説明

トレーラヒッチ及び該トレーラヒッチを備えた車体後部構造

【課題】後面衝突等における衝突荷重を効率的に吸収できるトレーラヒッチ及びトレーラヒッチを備えた車体後部構造を提供する。
【解決手段】車体後部が中空矩形断面形状で車体前後方向に延在する左右のリヤサイドメンバ12を備え、トレーラヒッチ20は各リヤサイドメンバ12に形成され後部支持部14Dにそれぞれ取付部37Aが結合されてクロスメンバ取付部36Aが突出する左右のヒッチ側部材35と、左右のヒッチ側部材35のクロスメンバ取付部36Aに両端が結合されて車幅方向に延在するクロスメンバ22と、クロスメンバ22の車幅方向中央部から垂下してヒッチボール32をクロスメンバ22から下方にオフセットして支持するヒッチボール支持部材25とを備える。また前部支持部13Dと後部支持部14Dとの間に連結部材42を掛け渡す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体後部に取り付けられてトレーラに設けられたジョイントが着脱自在に連結するトレーラヒッチ及び該トレーラヒッチを備えた車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の後部に、トレーラの前部に設けられたジョイントを着脱自在に連結するトレーラヒッチを取り付ける種々の構造が提案されている。
【0003】
この種のトレーラヒッチを備えた車体後部構造の一例として、特許文献1に開示される車体後部構造を図15及び図16を参照して説明する。
【0004】
図15はトレーラヒッチを備えた車体後部構造の概要を示す図であって、図16は図15のIII−III線断面図である。フロアパネル101の下面に車体前後方向に延在して設けられるリヤサイドメンバ102の後端を車幅方向に延在するクロスメンバ110に結合するにあたり、リヤサイドメンバ102の後端と対向するクロスメンバ110の前面に断面ほぼハット状で車体前後方向に対し傾斜する外周面113aが形成された突出部113を有する補強部材112を設けてクロスメンバ110と補強部材112によって閉断面形状を形成する。一方、リヤサイドメンバ102の後端の端末口に車体前後方向に対して傾斜する溶接フランジ103を形成する。
【0005】
そして、このリヤサイドメンバ102の後端に形成された溶接フランジ103を補強部材112の前方に突出する突出部113に嵌合してリヤサイドメンバ102の溶接フランジ103と突出部113の外周面113aとを溶接する。
【0006】
トレーラヒッチ120は、図15に仮想線で示すようにヒッチボール121が設けられて車幅方向に延在するフレーム122の側端にアーム部123が設けられ、アーム部123の前端上部123aをリヤサイドメンバ102の側面後端部102aにボルト等によって締結する。
【0007】
この構造によると、クロスメンバ110の前面に閉断面を構成する補強部材112を固着し、補強部材112の傾斜する外周面113aをリヤサイドメンバ102の後端に傾斜状で形成された溶接フランジ103に溶接することにより、牽引時にトレーラヒッチ120からリヤサイドメンバ102に作用する前後方向の荷重入力に対し、補強部材112に形成された突出部113の外周面113aと溶接フランジ103との結合方向が剪断方向に近くなり、前後方向の入力が繰り返し作用しても溶接部の剥離が生じにくくなる。
【0008】
これにより、トレーラヒッチ120からリヤサイドメンバ102に作用する荷重入力に対するリヤサイドメンバ102とクロスメンバ110の結合強度が向上する。更に、トレーラヒッチ120が、ヒッチボール121を支持するフレーム122の側端に前方に延出するアーム部123を設けて構成され、アーム部123の前端上部をリヤサイドメンバ102の側面後端部123aにボルト等によって結合することから、リヤサイドメンバ102の後部がアーム部123の結合によって広範囲に亘り剛性が強化される。
【0009】
【特許文献1】特開2006−44352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1によると、トレーラヒッチ120のアーム部123がリヤサイドメンバ102の側面後端部123aの広範囲に亘って結合されることから、リヤサイドメンバ102の側面後端部123aがアーム部123の結合によって必要以上に剛性強化される。このリヤサイドメンバ102の必要以上の剛性強度の強化により、後面衝突等によってトレーラヒッチ120に衝撃荷重が入力されたときに、リヤサイドメンバ102の後部範囲において軸方向の圧縮変形が制限されて衝突荷重が効率的に吸収できないことがある。特に、車体後部の有効長が確保できないショート・リヤ・オーバハング、いわゆるショートデッキの車両にあってはリヤサイドメンバの圧縮変形ストロークが制限されて衝撃荷重の効率的な吸収が困難である。
【0011】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、後面衝突等における衝突荷重を効率的に吸収できるトレーラヒッチ及びトレーラヒッチを備えた車体後部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する請求項1に記載のトレーラヒッチの発明は、車体後部に取り付けられてトレーラに設けられたジョイントが着脱自在に連結するトレーラヒッチにおいて、車体左右の各リヤサイドメンバに形成された支持部にそれぞれ取付部が結合されて該各リヤサイドメンバの後端からクロスメンバ取付部が突出する左右のヒッチ側部材と、該左右のヒッチ側部材のクロスメンバ取付部に両端が結合されて車幅方向に延在するクロスメンバと、該クロスメンバの車幅方向中央部に上端が結合されて下方に垂下してヒッチボールを支持するヒッチボール支持部材とを備えたことを特徴とする。
【0013】
この発明によると、例えば後方から走行する車両による追突等の後面衝突等が発生した際に、車体後部に取り付けられたトレーラヒッチのクロスメンバから垂下するヒッチボール支持部材を介して配置されたヒッチボールに車両が衝突し、その衝突荷重によりヒッチボールが前方に押動されるとヒッチボール支持部材が前方に揺動してクロスメンバに捩り及び座屈変形を付与する。このクロスメンバの捩り及び座屈変形によってヒッチボールに入力された衝撃荷重を効率的に吸収して車体後部に作用する衝撃が緩和できる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1のトレーラヒッチにおいて、上記ヒッチ側部材は、後端に上記取付部より下方にオフセットして形成された後部当接面部を備えたことを特徴とする。
【0015】
この発明によると、ヒッチボールに入力される衝撃荷重が大きくクロスメンバの捩り及び座屈変形によっては衝撃荷重が十分には吸収できないとき、或いはヒッチボールから車幅方向にオフセットした衝突のときには、車両等がヒッチ側部材の後端に形成された後部当接面部に衝突してリヤサイドメンバの支持部にリヤサイドメンバの軸方向に対してオフセットした衝撃荷重が付与されてリヤサイドメンバの支持部付近が積極的に座屈変形する。このリヤサイドメンバの支持部付近の座屈変形により衝撃荷重が効率的に吸収できる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のトレーラヒッチにおいて、上記ヒッチ側部材は、上記クロスメンバ取付部を後部に備えて前後方向に延在する側部パネルと、該側部パネルに沿って前後方向に延在すると共に前部に上記リヤサイドメンバに形成された支持部に結合される上記取付部を備え、該取付部から後方に延在した後端に下方に折曲して上記取付部より下方にオフセットした上記後部当接面が形成された側部リンホースとが一体結合されたことを特徴とする。
【0017】
この発明によると、ヒッチボールに入力される衝撃荷重が大きくクロスメンバの捩り及び座屈変形では衝撃荷重が十分に吸収できないとき、或いはヒッチボールから車幅方向にオフセットした衝突のときには、車両等が側部リンホースの後部当接面部に衝突し、リヤサイドメンバの支持部にリヤサイドメンバの軸方向に対してオフセットした衝撃荷重が付与され、リヤサイドメンバの支持部付近を積極的に座屈変形させて衝撃荷重を効率に吸収する。また、ヒッチ側部材を側部パネルと側部リンホースによって形成することにより、ヒッチ側部材の成形が容易になると共に衝撃吸収特性が容易に調整できる。
【0018】
請求項4に記載のトレーラヒッチを備えた車体後部構造の発明は、車体後部にトレーラに設けられたジョイントが着脱自在に連結するトレーラヒッチを備えた車体後部構造において、上記車体後部は、それぞれ上面及び下面を有する中空矩形断面形状で車体前後方向に延在する左右のリヤサイドメンバを備え、上記トレーラヒッチは、上記左右の各リヤサイドメンバに形成された後部支持部にそれぞれ取付部が結合されて該各リヤサイドメンバの後端からクロスメンバ取付部が突出する左右のヒッチ側部材と、該左右のヒッチ側部材のクロスメンバ取付部に両端が結合されて車幅方向に延在するクロスメンバと、該クロスメンバの車幅方向中央部に上端が結合されて下方に垂下してヒッチボールを支持するヒッチボール支持部材とを備えたことを特徴とする。
【0019】
この発明によると、例えば後方から走行する車両による追突等の後面衝突等が発生した際に、左右のリヤサイドメンバに取り付けられたヒッチ側部材間に車幅方向に延在して掛け渡されたクロスメンバから垂下するヒッチボール支持部材に配置されたヒッチボールに車両が衝突すると、ヒッチボール支持部材が前方に揺動してクロスメンバに捩り及び座屈変形が付与される。このクロスメンバの捩り及び座屈変形によってヒッチボールに入力された衝撃荷重を吸収して車体後部に作用する衝撃が緩和できる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項4のトレーラヒッチを備えた車体後部構造において、上記ヒッチ側部材は、後端に上記取付部より下方にオフセットして形成された後部当接面部を備えたことを特徴とする。
【0021】
この発明によると、ヒッチボールに入力される衝撃荷重が大きくクロスメンバの捩り及び座屈変形で衝撃荷重が十分には吸収できないとき、或いはヒッチボールから車幅方向にオフセットした衝突のときには、車両等がヒッチ側部材の後部当接面部に衝突してリヤサイドメンバの支持部にリヤサイドメンバの軸方向に対してオフセットした衝撃荷重が付与され、リヤサイドメンバの後部支持部付近を積極的に座屈変形させて衝撃荷重が効率的に吸収できる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5のトレーラヒッチを備えた車体後部構造において、上記ヒッチ側部材は、上記クロスメンバ取付部を後部に備えて前後方向に延在する側部パネルと、該側部パネルに沿って前後延在すると共に前部に上記リヤサイドメンバに形成された後部支持部に結合される上記取付部を備え、該取付部から後方に延在した後部に下方に折曲して上記取付部より下方にオフセットした後部当接面部が形成された側部リンホースとが一体結合されたことを特徴とする。
【0023】
この発明によると、車両等が側部リンホースの後部当接面部に衝突してリヤサイドメンバの支持部にリヤサイドメンバの軸方向に対してオフセットした衝撃荷重が付与されてリヤサイドメンバの後部支持部付近を積極的に座屈変形させて衝撃荷重を効率的に吸収する。
【0024】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか1項のトレーラヒッチを備えた車体後部構造において、上記リヤサイドメンバは、上記後部支持面が上記下面に形成され、更に該後部支持部より前方に離間して上記上面に前部支持部が形成されると共に、上記前部支持部に取り付けられる前部結合部と、後部支持部に取り付けられる後部結合部と、前部結合部の後端に前側折曲部を介して前端が連結され後端が後側折曲部を介して上記後部結合部の前端に連結される延在部とが一体形成された連結部材を備えたことを特徴とする。
【0025】
この発明によると、車両等が側部リンホースの後部当接面部に衝突してリヤサイドメンバの支持部にリヤサイドメンバの軸方向に対してオフセットした衝撃荷重が付与されてリヤサイドメンバの後部支持部付近を積極的に座屈変形させると共に、連結部材を介してリヤサイドメンバの前部支持部付近を積極的に座屈変形させて衝撃荷重を効率的に吸収する。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項7のトレーラヒッチを備えた車体後部構造において、上記連結部材の延在部は、前側折曲部を介して前端が前部結合部に連続する前部範囲と、後側折曲部を介して後端が後部結合部に連続する後部範囲とを有し、前部範囲の後端と後部範囲の前端が比較的脆弱な連結部を介して連結されたことを特徴とする。
【0027】
この発明によると、車両等が側部リンホースの後部当接面部に衝突してリヤサイドメンバの支持部にリヤサイドメンバの軸方向に対してオフセットした衝撃荷重が付与されてリヤサイドメンバの後部支持部付近を積極的に座屈変形させると共に、連結部材の延在部に形成された連結部が座屈してリヤサイドフレームの前部支持部と後部支持部との間に当接して該部を積極的に座屈変形させて衝撃荷重を効率的に吸収する。
【0028】
請求項9に記載のトレーラヒッチを備えた車体後部構造の発明は、車体後部にトレーラに設けられたジョイントが着脱自在に連結するトレーラヒッチを備えた車体後部構造において、上記車体後部は、それぞれ上面及び下面を有する中空矩形断面形状で車体前後方向に延在する左右のリヤサイドメンバを備え、上記トレーラヒッチは、上記左右の各リヤサイドメンバに形成された後部支持部にそれぞれ取付部が結合されて該各リヤサイドメンバの後端から突出するクロスメンバ取付部及び上記取付部に対して下方にオフセットして形成され後部当接面を有する左右のヒッチ側部材と、該左右のヒッチ側部材のクロスメンバ取付部に両端が結合されて車幅方向に延在すると共にヒッチボールを支持するクロスメンバとを備えたことを特徴とする。
【0029】
この発明によると、車両等が側部リンホースの後部当接面部に衝突してリヤサイドメンバの支持部にリヤサイドメンバの軸方向に対してオフセットした衝撃荷重が付与され、リヤサイドメンバの後部支持部付近を積極的に座屈変形させて後部当接面部に入力された衝撃荷重を効率に吸収する。
【0030】
請求項10に記載の発明は、請求項9のトレーラヒッチを備えた車体後部構造において、上記リヤサイドメンバは、上記後部支持面が下面に形成され、更に該後部支持部より前方に離間して上記上面に前部支持部が形成されると共に、上記前部支持部に取り付けられる前部結合部と、後部支持部に取り付けられる後部結合部と、前部結合部の後端に前側折曲部を介して前端が連結され後端が後側折曲部を介して上記後部結合部の前端に連結される延在部とが一体形成された連結部材を備えたことを特徴とする。
【0031】
この発明によると、車両等が側部リンホースの後部当接面部に衝突してリヤサイドメンバの支持部にリヤサイドメンバの軸方向に対してオフセットした衝撃荷重が付与されてリヤサイドメンバの後部支持部付近を積極的に座屈変形させると共に、連結部材を介してリヤサイドメンバの前部支持部付近を積極的に座屈変形させて衝撃荷重を効率的に吸収することができる。
【0032】
請求項11に記載の発明は、請求項10のトレーラヒッチを備えた車体後部構造において、上記連結部材の延在部は、前側折曲部を介して前端が前部結合部に連続する前部範囲と、後側折曲部を介して後端が後部結合部に連続する後部範囲とを有し、前部範囲の後端と後部範囲の前端が比較的脆弱な連結部を介して連結されたことを特徴とする。
【0033】
この発明によると、車両等が側部リンホースの後部当接面部に衝突してリヤサイドメンバの支持部にリヤサイドメンバの軸方向に対してオフセットした衝撃荷重が付与されてリヤサイドメンバの後部支持部付近を積極的に座屈変形させると共に、連結部材の延在部に形成された連結部が座屈してリヤサイドフレームの前部支持部と後部支持部との間に当接して該部を積極的に座屈変形させて衝撃荷重を効率的に吸収する。
【発明の効果】
【0034】
本発明のトレーラヒッチによると、車体後部に取り付けられたトレーラヒッチのクロスメンバからヒッチボール支持部材を介してクロスメンバに対して下方にオフセットして配置されたヒッチボールに車両が衝突すると、クロスメンバが捩り及び座屈変形してヒッチボールに入力された衝撃荷重を吸収して車体後部に作用する衝撃を緩和することができる。
【0035】
また、本発明のトレーラヒッチを備えた車体後部構造によると、左右のリヤサイドメンバに取り付けられたヒッチ側部材間に車幅方向に延在して掛け渡されたクロスメンバからヒッチボール支持アームを介して下方にオフセットして配置されたヒッチボールに車両が衝突し、ヒッチボールの前方に押動されるとヒッチボール支持アームが前方に揺動してクロスメンバが捩り及び座屈変形を付与し、クロスメンバの捩り及び座屈変形によってヒッチボールに入力された衝撃荷重を吸収して車体後部に作用する衝撃を緩和する。
【0036】
また、本発明のトレーラヒッチを備えた車体後部構造によると、車両等が側部リンホースの後部当接面部に衝突してリヤサイドメンバの支持部にリヤサイドメンバの軸方向に対してオフセットした衝撃荷重が付与され、リヤサイドメンバの後部支持部付近を積極的に座屈変形させて後部当接面部に入力された衝撃荷重を効率に吸収する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明に係るトレーラヒッチ及びトレーラヒッチを備えた車両後部構造の実施の形態を説明する。
【0038】
(第1実施の形態)
本発明に係るトレーラヒッチ及びトレーラヒッチを備えた車両後部構造の第1実施の形態を図1乃至図13を参照して説明する。
【0039】
図1はトレーラヒッチ20を備えた車体後部10の要部平面図、図2は図1の要部側面図、図3は図2のA部拡大図、図4は後面図である。
【0040】
車体後部10は、フロアパネル11の左右下面にそれぞれリヤサイドメンバ12が車体前後方向に延在して配置される。各リヤサイドメンバ12は、図5及び図6に図3のI−I線断面図及びII−II線断面図を示すようにアッパリヤサイドメンバ13とロアリヤサイドメンバ14によって車体前後方向に延在する中空矩形断面形状に形成される。
【0041】
アッパリヤサイドメンバ13は、前部支持部13Dを有する上面13A及びこの上面13Aの両側から下方に折曲形成された側面13B、13Cを有し、側面13B及び13Cの下端縁に沿って結合フランジ13Ba、13Caが折曲形成される。このアッパリヤサイドメンバ13の前部支持部13Dに取付孔13Daが穿設される。
【0042】
ロアリヤサイドメンバ14は、アッパリヤサイドメンバ13の上面13Aと対向すると共に前部支持部13Dから所定寸法後方に離間して設定された後部支持部14Dを有する下面14A及びこの下面14Aの両側から上方に折曲形成された側面14B、14Cを有し、側面14B及び14Cの上端縁に沿ってアッパリヤサイドメンバ13の結合フランジ13Ba、13Caに結合される結合フランジ14Ba、14Caが折曲形成される。リヤサイドメンバ14の後部支持部14Dに一対の取付孔14Da、14Dbが前後に離れて穿設される。
【0043】
この中空矩形断面形状で前後方向に延在するリヤサイドメンバ13の後端は、結合ブラケット15を介してリヤスカート16に結合される。この結合ブラケット15のリヤスカート16と当接する当接面15Aに取付孔15aが穿設される。また、リヤスカート16にはリヤサイドメンバ13内に連通する開口部16Aが開口し、かつ結合ブラケット15の取付孔15aに対応して取付孔16aが穿設される。
【0044】
次に、トレーラヒッチ20について説明する。図7はトレーラヒッチ20の概要を示す斜視図であり、図8はトレーラヒッチ20のヒッチ中央部材21の分解斜視図、図9はヒッチボール支持部材25の分解斜視図、図10はヒッチ側部材35の分解斜視図、図11は側部プレート部材41の分解斜視図、図12はトレーラヒッチ20の部分組立図であり、図12(a)はヒッチ中央部材21、(b)はヒッチボール支持部材25、(c)及び(d)はそれぞれ左右のヒッチ側部材35、(e)及び(f)はそれぞれ左右の側部プレート部材41である。
【0045】
ヒッチ中央部材21は、図8に示すように前面22A、後面22B、上面22C及び下面22Dを有する中空矩形断面形状で車幅方向に延在するクロスメンバ22と、クロスメンバ22の両端に結合される一対のクロスメンバブラケット23及びクロスメンバリンホース24を有している。クロスメンバブラケット23は、クロスメンバ22の端部に結合されてクロスメンバ22の端部を閉塞すると共に下方に円弧状に突出する板状に形成される。クロスメンバブラケット23の上部及び下部に取付孔23a、23b及び取付孔23a、23bに対応してナット23c、23dが配設される。
【0046】
クロスメンバリンホース24は、断面L字状で車幅方向に延在する板状部材であって、クロスメンバ22の車幅方向中央部において前面22A及び上面22Cに亘り結合される。仕様や要求に応じてクロスメンバリンホース24の板厚や長さ、及び形状を変更することでクロスメンバ22の剛性が容易に調整できる。
【0047】
更に、クロスメンバ22の車幅方向中央部に、クロスメンバ22から下方に垂下するヒッチボール支持アーム26及びヒッチボール部材30からなるヒッチボール支持部材25が設けられる。ヒッチボール支持アーム26は、図9に示すように上端にクロスメンバ22の前面22A、後面22B及び下面22Dに下方から嵌合する凹状に切り欠き形成された嵌合部27Aa、27Baを有し下部に係止孔27Ab、27Bbが穿設されて対向配置される一対の側部板材27A、27Bと、側部板材27Aと27Bとの間に介在する前部板材27C及び後部材27Dとにより矩形筒状に形成される。各側部板材27A及び27Bの嵌合部27Aa、27Baがクロスメンバ21に嵌合すると共に溶接されてクロスメンバ21にヒッチボール支持アーム26が強固に取り付けられる。
【0048】
更に、前後方向に延在する矩形筒状で側部板材27A、27Bの各係止孔27Ab、27Bbに対応して係止孔28b、28bが穿設されたヒッチ支持筒28が側部板材27Aと27Bの下部間に結合される。
【0049】
ヒッチボール部材30は、ヒッチ支持筒28に嵌入可能でかつヒッチ支持筒28に穿設された係止孔28b、28bに対応する係止孔31Abが穿設された支持軸31Aと、支持軸31Aの後部に結合されたヒッチボール支持部31Bとによって構成されたボールマウント31及び、ヒッチボール支持部31Bの支持孔31Baに脚部32aが挿入してヒッチボール支持部31Bに取り付けられるヒッチボール32によって構成される。
【0050】
このヒッチボール部材30は、支持軸31Aをヒッチ支持筒28に嵌入すると共に各側部板材27A、27Bの係止孔27Ab、27Bb、ヒッチ支持筒28の係止孔28b、28b及び支持軸31Aの係止孔31Abに図示しないヒッチピンを嵌挿することによってヒッチボール支持アーム26に取り付けられる。
【0051】
ヒッチ側部材35は図10に示すように、側部パネル36、側部リンホース37、閉塞パネル39及び取付ブラケット40を備える。
【0052】
側部パネル36は、その後端に形成されてヒッチ中央部材21のクロスメンバブラケット23に倣った形状でクロスメンバブラケット23の側面に重合可能なクロスメンバ取付部36Aと、クロスメンバ取付部36Aの上部前部から前方に延在する挿入部36Bと、クロスメンバ取付部36A及び挿入部36Bの上縁に沿って車幅方向外方に折曲形成されたフランジ部36Cとが一体形成されている。クロスメンバ取付部36Aにはクロスメンバブラケット23の取付孔23a、23bに対応して取付孔36Aa、36Abが穿設される。
【0053】
側部リンホース37は、側部パネル36の挿入部36Bの下縁に内側縁37Aaが沿って前後方向に延在する帯状の取付部37A及び、取付部37Aの後端に連続形成されると共に側部パネル36のクロスメンバ取付部36Aの後縁及び下縁に沿うように下方に折曲し更に前方に屈曲形成された後部当接面部37Bを有している。この側部リンホース37の取付部37Aの内側縁37Aaが側部パネル36の挿入部36Bの下縁に溶接され、かつ後部当接面部37Bの内側縁37Baが側部パネル36のクロスメンバ取付部36Aに溶接される。取付部37Bにはロアリヤサイドメンバ14の下面14Aに形成された後部支持部14Dの取付孔14Da、14Dbに対応する取付孔37a、37bが穿設され、かつ取付部37Aの上面に取付孔37a及び37bにそれぞれ対応してナット38a及び38bが取り付けられる。
【0054】
閉塞パネル39は、側部リンホース37の取付部37Aの上面が嵌合すると共に側部パネル36の挿入部36B及びフランジ部36Cが嵌合するコ字状の切欠溝39Aが形成された略矩形板状に形成される。この切欠溝39Aがクロスメンバ取付部36Aの前部近傍において側部リンホース37の取付部37A、側部パネル36の挿入部36B及びフランジ部36Cに嵌合して位置決めされた状態で、閉塞パネル39と取付部37A、挿入部36B及びフランジ部36Cが溶接される。
【0055】
取付ブラケット40は、側部リンホース37の取付部37A、側部パネル36の挿入部36B及びフランジ部36Cが貫通可能で閉塞パネル39の外周縁39aが係合可能な開口部40Aが穿設され、かつリヤスカート16に当接して開口部16Aを閉塞する形状を有する。更に取付ブラケット40には複数のリヤスカート16の取付孔16aに対応して取付孔40aが穿設されている。
【0056】
取付ブラケット40は、開口部40Aが閉塞パネル39によって閉塞された状態で閉塞パネル39の前面に重ねられ、閉塞パネル39の外周及び側部リンホース37Aの下面に溶接される。
【0057】
この側部パネル36、側部リンホース37、閉塞パネル39及び取付ブラケット40が互いに結合されて形成されたヒッチ側部材35は、その側部パネル36のクロスメンバ取付部36Aと、ヒッチ中央部材21を構成するクロスメンバブラケット23を重合し、取付ボルト33a、33bをクロスメンバ取付部36Aの取付孔36Aa、36Abから挿入してクロスメンバブラケット23の取付孔23a、23bを貫通すると共にナット23c、23dに螺合してヒッチ中央部材21のクロスメンバブラケット23に結合される。
【0058】
このように互いに一体結合されたヒッチ中央部材21と、ヒッチボール部材30と、ヒッチ側部材35とによってトレーラヒッチ20が構成される。
【0059】
側部プレート部材41は、アッパリヤサイドメンバ13の前部支持部13Dとロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14Dとの間に架設される連結部材42と、連結部材リンホース43と、後部取付部リンホース45を備えている。
【0060】
連結部材42は、アッパリヤサイドメンバ13の前部支持部13Dに取り付けられる前部結合部42Aと、ロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14Dに取り付けられる後部結合部42Bと、前部結合部42Aの後端に前側折曲部42aを介して前端が連結され後端が後側折曲部42bを介して後部結合部42Bの前端に連結されると共に前端から後端に移行するに従ってアッパリヤサイドメンバ13の上面13Aから離反しロアリヤサイドメンバ14の下面14Aに接近するように後下がりに傾斜する延在部42Cとが一体に連続形成される。
【0061】
前部結合部42Aは、前部支持部13Dの下面に当接する平板形で取付孔13Daに対応して取付孔42Aaが穿設され、かつ取付孔42Aaに対応して下面にナット42Abが設けられる。後部結合部42Bは後部支持部14Dの上面に当接する前後に長い平板状で取付孔14Da及び14Dbに対応する取付孔42Ba、42Bbが穿設される。
【0062】
延在部42Cは、前側折曲部42aを介して前端が前部結合部42Aに連続すると共に両側に沿って下方に折曲形成された補強フランジ42Daを有して剛性が確保された前部範囲42Dと、後側折曲部42bに後端が連続すると共に両側に沿って下方に折曲形成された補強フランジ42Eaを有して剛性が確保された後部範囲42Eとを有し、前部範囲42Dの後端と後部範囲42の前端が比較的脆弱な連結部42Fを介して連結される。更に、後部範囲42Eの上面に、両側に沿って補強フランジ43aが上方に折曲形成された板状の連結部材リンホース43が張設されて後部範囲42Eを補剛する。
【0063】
後部取付部リンホース45は、リヤサイドメンバ13の下面14Aに形成される後部支持部14Dに下方から当接する板状であって、後部支持部14Dに穿設された取付孔14Da及び14Dbに対応する取付孔45a、45bが穿設される。
【0064】
次に、上記のように構成された車体後部10にトレーラヒッチ20を取り付ける作業手順を説明する。
【0065】
トレーラヒッチ20の取り付けに先立って、まず車体後部10のリヤスカート16に開口する開口部16Aから、側部プレート部材41、即ち連結部材リンホース43が取り付けられた連結部材42を、その前部結合部42A側からリヤサイドメンバ12内に挿入し、前部結合部42Aを前部支持部13Dの下面に重ねると共に後部結合部42Bを後部支持部14Dの上面に重ねる。なお、連結部材42の後部範囲42Eに折曲形成される補強フランジ42Eaの先端は、その後端近傍がロアリヤサイドメンバ14の下面14Aに近接して配置される。
【0066】
このアッパリヤサイドメンバ13の前部支持部13Dに連結部材42の前部結合部42Aを重ねた状態で、取付ボルト51を前部取付支持部13Dの取付孔13Daから挿入して取付孔42Aaを貫通してナット42bに螺合して前部取付支持部13Dに連結部材42の前部結合部42Aを締結する。
【0067】
次に、トレーラヒッチ20の側面パネル36の挿入部36B及び側部リンホース37の取付部37Aをリヤスカート16の開口部16Aからリヤサイドメンバ12内に挿入して取付部37Aを連結部材42の後部結合部42Bの上面に重ねると共に、取付ブラケット40をリヤスカート16に当接させてトレーラヒッチ20を車体後部11に対して位置決めする。
【0068】
このトレーラヒッチ20が車体後部11に位置決めされた状態で、ロアリヤサイドメンバ14に形成された後部支持部14Dの下面に後部取付部リンホース45を重ねる。そして取付ボルト52を後部取付部リンホース45の取付孔45aから挿入してロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14Dの取付孔14Da、連結部材42の後部結合部42Bに穿設された取付孔42Ba、側部リンホース37の取付部37Aの取付孔37Aaを貫通させてナット38aに螺合する。同様に、取付ボルト53を後部取付部リンホース45の取付孔45bから挿入してロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14Dの取付孔14Db、連結部材42の後部結合部42Bに穿設された取付孔42Bb、側部リンホース37の取付部37Aの取付孔37Abを貫通させてナット38bに螺合させる。
【0069】
これにより互いに重ねられた後部取付部リンホース45、ロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14D、連結部材42の後部結合部42B、側部リンホース37の取付部37が取付ボルト52及び53によって共締めされて後部取付支持部14D及び側部リンホース37の取付部37Aの剛性及び結合強度が確保される。リヤサイドメンバ12の後部支持部14Dが側面パネル36、側部リンホース37及び後部取付部リンホース45によって補剛されることから、リヤサイドメンバ12における後部支持部14D付近、特に後部支持部14Dの前端に沿って剛性が急激に変化する第1座屈部12Aが形成される。この第1座屈部12Aに必要に応じて車幅方向に延在するビード12Aaが形成されて比較的脆弱に構成される。また、リヤサイドメンバ12の前部支持部13Dと後部支持部14Dと間における連結部材42の連結部42Fと対応する部分が後述する第2座屈部12Bとなり、第2座屈部12Bは第1座屈部12Aより前方に形成される。
【0070】
更に、互いに重なる結合ブラケット15の取付孔15a、リヤスカート16の取付孔16a、取付ブラケット40の取付孔40aを貫通する取付ボルト55及びナット56によって結合ブラケット15、リヤスカート16及び取付ブラケット40を共締めしてリヤサイドメンバ12の後端にトレーラヒッチ20のヒッチ側部材35を結合する。
【0071】
このように車体後部10に取り付けられたトレーラヒッチ20は、アッパリヤサイドメンバ13の前部支持部13Dに前部結合部42Aが結合された連結部材42の後部結合部42B及び後部取付部リンホース45によって補剛されたロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14Dに側部リンホース37の取付部37Aがボルト結合されると共に結合ブラケット15を介してリヤサイドメンバ12の後端に結合されて強固に車体後部11に取り付けられる。なお、この取り付け状態においてクロスメンバ22は、ほぼリヤサイドメンバ12の軸線延長上の高さ位置に配置され、側部リンホース37の後部当接面部37Bはリヤサイドメンバ12の後部支持部14Dに対し下方にオフセットして配置される。また、この後部当接面部37B及びヒッチボール32は、ほぼ車両のバンパの高さ範囲となるように設定される。
【0072】
これにより、トレーラヒッチ20によるトレーラ等の牽引時にトレーラヒッチ20に作用する牽引荷重は、トレーラヒッチ20の側部リンホース37の取付部37Aが結合されるロアリヤサイドメンバ14の後部取付支持部14D及び結合ブラケット45等によってリヤサイドメンバ12に荷重伝達されて受け止められ、リヤサイドメンバ12等を介して車体全体に有効的に分散伝達される。
【0073】
次に、後方からの追突等の後面衝突においてトレーヒッチ20に衝撃荷重が作用したときにおけるトレーラヒッチ20及び車体後部10による衝撃吸収作用について、図12に模擬的に示す作用説明図を参照して説明する。
【0074】
図12(a)は車体後部10及びトレーラヒッチ20の通常状態を示す。この通常状態において、衝突物、例えば後方から走行する車両Sによる追突等の後面衝突等が発生した際には、車体後部10に取り付けられたトレーラヒッチ20のクロスメンバ22の車幅方向中央部からヒッチボール支持アーム26を介して垂下されかつボールマウント31によって後方に突出するように配置されたヒッチボール32に車両Sが衝突する。
【0075】
この衝突によって後方から過剰の衝撃荷重がヒッチボール32に入力されたときには、その衝撃荷重の入力によって図12(b)に示すようにヒッチボール32の前方に押動されてヒッチボール支持部材25が前方に揺動する。この揺動するヒッチボール支持部材25によって、両端が各ヒッチ側部材35を介して左右のリヤサイドメンバ12に支持されて車幅方向に延在するクロスメンバ22の中央部が図7に仮想線22aで示すように捩られて座屈変形する。
【0076】
このクロスメンバ22の捩り及び座屈変形によってヒッチボール32に入力された衝撃荷重を吸収して車体後部10に作用する衝撃を緩和する。このクロスメンバ22の捩り及び座屈変形による衝撃荷重の吸収特性は、ヒッチボール支持部材25の長さやクロスメンバリンホース24の板厚や長さ、及び形状を変更することで容易に調整可能であって、予め実験やシミュレーション等に基づいて設定される。
【0077】
なお、ここでは、主にクロスメンバ22の捩れ及び座屈変形によって衝撃荷重が吸収されることから、トレーラヒッチ20のヒッチ側部材35等の損傷が少なく、ヒッチ中央部材21及びヒッチボール部材30の修正や交換等によって容易にトレーラヒッチ20が修復できる。
【0078】
一方、更に、ヒッチボール32に入力される衝撃荷重が大きく、クロスメンバ22の捩り及び座屈変形のみでは衝撃荷重が十分に吸収できないときには、トレーラヒッチ20の後部当接面部37Bと対応する車両Sの部分が、例えばバンパ等がヒッチ側部材35の側部リンホース37の後端に形成された後部当接面部37Bに衝突する。
【0079】
また、同様に、車両Sがヒッチボール32から車幅方向に偏倚したオフセット衝突の際には、車両Sがヒッチボール32に当接することなく側部リンホース37の後部当接面部37Bに衝突する。
【0080】
これらの車両Sの衝突により、車両Sからの衝撃荷重によって後部当接面部37Bが前方に押動されると、後部当接面部37Bから衝撃荷重は側部リンホース37及び側部パネル36を介して側部リンホース37の取付部37Aが結合されたロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14Dに荷重伝達されると共に、結合ブラケット45等を介してリヤサイドメンバ12の後端に荷重伝達される。
【0081】
ここで、衝撃荷重が入力される後部当接面部37Bが後部支持部14Dに対し下方にオフセット配置されることに起因して後部支持部14Dにはリヤサイドメンバ12の軸方向に対してオフセットした荷重、即ちオフセット荷重が入力される。これにより、リヤサイドメンバ12は後部支持部14D付近、より具体的には後部支持部14Dの前端に沿って形成された剛性が急変する第1座屈部12Aが座屈変形し、図11(c)に示すようにリヤサイドメンバ12の第1座屈部12Aより後方範囲が若干前方に移動すると共に側部パネル36及び側部リンホース37と共に下方に誘導される。このリヤサイドメンバ12の第1座屈部12Aの座屈変形により後部当接面部37Bに入力された衝撃荷重を効率に吸収して衝撃を緩和する。
【0082】
また、この第1座屈部12Aの座屈変形に伴う後部取付支持部14Dの前方移動に伴ってアッパリヤサイドメンバ13の前部支持部13Dに前部結合部42Aが結合されロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14Dに後部結合部42Bが結合されて前部支持部13Dと後部支持部14Dとの間に架設された連結部材42の各折曲部42a、42b及び比較的脆弱に形成された連結部42Fが折曲付与されて連結部42Fがアッパリヤサイドメンバ13の上面13A側に押し上げられる。なお、この連結部42Fがアッパリヤサイドメンバ13の上面13A側に押し上げられ方向への各折曲部42a、42b及び連結部42Fの折曲変形は、連結部材42の後部範囲42Eに形成される補強フランジ42Eaの先端がロアリヤサイドメンバ14の下面14Aによって押し上げることによって確保される。
【0083】
更に、後部当接面部37Bに入力される衝撃荷重が大きく、リヤサイドメンバ12の第1座屈部12Aの座屈変形によっては衝撃荷重が十分には吸収できないときには、後部当接部37Bが相対的に前方移動する車両Sによって更に前方に押しやられる。この後部当接部37Bの前方移動に伴って、後部当接面部37Bから衝撃荷重によって側部リンホース37及び側部パネル36を介して側部リンホース37の取付部37Aが結合されたロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14Dを前方に押動する。
【0084】
後部支持部14Dの前方移動に伴って図11(d)に示すように連結部材42の連結部42Fがアッパリヤサイドメンバ13の上面13A、より具体的には上面13Aにおける前部支持部13Dと後部支持部14Dとの中間部分14Aaに当接して該部を押し上げてリヤサイドメンバ12の前部支持部13Dの付近、特に前部支持部13Dと後部支持部14Dとの間の第2座屈部12Bを座屈変形させる。
【0085】
このリヤサイドメンバ12の第2座屈部12Bの座屈変形により後部当接面部37Bに入力された残余の衝撃荷重を効率に吸収して乗員に対する衝撃を緩和する。
【0086】
従って、本実施の形態によると、トレーラヒッチ20が、車体後部20における左右のリヤサイドメンバ12に結合されたヒッチ側部材35に両端が結合されて車幅方向に延在するクロスメンバ22を備え、クロスメンバ22の車幅方向中央部に上端が結合されて下方に垂下するヒッチ支持アーム26及びボールマウント30からなるヒッチボール支持部材25によってヒッチボール32をクロスメンバ22から下方にオフセット配置することにより、衝突等によって後方からヒッチボール32に衝撃荷重が入力されたときにはクロスメンバ22の捩り及び座屈変形によって衝撃荷重を吸収して車体後部10に作用する衝撃を有効的に緩和することができる。
【0087】
更に、リヤサイドメンバ12の上面13Aに形成した前部支持部13Dとこの前部支持部13Dから後方に離間して下面14Aに形成した後部支持部14Dとの間に連結部材42を架設すると共に、後部支持部14Dに取付部37Aが結合されて後方に延在するヒッチ側部材35の後端に後部支持部14Dに対して下方にオフセットして後部当接面部37Bを形成することにより、車両Sの衝突により後部当接面部37Bに衝撃荷重が入力されたときには、ヒッチ側部材35の後部支持部14Dにリヤサイドメンバ12の軸方向に対してオフセットした荷重入力される。その荷重入力によってリヤサイドメンバ12は後部支持部14Dの前端に沿って第1座屈部12Aが座屈変形して衝撃荷重を効率に吸収する。更に衝撃荷重が大きいときには、後部支持部14Dの前方移動に伴って屈曲変形する連結部材42の連結部42Fが上面13Aの前部支持部13Dと後部支持部14Dとの中間部分14Aaに当接して該部を押し上げてリヤサイドメンバ12の前部取付支持部13Dと後部取付支持部14Dとの間の第2座屈部12Bを座屈変形させて残余の衝撃荷重を効率に吸収することから、第1座屈部12Aの座屈変形による衝撃荷重の吸収と第2座屈部12Bの座屈変形による衝撃荷重の吸収が連続的に行われて最大衝撃荷重値を抑制しつつ効率的に衝撃荷重を吸収することができる。
【0088】
また、ヒッチ側部材35を予めそれぞれ別個に形成された比較的形状の簡素化された成形性が確保された側部パネル36、側部リンホース37、閉塞パネル39及び取り付けブラケット40を結合して構成することにより、ヒッチ側部材35の成形が容易で優れた生産性が確保できると共に、仕様等に基づいて各部材の板厚や形状変更により衝撃吸収特性を調整することができる。
【0089】
(第2実施の形態)
図14を参照して第2実施の形態を説明する。本実施の形態はリヤサイドメンバに配設される側部プレート部材の構成が第1実施の形態の側部プレート部材と異なり、他の構成は第1実施の形態と同様の構成であり、対応する部分に図1乃至図12と同一符号を付することで該部の説明を省略し、異なる構成を主に説明する。
【0090】
図14は第1実施の形態における図2と対応する側面図であり、側部プレート部材を形成する連結部材62は、アッパリヤサイドメンバ13の前部支持部13Dに取り付けられる前部結合部62Aと、ロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14Dに取り付けられる後部結合部62Bと、前部結合部62Aの後端に折曲部62aを介して前端が連結され後端が折曲部62bを介して後部結合部62Bの前端に連結されると共に前端から後端に移行するに従ってアッパリヤサイドメンバ13の上面13Aから離反しロアリヤサイドメンバ14の下面14Aに接近するように後下がりに傾斜する延在部62Cとが一体に連続形成される。延在部62Cは、その両側に沿って下方に折曲形成された補強フランジ62Caを有して剛性が確保される。
【0091】
このリヤサイドフレーム12には連結部材62の前部結合部62Aが結合される前部支持部13Dの付近に比較的剛性が急激に変化する第3屈曲部12Cが形成される。一方、連結部材62の後部結合部62Bの上面にトレーラヒッチ20を形成する側部リンホース37の取付部37Aが重ねられ、後部取付部リンホース45と共に後部支持部14Dに結合される。
【0092】
このようにトレーラヒッチ20が取り付けられた車体後部10を備えた車両に、第1実施の形態と同様に、衝突物、例えば後方から走行する車両Sによる追突等の後面衝突等が発生した際には、車体後部10に取り付けられたトレーラヒッチ20のヒッチボール32に車両Sが衝突し、その衝撃荷重の入力によってヒッチボール32の前方に押動されてヒッチボール支持部材25が前方に揺動し、クロスメンバ22の捩り及び座屈変形によってヒッチボール32に入力された衝撃荷重Pを吸収して車体後部10に作用する衝撃を緩和する。
【0093】
一方、車両Sの衝突により、車両Sからの衝撃荷重によって後部当接面部37Bが前方に押動されると、後部当接面部37Bから衝撃荷重は側部リンホース37及び側部パネル36を介して側部リンホース37の取付部37Aが結合されたロアリヤサイドメンバ14の後部支持部14Dに荷重伝達される。
【0094】
ここで、衝撃荷重が入力される後部当接面部37Bが後部支持部14Dに対し下方にオフセット配置されることに起因して後部支持部14Dにはリヤサイドメンバ12の軸方向に対してオフセット荷重が入力される。これにより、リヤサイドメンバ12は後部支持部14Dの前端に沿って形成された剛性が急変する第1座屈部12Aが座屈変形して衝撃荷重が吸収される。
【0095】
また、この第1座屈部12Aの座屈変形に伴う後部支持部14Dの前方移動に伴って前部支持部13Dに前部結合部62Aが結合されかつ後部支持部14Dに後部結合部62Bが結合されて前部支持部13Dと後部支持部14Dとの間に架設された連結部材46の各折曲部62a、62bが折曲しつつ延在部62Cを介してアッパリヤサイドメンバ13の前部支持部13Dが押し上げられ、リヤサイドフレーム12の第3座屈部12Cが座屈変形する。このリヤサイドメンバ12の第3座屈部12Cの座屈変形により後部当接面部37Bに入力された残余の衝撃荷重P1を効率に吸収して乗員に対する衝撃を緩和する。
【0096】
従って、本実施の形態によると、第1実施の形態と同様に衝突等によって後方からヒッチボール32に衝撃荷重が入力されたときにはクロスメンバ22の捩り及び座屈変形によって衝撃荷重を吸収して車体後部10に作用する衝撃を有効的に緩和することができる。
【0097】
更に、車両Sの衝突により後部当接面部37Bに衝撃荷重が入力されたときには、ヒッチ側部材35の後部取付部14Dにリヤサイドメンバ12の軸方向に対してオフセットした荷重入力され、リヤサイドメンバ12は後部支持部14Dの前端に沿って第1座屈部12Aが座屈変形して衝撃荷重を効率に吸収すると共に、後部支持部14Dの前方移動に伴って連結部材42によって前部支持部13Dが押し上げられてリヤサイドメンバ12の前部支持部13D付近の第3屈曲部12Cを座屈変形させて残余の衝撃荷重を効率に吸収することから、効率的に衝撃荷重を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第1実施の形態に係るトレーラヒッチを備えた車体後部の要部平面図である。
【図2】図1の要部側面図である。
【図3】図2のA部拡大図である
【図4】図1の後面図である。
【図5】図2のI−I線断面図である。
【図6】図2のII−II線断面図である。
【図7】トレーラヒッチの斜視図である。
【図8】トレーラヒッチのヒッチ中央部材の分解斜視図である。
【図9】ヒッチボール支持部材の分解斜視図である。
【図10】ヒッチ側部材の分解斜視図である。
【図11】側部プレート部材の分解斜視図である。
【図12】トレーラヒッチの部分組立図であり、(a)はヒッチ中央部材、(b)はヒッチボール支持部材、(c)及び(d)はそれぞれ左右のヒッチ側部材、(e)及び(f)はそれぞれ左右の側部プレート部材である。
【図13】作用説明図を参照して説明する。
【図14】第2実施の形態に係るトレーラヒッチを備えた車体後部の要部側面図である。
【図15】従来のトレーラヒッチを備えた車体後部構造の概要を示す図である。
【図16】図15のIII−III線断面図である。
【符号の説明】
【0099】
10 車体後部
11 フロアパネル
12 リヤサイドメンバ
13 アッパリヤサイドメンバ
13A 上面
13D 前部支持部
14 ロアリヤサイドメンバ
14A 下面
14D 後部支持部
20 トレーラヒッチ
21 ヒッチ中央部材
22 クロスメンバ
25 ヒッチボール支持部材
32 ヒッチボール
35 ヒッチ側部材
36 側部パネル
36A クロスメンバ取付部
36B 挿入部
37 側部リンホース
37A 取付部
37B 後部当接面部
41 側部プレート部材
42 連結部材
42a 前側折曲部
42b 後側折曲部
42A 前部結合部
42B 後部結合部
42C 延在部
42D 前部範囲
42E 後部範囲
42F 連結部
62 連結部材
62a 前側折曲部
62b 後側折曲部
62A 前部結合部
62B 後部結合部
62C 延在部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部に取り付けられてトレーラに設けられたジョイントが着脱自在に連結するトレーラヒッチにおいて、
車体左右の各リヤサイドメンバに形成された支持部にそれぞれ取付部が結合されて該各リヤサイドメンバの後端からクロスメンバ取付部が突出する左右のヒッチ側部材と、
該左右のヒッチ側部材のクロスメンバ取付部に両端が結合されて車幅方向に延在するクロスメンバと、
該クロスメンバの車幅方向中央部に上端が結合されて下方に垂下してヒッチボールを支持するヒッチボール支持部材と、
を備えたことを特徴とするトレーラヒッチ。
【請求項2】
上記ヒッチ側部材は、
後端に上記取付部より下方にオフセットして形成された後部当接面部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のトレーラヒッチ。
【請求項3】
上記ヒッチ側部材は、
上記クロスメンバ取付部を後部に備えて前後方向に延在する側部パネルと、
該側部パネルに沿って前後方向に延在すると共に前部に上記リヤサイドメンバに形成された支持部に結合される上記取付部を備え、該取付部から後方に延在した後端に下方に折曲して上記取付部より下方にオフセットした上記後部当接面が形成された側部リンホースと、
が一体結合されたことを特徴とする請求項1または2に記載のトレーラヒッチ。
【請求項4】
車体後部にトレーラに設けられたジョイントが着脱自在に連結するトレーラヒッチを備えた車体後部構造において、
上記車体後部は、それぞれ上面及び下面を有する中空矩形断面形状で車体前後方向に延在する左右のリヤサイドメンバを備え、
上記トレーラヒッチは、
上記左右の各リヤサイドメンバに形成された後部支持部にそれぞれ取付部が結合されて該各リヤサイドメンバの後端からクロスメンバ取付部が突出する左右のヒッチ側部材と、
該左右のヒッチ側部材のクロスメンバ取付部に両端が結合されて車幅方向に延在するクロスメンバと、
該クロスメンバの車幅方向中央部に上端が結合されて下方に垂下してヒッチボールを支持するヒッチボール支持部材と、
を備えたことを特徴とするトレーラヒッチを備えた車体後部構造。
【請求項5】
上記ヒッチ側部材は、
後端に上記取付部より下方にオフセットして形成された後部当接面部を備えたことを特徴とする請求項4に記載のトレーラヒッチを備えた車体後部構造。
【請求項6】
上記ヒッチ側部材は、
上記クロスメンバ取付部を後部に備えて前後方向に延在する側部パネルと、
該側部パネルに沿って前後延在すると共に前部に上記リヤサイドメンバに形成された後部支持部に結合される上記取付部を備え、該取付部から後方に延在した後端に下方に折曲して上記取付部より下方にオフセットした上記後部当接面部が形成された側部リンホースと、
が一体結合されたことを特徴とする請求項4または5に記載のトレーラヒッチを備えた車体後部構造。
【請求項7】
上記リヤサイドメンバは、上記後部支持面が上記下面に形成され、更に該後部支持部より前方に離間して上記上面に前部支持部が形成されると共に、
上記前部支持部に取り付けられる前部結合部と、後部支持部に取り付けられる後部結合部と、前部結合部の後端に前側折曲部を介して前端が連結され後端が後側折曲部を介して上記後部結合部の前端に連結される延在部とが一体形成された連結部材を備えたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のトレーラヒッチを備えた車体後部構造。
【請求項8】
上記連結部材の延在部は、
前側折曲部を介して前端が前部結合部に連続する前部範囲と、後側折曲部を介して後端が後部結合部に連続する後部範囲とを有し、前部範囲の後端と後部範囲の前端が比較的脆弱な連結部を介して連結されたことを特徴とする請求項7に記載のトレーラヒッチを備えた車体後部構造。
【請求項9】
車体後部にトレーラに設けられたジョイントが着脱自在に連結するトレーラヒッチを備えた車体後部構造において、
上記車体後部は、それぞれ上面及び下面を有する中空矩形断面形状で車体前後方向に延在する左右のリヤサイドメンバを備え、
上記トレーラヒッチは、
上記左右の各リヤサイドメンバに形成された後部支持部にそれぞれ取付部が結合されて該各リヤサイドメンバの後端から突出するクロスメンバ取付部及び上記取付部に対して下方にオフセットして形成され後部当接面を有する左右のヒッチ側部材と、
該左右のヒッチ側部材のクロスメンバ取付部に両端が結合されて車幅方向に延在すると共にヒッチボールを支持するクロスメンバと、
を備えたことを特徴とするトレーラヒッチを備えた車体後部構造。
【請求項10】
上記リヤサイドメンバは、上記後部支持面が下面に形成され、更に該後部支持部より前方に離間して上記上面に前部支持部が形成されると共に、
上記前部支持部に取り付けられる前部結合部と、後部支持部に取り付けられる後部結合部と、前部結合部の後端に前側折曲部を介して前端が連結され後端が後側折曲部を介して上記後部結合部の前端に連結される延在部とが一体形成された連結部材を備えたことを特徴とする請求項9に記載のトレーラヒッチを備えた車体後部構造。
【請求項11】
上記連結部材の延在部は、前側折曲部を介して前端が前部結合部に連続する前部範囲と、後側折曲部を介して後端が後部結合部に連続する後部範囲とを有し、前部範囲の後端と後部範囲の前端が比較的脆弱な連結部を介して連結されたことを特徴とする請求項10に記載のトレーラヒッチを備えた車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−190559(P2009−190559A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33321(P2008−33321)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】