説明

ドアウエザーストリップ

【課題】 軽量でシール性に優れるドアウエザーストリップを提供する。
【解決手段】 少なくとも、ドアパネル2aの周縁部に沿って形成されたドアパネル水平壁3に組付けられる底辺部11と,車外側の高い垂直外壁部12と,車内側の低い垂直内壁部13と,外壁部と内壁部の頂部間を結ぶ斜辺部15とにより形成した中空部S付き三角状の基底部10と、前記斜辺部15から上方に一体成形され、ドアパネル立設壁2に弾接する中空シール部20と、外壁部12の頂部から車外側へ突設され、ドアパネル立設壁2に弾接するリップ部21と、底辺部10と中空シール部20の車外側付け根に連続する支柱壁14とで構成する。外壁部12を、比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成し、それ以外の部分を比重0.4〜0.8の通常スポンジゴム材で形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドアパネルの周縁部に沿って取付けられ、ボディパネルに弾接して、ボディパネルとドアパネル立設壁との間をシールするドアウエザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1乃至図3を参照して説明する。自動車ドアパネル2aの周縁部には、ボディパネル4に弾接してボディパネル4とドアパネル2aとの間のシール性を確保するためのドアウエザーストリップ30が取付けられている。
【0003】
従来、このドアウエザーストリップ30は、シール性確保のために、比重0.4〜0.8のスポンジゴム材(通常スポンジゴム材)で形成したものが多く使用されている。また、軽量化を目的として、その一部を、比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成したものも創案されている。
【0004】
具体的には、ドアウエザーストリップ30のルーフ部Pでは図1,図2に示すように、ドアパネル2aの周縁部に沿って形成されたドアパネル水平壁3に組付けられる底辺部35と,車外側の高い垂直外壁部32と,車内側の低い垂直内壁部36と,外壁部32と内壁部36の頂部間を結ぶ斜辺部37とにより中空部S付き略三角形状の基底部31を形成し、斜辺部37の車内側へ立設した半楕円形状の中空シール部20の車外側付け根へ連続する支柱壁34を底辺部35から突設し、底辺部35の一部を製品の長さ方向に連続的に低比重スポンジゴム材Lで形成し(断面積の約8%)、他の部分を通常スポンジゴム材で形成している。また、ロア部Qでは、図3に示すように、その全体を通常スポンジゴム材で形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、自動車の軽量化が要求される中、ドアウエザーストリップにも軽量化が求められている。ドアウエザーストリップの軽量化を図るためには、その全体あるいはより多くの部分を低比重スポンジゴム材で形成することが考えられる。
【0006】
しかし、ドアウエザーストリップの全体を低比重スポンジゴム材で形成することも考えられるが、ドアを閉じた状態における圧縮荷重(ドアシール力)の低下等、シール性等の点で多くの課題がある。また、ドアウエザーストリップのより多くの部分を低比重スポンジゴム材で形成する場合も、その形成箇所によってはドアシール力の低下等に不安が残る。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、軽量でシール性に優れるドアウエザーストリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ドアウエザーストリップの軽量化を、シール性を低下させることなく実現するために、ドアウエザーストリップのどの部分を低比重スポンジゴム材で形成すれば良いかを研究し、本発明を創案するに至った。以下、図1および図4乃至図9を参照して説明する。
【0009】
請求項1に記載のドアウエザーストリップ1は、自動車のドアパネル立設壁2に取付けられ、ボディパネル4との間をシールするものであって、少なくとも、前記ドアパネル立設壁2の周縁部に沿って形成されたドアパネル水平壁3に組付けられる底辺部11と,車外側の高い垂直外壁部12と,車内側の低い垂直内壁部13と,外壁部12と内壁部13の頂部間を結ぶ斜辺部15とにより中空部S付き略三角形状の基底部10を形成し、前記斜辺部15の車内側の上方に一体成形され、ドアパネル立設壁2に弾接する中空シール部20と、前記外壁部12頂部から車外側へ突設され、前記ドアパネル立設壁2に弾接するリップ部21と、を備える。
【0010】
そして、外壁部12を、比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成し、それ以外の部分を比重0.4〜0.8の通常スポンジゴム材で形成する。
【0011】
請求項2に記載のドアウエザーストリップ1は、請求項1の発明においては、基底部10に設けた中空部Sを2分割するように底辺部11から斜辺部15へ連続する支柱壁14が設けられている。
【0012】
請求項3に記載のドアウエザーストリップ1は、請求項1または2に記載の発明において、外壁部12に加えて、リップ部21を比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成する。
【0013】
請求項4に記載のドアウエザーストリップ1は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、基底部10の底辺部11を、比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載のドアウエザーストリップ1は、ルーフ部Pにおいては、リップ部21と基底部10の外壁部12を、比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成し、それ以外の部分を比重0.4〜0.8の通常スポンジゴム材で形成しているので、さらなる軽量化を図ることができる。
【0015】
すなわち、従来技術と比較して、従来は通常スポンジゴム材で構成される部位までのより多くの部分を、通常スポンジゴム材より軽量の低比重スポンジゴム材Lで形成している。つまり材料を置換しているので、ドアウエザーストリップ1の全体重量を削減することができる。
【0016】
なお、外壁部12を低比重スポンジゴム材Lで形成したことによって、ドアシール力の低下が懸念されたが、本発明者らそれを確認すべくFEM解析(有限要素法、Finite Element Method)を実施した。その結果、本発明に係るドアウエザーストリップ1(図4参照)と従来例に係るドアウエザーストリップ30(図2参照)の圧縮荷重値(ドアシール力)は同等であった。
【0017】
これは、外壁部12が、ドアパネル立設壁2に弾接する基底部10とリップ部21との間に挟まれた状態で形成されているため、ドアを閉じた状態に発生する圧縮荷重に対して、基底部10とリップ部21が十分な反力を発生させるからであると考えられる。これにより、本発明に係るドアウエザーストリップ1は、十分なドアシール力(シール性)を発揮することを確認した。なお、低比重スポンジゴム材Lで形成する垂直部12の断面積を拡大することによって、より十分なドアシール力を得ることができる。
【0018】
請求項2に記載のドアウエザーストリップ1は、請求項1の発明が、中空部Sを2分するように支柱壁14が設けられており、この支柱壁14によって圧縮荷重値の低下をより防ぐことが出来る。
【0019】
請求項3に記載のドアウエザーストリップ1は、請求項1または2に記載の発明と同様の効果を発揮する。また、外壁部12に加えて、リップ部21の略車外側半部を比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成しているので、さらなる軽量化を図ることができる。
【0020】
なお、リップ部21を低比重スポンジゴム材Lで形成した場合も、十分なドアシール力を発揮することを確認した。
【0021】
請求項4に記載のドアウエザーストリップ1は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明と同様の効果を発揮する。また、基底部10の底辺部11を、比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成しているので、ドアウエザーストリップ1の軽量化をさらに促進することができる。この場合も、十分なドアシール力を発揮することを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ドアウエザーストリップを取付けた自動車を示す側面図である。
【図2】従来例に係るドアウエザーストリップ(ルーフ部)を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図3】従来例に係るドアウエザーストリップ(ロア部)を示すもので、図1のY−Y線断面図である。
【図4】本発明に係るドアウエザーストリップ(ルーフ部)の第一実施形態を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図5】本発明に係るドアウエザーストリップ(ロア部)の第一実施形態を示すもので、図1のY−Y線断面図である。
【図6】本発明に係るドアウエザーストリップ(ルーフ部)の第二実施形態を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図7】本発明に係るドアウエザーストリップ(ロア部)の第二実施形態を示すもので、図1のY−Y線断面図である。
【図8】本発明に係るドアウエザーストリップ(ルーフ部)の第三実施形態を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図9】本発明に係るドアウエザーストリップ(ロア部)の第三実施形態を示すもので、図1のY−Y線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るドアウエザーストリップ1の第一実施形態を、図1、図4および図5に示す。このドアウエザーストリップ1は、自動車のドアパネル立設壁2に取付けられ、ボディパネル4との間をシールするものであり、基底部10、中空シール部(メインシール部)20、リップ部21およびサブシール部22を備える。
【0024】
基底部10は、ドアパネル水平壁部3に断面略C字状のリテーナー(図示しない)又はクリップ(図示しない)にて組付けられる底辺部11と,車外側の高い垂直外壁部12と,車内側の低い垂直内壁部13と,外壁部12と内壁部13の頂部間を結ぶ斜辺部15とにより中空部S付き三角状の基底部10を形成している。半楕円形状の中空シール部20は、斜辺部15の車内側から上方に向けて一体成形され、ドアパネル立設壁2に弾接する中空状である。リップ部21は、外壁部12の頂部から車外側へ突設され、ドアパネル立設壁2に弾接して、その部分をシールする。
【0025】
また、サブシール部22は、中空シール部20の車外側に隣接して斜辺部15上に一体成形されている。このサブシール部22の先端部は、ボディパネル4に弾接し、その部分をシールする。
【0026】
そして、このドアウエザーストリップ1は、そのルーフ部Pにおいては、基底部10に設けた中空部Sを2分割するように、底辺部11から斜辺部15へ連続する支柱壁14が設けられている。図2では、底辺部11から中空シール部20の車外側付け根へ連続するように支柱壁14は設けられている。また、その外壁部12を、比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成し、当該ドアウエザーストリップ1のそれ以外の部分を比重0.4〜0.8の通常スポンジゴム材で形成している。
【0027】
また、ロア部Qにおいては、基底部10の外壁部12を、比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成し、当該ドアウエザーストリップ1のそれ以外の部分を、比重0.4〜0.8の通常スポンジゴム材で形成している。なお、図示のものはロア部Qにおいて、ルーフ部Pのような支柱壁14は設けていない。しかし、ルーフ部Pのように底辺部11から斜辺部15へ、基底部10に設けた中空部Sを2分割するように支柱壁14を設けてもよい。
【0028】
本実施形態に係るドアウエザーストリップ1は、そのルーフ部Pとロア部Qの外壁部12を低比重スポンジゴム材Lで形成しているので、それらの部分を通常スポンジゴム材(比重0.4〜0.8)で形成したものと比較して、その重量を削減することができる。
【0029】
また、このドアウエザーストリップ1は、ドアを閉じた状態において、十分なドアシール力を発揮する(FEM解析による)。これは、ルーフ部Pでは、外壁部12を低比重スポンジゴム材Lで形成しているものの、当該外壁部12は、ドアパネル立設壁2に弾接する基底部10とリップ部21との間に挟まれた状態にあり、ドアを閉じた状態では、基底部10とリップ部21(および中空シール部20とサブシール部22)が、圧縮荷重に対して十分な反力を発生させるからであると考えられる。
【0030】
また、ロア部Qでは、外壁部12を低比重スポンジゴム材Lで形成しているものの、当該外壁部12が、ドアパネル立設壁2に弾接する基底部10の底辺部11とリップ部21との間に挟まれた状態にあるため、ドアを閉じた状態に発生する圧縮荷重に対して、底辺部11とリップ部21(および中空シール部20)が十分な反力を発生させるからであると考えられる。
【0031】
ちなみに、従来例に係るドアウエザーストリップ30の低密度スポンジゴム材(図2参照)は、断面積の約8%を占めるに過ぎないが、本実施形態に係るドアウエザーストリップ1(図4参照)では24%を占める。
【0032】
また、その重量は、ルーフ部Pにおいては、従来例のドアウエザーストリップ30(図2参照)では148.4g/mであるのに対し、本実施形態に係るドアウエザーストリップ1(図4参照)では136.4g/mであり、12g/mを削減することができた。また、ロア部Qでは、前者(図3参照)が61.5g/mであるのに対し、後者(図5参照)が55.8g/mであり、5.7g/mの軽量化を図ることができた。
【0033】
本発明に係るドアウエザーストリップ1の第二実施形態を、図1、図6および図7に示す。このドアウエザーストリップ1は、第一実施形態の構成に加えて、ルーフ部Pにおいては、リップ部21を比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成し、ロア部Qにおいては、リップ部21を比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材Lで形成している。こうすることによって、十分なドアシール力を確保しつつ、ドアウエザーストリップ1の軽量化を図ることができる。
【0034】
なお、本第二実施形態においては、第一実施形態と比較して、ルーフ部Pでは、外壁部12を、その車外側に拡大部12aを設けて断面積を拡張している。また、ロア部Qにおいても、外壁部12を、その車外側に拡大部12aを設けて断面積を拡大している。しかし、どちらも拡大部12aを設けず、従来例と同様な断面形態であってもよい。
【0035】
拡大部12aを設けることによって、外壁部12の車外側面全体を、柔軟にかつ隙間なく、ドアパネル立設壁2に弾接することができるので、ドアウエザーストリップ1とドアパネル立設壁2との間のシール性を高めることができ、水、風、騒音等の室内への侵入を未然に防止することができる。また、こうすることによって、ドアを閉じた状態における圧縮荷重に対する反力を増加させることもできる。
【0036】
本発明に係るドアウエザーストリップ1の第三実施形態を、図1、図8および図9に示す。このドアウエザーストリップ1の特徴は、基底部10の底辺部11も低比重スポンジゴム材Lで形成したことである。これにより、ドアウエザーストリップ1のさらなる軽量化を図ることができるといった大きな効果を発揮する。なお、このドアウエザーストリップ1においても、十分なドアシール性を発揮することができる。また、図9に仮線で示す如く支柱壁14を挿入し、圧縮荷重の低下を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ドアウエザーストリップ
2 ドアパネル立設壁
2a ドアパネル
3 ドアパネル水平壁
4 ボディパネル
10 基底部
11 底辺部
12 外壁部
12a 拡大部
13 内壁部
14 支柱壁
15 斜辺部
20 中空シール部
21 リップ部
22 サブシール部
30 ドアウエザーストリップ
31 基底部
32 外壁部
34 支柱壁
35 底辺部
36 内壁部
37 斜辺部
L 低比重スポンジゴム材
P ルーフ部
Q ロア部
S 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアパネル立設壁(2)に取付けられ,ボディパネル(4)との間をシールするドアウエザーストリップであって、少なくとも、前記ドアパネル立設壁の周縁部に沿って形成されたドアパネル水平壁(3)に組付けられる底辺部(11)と,車外側の高い垂直外壁部(12)と,外壁部(12)と内壁部(13)の頂部間を結ぶ斜辺部(15)とにより中空部(S)付き三角形状の基底部(10)を形成し、前記斜辺部(15)から車内側の上方に一体成形され,ドアパネル立設壁に弾接する中空シール部(20)と、前記外壁部頂部から車外側へ突設され,前記ドアパネル立設壁に弾接するリップ部(21)と、を備え、前記外壁部を,比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材(L)で形成し,それ以外の部分を比重0.4〜0.8の通常スポンジゴム材(N)で形成したことを特徴とするドアウエザーストリップ。
【請求項2】
基底部(10)に設けた中空(S)を2分割するように底辺部(11)から斜辺部(15)へ連続する支柱壁(14)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のドアウエザーストリップ。
【請求項3】
外壁部(12)に加えて、リップ部(21)を比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材(L)で形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のドアウエザーストリップ。
【請求項4】
基底部(10)の底辺部(11)を、比重0.05〜0.4の低比重スポンジゴム材(L)で形成したことを特徴とする請求項1、2または3に記載のドアウエザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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