説明

トンネルの構築方法

【課題】拡縮変断面施工時に隣接するトンネル同士の接続幅を短くして、接続工の簡略化及び施工の安全性向上を図ることのできるトンネルの構築方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2台のシールド掘進機12、16にて少なくとも2本のトンネル18を隣接して構築し、各トンネル18間の地山を掘削してトンネル18同士を接続するトンネルの構築方法であって、各シールド掘進機12、16は、隣り合うシールド掘進機12、16との対向面がほぼ平行な傾斜面38、48として形成され、各トンネル18は、各シールド掘進機12、16を傾斜面38、48に沿って相対的に移動させることにより拡縮変断面トンネルを構築可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡縮変断面トンネルを非開削で構築可能なトンネルの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの構築方法として、例えば、ほぼ四角形断面のシールド掘進機により地中に複数のトンネルを掘削形成し、該トンネルを軸線方向に複数並設して無端状に連結・止水して、任意形状の連続構造体を構築した後、この連続構造体の内側を掘削して地下空間を構築することが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2633026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなトンネルの構築方法にあっては、躯体幅が変断面となる場合、隣接するトンネル間の距離(接続部幅)を徐々に拡縮していき、シールド掘進機1台分の距離になった状態で、その間にシールド掘進機を挿入またはその間にあったシールド掘進機を脱出させることで、変断面に対応するようにしている。
【0004】
しかし、このようなトンネルの構築方法にあっては、隣接するトンネル間に拡縮幅を確保してからシールド掘進機をトンネル間に挿入、脱出することで拡縮変断面に対応するため、隣接するトンネル間の最大接続幅がシールド掘進機1台分より大きな幅となり、隣接するトンネル同士の接続工が重構造化し、施工の安全性向上も図りにくいものである。
【0005】
本発明の目的は、拡縮変断面施工時に隣接するトンネル同士の接続幅を短くして、接続工の簡略化及び施工の安全性向上を図ることのできるトンネルの構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)前記目的を達成するため本発明のトンネルの構築方法は、少なくとも2台のシールド掘進機にて少なくとも2本のトンネルを隣接して構築し、各トンネル間の地山を掘削してトンネル同士を接続するトンネルの構築方法であって、前記各シールド掘進機は、隣り合うシールド掘進機との対向面がほぼ平行な傾斜面として形成され、前記各トンネルは、前記各シールド掘進機を前記傾斜面に沿って相対的に移動させることにより拡縮変断面トンネルを構築可能としたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、各シールド掘進機を対向するほぼ平行な傾斜面に沿って相対的に移動させることにより、各シールド掘進機間の間隔、すなわち接続幅を小さくかつほぼ一定に保ったまま、少なくとも2つのトンネルの幅方向の長さを拡縮することができ、接続工の簡略化及び施工の安全性向上を図った拡縮変断面トンネルを構築することができる。
【0008】
(2)本発明においては、(1)において、前記各シールド掘進機により、水平方向及び垂直方向の少なくとも一方での拡縮変断面トンネルを構築可能とすることができる。
【0009】
このような構成とすることにより、水平方向及び垂直方向の少なくとも一方における拡縮変断面のトンネルの構築を行うことが可能となる。
【0010】
(3)本発明においては、(2)において、前記各シールド掘進機により、水平方向での拡縮変断面トンネルを構築した後、トンネル内から下方の地山内に土留壁を構築し、前記トンネル及び土留壁に囲まれた地山を掘削して断面の大きなトンネルを構築するようにできる。
【0011】
このような構成とすることにより、水平方向で拡縮した拡縮変断面トンネルを容易に形成することができる。
【0012】
(4)本発明においては、(2)において、前記各シールド掘進機により、水平方向及び垂直方向での拡縮変断面トンネルを構築した後、水平方向及び垂直方向での拡縮変断面トンネルに囲まれた地山を掘削して断面の大きなトンネルを構築することができる。
【0013】
このような構成とすることにより、水平方向及び垂直方向で拡縮したトンネルに囲まれた閉断面の拡縮変断面トンネルを容易に形成することができる。
【0014】
(5)本発明においては、(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記シールド掘進機は、両側面が傾斜面として形成することができる。
【0015】
このような構成とすることにより、両側に隣接するトンネルを構築する場合に、両方向に容易に拡縮することができる。
【0016】
(6)本発明においては、(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記シールド掘進機は、一側面が傾斜面として形成することができる。
【0017】
このような構成とすることにより、片側に隣接するトンネルを構築する場合に、端部位置のトンネル構築に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1〜図22は、本発明の一実施の形態にかかるトンネルの構築方法を示す図である。
【0020】
図1は、本実施の形態におけるトンネルの構築方法により構築した拡縮変断面トンネルの平面図で、図2は図1のII−II線に沿う断面図、図3はIII−III線に沿う断面図、図4はIV−IV線に沿う断面図、図5はV−V線に沿う断面図、図6はVI−VI線に沿う断面図、図7はVII−VII線に沿う断面図である。
【0021】
この拡縮変断面トンネル10は、図1の右側から左側に向けて徐々に拡幅された状態になっている。
【0022】
図2は、最もトンネル幅の狭い状態となっており、この状態では、上部側に中間部用のシールド掘進機12を横方向に3台隣接させ、その両側に端部用のシールド掘進機14を2台隣接させると共に、下部側に中間部用のシールド掘進機12を上下逆にした形状のシールド掘進機16を上部側の各シールド掘進機12、14間に入り込んだ状態で横方向に隣接させて配置した状態で、掘進を行い9本のトンネル18を最も近接させた状態で構築するようにしている。
【0023】
上部側の両端部のトンネル18及び中央のトンネル18内から下方の地山20に向けて土留壁22が構築され、9本のトンネル18が所定の厚さtで連結されて頂壁部24が構築された状態で、頂壁部24下方の地山を掘削して側壁部26及び底壁部28を構築することで大断面のトンネル30が構築されるようになっている。
【0024】
中間部用のシールド掘進機12は、図8及び図9に示すように、円形のシールドカッタ32を有する面板34の上両側部に他のシールドカッタ36を有するほぼ逆台形状とされ、両側部が所定角度θで傾斜する下向きの傾斜面38として形成されている。
【0025】
また、シールド掘進機12内には、図10に示すように、面板34を回転させる駆動モータ40、シールドジャッキ42、セグメント組立用のエレクター44等が配設されている。
【0026】
端部用のシールド掘進機14は、図11及び図12に示すように、円形のシールドカッタ32を有する面板46の一方の上側部及び他方の下側部に他のシールドカッタ36を有し、片側側部が所定角度θで傾斜する下向きの傾斜面38として形成されている。
【0027】
下部側のシールド掘進機16は、両側部が所定角度θで傾斜する下向きの傾斜面48として形成され、この傾斜面48が上部側のシールド掘進機12、14間に入り込んで、これらのシールド掘進機12、14の傾斜面38とほぼ平行に対向する状態となっている。
【0028】
また、図2の場合には、図13(A)に示すように、シールド掘進機12、14とシールド掘進機16間の距離L1は最も短い状態となっており、傾斜面38と傾斜面48との間には所定の間隔Sが設けられた状態となっており、シールド掘進機12、14とシールド掘進機16との高さが中心差H1となっている。
【0029】
図3は、図2の状態よりも拡幅した状態となっている。
【0030】
この場合、図13(B)に示すように、上部側のシールド掘進機12、14とシールド掘進機16間の距離L1から距離L2分広げると共に、シールド掘進機12、14とシールド掘進機16との高さを相対的に移動させて高さを中心差H2に近接させるようにしている。
【0031】
したがって、傾斜面38と傾斜面48との間には所定の間隔Sが確保された状態となり、トンネル18同士の接続距離は変化せず、接続工の簡略化及び安全性の確保が可能となる。
【0032】
図4は、図3の状態から拡幅施工を行わず掘進しており、図3の状態と変化は生じていない。
【0033】
図5は、図4の状態よりも拡幅した状態となっている。
【0034】
この場合、図13(B)と同様に、上部側のシールド掘進機12、14とシールド掘進機16間の距離を図4の状態から広げると共に、シールド掘進機12、14とシールド掘進機16との高さを相対的に移動させて高さを近接させるようにしている。
【0035】
したがって、傾斜面38と傾斜面48との間には所定の間隔Sが確保された状態となる。
【0036】
図6は、図5の状態よりもさらに拡幅した状態となっている。
【0037】
この場合、図13(C)に示すように、上部側のシールド掘進機12、14とシールド掘進機16間の距離L1から距離L3分広げると共に、シールド掘進機12、14とシールド掘進機16との高さを相対的に移動させて高さを中心差H3になるように移動させるようにしている。
【0038】
したがって、傾斜面38と傾斜面48との間には所定の間隔Sが確保された状態となる。
【0039】
図7は、図6の状態よりもさらに拡幅した状態となっている。
【0040】
この場合、図13(D)に示すように、上部側のシールド掘進機12、14とシールド掘進機16間の距離L1から距離L4分広げると共に、シールド掘進機12、14とシールド掘進機16との高さを相対的に移動させて高さを中心差H4になるようにしている。
【0041】
したがって、傾斜面38と傾斜面48との間には所定の間隔Sが確保された状態となる。
【0042】
次に、このようなトンネルの構築方法の一例について、図14〜図22を参照して説明する。
【0043】
まず、図14に示すように、大断面のトンネル30の頂壁部24形成位置で、4台の下部側のシールド掘進機16を所定間隔、上部側のシールド掘進機12、14相当の間隔をあけて掘進させ手下部側の4本のトンネル18(図15参照)を形成する。
【0044】
次に、図15に示すように、下部側の4本のトンネル18間で、互いの傾斜面38、48を平行に所定間隔をもって対向させた状態で上部側の中間部のシールド掘進機12を掘進させて上部側の中間部のトンネル18を下部側のトンネル18(図16参照)に隣接させて形成する。
【0045】
次いで、図16に示すように、上部側の端部のシールド掘進機14を、その傾斜面38が下部側のトンネル18の傾斜面48と平行に所定間隔で対向させて掘進し、両端部のトンネル18(図17参照)を形成する。
【0046】
次に、図17に示すように、上部側のトンネル18内から土留工を行って、下方の地山20内に土留壁22を構築すると共に、仮設支持杭50を施す。
【0047】
次いで、図18に示すように、トンネル18内から各トンネル18の隣接部付近の地盤改良を行って止水処理を施した後、各トンネル18内からトンネル18間の地山を掘削して各トンネル18の接続工を行う。
【0048】
次に、各トンネル18に連続する配筋を行った後、コンクリートを打設して頂壁部24を構築する。
【0049】
次いで、図20に示すように、頂壁部24下方の地山20を掘削して、トンネル18を形成している余分な鋼殻を撤去する。
【0050】
次に、図21に示すように、配筋を行って、コンクリートを打設して側壁部26、底壁部28及び中壁部52を構築する。
【0051】
そして、図22に示すように、仮設支持杭50を撤去すれば、大断面のトンネル30の施工が完了することとなり、このような工程を繰り返しながら、その都度、必要に応じてシールド掘進機12、14、16により拡縮施工を行っていけば、簡略な接続工により安全に拡縮変断面トンネルを構築することが可能となる。
【0052】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0053】
例えば、前記実施の形態では、シールド掘進機により形成した複数のトンネルを連結して大断面のトンネルの頂壁部を構築し、トンネル内より下方の地山に土留壁を構築して頂壁部下方の地山を掘削して大断面のトンネルを構築する場合について説明したが、この例に限らず、各シールド掘進機により、水平方向及び垂直方向での拡縮変断面トンネルを構築した後、水平方向及び垂直方向での拡幅断面トンネルに囲まれた地山を掘削して断面の大きなトンネルを構築することで、水平方向及び垂直方向で拡縮したトンネルに囲まれた閉断面の拡縮変断面トンネルを容易に形成することができる。
【0054】
また、前記実施の形態では、隣接するシールド掘進機の対向面である両側壁または一側壁全体を傾斜面として形成したが、その一部のみを傾斜面として形成することも可能である。
【0055】
さらに、本実施の形態では9台のシールド掘進機により拡幅変断面を構築するようにしているが、この例に限らず、少なくとも2台のシールド掘進機にて少なくとも2本のトンネルを隣接して構築する場合に適用可能である。
【0056】
また、各シールド掘進機により、水平方向及び垂直方向の少なくとも一方での拡縮変断面トンネルを構築可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態にかかるトンネルの構築方法により構築した拡縮変断面トンネルの平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図1のV−V線に沿う断面図である。
【図6】図1のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図1のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】上部側の中間部のシールド掘進機の正面図である。
【図9】図8の背面図である。
【図10】図8及び図9の縦断面図である。
【図11】上部側の端部のシールド掘進機の正面図である。
【図12】図11の背面図である。
【図13】(A)〜(D)は、それぞれ最小掘削幅から最大掘削幅に至る拡幅施工状態を示す説明図である。
【図14】本実施の形態のトンネルの構築方法において、下部側のシールド掘進機により掘進する状態を示す断面図である。
【図15】図14の掘進終了後、上部側の中間部のシールド掘進機により掘進する状態を示す断面図である。
【図16】図15の掘進終了後、上部側の端部のシールド掘進機により掘進する状態を示す断面図である。
【図17】図16の状態から土留工及び仮設支持杭工を行う状態を示す断面図である。
【図18】図17の状態からトンネルの接続工を行う状態を示す断面図である。
【図19】図18の状態から頂壁部構築工を行う状態を示す断面図である。
【図20】図19の状態から頂壁部下部の内部掘削工を行う状態を示す断面図である。
【図21】図20の状態から側壁部、底壁部及び中壁部構築工を行う状態を示す断面図である。
【図22】図21の状態から仮設支持杭撤去工を行う状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 拡縮変断面トンネル
12、14、16 シールド掘進機
18 トンネル
20 地山
22 土留壁
24 頂壁部
26 側壁部
28 底壁部
30 大断面のトンネル
38、48 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2台のシールド掘進機にて少なくとも2本のトンネルを隣接して構築し、各トンネル間の地山を掘削してトンネル同士を接続するトンネルの構築方法であって、
前記各シールド掘進機は、隣り合うシールド掘進機との対向面がほぼ平行な傾斜面として形成され、
前記各トンネルは、前記各シールド掘進機を前記傾斜面に沿って相対的に移動させることにより拡縮変断面トンネルを構築可能としたことを特徴とするトンネルの構築方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記各シールド掘進機により、水平方向及び垂直方向の少なくとも一方での拡縮変断面トンネルを構築可能とすることを特徴とするトンネルの構築方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記各シールド掘進機により、水平方向での拡縮変断面トンネルを構築した後、
トンネル内から下方の地山内に土留壁を構築し、前記トンネル及び土留壁に囲まれた地山を掘削して断面の大きなトンネルを構築することを特徴とするトンネルの構築方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記各シールド掘進機により、水平方向及び垂直方向での拡縮変断面トンネルを構築した後、
水平方向及び垂直方向での拡縮変断面トンネルに囲まれた地山を掘削して断面の大きなトンネルを構築することを特徴とするトンネルの構築方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記シールド掘進機は、両側面が傾斜面として形成されていることを特徴とするトンネルの構築方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記シールド掘進機は、一側面が傾斜面として形成されていることを特徴とするトンネルの構築方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2009−263884(P2009−263884A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111147(P2008−111147)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(501366111)財団法人高速道路調査会 (1)
【Fターム(参考)】