のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、サリチレート、フェノレート、スルホネート、カルボキシレートおよびそれらの混合物から選択される清浄剤との二峰性ブレンドであり、この潤滑油は、少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのTBN、および100℃で6〜30mm2/秒、好ましくは8〜25mm2/秒、より好ましくは12〜20mm2/秒の動粘度を有する。
【0106】
本方法は、基油が必須の二峰性ブレンド基油および前記清浄剤を含むという条件で、追加の性能添加剤を含有するエンジン潤滑油を使用することができる。示されたように、用いられる清浄剤は、単独で又は様々に組み合わせて使用されるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、サリチレート、フェノレート、スルホネート、カルボキシレートである。これらの清浄剤は、低、中または高TBN清浄剤、すなわち、約5〜500mg KOH/g、好ましくは約5〜約400mg KOH/gほどに高い範囲の塩基価の清浄剤であることが可能である。
【0107】
本発明に有用な調合潤滑油は、分散剤、追加のその他の清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、その他の摩耗防止および/または極圧添加剤、膠着防止剤、ワックス改質剤、粘度指数向上剤、粘度調整剤、フルイドロス添加剤、シール融和性剤、その他の摩擦改良剤、潤滑剤、汚染防止剤、発色剤、消泡剤、乳化破壊剤、乳化剤、増密度剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤などを含むがそれらに限定されないその他の一般的に使用される潤滑油性能添加剤の1種以上をさらに含有してもよい。多くの一般的に使用される添加剤のレビューについては、Lubricants and Related Products,Verlag Chemie,Deerfield Beach,FL;ISBN 0−89573−177−0におけるKlamannを参照されたい。Noyes Data Corporation of Parkridge,NJ(1973)によって出版された、M.W.Ranneyによる「Lubricant Additives」も参照されたい。
【0108】
潤滑油組成物に本発明と組み合わせて使用される性能添加剤のタイプおよび量は、例示として本明細書において示される例によって制限されない。
【0109】
粘度改良剤
粘度改良剤(粘度指数調整剤、およびVI改良剤としても知られる)は、高温および低温操作性を潤滑油に提供する。これらの添加剤は、低温で限定された影響を粘度に及ぼしながら、高められた温度で油組成物の粘度を増大させ、膜厚を増加させる。
【0110】
好適な粘度改良剤としては、高分子量炭化水素、ポリエステルならびに粘度指数向上剤および分散剤の両方として機能する粘度指数向上剤分散剤が挙げられる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約1,000〜1,000,000、より典型的には約2,000〜500,000、さらにより典型的には約2,500〜200,000である。
【0111】
好適な粘度改良剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィン、またはアルキル化スチレンのポリマーおよびコポリマーである。ポリイソブチレンは一般的に使用される粘度改良剤である。別の好適な粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート(たとえば、様々な鎖長アルキルメタクリレートのコポリマー)であり、その幾つかの調合物はまた流動点降下剤としても役立つ。その他の好適な粘度指数向上剤としては、エチレンとプロピレンとのコポリマー、スチレンとイソプレンとの水素化ブロックコポリマー、およびポリアクリレート(たとえば、様々な鎖長アクリレートのコポリマー)が挙げられる。具体的な例としては、50,000〜200,000分子量のスチレン−イソプレンまたはスチレン−ブタジエンベースのポリマーが挙げられる。
【0112】
粘度調整剤の量は、活性成分に基づいて、および使用される具体的な粘度調整剤に依存してゼロ〜10重量%、好ましくはゼロ〜6重量%、より好ましくはゼロ〜4重量%の範囲であってもよい。
【0113】
酸化防止剤
典型的な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤および油溶性の銅錯体が挙げられる。
【0114】
フェノール系酸化防止剤としては、硫化および非硫化フェノール系酸化防止剤が挙げられる。本明細書で用いられる用語「フェノール型」または「フェノール系酸化防止剤」には、それ自体単環、たとえば、ベンジル、または多環、たとえば、ナフチリルおよびスピロ芳香族化合物であってもよい芳香環に1個または2個以上のヒドロキシル基が結合した化合物が含まれる。したがって、「フェノール型」には、フェノールそれ自体、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ナフトールなど、ならびにそれらのアルキルもしくはアルケニルおよび硫化アルキルもしくはアルケニル誘導体、およびアルキレン架橋、硫黄架橋または酸素架橋によって連結されたそのようなビフェノール化合物を含むビスフェノール型化合物が含まれる。アルキルフェノールとしては、アルキルもしくはアルケニル基が約3〜100個の炭素、好ましくは4〜50個の炭素を含有する、モノ−およびポリ−アルキルもしくはアルケニルフェノールならびにそれらの硫化誘導体が挙げられ、芳香環に存在するアルキルもしくはアルケニル基の数は、1から芳香環に結合したヒドロキシル基の数を数えた後に残る芳香環の利用可能な不充足結合価までの範囲である。
【0115】
一般に、それ故、フェノール系酸化防止剤は、一般式:
(R)x−Ar−(OH)y
で表されてもよく、ここで、Arは、
【化3】
からなる群から選択され、
式中、Rは、C3〜C100アルキルもしくはアルケニル基、硫黄置換アルキルもしくはアルケニル基、好ましくはC4〜C50アルキルもしくはアルケニル基または硫黄置換アルキルもしくはアルケニル基、より好ましくはC3〜C100アルキルまたは硫黄置換アルキル基、最も好ましくはC4〜C50アルキル基であり、Rgは、C1〜C100アルキレンまたは硫黄置換アルキレン基、好ましくはC2〜C50アルキレンまたは硫黄置換アルキレン基、より好ましくはC2〜C2アルキレンまたは硫黄置換アルキレン基であり、yは、少なくとも1からArの利用可能な結合価までであり、xは、0からArの利用可能な結合価−yまでの範囲であり、zは1〜10の範囲であり、nは0〜20の範囲であり、mは0〜4であり、pは0または1であり、好ましくはyは1〜3の範囲であり、xは0〜3の範囲であり、zは1〜4の範囲であり、nは0〜5の範囲であり、pは0である。
【0116】
好ましいフェノール系酸化防止化合物は、立体障害のヒドロキシル基を含有するヒンダードフェノール化合物であり、これらとしては、ヒドロキシル基が互いにo−またはp−位にあるジヒドロキシアルール化合物のそれらの誘導体が挙げられる。典型的なフェノール系酸化防止剤としては、C1+アルキル基で置換されたヒンダードフェノールおよびこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体が挙げられる。このタイプのフェノール系物質の例2−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−t−ブチル−4−オクチルフェノール;2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4 メチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール;および2,6−ジ−t−ブチル 4 アルコキシフェノール。
【0117】
フェノール型酸化防止剤は潤滑業界においてよく知られており、Ethanox(登録商標)4710、Irganox(登録商標)1076、Irganox(登録商標)L1035、Irganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)L109、Irganox(登録商標)L118、Irganox(登録商標)L135などの商業例は当業者におなじみである。上記は、使用することができるフェノール系酸化防止剤のタイプに関して例示の目的で提示されているにすぎず、限定するものではない。
【0118】
芳香族アミン酸化防止剤としては、次の分子構造:
【化4】
(式中、Rzは、水素またはC1〜C14線状もしくはC3〜C14分岐アルキル基、好ましくはC1〜C10線状もしくはC3〜C10分岐アルキル基、より好ましくは線状もしくは分岐C6〜C8であり、nは、1〜5の範囲の整数、好ましくは1である)
で表されるフェニル−α−ナフチルアミンが挙げられる。特定例はIrganox L06である。
【0119】
その他の芳香族アミン酸化防止剤としては、式R8R9R10N[式中、R8は、脂肪族、芳香族もしくは置換芳香族基であり、R9は、芳香族もしくは置換芳香族基であり、R10は、H、アルキル、アリールまたはR11S(O)xR12(ここで、R11は、アルキレン、アルケニレン、もしくはアラルキレン基であり、R12は、高級アルキル基、またはアルケニル、アリール、もしくはアルカリール(又はアルキルアリール)基であり、xは0、1または2である)である]の芳香族モノアミンなどのその他のアルキル化および非アルキル化芳香族アミンが挙げられる。脂肪族基R8は、1〜約20個の炭素原子を含有してもよく、好ましくは約6〜12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は飽和脂肪族基である。好ましくは、R8およびR9の両方が芳香族もしくは置換芳香族基であり、芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基R8およびR9は、Sなどのその他の基と結合していてもよい。
【0120】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルが挙げられる。一般に、脂肪族基は、約14個超の炭素原子を含有しないであろう。存在してもよいそのようなその他の追加アミン酸化防止剤の一般タイプとしては、ジフェニルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジルおよびジフェニルフェニレンジアミンが挙げられる。そのようなその他の追加芳香族アミンの2つ以上の混合物がまた存在してもよい。ポリマーアミン酸化防止剤もまた使用することができる。
【0121】
潤滑油組成物に使用される、そして必要なフェニル−α−ナフチルアミンに加えて存在してもよい別のクラスの酸化防止剤は、油溶性銅化合物である。あらゆる油溶性の好適な銅化合物が潤滑油に混ぜ込まれてもよい。好適な銅酸化防止剤の例としては、銅ジヒドロカルビルチオ−またはジチオ−ホスフェートおよびカルボン酸(天然起源または合成の)の銅塩が挙げられる。その他の好適な銅塩としては、銅ジチオカルバメート、スルホネート、フェノレート、およびアセチルアセトネートが挙げられる。アルケニルコハク酸または酸無水物から誘導される塩基性、中性、または酸性銅Cu(I)およびまたはCu(II)塩が特に有用であることが知られている。
【0122】
そのような酸化防止剤は、約0.10〜5重量%、好ましくは約0.30〜3重量%(到着ベースで)の量で使用されてもよい。
【0123】
分散剤
エンジン運転の間ずっと、油不溶性酸化副生物が生成する。分散剤は、これらの副生物を溶液に保つのに役立ち、こうして金属表面上へのそれらの沈着を減らす。分散剤は本来、無灰であっても灰形成性であってもよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に灰を実質的にまったく形成しない有機物質である。たとえば、金属を含有しないかまたはホウ素化された金属を含まない分散剤が無灰と考えられる。対照的に、上に議論された金属含有清浄剤は、燃焼時に灰を形成する。
【0124】
好適な分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を典型的には含有する。極性基は、窒素、酸素、またはリンの少なくとも1つの元素を典型的には含有する。典型的な炭化水素鎖は50〜400個の炭素原子を含有する。
【0125】
特に有用なクラスの分散剤は、長鎖置換アルケニルコハク酸化合物、通常は置換無水コハク酸と、ポリヒドロキシまたはポリアミノ化合物との反応によって典型的には製造される、アルケニルコハク酸誘導体である。油への溶解性を与える分子の親油性部分を構成する長鎖基は、普通はポリイソブチレン基である。このタイプの分散剤の多くの例が、商業的におよび文献においてよく知られている。
【0126】
ヒドロカルビル置換コハク酸化合物がポピュラーな分散剤である。特に、スクシンイミド、スクシネートエステル、または少なくとも50個の炭素原子を炭化水素置換基中に好ましくは有する炭化水素置換コハク酸化合物と、少なくとも1当量のアルキレンアミンとの反応によって製造されるスクシネートエステルアミドが特に有用である。
【0127】
スクシンイミド類は、アルケニル無水コハク酸とアミンとの縮合反応によって形成される。モル比は、ポリアミンに依存して変動することができる。たとえば、アルケニル無水コハク酸とTEPAとのモル比は、約1:1〜約5:1で変動することができる。
【0128】
スクシネートエステルは、アルケニル無水コハク酸とアルコールまたはポリオールとの縮合反応によって形成される。モル比は、使用されるアルコールまたはポリオールに依存して変動することができる。たとえば、アルケニル無水コハク酸とペンタエリスリトールとの縮合生成物は有用な分散剤である。
【0129】
スクシネートエステルアミドは、アルケニル無水コハク酸とアルカノールアミンとの縮合反応によって形成される。たとえば、好適なアルカノールアミンとしては、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミンおよびポリエチレンポリアミンなどのポリアルケニルポリアミンが挙げられる。一例は、プロポキシル化ヘキサメチレンジアミンである。
【0130】
アルケニル無水コハク酸の分子量は典型的には800〜2,500の範囲であろう。上記の生成物は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、オレイン酸などのカルボン酸、およびボレートエステルまたは高ホウ素化分散剤などのホウ素化合物などの様々な試薬と後反応させることができる。分散剤は、分散剤反応生成物の1モル当たり約0.1〜約5モルのホウ素でホウ素化することができる。
【0131】
Mannich(マンニッヒ)塩基分散剤は、アルキルフェノール、ホルムアルデヒド、およびアミンの反応から製造される。オレイン酸およびスルホン酸などの、加工助剤および触媒はまた、反応混合物の一部であることができる。アルキルフェノールの分子量は、800〜2,500の範囲である。
【0132】
典型的な高分子量脂肪酸変性Mannich縮合生成物は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物またはHN(R)2基含有反応剤から製造することができる。
【0133】
高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の例は、ポリプロピルフェノール、ポリブチルフェノール、およびその他のポリアルキルフェノールである。これらのポリアルキルフェノールは、平均600〜100,000の分子量を有するフェノールのベンゼン環上にアルキル置換基を与えるための高分子量ポリプロピレン、ポリブチレン、およびその他のポリアルキレン化合物でのフェノールの、BF3などの、アルキル化触媒の存在下での、アルキル化によって得ることができる。
【0134】
HN(R)2基含有反応剤の例は、アルキレンポリアミン、主にポリエチレンポリアミンである。Mannich縮合生成物の製造での使用に好適な少なくとも1つのHN(R)2基を含有するその他の代表的な有機化合物はよく知られており、モノ−およびジ−アミノアルカンおよびそれらの置換類似体、たとえば、エチルアミンおよびジエタノールアミン;芳香族ジアミン、たとえば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン;複素環アミン、たとえば、モルホリン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリジン、およびピペリジン;メラミンおよびそれらの置換類似体を含む。
【0135】
アルキレンポリアミン反応剤の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタアミン、ヘプタエチレンオクタアミン、オクタエチレンノナアミン、ノナエチレンデカミン、およびデカエチレンウンデカミンならびに、前述の、式H2N−(Z−NH−)nHの、アルキレンポリアミンに相当する窒素含有率を有するそのようなアミンの混合物が挙げられ、前述の式のZは二価エチレンであり、nは1〜10である。プロピレンジアミンおよびジ−、トリ−、テトラ−、ペンタプロピレントリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサアミンなどの相当するプロピレンポリアミンもまた好適な反応剤である。アルキレンポリアミンは通常、アンモニアとジクロロアルカンなどの、ジハロアルカンとの反応によって得られる。このように、2〜11モルのアンモニアと2〜6個の炭素原子および異なる炭素上に塩素を有する1〜10モルのジクロロアルカンとの反応から得られるアルキレンポリアミンが好適なアルキレンポリアミン反応剤である。
【0136】
本発明に有用な高分子生成物の製造に有用なアルデヒド反応剤としては、ホルムアルデヒド(また、パラホルムアルデヒドおよびホルマリンとして)、アセトアルデヒドおよびアルドール(β−ヒドロキシブチルアルデヒド)などの脂肪族アルデヒドが挙げられる。ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド生成反応剤が好ましい。
【0137】
好ましい分散剤としては、ヒドロカルビルスクシンイミドが、約500〜約5000のMnを有するポリイソブチレンなどのヒドロカルビレン基またはそのようなヒドロカルビレン基の混合物から誘導される、モノ−スクシンイミド、ビス−スクシンイミド、および/またはモノ−とビス−スクシンイミドとの混合物からのそれらの誘導体を含む、ホウ素化および非ホウ素化スクシンイミドが挙げられる。その他の好ましい分散剤としては、コハク酸エステルおよびアミド、アルキルフェノール−ポリアミン結合Mannich付加体、それらのキャップド誘導体、ならびにその他の関連成分が挙げられる。そのような添加剤は、全潤滑油の重量を基準として約0.1〜20重量%、好ましくは約0.1〜8重量%、より好ましくは約1〜6重量%(到着ベースで)の量で使用されてもよい。
【0138】
流動点降下剤
通常の流動点降下剤(潤滑油流動性向上剤としても知られる)がまた存在してもよい。流動点降下剤は、流体が流れるであろうまたは注ぐことができる最低温度を低くするために添加されてもよい。好適な流動点降下剤の例としては、アルキル化ナフタレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、およびジアルキルフマレートと、脂肪酸のビニルエステルとアリルビニルエーテルとのターポリマーが挙げられる。
【0139】
そのような添加剤は、到着ベースで約0.0〜0.5重量%、好ましくは約0〜0.3重量%、より好ましくは約0.001〜0.1重量%の量で使用されてもよい。
【0140】
腐食防止剤/金属不活性化剤
腐食防止剤は、潤滑油組成物と接触している金属部品の分解を減らすために使用される。好適な腐食防止剤としては、アリールチアジン、アルキル置換ジメルカプトチオジアゾールチアジアゾールおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0141】
そのような添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%、より好ましくは約0.01〜0.2重量%、さらにより好ましくは約0.01〜0.1重量%(到着ベースで)の量で使用されてもよい。
【0142】
シール融和性添加剤
シール融和性剤は、流体における化学反応またはエラストマーにおける物理的変化を引き起こすことによってエラストマーシールを膨潤させるのに役立つ。潤滑油のための好適なシール融和性剤としては、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(たとえば、ブチルベンジルフタレート)、およびポリブテニル無水コハク酸が挙げられる。そのような添加剤は、到着ベースで約0.01〜3重量%、好ましくは約0.01〜2重量%の量で使用されてもよい。
【0143】
消泡剤
消泡剤が潤滑油組成物に有利に添加されてもよい。これらの試剤は安定な泡の形成を阻害する。シリコーンおよび有機ポリマーが典型的な消泡剤である。たとえば、シリコンオイルまたはポリジメチルシロキサンなどの、ポリシロキサンが消泡特性を提供する。消泡剤は商業的に入手可能なであり、乳化破壊剤などのその他の添加剤と一緒に慣例の少量で使用されてもよく;通常、組み合わせたこれらの添加剤の量は、潤滑油組成物の総重量を基準として1パーセント未満、好ましくは0.001〜約0.5重量%、より好ましくは約0.001〜約0.2重量%、さらにより好ましくは約0.0001〜0.15重量%(到着ベースで)である。
【0144】
阻害剤および防錆添加剤
防錆添加剤(または腐食防止剤)は、潤滑される金属表面を水またはその他の汚染物質による化学攻撃から防護する添加剤である。1つのタイプの防錆添加剤は、優先的に金属表面を湿らせ、それを油膜で防護する極性化合物である。別のタイプの防錆添加剤は、油だけが表面に触れるように、油中水エマルジョンにそれを組み入れることによって水を吸収する。その上別のタイプの防錆添加剤は、金属に化学的に付着して非反応性表面を生成する。好適な添加剤の例としては、ジチオリン酸亜鉛、金属フェノレート、塩基性金属スルホネート、脂肪酸およびアミンが挙げられる。そのような添加剤は、到着ベースで約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%の量で使用されてもよい。
【0145】
摩耗防止添加剤もまた有利に存在することができる。摩耗防止添加剤は、金属が亜鉛またはモリブデンであることができる金属ジチオホスフェート、金属ジチオカルバメート、金属ジアルキルジチオホスフェート、金属ザンテートで例示される。トリクレジルホスフェートは別のタイプの摩耗防止添加剤である。そのような摩耗防止添加剤は、到着ベースで約0.05〜1.5重量%、好ましくは約0.1〜1.0重量%、より好ましくは約0.2〜0.5重量%(到着ベースで)の量で存在することができる。
【実施例】
【0146】
比較例および実施例
一連のエンジンオイルを、基油組成物および清浄剤タイプがトラクション係数に及ぼす影響に関して評価した。エンジンオイルは、商業的に入手可能な油(対照油A(Ref.A))か異なる動粘度の第1基油と異なる動粘度の第2基油との組み合わせのみを使用する基油ブレンド(対照油B(Ref.B))か異なる動粘度の潤滑油を生成する、異なる使用量/処理レベルでの異なる清浄剤または清浄剤の混合物と組み合わせての基油ブレンドかのどれかであり、すべての調合物は40または70mg KOH/gの塩基価(BN)を有する清浄剤を含有した。トラクション係数は、完全自動Mini Traction Machineトラクション測定機器であるMTM Traction Rigを用いて測定した。このリグは、PCS Instrumentsによって製造され、Model MTMと特定される。試験検体および装置構成は、非常に大きい負荷、モーターまたは構造体を必要とすることなく、現実的な圧力、温度および速度を達成できるようなものである。流体の小試料(50ml)を試験セルに入れ、機械は、操作介入なしに試験流体についての包括的なトラクションマップを作成するために様々な速度、スライド対ロール比、温度および負荷にわたって自動的に作動する。標準試験検体は、AISI 52100軸受鋼から製造された研磨19.05mm球および50.0mm直径ディスクである。検体は、一回使用の、使い捨て品であるように設計されている。球をディスクの面を背にしてロードし、球とディスクとをDCサーボモーターおよび駆動装置によって独立して駆動して、特に低いスライド/ロール比で高精度の速度制御を可能にする。各検体を、小さいステンレススチール試験流体浴中でシャフト上に末端で取り付ける。ディスク試験検体を支える垂直シャフトおよび駆動システムを固定する。しかし、球試験検体を支えるシャフトおよび駆動システムは、それが2つの直交軸回りを回転できるようにジンバル配置で支える。1つの軸は負荷適用方向に垂直であり、もう1つはトラクション力方向に垂直である。球およびディスクを同じ方向に駆動する。負荷の適用およびトラクション力の抑制を、ジンバル配置に適切に取り付けた高剛性力変換器によって行って全体支持システム偏向を最小限にする。これらの力変換器からの出力をパソコンによって直接監視する。トラクション係数は、トラクション力と適用負荷との比である。図1〜9に示されるように、トラクション係数を様々な速度にわたって測定した。図1〜9において、x軸上の速度は、球およびディスク速度の合計の半分である、エントレインメント速度である。これらのエントレインメント速度は、エンジンが動作中であるときに達する、表面速度の範囲、または表面速度の範囲の少なくとも一部をシミュレートしている。
【0147】
本明細書において示される試験結果は、次の試験条件下で生み出された:
【0148】
【表1】
同じモデル、Model MTMの2つの異なる機械をこれらの評価に用い、用いた機械の同一性(機械1または機械2)を図上に示す。
【0149】
潤滑油を表1及び表1(続き)に記載する。
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
異なるベースオイル、ベースオイルと清浄剤との混合物に加えて調合物はまたすべて、添加剤をまったく含有しなかった対照油Bを除いて、すべての調合物中に同じ量の、分散剤、酸化防止剤および極圧/摩耗防止添加剤などのその他の添加剤を含有した。
【0153】
異なる速度でのトラクション係数の観点からの調合変数の潤滑油性能への影響は、図を参照することによって理解される。下記において、グループIIIオイルを含有すると認定されるそれらの油について、使用されたグループIIIオイルは、あらゆる硫黄および窒素化合物を除去するためにスラックワックスを水素化処理にかけ、その脱硫および脱窒されたスラックワックスを次に水素異性化し、引き続き水素化精製することによって製造されたスラックワックス異性化体であった。
【0154】
グループIVベースオイルはPAOであった。動粘度は呼称によって特定され、たとえば、PAO 150は、PAOが名目上150mm2/秒の100℃でのKVを有すると特定する。
【0155】
図1において、油I−A、I−B、IIおよびIIIを対照油Aに対して比較する。すべての4つの調合物および対照油は、対照油AがグループIベースオイルとPIBとのブレンドであるが、油I−A〜IIIがグループIIIベースオイルとグループIVベースオイル(PAO)とのブレンドを含有する調合物であることを除いて同じ清浄剤およびその他の添加剤を有する。
【0156】
図1から、グループIII(6.5mm2/秒)/グループIV(150mm2/秒)の二峰性ブレンドとブレンドされた、油、I−A〜IIIのすべてが80mm/秒以上の速度で対照油Aと比べてトラクション係数の大きい改善を生み出したことが分かる。対照油Aに対して異なる速度でのトラクション係数への影響はまた、ブレンド油の最終動粘度、およびブレンドの第2高粘度油の動粘度に依存する。
【0157】
20mm2/秒の動粘度のブレンドおよびフェノレート清浄剤とスルホネート清浄剤との混合物を用いる調合油I−AおよびI−Bについては、トラクション係数は、ブレンドの第2高粘度成分が150mm2/秒の100℃での動粘度を有するときはすべての速度で対照油のそれより低かった。
【0158】
16mm2/秒の100℃での動粘度のブレンドおよびフェノレートとスルホネートとの混合物を用いる調合油IIについては、トラクション係数は、約60mm/秒以上のより高い速度でのみ対照油Aのそれより一貫して低かった。
【0159】
最後に、20mm2/秒の100℃での動粘度のブレンドであって、ブレンドの第2高粘度油成分が300mm2/秒の100℃での動粘度を有するブレンドを用いる、そしてフェノレート清浄剤とスルホネート清浄剤との混合物を含有する調合油IIIについては、トラクション係数は、約70mm/秒以上のより高い速度でのみ対照油Aのそれより一貫して低かった。
【0160】
図2において、調合油IV〜VIIを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0161】
図2は、異なる速度での単一清浄剤タイプの調合油トラクション係数への影響を示す。
【0162】
すべて100℃で20mm2/秒の動粘度を有するブレンドをベースとし、すべてグループIII(6.5mm2/秒)基油とグループIV基油(PAO 150)の同じ組み合わせを使用して製造され、すべて単一清浄剤添加剤のみと同じ量のその他の添加剤を含有する調合油IV〜VIIについて、調合油IV、VIおよびVIIのトラクション係数は、単一清浄剤がサリチレート、カルボキシレートまたはフェノレートであるかどうかにかかわらず全エンジン速度範囲にわたって対照油Aのそれより低かったことが分かる。調合油IV、VIおよびVIIはすべて、全速度範囲にわたって対照油Aよりも優れていたが、最良に機能する調合油はサリチレート(油IV)およびカルボキシレート(油VI)清浄剤を含有した。
【0163】
スルホネート清浄剤を含有する調合油(油V)は低速(約3〜60mm/秒)で対照油より良好に機能し、そしてより高い速度(約100mm/秒以上)で性能の変動を示し、この調合物が連続的でより高速運転条件(100mm/秒以上)または連続的低速運転条件(3〜50−60mm/秒)下でのみ使用に最適であることを示唆する。サリチレート(油IV)、スルホネート(油V)またはカルボキシレート(油VI)を含有する調合油はすべて、対照油B(基油のみ)より低速(約3〜12mm2/秒)でより良好に機能した。
【0164】
図3Aおよび3Bは、異なる速度でトラクション係数にフェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との同じ組み合わせ、およびその他の添加剤を使用するブレンドの様々なブレンド動粘度および第2油成分動粘度が及ぼす影響ならびに調合物BNが及ぼす影響を示す。
【0165】
図3Bにおいて、調合油VIII−A、XIおよびXII(100℃で20〜25mm2/秒のブレンドKV、100℃で40または150mm2/秒の第2高粘度油KV)ならびに調合油XXX(100℃で20mm2/秒のブレンドKV、100℃で150mm2/秒の第2高粘度油KV、フェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤の同じ混合物およびその他の添加剤を含有する40の調合ブレンドBNは、トラクション係数を低下させるという観点からすべての速度で対照油Aより一貫して性能が優れていたことが分かる。調合油XIおよびXIIはまた、低速(3〜10mm/秒)条件下で対照油B((Ref.B)基油のみ)より性能が優れていた。
【0166】
図3Aにおいて、サリチレート清浄剤とフェノレート清浄剤の同じ混合物およびその他の添加剤を含有する調合油IX−AおよびIX−B(100℃で13および16.5mm2/秒のブレンドKV、100℃で150mm2/秒の第2高粘度油KV)は、約50mm/秒以上(油IX−B)または100mm/秒以上(油IX−A)のより高い速度でのみ対照油Aより一貫して性能が優れていたことが分かる。
【0167】
サリチレート清浄剤とフェノレート清浄剤との同じ混合物およびその他の添加剤を含有する調合油X(100℃で20mm2/秒のブレンドKV、100℃で300mm2/秒のKVでの第2高粘度)は同様に約20mm/秒以上のより高い速度でのみ対照油Aより一貫して性能が優れていた。
【0168】
このように、図3Aおよび3Bでの調合物はすべて、より高い速度で対照油Aより性能が優れていたが、調合油VIII−A、IX−B、XI、XIIおよびXXXは、これらの調合油のすべてがサリチレート清浄剤とフェノレート清浄剤と同じ混合物を含有し、そして100℃で20〜25mm2/秒の動粘度を有し、第2のグループIVベースオイル(PAO 40またはPAO 150)ブレンディング成分を用いる状態で、両図の全速度範囲にわたって対照油Aに匹敵するかまたはそれより性能が優れていた。
【0169】
図4において、調合油XIII〜XVを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0170】
図4は、すべての調合物が70のBNの、異なるブレンド動粘度で同じフェノレート/サリチレート清浄剤混合物およびその他の添加剤入りベースオイルのグループI/グループIおよびグループIV/グループIV組み合わせを使用することが異なる速度でトラクション係数に及ぼす影響を示す。
【0171】
100℃で21mm2/秒動粘度にブレンドされたグループIV(PAO 8)ベースオイルとグループIVベースオイル(PAO 40)との混合物を用いる調合油XIVのみが、全速度範囲にわたってのトラクション係数の観点から対照油Aより性能が優れていたが、低速(3〜12mm2/秒)条件下で対照油B(ベースオイルのみ)よりまた性能が優れていた。
【0172】
22mm2/秒にブレンドされた、グループI(8mm2/秒)/グループI(32mm2/秒)基油の混合物中に同じフェノレート/サリチレート清浄剤組み合わせを使用する、調合油XIIIは、低〜中速(3〜50mm/秒)条件下でのみ対照油Aより性能が優れていた。それが(21mm2/秒よりもむしろ)100℃で13mm2/秒のKVにブレンドされたことを除いて油XIVと同じものである、調合油XVは、中〜高速(80mm/秒以上)条件下でのみ対照油Aより性能が優れていた。
【0173】
図5において、調合油XVI、XVII、XVIIIおよびXIXを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0174】
図5は、すべてが70の調合塩基価の、そして100℃で20mm2/秒のKVにブレンドされた、同じフェノレート/サリチレート清浄剤組み合わせおよびその他の添加剤入りグループI/グループIVおよびグループII/グループIVベースオイル組み合わせを使用する影響を示す。
【0175】
調合油XIX、グループII(3mm2/秒)ベースオイルとグループIVベースオイル(PAO 40)とのベースオイル組み合わせを用いる調合物のみが、全速度範囲にわたって摩擦係数の観点から対照油Aより性能が優れていた。それはまた、低〜中速範囲(3〜20mm2/秒)において対照油B(グループIII/グループIVベースオイル組み合わせのみ)より性能が優れていた。
【0176】
第2ベースオイル成分が(PAO 40の代わりに)グループIVベースオイル(PAO 150)であることを除いて油XIXと同じものである調合油XVIIIは、中〜高速領域(約20mm/秒以上)においてのみ対照油Aより性能が優れ、油XVI(グループI/グループIV調合物)より優れていた。それが第1ベースオイル成分として調合油XVIIIの3mm2/秒グループII基油の代わりにより高い動粘度グループII(12mm2/秒)基油を使用したことを除いて油XVIIIと同じものである、油XVIIは、低〜中速条件(3〜10mm/秒)下で対照油Aよりもわずかなトラクション係数利益を、高速(100+mm/秒)条件下で非常に僅かな利益を示したにすぎなかった。12mm2/秒未満の動粘度のグループIIベースオイルが、それ故、より高い(100mm/秒以上)速度で有意のトラクション係数利益を得るために好ましい。
【0177】
図6Aおよび6Bは、すべての調合物がBN70の、100℃で20mm2/秒のブレンドKVにブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)基油/グループIV基油(PAO 150)混合物中の異なるフェノレート/共清浄剤ブレンドの比較であって、互いにおよび対照油AおよびBに対してである比較を示す。
【0178】
図6Aは、油I−A(フェノレート/スルホネート)および油VIII−A(フェノレート/サリチレート)の両方が全速度範囲にわたって対照油A(グループI/PIBブレンド中のフェノレート/スルホネート)と比べてトラクション係数の大きい改善を提供することを示す。油VIII−Aは、低〜中速(約3〜80−90mm2/秒)で油I−Aより性能が優れている。
【0179】
図6Bは、グループIII(6.5mm2/秒)ベースオイル/グループIVベースオイル(PAO 150)ブレンド中のフェノレート/カルボキシレート清浄剤組み合わせがまた全速度範囲にわたって対照油Aと比べてトラクション係数の大きい改善を提供することを示す。しかし、非常に低い速度条件(約3〜7mm/秒)下で、フェノレート/カルボキシレート清浄剤組み合わせは依然として有効であるが、フェノレート/サリチレート組み合わせほどに多くの利益を提供しない。
【0180】
図7において、調合油IV、VIII−A、XXI、XXII、XXIIIおよびVIIを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0181】
図7は、フェノレート、サリチレートおよびスルホネート清浄剤の組み合わせを含有するブレンドに用いられるサリチレートおよびスルホネート清浄剤の量を変えることがトラクション係数に及ぼす影響を示す。これらの調合物はすべて、同じ低いKVおよびより高いKVの第1および第2基油を使用して100℃で20mm2/秒の同じ動粘度にブレンドされた。理解することができるように、サリチレート清浄剤のみを含有する、調合油IVは全速度範囲にわたってトラクション係数の最大の低下を示したが、サリチレート、フェノレートおよびスルホネート清浄剤の混合物(サリチレートがスルホネート清浄剤の一部と置き換わった)を含有するそれらの調合物は、少なくとも1.5重量%のサリチレートが低〜中速(3〜50mm/秒)下で対照油Aよりも改善を示すために必要とされる状態で、存在するサリチレートの量とともに変わる性能を示した。
【0182】
サリチレートのみまたはサリチレートとフェノレートとの混合物もしくはスルホネートとフェノレートとの混合物を含有する調合物は、サリチレート、フェノレートおよびスルホネートの混合物を含有する調合物より好ましい。
【0183】
図8において、調合油VII、XXIV、VIII−A、XXV、XXVIおよびIVを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0184】
図8は、フェノレート清浄剤に対してサリチレート清浄剤の量を変えることがブレンドKVのならびに使用される低いKVおよびより高いKVベースオイルの観点から別の点では同じ調合物に関するトラクション係数に及ぼす影響を示す。理解できるように、サリチレート/フェノレート比が大きければ大きいほど、トラクション係数性能はより良好である。しかし、調合物中のフェノレート濃度を最高にすることがその他の性能特性にとって重要である。
【0185】
約7.5重量%のサリチレートおよび7.4重量%のフェノレート清浄剤(重量比約1:1)を含有する、調合油XXVは、対照油Aと比べて最良の全体トラクション係数改善をとりわけ示した。約4.7重量%のサリチレートおよび11.5重量%のフェノレート(サリチレート:フェノレート重量比約1:2.5)を含有する油VIII−A中でわずかにサリチレート/フェノレート比を下げると、油XXVおよび油XXVIと比べて低速(3〜10mm/秒)でトラクション係数性能を劣化させた。それ故、フェノレート含有率と1:1〜1:2.5のサリチレート/フェノレートの重量比を用いるサリチレート/フェノレート清浄剤ブレンドを用いることによってトラクション係数への影響とを最大にすることが望ましい。
【0186】
調合物がすべて、すべての速度でのそれらのトラクション係数への影響の観点から対照油Aを超えたことが指摘されなければならず、油VII、XXV、XXVIおよびIVは、低速条件(3〜10mm/秒)下で対照油B、基油のみ)のトラクション係数を超える。100%フェノレート調合物(油VII)が、低〜中速(約8〜70−100mm/秒)下で油XXIV(2.5重量%のサリチレート/14.7重量%のフェノレート)、油VIII−A(4.7重量%のサリチレートおよび11.5重量%のフェノレート)、ならびに油XXVI(10重量%のサリチレートおよび3.7重量%のフェノレート)より良好なトラクション係数性能を提供したことが指摘されるべきである。
【0187】
図9において、調合油V、VII、XXVII、XXVIIIおよびXXIXを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0188】
図9は、フェノレート清浄剤に対してスルホネート清浄剤の量を変えることがブレンドKVのならびに使用される低いKVおよびより高いKVベースオイルの観点から別の点では同じ調合物におけるトラクション係数に及ぼす影響を示す。スルホネート清浄剤とフェノレート清浄剤との混合物を含有する調合物について、試験されたスルホネート/フェノレート比が高ければ高いほど、すべての速度下で対照油Aと比べてトラクション係数性能はより良好である。しかし、スルホネートのみの清浄剤は、フェノレートがまったく存在しないからのみならず、全スルホネート油、油Vが低速(3〜12mm/秒)および高速(100+mm/秒)で対照油Aよりも大きいトラクション係数利益を提供するが、この利益がフェノレートとスルホネートとの混合物を含有する油と比べてはるかに減少するか、または中速(20〜100mm/秒)で対照油Aと比べて皆無でさえあることを図9が示すので望ましくない。フェノレートのみの清浄剤調合物(油VII)は、低〜中速(約3〜10mm/秒)でスルホネート/フェノレートブレンドのそれより性能が優れている。油XXIX(6重量%スルホネート/5重量%フェノレート)のみが、高速(100+mm/秒)下に油VIIよりわずかに性能が優れている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加潤滑油調合物(又は添加剤を加えた潤滑油配合物)を使用する大きい低速、中速および高速エンジンの運転に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋および固定出力用途向けに設計されたディーゼルエンジンは、20以下のシリンダーを有する2サイクルか4サイクルかのどちらかであることができ、典型的には低速、中速または高速ディーゼルエンジンに分類される。これらのエンジンは、残留燃料油または重油から天然ガスまでの範囲の多種多様な燃料を燃やし(ディーゼル圧縮または火花点火)、舶用推進、海洋補助(船舶発電)、分散発電、および熱電併給(CHP)向けに最も一般的に用いられている。そのようなエンジンの潤滑は、全損(すなわち、シリンダー油によってシリンダーに直接供給される潤滑油)であるかまたは油だめを含む再循環であることができる。臨界エンジン部品の潤滑は、ピストンリング、シリンダーライナー、ベアリング、ピストン冷却、燃料ポンプ、エンジン制御水力学などを含む。燃料が典型的にはこれらのエンジンを運転する主要コストであり、船舶コンテナー輸送に用いられる典型的な12シリンダー、90cm口径低速ディーゼルエンジンは、$480/MTの今日の価格で年間約$33Mまでの重油を燃やすであろう。それ故、1%ほどの少ない燃料効率ゲインが船舶経営者に約$330kまでの年間節約をもたらすであろう。加えて、International Marine Organization(国際海事機関)、U.S.Environmental Protection Agency(米国環境保護庁)およびCalifornia Air Resources Board(カリフォルニア大気資源委員会)などの、政府機関は、これらのエンジンに対する排出物規定を法制化中である。燃料効率の向上は、相応に排出物(CO2、SOx、NOxおよび粒子状物質)を低減するだろうし、それは幾つかの排出権取引価値をもたらすはずである。
【0003】
金属−金属接触を防止するのに十分な油膜厚さを提供することに加えて、これらのエンジン用の潤滑油は、ピストンリングおよびシリンダーライナーの腐食摩耗を最小限にするために硫黄を含有する燃料の燃焼によって形成される酸を中和すること、燃料燃焼によっておよび生のまたは部分燃焼した燃料での潤滑油の汚染によって形成されるエンジンデポジットを最小限にすること、これらのエンジンにおける極端な熱による潤滑油の熱/酸化分解に抵抗すること、熱をエンジンから移動させることなどを含む、様々なその他のストレスに対処するように設計されている。
【0004】
長期的な必要条件は、潤滑油が、とりわけピストンおよびピストンリングなどの決定的に重要な構成要素に関して、エンジンの高温環境内で清浄度を維持しなければならないことである。生のおよび部分燃焼した燃料燃焼生成物、水、すすならびに油それ自体の熱/酸化分解物のエンジンにおける蓄積によるエンジン中のエンジンオイルの汚染は、エンジンオイルのエンジン清浄度性能を劣化させ得る。それ故、エンジンオイルは、良好な清浄度品質を有するように、かつ、汚染および熱/酸化分解によるそれらの品質の劣化に抵抗するように調合されることが望ましい。
【0005】
特許文献1は、液体の油混和性ポリイソブチレン(PIB)ならびに清浄剤、好ましくは過塩基性フェノレート、フェニレート、サリチレートまたはスルホネートの1つ以上、酸化防止剤、摩耗防止剤および分散剤を含む添加剤パッケージと組み合わせて中重質グループIもしくはグループII中性ベースオイル、典型的には300〜500−600SUS(約12mm2/秒以下の100℃でのKV)を含む海洋および固定低速ディーゼルエンジンにおける使用のための向上した清浄度および負荷容量ならびに低下したポートデポジット特性のディーゼルエンジンシリンダー油に関する。完成潤滑油は、範囲15〜25mm2/秒の100℃でのKVおよび範囲40〜100mg KOH/gの全塩基価を有する。
【0006】
酸化、硝化およびデポジット形成に対する油の耐性の増加によって立証されるような向上した寿命のガスエンジンオイルが特許文献2の主題である。当該特許のガスエンジンオイルは、主要量の潤滑粘度のベースオイルと、約250以下の全塩基価(TBN)を有する少なくとも1つのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩および前述の成分より低いTBNを有する第2アルカリもしくはアルカリ土類金属塩を含む清浄剤の混合物を含む少量の添加剤混合物とを含む低灰分ガスエンジンオイルである。この第2アルカリもしくはアルカリ土類金属塩のTBNは典型的には、前述の成分のそれの約半分以下であろう。
【0007】
特許文献3は、主要量の潤滑粘度のベースオイルならびに1つ以上の金属サリチレート清浄剤と1つ以上の金属フェノレートおよび/または金属スルホネート清浄剤との少量の混合物を含む天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に関する。
【0008】
潤滑油基油は、約5〜20cSt、より好ましくは約7〜16cSt、最も好ましくは約9〜13cStの100℃での動粘度を典型的には有するあらゆる天然または合成潤滑ベースオイル基材油留分である。好ましい実施形態においては、粘度指数向上剤の使用は、本発明調合物を製造するために使用される潤滑油ベースオイル留分からの100℃で粘度約20cSt以上の油の排除を可能にする。それ故、好ましいベースオイルは、たとえあったとしても、少量の重質留分;たとえば、たとえあったとしても、少量の100℃で粘度20cSt以上の潤滑油留分を含有するものである。
【0009】
潤滑油基油は、天然潤滑油、合成潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な潤滑油基油としては、原油の芳香族および極性成分を(溶媒抽出するよりもむしろ)水素化分解することによって製造される水素化分解体基油だけでなく、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化によって得られる基油が挙げられる。好適な基油としては、APIカテゴリーI、IIおよびIIIのものが挙げられ、ここで、飽和物レベルおよび粘度指数は、
グループI−それぞれ、90%未満および80〜120;
グループII−それぞれ、90%超および80〜120;ならびに
グループIII−それぞれ、90%超および120超
である。
【0010】
清浄剤の混合物は、少なくとも0.65重量%硫酸塩灰分の潤滑油を達成するのに十分な量でその他の金属塩または金属塩の群(下に列挙される)と組み合わせて使用される、約150超〜300以上、好ましくは約160〜300の高TBNを有する1つ以上の金属スルホネート、サリチレート、フェノレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第1金属塩または金属塩の群、約50超〜150、好ましくは約60〜120の中TBNを有する1つ以上の金属サリチレート、金属スルホネート、金属フェノレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第2金属塩または金属塩の群、ならびに約10〜50、好ましくは約20〜40のTBNを有する、中性または低TBNと同定される1つ以上の金属スルホネート、金属サリチレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第3金属塩または金属塩の群を含み、中プラス中性/低TBN清浄剤の総量は、約0.7容積%以上(活性成分)、好ましくは約0.9容積%以上(活性成分)、最も好ましくは約1容積%以上(活性成分)であり、ここで、中または低/中性TBN清浄剤の少なくとも1つは金属サリチレートであり、好ましくは中TBN清浄剤の少なくとも1つは金属サリチレートである。高TBN清浄剤の総量は、約0.3容積%以上(活性成分)、好ましくは約0.4容積%以上(活性成分)、最も好ましくは約0.5容積%(活性成分)である。混合物は、中または中性サリチレートが必須成分である状態で、少なくとも2つの異なるタイプの塩を含有する。高TBN清浄剤対中プラス中性/低TBN清浄剤の容積比(活性成分を基準とする)は、約0.15〜3.5、好ましくは0.2〜2、最も好ましくは約0.25〜1の範囲にある。
【0011】
清浄剤の混合物は、清浄剤混合物中の活性成分を基準として約10容積%以下の量で、好ましくは活性成分を基準として約8容積%以下、より好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として6容積%以下、最も好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として、約1.5〜5.0容積%の量で潤滑油調合物に添加される。好ましくは、すべてのTBNのうち使用される金属サリチレートの総量は、金属サリチレートの活性成分を基準として、0.5容積%〜4.5容積%の範囲にある。
【0012】
特許文献4は、100℃で約40cSt(mm2/秒)の粘度を有するPAOと、100℃で約2.0cSt(mm2/秒)以下の粘度を有するエステルとのブレンドであって、PAOとエステルとのブレンドがPAOの粘度指数以上の粘度指数を有するブレンドを含む完成自動車ギア潤滑油およびギアオイルの調製に有用な潤滑油組成物、自動車ギア潤滑組成物および流体に関する。この組成物は、増粘剤、酸化防止剤、阻害剤パッケージ、防錆添加剤、分散剤、清浄剤、摩擦改良剤、トラクション改良添加剤、乳化破壊剤、消泡剤、染料および曇り防止剤をさらに含有してもよい。
【0013】
特許文献5は、低、中および高TBN清浄剤の少なくとも2つ、好ましくはサリチル酸カルシウムを含む潤滑油組成物用の清浄剤添加剤に関する。この清浄剤は、グループII基油、グループIII基油またはワックス異性化体基油およびそれらの混合物の1つと、任意選択の少量の共基油とを含む潤滑油組成物中に存在する。共基油としては、ポリアルファオレフィンオリゴマーの低および中および高粘度油、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、その他の炭化水素油、補充のヒドロカルビル芳香族化合物などが挙げられる。
【0014】
特許文献6は、潤滑油が100℃で96(mm2/秒)超の第1基油と第2基油との間の粘度差の少なくとも2つの基油を含む、向上したマイクロピッチング特性のための潤滑油ブレンドに関する。少なくとも1つの基油は、6mm2/秒未満だが2mm2/秒超の粘度のポリアルファオレフィンであり、第2基油は、100℃で100mm2/秒超だが300mm2/秒未満の粘度の合成油である。第2基油は、高粘度ポリアルファオレフィンであることができる。
【0015】
特許文献7は、100℃で96cSt(mm2/秒)超の第1基油と第2基油と間の粘度差の少なくとも2つの基油を含む潤滑油ブレンドに関し、潤滑油は改善された排気を示す。このブレンドは、100℃で10cSt(mm2/秒)未満だが2cSt(mm2/秒)超の粘度を有する少なくとも1つの合成PAOと100℃で100cSt(mm2/秒)超だが300cSt(mm2/秒)未満の粘度を有する第2合成油とを含有する。潤滑油は、摩耗防止剤、酸化防止剤、消泡剤、乳化破壊剤、清浄剤、分散剤、金属不動態化剤、摩擦低減剤、防錆剤添加剤およびそれらの混合物を含有することができる。
【0016】
特許文献8は、少なくとも2つの基油を含む潤滑油であって、第1基油が100℃で40cSt(mm2/秒)超の粘度および少なくとも10%未満アルゴリズムで粘度の関数としての分子量分布(MWD):
MWD=0.2223+1.0232*log(cSt単位の100℃でのKv)
を有し、第2基油が100℃で10cSt(mm2/秒)未満の粘度を持った潤滑油に関する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で30cSt(mm2/秒)超である。好ましくは第1基材油は、メタロセン触媒PAO基油である。第2基材油は、GTL潤滑油、ワックス由来潤滑油、PAO、ブライトストック、PIBと一緒のブライトストック、グループI基油、グループII基油、グループII基油およびそれらの混合物から選択することができる。潤滑油は、清浄剤を含む添加剤を含有することができる。好ましくは第1基材油は、100℃で300cSt(mm2/秒)超の粘度を有し、第2基材油は、100℃で1.5cSt mm2/秒〜6cSt(mm2/秒)の粘度を有する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で96cSt(mm2/秒)超である。
【0017】
特許文献9は、少なくとも2つの基油を含む潤滑油であって、第1基油が100℃で少なくとも300cSt(mm2/秒)の粘度および少なくとも10%未満アルゴリズムで粘度の関数としての分子量分布(MWD):
MWD=0.2223+1.0232*log(cSt単位の100℃でのKV)
を有し、第2基油が100℃で100cSt(mm2/秒)未満の粘度を有する潤滑油に関する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で250cSt(mm2/秒)超である。好ましくは第1基材油は、メタロセン触媒PAO基油である。第2基材油は、GTL基油、ワックス由来基油、PAO、ブライトストック、PIBと一緒のブライトストック、グループI基油、グループII基油、グループIII基油、グループV基油、グループVI基油およびそれらの混合物から選択することができる。潤滑油は、清浄剤を含む添加剤を含有することができる。
【0018】
特許文献10は、清浄剤を含有する長寿命ガスエンジン潤滑油に関する。この潤滑油は、主要量の潤滑粘度のベースオイルならびに少量の1つ以上の金属スルホネートおよび/またはフェノレートと1つ以上の金属サリチレート清浄剤との混合物を含み、混合物中のすべての清浄剤は同じまたは実質的に同じ全塩基価(TBN)を有する。
【0019】
潤滑油基油は、約5〜20cSt(mm2/秒)、より好ましくは約7〜16cSt(mm2/秒)、最も好ましくは約9〜13cSt(mm2/秒)の100℃での動粘度を典型的には有するあらゆる天然または合成潤滑基油留分である。好ましい実施形態においては、粘度指数向上剤の使用は、本発明調合物を製造するために使用される潤滑油ベースオイル留分からの100℃で粘度20cSt(mm2/秒)以上の油の排除を可能にする。それ故、好ましいベースオイルは、たとえあったとしても、少量の重質留分;たとえば、たとえあったとしても、少量の100℃で粘度20cSt(mm2/秒)以上の潤滑油留分を含有するものである。
【0020】
潤滑油基油は、天然潤滑油、合成潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な潤滑油基油としては、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化によって得られる基油、ならびに原油の芳香族および極性成分を(溶媒抽出することよりもむしろ)水素化分解することによって製造される水素化分解物基油が挙げられる。好適な基油としては、APIカテゴリーI、IIおよびIIIのものが挙げられ、ここで、飽和物レベルおよび粘度指数は、
グループI−それぞれ、90%未満および80〜120;
グループII−それぞれ、90%超および80〜120;ならびに
グループIII−それぞれ、90%超および120超
である。
【0021】
清浄剤は、1つ以上の金属スルホネートおよび/または金属フェノレートと1つ以上の金属サリチレートとの混合物である。金属は、あらゆるアルカリもしくはアルカリ土類金属;たとえば、カルシウム、バリウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、より好ましくはカルシウム、バリウムおよびマグネシウムである。混合物に使用される金属塩のそれぞれが、混合物中のその他の金属塩と同じまたは実質的に同じTBNを有することが本発明潤滑油の特徴であり;したがって、この混合物は、1つ以上の金属塩のそれぞれが低TBN清浄剤であるか、またはそれぞれが中TBN清浄剤であるかまたはそれぞれが高TBN清浄剤である、1つ以上の金属サリチレートと組み合わせられた1つ以上の金属スルホネートおよび/または金属フェノレートを含むことができる。好ましくはそれぞれは低TBN清浄剤であり、各金属清浄剤は約100より下の同じまたは実質的に同じ類似のTBNを有する。本明細書および添付クレームの目的のためには、金属塩について、低TBNとは100未満のTBNを意味し;中TBNとは100〜250未満のTBNを意味し;そして高TBNとは約250以上のTBNを意味する。同じまたは実質的に類似のTBNとは、所与のTBNカテゴリー;たとえば、低、中および高内としてさえ、塩のTBNが同じTBNカテゴリー内に断じて入らないが絶対的には互いに近いことを意味する。したがって、スルホネートおよび/またはフェノレートと低TBNのサリチレートとの混合物は、100未満のTBNの塩で構成されるのみならず、各塩は、混合物中のその他の塩;たとえば、TBN64のサリチレートとペアにされたTBN60のスルホネート、またはTBN64のサリチレートとペアにされたTBN65のフェノレートのそれと実質的に同じTBNを有するであろう。したがって、個々の塩は、適用できるTBNカテゴリーの対極端での、または互いに実質的に変わるTBNを持たないであろう。
【0022】
塩のTBNは、約15%以下、好ましくは約12%以下、より好ましくは約10%以下だけ異なるであろう。
【0023】
1つ以上の金属スルホネートおよび/または金属フェノレート、ならびに1つ以上の金属サリチレートは、たとえば、5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20の重量比での混合物として清浄剤に利用される。
【0024】
清浄剤の混合物は、清浄剤混合物中の活性成分を基準として約10容積%以下の量で、好ましくは活性成分を基準として約8容積%以下、より好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として約6容積%以下、最も好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として約0.3容積%〜3容積%の量で潤滑油調合物に添加される。
【0025】
特許文献11は、ベースオイルおよび錯体の形態での油溶性の過塩基性清浄剤添加剤を含む、2ストローク・クロスヘッド海洋ディーゼルエンジン用の潤滑油であって、清浄剤の塩基性物質が2つ以上の界面活性剤で安定化されている潤滑油に関する。2つ以上の界面活性剤は、(1)硫化および/または非硫化フェノールならびにフェノール界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;(2)硫化および/または非硫化サリチル酸ならびにサリチル酸系界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;または(3)硫化または非硫化フェノール、硫化または非硫化サリチル酸である少なくとも3つの界面活性剤ならびにフェノールまたはサリチル酸系界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;または(4)硫化または非硫化フェノール、硫化または非硫化サリチル酸である少なくとも3つの界面活性剤ならびに少なくとも1つの硫酸界面活性剤の混合物であることができる。
【0026】
基油は、潤滑粘度の油であり、クロスヘッドエンジンのシステム潤滑に好適なあらゆる油であってもよい。潤滑油は好適には動物、植物または鉱物油であってもよい。好適には潤滑油は、ナフテン系ベース、パラフィン系ベースまたは混合ベースオイルなどの、石油由来潤滑油である。あるいは、潤滑油は合成潤滑油であってもよい。好適な合成潤滑油としては、ジ−オクチルアジペート、ジ−オクチルセバケートおよびトリデシルアジペートなどのジエステルを含む、合成エステル潤滑油、またはポリマー炭化水素潤滑油、たとえば、液体ポリイソブチレンおよびポリアルファオレフィンが挙げられる。一般的に、鉱油が用いられる。潤滑油は、一般に潤滑油組成物の60質量%超、典型的には70質量%超を占め、典型的には、2〜40mm2/秒、たとえば、3〜15mm2/秒の100℃での動粘度、および80〜100、たとえば、90〜95の粘度指数を有する。
【0027】
別のクラスの潤滑油は、精製プロセスが中間および重質留出物留分を高温および中圧で水素の存在下でさらに分解する、水素化分解油である。水素化分解油は典型的には、2〜40、たとえば、3〜15mm2/秒の100℃での動粘度、および典型的には100〜110、たとえば、105〜108の範囲の粘度指数を有する。
【0028】
ブライトストックは、28〜36mm2/秒の100℃での動粘度を一般に有する減圧残油から溶媒抽出され、脱瀝されている、そして潤滑油組成物の質量を基準として、30質量%未満、好ましくは20未満、より好ましくは15未満、最も好ましくは5質量%未満などの、10質量%未満の割合で典型的には使用されるベースオイルを意味する。
【0029】
特許文献12は、潤滑粘度の油、分散剤の、70〜45の範囲のTBN、油組成物の質量を基準として、0〜0.2質量%の窒素を有する少なくとも1つのサリチル酸カルシウムを含む清浄剤、および少量の1つ以上の共添加剤を含む清浄剤ガス燃料エンジン潤滑油に関する。ベースオイルは、あらゆる動物、植物もしくは鉱物油または合成油であることができる。ベースオイルは、組成物の60質量%超の割合で使用される。この油は典型的には、2〜40、たとえば、3〜15mm2/秒の100℃での粘度および80〜100の粘度指数を有する。100℃で2〜40mm2/秒の粘度および100〜110の粘度指数を有する水素化分解油をまた使用することができる。28〜36mm2/秒の100℃での粘度を有するブライトストックはまた、典型的には30質量%未満、好ましくは20未満、最も好ましくは5質量%未満の割合で使用することができる。
【0030】
特許文献13は、80〜120の粘度指数、少なくとも90質量%の飽和物、0.03質量%以下の硫黄および少なくとも1つの清浄剤を有する主要量の潤滑油を含む、95ppm超のホウ素含有率を有するガスエンジンオイルに関する。金属サリチレートが好ましい清浄剤である。
【0031】
特許文献14は、高粘度PAOなどの高粘度合成炭化水素、液体水素化ポリイソプレン、または100℃で40〜1000cSt(mm2/秒)の粘度を有するエチレン−アルファオレフィンコポリマー、100℃で1〜10cSt(mm2/秒)の粘度を有する低粘度合成炭化水素、任意選択的に100℃で1〜10cSt(mm2/秒)の粘度を有する低粘度エステル、および任意選択的に25重量%以下の添加剤パッケージを含有する潤滑油組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】米国特許第6,339,051号明細書
【特許文献2】米国特許第5,726,133号明細書
【特許文献3】米国特許第6,191,081号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0059563号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0191032号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0276355号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2007/0289897号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0298990号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0207475号明細書
【特許文献10】米国特許第6,140,281号明細書
【特許文献11】米国特許第6,645,922号明細書
【特許文献12】米国特許第6,613,724号明細書
【特許文献13】米国特許第7,101,830号明細書
【特許文献14】米国特許第4,956,122号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、インターフェイス面(又は接触面)速度が少なくとも約3mm/秒、好ましくは少なくとも約10mm/秒に達する、潤滑油を使用して潤滑される、大きい低速、中速および高速エンジンの燃料経済性を、前記エンジンを潤滑することによりそのエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって向上させる方法に向けられている。
これは、100℃で、13〜30mm2/秒、好ましくは16〜30mm2/秒、より好ましくは18〜25mm2/秒、最も好ましくは20〜25mm2/秒の動粘度、および少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gの塩基価(BN)を有し、
2つの異なるベースオイル、
100℃で、2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の動粘度を有する、グループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイル、好ましくはグループIIIおよびグループIVベースオイル、より好ましくはグループIIIベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1ベースオイルと、100℃で、少なくとも38mm2/秒、好ましくは38〜1200mm2/秒、より好ましくは38〜600mm2/秒、さらにより好ましくは38〜300mm2/秒未満、最も好ましくは38〜150mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドを含むベースオイル、並びに
(活性成分に基づいて)潤滑油の6重量%を超えて40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%の全処理レベルで、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウムサリチレート、フェノレート、カルボキシレート、スルホネート、サリチレートとフェノレートとの混合物もしくはフェノレートとカルボキシレートとの混合物、好ましくはフェノレート、サリチレートおよびカルボキシレートまたはフェノレートとカルボキシレートとの混合物もしくはフェノレートとサリチレートとの混合物から選択される清浄剤
を含有する潤滑油を、エンジンオイルとして使用することによって達成され、
ここで、燃料経済性の向上は、二峰性ではない又はグループIおよび/またはグループII基油のみに基づく又は100℃で少なくとも38mm2/秒のKVを有するグループIV基油をまったく含有しない又は異なる清浄剤もしくは清浄剤混合物を含有するエンジンオイルのトラクション係数と比較して、その二峰性ブレンドを用いるそのエンジンオイルのトラクション係数がより低いことによって立証される。
【0034】
「表面速度」とは、エンジン中のインターフェイス面、たとえばシリンダー壁およびピストン、またはベアリングのインターフェイス面が、エンジンが動作するときに互いに通りすぎる速度を意味する。この表面速度は、インターフェイス面についての潤滑レジームが境界、流体力学的または混合(境界/流体力学的)であるかどうかに影響を及ぼす主な因子である。
【0035】
少なくとも約30mm/秒、好ましくは少なくとも60mm/秒、より好ましくは少なくとも75mm/秒、最も好ましくは少なくとも100mm/秒の表面速度に達するエンジンについては、第1ベースオイルは、100℃で、2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の動粘度を有するグループII、グループIIIおよびグループIV基油、好ましくはグループIIIおよびグループIV基油の1種以上であり、第2ベースオイルは、少なくとも38mm2/秒、好ましくは38〜1200mm2/秒、より好ましくは38〜600mm2/秒、さらにより好ましくは38〜300mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルの1種以上であり、清浄剤は、あらゆるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、サリチレート、フェノレート、スルホネート、カルボキシレートおよびそれらの混合物であることが可能であり、用いられる清浄剤の総量は、(活性成分に基づいて)潤滑油の6重量%を超えて40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、最も好ましくは12〜25重量%の範囲にあり、潤滑油は、少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのTBNおよび、100℃で6〜30mm2/秒、好ましくは8〜25mm2/秒、より好ましくは12〜20mm2/秒の動粘度を有する。
【0036】
少なくとも3mm/秒の表面速度に達するエンジンについての別の実施形態においては、第1ベースオイルは、100℃で2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒のKVを有する、1種以上のグループII、グループIIIおよびグループIV基油、好ましくはグループIIIおよびグループIV基油であり、第2ベースオイルは、100℃で38mm2/秒から300mm2/秒未満、好ましくは38〜150mm2/秒のKV(又は動粘度)を有する1種以上のグループIVベースオイルであり、清浄剤は、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、スルホネート清浄剤またはアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、フェノレートとスルホネートとの混合物であり、清浄剤の総量は、(活性成分に基づいて)潤滑油の6重量%を超えて40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、さらにより好ましくは12〜25重量%の範囲にあり、ここで、フェノレートは、潤滑油の総重量を基準として、5〜30重量%、好ましくは8〜30重量%、より好ましくは10〜30重量%の範囲の量で存在し、スルホネートは、1〜10重量%、好ましくは2〜10重量%、より好ましくは3〜10重量%の範囲の量で存在し、潤滑油は、少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのBN、および100℃で13〜30mm2/秒、好ましくは16〜30mm2/秒、より好ましくは18〜25mm2/秒の動粘度を有する。
【0037】
別の実施形態において本発明は、
第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差が少なくとも30mm2/秒であり、100℃で2〜16mm2/秒の動粘度を有するグループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイルからなる群から選択される第1ベースオイルと、100℃で少なくとも38mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される第2ベースオイルと、並びに
潤滑油の総重量を基準として、6重量%を超えて40重量%まで(活性成分)の量での全処理レベルでアルカリおよび/またはアルカリ土類金属サリチレート、フェノレート、カルボキシレート、スルホネート、フェノレートとサリチレートとの混合物もしくはフェノレートとカルボキシレートとの混合物から選択される清浄剤
を含み、100℃で6〜30mm2/秒、好ましくは13〜30mm2/秒の動粘度、および少なくとも5mg KOH/gの塩基価を有する潤滑油を、エンジンオイルとして用いることにより、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも約3mm/秒、好ましくは少なくとも約30mm/秒の表面速度に達する、大きい低速、中速および高速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の向上は、グループIIベースオイル、グループIIIベースオイルもしくはグループIVベースオイルの単一ベースオイル成分を含む、又は30mm2/秒未満の第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差を有する同等の(又は相当する)ベースオイルのブレンドを含む又はグループIおよび/またはグループIIベースオイルのみに基づく又は100℃で少なくとも38mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルをまったく含有しない、100℃で同じ動粘度のエンジンオイルのトラクション係数より、そのエンジンオイルがより低いトラクション係数を有することによって立証される方法に向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】グループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)ならびにグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 300)をベースとする調合物(又は配合物)であって、すべてがフェノレートとスルホネートとの混合物を含む同じ清浄剤パッケージを利用し、すべての調合物が70の調合BNを有する清浄剤を含有し、ブレンドが対照油Aに対して動粘度の点で異なる調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を示す。
【図2】異なる清浄剤を利用する、100℃で20mm2/秒のKV(又は動粘度)にブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)をベースとする調合物であって、70の調合BNを有する清浄剤を含有する油調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)およびベースオイルの混合物だけを含有するブレンドである対照油B(Ref.B)に対して示す。
【図3A】フェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を利用する、異なる動粘度にブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよび2種の異なるグループIVベースオイル(PAO 150およびPAO 300)をベースとする調合物であって、すべての調合物が70の調合BNを有する清浄剤を含有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)に対して示す。
【図3B】異なるブレンド動粘度にブレンドされた、そしてフェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物(40および70の異なる調合物塩基価にブレンドされた)を利用する、グループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよび2つの異なるグループIVベースオイル(PAO 40およびPAO 150)をベースとする調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)(フェノレート/スルホネート清浄剤を含有する)およびグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルとグループIV(PAO 150)ベースオイルとのみのブレンドである対照油B(Ref.B)に対して示す。
【図4】フェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を利用する、異なる動粘度のグループIベースオイルのブレンドをベースとする調合物ならびに異なるブレンド動粘度にブレンドされた、そしてフェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を含有する、異なる動粘度のグループIVベースオイル(PAO 8およびPAO 40)のブレンドをベースとする調合物であって、70の調合BNを有する清浄剤を含有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)およびグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルとグループIV(PAO 150)ベースオイルとのみのブレンドである対照油B(Ref.B)に対して示す。
【図5】フェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を含有するグループI(12mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)をベースとする調合物ならびにフェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を含有するグループIV(PAO 40およびPAO 150)ベースオイルと混合された、異なる動粘度グループII(3mm2/秒および12mm2/秒)ベースオイルをベースとする調合物であって、すべての調合物が70の調合BNを有する清浄剤を含有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)およびグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルとグループIV(PAO 150)ベースオイルとのみのブレンドである対照油B(Ref.B)に対して示す。
【図6A】異なる清浄剤、フェノレート/サリチレートまたはフェノレート/スルホネートの混合物を利用する、20mm2/秒の100℃でのブレンドKVにブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIV(PAO 150)ベースオイルをベースとする調合物であって、すべての調合物が70の調合BNを有する清浄剤を含有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)に対して示す。
【図6B】フェノレートおよびカルボキシレート清浄剤かフェノレートおよびサリチレート清浄剤かのどちらかの混合物を用いるグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIV(PAO 150)ベースオイルをベースとする2つの調合物であって、70の調合BNを有する清浄剤を含有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)およびグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルとグループIV(PAO 150)ベースオイルとのみの混合物である対照油B(Ref.B)に対して示す。
【図7】フェノレート清浄剤のみかもしくはサリチレート清浄剤のみかまたは異なる比率でのサリチレート清浄剤とフェノレート清浄剤との混合物またはフェノレート、スルホネートおよびサリチレート清浄剤の混合物を利用する、100℃で20mm2/秒のブレンドKVにブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)をベースとする調合物であって、すべての調合物が70の調合BNを有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)に対して示す。
【図8】フェノレート清浄剤のみ、サリチレート清浄剤のみまたは異なる比率でのフェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との混合物を利用する、100℃で20mm2/秒のブレンドKVにブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)をベースとする調合物であって、すべての調合物が70の調合BNを有する調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)に対して示す。
【図9】すべてが100℃で20mm2/秒のKVおよび70のBNにブレンドされた、フェノレート清浄剤だけか異なる比率でのフェノレート清浄剤とスルホネート清浄剤との混合物かのどちらかを用いる、グループIII(6.5mm2/秒)ベースオイルおよびグループIVベースオイル(PAO 150)をベースとする調合物のトラクション係数対速度(mm/秒)への影響を、対照油A(Ref.A)に対して示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の方法は、基油の二峰性混合物を利用する。本明細書において二峰性とは、それぞれが100℃で異なる動粘度を有する少なくとも2つの基油の混合物であって、二峰性ブレンド中の少なくとも2つの基油間の100℃での動粘度の差が少なくとも30mm2/秒である混合物を意味する。少なくとも2つの基油の混合物は、少なくとも38mm2/秒の100℃でのKVを有する1種以上の高動粘度グループIV基油と組み合わせて、その基油がAPI分類を用いてグループII、グループIIIおよびグループIV基油からなる群から選択される、2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の100℃での動粘度を有する1種以上の低動粘度基油を含む。
【0040】
本明細書でおよび添付特許請求の範囲で用いるところでは、用語「基油」および「ベースオイル」は、同意語としておよび同じ意味で用いられる。
【0041】
グループII基油は、90%以上の飽和物、0.03重量%以下の硫黄ならびに80以上および120未満の粘度指数を含有する油とAmerican Petroleum Institute(米国石油協会)によって分類されている。
【0042】
グループIII基油は、90%以上の飽和物、0.03%以下の硫黄および120以上の粘度指数を含有する油とAmerican Petroleum Instituteによって分類されている。グループIII基油は通常、減圧ガスオイル(又は軽油)などの、油原料油を水素化分解して不純物を除去し、かつ、存在する可能性があるすべての芳香族化合物を飽和させて非常に高い粘度指数の高パラフィン系潤滑油基材油を生成する工程、水素化分解基材油を、ノルマルパラフィンを異性化することによって分岐パラフィンへ転化する選択的接触水素化脱ロウ処理にかける工程、引き続き水素化精製してあらゆる残存芳香族化合物、硫黄、窒素またはオキシゲネートを除去する工程を含む3段階プロセスを用いて製造される。
【0043】
グループIII基材油はまた、(1)1つ以上のガス液化(GTL)物質;ならびに(2)合成ワックス、天然ワックスまたはワックス質原料から誘導される、水素化脱ロウ処理された、または水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理された基油および/またはベースオイルであって、ワックス質原料が、ガスオイル(又は軽油)、スラックワックス(天然油、鉱油もしくは合成油、たとえば、Fischer−Tropsch(フィッシャー−トロプシュ)原料油の溶媒脱ロウ処理に由来する)などの鉱油および/または非鉱油ワックス質原料油ならびにワックス質燃料ハイドロクラッカーボトム、ワックス質ラフィネート、水素化分解物、熱分解物、フ−ツ油もしくはその他の鉱物、鉱油などのワックス質基材油、または石炭液化もしくはシェール油から回収されるワックス質物質、約20個以上の、好ましくは約30個以上の炭素数の線状もしくは分岐ヒドロカルビル化合物などの非石油由来ワックス質物質さえならびにそのような基油および/またはベースオイルの混合物を含む基油および/またはベースオイルから誘導される基油および/またはベースオイルの1つまたは混合物を含む非従来的なまたは一般的でない基油および/またはベースオイルを包含する。
【0044】
GTL物質は、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、プロピン、ブタン、ブチレンおよびブチンなどのガス状炭素含有化合物、水素含有化合物および/または原料油としての成分から1つ以上の合成、結合、変換、転位、および/または分解/破壊的プロセスによって誘導される物質である。GTL基油および/またはベースオイルは、炭化水素;たとえば、それら自体、より簡単なガス状炭素含有化合物、水素含有化合物および/または原料油としての成分から誘導されるワックス質合成炭化水素から一般に誘導される潤滑粘度のGTL物質である。GTL基油および/またはベースオイルとしては、潤滑油沸点範囲で沸騰する油(1)たとえば、蒸留によってなど合成GTL物質から分離された/分留された、そしてその後低下した/低い流動点の潤滑油を製造するために、接触脱ロウ処理プロセス、または溶媒脱ロウ処理プロセスのどちらかまたは両方を含む最終ワックス処理工程にかけられた;(2)たとえば、水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された接触および/または溶媒脱ロウ処理された合成ワックスまたはワックス質炭化水素を含む、合成ワックス異性化体;(3)水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された接触および/または溶媒脱ロウ処理されたFischer−Tropsch(F−T)物質(すなわち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックスおよび可能な類似オキシゲネート);好ましくは水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/引き続き接触および/または溶媒脱ロウ脱ロウ処理されたF−Tワックス質炭化水素、または水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/引き続き接触(および/または溶媒)脱ロウ脱ロウ処理されたF−Tワックス、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0045】
GTL物質に由来するGTL基油および/またはベースオイル、とりわけ、水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/引き続き接触および/または溶媒脱ロウ処理されたワックスまたはワックス質原料、好ましくはF−T物質由来基油および/またはベースオイルは、100℃で約2mm2/秒〜約50mm2/秒の動粘度(ASTM D445)を有するとして典型的には特徴付けられる。それらは、−5℃〜約−40℃以下の流動点(ASTM D97)を有するとして典型的にはさらに特徴付けられる。それらはまた、約80〜約140以上の粘度指数(ASTM D2270)を有するとして典型的には特徴付けられる。
【0046】
加えて、GTL基油および/またはベースオイルは典型的には高パラフィン性(>90%飽和物)であり、非環状イソパラフィンと組み合わせてモノシクロパラフィンとマルチシクロパラフィンとの混合物を含有してもよい。そのような組み合わせにおけるナフテン系(すなわち、シクロパラフィン)含有率の比は、使用される触媒および温度とともに変動する。さらに、GTL基油および/またはベースオイルは典型的には、非常に低い硫黄および窒素含有率を有し、一般に約10ppm未満、より典型的には約5ppm未満のこれらの元素のそれぞれを含有する。F−T物質、とりわけF−Tワックスから得られるGTL基油および/またはベースオイルの硫黄および窒素含有率は、本質的に皆無である。加えて、リンおよび芳香族化合物の不在は、この物質を低SAP製品の調合にとりわけ好適にする。
【0047】
用語GTL基油および/またはベースオイルおよび/またはワックス異性化体基油および/またはベースオイルは、ターゲット動粘度を示すブレンドを製造するために製造プロセスにおいて回収されるような幅広い粘度範囲のそのような物質、そのような留分の2種以上の混合物、ならびに1種または2種以上の低粘度留分と1種又は2種以上のより高い粘度留分との混合物の各々の留分を包含すると理解されるべきである。
【0048】
GTL基油および/またはベースオイルが誘導される、GTL物質は好ましくは、F−T物質(すなわち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックス)である。
【0049】
好ましい実施形態においては、GTL基油および/またはベースオイルが誘導されるGTL物質は、F−T物質(すなわち、炭化水素、ワックス質炭化水素、ワックス)である。スラリーF−T合成プロセスが、COおよび水素ならびに特に、より望ましいより高分子量パラフィンを製造するための高いSchultz−Flory速度論的アルファを提供するための触媒コバルト成分を含むF−T触媒を用いるものから原料を合成するために都合よく用いられてもよい。本プロセスはまた、当業者によく知られている。
【0050】
GTL基油および/またはベースオイル、水素化脱ロウ処理されたもしくは水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理されたF−T物質由来基油、ならびにワックス異性化体または水素化脱ロウ処理体などの、ワックス由来の水素化脱ロウ処理された、もしくは水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理された基油の有用な組成物は、たとえば、米国特許第6,080,301号明細書;同第6,090,989号明細書、および同第6,165,949号明細書に列挙されている。
【0051】
本発明においてグループIII基材油としての使用にまた好適である、ワックス質原料から誘導される基油および/またはベースオイルは、鉱油、非鉱油、非石油、もしくは天然発生源、たとえばガスオイル、スラックワックス、ワックス質燃料ハイドロクラッカーボトム、炭化水素ラフィネート、天然ワックス、水素化分解物、熱分解物、フ−ツ油、石炭液化からのもしくはシェール油からのワックスの1つ以上などの原料油、またはその他の好適な鉱油、非鉱油、非石油、もしくは天然源由来ワックス質物質、約20個以上の、好ましくは約30個以上の炭素数の線状もしくは分岐ヒドロカルビル化合物、およびそのような異性化体/イソ脱ロウ体基油および/またはベースオイルの混合物の水素化脱ロウ処理された、または水素異性化された/接触(および/または溶媒)脱ロウ処理されたワックス質原料油から誘導される潤滑粘度のパラフィン系流体である。
【0052】
スラックワックスは、溶媒または自動冷却脱ロウ処理によってF−Tワックス質油などの合成油または石油を含むあらゆるワックス質炭化水素油から回収されるワックスである。溶媒脱ロウ処理は、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、MEK/MIBKの混合物、MEKとトルエンとの混合物などの冷却された溶媒を用いるが、自動冷却脱ロウ処理は、プロパンまたはブタンなどの加圧液化低沸点炭化水素を用いる。
【0053】
F−Tワックス質油などの合成ワックス質油から確保されるスラックワックスは通常、ゼロまたは皆無の硫黄および/または窒素含有化合物含有率を有するであろう。石油から確保されるスラックワックスは、硫黄および窒素含有化合物を含有する可能性がある。そのようなヘテロ原子化合物は、水素異性化触媒のその後の被毒/不活性化を回避するためにたとえば水素化脱硫(HDS)および水素化脱窒素(HDN)によるような、水素化処理(そして水素化分解ではない)によって除去されなければならない。
【0054】
ワックス質基材油、たとえばスラックワックス、F−Tワックスまたはワックス質原料から潤滑油基油を製造するプロセスは、異性化プロセスと特徴付けられてもよい。スラックワックスが原料として使用される場合、それらは、さもなければ次工程で使用される水素異性化または水素化脱ロウ処理触媒を不活性化するであろう硫黄−および窒素−含有化合物を(触媒被毒または不活性化を効果的に回避するであろうレベルまで)下げるためにまたは除去するために当業者に既によく知られている条件下で予備水素化処理工程にかけられる必要がある可能性がある。F−Tワックスが使用される場合、そのようなワックスが痕跡量(約10ppm未満、またはより典型的には約5ppm未満〜皆無)の硫黄または窒素化合物含有率を有するにすぎないので、そのような予備処理は必要とされない。しかし、F−Tワックスを供給されるある水素化脱ロウ処理触媒は、オキシゲネートの除去のための前水素化処理から恩恵を受ける可能性があり、一方その他のものはオキシゲネート処理から恩恵を受ける可能性がある。水素異性化または水素化脱ロウ処理プロセスは、触媒の組み合わせ上で、または単一触媒上で行われてもよい。
【0055】
あらゆる必要とされる水素化脱窒素または水素化脱硫の後に、そのようなワックス質原料からの基油の製造のために用いられる水素処理は、潤滑油水素化分解(LHDC)触媒などの、非晶質の水素化分解/水素異性化触媒、たとえば、酸化物担体、たとえば、アルミナ、シリカ、シリカ/アルミナ上にCo、Mo、Ni、W、Moなどを含有する触媒、または結晶質の水素化分解/水素異性化触媒、好ましくはゼオライト系触媒を使用してもよい。
【0056】
イソパラフィン系炭化水素ベースオイルを形成するための本明細書において開示されるn−パラフィンワックス質原料油の転化に有用な炭化水素転化触媒は、米国特許第4,906,350号明細書において開示されているような、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−12、ZSM−38、ZSM−48、Offretite、フェリエライト、ゼオライトベータ、ゼオライトシータ、およびゼオライトアルファなどの、ゼオライト触媒である。これらの触媒は、VIII族金属、特にパラジウムまたは白金と組み合わせて使用される。VIII族金属は、イオン交換などの、従来技法によってゼオライト触媒中へ組み入れられてもよい。
【0057】
一実施形態においては、ワックス質原料油の転化は、水素の存在下でPt/ゼオライトベータとPt/ZSM−23触媒との組み合わせ上で、または連続して使用されるそのような触媒上で行われてもよい。別の実施形態においては、潤滑油基油の製造プロセスは、Pt/ZSM−35などの、単一触媒上での水素異性化および脱ロウ処理を含む。その上別の実施形態においては、ワックス質原料は、1ステージか2ステージかのどちらかでVIII族金属担持ZSM−48、好ましくはVIII族貴金属担持ZSM−48、より好ましくはPt/ZSM−48を含む触媒上に供給することができる。あらゆる場合に、有用な炭化水素ベースオイル生成物を得ることができる。触媒ZSM−48は、米国特許第5,075,269号明細書に記載されている。
【0058】
脱ロウ処理工程は、必要なとき、溶媒脱ロウ処理、接触脱ロウ処理もしくは水素化脱ロウ処理プロセスの1つ以上または任意の順番でのそのようなプロセスの組み合わせを用いて成し遂げられてもよい。
【0059】
溶媒脱ロウ処理において、水素異性化体は、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ME/MIBKの混合物、またはMEK/トルエンの混合物などの冷却された溶媒と接触させられ、そしてさらに、より高い流動点物質をワックス質固体として沈澱させるためにさらに冷却され、ワックス質固体は次に、ラフィネートである溶媒含有潤滑油留分から分離される。ラフィネートは典型的には、より多くのワックス固形分を除去するためにキサゲ面冷却装置でさらに冷却される。その少なくとも一部が水素異性化体を冷却してワックスを沈澱させるためにフラッシュされる、たとえば、液体プロパンと水素異性化体が混合される、プロパンなどの、低分子量炭化水素を使用する自動冷却脱ロウ処理をまた用いることができる。ワックスは、濾過、膜分離または遠心分離によってラフィネートから分離される。溶媒は次に、ラフィネートからストリップされ、ラフィネートは次に、本発明に有用な好ましい基油を製造するために分留される。
【0060】
接触脱ロウ処理において水素異性化体は、水素異性化体の流動点を下げるのに有効な条件で好適な脱ロウ処理触媒の存在下で水素と反応させられる。接触脱ロウ処理はまた、水素異性化体の一部をより低沸点物質に転化し、低沸点物質はより重質の基油留分から分離される。この基油留分は次に分留して2つ以上の基油にすることができる。より低沸点物質の分離は、所望の基油への重質基油留分物質の分留前か分留中かのどちらかに成し遂げられてもよい。
【0061】
水素異性化体の流動点を下げるであろうあらゆる脱ロウ処理触媒、および好ましくは水素異性化体からの潤滑油基油の大収量を提供するものが使用されてもよい。これらとしては、少なくとも1つの触媒金属成分と組み合わせられたときに、石油留分を脱ロウ処理するために有用と実証されている形状選択的なモレキュラーシーブが挙げられ、たとえば、フェリエライト、モルデナイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23、ZSM−35、シータワンまたはRONとしても知られるZSM−22、およびSAPOとして知られるシリコアルミノホスフェートが挙げられる。意外にも特に有効であることが分かった脱ロウ処理触媒は、H−モルデナイトと複合した、貴金属、好ましくはPtを含む。脱ロウ処理は、固定床、流動床またはスラリー床での触媒で成し遂げられてもよい。典型的な脱ロウ処理条件としては、約400〜600°Fの範囲の温度、500〜900psigの圧力、フロースルー反応器について1500〜3500SCF/BのH2処理比率および0.1〜10、好ましくは0.2〜2.0のLHSVが挙げられる。脱ロウ処理は典型的には、650〜750°Fの範囲の初期沸点を有する水素異性化体の40重量%以下、好ましくは30重量%以下をその初期沸点より下で沸騰する物質に転化するために行われる。
【0062】
二峰性混合物の第1基油はまた、本明細書および添付された特許請求の範囲の目的のためにポリアルファオレフィンと同定されるグループIV基油であることができる。
【0063】
ポリアルファオレフィン(PAO)は、一般に典型的には、ポリアルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマーまたはオリゴマーからなり、C2〜約C32アルファオレフィンを含み、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどのC8〜約C16アルファオレフィンが好ましいが、それらに限定されるものではない。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセンおよびポリ−1−ドデセンならびにそれらの混合物および混合オレフィン由来ポリオレフィンである。
【0064】
PAO流体は、たとえば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素と水、エタノール、プロパノールもしくはブタノールなどのアルコール、カルボン酸または酢酸エチルもしくはプロピオン酸エチルなどのエステルとの錯体を含むFriedel−Crafts(フリーデル−クラフツ)触媒などの重合触媒の存在下でのアルファオレフィンの重合によって便利に製造されてもよい。たとえば、米国特許第4,149,178号明細書または米国特許第3,382,291号明細書によって開示されている方法が本明細書において便利に用いられてもよい。PAO合成のその他の記載は、次の米国特許:第3,742,082号明細書、第3,769,363号明細書、第3,876,720号明細書、第4,239,930号明細書、第4,367,352号明細書、第4,413,156号明細書、第4,434,408号明細書、第4,910,355号明細書、第4,956,122号明細書、および第5,068,487号明細書に見いだされる。C14〜C18オレフィンの二量体は、米国特許第4,218,330号明細書に記載されている。
【0065】
本発明に有用なPAOはまた、メタロセン触媒作用によって製造することができる。メタロセン触媒PAO(mPAO)は、メタロセン触媒系による少なくとも2つのアルファオレフィンもしくはそれ以上から製造されたコポリマー、または単一のアルファオレフィン原料から製造されたホモポリマーであることができる。
【0066】
メタロセン触媒は、たとえば、メチルアルミノキサン(MAO)またはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレートまたはその他の等価の非配位アニオンなどの、非配位アニオンによって活性化されたまたは促進された単純メタロセン、置換メタロセンまたは架橋メタロセン触媒であることができる。mPAOおよびメタロセン触媒作用を用いるmPAOの製造方法は、国際公開第2009/123800号パンフレット、国際公開第2007/011832号パンフレット、および米国特許出願公開第2009/0036725号明細書に記載されている。
【0067】
コポリマーmPAO組成物は、C3〜C30範囲の少なくとも2つのアルファオレフィンから製造され、モノマーがポリマー中にランダムに分配されている。平均炭素数は少なくとも4.1であることが好ましい。有利には、エチレンおよびプロピレンは、原料中に存在する場合、個々に50重量%未満または好ましくは合わせて50重量%未満の量で存在する。本発明のコポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマーまたは適切な立体規則性のあらゆるその他の形態であることができる。
【0068】
mPAOはまた、C3〜C30線状アルファオレフィンから選択される少なくとも2つおよび26以下の異なる線状アルファオレフィンを含む混合原料線状アルファオレフィン(LAO)から製造することができる。好ましい実施形態においては、混合原料LAOは、アルミニウム触媒またはメタロセン触媒を使用するエチレン成長処理から得られる。成長オレフィンは、ほとんどC6〜C18LAOを含む。その他のプロセスからのLAOもまた使用することができる。
【0069】
ホモポリマーmPAO組成物は、C3〜C30範囲、好ましくはC3〜C16、最も好ましくはC3〜C14またはC3〜C12から選択される単一のアルファオレフィンから製造される。ホモポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマーまたは適切な立体規則性のあらゆるその他の形態であることができる。多くの場合立体規則性は、選択された重合触媒および重合反応条件によってまたは選択された水素化条件によって慎重に調整することができる。
【0070】
アルファオレフィンは、通常のLAO製造施設からかまたは製油所からのあらゆる成分から選択することができる。それは、ホモポリマーを製造するために単独で、またはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどを含む、製油所もしくは化学プラントから入手可能な別のLAOと、または専用の製造施設から製造された1−ヘキセンもしくは1−オクテンと一緒に使用することができる。別の実施形態においては、アルファオレフィンは、Fischer−Tropsch合成(米国特許第5,382,739号明細書に報告されているような)から製造されたアルファオレフィンから選択することができる。たとえば、C3〜C16アルファオレフィン、より好ましくは線状アルファオレフィンがホモポリマーを製造するために好適である。C4−およびC14−LAO、C6−およびC16−LAO、C8−、C10−、C12−LAO、またはC8−およびC14−LAO、C6−、C10−、C14−LAO、C4−およびC12−LAOなどの、その他の組み合わせがコポリマーを製造するために好適である。
【0071】
C3〜C30LAOから選択されるLAOの混合物またはC3〜C16LAOから選択される単一のLAOを含む原料は、潤滑油成分でのまたは機能性流体としての使用に好適な液体生成物を提供するためにオリゴマー化条件下で活性化メタロセン触媒と接触させられる。本発明はまた、C3〜C30範囲の少なくとも2つのアルファオレフィンから製造された、そしてモノマーがポリマー中にランダムに分配されたコポリマー組成物に関する。語句「少なくとも2つのアルファオレフィン」は、「少なくとも2つの異なるアルファオレフィン」を意味すると理解されるであろう(そして同様に「少なくとも3つのアルファオレフィン」は「少なくとも3つの異なるアルファオレフィン」などを意味する)。
【0072】
得られた生成物は、少なくとも2つのアルファオレフィンを含む本質的にランダムの液体コポリマーである。「本質的にランダムの」とは、生成物がランダムコポリマーであると当業者が考えるであろうことを意味する。同様に、用語「液体」は、周囲温度および圧力などの、温度および圧力の通常条件下で液体を意味すると当業者によって理解されるであろう。
【0073】
本プロセスは、非配位アニオン(NCA)(式2、下記)またはメチルアルミノキサン(MAO)1111(式3、下記)などの活性化剤と一緒にメタロセン化合物(式1、下記)を含む触媒系を用いる。
【化1】
【0074】
用語「触媒系」は、メタロセン/活性化剤ペアなどの、触媒前駆体/活性化剤ペアを意味すると本明細書では定義される。「触媒系」が活性化前のそのようなペアを記載するために用いられるとき、それは、活性化剤および、任意選択的に、共活性化剤(トリアルキルアルミニウム化合物などの)と一緒の活性化されていない触媒(プレ触媒)を意味する。それが活性化後のそのようなペアを記載するために用いられるとき、それは、活性化触媒および活性化剤またはその他の電荷バランス部分を意味する。さらに、この活性化「触媒系」は、共活性化剤および/またはその他の電荷バランス部分を任意選択的に含んでもよい。任意選択的におよび多くの場合、トリアルキルアルミニウム化合物などの、共活性化剤はまた、不純物捕捉剤として使用される。
【0075】
メタロセンは、上の式1に従った1つ以上の化合物から選択される。式1において、Mは、4族遷移金属、好ましくはジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)およびチタン(Ti)から選択され、L1およびL2は独立して、置換されていても非置換であってもよい、そして部分的に水素化されていてもよい、シクロペンタジエニル(「Cp」)、インデニル、およびフルオレニルから選択される。Aは、存在する場合、好ましい実施形態においてはジアルキルシリル、ジアルキルメチル、ジフェニルシリルまたはジフェニルメチル、エチレニル(−CH2−CH2)、アルキルエチレニル(−CR2−CR2)(ここで、アルキルは独立して、C1〜C16アルキルラジカルまたはフェニル、トリル、キシリルラジカルなどであることができる)から選択され、そして式中、2つのX基、XaおよびXbのそれぞれは独立して、ハライド、OR(Rは、好ましくはC1〜C5直鎖もしくは分岐鎖アルキル基から選択される、アルキル基である)、水素、C1〜C16アルキルまたはアリール基、ハロアルキルなどから選択される。通常、比較的より高度に置換されたメタロセンは、より高い触媒生産性およびより広い生成物粘度範囲を与え、したがって多くの場合より好ましい。
【0076】
ポリアルファオレフィンのどれも好ましくは、ASTM D1159によって測定されるように1.8以下、好ましくは1.7以下、好ましくは1.6以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1.4以下、好ましくは1.3以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、好ましくは1.0以下、好ましくは0.5以下、好ましくは0.1以下の臭素価を有する。必要ならば、ポリアルファオレフィンは、低臭素価を達成するために水素化することができる。
【0077】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)はいずれも、すべての規則正しい1、2−結合に加えて式4:
【化2】
(式中、j、kおよびmはそれぞれ、独立して、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22であり、nは、プロトンNMRによって測定されるように1〜350(好ましくは1〜300、好ましくは5〜50)の整数である)
で表されるモノマー単位を有してもよい。
【0078】
本明細書において記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、100,000以下、好ましくは100〜80,000、好ましくは250〜60,000、好ましくは280〜50,000、好ましくは336〜40,000g/モルのMw(重量平均分子量)を有する。
【0079】
本明細書において記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、50,000以下、好ましくは200〜40,000、好ましくは250〜30,000、好ましくは500〜20,000g/モルのMn(数平均分子量)を有する。
【0080】
本明細書において記載されるmポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、1超および5未満、好ましくは4未満、好ましくは3未満、好ましくは2.5未満の分子量分布(MWD−Mw/Mn)を有する。mPAOのMWDは常に流体粘度の関数である。あるいは、本明細書において記載されるポリアルファオレフィンのどれもが好ましくは、流体粘度に依存して、1〜2.5、あるいは1〜3.5のMw/Mnを有する。
【0081】
重量平均MWと数平均MWとの比(=Mw/Mn)と定義される、分子量分布(MWD)は、「Principles of Polymer Systems」(Ferdinand Rodrigues,McGraw−Hill Book,1970による)において、p.115−144,Chapter 6,The Molecular Weight of Polymersに記載されているように、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。GPC溶媒は、30℃のカラム温度、1ml/分の流量、および1重量%の試料濃度で、安定剤なしのHPLC Gradeテトラヒドロフランであった、そしてColumn Setは、Phenogel 500 A,Linear,10E6Aである。
【0082】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが、分子量分布の実質的に小部分の高エンドテールを有してもよい。好ましくは、mPAOは、45,000ダルトン超の分子量を有するポリマーが5.0重量%以下である。さらにまたはあるいは、45,000ダルトン超の分子量を有するmPAOの量は、1.5重量%以下、または0.10重量%以下である。さらにまたはあるいは、60,000ダルトン超の分子量を有するmPAOの量は、0.5重量%以下、または0.20重量%以下、または0.1重量%以下である。45,000〜60,000の分子量での質量分率は、上記のような、GPCによって測定することができる。
【0083】
本発明の好ましい実施形態においては、本明細書において記載されるあらゆるPAOは、0℃未満(ASTM D97によって測定されるように)、好ましくは−10℃未満、好ましくは20℃未満、好ましくは−25℃未満、好ましくは−30℃未満、好ましくは−35℃未満、好ましくは−50℃未満、好ましくは−10℃〜−80℃、好ましくは−15℃〜−70℃の流動点を有してもよい。
【0084】
メタロセン触媒作用を用いて製造されるポリアルファオレフィンは、ASTM D445によって測定されるように約1.5〜約5,000cSt、好ましくは約2〜約3,000cSt、好ましくは約3cSt〜約1,000cSt、より好ましくは約4cSt〜約1,000cSt、その上より好ましくは約8cSt〜約500cStの100℃での動粘度を有してもよい。
【0085】
本発明に有用なPAOとしては、米国特許第4,827,064号明細書および米国特許第4,827,073号明細書に開示されているプロセスによって製造されるものが挙げられる。低原子価状態クロム触媒を用いて製造される、それらのPAO物質は、潤滑油基油としておよび、より高い粘度グレードで、VI(又は粘度指数)向上剤として有用であるための非常に望ましい特性をそれらに与える非常に高い粘度指数で特徴付けられるポリマーのオレフィンオリゴマーである。それらは、高粘度指数PAOまたはHVI−PAOと言われる。比較的低い分子量の高粘度PAO物質が潤滑油基油として有用であることが分かったが、より高い粘度の、典型的には100cSt以上、たとえば100〜1,000cStの範囲のPAOは従来のPAOおよびその他の合成および鉱油由来基油用の粘度指数向上剤として非常に有効であることが分かった。
【0086】
これらの高粘度PAO物質の様々な修正および変形がまた、言及される次の米国特許:第4,990,709号明細書、第5,254,274号明細書、第5,132,478号明細書、第4,912,272号明細書、第5,264,642号明細書、第5,243,114号明細書、第5,208,403号明細書、第5,057,235号明細書、第5,104,579号明細書、第4,943,383号明細書、第4,906,799号明細書に記載されている。これらのオリゴマーは、低原子価状態での担持金属である金属オリゴマー化触媒の存在下で1−オレフィンのオリゴマー化によって製造されるとして手短に要約することができる。好ましい触媒は、一酸化炭素を還元剤として使用するクロムの還元によって調製される、シリカ担体上の低原子価状態クロムを含む。オリゴマー化は、米国特許第4,827,064号明細書および同第4,827,073号明細書に記載されているように、生じるオリゴマーにとって望ましい粘度に応じて選択される温度で実施される。より高粘度物質は、約90℃より下のオリゴマー化温度がより高分子量オリゴマーを製造するために用いられている米国特許第5,012,020号明細書および米国特許第5,146,021号明細書に記載されているように製造されてもよい。すべての場合に、残存不飽和を減らすために必要なときに水素化後の、オリゴマーは、0.19未満の分岐指数(米国特許第4,827,064号明細書および同第4,827,073号明細書に定義されているような)を有する。概して、HVI−PAOは普通は約12〜5,000cStの範囲の粘度を有する。
【0087】
さらに、HVI−PAOは一般に、下記:C30〜C1300炭化水素は、0.19未満の分岐率、300〜45,000の重量平均分子量、300〜18,000の数平均分子量、1〜5の分子量分布を有する1つ以上で特徴付けることができる。特に好ましいHVI−PAOは、5〜5000mm2/秒の範囲の100℃粘度の流体である。別の実施形態においては、100℃で測定されるHVI−PAOオリゴマーの粘度は、3mm2/秒〜15,000mm2/秒の範囲である。さらに、3mm2/秒〜5000mm2/秒の100℃での粘度の流体は、130超のASTM方法D2270によって計算されるVIを有する。通常それらは130〜350の範囲である。流体はすべて−15℃より下の低い流動点を有する。
【0088】
HVI−PAOは、C6〜C20の1−アルケンからなる群から取られる、それだけでか混合物形態でかのどちらかでの、1−アルケンから製造されるポリマーまたはオリゴマーを含む炭化水素組成物としてさらに特徴付けることができる。原料の例は、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセンなど、またはC6〜C14の1−アルケンの混合物もしくはC6〜C20の1−アルケン、C6およびC12の1−アルケン、C6およびC14の1−アルケン、C6およびC16の1−アルケン、C6およびC18の1−アルケン、C8およびC10の1−アルケン、C8およびC12の1−アルケン、C8、C10およびC12の1−アルケン、ならびにその他の適切な組み合わせの混合物であることができる。
【0089】
潤滑油生成物は通常、600°Fより下で沸騰するもの、またはC20未満の炭素数のものなどのあらゆる低分子量組成物を、それらが重合反応から生成するかまたは出発原料から持ち込まれている場合に、除去するために蒸留される。
【0090】
重合またはオリゴマー化プロセスから直接製造される潤滑油流体は通常、不飽和二重結合を有するかまたはオレフィン分子構造を有する。二重結合または不飽和またはオレフィン成分の量は、臭素価(ASTM D1159)、臭素指数(ASTM D2710)などの、幾つかの方法、またはNMR、IRなどの、その他の好適な分析方法によって測定することができる。二重結合の量またはオレフィン組成物の量は、幾つかの因子−重合度、重合プロセス中に存在する水素の量および重合プロセスの停止工程に関与するその他の促進剤の量、またはプロセスにおいて存在するその他の試剤に依存する。通常、二重結合の量またはオレフィン成分の量は、重合のより高い程度、重合プロセスにおいて存在する水素ガスのより高い量、または停止工程に関与する促進剤のより高い量によって減少する。
【0091】
他のPAOと同様に、HVI−PAO流体の酸化安定性および光またはUV安定性は、不飽和二重結合の量またはオレフィン含有率が低下するときに向上する。それ故、ポリマーを、それらが高度の不飽和を有する場合にはさらに水素化処理することが必要である。通常、ASTM D1159によって測定されるような、5未満の臭素価の流体は、高品質基油用途向けに好適である。もちろん、臭素価が低ければ低いほど、潤滑油品質はより良好である。3または2未満の臭素価の流体が一般的である。最も好ましい範囲は、1未満または0.1未満である。不飽和度を下げるための水素化処理方法は、文献においてよく知られている(米国特許第4,827,073号明細書、実施例16)。あるHVI−PAO製品においては、重合から直接製造された流体は、100℃で150cSt超の粘度のものなど、非常に低い不飽和度を既に有する。それらは、5未満または2より下さえの臭素価を有する。これらの場合には、それは、水素化処理なしでそのまま使用することができるか、またはそれは、基油特性をさらに向上させるために水素化処理することができる。
【0092】
それらの製造に用いられるプロセスもしくは技法にかかわらず、PAO流体が本発明において有用な二峰性混合物の第1基油を構成する流体の唯一のものとしてか混合物の1つとして使用される場合、そのPAO流体は、低動粘度流体、2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の範囲の100℃でのKVのPAOである。
【0093】
低動粘度流体は、列挙された動粘度レベルを満たす単一基油で構成することができるかまたはそれぞれが列挙された動粘度限度を満たす、2種以上の基油/油で構成することができる。さらに、低動粘度流体は、生じた混合物ブレンドが、第1低動粘度基材油の粘度範囲として列挙された2〜16mm2/秒のターゲット低動粘度を示すという条件で、1種又は2種以上の高動粘度基材油/油、たとえば、100℃で100mm2/秒以上の動粘度の基材油/油などの、100℃で16mm2/秒超の動粘度の基材油/油と組み合わせられた、1種又は2種以上の低粘度基材油/油、たとえば100℃で2〜16mm2/秒の範囲の動粘度の基材油/油の混合物で構成することができる。
【0094】
二峰性ブレンドに使用される第2油は、高動粘度グループIV流体、すなわち、少なくとも38mm2/秒、好ましくは38〜1200mm2/秒、より好ましくは38〜600mm2/秒、さらにより好ましくは38〜300mm2/秒、最も好ましくは38〜150mm2/秒の範囲の100℃での動粘度のPAOである。
【0095】
PAOを議論するとき、たとえばPAO 150のようなPAOの呼称は、名目上150mm2/秒の100℃での動粘度のPAOを意味する。
【0096】
第2高動粘度油に関して、それは、列挙された動粘度限度を満たす単一PAO基油/油で構成することができるか、またはそれは、そのそれぞれが列挙された動粘度限度を満たす、2種以上のPAO基油/油で構成されてもよい。逆に、この第2高動粘度基油/油は、生じた混合物ブレンドが100℃で少なくとも38mm2/秒のターゲット高動粘度を満たすという条件で、1種又は2種以上の高動粘度PAO基油/油と混合された、1種又は2種以上のより低い動粘度PAO基油/油、たとえば100℃で38mm2/秒未満の動粘度の基材油/油の混合物であることができる。
【0097】
そのようなより高い動粘度PAO流体は、低動粘度PAO流体(二峰性混合物の第1油)の製造について前に列挙された同じ技法を用いて製造することができる。
【0098】
好ましくは、二峰性混合物の第2流体である高動粘度PAO流体は、メタロセン触媒作用または米国特許第4,827,064号明細書もしくは米国特許第4,827,073号明細書に記載されているプロセスを用いて製造される。
【0099】
PAOを製造するために用いられる技法またはプロセスにかかわらず、二峰性ブレンドの第2基油として使用されるPAO流体は、少なくとも38mm2/秒の100℃でのKVを有する高動粘度PAOである。
【0100】
本発明は、二峰性ブレンドの第1基油と第2基油との間に少なくとも30mm2/秒のKVの差が存在するという条件で、2種の異なるベースオイル、100℃で2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒のKVを有する、1種以上のグループII、グループIIIまたはグループIVベースオイル、好ましくはグループIIIまたはグループIVベースオイルである第1と、100℃で少なくとも38mm2/秒のKVを有する1種以上のグループIVベースオイルである第2との二峰性ブレンドを含む潤滑油を用いてトラクション係数のその低下を達成する。
【0101】
上に列挙された二峰性基油ブレンドを用いるトラクション係数の低下は、本明細書において前に提供されたような1種以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、フェノレート、スルホネート、サリチレートまたはカルボキシレート清浄剤の必要な存在に依存する。清浄剤は単一金属の塩である必要がなく、金属塩の混合物、たとえば、単に例として、限定されずに、ナトリウム塩および/またはリチウム塩および/またはカルシウム塩および/またはマグネシウム塩の混合物であることができる。
【0102】
本発明において、異なる表面速度でのトラクション係数は第1基油と第2基油とのおよび清浄剤との様々な組み合わせを使用することによって改善されることが発見された。
【0103】
少なくとも3mm/秒、好ましくは少なくとも10mm/秒の表面速度について、潤滑油の基油は、2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の100℃での動粘度を有するグループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイル、好ましくはグループIIIおよびグループIVベースオイル、より好ましくはグループIIIベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1基油と、少なくとも38mm2/秒、好ましくは38〜1200mm2/秒、より好ましくは38〜600mm2/秒、さらにより好ましくは38mm2/秒から300mm2/秒未満、最も好ましくは38〜150mm2/秒の100℃での動粘度を有するグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイルと、活性成分に基づいて6重量%を超えて40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%の量でのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウムサリチレート、フェノレート、カルボキシレート、スルホネート、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウムサリチレートおよびフェノレートの混合物またはアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウムフェノレートおよびカルボキシレート、好ましくはフェノレート、サリチレートおよびカルボキシレートの混合物ならびにフェノレートおよびカルボキシレートのまたはフェノレートおよびサリチレートの混合物から選択される清浄剤との二峰性ブレンドであり、ここで、清浄剤混合物についてフェノレートとカルボキシレートとの重量比又はフェノレートとサリチレートとの重量比は、6:1〜1:6、好ましくは3:1〜1:3、より好ましくは2:1〜1:2、最も好ましくは1:1である。潤滑油の総重量を基準として、潤滑油は、少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜70mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのTBN、および100℃で13〜30mm2/秒、好ましくは16〜30mm2/秒、より好ましくは18〜25mm2/秒、最も好ましくは20〜25mm2/秒の動粘度を有する。
【0104】
別の実施形態においては、少なくとも3mm/秒、好ましくは少なくとも10mm/秒の表面速度について、基油は、100℃で2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の動粘度を有する、グループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイル、好ましくはグループIIIベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1基油と、100℃で38mm2/秒から300mm2/秒未満、好ましくは38〜250mm2/秒、より好ましくは38〜150mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイルと、潤滑油の総重量を基準として、6重量%を超え40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、さらにより好ましくは12〜25重量%のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、スルホネートの混合物または、フェノレートとスルホネートとの重量比が5:1〜1:3、好ましくは4:1〜1:2、最も好ましくは4:1〜1:1の範囲にあるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、フェノレートおよびスルホネートの混合物から選択される清浄剤との二峰性ブレンドであり、この潤滑油は、少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのTBN、および100℃で13〜30mm2/秒、16〜30mm2/秒、より好ましくは18〜25mm2/秒の動粘度を有する。
【0105】
別の実施形態においては、少なくとも30mm/秒、好ましくは少なくとも60mm/秒、より好ましくは少なくとも75mm/秒、さらにより好ましくは少なくとも100mm/秒の表面速度について、潤滑油の基油は、100℃で2〜16mm2/秒、好ましくは2〜12mm2/秒の動粘度を有する、グループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイル、好ましくはグループIIIベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1基油と、100℃で少なくとも38mm2/秒、好ましくは38〜1200mm2/秒、より好ましくは38〜600mm2/秒、さらにより好ましくは38〜300mm2/秒、最も好ましくは38〜100mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイルと、潤滑油の重量を基準として6重量%を超え40重量%まで、好ましくは8〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、最も好ましくは12〜25重量%(活性成分)のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、サリチレート、フェノレート、スルホネート、カルボキシレートおよびそれらの混合物から選択される清浄剤との二峰性ブレンドであり、この潤滑油は、少なくとも5mg KOH/g、好ましくは40〜100mg KOH/g、より好ましくは40〜70mg KOH/gのTBN、および100℃で6〜30mm2/秒、好ましくは8〜25mm2/秒、より好ましくは12〜20mm2/秒の動粘度を有する。
【0106】
本方法は、基油が必須の二峰性ブレンド基油および前記清浄剤を含むという条件で、追加の性能添加剤を含有するエンジン潤滑油を使用することができる。示されたように、用いられる清浄剤は、単独で又は様々に組み合わせて使用されるアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、サリチレート、フェノレート、スルホネート、カルボキシレートである。これらの清浄剤は、低、中または高TBN清浄剤、すなわち、約5〜500mg KOH/g、好ましくは約5〜約400mg KOH/gほどに高い範囲の塩基価の清浄剤であることが可能である。
【0107】
本発明に有用な調合潤滑油は、分散剤、追加のその他の清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、その他の摩耗防止および/または極圧添加剤、膠着防止剤、ワックス改質剤、粘度指数向上剤、粘度調整剤、フルイドロス添加剤、シール融和性剤、その他の摩擦改良剤、潤滑剤、汚染防止剤、発色剤、消泡剤、乳化破壊剤、乳化剤、増密度剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤などを含むがそれらに限定されないその他の一般的に使用される潤滑油性能添加剤の1種以上をさらに含有してもよい。多くの一般的に使用される添加剤のレビューについては、Lubricants and Related Products,Verlag Chemie,Deerfield Beach,FL;ISBN 0−89573−177−0におけるKlamannを参照されたい。Noyes Data Corporation of Parkridge,NJ(1973)によって出版された、M.W.Ranneyによる「Lubricant Additives」も参照されたい。
【0108】
潤滑油組成物に本発明と組み合わせて使用される性能添加剤のタイプおよび量は、例示として本明細書において示される例によって制限されない。
【0109】
粘度改良剤
粘度改良剤(粘度指数調整剤、およびVI改良剤としても知られる)は、高温および低温操作性を潤滑油に提供する。これらの添加剤は、低温で限定された影響を粘度に及ぼしながら、高められた温度で油組成物の粘度を増大させ、膜厚を増加させる。
【0110】
好適な粘度改良剤としては、高分子量炭化水素、ポリエステルならびに粘度指数向上剤および分散剤の両方として機能する粘度指数向上剤分散剤が挙げられる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約1,000〜1,000,000、より典型的には約2,000〜500,000、さらにより典型的には約2,500〜200,000である。
【0111】
好適な粘度改良剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィン、またはアルキル化スチレンのポリマーおよびコポリマーである。ポリイソブチレンは一般的に使用される粘度改良剤である。別の好適な粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート(たとえば、様々な鎖長アルキルメタクリレートのコポリマー)であり、その幾つかの調合物はまた流動点降下剤としても役立つ。その他の好適な粘度指数向上剤としては、エチレンとプロピレンとのコポリマー、スチレンとイソプレンとの水素化ブロックコポリマー、およびポリアクリレート(たとえば、様々な鎖長アクリレートのコポリマー)が挙げられる。具体的な例としては、50,000〜200,000分子量のスチレン−イソプレンまたはスチレン−ブタジエンベースのポリマーが挙げられる。
【0112】
粘度調整剤の量は、活性成分に基づいて、および使用される具体的な粘度調整剤に依存してゼロ〜10重量%、好ましくはゼロ〜6重量%、より好ましくはゼロ〜4重量%の範囲であってもよい。
【0113】
酸化防止剤
典型的な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤および油溶性の銅錯体が挙げられる。
【0114】
フェノール系酸化防止剤としては、硫化および非硫化フェノール系酸化防止剤が挙げられる。本明細書で用いられる用語「フェノール型」または「フェノール系酸化防止剤」には、それ自体単環、たとえば、ベンジル、または多環、たとえば、ナフチリルおよびスピロ芳香族化合物であってもよい芳香環に1個または2個以上のヒドロキシル基が結合した化合物が含まれる。したがって、「フェノール型」には、フェノールそれ自体、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ナフトールなど、ならびにそれらのアルキルもしくはアルケニルおよび硫化アルキルもしくはアルケニル誘導体、およびアルキレン架橋、硫黄架橋または酸素架橋によって連結されたそのようなビフェノール化合物を含むビスフェノール型化合物が含まれる。アルキルフェノールとしては、アルキルもしくはアルケニル基が約3〜100個の炭素、好ましくは4〜50個の炭素を含有する、モノ−およびポリ−アルキルもしくはアルケニルフェノールならびにそれらの硫化誘導体が挙げられ、芳香環に存在するアルキルもしくはアルケニル基の数は、1から芳香環に結合したヒドロキシル基の数を数えた後に残る芳香環の利用可能な不充足結合価までの範囲である。
【0115】
一般に、それ故、フェノール系酸化防止剤は、一般式:
(R)x−Ar−(OH)y
で表されてもよく、ここで、Arは、
【化3】
からなる群から選択され、
式中、Rは、C3〜C100アルキルもしくはアルケニル基、硫黄置換アルキルもしくはアルケニル基、好ましくはC4〜C50アルキルもしくはアルケニル基または硫黄置換アルキルもしくはアルケニル基、より好ましくはC3〜C100アルキルまたは硫黄置換アルキル基、最も好ましくはC4〜C50アルキル基であり、Rgは、C1〜C100アルキレンまたは硫黄置換アルキレン基、好ましくはC2〜C50アルキレンまたは硫黄置換アルキレン基、より好ましくはC2〜C2アルキレンまたは硫黄置換アルキレン基であり、yは、少なくとも1からArの利用可能な結合価までであり、xは、0からArの利用可能な結合価−yまでの範囲であり、zは1〜10の範囲であり、nは0〜20の範囲であり、mは0〜4であり、pは0または1であり、好ましくはyは1〜3の範囲であり、xは0〜3の範囲であり、zは1〜4の範囲であり、nは0〜5の範囲であり、pは0である。
【0116】
好ましいフェノール系酸化防止化合物は、立体障害のヒドロキシル基を含有するヒンダードフェノール化合物であり、これらとしては、ヒドロキシル基が互いにo−またはp−位にあるジヒドロキシアルール化合物のそれらの誘導体が挙げられる。典型的なフェノール系酸化防止剤としては、C1+アルキル基で置換されたヒンダードフェノールおよびこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体が挙げられる。このタイプのフェノール系物質の例2−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−t−ブチル−4−オクチルフェノール;2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4 メチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール;および2,6−ジ−t−ブチル 4 アルコキシフェノール。
【0117】
フェノール型酸化防止剤は潤滑業界においてよく知られており、Ethanox(登録商標)4710、Irganox(登録商標)1076、Irganox(登録商標)L1035、Irganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)L109、Irganox(登録商標)L118、Irganox(登録商標)L135などの商業例は当業者におなじみである。上記は、使用することができるフェノール系酸化防止剤のタイプに関して例示の目的で提示されているにすぎず、限定するものではない。
【0118】
芳香族アミン酸化防止剤としては、次の分子構造:
【化4】
(式中、Rzは、水素またはC1〜C14線状もしくはC3〜C14分岐アルキル基、好ましくはC1〜C10線状もしくはC3〜C10分岐アルキル基、より好ましくは線状もしくは分岐C6〜C8であり、nは、1〜5の範囲の整数、好ましくは1である)
で表されるフェニル−α−ナフチルアミンが挙げられる。特定例はIrganox L06である。
【0119】
その他の芳香族アミン酸化防止剤としては、式R8R9R10N[式中、R8は、脂肪族、芳香族もしくは置換芳香族基であり、R9は、芳香族もしくは置換芳香族基であり、R10は、H、アルキル、アリールまたはR11S(O)xR12(ここで、R11は、アルキレン、アルケニレン、もしくはアラルキレン基であり、R12は、高級アルキル基、またはアルケニル、アリール、もしくはアルカリール(又はアルキルアリール)基であり、xは0、1または2である)である]の芳香族モノアミンなどのその他のアルキル化および非アルキル化芳香族アミンが挙げられる。脂肪族基R8は、1〜約20個の炭素原子を含有してもよく、好ましくは約6〜12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は飽和脂肪族基である。好ましくは、R8およびR9の両方が芳香族もしくは置換芳香族基であり、芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基R8およびR9は、Sなどのその他の基と結合していてもよい。
【0120】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルが挙げられる。一般に、脂肪族基は、約14個超の炭素原子を含有しないであろう。存在してもよいそのようなその他の追加アミン酸化防止剤の一般タイプとしては、ジフェニルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジルおよびジフェニルフェニレンジアミンが挙げられる。そのようなその他の追加芳香族アミンの2つ以上の混合物がまた存在してもよい。ポリマーアミン酸化防止剤もまた使用することができる。
【0121】
潤滑油組成物に使用される、そして必要なフェニル−α−ナフチルアミンに加えて存在してもよい別のクラスの酸化防止剤は、油溶性銅化合物である。あらゆる油溶性の好適な銅化合物が潤滑油に混ぜ込まれてもよい。好適な銅酸化防止剤の例としては、銅ジヒドロカルビルチオ−またはジチオ−ホスフェートおよびカルボン酸(天然起源または合成の)の銅塩が挙げられる。その他の好適な銅塩としては、銅ジチオカルバメート、スルホネート、フェノレート、およびアセチルアセトネートが挙げられる。アルケニルコハク酸または酸無水物から誘導される塩基性、中性、または酸性銅Cu(I)およびまたはCu(II)塩が特に有用であることが知られている。
【0122】
そのような酸化防止剤は、約0.10〜5重量%、好ましくは約0.30〜3重量%(到着ベースで)の量で使用されてもよい。
【0123】
分散剤
エンジン運転の間ずっと、油不溶性酸化副生物が生成する。分散剤は、これらの副生物を溶液に保つのに役立ち、こうして金属表面上へのそれらの沈着を減らす。分散剤は本来、無灰であっても灰形成性であってもよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に灰を実質的にまったく形成しない有機物質である。たとえば、金属を含有しないかまたはホウ素化された金属を含まない分散剤が無灰と考えられる。対照的に、上に議論された金属含有清浄剤は、燃焼時に灰を形成する。
【0124】
好適な分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を典型的には含有する。極性基は、窒素、酸素、またはリンの少なくとも1つの元素を典型的には含有する。典型的な炭化水素鎖は50〜400個の炭素原子を含有する。
【0125】
特に有用なクラスの分散剤は、長鎖置換アルケニルコハク酸化合物、通常は置換無水コハク酸と、ポリヒドロキシまたはポリアミノ化合物との反応によって典型的には製造される、アルケニルコハク酸誘導体である。油への溶解性を与える分子の親油性部分を構成する長鎖基は、普通はポリイソブチレン基である。このタイプの分散剤の多くの例が、商業的におよび文献においてよく知られている。
【0126】
ヒドロカルビル置換コハク酸化合物がポピュラーな分散剤である。特に、スクシンイミド、スクシネートエステル、または少なくとも50個の炭素原子を炭化水素置換基中に好ましくは有する炭化水素置換コハク酸化合物と、少なくとも1当量のアルキレンアミンとの反応によって製造されるスクシネートエステルアミドが特に有用である。
【0127】
スクシンイミド類は、アルケニル無水コハク酸とアミンとの縮合反応によって形成される。モル比は、ポリアミンに依存して変動することができる。たとえば、アルケニル無水コハク酸とTEPAとのモル比は、約1:1〜約5:1で変動することができる。
【0128】
スクシネートエステルは、アルケニル無水コハク酸とアルコールまたはポリオールとの縮合反応によって形成される。モル比は、使用されるアルコールまたはポリオールに依存して変動することができる。たとえば、アルケニル無水コハク酸とペンタエリスリトールとの縮合生成物は有用な分散剤である。
【0129】
スクシネートエステルアミドは、アルケニル無水コハク酸とアルカノールアミンとの縮合反応によって形成される。たとえば、好適なアルカノールアミンとしては、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミンおよびポリエチレンポリアミンなどのポリアルケニルポリアミンが挙げられる。一例は、プロポキシル化ヘキサメチレンジアミンである。
【0130】
アルケニル無水コハク酸の分子量は典型的には800〜2,500の範囲であろう。上記の生成物は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、オレイン酸などのカルボン酸、およびボレートエステルまたは高ホウ素化分散剤などのホウ素化合物などの様々な試薬と後反応させることができる。分散剤は、分散剤反応生成物の1モル当たり約0.1〜約5モルのホウ素でホウ素化することができる。
【0131】
Mannich(マンニッヒ)塩基分散剤は、アルキルフェノール、ホルムアルデヒド、およびアミンの反応から製造される。オレイン酸およびスルホン酸などの、加工助剤および触媒はまた、反応混合物の一部であることができる。アルキルフェノールの分子量は、800〜2,500の範囲である。
【0132】
典型的な高分子量脂肪酸変性Mannich縮合生成物は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物またはHN(R)2基含有反応剤から製造することができる。
【0133】
高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の例は、ポリプロピルフェノール、ポリブチルフェノール、およびその他のポリアルキルフェノールである。これらのポリアルキルフェノールは、平均600〜100,000の分子量を有するフェノールのベンゼン環上にアルキル置換基を与えるための高分子量ポリプロピレン、ポリブチレン、およびその他のポリアルキレン化合物でのフェノールの、BF3などの、アルキル化触媒の存在下での、アルキル化によって得ることができる。
【0134】
HN(R)2基含有反応剤の例は、アルキレンポリアミン、主にポリエチレンポリアミンである。Mannich縮合生成物の製造での使用に好適な少なくとも1つのHN(R)2基を含有するその他の代表的な有機化合物はよく知られており、モノ−およびジ−アミノアルカンおよびそれらの置換類似体、たとえば、エチルアミンおよびジエタノールアミン;芳香族ジアミン、たとえば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン;複素環アミン、たとえば、モルホリン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリジン、およびピペリジン;メラミンおよびそれらの置換類似体を含む。
【0135】
アルキレンポリアミン反応剤の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタアミン、ヘプタエチレンオクタアミン、オクタエチレンノナアミン、ノナエチレンデカミン、およびデカエチレンウンデカミンならびに、前述の、式H2N−(Z−NH−)nHの、アルキレンポリアミンに相当する窒素含有率を有するそのようなアミンの混合物が挙げられ、前述の式のZは二価エチレンであり、nは1〜10である。プロピレンジアミンおよびジ−、トリ−、テトラ−、ペンタプロピレントリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサアミンなどの相当するプロピレンポリアミンもまた好適な反応剤である。アルキレンポリアミンは通常、アンモニアとジクロロアルカンなどの、ジハロアルカンとの反応によって得られる。このように、2〜11モルのアンモニアと2〜6個の炭素原子および異なる炭素上に塩素を有する1〜10モルのジクロロアルカンとの反応から得られるアルキレンポリアミンが好適なアルキレンポリアミン反応剤である。
【0136】
本発明に有用な高分子生成物の製造に有用なアルデヒド反応剤としては、ホルムアルデヒド(また、パラホルムアルデヒドおよびホルマリンとして)、アセトアルデヒドおよびアルドール(β−ヒドロキシブチルアルデヒド)などの脂肪族アルデヒドが挙げられる。ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド生成反応剤が好ましい。
【0137】
好ましい分散剤としては、ヒドロカルビルスクシンイミドが、約500〜約5000のMnを有するポリイソブチレンなどのヒドロカルビレン基またはそのようなヒドロカルビレン基の混合物から誘導される、モノ−スクシンイミド、ビス−スクシンイミド、および/またはモノ−とビス−スクシンイミドとの混合物からのそれらの誘導体を含む、ホウ素化および非ホウ素化スクシンイミドが挙げられる。その他の好ましい分散剤としては、コハク酸エステルおよびアミド、アルキルフェノール−ポリアミン結合Mannich付加体、それらのキャップド誘導体、ならびにその他の関連成分が挙げられる。そのような添加剤は、全潤滑油の重量を基準として約0.1〜20重量%、好ましくは約0.1〜8重量%、より好ましくは約1〜6重量%(到着ベースで)の量で使用されてもよい。
【0138】
流動点降下剤
通常の流動点降下剤(潤滑油流動性向上剤としても知られる)がまた存在してもよい。流動点降下剤は、流体が流れるであろうまたは注ぐことができる最低温度を低くするために添加されてもよい。好適な流動点降下剤の例としては、アルキル化ナフタレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、およびジアルキルフマレートと、脂肪酸のビニルエステルとアリルビニルエーテルとのターポリマーが挙げられる。
【0139】
そのような添加剤は、到着ベースで約0.0〜0.5重量%、好ましくは約0〜0.3重量%、より好ましくは約0.001〜0.1重量%の量で使用されてもよい。
【0140】
腐食防止剤/金属不活性化剤
腐食防止剤は、潤滑油組成物と接触している金属部品の分解を減らすために使用される。好適な腐食防止剤としては、アリールチアジン、アルキル置換ジメルカプトチオジアゾールチアジアゾールおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0141】
そのような添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%、より好ましくは約0.01〜0.2重量%、さらにより好ましくは約0.01〜0.1重量%(到着ベースで)の量で使用されてもよい。
【0142】
シール融和性添加剤
シール融和性剤は、流体における化学反応またはエラストマーにおける物理的変化を引き起こすことによってエラストマーシールを膨潤させるのに役立つ。潤滑油のための好適なシール融和性剤としては、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(たとえば、ブチルベンジルフタレート)、およびポリブテニル無水コハク酸が挙げられる。そのような添加剤は、到着ベースで約0.01〜3重量%、好ましくは約0.01〜2重量%の量で使用されてもよい。
【0143】
消泡剤
消泡剤が潤滑油組成物に有利に添加されてもよい。これらの試剤は安定な泡の形成を阻害する。シリコーンおよび有機ポリマーが典型的な消泡剤である。たとえば、シリコンオイルまたはポリジメチルシロキサンなどの、ポリシロキサンが消泡特性を提供する。消泡剤は商業的に入手可能なであり、乳化破壊剤などのその他の添加剤と一緒に慣例の少量で使用されてもよく;通常、組み合わせたこれらの添加剤の量は、潤滑油組成物の総重量を基準として1パーセント未満、好ましくは0.001〜約0.5重量%、より好ましくは約0.001〜約0.2重量%、さらにより好ましくは約0.0001〜0.15重量%(到着ベースで)である。
【0144】
阻害剤および防錆添加剤
防錆添加剤(または腐食防止剤)は、潤滑される金属表面を水またはその他の汚染物質による化学攻撃から防護する添加剤である。1つのタイプの防錆添加剤は、優先的に金属表面を湿らせ、それを油膜で防護する極性化合物である。別のタイプの防錆添加剤は、油だけが表面に触れるように、油中水エマルジョンにそれを組み入れることによって水を吸収する。その上別のタイプの防錆添加剤は、金属に化学的に付着して非反応性表面を生成する。好適な添加剤の例としては、ジチオリン酸亜鉛、金属フェノレート、塩基性金属スルホネート、脂肪酸およびアミンが挙げられる。そのような添加剤は、到着ベースで約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%の量で使用されてもよい。
【0145】
摩耗防止添加剤もまた有利に存在することができる。摩耗防止添加剤は、金属が亜鉛またはモリブデンであることができる金属ジチオホスフェート、金属ジチオカルバメート、金属ジアルキルジチオホスフェート、金属ザンテートで例示される。トリクレジルホスフェートは別のタイプの摩耗防止添加剤である。そのような摩耗防止添加剤は、到着ベースで約0.05〜1.5重量%、好ましくは約0.1〜1.0重量%、より好ましくは約0.2〜0.5重量%(到着ベースで)の量で存在することができる。
【実施例】
【0146】
比較例および実施例
一連のエンジンオイルを、基油組成物および清浄剤タイプがトラクション係数に及ぼす影響に関して評価した。エンジンオイルは、商業的に入手可能な油(対照油A(Ref.A))か異なる動粘度の第1基油と異なる動粘度の第2基油との組み合わせのみを使用する基油ブレンド(対照油B(Ref.B))か異なる動粘度の潤滑油を生成する、異なる使用量/処理レベルでの異なる清浄剤または清浄剤の混合物と組み合わせての基油ブレンドかのどれかであり、すべての調合物は40または70mg KOH/gの塩基価(BN)を有する清浄剤を含有した。トラクション係数は、完全自動Mini Traction Machineトラクション測定機器であるMTM Traction Rigを用いて測定した。このリグは、PCS Instrumentsによって製造され、Model MTMと特定される。試験検体および装置構成は、非常に大きい負荷、モーターまたは構造体を必要とすることなく、現実的な圧力、温度および速度を達成できるようなものである。流体の小試料(50ml)を試験セルに入れ、機械は、操作介入なしに試験流体についての包括的なトラクションマップを作成するために様々な速度、スライド対ロール比、温度および負荷にわたって自動的に作動する。標準試験検体は、AISI 52100軸受鋼から製造された研磨19.05mm球および50.0mm直径ディスクである。検体は、一回使用の、使い捨て品であるように設計されている。球をディスクの面を背にしてロードし、球とディスクとをDCサーボモーターおよび駆動装置によって独立して駆動して、特に低いスライド/ロール比で高精度の速度制御を可能にする。各検体を、小さいステンレススチール試験流体浴中でシャフト上に末端で取り付ける。ディスク試験検体を支える垂直シャフトおよび駆動システムを固定する。しかし、球試験検体を支えるシャフトおよび駆動システムは、それが2つの直交軸回りを回転できるようにジンバル配置で支える。1つの軸は負荷適用方向に垂直であり、もう1つはトラクション力方向に垂直である。球およびディスクを同じ方向に駆動する。負荷の適用およびトラクション力の抑制を、ジンバル配置に適切に取り付けた高剛性力変換器によって行って全体支持システム偏向を最小限にする。これらの力変換器からの出力をパソコンによって直接監視する。トラクション係数は、トラクション力と適用負荷との比である。図1〜9に示されるように、トラクション係数を様々な速度にわたって測定した。図1〜9において、x軸上の速度は、球およびディスク速度の合計の半分である、エントレインメント速度である。これらのエントレインメント速度は、エンジンが動作中であるときに達する、表面速度の範囲、または表面速度の範囲の少なくとも一部をシミュレートしている。
【0147】
本明細書において示される試験結果は、次の試験条件下で生み出された:
【0148】
【表1】
同じモデル、Model MTMの2つの異なる機械をこれらの評価に用い、用いた機械の同一性(機械1または機械2)を図上に示す。
【0149】
潤滑油を表1及び表1(続き)に記載する。
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
異なるベースオイル、ベースオイルと清浄剤との混合物に加えて調合物はまたすべて、添加剤をまったく含有しなかった対照油Bを除いて、すべての調合物中に同じ量の、分散剤、酸化防止剤および極圧/摩耗防止添加剤などのその他の添加剤を含有した。
【0153】
異なる速度でのトラクション係数の観点からの調合変数の潤滑油性能への影響は、図を参照することによって理解される。下記において、グループIIIオイルを含有すると認定されるそれらの油について、使用されたグループIIIオイルは、あらゆる硫黄および窒素化合物を除去するためにスラックワックスを水素化処理にかけ、その脱硫および脱窒されたスラックワックスを次に水素異性化し、引き続き水素化精製することによって製造されたスラックワックス異性化体であった。
【0154】
グループIVベースオイルはPAOであった。動粘度は呼称によって特定され、たとえば、PAO 150は、PAOが名目上150mm2/秒の100℃でのKVを有すると特定する。
【0155】
図1において、油I−A、I−B、IIおよびIIIを対照油Aに対して比較する。すべての4つの調合物および対照油は、対照油AがグループIベースオイルとPIBとのブレンドであるが、油I−A〜IIIがグループIIIベースオイルとグループIVベースオイル(PAO)とのブレンドを含有する調合物であることを除いて同じ清浄剤およびその他の添加剤を有する。
【0156】
図1から、グループIII(6.5mm2/秒)/グループIV(150mm2/秒)の二峰性ブレンドとブレンドされた、油、I−A〜IIIのすべてが80mm/秒以上の速度で対照油Aと比べてトラクション係数の大きい改善を生み出したことが分かる。対照油Aに対して異なる速度でのトラクション係数への影響はまた、ブレンド油の最終動粘度、およびブレンドの第2高粘度油の動粘度に依存する。
【0157】
20mm2/秒の動粘度のブレンドおよびフェノレート清浄剤とスルホネート清浄剤との混合物を用いる調合油I−AおよびI−Bについては、トラクション係数は、ブレンドの第2高粘度成分が150mm2/秒の100℃での動粘度を有するときはすべての速度で対照油のそれより低かった。
【0158】
16mm2/秒の100℃での動粘度のブレンドおよびフェノレートとスルホネートとの混合物を用いる調合油IIについては、トラクション係数は、約60mm/秒以上のより高い速度でのみ対照油Aのそれより一貫して低かった。
【0159】
最後に、20mm2/秒の100℃での動粘度のブレンドであって、ブレンドの第2高粘度油成分が300mm2/秒の100℃での動粘度を有するブレンドを用いる、そしてフェノレート清浄剤とスルホネート清浄剤との混合物を含有する調合油IIIについては、トラクション係数は、約70mm/秒以上のより高い速度でのみ対照油Aのそれより一貫して低かった。
【0160】
図2において、調合油IV〜VIIを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0161】
図2は、異なる速度での単一清浄剤タイプの調合油トラクション係数への影響を示す。
【0162】
すべて100℃で20mm2/秒の動粘度を有するブレンドをベースとし、すべてグループIII(6.5mm2/秒)基油とグループIV基油(PAO 150)の同じ組み合わせを使用して製造され、すべて単一清浄剤添加剤のみと同じ量のその他の添加剤を含有する調合油IV〜VIIについて、調合油IV、VIおよびVIIのトラクション係数は、単一清浄剤がサリチレート、カルボキシレートまたはフェノレートであるかどうかにかかわらず全エンジン速度範囲にわたって対照油Aのそれより低かったことが分かる。調合油IV、VIおよびVIIはすべて、全速度範囲にわたって対照油Aよりも優れていたが、最良に機能する調合油はサリチレート(油IV)およびカルボキシレート(油VI)清浄剤を含有した。
【0163】
スルホネート清浄剤を含有する調合油(油V)は低速(約3〜60mm/秒)で対照油より良好に機能し、そしてより高い速度(約100mm/秒以上)で性能の変動を示し、この調合物が連続的でより高速運転条件(100mm/秒以上)または連続的低速運転条件(3〜50−60mm/秒)下でのみ使用に最適であることを示唆する。サリチレート(油IV)、スルホネート(油V)またはカルボキシレート(油VI)を含有する調合油はすべて、対照油B(基油のみ)より低速(約3〜12mm2/秒)でより良好に機能した。
【0164】
図3Aおよび3Bは、異なる速度でトラクション係数にフェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤との同じ組み合わせ、およびその他の添加剤を使用するブレンドの様々なブレンド動粘度および第2油成分動粘度が及ぼす影響ならびに調合物BNが及ぼす影響を示す。
【0165】
図3Bにおいて、調合油VIII−A、XIおよびXII(100℃で20〜25mm2/秒のブレンドKV、100℃で40または150mm2/秒の第2高粘度油KV)ならびに調合油XXX(100℃で20mm2/秒のブレンドKV、100℃で150mm2/秒の第2高粘度油KV、フェノレート清浄剤とサリチレート清浄剤の同じ混合物およびその他の添加剤を含有する40の調合ブレンドBNは、トラクション係数を低下させるという観点からすべての速度で対照油Aより一貫して性能が優れていたことが分かる。調合油XIおよびXIIはまた、低速(3〜10mm/秒)条件下で対照油B((Ref.B)基油のみ)より性能が優れていた。
【0166】
図3Aにおいて、サリチレート清浄剤とフェノレート清浄剤の同じ混合物およびその他の添加剤を含有する調合油IX−AおよびIX−B(100℃で13および16.5mm2/秒のブレンドKV、100℃で150mm2/秒の第2高粘度油KV)は、約50mm/秒以上(油IX−B)または100mm/秒以上(油IX−A)のより高い速度でのみ対照油Aより一貫して性能が優れていたことが分かる。
【0167】
サリチレート清浄剤とフェノレート清浄剤との同じ混合物およびその他の添加剤を含有する調合油X(100℃で20mm2/秒のブレンドKV、100℃で300mm2/秒のKVでの第2高粘度)は同様に約20mm/秒以上のより高い速度でのみ対照油Aより一貫して性能が優れていた。
【0168】
このように、図3Aおよび3Bでの調合物はすべて、より高い速度で対照油Aより性能が優れていたが、調合油VIII−A、IX−B、XI、XIIおよびXXXは、これらの調合油のすべてがサリチレート清浄剤とフェノレート清浄剤と同じ混合物を含有し、そして100℃で20〜25mm2/秒の動粘度を有し、第2のグループIVベースオイル(PAO 40またはPAO 150)ブレンディング成分を用いる状態で、両図の全速度範囲にわたって対照油Aに匹敵するかまたはそれより性能が優れていた。
【0169】
図4において、調合油XIII〜XVを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0170】
図4は、すべての調合物が70のBNの、異なるブレンド動粘度で同じフェノレート/サリチレート清浄剤混合物およびその他の添加剤入りベースオイルのグループI/グループIおよびグループIV/グループIV組み合わせを使用することが異なる速度でトラクション係数に及ぼす影響を示す。
【0171】
100℃で21mm2/秒動粘度にブレンドされたグループIV(PAO 8)ベースオイルとグループIVベースオイル(PAO 40)との混合物を用いる調合油XIVのみが、全速度範囲にわたってのトラクション係数の観点から対照油Aより性能が優れていたが、低速(3〜12mm2/秒)条件下で対照油B(ベースオイルのみ)よりまた性能が優れていた。
【0172】
22mm2/秒にブレンドされた、グループI(8mm2/秒)/グループI(32mm2/秒)基油の混合物中に同じフェノレート/サリチレート清浄剤組み合わせを使用する、調合油XIIIは、低〜中速(3〜50mm/秒)条件下でのみ対照油Aより性能が優れていた。それが(21mm2/秒よりもむしろ)100℃で13mm2/秒のKVにブレンドされたことを除いて油XIVと同じものである、調合油XVは、中〜高速(80mm/秒以上)条件下でのみ対照油Aより性能が優れていた。
【0173】
図5において、調合油XVI、XVII、XVIIIおよびXIXを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0174】
図5は、すべてが70の調合塩基価の、そして100℃で20mm2/秒のKVにブレンドされた、同じフェノレート/サリチレート清浄剤組み合わせおよびその他の添加剤入りグループI/グループIVおよびグループII/グループIVベースオイル組み合わせを使用する影響を示す。
【0175】
調合油XIX、グループII(3mm2/秒)ベースオイルとグループIVベースオイル(PAO 40)とのベースオイル組み合わせを用いる調合物のみが、全速度範囲にわたって摩擦係数の観点から対照油Aより性能が優れていた。それはまた、低〜中速範囲(3〜20mm2/秒)において対照油B(グループIII/グループIVベースオイル組み合わせのみ)より性能が優れていた。
【0176】
第2ベースオイル成分が(PAO 40の代わりに)グループIVベースオイル(PAO 150)であることを除いて油XIXと同じものである調合油XVIIIは、中〜高速領域(約20mm/秒以上)においてのみ対照油Aより性能が優れ、油XVI(グループI/グループIV調合物)より優れていた。それが第1ベースオイル成分として調合油XVIIIの3mm2/秒グループII基油の代わりにより高い動粘度グループII(12mm2/秒)基油を使用したことを除いて油XVIIIと同じものである、油XVIIは、低〜中速条件(3〜10mm/秒)下で対照油Aよりもわずかなトラクション係数利益を、高速(100+mm/秒)条件下で非常に僅かな利益を示したにすぎなかった。12mm2/秒未満の動粘度のグループIIベースオイルが、それ故、より高い(100mm/秒以上)速度で有意のトラクション係数利益を得るために好ましい。
【0177】
図6Aおよび6Bは、すべての調合物がBN70の、100℃で20mm2/秒のブレンドKVにブレンドされたグループIII(6.5mm2/秒)基油/グループIV基油(PAO 150)混合物中の異なるフェノレート/共清浄剤ブレンドの比較であって、互いにおよび対照油AおよびBに対してである比較を示す。
【0178】
図6Aは、油I−A(フェノレート/スルホネート)および油VIII−A(フェノレート/サリチレート)の両方が全速度範囲にわたって対照油A(グループI/PIBブレンド中のフェノレート/スルホネート)と比べてトラクション係数の大きい改善を提供することを示す。油VIII−Aは、低〜中速(約3〜80−90mm2/秒)で油I−Aより性能が優れている。
【0179】
図6Bは、グループIII(6.5mm2/秒)ベースオイル/グループIVベースオイル(PAO 150)ブレンド中のフェノレート/カルボキシレート清浄剤組み合わせがまた全速度範囲にわたって対照油Aと比べてトラクション係数の大きい改善を提供することを示す。しかし、非常に低い速度条件(約3〜7mm/秒)下で、フェノレート/カルボキシレート清浄剤組み合わせは依然として有効であるが、フェノレート/サリチレート組み合わせほどに多くの利益を提供しない。
【0180】
図7において、調合油IV、VIII−A、XXI、XXII、XXIIIおよびVIIを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0181】
図7は、フェノレート、サリチレートおよびスルホネート清浄剤の組み合わせを含有するブレンドに用いられるサリチレートおよびスルホネート清浄剤の量を変えることがトラクション係数に及ぼす影響を示す。これらの調合物はすべて、同じ低いKVおよびより高いKVの第1および第2基油を使用して100℃で20mm2/秒の同じ動粘度にブレンドされた。理解することができるように、サリチレート清浄剤のみを含有する、調合油IVは全速度範囲にわたってトラクション係数の最大の低下を示したが、サリチレート、フェノレートおよびスルホネート清浄剤の混合物(サリチレートがスルホネート清浄剤の一部と置き換わった)を含有するそれらの調合物は、少なくとも1.5重量%のサリチレートが低〜中速(3〜50mm/秒)下で対照油Aよりも改善を示すために必要とされる状態で、存在するサリチレートの量とともに変わる性能を示した。
【0182】
サリチレートのみまたはサリチレートとフェノレートとの混合物もしくはスルホネートとフェノレートとの混合物を含有する調合物は、サリチレート、フェノレートおよびスルホネートの混合物を含有する調合物より好ましい。
【0183】
図8において、調合油VII、XXIV、VIII−A、XXV、XXVIおよびIVを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0184】
図8は、フェノレート清浄剤に対してサリチレート清浄剤の量を変えることがブレンドKVのならびに使用される低いKVおよびより高いKVベースオイルの観点から別の点では同じ調合物に関するトラクション係数に及ぼす影響を示す。理解できるように、サリチレート/フェノレート比が大きければ大きいほど、トラクション係数性能はより良好である。しかし、調合物中のフェノレート濃度を最高にすることがその他の性能特性にとって重要である。
【0185】
約7.5重量%のサリチレートおよび7.4重量%のフェノレート清浄剤(重量比約1:1)を含有する、調合油XXVは、対照油Aと比べて最良の全体トラクション係数改善をとりわけ示した。約4.7重量%のサリチレートおよび11.5重量%のフェノレート(サリチレート:フェノレート重量比約1:2.5)を含有する油VIII−A中でわずかにサリチレート/フェノレート比を下げると、油XXVおよび油XXVIと比べて低速(3〜10mm/秒)でトラクション係数性能を劣化させた。それ故、フェノレート含有率と1:1〜1:2.5のサリチレート/フェノレートの重量比を用いるサリチレート/フェノレート清浄剤ブレンドを用いることによってトラクション係数への影響とを最大にすることが望ましい。
【0186】
調合物がすべて、すべての速度でのそれらのトラクション係数への影響の観点から対照油Aを超えたことが指摘されなければならず、油VII、XXV、XXVIおよびIVは、低速条件(3〜10mm/秒)下で対照油B、基油のみ)のトラクション係数を超える。100%フェノレート調合物(油VII)が、低〜中速(約8〜70−100mm/秒)下で油XXIV(2.5重量%のサリチレート/14.7重量%のフェノレート)、油VIII−A(4.7重量%のサリチレートおよび11.5重量%のフェノレート)、ならびに油XXVI(10重量%のサリチレートおよび3.7重量%のフェノレート)より良好なトラクション係数性能を提供したことが指摘されるべきである。
【0187】
図9において、調合油V、VII、XXVII、XXVIIIおよびXXIXを互いにならびに対照油Aおよび対照油Bに対して比較する。
【0188】
図9は、フェノレート清浄剤に対してスルホネート清浄剤の量を変えることがブレンドKVのならびに使用される低いKVおよびより高いKVベースオイルの観点から別の点では同じ調合物におけるトラクション係数に及ぼす影響を示す。スルホネート清浄剤とフェノレート清浄剤との混合物を含有する調合物について、試験されたスルホネート/フェノレート比が高ければ高いほど、すべての速度下で対照油Aと比べてトラクション係数性能はより良好である。しかし、スルホネートのみの清浄剤は、フェノレートがまったく存在しないからのみならず、全スルホネート油、油Vが低速(3〜12mm/秒)および高速(100+mm/秒)で対照油Aよりも大きいトラクション係数利益を提供するが、この利益がフェノレートとスルホネートとの混合物を含有する油と比べてはるかに減少するか、または中速(20〜100mm/秒)で対照油Aと比べて皆無でさえあることを図9が示すので望ましくない。フェノレートのみの清浄剤調合物(油VII)は、低〜中速(約3〜10mm/秒)でスルホネート/フェノレートブレンドのそれより性能が優れている。油XXIX(6重量%スルホネート/5重量%フェノレート)のみが、高速(100+mm/秒)下に油VIIよりわずかに性能が優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種の異なるベースオイル、
100℃で2〜16mm2/秒の動粘度を有するグループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1ベースオイルと
100℃で少なくとも38mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドであって、
前記二峰性ブレンド中の前記第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差は、少なくとも30mm2/秒である二峰性ブレンドを含むベースオイル、並びに
潤滑油の総重量を基準として、6重量%より多く40重量%まで(活性成分)の量の全処理レベルで、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属サリチレート、フェノレート、カルボキシレート、スルホネート、フェノレートとサリチレートとの混合物またはフェノレートとカルボキシレートとの混合物から選択される清浄剤
を含む、100℃で13〜30mm2/秒の動粘度および少なくとも5mg KOH/gの塩基価を有する潤滑油を、エンジンオイルとして用いることにより、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも約3mm/秒の表面速度に達する、大きい低速、中速および高速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の前記向上が、二峰性ブレンドではない又はグループIおよび/またはグループIIベースオイルのみに基づく又は100℃で少なくとも38mm2/秒のKVを有するグループIVベースオイルをまったく含有しないエンジンオイルのトラクション係数より、その二峰性ブレンドを用いるそのエンジンオイルのトラクション係数は低いことによって立証される方法。
【請求項2】
2種の異なるベースオイル、
100℃で2〜16mm2/秒の動粘度を有するグループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1ベースオイルと
100℃で少なくとも38mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドであって、
前記二峰性ブレンド中の前記第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差は、少なくとも30mm2/秒である二峰性ブレンドを含むベースオイル、並びに
用いられる清浄剤の総量が、潤滑油の総重量を基準として、6重量%より多く40重量%まで(活性成分)の範囲にある、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属サリチレート、フェノレート、スルホネート、カルボキシレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される清浄剤
を含む、100℃で6〜30mm2/秒の動粘度および少なくとも5mg KOH/gの塩基価を有する潤滑油を、エンジンオイルとして用いることにより、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも約30mm/秒の表面速度に達する、大きいエンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の前記向上が、二峰性ブレンドではない又はグループIおよび/またはグループIIベースオイルのみに基づく又は100℃で少なくとも38mm2/秒のKVを有するグループIVベースオイルをまったく含有しないエンジンオイルのトラクション係数より、その二峰性ブレンドを用いるそのエンジンオイルのトラクション係数が低いことによって立証される方法。
【請求項3】
2種の異なるベースオイル、
100℃で2〜16mm2/秒の動粘度を有するグループII、グループIIIおよびグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1ベースオイルと
100℃で38から300mm2/秒未満の動粘度を有するグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドであって、
前記二峰性ブレンド中の前記第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差は、少なくとも30mm2/秒である二峰性ブレンドを含むベースオイル、並びに
清浄剤の総量が、潤滑油の総重量を基準として、6重量%を超えて40重量%まで(活性成分)の範囲にある、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属スルホネートまたはフェノレートとスルホネートとの混合物からなる群から選択される清浄剤
を含む、100℃で13〜30mm2/秒の動粘度および少なくとも5mg KOH/gの塩基価を有する潤滑油を、
エンジンオイルとして用いることにより、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも約3mm/秒の表面速度に達する、大きい低速、中速および高速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の前記向上が、二峰性ブレンドではない又はグループIおよび/またはグループIIベースオイルのみに基づく又は100℃で少なくとも38mm2/秒のKVを有するグループIVベースオイルをまったく含有しないエンジンオイルのトラクション係数より、その二峰性ブレンドを用いるそのエンジンオイルのトラクション係数が低いことによって立証される方法。
【請求項4】
前記第1ベースオイルは、グループIIIおよびグループIV基油から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1ベースオイルは、グループIIIおよびグループIV基油から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1ベースオイルは、グループIIIおよびグループIV基油から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記清浄剤が、8〜40重量%(活性成分)の量の範囲で存在する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
100℃での前記潤滑油動粘度は、16〜30mm2/秒の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項9】
100℃での前記潤滑油動粘度は、18〜25mm2/秒の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項10】
100℃での前記潤滑油動粘度は、8〜25mm2/秒の範囲にある請求項2に記載の方法。
【請求項11】
100℃での前記潤滑油動粘度は、16〜30mm2/秒の範囲にある請求項3に記載の方法。
【請求項12】
100℃での前記潤滑油動粘度は、18〜25mm2/秒の範囲にある請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記第2ベースオイルがPAOベースオイルである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記PAOベースオイルがメタロセン触媒を用いて製造される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記PAOベースオイルが、45,000ダルトンを超える分子量を有するポリマーが5.0重量%以下ので特徴付けられる請求項13に記載の方法。
【請求項1】
2種の異なるベースオイル、
100℃で2〜16mm2/秒の動粘度を有するグループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1ベースオイルと
100℃で少なくとも38mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドであって、
前記二峰性ブレンド中の前記第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差は、少なくとも30mm2/秒である二峰性ブレンドを含むベースオイル、並びに
潤滑油の総重量を基準として、6重量%より多く40重量%まで(活性成分)の量の全処理レベルで、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属サリチレート、フェノレート、カルボキシレート、スルホネート、フェノレートとサリチレートとの混合物またはフェノレートとカルボキシレートとの混合物から選択される清浄剤
を含む、100℃で13〜30mm2/秒の動粘度および少なくとも5mg KOH/gの塩基価を有する潤滑油を、エンジンオイルとして用いることにより、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも約3mm/秒の表面速度に達する、大きい低速、中速および高速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の前記向上が、二峰性ブレンドではない又はグループIおよび/またはグループIIベースオイルのみに基づく又は100℃で少なくとも38mm2/秒のKVを有するグループIVベースオイルをまったく含有しないエンジンオイルのトラクション係数より、その二峰性ブレンドを用いるそのエンジンオイルのトラクション係数は低いことによって立証される方法。
【請求項2】
2種の異なるベースオイル、
100℃で2〜16mm2/秒の動粘度を有するグループIIベースオイル、グループIIIベースオイルおよびグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1ベースオイルと
100℃で少なくとも38mm2/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドであって、
前記二峰性ブレンド中の前記第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差は、少なくとも30mm2/秒である二峰性ブレンドを含むベースオイル、並びに
用いられる清浄剤の総量が、潤滑油の総重量を基準として、6重量%より多く40重量%まで(活性成分)の範囲にある、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属サリチレート、フェノレート、スルホネート、カルボキシレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される清浄剤
を含む、100℃で6〜30mm2/秒の動粘度および少なくとも5mg KOH/gの塩基価を有する潤滑油を、エンジンオイルとして用いることにより、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも約30mm/秒の表面速度に達する、大きいエンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の前記向上が、二峰性ブレンドではない又はグループIおよび/またはグループIIベースオイルのみに基づく又は100℃で少なくとも38mm2/秒のKVを有するグループIVベースオイルをまったく含有しないエンジンオイルのトラクション係数より、その二峰性ブレンドを用いるそのエンジンオイルのトラクション係数が低いことによって立証される方法。
【請求項3】
2種の異なるベースオイル、
100℃で2〜16mm2/秒の動粘度を有するグループII、グループIIIおよびグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油である第1ベースオイルと
100℃で38から300mm2/秒未満の動粘度を有するグループIVベースオイルからなる群から選択される1種以上の油から選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドであって、
前記二峰性ブレンド中の前記第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差は、少なくとも30mm2/秒である二峰性ブレンドを含むベースオイル、並びに
清浄剤の総量が、潤滑油の総重量を基準として、6重量%を超えて40重量%まで(活性成分)の範囲にある、アルカリおよび/またはアルカリ土類金属スルホネートまたはフェノレートとスルホネートとの混合物からなる群から選択される清浄剤
を含む、100℃で13〜30mm2/秒の動粘度および少なくとも5mg KOH/gの塩基価を有する潤滑油を、
エンジンオイルとして用いることにより、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも約3mm/秒の表面速度に達する、大きい低速、中速および高速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の前記向上が、二峰性ブレンドではない又はグループIおよび/またはグループIIベースオイルのみに基づく又は100℃で少なくとも38mm2/秒のKVを有するグループIVベースオイルをまったく含有しないエンジンオイルのトラクション係数より、その二峰性ブレンドを用いるそのエンジンオイルのトラクション係数が低いことによって立証される方法。
【請求項4】
前記第1ベースオイルは、グループIIIおよびグループIV基油から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1ベースオイルは、グループIIIおよびグループIV基油から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第1ベースオイルは、グループIIIおよびグループIV基油から選択される請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記清浄剤が、8〜40重量%(活性成分)の量の範囲で存在する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
100℃での前記潤滑油動粘度は、16〜30mm2/秒の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項9】
100℃での前記潤滑油動粘度は、18〜25mm2/秒の範囲にある請求項1に記載の方法。
【請求項10】
100℃での前記潤滑油動粘度は、8〜25mm2/秒の範囲にある請求項2に記載の方法。
【請求項11】
100℃での前記潤滑油動粘度は、16〜30mm2/秒の範囲にある請求項3に記載の方法。
【請求項12】
100℃での前記潤滑油動粘度は、18〜25mm2/秒の範囲にある請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記第2ベースオイルがPAOベースオイルである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記PAOベースオイルがメタロセン触媒を用いて製造される請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記PAOベースオイルが、45,000ダルトンを超える分子量を有するポリマーが5.0重量%以下ので特徴付けられる請求項13に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2013−518935(P2013−518935A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551332(P2012−551332)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022955
【国際公開番号】WO2011/094562
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022955
【国際公開番号】WO2011/094562
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]