説明

トレハルロース含有組成物、その調製及びその使用

本発明は、トレハルロース含有組成物、その調製及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレハルロース含有組成物(これはビタロース[vitalose]を意味する)、その調製方法及びそれを用いるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トレハルロース(1−O−α−D−グルコピラノシル−D−フルクトース)及びイソマルツロース(パラチノース、6−O−α−D−グルコピラノシル−D−フルクトース)は、スクロースの知られている構造異性体である。これらの異性体は、天然には、蜂蜜に少量含まれている。いずれも非齲蝕性の糖として知られている。しかしながら、それらの物理的及び化学的特性はいくぶん異なっており、特にトレハルロースはイソマルツロースよりも水により溶けるという事実を鑑みた場合、結果としては、食品の構成成分としてのその使用が異なっている。
【0003】
例えば(特許文献1)からも、イソマルツロース及びトレハルロースは、いずれもヘテロ二糖であることが知られており、このヘテロ二糖は、スクロースに比較して、ヒト又は動物の消費者の小腸ではゆっくりとした加水分解速度を見せるものであって、これにより、血糖値をコントロールするための、特には糖尿病や耐糖能障害を病む患者に用いるための、あるいは肥満を予防するための栄養分組成物の提供が提案されている。しかしながら、この文献は、その栄養分組成物中に含有されているイソマルツロース及びトレハルロースの特異的な役割及び関連性については記載されていない。
【0004】
(特許文献2)は、トレハルロース及びイソマルツロースを含む組成物の調製方法を開示している。特には、シュードモナス・メソアシドフィラ(Pseudomonas mesoacidophila)MX−45(FERM−BP3619)又はアグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)MX−232(FERM−BP3620)を用いてスクロース含有培地を、主にはトレハルロース含有溶液だが、有意な量のイソマルツロース含有溶液にも変換させた。つまり、開示された方法は、シュードモナス・メソアシドフィラか又はアグロバクテリウム・ラジオバクターのα−グリコシルトランスフェラーゼの能力を用いてスクロースをトレハルロース及びイソマルツロースの双方に変換させるものであったが、ここではもっぱらトレハルロースが得られている。
【0005】
(特許文献3)は、スクロース溶液からトレハルロース含有組成物を産生させるためのシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、テルムス・ルベル(Thermus ruber)、テルムス・アクアチカ(Thermus aquatica)又はピメロバクター(Pimelobacter)から得られるマルトース/トレハルロース変換酵素を用いたトレハルロース含有多糖類組成物の調製を開示している。
【0006】
(特許文献4)は、固定化細菌細胞、特にはプロタミノバクター・ルブルム(Protaminobacter rubrum)(CBS574.77)の細胞を用いたイソマルツロースの調製方法を開示している。そこに開示されている方法はスクロース含有溶液を用いるものであり、これをそのような固定化細胞にさらして主にイソマルツロース含有組成物を得ようとするものであるが、その組成物は、しかしながら、トレハルロースも含んでいる。
【0007】
(特許文献5)は、集中力と注意力を持続させるための作用物質、特にはそのような作用物質を含有している食品及び飲料を開示している。この文献はヒト消費用の製品を開示するものであり、この製品は、その製品中に含有されているイソマルツロースの存在により集中力と注意力を向上させると述べられている。
【0008】
(特許文献6)は、イソマルツロース及び/又はトレハルロースとベタインの同時製造方法を開示している。
【0009】
これらの各方法はすべてトレハルロース又はイソマルツロース含有組成物か又はさらには純粋なトレハルロースもしくはイソマルツロースを製造してその知られている生理学的特性、特にはその非齲蝕性並びにその小腸でのゆっくりとした加水分解速度を利用しようとするものである。イソマルツロースは、過体重、肥満、糖尿病さらには他のグルコース又はインスリン代謝関連病態及び疾患を予防及び治療するのに適している製品を開発するのに興味をそそる作用物質であるが、さらにより効果的な活性成分を提供するというニーズがなお依然として存在している。
【0010】
高含量のイソマルツロースを含んでいる、トレハルロース含有組成物(ビタロースとも呼ばれる)の製造は、イソマルツロースが、特には水性環境における用途で、晶出する傾向があるので、ゼリーや果物ジュースのような、多くの用途にとっては、当を得たものではない。高含量のトレハルロースを含んでいる組成物の調製は一部の用途にとっては好都合であるが、他の用途にとってはその結晶能力がひどく阻害されているという不都合がある。これまで、トレハルロース及びイソマルツロースの双方を有意な量で含むトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を得るための方法、及び、容易で、費用がかからずまた商業的にも適している方法でその製造を可能とする、及び、その組成物のメリットをもたらす、特にはそのトレハルロース対イソマルツロースの比が、その製造されたトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)の特定の用途の特異的なニーズに応じて調節可能である方法についての報告はない。さらには、当技術分野には、ヒト又は動物の身体におけるグルコース及び/又はインスリン代謝に関連する病態及び疾患の改善された予防及び治療の手段及び方法を提供するというニーズが、特には、炭水化物(特には糖含有食)が供給されるのが相応しくないとこれまでみなされてきた、特異的な患者の群に対して、存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1424074号明細書
【特許文献2】欧州特許第0483755号明細書
【特許文献3】欧州特許第0794259号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0091063号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1393637号明細書
【特許文献6】欧州特許第0983374号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
つまり、本発明の根底にある技術課題は、上記で明らかにした不都合を克服する、また、特には、好ましくは特異的な消費者又は患者の群に対して、グルコース及び/又はインスリン代謝に関連する病態及び疾患の予防及び治療で、好都合な用途をもたらす、改善されたトレハルロース−及びイソマルツロース−含有組成物(以下では「ビタロース」又は「トレハルロース含有組成物」と呼ぶ)を提供することである。つまり、本発明の文脈では、用語「トレハルロース含有組成物」及び「ビタロース」は、同じ「トレハルロース−及びイソマルツロース−含有組成物」のことをいい、相互交換可能に使われる。本発明の根底にある技術課題は、また、工業スケールでのトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)の製造方法、特には特定的に調節可能な方法で、すなわち、好ましくは予め選択された、好ましくは特異的な、好ましくは予め選択されたトレハルロース/イソマルツロース比を呈する、生成物組成の製造を可能にする方法でその製造を可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、その各独立請求項の教示するところにより、上記課題を解決するものである。
【0014】
つまり、好ましい実施形態で、本発明は、(a)スクロース含有組成物を適切な条件下でシュードモナス属及びプロタミノバクター属微生物の細胞又は細胞抽出物と接触させ、(b)トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を生成させる、トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)の調製方法を提供することによって、その技術課題を解決するものである。
【0015】
つまり、上記で特定した本発明の方法は、スクロース含有組成物、特にはスクロースを含んでいる水性培地を、酵素活性、特には、好ましくはシュードモナス属及びプロタミノバクター属微生物の、細胞又は細胞抽出物に含有されている、α−グルコシルトランスフェラーゼ活性に、スクロースをトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)に変換させるのに相応しい条件下及び時間期間さらすことを先見するものである。好ましい実施形態では、トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、好ましくはスクロースが完全に変換(すなわち100%変換)又はほぼ完全に変換(これは少なくとも95、96、97、98又は99%変換を意味する)した後、単離され、場合によりさらに精製される。得られるトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、先行技術の方法に従って、また意図される用途から生じる特定のニーズに従って、さらに精製され得る。好ましい実施形態では、例えば、得られたトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を、クロマトグラフィー、濾過、脱イオン、脱色、酵素処理、触媒処理及び/又は分別蒸留により、さらに精製することがあり得る。
【0016】
つまり、本発明は、シュードモナス属微生物の細胞又は細胞抽出物及びプロタミノバクター属微生物の細胞又は細胞抽出物を1つの単一プロセスに同時に且つ一緒に用いてスクロース含有組成物からトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)、好ましくは予め選択されたまた容易に適応可能なその各成分組成を有するトレハルロース含有組成物を作出し得るという好都合な、思いも寄らぬ教示を提供するものである。好都合なこととして、本教示は、トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を、その各成分(特にトレハルロース及びイソマルツロース)の広い範囲の比で、製造することを可能にするものである。特には、シュードモナス及びプロタミノバクター双方の細胞又は細胞抽出物の組み合わせの、且つ、同時の使用は、主にトレハルロース及びイソマルツロースの双方を含んでいる、以下では「トレハルロース含有組成物」(これはビタロースを意味する)と呼ばれる、好都合な組成物、特には甘味剤組成物を生成するものであって、この組成物は、以下に詳述するメリット、すなわち、この組成物は、思いも寄らぬ血糖及び血中インスリン挙動を示し、特には体重並びに一般的にはグルコース・インスリン代謝関連病態及び糖尿病のコントロールにおいて、その組成物のさらなる好都合な方法及び使用の可能性を開くというメリットをもたらす。本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、本質的に非齲蝕性、好ましくは完全に非齲蝕性であり、また、低血糖及び血中低インスリンの指標を有している。本組成物は、健康志向消費者及び特には糖尿病患者にも向いている、低カロリー組成物であり、感じのよい甘味効果と優れた増稠特性(これは、好都合なこととして、固体形態に調製され得るが、好都合なこととして、シロップ、特には懸濁液の形態あるいは溶液の形態でも用いられ得る)を組み合わせるものである。特には、本発明の組成物は、用いられる濃度では晶出しない。本発明の組成物は、理論によって縛られるものではないが、主にそのさまざまな各成分の特異的な比、特にはトレハルロース対イソマルツロースの比及びトレハルロース対少量炭水化物成分イソマルトース、イソメレジトース及びオリゴマーの比によるものと考えられる、一つの組成を有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)へのスクロース含有組成物の変換を、シュードモナス・メソアシドフィラとプロタミノバクター・ルブルムのいくつかの比について、グラフで示す図である。
【図2】本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)へのスクロース含有組成物の変換を、シュードモナス・メソアシドフィラとプロタミノバクター・ルブルムのいくつかの比について、グラフで示す図である。
【図3】本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)へのスクロース含有組成物の変換を、シュードモナス・メソアシドフィラとプロタミノバクター・ルブルムのいくつかの比について、グラフで示す図である。
【図4】本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)へのスクロース含有組成物の変換を、シュードモナス・メソアシドフィラとプロタミノバクター・ルブルムのいくつかの比について、グラフで示す図である。
【図5】本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)へのスクロース含有組成物の変換を、シュードモナス・メソアシドフィラとプロタミノバクター・ルブルムのいくつかの比について、グラフで示す図である。
【図6】本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)へのスクロース含有組成物の変換を、シュードモナス・メソアシドフィラとプロタミノバクター・ルブルムのいくつかの比について、グラフで示す図である。
【図7】本発明に従って調製されたゼリーの従来型スクロースをベースとしたゼリーに比較しての硬度及び稠度をグラフで示した図である。
【図8】本発明に従って調製されたゼリーの従来型スクロースをベースとしたゼリーに比較しての硬度及び稠度をグラフで示した図である。
【図9】本発明に従って調製されたゼリーの従来型スクロースをベースとしたゼリーに比較しての硬度及び稠度をグラフで示した図である。
【図10】本発明に従って調製されたゼリーの従来型スクロースをベースとしたゼリーに比較しての硬度及び稠度をグラフで示した図である。
【図11】本発明に従って調製されたゼリーの従来型スクロースをベースとしたゼリーに比較しての硬度及び稠度をグラフで示した図である。
【図12】本発明に従って調製されたゼリーの従来型スクロースをベースとしたゼリーに比較しての硬度及び稠度をグラフで示した図である。
【図13】本発明に従って調製されたゼリーの従来型スクロースをベースとしたゼリーに比較しての硬度及び稠度をグラフで示した図である。
【図14】本発明に従って調製されたゼリーの従来型スクロースをベースとしたゼリーに比較しての硬度及び稠度をグラフで示した図である。
【図15】イソマルツロース及びトレハルロースを消費した後の消費者の血糖レベルを示した図である。
【図16】イソマルツロース及びトレハルロースを消費した後の消費者の血液インスリンレベルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下においては、パーセント(%)の言及は、特に断らない限り、重量%の言及である。本発明の文脈では、すべての量は、特には組成物の各成分の相対量は、表示されている、組成物乾燥重量か又は組成物全体重量を基準にして、100%を超えることはなく、好ましくは合計100%になる。
【0019】
本発明の文脈では、スクロース含有組成物は、好ましくは、1〜100%、好ましくは1〜99重量%又は90〜100重量%スクロース(乾燥重量の重量%)を含んでいる組成物である。特に好ましい実施形態ではスクロース含有組成物は、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70又は80〜98重量%、好ましくは3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70又は80〜97重量%、好ましくは4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70又は80〜96重量%、好ましくは5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70又は80〜95、96、97、98又は99重量%、好ましくは60〜90重量%、好ましくは70〜80重量%、好ましくは30〜60重量%又は好ましくは40〜50重量%スクロース(それぞれ組成物の乾燥重量を基準)のスクロース含有量を有している。最も好ましくは、スクロース含有組成物のスクロース含有量は、90〜99重量%、好ましくは90〜98重量%(それぞれ組成物の乾燥重量を基準)である。
【0020】
特に好ましい実施形態では、スクロース含有組成物は、液体形態で用いられ、特には水性媒体に溶解又は懸濁され、好ましくは水性スクロース含有溶液又は懸濁液である。好ましくは、上記で特定したスクロース含有組成物は、水に0.1〜80重量%、好ましくは40〜75重量%、好ましくは40〜60重量%、特には10〜60重量%、好ましくは20〜55重量%のスクロース含有組成物を含んでいる溶液又は懸濁液が得られるように、水性媒体、例えば水、に溶解又は懸濁され得る(つまり100%(溶液又は懸濁液の全体重量を基準)まで水又は水性媒体が加えられる)。特に好ましい実施形態ではスクロース含有溶液又は懸濁液は、0.1〜80重量%、好ましくは5〜30重量%、20〜30重量%、20〜60重量%、30〜60重量%又は40〜75重量%、好ましくは40〜60重量%、特には10〜60重量%、好ましくは20〜55重量%スクロース(液体溶液又は懸濁液の全体重量を基準)のスクロース含有量を有している。特に好ましい実施形態ではスクロース含有溶液又は懸濁液は、好ましくは5〜30%、好ましくは20〜27%の乾燥物質含有量を有している製糖工場製希薄液又は濃厚液であり得る。また製糖工場に見られる糖蜜や他の純粋でないスクロース組成物も用いられ得る。
【0021】
本発明の文脈ではシュードモナス属微生物の細胞又は細胞抽出物は、適切な条件下で、スクロースをトレハルロース及びイソマルツロースを含んでいる組成物に変換させるのに適しているものである。本発明の文脈ではプロタミノバクター属微生物の細胞又は細胞抽出物は、適切な条件下で、スクロースをトレハルロース及びイソマルツロースを含んでいる組成物に変換させるのに適しているものである。つまり、本発明ではシュードモナス属及びプロタミノバクター属微生物の細胞又は細胞抽出物は、スクロースからトレハルロース及びイソマルツロースを生成することができる細胞又は細胞抽出物である。
【0022】
本発明の文脈では細胞抽出物とは、本発明に従って用いられる微生物の1種又はそれ以上の細胞の抽出物又は一部であることを意味し、例えば破壊細胞のことをいう。特に好ましい実施形態では細胞抽出物とは、スクロースをトレハルロース及びイソマルツロースに変換する能力を有している酵素又は酵素系の溶液又は懸濁液のこともいい、特にはシュードモナス及び/又はプロタミノバクターのα−グルコシルトランスフェラーゼ、すなわち好ましくはα−グルコシルトランスフェラーゼ又はスクロース−6−グルコシルムターゼ(EC5.4.99.10)を含有している溶液又は懸濁液である。つまり、本発明は、細胞又は細胞抽出物の使用を先見するものであって、ここでは好ましい実施形態における用語「細胞抽出物」は酵素も意味し、酵素系も包含したこの用語にはそのようなα−グルコシルトランスフェラーゼも含まれる。本発明によれば、微生物の全細胞又は破壊細胞を用いて、その細胞を酵素系のキャリアーとして機能させることがあり得る。細胞、特には固定化細胞は、好ましくは、死んだものである。本発明に従って用いられる酵素又は酵素系は、通常の技術、例えば溶媒抽出、フレンチ・プレス、凍結乾燥及び/又は酵素処理により、微生物の細胞から抽出され得る。抽出を促進させるために、細胞破壊や浸透圧ショックのような補助的プロセスを用いることがあり得る。抽出された酵素又は酵素系は、さらに精製されることがあり得るしあるいはそのまま用いられることもあり得る。本発明は、天然に存在するシュードモナス及び/又はプロタミノバクターの野生型酵素、すなわちα−グルコシルトランスフェラーゼを用いることを先見するのみならず、遺伝子工学的に工作されたその誘導体並びにシュードモナス及び/又はプロタミノバクターを遺伝子工学的に工作した変異体の細胞を用いることも先見するものである。
【0023】
本発明の特に好ましい実施形態では、シュードモナス属微生物は、種シュードモナス・メソアシドフィラの微生物であって、好ましくはシュードモナス・メソアシドフィラMX−45(FERM−BP3619)(この生物体は例えば欧州特許第0483755号明細書又は欧州特許第0625578号明細書に開示されていて、FERM11808でも寄託されており、あるいはNagai et al. (Biosc. Sci. Biotech. Biochem. 58 (10), (1994) 1789 - 1793)からも公的に入手可能である)である。本発明の特に好ましい実施形態ではプロタミノバクター属微生物は、種プロタミノバクター・ルブルムの微生物であって、好ましくはプロタミノバクター・ルブルムCBS574.77である(プロタミノバクター・ルブルムCBS574.77は例えば欧州特許出願公開第0091063号明細書又は欧州特許第0625578号明細書に記載されている)。
【0024】
スクロース含有組成物をトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)に変換させるための適切な条件は、好ましい実施形態では、10℃の温度、好ましくは15℃〜40℃、好ましくは10℃〜37℃、好ましくは25℃〜40℃、好ましくは30℃〜40℃、好ましくは10℃〜25℃、好ましくは15℃〜30℃、18℃〜26℃そして最も好ましくは10℃〜20℃であって、特に好ましくは10〜17℃である。
【0025】
さらに好ましい実施形態では本方法は、5.0〜9.0、好ましくは5.0〜7.0、好ましくは6.0〜7.0のpH値で行われる。
【0026】
さらに好ましい実施形態ではスクロース含有組成物は、20〜100%、好ましくは30〜95、96、97、98、99%及び好ましくは100%、好ましくは40〜98%、好ましくは50、60又は70〜97%、好ましくは50、60、70又は80〜98%、好ましくは75〜98%、最も好ましくは50〜99%、最も好ましくは60〜98%、85〜100%のそして好ましくは95、96、97、98又は99%より多い(スクロースの量を基準)トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)へのスクロースの変換を達成するのに相応しい時間期間及び条件下で微生物プロタミノバクター及びシュードモナスの属の細胞又は細胞抽出物にさらされる。最も好ましくは、得られたトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、実質的にスクロースを含まず、好ましくはスクロースをまったく含まない。
【0027】
本発明の好ましい実施形態では、生きている又は死んでいるものであり得る細胞又はその細胞抽出物は、非固定化形態で用いられ得る。さらなる好ましい実施形態では細胞又はその細胞抽出物、特にはその酵素は、少なくとも1つの担体に、好ましくは2つの異なるタイプの担体に固定化される。この好ましい実施形態に従って1つの担体はシュードモナス属の微生物の細胞又は細胞抽出物を固定化しており、もう一つの異なる担体はプロタミノバクター属の微生物の細胞又は細胞抽出物を固定化している。
【0028】
特に好ましい実施形態ではシュードモナス属の微生物の細胞又は細胞抽出物及びプロタミノバクター属の微生物の細胞又は細胞抽出物が同じ担体に共固定化されている。つまり、この実施形態では同一の担体が、すなわち好ましくは1つのタイプの担体粒子が、その担体上に又はその担体中に組み合わせられた双方の細胞又は細胞抽出物を確かに含有している。
【0029】
固定化は、先行技術の技術を用いて行われ得る。好ましくは、本発明は、ゲル内への取り込みを用いることを先見するものである。細胞は、好ましくは、支持体内部上に物理的にも吸着され得る。細胞は、好ましくは、支持体内部に共有結合的にもカップリングされ得るしあるいは細胞は架橋剤を用いることによって凝集もされ得る。本発明によれば、ゲルへの取り込みが好ましい。適するゲル材は、アルギン酸塩、ポリアクリルアミド、カンテン、キサンタンガム/ローカストビーンガム、カッパカラギーナン又はカッパカラギーナン/ローカストビーンガム、コラーゲン又はセルロースアセタートであり得る。
【0030】
好ましい実施形態で、本発明は、アルギン酸塩担体、特にはアルギン酸カルシウムへの細胞又は細胞抽出物の固定化を用いることを先見するものである。好ましい固定化は、不活性三次元ポリマー網目構造を作り出し、スクロースの高度の内部に向けての拡散と高安定性をもたらすものである。好ましい実施形態では、好ましくはアルギン酸塩ゲルに、固定化された細胞又は細胞抽出物を調製するために、好ましくは双方の微生物の属の、細胞又は細胞抽出物を一緒に、可溶性アルギン酸塩、例えばアルギン酸ナトリウムの水性溶液と混合する。好ましい方法においてはこれは全細胞又は破壊細胞(すなわち細胞抽出物)を可溶性アルギン酸塩でスラリー化することを伴うだろう。好ましい実施形態では、細胞の濃度は、その溶液の1〜90重量%、好ましくは10〜40重量%、好ましくはその溶液の20重量%(それぞれ正味重量(体積))である。得られるアルギン酸塩混合物は、このあと、可溶性アルギン酸塩がゲルを形成する金属塩溶液に計量投入される(例えば塩化カルシウムを用いることによって生成されるアルギン酸カルシウム)。シュードモナス属の微生物をプロタミノバクター属の微生物とは別々にして固定化し、スクロース変換が始まる前の後のほうの段階でその別々に固定化された微生物の双方を混合するということもあり得る。
【0031】
スラリー又は他のアルギン酸塩混合物を離散液滴として計量投入することにより、好ましい実施形態では、細胞又は細胞抽出物を取り込んでいる球形ペレットのゲルを作り出すことが可能である。好ましくはこのペレットサイズは変えられ得るものであって、3〜5直径のサイズを有しているペレットが好ましい。さらに好ましい実施形態では細胞又は細胞抽出物をゲルのブロック、ゲルのロープに、あるいは超極細粒子に固定化することも可能である。細胞又は細胞抽出物をDEAE−セルロースに吸着させることも可能でありあるいは例えばグルタルアルデヒドで、細胞又は細胞抽出物を架橋することによっても可能である。
【0032】
本発明の特に好ましい実施形態では本発明の方法に、シュードモナスとプロタミノバクターの特異的な比、特には酵素活性の比又は細胞又は細胞抽出物の重量比を用いることが先見されている。特に好ましい実施形態では、シュードモナス対プロタミノバクターの細胞又は細胞抽出物の重量比又は酵素活性比が、10:1〜1:10、特には8:1〜1:8、5:1〜1:5、3:1〜1:3、2:1〜1:2である、そして特には1:1である、トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)の製造方法が提供される。本発明のさらに好ましい実施形態では、シュードモナス対プロタミノバクターの重量又は酵素活性の比が10:1〜1.1:1、8:1〜1.1:1、5:1〜1.1:1、3:1〜1.1:1、好ましくは2:1〜1.1:1である、トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)の製造方法が提供される。本発明のさらに好ましい実施形態では、シュードモナス対プロタミノバクターの重量又は酵素活性の比が1:1.1〜1:10、1:1.1〜1:8、1:1.1〜1:5、1:1.1〜1:3、1:1.1〜1:2である、トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)の製造方法が提供される。上記によれば特に好ましい実施形態では、シュードモナス対プロタミノバクターの細胞又は細胞抽出物の重量又は酵素活性の比が1:1比とは異なる、特には、その比が1よりも大きい(これは>1:1を意味する)又は<1:1を意味する1よりも小さい方法が提供される。
【0033】
本発明に従った方法は、好ましくは、連続プロセス、不連続プロセスとして、好ましくはバッチ式操作又は半連続方式で行われる。この方法は、好ましくは、固定床反応器中で行われ得る。この方法は、好ましくは、反応容器、バイオ発酵槽又はタンク中で、好ましくは機械撹拌下に行われる。
【0034】
さらなる一実施形態では固定化細胞又は細胞抽出物がカラムに装填され、基質、すなわちスクロース含有溶液又は懸濁液がカラムの中に通されて、通過画分中にトレハルロース含有組成物が収穫される。好ましくは数個のカラムが、例えば回転ラック上で、平行で用いられ得る。
【0035】
本発明は、特には前述の各方法のいずれか1つに従って取得される又は取得可能である、トレハルロース及びイソマルツロースを含んでいる、トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)も提供するものである。特には、シュードモナス属微生物及びプロタミノバクター属微生物の細胞又は細胞抽出物の組み合わせの且つ同時の使用は、スクロース含有組成物を、好都合なこととして、特異的なトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)に変換する。天然の、本質的に非齲蝕性、血中低インスリンまた低血糖の甘味剤組成物である、この組成物は、本明細書に開示されている生理学的に好都合な特性をもたらすものでありまた同時に、イソマルツロース又はトレハルロースそれぞれを単独で含んでいる組成物では見られない、スクロース様時間的プロファイル及び風味プロファイルをもたらす。好ましくは、本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、液体形態、特にはシロップの形態で用いられるものであり、これは、好都合なこととして、特に好ましい実施形態では、晶出しない。本発明のトレハルロース及びトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、水性媒体への良好な溶解度を有しており、これは特に広い範囲の用途を可能にするものである。
【0036】
本発明の文脈では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、主にトレハルロース及びイソマルツロースを含み、並びに、特にはイソマルトース、イソメレジトース、DP(重合度)3以上炭水化物オリゴマーの、少量成分、及び場合によりグルコース、フルクトース及び/又はスクロースを含む、組成物である。本発明の一実施形態では、その少量成分の1つ、それ以上又はすべて、例えばイソマルトース、イソメレジトース及び/又はオリゴマーを除去することが先見される。一実施形態では、本発明の甘味剤組成物は、トレハルロース又はイソマルツロースそれぞれを単独で含む甘味剤組成物よりもよりスクロース様時間的プロファイル及び/又はスクロース様風味プロファイルを呈する。本明細書で使われている、用語「スクロース様特性」、「スクロース様味質」、「スクロース様甘味」、及び「スクロース様」は、同意語であって、常にスクロースに関するものと理解する。スクロース様特性にはスクロースの特性に似たあらゆる特性が包含され、限定するものではないが、最大応答、風味プロファイル、時間的プロファイル、適応挙動、口当たり、濃度/応答作用挙動、味・風味物質/甘味味質相互作用、分布様式選択性、及び温度効果が包含される。特性がよりスクロース様、イソマルツロース様又はトレハルロース様であるか否かは、スクロースと、このトレハルロース及び/又はイソマルツロースを含んでいる組成物の専門家官能パネル評価によって決定される。そのような評価は、トレハルロース及び/又はイソマルツロースを含んでいる組成物の特性と、スクロースを含んでいる組成物の特性の類似性を定量化するものである。
【0037】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明に従って調製されるトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、本明細書に説明されている好都合な生理学的特性、特には消費者の血液中に引き起こされる低インスリン応答を達成するのに相応しいトレハルロース含有量を含んでいる。特に好ましい実施形態では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、その組成物が、本明細書に説明されている好都合な生理学的特性、すなわち消費者の血液中に引き起こされる低インスリン応答を達成するのに相応しい含有量でトレハルロース及びイソマルツロースそれぞれを含んでいる。本発明の特に好ましい実施形態では本発明のヒト又は動物の消費用製品は、本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を、本明細書に説明されている好都合な生理学的特性をその消費者身体中に達成するのに、特にはその消費者身体の血液中に所望の低インスリン応答を引き起こすのに相応しい量で含んでいる。
【0038】
特に好ましい実施形態では本発明に従って調製されるトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、20〜95重量%、好ましくは30〜90重量%、好ましくは25〜75重量%、好ましくは40〜80重量%及び特には30〜70重量%、好ましくは35〜65重量%、好ましくは45〜70重量%のトレハルロース(組成物の乾燥重量を基準)を含んでいる。最も好ましくは、トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、70〜80重量%、好ましくは65〜78重量%のトレハルロースを含んでいる。好ましくは、この組成物の残りの部分については、イソマルツロース、又は、場合によりイソマルツロース及び0.1〜1、2、3又は4重量%の前記少量成分が加えられて、合計100%になる。
【0039】
さらに好ましい実施形態では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、8、10、20、30又は35〜50重量%、特には9〜40重量%、好ましくは9〜30重量%、好ましくは22〜35重量%、好ましくは20〜40重量%、好ましくは20〜30重量%、好ましくは18〜27重量%そして最も好ましくは20〜25重量%のイソマルツロース(組成物の乾燥重量を基準)含んでいる。好ましくは、この組成物の残りの部分については、トレハルロース、又は、場合によりトレハルロース及び0.1〜1、2、3又は4重量%の前記少量成分が加えられて、合計100%になる。
【0040】
本発明のさらに好ましい実施形態では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、0.0、好ましくは0.1〜2.0、0.1〜1.5、好ましくは0.1〜1.0、好ましくは0.1〜0.4重量%のグルコース含んでいる。
【0041】
本発明のさらなる、好ましい実施形態では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、0.0、好ましくは0.1〜2.0、0.1〜1.5、好ましくは0.1〜1.0、好ましくは0.1〜0.4重量%のフルクトースを含んでいる。
【0042】
本発明のさらなる、好ましい実施形態では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、0.0、好ましくは0.1〜2.0、0.1〜1.5、好ましくは0.1〜1.0、好ましくは0.1〜0.4重量%のイソマルトースを含んでいる。
【0043】
本発明のさらなる、好ましい実施形態では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、0.0、好ましくは0.1〜2.0、0.1〜1.5、好ましくは0.1〜1.0、好ましくは0.1〜0.4重量%のイソメレジトースを含んでいる。
【0044】
本発明のさらなる、好ましい実施形態では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、0.0、好ましくは0.1〜2.0、0.1〜1.5、好ましくは0.1〜1.0、好ましくは0.1〜0.4重量%の、好ましくはDP≧3の炭水化物オリゴマーを含んでいる。
【0045】
特に好ましい実施形態では本発明に従って調製されるトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、70〜80重量%のトレハルロース及び20〜30重量%のイソマルツロースを含んでいる。特に好ましい実施形態ではこのトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、イソマルツロース及びトレハルロース以外の他の成分を含んでいない。もう一つの好ましい実施形態では本発明に従って調製されるトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、70〜80重量%のトレハルロース及び20〜30重量%のイソマルツロース並びにイソマルトース、イソメレジトース及び炭水化物オリゴマーからなる群から選択される1つ又はそれ以上の炭水化物をその組成物の乾燥重量が加えて合計100重量%になるまで、好ましくは1〜6、1〜5、1〜4そして最も好ましくは1〜3重量%(組成物の重量を基準)の合計で含んでいる。さらに好ましい実施形態ではトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、イソマルトース、イソメレジトース、グルコース、フルクトース、スクロース及び炭水化物オリゴマーも、好ましくは全体合計が加えて100重量%(DM)になるまで、好ましくは1〜6、1〜5、1〜4そして最も好ましくは1〜3重量%(組成物の重量を基準)の合計で含んでいる。
【0046】
本発明の好ましい実施形態では、得られるトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)のその少量成分の1つ又はそれ以上、好ましくはスクロース、グルコース、フルクトース、イソマルトース、イソメレジトース及び炭水化物オリゴマーからなる群のうちの1つ又はそれ以上、最も好ましくはグルコース、フルクトース及びスクロースからなる群からの1つ又はそれ以上が除去されることが先見される。好ましい実施形態ではそのような除去は、濾過、クロマトグラフィー等の、当技術分野では公知の方法、例えばアニオン及び/又はカチオン交換クロマトグラフィー及び酵素(例えばインベルターゼ)又は触媒開裂によって行われ得る。好ましくは、活性炭及び/又はレジン処理が行われ得る。つまり、特に好ましい実施形態では、グルコース、フルクトース及びスクロースを含まず、完全に非齲蝕性であるそして特に低い血糖及び血中インスリンの指標をもたらすトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を製造することが可能である。
【0047】
本発明のさらに好ましい実施形態で、本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)及び少なくとも1種の添加剤を含む、ヒト又は動物の消費用製品が提供される。
【0048】
本発明の好ましい実施形態ではヒト又は動物の消費用製品は、0.02〜3.0重量%、特には0.02〜1.0重量%、好ましくは0.02〜0.5重量%の少なくとも1種の添加剤、及び、加えて合計100%になる量のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)、特には97〜99.98重量%、好ましくは99.0〜99.98重量%、特には99.5〜99.98重量%のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を含んでいる(それぞれ乾燥重量を基準)。好ましくは、製品中に、好ましくは0.02〜3.0重量%の量で含有されるその少なくとも1種の添加剤は、(a)ステビア抽出物又はステビオルグリコシド、(b)ステビア抽出物又はステビオルグリコシド、及び、ラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物のうちの少なくとも1つ、又は(c)ラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物のうちの少なくとも1つである。
【0049】
本発明の好ましい実施形態ではこのヒト又は動物の消費用製品は、3〜95重量%、好ましくは5〜95重量%、好ましくは20〜95重量%、好ましくは5〜90重量%、好ましくは10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%、好ましくは7〜70重量%、最も特定的には40〜60重量%の本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)、及び、5〜97重量%、好ましくは5〜95重量%、最も好ましくは5〜80重量%の、好ましくは加えて合計100重量%になる、少なくとも1種の添加剤を含んでいる(それぞれ製品全体の乾燥重量を基準)。
【0050】
本発明の好ましい実施形態ではその添加剤は強力甘味剤であって、好ましくはステビア抽出物又はステビオルグリコシドのうちの少なくとも1つ、特にはレバウジオシド、好ましくはレバウジオシドA(Reb A、CAS no.58543−16−1、C447023)である。最も好ましくは、本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、添加剤としてのReb Aと一緒にヒト又は動物の消費用製品中に存在している。
【0051】
例えば、特定の実施形態は、ステビオルグリコシドとの組み合わせも含み得る。
【0052】
組み合わせられ得る又は組み合わせられ得ない適するステビオルグリコシドの非限定例としては、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、レバウジオシドF、ズルコシドA、ズルコシドB、ルブソシド、ステビオシド(CAS no.57817−89−7、C386018)、又はステビオルビオシドが挙げられる。本発明の特に望ましい実施形態によれば、強力甘味剤の組み合わせには、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドE、レバウジオシドF、ステビオシド、ステビオルビオシド、ズルコシドA又はこれらの組み合わせとの組み合わせにあるレバウジオシドAが含まれる。化学命名法についてはFAO JECFA Monographs 4(2007)に公開されている68th JECFA meeting(2007)を参照のこと。
【0053】
特に好ましい実施形態では本発明に従って強力甘味添加剤として用いられるステビオルグリコシドは、ステビオシド、レバウジオシドA、レバウジオシドC、ズルコシドA、ルブソシド、ステビオルビオシド及びレバウジオシドBからなる群のうちの少なくとも1つである。
【0054】
本発明の特に好ましい実施形態では本発明に用いられる強力甘味剤は、少なくとも95重量%(甘味剤組成物の乾燥重量を基準)のステビオルグリコシドを含んでいる、Reb A、レバウジオシドB、レバウジオシドC、ズルコシドA、ルブソシド、ステビオルビオシド及びステビオシドの混合物である。
【0055】
本発明の特に好ましい実施形態では、レバウジオシドA含有量が甘味剤組成物乾燥重量の少なくとも97重量%である、好ましくは>97重量%である、レバウジオシドAを含む強力甘味剤が用いられる。
【0056】
特に望ましい実施形態によれば、この強力甘味剤は、強力甘味剤混合物中にレバウジオシドAが強力甘味剤混合物の全体重量を基準にして約75〜約85重量パーセントの範囲の量で存在している;ステビオシドが約1〜約6重量パーセントの範囲の量で存在している;レバウジオシドBが約2〜約5重量パーセントの範囲の量で存在している;レバウジオシドCが約3〜約8重量パーセントの範囲の量で存在している;及びレバウジオシドFが約0.1〜約2重量パーセントの範囲の量で存在している;レバウジオシドA、ステビオシド、レバウジオシドB、レバウジオシドC、及びレバウジオシドFの混合物を含んでいる。
【0057】
特に好ましい実施形態によれば、用いられるレバウジオシドAの純度は、約50%〜約100%;約70%〜約100%;約80%〜約100%;約90%〜約100%;約95%〜約100%;約95%〜約99.5%;約96%〜約100%;約97%〜約100%;約98%〜約100%;及び約99%〜約100%;であり得る。特に好ましい実施形態によれば、粗製レバウジオシドAを結晶化させると、その実質的に純粋なレバウジオシドA組成物は、乾燥ベースで約95重量%より高くて約100重量%までの純度でレバウジオシドAを含んでいる。他の好ましい実施形態では、実質的に純粋なレバウジオシドAは、乾燥ベースで約97重量%より高くて約100重量%までの、乾燥ベースで約98重量%より高くて約100重量%までの、又は乾燥ベースで約99重量%より高くて約100重量%レバウジオシドAまでのレバウジオシドA純度値を有する。
【0058】
本発明のさらに好ましい実施形態では、その添加剤は、ラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物のうちの少なくとも1つである。本発明によればそのようなラクトビオン酸系添加剤の使用は、なかでも甘味化合物の異味質苦味をマスク又は低減するというメリットをもたらしまた甘味風味付け増強効果をもたらす。
【0059】
ラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物は、このように、例えば苦味風味をマスクすることができる。ラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物が、本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)と、異味質苦味を呈することが知られているステビア抽出物又はステビオルグリコシド(例えばReb A)との組み合わせで用いられる、本発明の好ましい一実施形態では、特にはステビア抽出物又はステビオルグリコシド(例えばレバウジオシドA)に起因している、苦味風味がマスクされる。
【0060】
つまり、好ましくは、このトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、ステビア抽出物又はステビオルグリコシド、特にレバウジオシド、特にはレバウジオシドAと、及び、もう1つの添加剤、特にはラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物のうちの少なくとも1つと組み合わせられる。
【0061】
好ましい実施形態ではヒト又は動物の消費用製品は、したがって、本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)及び少なくとも2種の添加剤、すなわちステビア抽出物又はステビオルグリコシド(特にはReb A)及びラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン又はその塩もしくはこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含んでいる。そのような製品は、従来型スクロース又はスクロース/グルコース系製品に似た甘味の強さを呈するが、本明細書に開示されている生理学的に好都合な特性を有しておりまた従来型人工甘味剤に起因していることが知られている望ましくない官能刺激つまり味質の特徴を示すこともない。特には、そのような製品は、スクロース様特性のプロファイル、特にはスクロース様味質及び甘味と組み合わせられた、高栄養的及びさらには治療的価値をもたらす。
【0062】
ラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物の風味増強及び/又はマスク効果の恩恵を受けるために好ましくは食品組成物に組み込まれ得るそれらの量は、広い範囲内で変わり得るものであって、その食品組成物全体を基準にして、好ましくは0.01重量%〜90重量%の範囲内にある。好ましくは、食品組成物に組み込まれるラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物の量は、その食品組成物の全体を基準にして、少なくとも0.05、0.10、0.25、0.50、又は1.00重量%である。好ましくは食品組成物に組み込まれるラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物の量は、その食品組成物の全体を基準にして、多くて95、85、75、65、55、45、40、35、30、25、20、15、又は10重量%である。濃縮物、卓上甘味料、さらには塩代替品に用いるのには5又は10重量%〜90重量%の量のラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物の用量が多くの場合適している。さらには、ラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物のそのような高用量は、担体、例えば芳香の担体、としてのその使用と結び付けられ得ることを見出した。
【0063】
ラクトビオン酸がそのようなものとして用いられる場合は、ラクトビオン酸−δ−ラクトンの形成を生じ得る。その場合は、ラクトビオン酸とラクトビオン酸−δ−ラクトンの比は、少なくとも部分的には、その特異的な使用の状態によって決まる。同様に、ラクトビオン酸−δ−ラクトンのそのようなものとしての使用は、ラクトビオン酸の形成を生じ得る。そのような形成及びそのあとのラクトビオン酸−δ−ラクトン又はラクトビオン酸の存在は、本発明の使用に因るものであると理解される。
【0064】
ラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン及びラクトビオン酸の塩の混合物が好ましい実施形態で用いられる場合はその重量比、一方の、ラクトビオン酸及びラクトビオン酸−δ−ラクトンの合計、対、他方の、その混合物中のラクトビオン酸の塩は、好ましくは1:10〜10:1にある。
【0065】
本発明のさらに好ましい実施形態では、添加剤は、酸味剤、果実風味剤、甘味風味剤、旨味風味剤、塩気風味剤、強力甘味剤、糖アルコール、スクロマルト、リボース、タガトース、トレハロース、有機酸(例えばクエン酸酸又は乳酸)、果物抽出物、バルク甘味剤、ファイバー剤、プレバイオティック剤、増粘剤、ビタミン剤、ミネラル剤、防腐剤、果物調製物、食品着色剤、水やミルク等の液体媒体、及び治療剤からなる群から選択される。
【0066】
本発明のさらに好ましい実施形態では添加剤は、クレアチン、ポリフェノール、L−カルニチン、オメガ−3ポリ不飽和脂肪酸、オメガ−6ポリ不飽和脂肪酸、緑茶抽出物、EGCG(エピガロカテキンガラート)、アミノ酸及びペプトプロ(peptopro)(これは部分消化カゼイン由来蛋白である)からなる群から選択される。
【0067】
強力甘味剤としてのさらなる特に好ましい実施形態ではアスパルテーム(aspartame)、モネリン(monellin)、ブラッゼイン(brazzeine)、チクロ(cyclamate)、ネオテーム(neotame)、アセスルファムK(acesulfam K)、グリシルリシン(glycyrrhicine)、サッカリン(saccharine)、スクラロース(sucralose)、アリテーム(alitame)、ネオヘスペリジン−ジヒドロカルコン(neohesperidine-dihydrochalcone)、ステビオシド、Reb A又はタウマチン(thaumatin)が用いられ得る。
【0068】
つまり、このトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、イソマルト、イソマルトST、イソマルトGS、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、エリトリトール又はマルチトールからなる群から好ましくは選択される、少なくとも1つの糖アルコールである、添加剤とも組み合わせられ得る。
【0069】
好ましい実施形態では、添加剤としてファイバー剤、好ましくは可溶ファイバー剤、特には難消化性デキストリン、難消化性マルトデキストリン(例えばヌトリオース)、ペクチン、カラギーナン、コメデンプン、コメシロップ、ポリデキストロース、オリゴサッカリド(例えばガラクトオリゴサッカリドやフルクトオリゴサッカリド)又はフルクタン(例えばイヌリン)が、用いられ得る。
【0070】
本発明のさらに好ましい実施形態では、添加剤は、トリプトファン含有ペプチド組成物、特にはトリプトファン含有ペプチド又はトリプトファンそのものである。好ましい実施形態ではこのトリプトファン含有ペプチド組成物は、少なくとも2種の異なるトリプトファン含有ペプチド、好ましくは水可溶ペプチドを含んでいる。特に好ましい実施形態ではこのトリプトファン含有ペプチドは、ジ−又はトリ−ペプチドである。特に好ましい実施形態ではビタロースとこのトリプトファン含有ペプチド組成物とを含んでいる食品、飼料又は医薬製品は、0.5〜5重量%、好ましくは0.9〜3.5重量%(乾燥重量)のトリプトファン含有ペプチド組成物を含んでいる。本発明の特に好ましい実施形態ではそのような製品は、対象の精神的能力を改善させるのに特に有用である。
【0071】
本発明は、また、食品、動物飼料又は医薬製品であるヒト及び動物の消費用製品を提供するものである。本発明による製品は、好ましくは、お菓子、お菓子内容物、ソフトキャラメル、ハードキャラメル、フォンダン、ヨーグルト、パン類、チューインガム、アイスクリーム、乳製品、ゼリー、飲料、果物ジュース濃縮物、果物調製物、ママレード又はスムージーである。好ましくは、この製品は、果物調製物、果物ジュース、ゼリー又はフォンダンである。飲料は、好ましくは、ビール、果物ジュース、ミルクドリンク、ソフトドリンク、アイソトニックドリンク、ハイパートニックドリンク、カカオドリンク、ライスドリンク、ダイズドリンク、さらにはアルコールフリー飲料、熱・pH安定性浸透圧飲料、エネルギードリンク又はスポーツドリンクであり得る。
【0072】
本発明の好ましい実施形態では、ヒト又は動物の消費用製品は、飲料、特には少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60又は70重量%の本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を含んでいて場合により少なくとも1種の本発明添加剤を包含しており残りの部分が液体媒体、特には水やミルクのような、水性又は牛乳溶液である飲料、及び、特には多くて10、20、30、40、50、60、70、75又は80重量%(それぞれ飲料の全体重量を基準)の本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を含んでいて場合により少なくとも1種の本発明添加剤を包含しており残りの部分が液体媒体、特には水やミルクのような、水性又は牛乳溶液である飲料である。特に好ましい実施形態ではこの飲料は、1〜30%、好ましくは2〜25%、最も好ましくは3〜15%(それぞれ飲料の全体重量を基準)の本発明トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を含んでいて場合により少なくとも1種の本発明添加剤を包含しており残りの部分が液体媒体、特には水やミルクのような、水性又は牛乳溶液である。つまり、好ましい実施形態では飲料は、上記で特定した添加剤のうちの1つ又はそれ以上、特には(a)ステビア抽出物又はステビオルグリコシド、好ましくはReb A、又は(b)ラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物、又は、(a)と(b)の混合物又は(a)と(b)の双方を含有し得る。本発明の特に好ましい実施形態では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)又は本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を含んでいる製品は、そのトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)自体以外のさらなる甘味剤は含んでいない。本発明のさらに好ましい実施形態では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)又はそのような組成物を含有している製品は、ビタロースを意味するそのようなトレハルロース含有組成物中に含有されている糖以外の他の糖は含んでいない。
【0073】
本発明のさらに好ましい実施形態では本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)又は本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を含有している製品は、強力甘味剤を含んでいないし、糖アルコールのような、砂糖代替剤を含んでいないし、その双方を含むこともない。本発明の特に好ましい実施形態ではトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)又はそのような組成物を含有している製品は、ソルビトールを含んでいないし、マンニトールを含んでいないし、ラクチトールを含んでいないし、マルチトールを含んでいないし、キシリトールを含んでいないし、エリトリトールを含んでいないし、これらのうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又はすべてを含むこともない。
【0074】
本発明は、消費者にグルコースの持続放出、及び、低血液インスリン応答、特にはイソマルツロース単独によって引き起こされるよりも有意により低いインスリン応答を同時に引き起こすこと(本明細書では誘発とも呼ばれる)ができるように設計された、ヒト又は動物の消費用製品を調製するための本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)又はトレハルロース自体の使用にも関する。
【0075】
本発明は、製品が医薬製品である、上記の使用にも関する。
【0076】
本発明は、製品がそれを必要としている対象に適用され、それによって低インスリン応答及びグルコースの持続放出が引き起こされる、グルコース又はインスリン代謝関連病態又は疾患の治療方法に関するものである。
【0077】
本発明は、グルコース又はインスリン関連病態又は疾患が、糖尿病、代謝症候群、耐糖能障害、インスリン抵抗、過脂肪、過体重、肥満、高脂血、ガン(特には結腸ガン)、肝疾患、インスリン感受性及び関節硬化からなる群から選択される、上記した方法に関するものである。
【0078】
本発明は、このように、トレハルロースは、ヒト又は動物の消費者によって摂取されると、イソマルツロースに比較して増大したレベルの血糖をもたらし且つ同時に、イソマルツロースに比較して、血液中により低いレベルのインスリンを引き出すという思いも寄らぬ発見に基づくものでもある。つまり、イソマルツロース及びトレハルロースはいずれも低血糖の糖であるが、トレハルロースは、思いも寄らぬこととしてまた好都合なこととして、ヒト又は動物の身体中に摂取されるとイソマルツロースとは対照的により高いレベルの血糖をもたらし且つ同時に、イソマルツロースとは対照的に、より低いインスリン応答を引き起こす(すなわちより低い血中インスリンレベル)。つまり、トレハルロースは、特には、低GI(血糖インデックス)を有する低血糖作用物質であり、また、きわめて低いインスリン応答をもたらす、すなわち非常に低いII(インスリンインデックス)をもたらす。
【0079】
本発明の文脈では「低インスリン応答」とは、トレハルロースによって引き起こされるものであって、イソマルツロースによって引き起こされるインスリン応答よりも低いインスリン応答である。本発明は、したがって、イソマルツロース及びトレハルロースはいずれも低GIを有していて、トレハルロースは、特には、低インスリン応答、すなわちイソマルツロースのインスリン応答よりも低いインスリン応答をもたらすことを意味する、低インスリンインデックス(II)を有しているという思いも寄らぬ教示を提供するものである。本発明は、したがって、上記で特定した発見を利用する、トレハルロース及びトレハルロース含有組成物の新規なまた好都合な方法及び用途の可能性を開くものである。特には本発明は、イソマルツロースのみを含んでいる食品とは対照的に、グルコースの持続放出をもたらし且つ同時にもっぱら低インスリン応答を引き起こすよう設計された、及び、そうするのに相応しい、特にはヒト及び動物の消費用の、製品の調製には、トレハルロース又はトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を用いるという教示を提供するものである。つまり、本発明に従う食品は、血液中のインスリンのレベルを低下させることを目標とするものであって、肥満、過体重、過脂肪、真性糖尿病さらには他のグルコース及びインスリン関連疾患又は病態を予防及び治療するのに助けとなる。
【0080】
つまり、特定した量のトレハルロースを含んでいる本発明による組成物又は食品は、なかでもその血中低インスリンの指標により、公知の組成物、特にはもっぱら又は主にイソマルツロースを含有している組成物又は製品に比較して、思いも寄らぬほどに好都合なものである。つまり、本発明は、比較的に高量のグルコースを供給しそれによってその消費者の血液中に非常に低いインスリン応答をもたらす食品組成物又は治療剤を提供するために他の甘味剤、特にはスクロース、グルコース及び/又はイソマルツロースを、完全に又は部分的に置き換えるべく、組成物、食品又は治療方法に、あるトレハルロース含有量を特異的に用いて適応させるという技術的な教示を提供するものである。つまり、本発明は、本発明の特異的な教示を用いることによってあるレベルのエネルギー供給に対しては比較的により低い血中インスリン負荷がその消費者に負荷されるという、又は、逆に、ある血中インスリン負荷ではより高量のエネルギーがその消費者に供給され得るという好都合な教示を提供するものであり、これは、イソマルツロースとは対照的にきわめて低い血糖値及び比較的により高いグルコース供給をその消費者にもたらすというトレハルロースの特殊な特性を意味するものである。
【0081】
本発明は、したがって、グルコース又はインスリン代謝関連病態又は疾患を治療するための製品、使用及び方法も提供するものであり、そこでは、本発明による製品が所望効果を達成するのに相応しい量でそれを必要としている対象、特にはヒト又は動物に適用されそれによって低インスリン応答及びグルコースの持続放出が引き起こされる。本発明の文脈ではグルコース又はインスリン代謝関連疾患は、糖尿病(特には真性糖尿病(II型))、代謝症候群、耐糖能障害、インスリン抵抗、インスリン感受性、過脂肪、肥満、高脂血、ガン、肝疾患、結腸ガン及び過体重からなる群から選択される。本発明は、本発明のトレハルロース又はトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)の使用は、身体的及び精神的能力を改善させ、脂肪の消費及び酸化を増大させ、血糖及びインスリンレベルをコントロールし、遊離の脂肪酸を動員し、グリコーゲンの消費を低下させるという教示も提供するものである。
【0082】
本発明は、本発明のトレハルロース又はトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、その消費者の身体に、特にはその脳、神経、血液及び筋肉の細胞に、グルコースを、長時間また持続した時間、イソマルツロースによって供給されるよりもさらにより高レベルで、連続して供給することができ、他方では、同時に、特にはイソマルツロースに比較して、比較的に低いインスリン応答が引き起こされるという好都合な教示を提供するものである。このように、身体には長続きする、連続したエネルギー供給が供給されて、身体的及び精神的能力の低下が回避され、身体的及び精神的持久力、健康状態及び活動が増進される一方、他方ではグリコーゲン貯蔵の消費が低減され、体重コントロール及び体重低減が支持される。
【0083】
本発明はまた歯の疾患(特にはプラーク形成)又は歯の欠陥(特には齲蝕)の予防及び治療方法に関するものであって、ここでは本発明の製品又は組成物が、所望の効果を達成するのに相応しい量でそれを必要としている対象に適用される。特には、本発明においては、本発明の製品又は組成物がそれを必要としている対象に適用されることにより、その消費者の口におけるプラーク形成が低減される。つまり、本発明は、歯の健康を増進させるための方法を提供するものである。
【0084】
さらに好ましい実施形態では本発明は精神的及び/又は身体的能力、特には持久力を増進させるための方法に関し、ここでは本発明による製品又は組成物が所望の効果を達成するのに相応しい量でそれを必要としている対象に適用される。つまり、本発明は特に好ましい実施形態において持久力の改善を必要としている対象の持久力を改善するための方法を提供するものであり、それによって特に好ましい実施形態においてはグリコーゲンの消費が低減される。
【0085】
さらに好ましい実施形態では本発明は脂肪酸化の改善を必要としている対象の脂肪酸化を改善、好ましくは増進させるための方法に関し、ここでは本発明による製品又は組成物が所望の効果を達成するのに相応しい量でそれを必要としている対象に適用される。さらには、本発明は体重の管理方法にも関し、ここでは本発明による組成物又は製品がそれを必要としている対象に適用される。
【0086】
特に好ましい実施形態において、本発明は患者の呼吸商(RQ=消失したCO/消費したO)を低下させるための方法を提供するものであり、ここでは本発明による製品又は組成物が所望の効果を達成するのに相応しい量で身体運動の前、その間、又はその後にそれを必要としている対象に適用される。
【0087】
本発明の製品及び組成物を用いるという方法はすべて治療的な方法又は非治療的な方法であり得、例えば美容的な、精力関連の、運動競技の、又はライフスタイル指向の方法に関係し得る。
【0088】
さらなる好ましい実施形態は、従属請求項の対象となっているものである。
【実施例】
【0089】
次に本発明を以下の実施例及び同伴の図により説明する。
【0090】
(実施例1:ビタロースの調製)
A.プロタミノバクター生体触媒の調製
砂糖工場製濃厚ジュース(乾燥物質含有量65%)8kg、トウモロコシ浸出液2kg、(NHHPO0.1kg及び蒸留水89.9kgからできている、必要ならpH7.2に調整された滅菌栄養基質の10mlで株プロタミノバクター・ルブルム(CBS574.77)の継代培養から細胞を濯ぎ出す。この懸濁液を上記組成の栄養溶液200mlが入っている1リットルフラスコ中でのシェーカー前培養のための接種材として用いる。
【0091】
29℃で30時間のインキュベーション時間の後、30リットル小型発酵槽中の上記組成の栄養溶液18リットルを、各場合、10フラスコ(全体内容量2リットル)で接種し、1分間あたり20リットルの空気及び350rpmの撹拌機速度で29℃にて培養する。
【0092】
微生物カウントが5×10微生物/ml以上に達した後、培養を停止し、遠心分離により細胞を発酵槽溶液から収穫し、2%濃度アルギン酸ナトリウム溶液に懸濁させ、この懸濁液を滴下で2%濃度塩化カルシウム溶液に加えることによって固定化する。
【0093】
得られる固定化物ビーズを水で洗浄する。この生体触媒は、4℃で数週間貯蔵され得る。
【0094】
B.シュードモナス生体触媒の調製
この生体触媒を調製するために、砂糖工場製濃厚ジュース(乾燥物質含有量=65%)8kg、トウモロコシ浸出液2kg、(NHHPO0.1kg及び蒸留水89.9kgからできている、必要ならpH7.2に調整された滅菌栄養基質の10mlで株シュードモナス・メソアシドフィラMX−45(FERM BP3619)の継代培養から細胞を濯ぎ出した。この懸濁液を前記栄養溶液200mlが入っている1リットルフラスコ中でのシェーカー前培養のための接種材として用いた。
【0095】
29℃で30時間のインキュベーションの後、30リットル小型発酵槽中の上記組成の栄養溶液18リットルを、各場合、10フラスコ(全体内容量2リットル)で接種し、1分間あたり20リットルの空気及び350rpmの撹拌機速度で29℃にて培養した。
【0096】
微生物カウントが5×10微生物/ml以上に達した後、培養を停止し、遠心分離により細胞を発酵槽溶液から収穫し、2%濃度アルギン酸ナトリウム溶液に懸濁させ、この懸濁液を滴下で2%濃度塩化カルシウム溶液に加えることによって固定化した。得られた固定化物ビーズを水で洗浄した。この生体触媒は、4℃で数週間貯蔵され得る。
【0097】
C.ビタロースの調製
A)のようにして得られた固定化細胞をB)のようにして得られた固定化細胞と1:1重量比で混合し、温度自動調節であり得る及び25〜30℃に温度自動調節されているカラム反応器に一緒に充填し、そしてDM(乾燥物質)含有量が35〜45%のスクロース溶液を連続的に流し通す。この場合における流量は、用いたスクロースの少なくとも97%が所望のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)に変換されるように調整する。
【0098】
カラム反応器から出て来るトレハルロース含有組成物のHPLC分析は、以下の組成:
フルクトース DMの1.0%
グルコース DMの1.0%
スクロース DMの1.0%
イソマルツロース DMの22.9%
トレハルロース DMの73.3%
イソマルトース DMの0.5%
イソメレジトース DMの0.1%
オリゴマー(DP>3) DMの0.2%
を示した。
【0099】
D.残存スクロースの場合による除去
残存スクロースを、場合により、このようにして得られたトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)から、以下のようにしてそれをHイオンが負荷された強酸性カチオン交換材中で、又は、カラム反応器中の適する触媒で処理することによって除去した。
【0100】
i)強酸性カチオン交換材での残存スクロースの除去
100cmの強酸性カチオン交換体(例えばLewatit(登録商標)OC1052)を60℃に温度自動調節された適するガラスカラムに充填し、公知の方法によりHClで再生することによってHイオンを負荷した。
【0101】
実施例1Cで得られたトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)をこのようにして準備されたカチオン交換体カラムに100cm・h−1の流量でポンプ送りした。カラム出口で得られた生成物は、以下の組成(HPLC):
フルクトース DMの1.5%
グルコース DMの1.5%
スクロース DMの0.0%
イソマルツロース DMの22.9%
トレハルロース DMの73.3%
イソマルトース DMの0.5%
イソメレジトース DMの0.1%
オリゴマー(DP>3) DMの0.2%
を有していた。
【0102】
ii)別法として、残存スクロースの除去は、固定化インベルターゼ(例えばNOVO NORDISK A/S Copenhagen製SP362)を用いて行われた。33cmの床体積に対応する11gのそのような固定化酵素を60℃に温度自動調節された適するガラスカラムに充填した。
【0103】
実施例1Cで得られたトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)をこのカラムに210cm・h−1の流量で連続的にポンプ送りした。
【0104】
この「インベルターゼカラム」から出て来る生成物のHPLC分析は、先の、セクション1Dのi)に示されている組成を示した。
【0105】
いずれのケースでも、残存スクロースは完全にグルコースとフルクトースに開裂された。これらの単糖の含有量は対応してより高かったがトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)の他の成分は変わっていなかった。
【0106】
完全に非齲蝕性の甘味剤が得られるように、グルコース並びにフルクトースを除去することも可能である。
【0107】
(実施例2:シュードモナスとプロタミノバクターのいくつかの比でのスクロースの変換)
この実施例では、生成物組成に対するシュードモナス・メソアシドフィラMX−45(FERM BP3619)とプロタミノバクター・ルブルムCBS574.77のいくつかの比の影響を解析した。
【0108】
水性培地の形態にあるスクロース含有組成物を調製するために1.58g/l酢酸カルシウム(酢酸で5.5のpHに調整)の水性溶液を調製することによって先ず「溶液A」を調製した。そのあと、溶液Aを合計1lになるまで500gスクロースに対応している1.4602mol/lスクロースに加えることによって「溶液B」を調製した。
【0109】
双方の微生物株、すなわち、P.メソアシドフィラMX−45及びP.ルブルムCBS574.77を実施例1A及び実施例1Bに特定されているようにして別々に培養した。それぞれの微生物カウントが5×10微生物/ml以上に達した後、双方の微生物の培養を停止し、遠心分離により細胞を収穫して2%濃度アルギン酸ナトリウム溶液に一緒に貯留し、この懸濁液を滴下で2%濃度塩化カルシウム溶液に加えることにより、その結果、一緒に固定化した。これによって調製されるアルギナートビーズ上へのこの双方の微生物株の組み合わせに採用した重量比は下記から明らかである、すなわちシュードモナス対プロタミノバクターの1:2、1:1及び2:1の比である。
【0110】
指定されているようにして調製した生体触媒の5gを50mlの溶液Aと混合し、室温に3時間保持した。
【0111】
上記で調製した生体触媒の懸濁液を撹拌反応器中で200mlの先に調製したスクロース含有溶液Bと20℃で混合することによりスクロースの変換を開始させた。
【0112】
実験の第1のセットでは、担体上の微生物の全負荷のうちの33%がP.・メソアシドフィラMX−45であり、67%がP.ルブルムである生体触媒が用いられた(全微生物負荷の重量をベースにした%)。実験の第2のセットでは全微生物負荷の50%がMX−45であり、50%がP.ルブルムであった(全微生物負荷の重量をベースにした%)。実験の第3のセットでは微生物の全負荷の67%がMX−45であり、33%がP.ルブルムであった(全微生物負荷の重量をベース)。
【0113】
サンプルを5、10、15、20、25、30、35及び60分、3時間さらには20.5時間後に採取した。採取したサンプルを調理し、濾過し、10°Bx(ブリックス、100g中10g溶液)の濃度に希釈し、HPLCにより分析した。
【0114】
結果を図1〜6に示す。
【0115】
図1〜6から、本発明の方法は、スクロースのトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)への完全又はほぼ完全変換をもたらすことが見て取れる。
【0116】
特には固定化された2つの異なる微生物株細胞間の特異的な重量比に応じてトレハルロース対イソマルツロースのさまざまな比が得られる得ることが見て取れる。特には、P.・メソアシドフィラがより多く用いられると、その生成物組成中のトレハルロース含有量はより高くなって、P.ルブルムの割合がより高くなると、得られる生成物中のイソマルツロース含有量はより高くなる。特には、このデータは、双方の微生物及び双方の酵素栄養を同時に一緒に用いて変換させることが可能であることまたそうすることがきわめて好都合であること、及び、全体的な変換に対しては負の影響が生じないことを示している。
【0117】
(実施例3:いくつかのゼリーの調製)
次に、甘味剤としてスクロースとグルコースの混合物を用いたゼリー用の4つのレシピ、及び、本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を用いた4つのレシピを調製する。調製されたゼリーを貯蔵及びTPA分析で比較試験した。
【0118】
(3A:レシピ)
【表1】

説明:
サンプル番号1〜4:スクロース/グルコース組成物
サンプル番号5〜8:本発明のビタロース(トレハルロース含有組成物)
サンプル5〜8の組成:
【表2】

【0119】
(3B:TPA分析)
上記の、実施例3Aで調製したサンプルを比較試験で詳細に分析した、すなわち、いくつかの増粘剤(ペクチン、ゼラチン、スターチ及び/又はアラビアガム)を含有しているスクロース/グルコース組成物をトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)に対して比較した。
【0120】
i)TPA分析(硬度、稠度)
ii)密閉PE(ポリエチレン)バッグに25℃で8週間貯蔵
TPA試験及び貯蔵挙動についての分析の時間間隔は、O(貯蔵の開始)、1、2、4、8週間後に行われた。
【0121】
すべてのゼリーレシピにおいて従来型のスクロースとグルコースの甘味剤組み合わせは、本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)で置き換えられ得ると考える。トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)を用いての調製は、まさしく、スクロース/グルコース組成物を用いての調製と同じであった。調製の間中、特にはゼリーを調理しているとき、トレハルロースの分解は、まったく観察されなかった。
【0122】
図7〜14に示されている結果から明らかなように、硬度及び稠度のTPA測定は、本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)から作られたゼリーは、従来型のスクロース/グルコースベースの製品に等しい又は非常に似ていることを示している。貯蔵挙動も比肩し得るものである。冷蔵庫温度(これは7℃を意味する)での貯蔵は、特に良好な安定性と長期間のシェルフライフを示した。
【0123】
つまり、これらの結果は、調製並びに製品特性のいずれの点においても、本トレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)は、ゼリーでは、従来用いられているスクロース/グルコース甘味剤の代わりに用いられ得ることを示しているが、加えて、本発明組成物は、本明細書で言及されているメリット、すなわち血糖及び血中インスリン挙動に関しての特異的な生理学的及び栄養学的なメリットをもたらす。
【0124】
(実施例4:本発明のトレハルロース含有組成物(これはビタロースを意味する)でのいくつかの製品の調製)
4.1)シリアルバー
【表3】

* ここでは「トレハルロース」とは90:10トレハルロース/イソマルツロース混合物のことをいう。
【0125】
4.2)ハードキャンディー(単位は重量%)
【表4】

ex:実施例
#:Reb A含有量は全Reb A甘味剤乾燥質量の>97重量%
* A:のど飴
* B:レモンキャンディ
【0126】
4.3)アイスクリーム(単位は重量%)
【表5】

#:全Reb A甘味剤の乾燥質量の≧95重量%のReb A、レバウジオシドB、レバウジオシドC、ズルコシドA、ステビオシド、ルブソシド及びステビオルビオシド
【0127】
4.4)オレンジ缶詰(単位は重量%)
【表6】

【0128】
4.5)ニンジンジュース(単位は重量%)
【表7】

【0129】
4.6)フォンダン(単位は重量%)
【表8】

【0130】
(実施例5:甘味の強さ)
相対的な甘味の強さの関係を明らかにするために、以下の溶液群を、各場合、15人の試験者による3点比較試験で互いを比較した。
【0131】
a)2つの7%濃度スクロース溶液対実施例1Dによる甘味剤の15.5%濃度溶液。
b)2つの7%濃度スクロース溶液対実施例1Dによる甘味剤の17.5%濃度溶液。
c)2つの7%濃度スクロース溶液対実施例1Dによる甘味剤の18.5%濃度溶液。
【0132】
試験a)では、6人がこの甘味剤を識別した(各スクロース溶液からは統計的に立証される差はなかった)。
【0133】
試験b)では、12人が本甘味剤を「より甘い」と識別した(p=0.99で統計的に立証された差)。
【0134】
試験c)では、同じく12人が本甘味剤を「より甘い」と識別した(p=0.99で統計的に立証された差)。
【0135】
本発明による甘味剤の甘味の強さは、スクロースのそれの約半分である。甘味の強さを増大させるためには、この甘味剤は、例えばReb A及びラクトビオン酸と混ぜ合わせられ得る。
【0136】
(実施例6:アイスクリーム)
実施例1Dの甘味剤でアイスクリームを製造するために、22.1kgの生クリーム(乾燥質量中40%脂)、58.1kgの全乳(DM中3.7%脂)及び4.5kgのスキムミルクを15kgの実施例1Dの甘味剤及び0.3kgの安定剤と混合し、ホモジナイズし、殺菌した。
【0137】
殺菌した後、53gの微細粉砕フェニルアラニルアスパルタートをこのアイス組成物に加え、撹拌し、ホイップし、凍らせた。この製品は、15kgの砂糖で製造したアイスクリームと同じ甘さ及び同じ味質を有する。フルーツアイスクリームの場合では、この甘味剤はフルーツの味質をかなりよく引き出すので、Reb A等の、さらなる甘味剤なしで済ますのが特に好都合であり得る。
【0138】
(実施例7:ストローベリージャム)
低カロリーストローベリージャムを製造するために、1kgの刻みイチゴを1kgの実施例1Cの甘味剤並びに8gの中度エステル化ペクチン及び7gの酒石酸と3分間一緒にボイルし、準備したビンにビン詰めにした。
【0139】
スクロースで製造されたジャムとの比較では稠度の差は見られず、その甘さはいくぶん低かったが、これはそのイチゴの味質が検出可能により強かったことで相殺された。6ヶ月の期間の貯蔵の後、この甘味剤は、結晶化する傾向を見せなかった。
【0140】
(実施例8)
血糖応答(血糖インデックス、GI)及びインスリン応答(血中インスリンの指標、II)に対するトレハルロースの影響をイソマルツロースとの対比で調査した。
【0141】
この解析は、男女10人の健常な対象に対して無作為クロスオーバー解析として行われた。
【0142】
イソマルツロース又はトレハルロースを消費(それぞれ25g炭水化物及び250ml水)した後の0〜180分の間隔における血糖プロファイル及び血液インスリンプロファイルを次の時間点0、15、30、45、60、90、120、150及び180分で取った。
【0143】
結果を図15と図16に示す。トレハルロースの血糖レベルについてのグラフが示すように、トレハルロースは、増大したまたより長く持続するグルコースの供給(GI)をもたらすが、これは、イソマルツロースによってもたらされる供給よりもより長くてまた合計でもより多い供給である。
【0144】
イソマルツロースのインスリン応答(II)は、イソマルツロースの血糖応答から予測されるように、血糖応答に平行して進む。それにひきかえ、トレハルロースは、イソマルツロースよりも有意により低いインスリン応答(II)を示し、また、トレハルロースの血糖応答から予測されているのとは違って有意により低い血液インスリンレベルを示している。つまり、トレハルロースは、イソマルツロースよりもより長い、より持続した、より大きい血糖レベルをもたらし、同時に、思いも寄らぬこととして、イソマルツロースに比較しては有意により低い、さらにはトレハルロース自体の血糖プロファイルを考慮して予測されるよりもより低いインスリン応答をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)スクロース含有組成物を適切な条件下でシュードモナス属及びプロタミノバクター属微生物の細胞又は細胞抽出物と接触させ、(b)トレハルロース含有組成物を生成させる、トレハルロース含有組成物の調製方法。
【請求項2】
スクロース含有組成物が、水性媒体に溶解又は懸濁されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞又は細胞抽出物が、少なくとも1つの担体に固定化されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
両方の属の微生物の細胞又は細胞抽出物が、同一の担体に共固定化されている、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法に従って調製されたビタロース(トレハルロース含有組成物)。
【請求項6】
20〜95重量%(乾燥質量基準)のトレハルロース含量を含んでいる、請求項5に記載のビタロース(トレハルロース含有組成物)。
【請求項7】
8〜50重量%(乾燥質量基準)のイソマルツロース含量を含んでいる、請求項5又は6に記載のビタロース(トレハルロース含有組成物)。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載のビタロース(トレハルロース含有組成物)及び少なくとも1種の添加剤を含んでいる、ヒト又は動物の消費用製品。
【請求項9】
製品が、0.02〜3.0重量%の少なくとも1種の添加剤及び97.0〜99.98重量%のビタロース(トレハルロース含有組成物)を含んでいる(それぞれ乾燥質量を基準)、請求項8に記載の製品。
【請求項10】
製品が、3〜95重量%のビタロース(トレハルロース含有組成物)及び5〜97重量%の少なくとも1種の添加剤を含んでいる(それぞれ乾燥質量を基準)、請求項8に記載の製品。
【請求項11】
添加剤が、ステビア抽出物及びステビオルグリコシドのうちの少なくとも一つである、請求項8又は9に記載の製品。
【請求項12】
添加剤が、ラクトビオン酸、ラクトビオン酸−δ−ラクトン、ラクトビオン酸の塩又はこれらの混合物である、請求項8〜11のいずれかに記載の製品。
【請求項13】
添加剤が、酸味剤、果実風味剤、甘味風味剤、旨味風味剤、塩気風味剤、強力甘味剤、糖アルコール、スクロマルト、リボース、タガトース、トレハロース、有機酸、果物抽出物、バルク甘味剤、ファイバー剤、プレバイオティック剤、増粘剤、ビタミン剤、ミネラル剤、防腐剤、食品着色剤及び治療剤からなる群から選択される、請求項8〜12のいずれかに記載の製品。
【請求項14】
添加剤が、クレアチン、ポリフェノール、L−カルニチン、オメガ−3ポリ不飽和脂肪酸、オメガ−6ポリ不飽和脂肪酸、緑茶抽出物、EGCG(エピガロカテキンガラート)、アミノ酸及びペプトプロからなる群から選択される、請求項8〜13のいずれかに記載の製品。
【請求項15】
添加剤が、トリプトファン含有ペプチド組成物である、請求項8〜14のいずれかに記載の製品。
【請求項16】
食品、動物飼料又は医薬製品である、請求項8〜15のいずれかに記載の製品。
【請求項17】
ゼリー、飲料、果物調製物、濃縮果物ジュース、果物ジュース又はスムージーである、請求項8〜16のいずれかに記載の製品。
【請求項18】
グルコースを持続して放出し且つ同時に低インスリン応答を引き起こすことができるように設計された、ヒト又は動物の消費用製品を調製するための請求項5〜17のいずれかに記載のビタロース(トレハルロース含有組成物)もしくは製品又はトレハルロースの使用。
【請求項19】
製品が、医薬製品である、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
請求項5〜17のいずれかに記載の組成物又は製品を、それを必要としている対象に適切な量で適用し、それによって低インスリン応答及び持続したグルコースの放出を引き起こさせる、グルコース又はインスリン代謝関連病態又は疾患の治療方法。
【請求項21】
インスリン関連疾患が、糖尿病、代謝症候群、耐糖能障害、インスリン抵抗、過脂肪、過体重、肥満、高脂血、ガン、肝疾患、インスリン感受性及び関節硬化からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
請求項5〜17のいずれかに記載の組成物又は製品を、それを必要としている対象に適切な量で適用する、対象における歯の疾患の予防及び治療方法。
【請求項23】
請求項5〜17のいずれかに記載の組成物又は製品を、それを必要としている対象に適切な量で適用する、消費者の口中におけるプラーク形成を低減させるための、好ましくは請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項5〜17のいずれかに記載の組成物又は製品を、それを必要としている対象に適切な量で適用する、対象の精神的及び/又は身体的能力を改善させるための方法。
【請求項25】
請求項5〜17のいずれかに記載の組成物又は製品を、それを必要としている対象に適切な量で適用する、対象の体重を管理するための方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公表番号】特表2012−523825(P2012−523825A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505089(P2012−505089)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002308
【国際公開番号】WO2010/118866
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(500175772)ズートツッカー アクチェンゲゼルシャフト マンハイム/オクセンフルト (47)
【Fターム(参考)】