ドアトリム
【課題】前後分割した成形体からなるドアトリムにおいて、この境界部を補強する新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高める。
【解決手段】車両前方側に配設されるフロントトリム30と、車両後方側に配設されるリアトリム40と、を備え、衝撃吸収部材17は、フロントトリム30及びリアトリム40に取り付けられる取付部17A,17B,17Cを有し、フロントトリム30とリアトリム40とに跨ぐ位置に設けられている。
【解決手段】車両前方側に配設されるフロントトリム30と、車両後方側に配設されるリアトリム40と、を備え、衝撃吸収部材17は、フロントトリム30及びリアトリム40に取り付けられる取付部17A,17B,17Cを有し、フロントトリム30とリアトリム40とに跨ぐ位置に設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両ドアに取り付けられるドアトリムとして例えば特許文献1に記載のものが知られている。このものは、ドアトリムをフロント部とリア部に分割して成形し、当該フロント部にドアの機能部品を集めたものであって、成形金型が小さくて済むことや、リア部を変えることでフロント部を3ドア用にも5ドア用にも転用できるといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−118131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成にあっては、ドアトリムを一体成形する場合と比較して、フロント部とリア部の境界部における剛性が低下することが懸念されていた。このため、フロント部とリア部の境界部の剛性を高めることが必要であるものの、この境界部を補強するための新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高めることが望まれている。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、前後分割した成形体からなるドアトリムにおいて、この境界部を補強する新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、衝撃吸収部材を備えたドアトリムであって、車両前方側に配設されるフロントトリムと、車両後方側に配設されるリアトリムと、を備え、前記衝撃吸収部材は、前記フロントトリム及び前記リアトリムに取り付けられる取付部を有し、前記フロントトリムと前記リアトリムとに跨ぐ位置に設けられていることに特徴を有する。
【0007】
このように、ドアトリムの既存構成部品である衝撃吸収部材をフロントトリムとリアトリムに跨って取り付けることで、フロントトリムとリアトリムの境界部を補強する新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高めることができる。
【0008】
前記衝撃吸収部材は、前記フロントトリムに取り付けられる前側取付部と、前記リアトリムに取り付けられる後側取付部と、を有していることが望ましい。このような構成とすれば、衝撃吸収部材は、フロントトリムとリアトリムにそれぞれ取り付けられる各取付部を有するから、各トリムに対する取付強度を高めることで、より効果的にドアトリム自体の境界部の剛性を高めることができる。
【0009】
前記フロントトリム及び前記リアトリムが互いに重ね合わされた部分である重ね合わせ部を有し、前記衝撃吸収部材は前記重ね合わせ部に重畳して取り付けられる重畳取付部を有することが望ましい。
【0010】
フロントトリムとリアトリムとが互いに重ね合わされる重ね合わせ部を有するようなドアトリムにおいて、衝撃吸収部材を両部材間に跨って取り付けるだけでなく、重ね合わせ部にも重畳して取り付けることで、更にドアトリムの剛性を高めることができる。即ち、フロントトリムとリアトリムとの重ね合わせ部、つまり境界部に衝撃吸収部材を重畳し、且つ重ね合わせ部(境界部)上に衝撃吸収部材の各トリムに対する取付部の一つとして重畳取付部を設けることとすれば、境界部に対する衝撃吸収部材の取付強度を高めることができ、境界部の更なる剛性の向上を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前後分割した成形体からなるドアトリムにおいて、この境界部を補強する新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るドアトリムを車室内側から視た平面図
【図2】ドアトリムの要部分解斜視図
【図3】ドアトリムを構成するフロントトリム及びリアトリムを車室外側から視た平面図
【図4】フロントトリムにリアトリムを組み付けた状態を車室外側から視た斜視図
【図5】ドアトリムを車室外側から視た平面図
【図6】図5のA−A断面図
【図7】図5のB−B断面図
【図8】図5のC−C断面図
【図9】図5のD−D断面図
【図10】図5のE−E断面図
【図11】図5のF−F断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図11によって説明する。
本実施形態のドアトリム10は、図示しないドアインナパネル(車両ボデーに相当する)の車室内側に取り付けられて車両ドアを構成する車両用内装材であって、その車両前後方向略中央部に把手状のドアグリップ20を備えたものである。以下、図1の左右方向を(車両)前後方向、紙面手前側から紙面奥側を車幅方向(車室内外方向)として説明する。
【0014】
ドアトリム10は、大別すると、フロントトリム30、リアトリム40、オーナメント50の3部材によって構成されており、これらの基材は、ポリプロピレン等の合成樹脂材料や、ケナフ等の木質系材料を合成樹脂材料に混合した材料等により成形されている。このような基材からなるドアトリム10は、図1に示すように、車両前後方向にわたって車室内側に張り出すアームレスト11を備え、その前部に開口形成されたスイッチパネル取付部12A(図2参照)にスイッチパネル12が嵌め込まれた態様をなす。スイッチパネル12の上方には、インサイドハンドルを取り付けるためのインサイドハンドル取付部13が設けられており、同下方には、スピーカグリル14、ドアポケットの車室内側を構成するドアポケット部15等が設けられている。
【0015】
ドアトリム10において、フロントトリム30とリアトリム40とを組み付けることにより車室内側に生じる分割ライン16(境界部に相当する)は、その上部における車両前後方向の略中間部から、同下部における車両前後方向の後部にかけて傾斜して延びる略直線状をなしている。なお、図示はしないが、フロントトリム30とリアトリム40の基材の色を違えることで、分割ライン16を境にドアトリム10の色が前後で異なる意匠性に優れた構成とされている。
【0016】
この分割ライン16に沿うように、ドアトリム10の上部にはアームレスト11の車両前後方向略中間部に跨るドアグリップ20がフロントトリム30及びリアトリム40に一体に設けられている。ドアグリップ20は、グリップベース21と、グリップベース21の車室内側に取り付けられるグリップカバー24とから構成される。そして、アームレスト11の車両後方側における上方には、ドアグリップ20の車室外側を覆うように位置するオーナメント50が取り付けられている。オーナメント50の車室内側は表皮材60で覆われており、その素材は(合成)樹脂、(合成)皮革、繊維等から適宜選択される。
【0017】
続いて、個々の構成部品について説明する。
まず、フロントトリム30は、図2に示すように、ドアトリム10の車両前方側を構成するものであって、その後端部は取付部31とされている。この取付部31は後述するリアトリム40の被取付部43に対応し、当該被取付部43を車幅方向に重ね合わせた(重畳した)状態で取り付ける部位に相当する。ここで、本発明の重ね合わせ部は、取付部31及び被取付部43により構成される。
【0018】
詳しく説明すると、取付部31には、車室外側の側面から円筒状の締結部32が複数突設されており、その他平板状の係合爪33等の締結手段が設けられている。この取付部31のうち、アームレスト11より上側の部分は、帯状に延びる第1分割部22とされ、ドアグリップ20のドアグリップベース21のうち車室内側を構成している。第1分割部22は後述するリアトリム40に設けられた第2分割部23と共に一対の半割体を構成しており、互いを合体させることで中空状のドアグリップベース21を形成する。この第1分割部22の車両前方側には、フロントトリム30に一体に設けられた第1分割部22を把手状とするために、開口部34が設けられている。開口部34の車両前方側の開口縁には、締結部32及び係合爪33と同様の構成をなす、フロント側オーナメント締結部35及びオーナメント係合爪36が設けられている。
【0019】
対するリアトリム40は、ドアトリム10の車両後方側を構成するものであって、その上部にはオーナメント50を車室外側から取付可能な取付開口41が設けられている。取付開口41の開口縁部には、その周縁に沿って、円筒状のリア側オーナメント締結部42が複数突設されている。
【0020】
リアトリム40の前端部は、フロントトリム30の取付部31に重畳して取り付けられる被取付部43とされている。この被取付部43において取付部31の締結部32及び係合爪33に対応する位置には、挿通孔44及び被係合孔45が設けられている。このような被取付部43のうち、取付開口41の側方には、帯状の第2分割部23が設けられており、ドアグリップ20のグリップベース21のうち、車室外側を構成している。
【0021】
図4は、フロントトリム30にリアトリム40を取り付けた状態を示す。ドアグリップ20周辺の取付構造については、別途詳しく後述するが、フロントトリム30の締結部32をリアトリム40の挿通孔44に挿通させ、係合爪33を被係合孔45に係合させることで、取付部31と被取付部43とが重ね合わされる。締結部32は、挿通孔44を挿通したのち、超音波溶着等の溶着手段によって締結部32の先端部を溶着することにより、フロントトリム30の取付部31にリアトリム40の被取付部43を固定することができる。
【0022】
このように相互に固定されたフロントトリム30とリアトリム40の車室外側側面には、図4及び図5に示すように、衝撃吸収部材17及びポケット基材18が取り付けられている。ポケット基材18は各トリム30、40と同じ合成樹脂材料等からなり、ドアポケット部15を車室外側から覆うようにして取り付けられることで、車室内側に開口するドアポケットを構成している。
【0023】
オーナメント50は、図2に示すように、板状の本体部51と、本体部51の周縁から外側に向かって延びるフランジ上に形成された複数のオーナメント挿通孔52及びオーナメント被係合孔53を備える。このうち、後述するドアグリップ20の基部20Bに位置するオーナメント挿通孔52は、第1重合挿通孔52Aとされている。このオーナメント50は、本体部51の車室内側を表皮材60により被覆した状態で、フロントトリム30及びリアトリム40の車室外側に取り付けられる(図5参照)。具体的には、フロントトリム30に対しては、フロント側オーナメント締結部35を対応するオーナメント挿通孔52に挿通させ、オーナメント係合爪36をオーナメント被係合孔53に係合させる。リアトリム40に対しては、リア側オーナメント締結部42を対応するオーナメント挿通孔52に挿通させる。また、詳しくは後述するが、第1分割部22に突設された重合締結部25は、第2分割部23の第2重合挿通孔26に挿通されており、この上から、オーナメント50に設けられた第1重合挿通孔52Aを挿通させる。
【0024】
各オーナメント締結部35,42及び重合締結部25を対応するオーナメント挿通孔52及び第1重合挿通孔52Aに挿通させたのち、前述した締結部32と同様に、超音波溶着等の溶着手段によってその先端部を溶着することにより、フロントトリム30及びリアトリム40に対してオーナメント50を固定することができる。なお、表皮材60の端末は、オーナメント50と、当該オーナメント50が取り付けられるフロントトリム30及びリアトリム40との間に挟み込むことで保持されている。
【0025】
このように各トリム30、40に取り付けられたオーナメント50は、ドアグリップ20の車室外側に位置する。即ち、オーナメント50は、フロントトリム30の開口部34を車室外側から覆うと共に、ドアグリップ30の車室外側の対向面を構成する。更に連続して、リアトリム40の取付開口41に取り付けられることで、オーナメント50の車室内側を被覆する表皮材60と共に、ドアトリム10の意匠面を構成する。オーナメント50の本体部51は、車室内側に張り出す段差を有しており、この段差の上面(車両天井側)がアームレスト11の肘置き面54とされ、乗員の肘掛けとして利用される。
【0026】
次に、ドアグリップ20の構成及びその周辺の取付構造について、主に図6から図9を用いて詳しく説明する。ドアグリップ20は、図6に示すように、乗員が車室内側から把持可能な把持部20Aと、その両端に位置してドアグリップ20の根本部分を構成する基部20Bとの部位に分けられる。この基部20Bにおいて、第1分割部22には車室外側に向かってやや先細りに突出する円筒状の上側取付ボス22Aと下側取付ボス22Bとがそれぞれ設けられている。各取付ボス22A、22Bの先端部には、ビス70を挿通可能なビス孔22C,22Dが貫通形成されている。そして、各取付ボス22A,22Bの周縁には、締結部32と同様の構成をなす、円筒状の重合締結部25が複数突設されている。
【0027】
一方、第2分割部23には、上側取付ボス22Aを挿通可能な円形状の上側貫通孔23Aと、下側取付ボス22Bを挿通可能な円形状の下側貫通孔23Bとがそれぞれ対応する位置に設けられている。そして、この各貫通孔23A,23Bの周縁において、各重合締結部25に対応する位置には、当該重合締結部25を挿通可能な第2重合挿通孔26が複数設けられている。
【0028】
第1分割部22と第2分割部23とは、各取付ボス22A、22Bを各貫通孔23A、23Bに挿通し、各重合締結部25を対応する第2重合挿通孔26に挿通させることで、互いに重ね合わせることができる(図4から図6参照)。そして、図8に示すように、把持部20Aの長手方向略中央部においては、第1分割部22のボルト挿通孔22Eにボルト71を挿通させたのち、第2分割部23に設けられたネジ孔23Cに螺合させることで、第1分割部22と第2分割部23とがボルト締結される。ここで、グリップベース21を構成する第1分割部22と第2分割部23との境界(分割)部分は、図7及び図8に示すように、車室内側からは見えにくい車両前方側と同後方側の側部に位置するから、見栄えのよいものとすることができる。
【0029】
なお、ドアグリップ20の基部20Bにおいては、図9に示すように、第2重合挿通孔26に挿通された重合締結部25を、更にオーナメント50の第1重合挿通孔52Aに挿通させたのち、超音波溶着等の溶着手段によって重合締結部25の先端部を溶着することにより、フロントトリム30、リアトリム40、オーナメント50の3点を重ね合わせた状態で固定することができる。このようにドアグリップ20の基部20Bにおいて、フロントトリム30、リアトリム40、オーナメント50を複数箇所にわたって共締めすることで、基部20Bの剛性を高めることができる。
【0030】
このグリップベース21の車室内側には、図6に示すようにグリップカバー24が取り付けられている。詳しく説明すると、フロントトリム30の第1分割部22から上部にかけては、図2に示すように、その車室内側面において車室外側に凹状をなすカバー装着部38が設けられている。グリップカバー24はこのカバー装着部38に嵌め込まれるのであって、当該グリップカバー24の意匠面(車室内側面)とは反対側の車室外側面からは、複数の固定爪24Aが突設されている。一方、カバー装着部38内には、固定爪24Aと対応する位置に孔状の被固定部38Aが開口形成されており、この孔縁に、固定爪24Aが係止されること等により、グリップカバー24がカバー装着部38に対して装着した状態に保持される。
【0031】
このようにして、フロントトリム30とリアトリム40の境界部において組み付けられたドアグリップ20は、図示しないドアインナパネルに対して固定される。即ち、図6に示すように、ドアインナパネルの取付孔72に対して、各取付ボス22A,22Bのビス孔22C,22Dに挿通したビス70を締め付けることで固定される。このように、ドアグリップ20の基部20Bがそれぞれドアインナパネルに固定されているから、フロントトリム30及びリアトリム40に一体成形されたドアグリップ20であっても、所定の取付強度を確保することができる。
【0032】
続いて、衝撃吸収部材17について詳しく説明する。
本実施形態の衝撃吸収部材17は、EA(Energy Absorption)パッドからなり、硬質ポリウレタンフォームをブロック状に成形したものである。この衝撃吸収部材17は、側突時における衝撃を吸収することにより、ドアトリム10の車室内側に着座した乗員に与える衝撃を低減するものである。その態様としては、図5に示すように、車両前後方向に長い略方形のブロック状をなし、フロントトリム30及びリアトリム40に跨るようにして、オーナメント50の下方に車室外側から取り付けられている。
【0033】
フロントトリム30及びリアトリム40には、この衝撃吸収部材17を取り付けるための締結部37,39,46が車両前後方向にわたって複数設けられている。個別に説明すると、まず、フロントトリム30には、車室外側の側面から円筒状をなす1本の前側衝撃吸収部材締結部37が突設されている。さらに、フロントトリム30の取付部31には、同じく円筒状をなす1本の重畳締結部39が突設されている。リアトリム40の被取付部43において、この重畳締結部39に対応する位置には、重畳挿通孔47が設けられ、フロントトリム30にリアトリム40が取り付けられた状態において、重畳締結部39は重畳挿通孔47を挿通した状態にある。続いて、リアトリム40には、円筒状をなす3本の後側衝撃吸収部材締結部46が突設されている。
【0034】
一方、衝撃吸収部材17には、これらの締結部37,39,46を挿通可能な複数の貫通孔が車幅方向に貫通して設けられている。詳しく説明すると、衝撃吸収部材17の前部には、前側衝撃吸収部材締結部37を挿通可能な孔状の前側取付部17Aが設けられている。同中程には、重畳挿通孔47を挿通した重畳締結部39をその上から更に挿通可能な孔状の重畳取付部17Bが設けられている。そして衝撃吸収部材17の後部には、後側衝撃吸収部材締結部46を挿通可能な後側取付部17Cがそれぞれ対応する位置に設けられている。
【0035】
衝撃吸収部材17は、前側衝撃吸収部材締結部37に前側取付部17Aを挿通させ、重畳挿通孔27を挿通した重畳締結部39に重畳取付部17Bを挿通させ、後側衝撃吸収部材締結部46に後側取付部17Cを挿通させる。このように、各締結部37,39,46を各取付部17A,17B,17Cに挿通させたのち、超音波溶着等の溶着手段によって、この締結部37,39,46の先端部を溶着することにより、衝撃吸収部材17は、各トリム30,40に対して固定される(図10及び図11参照)。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、衝撃吸収部材17はフロントトリム30とリアトリム40とに跨ぐ位置に取り付けられているから、乗員に対する側突の衝撃を低減するといった衝撃吸収部材17の本来の機能に加えて、フロントトリム30とリアトリム40の境界部の剛性を高めることができる。また、衝撃吸収部材17はドアトリム10の既存構成部品であるから、フロントトリム30とリアトリム40の境界部を補強する新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高めるという目的を達成することができる。
【0037】
また、衝撃吸収部材17は、フロントトリム30に取り付けられる前側取付部17Aと、リアトリム40に取り付けられる後側取付部17Cとを有しているから、各トリム30,40に対する取付強度を高めることで、より効果的にドアトリム10における境界部の剛性を高めることができる。
【0038】
また、フロントトリム30とリアトリム40とが互いに重ね合わされる取付部31及び被取付部43からなる重ね合わせ部には、衝撃吸収部材17が重畳して取り付けられるとともに、重ね合わせ部上に重畳取付部17Bが設けられ、固定されている。このように、衝撃吸収部材17をただ単にフロントトリム30とリアトリム40に跨って取り付けるだけでなく、重ね合わせ部上に設けられた重畳締結部39、それに挿通する重畳挿通孔47、重畳取付部17Bにより、3部材を重ね合わせた状態で固定することで、重ね合わせ部に対する衝撃吸収部材の取付強度を高めると共に、重ね合わせ部、つまり境界部の剛性を高めることができる。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
(1)上記した実施形態では、衝撃吸収部材17としてEAパッドを例示したが、これに限られず、例えばポリプロピレン樹脂等の側突用樹脂衝撃吸収体であってもよい。
【0041】
(2)上記した実施形態では、1つの衝撃吸収部材17がオーナメント50の下方において、フロントトリム30とリアトリム40に跨って取り付けられていたが、これに限られず、少なくとも1つの衝撃吸収部材がフロントトリム30とリアトリム40に跨って取り付けられていればよく、上下方向の設置位置や個数は限定されない。
【0042】
(3)上記した実施形態では、衝撃吸収部材17は各トリム30,40側に設けられた各締結部37,39,46を貫通孔状の各取付部17A,17B,17Cに挿通させたのち、超音波溶着により固定したが、これに限られず、その他の溶着手段や、ボルト締結等各種固定手段により衝撃吸収部材がフロントトリムとリアトリムとに跨って固定されていればよい。
【符号の説明】
【0043】
10…ドアトリム、17…衝撃吸収部材、17A…前側取付部、17B…重畳取付部、17C…後側取付部、20…ドアグリップ、30…フロントトリム、31…取付部、32…締結部、37…前側衝撃吸収部材締結部、39…重畳締結部、40…リアトリム、43…被取付部、46…後側衝撃吸収部材締結部、47…重畳挿通孔、50…オーナメント
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアトリムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両ドアに取り付けられるドアトリムとして例えば特許文献1に記載のものが知られている。このものは、ドアトリムをフロント部とリア部に分割して成形し、当該フロント部にドアの機能部品を集めたものであって、成形金型が小さくて済むことや、リア部を変えることでフロント部を3ドア用にも5ドア用にも転用できるといった利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−118131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成にあっては、ドアトリムを一体成形する場合と比較して、フロント部とリア部の境界部における剛性が低下することが懸念されていた。このため、フロント部とリア部の境界部の剛性を高めることが必要であるものの、この境界部を補強するための新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高めることが望まれている。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、前後分割した成形体からなるドアトリムにおいて、この境界部を補強する新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、衝撃吸収部材を備えたドアトリムであって、車両前方側に配設されるフロントトリムと、車両後方側に配設されるリアトリムと、を備え、前記衝撃吸収部材は、前記フロントトリム及び前記リアトリムに取り付けられる取付部を有し、前記フロントトリムと前記リアトリムとに跨ぐ位置に設けられていることに特徴を有する。
【0007】
このように、ドアトリムの既存構成部品である衝撃吸収部材をフロントトリムとリアトリムに跨って取り付けることで、フロントトリムとリアトリムの境界部を補強する新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高めることができる。
【0008】
前記衝撃吸収部材は、前記フロントトリムに取り付けられる前側取付部と、前記リアトリムに取り付けられる後側取付部と、を有していることが望ましい。このような構成とすれば、衝撃吸収部材は、フロントトリムとリアトリムにそれぞれ取り付けられる各取付部を有するから、各トリムに対する取付強度を高めることで、より効果的にドアトリム自体の境界部の剛性を高めることができる。
【0009】
前記フロントトリム及び前記リアトリムが互いに重ね合わされた部分である重ね合わせ部を有し、前記衝撃吸収部材は前記重ね合わせ部に重畳して取り付けられる重畳取付部を有することが望ましい。
【0010】
フロントトリムとリアトリムとが互いに重ね合わされる重ね合わせ部を有するようなドアトリムにおいて、衝撃吸収部材を両部材間に跨って取り付けるだけでなく、重ね合わせ部にも重畳して取り付けることで、更にドアトリムの剛性を高めることができる。即ち、フロントトリムとリアトリムとの重ね合わせ部、つまり境界部に衝撃吸収部材を重畳し、且つ重ね合わせ部(境界部)上に衝撃吸収部材の各トリムに対する取付部の一つとして重畳取付部を設けることとすれば、境界部に対する衝撃吸収部材の取付強度を高めることができ、境界部の更なる剛性の向上を図ることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前後分割した成形体からなるドアトリムにおいて、この境界部を補強する新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るドアトリムを車室内側から視た平面図
【図2】ドアトリムの要部分解斜視図
【図3】ドアトリムを構成するフロントトリム及びリアトリムを車室外側から視た平面図
【図4】フロントトリムにリアトリムを組み付けた状態を車室外側から視た斜視図
【図5】ドアトリムを車室外側から視た平面図
【図6】図5のA−A断面図
【図7】図5のB−B断面図
【図8】図5のC−C断面図
【図9】図5のD−D断面図
【図10】図5のE−E断面図
【図11】図5のF−F断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図11によって説明する。
本実施形態のドアトリム10は、図示しないドアインナパネル(車両ボデーに相当する)の車室内側に取り付けられて車両ドアを構成する車両用内装材であって、その車両前後方向略中央部に把手状のドアグリップ20を備えたものである。以下、図1の左右方向を(車両)前後方向、紙面手前側から紙面奥側を車幅方向(車室内外方向)として説明する。
【0014】
ドアトリム10は、大別すると、フロントトリム30、リアトリム40、オーナメント50の3部材によって構成されており、これらの基材は、ポリプロピレン等の合成樹脂材料や、ケナフ等の木質系材料を合成樹脂材料に混合した材料等により成形されている。このような基材からなるドアトリム10は、図1に示すように、車両前後方向にわたって車室内側に張り出すアームレスト11を備え、その前部に開口形成されたスイッチパネル取付部12A(図2参照)にスイッチパネル12が嵌め込まれた態様をなす。スイッチパネル12の上方には、インサイドハンドルを取り付けるためのインサイドハンドル取付部13が設けられており、同下方には、スピーカグリル14、ドアポケットの車室内側を構成するドアポケット部15等が設けられている。
【0015】
ドアトリム10において、フロントトリム30とリアトリム40とを組み付けることにより車室内側に生じる分割ライン16(境界部に相当する)は、その上部における車両前後方向の略中間部から、同下部における車両前後方向の後部にかけて傾斜して延びる略直線状をなしている。なお、図示はしないが、フロントトリム30とリアトリム40の基材の色を違えることで、分割ライン16を境にドアトリム10の色が前後で異なる意匠性に優れた構成とされている。
【0016】
この分割ライン16に沿うように、ドアトリム10の上部にはアームレスト11の車両前後方向略中間部に跨るドアグリップ20がフロントトリム30及びリアトリム40に一体に設けられている。ドアグリップ20は、グリップベース21と、グリップベース21の車室内側に取り付けられるグリップカバー24とから構成される。そして、アームレスト11の車両後方側における上方には、ドアグリップ20の車室外側を覆うように位置するオーナメント50が取り付けられている。オーナメント50の車室内側は表皮材60で覆われており、その素材は(合成)樹脂、(合成)皮革、繊維等から適宜選択される。
【0017】
続いて、個々の構成部品について説明する。
まず、フロントトリム30は、図2に示すように、ドアトリム10の車両前方側を構成するものであって、その後端部は取付部31とされている。この取付部31は後述するリアトリム40の被取付部43に対応し、当該被取付部43を車幅方向に重ね合わせた(重畳した)状態で取り付ける部位に相当する。ここで、本発明の重ね合わせ部は、取付部31及び被取付部43により構成される。
【0018】
詳しく説明すると、取付部31には、車室外側の側面から円筒状の締結部32が複数突設されており、その他平板状の係合爪33等の締結手段が設けられている。この取付部31のうち、アームレスト11より上側の部分は、帯状に延びる第1分割部22とされ、ドアグリップ20のドアグリップベース21のうち車室内側を構成している。第1分割部22は後述するリアトリム40に設けられた第2分割部23と共に一対の半割体を構成しており、互いを合体させることで中空状のドアグリップベース21を形成する。この第1分割部22の車両前方側には、フロントトリム30に一体に設けられた第1分割部22を把手状とするために、開口部34が設けられている。開口部34の車両前方側の開口縁には、締結部32及び係合爪33と同様の構成をなす、フロント側オーナメント締結部35及びオーナメント係合爪36が設けられている。
【0019】
対するリアトリム40は、ドアトリム10の車両後方側を構成するものであって、その上部にはオーナメント50を車室外側から取付可能な取付開口41が設けられている。取付開口41の開口縁部には、その周縁に沿って、円筒状のリア側オーナメント締結部42が複数突設されている。
【0020】
リアトリム40の前端部は、フロントトリム30の取付部31に重畳して取り付けられる被取付部43とされている。この被取付部43において取付部31の締結部32及び係合爪33に対応する位置には、挿通孔44及び被係合孔45が設けられている。このような被取付部43のうち、取付開口41の側方には、帯状の第2分割部23が設けられており、ドアグリップ20のグリップベース21のうち、車室外側を構成している。
【0021】
図4は、フロントトリム30にリアトリム40を取り付けた状態を示す。ドアグリップ20周辺の取付構造については、別途詳しく後述するが、フロントトリム30の締結部32をリアトリム40の挿通孔44に挿通させ、係合爪33を被係合孔45に係合させることで、取付部31と被取付部43とが重ね合わされる。締結部32は、挿通孔44を挿通したのち、超音波溶着等の溶着手段によって締結部32の先端部を溶着することにより、フロントトリム30の取付部31にリアトリム40の被取付部43を固定することができる。
【0022】
このように相互に固定されたフロントトリム30とリアトリム40の車室外側側面には、図4及び図5に示すように、衝撃吸収部材17及びポケット基材18が取り付けられている。ポケット基材18は各トリム30、40と同じ合成樹脂材料等からなり、ドアポケット部15を車室外側から覆うようにして取り付けられることで、車室内側に開口するドアポケットを構成している。
【0023】
オーナメント50は、図2に示すように、板状の本体部51と、本体部51の周縁から外側に向かって延びるフランジ上に形成された複数のオーナメント挿通孔52及びオーナメント被係合孔53を備える。このうち、後述するドアグリップ20の基部20Bに位置するオーナメント挿通孔52は、第1重合挿通孔52Aとされている。このオーナメント50は、本体部51の車室内側を表皮材60により被覆した状態で、フロントトリム30及びリアトリム40の車室外側に取り付けられる(図5参照)。具体的には、フロントトリム30に対しては、フロント側オーナメント締結部35を対応するオーナメント挿通孔52に挿通させ、オーナメント係合爪36をオーナメント被係合孔53に係合させる。リアトリム40に対しては、リア側オーナメント締結部42を対応するオーナメント挿通孔52に挿通させる。また、詳しくは後述するが、第1分割部22に突設された重合締結部25は、第2分割部23の第2重合挿通孔26に挿通されており、この上から、オーナメント50に設けられた第1重合挿通孔52Aを挿通させる。
【0024】
各オーナメント締結部35,42及び重合締結部25を対応するオーナメント挿通孔52及び第1重合挿通孔52Aに挿通させたのち、前述した締結部32と同様に、超音波溶着等の溶着手段によってその先端部を溶着することにより、フロントトリム30及びリアトリム40に対してオーナメント50を固定することができる。なお、表皮材60の端末は、オーナメント50と、当該オーナメント50が取り付けられるフロントトリム30及びリアトリム40との間に挟み込むことで保持されている。
【0025】
このように各トリム30、40に取り付けられたオーナメント50は、ドアグリップ20の車室外側に位置する。即ち、オーナメント50は、フロントトリム30の開口部34を車室外側から覆うと共に、ドアグリップ30の車室外側の対向面を構成する。更に連続して、リアトリム40の取付開口41に取り付けられることで、オーナメント50の車室内側を被覆する表皮材60と共に、ドアトリム10の意匠面を構成する。オーナメント50の本体部51は、車室内側に張り出す段差を有しており、この段差の上面(車両天井側)がアームレスト11の肘置き面54とされ、乗員の肘掛けとして利用される。
【0026】
次に、ドアグリップ20の構成及びその周辺の取付構造について、主に図6から図9を用いて詳しく説明する。ドアグリップ20は、図6に示すように、乗員が車室内側から把持可能な把持部20Aと、その両端に位置してドアグリップ20の根本部分を構成する基部20Bとの部位に分けられる。この基部20Bにおいて、第1分割部22には車室外側に向かってやや先細りに突出する円筒状の上側取付ボス22Aと下側取付ボス22Bとがそれぞれ設けられている。各取付ボス22A、22Bの先端部には、ビス70を挿通可能なビス孔22C,22Dが貫通形成されている。そして、各取付ボス22A,22Bの周縁には、締結部32と同様の構成をなす、円筒状の重合締結部25が複数突設されている。
【0027】
一方、第2分割部23には、上側取付ボス22Aを挿通可能な円形状の上側貫通孔23Aと、下側取付ボス22Bを挿通可能な円形状の下側貫通孔23Bとがそれぞれ対応する位置に設けられている。そして、この各貫通孔23A,23Bの周縁において、各重合締結部25に対応する位置には、当該重合締結部25を挿通可能な第2重合挿通孔26が複数設けられている。
【0028】
第1分割部22と第2分割部23とは、各取付ボス22A、22Bを各貫通孔23A、23Bに挿通し、各重合締結部25を対応する第2重合挿通孔26に挿通させることで、互いに重ね合わせることができる(図4から図6参照)。そして、図8に示すように、把持部20Aの長手方向略中央部においては、第1分割部22のボルト挿通孔22Eにボルト71を挿通させたのち、第2分割部23に設けられたネジ孔23Cに螺合させることで、第1分割部22と第2分割部23とがボルト締結される。ここで、グリップベース21を構成する第1分割部22と第2分割部23との境界(分割)部分は、図7及び図8に示すように、車室内側からは見えにくい車両前方側と同後方側の側部に位置するから、見栄えのよいものとすることができる。
【0029】
なお、ドアグリップ20の基部20Bにおいては、図9に示すように、第2重合挿通孔26に挿通された重合締結部25を、更にオーナメント50の第1重合挿通孔52Aに挿通させたのち、超音波溶着等の溶着手段によって重合締結部25の先端部を溶着することにより、フロントトリム30、リアトリム40、オーナメント50の3点を重ね合わせた状態で固定することができる。このようにドアグリップ20の基部20Bにおいて、フロントトリム30、リアトリム40、オーナメント50を複数箇所にわたって共締めすることで、基部20Bの剛性を高めることができる。
【0030】
このグリップベース21の車室内側には、図6に示すようにグリップカバー24が取り付けられている。詳しく説明すると、フロントトリム30の第1分割部22から上部にかけては、図2に示すように、その車室内側面において車室外側に凹状をなすカバー装着部38が設けられている。グリップカバー24はこのカバー装着部38に嵌め込まれるのであって、当該グリップカバー24の意匠面(車室内側面)とは反対側の車室外側面からは、複数の固定爪24Aが突設されている。一方、カバー装着部38内には、固定爪24Aと対応する位置に孔状の被固定部38Aが開口形成されており、この孔縁に、固定爪24Aが係止されること等により、グリップカバー24がカバー装着部38に対して装着した状態に保持される。
【0031】
このようにして、フロントトリム30とリアトリム40の境界部において組み付けられたドアグリップ20は、図示しないドアインナパネルに対して固定される。即ち、図6に示すように、ドアインナパネルの取付孔72に対して、各取付ボス22A,22Bのビス孔22C,22Dに挿通したビス70を締め付けることで固定される。このように、ドアグリップ20の基部20Bがそれぞれドアインナパネルに固定されているから、フロントトリム30及びリアトリム40に一体成形されたドアグリップ20であっても、所定の取付強度を確保することができる。
【0032】
続いて、衝撃吸収部材17について詳しく説明する。
本実施形態の衝撃吸収部材17は、EA(Energy Absorption)パッドからなり、硬質ポリウレタンフォームをブロック状に成形したものである。この衝撃吸収部材17は、側突時における衝撃を吸収することにより、ドアトリム10の車室内側に着座した乗員に与える衝撃を低減するものである。その態様としては、図5に示すように、車両前後方向に長い略方形のブロック状をなし、フロントトリム30及びリアトリム40に跨るようにして、オーナメント50の下方に車室外側から取り付けられている。
【0033】
フロントトリム30及びリアトリム40には、この衝撃吸収部材17を取り付けるための締結部37,39,46が車両前後方向にわたって複数設けられている。個別に説明すると、まず、フロントトリム30には、車室外側の側面から円筒状をなす1本の前側衝撃吸収部材締結部37が突設されている。さらに、フロントトリム30の取付部31には、同じく円筒状をなす1本の重畳締結部39が突設されている。リアトリム40の被取付部43において、この重畳締結部39に対応する位置には、重畳挿通孔47が設けられ、フロントトリム30にリアトリム40が取り付けられた状態において、重畳締結部39は重畳挿通孔47を挿通した状態にある。続いて、リアトリム40には、円筒状をなす3本の後側衝撃吸収部材締結部46が突設されている。
【0034】
一方、衝撃吸収部材17には、これらの締結部37,39,46を挿通可能な複数の貫通孔が車幅方向に貫通して設けられている。詳しく説明すると、衝撃吸収部材17の前部には、前側衝撃吸収部材締結部37を挿通可能な孔状の前側取付部17Aが設けられている。同中程には、重畳挿通孔47を挿通した重畳締結部39をその上から更に挿通可能な孔状の重畳取付部17Bが設けられている。そして衝撃吸収部材17の後部には、後側衝撃吸収部材締結部46を挿通可能な後側取付部17Cがそれぞれ対応する位置に設けられている。
【0035】
衝撃吸収部材17は、前側衝撃吸収部材締結部37に前側取付部17Aを挿通させ、重畳挿通孔27を挿通した重畳締結部39に重畳取付部17Bを挿通させ、後側衝撃吸収部材締結部46に後側取付部17Cを挿通させる。このように、各締結部37,39,46を各取付部17A,17B,17Cに挿通させたのち、超音波溶着等の溶着手段によって、この締結部37,39,46の先端部を溶着することにより、衝撃吸収部材17は、各トリム30,40に対して固定される(図10及び図11参照)。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、衝撃吸収部材17はフロントトリム30とリアトリム40とに跨ぐ位置に取り付けられているから、乗員に対する側突の衝撃を低減するといった衝撃吸収部材17の本来の機能に加えて、フロントトリム30とリアトリム40の境界部の剛性を高めることができる。また、衝撃吸収部材17はドアトリム10の既存構成部品であるから、フロントトリム30とリアトリム40の境界部を補強する新規部品を設定することなく、その境界部の剛性を高めるという目的を達成することができる。
【0037】
また、衝撃吸収部材17は、フロントトリム30に取り付けられる前側取付部17Aと、リアトリム40に取り付けられる後側取付部17Cとを有しているから、各トリム30,40に対する取付強度を高めることで、より効果的にドアトリム10における境界部の剛性を高めることができる。
【0038】
また、フロントトリム30とリアトリム40とが互いに重ね合わされる取付部31及び被取付部43からなる重ね合わせ部には、衝撃吸収部材17が重畳して取り付けられるとともに、重ね合わせ部上に重畳取付部17Bが設けられ、固定されている。このように、衝撃吸収部材17をただ単にフロントトリム30とリアトリム40に跨って取り付けるだけでなく、重ね合わせ部上に設けられた重畳締結部39、それに挿通する重畳挿通孔47、重畳取付部17Bにより、3部材を重ね合わせた状態で固定することで、重ね合わせ部に対する衝撃吸収部材の取付強度を高めると共に、重ね合わせ部、つまり境界部の剛性を高めることができる。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0040】
(1)上記した実施形態では、衝撃吸収部材17としてEAパッドを例示したが、これに限られず、例えばポリプロピレン樹脂等の側突用樹脂衝撃吸収体であってもよい。
【0041】
(2)上記した実施形態では、1つの衝撃吸収部材17がオーナメント50の下方において、フロントトリム30とリアトリム40に跨って取り付けられていたが、これに限られず、少なくとも1つの衝撃吸収部材がフロントトリム30とリアトリム40に跨って取り付けられていればよく、上下方向の設置位置や個数は限定されない。
【0042】
(3)上記した実施形態では、衝撃吸収部材17は各トリム30,40側に設けられた各締結部37,39,46を貫通孔状の各取付部17A,17B,17Cに挿通させたのち、超音波溶着により固定したが、これに限られず、その他の溶着手段や、ボルト締結等各種固定手段により衝撃吸収部材がフロントトリムとリアトリムとに跨って固定されていればよい。
【符号の説明】
【0043】
10…ドアトリム、17…衝撃吸収部材、17A…前側取付部、17B…重畳取付部、17C…後側取付部、20…ドアグリップ、30…フロントトリム、31…取付部、32…締結部、37…前側衝撃吸収部材締結部、39…重畳締結部、40…リアトリム、43…被取付部、46…後側衝撃吸収部材締結部、47…重畳挿通孔、50…オーナメント
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃吸収部材を備えたドアトリムであって、
車両前方側に配設されるフロントトリムと、車両後方側に配設されるリアトリムと、を備え、
前記衝撃吸収部材は、前記フロントトリム及び前記リアトリムに取り付けられる取付部を有し、前記フロントトリムと前記リアトリムとに跨ぐ位置に設けられていることを特徴とするドアトリム。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、前記フロントトリムに取り付けられる前側取付部と、前記リアトリムに取り付けられる後側取付部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のドアトリム。
【請求項3】
前記フロントトリム及び前記リアトリムが互いに重ね合わされた部分である重ね合わせ部を有し、
前記衝撃吸収部材は前記重ね合わせ部に重畳して取り付けられる重畳取付部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のドアトリム。
【請求項1】
衝撃吸収部材を備えたドアトリムであって、
車両前方側に配設されるフロントトリムと、車両後方側に配設されるリアトリムと、を備え、
前記衝撃吸収部材は、前記フロントトリム及び前記リアトリムに取り付けられる取付部を有し、前記フロントトリムと前記リアトリムとに跨ぐ位置に設けられていることを特徴とするドアトリム。
【請求項2】
前記衝撃吸収部材は、前記フロントトリムに取り付けられる前側取付部と、前記リアトリムに取り付けられる後側取付部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のドアトリム。
【請求項3】
前記フロントトリム及び前記リアトリムが互いに重ね合わされた部分である重ね合わせ部を有し、
前記衝撃吸収部材は前記重ね合わせ部に重畳して取り付けられる重畳取付部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のドアトリム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−32099(P2013−32099A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169165(P2011−169165)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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