説明

トリインターフェロンを産生する組換え植物

【課題】トリへの外来性サイトカイン応用の一環として、植物においてトリインターフェロンを発現できる、生物活性を示し、保存安定性がよい組換え植物を提供すること。
【解決手段】トリインターフェロンタンパク質をコードする遺伝子がゲノムDNAに組み込まれてなることを特徴とするトリインターフェロンを産生する組換え植物。トリインターフェロン−α(ChIFN−α)をコードする遺伝子が植物細胞小胞体内タンパク蓄積に優れた特定のChIFN−αKDEL遺伝子であり、植物発現タンパク質の発現量を高くする特定のトランスファーベクター;プラスミドChIFN−αKDEL−pMLHを用いるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリインターフェロンを産生する組換え植物、その継代育成植物、それら植物からトリインターフェロンタンパク質を採取するトリインターフェロンの製造方法、その方法で製造されたトリインターフェロンを有効成分とする発育鶏卵用抗トリインフルエンザウイルス(AIV)作用剤、前記植物によるChIFN−αKDELの発現を確認するために用いる抗ChIFN−αHisポリクローナルウサギ抗体、および植物形質転換用ベクターに関する。
【背景技術】
【0002】
畜産業は戦後急成長し、それに伴い家畜の飼育頭羽数は増大している。この間、経営体数が減少する一方で経営規模が急拡大し、かつてのように農家の庭先で数頭(数羽)飼っている状態から、専業の大規模経営が生産の大部分を担っている構造になった。特にこの傾向は豚、採卵鶏、ブロイラーで顕著であり、生産量に占める法人経営の割合はそれぞれ50.3%、72.4%、49.5%(95年)に達している。
【0003】
現在、畜産業が大規模経営になってきていることから、飼料、ワクチン、抗生物質などで、安価で良質、そして多数の家畜への効率的な投与が望まれている。しかし、実際には成長促進を目的とした抗菌性飼料添加物や疾病治療のための動物用医薬品が多量に使用されており、これによる薬剤耐性菌の発生等が危惧されている。このため、抗菌性飼料添加物及び動物用医薬品の使用量を低減させる減投薬飼養管理システムの構築に向けて、家畜の免疫機能を活性化させる飼料及び飼料添加物の利用技術の開発、また、動物用医薬品の使用低減のため、微量の薬剤を特定部位(臓器・組織)に効率的、選択的に作用発現させるドラッグデリバリーシステム(薬剤運搬システム)技術の開発が必要とされている。
【0004】
さらに、ワクチンなどの動物医薬品は、家畜の感染症を防御するために有効であるが、その多くは個体ごとに注射器で接種されており、多大な労力を要するばかりでなく、家畜へのストレス、感染症侵入の機会の増大等、生産性を阻害している。以上のことをふまえ、これらの問題を解消する手段として経口ワクチンがあるが、抗原量の低減化および腸管への確実な抗原送達が課題となっている。そこで、ドラッグデリバリーシステム技術を用いて、確実な粘膜免疫の誘導に有効な経口ワクチンが重要となってくる。
【0005】
粘膜免疫システムとは、現在までに解明の進んできた胸腺、骨髄をメルクマールとしてきた全身系・末梢系免疫システムとは異なった誘導・制御機構のもとに作動していることがわかってきた。例えば、頻繁に使用されてきた方法である注射による抗原投与では、全身免疫には効果的に抗原特異的免疫応答が誘導されてきているが、粘膜免疫系には抗原に特異的な抗体誘導を含めて免疫応答が全く誘導されない。しかし、抗原を食べさせる、飲ませる、つまり経口免疫といわれる粘膜免疫システムを介した抗原投与によって、的確に抗原特異的免疫応答を腸管や呼吸器を覆っている粘膜面に誘導、成立させることができる。さらに、同時に全身免疫機構にも抗原特異的免疫応答を誘導するため、二段構えの免疫を宿主側に成立させる利点がある。
【0006】
この粘膜免疫の利点である粘膜系と全身系の両方の免疫を活性化できるという事実は、実際に感染症の予防という観点から臨床への応用が推進されている。ワクチン抗原を経口免疫することで、粘膜系には分泌型IgAを中心とした、そして全身系ではIgGを主体とする免疫応答が誘導できる。このとき、効果的な経口ワクチンを期待するには、抗原特異的免疫応答を賦活する粘膜免疫調節因子、粘膜アジュバントの開発とその併用が必要である。タンパク抗原を単独で経口投与しても効果的に抗原特異的IgA抗体は誘導されてこない。そこで、経口免疫の効果を上げるために粘膜免疫調節因子、粘膜アジュバントの開発を考えなければならない。その一つとして、野生型毒素が粘膜アジュバントとしての可能性を秘めている。しかし、毒性を考えた場合、臨床応用が困難である。そこで、本発明者らは、もともと生体内の免疫活性化物質であるサイトカインが応用できるのではないだろうかと考えた。
【0007】
免疫系は自然免疫系と適応免疫系に分けられて考えられている。病原体に曝された直後は自然免疫が働き、その後効果的な防御である適応免疫へと移行する。適応免疫には大きく分けて液性免疫(液性免疫応答:Th2応答)と細胞性免疫(細胞性免疫応答:Th1応答)の二つがある。液性免疫の中心的存在として抗体がある。抗体は成熟したB細胞が抗原刺激を受けて分化した形質細胞において合成・分泌される物質で、抗原が侵入してきたときに抗原に取り付き、その働きを失わせ排除する作用を持つ。細胞性免疫はTリンパ球、NK細胞、マクロファージ細胞などが主役の免疫である。細胞性免疫の働きは、病原体に感染した細胞を殺してしまうのと同時に病原体の増殖を止めることである。
【0008】
これら免疫応答はサイトカインによって調節されている。サイトカインは免疫応答における細胞間相互作用に関与する一群の分子の呼び名であり、抗体のような特異性を持たないものの総称である。サイトカインはすべてタンパク質あるいはペプチドでしばしば多糖を結合している糖タンパク質からなる。サイトカインは、インターロイキン(IL)、インターフェロン(IFN)、コロニー刺激因子(CSF)そして他のサイトカイン群(例えば、TNF−αなど)の4つのカテゴリーに大きく分類できる。ILと総称されているものは、主としてT細胞が作り出す一群のサイトカイン(IL−2〜IL-6、IL-9、IL-10、IL-13、IL-14、IL−16そしてIL−17)であるが、一部は他の単球(例えば、IL−8、IL−12そしてIL−15など)や組織細胞(例えば、IL−1、IL−6、IL−8、IL−15そしてIL−18など)によっても作り出される。これらのタンパク質は上述したとおり、多種多様な機能を持っているが、多くは他の細胞に働きかけて分裂や分化を引き起こす。それぞれのILは、対応する受容体を発現した限られた細胞にだけ特異的に働く。IFNはある種のウイルス感染の広がりを抑える重要な分子群である。IFNは、多くのウイルス感染における第一線での防御に働き、そのため感染のきわめて初期に作り出される分子である。
【0009】
サイトカインの役割として、免疫のうち細胞性免疫反応の発現の調節に関与するもの(例えば、IL−2、IL−12、IL−15、IFN−γなど)、抗体産生に関与するもの(例えば、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−13など)、炎症の発現や調節に関与するもの(例えば、IL−1、IL−6、IL−8(:IL−8は単球・リンパ球由来の多核白血球及び単球の局所集積作用による炎症メディエーターである)、腫瘍壊死因子(TNF−α)、IL−4、IL−10、IL−13など)、アレルギー反応機構に関与するもの(例えば、IL−3、IL−4、IL−5、IL−13、IL−16、IL−8、IL−12など)、造血機構に関与するもの(例えば、IL−1、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−11、エリスロポエチン、トロンボポエチン、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、マクロファージ・コロニー刺激因子(M−CSF,CSF−1)、造血幹細胞因子(SCF)など)などがある。その多くは直接的あるいは間接的に感染や腫瘍に対する生体防御機構において重要な役割を持つことが明らかになっている。
【0010】
哺乳類では、抗ウイルス活性を持つサイトカインは1型、2型IFNとしてクラス分けされている。多面的な作用を示すサイトカインの一群であるIFNは、低分子タンパク質(分子量20,000〜25,000)である。また、ウイルス、細菌、原虫、サイトカイン、マイトジェン、天然および合成の二重鎖RNAや他の既知の物質に反応して脊椎動物細胞に誘導される。その作用は一般的に抗ウイルス、抗増殖作用、免疫調節が知られ、宿主の防御機構や恒常性において、先天性および後天性の免疫反応をともに強く媒介するとされている。
【0011】
IFNは現在までにIFN−α、β、γ、δ、ε、κ、λ、ω、τが報告されている。1型IFNsはウイルス性として知られ、IFN−α(白血球由来)、IFN−β(ファイブロブラスト由来)、IFN−τ(トロホブラスト由来)、IFN−δ、IFN−ωなどを含み、ウイルス感染によって産生される。また、2型IFNは免疫性IFN(IFN−γ)として知られ、マイトジェン刺激や抗原刺激によって産生される。ウイルスに感染したほとんどのタイプの細胞は培養時にIFN−α/βを産生可能であるが、IFN−γはナチュラルキラー細胞(NK細胞)、CD4陽性1型ヘルパーT細胞(CD4+Th1細胞)、CD8陽性細胞傷害性サプレッサー細胞(CD8+Tc細胞)を含む免疫系のある特定の細胞によってのみ合成される。
【0012】
1972年に、Tom Schaferらが、IFN誘発剤を注射したマウスの乳の中にIFNが見出され、泌乳している母マウスの乳の中に誘発されたIFNが存在している時は新生仔が致死的ウイルス感染から有意に多く生き残ることを報告した。同時に、ヒト及びウシ、ネコの咽頭洗浄液、唾液、鼻腔洗浄液、鼻汁中にIFNが分泌されていて、ウイルス感染時、IFN誘発剤投与時にはその量が増えることが分かったことから、IFNの経口投与に興味をもたれるようになった。経口投与されたIFNは、ヒト及び他の動物において生物学的活性を示し、投薬の最も良い効果は、呼吸器感染中の鼻汁分泌物の中に天然に分泌される濃度と同じ一定の濃度(102〜103IU、IU:International Unit 国際単位)のIFNを口腔粘膜へ与えたときに起こる。これに対して、非経口投与では、経口投与より投与量は106IUと多く、そのために、高用量非経口投与による副作用も危惧されていることから、経口低用量療法の可能性が示唆されている。そして、IFNを低用量経口投与することによって全身的に効果が現れるというメカニズムは多くの研究所で活発に研究されているところである。
【0013】
ShaferらによりIFNが経口投与でも有効であることが証明されると、ヒトおよび牛、豚、犬、猫、鶏において天然型ヒトIFN−α(nHuIFN−α)の様々な臨床報告が数多くなされるようになった。近年、nHuIFN−αはB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなどのウイルス性疾患、カポジ肉腫、非Hodgkin'sリンパ腫、悪性黒色腫などの腫瘍性疾患において、サイトカイン療法として注目を集め、動物においてもサイトカインの治療への使用が、クローニングや新技術の進歩により可能となってきている。実際に、現在では動物用医薬品としてnHuIFN−αの経口投与剤が発売されるようになっている(ビムロン、バイオベット株式会社、東京都)。また、鶏ではニワトリインターフェロン−α(ChIFN−α)の経口投与はニューカッスル病の病状を改善し、マレック病にも細胞学的に効果を表した(非特許文献1:Jarosinski, K. W.ら,J. Interferon Cytokine Res. 21:287-296、非特許文献2:Marcus, P. I.ら, J. Interferon Cytokine Res. 19:881-885)。
【0014】
経口用IFN−αは、口腔内の粘膜細胞表面のIFN受容体と物理的に結合し、免疫細胞に対し体内にある炎症部位に移動するように情報を与える。この情報を受けた免疫細胞は、リンパ節に入り、速やかに炎症部に移動する。一方、受容体に結合しなかったIFN−αは、その後消化管内でアミノ酸にまで分解され、吸収、あるいは排泄される。タンパク質分解酵素により消化された時点で、IFN−αが持っていた情報は失われる。炎症部位では細菌、ウイルスの種類に関係なく免疫細胞は貪食を行い、免疫細胞はその情報を他の免疫細胞に伝えることにより、体内に侵入した細菌やウイルスに特異的に反応する抗体の産生を誘導したり、感染した細胞を破壊したりする。その結果として、炎症部位で起きている感染を抑制することができる。つまり、経口投与されたIFN−αは口腔内に存在する免疫細胞を刺激するだけであり、それに引き続いて起きる免疫反応は、本来、生体が持っている免疫システムに基づいている。
【0015】
宿主細胞の免疫システムのうち、ヘルパー1型T細胞(Th1)応答が重要とされており、哺乳類においてIFN−αはIL−18と相乗的にIFN−γ発現を誘導し、Th1の分化誘導を促すことが知られている。また、IFN−αはIFN−γと違い、熱およびpHに対して安定である。このようなことから、粘膜アジュバントとして、IFN−αは適していると言える。
【0016】
現在、医薬品として用いられているワクチンや生理活性物質の多くは、大腸菌やバキュロウイルスや酵母などの外来遺伝子発現系を用いて生産されている(非特許文献3:McCall, E. J.ら, Protein Expr Purif. 42:29-36;2005、非特許文献4:Smith, G. E.ら, Mol.Cell Biol. 3:2156-2165;1983)。しかし、近年、遺伝子工学の発展により植物に外来遺伝子を導入、発現させることが可能になってきた。植物発現系は、既存の方法に比べて多くの利点がある。植物発現系は発酵タンク培養系に比較して経済的であるため、既存の方法に比して低コストである。また、植物細胞が目的のタンパク質を生産するので精製工程を必要としない。さらに、植物を用いてワクチンなどの機能性タンパク質を生産する場合、動物ウイルスなどのヒトに感染する病原体による汚染の可能性がないことや、弱毒化されたワクチン株による副作用の心配がないことなどの安定性の面でも極めて優れている(非特許文献5:Daniell, H.ら, Trends Plant Sci 6:219-226 ;2001)。
【0017】
そして、作出した作物は、そのまま飼料として経口的に投与することが可能であり、投与の際家畜に与えるストレスを無くすことができる等の利点があり、獣医学領域における有用性は極めて高いと考えられる。
1990年、CurtissとCarneauは、Salmonella, Typhimurium. mutansの表面タンパク質SpaAをタバコに発現させ、これをマウスに食べさせることで抗原特異的粘膜免疫応答を誘導することに成功した(特許文献1:Curtiss, R.ら, Patent application WO 90/02484)。この実験は植物ワクチンを用いた「食べるワクチン」の可能性を初めて示した実験となった。この実験のあと、病原性微生物の感染やその他の病気に対して特異的な免疫活性化を促す機能を持つ植物ワクチンの開発がされている。大腸菌易熱性毒素抗原のタバコ、ジャガイモおよびトウモロコシでの発現(非特許文献6:Haq, T. A.ら, Science 5:268(5211):658,660;1995、非特許文献7:Streatfield, S. J.ら, Vaccine 19(2742-2748);2001)、コレラ毒素抗原のジャガイモでの発現(非特許文献8:Arakawa, T.ら, Nat Biotechnol 16(292-297);1998)、B型肝炎ウイルス抗原のレタスやジャガイモでの発現(非特許文献9:Kapuata, J.ら, FASEB J 13:1796-1799;1999、非特許文献10:Richter, L. J.ら, Nat Biotechnol 18:1167-1171;2000)、ノーウオークウイルス抗原のタバコ及びジャガイモでの発現(非特許文献11:Mason, H. S.ら, Proc .Natl. Acad. Sci. USA 93:5335-5340;1996)等が行なわれた。現在では動物実験や臨床試験により、その安全性と有効性が示されている。また、発現させる植物として、例えばトウモロコシのような穀物種子を使えば、長期間安定でかつ室温での輸送可能なワクチンの開発が可能になる。
【0018】
【特許文献1】Curtiss, R.ら, Patent application WO 90/02484
【非特許文献1】Jarosinski, K. W.ら,J. Interferon Cytokine Res. 21:287-296
【非特許文献2】Marcus, P. I.ら, J. Interferon Cytokine Res. 19:881-885
【非特許文献3】McCall, E. J.ら, Protein Expr Purif. 42:29-36;2005
【非特許文献4】Smith, G. E.ら, Mol.Cell Biol. 3:2156-2165;1983
【非特許文献5】Daniell, H.ら, Trends Plant Sci 6:219-226 ;2001
【非特許文献6】Haq, T. A.ら, Science 5:268(5211):658,660;1995
【非特許文献7】Streatfield, S. J.ら, Vaccine 19(2742-2748);2001
【非特許文献8】Arakawa, T.ら, Nat Biotechnol 16(292-297);1998
【非特許文献9】Kapuata, J.ら, FASEB J 13:1796-1799;1999
【非特許文献10】Richter, L. J.ら, Nat Biotechnol 18:1167-1171;2000
【非特許文献11】Mason, H. S.ら, Proc .Natl. Acad. Sci. USA 93:5335-5340;1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
Ruttanapummaらは、ChIFN−αHis遺伝子をクローニングし、バキュロウイルス発現系で発現させ、本来のIFN−αの特徴である抗ウイルス活性を得ている。比較的高率に精製ができることから、in vivo実験としてはサイトカインを供給可能であるが、家禽への応用となると、より低コストで精製段階も不要な発現系の開発が必要となる。
そこで、本発明者らは、植物においてトリインターフェロン、典型的にはChIFN−αを発現し、葉の中から鶏インターフェロンαを含む葉液を抽出し、生物活性を調べ、飼料として保存するサイトカイン組換え植物の保存法を検討した。
【0020】
1型インターフェロンとして知られるインターフェロンα(IFN−α)は、強い抗ウイルス活性を有するとともに、免疫応答に重要な役割を果たしていることが明らかにされつつある。近年、有効性が臨床的にも証明され、動物用IFN−α製剤が市販されている。
また、現在、植物発現系は、従来の系に比べ、低コスト、安全、精製が不要など多くの利点があり注目されている。そして、作出した作物は、そのまま飼料として経口的に投与することが可能であり、投与の際家畜に与えるストレスを無くすことができることから、獣医学領域における有用性は極めて高いと考えられる。そこで、本発明者らは、トリへの外来性サイトカイン応用の一環として、典型的には、植物でニワトリIFN−α(ChIFN−α)を発現させ、性状を調べた。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、典型的には、すでにクローニング済みのChIFN−α遺伝子の塩基配列を元に、植物細胞内での発現を視野に入れ、3’末端に小胞体局在シグナルであるKDEL配列を付加するようにプライマーを設計し、PCRを行い、ChIFN−αKDEL遺伝子を得た。同遺伝子をAgrobacteriumトランスファーベクターであるpMLHプラスミドに挿入し、アグロバクテリウム法を用いて、イネに形質導入し、初代イネの葉からタンパク質を抽出後、ウエスタンブロッティング解析と抗ウイルス活性によりスクリーニングし、陽性個体から採種し、2代目のイネを培養した。さらに、陽性個体中のChIFN−αの安定性を調べた。
【0022】
前記遺伝子導入初代イネ42個体のスクリーニングでは、植物タンパク質抽出液中に、抗ChIFN−αウサギ血清で約27kDaのタンパク質として検出され、強陽性を示した8個体から稲籾を得、播種した。2代目イネについて各親株から10個体をスクリーニングし、陽性個体を選抜した。得られた陽性個体の葉におけるChIFN−αの安定性を調べるため、陽性を示したイネ個体の葉を4℃、20℃、37℃の環境下で1日、7日、28日保存し、抗ウイルス活性について測定した。その結果、37℃28日間の保存においても、抗ウイルス価の減少は認められなかった。
【0023】
すなわち、本発明は、以下に示されるトリインターフェロンを産生する組換え植物、その継代育成植物、それら植物からトリインターフェロンタンパク質を採取するトリインターフェロンの製造方法、その方法で製造されたトリインターフェロンを有効成分とする発育鶏卵用抗トリインフルエンザウイルス(AIV)作用剤、前記植物によるChIFN−αKDELの発現を確認するために用いる抗ChIFN−αHisポリクローナルウサギ抗体、および植物形質転換用ベクターの発明である。
1.トリインターフェロンタンパク質をコードする遺伝子がゲノムDNAに組み込まれてなることを特徴とするトリインターフェロンを産生する組換え植物。
2.トリインターフェロンタンパク質がトリインターフェロン−α(ChIFN−α)である前記1に記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
3.トリインターフェロン−α(ChIFN−α)をコードする遺伝子が、ChIFN−αHis遺伝子を含むプラスミドを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅され、このPCRによりChIFN−αHisオープンリーディングフレーム(ORF)の3’末端側でヒスチジンタグ(His−Tag)配列が除去され、KDELコード配列が付加されたChIFN−αKDEL遺伝子である前記2に記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
4.リバースプライマーとしてChIFN−αKDELR;
5'-gcgagctcctaaagttcatccttagtgccgtgttgcctgt-3'(配列番号1;5'側下線部制限酵素SacI認識部位、3'側下線部KDEL部位)を用い、
フォワードプライマーとしてChIFN−αF;
5'-cgagatctcccaccatggctgtgcctg-3'(配列番号2;下線部制限酵素BglII認識部位)を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)させる前記3に記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
5.前記3に記載のChIFN−αKDEL遺伝子をAgrobacteriumトランスファーベクターpMLHにライゲーションしたプラスミドChIFN−αKDEL−pMLHをトランスファーベクターとして用いるトリインターフェロンを産生する組換え植物。
6.アグロバクテリウムのノパリン合成酵素(nos)の転写終結配列(ターミネーター)、およびカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写物のプロモーター融合(インゲンPhasolin遺伝子第一イントロン、及びタバコモザイクウイルスΩ配列を含む)として構成されているキメラプロモーターシリーズの配列を含むプラスミドであるAgrobacteriumへの形質導入用トランスファーベクターpMLHのGUS部分にChIFN−αKDELを挿入したトランスファーベクターを用いる前記5に記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
7.植物が、前記プラスミドChIFN−αKDEL−pMLHをAgrobacterium tumefaciens(以下:A. tumefaciens)に形質導入させた後、前記A. tumefaciensを植物細胞に感染させ、前記植物細胞核ゲノムへ遺伝子導入した組換え植物である前記5に記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
8.組換え植物がイネ科植物である前記1〜7のいずれかに記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
9.イネ科植物が、イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、またはトウモロコシである前記1〜8のいずれかに記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
10.イネ科植物がイネである前記1〜9のいずれかに記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
11.前記1〜10のいずれかに記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物の継代育成植物。
12.前記1〜11のいずれかに記載の植物からトリインターフェロンタンパク質を採取するトリインターフェロンの製造方法。
13.前記植物の葉からトリインターフェロンタンパク質を採取する前記12に記載のトリインターフェロンの製造方法。
14.前記12または13に記載の方法で製造されたトリインターフェロンを有効成分とする発育鶏卵用抗トリインフルエンザウイルス(AIV)作用剤。
15.前記1〜11のいずれかに記載の植物によるChIFN−αKDELの発現を確認するために用いる、精製ChIFN−αHisをウサギに免疫して得られる抗ChIFN−αHisポリクローナルウサギ抗体。
16.トリインターフェロンタンパク質をコードする遺伝子をAgrobacteriumトランスファーベクターpMLHにライゲーションしたプラスミドをトランスファーベクターとすることを特徴とする植物形質転換用ベクター。
17.トリインターフェロンタンパク質がトリインターフェロン−α(ChIFN−α)である前記16に記載の植物形質転換用ベクター。
18.トリインターフェロン−α(ChIFN−α)をコードする遺伝子が、ChIFN−αHis遺伝子を含むプラスミドを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅され、このPCRによりChIFN−αHisオープンリーディングフレーム(ORF)の3’末端側でヒスチジンタグ(His−Tag)配列が除去され、KDELコード配列が付加されたChIFN−αKDEL遺伝子である前記17に記載の植物形質転換用ベクター。
19.リバースプライマーとしてChIFN-αKDELR;
5'-gcgagctcctaaagttcatccttagtgccgtgttgcctgt-3'(配列番号1;5'側下線部制限酵素SacI認識部位、3'側下線部KDEL部位)を用い、
フォワードプライマーとしてChIFN−αF;
5'-cgagatctcccaccatggctgtgcctg-3'(配列番号2;下線部制限酵素BglII認識部位)を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)させる前記18に記載の植物形質転換用ベクター。
20.前記18に記載のChIFN−αKDEL遺伝子をAgrobacteriumトランスファーベクターpMLHにライゲーションしたプラスミドChIFN−αKDEL−pMLHをトランスファーベクターとして用いる植物形質転換用ベクター。
【発明の効果】
【0024】
本発明によって、トリインターフェロンタンパク質をコードする遺伝子がゲノムDNAに組み込まれた組換え植物が産生するトリインターフェロンは安定な抗ウイルス活性を示すことが確認された。また、これにより、サイトカイン組換え植物の発現・培養系および評価系が確立され、現実にトリ特に鶏への投与が可能となった。本発明によれば、トリインターフェロン−α(ChIFN−α)をコードする遺伝子を、植物細胞小胞体内タンパク蓄積に優れた特定のChIFN−αKDEL遺伝子とすることができるし、植物発現タンパク質の発現量を高くする特定のトランスファーベクター;プラスミドChIFN−αKDEL−pMLHを用いることができるので、植物での発現量が高い優れた植物ワクチンを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、トリインターフェロンタンパク質をコードする遺伝子がゲノムDNAに組み込まれてなることを特徴とするトリインターフェロンを産生する組換え植物、およびこれに関する発明である。本発明のトリインターフェロンとしては、経口ワクチンのアジュバントに適しているトリインターフェロン−α(特にChIFN−α)が好ましい。植物は、トリインターフェロンの遺伝子を導入できるものであれば、いずれのものでもよい。植物への遺伝子導入は、自体公知の遺伝子導入方法によればよい。前記遺伝子導入の主な方法としては、アグロバクテリウム法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン法等が挙げられる。
【0026】
現在、動物において、抗菌性飼料添加物及び動物用医薬品が多量に使用されており、これによる薬剤耐性菌の発生等が危惧されている。このため、抗菌性飼料添加物及び動物用医薬品の使用量低減のため、微量の薬剤を特定部位に効率的、選択的に作用させるドラッグデリバリーシステム(薬剤運搬システム)技術を用いた、確実な粘膜免疫の誘導に有効な経口ワクチンが重要とされている。また、経口ワクチンアジュバントとして、微量で効果があり、生体内物質であり残留性の問題のないサイトカインに注目した。なかでも、細胞内寄生菌の問題もあることから、Th1応答を促すIFN−αが経口ワクチンのアジュバントに適していると考え、経口ワクチンの発現法として、飼料として経口的に投与でき、投与の際のストレスの軽減ができるなどの利点があり、獣医学領域における有用性が極めて高いとされる植物ワクチンを選択し、典型的には、植物においてChIFN−αを発現して、IFN−αの抗ウイルス活性を調べ、今後、植物発現トリインターフェロン(ChIFN)がサイトカイン療法として治療の応用につながっていくことを確認した。
【0027】
まず、植物発現用に、発現対象であるChIFN−αHis遺伝子の改変を行った。Ruttanapummaら(J.Vet.Med.Sci 67(1):25-28;2005)がクローニングしたChIFN−αHis遺伝子の塩基配列を元に、植物細胞内での発現を視野に入れ3’末端にKDEL配列を付加するようにプライマーを設計した。また、本発明では、精製のために付加されていたHis−Tagを除去した。タンパク質のC末端に付加されるKDEL配列は、例えば、実施例の[材料及び方法]6.ChIFN−α遺伝子の改変1)プライマーの設計に記述した通り、小胞体にタンパク質を保持するためのシグナルであり、発現タンパク質に付加することにより小胞体内タンパク蓄積量が約4倍になる。バキュロウイルス発現系の場合には、発現タンパク質を細胞から培養上清中に分泌させ精製するが、植物発現系の場合,植物細胞内に留めておいた発現タンパク質を植物細胞ごと動物に給与する方法が主と考えられる。そこで、発現タンパク質にKDEL配列を付加し、小胞体内へ蓄積させる方法を選択した。なお、植物細胞小胞体に発現タンパク質を輸送させるために、ChIFN−αに本来備わっているN末端側のシグナル配列はそのまま用いた。またKozakのコンセンサス配列(Kozak, M. Nucleic Acids Res. 9:5233-52;1981、Kozak, M. J. Mol Biol. 156:807-20;1982、およびKozak, M. Gene. 234:187-208;1999)に従って、開始コドンであるATGの3塩基上流と1塩基下流をともにAもしくはGにすることにより開始コドンが効率よく働くように配慮し、さらに開始コドン上流および終了コドン下流の非翻訳領域を出来るだけ含めないように設計し、PCRを行った。得られたcDNAをシークエンスしたところ、KDELの付加、6つのシステイン残基、4ヶ所の推定糖鎖付加部位の存在を確認した。このChIFN−αKDEL遺伝子を操作し、ChIFN−αKDELの発現に成功した。
【0028】
植物発現系を用いて発現を行う場合、発現タンパク質の発現量を上げることが重要となる。植物そのものまたは抽出分画を用いるにしても、タンパク質の発現量が高い場合は感染防御免疫を誘導するのに必要な量の抗原あるいはサイトカインを容易に経口投与できる。発現のレベルは使われる抗原タンパク質や発現に使われる植物種に依存するが、使われる発現系にも大きく依存する。つまり発現に使われるプロモーターの強さや組織特異性、選択されたリーダー配列、抗原遺伝子の起源などである(Mason, H. S.ら, Vaccine 16(13):1336-43;1998)。本発明では、用いたのは、植物における外来遺伝子の高レベル発現のためのキメラプロモーターシリーズであり、ノパリン合成酵素(nos)の転写終結配列、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写物プロモーターの融合として構成されている。これは、塩基上流からE7(エンハンサー、CaMV35Sプロモーターの上流配列−940から−290と−290から−90を7回繰り返し)、35Sプロモーター(−90塩基から−1塩基)、mRNA成熟を効率化する事によりGUS遺伝子発現を強調するイントロン、mRNAからタンパク質への翻訳効率を向上させるタバコモザイクウイルスΩ塩基、GUS、Tiプラスミドにおけるノパリン合成酵素のためのポリアデニル化シグナル遺伝子であるTnosの順に並んでいる(Mitsuhara, I.ら, Plant Cell Physiol 37(1):49-59;1996)。本発明では、アグロバクテリウムのノパリン合成酵素(nos)の転写終結配列(ターミネーター)、およびカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写物のプロモーター融合(インゲンPhasolin遺伝子第一イントロン、及びタバコモザイクウイルスΩ配列を含む)として構成されているキメラプロモーターシリーズの配列を含むプラスミドであるAgrobacteriumへの形質導入用トランスファーベクターpMLH(文献:Mochizuki et al. 1999. Entomologia Experimentalis et Applicata 93: 173-178)のGUS部分にChIFN−αKDELを挿入し、大量培養・精製をした。
【0029】
得られたプラスミドChIFN−αKDEL−pMLHを植物形質転換用ベクターとして用いる。例えば、アグロバクテリウム法では、土中生息細菌の一種であるアグロバクテリウムが植物に感染して植物細胞に自らの遺伝子を移動させる性質を利用し、アグロバクテリウムの遺伝子にトリインターフェロンの遺伝子を結合させ、アグロバクテリウムの感染能力を利用して、トリインターフェロンの遺伝子を植物へ導入する。すなわち、前記プラスミドChIFN−αKDEL−pMLHをAgrobacterium tumefaciens(以下:A. tumefaciens)に形質導入させたA. tumefaciensを培養植物細胞に感染させることにより、pMLH上の高発現プロモーターChIFN−αKDEL融合遺伝子を植物細胞核ゲノムへ遺伝子導入させることができる。エレクトロポレーション法では、植物細胞に電気ショックを与えることにより植物細胞に穴をあけ、そこからトリインターフェロンの遺伝子を植物へ導入する。パーティクルガン法では、例えば、金の微粒子にトリインターフェロンの遺伝子を付着させ、この微粒子を高圧ガス等の力により、葉等の植物組織に撃ち込んで遺伝子を導入する。これらのうち、アグロバクテリウム法は利点が多く、植物の遺伝子組み換えで主流になっている。よく知られているように、双子葉植物はアグロバクテリウムが容易に感染することができるが、単子葉植物にとってアグロバクテリウムは宿主範囲外であり、単子葉植物にアグロバクテリウム法は適用しにくい。しかし、これは、イネ科植物等の単子葉植物は、アセトシリンゴン等の低分子フェノール化合物を自身で合成しないためであり、現在では、アグロバクテリウムの感染時にアセトシリンゴンを添加することにより、単子葉植物への遺伝子導入が可能となっている。本発明における植物へのトリインターフェロン遺伝子の導入では、アグロバクテリウム法による導入が好ましい。
【0030】
従って、トリインターフェロンを産生する組換え植物は、単子葉植物でも、双子葉植物でもよく、単子葉植物の例としては、イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、またはトウモロコシ等のイネ科植物等が挙げられ、双子葉植物の例としては、ダイズ等のマメ科植物、タバコ、ジャガイモ、レタス等が挙げられる。これらのうち、イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、またはトウモロコシ等のイネ科植物が好ましい。なかでも、イネが特に好ましい。
【0031】
特定のタンパク質の同定、定量等を行うためには、タンパク質に対する特異的抗血清が必要であり、その際に抗原として用いるタンパク質は、高度に精製されている必要がある。本発明者らは、精製ChIFN−αHisを用いてウサギに免疫し抗ChIFN−αHisポリクローナル抗体を作製した。作製した抗ChIFN−αHisウサギ抗体は5000倍希釈した状態でも精製ChIFN−αHisを検出することが可能であった。植物発現のChIFN−αKDELが生物活性を有していたことから、植物発現の立体構造は天然型に近いと考えられ、特異抗体は天然のChIFN−αを認識すると考えられる。初代組換えイネ葉におけるChIFN−αKDELの発現の確認として、抗ChIFN−αHisポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティング解析を行なった際に、植物発現タンパク質抽出液において、約27kDaのバンドが認められた。Ruttanapummaらの、約27kDaでは糖鎖付加しているという報告(J.Vet.Med.Sci 67(1):25-28;2005)から、組換え植物におけるChIFN−αの発現では、糖鎖が付加されていると考えられた。
【0032】
組換えイネ葉におけるChIFN−αKDELの発現を例にとると、トリインターフェロンを産生する組換え植物の継代育成については、初代組換えイネの葉からトリインターフェロンタンパク質を例えば抽出により採取後、ウエスタンブロッティング解析と抗ウイルス活性によりスクリーニングし、ウエスタンブロッティング解析強陽性を示す個体から稲籾を得、播種すればよい。前記ウエスタンブロッティング解析強陽性を示した8個体から稲籾を得、播種して得られた2代目イネについて各親株から10個体以内をスクリーニングし、陽性個体を選抜した。スクリーニングして得られた陽性個体の葉におけるChIFN−αの安定性を調べるため、鶏胎仔由来細胞であるCEF細胞を用いてバイオアッセイを行った。陽性を示したイネ個体の葉を−20℃、4℃、室温、37℃の環境下で1日、7日、28日保存し、抗ウイルス活性について測定した。その結果、37℃の保存においても、力価の低下はまったく認められなかった。37℃28日間の保存においても、抗ウイルス価の減少は認められなかったことは十分「食べるワクチン」の実現を可能とさせる結果であった。
【0033】
植物ワクチンの開発は、実用化という点で抜本的に優れていると考えられる。実際、アメリカでは植物ワクチンの低価格性、安全性、および有効性などに着目し、研究開発を進めている。このような状況下で、今日までタバコやジャガイモなどの双子葉類に属する植物がアグロバクテリウム法を用いた形質転換の技術で比較的容易にトランスフォームでき(Mitsuhara, I.ら, Plant Cell Physiol 37(1):49-59;1996)、また動物実験の際、ジャガイモはマウスが生でも好んで食べるので植物ワクチンのモデル植物として研究者の間で広く使われてきた。
【0034】
現在、畜産業が大型化する中、ウシやブタ、ニワトリなどの家畜動物に対する安価な感染予防機能性タンパク質の生産は、畜産分野におけるウイルス、寄生虫、および細菌感染症がもたらす経済的な打撃を考慮すると、実用化を目指して開発を進めていく必要がある。家畜向けの感染予防機能性タンパク質の飼料用作物による生産は、これまですでに確立されたジャガイモなどの植物組換え技術を適用することで、ヒト向けの組換え農作物を含んだ食品の開発と同様、技術的に十分可能性のあるものである。ジャガイモに生理・免疫活性機能を持つタンパク質を発現させ、ヒトへの利用を目指す場合、熱処理によって組換えタンパク質の機能を損なうおそれがある。しかし、家畜動物を対象とした場合、乾燥させたジャガイモの断片や粉末などを一般的に家畜に用いられているトウモロコシなどの飼料と混ぜて与えることが可能である。さらに今までの口蹄疫に対する機能性タンパク質の発現(Dus Santos, M. J.ら, Rev.Sci.Tech. 24:175-187;2005)だけではなく、豚コレラや鳥類一般特にニワトリのニューカッスル病など様々な家畜に被害をもたらす危険性のある病気や、豚の日本脳炎など家畜動物がヒトの感染に関与しているような病気に対して、感染防御の機能をもつ飼料用作物を作ることが可能である。
【0035】
また、近年、サイトカイン発現植物の開発と粘膜アジュバントとしての利用が注目されている。獣医学領域では、輸送等のストレスにより免疫力が低下し、下痢等の粘膜を侵入門戸とする病原体に感染してしまうことが重要な問題となっている。動物は種々のサイトカインを産生して免疫系の調節(増強・抑制)を行っている。そこで、粘膜面にサイトカインを投与し、粘膜面の免疫系を活性化させるアジュバントとして利用することは、家畜衛生上非常に有用であると考えられる。これまでにアグロバクテリウム法を用いて、IFN−α(Ohya, K.ら, J.Interferon.Cytokine.Res. 21:595-602;2001)、TNF−α(Ohya, K.ら, J.Interferon.Cytokine.Res. 22:371-378;2002)、インターロイキン2(IL−2)(Park, Y.ら, Protein Expression and Purification. 25:160-165;2002)などを発現する植物(ジャガイモ、タバコ)の作出に成功したと報告がある。発現された組換え体は本来の生物活性を保持している。今後、種々のサイトカイン発現植物を経口的に投与し、それらの粘膜アジュバント効果についての検討に期待が高まる。本発明では、本発明者らは、典型的には、ChIFN−αのイネでの発現を実証し、イネの葉で、比較的生物活性が長期間安定であること示し、これにより、イネの葉をトリ特に鶏に給与することによる、サイトカインデリバリー系の実現を可能とした。
【0036】
さらに、本発明によると、トリインターフェロンを有効成分とする発育鶏卵用抗トリインフルエンザウイルス(AIV)作用剤が得られる。本発明では、発育鶏卵におけるIFN−α投与によるAIV感染抑制が認められた。IFN−αは、抗ウイルス活性および免疫応答に重要な役割を持つサイトカインである。現在、タンパク質発現系として従来の系に比べ、低コスト、安全性、精製が不要など多くの利点があり、そのまま飼料として経口的に投与が可能な植物発現系が注目されている。そこでトリへの外来性サイトカイン応用の一環として、典型的には、植物でニワトリIFN−α(ChIFN−α)を発現させ、性状を調べ、これを利用して発育鶏卵(in ovo)でトリインフルエンザウイルス(avian influenza virus)(AIV)に対する効果を調べた。植物発現したChIFN−αを抽出し、抽出したChIFN−αを発育鶏卵に投与し、次の日AIVで攻撃し、検卵した。また、漿尿液を回収し、漿尿液中のウイルスの有無を鶏赤血球凝集試験(HA試験)により判定した。検卵、およびHA試験の結果から、IFN−α投与群は、各ウイルスH3N8、H6N2、H7N1に対し抗ウイルス作用があり、IFN-αはin OvoでAIVに対して抗ウイルス活性があることがわかった。このように、本発明の組換え植物から抽出したトリインターフェロン(ChIFN)を投与された卵はウイルスに対して防御されることが確認された。
【実施例】
【0037】
[材料及び方法]
1.ChIFN−αHis遺伝子
当研究室のRuttanapumma ら(J.Vet.Med.Sci 67(1):25-28;2005)がクローニング、作製したChIFN−αHis遺伝子に対するcDNAを用いた。
【0038】
2.植物発現ベクター
Agrobacteriumへの形質導入用トランスファーベクターであるプラスミドpMLHは独立行政法人農業生物資源研究所(つくば市、茨城県)から分与された。制限酵素地図並びにコード遺伝子の模式図は(図1)に示した。図1は、Agrobacteriumへの形質導入用トランスファーベクターである、植物用高発現ベクターpMLH7133−GUSの制限酵素地図並びにコード遺伝子の模式図である。発現させたい遺伝子をGUS遺伝子の代わりに挿入させる。本発明においては、BamHIとSacIで切断し、GUSの部分に、BglII(BamHIと切り口が同じ)とSacIで切断したIFN−α遺伝子を導入し、組換えプラスミドを作製した。
【0039】
3.制限酵素
制限酵素は、BglII、SacI、EcoRI及びXbaI(宝酒造株式会社、京都市、京都府)を用いた。認識配列及び切断部位(:)はそれぞれ、A:GATCT、G:AGCTC、G:AATTC及びT:CTAGAである。制限酵素は製品マニュアルに基づいて使用した。
【0040】
4.遺伝子操作
遺伝子操作は、Molecular Cloning(Sambrook, J.ら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd ed. Cold Spring Harber Laboratory, N. Y.1989.)に従って行った。
【0041】
5.アガロースゲル電気泳動
アガロースゲル電気泳動には、TBE緩衝液(0.1M Tris, 2mM EDTA, 85mM Boric acid)にSeaKem GTG Agarose(宝酒造株式会社)を1%濃度で加え、加熱溶解後、エチジウムブロマイドを最終濃度が10ng/mLになるように加え、室温にてゲル化し作製した。試料を100Vの定電圧で30分から1時間泳動し、紫外線照射により核酸を検出した。
【0042】
6.ChIFN−α遺伝子の改変
1)プライマーの設計
ChIFN−αHisオープンリーディングフレーム(ORF)の3’末端側では、ヒスチジンタグ(His−Tag)配列を除去し、KDELコード配列を付加するよう設計した。His−Tagは得られるタンパク質の精製を考慮して付加された配列であるが(Ruttanapumma ら,J.Vet.Med.Sci 67(1):25-28;2005)、本発明では精製工程を必要としないので不要であった。KDEL配列は、小胞体にタンパク質を保持するためのシグナルで、この配列を付加することにより、小胞体内タンパク蓄積量が約4倍になる(Torres, E.ら, Tansgenic Research 8:441-449;1999)。ChIFN−α遺伝子配列を参考に、リバースプライマー(Reverse primer)としてChIFN−αKDELR;5'-gcgagctcctaaagttcatccttagtgccgtgttgcctgt-3'(5'側下線部制限酵素SacI認識部位、3'側下線部KDEL部位)を設計した(図2)。図2は、ChIFN−αKDELクローニングのためのPCRプライマーの塩基配列を示す。ChIFN−α遺伝子のC末端に小胞体保留シグナル(KDEL)配列を付加するよう、プライマー(Forward primerとReverse primer)を設計し、既にクローニングされているChIFN−α遺伝子を鋳型にPCR法で遺伝子を改変した。フォワードプライマー(Forward primer)は、ChIFN−αのシグナル配列を活かせる様、Ruttanapumma ら(J.Vet.Med.Sci 67(1):25-28;2005)がcDNAクローニングの際に設計したChIFN−αF;5'-cgagatctcccaccatggctgtgcctg-3' (下線部制限酵素BglII認識部位)を用いた。プライマーの合成はグライナージャパン株式会社(東京)に依頼した。
【0043】
2)ChIFN−αKDEL遺伝子の増幅
PCR Core Kit(Perkin-Elmer, MA, USA)を用いて、上記ChIFN−αHis遺伝子を含むプラスミドを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction;PCR)法を行った。ChIFN−αFとChIFN−αKDELRをプライマーに用いて、Step1(95℃×5分間)を1サイクル、Step2(95℃×1分間、53℃×1分間、72℃×1分間)を30サイクル、Step3(72℃×3分間)を1サイクル行った。
【0044】
3)ChIFN−αKDEL遺伝子のクローニング・配列決定
PCR法で増幅させたChIFN−αKDEL遺伝子をTA Cloning Kit(Invitrogen, CA,USA)を用いて、プラスミドベクターであるpCR2.1にライゲーションさせた。これをHeat Shock法により宿主大腸菌JM109(宝酒造株式会社)に形質導入させ、50μg/mLアンピシリン、0.12%X−gal(5-Bromo-4-Chloro-3-indolyl-β-d-Galactoside)添加TYM寒天培地(2%bacto-tryptone,0.5%yeast extract、0.1% glucose、10mM MgSO4・7H2O、1.5% bacto agar)上で37℃において一晩培養した。β-ガラクトシダーゼはX−galを代謝し、青色の色素を生成するが、ChIFN−αKDEL遺伝子がベクターのlac-Z領域に挿入された場合、β-ガラクトシダーゼが産生させず、白色のコロニーが認められる。このWhite-Blue Selectionを利用して、白色コロニーを選択し、一晩TYM液体培地(2%bacto-tryptone,0.5%yeast extract、0.1% glucose、10mM MgSO4・7H2O)中で培養し、ChIFN−αKDEL−pCR2.1を得た。これからプラスミドを抽出し、EcoRIで消化後にアガロースゲル電気泳動によりChIFN−αKDEL遺伝子挿入の確認を行った。挿入の確認されたプラスミドを用いてDideoxy Terminator法によりシーケンス反応を行った。反応には標識蛍光ジデオキシヌクレオチド(ddNTP)を用いたDye Terminator Cycle Sequencing Kit FS(Perkin-Elmer)を使用した。96℃×45秒間、50℃×30秒間、60℃×4分間の反応を25サイクル行い、スピンカラムによる精製後、ABI PRISM310 Genetic Analyzer(Perkin-Elmer)にかけ塩基配列を決定した。
【0045】
7.ChIFN−αKDELの植物での発現
1)植物発現トランスファーベクターの作製
クローニングで得られたプラスミドChIFN−αKDEL−pCR2.1をBglII、SacIで消化後、アガロースゲル電気泳動で展開し、ChIFN−αKDEL遺伝子フラグメントをゲルごと切り出した。フェノール処理後エタノール沈殿によりChIFN−αKDEL遺伝子を精製した。植物発現ベクターであるpMLHについては、BamHIとSacIで消化し、35Sプロモーター(高発現プロモーターの開発を目的としてカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターを改変したもの)下流のGUS遺伝子を除去した。なお、GUSはβ-グルクロニダーゼタンパク質のコード領域であり、除去しても、プラスミドの増殖性に影響はない。上記で得られたChIFN−αKDEL遺伝子フラグメントをプラスミドpMLHのBamHIとSacIサイトにTakara DNA Ligation Kit(宝酒造株式会社)を用いてライゲーションした。次いでHeat Shock法により宿主大腸菌JM109(宝酒造株式会社)に形質導入させ、これを50μg/mLカナマイシン添加TYM寒天培地上で一晩培養した。出現コロニーから50μg/mLカナマイシン添加TYM液体培地にて培養しプラスミドChIFN−αKDEL−pMLHを得た。ChIFN−αKDEL遺伝子フラグメントの挿入は、SacI、XbaI消化後アガロースゲル電気泳動により確認した。100bp DNA Ladder(宝酒造株式会社)を同時に泳動し、サンプルDNAの長さを推定した。プラスミドを大量培養・精製後、組換え植物を得るため(独)農業生物資源研究所へ送付した。
【0046】
2)組換え植物の作製(形質導入)
(独)農業生物資源研究所において、プラスミドChIFN−αKDEL−pMLHをAgrobacterium tumefaciens(以下:A. tumefaciens)に形質導入させた後、A. tumefaciensを培養植物細胞に感染させ、植物細胞核ゲノムへ遺伝子導入した。なお、A. tumefaciensは、植物に感染するグラム陰性の植物病原性の土壌細菌である。A. tumefaciensは、植物への感染過程でT−DNAと呼ばれるDNA断片を植物ゲノムに導入する。このプロセスを利用して、Tiプラスミドと呼ばれるT−DNAを含むタンパク遺伝子を植物ゲノムに組み込み、カルス(植物の種子または未熟胚組織は、栄養分を含む培地で培養すると脱分化した細胞魂であるカルスとなる)にして、目的遺伝子を含む組換えA. tumefaciensの共培養を通じて、この細菌から植物へタンパク遺伝子の導入を行った(Brencic, A.ら, Mol Microbiol. 57(6):1522-1531;2005、Fukuoka, H.ら, Plant Cell Reports 19:815-820;2000、Mitsuhara, I.ら, Plant Cell Physiol 37(1):49-59;1996)。この後、培養して初代組換えイネを作出した(図5)。図5は、組換え植物の作製(形質導入)を図で表したものである。プラスミドChIFN−αKDEL−pMLHをAgrobacterium tumefaciensに形質導入させた後、Agrobacteriumを培養植物細胞に感染させ、植物細胞核ゲノムへ遺伝子導入し培養してイネを作出した。選別は、ハイグロマイシン耐性により、遺伝子導入個体を選別し、組換えイネを作出した。なお、遺伝子導入植物の選別は、抗生物質耐性を利用する方法に限られず、特定の除草剤に対する抵抗性を利用する方法等の他の公知の方法によっても実施することができる。
【0047】
3)植物発現タンパク質の抽出
組換え体として個々に作出・管理されたイネ(NO.1〜42:35は欠番)の葉の一部を刈り取り、液体窒素で凍結させ、冷凍状態で当研究室へ輸送した。そのイネを滅菌ハサミで細かく切り刻み、Digital Homogenaizer(AS ONE株式会社、大阪)備え付けのチューブに入れ、イネの重量と同量のリン酸緩衝生理食塩水(Phospfate Buffered Saline:1.37M NaCl, 2mM KCl, 3mM Na2HPO4, 1.5mM KH2PO4,pH7.4:以下PBS)を加えDigital Homogenaizerで、6,000rpm 10秒間の磨り潰しを氷中で約20回繰り返し、磨り潰し葉液をマイクロチューブに採取した。その葉液を17,400g、5分間遠心し、上清を新たなマイクロチューブに回収し、植物発現タンパク質抽出液として−20℃に保存した。
【0048】
4)ウェスタンブロッティング解析
組換えイネによるChIFN−αKDELの発現を確認するために、ウエスタンブロッティング解析を行った。上記、植物発現タンパク質抽出液に、Laemmli(Nature 277:680-685;1970)の4xサンプルバッファー(62.5mM Tris-HCl pH6.8, 2%SDS, 10%Glycerol, 0.02% Bromophenol blue, 5% 2-メルカプトエタノール;2Me+Buffer)を3:1の割合で混合した。各試料を100℃で5分間煮沸し、SDSを含む12.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により展開した。SDS−PAGE終了後、ゲルを転写緩衝液(0.02M Tris, 0.15M Glycine, 0.01% SDS, 5% Methanol)で洗浄し、ウエスタンブロッティング装置ホライズブロット(アトー株式会社、東京)を用いて、ニトロセルロース膜Hybond C Extra(Amersham, Amersham, UK)に100mAで1.5時間転写した。転写後、ニトロセルロース膜未結合部分をブロック液(1%Skim Milk Powder, 0.1% Tween-20をPBSに溶解)をPBSでブロッキングした。ついで一次抗体として抗ChIFN−α−Hisポリクローナルウサギ血清を用い、室温で3時間反応させた。反応後、ブロック液で3回洗浄し、二次抗体を37℃で2時間反応させた。二次抗体は、ペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG血清(BD Biosciens Pharmingen,San Jose,CA,USA)を希釈して用いた。反応後、PBSで3回洗浄し、BM blue POD substrate (Boehringer Mannheim, Mannheim, Germany)用いて発色させた。
【0049】
5)2代目イネの作製
初代イネ葉からタンパク質を抽出後、ウエスタンブロッティング解析と抗ウイルス活性によりスクリーニングし、陽性であった組換えイネ番号から子孫用の種子を(独)農業生物資源研究所において採取し、同研究所において、得られた種子を用土に播種し、2代目を生産した。2代目の発現を上記4)の方法及び生物活性として抗ウイルス活性で確認した。
【0050】
8.抗ChIFN−α抗体の作製
バキュロウイルス発現ChIFN−αHisをRuttanapumma ら(J.Vet.Med.Sci 67(1):25-28;2005)の方法で精製した。精製ChIFN−αHis440μg/mLの1.5mLを同量のFreund's complete adjuvant(FCA;株式会社ヤトロン、東京)と混合、ゲル化させ、日本白色種ウサギ2羽に1.5mLずつ頚部に免疫し、ChIFN−αHisに対するモノスペシフィックポリクローナル抗体を作製した。ウサギに1週おきに免疫し、初回免疫から4週後に心臓採血、血清を分離し、抗ChIFN−αHisウサギ血清(抗ChIFN−αHisポリクローナル抗体)とした。精製ChIFN−αHisを抗原とし、作製したそれぞれの抗血清を一次抗体として用い、それぞれペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ウサギIgG血清(BD Biosciens Pharmingen)を用いてウエスタンブロッティング解析を行い、抗体価を測定した。
【0051】
9.イネ葉中でのIFN−αの安定性評価
作出された2代目のイネ葉を刈り取り、液体窒素で凍結させ、冷凍状態で当研究室へ輸送されてきたイネの葉を0.6gずつシャーレに入れ、−20℃、4℃、室温、37℃の環境下で1日、7日、28日保存した。上述の方法でイネ葉からタンパク質抽出液を採取して、抗ウイルス活性を調べた。
【0052】
10.鶏胚線維芽細胞(CEF細胞)を用いた抗ウイルス活性の測定
抗ウイルス活性は、Ruttanapumma ら(J.Vet.Med.Sci 67(1):25-28;2005)の方法で行った。保存しておいたイネの葉のタンパク質抽出液の抗ウイルス活性を鶏胚線維芽細胞(CEF;chicken embryo fibroblast)を用いて測定した。10日齢発育鶏卵からのCEFの作製はTakeharaら(Avian Dis. 31:125-129;1986)の方法に基づいて行った。CEFを1.0×105cells/100μl/wellで96穴プレートに播きフルシート後、培養上清を除去した。イーグルMEMで10倍階段希釈した葉から抽出したChIFN−αを100μl/wellで添加し、約24時間感作させ、100 TCID50(50% tissue culture infective dose)/10μl/wellでVesicular stomatitis virus(VSV)を接種し、細胞変性効果(CPE)を経時的に観察した。抗ウイルス活性は、光学顕微鏡下でCPE抑制が認められた最大希釈倍数の逆数を抗ウイルス活性値(EU/mL)とした。
【0053】
[結果]
1.ChIFN−αKDEL遺伝子の作製
当研究室のRuttanapumma ら(J.Vet.Med.Sci 67(1):25-28;2005)がクローニング、作製したChIFN−αHis遺伝子に対するcDNAに対し、遺伝子改変用にプライマーChIFN−αFとChIFN−αKDELRを設計した(図2)。これらを用いてPCRを行い、得られた増幅遺伝子の一部を用いて1%アガロースゲル電気泳動で展開したところ、約600bpの特異的増幅を確認した。
PCR産物をTA Cloning Kitを用いてpCR2.1にライゲーションし、コンピテント細胞である大腸菌JM109へトランスフォーメーションした。White-Blue Selectionを利用して目的遺伝子の挿入されているホワイトコロニーを選択し、増菌培養を行った。得られた大腸菌からプラスミドを抽出し、EcoRIで消化後、1%アガロースゲル電気泳動で展開した。100bp DNA Ladderと比較したところ、ChIFN−αKDEL遺伝子と推定される約600bpとベクターと推定される約3,900bpの2本のバンドが認められた。
【0054】
PCRにより、His−が除去され、KDEL配列が付加されたことを確認するため、クローン化した遺伝子の配列を決定した。その結果、鋳型に用いたChIFN−α遺伝子配列と同じであり、さらに終了コドン直前に、KDELコード配列が挿入されていることを確認した(図3)。図3は、ChIFN−αKDEL塩基配列及び推定アミノ酸配列を示す。KDEL配列を付加させるようにPCR法で増幅させた遺伝子をクローニング後、配列決定した。ChIFN−α本来の小胞体への移行シグナル配列を維持させたまま、C末端の終了コドン直前にKDEL配列が付加されたことを確認した。糖鎖付加部位を推定し、5'末端と3'末端にそれぞれBglIIとSacIの制限酵素認識配列を確認した。ORFは、C末端にKDELを含む591ヌクレオチドからなり197の推定アミノ酸がコードされている。推定シグナルペプチドは31残基からなり、タンパク質の高次構造の形成に重要なシステイン残基は6つ存在した。さらに、アミノ酸残基65−67(NAS)、71−73(NDT)、108−110(NDS)、186−188(NLT)での4つの重要なN−グリコシル基形成部位を示した(図3)。
【0055】
2.トランスファーベクターの構築
塩基配列決定を行い、ChIFN−αKDEL遺伝子と確認されたChIFN−αKDEL−PCR2.1をBglII、SacIで消化し、ChIFN−αKDEL遺伝子を含む断片をAgrobacteriumトランスファーベクターpMLHにTakara DNA Ligation Kitを用いてライゲーションした。さらにコンピテントセルにトランスフォーメーションし(図4)、大腸菌からプラスミドを抽出した。この抽出したプラスミドをSacI、XbarIで消化後、1%アガロースゲル電気泳動を行ったところ、約600bpの挿入遺伝子と約12,000bpのpMLHベクターのDNAが確認された。図4は、ChIFN−αKDEL導入植物作製を図で表したフローチャートである。まず、PCR法によりChIFN−αKDELを増幅し、プラスミドpCR2.1にクローニングした。配列確認後、pCR2.1から制限酵素BglIIとSacIを用いてプラスミドを消化し、ChIFN−αKDEL遺伝子を取り出した。得られたChIFN−αKDEL遺伝子を、制限酵素BamHIとSacIで消化してGUS遺伝子を除去された植物用高発現ベクターpMLH7133−GUSに挿入した。本プラスミドをAgrobacteriumに導入させ、続いて植物細胞に感染させることにより、ChIFN−αKDEL遺伝子を植物細胞染色体に組み込んだ。
【0056】
3.ChIFN−αKDEL発現組換え植物の作製
ChIFN−αKDEL−pMLHを(独)農業生物資源研究所に送付した。そこで、アグロバクテリウム法を用いて、A. tumefaciensから植物細胞核ゲノムに遺伝子導入し、ChIFN−αKDEL組換え植物である初代イネを作出した(図5)。
【0057】
4.抗ChIFN−αポリクローナル抗体の作製
Ruttanapummaら(J.Vet.Med.Sci 67(1):25-28;2005)の方法で精製したバキュロウイルス発現ChIFN−αHisをウサギに免疫し抗ChIFN−αウサギ血清を得た。ウエスタンブロッティング法により抗体価を測定したところ、1:5,000倍希釈まで精製ChIFN−αHisを検出することが出来た(図6)。図6は、ウエスタンブロッティング法による抗血清の確認を図で表したものである。バキュロウイルス発現系でChIFN−αHis(C末端にヒスチジンタグ:His−tagを付加させ、精製を容易にしたChIFN−α)を発現させ、ニッケルキレートカラムで精製した。ウサギに免疫し、ウエスタンブロッティング法により抗血清の抗体価を測定した。ウサギ血清を1:5000倍希釈した場合においても、図6のように特異的なバンドが認められ、ChIFN−αに対して高度免疫血清が作製できた。すなわち、抗原に精製したChIFN−αHisを用い、一次抗体に作製した抗ChIFN−αHisウサギ血清を希釈して用いたウエスタンブロッティング法(Western-Blotting法)により抗体価を測定し(二次抗体にはHRP標識抗ウサギIgGヤギ抗体を用いた)、ウサギ血清は1:5000倍希釈まで精製ChIFN−αHisを検出することができた。なお、この時点においても精製ChIFN−αHisは6本のバンドとして確認することができる。約17kDa、19kDa、23kDa、および27kDaのバンドは、前記Ruttanapummaらの報告と一致している。このように、本血清で精製ChIFN−αHisに対してウエスタンブロッティング解析を行うと、図6のようにバンドが6本認められるが、これは、ウサギに免疫した際に混入した異物かと考えられた(前記Ruttanapummaらの報告では、精製ChIFN−αHisに対するウエスタンブロッティング解析では抗ヒスチジン抗体を用いたところバンドは4本であった)。
【0058】
5.ChIFN−α−KDEL組換え植物の発現の確認
冷凍状態で(独)農業生物資源研究所から送付されてきた初代イネ(NO.1〜42:35は欠番)の葉をDigital Homogenaizer(AS ONE株式会社)で磨り潰し、タンパク質抽出液を採取した後、抗ChIFN−αHisポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティング解析を行った。ChIFN−α−KDEL組換えイネは約27kDaの位置にバンドが認められた。強陽性を示した検体はNO.23〜27、34、36、38の8個体であった(データは示していない)。対照として用いた遺伝子組換えしていないイネ“日本晴”には抗ChIFN−αHisポリクローナル抗体で認識されるバンドが認められなかった。
【0059】
この後、強陽性を示した8個体の組換えイネの育成状況を(独)農業生物資源研究所で調べた。その結果、表1(:Table 1.ChIFN−α組換えイネの育成状況)に示すように、それぞれNO.23はコメ粒数122個から53個体育成し、NO.24は、124個から49個体、NO.25は30個から22個体、NO.26は11個から7個体、NO.27は10個から2個体、NO.34は100個から3個体、NO.36は51個から34個体、NO.38は94個から42個体を育成した(表1)。
【0060】
【表1】

【0061】
陽性個体から育成した2代目イネについて各親株から10個体以内を、上述の方法でウエスタンブロッティング解析をした(図7)。図7は、ChIFN-αKDELの確認を図で表したものである。組換えイネが目的のタンパク質を発現しているかどうか、ウエスタンブロッティング法で調べた。異なるイネ個体の葉から抽出した資料をSDS-PAGEで展開後、ニトロセルロース膜に転写し、抗ChIFN-αHisウサギ血清を用いて抗原抗体反応を行った。約27kDaの位置にバンドが検出された個体があり、この分子量は、ChIFN-αHis発現で得られた最も分子量が高いタンパク質と一致したことから、糖鎖付加されていると推察された。すなわち、1代目に発現が認められた2代目イネをスクリーニングして得られた陽性固体の発現について抗ChIFN−α抗体を用いてウエスタンブロッティング(Western-Blotting)法により発現の確認をしたところ、約27kDaの位置に推定糖鎖付加部位としてバンドが認められた。
【0062】
6.イネ葉中でのIFN−αの安定性評価
(独)農業生物資源研究所から冷凍状態で送付されてきた、2代目でスクリーニングした陽性個体の葉を用い、植物細胞内におけるChIFN−αの生物活性の安定性を調べた。収穫した組換えイネの葉を切り、4℃、20℃、37℃の環境下で1日、7日、28日保存した。それらのタンパク質を抽出し、CEF細胞を用いて既述の方法で抗ウイルス活性を用いてバイオアッセイを行った。その結果、表2(:Table 2.イネ葉中IFN−αの生物活性)に示すように、−20℃では、7日保存では1.0×105倍希釈、28日保存では1.0×106倍希釈までVSVによるCPEを抑制し、それぞれ、−20℃環境下7日保存は1.0×105EU/100μl、28日保存は1.0×106EU/100μlの生物活性が認められた。4℃では、1日保存では1.0×107倍希釈、7日保存では1.0×108倍希釈、28日保存では1.0×108倍希釈までVSVによるCPEを抑制し、それぞれ、4℃環境下1日保存は1.0×107EU/100μl、7日保存は1.0×108EU/100μl、28日保存は1.0×108EU/100μlの生物活性が認められた。室温では、1日保存では1.0×108倍希釈、7日保存では1.0×108倍希釈までVSVによるCPEを抑制し、それぞれ、室温環境下1日保存は1.0×108EU/100μl、7日保存は1.0×108EU/100μlの生物活性が認められた。室温28日保存もこれらと同様の生物活性が認められた。37℃では、1日保存では1.0×108倍希釈、7日保存では1.0×107倍希釈、28日保存では1.0×108倍希釈までVSVによるCPEを抑制し、それぞれ、37℃環境下1日保存は1.0×108EU/100μl、7日保存は1.0×107EU/100μl、28日保存は1.0×108EU/100μlの生物活性が認められた。これに対し、対照として用いた“日本晴”は、時間・温度に関わらず、抗ウイルス活性は認められなかった(表2)。
【0063】
【表2】

【0064】
[発育鶏卵におけるIFN−α投与によるAIV感染抑制]
1.目的
IFN−αは、抗ウイルス活性および免疫応答に重要な役割を持つサイトカインである。現在、タンパク質発現系として従来の系に比べ、低コスト、安全性、精製が不要など多くの利点があり、そのまま飼料として経口的に投与が可能な植物発現系が注目されている。そこでトリへの外来性サイトカイン応用の一環として、典型的には、植物でニワトリIFN−α(ChIFN−α)を発現させ、性状を調べ、これを利用して発育鶏卵(in Ovo)でトリインフルエンザウイルス(avian influenza virus)(AIV)に対する効果を調べる。
2.方法
植物発現したChIFN−αをホモジナイズにより抽出し、力価測定をした。抽出したChIFN−αを発育鶏卵(10日齢)に投与し、次の日AIVで攻撃し、24h、48h、72h、98hごとに検卵した。死亡した卵は4℃に保存した。98h後卵をすべて4℃に保存して24h後、漿尿液を回収しHA試験を行った。
植物:イネ(葉)
植物抽出(0.1mL/卵):IFN−α(10U)、Control
Virus:H3N8,H6N2,H7N1(10EID50/0.1mL/卵)
各ウイルスに対しα群、C群(Control群)それぞれ10個の卵を使用。
3.結果・考察
【0065】
【表3】

【0066】
検卵の結果から、各ウイルスは、α群(IFN−α群)とC群(Contorol群)を比較すると、α群(IFN−α群)は抗ウイルス作用があることがわかる。HA試験の結果をみると、検卵による生死の判定にほぼ一致しており、検卵で生きていた卵もウイルス感染していることがわかった。また、胎児を卵から取り出してα群とC群を比較すると、どのウイルスもC群のほうが胎児が小さく赤く充血していた。一方、α群は正常だった。これにより、IFN-αはin OvoでAIVに対して抗ウイルス活性があることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】Agrobacteriumへの形質導入用トランスファーベクターであるプラスミドpMLH7133−GUSの制限酵素地図並びにコード遺伝子の模式図。
【図2】ChIFN−αKDELクローニングのためのPCRプライマーの塩基配列図。
【図3】ChIFN−αKDEL塩基配列及び推定アミノ酸配列図。
【図4】ChIFN−αKDEL導入植物作製図(フローチャート)。
【図5】組換え植物の作製(形質導入)図。
【図6】ウエスタンブロッティング法による抗血清の確認図。
【図7】ChIFN-αKDELの確認図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリインターフェロンタンパク質をコードする遺伝子がゲノムDNAに組み込まれてなることを特徴とするトリインターフェロンを産生する組換え植物。
【請求項2】
トリインターフェロンタンパク質がトリインターフェロン−α(ChIFN−α)である請求項1に記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
【請求項3】
トリインターフェロン−α(ChIFN−α)をコードする遺伝子が、ChIFN−αHis遺伝子を含むプラスミドを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅され、このPCRによりChIFN−αHisオープンリーディングフレーム(ORF)の3’末端側でヒスチジンタグ(His−Tag)配列が除去され、KDELコード配列が付加されたChIFN−αKDEL遺伝子である請求項2に記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
【請求項4】
リバースプライマーとしてChIFN−αKDELR;
5'-gcgagctcctaaagttcatccttagtgccgtgttgcctgt-3'(配列番号1;5'側下線部制限酵素SacI認識部位、3'側下線部KDEL部位)を用い、
フォワードプライマーとしてChIFN−αF;
5'-cgagatctcccaccatggctgtgcctg-3'(配列番号2;下線部制限酵素BglII認識部位)を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)させる請求項3に記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
【請求項5】
請求項3に記載のChIFN−αKDEL遺伝子をAgrobacteriumトランスファーベクターpMLHにライゲーションしたプラスミドChIFN−αKDEL−pMLHをトランスファーベクターとして用いるトリインターフェロンを産生する組換え植物。
【請求項6】
アグロバクテリウムのノパリン合成酵素(nos)の転写終結配列(ターミネーター)、およびカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S転写物のプロモーター融合(インゲンPhasolin遺伝子第一イントロン、及びタバコモザイクウイルスΩ配列を含む)として構成されているキメラプロモーターシリーズの配列を含むプラスミドであるAgrobacteriumへの形質導入用トランスファーベクターpMLHのGUS部分にChIFN−αKDELを挿入したトランスファーベクターを用いる請求項5に記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
【請求項7】
植物が、前記プラスミドChIFN−αKDEL−pMLHをAgrobacterium tumefaciens(以下:A. tumefaciens)に形質導入させた後、前記A. tumefaciensを植物細胞に感染させ、前記植物細胞核ゲノムへ遺伝子導入した組換え植物である請求項5に記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
【請求項8】
組換え植物がイネ科植物である請求項1〜7のいずれかに記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
【請求項9】
イネ科植物が、イネ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、またはトウモロコシである請求項1〜8のいずれかに記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
【請求項10】
イネ科植物がイネである請求項1〜9のいずれかに記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のトリインターフェロンを産生する組換え植物の継代育成植物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の植物からトリインターフェロンタンパク質を採取するトリインターフェロンの製造方法。
【請求項13】
前記植物の葉からトリインターフェロンタンパク質を採取する請求項12に記載のトリインターフェロンの製造方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の方法で製造されたトリインターフェロンを有効成分とする発育鶏卵用抗トリインフルエンザウイルス(AIV)作用剤。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに記載の植物によるChIFN−αKDELの発現を確認するために用いる、精製ChIFN−αHisをウサギに免疫して得られる抗ChIFN−αHisポリクローナルウサギ抗体。
【請求項16】
トリインターフェロンタンパク質をコードする遺伝子をAgrobacteriumトランスファーベクターpMLHにライゲーションしたプラスミドをトランスファーベクターとすることを特徴とする植物形質転換用ベクター。
【請求項17】
トリインターフェロンタンパク質がトリインターフェロン−α(ChIFN−α)である請求項16に記載の植物形質転換用ベクター。
【請求項18】
トリインターフェロン−α(ChIFN−α)をコードする遺伝子が、ChIFN−αHis遺伝子を含むプラスミドを鋳型とするポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅され、このPCRによりChIFN−αHisオープンリーディングフレーム(ORF)の3’末端側でヒスチジンタグ(His−Tag)配列が除去され、KDELコード配列が付加されたChIFN−αKDEL遺伝子である請求項17に記載の植物形質転換用ベクター。
【請求項19】
リバースプライマーとしてChIFN-αKDELR;
5'-gcgagctcctaaagttcatccttagtgccgtgttgcctgt-3'(配列番号1;5'側下線部制限酵素SacI認識部位、3'側下線部KDEL部位)を用い、
フォワードプライマーとしてChIFN−αF;
5'-cgagatctcccaccatggctgtgcctg-3'(配列番号2;下線部制限酵素BglII認識部位)を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)させる請求項18に記載の植物形質転換用ベクター。
【請求項20】
請求項18に記載のChIFN−αKDEL遺伝子をAgrobacteriumトランスファーベクターpMLHにライゲーションしたプラスミドChIFN−αKDEL−pMLHをトランスファーベクターとして用いる植物形質転換用ベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−72948(P2008−72948A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255514(P2006−255514)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第142回日本獣医学会学術集会、日本獣医学会主催、2006年9月22〜24日開催(講演要旨集発行:2006年8月31日)
【出願人】(598041566)学校法人北里学園 (180)
【出願人】(501167644)独立行政法人農業生物資源研究所 (200)
【Fターム(参考)】