説明

トルク測定装置

【課題】締付機器と締付部材との間に取り付けられ、締付機器の締付に係る回転動作と一体となって回転して締付トルクを測定するトルク測定装置において、測定されたトルク値の確認を容易にする技術を提供することを目的とする。
【解決手段】一端に締付部材を締め付ける締付機器の角ドライブが嵌めこまれる凹部と、他端に締付部材と係合するソケットに嵌めこまれる角ドライブと、が形成されたトルクセンサ軸と、前記トルクセンサ軸の表面に配置され、前記トルクセンサ軸に生じるひずみに応じて電気信号を出力する歪ゲージと、前記トルクセンサ軸に一体的に固定され、トルク測定のための電気回路を格納するケースと、前記歪ゲージが出力する電気信号に基づいて算出される測定トルク値を2.4GHz帯の電波で送信するアンテナと、前記電気信号に基づいて算出されるトルク値のうち最大のトルク値を、前記測定トルク値として前記アンテナを介して送信させる測定トルク値送信制御部と、を備えることを特徴とするトルク測定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締付部材を締め付ける締付機器に取り付けて使用するトルク測定装置に関し、特に測定したトルク値の確認を容易にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、予め設定された所定のトルクでボルトなどの締付部材を締め付ける動力式締付機の締付トルクを測定する機器として、動力式締付機の角ドライブ(差込角)と、動力式締付機の角ドライブに取り付けて締付部材に嵌めるソケットと、の間に装着して、動力式締付機が締付部材を締め付けるトルクを測定する略円柱状のトルク測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このトルク測定装置を取り付けた動力式締付機を駆動すると、動力式締付機の角ドライブが回転し、角ドライブに取り付けられたトルク測定装置も一体となって回転する。従って、動力式締付機の回転力がトルク測定装置及びソケットを介して締付部材に作用し、締付部材の締め付けを行う。
【0004】
そして、動力式締付機が所定のトルクで締付対象物を締め付ける際、締め付ける力と締付対象物からの反力によって、一端に動力式締付機の角ドライブが嵌め込まれ、他端が締付部材に嵌められたソケットに嵌め込まれたトルク測定装置のトルクセンサ軸に対してねじれるように力が作用しひずみが生じる。そのひずみをトルクセンサ軸の表面に貼着された歪ゲージによって検出し、その電気信号に基づいて締付部材を締め付けるトルクを算出することができる。
【0005】
従って、このトルク測定装置によれば、動力式締付機によって締付部材を締め付けた後に、検査用のトルク測定機器を用いて改めて締付トルクを測定する必要がなく、動力式締付機によって締め付けを行いながら、締付トルク値を測定することができる。
【0006】
また、このトルク測定装置は、測定した締付トルク値を記憶するメモリを備え、装置の外面には記憶した締付トルク値を表示する液晶表示部を備えており、締付が完了した後に、液晶表示部に表示される締付トルク値を確認することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−256711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したトルク測定装置は、動力式締付機を駆動すると、トルク測定装置自体が回転してしまう。つまり、このトルク測定装置は、動力式締付機が所定のトルクに達するまで駆動する際に一体的に回転するため、1つの締付部材の締め付けが完了して回転が停止した場合に、トルク測定装置の外面に配置された液晶表示部が測定トルク値を確認する測定者側に向いた位置で停止するとは限らない。そのため、測定者は、回転が停止するたびに液晶表示部を見ることのできる位置に移動して測定トルク値を確認しなければならなかった。
【0009】
また、狭い空間などで使用され、動力式締付機の周囲の限られた位置からしかトルク測定装置の液晶表示部を確認できないような場合には、液晶表示部を見ることのできない位置で回転が停止すると、測定トルク値を確認することができない。そして、通常、トルク測定装置は、締付動作中に動力式締付機から外れないように、動力式締付機の角ドライブが嵌め込まれるトルク測定装置の嵌合穴と、角ドライブと、を貫通するピンなどにより強固に固定されている。そのため、動力式締付機によって次々と締付部材の締付を行うような場合は、トルク測定装置を動力式締付機から取り外して測定トルク値を確認することはできない。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、締付機器と締付対象物の締付部材との間に取り付けられ、締付機器の締付部材を締め付ける回転動作と一体となって回転して締付トルクを測定するトルク測定装置において、測定されたトルク値の確認を容易にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係るトルク測定装置の一態様は、一端に締付部材を締め付ける締付機器の角ドライブが嵌めこまれる凹部と、他端に締付部材と係合するソケットに嵌めこまれる角ドライブと、が形成されたトルクセンサ軸と、前記トルクセンサ軸の表面に配置され、前記トルクセンサ軸に生じるひずみに応じて電気信号を出力する歪ゲージと、前記トルクセンサ軸に一体的に固定され、トルク測定のための電気回路を格納するケースと、前記歪ゲージが出力する電気信号に基づいて算出される測定トルク値を電波で送信するアンテナと、前記電気信号に基づいて算出されるトルク値のうち最大のトルク値を、前記測定トルク値として前記アンテナを介して送信させる測定トルク値送信制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、締付機器と締付対象物の締付部材との間に取り付けられ、締付機器の締付部材を締め付ける回転動作と一体となって回転して締付トルクを測定するトルク測定装置において、測定されたトルク値の確認を容易にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態によるトルク測定装置の外観図である。
【図2】図1に示すトルク測定装置を矢印A方向から見た外観図である。
【図3】図1に示すトルク測定装置を矢印B方向から見た外観図である。
【図4】図1に示すトルク測定装置のC−C’矢視における断面図である。
【図5】図1に示すトルク測定装置を用いたトルク測定システムのシステム構成図である。
【図6】図1に示すトルク測定装置の電気的な回路構成及びトルク測定装置によって実現される機能を説明するためのブロック図である。
【図7】締付機の一部の分解斜視図である。
【図8】締付機の一部の分解斜視図である。
【図9】測定トルク値を送信する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態による、トルク測定装置1の外観図であり、図2は、トルク測定装置1の図1に示す矢印A方向から見た図であり、図3は、トルク測定装置1の矢印B方向から見た図である。図4は、図1に示すC−C’矢視におけるトルク測定装置1の断面図である。また、図5は、本実施の形態によるトルク測定装置1の利用例として、トルク測定装置1を取り付けた電動で駆動してボルトなどの締付部材150を締め付ける動力式締付機100と、トルク測定装置1から送信した電波を受信する受信機200とにより構成されるトルク測定システムのシステム構成図であり、図6は、本実施の形態のトルク測定装置1の電気的な回路構成、及び、トルク測定装置1によって実現される機能を説明するためのブロック図である。
【0016】
本実施の形態のトルク測定装置1は、たとえば図5に示すように、動力式締付機(以下、単に「締付機」ともよぶ。)100に取り付けられて、締付機100が締付部材150を締め付けるトルクを測定し、その測定トルク値を電波により受信機200に送信するものである。そして、受信機200または受信機に接続されたパソコン300などの端末により、受信した測定トルク値を確認することができる。図1〜図4に示すように、このトルク測定装置1は、トルクセンサ軸2と、ケース4と、液晶表示部6と、操作入力スイッチ8と、アンテナ10と、CPU20と、メモリ22などを備える。
【0017】
以下、トルク測定装置1の各構成について説明する。
【0018】
トルクセンサ軸2は、ケース4の側壁4a、4bを貫通しており、一端が締付機100の角ドライブ(差込角)102が嵌め込まれて固定される嵌合部2aであり、他端が締付部材に係合するソケット104が取り付けられて固定される、角ドライブ(差込角)2cとなっている。トルクセンサ軸2の嵌合部2a側は、ケース4の側壁4aと結合されて一体となっている。一方、トルクセンサ軸2の角ドライブ2c側は、ケース4の側壁4bを非結合状態で貫通している。これは、締め付けの際にトルクセンサ軸2のねじれに伴ってケース4がねじれるのを防ぐためである。嵌合部2aには、締付機100の角ドライブ102が図5に示すように嵌め込まれる嵌合穴2bが形成されている。そして、トルクセンサ軸2のケース4によって囲まれている部分の外表面には、トルクセンサ軸2のひずみを検出する歪ゲージ2Gが取り付けられている。
【0019】
このトルクセンサ軸2は、動力式締付機100が駆動すると、一体となって回転し、角ドライブ2cに取り付けられたソケット104が回転し、ソケット104に係合した締付部材150を締め付けることができる。そして、締付部材150が締め付けられていくと、締付機100からの締め付ける力と締付部材150からの反力によって、トルクセンサ軸2がねじれてひずみが生じる。そして、歪ゲージ2Gは、このひずみを検出し、ひずみに応じた電気信号を出力する。後述するCPU20によって、この電気信号の大きさに応じて締付トルク値が算出される。
【0020】
ケース4は、円筒状の形状で、その外面に測定トルク値を表示する液晶表示部6や操作入力スイッチ8などが配置される。また、ケース4の内部には、測定トルク値を電波で送信するアンテナ10や、測定トルク値の算出処理や電波による送信処理などを行うCPU20やメモリ22、その他の電気回路などが格納される。また、上述したように、ケース4は、側壁4a側のみトルクセンサ軸2に固定される。
【0021】
液晶表示部6は、トルクセンサ軸2及びCPU20等によって算出されるトルク値を表示する。また、そのほか各種設定などを行う際にその設定画面などを表示する。
【0022】
操作入力スイッチ8は、電源のオンオフや、測定モードの設定などを行うための操作入力手段である。
【0023】
アンテナ10は、測定トルク値を電波によって受信機100に送信する。本実施の形態のアンテナ10は、たとえば、ブルートゥース(Bluetooth)(登録商標)規格により電波を出力して、測定トルク値を受信機200に送信することができる。
【0024】
次に、図6に基づいて、本実施の形態のトルク測定装置1の電気回路の構成について説明する。
【0025】
CPU20は、トルクセンサ軸2において歪ゲージ2Gによって検出されるひずみに応じた電気信号からトルク値を算出する処理や、算出した測定トルク値をアンテナ10を介して電波で送信させる処理などの、トルク測定装置1における様々な処理を行う。
【0026】
メモリ22は、CPU20において実行されるトルク値の算出処理などを行うための様々なプログラムを格納する。また、算出されたトルク値などを記憶することもできる。また、メモリ22は、受信機200側で受信したデータがどのトルク測定装置からのものであるかを識別するために、測定トルク値に対応付けて送信されるトルク測定装置1のID情報を記憶することができる。メモリ22は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、VRAM(Video RAM)等から構成されることができる。
【0027】
アナログ増幅部フィルター部24は、歪ゲージ2Gからの電気信号の増幅や不要な信号のカットを行う。A/D変換器26は、歪ゲージ2Gから出力された電気信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換する。バッテリ部28は、歪ゲージ2Gなどに電力を供給する。USB出力部30は、USB接続によりデータを出力するための部材である。
【0028】
以上が、本実施の形態のトルク測定装置1の構成である。なお、図5に示した受信機200は、トルク測定装置1からの電波を受信することができる機器であればどのようなものでもよい。本実施の形態では、トルク測定装置1は、ブルートゥース規格に基づいて電波を送信するため、ブルートゥース規格に対応した受信機を用いる。また、受信機は、受信機自体に情報処理部や表示部などを備え、受信した測定トルク値を記憶したり表示したりすることが可能な専用の装置でもよいし、受信機自体は測定トルク値の受信のみを行い、測定トルク値の記憶や表示は接続されるパソコン300などの端末で行うようにしてもよい。
【0029】
次に、図6に基づいて、本実施の形態のトルク測定装置1が、締付機100が締付部材を締め付けるトルク値を算出する処理及びその測定トルク値を電波で送信する処理を実現するための機能ブロックについて説明する。本実施の形態のトルク測定装置1は、演算部61と、表示制御部62と、測定トルク値送信制御部としてのトルク値判断部63及び送信制御部65と、タイマー64と、通信データ処理部66と、を備える。
【0030】
演算部61は、歪ゲージ2Gから出力された電気信号を、A/Dコンバータ26等を介してデジタル信号として取得し、その取得したデジタル信号に基づいてトルク値を算出する。トルク値は、メモリ22に予め記憶された電気信号の大きさとトルク値の関係に基づいて算出される。
【0031】
表示制御部62は、演算部61が算出した測定トルク値を液晶表示部6に表示させる処理を行う。
【0032】
トルク値判断部63は、1つの締付部材150を所定トルクで締め付ける1回の締付動作において、締め付け動作に応じて取得される電気信号に基づいて算出されるトルク値から、ピークトルク値を決定する処理を行う。ピークトルク値とは、一回の締付動作において締付部材150に加えられた最も大きいトルク値であり、締付機100によって締め付けられた締付部材150はピークトルク値で締め付けされる。本実施の形態のトルク値判断部63は、締付トルク値が0の状態から締め付けを開始して演算部61から取得するトルク値が増加し、その後、締付機100の例えばトグル機構等の所定トルクにおいて締め付け部材に対する締付力の伝達を解除する機構の作動により、締付機100が締め付けを停止してトルク値が0になり、所定時間が経過した場合に、一回の締め付け動作が完了したと判断する。そして、トルク値判断部63は、その間に測定されたトルク値のうち最大のトルク値を、一回の締付動作におけるピークトルク値として決定する。なお、トルク値判断部63において決定されたピークトルク値は、メモリ22に記憶しておくこともできる。
【0033】
タイマー64は、上述したトルク値判断部63がピークトルク値を決定する際に、締め付けを停止してトルク値が0になってから所定時間経過したか否かの判定を行うための時間を測定する。なお、所定時間は任意に設定することができるが、1回の締付動作があまり長くならないように、3秒程度が好ましい。
【0034】
送信制御部65は、ブルートゥースの規格により、トルク値判断部63が決定したピークトルク値を測定トルク値としてアンテナ10によって電波で送信させる処理を行う。また、送信制御部65は、トルク測定装置1にそれぞれ割り当てられたIDを測定トルク値に対応付けて送信することができる。これにより、例えば、受信機100が複数のトルク測定装置から測定トルク値を受信し、データを管理する場合に、測定トルク値がどのトルク測定装置から送信されたデータであるかを識別することができる。それぞれの測定トルク値を送信したトルク測定装置を特定できないと、測定している動力式締付機100を特定することができないためである。
【0035】
ここで、本実施の形態において、トルク測定装置1による締付トルクの測定対象である、締付機100の締付動作について、図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8は、締付機100の内部構造を示す分解斜視図であり、図7は図5において点線の枠100Aで示す部分の内部構造を示し、図8は図5において点線の枠100Bで示す部分の内部構造を示す。
【0036】
図8に示すように、締付機100は、複数のトグル110と、トグル110を受けるトグル受け部112と、トグル110を押さえるトグル押さえ部114などを備えている。そして、不図示のモータが駆動するとトグル押さえ部114が回転し、トグル110を介してトグル受け部112も回転する。トグル受け部112が回転すると、種々のギアなどを介して図7に示す角ドライブ102が回転し、締付部材150を締め付けることができる。そして、例示する締付機100の場合、締付トルクが予め設定した所定のトルクに達すると、複数のトグル110に作用する力の軸方向の分力が、トグル受け部112をトグル押さえ部114側に押し付けているスプリング116の力を上回り、トグル機構が作動して、複数のトグル110がトグル受け部112をスプリング116の力に抗して前方(角ドライブ102側)に移動させる。トグル受け部112が前方に移動すると、不図示のリングギアとクラッチリングの噛み合いが解除され、モータからの回転が伝達されなくなり、角ドライブ102の回転が停止し、一回の締め付けが完了する。従って、回転の伝達が解除される時点で締付部材150に作用するトルクがピークトルク値となり、回転の伝達が解除された後は、締付部材に力が作用しないためトルクが0になる。
【0037】
そのため、本実施の形態のトルク測定装置1のトルク値判断部63は、このピークトルク値を締付機100によって締付部材150が締め付けられたトルク、つまり測定トルク値として採用し、電波で送信させる処理を行う。なお、ピークトルクを測定してトルクが0になった後に、次のねじの締め付けに移行したのか、それとも、一時的にトルクが低下し再び同じ締付部材の締め付けを行っているのか、を区別するために、タイマーにより測定を行って、所定時間が経過したか否かを判定する。これにより、トルク値判断部63は、所定時間経過する前に再度締付トルクが上昇した場合には、同じ締付部材の締め付けであると判定し、ピークトルク値の測定を行う。従って、本実施の形態のトルク測定装置1は、1つの締付部材の締付動作において測定された最大のトルク値をピークトルク値とし、そのピークトルク値を測定トルク値として電波で送信する。
【0038】
通信データ処理部66は、有線でデータを送受信する処理を行う。図6には、有線の接続手段として、USB接続を行うためのUSB出力部30を例示しているが、USB接続以外の様々な有線接続により、測定トルク値などのデータの送受信を行うことができる。
【0039】
以上の構成を備える本実施の形態のトルク測定装置1によれば、締め付け操作における回転に伴ってトルク測定装置1が回転してしまうことにより、測定トルク値を表示する液晶表示部が一定の位置とならず、測定トルク値を確認しにくい場合であっても、一回の締付動作が完了する度に測定トルク値を電波で送信することができる。これにより、それぞれの締付部材の締付トルク値を、1回の締付動作が完了する度に、受信機や受信機に接続されたパソコンなどの端末によって確認することができる。
【0040】
特に、締付トルクを測定する対象機器が、本実施の形態で例示した動力式の締付機のように、連続して次々に締付部材を締め付けていく機器であるような場合には、一回の締付動作完了後の液晶表示部の位置が一定の位置とならないため、液晶表示部を見て測定トルク値を確認することは難しい。これに対して本実施の形態のトルク測定装置1によれば、測定トルク値が締付動作のたびに電波で送信され、受信機側ですぐに確認することができる。従って、締付部材の締め付けが適正なトルクで行われているかを締付動作と並行してリアルタイムで確認することができる。
【0041】
次に、図9に基づいて、本実施の形態のトルク測定装置1が締付トルクを測定し、測定トルク値を電波で送信する処理の流れについて説明する。図9は、測定トルク値の送信処理を説明するためのフローチャートである。
【0042】
まず測定をスタートすると、Act101において、トルク値判断部63が、演算部61が取得した電気信号に基づいて算出したトルク値を取得したか判定する。トルク値を取得しない場合には、トルク値を取得するまで判定を繰り返す。
【0043】
Act102では、トルク値判断部63が、演算部61から取得するトルク値の最大値が更新されているか否かを判定する。トルク値判断部63は、取得したトルク値が増加していると判定した場合には、この判定を繰り返す。
【0044】
Act102においてトルク値の最大値が更新されなくなった場合は、Act103において、トルク値判断部63が、演算部61が算出するトルク値がゼロになったか否かを判定する。トルク値がゼロになっていない場合にはこの判定を繰り返す。
【0045】
測定トルク値がゼロになった場合には、Act104において、トルク値判断部63が、タイマー64の計測をスタートさせる。
【0046】
Act105において、トルク値判断部63は、タイマー64の計測がスタートした後、演算部61において算出されるトルク値が0になったか否かを判定する。トルク値が0になっていない場合には、締付機100による1回の締付動作が続行していると判断して、Act102に戻り、Act102〜Act104の処理を繰り返す。
【0047】
トルク値が0になっていた場合には、Act106において、トルク値判断部63が、タイマー64が計測を開始してから所定時間(例えば3秒)経過したか否かを判定する。所定時間経過していなかった場合には、Act105に戻り、所定時間トルク値が0であるか否かの判定を繰り返す。
【0048】
所定時間経過した場合には、Act107において、トルク値判断部63が、それまでに取得したトルク値のうち、最大のトルク値をピークトルク値として決定する。
【0049】
Act108において、送信制御部65が、トルク値判断部63が決定したピークトルク値と、トルク測定装置1のID情報とを対応付けて、アンテナ10を介して、ブルートゥース規格に基づく電波を送信させる。
【0050】
そして、Act109において、今回の締付動作におけるピークトルク値として保持されているトルク値をクリアする。以上で、1つの締付部材に対する一回の締め付け動作における締付トルクの測定が終了する。
【0051】
引き続き次の締付部材の締め付けを行う場合には、Act101からの処理が繰り返される。以上の本実施の形態の処理により、トルク測定装置1から受信機200に対して測定トルク値が順次送信され、締め付け動作が完了するたびに受信機又は受信機に接続された端末等で測定トルク値を確認することができる。
【0052】
なお、以上説明した処理は、メモリ22に格納されている、締付トルクの測定処理及び測定トルク値を送信する処理を行うプログラムをCPU20に実行させることにより実現されるものである。
【0053】
なお、本実施の形態においては、トルク測定装置1と受信機200との電波の送受信は、ブルートゥース規格に基づいて行うものとして説明したが、これに限られるものではない。通常の2.4GHz帯の電波により測定トルク値を送信することもできるし、その他の利用可能な周波数帯の電波を用いて測定トルク値を送信することができる。
【0054】
また、本実施の形態のトルク測定装置1においては、トルクを検出する手段として、トルクセンサ軸2の表面に歪ゲージ2Gを取り付け、トルクセンサ軸2に生じるひずみを検出することにより行うとして説明したが、これに限られず、トルクセンサ軸2のひずみを電気的な信号として検出可能なセンサであればどのようなものでも用いることができる。
【0055】
また、上述した実施形態におけるトルク測定装置1において上述した各処理を実行させるプログラムを、締付トルクの測定処理プログラム及びその測定トルク値の送信処理プログラムとして提供することができる。上述した実施の形態では、発明を実施する機能を実現するための当該プログラムが、装置内部に設けられたメモリに予め記録されている場合を例示したが、これに限らず同様のプログラムをネットワークから装置にダウンロードしても良いし、同様のプログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶させたものを装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、プログラムを記憶でき、かつコンピュータが読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。
【0056】
具体的に、記録媒体としては、例えば、ROMやRAM等のコンピュータに内部実装される内部記憶装置、CD−ROMやフレキシブルディスク、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカード等の可搬型記憶媒体、コンピュータプログラムを保持するデータベース、あるいは、他のコンピュータ並びにそのデータベースや、回線上の伝送媒体などが挙げられる。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と共働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0057】
また、本実施の形態においては、トルク測定装置1を使用して締付トルクの測定を行う、測定対象機器として、動力式の締付機を例示したが、これに限られるものではなく、作業者が力を加えて締付を行うレンチやドライバーなどのその他の締付機器、締付工具についても適用することができる。
【0058】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0059】
1 トルク測定装置
2 トルクセンサ軸
2G 歪ゲージ
4 ケース
6 液晶表示部
8 操作入力スイッチ
10 アンテナ
20 CPU
22 メモリ
200 受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に締付部材を締め付ける締付機器の角ドライブが嵌めこまれる凹部と、他端に締付部材と係合するソケットに嵌めこまれる角ドライブと、が形成されたトルクセンサ軸と、
前記トルクセンサ軸の表面に配置され、前記トルクセンサ軸に生じるひずみに応じて電気信号を出力する歪ゲージと、
前記トルクセンサ軸に一体的に固定され、トルク測定のための電気回路を格納するケースと、
前記歪ゲージが出力する電気信号に基づいて算出される測定トルク値を電波で送信するアンテナと、
前記電気信号に基づいて算出されるトルク値のうち最大のトルク値を、前記測定トルク値として前記アンテナを介して送信させる測定トルク値送信制御部と、
を備えることを特徴とするトルク測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のトルク測定装置において、
前記測定トルク値送信制御部は、算出されるトルクが0の状態から上昇し、その後再びトルクが0になるまでに測定される最大のトルク値を、前記測定トルク値として送信させることを特徴とするトルク測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のトルク測定装置において、
前記測定トルク値送信制御部は、算出されるトルクが0の状態から上昇しその後再びトルクが0になった状態で所定時間が経過した場合に、前記最大のトルク値を前記測定トルク値として送信させることを特徴とするトルク測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−94994(P2011−94994A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246525(P2009−246525)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000151690)株式会社東日製作所 (47)
【Fターム(参考)】