説明

トランスジェニック微生物のポリヒドロキシアルカノエート産生

【課題】染色体上に組み込まれた、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(PHA)形成に必要な遺伝子を含む、トランスジェニック微生物株を提供する。
【解決手段】チオラーゼ、レダクターゼ、PHBシンターゼ、PHAシンターゼ、アシル−CoAトランスフェラーゼ、およびエノイル−CoAヒドラターゼからなる群より選択されるPHAの合成に関与する少なくとも1つの遺伝子は、標準的な技術、好ましくは、トランスポゾン変異誘発を用いて組み込まれる。複数の遺伝子が組み込まれる好ましい実施態様において、この遺伝子は、オペロンとして組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)の生合成の分野にあり、そしてより詳細には、ポリヒドロキシアルカノエートの商業的生産に有用な、改良された微生物株に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)(PHA)は、広範な範囲の細菌によって合成される生物学的ポリエステルである。これらのポリマーは生分解性であり、そして生体適合性熱可塑性物質であり、再生可能資源から産生され、広範な範囲の産業的適用および生物医学的適用を有する(WilliamsおよびPeoples,CHEMTECH 26:38−44(1996)。PHA生体高分子は、本来、単一のホモポリマーであると考えられているもの(ポリ−3−ヒドロキシブチレート(PHB))から、異なるモノマー組成および広範な範囲の物理的特徴を有する広範なポリエステルが現れている。約100の異なるモノマーが、PHAポリマーへと組み込まれている(SteinbuchelおよびValetin,FEMS Microbiol.Lett.128:219−28(1995))。
【0003】
PHAを、その側鎖の長さおよびその生合成経路に従って、2つの群へと分割することが有用であった。短い側鎖を有するもの(例えば、PHB:R−3−ヒドロキシ酪酸単位のホモポリマー)は、結晶性熱可塑性であり、一方、長い側鎖を有するPHAは、よりエラストマー性である。前者は、約70年間知られてきた(LemoigneおよびRoukhelman、1925)が、後者の物質は、比較的最近発見された(deSmetら、J.Bacteriol.154:870−78(1983))。しかし、この指摘の前に、(R)−3−ヒドロキシ酪酸単位およびより長い側鎖の(R)−3−ヒドロキシ酸単位(C〜C16)の両方を含む微生物起源のPHAが同定されている(WallenおよびRohweder,Environ.Sci.Technol.8:576−79(1974))。(R)−3−ヒドロキシ酪酸および5〜16の炭素原子を含む1つ以上の長い側鎖のヒドロキシ酸単位のコポリマーを産生する多数の細菌が同定されている(SteinbuchelおよびWiese,Appl.Microbiol.Biotechnol.37:691−97(1992);Valentinら、Appl.Microbiol.Biotechnol.36:507−14(1992);Valentinら、Appl.Microbiol.Biotechnol.40:710−16(1994);Abeら、Int.J.Biol.Macromol.16:115−19(1994);Leeら、Appl.Microbiol.Biotechnol.42:901−09(1995);Katoら、Appl.Microbiol.Biotechnol.45:363−70(1996);Valentinら、Appl.Microbiol.Biotechnol.46:261−67(1996);Doiらに対する米国特許第4,876,331号)。上記に概説される2つの生合成経路の組み合わせは、ヒドロキシ酸モノマーを提供する。これらのコポリマーは、PHB−co−HX(ここでXは、6以上の炭素の3−ヒドロキシアルカノエートまたはアルカノエートまたはアルケノエートである)と言及され得る。特定の2成分のコポリマーの有用な例は、PHB−co−3−ヒドロキシヘキサノエート(PHB−co−3HH)である(Brandlら、Int.J.Biol.Macromol.11:49−55(1989);AmosおよびMaInerey,Arch.Microbiol.155:103−06(1991);Shiotaniらに対する米国特許第5,292,860号)。
【0004】
これらの参考文献における微生物の多くによるPHA産生は、増殖培地の複雑性、冗長な発酵プロセス、または特定の細菌株の下流プロセシングの困難性のために、商業的に有用ではない。Escherichia coliのような早く増殖する生物を用いる遺伝子操作されたPHA産生系が開発されてきた。遺伝子操作はまた、野生型PHA産生微生物の改良を可能にして、特定のコポリマーの産生を改良するか、または異なる基質特異性もしくは天然の系に対する速度論特性さえ有するPHA生合成酵素を添加することによって異なるPHAポリマーを産生する能力を誘導する。これらの型の系の例は、SteinbuchelおよびValentin,FEMS Microbiol.Lett.128:219−28(1995)に記載される。PCT WO98/04713は、遺伝子操作を用いて分子量を制御して、PHAシンターゼ酵素のレベルを制御するための方法を記載する。PHAを産生するために商業的に有用な株(Alcaligenes eutrophus(Ralsonia eutrophaとして再命名された)、Alcaligens latus、Azotobacter vinlandii、およびPseudomonadsを含む)は、Lee,Biotechnology&Bioengineering 49:1−14(1996)およびBrauneggら、(1998)、J.Biotechnology 65:127−161に開示される。
【0005】
組換えPHA産生株の開発は、2つの平行経路に従った。1つの場合では、その株は、コポリマーを産生するように開発され、その多くが、組換えE.coliにおいて産生された。これらのコポリマーとしては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバレレート)(PHBV)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−4−ヒドロキシブチレート)(P3HB−co−4HB)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)(P4HB)、および3−ヒドロキシポリオクタノエート単位を含む長い側鎖のPHAが挙げられる(MadisonおよびHuisman,1999)。プラスミド上にphb遺伝子を含有するE.coliの株は、P(3HB−3HV)を産生するように開発されてきた(Slaterら、Appl.Environ.Microbiol.Biotechnol.58.1089−94(1992);FidlerおよびDennis,FEMS Microbiol.Rev.103:231−36(1992);RhieおよびDennis,Appl.Environ.Microbiol.61:2487−92(1995);Zhang,H.ら、Appl.Environ.Microbiol.60:1198−205(1994))。E.coliにおけるP(4HB)およびP(3HB−4HB)の産生は、代謝には関連しない経路由来の遺伝子をP(3HB)プロデューサーに導入することによって達成される(Heinら、FEMS Microbiol.Lett.153:411−18(1997);ValentinおよびDennis,J.Biotechnol.58:33−38(1997))。E.coliはまた、fadB::kan変異体におけるP.aeruginosaのphaC1遺伝子およびphaC2遺伝子を導入することによって、中間の短い鎖のポロヒドロキシアルカノエート(msc−PHA)を産生するために操作された(Langenbachら、FEMS Microbiol.Lett.150:303−09(1997);Qiら、FEMS Microbiol.Lett.157:155−62(1997))。
【0006】
研究は、E.coliにおけるPHBポリメラーゼ、ケトチオラーゼ、およびアセトアセチル−CoAレダクターゼをコードするA.eutrophus PHB生合成遺伝子の発現がPHBの産生を生じたことを実証した(Slaterら、J.Bacteriol.170:4431−36(1988);PeoplesおよびSinskey,J.Biol.Chem.264:15298−303(1989);Schubertら、J.Bacteriol.170:5837−47(1988))が、これらの結果は、基本的なクローニングプラスミドベクターを使用して得られた。そしてその系は、商業的な生産に適切ではない。なぜなら、これらの株は、工業用培地における天然のプロデューサーと等しいレベルを蓄積する能力を欠けていたからである。
【0007】
商業的生産のために、これらの株は、低コストの工業用培地における大規模な発酵に適切に作製されなければならない。流加培養法における組換えP(3HB)産生実験の最初の報告は、高価な複合培地を使用して、pH一定(pH−stat)制御系を使用して42時間でP(3HB)を90g/Lまで産生した(Kimら、Biotechnol.Lett.14:811−16(1992))。中間コピー数プラスミドまたは高コピー数プラスミドのいずれか由来の安定化プラスミドを使用して、後者の型のプラスミドを有するE.coli XL1−Blueは実質的なp(3HB)蓄積を必要とすることが示された(Leeら、Ann,N.Y.Acad.Sci.721:43−53(1994))。2%グルコース/LB培地における流加発酵において、この株は、2.1g/L−時間の生産性で81%のP(3HB)を産生した(Leeら、J.Biotechnol.32:203−11(1994))。P(3HB)生産性は、最小培地において0.46g/L−時間まで減少したが、複合窒素源(例えば、酵母抽出物、トリプトン、カザミノ酸、およびコラーゲン加水分解物)の添加によって回復し得る(LeeおよびChang,Adv.Biochem.Eng.Biotechnol.52:27−58(1995);Leeら、J.Ferment.Bioeng.79:177−80(1995))。
【0008】
組換えE.coli XL1−blueは実質的なレベルのP(3HB)を合成し得るが、増殖は、特に、規定された培地における細胞の劇的なフィラメント化(filamentation)によって損なわれる(Leeら、Biotechnol.Bioeng.44:1337−47(1994);Lee,Biotechnol.Lett.16:1247−52(1994);WangおよびLee,Appl.Environ.Microbiol.63:4765−69(1997))。この株におけるFtsZの過剰発現により、バイオマス産生は20%改良され、そしてP(3HB)レベルは2倍になった(LeeおよびLee,J.Environ.Polymer Degrad.4:131−34(1996))。この組換え株は、規定された培地において、細胞乾燥重量の70%に対応する104g/L P(3HB)を産生した。しかし、2g/L−時間の容積生産性は、R.eutrophaを用いて達成可能なものより低かった。さらに、細胞の約15%は、発酵の終了までに、PHBを産生する能力を損失した(WangおよびLee,Biotechnol.Bioeng.58:325−28(1998))。
【0009】
組換えE.coli P(3HB−3HV)プロデューサーは、報告によれば、高密度で増殖し得ず、それゆえ、商業的プロセスに適していない(Yimら、Biotechnol.Bioeng.49:495−503(1996))。組換え株におけるP(3HB−3HV)産生を改良する試みにおいて、4つのE.coli株(XL1−Blue、JM109、HB101、およびDH5α)が、Yimらによって試験された。全ての4つの組換えE.coli株は、7%のHV画分とともに、グルコースおよびプロピオネートで増殖させた場合に、P(3HB−3HV)を合成した(Yimら、Biotechnol.Bioeng.49:495−503(1996))。研究されたほかの株(Slaterら、Appl.Environ.Microbiol.58:1089−94(1992))とは異なり、組換えXL1−Blueは、プロピオン酸濃度が0mMと80mMとの間で変化する場合に、10%未満のHVを取り込む。HVの取り込みおよびPHAの形成は、アセテートにおいて細胞を前増殖(pre−growing)させ、続いて1mlあたり10細胞付近の細胞密度でグルコール/プロピオネートを添加することによって増加した。オレアート補充もまた、HV取り込みを刺激した。この組換えXL1−Blueは、アセテート上およびオレアート補充とともに前増殖させた場合、8g/Lの細胞密度に達し、その75%は、0.16のHV画分を有するP(3HB−3HV)であった(Yimら、Biotechnol.Bioeng.49:495−503(1996))。
【0010】
組換え生物においてP(3HB)を産生するチャレンジの1つは、発酵の間のphb遺伝子の安定かつ一定の発現である。しばしば、組換え生物によるP(3HB)の産生は、細菌集団の大部分からのプラスミドの損失によって妨害される。このような安定性の問題は、プラスミドの複製およびP(3HB)の合成に対する必要性によって発揮される代謝負荷に起因し得、これは、アセチル−CoAをバイオマスよりもむしろP(3HB)へと転換する。さらに、プラスミドのコピー数は、しばしば、連続発酵の際に減少する。なぜなら、わずか数コピー数が、必要な構成物質耐性を提供するか、またはparBを維持することによって細胞死を防止するからである。これらの理由のために、ランナウェイプラスミドが設計されて、30℃でのプラスミドのコピー数を抑制し、そして38℃まで温度をシフトすることによってプラスミド複製を誘導した(Kidwellら、Appl.Environ.Microbiol.61:1391−98(1995))。この系を使用して、P(3HB)は、1グラムP(3HB)/リットル/時間の容積産生を用いて誘導した後15時間以内に、細胞乾燥重量の約43%まで産生された。この生産性は、天然のP(3HB)プロデューサーと同じ程度であるが、これらのparB安定化ランナウェイレプリコンを保有する株は、なお、延長した発酵の間にP(3HB)を蓄積する能力を損失する。
【0011】
高細胞密度発酵におけるphb遺伝子の不安定性は、細胞性P(3HB)収率を減少させることによりPHAの費用に影響を及ぼし、一方、供給材料のコストもまた、PHAの比較的高い価格に寄与する。P(3HB)産生に使用される最も一般的な基質は、グルコースである。結果として、E.coli株およびKlebsiella株は、糖蜜(これは、グルコースより33〜50%低い費用である)におけるP(3HB)発酵について試験された(Zhangら、Appl.Environ.Microbiol.60:1198−1205(1994))。糖蜜における主な炭素源は、スクロースである。6%サトウキビ糖蜜を含む最小培地において増殖させた、プラスミド上にphb遺伝子座を保有する組換えE.coliおよびK.aerogenes株は、細胞乾燥重量の45%に相当する約3g/LまでP(3HB)を蓄積した。K.aerogenesを単一炭素源として糖蜜において10Lファーメンターにおいて流加増殖させた場合、P(3HB)は、その細胞乾燥重量の70%(これは、24g/Lに相当する)まで蓄積した。K.aerogenesにおけるphbプラスミドは不安定であるが、この株は、糖蜜においてP(3HB)プロデューサーとしての見込みを示す。なぜなら、特に、fadR変異体は、プロピオネートの存在下で、55%までの3HVを取り込むからである(Zhangら、Appl.Environ.Microbiol.60:1198−1205(1994))。
【0012】
Dennisに対する米国特許第5,334,520号は、phbCAB遺伝子を含有するプラスミドで形質転換したE.coliにおけるPHBの産生を開示する。rec−lac+E.coli株は、ホエーにおいて増殖し、そして報告されるように、その細胞乾燥重量の85%までPHBを蓄積した。Dennisらに対する米国特許第5,371,002号は、宿主(構成的に誘導することによってかまたはプラスミドからのいずれかでアセテート遺伝子を発現する)においてphb遺伝子を有する高コピー数プラスミドベクターを用いて、組換えE.coliにおいてPHAを産生する方法を開示する。Dennisに対する米国特許第5,512,456号は、形質転換したE.coli株からのPHBの産生および回収のための方法を開示する。これらのE.coli株は、phb遺伝子を含有するベクターおよびリゾチーム遺伝子を含有するベクターを備えている。高コピー数プラスミドまたはランナウェイレプリコンを使用して、生産性を改良する。このベクターは、parBまたはsupF/dnaB(am)によって安定化される。このような株を使用して、1.7g/L−時間の生産性が得られ、これは25時間における46g/LのPHBに相当し、その後、このプラスミドは、微生物集団によって漸増的に損失された。PCT WO94/21810は、炭素源としてスクロースを用いて、E.coliおよびKlebsiella aerogenesの組換え株におけるPHBの産生を開示する。PCT WO95/21257は、形質転換した原核生物宿主におけるPHBの産生の改良を開示する。転写調節配列およびリボソーム結合部位における改良は、プラスミドに基づくphb遺伝子によるPHB形成を改良する。このプラスミドは、parB遺伝子座によって安定化される。この構築物によるPHBの産生は、78ヌクレオチドのみの代わりにR.eutrophaにおいてphbCの上流に見出された361ヌクレオチドを含むことによって2倍になる。組換え微生物によるPHBの産生は、安定化プラスミドを用いる高レベルの発現を必要とすると、一般的に考えられている。プラスミドは、複数コピー(1から数百に及ぶ)において、細胞において利用可能であるので、プラスミドの使用は、目的の遺伝子の複数コピーの存在を確実にした。プラスミドは損失され得るので、安定化機能が導入される。上記に記載されるこのような系は、PHBの産生について試験され、そして産業用発酵プロセスにおけるこれらの系の有用性が研究されてきた。しかし、全体のPHBの収率は、なお、phb遺伝子の損失に影響される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4876331号
【特許文献2】米国特許第5292860号
【特許文献3】国際公開第98/04713号
【特許文献4】米国特許第5334520号
【特許文献5】米国特許第5371002号
【特許文献6】米国特許第5512456号
【特許文献7】国際公開第94/21810号
【特許文献8】国際公開第95/21257号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】WilliamsおよびPeoples,CHEMTECH 26:38−44(1996)
【非特許文献2】SteinbuchelおよびValetin,FEMS Microbiol.Lett.128:219−28(1995)
【非特許文献3】LemoigneおよびRoukhelman、1925
【非特許文献4】deSmetら、J.Bacteriol.154:870−78(1983)
【非特許文献5】WallenおよびRohweder,Environ.Sci.Technol.8:576−79(1974)
【非特許文献6】SteinbuchelおよびWiese,Appl.Microbiol.Biotechnol.37:691−97(1992)
【非特許文献7】Valentinら、Appl.Microbiol.Biotechnol.36:507−14(1992)
【非特許文献8】Valentinら、Appl.Microbiol.Biotechnol.40:710−16(1994)
【非特許文献9】Abeら、Int.J.Biol.Macromol.16:115−19(1994)
【非特許文献10】Leeら、Appl.Microbiol.Biotechnol.42:901−09(1995)
【非特許文献11】Katoら、Appl.Microbiol.Biotechnol.45:363−70(1996)
【非特許文献12】Valentinら、Appl.Microbiol.Biotechnol.46:261−67(1996)
【非特許文献13】Brandlら、Int.J.Biol.Macromol.11:49−55(1989)
【非特許文献14】AmosおよびMaInerey,Arch.Microbiol.155:103−06(1991)
【非特許文献15】Lee,Biotechnology&Bioengineering 49:1−14(1996)
【非特許文献16】Brauneggら、(1998)、J.Biotechnology 65:127−161
【非特許文献17】MadisonおよびHuisman,1999
【非特許文献18】Slaterら、Appl.Environ.Microbiol.Biotechnol.58.1089−94(1992)
【非特許文献19】FidlerおよびDennis,FEMS Microbiol.Rev.103:231−36(1992)
【非特許文献20】RhieおよびDennis,Appl.Environ.Microbiol.61:2487−92(1995)
【非特許文献21】Zhang,H.ら、Appl.Environ.Microbiol.60:1198−205(1994)
【非特許文献22】Heinら、FEMS Microbiol.Lett.153:411−18(1997)
【非特許文献23】ValentinおよびDennis,J.Biotechnol.58:33−38(1997)
【非特許文献24】Langenbachら、FEMS Microbiol.Lett.150:303−09(1997)
【非特許文献25】Qiら、FEMS Microbiol.Lett.157:155−62(1997)
【非特許文献26】Slaterら、J.Bacteriol.170:4431−36(1988)
【非特許文献27】PeoplesおよびSinskey,J.Biol.Chem.264:15298−303(1989)
【非特許文献28】Schubertら、J.Bacteriol.170:5837−47(1988)
【非特許文献29】Kimら、Biotechnol.Lett.14:811−16(1992)
【非特許文献30】Leeら、Ann,N.Y.Acad.Sci.721:43−53(1994)
【非特許文献31】Leeら、J.Biotechnol.32:203−11(1994)
【非特許文献32】LeeおよびChang,Adv.Biochem.Eng.Biotechnol.52:27−58(1995)
【非特許文献33】Leeら、J.Ferment.Bioeng.79:177−80(1995)
【非特許文献34】Leeら、Biotechnol.Bioeng.44:1337−47(1994)
【非特許文献35】Lee,Biotechnol.Lett.16:1247−52(1994)
【非特許文献36】WangおよびLee,Appl.Environ.Microbiol.63:4765−69(1997)
【非特許文献37】LeeおよびLee,J.Environ.Polymer Degrad.4:131−34(1996)
【非特許文献38】WangおよびLee,Biotechnol.Bioeng.58:325−28(1998)
【非特許文献39】Yimら、Biotechnol.Bioeng.49:495−503(1996)
【非特許文献40】Kidwellら、Appl.Environ.Microbiol.61:1391−98(1995)
【非特許文献41】Zhangら、Appl.Environ.Microbiol.60:1198−1205(1994)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
それゆえ、本発明の目的は、産業用発酵プロセスにおいて有用な組換え微生物株を提供することであり、この微生物は、発酵の間にphb遺伝子の安定かつ一定した発現を提供しながら、商業的に有用なレベルのPHBを蓄積し得る。
【0016】
本発明の別の目的は、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)の増強した産生のためのトランスジェニック微生物株を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、発酵の間にphb遺伝子の安定かつ一定した発現を生じ、かつ商業的に有意なレベルのPHBを蓄積するトランスジェニック微生物株、およびその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要旨)
その染色体上に組み込まれた、PHA形成に必要な遺伝子を含む、トランスジェニック微生物株が提供される。この株は、PHA産生プロセスにおいて有利である。なぜなら、(1)プラスミドを維持する必要性がなく、抗生物質および他の安定化圧を使用する必要性がほぼ排除されており、そして(2)プラスミドの損失が生じず、それにより発酵プロセスを通じて細胞あたりの遺伝子コピー数を安定化し、産生プロセスを通じて均一なPHA産物形成を生じるからである。複数の遺伝子は、標準的な技術、好ましくは、トランスポゾン変異誘発を用いて組み込まれる。遺伝子が組み込まれる好ましい実施態様において、この遺伝子は、オペロンとして組み込まれる。配列は、mRNAを安定化するため、培養条件(例えば、リン酸濃度)、温度、およびストレスの関数として発現を誘導するため、ならびに抗生物質耐性を付与するような選択マーカー組み込みを通して選択を補助するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、pMNXTpkan、pMNXTpcat、pMSXTpkan、およびpMSXTpcatの構築を示す図である。
【図2】図2は、pMUXCcatの構築を示す図である。
【図3】図3は、pMUXABcat、pMUXTpABkan、pMUXTp11ABkan、pMUXTp12ABkan、およびpMUXTp13ABkanの構築を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
PHA生合成酵素をコードする遺伝子をE.coliの染色体にランダムに挿入することにより、産業用培地に基づく発酵における宿主の増殖に必須ではない部位で、強力な内因性プロモーターからの高レベルの発現を直接達成するための手段が同定された。実施例によって実証されるように、E.coli株は、これらの技術を使用して得られており、その染色体上の単一コピー遺伝子から、細胞乾燥重量の85%を超えるレベルでPHAを産生する。これらの株におけるphb遺伝子の発現は、R.eutrophaにおけるphbCの上流配列に依存せず、高コピー数構築物にも依存しない。これらの株によるphb遺伝子の維持は、構成物質の補充、parBもしくはhok/sokのような安定化遺伝子座の存在、または他のいかなる選択圧にも依存しない。プラスミドに基づく系に必要な超高レベルの発現は、完全には必須でないことが見出されている。さらに、組換えプラスミドに基づくE.coliについて、今日までに報告されている最も首尾良い発酵(WangおよびLee,Biotechnol.Bioeng.58:325−28(1998))とは異なり、これらの株を用いる発酵は、発酵の終了時に、実質的に全ての細胞がPHBを含むことを提供する。
【0021】
低コピー数にもかかわらず、これらのトランスジェニック細菌は、野生型生物について観察されたレベルまでPHBを蓄積する。組換えPHB産生に使用される宿主もまた、プラスミドに基づくE.coli系を設計する際に、重要なパラメーターである。例えば、W3110株は、プラスミドに基づく系を使用する場合、乏しいPHAプロデューサーであるが、この同じ宿主の染色体にphb遺伝子を組み込むことによって、この宿主が、商業的に有意なレベルのPHBを蓄積しながら、優れた増殖特徴を維持することが見出された。
【0022】
(微生物株を産生するための方法および材料)
(改変されるべき細菌株)
多数の細菌は、ポリヒドロキシアルカノエートを産生するように遺伝的に操作され得る。これらは、すでにポリヒドロキシアルカノエートを産生する生物であって、代替の基質を利用するか、もしくはさらなるモノマーを取り込むように改変された生物、または産生を増大するように改変された生物を含み、そしてポリヒドロキシアルカノエートを産生しないが、ポリヒドロキシアルカノエートの産生に必要とされる酵素を全く発現しないかまたはいくらか発現する生物を含む。例としては、E.coli、Alcaligenes latus、Alcaligenese eutrophus、Azotobacter、Pseudomonas putida、およびRalstonia eutrophaが含まれる。
【0023】
(トランスジェニックPHBプロデューサーを生成するための方法)
操作された遺伝子構築物を、細菌細胞の染色体DNAに組み込むための方法は、当業者に周知である。代表的な組み込み機構には、recBC株またはrecD株中で線状化DNAを使用する相同組換え、続いてP1形質導入(Miller 1992,A Short Course in Bacterial Genetics:A laboratory manual & Handbook for Escherichia coli and Related Bacteria.Cold Spring Harbor laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York)、特別なプラスミド(Hamiltonら、J.Bacteriol.171:4617(1989);Metcalfら,Plasmid 35:1(1996);Mascarenhasらに対する米国特許第5,470,727号)、またはトランスポゾンに基づくシステムを使用するランダム挿入(Herreroら、J.Bacteriol.172:6557(1990);Peredelchuk&Bennett,Gene 187:231(1997);Richaudらに対する米国特許第5,595,889号;Tuckerらに対する米国特許第5,102,797号)が含まれる。一般に、挿入を含む微生物株は、組み込まれた構築物によって供給される獲得された抗生物質耐性遺伝子に基づいて選択される。しかし、栄養要求性変異体の相補性もまた使用され得る。
【0024】
染色体組み込みのための目的の遺伝子の発現は、転写活性化配列(プロモーター)を、組み込まれるべきDNA構築物中に含ませることによって達成され得る。部位特異的相同組換えは、Ingramらに対する米国特許第5,00,000号によって記載されるように、目的の遺伝子の発現の増幅と組み合わされ得る。ミニトランスポゾンシステムが多年にわたって使用されてきたが、それらは、組み込まれた目的の遺伝子の発現レベルが調節されないように設計されている。Ingramらは、相同組換えによってE.coli染色体中に挿入した外来遺伝子の増大した発現について選択した。これは、目的の遺伝子の下流に、プロモーターのないクロラムフェニコール(Cm)耐性遺伝子を挿入して、転写的融合を作成することによって達成された。アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子のプロモーターのないクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子との転写的融合がpfl遺伝子中に組み込まれた後、増大した発現が、クロラムフェニコールの濃度を増大させることに関して変異体を選択することによって達成される。しかし、ケモスタット研究において、これらの安定した株は、なお、エタノールを産生する能力を失っていた(Lawford & Rousseau,Appl.Biochem.Biotechnol.57−58:293−305(1996))。また、染色体上のエタノール産生性(ethanologenic)遺伝子を含んでいた株は、グルコース最小培地で、成長速度の減少を示した(Lawford & Rousseau,Appl.Biochem.Biotechnol.,57−58:277−92(1996))。
【0025】
これらのアプローチは、組み込まれた遺伝子の発現を調節するためのスクリーニングシステムと組み合わせて、健康な、迅速に増殖するトランスジェニック株を選択するために、ミニトランスポゾンを染色体中にランダムに組み込むように組み合わされ、そして改変されている。一連の発現カセットは、異種遺伝子を細菌染色体中に挿入するために開発されている。これらのカセットは、Herreroら、J.Bacteriol.172:6557−67(1990);de Lorenzoら、J.Bacteriol.172:6568(1990)によって記載されるトランスポゾン送達システムに基づいている。これらのシステムは、RP4媒介接合移入を特定し、そしてトランスポゾンTn10およびTn5のみを使用するが、トランスポゾン末端および送達系の任意の組み合わせが記載される技術に適合され得、持続的かつ均一なPHA産生を生じる。
【0026】
以下の一般的なアプローチは、トランスジェニックE.coli PHBプロデューサーを生成するために使用される:(1)プロモーターのない抗生物質耐性(abr)遺伝子は、ポリリンカーの主要な部分がabrの上流にあるように、pUC18NotIまたはpUC18SfiIのような適切なプラスミドのポリリンカーにおいてクローニングされる;(2)phb遺伝子は、abr遺伝子の上流に、そしてそれと同じ方向に引き続いてクローニングされる;(3)phb−abrカセットは、NotIまたはAvrIIフラグメント(AvrIIは、pUC18SfiI中のSfiI部位を認識する)として切り出され、そしてpUT−またはpLOF−シリーズ由来のもののような任意のプラスミドの対応する部位にクローニングされる;(4)得られるプラスミドは、E.coli λpir株中に維持され、そして選り抜きのE.coli株中にエレクトロポレーションされるか、または結合体化され、その中では、これらのプラスミドは、複製しない;ならびに(5)phb−abrカセットが染色体中に首尾良く組み込まれた新たな株は、宿主について(例えば、宿主がナリジクス酸耐性である場合、ナリジクス酸)、およびカセットについて(例えば、クロラムフェニコール、カナマイシン、テトラサイクリン、塩化水銀、バイアラフォス(bialaphos))、選択培地上で選択される。得られるphb組み込み体は、増殖およびPHB形成についてグルコースの存在下で最小培地においてスクリーニングされる。
【0027】
この手順のいくつかの改変がなされ得る。プロモーターのない抗生物質耐性マーカーが使用されない場合、PHA遺伝子の挿入は、ベクターに存在するマーカー基づいて選択され、そして所望のレベルのPHAを産生する組み込まれた株が、PHA産生についてスクリーニングすることによって検出される。phb遺伝子は、内因性転写配列(例えば、上流の活性化配列)、RNAポリメラーゼ結合部位、および/またはオペレータ配列を有し得るが、かならずしも必要ではない。phb遺伝子がこのような配列を有さない場合、所望のアプローチが、pUTシリーズ(そこでは、転写は、挿入配列を介して進行し得る)のようなベクターの使用に限定される。この限定は、RNAポリメラーゼが、pLOFプラスミドのTn10隣接領域を通して読むことができないことに原因がある。abr遺伝子は、所望であれば、それ自体の発現配列を保有し得る。abr遺伝子のかわりに、その構築物は、必須の遺伝子が、その宿主株が、対応する野生型遺伝子における変異を有する場合、選択マーカーとして作用するように設計され得る。この目的のために有用な遺伝子の例は、当該分野において一般に公知である。異なる構築物は、両方の構築物が異なるマーカー遺伝子を保有する限り、連続的に、または同時にのいずれかで、1つの宿主に組み込まれ得る。複数の組み込み事象を使用して、phb遺伝子は、別々に組み込まれ得、例えば、PHBポリメラーゼ遺伝子は、phbC−catカセットとしてまず組み込まれ、続いてphbAB−kanカセットとしてチオラーゼおよびレダクターゼ遺伝子が組み込まれる。あるいは、1つのカセットは、全てのphb遺伝子を含有し得る一方、別のカセットは、所望のPHAポリマーを産生するために必要とされるいくつかのphb遺伝子のみを含有する。
【0028】
いくつかの場合において、pJMS11(Pankeら、Appl.Enviro.Microbiol.64:748−751)のようなトランスポゾン組み込みベクターは、その選択マーカーが、組み込まれた株の染色体から切り出され得るように、使用され得る。これは、同じマーカー遺伝子を使用して、各挿入事象の後にそのマーカーを切り出すことによって、複数のトランスポゾン構築物を挿入する機構を提供することを含む多くの理由によって有用である。
【0029】
(PHA形成に関与するphbおよび他の遺伝子の供給源)
一般的な参考文献は、MadisonおよびHuisman、1999、Microbiology and Molucular Biology Reviews 63:21−53である。phb遺伝子は、異なる供給源に由来し、そして1つの生物において組み合わされ得るか、または同じ供給源に由来し得る。
【0030】
(チオラーゼをコードする遺伝子)
チオラーゼをコードする遺伝子は、Alcaligenes latus、Ralstonia eutropha(Peoples & Sinskey,J.Biol.Chem.264(26):15298−303(1989);Acinetobacter種(Schembriら、J.Bacteriol.177(15):4501−7(1995))、Chromotium vinosum(Liebergesell & Steinbuchel,Eur.J.Biochem.209(1):135−50(1992))、Pseudomonas acidophila、Pseudomonas denitrificans(Yabutaniら、FEMS Microbiol.Lett.133(1−2):85−90(1995))、Rhizobium meliloti(Tomboliniら、Microbilogy 141:2553−59(1995))、Thiocystis violacea(Liebergesell & Steinbuchel,Appl.Microbiol.Biotechnol.38(4):493−501(1993))、およびZoogloea ramigera(Peoplesら、J.Biol.Chem.262(1):97−102(1987))から単離されている。
【0031】
PHA形成において関連づけられていないが、phb遺伝子と有意な相同性を共有する他の遺伝子および/またはその対応する遺伝子産物もまた使用され得る。チオラーゼ様酵素およびレダクターゼ様酵素をコードする遺伝子は、広範な非PHB産生細菌において同定されている。E.coli(U29581、D90851、D90777)、Haemophilus influenzae(U32761)、Pseudomonas fragi(D10390)、Pseudomonas aeruginosa(U88653)、Clostridium acetobutylicum(U08465)、Mycobacterium leprae(U00014)、Mycobacterium tuberculosis(Z73902)、Helicobacter pylori(AE000582)、Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum(Z92974)、Archaeoglobus fulgidus(AE001021)、Fusobacterium nucleatum(U37723)、Acinetobacter calcoaceticus(L05770)、Bacillus subtilis(D84432、Z99120、U29084)、およびSynechocystis種(D90910)は、全て、それらの染色体由来の1つ以上のチオラーゼをコードする。Saccharomyces cerevisiae(L20428)、Schizosaccharomyces pombe(D89184)、Candida tropicalis(D13470)、Caenorhabditis elegans(U41105)、ヒト(S70154)、ラット(D13921)、マウス(M35797)、ラディッシュ(X78116)、カボチャ(D70895)、およびキュウリ(X67696)のような真核生物もまた、R.eutropha由来の3−ケトチオラーゼに対して有意な相同性を有するタンパク質を発現する。
【0032】
(レダクターゼをコードする遺伝子)
レダクターゼをコードする遺伝子は、A.latus、R.eutrpha(Peoples & Sinskey,J.Biol.Chem.264(26):15298−303(1989);Acinetobacter種(Schembriら、J.Bacteriol.177(15):4501−7(1995))、C.vinosum(Liebergesell & Steinbuchel,Eur.J.Biochem.209(1):135−50(1992))、P.acidophila、P.denitrificans(Yabutaniら、FEMS Microbiol.Lett.133(1−2):85−90(1995))、R.meliloti(Tomboliniら、Microbiology 141:2553−59(1995))、およびZ.ramigera(Peoplesら、J.Biol.Chem.262(1):97−102(1987))から単離されている。
【0033】
PHA形成は関与しないが、phb遺伝子と有意な相同性を有する他の遺伝子および/またはその対応する遺伝子産物もまた、使用され得る。アセトアセチルCoAレダクターゼをコードするphbB遺伝子との有意な相同性を有する遺伝子は、Azospirillum brasiliense(X64772、X52913)、Rhizobium種(U53327、Y00604)、E.coli(D90745)、Vibrio harveyi(U39441),H.influenzae(U32701)、B.subtilis(U59433)、P.aeruginosa(U91631)、Synechocystis種(D90907)、H.pylori(AE000570)、Arabidopsis thaliana(X64464)、Cuphea lanceolata(X64566)、およびMycobacerium smegmatis(U66800)を含むいくつかの生物から単離されている。
【0034】
(PHAポリメラーゼをコードする遺伝子)
PHAポリメラーゼをコードする遺伝子は、Aeromonas caviae(Fukui & Doi、J.Bactrriol.179(15):4821−30(1997))、A.latus、R.eutropha(Peoples & Sinskey、J.Biol.Chem.264(26):15298−303(1989);Acinetobacter(Schembriら、J.Bacteriol.177(15):4501−7(1995))、C.vinosum(Liebergesell & Steinbuchel,Eur.J.Biochem.209(1):135−50(1992))、Methylobacterium extorquens(Valentin & Steinbuchel,Appl.Microbiol.Biotechnol.39(3):309−17(1993))、Nocardia corallina(GenBankアクセッション番号AF019964)、Nocardia salmonicolor、P.acidophila、P.denitrificans(Uedaら、J.Bacteriol.178(3):774−79(1996))、Pseudomonas aeruginosa(Timm & Steinbuchel,Eur.J.Biochem.209(1):15−30(1992))、Pseudomonas oleovorans(Huismanら、J.Biol.Chem.266:2191−98(1991))、Rhizobium etli(Cevallosら、J.Bacteriol.178(6):1646−54(1996))、R.meliloti(Tomboliniら、Microbiology 141(Pt10):2553−59(1995))、Rhodococcus ruber(Pieper &Steinbuchel,FEMS Microbiol.Lett.96(1):73−80(1992))、Rhodospirrilum rubrum(Hustedeら、FEMS Microbiol.Lett.93:285−90(1992))、Rhodobacter sphaeroides(Steinbuchelら、FEMS Microbiol.Rev.9(2−4):217−30(1992);Hustedeら、Biotechnol.Lett.15:709−14(1993))、Synechocysitis種(Kaneko、DNA Res.3(3):109−36(1996))、T.violaceae(Liebergesell & Steinbuchel,Appl.Microbiol.Biotechnol.38(4):493−501(1993))、およびZ.ramigera(GenBank Acc.No.U66242)から単離されている。
【0035】
(細菌染色体中への遺伝子の組み込みのためのベクター)
本明細書において記載されるPHA産生法において有用なプラスミドトランスポゾン送達ベクターのpUTおよびpLOFシリーズは、トランスポゾンTn5およびトランスポゾンTn10の特徴を、それぞれ使用する。転移を促進する酵素をコードするトランスポザーゼ遺伝子は、「トランスポザーゼ認識配列」の外側に位置し、そしてその結果、転移の際に失われる。Tn5およびTn10の両方は、例えば、Tn7トランスポゾンとは異なり、標的ゲノム中にランダムに組み込まれることが知られている。しかし、一般に、任意のトランスポゾンは、異種遺伝子(例えば、phb遺伝子)の細菌ゲノムへの挿入を容易にするために改変され得る。従って、この方法論は、本明細書に記載される方法に使用されるベクターに限定されていない。
【0036】
(増強されたポリマー産生のスクリーニングのための方法および材料)
(細菌株のスクリーニング)
上記の技術は、新たなPHA産生株の生成を可能にし、そしてまた、スクリーニングの目的のために有用な新たな細菌株を提供する。以下の表1は、染色体に、そしてプラスミドにコードされるPHB酵素の異なる組み合わせ、およびどのように特定の株が新たな酵素または改善された酵素を同定するために使用され得るかを示す。
【0037】
改善された酵素を発現する遺伝子のためのスクリーニングツール以外に、染色体に組み込まれた完全なPHA経路を有するE.coli株は、PHA形成に影響を及ぼす異種遺伝子をスクリーニングするために使用され得る。E.coliは、有用な宿主である。なぜなら、遺伝子は、多数のプラスミドベクター(高コピー数、低コピー数、化学または熱誘導性など)から容易に発現され、そして変異誘発手順は、この細菌について十分に確立されているからである。さらに、E.coliの完全に決定されたゲノム配列は、PHA代謝に影響を及ぼす遺伝子の特徴付けを容易にする。
【0038】
不完全なPHA経路を発現するトランスジェニックE.coli株は、他の生物(原核生物または真核生物のいずれか)から欠失した遺伝子のホモログを同定するために、遺伝子ライブラリーを用いて形質転換され得る。これらのスクリーニング株は、完全なPHA生合成経路を有さないので、その欠失している機能は、PHAを生合成する宿主株の能力によって相補され、そして同定され得る。一般に、PHAを合成する細菌のコロニーは、寒天プレート上で不透明であり、一方、PHAを合成しないコロニーは、透明に見える。欠失している遺伝子を相補する遺伝子ライブラリー由来のクローンは、スクリーニング培地上で増殖する場合、宿主に白い表現型を与える。一般に、スクリーニング培地は、過剰の炭素源を含む全ての必須の栄養素、および耐性がライブラリー構築において使用されるベクターによって特定される抗生物質を含有する。
【0039】
新たな遺伝子以外に、改善されたPHA生合成酵素をコードする遺伝子もまたスクリーニングされ得る。この活性を欠くが、他のPHA生合成酵素をコードする遺伝子を含有するE.coli宿主株中へのphb生合成遺伝子を含有するプラスミドの変異誘発された収集物は、増大したか、または変更された活性についてスクリーニングされ得る。例えば、増大した活性を有するPHAポリメラーゼは、PHB形成の支持が不十分である条件下で、PHB含有コロニーを同定することによって染色体から、チオラーゼおよびレダクターゼを発現する株中でスクリーニングされ得る。Cに対する増大した特異性を有するmcl−PHAポリメラーゼは、PHB蓄積促進条件下で、同様に、スクリーニングされ得る。phaGにコードされたACP::CoAトランスフェラーゼにおける変更された活性は、この遺伝子の変異されたバージョンを、phbC組み込み体中で発現させ、そして短鎖の脂肪酸からのPHB形成についてスクリーニングすることによってスクリーニングされ得る。最適未満の物理的条件(例えば、温度、pH、浸透圧、および酸素テンション)下での増大した活性を有する酵素は、このような条件下で、宿主を増殖させ、そして所望の遺伝子の変異バージョンを収集物をプラスミド上に提供することによってスクリーニングされ得る。中程度の側鎖の3−ケトアシル−CoA(例えば、3−ケトヘキサノイル−CoA)に対する特異性を有するレダクターゼ酵素は、染色体に組み込まれたmsc−PHAポリメラーゼ遺伝子およびプラスミド上にphbB遺伝子の変異誘発バージョンを有する株中でPHA合成コロニーを同定することによってスクリーニングされ得る。異なる特異性のPHA酵素の組み合わせにより、多数の新たな基質特異性のスクリーニングが可能になる。増殖条件のさらなる順列により、最適未満の条件下で活性な酵素または細胞性補因子(例えば、補酵素AおよびCoA誘導体、還元されたかもしくは酸化されたニコチンアミドアデニンジヌクレオチドまたはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドホスフェート(NAD、NADP、NADH、およびNADPH)によってより少なく阻害される酵素のスクリーニングが可能になる。
【0040】
本明細書に記載される技術を使用して、中程度の側鎖のPHA経路のための酵素をコードする遺伝子を発現するE.coli株が、構築され得る。phaCまたはphaGのいずれか、またはその両方がE.coliの染色体に組み込まれている株は、中程度の鎖長の3−ヒドロキシ脂肪酸(3−ヒドロキシデカノエートが優勢な構築物である)を含むPHAを蓄積する。phaCが、それ自体に組み込まれている場合、msc−PHAは、脂肪酸から合成され得る。このような株において、3−ヒドロキシ脂肪酸前駆体が細胞内に蓄積するように、脂肪酸酸化を操作することは有利である。この操作は、変異誘発によって、またはE.coli脂肪酸分解酵素FadAおよびFadBをコードする遺伝子を、Pseudomonas putidaまたは関連するrRNAホモロジーI群蛍光シュードモナス菌由来の対応するfaoAB遺伝子で置換することによって達成され得る。
【0041】
【表1】

【実施例】
【0042】
(実施例)
本明細書中に記載される方法および組成物は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解される。これらの実施例は、以下の一般的な方法および材料を使用する。
【0043】
(材料および方法)
E.coli株を、37℃もしくは30℃で、Luria−Bertani培地(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor,NY[1992中で、または最小E2培地(Lageveenら、Appl.Environ.Microbiol.54:2924−2932(1988))中で増殖させた。DNA操作を、Qiagenプラスミド調製キットまたはQiagen染色体DNA調製キットを用いて、製造業者の推奨に従って精製されたプラスミドおよび染色体DNAで行った。DNAを、製造業者の推奨に従って、制限酵素(New England Biolabs,Beverly,MA)を使用して消化した。DNAフラグメントを、Qiagenキットを使用して、0.7%アガロースTris/酢酸/EDTAゲルから単離した。
【0044】
プラスミドDNAを、形質転換またはエレクトロポレーションによって、E. coli細胞に導入した(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY))。pUTベクターからのphb遺伝子の転移を、プラスミドドナー株およびレシピエントの接合によって達成した(Herreroら、J.Bacteriol.172:6557(1990))。使用されるレシピエント株は、LS5218またはMBX23のいずれか由来のE.coliのナリジクス酸(naladixic acid)またはリファンピシンの自然発生的な耐性変異体であった。MBX23は、LJ14 rpoS::Tn10であり、ここでrpoS::Tn10対立遺伝子が、株1106(Eisenstark)からP1形質導入によって導入された。phb遺伝子が染色体中に組み込まれたレシピエントを、ミニトランスポゾン、カナマイシン、またはクロラムフェニコールによって特定される抗生物質耐性を補充したナリジクス酸(naladixic acid)またはリファンピシンプレート上で選択した。オリゴヌクレオチドを、BiosynthesisまたはGenesysから購入した。DNA配列を、Perkin−Elmer ABI 373A自動配列決定装置を使用して自動化配列決定によって決定した。DNAを、Gibco−BRL(Gaithersburg,MD)からのPCR−mixおよびEricomp DNA増幅装置を使用して、50μl容量で、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して増幅した。
【0045】
DNAフラグメントを、0.7%アガロース/TAEゲル上で分離した。サザンブロットを、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, NY)によって記載される手順に従って実行した。phb遺伝子を含むDNAフラグメントの検出を、USB/Amershamからの化学発光標識および検出キットを使用して実行した。タンパク質サンプルを、2−メルカプトエタノールおよびドデシル硫酸ナトリウムの存在下で、3分間、沸騰しているウォーターバス中でのインキュベーションによって変性させ、引き続いて10%、15%、または10%〜20%のドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル上で分離した。支持されたニトロセルロース膜(Gibco−BRL,Gaithersburg,MD)へのタンパク質の転写後、3−ケトアシル−CoAチオラーゼ、アセトアセチル−CoAレダクターゼ、およびPHBポリメラーゼを、これらの酵素に対して惹起されたポリクローナル抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ標識二次抗体、続いて化学発光検出(USB/Amersham)を使用して、検出した。
【0046】
アセトアセチル−CoAチオラーゼ活性およびアセトアセチル−CoAレダクターゼ活性を、37℃にてLB培地中で16時間増殖させた株からの無細胞抽出物中で、PeoplesおよびSinskey,J.Biol.Chem.264:15293−15297(1989)に記載されるように決定した。アセトアセチル−CoAチオラーゼ活性を、Hewlett−Packer分光光度計を使用して無細胞抽出物の添加後の304nmにおける吸光度の減少をモニタリングすることによって、Mg2+−アセトアセチル−CoA複合体の分解として測定する。アセトアセチル−CoAレダクターゼ活性を、Hewlett−Packer分光光度計を使用して、NADHからNADへの転換を340nmでモニタリングすることによって測定する。
【0047】
蓄積したPHAを、以下のようにガスクロマトグラフィー(GC)分析によって決定した。約20mgの凍結乾燥した細胞塊を、内部標準として添加された2mg/mL安息香酸を含む、容量で90%の1−ブタノールおよび10%の濃塩酸を含む2mlの混合液中で、110℃で3時間、同時抽出およびブタノール分解(butanolysis)に供した。得られる混合液の水溶性成分を、3mLの水を用いる抽出によって除去する。有機層(全体の流速2mL/分での1:50の分離比で1μL)を、SPB−1融合シリカキャピラリーGCカラム(30m;0.32mm ID; 0.25μm フィルム;Supelco;Bellefonte,PA)を使用して、以下の温度プロフィール:80℃、2分間;1分間当たり10℃で250℃まで;250℃、2分間を用いて、FID検出器を備えるHP 5890 GC(Hewlett−Packard Co,Palo Alto,CA)で分析した。ポリマー中の4−ヒドロキシブチレート単位の存在について試験するために使用される標準は、γ−ブチロラクトンであった。これは、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)と同様に、ブタノール分解の際にn−ブチル−4−ヒドロキシブチレートを形成する。ポリマー中の3−ヒドロキシブチレート単位について試験するために使用される標準は、精製されたPHBであった。
【0048】
クロロホルム抽出後のポリマーの分子量を、Waters Styragel HT6Eカラム(Millipore Corp.,Waters Chromatography Division,Milford,MA)を使用して、狭い多分散性であるポリスチレンサンプルに対して較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。サンプルを、1mg/mLでクロロホルムに溶解し、そして50μLサンプルを注入し、そして1mL/分で溶出した。検出を、示差屈折計を使用して実行した。
【0049】
1−メチル−3−ニトロ−1−ニトロソ−グアニジン(NTG)変異誘発を、99%の殺傷に対応する1mg/ml NTGを用いる90分間の処理を使用して、Miller,A Short Course in Bacterial Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)に記載されるように実行した。
【0050】
(実施例1)
(実施例1:遺伝子組込みのための宿主株ツールおよびプラスミドツール)
トランスポゾンベクターおよびトランスポゾン誘導体を開発した由来の株およびプラスミドは、以下の表2および3に列挙される。MBX245およびMBX247を、約30g/mlのナリジクス酸(naladixic acid)を含むLBプレート上で、それぞれ、MBX23およびLS5218を増殖させることによって選択した。MBX246およびMBX248を、50g/mlのリファンピシンを含むLBプレート上で、それぞれ、MBX23およびLS5218を増殖させることによって選択した。これらの選択培地上に24時間以内に出現したコロニーを、同じ培地でレプリカプレート作製し、増殖後、15%グリセロール/栄養ブロス中で−80℃で保存した。
【0051】
MBX245およびMBX247を、30μg/mlのナリジクス酸(naladixic acid)を含むLBプレート上で、それぞれ、MBX23およびLS5218を増殖させることによって選択した。MBX246およびMBX248を、50μg/mlのリファンピシンを含むLBプレート上で、それぞれ、MBX23およびLS5218を増殖させることによって選択した。24時間以内にこれらの選択培地上に出現したコロニーを、同じ培地でレプリカプレートを作製し、増殖後、15%グリセロール/栄養ブロス中で−80℃で保存した。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
(実施例2)
(実施例2:phb遺伝子の組込みを容易にするクローニングベクターの構築)
プラスミドpMNXTplkanおよびプラスミドpMNXTplcatは、プラスミドpUC18NotおよびプラスミドpUCl8Sfiに基づき、図1に示されるように開発された。
【0055】
プラスミドpBGS18由来のTn903カナマイシン(Km)耐性遺伝子を、オリゴヌクレオチドプライマーlinkK1、5’TGCATGCGATATCAATTGTCCA GCCAGAAAGTGAGG、およびlinkK2、5’ATTTATTCAACAAAGCCGCCを使用して、PCRによって増幅した。
【0056】
PCR増幅の前に、これらのプライマーを、T4ポリヌクレオチドキナーゼを用いて標準的手順を使用してリン酸化した。このDNaを、以下のプログラムを使用して増幅した:1サイクル(95℃で3分間、42℃で40秒間、72℃で2分間)続いて30サイクル(95℃で40秒間、42℃で40秒間、および72℃で90秒間)。次いで、DNAをフェノール抽出し、T4 DNAポリメラーゼで処理し、その後ゲル精製した。次いで、平滑末端の0.8kb DNAフラグメントを、pUC18Notのポリリンカー中のEx1136II部位に挿入して、pMNXkanを得た。
【0057】
cat遺伝子を、Pharmacia(Pharmacia Inc.NJ)からHindIIIカセットとして得、DNAポリメラーゼのKlenowフラグメントを使用して平滑末端化し、そしてpUC18NotのEc1136II部位に挿入して、pMNXcatを得た。
【0058】
trpターミネーター配列を、2つの合成オリゴヌクレオチドTERM1(5’CCCAGCCCGCTAATGAGCGGGCTTTTTTTTGAACAA AA 3’)およびTERM2(5’TACGTATTTTGTTCAAAAAAAAGCCCGCTCATTAGCGGGCTGGG 3’)をアニーリングさせることによって構築した。
【0059】
次いで、このターミネーターを、pMNXkanおよびpMNXcatのHindIII−SphI部位に挿入して、pMNXTkanおよびpMNXTcatをそれぞれ得た。これらのベクターを、任意のプロモーターフラグメントがSphI部位およびSacI部位の間に付加され得るように構築した。プロモーターpを、合成オリゴヌクレオチドPHBB1(5’TACGTACCCCAGGCTTTACATTTATGCTTCCGGCTCGTATGTTGTGTGGAATTG TGAGCGGTT 3’)およびPHBB2(5’TTCGAACCGCTCACAATTCCACACAACATACGAGCCGGAAGCATAAATGTAAAGCCTGGGG 3’)のアニーリングによって構築した。続いて、DNAポリメラーゼのKlenowフラグメントを用いて末端を平滑化した。次いで、平滑末端化プロモーターフラグメントpをpMNXTkanおよびpMNXTcatのHincII部位に挿入して、pMNXTpkanおよびpMNXTpcatをそれぞれ得た。
【0060】
TpcatカセットをpMNXTpcatからEcoRI−HindIIIフラグメントとしてpUC18SfiのEcoR1−HindIII部位に移すことによって、プラスミドpMSXTpcatを構築した。同様に、Tpkanを含むEcoRI−HindIIIフラグメントをpUC18SfiのEcoRl−HindIII部位に移すことによって、pMSXTpkanを構築した。
【0061】
(実施例3)
(実施例3:PHBポリメラーゼをコードするphbCの染色体組込みのためのプラスミドの構築)
図2に示されるように、プラスミドpMUXCcatは、レシピエント株の染色体上でのこの遺伝子の組込みのために、転位因子上にZ.ramigera由来のphbC遺伝子を含む。強力な翻訳配列をpKPS4から得、これは、pTrcベクター(Pharmacia)中のP.oleovoransからのPHAポリメラーゼをコードするphaClを含む。この構築物において、phaClの前には、強力なリボソーム結合部位:AGGAGGTTTTT(−ATG)がある。このphaC1遺伝子(上流の配列を含む)を、pUC18SfiのSmaI部位に平滑末端EcoRl−HindIIIフラグメントとしてクローニングして、pMSXCを得た。平滑末端cat遺伝子カセットを、引き続いて平滑末端Sse8387II部位にクローニングし、pMSXCcatを得た。この時点において、5’の27塩基対以外のphaC1コード領域のすべてを、PstI−BamHIフラグメントとして除去し、そしてZ.ramigera由来のphbC遺伝子由来の対応するフラグメントで置き換えた。得られるプラスミドpMSXCcatは、P.oleovorans PHAポリメラーゼ由来の9アミノ末端残基、および残りのZ.ramigera由来の残基を有する、ハイブリッドPHBポリメラーゼ酵素をコードする。次いで、このCcatカセットを、AvrIIフラグメントとして切除し、そしてpUTHgの対応する部位においてクローニングし、それによってこのベクター由来の水銀耐性マーカーを欠失させる。得られるプラスミド、pMUXCcatは、Ccatミニトランスポゾンを含み、ここでphbCの前には、プロモーター配列はない。従って、組込みに基づくこのカセットの発現は、組込み部位に隣接するDNAによって提供される転写配列に依存する。
【0062】
(実施例4)
(実施例4:チオラーゼおよびレダクターゼをコードするphbABの染色体組込みのためのプラスミドの構築)
図3に部分的に示されるように、pMSXTpABkan2をpMSXTpkanから構築した。第1のpMSXTpkanをNdeIで消化し、Klenowで平滑化し、そして再連結して、pMSXTpkan2を得た。ここで、NdeI部位は欠失されている。この欠失は、クローニング手順の後の段階で、Z.ramigeraのphbAのすぐ上流の独特なNdeI部位を生じる。
【0063】
を、pUCDBK1(Peoples and Sinskey 1989, Molecular Microbiol. 3: 349−357)由来のNarIフラグメントとしてクローニングし、そしてpUCl8SfiのHincII部位にクローニングして、pMSXBを生成した。AをFseI/blunt−SalIフラグメントとして、Ecll36II−SalI部位に挿入して、pMSXABを得、そしてZ.ramigera AB遺伝子間領域を再生した。pMSXABcatを、pMSXABのHindIII部位に、プロモーターを有さないcatカセットを挿入することによって作製した。pMSXABcat由来のABフラグメントを、EcoRI−PstIフラグメントとして、pMSXTpkan2のSmaI部位にクローニングして、pMSXTpABkan2を得た。
【0064】
次いで、発現カセットABcatを2.8kb AvrIIフラグメントとして切除し、そしてpUTHgのAvrII部位に連結し、そしてE.coli株CC118 λpirに形質転換して、プラスミドpMUXABcatを得た。次いで、このプラスミドを、E.coli S17−1λpirに形質転換し、そしてこれを使用して、接合によってE.coli MBX247の染色体にAB5cat発現カセットを挿入した。得られるAp/Cmトランス接合体を、phbAB遺伝子によってコードされるチオラーゼ遺伝子およびレダクターゼ遺伝子の組込みおよび発現について特徴付けた。
【0065】
(実施例5)
(実施例5:phbABのE.coli染色体への組込みのための改善されたプロモーターを有するプラスミドの構築)
図3に示されるように、phbAB5の発現を、これらの遺伝子の上流の強力なプロモーターの導入によって改善した。これらのプロモーターを、上流の活性化配列、−35プロモーター領域、転写開始部位を有する−10プロモーター領域、および可能な安定化機能を有するmRNA配列を提供する、オリゴヌクレオチドのセットを用いて生成した。プラスミドpMSXTpABkan2を、PstI/XbaIを用いて消化し、そしてlacプロモーターの−10領域を含むフラグメントを、オリゴヌクレオチド3A(5’GGCTCGTATAATGTGTGGAGGGAGAACCGCCGGGCTCGCGCCGTT)および3B(5’CTAGAACGGCGCGAGCCCGGCGGTTCTCCCTCCACACATTATACGAGCCTGCA)をアニーリングさせた後に得られるフラグメントとして挿入した。次に、lac−35領域およびrrnB領域を含むフラグメントを、オリゴヌクレオチド:1A(5’TTCAGAAAATTATTTTAAATTTCCTCTTGACATTTATGCT GCA)および1B(5’GCATAAATGTCAAGAGGAAATTTAAAATAATTTTCTGAATGCA)をアニーリングさせた後に得られるフラグメントとしてPstI部位に挿入した。次に、ABからの転写開始部位を含むメッセンジャー安定化配列を、オリゴヌクレオチド:4A(5’CTAGTGCCGGACCCGGTTCCAAGGCCGGCCGCAAGGCTGCCAGAACTGAGGAAGCACA)および4B(5’TATGTGCTTCCTCAGTTCTGGCAGCCTTGCGGCCGGCCTTGGAACCGGGTCCGGCA)をアニーリングさせた後に得られるフラグメントとしてXbaI−NdeI部位に挿入した。得られるプラスミドは、pMSXp11ABkan2である。Tp11ABkan2を含むAvrIIフラグメントを、AvrIIで切断したpUTHgにクローニングし、MBX379およびMBX245のゲノムへの組込みのために使用した。
【0066】
プラスミドpMSXTp12ABkan2を、以下のオリゴヌクレオチド:2A(5’TCCCCTGTCATAAAGTTGTCACTGCA)および2B(5’GTGACAACTTTATGACAG GGGATGCA)がオリゴヌクレオチド1Aおよび1Bの代わりに使用されたという区別を有するpMSXTp11ABkan2として構築した。これらのオリゴヌクレオチドは、コンセンサスE.coli phoボックスおよび−35プロモーター領域を提供し、培地中のリン酸濃度によって強力に調節されるプロモーターを生成する。
【0067】
pMSXTp13ABkan2を構築して、一般的なストレス条件下(例えば、栄養の制限、pHまたは熱ショック、および毒性化学物質の投与)で発現されることが示されているプロモーターからのABの発現を提供した。uspAのプロモーター領域をオリゴヌクレオチドUspUp(5’TGACCAACATACGA GCGGC)およびUspDwn(5’CTACCAGAACTTTGCTTTCC)を使用して、PCR反応(95℃で3分間のインキュベーション、続いて95℃で40秒間、42℃で40秒間、68℃で7分間のインキュベーションの30サイクル、および4℃での最終保存からなる)において増幅した。約350bp PCR産物を、PCR2.1(Invitrogen Corp.,USA)にクローニングして、pMBXp13を生成した。プロモーターおよびuspAについての転写開始部位およびuspA mRNAの最初の93bpを含む約190bpのHincII−MscIフラグメントを、平滑末端BamHI−Sse8387I pMSXTpkan2にクローニングし、pMSXTp13kan2を得た。次いで、プラスミドpMSXTp13kan2を、KpnIで消化し、T4ポリメラーゼで平滑末端化し、そして仔ウシ腸ホスファターゼを使用して脱リン酸化した。AB遺伝子を、pMSXABからの2.0kb EcoRI/Sse8387Iフラグメントとして単離し、KlenowおよびT4ポリメラーゼを使用して平滑末端化し、そしてpMSXTp13kan2のKpnI部位に連結した。得られるプラスミドpMSXTp13ABkan2において、phbAB遺伝子およびkan遺伝子は、uspA(p13)プロモーターから発現される。
【0068】
次いで、pABkan(n=11、12、13)発現カセットは、2.8kb AvrIIフラグメントとして切除され、そしてpUTHgのAvrII部位に連結され、そしてE.coli株CC118 λpirに形質転換されて、プラスミドpMUXpABkanを得た。次いで、このプラスミドを、E.coli S17−1λpirに形質転換し、そしてこれを使用してp11ABkan、p12ABkan、およびp13ABkan発現カセットを、接合によってE.coli株の染色体に挿入した。
【0069】
(実施例6)
(実施例6:E.coliの染色体へのCcatの組込み)
catを、ドナー株としてS17−1 λpir(pMUXCcat)を使用して、接合によってMBX23の染色体に導入した。接合混合物をLB/Nl/Cmプレートに広げ、そして組込み体を得た。それらの40%がアンピシリンに感受性であり、このことは、これらの株にはプラスミドが存在しないことを示した。5つの組込み体を、pMSXABcat(Ap)を用いて形質転換し、そしてPHBポリメラーゼの生合成活性を試験するためにLB/Ap/Cm/2% グルコースで増殖させた(表4)。
【0070】
【表4】

【0071】
(実施例7)
(実施例7:組み込まれた株におけるC5発現の増幅)
PHBポリメラーゼの発現を、100、200、500、および1000μg/mlのクロラムフェニコールを含むLBプレートでMBX326を連続的に再ストリークすることによって増大させた。株MBX379を、MBX326から誘導し、そして1000μg/mlまで高いクロラムフェニコール耐性を示した。MBX379およびその祖先から単離された染色体DNAのサザンブロット分析において、phbC5のコピー数は増加しなかった。ウェスタンブロット分析は、phbAB遺伝子がプラスミドに存在した場合に、これらの株の無細胞抽出物においてPHBポリメラーゼレベルの強力な増加を示した。
【0072】
(実施例8)
(実施例8:p11ABkan、p12ABkan、およびp13ABkanのMBX379への組込み)
pMUXp11ABkan、pMUXp12ABkan、またはpMUXp13ABkanのいずれかを有するS17−1 λpir株を、MBX379と接合させた。phbABkanがその染色体に組み込まれたトランスジェニック株を、LB/Nl/Kmプレート上で選択した。組込み体の間で、PHBプロデューサーをLB/グルコースプレート上で同定した。個々の構築物の表示は、MBX612(MBX379::p11ABkan)、MBX677(MBX379::p12ABkan)、およびMBX680(MBX379::p13ABkan)であった。サザンブロットおよびウェスタンブロットは、phbAB遺伝子が染色体に組込まれ、これらの株においても同様に発現されたことを示した。表5は、2%グルコースを有するLuria−Bertani培地、または2%グルコースおよび0.5%トウモロコシ浸漬液を含む最小E2培地中で増殖させたトランスジェニックE.coli PHBプロデューサーのPHB蓄積レベルを示す。
【0073】
【表5】

【0074】
(実施例9)
(実施例9:改善された株を産生するための選択およびバクテリオファージP1形質導入)
MBX612、677、および680の増殖特性を、バクテリオファージP1形質導入によって改善した。単回の形質導入工程が、異なる株由来のCcat対立遺伝子およびABkan対立遺伝子をLS5218に形質導入するために必要であった。このことは、2つの別々の組込みカセットを、染色体上で互いに密接させて配置したことを示す。得られる株は、MBX690(MBX681由来)、MBX691(MBX677由来)、およびMBX698(MBX680由来)である。制限された窒素を有する最小E2培地上でのMBX612の反復接種は、MBX681を生じた。P1形質導入によって生成される株と違って、MBX681は、改善された増殖特性を示さなかった。サザンブロットおよびウェスタンブロットは、phbC遺伝子およびphbAB遺伝子が首尾よく形質導入され、そしてこれらの株中で同様に発現されたことを示す。以下の表6は、2%グルコースを有するLuria−Bertani培地、または2%グルコースおよび0.5%トウモロコシ浸漬液を含む最小E2培地中で増殖させた、これらのトランスジェニックE.coli PHBプロデューサーについてのPHB蓄積レベルを示す。
【0075】
【表6】

【0076】
(実施例10)
(実施例10:PHB産生についてのトランスジェニックE.coli株のさらなる改善)
NTGまたはEMSを使用する変異誘発を使用して、MBX680中のPHB産生をさらに改善した。MBX769株およびMBX777株を、EMSおよびNTGをそれぞれ用いたMBX680の処理後に選択した。これらの株は、1%グルコース、0.5%トウモロコシ浸漬液、および1mg/ml クロラムフェニコールを補充したR2培地上で増殖し得ることが見出された。MBX769を、2または3% グルコースを有する50ml R−10培地/0.5% CSL中で、37℃にて20時間〜26時間増殖させた。PHBは、細胞乾燥重量の71%まで蓄積した。同様に、MBX769は、0.375g/L KHPO、0.875 KHPO、0.25(NHSO、および総計50g/Lグルコース(インキュベーションの過程にわたって5つのアリコートを添加した)を含むかまたは含まない、50mL LB中で増殖させた。63時間のインキュベーションの後、PHBは細胞乾燥重量の96%まで蓄積した。
【0077】
MBX777由来のphbC対立遺伝子およびphbAB対立遺伝子を、引き続きLS5218に形質導入し、MBX820を得た。サザンブロットおよびノーザンブロットは、phbC遺伝子およびphbAB遺伝子が首尾よく形質導入され、そしてこれらの株中で同様に発現されたことを示す。表7は、2%グルコースを有するLuria−Bertani培地、または2%グルコースおよび0.5%トウモロコシ浸漬液を含む最小E2培地中で増殖させた、これらのトランスジェニックE.coli PHBプロデューサーのPHB蓄積レベルを示す。
【0078】
【表7】

【0079】
(実施例11)
(実施例11:トランスジェニックE.coli PHBプロデューサーの増殖特性)
phb遺伝子のMBX245への導入(t=47分)は、増殖速度における減少に付随した(MBX680、t=71分)。改良したPHB産生は、EMS変異誘発によって達成されたが、増殖速度を改良しなかった(MBX777、t=72分)。PHB遺伝子の野生型株(MBX184)へのP1形質導入は、MBX245によって示される速度と同程度の速い増殖速度、および24時間未満に細胞乾燥重量の50%までのPHB蓄積を生じた(MBX820、t=45分)。
【0080】
(実施例12)
(実施例12:他のpha遺伝子の染色体組み込みのためのプラスミド)
本明細書中に記載されるZ.ramigera由来のphbC、phbAおよびpAbBの組み込みはまた、他のpha遺伝子(例えば、R.eutropha由来のPHBポリメラーゼをコードする遺伝子(C1)、P.oleovorans由来のPHAポリメラーゼをコードする遺伝子(C3)、A.caviae由来のPHBポリメラーゼをコードする遺伝子(C12)、P.putida由来のACP::CoAトランスアシラーゼをコードする遺伝子(G3)、A.caviae由来の(R)特異的エノイル(enouyl)−CoAヒドラターゼをコードする遺伝子(J12)、R.eutropha由来の広範囲基質特異的3−ケトアシル−CoAチオラーゼをコードする遺伝子(A1−II)、またはR.eutropha由来のファジン(phasin)をコードする遺伝子(P1−IおよびP1−II))に適用可能である。これらの遺伝子を、以下のプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応増幅によって得た:
【0081】
【化1】

PCR反応物は、10pmolの各プライマー、1〜5μlの染色体DNAまたは煮沸した細胞、およびGibco BRL(Gaithersburg,MD)からの45μl PCR混合物を含んだ。増幅は、94℃で60秒のインキュベーション、45℃と68℃との間の温度で60秒のインキュベーションならびに72℃で1〜3分のインキュベーションの30サイクルによった。PCR産物を精製し、EcoRIおよびHindIIIで消化し、DNAポリメラーゼのKlenowフラグメントで平滑末端化し、そして図1および図2に示されるスキームに従ってpMSXcat、pMSXkan、pMNXcatまたはpMNXkanのSmaI部位にクローン化した。pMUXphaは、pUTHgまたはpUTkan由来であった;そして、pMLXphaは、pLOFHg由来であった(ここで、phaは選り抜きのpha遺伝子を表す)。これらのプラスミドを、所望のpha遺伝子をE.coliまたはPHA産生に適切な任意の他のグラム陰性微生物株の染色体へ組み込むために使用した。
【0082】
(実施例13)
(実施例13:PHBVコポリマーを産生するトランスジェニックE.coli株)
上記に記載されるような、染色体に組み込まれたphb遺伝子を有するE.coli株をまた使用して、PHBVコポリマーを産生した。PHBVは、一般に、プロピオン酸がグルコースまたは他の糖質と同時補給される(co−fed)発酵系において合成される。取り込み後、プロピオネートは、プロピオニル−CoAに変換され、これは、アシル−CoAチオラーゼおよび3−ケトアシル−CoAレダクターゼの作用により、3−ヒドロキシバレリル−CoA(3HV−CoA)に変換される。3HV−CoAは、続いてPHAポリメラーゼによって重合される。
【0083】
PHBVを蓄積する能力は、HVモノマーを特異的に合成する酵素のレベルを増大させることによって増大し得る。このような酵素は、プロピオン酸の取り込み、プロピオン酸のプロピオニル−CoAへの活性化、または任意のPHB生合成酵素に関与し得る。さらに、代替の酵素は、他の供給源から単離され得るか、またはプロピオニル−CoAは、代替の経路から(例えば、メチルマロニル−CoA経路から)得られ得る。この経路において、スクシニル−CoAは、メチルマロニル−CoAに変換され、これは次いで、脱カルボン酸化されてプロピオニル−CoAを生じる。
【0084】
(実施例14)
(実施例14:PHB−4HBコポリマーを産生するトランスジェニックE.coli株)
4HBモノマーを含むホモポリマーおよびコポリマーを、トランスジェニックE.coli株によって産生し得る。4HB−CoA由来の4HBの組み込みを、PHA産生生物に対する4−ヒドロキシブチレートの補給によって達成し得る。4HBを、4−ヒドロキシブチリル−CoAトランスフェラーゼ(例えば、Clostridium kluyveri由来のhbcT(OrfZ))によるか、または内因性E.coli酵素もしくはこの能力を有する任意の他の酵素によるかのいずれかで、4HB−CoAに活性化する。P4HBホモポリマーは、トランスジェニックE.coli株がphbC遺伝子のみを含む場合に産生される。4HBを含むコポリマーは、トランスジェニックE.coli株が完全なPHB生合成経路をコードする遺伝子を含む場合に合成され得る。
【0085】
E.coli MBX821(LS5218::C−cat379、atoC)を、Luria−Bertani培地中で増殖させ、そして5g/L 4HBおよび2g/L グルコースを含有する100mlの10% LB中に再懸濁した。この培養物を24時間インキュベーションした後、PHAを特徴付けし、そして4HBモノマーのみを含むと同定した。同様に、hbcT(例えば、pFS16)を含むプラスミドを有するE.coli MBX777を、LB/4HB(5g/L)中で増殖させ、そして得られたポリマーを、35.5%の4HBモノマーを含有するPHB4HBと同定した。
【0086】
(実施例15)
(実施例15:染色体外DNAを含有しない組換えE,coli中での4−ポリヒドロキシブチレートからのポリ(4−ヒドロキシブチレート)の産生)
ポリ(4−ヒドロキシブチレート)を、プラスミドから4−ヒドロキシブチリル−CoAトランスフェラーゼ(hbcT)遺伝子およびPHAシンターゼ(phaC)遺伝子を発現するE.coliによって、4−ヒドロキシブチレートから合成し得る。これらの遺伝子がE.coli染色体へ組み込まれ、そして高レベルで発現される場合、組換えE.coliは、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)を4−ヒドロキシブチレートから合成し得るべきである。hbcT遺伝子およびphbC遺伝子を、以下のようにpUTHg(Herreroら、J.Bacteriol.172:6557〜67,1990)に挿入した。pMSXCcatおよびpFS16を両方、BamHIおよびSalIで消化した。このようにして得られたpMSXCcatの大きなフラグメントおよびhbcT遺伝子を含むpFS16のフラグメントを、T4 DNAリガーゼを用いて共に連結して、pMSXChbcT−catを形成した。phaC遺伝子、hbcT遺伝子およびcat遺伝子を含むフラグメントを、AvrIIでの消化によってpMSXChbcT−catから取り出し、そしてそれを、ArvIIで消化され、そして自己連結を防止するために仔ウシ腸アルカリホスファターゼで処理されたpUTHgへT4 DNAリガーゼを用いて挿入した。このようにして得られたプラスミドを、pMUXChbcT−catと命名した。このプラスミドpMUXChbcT−catを、MBX129中に複製し、そしてMBX1177へ結合体化した。株MBX1177は、それが最小の4−ヒドロキシブチレート寒天プレート上で増殖する能力について選択されたE.coli株DH5αの偶発変異体である。MBX1177はまた、ナリジクス酸に対して天然に耐性である。レシピエント細胞を、25μg/mL クロラムフェニコールおよび30μg/mL ナリジクス酸を補充したLB−寒天上でプレート化することによってドナー細胞から分離した。このプレートからの生存物を、1リットルあたり、以下を含む最少培地上で再び画線した:15g 寒天;2.5g/L LB粉末(Difco;Detroit,Michigan);5g グルコース;10g 4−ヒドロキシブチレート;1mmol MgSO;10mg チアミン;0.23g プロリン;25.5mmol NaHPO;33.3mmol KHPO;27.2mmol KHPO;2.78mg FeSO・7HO;1.98mg MnCl・4HO;2.81mg CoSO・7HO;0.17mg CuCl・2HO;1.67mg CaCl・2HO;0.29mg ZnSO・7HO;および0.5mg クロラムフェニコール。特に白く不透明であるようであるこのプレートからのコロニーを、寒天を含有しないことを除いては上記と同じ培地を含む振盪フラスコ中で評価した。個々のコロニーを、まず、3mLのLB培地中で8時間増殖させ、そして0.5mLの各培養物を使用して、上記の50mLの培地に接種した。これらのフラスコを、30℃で96時間インキュベートした。1つの単離物は、GC分析(このために、細胞を10分間、2000×gでの遠心分離によって培地から取り出し、そして水で一回洗浄し、次いで再び遠心分離し、凍結乾燥した)によって、4.9重量%のポリ(4−ヒドロキシブチレート)を含むことが見出された。この株を、MBX1462と示し、そしてさらなる操作について選択した。MBX1462を、MBX1462の液体培養物を0.1mg/mL MNNGに90分間曝露することによって、化学変異原である変異原1−メチル−3−ニトロ−1−ニトロソグアニジン(MNNG)で処理した。99.8%の細胞が、この処理によって殺傷されたことが見出された。上記のプレーティングおよび振盪フラスコ実験を繰り返し、そして1つの単離物が、GC分析によって、11重量%のポリ(4−ヒドロキシブチレート)を含むことが見出された。この株を、MBX1476と示し、そしてさらなる操作について選択した。NTG処理を繰り返し、そして96.3%の細胞が殺傷された。上記のプレーティングおよび振盪フラスコ実験を再度繰り返し、そして1つの単離物が、GC分析によって、19重量%のポリ(4−ヒドロキシブチレート)を含むことが見出された。この株を、MBX1509と示した。
【0087】
(実施例15)
(実施例15:PHBHコポリマーを産生するトランスジェニックE.coli株)
E.coli MBX240は、Ralstonia eutropha由来の、PHBポリメラーゼをコードするphbC遺伝子の染色体的に組み込まれたコピーを含む、XL1−blue(Stratagene,San Diego,CA)誘導体である。アセチル−CoA(グルコースのような糖質から生成される)または脂肪酸の酸化中間体を、重合のための(R)−3−ヒドロキシアシル−CoAモノマーへ変換する酵素が存在しないので、この株は、グルコースまたは脂肪酸のような炭素源からPHAを形成しない。EcoRIおよびPstIで消化したA.caviae由来のphaJ遺伝子をpUC18Sfiの対応部位へ挿入することによって、pMSXJ12を構築した。phaJ遺伝子を、95℃で45秒、55℃で45秒および72℃で2.5分の30サイクルを含むPCRプログラムを使用して、プライマーAc3−5’:5’AGAATTCAGGAGGACGCCGCATGAGCGCACAATCCCTGGおよびAc3−3’:5’TTCCTGCAGCTCAAGGCAGCTTGACCACGを使用するポリメラーゼ連鎖反応によって得た。Aeromonas caviae由来のphaJ遺伝子によってコードされる(R)−特異的エノイル−CoAヒドラターゼを含むプラスミドpMTXJ12を有するE.coli MBX240の形質転換体を、10mM オクタノエートおよび1mM オレエートを有するLuria−Bertani培地上で増殖させた。48時間の増殖後、細胞を遠心分離によって50mlの培養物から収集し、そして細胞ペレットを凍結乾燥した。凍結乾燥した細胞をクロロホルム(8ml)で16時間抽出し、そしてPHAを、10倍過剰のエタノールにクロロホルム層を添加することによって、クロロホルム溶液から特異的に沈殿させた。沈殿物を4℃で生じさせ、そして固体ポリマーを風乾し、そして酸性ブタノリシス(butanolysis)によって組成について分析した。ブチル化PHAモノマーを、ガスクロマトグラフィーによって分離し、そしてこのPHAを、2.6% 3−ヒドロキシヘキサノエートモノマーを有するポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート)コポリマーと同定した。
【0088】
(実施例16)
(実施例16:PHA産生のための新たなおよび/または改良した遺伝子のスクリーニングのためのトランスジェニックE.coli株の構築)
phbC遺伝子を、バクテリオファージP1形質導入によってE.coliクローニング株へ導入した。phbC組み込みに従う手順と同様の手順において、R.eutropha由来のphbC遺伝子を、MBX23の染色体へ組み込み、MBX143を得た。クロラムフェニコール増幅後、MBX150(これは、500μg/ml クロラムフェニコールに耐性である)を、単離した。MBX150上で増殖したバクテリオファージP1溶解物を使用して、phbC−cat対立遺伝子をXL1−Blue[pT7−RecA]へ形質導入した。プラスミドpT7RecAは、首尾よいP1形質導入に必要な機能的RecAタンパク質を発現する。得られた株MBX240は、染色体から発現される機能的PHBポリメラーゼを含むXL1−Blue誘導体である。MBX613およびMBX683を、同じ手順を使用して開発した。これらの株は、それぞれ、MBX245およびXL1−Blue由来であり、組み込まれたABcat(MBX613)またはp13ABkan(MBX683)オペロンを含む。
【0089】
(実施例17)
(実施例17:新たな、改良された、または補助的なPHA生合成酵素をコードする遺伝子の同定)
MBX240、613および683は、新たなまたは改良されたPHA遺伝子についてのスクリーニング手順において使用され得る3つの株である。これらの株を使用して、以下の遺伝子を同定した:P.acidophila由来のphbCABFA2およびA.latus由来のphbCAB。さらに、A.caviae由来のphaJ遺伝子をMBX240中で機能的に発現して、脂肪酸からPHAを生成した。C〜Cモノマーに特異的なPHA生合成遺伝子に加えて、中鎖側鎖3−ヒドロキシ酸からなるPHAについてのPHA生合成酵素はまた、E.coli中で発現され得る。このような株は、さらなるPHA生合成酵素を同定することにおいて有用である。
【0090】
(実施例18)
(実施例18:R.eutropha中へのpha遺伝子の組み込み)
先の実施例に記載されるプラスミドを使用して、R.eutropha中へpha遺伝子を組み込んだ。R.eutrophaのPHA陰性変異体(例えば、#2(PeoplesおよびSinskey,J.Biol.Chem.264:15298〜303(1989))またはPHB−4(Schubertら、J.Bacteriol.170:5837〜47(1988)))を使用して、PHA形成を、Z.ramigera由来のphbABまたはA.caviae由来のphaJと組み合わせたA.caviae由来のphaCの組み込みによって元に戻す。得られた株は、可変的なレベルのPHAを産生し、このPHAは、400,000〜10,000,000Daの範囲の分子量を有し、そして3−ヒドロキシヘキサノエートおよび3−ヒドロキシオクタノエートのようなモノマーを含む組成物を有する。
【0091】
(実施例19)
(実施例19:P.putida中でのpha遺伝子の組み込み)
先の実施例に記載されるプラスミドを使用して、Pseudomonas putida中へpha遺伝子を組み込んだ。P.putida GPp104のPHA陰性表現型(Huismanら、J.Biol.Chem.266:2191〜98(1991))を、phaC3がP.oleovorans由来のPHAポリメラーゼをコードするphaC3kanカセットの組み込みによって、元に戻す。pMUXC3kanを使用するphaC3kanの組み込みをまた、phaC以外のPHA代謝に影響を及ぼす酵素をコードする遺伝子における変異を有するP.putidaの変異体を生成するために適用した。A.caviae由来のPHAポリメラーゼ遺伝子をまた、染色体へ導入して、C〜C範囲の3−ヒドロキシ脂肪酸を含むPHAを産生する株を生じた。
【0092】
(実施例20)
(実施例20:得られるPHAの分子量を制御するためのphaC遺伝子の染色体組み込み)
基質が過剰に利用可能である場合、PHAポリメラーゼの濃度が、産生されるPHAの分子量を決定することは、周知である。ポリマーの特性は分子量に依存するので、分子量のバリエーションは望ましい。phb遺伝子の染色体組み込みは、染色体組み込み部位によって決定されるような、pha遺伝子の可変的な発現レベルを生じる。従って、可変的なレベルのphaC発現を有する異なるトランスジェニック細菌を得ることが可能であり、それゆえに、可変的な分子量のPHAを産生することが可能である。この系を用いて、400,000Daより多い、そして頻繁にはなお1,000,000Daを超える分子量を有するPHAを産生することが可能である。この手順は、pUTまたはpLOFに由来するプラスミドが導入され得る任意のグラム陰性細菌(例えば、E.coli、R.eutropha、P.putida、Klebsiella pneumoniae、Alcaligenes latus、Azotobacter vinelandii、Burkholderia cepacia、Paracoccus denitrificansおよび一般には、Escherichia、Pseudomonas、Ralstonia、Burkholderia、Alcaligenes、Klebsiella、Azotobacter属の種)に対して適用可能である。
【0093】
(実施例21)
(実施例21:単一オペロンとしてのPHB遺伝子の組み込み)
プラスミドpMSXABCkanを、Zoogloea ramigera由来のチオラーゼ(phbA)、レダクターゼ(phbB)およびPHBシンターゼ(phbC)の遺伝子、ならびにカナマイシン耐性遺伝子(kan)をベクターpUC18Sfi中にオペロンとして連結するように構築した。次いで、この発現カセットを、AvrIIフラグメントとして切り出し、そしてpUTのAvrII部位へ挿入してpMUXABCkanを得た。
【0094】
pMUXABCkanを有するS17−1 λpir株を、MBX247と交配した。phbABCkanが染色体へ組み込まれたトランスジェニック株を、LB/Nl/Kmプレート上で選択した。組み込み体のうちで、PHBプロデューサーを、LB/グルコースプレート上で同定した。このようにして構築した1つの株MBX1164を、さらなる研究のために選択した。
【0095】
チオラーゼ(Nishimuraら、1978,Arch.Microbiol.116:21〜24)およびレダクターゼ(Saitoら、1977,Arch.Microbiol.114:211〜217)アッセイを、MBX1164粗抽出物上で実施した。この培養物を、20g/L グルコースを補充した50mLの0.5×E2培地中で増殖させた。1単位(U)を、1分あたり1μmolの基質を産物に変換させる酵素の量として定義した。3−ケトチオラーゼ活性は、2回の独立試行において、2.23±0.38および2.48±0.50U/mgであると決定され、そして3−ヒドロキシブチリル−CoAレダクターゼ活性は、2回の独立試行において、4.10±1.51および3.87±0.15U/mgであると決定された。
【0096】
株MBX1164を、角型振盪ボトル(square shake bottle)中でのそのPHB産生能力について評価した。細胞を、2mLのLB中で増殖させ、そしてこの0.1mLを、50mLの振盪ボトル培養のための接種材料として使用した。振盪ボトルは、0.25% コーンスティープリカー(Sigma,St.Louis,MO)および20g/l グルコースを補充したE2培地を含んだ。200rpmで振盪しながら30℃で48時間のインキュベーション後、生物体量の濃度は、2.6g/Lに達し、そしてPHB濃度は、11.7g/Lに達した;従って、細胞は82重量%のPHBを含んだ。
【0097】
(実施例22)
(実施例22:Pseudomonas oleovorans PHAシンターゼのE.coli染色体への組み込み)
P.oleovorans染色体由来のPHAシンターゼ(phaC)カセット、およびプロモーターを有さないクロラムフェニコール耐性遺伝子を、pUC118へ挿入し、その結果、2つの遺伝子のオペロンを形成した;すなわち、これらは、同じ方向に配向し、そして同じmRNA上に転写され得る。P.oleovorans phaC遺伝子の配列を、以下に示す。phaC−catオペロンを、KpnIおよびHindIIIでの消化によってこのプラスミドから切り出し、そして同じ2つの酵素で消化したpUC18SfiIに連結して、pMSXCcatを形成した。これは、phaC−catオペロンがAvrII部位に隣接することを可能にした。phaC−catオペロンを、AvrIIおよびFspIでの消化によってpMSXCcatから取り出した。pMSXCcatの2つのAvrIIフラグメントはほぼ同じサイズであるので、FspIを使用して、このベクターの残りを二片へ切断することによってphaC−catオペロンの単離を容易にした。AvrIIフラグメントを、AvrIIで消化したpUTkanに連結し、そしてアルカリホスファターゼで処理して自己連結を防止した。このようにして産生したプラスミドを、pMUXCcatと示した。このプラスミド上のオペロンは、実際、phaC−cat−kanからなっていた。株CC118λpir(λpir溶菌性菌株)を、pMUXCcatで形質転換して、株MBX130を産生した。等量の株MBX130およびMBX245を、LB寒天プレート上で混合し、そして37℃で8時間インキュベートした。次いで、混合した細胞を、37℃で一晩のLB−クロラムフェニコール(25μg/mL)−ナリジクス酸(30μg/mL)培養のための接種物として使用した。単一コロニーを、LB−クロラムフェニコール(25μg/mL)−ナリジクス酸(30μg/mL)−カナマイシン(25μg/mL)上でのプレーティングによって、この培養物から単離した。このカセットを他の株の染色体へ導入するためにP1形質導入を使用する能力、ならびにクロラムフェニコールおよびカナマイシンの両方に対する耐性について選択する能力によって示されるように、このようにして単離したコロニーは、染色体上に、形質導入可能なphaC−cat−kanカセットを有する。
【0098】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシアルカノエートを産生する遺伝子操作された微生物であって、チオラーゼ、レダクターゼ、PHBシンターゼ、PHAシンターゼ、アシル−CoAトランスフェラーゼ、およびエノイル−CoAヒドラターゼからなる群より選択されるポリヒドロキシアルカノエートの合成に関与する少なくとも1つの遺伝子がその染色体に組み込まれている、微生物。
【請求項2】
E.coli、Alcaligenes latus、Alcaligenes eutrophus、Azotobactor、Pseudomonas putida、およびRalstonia eutrophaからなる群より選択される、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
前記遺伝子が、トランスポゾン変異誘発を使用して挿入される、請求項1に記載の微生物。
【請求項4】
請求項1に記載の微生物であって、該微生物は、ポリヒドロキシアルカノエートの合成に関与する複数の遺伝子を含み、ここで該遺伝子が、オペロンとして作動可能に連結されて組み込まれる、微生物。
【請求項5】
前記遺伝子が、プロモーターの制御下で作動可能に連結されて組み込まれる、請求項1に記載の微生物。
【請求項6】
前記遺伝子が、上流の活性化配列と作動可能に連結されて組み込まれる、請求項1に記載の微生物。
【請求項7】
前記遺伝子が、mRNA安定化配列と作動可能に連結されて組み込まれる、請求項1に記載の微生物。
【請求項8】
前記遺伝子が、プロモーターと作動可能に連結され、該プロモーターが、培地中のリン酸濃度によって調節されるコンセンサスE.coli phoボックスおよび−35プロモーター領域を含む、請求項5に記載の微生物。
【請求項9】
前記プロモーターが、栄養制限、pHまたは熱ショック、および毒性化学物質の投与のような一般的なストレス条件下で発現を誘導するプロモーターからなる群より選択される、請求項5に記載の微生物。
【請求項10】
前記遺伝子が、選択マーカーと作動可能に連結されて組み込まれる、請求項1に記載の微生物。
【請求項11】
前記遺伝子が、A.eutrophus、Aeromonas caviae、Zoogloea ramigera、Nocardia、Rhodococcus、Pseudomonas Sp.61−3、Pseudomonas acidophila、Pseudomonas oleovarans、Chromobacterium violaceum、およびAlcaligenes latusからなる群より選択される微生物から単離されるか、または該微生物に由来する、請求項1に記載の微生物。
【請求項12】
前記遺伝子が、R.eutropha由来のPHBポリメラーゼ(C1)、P.oleovorans由来のPHAポリメラーゼ(C3)、A.caviae由来のPHBポリメラーゼ(C12)、P.putida由来のACP::CoAトランスアシラーゼ(G3)、A.cabiar由来の(R)特異的エノイル−CoAヒドラターゼ(J12)、R.eutropha由来の広範な基質特異的3−ケトアシル−CoAチオラーゼ(A1−II)、およびR.eutropha由来のファシン(P1−IおよびP1−II)からなる群より選択される、請求項1に記載の微生物。
【請求項13】
前記遺伝子が、前記微生物の染色体上に単一コピーとして組み込まれる、請求項1に記載の微生物。
【請求項14】
産生を増強するポリヒドロキシアルカノエートの合成に関与する遺伝子についてスクリーニングするための方法であって、以下:
チオラーゼ、レダクターゼ、PHBシンターゼ、PHAシンターゼ、アシル−CoAトランスフェラーゼ、およびエノイル−CoAヒドラターゼからなる群より選択されるポリヒドロキシアルカノエートの合成に関与する少なくとも1つの遺伝子がその染色体に組み込まれているポリヒドロキシアルカノエートを産生する遺伝子操作された微生物を変異させる工程;ならびに
ポリヒドロキシアルカノエートの産生の増強についてスクリーニングする工程、
を包含する、方法。
【請求項15】
前記遺伝子が、A.eutrophus、Aeromonas caviae、Zoogloea ramigera、Nocardia、Rhodococcus、Pseudomonas Sp.61−3、Pseudomonas acidophila、Pseudomonas oleovarans、Chromobacterium violaceum、およびAlcaligenes latusからなる群より選択される微生物から単離されるか、または該微生物に由来する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物が、前記遺伝子の組み込みの前に、ポリヒドロキシアルカノエートの産生に必要な1つ以上の遺伝子を欠いている、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記微生物が、ポリヒドロキシアルカノエートを産生し、前記方法が、ポリヒドロキシアルカノエート産生微生物の染色体における組み込みについて、ポリヒドロキシアルカノエートの産生の増加を生じる遺伝子を選択する工程をさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
ポリヒドロキシアルカノエートを産生するための方法であって、以下:
チオラーゼ、レダクターゼ、PHBシンターゼ、PHAシンターゼ、アシル−CoAトランスフェラーゼ、およびエノイル−CoAヒドラターゼからなる群より選択されるポリヒドロキシアルカノエートの合成に関与する少なくとも1つの遺伝子がその染色体に組み込まれている、請求項1〜13のいずれか1項に規定される遺伝子操作された微生物を、適切な基質とともに、該微生物がポリヒドロキシアルカノエートを産生する条件下で培養する工程、
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−279358(P2010−279358A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−137239(P2010−137239)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【分割の表示】特願2000−566442(P2000−566442)の分割
【原出願日】平成11年8月17日(1999.8.17)
【出願人】(398055233)メタボリックス,インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】