説明

ドアミラーの取付構造

【課題】部品点数の増加や取り付け作業の煩雑化を招くことなく、弾性シート部材の捲くれ上がりを防止することのできるドアミラーの取付構造を提供する。
【解決手段】ミラーベース8の延出部9の外縁に沿って車体の内方側に突出する係止フランジ20を設ける。延出部9の係止フランジ20に近接する部位に車体の内方側に突出するボス部21を設ける。弾性シート部材10に、係止フランジ20が挿入係合される係止壁24と、ボス部21が挿入される挿通孔25を設ける。挿通孔25を貫通したボス部21にプッシュナットを圧入して、弾性シート部材10をミラーベース8に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のドアに装備されるドアミラーの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドアミラーの取付構造として、ドア本体とドアの窓枠部の間にベース取付座を設け、ドアミラーを回動可能に支持するミラーベースをベース取付座に取り付けたものがある。この取付構造では、ミラーベースとベース取付座の隙間を無くす目的で、両者の間に弾性シート部材が介装されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平3−44045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、車両のドア部のデザインの多様化により、ドアの構造として、ミラーベースの外縁部がドアの窓枠部よりも外側(外周側)に延出するものが開発されている。
このようにミラーベースにドア枠部よりも外側に延出する延出部が設けられているドアにおいては、車内側からの見栄えを向上させ、かつ、ドア閉時におけるミラーベースとドア開口部の間の隙間を無くすために、ミラーベースとベース取付座の間に介装される弾性シート部材をミラーベースの延出部の背面まで延ばす必要が生じる。この場合、延出部の背面に重合される弾性シート部材の縁部は、捲くれ上がりを防止するために背面側から押さえ込む必要がある。このため、弾性シート部材の縁部に別体のプレート部材を重合し、そのプレート部材で弾性シート部材を挟み込んで、弾性シート部材の縁部を延出部に固定することが検討されている。
【0004】
しかし、このように別体のプレート部材で弾性シート部材の縁部を固定する場合には、部品点数が多くなるうえに、取り付け作業が煩雑になり、製造コストの高騰を招くことが懸念される。
【0005】
そこで、この発明は、部品点数の増加や取り付け作業の煩雑化を招くことなく、弾性シート部材の捲くれ上がりを防止することのできるドアミラーの取付構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、ドア本体(例えば、後述の実施形態におけるドア本体2)とドアの窓枠部(例えば、後述の実施形態におけるドアサッシュ3)の間にベース取付座(例えば、後述の実施形態におけるミラー設置プレート6)が設けられ、ドアミラー(例えば、後述の実施形態におけるドアミラー7)を支持するミラーベース(例えば、後述の実施形態におけるミラーベース8)に、該ミラーベースが前記ベース取付座に取り付けられた状態で前記窓枠部の外縁部よりもドア面方向に沿って外側に延出する延出部(例えば、後述の実施形態における延出部9)が設けられ、前記ミラーベースが弾性シート部材(例えば、後述の実施形態における弾性シート部材10)を介して車体の外方から前記ベース取付座に取り付けられるドアミラーの取付構造であって、前記延出部の外縁に沿って車体の内方側に突出する係止フランジ(例えば、後述の実施形態における係止フランジ20)を設けるとともに、前記延出部の前記係止フランジに近接する部位に車体の内方側に突出するボス部(例えば、後述の実施形態におけるボス部21)を設け、前記弾性シート部材に、前記係止フランジが挿入係合される係止部(例えば、後述の実施形態における係止壁24)と、前記ボス部が挿入される挿通孔(例えば、後述の実施形態における挿通孔25)を設け、前記挿通孔を貫通した前記ボス部に締結部材(例えば、後述の実施形態におけるプッシュナット30)を係合して、前記弾性シート部材を前記ミラーベースに固定したことを特徴とする。
これにより、弾性シート部材の縁部は、係止部でミラーベースの係止フランジに係合され、ボス部に係合された締結部材により、係止フランジに近接した位置でミラーベースに抜け止めされる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドアミラーの取付構造において、前記締結部材は、前記ボス部に圧入固定される板状の圧入部材(例えば、後述の実施形態におけるプッシュナット30)であることを特徴とする。
これにより、挿通孔を貫通したボス部に圧入部材を圧入するだけ、弾性シート部材がミラーベースの延出部に固定されるようになる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のドアミラーの取付構造において、前記弾性シート部材の係止部に、前記ミラーベースに臨む側の面から前記係止フランジが挿入係合される係止溝(例えば、後述の実施形態における係止溝26)を設け、前記係止溝の底壁(例えば、後述の実施形態における底壁26a)を、前記弾性シート部材の他の部位の肉厚よりも厚くして車体の内方側に突出させるとともに、前記弾性シート部材とミラーベースを組み付けた状態での、前記底壁の車体の内方側の突出高さを前記ボス部の突出高さよりも高く設定したことを特徴とする。
これにより、弾性シート部材側の係止溝の底壁が同シート部材の縁部を強固に補強するようになり、しかも、その底壁の突出高さがボス部の突出高さよりも高くなることから、ボス部の端部が周囲の物や人の手に接触しにくくなる。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のドアミラーの取付構造において、前記弾性シート部材の車体の内方側に、前記係止部に連結されて当該係止部とともに前記挿通孔の周域を囲む周囲補強リブ(例えば、後述の実施形態における周囲補強リブ27)を突設し、前記弾性シート部材とミラーベースを組み付けた状態での、前記周囲補強リブの車体の内方側の突出高さを前記ボス部の突出高さよりも高く設定したことを特徴とする。
これにより、係止部と周囲補強リブによって挿通孔の周域が補強されるとともに、係止部が周囲補強リブによって補強されるようになる。また、周囲補強リブの突出高さがボス部の突出高さよりも高くなることから、ボス部の端部が周囲の物や人の手に接触しにくくなる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のドアミラーの取付構造において、前記延出部に、前記係止フランジと前記ボス部を連結する補強リブ(例えば、後述の実施形態における補強リブ22a)を設け、前記弾性シート部材の挿通孔の周囲に、前記ミラーベースとの接触面から車体の内方側に向かって窪み、前記補強リブを収納する凹部(例えば、後述の実施形態における凹部29)を設け、前記ボス部に対する締結部材の係合によって前記凹部の底面を前記補強リブの端面に押圧することを特徴とする。
これにより、係止フランジとボス部が補強リブによって相互に補強されるようになるとともに、ミラーベースに対する弾性シート部材の固定時には、弾性シート部材側の凹部の底面が補強リブの端面に押圧状態で固定されるようになる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、弾性シート部材の縁部が係止部でミラーベースの係止フランジに係合されるとともに、ボス部に係合された締結部材によって係止フランジに近接した位置でミラーベースに抜け止めされるため、部品点数の増加や取り付け作業の煩雑化を招くことなく弾性シート部材の捲くれ上がりを防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、締結部材を板状の圧入部材によって構成したため、締結作業を容易化できるようになるとともに、ボルト・ナットによる締結に比較して軸方向の占有スペースが小さくて済み、その分、ミラーベースやその取付部の薄肉化を図ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、係止溝の底壁が弾性シート部材の縁部を強固に補強するようになり、しかも、その係止溝の底壁がボス部の端部よりも高く突出してボス部の端部が周囲の物や人の手に接触するのを防止することができるため、弾性シート部材の端部の捲れ上がりをより有効に防止できるとともに、製品性の向上を図ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、係止部と周囲補強リブによって挿通孔の周域を補強できるとともに、周囲補強リブによって係止部自体も補強できるため、締結部材による弾性シート部材とミラーベースの締結強度の向上と、弾性シート部材の端部の捲れ防止性能の向上を図ることができる。また、周囲補強リブがボス部の端部よりも高く突出してボス部の端部が周囲のものや人の手に接触するのを防止することができるため、商品性のさらなる向上を図ることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、係止フランジとボス部が補強リブを介して相互に補強されることから、係止フランジとボス部の剛性の向上を図ることができ、しかも、係止フランジの先端部に近接した位置で弾性シート部材側の凹部の底面が押圧固定されることから、弾性シート部材の端部をさらに捲れにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、特別に断らない限り、上下と前後は車体取付状態での上下と前後を意味するものとする。また、図中矢印U,Dは上方と下方、矢印F,Rは前方と後方、矢印O,Iは車外側と車内側をそれぞれ指すものとする。
【0017】
図1,図2は、この発明にかかるドアミラー取付構造を採用した車両のフロント側のサイドドア1を示すものである。これらの図において、2は、ドア本体であり、3は、ドア本体2の上部に一体に取り付けられ、昇降ガラス4の外縁部を保持するドアサッシュ(窓枠部)である。ドアサッシュ3の前縁部は車体形状に沿うように前方に傾斜してドア本体2に結合されており、ドア本体2の前部側の上面とドアサッシュ3に挟まれた略三角形状の領域にはミラー設置プレート6(ベース取付座)が一体に取り付けられている。ミラー設置プレート6にはドアミラー7を回動可能に支持する樹脂製のミラーベース8が取付けられる。
【0018】
ドアサッシュ3の前縁部はドア本体2の前端部に向かって緩やかに湾曲し、これに対し、ミラーベース8はドアサッシュ3の湾曲部から前方側に一回り大きく張り出している。このミラーベース8のドアサッシュ3の前方側に張り出す領域を延出部9と呼ぶ。ミラーベース8は、その背面側(車体の内方側)に、ゴム弾性体から成る薄肉の弾性シート部材10が取り付けられ、その弾性シート部材10を間に挟んでミラー設置プレート6とドアサッシュ3の車外側面に重合固定されるようになっている。
【0019】
図3は、ミラーベース8の背部に弾性シート部材10を一体に組み付けた組付体を示すものであり、図4〜図6は、図3のA−A断面、B−B断面、C−C断面に対応する断面図である。また、図7は、弾性シート部材10の前部側を捲った組付体を示すものであり、図8,図9は、それぞれ図7のD,E部分に対応する拡大図である。
図4,図5において、11は、ドアサッシュ3の外周縁に取り付けられてドア閉時に車体側のドア開口部(図示せず)の周縁に密接するドアウエザーストリップであり、12は、ミラー設置プレート4に隣接して配置され、上端部がドアサッシュ3に結合される断面略コ字状のガラスガイド、13は、ガラスガイド12に取り付けられて昇降ガラス4の前縁部に摺動自在に密接するグラスランである。
【0020】
ミラーベース8は、背面視で上辺が斜め前方に傾斜する略台形状に形成されている。弾性シート部材10はこのミラーベース8の背面視とほぼ同形状されている。図3に示すように、ミラーベース8と弾性シート部材10のうちの、後部上方側のコーナーから前部下方側のコーナーの近傍に斜めに延出する領域は、ドアサッシュ3の車外側面に支持されるサッシュ支持領域14とされ、後部上方側のコーナーから後部下方側のコーナーに鉛直に延出する領域は、ガラスガイド12の車外側面に支持されるガイド支持領域15とされている。また、サッシュ支持領域14とガイド支持領域15はほぼ平坦に形成され、両領域14,15に挟まれた中央の略三角形状の領域は、車体の内方側に膨出してミラー設置プレート6に固定される固定部領域16とされている。
ミラーベース8の固定部領域16には、弾性シート部材10を貫通してミラー設置プレート6に締結される複数のボルト17が突設され、弾性シート部材10の固定部領域16には、ドアミラー7の電気系統のケーブル(図示せず)を車内側に引き込むためのケーブル引き込み孔18が設けられている。
また、ミラーベース8は、図1に示すように車体の外方側の下縁部が外側に向かって大きく膨出し、その膨出部19にドアミラー7が回動可能に支持されるようになっている。
【0021】
ところで、ミラーベース8の延出部9の前端部には、車体の内方側に向かって略直角に屈曲する係止フランジ20が形成されている。この係止フランジ20は、ミラーベース8の前部上方側のコーナーを挟んで上辺側と側辺側に連続しているが、上辺側領域は後方側に向かって高さが低くなり、側辺側領域は下端側の一部の領域を除いてほぼ一定の突出高さとなっている。係止フランジ20の下端側の領域は、ミラーベース8の膨出部19の形状に対応して略三角形状に大きく突出している。この係止フランジ20の下端領域には、図7に示すように、係止フランジ20の先端部から付根部側に向かって切り欠かれたスリット23が設けられている。
また、図7,図8に示すように、ミラーベース8の延出部9のうちの、係止フランジ20の側辺側領域に近接する部位には、上下方向に離間して3つのボス部21が突設されている。この各ボス部21の付根部の周囲には周方向等間隔に3つの補強リブ22a,22b,22cが設けられ、そのうちの一つのリブ22aが係止フランジ20に略直交するかたちで連結されている。
【0022】
一方、弾性シート部材10には、ミラーベース8側の係止フランジ20に係止される係止壁24(係止部)が前縁部に沿って設けられるとともに、ミラーベース8側のボス部21が貫通状態で挿入される3つの挿通孔25が形成されている。係止壁24のミラーベース8に臨む側の面には係止フランジ20が挿入係合される係止溝26が形成されている。また、係止壁24は車体の内方側に帯状に隆起し、係止溝26の底壁26aに相当する部分は弾性シート部材10の他の部位に比較して肉厚に形成されている。したがって、係止フランジ20に被着される弾性シート部材10の前縁部のほぼ全域は係止壁24によって補強されている。なお、係止溝26の底壁26aに相当する部分を含む係止壁24は、後述するプッシュナット30(締結部材)と弾性シート部材10との接触面に対して車体の内方側に隆起している。
また、ミラーベース8側のボス部21は、弾性シート部材10がミラーベース8に取り付けられた状態において、挿通孔25を貫通して弾性シート部材10の外側(車体の内方側)に突出するが、弾性シート部材10側の係止壁24の底壁26aの突出高さはこのときのボス部21の突出高さよりも高くなるように設定されている。
【0023】
さらに、弾性シート部材10の車体の内方側に臨む面には、図3,図4,図6に示すように、最上部の挿通孔25の周域を略U字状に囲み両端部が係止壁24に接続された周囲補強リブ27が設けられている。また、弾性シート部材10のサッシュ支持領域14の端縁には略上下方向に延出する段差壁28が設けられており、弾性シート部材10上の中間部の挿通孔25の上下には、両端部が段差壁28と係止壁24に接続された周囲補強リブ27A,27Bが設けられている。これらの周囲補強リブ27,27A,27Bは車体の内方側に突出しているが、これらの突出高さは係止壁24と同様にボス部21の突出高さよりも高くなるように設定されている。なお、この実施形態の場合、最下部の挿通孔25の近傍においては係止壁24と段差壁28の近接幅が狭いために周囲補強リブ27や27A,27Bを設けていないが、この部位にも周囲補強リブ27や27A,27Bを設けるようにしても良い。
【0024】
また、弾性シート部材10のミラーベース8に臨む側(車体の外方側)の面には、図7,図9に示すように、各挿通孔25の周囲を囲むように凹部29が形成されている。この凹部29はミラーベース8と接触する周囲の接触面に対して窪み、ミラーベース8側の各ボス部21の周囲の補強リブ22a,22b,22cを収納するようになっている。
【0025】
ミラーベース8に対する弾性シート部材10の組付時に挿通孔25を貫通した各ボス部21の先端部には、板状の圧入部材であるプッシュナット30(締結部材)が圧入固定されるようになっている。このプッシュナット30による締結時には、弾性シート部材10側の凹部29の底面は、補強リブ22a,22b,22cの端面に対して押圧状態で固定される。
なお、ボス部21に圧入される圧入部材はプッシュナット30に限るものでなく、球状等の圧肉の他の形状のものであっても良い。また、ボス部21に雄ねじを形成しておき、弾性シート部材10の外側からナットを螺合するようにしても良い。
【0026】
また、図7に示すように、弾性シート部材10の係止壁24の下部領域には充分な延出長さを持つ断面略T字状の係止爪31が設けられ、この係止爪31がミラーベース8側のスリット23に挿入されるようになっている。したがって、係止壁24の下部領域は、係止爪31とスリット23による係合によりミラーベース8の延出部9の下縁に安定的に係止される。
【0027】
以上のように、このドアミラー7の取付構造においては、弾性シート部材10の係止壁24(係止溝26)にミラーベース8側の係止フランジ20を係合するとともに、係止フランジ20の近傍の3つのボス部21を弾性シート部材10の対応する挿通孔25に挿入する。そして、この状態において、挿入孔25を貫通したボス部21の先端部にプッシュナット30を圧入することにより、弾性シート部材10をミラーベース8の延出部9に固定する。このため、別体のプレート材で弾性シート部材10を挟み込んで延出部9に固定する場合に比較して部品点数の少ない極めて簡単な構造でありながら、弾性シート部材10の捲れ上がりを確実に防止することができる。
なお、ミラーベース8の延出部9のうち上辺側の領域はボス部21とプッシュナット30による締結を行っていないが、この領域では、弾性シート部材10がドアサッシュ3やドアウエザーストリップ11によってミラーベース8側に押し付けられるため、端部の捲れ上がりの心配はない。
【0028】
上述のようにミラーベース8に固定された弾性シート部材10は、ドア側とミラーベース8の間を密閉して両者の隙間からの水滴や風の進入を防止する。そして、ミラーベース8の延出部9では、係止フランジ20に弾性シート部材10側の係止壁24が覆い被せるかたちで取付けられるため、簡単な取付構造でありながら水滴や風の進入を確実に防止することができる。
【0029】
また、この実施形態の場合、挿通孔25を貫通したボス部21に係合する締結部材としてプッシュナット30を用いるようにしているため、ボス部21に先端部側から押し込むだけで容易に固定作業を完了することができる。したがって、取付作業の効率化を図ることができる。また、プッシュナット30を用いる場合には、ボルトやナットを用いる場合に比較して軸方向の占有スペースが少なくて済み、その分、ミラーベース8や車体側の取付部の薄型化を図ることができる。
【0030】
また、このドアミラー7の取付構造においては、弾性シート部材10の前縁の係止壁24の底壁26aが他の部位に比較して肉厚に形成されているため、弾性シート部材10の前縁部を強固に補強し、前縁部の捲れ上がりを有効に防止することができる。さらに、係止壁24の車体の内方側への突出高さは挿通孔25から突出したボス部21の端面の高さよりも高くなるように設定されているため、ボス部21の端部が周囲の物や人の手に接触するのを係止壁24によって防止することができる。
【0031】
さらに、このドアミラー7の取付構造においては、弾性シート部材10上の挿通孔25の周囲に、係止壁24と連結される周囲補強リブ27,27A,27Bが設けられているため、周囲補強リブ27,27A,27Bと係止壁24によって挿通孔25の周囲を補強することができるとともに、周囲補強リブ27,27A,27Bによって係止壁24自体を補強して、係止壁24の倒れや浮き上がりを防止することができる。したがって、これにより弾性シート部材10とミラーベース8の結合強度を高めることができるとともに、弾性シート部材10の前縁部の捲れ上がりを有効に防止することができる。この周囲補強リブ27,27A,27Bの場合も、車体の内方側の突出高さが挿通孔25から突出したボス部21の端面の高さよも高くなるように設定されているため、ボス部21の端部が周囲の物や人の手に接触するのを周囲補強リブ27,27A,27Bによっても防止することができる。
【0032】
また、このドアミラー7の取付構造では、ミラーベース8の延出部9に各ボス部21の付根部の周囲を補給する補強リブ22a,22b,22cが設けられているため、ボス部21の付根部の強度を充分に高めることができる。特に、補強リブ22aの一端は係止壁24に略直角に結合されているため、補強リブ22aを介してボス部21と係止フランジ21の倒れ剛性を高めることができる。
【0033】
さらに、この取付構造の場合、弾性シート部材10の各挿通孔25の周囲に、車体の内方側に向かって窪みミラーベース8側の補強リブ22a,22b,22cを内側に収納する凹部29が設けられ、プッシュナット30による締結時に、この凹部29の底面が補強リブ22a,22b,22cの端面に押圧状態で固定されるため、弾性シート部材10の押圧固定部が係止フランジ20の先端部に近接した位置に設定されることになり、その結果、弾性シート部材10の端部の捲れ上がりを有効に防止することが可能になる。
【0034】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の一実施形態の車両のサイドドアを車外側から見た斜視図。
【図2】同実施形態のサイドドアの前部を車内側から見た斜視図。
【図3】同実施形態のミラーベースと弾性シート部材の組付体を車体内方側から見た正面図。
【図4】同実施形態を示す図3のA−A断面に対応する車体組付状態での断面図。
【図5】同実施形態を示す図3のB−B断面に対応する車体組付状態での断面図。
【図6】同実施形態を示す図3のC−C断面に対応する拡大断面図。
【図7】同実施形態のミラーベースと弾性シート部材の組付体を、弾性シート部材の一部を捲った状態で示す斜視図。
【図8】同実施形態を示す図7のD部に対応する拡大断面図。
【図9】同実施形態を示す図7のE部に対応する部分の弾性シート部材の背面図。
【符号の説明】
【0036】
2…ドア本体
3…ドアサッシュ(窓枠部)
6…ミラー設置プレート(ベース取付座)
7…ドアミラー
8…ミラーベース
9…延出部
10…弾性シート部材
20…係止フランジ
21…ボス部
22a…補強リブ
24…係止壁(係止部)
25…挿通孔
26a…底壁
27,27A,27B…周囲補強リブ
29…凹部
30…プッシュナット(圧入部材、締結部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア本体とドアの窓枠部の間にベース取付座が設けられ、ドアミラーを支持するミラーベースに、該ミラーベースが前記ベース取付座に取り付けられた状態で前記窓枠部の外縁部よりもドア面方向に沿って外側に延出する延出部が設けられ、前記ミラーベースが弾性シート部材を介して車体の外方から前記ベース取付座に取り付けられるドアミラーの取付構造であって、
前記延出部の外縁に沿って車体の内方側に突出する係止フランジを設けるとともに、前記延出部の前記係止フランジに近接する部位に車体の内方側に突出するボス部を設け、
前記弾性シート部材に、前記係止フランジが挿入係合される係止部と、前記ボス部が挿入される挿通孔を設け、
前記挿通孔を貫通した前記ボス部に締結部材を係合して、前記弾性シート部材を前記ミラーベースに固定したことを特徴とするドアミラーの取付構造。
【請求項2】
前記締結部材は、前記ボス部に圧入固定される板状の圧入部材であることを特徴とする請求項1に記載のドアミラーの取付構造。
【請求項3】
前記弾性シート部材の係止部に、前記ミラーベースに臨む側の面から前記係止フランジが挿入係合される係止溝を設け、
前記係止溝の底壁を、前記弾性シート部材の他の部位の肉厚よりも厚くして車体の内方側に突出させるともに、前記弾性シート部材とミラーベースを組み付けた状態での、前記底壁の車体の内方側の突出高さを前記ボス部の突出高さよりも高く設定したことを特徴とする請求項1または2に記載のドアミラーの取付構造。
【請求項4】
前記弾性シート部材の車体の内方側に、前記係止部に連結されて当該係止部とともに前記挿通孔の周域を囲む周囲補強リブを突設し、前記弾性シート部材とミラーベースを組み付けた状態での、前記周囲補強リブの車体の内方側の突出高さを前記ボス部の突出高さよりも高く設定したことを特徴とする請求項3に記載のドアミラーの取付構造。
【請求項5】
前記延出部に、前記係止フランジと前記ボス部を連結する補強リブを設け、
前記弾性シート部材の挿通孔の周囲に、前記ミラーベースとの接触面から車体の内方側に向かって窪み、前記補強リブを収納する凹部を設け、
前記ボス部に対する締結部材の係合によって前記凹部の底面を前記補強リブの端面に押圧することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のドアミラーの取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−36767(P2010−36767A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203207(P2008−203207)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】