説明

トラクション係数を低下させることによって大きい低速および中速エンジン用のエンジンオイル組成物の燃料効率を向上させる方法

本発明は、大きな低速及び中速エンジンオイル組成物の燃料効率性を向上させる方法であって、少なくとも38の動粘度を有するグループIVベースオイルと組み合わせて、100℃で2mm/秒から12mm/秒未満の動粘度を有する1種以上のグループIベースオイルからなるブレンドを用いて、オイルを配合することによって、オイルのトラクション係数を低下させる方法であり、ブレンド中のグループIオイルとグループIVオイルとの間の動粘度の差は少なくとも30mm/秒であり、清浄剤と組み合わせる、方法に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加潤滑油調合物(又は添加剤を加えた潤滑油配合物)を使用する大きな低速及び中速エンジンの運転に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋及び固定出力用途向けに設計されたディーゼルエンジンは、20以下のシリンダーを有する2サイクルか4サイクルかのどちらかであることができ、典型的には低速、中速または高速ディーゼルエンジンに分類される。これらのエンジンは、残留燃料油または重油から天然ガスまでの範囲の多種多様な燃料を燃やし(ディーゼル圧縮または火花点火)、舶用推進、海洋補助(船舶発電)、分散発電、および熱電併給(CHP)向けに最も一般的に用いられている。そのようなエンジンの潤滑は、全損(すなわち、シリンダー油によってシリンダーに直接供給される潤滑油)であるかまたは油だめを含む再循環であることができる。臨界エンジン部品の潤滑は、ピストンリング、シリンダーライナー、ベアリング、ピストン冷却、燃料ポンプ、エンジン制御水力学などを含む。燃料が典型的にはこれらのエンジンを運転する主要コストであり、船舶コンテナー輸送に用いられる典型的な12シリンダー、90cm口径低速ディーゼルエンジンは、$480/MTの今日の価格で年間約$33Mまでの重油を燃やすであろう。それ故、1%ほどの少ない燃料効率ゲインが船舶経営者に約$330kまでの年間節約をもたらすであろう。加えて、International Marine Organization(国際海事機関)、U. S. Environmental Protection Agency(米国環境保護庁)及びCalifornia Air Resources Board(カリフォルニア大気資源委員会)などの、政府機関は、これらのエンジンに対する排出物規定を法制化中である。燃料効率の向上は、相応に排出物(CO、SO、NOおよび粒子状物質)を低減するだろうし、それは幾つかの排出権取引価値をもたらすはずである。
【0003】
金属−金属接触を防止するのに十分な油膜厚さを提供することに加えて、これらのエンジン用の潤滑油は、ピストンリングおよびシリンダーライナーの腐食摩耗を最小限にするために硫黄を含有する燃料の燃焼によって形成される酸を中和すること、燃料燃焼によっておよび生のまたは部分燃焼した燃料での潤滑油の汚染によって形成されるエンジンデポジットを最小限にすること、これらのエンジンにおける極端な熱による潤滑油の熱/酸化分解に抵抗すること、熱をエンジンから移動させることなどを含む、様々なその他のストレスに対処するように設計されている。
【0004】
長期的な必要条件は、潤滑油が、とりわけピストンおよびピストンリングなどの決定的に重要な構成要素に関して、エンジンの高温環境内で清浄度を維持しなければならないことである。生のおよび部分燃焼した燃料燃焼生成物、水、すすならびに油それ自体の熱/酸化分解物のエンジンにおける蓄積によるエンジン中のエンジンオイルの汚染は、エンジンオイルのエンジン清浄度性能を劣化させ得る。それ故、エンジンオイルは、良好な清浄度品質を有するように、かつ、汚染および熱/酸化分解によるそれらの品質の劣化に抵抗するように調合されることが望ましい。
【0005】
特許文献1は、海洋および固定低速ディーゼルエンジンにおける使用のためのディーゼルエンジンシリンダー油に関する。このシリンダー油は、液体の油混和性ポリイソブチレンと組み合わせて、かつ、清浄剤(又は洗剤)成分、酸化防止剤、摩耗防止剤および分散剤を含む添加剤パッケージをさらに含有する約12mm/秒以下の100℃での中KV重質グループIもしくはグループII中性ベースオイル(300〜500SUS)をベースとしている。この清浄剤は、1つ以上の過塩基性フェノレート、フェニレート、サリチレートまたはスルホネートを含む。油組成物は、15〜25mm/秒(100℃)、より通常は名目上18.5〜21.9mm/秒または21.96〜26.1mm/秒(100℃)の動粘度範囲を有する。油調合物は、範囲40〜100の全塩基価(TBN:Total Base Number)を有する。
【0006】
酸化、硝化およびデポジット形成に対する油の耐性の増加によって立証されるような向上した寿命のガスエンジンオイルが特許文献2の主題である。当該特許のガスエンジンオイルは、主要量の潤滑粘度のベースオイルと、約250以下の全塩基価(TBN)を有する少なくとも1つのアルカリもしくはアルカリ土類金属塩および前述の成分より低いTBNを有する第2アルカリもしくはアルカリ土類金属塩を含む清浄剤の混合物を含む少量の添加剤混合物とを含む低灰分ガスエンジンオイルである。この第2アルカリもしくはアルカリ土類金属塩のTBNは典型的には、前述の成分のそれの約半分以下であろう。
【0007】
特許文献2の十分に調合されたガスエンジンオイルはまた、分散剤(約0.5〜8容積%)、フェノール系またはアミン系酸化防止剤(約0.05〜1.5容積%)、トリアゾール、アルキル置換ジメルカプトチアジアゾールなどの金属不活性化剤(約0.01〜0.2容積%)、金属ジチオホスフェート、金属ジチオカルバメート、金属ザンテートまたはトリクレジルホスフェートなどの摩耗防止添加剤(約0.05〜1.5容積%)、ポリ(メタ)アクリレートまたはアルキル芳香族ポリマーなどの流動点降下剤(約0.05〜0.6容積%)、シリコーン消泡剤などの消泡剤(約0.05〜0.15容積%)ならびにオレフィンコポリマー、ポリメタクリレート、スチレン−ジエンブロックコポリマー、および星形コポリマーなどの粘度指数向上剤(約15容積%以下、好ましくは約10容積%以下)を含む、当業者に公知のその他の標準添加剤を典型的には含有することができる。
【0008】
特許文献3は、主要量の潤滑粘度のベースオイルならびに1つ以上の金属サリチレート清浄剤と1つ以上の金属フェノレートおよび/または金属スルホネート清浄剤との少量の混合物を含む天然ガスエンジン用の潤滑油組成物に関する。
【0009】
潤滑油基油は、約5〜20cStの100℃での動粘度を典型的に有するあらゆる天然または合成潤滑ベースオイル基材油留分である。好ましい実施形態においては、粘度指数向上剤の使用は、本発明調合物を製造するために使用される潤滑油ベースオイル留分からの100℃で粘度約20cSt以上の油の除去を可能にする。それ故、好ましいベースオイルは、たとえあったとしても、少量の重質留分;たとえば、たとえあったとしても、少量の100℃で粘度20cSt以上の潤滑油留分を含有するものである。
【0010】
潤滑油基油は、天然潤滑油、合成潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な潤滑油基油としては、原油の芳香族および極性成分を(溶媒抽出するよりもむしろ)水素化分解することによって製造される水素化分解体基油だけでなく、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化によって得られる基油が挙げられる。好適な基油としては、APIカテゴリーI、IIおよびIIIのものが挙げられ、ここで、飽和物レベルおよび粘度指数は、
グループI−それぞれ、90%未満および80〜120;
グループII−それぞれ、90%超および80〜120;ならびに
グループIII−それぞれ、90%超および120超
である。
【0011】
清浄剤の混合物は、少なくとも0.65重量%硫酸塩灰分の潤滑油を達成するのに十分な量でその他の金属塩または金属塩の群(下に列挙される)と組み合わせて使用される約150超〜300以上の高TBNを有する1つ以上の金属スルホネート、サリチレート、フェノレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第1金属塩または金属塩の群、約50超〜150の中TBNを有する1つ以上の金属サリチレート、金属スルホネート、金属フェノレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第2金属塩または金属塩の群、ならびに約10〜50のTBNを有する、中性または低TBNと同定される1つ以上の金属スルホネート、金属サリチレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される第3金属塩または金属塩の群を含み、中プラス中性/低TBN清浄剤の総量は、約0.7容積%以上(活性成分)であり、ここで、中または低/中性TBN清浄剤の少なくとも1つは金属サリチレートであり、好ましくは中TBN清浄剤の少なくとも1つは金属サリチレートである。高TBN清浄剤の総量は、約0.3容積%以上(活性成分)である。混合物は、中または中性サリチレートが必須成分である状態で、少なくとも2つの異なるタイプの塩を含有する。高TBN清浄剤対中プラス中性/低TBN清浄剤の容積比(活性成分を基準とする)は、約0.15〜3.5の範囲にある。
【0012】
清浄剤の混合物は、清浄剤混合物中の活性成分を基準として(又はに基づいて)約10容積%以下の量で、好ましくは活性成分を基準として約8容積%以下、より好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として6容積%以下、最も好ましくは清浄剤混合物中の活性成分を基準として、約1.5〜5.0容積%の量で潤滑油調合物に添加される。好ましくは、すべてのTBNのうち使用される金属サリチレートの総量は、金属サリチレートの活性成分を基準として、0.5容積%〜4.5容積%の範囲にある。
【0013】
特許文献4は、100℃で約40cSt(mm/秒)〜1000cSt(mm/秒)の粘度を有するPAOと、100℃で約2.0cSt(mm/秒)以下の粘度を有するエステルとのブレンドであって、PAOとエステルとのブレンドがPAOの粘度指数以上の粘度指数を有するブレンドを含む完成自動車ギア潤滑油およびギアオイルの調製に有用な潤滑油組成物、自動車ギア潤滑組成物および流体に関する。この組成物は、増粘剤、酸化防止剤、阻害剤パッケージ、防錆添加剤、分散剤、清浄剤、摩擦改良剤、トラクション改良添加剤、乳化破壊剤、消泡剤、染料および曇り防止剤をさらに含有してもよい。
【0014】
特許文献5は、低、中および高TBN清浄剤の少なくとも2つ、好ましくはサリチル酸カルシウムを含む潤滑油組成物用の清浄剤添加剤に関する。この清浄剤は、グループII基油、グループIII基油またはワックス異性化体基油およびそれらの混合物の1つと、任意選択の少量の共基油とを含む潤滑油組成物中に存在する。共基油としては、ポリアルファオレフィンオリゴマーの低および中および高粘度油、二塩基酸エステル、ポリオールエステル、その他の炭化水素油、補充のヒドロカルビル芳香族化合物などが挙げられる。
【0015】
特許文献6は、潤滑油が100℃で96mm/秒超の第1基油と第2基油との間の粘度差の少なくとも2つの基油を含む、向上したマイクロピッチング特性のための潤滑油ブレンドに関する。少なくとも1つの基油は、6mm/秒未満だが2mm/秒超の粘度のポリアルファオレフィンであり、第2基油は、100℃で100mm/秒超だが300mm/秒未満の粘度の合成油である。第2基油は、高粘度ポリアルファオレフィンであることができる。
【0016】
特許文献7は、100℃で96cStmm/秒超の第1基油と第2基油と間の粘度差の少なくとも2つの基油を含む潤滑油ブレンドを指向しており、潤滑油は改善された排気を示す。このブレンドは、100℃で10cStmm/秒未満だが2cStmm/秒超の粘度を有する少なくとも1つの合成PAOと100℃で100cSt(mm/秒)超だが300cSt(mm/秒)未満の粘度を有する第2合成油とを含有する。潤滑油は、摩耗防止剤、酸化防止剤、消泡剤、乳化破壊剤、清浄剤、分散剤、金属不動態化剤、摩擦低減剤、防錆剤添加剤およびそれらの混合物を含有することができる。
【0017】
特許文献8は、少なくとも2つの基油を含む潤滑油であって、第1基油が100℃で40cSt(mm/秒)超の粘度および少なくとも10%未満アルゴリズムで粘度の関数としての分子量分布(MWD: Molecular Weight Distribution):
MWD=0.2223+1.0232*log(cSt単位の100℃でのKv)
を有し、第2基油が100℃で10cSt(mm/秒)未満の粘度を持った潤滑油に関する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で30cSt(mm/秒)超である。好ましくは高粘度第1基材油は、メタロセン触媒PAO基油である。第2基材油は、GTL潤滑油、ワックス由来潤滑油、PAO、ブライトストック、PIBと一緒のブライトストック、グループI基油、グループII基油、グループII基油およびそれらの混合物から選択することができる。潤滑油は、清浄剤を含む添加剤を含有することができる。好ましくは第1基材油は、100℃で300cSt(mm/秒)超の粘度を有し、第2基材油は、100℃で1.5cSt(mm/秒)〜6cSt(mm/秒)の粘度を有する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で96cSt(mm/秒)超である。
【0018】
特許文献9は、少なくとも2つの基油を含む潤滑油であって、第1基油が100℃で少なくとも300cSt(mm/秒)の粘度および少なくとも10%未満アルゴリズムで粘度の関数としての分子量分布(MWD):
MWD=0.2223+1.0232*log(cSt単位の100℃でのKV)
を有し、第2基油が100℃で100cSt(mm/秒)未満の粘度を有する潤滑油に関する。好ましくは第1基材油と第2基材油との間の粘度の差は、100℃で250cSt(mm/秒)超である。好ましくは第1基材油は、メタロセン触媒PAO基油である。第2基材油は、GTL基油、ワックス由来基油、PAO、ブライトストック、PIBと一緒のブライトストック、グループI基油、グループII基油、グループIII基油、グループV基油、グループVI基油およびそれらの混合物から選択することができる。潤滑油は、清浄剤を含む添加剤を含有することができる。
【0019】
特許文献10は、清浄剤を含有する長寿命ガスエンジン潤滑油に関する。この潤滑油は、主要量の潤滑粘度のベースオイルならびに少量の1つ以上の金属スルホネートおよび/またはフェノレートと1つ以上の金属サリチレート清浄剤との混合物を含み、混合物中のすべての清浄剤は同じまたは実質的に同じ全塩基価(TBN)を有する。
【0020】
潤滑油基油は、約5〜20cStの100℃での動粘度を典型的には有するあらゆる天然または合成潤滑基油留分である。好ましい実施形態においては、粘度指数向上剤の使用は、本発明調合物を製造するために使用される潤滑油ベースオイル留分からの100℃で20cSt以上の粘度の油の除去を可能にする。それ故、好ましいベースオイルは、たとえあったとしても、少量の重質留分;たとえば、たとえあったとしても、少量の100℃で粘度20cSt以上の潤滑油留分を含有するものである。
【0021】
潤滑油基油は、天然潤滑油、合成潤滑油またはそれらの混合物から誘導することができる。好適な基油としては、APIカテゴリーI、IIおよびIIIのものが挙げられ、ここで、飽和物レベルおよび粘度指数は、
グループI−それぞれ、90%未満および8〜120;
グループII−それぞれ、90%超および80〜120;ならびに
グループIII−それぞれ、90%超および120超
である。
【0022】
好適な潤滑油基油としては、原油の芳香族および極性成分を(溶媒抽出するよりもむしろ)水素化分解することによって製造される水素化分解体基油だけでなく、合成ワックスおよびスラックワックスの異性化によって得られる基油が挙げられる。
【0023】
清浄剤は、1つ以上の金属スルホネートおよび/または金属フェノレートと1つ以上の金属サリチレートとの混合物である。金属は、あらゆるアルカリもしくはアルカリ土類金属;たとえば、カルシウム、バリウム、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、より好ましくはカルシウム、バリウムおよびマグネシウムである。混合物に使用される金属塩のそれぞれが、混合物中のその他の金属塩と同じまたは実質的に同じTBNを有することが潤滑油の特徴である。
【0024】
塩のTBNは、約15%以下、好ましくは約12%以下、より好ましくは約10%以下だけ異なるであろう。
【0025】
1つ以上の金属スルホネートおよび/または金属フェノレート、ならびに1つ以上の金属サリチレートは、たとえば、5:95〜95:5、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは20:80〜80:20の重量比での混合物として清浄剤に利用される。
【0026】
清浄剤の混合物は、清浄剤混合物中の活性成分を基準として(又はに基づいて)約10容積%以下の量で、好ましくは活性成分を基準として約8容積%以下の量で潤滑油調合物(又は配合物)に添加される。
【0027】
特許文献11は、ベースオイルおよび錯体の形態での油溶性の過塩基性清浄剤添加剤を含む、2ストローク・クロスヘッド海洋ディーゼルエンジン用の潤滑油であって、清浄剤の塩基性物質が2つ以上の界面活性剤で安定化されている潤滑油に関する。2つ以上の界面活性剤は、(1)硫化および/または非硫化フェノールならびにフェノール界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;(2)硫化および/または非硫化サリチル酸ならびにサリチル酸系界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;または(3)硫化または非硫化フェノール、硫化または非硫化サリチル酸である少なくとも3つの界面活性剤ならびにフェノールまたはサリチル酸系界面活性剤ではない1つのその他の界面活性剤;または(4)硫化または非硫化フェノール、硫化または非硫化サリチル酸である少なくとも3つの界面活性剤ならびに少なくとも1つの硫酸界面活性剤の混合物であることができる。
【0028】
基油は、潤滑粘度の油であり、クロスヘッドエンジンのシステム潤滑に好適なあらゆる油であってもよい。潤滑油は好適には動物、植物または鉱物油であってもよい。好適には潤滑油は、ナフテン系ベース、パラフィン系ベースまたは混合ベースオイルなどの、石油由来潤滑油である。あるいは、潤滑油は合成潤滑油であってもよい。好適な合成潤滑油としては、ジ−オクチルアジペート、ジ−オクチルセバケートおよびトリデシルアジペートなどのジエステルを含む、合成エステル潤滑油、またはポリマー炭化水素潤滑油、たとえば、液体ポリイソブチレンおよびポリアルファオレフィンが挙げられる。一般的に、鉱油が用いられる。潤滑油は、一般に潤滑油組成物の60質量%超、典型的には70質量%超を占め、典型的には、2〜40mm/秒、たとえば、3〜15mm/秒の100℃での動粘度、および80〜100、たとえば、90〜95の粘度指数を有する。
【0029】
別のクラスの潤滑油は、精製プロセスが中間および重質留出物留分を高温および中圧で水素の存在下でさらに分解する、水素化分解油である。水素化分解油は典型的には、2〜40、たとえば、3〜15mm/秒の100℃での動粘度、および典型的には100〜110、たとえば、105〜108の範囲の粘度指数を有する。
【0030】
ブライトストックは、28〜36mm/秒の100℃での動粘度を一般に有する減圧残油から溶媒抽出され、脱瀝されている、そして潤滑油組成物の質量を基準として、30質量%未満、好ましくは20未満、より好ましくは15未満、最も好ましくは5質量%未満などの、10質量%未満の割合で典型的には使用されるベースオイルを意味する。
【0031】
特許文献12は、潤滑粘度の油、分散剤の、70〜245の範囲のTBN、油組成物の質量を基準として、0〜0.2質量%の窒素を有する少なくとも1つのサリチル酸カルシウムを含む清浄剤、および少量の1つ以上の共添加剤を含む清浄剤ガス燃料エンジン潤滑油に関する。ベースオイルは、あらゆる動物、植物もしくは鉱物油または合成油であることができる。ベースオイルは、組成物の60質量%超の割合で使用される。この油は典型的には、2〜40、たとえば、3〜15mm/秒の100℃での粘度および80〜100の粘度指数を有する。100℃で2〜40mm/秒の粘度および100〜110の粘度指数を有する水素化分解油をまた使用することができる。28〜36mm/秒の100℃での粘度を有するブライトストックはまた、典型的には30質量%未満、好ましくは20未満、最も好ましくは5質量%未満の割合で使用することができる。
【0032】
特許文献13は、80〜120の粘度指数、少なくとも90質量%の飽和物、0.03質量%以下の硫黄および少なくとも1つの清浄剤を有する主要量の潤滑油を含む、95ppm超のホウ素含有率を有するガスエンジンオイルに関する。金属サリチレートが好ましい清浄剤である。
【0033】
特許文献14は、高粘度PAOなどの高粘度合成炭化水素、液体水素化ポリイソプレン、または100℃で40〜1000cSt(mm/秒)の粘度を有するエチレン−アルファオレフィンコポリマー、100℃で1〜10cSt(mm/秒)の粘度を有する低粘度合成炭化水素、任意選択的に100℃で1〜10cSt(mm/秒)の粘度を有する低粘度エステル、および任意選択的に25重量%以下の添加剤パッケージを含有する潤滑油組成物に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【特許文献1】特開2008−004691号公報
【特許文献2】特開2009−248377号公報
【特許文献3】特許第4416047号公報
【特許文献4】米国特許第6,339,051号明細書
【特許文献5】米国特許第5,726,133号明細書
【特許文献6】米国特許第6,191,081号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0059563号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2003/0191032号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2006/0276355号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2007/0289897号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2007/0298990号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2008/0207475号明細書
【特許文献13】米国特許第6,140,281号明細書
【特許文献14】米国特許第6,645,922号明細書
【特許文献15】米国特許第6,613,724号明細書
【特許文献16】米国特許第7,101,830号明細書
【特許文献17】米国特許第4,956,122号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、インターフェイス面(又は接触面:interfacing surface)速度が少なくとも約3mm/秒、好ましくは少なくとも60mm/秒、より好ましくは少なくとも70mm/秒に達する、大きい低速および中速エンジンの燃料経済性を向上させる方法に向けられている。
このことは、100℃で25mm/秒以下の動粘度を有する潤滑油であって、
2種の異なるベースオイル、
100℃で、2mm/秒から12mm/秒未満、好ましくは2〜8mm/秒、より好ましくは2〜4mm/秒の動粘度を有するグループIベースオイルからなる群から選択される1種以上のオイルである第1ベースオイルと、
100℃で、少なくとも38mm/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される1種以上のオイルから選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドからなるベースオイルを含み、
第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差は少なくとも30mm/秒であり、
そして活性成分に基づいて、1〜30重量%の1種以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム清浄剤
を含有する潤滑油を、エンジンオイルとして使用することで達成され、
燃料経済性の向上は、そのエンジンオイルが、二峰性ではない又はグループI基油もしくはグループI基油とPIBとの混合物に基づくエンジンオイルと比較して、より低い摩擦係数を有することによって立証される。
本明細書で及び添付した特許請求の範囲で用いるように、用語「基油(base stock)」および「ベースオイル(base oil)」は、同意語としておよび同じ意味で用いられる。
【0036】
本発明はまた、
100℃で、2mm/秒から12mm/秒未満、好ましくは2〜8mm/秒、より好ましくは2〜4mm/秒の動粘度を有するグループIベースオイルから選択される第1ベースオイルと、
100℃で、少なくとも38mm/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される第2ベースオイル
とを含み、100℃で、25mm/秒以下の動粘度を有し、
第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差が少なくとも30mm/秒であり、
そして、活性成分に基づいて1〜30重量%の範囲の量でアルカリおよび/またはアルカリ土類金属スルホネート、フェノレート、サリチレートまたはカルボキシレートからなる群から選択される1種以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム、清浄剤
を含有する、潤滑油をエンジンオイルとして用いることにより、
エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも3mm/秒、好ましくは少なくとも60mm/秒、より好ましくは少なくとも70mm/秒の表面速度に達する、大きい低速および中速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
燃料経済性の向上は、そのエンジンオイルが、グループIベースオイルの単一ベースオイル成分かまたは30mm/秒未満の動粘度の差を有するグループIベースオイルとグループIVベースオイルのブレンドを含む、またはグループIベースオイルとPIBとの混合物をベースとする、100℃で同じ動粘度を有するエンジンオイルのトラクション係数より、低いトラクション係数を有することによって立証される方法に向けられている。
【0037】
好ましくは第1基油と第2基油との間の粘度の差は、少なくとも36mm/秒、より好ましくは少なくとも90mm/秒、さらにより好ましくは少なくとも140mm/秒である。
【0038】
潤滑油は好ましくは、約25mm/秒以下、より好ましくは20mm/秒以下の100℃での動粘度を有する。
【0039】
「表面速度」とは、エンジン中のインターフェイス面、たとえばシリンダー壁およびピストン、またはベアリングのインターフェイス面が、エンジンが動作するときに互いに通りすぎる速度を意味する。この表面速度は、インターフェイス面についての潤滑レジームが境界、流体力学的または混合(境界/流体力学的)であるかどうかに影響を及ぼす主な因子である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】3つの対照油に対してサリチレート清浄剤とフェノレート清浄剤との混合物と組み合わせてグループIV基油(PAO 150)およびグループIベースオイルを含むエンジンオイルの異なる速度でのトラクション係数への影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の方法は、基油の二峰性混合物を利用する。本明細書において二峰性とは、各々が100℃で異なる動粘度を有する少なくとも2種の基油の混合物であって、少なくとも2種の基油間の100℃での動粘度の差が、少なくとも30mm/秒である混合物を意味する。少なくとも2種の基油の混合物は、100℃で少なくとも38mm/秒の動粘度を有する1種以上の高動粘度グループIV基油と組み合わされて、グループI基油からなる群から選択される、100℃で、2mm/秒から12mm/秒未満の動粘度を有する1種以上の低動粘度基油を含む。
【0042】
本明細書でおよび添付クレームで用いるところでは、用語「基油」および「ベースオイル」は、同意語としておよび同じ意味で用いられる。
【0043】
グループI基油は、約0.03%超の硫黄、約90%未満の飽和物を含有し、80〜120未満の粘度指数を有する油として、 American Petroleum Institute(米国石油協会)(API Publication(出版物)1509、www.API.org)によって分類されている。
【0044】
低動粘度流体は、単一油または油の混合物が100℃で2mm/秒から12mm/秒未満の範囲の低い動粘度を有するという条件で、単一成分油として、または油の混合物として用いることができる。
【0045】
したがって、低動粘度流体は、列挙された動粘度を満たす単一基油/油を構成することができるか、またはそれは、それぞれが列挙された動粘度限度を個々に満たす、2つ以上の基油/油で構成することができる。さらに、低動粘度流体は、生じた混合物ブレンドが、第1の低動粘度基材油の粘度範囲として列挙された100℃で2mm/秒から12mm/秒未満のターゲット低動粘度を示すという条件で、1つ、2つ以上の高動粘度基材油/油、たとえば、100℃で100mm/秒以上の動粘度の基材油/油などの、100℃で12mm/秒超の動粘度の基材油/油と組み合わせられた1つ、2つ以上の低粘度基材油、たとえば100℃で2mm/秒から12mm/秒未満の範囲の動粘度の基材油/油の混合物で構成することができる。
【0046】
二峰性ブレンド中の第2成分は、少なくとも38mm/秒の100℃での動粘度の高動粘度グループIV流体(すなわち、PAO)である。
【0047】
ポリアルファオレフィン(PAO:Polyalpha olefin)は一般に典型的には、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどのC〜約C16アルファオレフィンが好ましい状態で、C〜約C32アルファオレフィンを含むが、それらに限定されないポリアルファオレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマーまたはオリゴマーからなる。好ましいポリアルファオレフィンは、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセンおよびポリ−1−ドデセンならびにそれらの混合物および混合オレフィン由来ポリオレフィンである。
【0048】
PAO流体は、たとえば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素または三フッ化ホウ素と水、エタノール、プロパノールもしくはブタノールなどのアルコール、カルボン酸または酢酸エチルもしくはプロピオン酸エチルなどのエステルとの錯体を含むFriedel−Crafts(フリーデル−クラフツ)触媒などの重合触媒の存在下でのアルファオレフィンの重合によって便利に製造されてもよい。たとえば、米国特許第4,149,178号明細書または米国特許第3,382,291号明細書によって開示されている方法が本明細書において便利に用いられてもよい。PAO合成のその他の記載は、次の米国特許:第3,742,082号明細書、第3,769,363号明細書、第3,876,720号明細書、第4,239,930号明細書、第4,367,352号明細書、第4,413,156号明細書、第4,434,408号明細書、第4,910,355号明細書、第4,956,122号明細書、および第5,068,487号明細書に見いだされる。C14〜C18オレフィンの二量体は、米国特許第4,218,330号明細書に記載されている。
【0049】
本発明に有用なPAOはまた、メタロセン触媒作用によって製造することができる。メタロセン触媒PAO(mPAO:metallocene-catalyzed PAO)は、メタロセン触媒系による少なくとも2つのアルファオレフィンもしくはそれ以上から製造されたコポリマー、または単一のアルファオレフィン原料から製造されたホモポリマーであることができる。
【0050】
メタロセン触媒は、たとえば、メチルアルミノキサン(MAO)またはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(パーフルオロフェニル)ボレートまたはその他の等価の非配位アニオンなどの、非配位アニオンによって活性化されたまたは促進された単純メタロセン、置換メタロセンまたは架橋メタロセン触媒であることができる。mPAOおよびメタロセン触媒作用を用いるmPAOの製造方法は、国際公開第2009/123800号パンフレット、国際公開第2007/011832号パンフレット、および米国特許出願公開第2009/0036725号明細書に記載されている。
【0051】
コポリマーmPAO組成物は、C〜C30範囲の少なくとも2つのアルファオレフィンから製造され、モノマーがポリマー中にランダムに分配されている。平均炭素数は少なくとも4.1であることが好ましい。有利には、エチレンおよびプロピレンは、原料中に存在する場合、個々に50重量%未満または好ましくは合わせて50重量%未満の量で存在する。本発明のコポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマーまたは適切な立体規則性のあらゆるその他の形態であることができる。これらのコポリマーは、狭い分子量分布および優れた潤滑特性を有する。
【0052】
mPAOはまた、C〜C30線状アルファオレフィンから選択される少なくとも2つおよび26以下の異なる線状アルファオレフィンを含む混合原料線状アルファオレフィン(LAO)から製造することができる。好ましい実施形態においては、混合原料LAOは、アルミニウム触媒またはメタロセン触媒を使用するエチレン成長処理から得られる。成長オレフィンは、ほとんどC〜C18LAOを含む。その他のプロセスからのLAOもまた使用することができる。
【0053】
ホモポリマーmPAO組成物は、C〜C30範囲、好ましくはC〜C16、最も好ましくはC〜C14またはC〜C12から選択される単一のアルファオレフィンから製造される。ホモポリマーは、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックポリマーまたは適切な立体規則性のあらゆるその他の形態であることができる。多くの場合立体規則性は、選択された重合触媒および重合反応条件によってまたは選択された水素化条件によって慎重に調整することができる。これらのホモポリマーは、優れたVI、流動点、それらだけでのまたはその他の潤滑油もしくはその他のポリマーとのブレンド流体としての低温粘性(viscometrics)を含む有用な潤滑油特性を有する。さらに、これらのホモポリマーは、狭い分子量分布および優れた潤滑特性を有する。
【0054】
別の実施形態においては、アルファオレフィンは、通常のLAO製造施設からかまたは製油所からのあらゆる成分から選択することができる。それは、ホモポリマーを製造するために単独で、またはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテンなどを含む、製油所もしくは化学プラントから入手可能な別のLAOと、または専用の製造施設から製造された1−ヘキセンもしくは1−オクテンと一緒に使用することができる。別の実施形態においては、アルファオレフィンは、Fischer−Tropsch合成(米国特許第5,382,739号明細書に報告されているような)から製造されたアルファオレフィンから選択することができる。たとえば、C〜C16アルファオレフィン、より好ましくは線状アルファオレフィンがホモポリマーを製造するために好適である。C−およびC14−LAO、C−およびC16−LAO、C−、C10−、C12−LAO、またはC−およびC14−LAO、C−、C10−、C14−LAO、C−およびC12−LAOなどの、その他の組み合わせがコポリマーを製造するために好適である。
【0055】
〜C30LAOから選択されるLAOの混合物またはC〜C16LAOから選択される単一のLAOを含む原料は、潤滑油成分でのまたは機能性流体としての使用に好適な液体生成物を提供するためにオリゴマー化条件下で活性化メタロセン触媒と接触させられる。本発明はまた、C〜C30範囲の少なくとも2つのアルファオレフィンから製造された、そしてモノマーがポリマー中にランダムに分配されたコポリマー組成物に関する。語句「少なくとも2つのアルファオレフィン」は、「少なくとも2つの異なるアルファオレフィン」を意味すると理解されるであろう(そして同様に「少なくとも3つのアルファオレフィン」は「少なくとも3つの異なるアルファオレフィン」などを意味する)。
【0056】
得られた生成物は、少なくとも2つのアルファオレフィンを含む本質的にランダムの液体コポリマーである。「本質的にランダムの」とは、生成物がランダムコポリマーであると当業者が考えるであろうことを意味する。同様に用語「液体」は、温度および圧力の通常条件下で液体を意味すると当業者によって理解されるであろう。
【0057】
mPAOの一製造方法は、非配位アニオン(NCA)(式2、下記)またはメチルアルミノキサン(MAO)1111(式3、下記)などの活性化剤と一緒にメタロセン化合物(式1、下記)を含む触媒系を用いる。
【化1】

【0058】
用語「触媒系」は、メタロセン/活性化剤ペアなどの、触媒前駆体/活性化剤ペアを意味すると本明細書では定義される。「触媒系」が活性化前のそのようなペアを記載するために用いられるとき、それは、活性化剤および、任意選択的に、共活性化剤(トリアルキルアルミニウム化合物などの)と一緒の活性化されていない触媒(プレ触媒)を意味する。それが活性化後のそのようなペアを記載するために用いられるとき、それは、活性化触媒および活性化剤またはその他の電荷バランス部分を意味する。さらに、この活性化「触媒系」は、共活性化剤および/またはその他の電荷バランス部分を任意選択的に含んでもよい。任意選択的におよび多くの場合、トリアルキルアルミニウム化合物などの、共活性化剤はまた、不純物捕捉剤として使用される。
【0059】
メタロセンは、上の式1に従った1つ以上の化合物から選択される。式1において、Mは、族4遷移金属、好ましくはジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)およびチタン(Ti)から選択され、L1およびL2は独立して、置換されていても非置換であってもよい、そして部分的に水素化されていてもよい、シクロペンタジエニル(「Cp」)、インデニル、およびフルオレニルから選択される。Aは、存在する場合、好ましい実施形態においてはジアルキルシリル、ジアルキルメチル、ジフェニルシリルまたはジフェニルメチル、エチレニル(−CH−CH)、アルキルエチレニル(−CR−CR)(ここで、アルキルは独立して、C〜C16アルキルラジカルまたはフェニル、トリル、キシリルラジカルなどであることができる)から選択され、そして式中、2つのX基、XaおよびXbのそれぞれは独立して、ハライド、OR(Rは、好ましくはC〜C直鎖もしくは分岐鎖アルキル基から選択される、アルキル基である)、水素、C〜C16アルキルまたはアリール基、ハロアルキルなどから選択される。通常、比較的より高度に置換されたメタロセンは、より高い触媒生産性およびより広い生成物粘度範囲を与え、したがって多くの場合より好ましい。
【0060】
ポリアルファオレフィンは好ましくは、ASTM D1159によって測定されるように1.8以下、好ましくは1.7以下、好ましくは1.6以下、好ましくは1.5以下、好ましくは1.4以下、好ましくは1.3以下、好ましくは1.2以下、好ましくは1.1以下、好ましくは1.0以下、好ましくは0.5以下、好ましくは0.1以下の臭素価を有する。
【0061】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)は、すべての規則正しい1、2−結合に加えて式4:
【化2】

(式中、j、kおよびmはそれぞれ、独立して、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21または22であり、nは、プロトンNMRによって測定されるように1〜350(好ましくは1〜300、好ましくは5〜50)の整数である)
で表されるモノマー単位を有してもよい。
【0062】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、100,000以下、好ましくは100〜80,000、好ましくは250〜60,000、好ましくは280〜50,000、好ましくは336〜40,000g/モルのMw(重量平均分子量)を有する。
【0063】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、50,000以下、好ましくは200〜40,000、好ましくは250〜30,000、好ましくは500〜20,000g/モルのMn(数平均分子量)を有する。
【0064】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが好ましくは、1超および5未満、好ましくは4未満、好ましくは3未満、好ましくは2.5未満の分子量分布(MWD−Mw/Mn)を有する。mPAOのMWDは常に流体粘度の関数である。あるいは、本明細書において記載されるポリアルファオレフィンのどれもが好ましくは、流体粘度に依存して、1〜2.5、あるいは1〜3.5のMw/Mnを有する。
【0065】
重量平均MWと数平均MWとの比(=Mw/Mn)と定義される、分子量分布(MWD)は、「Principles of Polymer Systems」(Ferdinand Rodrigues,McGraw−Hill Book,1970による)において、p.115−144,Chapter 6,The Molecular Weight of Polymersに記載されているように、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。GPC溶媒は、30℃のカラム温度、1ml/分の流量、および1重量%の試料濃度で、安定剤なしのHPLC Gradeテトラヒドロフランであった、そしてColumn Setは、Phenogel 500 A,Linear,10E6Aである。
【0066】
本明細書において記載されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)のどれもが、分子量分布の実質的に小部分の高エンドテールを有してもよい。好ましくは、mPAOは、45,000ダルトン超の分子量を有するポリマーが5.0重量%以下である。さらにまたはあるいは、45,000ダルトン超の分子量を有するmPAOの量は、1.5重量%以下、または0.10重量%以下である。さらにまたはあるいは、60,000ダルトン超の分子量を有するmPAOの量は、0.5重量%以下、または0.20重量%以下、または0.1重量%以下である。45,000〜60,000の分子量での質量分率は、上記のような、GPCによって測定することができる。
【0067】
本明細書において記載されるあらゆるmPAOは、0℃未満(ASTM D97によって測定されるように)、好ましくは−10℃未満、好ましくは20℃未満、好ましくは−25℃未満、好ましくは−30℃未満、好ましくは−35℃未満、好ましくは−50℃未満、好ましくは−10℃〜−80℃、好ましくは−15℃〜−70℃の流動点を有してもよい。
【0068】
メタロセン触媒作用を用いて製造されるm−ポリアルファオレフィン(mPAO)は、ASTM D445によって測定されるように約1.5〜約5,000cSt、好ましくは約2〜約3,000cSt、好ましくは約3cSt〜約1,000cSt、より好ましくは約4cSt〜約1,000cSt、その上より好ましくは約8cSt〜約500cStの100℃での動粘度を有してもよい。
【0069】
本発明に有用な他のPAOとしては、米国特許第4,827,064号明細書および米国特許第4,827,073号明細書に開示されているプロセスによって製造されるものが挙げられる。低原子価状態クロム触媒を用いて製造される、それらのPAO物質は、潤滑油基油としておよび、より高い粘度グレードで、VI向上剤として有用であるための非常に望ましい特性をそれらに与える非常に高い粘度指数で特徴付けられるポリマーのオレフィンオリゴマーである。それらは、高粘度指数(High Viscosity Index)PAOまたはHVI−PAOと言われる。比較的低い分子量の高粘度PAO物質が潤滑油基油として有用であることが分かったが、より高い粘度の、典型的には100cSt以上、たとえば100〜1,000cStの範囲のPAOは従来のPAOおよびその他の合成および鉱油由来基油用の粘度指数向上剤として非常に有効であることが分かった。
【0070】
これらの高粘度PAO物質の様々な修正および変形がまた、言及される次の米国特許:第4,990,709号明細書、第5,254,274号明細書、第5,132,478号明細書、第4,912,272号明細書、第5,264,642号明細書、第5,243,114号明細書、第5,208,403号明細書、第5,057,235号明細書、第5,104,579号明細書、第4,943,383号明細書、第4,906,799号明細書に記載されている。これらのオリゴマーは、低原子価状態での担持金属である金属オリゴマー化触媒の存在下で1−オレフィンのオリゴマー化によって製造されるとして手短に要約することができる。好ましい触媒は、一酸化炭素を還元剤として使用するクロムの還元によって調製される、シリカ担体上の低原子価状態クロムを含む。オリゴマー化は、米国特許第4,827,064号明細書および同第4,827,073号明細書に記載されているように、生じるオリゴマーにとって望ましい粘度に応じて選択される温度で実施される。より高粘度物質は、約90℃より下のオリゴマー化温度がより高分子量オリゴマーを製造するために用いられている米国特許第5,012,020号明細書および米国特許第5,146,021号明細書に記載されているように製造されてもよい。すべての場合に、残存不飽和を減らすために必要なときに水素化後の、オリゴマーは、0.19未満の分岐指数(米国特許第4,827,064号明細書および同第4,827,073号明細書に定義されているような)を有する。概して、HVI−PAOは普通は約12〜5,000cStの範囲の粘度を有する。
【0071】
さらに、HVI−PAOは一般に、下記:C30〜C1300炭化水素は、0.19未満の分岐率、300〜45,000の重量平均分子量、300〜18,000の数平均分子量、1〜5の分子量分布を有する1つ以上で特徴付けることができる。特に好ましいHVI−PAOは、3〜5000mm/秒以上の範囲の100℃粘度の流体である。3mm/秒〜5000mm/秒の100℃での粘度の流体は、130超のASTM方法D2270によって計算されるVIを有する。通常それらは130〜350の範囲である。流体はすべて−15℃より下の低い流動点を有する。
【0072】
HVI−PAOは、C〜C20の1−アルケンからなる群から取られる、それだけでか混合物形態でかのどちらかでの、1−アルケンから製造されるポリマーまたはオリゴマーを含む炭化水素組成物としてさらに特徴付けることができる。原料の例は、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセンなど、またはC〜C14の1−アルケンの混合物もしくはC〜C20の1−アルケン、CおよびC12の1−アルケン、CおよびC14の1−アルケン、CおよびC16の1−アルケン、CおよびC18の1−アルケン、CおよびC10の1−アルケン、CおよびC12の1−アルケン、C、C10およびC12の1−アルケン、ならびにその他の適切な組み合わせの混合物であることができる。
【0073】
生成物は通常、600°Fより下で沸騰するもの、またはC20未満の炭素数のものなどのあらゆる低分子量組成物を、それらが重合反応から生成するかまたは出発原料から持ち込まれている場合に、除去するために蒸留される。この蒸留工程は通常、完成流体の揮発減量を向上させる。
【0074】
重合またはオリゴマー化プロセスから直接製造される流体は通常、不飽和二重結合を有するかまたはオレフィン分子構造を有する。二重結合または不飽和またはオレフィン成分の量は、臭素価(ASTM D1159)、臭素指数(ASTM D2710)などの、幾つかの方法、またはNMR、IRなどの、その他の好適な分析方法によって測定することができる。二重結合の量またはオレフィン組成物の量は、幾つかの因子−重合度、重合プロセス中に存在する水素の量および重合プロセスの停止工程に関与するその他の促進剤の量、またはプロセスにおいて存在するその他の試剤に依存する。通常、二重結合の量またはオレフィン成分の量は、重合のより高い程度、重合プロセスにおいて存在する水素ガスのより高い量、または停止工程に関与する促進剤のより高い量によって減少する。
【0075】
通常、流体の酸化安定性および光またはUV安定性は、不飽和二重結合の量またはオレフィン含有率が低下するときに向上することが知られている。それ故、ポリマーを、それが高度の不飽和を有する場合にはさらに水素化処理することが望ましい。通常、ASTM D1159によって測定されるような、5未満の臭素価の流体は、高品質基油用途向けに好適である。もちろん、臭素価が低ければ低いほど、潤滑油品質はより良好である。3または2未満の臭素価の流体が一般的である。最も好ましい範囲は、1未満または0.1未満である。不飽和度を下げるための水素化処理方法は、文献においてよく知られている(米国特許第4,827,073号明細書、実施例16)。あるHVI−PAO製品においては、重合から直接製造された流体は、100℃で150cSt超の粘度のものなど、非常に低い不飽和度を既に有する。それらは、5未満または2より下さえの臭素価を有する。これらの場合には、それは、水素化処理なしであるように使用することができるか、またはそれは、基油特性をさらに向上させるために水素化処理することができる。
【0076】
二峰性混合物の第2流体である高動粘度PAO流体は、メタロセン触媒作用または米国特許第4,827,064号明細書もしくは米国特許第4,827,073号明細書もしくは少なくとも38mm/秒の100℃での動粘度を有するPAOを製造することができるあらゆるその他のPAO合成プロセスを用いて製造される。
【0077】
PAOを製造するために用いられる技法もしくはプロセスにかかわらず、二峰性ブレンドの第2基油として使用されるPAOは、少なくとも38mm/秒、好ましくは約38〜1200mm/秒、より好ましくは約38〜600mm/秒の100℃でのKVを有する高動粘度PAOである。
【0078】
この第2高動粘度PAO油に関して、それは、列挙された動粘度限度を満たす単一成分PAO基油/油で構成することができるか、またはそれは、そのそれぞれが列挙された動粘度限度を満たす、2つ以上のPAO基油/油で構成されてもよい。逆に、この第2高動粘度PAO油は、生じた混合物ブレンドが100℃で少なくとも38mm/秒のターゲット高動粘度を満たすという条件で、1つ、2つ以上の高動粘度PAO基油油と組み合わせて1つ、2つ以上のより低い動粘度PAO基油油、たとえば、100℃で38mm/秒未満の動粘度の基材油の混合物であることができる。
【0079】
本発明は、第1基油と第2基油との間に少なくとも30mm/秒のKV(又は動粘度)の差があり、そしてスルホネート、フェノレート、サリチレート、カルボキシレート、好ましくはフェノレートおよびサリチレート、より好ましくはフェノレートとサリチレートとの混合物の1種以上のアルカリまたはアルカリ土類金属、好ましくはアルカリ土類金属、より好ましくはカルシウム清浄剤と組み合わせて、そのブレンドが、25mm/秒以下、好ましくは20mm/秒以下の100℃でのKVを有するという条件で、2種の異なるベースオイル、2mm/秒から12mm/秒未満の100℃でのKVを有する1種以上のグループIベースオイルである第1と、少なくとも38mm/秒、好ましくは38〜1200mm/秒、より好ましくは38〜600mm/秒の100℃でのKVを有する1種以上のグループIVベースオイルである第2との二峰性ブレンドを含む潤滑油を用いて、トラクション係数のその低下を達成する。清浄剤は、単一金属の塩である必要がなく、金属塩の混合物、たとえば、例としてにすぎず、限定されずに、ナトリウム塩および/またはリチウム塩および/またはカルシウム塩および/またはマグネシウム塩の混合物であることができる。清浄剤は、活性成分基準で、範囲1〜30重量%、好ましくは6超〜30重量%、より好ましくは12〜30重量%の量で存在する。好ましい清浄剤は、成分が範囲1:10〜10:1、好ましくは3:1〜1:3の重量比(活性成分)で存在するフェノレートとサリチレートとの混合物である。
【0080】
本方法は、基油が必須の二峰性ブレンド基油および清浄剤、好ましくは混合フェノレート/サリチレート清浄剤を含むという条件で、追加の性能添加剤をさらに含有する上記のエンジン潤滑油を使用することができる。
【0081】
本発明に有用な調合潤滑油は、分散剤、その他の清浄剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、その他の摩耗防止および/または極圧添加剤、膠着防止剤、ワックス改質剤、粘度指数向上剤、粘度調整剤、フルイドロス添加剤、シール融和性剤、その他の摩擦改良剤、潤滑剤、汚染防止剤、発色剤、消泡剤、乳化破壊剤、乳化剤、増密度剤、湿潤剤、ゲル化剤、粘着剤、着色剤などを含むがそれらに限定されないその他の一般的に使用される潤滑油性能添加剤の1つ以上をさらに含有してもよい。多くの一般的に使用される添加剤のレビューについては、Lubricants and Related Products,Verlag Chemie,Deerfield Beach,FL;ISBN 0−89573−177−0におけるKlamannを参照されたい。Noyes Data Corporation of Parkridge,NJ(1973)によって出版された、M.W.Ranneyによる「Lubricant Additives」にもまた言及される。
【0082】
潤滑油組成物に本発明と組み合わせて使用される性能添加剤のタイプおよび量は、例示として本明細書において示される例によって制限されない。
【0083】
粘度改良剤
粘度改良剤(粘度指数調整剤、およびVI改良剤としても知られる)は、高温および低温操作性を潤滑油に提供する。これらの添加剤は、低温で限定された影響を粘度に及ぼしながら、高められた温度で油組成物の粘度を増大させ、膜厚を増加させる。
【0084】
好適な粘度改良剤としては、高分子量炭化水素、ポリエステルならびに粘度指数向上剤および分散剤の両方として機能する粘度指数向上剤分散剤が挙げられる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約1,000〜1,000,000、より典型的には約2,000〜500,000、さらにより典型的には約2,500〜200,000である。
【0085】
好適な粘度改良剤の例は、メタクリレート、ブタジエン、オレフィン、またはアルキル化スチレンのポリマーおよびコポリマーである。ポリイソブチレンは一般的に使用される粘度改良剤である。別の好適な粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート(たとえば、様々な鎖長アルキルメタクリレートのコポリマー)であり、その幾つかの調合物はまた流動点降下剤としても役立つ。その他の好適な粘度指数向上剤としては、エチレンとプロピレンとのコポリマー、スチレンとイソプレンとの水素化ブロックコポリマー、およびポリアクリレート(たとえば、様々な鎖長アクリレートのコポリマー)が挙げられる。具体的な例としては、50,000〜200,000分子量のスチレン−イソプレンまたはスチレン−ブタジエンベースのポリマーが挙げられる。
【0086】
粘度調整剤の量は、活性成分を基準として、および使用される具体的な粘度調整剤に依存してゼロ〜10重量%、好ましくはゼロ〜6重量%、より好ましくはゼロ〜4重量%の範囲であってもよい。
【0087】
酸化防止剤
典型的な酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤および油溶性の銅錯体が挙げられる。
【0088】
フェノール系酸化防止剤としては、硫化および非硫化フェノール系酸化防止剤が挙げられる。本明細書で用いられる用語「フェノール型」または「フェノール系酸化防止剤」には、それ自体単環、たとえば、ベンジル、または多環、たとえば、ナフチリルおよびスピロ芳香族化合物であってもよい芳香環に1個または2個以上のヒドロキシル基が結合した化合物が含まれる。したがって、「フェノール型」には、フェノールそれ自体、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ナフトールなど、ならびにそれらのアルキルもしくはアルケニルおよび硫化アルキルもしくはアルケニル誘導体、およびアルキレン架橋、硫黄架橋または酸素架橋によって連結されたそのようなビフェノール化合物を含むビスフェノール型化合物が含まれる。アルキルフェノールとしては、アルキルもしくはアルケニル基が約3〜100個の炭素、好ましくは4〜50個の炭素を含有する、モノ−およびポリ−アルキルもしくはアルケニルフェノールならびにそれらの硫化誘導体が挙げられ、芳香環に存在するアルキルもしくはアルケニル基の数は、1から芳香環に結合したヒドロキシル基の数を数えた後に残る芳香環の利用可能な不充足結合価までの範囲である。
【0089】
一般に、それ故、フェノール系酸化防止剤は、一般式:
(R)−Ar−(OH)
で表されてもよく、ここで、Arは、
【化3】

からなる群から選択され、
式中、Rは、C〜C100アルキルもしくはアルケニル基、硫黄置換アルキルもしくはアルケニル基、好ましくはC〜C50アルキルもしくはアルケニル基または硫黄置換アルキルもしくはアルケニル基、より好ましくはC〜C100アルキルまたは硫黄置換アルキル基、最も好ましくはC〜C50アルキル基であり、Rは、C〜C100アルキレンまたは硫黄置換アルキレン基、好ましくはC〜C50アルキレンまたは硫黄置換アルキレン基、より好ましくはC〜Cアルキレンまたは硫黄置換アルキレン基であり、yは、少なくとも1からArの利用可能な結合価までであり、xは、0からArの利用可能な結合価−yまでの範囲であり、zは1〜10の範囲であり、nは0〜20の範囲であり、mは0〜4であり、pは0または1であり、好ましくはyは1〜3の範囲であり、xは0〜3の範囲であり、zは1〜4の範囲であり、nは0〜5の範囲であり、pは0である。
【0090】
好ましいフェノール系酸化防止化合物は、立体障害のヒドロキシル基を含有するヒンダードフェノール化合物であり、これらとしては、ヒドロキシル基が互いにo−またはp−位にあるジヒドロキシアルール化合物のそれらの誘導体が挙げられる。典型的なフェノール系酸化防止剤としては、C+アルキル基で置換されたヒンダードフェノールおよびこれらのヒンダードフェノールのアルキレン結合誘導体が挙げられる。このタイプのフェノール系物質の例2−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−t−ブチル−4−オクチルフェノール;2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール;2−メチル−6−t−ブチル−4−ドデシルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4 メチルフェノール;2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール;および2,6−ジ−t−ブチル 4 アルコキシフェノール。
【0091】
フェノール型酸化防止剤は潤滑業界においてよく知られており、Ethanox(登録商標)4710、Irganox(登録商標)1076、Irganox(登録商標)L1035、Irganox(登録商標)1010、Irganox(登録商標)L109、Irganox(登録商標)L118、Irganox(登録商標)L135などの商業例は当業者におなじみである。上記は、使用することができるフェノール系酸化防止剤のタイプに関して例示の目的で提示されているにすぎず、限定するものではない。
【0092】
芳香族アミン酸化防止剤としては、次の分子構造:
【化4】

(式中、Rは、水素またはC〜C14線状もしくはC〜C14分岐アルキル基、好ましくはC〜C10線状もしくはC〜C10分岐アルキル基、より好ましくは線状もしくは分岐C〜Cであり、nは、1〜5の範囲の整数、好ましくは1である)
で表されるフェニル−α−ナフチルアミンが挙げられる。特定例はIrganox L06である。
【0093】
その他の芳香族アミン酸化防止剤としては、式R10N[式中、Rは、脂肪族、芳香族もしくは置換芳香族基であり、Rは、芳香族もしくは置換芳香族基であり、R10は、H、アルキル、アリールまたはR11S(O)12(ここで、R11は、アルキレン、アルケニレン、もしくはアルアルキレン基であり、R12は、高級アルキル基、またはアルケニル、アリール、もしくはアルカリール基であり、xは0、1または2である)である]の芳香族モノアミンなどのその他のアルキル化および非アルキル化芳香族アミンが挙げられる。脂肪族基Rは、1〜約20個の炭素原子を含有してもよく、好ましくは約6〜12個の炭素原子を含有する。脂肪族基は飽和脂肪族基である。好ましくは、RおよびRの両方が芳香族もしくは置換芳香族基であり、芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基であってもよい。芳香族基RおよびRは、Sなどのその他の基と結合していてもよい。
【0094】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、およびデシルが挙げられる。一般に、脂肪族基は、約14個超の炭素原子を含有しないであろう。存在してもよいそのようなその他の追加アミン酸化防止剤の一般タイプとしては、ジフェニルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジルおよびジフェニルフェニレンジアミンが挙げられる。そのようなその他の追加芳香族アミンの2つ以上の混合物がまた存在してもよい。ポリマーアミン酸化防止剤もまた使用することができる。
【0095】
潤滑油組成物に使用される、そして必要なフェニル−α−ナフチルアミンに加えて存在してもよい別のクラスの酸化防止剤は、油溶性銅化合物である。あらゆる油溶性の好適な銅化合物が潤滑油に混ぜ込まれてもよい。好適な銅酸化防止剤の例としては、銅ジヒドロカルビルチオ−またはジチオ−ホスフェートおよびカルボン酸(天然起源または合成の)の銅塩が挙げられる。その他の好適な銅塩としては、銅ジチオカルバメート、スルホネート、フェノレート、およびアセチルアセトネートが挙げられる。アルケニルコハク酸または酸無水物から誘導される塩基性、中性、または酸性銅Cu(I)およびまたはCu(II)塩が特に有用であることが知られている。
【0096】
そのような酸化防止剤は、約0.50〜5重量%、好ましくは約0.75〜3重量%(到着ベースで)の量で使用されてもよい。
【0097】
分散剤
エンジン運転の間ずっと、油不溶性酸化副生物が生成する。分散剤は、これらの副生物を溶液に保つのに役立ち、こうして金属表面上へのそれらの沈着を減らす。分散剤は本来、無灰であっても灰形成性であってもよい。好ましくは、分散剤は無灰である。いわゆる無灰分散剤は、燃焼時に灰を実質的にまったく形成しない有機物質である。たとえば、金属を含有しないかまたはホウ素化された金属を含まない分散剤が無灰と考えられる。対照的に、上に議論された金属含有清浄剤は、燃焼時に灰を形成する。
【0098】
好適な分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を典型的には含有する。極性基は、窒素、酸素、またはリンの少なくとも1つの元素を典型的には含有する。典型的な炭化水素鎖は50〜400個の炭素原子を含有する。
【0099】
特に有用なクラスの分散剤は、長鎖置換アルケニルコハク酸化合物、通常は置換無水コハク酸と、ポリヒドロキシまたはポリアミノ化合物との反応によって典型的には製造される、アルケニルコハク酸誘導体である。油への溶解性を与える分子の親油性部分を構成する長鎖基は、普通はポリイソブチレン基である。このタイプの分散剤の多くの例が、商業的におよび文献においてよく知られている。
【0100】
ヒドロカルビル置換コハク酸化合物がポピュラーな分散剤である。特に、スクシンイミド、スクシネートエステル、または少なくとも50個の炭素原子を炭化水素置換基中に好ましくは有する炭化水素置換コハク酸化合物と、少なくとも1当量のアルキレンアミンとの反応によって製造されるスクシネートエステルアミドが特に有用である。
【0101】
スクシンイミド類は、アルケニル無水コハク酸とアミンとの縮合反応によって形成される。モル比は、ポリアミンに依存して変動することができる。たとえば、アルケニル無水コハク酸対TEPAのモル比は、約1:1〜約5:1で変動することができる。
【0102】
スクシネートエステルは、アルケニル無水コハク酸とアルコールまたはポリオールとの縮合反応によって形成される。モル比は、使用されるアルコールまたはポリオールに依存して変動することができる。たとえば、アルケニル無水コハク酸とペンタエリスリトールとの縮合生成物は有用な分散剤である。
【0103】
スクシネートエステルアミドは、アルケニル無水コハク酸とアルカノールアミンとの縮合反応によって形成される。たとえば、好適なアルカノールアミンとしては、エトキシル化ポリアルキルポリアミン、プロポキシル化ポリアルキルポリアミンおよびポリエチレンポリアミンなどのポリアルケニルポリアミンが挙げられる。一例は、プロポキシル化ヘキサメチレンジアミンである。
【0104】
アルケニル無水コハク酸の分子量は典型的には800〜2,500の範囲であろう。上記の生成物は、硫黄、酸素、ホルムアルデヒド、オレイン酸などのカルボン酸、およびボレートエステルまたは高ホウ素化分散剤などのホウ素化合物などの様々な試薬とポスト反応させることができる。分散剤は、分散剤反応生成物の1モル当たり約0.1〜約5モルのホウ素でホウ素化することができる。
【0105】
Mannich(マンニッヒ)塩基分散剤は、アルキルフェノール、ホルムアルデヒド、およびアミンの反応から製造される。オレイン酸およびスルホン酸などの、加工助剤および触媒はまた、反応混合物の一部であることができる。アルキルフェノールの分子量は、800〜2,500の範囲である。
【0106】
典型的な高分子量脂肪酸変性Mannich縮合生成物は、高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物またはHN(R)基含有反応剤から製造することができる。
【0107】
高分子量アルキル置換ヒドロキシ芳香族化合物の例は、ポリプロピルフェノール、ポリブチルフェノール、およびその他のポリアルキルフェノールである。これらのポリアルキルフェノールは、平均600〜100,000の分子量を有するフェノールのベンゼン環上にアルキル置換基を与えるための高分子量ポリプロピレン、ポリブチレン、およびその他のポリアルキレン化合物でのフェノールの、BFなどの、アルキル化触媒の存在下での、アルキル化によって得ることができる。
【0108】
HN(R)基含有反応剤の例は、アルキレンポリアミン、主にポリエチレンポリアミンである。Mannich縮合生成物の製造での使用に好適な少なくとも1つのHN(R)基を含有するその他の代表的な有機化合物はよく知られており、モノ−およびジ−アミノアルカンおよびそれらの置換類似体、たとえば、エチルアミンおよびジエタノールアミン;芳香族ジアミン、たとえば、フェニレンジアミン、ジアミノナフタレン;複素環アミン、たとえば、モルホリン、ピロール、ピロリジン、イミダゾール、イミダゾリジン、およびピペリジン;メラミンおよびそれらの置換類似体を含む。
【0109】
アルキレンポリアミン反応剤の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタアミン、ヘプタエチレンオクタアミン、オクタエチレンノナアミン、ノナエチレンデカミン、およびデカエチレンウンデカミンならびに、前述の、式HN−(Z−NH−)Hの、アルキレンポリアミンに相当する窒素含有率を有するそのようなアミンの混合物が挙げられ、前述の式のZは二価エチレンであり、nは1〜10である。プロピレンジアミンおよびジ−、トリ−、テトラ−、ペンタプロピレントリ−、テトラ−、ペンタ−およびヘキサアミンなどの相当するプロピレンポリアミンもまた好適な反応剤である。アルキレンポリアミンは通常、アンモニアとジクロロアルカンなどの、ジハロアルカンとの反応によって得られる。このように、2〜11モルのアンモニアと2〜6個の炭素原子および異なる炭素上に塩素を有する1〜10モルのジクロロアルカンとの反応から得られるアルキレンポリアミンが好適なアルキレンポリアミン反応剤である。
【0110】
本発明に有用な高分子生成物の製造に有用なアルデヒド反応剤としては、ホルムアルデヒド(また、パラホルムアルデヒドおよびホルマリンとして)、アセトアルデヒドおよびアルドール(β−ヒドロキシブチルアルデヒド)などの脂肪族アルデヒドが挙げられる。ホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド生成反応剤が好ましい。
【0111】
好ましい分散剤としては、ヒドロカルビルスクシンイミドが、約500〜約5000のMnを有するポリイソブチレンなどのヒドロカルビレン基またはそのようなヒドロカルビレン基の混合物から誘導される、モノ−スクシンイミド、ビス−スクシンイミド、および/またはモノ−とビス−スクシンイミドとの混合物からのそれらの誘導体を含む、ホウ素化および非ホウ素化スクシンイミドが挙げられる。その他の好ましい分散剤としては、コハク酸エステルおよびアミド、アルキルフェノール−ポリアミン結合Mannich付加体、それらのキャップド誘導体、ならびにその他の関連成分が挙げられる。そのような添加剤は、全潤滑油の重量を基準として約0.1〜20重量%、好ましくは約0.1〜8重量%、より好ましくは約1〜6重量%(到着ベースで)の量で使用されてもよい。
【0112】
流動点降下剤
通常の流動点降下剤(潤滑油流動性向上剤としても知られる)がまた存在してもよい。流動点降下剤は、流体が流れるであろうまたは注ぐことができる最低温度を低くするために添加されてもよい。好適な流動点降下剤の例としては、アルキル化ナフタレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、およびジアルキルフマレートと、脂肪酸のビニルエステルとアリルビニルエーテルとのターポリマーが挙げられる。
【0113】
そのような添加剤は、到着ベースで約0.0〜0.5重量%、好ましくは約0〜0.3重量%、より好ましくは約0.001〜0.1重量%の量で使用されてもよい。
【0114】
腐食防止剤/金属不活性化剤
腐食防止剤は、潤滑油組成物と接触している金属部品の分解を減らすために使用される。好適な腐食防止剤としては、アリールチアジン、アルキル置換ジメルカプトチオジアゾールチアジアゾールおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0115】
そのような添加剤は、潤滑油組成物の総重量を基準として約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%、より好ましくは約0.01〜0.2重量%、さらにより好ましくは約0.01〜0.1重量%(到着ベースで)の量で使用されてもよい。
【0116】
シール融和性添加剤
シール融和性剤は、流体における化学反応またはエラストマーにおける物理的変化を引き起こすことによってエラストマーシールを膨潤させるのに役立つ。潤滑油のための好適なシール融和性剤としては、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭化水素、エステル(たとえば、ブチルベンジルフタレート)、およびポリブテニル無水コハク酸が挙げられる。そのような添加剤は、到着ベースで約0.01〜3重量%、好ましくは約0.01〜2重量%の量で使用されてもよい。
【0117】
消泡剤
消泡剤が潤滑油組成物に有利に添加されてもよい。これらの試剤は安定な泡の形成を阻害する。シリコーンおよび有機ポリマーが典型的な消泡剤である。たとえば、シリコンオイルまたはポリジメチルシロキサンなどの、ポリシロキサンが消泡特性を提供する。消泡剤は商業的に入手可能なであり、乳化破壊剤などのその他の添加剤と一緒に慣例の少量で使用されてもよく;通常、組み合わせたこれらの添加剤の量は、潤滑油組成物の総重量を基準として1パーセント未満、好ましくは0.001〜約0.5重量%、より好ましくは約0.001〜約0.2重量%、さらにより好ましくは約0.0001〜0.15重量%(到着ベースで)である。
【0118】
阻害剤および防錆添加剤
防錆添加剤(または腐食防止剤)は、潤滑される金属表面を水またはその他の汚染物質による化学攻撃から防護する添加剤である。1つのタイプの防錆添加剤は、優先的に金属表面を湿らせ、それを油膜で防護する極性化合物である。別のタイプの防錆添加剤は、油だけが表面に触れるように、油中水エマルジョンにそれを組み入れることによって水を吸収する。その上別のタイプの防錆添加剤は、金属に化学的に付着して非反応性表面を生成する。好適な添加剤の例としては、ジチオリン酸亜鉛、金属フェノレート、塩基性金属スルホネート、脂肪酸およびアミンが挙げられる。そのような添加剤は、到着ベースで約0.01〜5重量%、好ましくは約0.01〜1.5重量%の量で使用されてもよい。
【0119】
摩耗防止添加剤もまた有利に存在することができる。摩耗防止添加剤は、金属が亜鉛またはモリブデンであることができる金属ジチオホスフェート、金属ジチオカルバメート、金属ジアルキルジチオホスフェート、金属ザンテートで例示される。トリクレジルホスフェートは別のタイプの摩耗防止添加剤である。そのような摩耗防止添加剤は、300ppm以下のリンが完成油に関与する約0.05〜1.5重量%、好ましくは約0.1〜1.0重量%、より好ましくは約0.2〜0.5重量%の量で存在することができる。
【実施例】
【0120】
比較例および実施例
一連のエンジンオイルを、基油組成物および清浄剤がトラクション係数に及ぼす影響に関して評価した。エンジンオイルは、商業的に入手可能な油か添加基油ブレンドかのどちらかであった。トラクション係数は、完全自動Mini Traction Machineトラクション測定機器であるMTM Traction Rigを用いて測定した。このリグは、PCS Instrumentsによって製造され、Model MTMと特定される。試験検体および装置構成は、非常に大きい負荷、モーターまたは構造体を必要とすることなく、現実的な圧力、温度および速度を達成できるようなものである。流体の小試料(50ml)を試験セルに入れ、機械は、実用介入なしに試験流体についての包括的なトラクションマップを作成するために様々な速度、スライド対ロール比、温度および負荷にわたって自動的に作動する。標準試験検体は、AISI 52100軸受鋼から製造された研磨19.05mm球および50.0mm直径ディスクである。検体は、一回使用の、使い捨て品であるように設計されている。球をディスクの面を背にしてロードし、球とディスクとをDCサーボモーターおよび駆動装置によって独立して駆動して、特に低いスライド/ロール比で高精度の速度制御を可能にする。各検体を、小さいステンレススチール試験流体浴中でシャフト上に末端で取り付ける。ディスク試験検体を支える垂直シャフトおよび駆動システムを固定する。しかし、球試験検体を支えるシャフトおよび駆動システムは、それが2つの直交軸回りを回転できるようにジンバル配置で支える。1つの軸は負荷適用方向に垂直であり、もう1つはトラクション力方向に垂直である。球およびディスクを同じ方向に駆動する。負荷の適用およびトラクション力の抑制を、ジンバル配置に適切に取り付けた高剛性力変換器によって行って全体支持システム偏向を最小限にする。これらの力変換器からの出力をパソコンによって直接監視する。トラクション係数は、トラクション力対適用負荷の比である。図1に示されるように、トラクション係数を様々な速度にわたって測定した。図1において、x軸上の速度は、球およびディスク速度の合計の半分である、エントレインメント速度である。これらのエントレインメント速度は、エンジンが動作中であるときに達する、表面速度の範囲、または表面速度の範囲の少なくとも一部をシミュレートしている。
【0121】
本特許出願において示される試験結果は、次の条件下で生み出された:
【0122】
【表1】

【0123】
潤滑油を表1に記載する。
【0124】
【表2】

【0125】
図1を参照することによって理解できるように、油I、清浄剤、この場合にはカルシウムフェノレートとサリチル酸カルシウムとの混合物(約2.5:1の活性成分比)を含有するグループI基油(4mm/秒の100℃でのKV)とグループIV基油(PAO150 約150mm/秒の100℃でのKV)との混合物を含む70塩基価シリンダー油は、少なくとも60mm/秒およびそれ以上の速度で対照油A、BおよびCと比べて著しく低下したトラクション係数を示した。
【0126】
油Iはまた、非常に低い速度(約3〜8mm/秒)下で対照油Aと比べて低下したトラクション係数をもたらした。
【0127】
対照油Aは、グループI(12mm/秒)/PIB(2200MW)ベースオイル組み合わせ中のその他の添加剤とのフェノレート/スルホネート清浄剤組み合わせを利用する商業油である。
【0128】
対照油Bは、フェノレート/サリチレート清浄剤組み合わせと対照油Aおよび油Iと同じその他の添加剤とを利用するが、グループIベースオイルの二峰性ブレンドを使ってであった。この油は、対照油Aと本質的に同等のトラクション係数性能をもたらす。
【0129】
対照油Cは、対照油Bおよび油Iと同じ清浄剤およびその他の添加剤を利用するが、グループI(12mm/秒)とグループIV(PAO 150)ベースオイルとの二峰性ブレンドを使ってであった。対照油Aまたは対照油Bと比べてトラクション係数における有意の利益はまったく見られない。
【0130】
これらのデータに基づいて、油Iの二峰性グループI/グループIVベースオイルブレンドのグループIベースオイルの動粘度は、対照油Aを超えて著しいトラクション係数改善をもたらすためには12mm/秒未満でなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種の異なるベースオイル、
100℃で2mm/秒から12mm/秒未満の動粘度を有するグループIベースオイルからなる群から選択される1種以上のオイルである第1ベースオイルと、
100℃で少なくとも38mm/秒の動粘度を有するグループIVベースオイルから選択される1種以上のオイルから選択される第2ベースオイル
との二峰性ブレンドを含むベースオイルを含み、
前記第1ベースオイルと第2ベースオイルとの間の動粘度の差は、少なくとも30mm/秒であり、
活性成分に基づいて1〜30重量%の範囲の量で、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属スルホネート、フェノレート、サリチレート又はカルボキシレートからなる群から選択される1種以上の清浄剤を含有し、
100℃で25mm/秒以下の動粘度を有する潤滑油を、
エンジンオイルとして用いることにより、エンジンを潤滑するために使用されるエンジンオイルのトラクション係数を低下させることによって、
エンジンオイルにより潤滑され、少なくとも3mm/秒の表面速度に達する、大きな低速及び中速エンジンの燃料経済性を向上させる方法であって、
前記燃料経済性の向上は、グループIベースオイルもしくはグループIベースオイルとPIBとの混合物に基づくエンジンオイル又は二峰性でないエンジンオイルと比較して、そのエンジンオイルが、より低い摩擦係数を有することによって立証される方法。
【請求項2】
前記清浄剤が、アルカリ及び/又はアルカリ土類金属サリチレートとアルカリ及び/又はアルカリ土類金属フェノレートと混合物からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フェノレートとサリチレートとの重量比が10:1〜1:10の範囲にある請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記グループIV基油が、メタロセン触媒作用を用いて製造されるmPAOである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第2ベースオイルが、45,000ダルトンを超える分子量を有する5.0重量%以下のポリマーで特徴付けられるPAOベースオイルである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−518939(P2013−518939A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551340(P2012−551340)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/022980
【国際公開番号】WO2011/094582
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】