説明

トラクタ

【課題】前輪変速機構の操作油路からの油圧取り出しを動力ロスの発生を抑制しながら行なえるトラクタを提供する。
【解決手段】人為選択弁66によって操作油路61に対する開き状態と閉じ状態に切換え操作される人為選択取出し油路70と、牽制弁67によって操作油路61に対する開き状態と閉じ状態に切換え操作される牽制取出し油路71と、自動選択弁68によって操作油路61に対する開き状態と閉じ状態に切換え操作される自動選択取出し油路72と、操作油路61に接続されたリリーフ油路73とを設けてある。人為選択取出し油路70、牽制取出し油路71、自動選択取出し油路72及びリリーフ油路73から油圧取出しを行なう油圧取出し油路74を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操向操作自在な前輪を後輪の周速度と同等の周速度で駆動する標準駆動状態と前記後輪の周速度より速い周速度で駆動する増速駆動状態とに切換え自在な前輪変速機構を、前記標準駆動状態にスプリングによって切換え操作され、前記増速駆動状態に油圧アクチュエータによって切換え操作される状態で設け、前記油圧アクチュエータを油圧ポンプに接続する操作油路に、前記油圧ポンプからの油圧を前記油圧アクチュエータに供給する給油位置と前記油圧アクチュエータから油圧を排出する排油位置とに切換え自在な人為選択弁、牽制弁及び自動選択弁を直列に並べて設け、前記牽制弁を、走行用の変速機構が低速伝動状態にあると前記給油位置に自動的に切換え操作され、前記変速機構が高速伝動状態にあると前記排油位置に自動的に切換え操作されるように、前記変速機構に連係させ、前記自動選択弁を、前記前輪が設定切れ角以上の操向状態にあると前記給油位置に自動的に切換え操作され、前記前輪が前記設定切れ角未満の操向状態にあると前記排油位置に自動的に切換え操作されるように、前輪操向機構に連係させたトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したトラクタは、畦際などにおける小旋回半径での旋回走行を可能にしたり、小旋回半径での旋回走行を牽制したりするものである。
すなわち、作業時など低速走行する場合、人為選択弁を給油位置に切換えておけば、畦際などで旋回走行する際、前輪を設定切れ角以上の操向状態に操向操作するだけで小旋回半径で旋回走行できる。つまり、前輪が設定切れ角以上に操向操作されて自動選択弁が給油位置に自動的に切換え操作されることにより、そして変速機構が低速伝動状態に変速されていて牽制弁が給油位置に切換えられていることにより、油圧アクチュエータに油圧が供給されて前輪変速機構が増速駆動状態に切換えられ、前輪が後輪より速い周速度で駆動される。
【0003】
作業時など低速走行する場合でも、人為選択弁を排油位置に切換えておけば、前輪を設定切れ角以上の操向状態に操向操作して自動選択弁が給油位置に切換え操作されても、そして変速機構が低速伝動状態に変速されていて牽制弁が給油位置に切換え操作されていても、人為選択弁が排油位置になっていることにより、油圧アクチュエータに油圧が供給されなくて前輪変速機構が標準駆動状態に維持され、前輪が後輪と同等の周速度で駆動されて旋回半径が標準の旋回半径になる。
【0004】
移動時など高速走行する場合、人為選択弁が給油位置に切換えられていても、前輪が設定切れ角以上の切れ角に操向操作されて自動選択弁が給油位置に切換え操作されても、変速機構が高速伝動状態に変速されていて牽制弁が排油位置に切換え操作されていることにより、油圧アクチュエータに油圧が供給されずに前輪変速機構が標準駆動状態に維持され、前輪が後輪と同等の周速度で駆動されて旋回半径が標準の旋回半径になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−263170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種のトラクタとして、従来、例えば特許文献1に記載されたものがあった。特許文献1に記載されたものでは、前輪変速機構を増速駆動状態にバネに抗して切換え操作する油圧アクチュエータとしてのピストン部材を備え、人為選択弁としての自動変速選択バルブ、牽制弁としての牽制バルブ、自動選択弁としての前輪制御バルブを備えている。
【0007】
この種のトラクタにあっては、油圧アクチュエータと油圧ポンプに接続する操作油路にリリーフ弁を有するリリーフ油路を接続し、操作油路によって油圧アクチュエータに油圧供給する際の油圧が前輪変速機構をスプリングに抗して増速駆動状態に切換え得る油圧となるように、リリーフ弁によって油圧の設定を行なうように構成され、かつ、前輪変速機構が増速駆動状態に切り換わった後において油圧ポンプから操作油路に供給される油圧をリリーフ油路によって操作油路から排出するように構成される。
油圧ポンプから操作油路に供給される油圧を操作油路から取り出して静油圧式無段変速装置などに供給するのに、リリーフ油路から取り出すよう構成した場合、前輪変速機構を標準駆動状態に維持するよう油圧アクチュエータに対する油圧供給が行われない時においても、リリーフ弁を介して油圧を取り出すことになり、前輪変速機構が標準駆動状態に維持されている際の油圧ポンプの駆動による動力ロスが発生しがちであった。
【0008】
本発明の目的は、操作油路からの油圧取り出しを動力ロスの発生を抑制しながら行なえるトラクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本第1発明は、操向操作自在な前輪を後輪の周速度と同等の周速度で駆動する標準駆動状態と前記後輪の周速度より速い周速度で駆動する増速駆動状態とに切換え自在な前輪変速機構を、前記標準駆動状態にスプリングによって切換え操作され、前記増速駆動状態に油圧アクチュエータによって切換え操作される状態で設け、
前記油圧アクチュエータを油圧ポンプに接続する操作油路に、前記油圧ポンプからの油圧を前記油圧アクチュエータに供給する給油位置と前記油圧アクチュエータから油圧を排出する排油位置とに切換え自在な人為選択弁、牽制弁及び自動選択弁を直列に並べて設け、
前記牽制弁を、走行用の変速機構が低速伝動状態にあると前記給油位置に自動的に切換え操作され、前記変速機構が高速伝動状態にあると前記排油位置に自動的に切換え操作されるように、前記変速機構に連係させ、
前記自動選択弁を、前記前輪が設定切れ角以上の操向状態にあると前記給油位置に自動的に切換え操作され、前記前輪が前記設定切れ角未満の操向状態にあると前記排油位置に自動的に切換え操作されるように、前輪操向機構に連係させたトラクタにおいて、
前記排油位置に切換えられた前記人為選択弁によって前記操作油路に対する開き状態に操作されて前記操作油路からの油圧取出しが可能となり、前記給油位置に切換えられた前記人為選択弁によって前記操作油路に対する閉じ状態に操作される人為選択取出し油路と、
前記排油位置に切換えられた前記牽制弁によって前記操作油路に対する開き状態に操作されて前記操作油路からの油圧取出しが可能となり、前記給油位置に切換えられた前記牽制弁によって前記操作油路に対する閉じ状態に操作される牽制取出し油路と、
前記排油位置に切換えられた前記自動選択弁によって前記操作油路に対する開き状態に操作されて前記操作油路からの油圧取出しが可能となり、前記給油位置に切換えられた前記自動選択弁によって前記操作油路に対する閉じ状態に操作される自動選択取出し油路と、
前記油圧アクチュエータに供給される油圧を設定するリリーフ弁を有した状態で前記操作油路に接続されたリリーフ油路と、
前記人為選択取出し油路、前記牽制選択取出し油路、前記自動選択取出し油路及び前記リリーフ油路から油圧取出しを行なう油圧取出し油路とを設けてある。
【0010】
本第1発明の構成によると、前輪変速機構を標準駆動状態に維持するよう油圧アクチュエータに対する油圧供給が行なわれない場合、人為選択弁、牽制弁及び自動選択弁の3つ又は2つ又は1つが排油位置に切換えられていたり排油位置に切換え操作されたりして、人為選択取出し油路、牽制取出し油路及び自動選択取出し油路の3つ又は2つ又は1つが対応する人為選択弁又は牽制弁又は自動選択弁によって操作油路に対する開き状態に操作されていたり操作されたりする。人為選択取出し油路、牽制取出し油路及び自動選択取出し油路の3つ又は2つが操作油路に対する開き状態に操作されていたり操作されたりした場合、油圧ポンプから操作油路に供給される油圧を、人為選択取出し油路、牽制取出し油路及び自動選択取出し油路のうち、操作油路に最上流側で連通している人為選択取出し油路又は牽制取出し油路又は自動選択取出し油路によって取り出し、この取出し油圧を油圧取出し油路によって取り出すことができる。人為選択取出し油路、牽制取出し油路及び自動選択取出し油路のうちの1つが操作油路に対する開き状態に操作されていたり操作されたりした場合、油圧ポンプから操作油路に供給される油圧を、操作油路に対する開き状態に操作されている人為選択取出し油路又は牽制取出し油路又は自動選択取出し油路によって取り出し、この取出し油圧を油圧取出し油路によって取り出すことができる。
【0011】
人為選択弁、牽制弁及び自動選択弁が給油位置に切換えられていたり切換え操作されたりした場合、人為選択取出し油路、牽制取出し油路及び自動選択取出し油路が人為選択弁又は牽制弁又は自動選択弁によって操作油路に対する閉じ状態に操作されていたり操作されたりして、操作油路から油圧アクチュエータに油圧が供給され、油圧アクチュエータに供給される油圧がリリーフ弁によって前輪変速機構の増速駆動状態への切換え操作に必要なものに設定され、前輪変速機構がスプリングに抗して増速駆動状態に切換え操作される。前輪変速機構が増速駆動状態に切り換わると、この後、油圧ポンプから操作油路に供給される油圧を、リリーフ油路に排出させてリリーフ油路から油圧取出し油路によって取り出すことができる。
【0012】
従って、前輪変速機構が標準駆動状態に維持されている場合、人為選択取出し油路又は牽制取出し油路又は自動選択取出し油によってリリーフ弁を介することなく取り出してリリーフ弁によって発生する取出し抵抗を受けずに済ませ、前輪変速機構が標準駆動状態に維持される場合の油圧ポンプの駆動負荷を軽減できる。
【0013】
本第2発明は、前記リリーフ油路を、前記人為選択弁、前記牽制弁及び前記自動選択弁のうちの操作油路最上流側に位置する弁よりも下流側で前記操作油路に接続してある。
【0014】
本第2発明の構成によると、リリーフ油路を人為選択取出し油路又は牽制取出し油路又は人為選択取出し油路の近くにコンパクトに配備して、弁ブロックをコンパクトに得ることができる。
【0015】
本第3発明は、前記リリーフ油路を、前記操作油路の前記人為選択弁、前記牽制弁及び前記自動選択弁よりも上流側に位置する部位に接続してある。
【0016】
本第3発明の構成によると、油圧ポンプから操作油路に供給される油圧を、人為選択弁、牽制弁及び自動選択弁による流動抵抗を受けない状態でリリーフ油路に取り出すことができ、前輪変速機構が増速駆動状態に操作される場合の油圧ポンプの駆動負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トラクタの全体を示す側面図である。
【図2】走行駆動装置を示す概略図である。
【図3】前輪伝動構造を示す縦断側面図である。
【図4】増速駆動状態での前輪変速機構を示す縦断側面図である。
【図5】標準駆動状態での前輪変速機構を示す縦断側面図である。
【図6】前輪変速機構の変速操作を可能にする油圧回路図である。
【図7】第1の別実施構造を備えた油圧回路図である。
【図8】第2の別実施構造を備えた油圧回路図である。
【図9】第3の別実施構造を備えた油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係るトラクタの全体を示す側面図である。この図に示すように、トラクタは、左右一対の操向操作及び駆動自在な前輪1,1と左右一対の駆動自在な後輪2,2とによって自走するように構成され、かつ車体前部に設けたエンジン3、運転座席4a及びステアリングハンドル4bを有した運転部4が装備された自走車を備え、自走車の車体フレーム5の後部を構成するミッションケース6に左右一対のリフトアーム7a,7aによって上下に揺動操作されるように構成して設けられたリンク機構7を備え、ミッションケース6の後部に車体後方向きに突設された動力取り出し軸8を備えており、車体後部にリンク機構7を介してロータリ耕耘装置(図示せず)が連結され、動力取り出し軸8からロータリ耕耘装置にエンジン3の出力を伝達するように構成されることにより、乗用型耕耘機を構成する。
【0019】
車体フレーム5の前部を構成するエンジン支持フレーム9に支持される前輪駆動ケース10の内部に、左右一対の前輪1,1を差動可能に駆動する前輪差動機構11を設け、ミッションケース6の後部内に、左右一対の後輪2,2を差動可能に駆動する後輪差動機構12を設け、前輪差動機構11及び後輪差動機構12にエンジン3の出力を伝達して前輪1及び後輪2を駆動する走行駆動装置を図2に示す如く構成してある。
【0020】
すなわち、走行駆動装置は、エンジン3の出力軸3aからの出力を、主クラッチ13及び伝動軸14を介して主変速用の静油圧式無段変速装置15を構成する油圧ポンプPが備えるポンプ軸15aに伝達し、静油圧式無段変速装置15を構成する油圧モータMが備えるモータ軸15bによる出力を、副変速用の変速機構16の入力軸16aに伝達し、変速機構16の出力軸16bの駆動力を、出力軸16bの後端部から後輪差動機構12の入力ギヤ12aに伝達し、副変速用の変速機構16の出力軸16bの駆動力を、出力軸16bの前端部に設けた出力ギヤG7からミッションケース6に装備した前輪用出力軸17、前輪用出力軸17の前端部から車体前方向きに延出する伝動軸18を介して前輪変速機構20の入力軸21に伝達し、前輪変速機構20の出力軸22の駆動力を、出力軸22の前端部に設けた出力ギヤG13から伝動軸19を介して前輪差動機構11の入力ギヤ11aに伝達する。
【0021】
静油圧式無段変速装置15は、ミッションケース6の前部に装着されている。前輪用出力軸17の後端部にクラッチギヤG8を一体回転及び摺動操作自在に設けてある。クラッチギヤG8は、摺動操作されて出力ギヤG7に咬合させられることにより、出力軸16bと前輪用出力軸17とを連動させるように入り状態になり、摺動操作されて出力ギヤG7から離脱することにより、出力軸16bと前輪用出力軸17の連動を絶つように切り状態になる。トラクタは、クラッチギヤG8が入り状態に切換え操作されることにより、前輪1及び後輪2が駆動される四輪駆動状態になり、クラッチギヤG8が切り状態に切換え操作されることにより、後輪2が駆動されて前輪1が駆動されない二輪駆動状態になる。
【0022】
動力取り出し軸8にエンジン3の駆動力を伝達する作業駆動装置を、図2に示す如く構成してある。
【0023】
作業駆動装置は、静油圧式無段変速装置15のポンプ軸15aの駆動力を、ポンプ軸15aの後端部から作業クラッチ30、伝動軸31、連結スリーブ32、伝動軸33及びギヤ機構34を介して動力取出し軸8に伝達する。作業駆動装置は、ミッションケース6の前端側の下部から車体前方向きに突出するミッド作業装置用の動力取り出し軸35を備え、この動力取り出し軸35に、作業クラッチ30からギヤ機構36を介して伝動する。
【0024】
副変速用の変速機構16は、入力軸16aにスプライン嵌合されたシフトギヤG1がシフト操作されることによって出力軸16bの駆動速度を作業用の低速側の2段と移動走行用の高速側の1段との計3段階の変速伝動状態に変速するようになっている。
【0025】
詳述すれば、入力軸16aの前後には大径遊嵌ギヤG2と小径遊嵌ギヤG3が装着され、出力軸16bには大径遊嵌ギヤG2に常時咬合する小径ギヤG4と小径遊嵌ギヤG3に常時咬合する大径ギヤG5が固着されている。出力軸16bにはシフトギヤG1に直接咬合可能な中径ギヤG6が固着されている。シフトギヤG1を後方にシフトしてそのボス部を小径遊嵌ギヤG3のボス部に咬合連結することで、小径遊嵌ギヤG3と大径ギヤG5とのギヤ比での伝動により、低速伝動状態の第1速がもたらされる。シフトギヤG1を前後中間位置にまでシフトして中径ギヤG6に直接咬合させることで、シフトギヤG1と中径ギヤG6とのギヤ比での伝動により、低速伝動状態の第2速がもたらされる。低速伝動状態の第2速は、低速伝動状態の第1速より高速である。シフトギヤG1を前方にシフトしてそのボス部を大径遊嵌ギヤG2のボス部に咬合連結することで、大径遊嵌ギヤG2と小径ギヤG4とのギヤ比での伝動により、低速伝動状態の第1及び第2速よりも高速の高速伝動状態がもたらされる。
【0026】
図3に示すように、クラッチハウジング40には主クラッチ13を収容する乾式のクラッチ室41と、このクラッチ室41と隔絶された湿式(オイルバス潤滑式)の変速室42とが備えられており、この変速室42に、前輪変速機構20が装備されている。
【0027】
図2,3,4,5に示すように、前輪変速機構20は、変速室42に入力軸21と出力軸22を車体前後向きにかつ平行に設け、入力軸21の後端側と出力軸22とに亘って摩擦クラッチ51を備える増速伝動機構50を設け、入力軸21の前端側と出力軸22とに亘って咬合いクラッチ56を備える標準伝動機構55を設けて構成してある。
【0028】
増速伝動機構50は、入力軸21に一体回転自在に設けた大径ギヤG9と、この大径ギヤG9に常時咬合された状態で出力軸22に相対回転自在に支持される小径遊転ギヤG11とを備えている。増速伝動機構50を構成する摩擦クラッチ51は、小径遊転ギヤG11に一体回転自在に設けたスプラインボス部52と出力軸22に一体回転自在に設けたクラッチドラム53とに亘って設けた多板式の摩擦クラッチ本体51aを備え、この摩擦クラッチ本体51aがクラッチドラム53に内装した油圧アクチュエータとしての油圧ピストン54によって加圧操作されることにより、入り状態に切り換え操作され、小径遊転ギヤG11と出力軸22とをスプラインボス部52、摩擦クラッチ本体51a及びクラッチドラム53を介して一体回転するように連動させる。摩擦クラッチ51は、摩擦クラッチ本体51aの油圧ピストン54による加圧操作が解除されることにより、スプリング59によって切り状態に切換え操作され、小径遊転ギヤG11と出力軸22の相対回転を可能にする。
【0029】
標準伝動機構55は、入力軸21に一体回転自在に設けた小径ギヤG10と、この小径ギヤG10に常時咬合された状態で出力軸22に相対回転自在に支持される大径遊転ギヤG12とを備えている。標準伝動機構55を構成する咬合いクラッチ56は、大径遊転ギヤG12の側部に設けたクラッチ爪56a、及びクラッチドラム53のボス部53aにスプライン係合を介して一体回転及び摺動操作自在に支持されるシフト部材57に設けたクラッチ爪56bを備えている。シフト部材57と油圧ピストン54とは、クラッチドラム53に設けたピン孔を摺動自在に挿通する連結ピン58によって一体摺動自在に連結されている。咬合いクラッチ56は、クラッチドラム53に内装したスプリング59の弾性復元力による油圧ピストン54及び連結ピン58を介してのシフト部材57の摺動操作によって大径遊転ギヤG12のクラッチ爪56aとシフト部材57のクラッチ爪56bとが咬合い操作されることにより、入り状態に切換え操作され、大径遊転ギヤG12と出力軸22とをシフト部材57及びクラッチドラム53を介して一体回転するように連動させる。咬合いクラッチ56は、油圧ピストン54によるスプリング59に抗して、かつ連結ピン58を介してのシフト部材57の摺動操作によって大径遊転ギヤG12のクラッチ爪56aとシフト部材57のクラッチ爪56bとの咬合いが解除されることにより、切り状態に切換え操作され、大径遊転ギヤG12と出力軸22の相対回転を可能にする。
【0030】
従って、前輪変速機構20は、油圧ピストン54による摩擦クラッチ51の入り状態への切換え操作によって増速駆動状態に切換え操作され、スプリング59による咬合いクラッチ56の入り状態への切換え操作によって標準駆動状態に切換え操作される。
【0031】
図4は、増速駆動状態での前輪変速機構20を示す縦断側面図である。この図に示すように、前輪変速機構20は、出力軸22及びバルブケーシング60の内部を通る操作油路61からクラッチドラム53の縦壁部53bと油圧ピストン54の間に油圧が供給されると、油圧ピストン54が油圧によってスプリング59に抗して縦壁部53bから離れる側に摺動操作され、摩擦クラッチ本体51aが油圧ピストン54によって加圧操作されて摩擦クラッチ51が入り状態に切換え操作されることで増速駆動状態に切り換わる。この場合、油圧ピストン54が連結ピン58を介してシフト部材57をクラッチドラム53の縦壁部53bが位置する側に摺動操作して咬合いクラッチ56が切り状態になる。前輪変速機構20は、増速駆動状態に切り換わると、変速機構16から入り状態のクラッチギヤG8、前輪出力軸17、伝動軸18を介して入力軸21に伝達される駆動力を増速伝動機構50によって出力軸22に伝達し、出力軸22の駆動力を出力ギヤG13から伝動軸19を介して前輪差動機構11に伝達して、左右一対の前輪1,1の平均周速度が左右一対の後輪2,2の平均周速度より速い平均周速度になるようにして左右前輪1を駆動する。
【0032】
図5は、標準駆動状態での前輪変速機構20を示す縦断側面図である。この図に示すように、前輪変速機構20は、クラッチドラム53の縦壁部53bと油圧ピストン54の間に供給されて油圧ピストン54を縦壁部53bから離れる側に操作している油圧が操作油路61によって排出されると、油圧ピストン54がスプリング59によってクラッチドラム53の縦壁部53bが位置する側に摺動操作され、シフト部材57が連結ピン58及び油圧ピストン54を介して作用するスプリング59によってクラッチドラム53の縦壁部53bから離れる側に摺動操作されて咬合いクラッチ56を入り状態に切換え操作することで標準駆動状態に切り換わる。この場合、摩擦クラッチ51がスプリング59による油圧ピストン54の摺動操作によって切り状態に切り換わる。前輪変速機構20は、標準駆動状態に切り換わると、変速機構16から入り状態のクラッチギヤG8、前輪出力軸17、伝動軸18を介して入力軸21に伝達される駆動力を標準伝動機構55によって出力軸22に伝達し、出力軸22の駆動力を出力ギヤG13から伝動軸19を介して前輪差動機構11に伝達して、左右一対の前輪1,1の平均周速度が左右一対の後輪2,2の平均周速度と同等(あるいは若干速い周速度)の平均周速度になるようにして左右前輪1を駆動する。
【0033】
図6は、前輪変速機構20の変速操作を可能にする油圧回路図である。図5,6に示すように、前輪変速機構20の変速操作を可能にする油圧回路は、前記油圧ピストン54と油圧ポンプ65の吐出部とを接続する操作油路61に人為選択弁66、牽制弁67及び自動選択弁68を直列に並べて設けて、人為選択弁66に油圧取出し側端部70aが接続された人為選択取出し油路70と、牽制弁67に油圧取出し側端部71aが接続された牽制取出し油路71と、自動選択弁68に油圧取出し側端部72aが接続された自動選択取出し油路72と、操作油路61の人為選択弁66、牽制弁67及び自動選択弁68より上流側に位置する部位に接続されたリリーフ油路73とを備えて、人為選択取出し油路70の排出側端部70bと牽制取出し油路71の排出側端部71bと自動選択取出し油路72の排出側端部72bとリリーフ油路73の排出側端部73bのそれぞれに上流側が接続された油圧取出し油路74を備えて構成してある。
【0034】
操作油路61は、前輪変速機構20の出力軸22の内部に形成された軸内油路61aと、人為選択弁66、牽制弁67及び自動選択弁68が装備されたバルブケーシング60の内部に形成されたケーシング内油路61bと、ケーシング内油路61bと前輪操向機構80の吐出部81とを接続する前輪変速機構側の給油路61cと、前輪操向機構80のポンプポート部82と油圧ポンプ65の吐出部とを接続する油圧ポンプ側の給油路61dとを備えて構成してある。
【0035】
前輪操向機構80は、ステアリングハンドル4bが回転操作されることにより、コントロールバルブ84が操作され、パワーシリンダ85が油圧ポンプ65からの油圧によって駆動されてピットマンアーム86を揺動操作するようにパワステアリング形式になっている。前輪操向機構80には、ポンプポート部82からコントロールバルブ84に至る給油路とコントロールバルブ84から吐出部81に至る排油路とに接続され、リリーフ弁87aが備えられたリリーフ油路87を設けてある。
【0036】
人為選択弁66は、運転部4に設けた操作具66a(図1参照)の人為操作によって給油位置Aと排油位置Bとに切換え操作される。人為選択弁66は、給油位置Aに切換え操作されると、油圧ポンプ65からの油圧を油圧ピストン54に供給するように、操作油路61におけるケーシング内油路61bの人為選択弁66より上流側の部位と下流側の部位とを連通させる。人為選択弁66は、排油位置Bに切換え操作されると、油圧ピストン54から油圧を排出するように、ケーシング内油路61bの人為選択弁66より下流側の部位をミッションケース6への排油路75に連通させる。人為選択弁66は、排油位置Bに切換え操作されると、人為選択取出し油路70をケーシング内油路61bの人為選択弁66より上流側の部位に対する開き状態に切換え操作し、人為選択取出し油路70による操作油路61からの油圧取出しを可能にする。人為選択弁66は、給油位置Aに切換え操作されると、人為選択取出し油路70を操作油路61におけるケーシング内油路61bに対する閉じ状態に切換え操作する。
【0037】
牽制弁67は、給油位置Aと排油位置Bとに切換え自在に構成され、連係機構90によって副変速用の変速機構16に連係されている。連係機構90は、牽制弁67を、変速機構16の人為操作自在な変速レバー16aに連係させることによって変速機構16に連係させている。牽制弁67は、変速機構16が低速伝動状態の第1速及び第2速に変速された場合、連係機構90によって給油位置Aに自動的に切換え操作され、変速機構16が高速伝動状態に変速された場合、連係機構90によって排油位置Bに自動的に切換え操作される。
【0038】
牽制弁67は、給油位置Aに切換え操作されると、油圧ポンプ65からの油圧を油圧ピストン54に供給するように、操作油路61におけるケーシング内油路61bの牽制弁67より上流側の部位と下流側の部位とを連通させる。牽制弁67は、排油位置Bに切換え操作されると、油圧ピストン54から油圧を排出するように、操作油路61におけるケーシング内油路61bの牽制弁67より下流側の部位をミッションケース6への排油路75に連通させる。牽制弁67は、排油位置Bに切換え操作されると、牽制取出し油路71をケーシング内油路61cの牽制弁67より上流側の部位に対する開き状態に切換え操作し、牽制取出し油路71による操作油路61からの油圧取出しを可能にする。牽制弁67は、給油位置Aに切換え操作されると、牽制取出し油路71を操作油路61におけるケーシング内油路61bに対する閉じ状態に切換え操作する。
【0039】
自動選択弁68は、給油位置Aと排油位置Bとに切換え自在に構成され、連係機構91によって前輪操向機構80に連係されている。連係機構91は、自動選択弁68に連動された電動アクチュエータ(図示せず)を制御する制御手段91aと、前輪操向機構80にピットマンアーム86の揺動角を検出するように設けた回転ポテンショメータで成る揺動角センサ91bとを備えて構成してある。制御手段91aは、揺動角センサ91bによる検出角を基に前輪1の切れ角を検出し、この検出結果を基に電動アクチュエータを制御することによって自動選択弁68を切換え操作する。
【0040】
従って、自動選択弁68は、前輪1が直進位置から設定切れ角以上の操向状態にある場合、連係機構91によって給油位置Aに自動的に切換え操作され、前輪1が設定切れ角未満の操向状態にある場合、連係機構91によって排油位置Bに自動的に切換え操作される。実施例では、設定切れ角として35度を設定してあり、前輪1の設定切れ角未満の操向状態は、直進向きから35度までの揺動範囲で揺動操作された状態となる。
【0041】
自動選択弁68は、給油位置Aに切換え操作されると、油圧ポンプ65からの油圧を油圧ピストン54に供給するように、操作油路61におけるケーシング内油路61bの自動選択弁66より上流側の部位と下流側の部位とを連通させる。自動選択弁68は、排油位置Bに切換え操作されると、油圧ピストン54から油圧を排出するように、ケーシング内油路61bの自動選択弁68より下流側の部位をミッションケース6への排油路75に連通させる。自動選択弁68は、排油位置Bに切換え操作されると、自動選択取出し油路72をケーシング内油路61bの自動選択弁68より上流側の部位に対する開き状態に切換え操作し、自動選択取出し油路72による操作油路61からの油圧取出しを可能にする。自動選択弁68は、排油位置Bに切換え操作されると、自動選択取出し油路72を操作油路61におけるケーシング内油路61bに対する閉じ状態に切換え操作する。
【0042】
油圧取出し油路74の吐出側端部は静油圧式無段変速装置15が備えるチャージ油路76の入力ポート76aに接続されており、油圧取出し油路74は、人為選択取出し油路70、牽制取出し油路71及び自動選択取出し油路72によって操作油路61から取出された油圧、及びリリーフ油路73によって操作油路61から排出された油圧を取出して静油圧式無段変速装置15に補充用の作動油として供給する。
【0043】
静油圧式無段変速装置15のチャージ油路76は、油圧ポンプPと油圧モータMを接続する一対の駆動回路15c,15cにわたって接続されたメインチャージ油路部76bと、前記メインチャージ油路部76bと入力ポート76aを接続する導入油路部76cとを備えている。メインチャージ油路部76bは、導入油路部76cが接続している部位から一方の駆動回路15cに至る油路部分と導入油路部76cが接続している部位から他方の駆動回路15cに至る油路部分とのそれぞれに並列接続の状態で介装された逆止弁77a、リリーフ弁77b及び絞り77cを備えている。導入油路部76cのメインチャージ油路部76bに接続している部位と入力ポート76aとの間に、リリーフ弁78aを備えたドレン油路78が接続されている。
【0044】
リリーフ油路73の取出側端部は、操作油路61におけるケーシング内油路1bの自動選択弁68に接続する部位と前輪操向機構80の吐出部81に接続する部位との間に接続されている。
【0045】
従って、作業時など低速走行する場合、クラッチギヤG8を入り状態に切換えて自走車を四輪駆動状態に切換えておけば、そして人為選択弁66を給油位置Aに切換えておけば、畦際などで旋回走行する際、前輪1を設定切れ角以上の切れ角に操向操作するだけで小旋回半径で旋回走行できる。
【0046】
すなわち、前輪1が設定切れ角以上に操向操作されると、自動選択弁68が連係機構91によって給油位置Aに自動的に切換え操作され、変速機構16が低速伝動状態の第1速又は第2速に変速されていて牽制弁67が連係機構90によって給油位置Aに切換えられていることにより、油圧ポンプ65からの油圧が操作油路61によって油圧ピストン54に供給され、油圧ピストン54に供給される油圧がリリーフ油路73が有するリリーフ弁73aによって前輪変速機構20の増速駆動状態への切換えに必要な油圧に設定されることにより、前輪変速機構20が油圧ピストン54によって増速駆動状態に切換えられ、前輪1が後輪2より速い周速度で駆動される。前輪変速機構20が増速駆動状態に切換えられると、この後、リリーフ油路73がリリーフ弁73aによって開き操作されて操作油路61からリリーフ油路73に油圧が排出され、リリーフ油路73に排出された圧油が油圧取出し油路74によってリリーフ油路73から取出されて静油圧式無段変速装置15に補充用の作動油として供給される。
【0047】
作業時など低速走行する場合でも、人為選択弁66を排油位置Bに切換えておけば、前輪1を設定切れ角以上の切れ角に操向操作して自動選択弁68が連係機構91によって給油位置Aに切換え操作されても、旋回半径が標準の旋回半径になる。
【0048】
すなわち、変速機構16が低速伝動状態の第1速又は第2速に変速されていて牽制弁67が連係機構90によって給油位置Aに切換え操作されていても、人為選択弁66が排油位置Bになって人為選択取出し油路70が操作油路61に対する開き状態になっていることにより、油圧ポンプ65から操作油路61に供給される油圧が人為選択取出し油路70によって取出されて油圧ピストン54に供給されず、前輪変速機構20がスプリング59によって標準駆動状態に維持されて前輪1が後輪2と同等の周速度で駆動される。このとき、人為選択取出し油路70によって操作油路61から取出された油圧が、油圧取出し油路74によって人為選択取出し油路70から取出されて静油圧式無段変速装置15に補充用の作動油として供給される。
【0049】
移動時など高速走行する場合、人為選択弁66が給油位置Aに切換えられていても、前輪1が設定切れ角以上の切れ角に操向操作されて自動選択弁68が連係機構91によって給油位置Aに切換え操作されても、旋回半径が標準の旋回半径になる。
【0050】
すなわち、変速機構16が高速伝動状態に変速されていて牽制弁67が連係機構90によって排油位置Bに切換え操作されて牽制取出し油路71が操作油路61に対する開き状態になっていることにより、油圧ポンプ65から操作油路61に供給される油圧が牽制取出し油路71によって取出されて油圧ピストン54に供給されず、前輪変速機構20がスプリング59によって標準駆動状態に維持されて前輪1が後輪2と同等の周速度で駆動される。このとき、牽制取出し油路71によって操作油路61から取出された油圧が、油圧取出し油路74によって牽制取出し油路71から取り出されて静油圧式無段変速装置15に補充用の作動油として供給される。
【0051】
前輪1が設定切れ角未満の操向状態にある場合、人為選択弁66及び牽制弁67が給油位置Aに切換えられていても、自動選択弁68が連係機構91によって排油位置Bに切換え操作されていて自動選択取出し油路72が自動選択弁68によって操作油路61に対する開き状態に切換えられており、油圧ポンプ65から操作油路61に供給される油圧が自動選択取出し油路72によって操作油路61から取出され、自動選択取出し油路72に取出された油圧が油圧取出し油路74によって自動選択取出し油路72から取出されて静油圧式無段変速装置15に補充用の作動油として供給される。
【0052】
つまり、倍速作動条件が成立した時のみ、油圧ピストン54に必要な圧力を立てて前輪変速機構20を増速駆動状態に切換え、不成立の条件では油圧ピストン54に圧力を立てないで前輪変速機構20を標準駆動状態に切換える油圧回路になっている。
【0053】
図7は、第1の別実施構造を備えた油圧回路図である。この図に示すように、第1の別実施構造を備えた油圧回路では、リリーフ油路73を、操作油路61の自動選択弁68と牽制弁67との間に位置する部位に接続してある。
【0054】
すなわち、リリーフ油路73の取出側端部が操作油路61の自動選択弁68と牽制弁67の間の部位に接続されている。リリーフ油路73の排出側端部73bが、油圧取出し油路74の上流側のうちの牽制取出し油路71の排出側端部71bに接続している部位と自動選択取出し油路72の排出側端部72bに接続している部位との間に接続されている。
【0055】
図8は、第2の別実施構造を備えた油圧回路図である。この図に示すように、第2の別実施構造を備えた油圧回路では、リリーフ油路73を、操作油路61の牽制弁67と人為選択弁66との間に位置する部位に接続してある。
【0056】
すなわち、リリーフ油路73の取出側端部が操作油路61の人為選択弁66と牽制弁67の間の部位に接続されている。リリーフ油路73の排出側端部73bが、油圧取出し油路74の上流側のうちの人為選択取出し油路70の排出側端部70bに接続している部位と牽制取出し油路71の排出側端部71bに接続している部位との間に接続されている。
【0057】
図9は、第3の別実施構造を備えた油圧回路図である。この図に示すように、第3の別実施構造を備えた油圧回路では、リリーフ油路73を、自動選択弁66、牽制弁67及び人為選択弁66のうちの最下流側に位置する弁66よりも下流側の部位で操作油路61に接続してある。
【0058】
すなわち、リリーフ油路73の取出側端部が操作油路61の人為選択弁66と油圧ピストン54の間の部位に接続されている。リリーフ油路73の排出側端部73bが、油圧取出し油路74の人為選択取出し油路70の排出側端部70bに接続している部位と静油圧式無段変速装置15の入力ポート76aに接続している部位の間に接続されている。
【0059】
〔別実施例〕
(1)上記した各実施例では、人為選択弁66より上流側に牽制弁67が位置し、牽制弁67より上流側に自動選択弁68が位置する配列で人為選択弁67、牽制弁67及び自動選択弁68を操作油路61に設けた例を示したが、人為選択弁66が最上流側に位置する配列や、牽制弁67が最上流側に位置する配列など、人為選択弁66、牽制弁67及び自動選択弁68が並ぶ順序が種々異なる配列を採用して実施してもよい。
【0060】
(2)上記した実施例では、油圧取出し油路74を静油圧式無段変速装置15に対して油圧供給するよう構成した例を示したが、リフトアーム7aを昇降操作する油圧シリンダに供給するよう構成したり、アースブレイカーなどの各種の油圧駆動型の作業装置の駆動用に供給するよう構成したりして実施してもよい。
【0061】
(3)上記した実施例では、牽制弁67を副変速用の変速機構16に連係させた例を示したが、主変速用の変速機構としての静油圧式無段変速装置15に連係させて実施してもよい。
【0062】
(4)上記した実施例では、牽制弁67と変速機構16が機械式の連係機構90によって連係される例を示したが、電気式の連係機構によって連係されるように構成してもよい。
【0063】
(5)上記した実施例では、自動選択弁68と前輪操向機構80が電気式の連係機構91によって連係される例を示したが、カム機構やリンク機構を採用した機械式の連係機構によって連係されるように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、乗用型耕耘機を構成するトラクタの他、暗渠形成機や肥料散布機など各種の作業機を構成するトラクタに利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 前輪
2 後輪
16 変速機構
20 前輪変速機構
54 油圧アクチュエータ
59 スプリング
61 操作油路
65 油圧ポンプ
66 人為選択弁
67 牽制弁
68 自走選択弁
70 人為選択取出し油路
71 牽制取出し油路
72 自動選択取出し油路
73 リリーフ油路
73a リリーフ弁
74 油圧取出し油路
80 前輪操向機構
A 給油位置
B 排油位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向操作自在な前輪を後輪の周速度と同等の周速度で駆動する標準駆動状態と前記後輪の周速度より速い周速度で駆動する増速駆動状態とに切換え自在な前輪変速機構を、前記標準駆動状態にスプリングによって切換え操作され、前記増速駆動状態に油圧アクチュエータによって切換え操作される状態で設け、
前記油圧アクチュエータを油圧ポンプに接続する操作油路に、前記油圧ポンプからの油圧を前記油圧アクチュエータに供給する給油位置と前記油圧アクチュエータから油圧を排出する排油位置とに切換え自在な人為選択弁、牽制弁及び自動選択弁を直列に並べて設け、
前記牽制弁を、走行用の変速機構が低速伝動状態にあると前記給油位置に自動的に切換え操作され、前記変速機構が高速伝動状態にあると前記排油位置に自動的に切換え操作されるように、前記変速機構に連係させ、
前記自動選択弁を、前記前輪が設定切れ角以上の操向状態にあると前記給油位置に自動的に切換え操作され、前記前輪が前記設定切れ角未満の操向状態にあると前記排油位置に自動的に切換え操作されるように、前輪操向機構に連係させたトラクタであって、
前記排油位置に切換えられた前記人為選択弁によって前記操作油路に対する開き状態に操作されて前記操作油路からの油圧取出しが可能となり、前記給油位置に切換えられた前記人為選択弁によって前記操作油路に対する閉じ状態に操作される人為選択取出し油路と、
前記排油位置に切換えられた前記牽制弁によって前記操作油路に対する開き状態に操作されて前記操作油路からの油圧取出しが可能となり、前記給油位置に切換えられた前記牽制弁によって前記操作油路に対する閉じ状態に操作される牽制取出し油路と、
前記排油位置に切換えられた前記自動選択弁によって前記操作油路に対する開き状態に操作されて前記操作油路からの油圧取出しが可能となり、前記給油位置に切換えられた前記自動選択弁によって前記操作油路に対する閉じ状態に操作される自動選択取出し油路と、
前記油圧アクチュエータに供給される油圧を設定するリリーフ弁を有した状態で前記操作油路に接続されたリリーフ油路と、
前記人為選択取出し油路、前記牽制選択取出し油路、前記自動選択取出し油路及び前記リリーフ油路から油圧取出しを行なう油圧取出し油路とを設けてあるトラクタ。
【請求項2】
前記リリーフ油路を、前記人為選択弁、前記牽制弁及び前記自動選択弁のうち操作油路最上流側に位置する弁よりも下流側で前記操作油路に接続してある請求項1記載のトラクタ。
【請求項3】
前記リリーフ油路を、前記操作油路の前記人為選択弁、前記牽制弁及び前記自動選択弁よりも上流側に位置する部位に接続してある請求項1記載のトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−236454(P2012−236454A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105342(P2011−105342)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】