説明

ドアのヒンジのための固定装置

【課題】
ドアを、ヒンジを介して最適な継目間隔でボディの側壁ドア部分内に位置決めして保持する、自動車のボディにドアのヒンジを固定するための固定装置を提供する。
【解決手段】
ドアの2つのヒンジ(1,2)のヒンジ要素(5,6)が、予組立位置で、それぞれ、両ヒンジ(1,2)の旋回可能なヒンジ要素(6)を介してドアと固定結合され、ドアが、ボディの側壁ドア部分(4)内に、正確な継目間隔で位置決めされて保持されており、両ヒンジ(1,2)の位置固定のヒンジ要素(5)が、最終組立位置(I)で、ボディのピラーの外壁及び内壁部分(W,W1)と、固定ボルト(7,8)とトルクサポート(9)を介して結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、自動車のボディにドアのヒンジを固定するための固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、自動車のボディにドアのヒンジを固定するためのヒンジ固定装置が公知であるが、このヒンジ固定装置は、ヒンジのピンを介して旋回可能に互いに結合された2つの翼状部材を有するヒンジから成り、一方の翼状部材がドアに固定され、他方の翼状部材がピラーに固定されている。ボディのドア部分内での、ヒンジの、従ってドアの、旋回軸の位置調整は、レバーアームであるドアによる翼状部材の変形により行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国実用新案第91 06 938号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ドアを、ヒンジを介して最適な継目間隔でボディの側壁ドア部分内に位置決めして保持する、自動車のボディにドアのヒンジを固定するための固定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴によって解決される。別の有利な特徴は、従属請求項に記載されている。
【0006】
本発明により主として得られる利点は、ドアと側壁ドア部分の間に最適な継目間隔が周囲に得られるように、ドアが、結合された2つのヒンジを介してボディの側壁ドア部分内に挿入可能で、ヒンジを介してボディと結合可能であることにある。これは、本発明によれば、ドアの2つのヒンジのヒンジ要素が、予組立位置で、それぞれ、ヒンジの旋回可能なヒンジ要素を介してドアと固定結合され、ドアが、ボディの側壁ドア部分内に、正確な継目間隔で位置決めされて保持され、両ヒンジの位置固定のヒンジ要素が、最終組立位置で、ボディのピラーの外壁及び内壁部分と、固定ボルトとトルクサポートを介して結合されていることによって達成される。従って、ドアが、例えばロボットを介して挿入される前の、車両の製造プロセスでは、側壁ドア部分が測定され、その後、ドアが、ロボットを介して最適な継目間隔で、ピラーに位置固定のヒンジ要素を固定するために位置決め可能である。
【0007】
各ヒンジの位置固定のヒンジ要素を固定するため、本発明によれば、更に、ヒンジの位置固定のヒンジ要素のヒンジプレート内に、圧入された少なくとも2つの固定ボルトが保持されており、これら固定ボルトの間の領域に、トルクサポートが、ヒンジプレートから突出している。ヒンジプレートは、最終組立位置で、ピラーの少なくとも1つの外壁部分に当接し、トルクサポートの自由端は、ピラーの少なくとも1つの内壁部分と、物質一体的に結合されている。ヒンジの固定ボルトとトルクサポートが、側壁ドア部分内にドアを取り付ける時に相応に位置決め可能であるように、ピラーの外壁部分は、予め設けられた開口を、最終組立位置で両ヒンジの位置固定のヒンジ要素の、対応する固定ボルトとトルクサポートを挿入するために備える。ドアが、両ヒンジの位置固定のヒンジ要素によって正確な継目間隔に調整して挿入可能であるように、開口は、固定ボルトとトルクサポートに対して周囲に遊びを有するように形成されている。これにより、最適なドアの継目間隔を達成するための側壁ドア部分内のドアの調整能力が、簡単なやり方で得られる。
【0008】
ピラーの外壁部分に固定ボルトを固定するための作業は、ナット及び例えば作業工具を導入可能にする、ピラーの少なくとも1つの内壁部分内の開口を通して行なわれる。
【0009】
更に、少なくとも1つの内壁部分に対するトルクサポートの物質一体的な結合は、開口又は別の壁部分内に上下に位置する複数の開口を通して行なうことができる。
【0010】
本発明の別の形成によれば、トルクサポートは、ピラーの少なくとも1つの内壁部分に対して可動に配設し、この少なくとも1つの内壁部分と物質一体的に結合することができる。
【0011】
本発明による位置固定のヒンジ要素の固定部の導入により、ヒンジが、旋回可能なヒンジ要素を介して予組立てされてドアに固定されていること、ドアが、側壁ドア部分内に、周囲に同じ継目間隔を有するように位置決めされて保持されること、この予組立位置で、両ヒンジが、位置固定のヒンジ要素を介してピラーとボルト固定可能であり、トルクサポートが、ピラーと溶接可能であることによって、ドアを正確な継目間隔で側壁ドア部分に挿入することが、簡単な組立方法で可能である。
【0012】
本発明の実施例を、図面に図示し、以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】固定ボルトとトルクサポートを有する、ピラーに上下に配設された2つのヒンジの外観図である。
【図2】旋回軸を介して2つのヒンジ要素が結合されたヒンジの外観図である。
【図3】ヒンジの固定ボルトのための2つの収容口と、トルクサポートのための1つの収容口を有するピラーの図である。
【図4】図3の切断線IV−IVにより上のヒンジの領域のピラーを切断した、水平断面図である。
【図5】図3の切断線V−Vにより上のヒンジの領域のピラーを切断した、垂直断面図である。
【図6】図3の切断線VI−VIにより下のヒンジの領域のピラーを切断した、水平断面図である。
【図7】図3の切断線VII−VIIにより下のヒンジの領域のピラーを切断した、垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ドアは、ピラー3の領域に上下に配設されたヒンジ1,2によって、自動車のボディの側壁ドア部分4内に配設されている。ヒンジ1,2は、軸Aを介して旋回可能に互いに結合された2つのヒンジ要素5及び6を有する。一方のヒンジ要素5は、固定ボルト7,8とトルクサポート9を介して位置固定で、ピラー3の少なくとも1つの内壁及び外壁部分W及びW1と結合されている。他方の旋回可能なヒンジ要素6は、ボルト固定手段を介してドアと固定結合されている。予組立位置で、両ヒンジ要素5及び6から成る両ヒンジ1,2は、ドア固定結合されている。ピラー3と結合すべき位置固定のヒンジ要素5の固定をするため、ドアは、周囲に最適な継目間隔が生じるように、側壁ドア部分4内に位置決めされる。製造プロセスにおいて、これに先行して、側壁ドア部分が測定され、その後、ロボットを介して、ドアが、側壁ドア部分4内に相応に挿入される。継目間隔が正常であれば、両ヒンジ1,2のヒンジ要素5は、固定ボルト7,8を介してピラー3とボルト固定され、トルクサポート9を溶接される。
【0015】
ピラー3にヒンジ1及び2のヒンジ要素5を取り付ける際、ヒンジプレート10に圧入により配設された固定ボルト7,8は、ピラーの予め設けられた開口11,12及び11a,12aに挿入される。ヒンジ1,2のトルクサポート9は、同様に、ヒンジプレート10に配設されており、ピラー3の予め設けられた別の開口14,14aに挿入されて、内部に突出している。これら開口11,12と11a,12aと14,14aは、それぞれ固定ボルト7,8とトルクサポート9に対して周囲に遊びを備え、即ち、これは、開口の直径が、固定ボルト7,8の直径とトルクサポート9の直径よりも大きいことを意味する。これは、ドアが、最適な継目間隔になるように側壁ドア部分内に挿入可能であるために、必要である。
【0016】
図4及び5において上のヒンジ1で詳細に図示したように、ヒンジプレート10は、外壁部分Wもしくは壁部分19もしくは横部分24に当接し、トルクサポート9は、ピラー3を貫通して内壁部分W1もしくは壁部分20までに達する。トルクサポート9の自由端21は、壁部分に対して可動に配設可能であり、溶接22を介して少なくとも1つの内壁部分W1もしくは壁部分20もしくは壁部分20aと結合されている。溶接22は、壁部分20内の開口23を通して行なわれる。
【0017】
ヒンジ1,2の固定ボルト7,8は、ヒンジプレート10内に固定されており、外壁部分Wもしくは壁10のところで、補強壁24及び25と、装着されるナットによって結合される。これらナットは、内壁部分W1内の開口26を通して作業工具によって導入される。
【0018】
図6及び7に、上のヒンジ1のように構成され、ピラー3とドアと結合された、下のヒンジ2を示す。上のヒンジ1の固定ボルト7,8のための開口11,12は、下のヒンジ2の固定ボルト7,8のための開口11a,12aとは対照的に、図3の開口11が、側面図で見て、トルクサポート9のための開口14の左に配設され、対応する開口11aが、トルクサポート9のための開口14aの右に配設されるように、配設されている。
【符号の説明】
【0019】
1 ヒンジ
2 ヒンジ
3 ピラー
4 側壁ドア部分
5 ヒンジ要素
6 ヒンジ要素
7 固定ボルト
8 固定ボルト
9 トルクサポート
10 ヒンジプレート
11 開口
12 開口
14 開口
11a 開口
12a 開口
14a 開口
19 壁部分
20 壁部分
20a 壁部分
21 トルクサポートの自由端
22 溶接
23 開口
24 補強壁
25 補強壁
26 開口
A 軸
W 外壁部分
W1 内壁部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジが2つのヒンジ要素を有し、一方のヒンジ要素が位置固定でボディに固定され、他方のヒンジ要素が、ドアと旋回可能に結合されている、自動車のボディにドアのヒンジを固定するための固定装置において、
ドアの2つのヒンジ(1,2)のヒンジ要素(5,6)が、予組立位置で、それぞれ、ヒンジ(1,2)の旋回可能なヒンジ要素(6)を介してドアと固定結合され、ドアが、ボディの側壁ドア部分(4)内に、正確な継目間隔で位置決め可能に保持されており、ヒンジ(1,2)の位置固定のヒンジ要素(5)が、最終組立位置(I)で、ボディのピラーの外壁及び内壁部分(W,W1)と、固定ボルト(7,8)とトルクサポート(9)を介して結合されていることを特徴とする固定装置。
【請求項2】
ヒンジ(1,2)の位置固定のヒンジ要素(5)のヒンジプレート(10)内に、圧入された少なくとも2つの固定ボルト(7,8)が保持されており、これら固定ボルト(7,8)の間の領域に、トルクサポート(9)が、ヒンジプレート(10)から突出していることを特徴とする請求項1に記載の固定装置。
【請求項3】
ヒンジプレート(10)が、最終組立位置(I)で、ピラー(3)の外壁部分(W)に当接し、トルクサポート(9)の自由端(21)が、ピラー(3)の少なくとも1つの内壁部分(W1)と、物質一体的に結合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の固定装置。
【請求項4】
ピラー(3)の外壁部分(W)が、予め設けられた開口(16,17及び15)を、最終組立位置(I)でヒンジ(1,2)の位置固定のヒンジ要素(5)の、これら開口と対応する固定ボルト(7,8)とトルクサポート(9)を挿入するために備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の固定装置。
【請求項5】
ドアが、ヒンジ(1,2)の位置固定のヒンジ要素(5)によって正確な継目間隔で位置決めされて側壁ドア部分(4)内に挿入可能であるように、開口(16,17及び15)が、固定ボルト(7,8)とトルクサポート(9)に対して周囲に遊びを有するように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の固定装置。
【請求項6】
ヒンジ(1,2)の固定ボルト(7,8)が、少なくとも1つの内壁部分(W1)内の開口(26)を通して、挿入可能な作業工具によって固定可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の固定装置。
【請求項7】
少なくとも1つの内壁部分(W1)に対するトルクサポート(9)の物質一体的な結合(22)が、少なくとも1つの内壁部分(W1)内の開口(23)を通して行なわれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の固定装置。
【請求項8】
トルクサポート(9)が、ピラー(3)の少なくとも1つの内壁部分(W1)に対して可動に配設され、この少なくとも1つの内壁部分と物質一体的に結合されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の固定装置。
【請求項9】
ヒンジ(1,2)が、ヒンジ要素(6)を介して予組立てされてドアに固定可能であること、ドアが、側壁ドア部分(4)内に、周囲に同じ継目間隔を有するように位置決めされて保持されていること、この予組立位置(I)で、ヒンジ(1,2)が、位置固定のヒンジ要素(5)を介してピラー(3)とボルト固定可能であり、トルクサポート(9)が、ピラー(3)と溶接可能であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−36895(P2010−36895A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171760(P2009−171760)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】