説明

トラバーサ装置

【課題】省力化施工、重労働の軽減、作業の効率化が図れるよう非牽引車両を送り出せるトラバーサ装置を提供する。
【解決手段】非牽引車両7が走行するレール3と直交方向に移動可能なトラバーサ装置10であって、当該トラバーサ装置10上の被牽引車両7に係合して、その被牽引車両7を送り出す送り出し装置13を備える。この送り出し装置13は、トラバーサ11上面を移動するチェーン14に固定され、被牽引車両7の車体下に備えられた当板部71・72に当接する送り出し金具15を備える。この送り出し金具15は、被牽引車両7の後車輪軸受部に備えた第1の当板部71を押して1回目の送り出しが行われ、被牽引車両7の車体後部下に備えた第2の当板部72を押して2回目の送り出しが行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非牽引車両の送り出しを行うトラバーサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネル工事において、立坑内での被牽引車両の入れ替え等のため、トンネルと平行に配置された車両載置用のレールを、立坑内でトンネルと直交方向に移動可能にしたトラバーサ装置が用いられる(例えば特許文献1参照)。
従来、トラバーサ装置上の被牽引車両を、トンネル内に敷設したレールに移動させる場合、バッテリー車による牽引車両の牽引により行ったり、小型ウインチを用いて牽引したり、あるいは、手押しで送り出したりしていた。
また、非牽引車両の下面にラックを備えておき、レール間から油圧や空気圧装置によりモータ及び駆動ピニオンを上昇させて、ラックに駆動ピニオンを噛み合わせることで、ラック・ピニオンギヤを用いた送り機構を構成して、非牽引車両を送り出すようにしたものもある。
なお、トラバーサ装置は他の工事現場や製造ライン等でも用いられる。
【特許文献1】特開2005−290678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、トラバーサ装置上の被牽引車両を入れ替え等するため、牽引車両(バッテリー車)で牽引するのは車両に搭載したバッテリーが消費されてしまう問題があり、小型ウインチで牽引するのはレール間へのウインチの固定という面倒な作業を必要とする問題があり、手押しで送り出すのは重労働となる問題がある。
また、前述したラック・ピニオンギヤを用いた送り機構は、設備が大掛かりでコストが高くなる問題がある。
【0004】
本発明の課題は、省力化施工、重労働の軽減、作業の効率化が図れるよう非牽引車両を送り出せるトラバーサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、非牽引車両が走行するレールと直交方向に移動可能なトラバーサ装置であって、当該トラバーサ装置上の前記被牽引車両に係合して、その被牽引車両を送り出す送り出し装置を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のトラバーサ装置であって、前記送り出し装置は、トラバーサ上面を移動するチェーンに固定され、前記被牽引車両の車体下に備えられた当板部に当接する送り出し金具を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のトラバーサ装置であって、前記送り出し金具は、前記被牽引車両の後車輪軸受部に備えた第1の前記当板部を押して1回目の送り出しが行われ、前記被牽引車両の車体後部下に備えた第2の前記当板部を押して2回目の送り出しが行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トラバーサ装置上の被牽引車両に係合する送り出し装置により、その被牽引車両を送り出すことができ、省力化施工、重労働の軽減、作業の効率化を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
図1は本発明を適用した一実施形態の構成としてトラバーサ装置の配置箇所を例示したもので、1は立坑、2はシールドトンネル、3は本線レール、4は待機ステージ、5は待機レール、6は牽引車両、7は被牽引車両、8は直交レール、10はトラバーサ装置である。
【0010】
すなわち、立坑1から発進した図略のシールド機によりシールドトンネル2が構築され、シールドトンネル2には本線レール3が敷設されている。また、立坑1内には待機ステージ4が構築され、待機ステージ4上には本線レール3と平行する待機レール5が多数列敷設されている。シールドトンネル2の本線レール3において、バッテリー駆動車による牽引車両6が被牽引車両7を牽引して走行する。非牽引車両7としては、ずりを搬出する図示のような吊り上げ鋼車とセグメントを搬入する図略の平台車とがある。
【0011】
そして、立坑1内において、本線レール3と待機レール5との間には、本線レール3と直交方向の直交レール8上を移動するトラバーサ装置10が配置されている。
トラバーサ装置10は、図2に示すように、直交レール8を走行する車輪を備えるトラバーサ11上に、本線レール3と平行するレール12及びチェーン式送り出し装置13を左右二対ずつ備えている。チェーン式送り出し装置13は、各レール12組の中央に配置されたチェーン14に、図3に示すように、送り出し金具15を備えている。
【0012】
送り出し金具15は、図4に示すように、チェーン14にボルト・ナット結合して固定したブラケット16に対しボルト・ナット結合による支点部17を支点に揺動自在に支持された幅広形状のものである。この送り出し金具14は、矢印で示したチェーン移動方向に隣接してチェーン14にボルト・ナット結合して固定したブラケット18に固定されたロッド19が、送り出し金具14の支点部17より下方に突き当たることで、矢印で示したチェーン移動方向への移動に対して起立状態に保持されるが、ロッド19と反対側から送り出し金具14に外力が作用すると、送り出し金具14は支点部17を支点に矢印で示したチェーン移動方向に倒れる。
【0013】
以上の送り出し金具15は、図5に示すように、チェーン14の対称位置に一対備えられている。
チェーン14は、トラバーサ11内に軸受けした前後一対のスプロケット41に掛け渡されて、トラバーサ11内に搭載した駆動モータ42によりベルト・プーリ機構を介して回転駆動される。すなわち、駆動モータ42に備える駆動プーリ43と、スプロケット41と同軸上に備える従動プーリ44とにVベルト45が掛け渡されている。
このような駆動機構によるチェーン14の対称位置(図5(b)参照)に送り出し金具15が一対備えられている。
【0014】
また、トラバーサ11内には、直交レール8を走行する前後左右の車輪21が軸受けされて、その前後の一方の車輪21が、トラバーサ11内に搭載した左右の走行モータ22によりギヤ機構を介して同期して回転駆動される。すなわち、走行モータ22に備える駆動ギヤ23と車輪21と同軸上に備える従動ギヤ24とが噛み合わされている。
このような駆動機構により、前後の一方の車輪21が同期して回転駆動されて、トラバーサ11が直交レール8上を走行する。
なお、トラバーサ11の両側面の前後に、立坑1内での移動限界での緩衝用のゴムバッファ25が取り付けられている。
【0015】
図6は被牽引車両7の車体下に備えられる当板部71・72を示したもので、被牽引車両7には、図示のように、前後の車輪軸受部の中央に下方へ突出する第1の当板部71が備えられていて、前後の車体端部の中央に下方へ突出する第2の当板部72が備えられている。
このような被牽引車両の車体下に備えられた第1及び第2の当板部71・72に対し、トラバーサ装置10のチェーン式送り出し装置13のチェーン14の対称位置に一対備えられた送り出し金具15が突き当てられる。
【0016】
次に、以上のトラバーサ装置10とその前後の本線レール3及び待機レール5と被牽引車両7を示した図7に基づいてトラバーサ装置10の作用を説明する。
先ず、図7(a)は、説明の便宜上、トラバーサ装置10とその前後の本線レール3及び待機レール5に被牽引車両7が配置された場合を示したもので、走行モータ22の駆動によりトラバーサ11を直交レール8上に移動して、適宜の待機レール5にトラバーサ11のレール12の位置を合わせておく。
【0017】
そして、図示のように、待機レール5上の被牽引車両7を手押しによりトラバーサ11のレール12上に移動してから、そのトラバーサ11のレール12上の被牽引車両7をチェーン式送り出し装置13により本線レール3上に送り出す。
ここで、トラバーサ11上には左右二対のレール12が備えられており、その左右二対のレール12上に待機レール5上の被牽引車両7を手押しによりそれぞれ移動しておく。
【0018】
次の送り出しに先立って、走行モータ22の駆動によりトラバーサ11を直交レール8上に移動して、本線レール3にトラバーサ11の一方のレール12の位置を合わせておく。
続いて、チェーン式送り出し装置13の駆動モータ42の駆動によりトラバーサ11上でチェーン14を本線レール3に向けて回転移動させることで、図示のように、チェーン14に備えた送り出し金具15が、非牽引車両7の後車輪軸受部中央の下方へ突出した第1の当板部71に突き当たってから、非牽引車両7が本線レール3上に送り出される。この送り出しは、送り出し金具15がチェーン14の回転駆動により先端部から下方に没するまで行われる。
このような送り出し1回目を図7(b)に示している。
【0019】
引き続いて、回転駆動されるチェーン14の後端部から次の送り出し金具15が上方に突出して、非牽引車両7の車体後部中央の下方へ突出した第2の当板部72に突き当たってから、図示のように、非牽引車両7が本線レール3上にさらに送り出される。この送り出し2回目も、送り出し金具15がチェーン14の回転駆動により先端部から下方に没するまで行われる。
このような送り出し2回目を図7(c)に示している。
【0020】
その後、図7(d)に示したように、本線レール3上において、非牽引車両7を手押しして、トラバーサ装置10上の車両とぶつからない位置まで移動させておく。
このように、本線レール3上で被牽引車両7の手押しによる補足移動を行う。
以上、トラバーサ装置10上の被牽引車両7のチェーン式送り出し装置13による本線レール3上への1回目及び2回目の送り出しと手押しによる補足移動を繰り返す。
【0021】
以上のとおり、実施形態によれば、トラバーサ装置10上、トラバース11のレール12上の被牽引車両7に係合するチェーン式送り出し装置13により、そのチェーン14に備えた送り出し金具15を、非牽引車両7の第1及び第2の当板部71・72に係合させて、被牽引車両7を送り出すことができる。
従って、省力化施工、重労働の軽減、作業の効率化を合理的に達成できる。
【0022】
なお、以上の実施形態においては、シールドトンネル工事の立坑内で用いるトラバーサ装置としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の工事現場や製造ライン等で用いられるトラバーサ装置であっても良い。
また、送り出し金具や当板部の形状等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した一実施形態の構成としてトラバーサ装置の配置箇所を例示した概略平面図(a)及び同側面図(b)である。
【図2】図1のトラバーサ装置を含む設備の斜視図である。
【図3】図2のトラバーサ装置のレール及び送り出し機構部の拡大図である。
【図4】図3の送り出し機構の送り出し金具を示した斜視図である。
【図5】図2のトラバーサ装置の構成を示すもので、送り出し装置を説明するために透視状態で示した平面図(a)、正面図(b)及び側面図(c)である。
【図6】被牽引車両の車体下に備えられる当板部を示した斜視図である。
【図7】実施形態のトラバーサ装置及びその前後の設備と被牽引車両を示したもので、トラバーサ装置及びその前後の設備に被牽引車両が配置された場合を示した図(a)、送り出し1回目を示した図(b)、送り出し2回目を示した図(c)及び手押しによる補足移動を示した図(d)である。
【符号の説明】
【0024】
1 立坑
2 シールドトンネル
3 本線レール
4 待機ステージ
5 待機レール
6 牽引車両
7 被牽引車両
71 第1の当板部
72 第2の当板部
8 直交レール
10 トラバーサ装置
11 トラバーサ
12 レール
13 チェーン式送り出し装置
14 チェーン
15 送り出し金具
16 ブラケット
17 支点部
18 ブラケット
19 ロッド
21 車輪
22 走行モータ
23 駆動ギヤ
24 従動ギヤ
25 ゴムバッファ
41 スプロケット
42 駆動モータ
43 駆動プーリ
44 従動プーリ
45 Vベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非牽引車両が走行するレールと直交方向に移動可能なトラバーサ装置であって、
当該トラバーサ装置上の前記被牽引車両に係合して、その被牽引車両を送り出す送り出し装置を備えることを特徴とするトラバーサ装置。
【請求項2】
前記送り出し装置は、トラバーサ上面を移動するチェーンに固定され、前記被牽引車両の車体下に備えられた当板部に当接する送り出し金具を備えることを特徴とする請求項1に記載のトラバーサ装置。
【請求項3】
前記送り出し金具は、前記被牽引車両の後車輪軸受部に備えた第1の前記当板部を押して1回目の送り出しが行われ、前記被牽引車両の車体後部下に備えた第2の前記当板部を押して2回目の送り出しが行われることを特徴とする請求項2に記載のトラバーサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−13745(P2009−13745A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179869(P2007−179869)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】