説明

トルク検出装置およびそれを用いた車両用駆動力制御装置

【課題】 歯車対のギヤ緒元にかかわらず同一のレイアウトで伝達トルクを計測可能なトルク検出装置およびそれを用いた車両用駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】 入力軸5と左右出力軸13,14との間にハイポイドギヤ対を用いたハイポイドギヤ対5a,12aが設けられ、出力軸13,14が左右一対のテーパローラベアリング15,16で回動自在に支持されたファイナルギヤ7のトルク検出装置において、テーパローラベアリング15に作用するスラスト荷重を検出するトルクセンサ10を設け、検出されたスラスト荷重に基づいて、ハイポイドギヤ対5a,12aの伝達トルクを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク伝達機構の伝達トルクを計測するトルク検出装置およびそれを用いた車両用駆動力制御装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
伝達トルクの計測方法としては、ギヤ対を支持するベアリングの外周方向に圧電素子、抵抗線歪ゲージ等の荷重検出装置を設け、伝達トルクに比例してギヤ対が発生する噛み合い分力のラジアル荷重(円周方向荷重)を検出し、検出したラジアル荷重から伝達トルクを算出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公平05−69752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術を車両のファイナルギヤに適用する場合、ハイポイドギヤ対で生じた噛み合い分力のラジアル荷重がディファレンシャルギヤケースを支持するテーパローラベアリングへ入力され、テーパローラベアリングに負荷されたラジアル荷重をテーパローラベアリングの円周方向に設けた荷重検出装置で検出することとなる。
【0004】
ところが、ハイポイドギヤ対は、発生する噛み合い分力の方向がギヤ緒元に応じて変化するため、ラジアル荷重に基づいてトルクを検出するためには、荷重検出装置を設置する位置を変更する必要があり、同一のファイナルギヤハウジングで複数のギヤ緒元に対応できないという問題があった。また、ギヤ緒元に応じて荷重検出装置のレイアウト変更を強いられることで、コストアップを伴うという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、歯車対のギヤ緒元にかかわらず同一のレイアウトで伝達トルクを計測可能なトルク検出装置およびそれを用いた車両用駆動力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明では、
入力軸と出力軸との間に円錐または回転双曲面のピッチ面形状を有する歯車対が設けられ、前記出力軸が左右一対のテーパベアリングで回動自在に支持されたトルク伝達機構のトルク検出装置において、
前記左右一対のテーパベアリングの少なくとも一方に作用するスラスト荷重を検出するスラスト荷重検出手段と、
検出されたスラスト荷重に基づいて、前記トルク伝達機構の伝達トルクを算出するトルク算出手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、トルク算出手段において、テーパベアリングに作用するスラスト荷重に基づいて伝達トルクが算出される。ここで、伝達トルクに対するスラスト荷重の方向は、歯車対のギヤ緒元にかかわらず常に一定である。よって、歯車対のギヤ緒元が変わり、発生する噛み合い分力の方向が変化した場合であっても、ギヤ緒元に応じてレイアウト変更を強いられることはない。また、伝達トルクはスラスト荷重に比例した値であるため、あらかじめスラスト荷重と伝達トルクとの関係を測定しておくことで、検出されたスラスト荷重から伝達トルクを正確に求めることができる。
結果として、歯車対のギヤ緒元にかかわらず同一のレイアウトで伝達トルクを計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1〜3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の車両用駆動力制御装置を適用した4輪駆動車の駆動系を示す構成図であり、実施例1の4輪駆動車は、左右前輪4,4がエンジン1によって駆動される主駆動輪であり、左右後輪8,8が電動モータ(以下、モータ)6によって駆動可能な従駆動輪である。エンジン1の出力トルクは、トランスミッション2およびディファレンシャルギヤ3を介して左右前輪4,4に伝達される。
【0010】
左右後輪8,8は、ファイナルギヤ7、入力軸5を介してモータ6と連結されている。モータ6からファイナルギヤ7に伝達された駆動トルクは、左右後輪8,8に均等に振り分けられる。モータ6の駆動力は、4WDコントローラ(トルク算出手段、トルク制御手段)9により制御される。
【0011】
4WDコントローラ9は、例えば、前後輪の車輪速から求まるスリップ率が高くなるほど、モータ6へのトルク指令値を高く設定することで、後輪8,8の駆動力を増加させ、悪路や低μ路等での走破性を高める。ファイナルギヤ7には、入力軸5から入力されたトルクを検出するトルクセンサ(スラスト荷重検出手段)10が設けられ、4WDコントローラ9は、検出されたトルクがトルク指令値と一致するように、モータ6の電流指令値をフィードバック制御する。
【0012】
次に、実施例1のファイナルギヤ7の構造について説明する。
図2は、実施例1のファイナルギヤ7の構成を示す縦断面図であり、実施例1のファイナルギヤ7は、ファイナルギヤハウジング11に、ディファレンシャルギヤ12と、上述のトルクセンサ10とが内装されている。ディファレンシャルギヤ12は、リングギヤ12aと、2つのピニオン12b,12cと、2つのサイドギヤ12d,12eと、ピニオンシャフト12fと、ディファレンシャルケース12gから構成されている。
【0013】
リングギヤ12aは、ディファレンシャルケース12gの外側にケース12gと一体に形成され、入力軸5と連結されたドライブピニオン5aと一対のハイポイドギヤ対を構成している。ここで、ハイポイドギヤ対とは、2軸が互いに交わらずピッチ面が回転双曲線形状となる歯車対をいう。
【0014】
サイドギヤ12dは、左出力軸13を介して左後輪と連結されている。サイドギヤ12eは、右出力軸14を介して右後輪と連結されている。2つのピニオン12b,12cは、ピニオンシャフト12fによりディファレンシャルケース12gに回動自在に支持され、リングギヤ12aと一体に回転する。ピニオン12b,12c、サイドギヤ12d,12eおよびピニオンシャフト12fは、ディファレンシャルケース12gに内装されている。
【0015】
ディファレンシャルケース12gは、左右のテーパローラベアリング15,16を介してファイナルギヤハウジング11に対し回転自在に支持されている。テーパローラベアリング15は、インナレース15aとアウタレース15bとローラ15cとから構成され、テーパローラベアリング16も同様に、インナレース16a、アウタレース16bおよびローラ16cから構成されている。
【0016】
トルクセンサ10は、テーパローラベアリング15の外側であって、アウタレース15bの軸方向端面と、ファイナルギヤハウジング11との間に介装されている。トルクセンサ10は、圧電素子や抵抗線歪みゲージ等、テーパローラベアリング15に作用するスラスト荷重を検出できるものであればよい。
【0017】
ファイナルギヤハウジング11は、左右一対のハウジング部材11a,11bから構成され、左右ハウジング部材11a,11bを車幅方向(出力軸13,14の軸方向)から複数のボルト11cにより共締めして一体化されている。よって、ボルト11cの締結力を変えることで、ハイポイドギヤ対5a,12aの与圧荷重(プリロード荷重)を調整することができる。このプリロード荷重は、トルクセンサ10において、スラスト力の初期応力となる。
【0018】
4WDコントローラ9は、トルクセンサ10により検出されたスラスト荷重を、あらかじめ測定したハイポイドギヤ対5a,12aのスラスト荷重と伝達トルクとの関係(図3)に基づいて、ドライブピニオン5aからリングギヤ12aに伝達されたトルクであるリングギヤトルクを算出する。
【0019】
図3において、「ドライブ」とは、後輪8,8がモータ6の駆動トルクにより走行する状態、すなわちドライブピニオン5aからリングギヤ12aへとトルクが伝達されている状態である。一方、「コースト」とは、惰性走行状態、すなわち車輪8,8からファイナルギヤ7へとトルクが伝達されている状態である。
【0020】
4WDコントローラ9では、図4に示すように、トルクセンサ10によるトルク計測を行っている場合、アクセル開度がゼロ、またはギヤポジションがニュートラルのときのトルク検出値をプリロード荷重として記憶し、トルクセンサ10のゼロ点リセットを行う。
【0021】
[伝達トルク計測方法]
実施例1では、入力軸5からファイナルギヤ7にモータ6の駆動トルクが入力されたとき、ハイポイドギヤ対5a,12aによって生じた噛み合い反力のスラスト方向荷重成分は、ディファレンシャルケース12gを支持するテーパローラベアリング15,16に負荷される。このとき、テーパローラベアリング15の軸方向背面とファイナルギヤハウジング11間に設置されたトルクセンサ10では、アウタレース15bに入力されたスラスト荷重が検出され、4WDコントローラ9では、あらかじめ測定したスラスト荷重と伝達トルクとの関係(図3)を用いて、伝達トルクを測定する。
【0022】
[ドライブトルクの測定]
テーパローラベアリング15は、一般的にプリロード荷重を与えて使用するため、初期からスラスト荷重が負荷されている状態にある。ドライブ時とコースト時でスラスト荷重の作用方向が反対となる場合、ドライブ時はプリロード荷重と同一方向にスラスト荷重が負荷されるため、テーパローラベアリング15のプリロード荷重による初期のスラスト荷重からの増加分がドライブトルクによって生じたスラスト荷重となり、ドライブ走行時の伝達トルクを計測することができる。
【0023】
[コーストトルクの測定]
一方、コーストトルク入力時は、ドライブ時に対してスラスト荷重の負荷される方向が反対方向となるため、テーパローラベアリング15のプリロード荷重による初期のスラスト荷重からの減少分がコーストトルクによって生じたスラスト荷重となり、コースト走行時の伝達トルクを計測することができる。
【0024】
次に、作用を説明する。
特公平−217998号公報には、ギヤ対を支持するベアリングの外周方向に圧電素子や抵抗線歪ゲージ等の荷重検出装置を設け、伝達トルクに比例してギヤ対が発生する噛み合い分力のラジアル荷重(円周方向荷重)を検出し、検出したラジアル荷重から伝達トルクを算出している。
【0025】
この技術を車両のファイナルギヤに適用した場合、ハイポイドギヤ対で生じた噛み合い分力のラジアル荷重がディファレンシャルギヤケースを支持するテーパローラベアリングへ入力され、テーパローラベアリングに負荷されたラジアル荷重をテーパローラベアリングの円周方向に設けた荷重検出装置で検出することとなる。
【0026】
ところが、ハイポイドギヤ対は、図5に示すように、発生する噛み合い分力の方向がギヤ緒元に応じて変化するため、ラジアル荷重に基づいてトルクを検出するためには、荷重検出装置の設置位置を変更する必要があり、同一のファイナルギヤハウジングで複数のギヤ緒元に対応できない。このため、ギヤ緒元に応じて荷重検出装置のレイアウト変更を強いられる。一方、ギヤ緒元が変化しても対応できるようにテーパベアリングの円周方向に複数のセンサを設けた場合には、コスト増、質量増を招いてしまう。
【0027】
また、ドライブトルク、コーストトルクを検出するためには、それぞれの入力でラジアル荷重の作用する方向が変わるので、それぞれを検出するためのセンサを設ける必要があり、コスト増、質量増を招く。
【0028】
さらに、従来技術では、テーパローラベアリングの円周方向にセンサを設置しているため、テーパローラベアリングを支持するファイナルギヤハウジングにセンサを設置するための切り欠きが必要となり、切り欠きの追加工によるコストアップを招く。また、テーパローラベアリングとファイナルギヤハウジングの支持剛性が低下し、ベアリングの寿命低下およびファイナルギヤハウジングの強度低下が懸念される。
【0029】
[伝達トルク測定作用]
これに対し、実施例1のトルクセンサ10では、図6に示すように、ハイポイドギヤ対5a,12aのリングギヤ12aを支持するテーパローラベアリング15に作用するスラスト荷重を検出する。ここで、伝達トルクに対するスラスト荷重の方向は、ハイポイドギヤ対5a,12aのギヤ緒元にかかわらず常に一定である。よって、ハイポイドギヤ対5a,12aの緒元が変わり、発生する噛み合い力の方向が変わってもトルクセンサ10の配置を変更する必要が無く、同じレイアウトで複数のハイポイドギヤ対に対応でき、コストを低く抑えることができる。また、アウタレース15bのスラスト端面であれば、トルクセンサ10を設置する円周方向の位置は問わないため、レイアウト自由度が高い。
【0030】
また、実施例1では、テーパローラベアリング15のアウタレース15bのスラスト端面にトルクセンサ10を設けたため、トルクセンサ10には、ハイポイドギヤ対5a,12aに設定されたプリロード荷重がスラスト力の初期応力として付与される。よって、スラスト荷重がドライブ時、コースト時で方向が変わる場合、プリロード荷重に対する増減を検出することで、1つのトルクセンサ10でドライブトルク、コーストトルクが検出できる。
【0031】
加えて、実施例1では、テーパローラベアリング15が組み込まれるファイナルギヤハウジング11にトルクセンサ設置用の切り欠きを形成する必要がない。よって、アウタレース15bとファイナルギヤハウジング11の接触が不均一とならず、ベアリング15の寿命低下、およびファイナルギヤハウジング11の強度低下の懸念が無い。
【0032】
また、テーパローラベアリングのプリロード荷重は、従来、あるバラツキを持たせてプリロードトルクで管理していたが、実施例1のトルクセンサ10は、ボルト11cの締結力を調整することで、直接プリロード荷重を管理できる。よって、精度が向上し、バラツキが減らせるのでフリクション低減が可能となる。
【0033】
[トルクフィードバックによる過入力制限作用]
実施例1の車両用駆動力制御装置では、モータ6で後輪8,8の駆動トルクをコントロールするにあたり、4WDコントローラ9において、ファイナルギヤ7のハイポイドギヤ対5a,12aに伝達するトルクを把握し、モータ6の駆動トルクをフィードバック制御している。このため、ファイナルギヤ7に過大なモータトルクが入力されないよう、モータ6の駆動トルクを制限することができる。よって、従来の後輪をモータ駆動する4輪駆動車と比較して、ファイナルギヤ7の負荷を小さく抑えることができるため、ファイナルギヤ7の小型化、軽量化を図ることができる。
【0034】
[トルクセンサのゼロ点補正作用]
上述したように、テーパローラベアリングは、一般的にプリロード荷重を与えて使用するが、プリロード荷重は、テーパローラベアリングの周辺温度によって変化するため、トルク計測精度が低くなる。
【0035】
この対策として、実施例1では、駆動力の掛かっていない状態、例えばギヤポジションがニュートラル状態の時や、アクセルOFF状態を検出し、常にトルクセンサ10のスラスト荷重がゼロ点を補正するように制御するため、テーパローラベアリング15が持つ初期プリロード荷重のバラツキやプリロード荷重の温度依存性などのトルク計測精度悪化要因をキャンセルでき、精度の良い実伝達トルク測定が可能となる。
【0036】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用駆動力制御装置にあっては、以下に列挙する効果が得られる。
【0037】
(1) 入力軸5と左右出力軸13,14との間にハイポイドギヤ対5a,12aが設けられ、出力軸13,14が左右一対のテーパローラベアリング15,16で回動自在に支持されたファイナルギヤ7のトルク検出装置において、テーパローラベアリング15に作用するスラスト荷重を検出するトルクセンサ10と、検出されたスラスト荷重に基づいて、ハイポイドギヤ対5a,12aの伝達トルクを算出する4WDコントローラ9と、を備える。これにより、ハイポイドギヤ対5a,12aのギヤ緒元にかかわらず同一のレイアウトで伝達トルクを計測することができる。
【0038】
(2) トルクセンサ10を、テーパローラベアリング15のアウタレース15b軸方向端面と、ファイナルギヤハウジング11との間に介装したため、ハイポイドギヤ対5a,12aのプリロード荷重により、トルクセンサ10にあらかじめ初期応力を付与することができ、1つのトルクセンサ10でドライブトルクとコーストトルクを計測することができる。また、ファイナルギヤハウジング11にトルクセンサ10を埋め込むための切り欠き等の加工が不要であり、テーパローラベアリング15とファイナルギヤハウジング11とを均一に接触させることができる。よって、接触が不均一となることに起因するベアリングの寿命低下、ハウジングの強度低下等を回避することができる。
【0039】
(3) ファイナルギヤハウジング11を、出力軸13,14の軸方向からボルト11cで共締めして一体化される一対の左右ハウジング部材11a,11bで構成したため、ボルト11cの締結力を変えることで、プリロード荷重を任意の値に調整することができる。
【0040】
(4) 4WDコントローラ9は、トルクセンサ10により検出されたトルクがトルク指令値と一致するように、モータ6の電流指令値をフィードバック制御するため、ファイナルギヤ7の負荷を小さく抑えることができ、ファイナルギヤ7の小型化、軽量化を図ることができる。
【0041】
(5) 4WDコントローラ9は、モータ6の出力トルクがファイナルギヤ7に伝達されない走行状態のとき、トルクセンサ10のゼロ点補正を行うため、テーパローラベアリング15が持つ初期プリロード荷重のバラツキやプリロード荷重の温度依存性などのトルク計測精度悪化要因をキャンセルでき、精度の良い実伝達トルク測定が可能となる。
【実施例2】
【0042】
図7は、実施例2のファイナルギヤ7の構成を示す縦断面図であり、実施例2では、実施例1の構成に加え、右テーパローラベアリング16のアウタレース16bのスラスト端面にトルクセンサ20を設けている。
なお、他の構成については、図2に示した実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0043】
実施例2では、ドライブトルク、コーストトルクで噛み合い分力のスラスト荷重の方向が変わる場合、ドライブトルクはトルクセンサ10により検出されたスラスト荷重から測定することができる(図8(a))、コーストトルクはトルクセンサ20により検出されたスラスト荷重から測定することができる(図8(b))。
【実施例3】
【0044】
図9は、実施例3のファイナルギヤ7の構成を示す縦断面図であり、実施例3では、実施例1の構成に対し、テーパスプライン21による噛み合い反力でトルクを計測する構成を追加している。
なお、他の構成については、図2に示した実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0045】
実施例3では、トルクセンサ10とテーパスプライン21による噛み合い反力でトルクを計測する公知の技術を組み合わせることで、左右出力軸13,14の伝達トルクをそれぞれ測定することができる。すなわち、トルクセンサ10で左右合計の実伝達トルクを求め、テーパスプライン21で右出力軸14の実伝達トルクを把握すれば、左出力軸13の実伝達トルクは、左右合計から右出力軸14分を引いた差分となる。
【0046】
一般的に、左右出力軸13,14の実伝達トルクを把握する場合、公知の技術を使うと2つの機構が必要となり、大きなスペースが必要になるが、トルクセンサ10と組み合わせることでテーパスプライン21が1つで済み、小さなスペースで左右出力軸13,14の実伝達トルクをそれぞれ把握することが可能となる。
【0047】
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1〜3に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
【0048】
例えば、本発明は、実施例1〜3に示したような、電動モータで駆動される後輪のファイナルギヤのみならず、図10に示すように、ハイポイドギヤを用いた動力伝達機構、例えば、FR(エンジン前置き後輪駆動車)のファイナルギヤ、エンジントルクを前後輪に振り分けるトランスファーや後輪のファイナルギヤ等にも適用することができる。そして、これらの箇所に適用した場合にも、実施例1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
また、実施例1〜3では、本発明を回転双曲面のピッチ面形状を有する歯車対であるハイポイドギヤ対を有するトルク伝達機構に適用した例を示したが、円錐のピッチ面形状を有する歯車対であるベベルギヤを有するトルク伝達機構にも適用可能であり、実施例1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例1の車両用駆動力制御装置を適用した4輪駆動車の駆動系を示す構成図である。
【図2】実施例1のファイナルギヤの構成を示す縦断面図である。
【図3】実施例1のハイポイドギヤ対のスラスト荷重と伝達トルクとの関係を示す図である。
【図4】実施例1の4WDコントローラにおけるトルクセンサのゼロ点補正方法を示すフローチャートである。
【図5】ハイポイドギヤ対の緒元変更に伴う伝達トルクのラジアル方向成分の変化を示す説明図である。
【図6】実施例1の伝達トルク計測作用を示すハイポイドギヤ対の縦断面図である。
【図7】実施例2のファイナルギヤの構成を示す縦断面図である。
【図8】実施例2のドライブトルクおよびコーストトルクの計測作用を示すスラスト荷重に対する伝達トルクの特性図である。
【図9】実施例3のファイナルギヤの構成を示す縦断面図である。
【図10】本発明の他の適用分野を示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 エンジン
2 トランスミッション
3 ディファレンシャルギヤ
4,4 前輪
5 入力軸
5a ドライブピニオン
6 モータ
7 ファイナルギヤ
8,8 後輪
9 4WDコントローラ
10 トルクセンサ
11 ファイナルギヤハウジング
11a,11b ハウジング部材
11c ボルト
12 ディファレンシャルギヤ
12a リングギヤ
12b,12c ピニオン
12d,12e サイドギヤ
12f ピニオンシャフト
12g ディファレンシャルケース
13,14 出力軸
15 テーパローラベアリング
15a インナレース
15b アウタレース
15c ローラ
16 テーパローラベアリング
16a インナレース
16b アウタレース
16c ローラ
20 トルクセンサ
21 テーパスプライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸と出力軸との間に円錐または回転双曲面のピッチ面形状を有する歯車対が設けられ、前記出力軸が左右一対のテーパベアリングで回動自在に支持されたトルク伝達機構のトルク検出装置において、
前記左右一対のテーパベアリングの少なくとも一方に作用するスラスト荷重を検出するスラスト荷重検出手段と、
検出されたスラスト荷重に基づいて、前記トルク伝達機構の伝達トルクを算出するトルク算出手段と、
を備えることを特徴とするトルク検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトルク検出装置において、
前記スラスト荷重検出手段を、前記テーパベアリングのアウタレース軸方向端面と、前記トルク伝達機構を覆うハウジングとの間に介装したことを特徴とするトルク検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のトルク検出装置において、
前記ハウジングを、前記出力軸の軸方向からボルトで共締めして一体化される一対の左右ハウジング部材で構成したことを特徴とするトルク検出装置。
【請求項4】
駆動源の出力トルクを減速して駆動輪へ伝達するトルク伝達機構と、
車両の走行状態に応じたトルク指令値に基づいて、前記駆動源の出力トルクを制御するトルク制御手段と、
を備えた車両用駆動力制御装置において、
前記トルク伝達機構の伝達トルクを検出するトルク検出装置として、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載されたトルク検出装置を用い、
前記トルク制御手段は、前記トルク検出装置により検出された伝達トルクが前記トルク指令値と一致するように、前記出力トルクをフィードバック制御することを特徴とする車両用駆動力制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用駆動力制御装置において、
前記トルク算出手段は、前記駆動源の出力トルクが前記トルク伝達機構に伝達されない走行状態のとき、前記スラスト荷重検出手段のゼロ点補正を行うことを特徴とする車両用駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−31058(P2009−31058A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193640(P2007−193640)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】