説明

トーショナルデカプラ

輪郭形状を有するハブ面を有するハブと、輪郭形状を有するプーリ面を有するプーリと、ハブ面とプーリ面の間に配置され、プーリ面またはハブ面の少なくとも一方に摩擦係合する摩擦部材とを備え、ハブとプーリの間で移動が起こるように、摩擦部材がハブとプーリの間でトルクを伝達するトーショナルデカプラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捩りデカプラに関し、より詳細には、ハブとプーリの間でトルクを伝達する摩擦部材を備えるトーショナルデカプラに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン補機ベルト伝動装置におけるアイソレータは、オルタネータのロータに取り付けられたハブとプーリの間に弾性部材を適用することで振動絶縁機能を提供する。プーリとハブが連結されていることから、これら2つの部材間の相対運動は制限される。弾性部材の剛性は、ベルト伝動システムの1次モードの振動がアイドリングにおけるエンジンの点火周波数よりも低くなるように選択される。したがって、アイドリングにおいてアイソレータは、プーリの振動を弱め、ロータに対するプーリの影響を低減する。ロータの振動が抑えられることから、プーリから要求される伝達トルクはより低くなり、それによって最大ベルト張力が低減される。その結果、テンショナスパンが強く引張されてテンショナアームを動かし、ベルト移動方向においてオルタネータよりも前にあるベルトスパンを緩ませる可能性は低くなる。これにより、ベルトのかん高いノイズが発生する可能性を低減する。アイソレータは、エンジンの通常の運転では効果的であるが、始動時および停止時には限定された機能しか持たない。これは始動時および停止時に、システムが共振点を通過することによる。
【0003】
この問題に対処するために、デカプラが一方向クラッチの特性を提供する。エンジン始動時および運転時におけるクランクシャフトプーリの加速において、プーリとハブは相互にロックされ、装置は一体的な(ソリッド)プーリとして作動する。しかし、減速時には、ハブはプーリを追い越して、すなわち「オーバーラン」状態で回転することができる。これは、ロータの慣性がテンショナスパンにテンショナアームをベルトから離接する方向に回動させる高い張力を発生させることを防止し、それによってベルトのスリップ音の発生を回避することから有用である。デカプラは、装置が実際にオーバーランするまでに僅かなトルクを発生し得る。オーバーランモードにおいてプーリとハブの間は連結されていないので、プーリは制限されることなく回転できる。デカプラはエンジン始動時および停止時には上手く機能するが、エンジン運転中、特にオルタネータが大電流を発生しているときには差ほどでもない。
【0004】
この技術の代表は、米国特許第5,139,463号明細書であり、これは駆動されるアセンブリ列に、オルタネータアセンブリが含まれる自動車用多軸掛けベルト伝動システムを開示し、オルタネータアセンブリは、ハウジングと電機子軸周りに回転するようにハウジング内に搭載された電機子組立体を備えている。ハブ構造は、電機子軸の周りに電機子組立体とともに回転するように電機子組立体によってハウジングの外側へ向けて保持される。コイルバネは、多軸掛けベルトによって駆動されるオルタネータプーリの回転運動をハブ構造に伝達するためにオルタネータプーリとハブ構造の間に協働的な関係で配置され、それによって電機子組立体をオルタネータプーリと同じ方向に回転するとともに、オルタネータプーリが従動されて回転運動する間、オルタネータプーリとは逆向きの瞬間的な相対弾性回転運動を可能にする。
【0005】
必要とされているのは、ハブとプーリの間でトルクを伝達する摩擦部材を備えるトーショナルデカプラである。本発明はこの要求に合致する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、ハブとプーリの間でトルクを伝達する摩擦部材を備えるトーショナルデカプラを提供することである。
【0007】
本発明のその他の目的は、本発明の以下の説明と添付された図面により指摘され明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、輪郭形状を有するハブ面を有するハブと、輪郭形状を有するプーリ面を有するプーリと、ハブ面とプーリ面の間に配置され、プーリ面またはハブ面の少なくとも一方に摩擦係合する摩擦部材とを備え、ハブとプーリの間で移動が起こるように、摩擦部材がハブとプーリの間でトルクを伝達するトーショナルデカプラを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
この明細書に組み込まれその一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【図1】トーショナルデカプラの分解図である。
【図2】トーショナルデカプラの断面図である。
【図3】一般的なエンジンベルト伝動システムである。
【図3A】始動時における典型的なエンジン速度のグラフである。
【図4】図3に示される一般的なエンジンベルト伝動システムである。
【図4A】始動時における典型的なエンジン速度のグラフである。
【図5】当該装置の非対称トルク制限特性を示すグラフである。
【図6】ハブ荷重を用いた非対称トルク制限の模式図である。
【図7】ハブ荷重を用いた非対称トルク制限の模式図である。
【図8】ベルト張力をベースとする伝達トルクのグラフである。
【図9】別の実施形態の斜視図である。
【図10】図9に示される別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1はトーショナルデカプラの分解図である。本発明に係るトーショナルデカプラは、補機ベルト伝動装置における捩り振動とオルタネータの大きな慣性の有害な影響を低減あるいは消滅させる。クランクシャフトプーリにおける高い捩り振動は、内燃(IC)機関のシリンダにおける点火によって引き起こされる。この振動の周波数は、エンジンのRPMとシリンダ数に関係する。
【0011】
クランクシャフトにおける捩り振動は、多軸掛けベルトを通してベルト伝動システム内の全補機に伝達される。それが比較的に大きな慣性と比較的に小さい直径のプーリを持つことから、特に重要なのはオルタネータである。相対的に小さい直径のプーリは、角振動を増幅するとともに、大きな慣性と相俟って、オルタネータのロータを動かするのに大きなトルクを要求する。大きなトルクは、ピークの高いベルト張力をもたらす。これは早期の故障を招くテンショナアームの過度の運動や、エンジンの始動あるいは停止の際に異音を発生するベルトスリップを引き起こし得る。大きなトルクは、更にベルトの激しいフラッピングを発生させる可能性がある。本発明に係るデカプラは、これらの問題を低減または解消する。
【0012】
デカプラは、ハブ10を備え、ハブ10は摩擦部材20とプーリ30に係合される。ロックリング40が、構成部品を1つに保持するために用いられる。
【0013】
ハブ10は、溝付表面形状11を有する。溝11は回転軸A−Aに平行に延在する。ハブ10の一端にはフランジ12が設けられる。ハブ10は、ナット(図示せず)を用いてオルタネータシャフトに取り付けられる。
【0014】
摩擦部材20は、プラスチックや、天然または合成ゴム、あるいは類似の弾性素材などの摩擦素材からなる部分を備える。この部材は、従来の、および/または適切な硬化あるいは熱可塑性エラストマ合成物のいかなるものであってもよい。この目的に利用し得る適切なエラストマには、例えばポリウレタンエラストマ(ポリウレタン/ウレアエラストマ)(PU)、ポリクロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム(NBR)、水素化NBR(HNBR)、スチレン・ブタジエン・ゴム(SBR)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、エピクロロヒドリン、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、エチレン・プロピレン・コポリマー(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー(EPDM)、エチレン・オクテン・コポリマー(EOM)、エチレン・ブテン・コポリマー(EBM)、エチレン・オクテン・ターポリマー(EODM)、エチレン・ブテン・ターポリマー(EBDM)などのエチレン・アルファ・オレフィン・エラストマ、およびPPAあるいはシリコーンゴム、あるいはこれらの2以上の組合せが含まれる。
【0015】
プーリの材料は、スチール、プラスチック、またはアルミ、あるいはこれら2以上の組合せであってもよい。
【0016】
第1外周面21は、リブ形状を有する。各「リブ」は、部材20の周方向に平行な方向に延在する。第2内周面22は、歯付形状を備える。各「歯」(または溝)は、リブ方向に90°、すなわちリブ方向の法線方向に延在する。また、歯はプーリの回転方向に垂直に配置される。
【0017】
別の実施形態では、外周面21が歯付形状を備えるかもしれず、内周面22がリブ形状を備えるかもしれない。この別の実施形態では、面21、22は、同様の形状を有する協働面11、31に係合する。すなわち、面11はリブ形状とされ、面31は歯付形状とされる。
【0018】
面22は、溝付表面11と協動的に係合する。部材20は必ずしも連続したループ状である必要はなく、代わりに、ハブ10の周りに単に巻き付けられる材料の一部であってもよい。別の実施形態では、部材20は連続したループ状に製造されるかもしれない。
【0019】
プーリ30は、内周面31にリブ付形状を備える。面31は、部材20の面21に協動的に係合する。外周面32も、多軸掛けベルトに係合するためのリブ付形状を備える(図3参照)。ロックリング40は、ハブ10に設けられた溝13に係合し、トーショナルデカプラを一体的に保持する。
【0020】
図2は、トーショナルデカプラの断面図である。デカプラを組み立てるには、部材20の面21が、面31と接触した状態でプーリ30内に係合される。そして、プーリ30と部材20の面22を組み合わせたものが、ハブ10に設けられた溝11と係合される。その後、ロックリング40が、溝13と係合される。部材20は、完成された組立体の一部としてハブ10とプーリ30の間において、圧縮や与圧を全く与えられるべきではない。
【0021】
部材20の長さは、面31との係合する際に、プーリ30内にフィットするのに十分であればよい。部材20の端部は、接触している必要はなく、小さい隙間(約≦1mm)は、デカプラの作動に害とはならない。無論、端部は作動に悪影響を与えることなく接触していてもよい。
【0022】
図3は、一般的なエンジンベルト伝動システムである。システムは一般的に、大きな慣性をもつオルタネータ(ALT)、エアコン用コンプレッサ(A/C)、そしてクランクシャフトプーリ(CRK)を備える。ベルト(B)は各コンポーネントに掛け回される。ベルト荷重を与えるとともに維持するためにテンショナ(Ten)がベルトに係合される。
【0023】
図3Aは、始動時における典型的なエンジン速度のグラフである。斜線部“a”として示されるようなエンジンが加速する始動時における区間では、オルタネータの慣性を増大するために正のトルクが必要なことからオルタネータに続くベルトスパン(S1)には、高い張力が掛かる。この高い張力はベルトの伸びを引起し、ベルト長さの増大がテンショナスパン(S2)に蓄積される。これはテンショナアーム(TEN)を、それのフリー状態におけるアーム停止位置(無負荷状態)に向けて動かす。テンショナは制御されたベルト張力をオルタネータの前方スパン(S2)において維持する。ベルトノイズと言う点から異常なことは何ひとつ発生しない。
【0024】
図4は、図3に示される一般的なエンジンベルト伝動システムである。図4Aは、エンジン始動時における典型的なエンジン速度のグラフである。エンジンが減速する局面(図4Aにおける斜線部“b”では、オルタネータの慣性は、自身の慣性に関連して自身の現在の速度で回転を維持しようとし、このときオルタネータALTは、ベルト伝動システムにおいて主要な原動部となる。これにより、テンショナに掛け回される通常は緩み側のスパン(S2)がぴんと張られる。ベルト張力がテンショナのバネ荷重およびテンショナにおけるダンピングに打ち勝つのに十分な程度に高いとき、テンショナアームは負荷側停止位置に向けて移動する(ベルトから離れる)(図4参照)。これは、結果としてドライブ長さを減少させ、オルタネータの前のベルトスパンを弛緩させ緩い張力にする。張力がある臨界値よりも低くなると、伝動装置ではベルトのかん高いノイズの発生が問題となる。
【0025】
図5は、この装置の非対称なトルクリミット特性を示すグラフである。この装置の原理は、トーショナルデカプラを通して伝達可能なトルクを非対称に制限するためにハブ荷重によって発生する摩擦を利用することである。
【0026】
プーリ30がハブ10を駆動しているときに正のトルクが伝達され、ハブ10がプーリ30を駆動しているときに負のトルクが伝達されるものとするとき、正のトルクは、最大電流を発生するためにオルタネータALTによって要求される値よりも僅かに高い値に制限されることが望ましい。これは面21と31の間の摩擦接触面によって規定される。
【0027】
更に、オルタネータの慣性を増大させることが可能であるとともに、テンショナTenが動いてベルトノイズを発生させるテンショナ通常緩み側スパン(S2)の緊張を防止するために負のトルクを小さい値に制限することが望ましい。
【0028】
これは図5に示される。摩擦接触面(面21、31)の摩擦係数を約0.5、プーリ直径を約50mmとする。約−5Nm〜約+15Nmの間において、摩擦接触面(21、31)は、ベルト(B)−プーリ(30)の接点において発生するトルクをサポートできる。テンショナは定格で約300Nを提供するものとする。テンショナにはダンピングがあるので、説明される実施例における数値に多少の影響を及ぼす。
【0029】
エンジン減速時に、ハブ10がプーリ30を駆動しているとき、テンショナスパン(S2)は、設計張力の約300Nに維持される。しかし、オルタネータの後のスパン(S1)では、張力が緩み始める。ハブ荷重が約400Nに達すると、摩擦接触面はその限界である約−5Nmに達し、スリップが発生してテンショナスパンにおける張力の蓄積を防止する。
【0030】
プーリ30がハブ10を駆動しているとき、プーリの前のスパン(S2)は設計張力である約300Nに維持される。しかし、スパンS1の張力は増大する。この張力が約900Nに達するとき、摩擦接触面は約+15Nmのトルクしかサポートできない。このポイントを超えるとスリップが発生する。「ハブ荷重」は、デカプラを跨ぐ両ベルトスパンにおける張力荷重の和(S1+S2)である。
【0031】
図6は、ハブ荷重を用いた非対称なトルクリミットの模式図である。図6には、エンジンの減速状態が示される。これは例えば、オルタネータシャフトとロータ(図示せず)の慣性によって、オルタネータシャフトとハブ10がプーリ30を駆動していることを意味する。スパンS1におけるベルト張力は、約100Nであり、スパンS2におけるベルト張力は約300Nである。
【0032】
この条件においてトーショナルデカプラを通して伝達されるトルクは:
トルク=0.5×(300+100)×0.05/2=5Nm
である。
【0033】
図7は、ハブ荷重を用いた非対称なトルク制限の模式図である。図7は、エンジン加速状態である。これはプーリがハブを駆動していることを意味する。スパンS1におけるベルト張力は約900Nであり、スパンS2におけるベルト張力は約300Nである。この条件においてデカプラを通して伝達されるトルクは:
トルク=0.5×(300+900)×0.05/2=15Nm
である。
【0034】
この明細書の何れかで言及されるように、このトーショナルデカプラの動作原理は、面21と面31の間の摩擦を通した関係に関わりを持つ。作動中、面31と面21の間の摩擦係数により、プーリ30はトルクの流れ方向に応じて、摩擦部材20に対して+または−の回転方向に進角する。すなわち、プーリ30と部材20に隣接する2つの点を与えると、これらの点はトーショナルデカプラの作動中、お互いに対して漸進的に移動する。ようするに、1つのコンポーネントが他方に対して「ロール」するように見える。それによる角度方向への漸進は、デカプラの回転毎に僅かな角度である。摩擦係合において所定量のマイクロスリップが発生してデカプラの各回転に対してハブとプーリの間に相対回転、すなわち角度方向への漸進が発生するようにハブとプーリが摩擦係合される。更に、第1方向の伝達トルクの大きさは、反対方向の伝達トルクの大きさと異なる。
【0035】
これはタイヤが舗装道路を転がる仕方にやや似ている。すなわち、作動中、プーリから摩擦部材へ、あるいは、摩擦部材からプーリへトルクが伝達されている間、面21と31の間には多少のマイクロスリップが発生する。この特徴は、例えば氷の上でスリップするような、通常遭遇する「スリップ」と同じではない。この装置に関して説明されるスリップは、接触している部材同士の微視的なレベルでの振る舞いに関するものである。「マイクロスリップ」は、車が氷の上で滑るような、巨視的なレベルにおける日常的な経験として存在する総体的な「スリップ」ではないが、接触面全体に亘る接着の発生、消滅という連続的に起こっているプロセスに関するもので、お互いに対する面の移動をもたらす。
【0036】
特筆したように、面21と面31の間の接触は全周に亘って均一でないので、プーリ30の面31は、面21の上で「ロール」する。したがって、デカプラが作動する機構は、弾性ゴムボールに似た弾性特性を備える摩擦部材に基づくものではない。摩擦部材の特徴として弾性が排除されるわけではないが、必要な特徴は、面21と31の間の適切な摩擦係数(COF)である。
【0037】
図6および図7の実施例では、摩擦要素とプーリ内側形状(面21、31)の間の摩擦係数は約0.5であった。このCOFには、プーリと摩擦部材面との間のリブ形状の「楔効果」も含まれる。
【0038】
本発明に関わるアイソレータは、この明細書で説明された原理を用いて、何れの回転方向(+または−)にもトルクを伝達できる。また、トルク伝達の大きさは、回転方向によって非対称であってもよく、これは一つの方向に伝達されるトルクの大きさが、その反対の回転方向に伝達されるトルクの大きさとは異なることを意味する。実施例のシステムでは、伝達されるトルクの約−5Nm〜+15Nmの範囲からの超過を引き起こす動作条件は、アイソレータの構造に依存して、プーリと摩擦部材の間、あるいは摩擦部材とハブの間の総体的な拘束のないスリップを発生させるかもしれない。伝達されるトルクはハブ荷重の関数であることから、ハブ荷重の変化は、伝達されるトルクの変化に影響を及ぼす。したがって、何れの回転方向へ伝達されるトルクの値も、必要に応じて選択できる。
【0039】
図8は、ベルト張力に基づく伝達トルクのグラフである。摩擦係数の値の選択は、与えられるハブ荷重に対する限界トルクの値を規定する。2つの曲線が示される。第1の曲線(I)は、面21と31の間の摩擦接触面における振る舞いを表す。第2の曲線(II)は、ベルト(B)とプーリ面32の間の接触面の振る舞いを示す。斜線部は、トルクの伝達が起こる動作レンジを示す。ベルト張力が約100Nよりも低く、約900Nよりも大きい領域は、スリップが発生するトーショナルデカプラの作動範囲を示す。
【0040】
図9は、別の実施形態の斜視図である。図9および図10において違う説明がされるもの以外については、本発明の説明は、図1〜図8に従う。
【0041】
別の実施形態は、ハブ100、内部ブッシュ2、捩りスプリング50、歯付部材110、保持部材111、112、摩擦部材20、プーリ30、捩りスプリングリテーナ51、ダストカバー8、および組立体を1つに保持するためのロックリング1を備える。スプリング50は、捩りスプリングリテーナ51とハブのフランジ101との間で圧縮される。
【0042】
この別の実施形態において、歯付部材110、捩りスプリング50、ブッシュ2、6、そして捩りスプリングリテーナ51は、ハブアセンブリを備える。摩擦デカプラ部材(20)は、ハブアセンブリを介してハブ100と係合される。
【0043】
更に、別の実施形態では、捩りスプリング50は、直接摩擦部材20に連結される。図1〜8では、摩擦部材20はハブ10と面11を通して係合された。
【0044】
捩りスプリング50は、固定してフランジ101に連結される。歯付部材110は、例えば圧入により、捩りスプリングリテーナ51に固定して連結される。捩りスプリングリテーナ51は、ブッシュ6を介してハブ100に摺動自在に係合する。摩擦部材20は、保持部材111、112の間において、歯付部材110の面115に保持される。歯付部材110は、面22と協動的に係合する歯付面115を備える。面21と31は、この明細書の何れかで説明されるように相互に作用する。
【0045】
歯付部材110は、ブッシュ2を介してフランジ101と摺動自在に係合する。ブッシュ2と6は、プーリとハブの間にダンピングを提供する。減衰量は、合わせ面の摩擦係数とベルトにより与えられるハブ荷重に関係する。
【0046】
一例としては、ブッシュ2と6として、スチール上におけるオイレステクメットBのブッシュのCOFは0.18である。スプリング50のバネ定数は約56.5mmである。数値は例として示されたもので、本発明の広さと範囲を限定することを意図したものではない。
【0047】
この別の実施形態では、摩擦デカプラ(およびプーリ内周形状31と摩擦部材面21の間の摩擦)が、プーリ30へのそしてプーリ30からハブ100へ伝達されるトルクを制限することからバネ荷重は著しく低くなる。例えば、伝達トルクを30Nmから20Nmへ低減することができる。
【0048】
デカプラによって伝達されるトルクは非対称であり、2つの作動方向において捩りスプリング50には均等に負荷が掛からない。従来技術のトーショナルデカプラの場合、トルクは約−30Nm〜+30Nmの範囲でスプリングを介して伝達される。この別の実施形態の場合、トルクは約−5Nm〜+20Nmの範囲で伝達される。これはハブ荷重と摺動面間の摩擦係数の作用である。
【0049】
図10は、図9に示される別の実施形態の断面図である。ボア102はオルタネータシャフト(図示せず)を受け入れる。ベルト受け面32は、マルチリブベルト(図示せず)と係合するための輪郭を備える。ロックリング1が、フランジ33内においてプーリ30内へと圧入される。
【0050】
本明細書において使用された数値は単に例示的なものであり、この装置の大きさや、説明、動作を限定することを意図したものではない。
【0051】
ここでは、本発明の一形態について説明したが、当業者にとっては、ここで説明された本発明の趣旨と範囲を逸脱することなく、その構成や構成部の関係を様々に変形することは容易である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪郭形状を有するハブ面を有するハブと、
輪郭形状を有するプーリ面を有するプーリと、
前記ハブ面と前記プーリ面の間に配置され、前記プーリ面または前記ハブ面の少なくとも一方に摩擦係合する摩擦部材とを備え、
前記ハブと前記プーリの間で移動が起こるように、前記摩擦部材が前記ハブと前記プーリの間でトルクを伝達する
ことを特徴とするトーショナルデカプラ。
【請求項2】
前記ハブ面が歯付形状を含むことを特徴とする請求項1に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項3】
前記プーリ面がリブ形状を含むことを特徴とする請求項1に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項4】
前記プーリが更に、リブ形状を呈する面を備えることを特徴とする請求項1に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項5】
摩擦部材が更に、プラスチック素材を含むことを特徴とする請求項1に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項6】
前記摩擦部材が更に、エラストマ素材を含むことを特徴とする請求項1に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項7】
前記ハブが更に、シャフトに連結するための手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項8】
前記プーリと摩擦部材を保持するため、前記ハブに係合されるロックリングを更に備えることを特徴とする請求項1に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項9】
前記トルク伝達の大きさが回転方向により非対称であることを特徴とする請求項1に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項10】
ハブと、
ベルトに係合するための面を有するプーリとを備え、
前記ハブと前記プーリが摩擦係合し、前記摩擦係合における所定の大きさのマイクロスリップが前記トーショナルデカプラの各回転において発生する
ことを特徴とするトーショナルデカプラ。
【請求項11】
前記ハブと前記プーリの間に配置される摩擦部材を更に備え、前記摩擦部材が前記ハブに係合するための輪郭形状を有する面を備えることを特徴とする請求項10に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項12】
前記ハブと前記プーリの間に配置される摩擦部材を更に備え、前記摩擦部材が前記プーリに係合するための輪郭形状を有する面を備えることを特徴とする請求項10に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項13】
前記輪郭形状が歯付形状を含むことを特徴とする請求項11に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項14】
前記輪郭形状がリブ形状を含むことを特徴とする請求項12に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項15】
トルク伝達の大きさが回転方向により非対称であることを特徴とする請求項10に記載のトーションデカプラ。
【請求項16】
前記摩擦部材がエラストマ素材を含むことを特徴とする請求項10に記載のトーションデカプラ。
【請求項17】
ハブ面を有するハブと、
プーリ面を有するプーリと、
前記ハブ面と前記プーリ面の間に配置される男性摩擦部材とを備え、
前記弾性摩擦部材が前記プーリ面または前記ハブ面の少なくとも一方に摩擦係合し、
前記弾性摩擦部材が前記ハブと前記プーリの間でトルクを伝達し、前記伝達トルクの第1方向への大きさが反対方向への前記伝達トルクの大きさに等しくない
ことを特徴とするトーショナルデカプラ。
【請求項18】
前記ハブ面に歯が設けられ、前記プーリ面にリブが設けられることを特徴する請求項17に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項19】
前記プーリと前記ハブが、相互に対して角度方向に漸進可能であることを特徴とする請求項17に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項20】
前記ハブがシャフトと係合可能であることを特徴とする請求項17に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項21】
前記弾性摩擦部材と係合する部材を備えるハブアセンブリと、前記部材と前記ハブの間に係合された捩りスプリングとを更に備えることを特徴とする請求項17に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項22】
前記部材が、前記弾性摩擦部材と係合するための歯を備えることを特徴とする請求項21に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項23】
前記ハブアセンブリが、前記部材と前記ハブの間に作用的に配置されたブッシュを更に備えることを特徴とする請求項17に記載のトーショナルデカプラ。
【請求項24】
前記弾性摩擦部材と前記ハブの間に連結される捩りスプリングを更に備えることを特徴とする請求項17に記載のトーショナルデカプラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−511228(P2011−511228A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544990(P2010−544990)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際出願番号】PCT/US2009/000101
【国際公開番号】WO2009/099505
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】