説明

トロンビン受容体アンタゴニストおよびクロピドグレルの固定用量錠剤

本発明は、a)式(I)の化合物:SCH530348またはその重硫酸塩;b)クロピドグレル;およびc)ケイ化微結晶性セルロースを含む医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年6月8日に出願され、かつ参照により本明細書に組み入れられる米国仮特許出願第USSN第61/185,068号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、トロンビン受容体アンタゴニストのSCH530348またはその重硫酸塩をクロピドグレル(即ち、クロピドグレル重硫酸塩の遊離塩基形態)と組み合わせて含む医薬製剤、例えば二層錠剤などの錠剤に関する。
【背景技術】
【0003】
Merck & Co.Inc.は、急性冠症候群(「ACS」)の治療および二次予防を含む様々な心血管の適用で使用するトロンビン受容体アンタゴニスト(「TRA」)を開発している。活性医薬成分(「API」)はSCH530348(即ち、遊離塩基形態)および/またはSCH530348の重硫酸塩(「SCH530348重硫酸塩」)である。この化合物は第I相および第II相の臨床試験を終了し、現在第III相試験中である。
【0004】
トロンビンは異なる細胞型において多様な活性を有することが知られており、トロンビン受容体はヒトの血小板、血管平滑筋細胞、内皮細胞および線維芽細胞などの細胞型に存在することが知られている。そのため、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)アンタゴニストとしても知られるトロンビン受容体アンタゴニストは、血栓性、炎症性、アテローム性動脈硬化、および線維増殖性の疾患、ならびにトロンビンおよびその受容体が病理学的役割を果たす他の疾患の治療に有用であると見込まれる。
【0005】
米国特許第7,304,078号は、SCH530348およびSCH530348重硫酸塩を含む化合物の属を開示する(実施例2参照)。SCH530348、即ちエチル[(1R,3aR,4aR,6R,8aR,9S,9aS)−9−[(E)−2−[5−(3−フルオロフェニル)−2−ピリジニル]エテニル]ドデカヒドロ−1−メチル−3−オキソナフト[2,3−c]フラン−6−イル]カルバメートは、下記の構造
【化1】

【0006】
を有する。SCH530348の重硫酸塩は、下記の構造
【化2】

【0007】
を有する。
【0008】
SCH530348およびその重硫酸塩は、優れたトロンビン受容体アンタゴニストの活性(効力)および選択性を示す。参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2004/0192753号(USSN番号10/705,282)は、SCH530348およびその重硫酸塩を含むトロンビン受容体アンタゴニストについての様々な指摘および複合製剤を開示している。SCH530348重硫酸塩の好ましい結晶形態は、米国特許第7,235,567号に開示されている。米国特許出願公開第2008/0026050号(USSN11/771,571);同第2008/0817821号(USSN11/771,520);および同第2008/0152712号(USSN11/860,165)は、(それぞれ)SCH530348重硫酸塩のカプセル製剤、錠剤製剤、および凍結乾燥製剤、ならびに上記の投与による様々な病態の治療方法を開示している。
【0009】
様々な病態および疾病を治療するために少量のトロンビン受容体アンタゴニストを使用することが米国特許出願第04/0192753号に開示されている。トロンビン受容体アンタゴニストの投与による心肺バイパス手術に関連する合併症の予防は米国特許出願第11/613,450号に教示されている。経皮的インターベンション(「PCI」、例えば、血管形成、ステント導入)後の心臓事象を予防する方法は米国特許出願第12/051,504号に開示されている。置換トロンビン受容体アンタゴニストは米国特許第6,063,847号、同第6,326,380号、および同第6,645,987号、ならびに米国特許出願第03/0203927号、同第04/0216437A1号、同第04/0152736号、および同第03/0216437号に開示されている。本明細書で引用される全ての参照文献は、全体として組み入れられる。
【0010】
クロピドグレルは、米国特許第4,847,265号に開示され、かつADP誘導性血小板凝集の阻害剤として治療上有用であると教示される化合物である。クロピドグレル重硫酸塩としてクロピドグレルを含む錠剤は、合衆国内外でBristol−Myers Squibb and Sanofi−Aventisにより商標名PLAVIX(登録商標)で販売されている。PLAVIX(登録商標)は、アスピリンとともに、亜急性心筋梗塞、亜急性脳卒中、既存の末梢動脈疾患、および急性冠症候群などのアテローム血栓性事象の減少が認められる。
【0011】
クロピドグレルは、その遊離塩基形態において、操作および処理特性が技術的に難しい非晶質粘着性で膠状の物質である。
【0012】
2つの活性剤は、同時投与単独治療製剤としてまたは単回共製剤として送達され、特に有益な治療結果を提供する。共製剤は、個別投与の回数を減らし、投与される2つの活性剤の比率を固定するという患者コンプライアンスの利点を有する。併用療法としてSCH530348またはその重硫酸塩およびPLAVIX(登録商標)の使用は、心血管の疾患および障害の治療において優れた効用があると評価され判定された。
【0013】
SCH530348またはその重硫酸塩とクロピドグレル遊離塩基との生理化学的性質の差異は、SCH530348および/またはSCH530348重硫酸塩−クロピドグレル共製剤の開発に実質的な課題を提示する。2つの活性成分の生理化学的差異は、総合的な併用療法の効用を喪失し得る。2つの化学的に不適合な活性成分を製剤する可能な方法は、とりわけ二層錠剤として該活性成分を製剤することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,304,078号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0192753号
【特許文献3】米国特許第7,235,567号
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0026050号
【特許文献5】米国特許出願公開第2008/0817821号
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0152712号
【特許文献7】米国特許出願第04/0192753号
【特許文献8】米国特許出願第11/613,450号
【特許文献9】米国特許出願第12/051,504号
【特許文献10】米国特許第6,063,847号
【特許文献11】米国特許第6,326,380号
【特許文献12】米国特許第6,645,987号
【特許文献13】米国特許出願第03/0203927号
【特許文献14】米国特許出願第04/0216437A1号
【特許文献15】米国特許出願第04/0152736号
【特許文献16】米国特許出願第03/0216437号
【特許文献17】米国特許第4,847,265号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
異なる生理化学的性質をもつ2つの活性剤を製剤する際にこれらの重要な課題を踏まえて、とりわけ本記載から明白な本発明の目的は、SCH530348および/またはその重硫酸塩およびクロピドグレルを含み、例えば二層錠剤として製剤され、かつ該効用および説明が進むにつれ明らかになる他の効用を提供する生理学的および化学的に安定な製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の医薬製剤は、とりわけ前述の課題に対処するものである。例えば、一つの課題として、クロピドグレル遊離塩基は、非晶質であり粘着性の膠状特性であるため、製剤が非常に難しい。予混合の剤形でさえ、この物質は、例えば錠剤として容易に製剤し得る形態でない。
【0017】
SCH530348および/またはその重硫酸塩およびクロピドグレルを含む共製剤の開発における他の重要な課題は、単層錠剤製剤では、SCH530348重硫酸塩の存在下で、即ちSCH530348重硫酸塩へのクロピドグレルの相当なレベルの暴露が存在する場合、クロピドグレルが有意な分解を受けるという見解である。しかしながら、SCH530348重硫酸塩およびクロピドグレル遊離塩基が二層錠剤の2つの別個の層として圧縮される場合にクロピドグレルがより安定であることが観察されたが、クロピドグレル予混合とSCH530348重硫酸塩との生理化学的性質の差異により、安定な錠剤製剤の形成が重要な課題となる。賦形剤リストの選択、各賦形剤の量、およびそれぞれの活性成分に沿ったレシピエントの対処で用いられる技術は、薬学的に望ましい構造の錠剤完全性、錠剤のサイズ、および全般的な錠剤安定性を達成することが重要である。
【0018】
クロピドグレル遊離塩基は、薬学的に許容できる賦形剤に吸着され、クロピドグレル遊離塩基の「予混合」を生成する。このクロピドグレル予混合は、Dr.Reddy’s Laboratories LTD.から入手し、参照により全体として本明細書に組み入れられるPCT公開番号国際公開第2006/044548A2号に開示される。
【0019】
本発明は、
a)式
【化3】

【0020】
の化合物またはその重硫酸塩;
b)クロピドグレル;および
c)ケイ化微結晶性セルロース
を含む医薬組成物を提供する。
【0021】
当該製剤の例には、一層に例えばSCH530348および/またはSCH530348重硫酸塩を含み、かつ他層にクロピドグレルを含む二層錠剤などの錠剤を含む。
【0022】
本発明は乾式造粒により調製される二層医薬錠剤および錠剤の調製方法も提供し、錠剤は、(a)SCH530348および/またはSCH530348重硫酸塩、無水ラクトース、ケイ化微結晶性セルロース、クロスカルメロース・ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムの混合物;ならびにb)クロピドグレル予混合、無水ラクトース、ケイ化微結晶性セルロース、クロスカルメロース・ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムの混合物を含む。2つの混合物は、ローラー圧縮、粉砕、さらに混合ならびに混合物(a)および混合物(b)の二層錠剤圧縮に十分な機械的および物理的特質を示す。二層錠剤は、例えばColorconから入手できるOPADRY(登録商標)II膜被覆システムおよびOPADRY(登録商標)Fx(商標)膜被覆システムなどの水性膜被覆懸濁液で被覆される。ある実施形態において、本発明の製剤は一つ以上の薬学的に許容できる追加の賦形剤をさらに任意に含み得る。
【0023】
幾つかの実施形態において、本発明は、SCH530348、即ちその遊離塩基を含む医薬製剤を対象とする。
【0024】
幾つかの実施形態において、本発明はSCH530348重硫酸塩を含む医薬製剤を対象とする。
【0025】
幾つかの実施形態において、本発明はSCH539348およびSCH530348重硫酸塩を含む医薬製剤を対象とする。
【0026】
幾つかの実施形態において、本発明は、
【化4】

【0027】
およびクロピドグレルおよびケイ化微結晶性セルロースを含む医薬錠剤を対象とする。
【0028】
幾つかの実施形態において、本発明は二層錠剤である医薬錠剤を対象とする。
【0029】
幾つかの実施形態において、本発明はSCH530348重硫酸塩を含む第一層およびクロピドグレルを含む第二層を含む医薬錠剤を対象とする。
【0030】
幾つかの実施形態において、二層錠剤は一つ以上の他の賦形剤をさらに含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、前記第一層の他の賦形剤は、無水ラクトース、ケイ化微結晶性セルロース、クロスカルメロース・ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムからなる群から選択され、第二層の賦形剤は、ブチル化ヒドロキシアニソール、マンニトール、無水ラクトース、微結晶性セルロース、二酸化ケイ素、ケイ化微結晶性セルロース、クロスカルメロース・ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される。
【0032】
幾つかの実施形態において、医薬製剤は被覆される。
【0033】
幾つかの実施形態において、本発明は、心血管病態の治療方法であって、SCH530348および/またはその重硫酸塩、クロピドグレルおよび微結晶性セルロースを含む有効量の医薬組成物を当該治療を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む方法を対象とする。
【0034】
幾つかの実施形態において、本発明は有効量のSCH530348重硫酸塩−クロピドグレル二層錠剤を心血管病態の治療を必要とする哺乳動物に投与する工程を含む当該病態の治療方法を対象とする。
【0035】
幾つかの実施形態において、心血管病態は、急性冠症候群、末梢動脈疾患、血栓症、アテローム性動脈硬化、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓性脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、および脳虚血からなる群から選択される。
【0036】
幾つかの実施形態において、心血管病態は急性冠症候群である。
【0037】
幾つかの実施形態において、心血管病態は末梢動脈疾患である。
【0038】
幾つかの実施形態において、本発明は、冠動脈バイパス移植手術に関連する病態の予防であって、SCH530348および/またはその重硫酸塩、クロピドグレルおよび微結晶性セルロースを含む有効量の医薬製剤を該手術の被験体に投与する工程を含む予防を対象とする。
【0039】
幾つかの実施形態において、本発明は、冠動脈バイパス移植手術に関連する病態の予防であって、有効量のSCH530348重硫酸塩−クロピドグレル二層錠剤を該手術の被験体に投与する工程を含む予防を対象とする。
【0040】
幾つかの実施形態において、冠動脈バイパス移植手術に関連する病態は、出血;血栓症、再狭窄などの血栓性血管事象;静脈生着不全;動脈生着不全;アテローム性動脈硬化、狭心症;心筋虚血;急性冠症候群、心筋梗塞;心不全;不整脈;高血圧;一過性脳虚血発作;大脳機能障害;血栓塞栓性脳卒中;脳虚血;脳梗塞;血栓性静脈炎;深部静脈血栓症;および末梢血管疾患からなる群から選択される。
【0041】
幾つかの実施形態において、本発明は、経皮冠動脈インターベンションを受けた患者および主な心臓事象の予防を必要とする患者において該事象を予防する方法であって、SCH530348および/またはその重硫酸塩、クロピドグレルおよび微結晶性セルロースを含む有効量の医薬製剤を投与する工程を含む方法を対象とする。
【0042】
幾つかの実施形態において、本発明は、経皮冠動脈インターベンションを受けた患者および主な心臓事象の予防を必要とする患者において事象を予防する方法であって、有効量のSCH530348重硫酸塩−クロピドグレル二層錠剤を患者に投与する工程を含む方法を対象とする。
【0043】
幾つかの実施形態において、主な心臓事象は、心筋梗塞、緊急血管再生、または入院を要する虚血である。
【0044】
幾つかの実施形態において、二層錠剤は、二層錠剤の一層に約2.5mgに相当する量のSCH530348重硫酸塩、および二層錠剤の第二層に約75mgに相当する量のクロピドグレルを提供する。
【0045】
幾つかの実施形態において、圧縮助剤はケイ化微結晶性セルロースである。
【0046】
幾つかの実施形態において、圧縮助剤は無水ラクトースである。
【0047】
幾つかの実施形態において、ケイ化微結晶性セルロースと無水ラクトースとの比率は3:1である。
【0048】
幾つかの実施形態において、結合剤はヒドロキシプロピルセルロースEXFである。
【0049】
幾つかの実施形態において、崩壊剤はクロスカルメロース・ナトリウムである。
【0050】
幾つかの実施形態において、潤滑剤はステアリン酸マグネシウムである。
【0051】
幾つかの実施形態において、副次被覆はOPADRY(登録商標)IIOrangeである。
【0052】
幾つかの実施形態において、最外被覆OPADRY(登録商標)Fx(商標)Yellowである。
【0053】
幾つかの実施形態において、被覆は一段階OPADRY(登録商標)Fx(商標)被覆である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】SCH530348重硫酸塩−クロピドグレル二層錠剤の製造の工程流れ図(2.5mg/75mg)。
【図2】SCH530348重硫酸塩の存在下におけるクロピドグレル分解を示す棒グラフ図であって、遊離塩基形態のSCH530348と比較して示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載するものと類似または等価な方法および物質が本発明の実施または試験で使用できるが、適切な方法および物質は以下に記載する。物質、方法および実施例は、例に過ぎず、限定する意図はない。本明細書で記す全ての刊行物、特許および他の文書は、参照により全体として組み入れられる。SCH417891への参照はいずれもクロピドグレル予混合である。SCH900423への参照はいずれもSCH530348−クロピドグレル二層(2.5mg/75mg)錠剤である。
【0056】
上記で用いられるように、この開示を通して、下記の用語は、他に指示されない限り、下記の意味を有する特異的理解されるべきである。
【0057】
「患者」はヒトおよび動物の両方を含む。
【0058】
「哺乳類」とはヒトおよび他の哺乳動物を意味する。
【0059】
「造粒」とは、粉末粒子を、活性医薬成分を含む大きな顆粒に凝集する方法を指す。
【0060】
「乾式造粒」とは、粉末状出発物質に液体を添加しない段階、攪拌、および固体剤形を得るための乾燥という段階を含む任意の方法を指す。得られる粒状薬物製品は、さらに種々の最終剤形に、例えばカプセル、錠剤、ウエハース、ゲル、トローチ剤等に加工され得る。
【0061】
乾式造粒法の原料は通常粉末形の活性医薬成分であるが、ペースト形でもあり得る。粉末またはペーストの剤形は粉砕により生成し得るが、粉砕段階に起因する粒径分布は製剤の特性に影響を及ぼし得る。活性医薬成分は、結合剤、崩壊剤、充填剤または潤滑剤などの他の賦形剤と混合し、粉末混合物にされ得る。
【0062】
造粒を粉末混合物に適用した後、粉末状粒子を顆粒に凝集させるために十分な攪拌を施し、顆粒は乾燥し製粉する。製粉後、追加賦形剤が添加され最終混合物を生成し得る。当該追加賦形剤は、結合剤、崩壊剤、充填剤および潤滑剤を含み得る。次いで、例えば錠剤などの最終混合物は所望の固体剤形に圧縮される。
【0063】
本発明の医薬製剤は、例えば下記の乾式造粒方法を用いて調製できる。
【0064】
SCH530348重硫酸塩層の加工
段階1。1/5のSCH530348重硫酸塩と無水ラクトース、ケイ化微結晶性セルロース、クロスカルメロース・ナトリウムおよびヒドロキシプロピルセルロースとを5分間混合し、さらに1/5の追加SCH530348重硫酸塩を毎回添加しながら4回反復し、A混合物を生成する。
【0065】
段階2。ステアリン酸マグネシウムをA混合物に混合する。
【0066】
段階3。段階2の混合物をローラー圧縮し、顆粒に製粉する。
【0067】
段階4。残りのステアリン酸マグネシウムを段階3の顆粒と混合する。
【0068】
乾式造粒によるクロピドグレル層の加工
段階1。得られるクロピドグレル予混合(遊離塩基形態の非晶質クロピドグレル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、マンニトール、無水ラクトース、微結晶性セルロース、および二酸化ケイ素を含む)の1/2と無水ラクトース、ケイ化微結晶性セルロース、およびクロスカルメロース・ナトリウムを5分間混合し、得られたクロピドグレル予混合の残り1/2を添加した後反復し混合物Bを生成する。
【0069】
段階2。ステアリン酸マグネシウムをB混合物と混合する。
【0070】
段階3。段階2の混合物をローラー圧縮し、顆粒に製粉する。
【0071】
段階4。残りのステアリン酸マグネシウムを段階3の顆粒と混合する。
【0072】
二層圧縮
SCH530348重硫酸塩層をクロピドグレル層と圧縮し二層錠剤を得てOPADRY(登録商標)II懸濁液およびOPADRY Fx(登録商標)懸濁液で被覆する。
【0073】
実施例
(1)本発明の製剤は上記のように調製し表1−1から1−3に記載した。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【0074】
(2)クロピドグレル予混合の物理的性質
クロピドグレル遊離塩基の粘着特質により、得られる予混合の流動性および圧縮率性は乏しい。表2に要約するように予混合の流動および圧縮率を高めるために3つの異なる賦形剤を査定した。表2は、ケイ化微結晶性セルロース(SMCC)が、微結晶性セルロース(MCC)単独およびMCCと二酸化ケイ素(SiO)の物理的混合との両方と比較した場合、有意に優れた流動特性を有することを実証する。これらの結果に基づいて、予混合の流動および圧縮率を向上させるSMCCの二元機能のため、圧縮助剤としてMCCおよびMCCとSiOの混合物よりSMCCを選択した。
【表2】

【0075】
(3)クロピドグレル予混合の化学的性質
a.湿熱下での化学的安定性
インド(India)のDr.Reddy’s Labで作成された強制分解データに基づき、クロピドグレルは2つの主要経路:酸化(環状アミド誘導体)および反転(R−鏡像異性体)を経て、熱、湿度および酸素に曝すと分解されやすいことを確証した。クロピドグレルの他の分解産物には、デヒドロ−(酸化的分解)およびピリジニウム分解生成物を含む。上記の分解産物の構造はスキーム1で以下に示す。
【0076】
従って、低水分含量の賦形剤(例えば、無水ラクトース対ラクトース一水和物)が製剤開発に選択された。さらに、乾式造粒は、湿式造粒とは対照的な選択の方法として確定され、加工中にクロピドグレル予混合を高温多湿に曝すことを制限した。
【0077】
b.530348重硫酸塩の存在下における化学的不安定性
クロピドグレル予混合と530348重硫酸塩との適合性研究は単層対二層錠剤の適合性を判断するために実施した。適合性結果に基づいて、530348はクロピドグレルの存在下で安定だが(データ示さず)、クロピドグレルは分解することが結論付けられた。クロピドグレルは酸性およびアルカリ性条件下で分解することが知られている。530348重硫酸塩が酸性微環境を提示する結果としてクロピドグレルが分解するという仮説を立てた。この仮説を検証するため、上記の研究は530348遊離塩基の存在下で反復した。これらの結果(図2)は、530348遊離塩基の存在下と比較した場合に、クロピドグレル分解の程度が重硫酸塩の存在下でより大きいことを明白に証明する。従って、530348重硫酸塩からクロピドグレルを分離することがクロピドグレルの安定性に必要であると結論付けられた。この結論に基づいて、2活性物間の分離程度が異なる試作錠剤を製造し、安定性について試験した。
【0078】
(4)試作製剤
活性物間の分離程度が異なる3つの試作製剤は下記の通りに開発された:
1.単一造粒単層錠剤
2.「分離造粒」錠剤と呼ばれる分離造粒(個別に造粒される530348重硫酸塩およびクロピドグレル)単層錠剤
3.二層錠剤
これらの3試作品の組成物は、530348重硫酸塩を含まない試作錠剤の組成物とともに表3に示す。530348重硫酸塩を含まない錠剤製剤を開発する目的は、錠剤賦形剤単独の存在下でのクロピドグレルの安定性を評価するためであった。従って、530348重硫酸塩を含まない錠剤は、530348重硫酸塩単独による不安定性対該製剤および方法による不安定性の差異を認める。
【表3】

【0079】
(5)上記試作品の安定性は、調和国際会議(「ICH」)長期、ICH中期、およびICH促進条件、ならびに50℃で50mL誘導−密閉高密度ポリエチレン(HDPE)ビンを1月後に評価した。データは表4に示す。
【表4】

【0080】
表4からの40℃/75%RHおよび50℃の結果に基づき、二層錠剤が単層試作品のいずれよりも安定であると結論付けられる。従って、二層錠剤はさらなる開発に可能な手段として選択された。
【0081】
錠剤を含む初期容器に乾燥剤を追加できる。
【0082】
(6)本発明の製剤の安定性(以下の表5参照)は、40℃の温度および相対湿度75%で3月期間にわたって、Bristol−Myers SquibbまたはSanofi−Aventisから市販されているPLAVIX(登録商標)と比較した。安定性のデータは表6および7に示す。
【表5】

【表6】

【表7】

【0083】
データは、表5に提示する製剤がPLAVIX(登録商標)と比較してより高いクロピドグレルの安定性を提供することを示す。
【0084】
通常使用される結合剤には、デンプン、ゼラチン化前デンプン、アカシア、ポリビニルピロリドン(「PVP」)、ヒドロキシプロピルセルロース(「HPC」)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(「HPMC」)またはこれらの任意の組み合わせを含む。本発明において、結合剤は固体剤形の約2重量%から約10重量%を含むことが好ましい。
【0085】
崩壊剤は、口腔および/または胃腸管で流体に曝された後の錠剤の膨張および崩壊を促進するために使用される。通常使用される崩壊剤は、デンプン、微結晶性セルロース、不溶性イオン交換樹脂、グリコール酸デンプンナトリウム、クロスカルメロース・ナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、クロスポビドン、ならびに寒天、グアーおよびキサンタンを含むゴムを含む。本発明において、崩壊剤は固体剤形の約5重量%から約10重量%を含むことが好ましい。
【0086】
潤滑剤は、粉末の流動性を促進し、錠剤刻印面と錠剤刻印機の摩擦および錠剤表面と型壁の摩擦を減らすために使用される。最もよく使用される潤滑剤には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウム、および安息香酸ナトリウムがある。本発明において、潤滑剤は固体剤形の0.25重量%から2重量%を含むことが好ましい。
【0087】
充填剤および圧縮助剤は、バルクを提供し、活性医薬成分と結合し得るため、分離の可能性を低減し、含量均一性を促進する。通常使用される充填剤は、微結晶性セルロース、デンプン、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、ラクトース、ソルビトール、およびマンニトールを含む。本発明において、充填剤は固体剤形の5重量%から75重量%を含むことが好ましい。
【0088】
被覆剤は化粧目的で使用され、膜被覆は剤形の嚥下能に役立つ。本発明において、被覆剤は固体剤形の1重量%から5重量%を含むことが好ましい。
【0089】
防湿包装物質は、例えばアルミホイル・ブリスター包装または高密度ポリエチレン(HDPE)ビンを含む。
【0090】
本発明の製剤は、約2.5mgの量で上記のSCH530348および/またはSCH530348重硫酸塩、および約75mgの量で上記のクロピドグレルを含むことが好ましい。
【0091】
効能効果
幾つかの実施形態において、本発明は、急性冠症候群もしくは末梢動脈疾患の治療方法、または治療を必要とする患者に医薬製剤を経口投与することにより二次予防を要する患者を治療する方法を対象とする。
【0092】
トロンビン受容体アンタゴニストは米国特許出願公開第2004/0192753号において様々な心血管病態の治療に有用な剤として開示されている。従って、SCH530348重硫酸塩−クロピドグレル二層錠剤が有用な心血管病態の中には下記がある:急性冠症候群、末梢動脈疾患、血栓症、アテローム性動脈硬化、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓性脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、および脳虚血、深部静脈血栓症、静脈血栓栓塞症、ホルモン補充治療に関連する心血管病、播種性血管内凝固症候群、腎虚血、脳卒中、脳梗塞、片頭痛、腎血管恒常性および勃起障害。
【0093】
「二次予防」とは、潜在的に将来深刻な、おそらく致死的な他の心血管事象または脳血管事象を予防するための心臓発作または脳卒中などの有意な心血管事象を既に患う患者の治療を指す。
【0094】
トロンビン受容体アンタゴニストは、米国特許出願公開第2007/0202140号に記載されるように、心肺バイパス手術に関連する心血管事象の予防に有用であり得る。SCH530348重硫酸塩−クロピドグレル二層錠剤は当該用途にとりわけ効果的な剤であり得る。従って、本発明は、冠動脈バイパス移植手術に関連する病態を予防する方法であって、SCH530348重硫酸塩−クロピドグレル二層錠剤を該手術の被験者に投与する工程を含む方法を対象とする。
【0095】
幾つかの実施形態において、病態は、出血;血栓症、再狭窄などの血栓性血管事象;静脈生着不全;動脈生着不全;アテローム性動脈硬化、狭心症;心筋虚血;急性冠症候群、心筋梗塞;心不全;不整脈;高血圧;一過性脳虚血発作;大脳機能障害;血栓塞栓性脳卒中;脳虚血;脳梗塞;血栓性静脈炎;深部静脈血栓症;および末梢血管疾患からなる群から選択される。
【0096】
非緊急性経皮冠動脈インターベンションを受ける患者における出血事象の危険性を制御するためのトロンビン受容体アンタゴニストの使用は、米国特許出願公開第2008/0234236号に開示されている。従って、経皮冠動脈インターベンションを受けた患者における主な心血管事象(例えば、心筋梗塞、緊急血行再建、または入院を要する虚血)を予防する方法であって、SCH530348および/またはSCH530348重硫酸塩、クロピドグレルおよびケイ化微結晶性セルロースを含む医薬組成物、例えばSCH530348重硫酸塩−クロピドグレル二層錠剤などを患者に投与する工程を含む方法は、本発明の範囲内にある。PCIに関連し得るまたは関連し得ないTRAP誘導性血小板凝集を阻害する方法も本発明の範囲内にある。
【0097】
本発明は上記の特定の実施形態とともに説明したが、その多数の代替案、変更および変形は当業者に明白であろう。当該代替案、変更、および変形の全てが本発明の精神および範囲内に収まると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式
【化1】

の化合物またはその重硫酸塩;
b)クロピドグレル;および
c)ケイ化微結晶性セルロース
を含む医薬製剤。
【請求項2】
錠剤である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
該化合物がSCH530348である、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
【化2】

およびクロピドグレルおよびケイ化微結晶性セルロースを含む医薬錠剤。
【請求項5】
前記錠剤が二層錠剤である、請求項4に記載の錠剤。
【請求項6】
SCH530348重硫酸塩を含む第一層およびクロピドグレルを含む第二層を含む、請求項5に記載の二層錠剤。
【請求項7】
一つ以上の賦形剤をさらに含む、請求項6に記載の二層錠剤。
【請求項8】
前記第一層の該賦形剤が、無水ラクトース、ケイ化微結晶性セルロース、クロスカルメロース・ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースおよびステアリン酸マグネシウムからなる群から選択され、前記第二層の該賦形剤が、ブチル化ヒドロキシアニソール、マンニトール、無水ラクトース、微結晶性セルロース、エアロゾル、ケイ化微結晶性セルロース、クロスカルメロース・ナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される、請求項7に記載の二層錠剤。
【請求項9】
前記第一層のSCH530348重硫酸塩の量が約2.5mgであり、前記第二層のクロピドグレルの量が約75mgである、請求項6に記載の二層錠剤。
【請求項10】
請求項1に記載の有効量の該医薬製剤を心血管治療の必要がある哺乳動物に投与する工程を含む、心血管病態の治療方法。
【請求項11】
請求項4に記載の有効量の該錠剤を心血管治療の必要がある哺乳動物に投与する工程を含む、心血管病態の治療方法。
【請求項12】
前記心血管病態が、急性冠症候群、末梢動脈疾患、血栓症、アテローム性動脈硬化、再狭窄、高血圧、狭心症、不整脈、心不全、心筋梗塞、糸球体腎炎、血栓性脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、および脳虚血からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
冠動脈バイパス移植手術に関連する病態の予防方法であって、請求項4に記載のいずれかの錠剤を前記手術の対象に投与する工程を含む方法。
【請求項14】
経皮冠動脈インターベンションを受けた患者および主な心血管事象の予防を必要とする患者において前記事象を予防する方法であって、請求項4に記載の有効量の錠剤を前記患者に投与する工程を含む方法。
【請求項15】
防湿包装物質で包装された請求項4に記載の二層医薬錠剤。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−529431(P2012−529431A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514219(P2012−514219)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/037581
【国際公開番号】WO2010/144339
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(596129215)メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション (785)
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
【住所又は居所原語表記】One Merck Drive,Whitehouse Station,New Jersey 08889,U.S.A.
【Fターム(参考)】