説明

トルテロジンを得るための方法

本発明は、トルテロジンを得る方法に関する。本発明の方法は、式(II)


(式中、Rはヒドロキシル保護基であり、アスタリスクは不斉炭素原子を示す)
の化合物とジイソプロピルアミンとを還元剤の存在下で反応させること;場合によって、生成された中間体を塩に変換し、さらに必要に応じて、それを単離すること;ヒドロキシル保護基を除去すること;さらに必要に応じて、所望の鏡像異性体(R)もしくは(S)、または鏡像異性体の混合物を分離し、および/または上記のようにして得られた化合物をその薬学上許容される塩に変換することからなる。トルテロジンは、尿失禁および膀胱の活動過剰の他の症状の治療に使用できるムスカリン性受容体拮抗薬である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン、その鏡像異性体もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩を得るための方法、ならびに前記化合物の合成に有用な新規化合物に関する。
【0002】
発明の背景
トルテロジン(Tolterodine)は、化合物(R)−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミンの一般名であり((R)−トルテロジンと呼ばれることもある)、トルテロジンは尿失禁および膀胱の活動過剰の他の症状の治療に有用なムスカリン性受容体拮抗薬である。(S)−トルテロジンの別名でも知られる(S)鏡像異性体ならびに泌尿器および胃腸疾患の治療におけるその使用については、特許文献WO 98/03067に開示されている。米国特許第6,538,035号には、トルテロジンとその誘導体のいくつかの、哺乳類の喘息治療における使用について開示されている。
【0003】
トルテロジンは米国特許第5,382,600号で最初に開示された。前記特許には、一般にトシレートをジイソプロピルアミンと置き換えることに基づいた、トルテロジンおよび類似体を製造するためのいくつかの方法が開示されている。前記方法にはいくつかの欠点がある。置換反応は極めてゆっくりと起こるため、前記反応の実施には数日を要し、全収率は低い。使用する試薬のいくつかのもの(例えば、ヨウ化メチルや水素化リチウムおよびアルミニウム)は高価であり、それらの使用には危険が伴う。このことからこの方法にはより費用がかかり、むしろ、非生産的な方法となっている。
【0004】
米国特許第5,922,914号には、トルテロジンを得るための別の方法が開示されている。前記方法は、3,4−ジヒドロ−6−メチル−4−フェニル−2H−ベンゾピラン−2−オンをトルエン中DIBAL(水素化ジイソブチルアルミニウム)で還元し、対応するヘミケタール、6−メチル−4−フェニル−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オールを得、次いで、それを還元的アミノ化に付し、ラセミ型トルテロジンを得ることを含む。この方法にもまた、高価で、有害な試薬DIBALを使用することからいくつかの不都合があり、そのため、実際に該発明を実施することは工業レベルにおいては適さない。
【0005】
特許出願WO 03/014060には、トルテロジンを得るための方法について開示されている。この方法は上記方法のいくつかの欠点をある程度克服しているが、それでもなお問題のある段階(特に中間体、3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパノールを得、それをトシレート誘導体に変換し、その後、トシレートをジイソプロピルアミンと置換すること)を含んでいる。これらの段階はさらに、トシレート置換反応におけるジイソプロピルアミンの立体障害(求核置換反応をより難しくする)、その反応には高い温度が必要であること、そして反応時間が長いこと(すなわち、数日)などの重大な問題を抱えている。
【0006】
(R)−トルテロジン鏡像異性体を製造するための異なるアプローチは、米国特許第6,310,248号またはAndersson らによりJ. Org. Chem. 1998, 63, 8067-8070(一般に非常に高価な試薬である不斉誘導剤またはキラル補助基それぞれの関与を必要とする方法について開示している)において開示されているようないくつかの鏡像異性体選択的合成からなる。
【0007】
従って、最先端の方法に関連する問題を解決すること、そしてより費用効率が高く、有害性の低い試薬および出発物質を用いてその方法のコストを改善する、すなわち、より生産的である、トルテロジンを得るための代替法を提供することが必要である。前記方法は、工業規模で適用しやすく、目的生成物に良好な収率と品質を提供するはずであり、有利である。
【0008】
発明の概要
本発明は、これまでに述べられている欠点の全部または一部を克服する、トルテロジンを得るための代替法を提供するという問題に対応するものである。
【0009】
本発明によって提供される問題解決手法は、本発明者らが、式(II)の化合物(下記)から3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン、その鏡像異性体もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩を得ることができる(還元剤の存在下でのジイソプロピルアミンによる還元的アミノ化、その後のヒドロキシルの脱保護によって、極めて高い収率で前記化合物が得られる)ことが分かったという事実に基づいている。特定の実施形態では、還元的アミノ化によって生成した中間体[式(III)の化合物(下記)]を塩に変換し、さらに必要に応じて、ヒドロキシ保護基の除去の前に前記塩を単離する。式(II)の前記化合物は、費用効率の高い市販の出発化合物から得ることができる。
【0010】
本発明によって提供されているような方法には、関連する化学反応が、高収率にて、短い反応時間(一般に他の最先端の方法で要する時間よりも短い時間)で、既存の方法に対して合成工程数を増加せずに起こるという利点がある。さらに、式(III)の化合物を、ヒドロキシル保護基を除去する前に塩形態、例えば、臭化水素酸塩で単離するならば、実質的に純粋な生成物が得られ、その生成物が出発物質となって、ヒドロキシル保護基の加水分解によって、3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン、その鏡像異性体もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩が高純度および収率で得られる。前記方法は高価でおよび/または有害な試薬の使用を必要とせず、3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン、その鏡像異性体もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩、特に(R)−トルテロジンを良好な収率および製剤品質で提供する。この総てが方法の総合的なコスト縮減の一因となって、その方法が商業的な面から見て魅力のあるものとなり、工業レベルにおいて実践するためにそれを実施することが可能になる。
【0011】
従って、本発明の一態様は、式(II)の化合物から3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミンを得るための方法である。化合物、3−(2−ヒドロキシ−5−メチル−フェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミンの(R)鏡像異性体の分割により、治療上有用な(R)−トルテロジンを得る。
【0012】
本発明のさらなる態様は、式(II)の化合物ならびに3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン、その鏡像異性体(R)および(S)もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩を得る際のその使用である。
【0013】
本発明のもう1つのさらなる態様は、式(II)の前記化合物を得るための方法である。
本発明のもう1つのさらなる態様は、式(III)の化合物の塩ならびに3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン、その鏡像異性体(R)および(S)もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩を得る際のその使用である。特定の実施形態では、前記塩が無機酸付加塩、例えば、臭化水素酸塩である。
本発明のもう1つのさらなる態様は、式(III)の化合物の前記塩を得るための方法である。
【0014】
発明の詳細な説明
一態様において、本発明は、式(I)
【化1】

(式中、アスタリスクは不斉炭素原子を示す)
の3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン、その鏡像異性体もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩を得るための方法であって、
(a)式(II)
【化2】

(式中、Rはヒドロキシル保護基であり、アスタリスクは前記の意味を有する)
の化合物を還元剤の存在下でジイソプロピルアミンと反応させ、式(III)
【化3】

(式中、(R)およびアスタリスクは前記の意味を有する)
の化合物を得ること、
(b)式(III)の化合物からヒドロキシル保護基を除去し、式(I)の化合物を得ること、および
(c)必要に応じて、所望の(R)もしくは(S)鏡像異性体、または鏡像異性体の混合物を分離し、および/または式(I)の化合物をその薬学上許容される塩に変換すること
を含んでなる方法を提供する。
【0015】
特定の実施形態では、式(III)の中間体を塩に変換し、さらに必要に応じて、ヒドロキシル保護基の除去[工程(b)]の前にそれを単離する。
出発生成物である式(II)の化合物は新規化合物であり、以下で記載するような方法によって得ることができる。
【0016】
本明細書において、「ヒドロキシル保護基」とは、ヒドロキシル基を保護することが可能ないずれの基も含む。ヒドロキシル基保護基の例は、Green TW らによりProtective groups in Organic Synthesis, 3rd Edition (1999), Ed. John Wiley & Sons (ISBN 0-471-16019-9)において開示されている。実質的にはどんなヒドロキシル保護基も使用することができるが、特定の実施形態では、ヒドロキシル保護基がC−Cアルキル基、場合によって、置換されていてもよいベンジル基、アラルキル、シリルエーテル、カーボネートまたはベンジルエステルである。「C−Cアルキル」とは、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルカンの基誘導体(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、t−ブチルなど)を意味する。特定の実施形態では、ヒドロキシル保護基がC−Cアルキル基、好ましくはメチルまたはベンジル基である。
【0017】
還元剤の存在下での式(II)の化合物とジイソプロピルアミンとの反応は還元的アミノ化である。前記反応では実質的にはどんな好適な還元剤も使用することができるが、Rがメチルである場合の特定の実施形態では、還元剤をNaBCNHおよびNaB(AcO)H、好ましくはNaB(AcO)Hから選択するか、あるいは、還元を好適な触媒、例えば、(場合によって、担持型)金属触媒(例えば、Pd/Cなど)の存在下での水素化によって実施する。この反応は、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF)など)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタンなど)、アルコール(例えば、メタノールなど)、アセトニトリルなどのような有機溶媒中で実施する。還元的アミノ化は、対応する「インモニウム塩」中間体を通じて起こるが、2つの連続する工程(アンモニウム塩の形成とその後の還元)で実施してもよいし、または1工程(ワンポット)で実施してもよい(これらの選択的方法は両方とも本発明の範囲の中にある)。還元的アミノ化が高収率(一般に90%を上回る)で起こることから、本発明によって提供される式(I)の化合物を得る方法の高い総収率がもたらされる。式(II)の化合物においてRがメチルである場合の特定の実施形態では、この還元的アミノ化工程を−20℃〜40℃の間、好ましくは0℃〜20℃の間の温度で実施する。
式(I)の化合物を得るための式(III)の化合物からのヒドロキシル保護基の除去は、従来の方法により、例えば、無機酸、ルイス酸、有機硫化物などで処理することによって実施することができる。式(III)の化合物においてRがメチルである場合の特定の実施形態では、ヒドロキシル保護基の除去を酢酸中臭化水素酸水溶液で処理することによって、場合によって、ハロゲン化アルキルアンモニウム(例えば、臭化テトラブチルアンモニウム)のような相間移動触媒の存在下で実施する。この工程は、関連種に応じた適切な温度(その温度は当業者によって容易に決定され得る)で実施し、式(III)の化合物においてRがメチルである場合の特定の実施形態では、前記ヒドロキシル保護基の除去を温度90℃〜150℃の間、好ましくは110℃〜120℃の間の温度で実施する。
【0018】
また、式(III)の中間体を塩に変換してよく、必要に応じて、ヒドロキシル保護基の除去[工程(b)]の前にその塩を単離してもよい。その目的のため、式(III)の前記化合物を好適な溶媒(例えば、エステル、アルコールなど)中で好適な酸と反応させると、前記中間体にはアミノ基が存在していることから対応する酸付加塩が生成される。実質的にはどんな有機または無機酸を使用しても式(III)の化合物の前記塩が生成し得る。特定の実施形態では、前記酸が無機酸である。式(III)の化合物の前記塩の非限定的な具体例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩などが挙げられる。前記塩は、有利には反応媒質から単離することが可能な塩、例えば、臭化水素酸塩である。式(I)の化合物は、式(III)の化合物の塩からのヒドロキシル保護基の除去によって得ることができ、この除去は式(III)の化合物におけるカルボキシル保護基の除去に関してこれまでに記載されている方法のいずれかによって実施し得る。有利には、式(III)の中間体の塩のアニオンが薬学上許容されるアニオンであるときに、ヒドロキシル保護基を除去することによって生じる生成物が式(I)の化合物の薬学上許容される塩である。前記生成物は高純度で得られるため、製剤品質等級へのその精製が簡易化される。従って、反応母液中に不純物が残存すると思われるため、式(III)の化合物から塩を単離することによって式(III)の中間体の精製がなされ、結果的に、前記中間体を式(I)の化合物に変換すれば、不純物を実質的に含まない最終生成物(さらなる精製を実質的には必要としない)が得られる。
【0019】
特定の実施形態では、式(III)の化合物の塩がN,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン臭化水素酸塩である。前記酸付加塩は、式(III)の化合物を好適な有機溶媒(例えば、酢酸エチル、イソプロパノール、イソブタノールなど)中で臭化水素酸および酢酸と反応させること、およびpHを3〜5の間に維持することによって前記塩を沈殿させること(その単離を容易にする)により得ることができる(実施例8)。このようにして実質的に純粋な(すなわち、不純物実質的に含まない)安定した固体が得られ、これがヒドロキシル保護基の除去後に式(I)の化合物、その鏡像異性体もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩(例えば、臭化水素酸塩)を得るための出発物質となる。前記N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン臭化水素酸塩を用いると、臭化水素酸と酢酸での加水分解によるヒドロキシル保護基の除去が短い反応時間(他の方法では2〜3日を要するのに対し、一般に4〜6時間内)で起こり、結果として生じる生成物として薬学上許容される塩である式(I)の化合物の臭化水素酸塩が高純度で(一般に99.5%を上回る純度で)得られるため、それが最終生成物を99.8%以上の純度で得るのに必要な、まさに簡易精製法(例えば、メタノールを使用)となる。
【0020】
式(I)の化合物はアミンであり、好適な酸と反応させると有機または無機酸の付加塩を形成する。前記塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、リン酸塩、硝酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩が挙げられる(WO 98/29402)。前記塩は、遊離アミンを記載の酸と反応させることによる従来の方法によって得ることができる。特定の実施形態では、前記塩が薬学上許容される塩、例えば、臭化水素酸塩である。前記塩は、遊離アミンを臭化水素酸と反応させることによって得てもよいし、または臭化水素酸で処理することによってヒドロキシル保護基の除去を行った結果として得てもよい。場合によって、必要に応じて、前記付加塩を従来の方法により(例えば、前記塩を含む溶液のpHを遊離アミンが得られるまで変更することにより)対応する遊離アミンに変換してもよい。
【0021】
式(I)の化合物はキラル炭素を有している。そのため、式(I)の化合物はその単離(R)もしくは(S)鏡像異性体または前記鏡像異性体の混合物のいずれかの形態で存在する。本明細書において、鏡像異性体に適用される「混合物」とは、ラセミ混合物といずれか一方の鏡像異性体が多く含まれる混合物の両方を含む用語である。式(I)の化合物は、式(II)の化合物もしくは式(III)の化合物またはその塩の鏡像異性体の混合物(例えば、ラセミ混合物)から、あるいは式(II)もしくは式(III)の前記化合物またはその塩の純粋な鏡像異性体から得ることができる。出発物質が鏡像異性体の混合物である場合、得られた、式(I)の化合物の(R)および(S)鏡像異性体を鏡像異性体の混合物の分割についての従来の方法により(例えば、分別晶出、従来のクロマトグラフ法などを利用して)分離してもよい。特定の実施形態では、本発明によって提供される方法によって得られる式(I)の化合物が鏡像異性体の混合物(例えば、ラセミ混合物)として得られる。そのため、必要に応じて、得られた鏡像異性体混合物をその対応する鏡像異性体に分割し、所望の鏡像異性体を得てもよい。特定の実施形態では、前記鏡像異性体が(R)鏡像異性体、[(+)−(R)−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン]、すなわち、トルテロジン(薬学上有用な(R)−トルテロジンの別名でも知られる)である。もう1つの特定の実施形態では、前記鏡像異性体が(S)鏡像異性体、[(−)−(S)−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン]、すなわち、(S)−トルテロジンであり、これもまた治療用途を有する。鏡像異性体の混合物の分割は、任意の従来法により(例えば、キラルクロマトグラフィーカラムを使用することによりまたは好適なキラル酸での対応する鏡像異性体の塩の分別晶出を利用して)実施することができる。特定の実施形態では、式(I)の化合物からの(R)鏡像異性体の分離を、鏡像異性体の混合物をL−酒石酸で処理する光学分割により実施する。好適なキラル酸との(R)−トルテロジン塩、L−酒石酸塩または他の対応する塩は、所望の純度の式(I)の化合物の(R)鏡像異性体を得るのに必要な回数だけを再結晶させることができる。必要に応じて、得られた鏡像異性体をさらに当業者には公知の従来法によってその薬学上許容される塩に変換してもよい。
【0022】
出発物質である式(II)の化合物は、式(IV)
【化4】

(式中、Rはヒドロキシル保護基であり、アスタリスクは不斉炭素原子を示す)
の対応するアルコールの酸化により製造することができる。
【0023】
式(II)のアルデヒドを得るための式(IV)のアルコールの酸化は、第1級アルコールを対応するアルデヒドに変換することが可能な、任意の好適な酸化剤、酸化系または方法を用いて実施することができる。しかしながら、特定の実施形態では、式(IV)のアルコールの式(II)のアルデヒドへの酸化を、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、SO.ピリジン(SO.pyr)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TMPP)N−オキシド/NaClO系、あるいはスワン(Swern)法、好ましくはスワン法[Omura K. & Swern D. Tetrahedron 34: 1651 (1978)]を利用して実施する。前記酸化の実施に必要な作動手段(例えば、温度、溶媒など)は、選択した酸化剤、系または方法に応じて選択するものとする。
【0024】
式(IV)のアルコールは周知の生成物であり、その合成については、例えば、特許出願WO03/014060において開示されている。式(IV)の前記アルコールは、また、式(V)
【化5】

(式中、Rはヒドロキシル保護基である)
の化合物を溶媒中、強塩基の存在下で酸化エチレンと反応させること
を含んでなる本発明の方法によっても得られる。
【0025】
実質的には、式(V)の化合物に存在するメチレン基からプロトンを引き抜くことが可能などんな強い有機または無機塩基も使用することができるが、特定の実施形態では、前記塩基がt−BuOK、BuLi、NaH、NaNH、MeONaなどのような有機または無機塩基である。この反応は、好適な溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはエーテル(例えば、THFまたはジオキサン)など)中で実施する。この反応は、溶媒がTHFまたはDMFである場合には−80℃〜+50℃の間、好ましくは−80℃〜−40℃の間の温度で、溶媒がDMSOである場合には20℃〜60℃の間の温度で実施する。特定の実施形態では、式(V)の化合物の脱プロトン化をTHF中BuLiを用いて、−78℃〜−50℃の間の温度で実施し、温度が−50℃を超えていないことを見ながら酸化エチレンの添加を行う。
【0026】
式(V)の化合物は、式(VI)の化合物から、前記化合物を、フリーデル−クラフツアシル化反応、続いて、脱酸素化に付すことを含む方法(代替法A)またはフリーデル−クラフツアルキル化反応に付すことを含む方法(代替法B)によって得ることができる。式(V)の化合物は、有利にはRがC−Cアルキルまたはベンジルである場合には、前記代替法のいずれによっても、入手しやすい単純で費用効率の高い出発化合物および試薬から、短い反応時間、高収率で製造することができる。
【0027】
さらに詳しく言えば、代替法Aによる式(V)の化合物の獲得は、
a)式(VI)
【化6】

(式中、Rはヒドロキシル保護基である)
の化合物をルイス酸の存在下でハロゲン化ベンゾイルと反応させることによりフリーデル−クラフツアシル化に付し、式(VII)
【化7】

(式中、Rは前記の意味を有する)
の化合物を得ること、および
b)式(VII)の前記化合物を脱酸素化反応に付し、式(V)の化合物を得ること
を含んでなる。
【0028】
ハロゲン化ベンゾイルは、例えば、塩化ベンゾイルまたは臭化ベンゾイルであってよい。実質的にはどんなルイス酸も使用することができるが、特定の実施形態では、前記ルイス酸が四塩化スズ(SnCl)である。フリーデル−クラフツアシル化は、好適な溶媒(例えば、ジクロロメタン、アセトニトリル、ニトロメタン、ジオキサン、DMFなど)中で実施する。ルイス酸の添加は、約0℃〜30℃の間、好ましくは0℃付近の温度で実施する。
【0029】
式(VII)の化合物の脱酸素化は、従来の方法により(例えば、ケトンの脱酸素化に適した還元剤の使用により)実施することができる。特定の実施形態では、前記還元剤をNaBH(BF.THFの存在下)、NaBHCN(BF.THFの存在下)およびZn/HAcOから選択する。この反応は、エーテル(例えば、THF、ジオキサンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタンなど)、好ましくはTHFのような好適な溶媒中で実施する。
【0030】
脱酸素化反応は、20℃〜100℃の間、好ましくは50℃〜70℃の間の温度で実施することができる。
【0031】
代替法Bによる式(V)の化合物の獲得は、式(VI)の前記化合物をルイス酸の存在下でハロゲン化ベンジルと反応させることによりフリーデル−クラフツアルキル化に付し、式(V)の前記化合物を得ることを含んでなる。ハロゲン化ベンジルは、どんな好適なハロゲン化ベンジル(例えば、臭化ベンジル)であってもよい。実質的にはどんなルイス酸も使用することができるが、特定の実施形態では、前記ルイス酸が四塩化スズである。フリーデル−クラフツアルキル化は、好適な溶媒(例えば、アセトニトリル、ニトロメタン、ジオキサノ、DMFなど)中で実施する。ルイス酸の添加は、約0℃〜30℃の間、好ましくは0℃付近の温度で実施する。
【0032】
特定の実施形態では、式(V)の化合物の製造を代替法Aにより実施する。代替法Bに比べ、代替法Aは2つの反応工程を含むが、関連する反応には、それぞれ約78%および93%という高収率で起こる(実施例1参照)という利点があるため、式(VII)の中間体ケトンを簡単な方法により高収率で得ることが可能である。前記中間体ケトンは、従来の再結晶技術によって容易に精製することができる(従来の再結晶技術によって出発物質として使用することができる結晶性固体を得、次の段階でそれを精製する)。
【0033】
もう1つの態様では、本発明は、式(II)の化合物に関する。特定の実施形態では、式(II)の化合物がRがメチルである化合物である。式(II)の化合物は、新規化合物であり、式(I)の化合物の合成に使用することができることによって、式(I)の化合物、特にトルテロジンを得る際のそれらの使用とともに本発明のさらなる態様となる。
【0034】
もう1つの態様では、本発明は、式(III)の化合物の塩(例えば、酸の付加塩)に関する。実質的にはどんな有機または無機酸を使用しても式(III)の化合物の前記付加塩が生成し得る。特定の実施形態では、前記酸が無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸など)である。式(III)の化合物の前記酸付加塩の非限定的な具体例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩などが挙げられる。有利には、前記塩は反応媒質から単離することが可能な塩である。また、有利には、式(III)の化合物の塩のアニオンが薬学上許容される塩(例えば、臭化水素酸塩)のアニオンである。
【0035】
特定の実施形態では、式(III)の化合物の前記塩がN,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピル−アミン臭化水素酸塩である。
【0036】
式(III)の化合物の塩は、式(III)の化合物を好適な溶媒(例えば、エステル、アルコールなど)中で用意した有機または無機酸と反応させることによる従来の方法により得ることができる。場合によって、必要に応じて、前記付加塩を従来の方法により(例えば、前記塩を含む溶液のpHを遊離アミンが得られるまで変更することにより)対応する遊離アミン[式(III)の化合物]に変換してもよい。
【0037】
N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン臭化水素酸塩は、化合物、N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミンを好適な有機溶媒(例えば、酢酸エチル、イソプロパノール、イソブタノールなど)中で臭化水素酸および酢酸と反応させることにより、そして前記塩を沈殿させてその単離を容易にするようにpHを3〜5の間に維持することにより得ることができる。前記塩は、ヒドロキシル保護基の除去によって式(I)の化合物、その鏡像異性体もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩(例えば、臭化水素酸塩)を得るための優れた出発物質となる。
【0038】
式(III)の化合物の塩は、新規化合物であり、3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン、その鏡像異性体(R)および(S)もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩の合成に使用することができることによって、式(I)の化合物、特にトルテロジンを得る際のそれらの使用とともに本発明のさらなる態様となる。式(III)の化合物の前記塩を得るための方法が本発明のさらなる態様となる。
【0039】
本発明によって提供される方法によって、式(II)の化合物から、式(I)の化合物、その単離鏡像異性体またはそれらの混合物、およびその薬学上許容される塩、特に(R)および(S)鏡像異性体を得ることが可能になる。式(II)の前記化合物は、式(IV)の対応するアルコールから容易に良好な収率で得ることができる。
【0040】
本発明によって提供される式(I)の化合物を得るための方法にはいくつかの利点があるが、この方法は、とりわけ、いくつかある欠点の中で特に、反応時間の長い反応工程を経由する必要なくトルテロジンを得ることを可能にし、入手しやすい単純で費用効率の高い出発化合物および試薬(高価でなくかつ/または有害でない)からトルテロジンを製造することができ、トルテロジンおよび/またはその薬学上許容される塩を良好な収率および製剤品質で提供する。この総てがトルテロジンを得る方法の総合的なコスト縮減の一因となって、前記方法が商業的な面から見て魅力のあるものとなり、有利には工業レベルにおいて実践するために前記方法を実施することが可能になる。
次の実施例は本発明を説明するものであり、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0041】
実施例1
2−メトキシ−5−メチルベンゾフェノン
4−メチルアニソール(100g,0.82mol)とベンゾイル(95.15ml,0.82mol)のCHCl 500ml中混合物に、SnCl(47.5ml,0.41mol)を0℃にて滴下した。添加が完了したところで、3〜4時間反応させ、混合物を室温にした。反応が終了したところで、混合物を0℃にて冷却し、濃HCl(41ml)のHO(376ml)中混合物で加水分解し、NaOH(10%)2×50mlで洗浄し、乾燥させ、蒸発させ、結晶性固体形態で標題の化合物140g(78%)を得た。
【0042】
実施例2
(2−メトキシ−5−メチルフェニル)フェニルメタン
2−メトキシ−5−メチルベンゾフェノン(140g,0.62mol)のTHF 840ml中混合物に、BF・THF(204ml,1.86mol)およびNaBH(46.8g,1.24mol)を添加し、それを還流温度(60℃)までゆっくりと加熱し、約6時間維持した。一度反応が終了したら、混合物を冷却し、それをNaHCO(7%) 500mlに加え、その有機相を酢酸エチル200mlで抽出し、NaHCO(7%)3×50mlで洗浄し、乾燥させ、蒸発させ、標題の化合物を含む粘稠液[122.5g(93%)]を得た。
【0043】
実施例3
3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパノール
(2−メトキシ−5−メチルフェニル)フェニルメタン(24g,0.113mol)のTHF 120ml中溶液に、BuLi(54.4ml,0.147mol)を−78℃にて加えた。添加が完了したところで、室温まで加熱し、前記温度にて約2時間維持した。温度を再び−78℃まで下げ、酸化エチレン(4.98g,0.113mol)を温度が−50℃を超えないように加えた。反応が起こり、その反応は2時間後に完了した。次いで、混合物をNHCl 60mlで加水分解し、酢酸エチル30mlで抽出し、その有機相をNHCl 2×25mlで洗浄し、乾燥させ、蒸発させ、標題の化合物を含む黄色の粘稠液30g(100%)を得た。
【0044】
実施例4
3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパナール
4.1 酸化法(1)
塩化オキサリル(4.06ml,47.3mmol)のClCH 100ml中混合物に、ClCH 20ml中ジメチルスルホキシド(DMSO)(6.72ml,94.6mmol)を加え、−78℃にて冷却し、常に反応温度を−60℃より低く維持した。前記温度にて15分間行った後、次いで、3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパノール(9.33g,36.4mmol)のClCH 40ml中混合物を加えた。反応混合物を約45分間維持し、トリエチルアミン(25.72ml,0.18mol)を加えた。未精製の反応生成物を維持し、約1時間反応させ、NaHCO(7%) 100mlで加水分解した。抽出は酢酸エチル100mlで行った。その有機相をHCl(5%)2×25mlで洗浄し、乾燥させ、蒸発させ、標題の化合物を含むオレンジ色の粘稠液8.67g(94%)を得た。
【0045】
4.2 酸化法(2)
ClCH 1mlに溶かした3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパノール(0.5g,1.95mmol)をPCC(0.63g,2.93mmol)およびMgSO 0.5gのClCH 4ml中懸濁液に加えた。反応は3時間後に完了した。次いで、それをセライトで濾過し、その濾液をHCl(5%)2×25mlで抽出した。得られた有機相を乾燥させ、溶媒を蒸発させ、標題の化合物を含む暗色の粘稠液2.21gを得た。
【0046】
4.3 酸化法(3)
3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパノール(0.5g,1.95mmol)、ClCH 6.5ml;DMSO 0.54mlおよびトリエチルアミン(2.7ml,19.5mmol)からなる混合物に、SO・Py(1.56g,9.75mmol)を0℃にてゆっくりと加えた。反応が終了したところで、それをNHCl飽和溶液(2×25ml)で洗浄した。得られた有機相を乾燥させ、溶媒を蒸発させ、標題の化合物を含む黒色の粘稠液0.45gを得た。
【0047】
4.4 酸化法(4)
ClCH 2.5mlおよび2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン(TMPP)N−オキシド(3mg,0.022mmol)からなる混合物に、メタクロロ過安息香酸(0.04g,0.213mmol)を−10℃にて加え、続いて、ClCH 2.5mlに溶かした3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパノール(0.5g,1.95mmol)を、温度を−10℃に維持しながら滴下した。その後、温度を0℃まで上げ、pH9.5の10%NaOCl溶液(1.3ml,2.13mmol)を滴下し、反応を1時間維持した。この時間が経過したところで、反応混合物を水およびClCHで処理し、標題の化合物を含む濃黄色の不純液体0.4gを得た。
【0048】
実施例5
N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン
THF 10mlに溶かした3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパナール(8.67g,34.1mmol)とジイソプロピルアミン(5.78ml,40.92mmol)を、NaHB(OAc)(44.3mmol)のTHF 70ml中懸濁液に加え、未精製の反応生成物を2時間維持した。反応が終了したところで、それをNaHCO(7%) 25mlで加水分解し、酢酸エチル25mlで抽出し、HCl(5%)2×25mlで洗浄し、溶媒を乾燥させ、蒸発させ、標題の化合物を含む黄色の粘稠液10.52g(91%)を得た。
【0049】
実施例6
N,N−ジイソプロピル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン臭化水素酸塩
6.1 方法A
N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン(10.52g,30.99mmol)のHBr(48%) 24mlおよび酢酸14ml中懸濁液を還流(115℃)下で72時間加熱した。次いで、酢酸エチル21mlを滴下し、それを0℃にて1時間攪拌し、濾過し、最終生成物(標題の化合物)6.5g(64%)を得た。
【0050】
6.2 方法B
N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン(0.85g,2.5mmol)のHBr(48%) 2ml、酢酸1.1mlおよび臭化テトラブチルアンモニウム(相間移動触媒)4mg中懸濁液を還流(115℃)下で48時間加熱した。次いで、酢酸エチル2mlを滴下し、0℃にて1時間攪拌し、濾過し、最終生成物(標題の化合物)0.8g(80%)を得た。
【0051】
実施例7
R−(+)−N,N−ジイソプロピル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン酒石酸塩
N,N−ジイソプロピル−3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニル−プロピルアミン臭化水素酸塩(53g,0.131mol)のCHCl 750mlおよび水375ml中懸濁液に、NaOH(50%)5.2mlを加え、必要に応じて、酢酸でpHを9.5に調整した。このpHに達したところで、それを攪拌下で45分間維持し、CHClで抽出し、遊離アミン42.55gを得た。次いで、60℃のエタノール140mlに溶かしたアミンに、60℃のエタノール280mlに溶かしたL−酒石酸29.43gの溶液を加えた。反応を60℃〜70℃の間の温度にて1時間維持し、ゆっくりと0℃に冷却し、前記温度にてさらに1時間維持した。生じた白色の沈殿物を濾過し、14時間真空乾燥させ、生成物31.08gを得た。
【0052】
次に、得られた生成物31.08gと1,200mlのエタノールを混合し、80℃にて30分間加熱した;蒸留によってエタノール量を半分まで濃縮し、それを室温にて徐々に冷却し、続いて0℃にて1時間冷却した。濾過によりトルテロジンL−酒石酸塩を得、それを60℃にて14時間真空乾燥させ、生成物27.51gを得た。再結晶化したトルテロジンL−酒石酸塩27.51gにこの手順を2回繰り返し、純度99.80%で光学活性化合物22.23gを得た。
【0053】
実施例8
N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン臭化水素酸塩
THF 10mlに溶かした3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロパナール(8.67g,34.1mmol)とジイソプロピルアミン(5.78ml,40.92mmol)を、NaB(AcO)H(44.3mmol)のTHF 70ml中懸濁液に加え、反応を2時間維持した。この時間が経過しところで、NaHCO(7%)25mlを加え、生じた生成物を酢酸エチル25mlで抽出し、HCl(5%)2×25mlで洗浄し、溶媒を乾燥させ、蒸発させ、黄色の粘稠液10.52g(91%)を得た。
【0054】
得られた残渣を酢酸エチル40mlに再び溶かしたものに、pHが3〜5間に達するまで33%BrH/CH−COOH溶液を加え、10℃にて冷却した(アリコートを取り、それを水と混合してpHを測定した)。添加中に白色の固体が沈殿し、それを攪拌下で1時間置いた後、濾過し、さらなる酢酸エチルで洗浄する。
得られた生成物を乾燥させ、不純物を含まない標題の生成物7gを得る。
融点:179.5〜180.5℃
【化8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、アスタリスクは不斉炭素原子を示す)
の3−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−N,N−ジイソプロピル−3−フェニルプロピルアミン、その鏡像異性体もしくはそれらの混合物、またはその薬学上許容される塩を得るための方法であって、
(a)式(II)
【化2】

(式中、Rはヒドロキシル保護基であり、アスタリスクは前記の意味を有する)
の化合物を還元剤の存在下でジイソプロピルアミンと反応させ、式(III)
【化3】

(式中、Rおよびアスタリスクは前記の意味を有する)
の化合物を得ること、
(b)式(III)の化合物からヒドロキシル保護基を除去し、式(I)の化合物を得ること、および
(c)必要に応じて、所望の(R)もしくは(S)鏡像異性体、または鏡像異性体の混合物を分離し、および/または式(I)の化合物をその薬学上許容される塩に変換すること
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記還元剤が、NaBCNH、NaB(AcO)HおよびPd/Cの存在下での水素から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(II)の化合物とジイソプロピルアミンとの反応がテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリルおよびメタノールから選択される溶媒中で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(III)の前記化合物を塩に変換し、さらに必要に応じて、ヒドロキシル保護基の除去[工程(b)]の前に、前記塩を式(III)の化合物から単離することをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
式(III)の化合物の前記塩が、無機酸付加塩、好ましくは式(III)の化合物の塩酸塩、臭化水素酸塩または硫酸塩である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(III)の化合物の前記塩が、N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン臭化水素酸塩である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
式(III)の化合物から、または式(III)の化合物の前記塩からのヒドロキシル保護基の除去が、無機酸、ルイス酸または有機硫化物で処理することによって実施される、請求項1または4に記載の方法。
【請求項8】
式(III)の化合物から、または式(III)の化合物の前記塩からのヒドロキシル保護基の除去が、酢酸中臭化水素酸水溶液で処理することによって実施される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
得られた式(I)の化合物が、(R)鏡像異性体、(S)鏡像異性体およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の化合物からの(R)または(S)鏡像異性体の分離が、キラル酸を用いた前記鏡像異性体の塩の分別晶出によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
式(II)
【化4】

(式中、
Rはヒドロキシル保護基であり、
アスタリスクは不斉炭素原子を示す)
の化合物。
【請求項12】
Rがメチルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項13】
式(II)
【化5】

(式中、
Rはヒドロキシル保護基であり、
アスタリスクは不斉炭素原子を示す)
の化合物を得るための方法であって、
式(IV)
【化6】

(式中、Rおよびアスタリスクは前記の意味を有する)
のアルコールを酸化すること
を含んでなる、方法。
【請求項14】
式(II)のアルデヒドを得るための式(IV)のアルコールの酸化が、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、SO.ピリジン(SO.pyr)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TMPP)N−オキシド/NaClO系またはスワン法を用いて実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(IV)の前記アルコールが、式(V)
【化7】

(式中、
Rはヒドロキシル保護基である)
の化合物と酸化エチレンとを溶媒中、強塩基の存在下で反応させることによって得られる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記強塩基が、t−BuOK、BuLi、NaH、NaNHおよびMeONaからなる群から選択され、前記溶媒が、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびジオキサンからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式(III)
【化8】

(式中、
Rはヒドロキシル保護基であり、
アスタリスクは不斉炭素原子を示す)
の化合物の酸付加塩。
【請求項18】
式(III)の化合物において、Rがメチルである、請求項17に記載の塩。
【請求項19】
式(III)の化合物の塩酸塩、臭化水素酸塩および硫酸塩から選択される、請求項17に記載の塩。
【請求項20】
N,N−ジイソプロピル−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)−3−フェニルプロピルアミン臭化水素酸塩である、請求項19に記載の塩。

【公表番号】特表2007−515459(P2007−515459A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546202(P2006−546202)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/ES2004/000572
【国際公開番号】WO2005/061431
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(503084956)ラガクティブス,エス.エル. (5)
【Fターム(参考)】