説明

ドア開閉装置

【課題】駆動手段が発生した駆動力の伝達効率に優れたドア開閉装置を提供すること。
【解決手段】車両本体Bに対して上下方向へ開閉自在に支持されるドアBDと車両本体との間を連結する複数のリンク部材2,5の少なくとも一つのリンク部材を駆動モータ22によって駆動し、ドアを自動で開閉するドア開閉装置1は、駆動モータを複数のリンク部材の少なくとも一つに設け、駆動モータを設けたリンク部材2と隣接するリンク部材5とを連結する連結軸4を駆動モータによって回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアを電動アクチュエータによって自動で開閉するドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両本体に対して上下方向へ開閉自在に支持されるドアを開閉するドア開閉装置として、例えば、車両本体の後部に設けられるバックドアを、駆動機構によって開閉駆動するドア開閉装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたドア開閉装置は、車両本体の後部に駆動モータが設けられ、図10に示すように、駆動モータの回転軸61に一端を連結した揺動アーム62と、揺動アーム62とバックドアBDとの間を連結する連結リンク64とを有している。ドア開閉装置は、駆動モータを駆動して回転軸に連結した揺動アーム62を回転させることにより、連結リンク64を介してバックドアBDを自動で開閉している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3795325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のドア開閉装置では、図10に示すように、駆動モータの駆動力によって揺動アーム62が時計回り方向に回転を始めると、駆動モータの駆動力は、揺動アーム62から連結リンク64へと伝達される。このため、駆動モータの駆動力は、連結リンク64から連結軸65を介してバックドアBDへ力F0として出力される。このとき、閉成状態にあるバックドアBDを開方向に駆動させる際は、枢支軸67と連結軸65との距離L2と、枢支軸67と連結軸65とを結ぶ線分に直交する方向における力F0の分力F2とを積算したトルク(=F2×L2)がバックドアBDの枢支軸67に作用する。
【0005】
しかし、以下の理由により、分力F2、距離L2及び駆動モータの駆動力を大きくすることが難しい。
【0006】
先ず、分力F2について説明する。駆動モータの駆動力によって、図10に示すように、揺動アーム62が時計回り方向に回転を始めると、連結リンク64の連結軸63が、回転軸61を中心として時計回り方向に回転する。これにより、連結リンク64は、バックドアBDを開方向へ作動させるように連結軸63側が枢支軸67に接近するように移動する。これにより、ドア開閉装置からバックドアBDへ出力される力F0は、連結リンク64の移動方向が枢支軸67を中心とした連結軸65の移動軌跡とは異なる状態で枢支軸67に向かう方向に作用する。この結果、実際にバックドアBDを開方向に回転させる分力F2は、力F0よりも小さくなる。
【0007】
ここで、駆動モータを駆動して開く際にバックドアBDに作用するトルクが一定であるとすると、分力F2が小さい場合には、距離L2を大きくする必要がある。この場合、連結軸65の位置をバックドアBDの下方へ移動させることで距離L2を大きくすることができる。しかし、このようにすると、ドア開閉装置が車両前方寄りへ配置されることになり、車室内スペースが犠牲となる虞がある。また、連結リンク64の移動方向を、枢支軸67を中心とした連結軸65の移動軌跡に近づけることで、連結リンク64の移動が直接バックドアBDを回転させる力として作用させることができる。しかし、連結リンク64の移動方向が車両前後方向となるため、車室内スペースが犠牲となる虞がある。
【0008】
更に、車両レイアウト上、分力F2及び距離L2を大きくすることが困難な場合、駆動モータの駆動力を大きくすることで分力F2を大きくすることも考えられる。しかし、駆動モータ自体のサイズが大きくなる傾向にあることから、車室内スペースが犠牲となる虞がある。
【0009】
このように、駆動モータの駆動力が、揺動アーム62から連結リンク64を介してバックドアBDへて伝達されることから、特許文献1のドア開閉装置は、車室内スペースが犠牲となる虞があると共に、駆動モータが発生した駆動力の伝達効率が悪いという問題があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、駆動手段が発生した駆動力の伝達効率に優れたドア開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のドア開閉装置は、車両本体に対して上下方向へ開閉自在に支持されるドアと前記車両本体との間を連結する複数のリンク部材の少なくとも一つのリンク部材を電動アクチュエータによって駆動し、前記ドアを自動で開閉するドア開閉装置において、前記電動アクチュエータを前記複数のリンク部材の少なくとも一つに設け、前記電動アクチュエータを設けたリンク部材と隣接するリンク部材とを連結する連結軸を前記電動アクチュエータによって回転させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のドア開閉装置は、上記の発明において、前記電動アクチュエータを設けたリンク部材に設けられ、前記電動アクチュエータの回転速度を減速して当該リンク部材の連結軸へ伝達する減速機構と、前記電動アクチュエータの駆動力の前記減速機構への伝達或いは非伝達を切り替えるクラッチ機構と、を備えていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のドア開閉装置は、上記の発明において、前記減速機構は、前記電動アクチュエータの駆動力が非伝達となった際に前記ドアを開方向へ付勢する付勢力を当該減速機構に付与し、前記ドアを停止位置に保持するばねを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のドア開閉装置は、上記の発明において、前記車両本体側に配置されるリンク部材の長さは、他のリンク部材の長さよりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ドアと車両本体との間を連結する複数のリンク部材の隣り合うリンク部材の一つのリンク部材に電動アクチュエータを設け、隣り合うリンク部材を連結する連結軸を回転させるので、電動アクチュエータの駆動力が出力される連結軸によって、出力された駆動力がリンク部材から他のリンク部材を介することなく直接ドアに作用するため、電動アクチュエータが発生した駆動力の伝達効率に優れているという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1にかかるドア開閉装置として、バックドアを開閉するドア開閉装置を搭載した車両の後部を示す側面概念図である。
【図2】図2は、図1に示すドア開閉装置の電動アクチュエータを設けたリンク部材の概略構成図である。
【図3】図3は、図1に示すバックドアを全閉と全開の中間まで開いた状態のバックドアの開度を説明する図である。
【図4】図4は、連結軸4を中心としてリンク部材5を回転させた際に、リンク部材5からバックドアBDへ出力される力について説明する図である。
【図5】図5は、バックドアBDの開成状態における車両を後方から見た概念図である。
【図6】図6は、バックドアBDの閉成状態における車両を後方から見た概念図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2にかかるドア開閉装置として、バックドアを開閉するドア開閉装置を搭載した車両の後部を示す側面概念図である。
【図8】図8は、図7に示すバックドアを全閉と全開の中間まで開いて3本のリンク部材の連結を説明する図である。
【図9】図9は、電動アクチュエータを設けたリンク部材の変形例を示す概略構成図である。
【図10】図10は、従来のドア開閉装置において、回転軸を中心として揺動アームを回転させた際に、リンク部材からバックドアBDへ出力される力について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下に、本発明にかかるドア開閉装置の実施の形態1を図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態1にかかるドア開閉装置として、バックドアを開閉するドア開閉装置を搭載した車両の後部を示す側面概念図である。図2は、図1に示すドア開閉装置の電動アクチュエータを設けたリンク部材の概略構成図である。図3は、図1に示すバックドアを全閉と全開の中間まで開いた状態のバックドアの開度を説明する図である。
【0019】
ドア開閉装置1は、図1に示すように、自動車の車両本体(躯体)Bと、車両本体Bの後部に車両本体Bに対して上下方向へ開閉自在に支持される跳ね上げ式のバックドアBDとの間の車両本体Bの一側に設けられ、バックドアBDを自動で開閉する。ドア開閉装置1は、図1及び図2に示すように、連結軸4によって互いに連結されるリンク部材2,5と、開度検出部11と、制御部12と、記憶部13と、車両本体Bのインストルメントパネルや遠隔操作キー等に設けられ、バックドアBDの開閉を指示する信号を入力するドア開閉スイッチ14とを備えている。ここで、バックドアBDは、両側をヒンジHjによって車両本体Bに支持されており、ラッチ機構によって閉成状態に保持される。
【0020】
リンク部材2は、図1に示すように、一端が連結軸3によって車両本体Bと連結され、他端がリンク部材5の一端と連結軸4によって連結されている。リンク部材2は、図2に示すように、長手状の筐体21内に駆動モータ22と、ウォーム23と、減速機構24と、クラッチ機構25とが収容されている。筐体21には、連結軸3を挿通する挿通孔21aが形成されている。
【0021】
電動アクチュエータとしての駆動モータ22は、図2に示すように、回転軸にウォーム23が取り付けられ、ウォーム23及び減速機構24を介して出力を連結軸4へ伝達する。減速機構24は、ウォーム23側から順に減速ギア24a〜24cが配置されている。ここで、減速ギア24aは、筐体21との間にばね24dが設けられている。ばね24dは、一端24d1が減速ギア24aに係止されると共に、他端24d2が筐体21に係止され、例えば、うず巻きばねが使用される。また、減速ギア24cは、連結軸4と同軸上に配置され、ウォーム23及び減速ギア24a,24bを介して伝達される駆動モータ22の駆動力を連結軸4へ出力する。クラッチ機構25は、駆動モータ22から減速機構24への駆動力の伝達或いは非伝達を切り替える。
【0022】
これにより、駆動モータ22の駆動又は手動によってバックドアBDを閉方向へ作動させると、減速ギア24aが、図2において時計回り方向に回転してばね24dが巻き締められ、ばね24dに付勢力が蓄えられる。この結果、駆動モータ22の駆動又は手動によってバックドアBDを全閉位置から開方向へ作動させた場合には、ばね24dの付勢力によってバックドアBDの開作動に要する力を補助することができ、駆動モータ22から減速機構24へ駆動力が非伝達となった際であっても、ばね24dが減速機構24に開方向への付勢力を付与し、バックドアBDを停止位置に保持する。
【0023】
リンク部材5は、図1に示すように、一端が連結軸4によってリンク部材2と連結され、他端が連結軸6によってバックドアBDと連結されている。リンク部材5は、駆動モータ22から連結軸4へ伝達される駆動力によって、連結軸4を回転中心として連結軸4と共に回転する。バックドアBDの閉成状態におけるリンク部材5は、長手方向がヒンジHjに向かうように配置されている。なお、リンク部材5は、筐体51に連結軸6を挿通する挿通孔51aが形成されている。
【0024】
開度検出部11は、例えば、連結軸3,4,6やバックドアBDのヒンジHjに設けられ、図3に示すように、バックドアBDの開き位置PDを、全閉位置PCLを基準とする開度θとして検出する角度センサである。
【0025】
制御部12は、CPU等を用いて実現され、駆動モータ22の回転を制御することによりバックドアBDの開閉駆動を制御する。即ち、制御部12は、隣り合うリンク部材2とリンク部材5との間を連結する連結軸4の回転を、駆動モータ22を介して制御することで、リンク部材5を連結軸4と共に回転させてバックドアBDの開閉駆動を制御する。
【0026】
記憶部13には、バックドアBDの開閉動作に伴って開度検出部11が検出したバックドアBDの開度θと、例えば、予め設定されたバックドアBDの駆動速度を規定する駆動速度制御パターンが記憶されている。制御部12は、バックドアBDの開度θが駆動速度制御パターンと合致するように開閉時のバックドアBDの駆動速度を制御する。
【0027】
バックドアBDを開く際、ドア開閉装置1には、乗員がドア開閉スイッチ14を押下することにより、バックドアBDを開く指示信号が入力される。すると、制御部12がリンク部材2を駆動してバックドアBDを全閉位置PCLから開駆動させ、バックドアBDが全開位置PFO(図1参照)まで開かれる。ここで、ドア開信号が出力された場合、制御部12は、前記ラッチ機構に制御信号を出力して閉成状態を解除させた後、ドア開閉装置1にバックドアBDの開駆動を開始させる。
【0028】
なお、バックドアBDを閉じる際は、乗員がドア開閉スイッチ14を押下することにより、バックドアBDを閉じる指示信号を入力する。すると、制御部12が駆動モータ22を介して連結軸4の回転を上述とは逆に制御する。これにより、バックドアBDが下方向へ閉駆動され、ラッチ機構にて閉成状態とすることで、バックドアBDが図1に実線で示すように閉じられる。
【0029】
以上のように、ドア開閉装置1は、制御部12によって駆動モータ22を制御することで、隣り合うリンク部材2とリンク部材5との間を連結する連結軸4の回転を制御している。このため、ドア開閉装置1は、駆動モータ22の駆動力が出力される連結軸4によって、出力された駆動力がリンク部材5から他のリンク部材を介することなく直接バックドアBDに作用する。
【0030】
図4は、連結軸4を中心としてリンク部材5を回転させた際に、リンク部材5からバックドアBDへ出力される力について説明する図である。ドア開閉装置1では、駆動モータ22の駆動力によって、図4に示すように、連結軸4を中心としてリンク部材5を回転させると、リンク部材5からバックドアBDへ出力される力F1及びヒンジHjと連結軸6との距離L1によって決まるトルク(=F1×L1)がバックドアBDを開方向へ作動させることになる。このように、ドア開閉装置1は、隣り合うリンク部材2とリンク部材5との間を連結する連結軸4を駆動し、リンク部材5から他のリンク部材を介することなく直接バックドアBDに駆動力を作用させることから、電動アクチュエータである駆動モータ22が発生した駆動力の伝達効率に優れている。
【0031】
更に、図4に示すように、バックドアBDの閉成状態におけるリンク部材5は、長手方向がヒンジHjに向かうように配置されている。このため、静止した状態にあって開方向への作動に大きな力を必要とするバックドアBDの閉成状態においては、リンク部材5からバックドアBDへ出力される力F1が、ヒンジHjを中心とした円弧の接線方向に作用する。この結果、ヒンジHjと連結軸6との距離L1及びバックドアBDへ出力される力F1が特許文献1のドア開閉装置と同条件であっても、ドア開閉装置1では、駆動モータ22が発生した駆動力の伝達効率に優れている。
【0032】
図5は、バックドアBDの開成状態における車両を後方から見た概念図である。図6は、バックドアBDの閉成状態における車両を後方から見た概念図である。
【0033】
図5に示すように、車両本体Bには、車室内に雨水が浸入するのを防止するウェザーストリップWSが後部開口OPの全周に設けられている。また、車両本体Bには、車体両側のウェザーストリップWSの外側であると共に、閉成時にバックドアBDによって覆い隠される部分に、車両本体BとバックドアBDとの隙間から浸入した雨水を車外へ導くレインガータRGが上下方向に設けられている。
【0034】
そして、バックドアBDの閉成状態においては、ドア開閉装置1は、図6に示すように、レインガータRG内に収容される。これにより、車両本体Bを閉じた際は、ドア開閉装置1が車室内から全く見えないことから、バックドアBDの周辺の見栄えが良くなる。更に、ドア開閉装置1が車室内に配置されないことから、車室内のスペースを犠牲にすることがない。
【0035】
また、ドア開閉装置1では、リンク部材2にばね24d及びクラッチ機構25を設けたので、駆動モータ22を駆動してバックドアBDを開いた際、クラッチ機構25によって駆動モータ22の駆動力が非伝達となっても、開いた位置にバックドアBDが保持される。このため、ドア開閉装置1を使用した車両は、バックドアBDを開いた状態に保持するガスステーが不要になる。ここで、開いた状態にあるドアBDは、ばね24dの付勢力に抗して閉じる方向へ押圧すれば、ドア開閉装置1を使用することなく手動で閉扉することができる。
【0036】
また、図1に示すように、車両本体B側に配置されるリンク部材2の長さは、他のリンク部材5の長さよりも長く設定されている。これにより、ヒンジHjと連結軸6との距離を小さくすることができる。この結果、バックドアBDが閉成状態となる直前の位置(バックドアBDに設けた図示しないラッチ機構のハーフラッチ位置)における、ばね24dによる開方向への付勢力を小さく抑えることができ、バックドアBDを閉じる際の操作性を向上させることができる。以上のように、各リンク部材の長さを異ならせることで、ドア開閉装置1は、車両用途に合わせて作動特性を変更することができる。
【0037】
以上の説明では、リンク部材2に駆動モータ22を設け、連結軸4を回転させることによってリンク部材5を回転させたが、リンク部材5に駆動モータ22を設け、連結軸4を回転させることによってリンク部材2を回転させてもよい。
【0038】
以上に説明したドア開閉装置1では、リンク部材2にばね24dを設け、駆動モータ22から減速機構24へ駆動力を非伝達としたときに、バックドアBDをばね24dの付勢力によって停止位置に保持することができるようにした。この他に、ドア開閉装置1は、クラッチ機構25を設けずに、駆動モータ22の抵抗力及びばね24dの付勢力によってバックドアBDを停止位置に保持するようにしてもよい。
【0039】
(実施の形態2)
次に、本発明のドア開閉装置に係る実施の形態2について図面を参照して説明する。実施の形態1は、バックドアBDと車両本体Bとの間を2本のリンク部材2,5で連結した。これに対して、実施の形態2は、バックドアBDと車両本体Bとの間を3本のリンク部材で連結している。ここで、以下の説明においては、実施の形態1のドア開閉装置1と同一の構成要素には同一の符号を使用して重複した説明を省略している。
【0040】
図7は、本発明の実施の形態2にかかるドア開閉装置として、バックドアを開閉するドア開閉装置を搭載した車両の後部を示す側面概念図である。図8は、図7に示すバックドアを全閉と全開の中間まで開いて3本のリンク部材の連結を説明する図である。
【0041】
ドア開閉装置1Aは、図7及び図8に示すように、バックドアBDと車両本体Bとの間がリンク部材2,5,7によって連結されている。リンク部材5は、一端が連結軸4によってリンク部材2と連結され、他端が連結軸6によってリンク部材7の一端と連結されている。リンク部材7は、一端が連結軸6によってリンク部材5と連結され、他端が連結軸8によってバックドアBDと連結されている。このとき、リンク部材5は、リンク部材2と同様に構成され、筐体51内に図示しない駆動モータと、ウォームと、減速機構と、クラッチ機構とが収容され、駆動モータの駆動力を連結軸6へ伝達する。また、リンク部材2,5,7は、図7及び図8において車両本体Bの左側面に近い側、即ち、紙面の手前側から番号の若い順に重ねて配置されている。
【0042】
以上のように構成されるドア開閉装置1Aによれば、ドア開閉スイッチ14の押下により制御部12から出力される制御信号によってリンク部材2の駆動モータ22とリンク部材5の駆動モータとを駆動し、連結軸4,6を介してリンク部材5,7を回転させ、バックドアBDを開閉する。このため、ドア開閉装置1Aは、リンク部材5の駆動モータの駆動力が出力される連結軸6によって、出力された駆動力が他のリンク部材を介することなく直接バックドアBDに作用する。
【0043】
また、ドア開閉装置1Aは、駆動モータ22の駆動力が出力されるリンク部材2の連結軸4により、リンク部材2とリンク部材5とが回転し、バックドアBDに対するリンク部材5とリンク部材7との位置を変化させることで、各リンク部材2,5,7をバックドアBDの開閉に適した位置に調整することができる。このため、ドア開閉装置1Aは、リンク部材5の駆動モータが出力する駆動力の伝達効率が従来の装置よりも優れている。このとき、各リンク部材2,5,7は、駆動モータ22及びリンク部材5の駆動モータによって隣り合うリンク部材同士の開き角度が制限されるため、各リンク部材2,5,7が各連結軸4,6を中心として自由に回転することがない。この結果、開方向への駆動に伴って、各リンク部材2,5,7がバックドアBDを開成状態へとするべく伸びようとする方向に回転できるので、駆動力の伝達効率が従来の装置よりも優れている。
【0044】
また、ドア開閉装置1Aは、ドア開閉装置1と同様に、車室内から全く見えないため、バックドアBD周辺の見栄えが良くなると共に、車室内のスペースを犠牲にすることがない。更に、ドア開閉装置1Aを使用した車両は、バックドアBDを開いた状態に保持するガスステーが不要になる。
【0045】
尚、ドア開閉装置1Aでは、リンク部材7に駆動モータを設けて連結軸6を回転させると共に、リンク部材5に駆動モータを設けて連結軸4を回転させることによって、リンク部材2,5,7を回転させてもよい。
【0046】
図9は、電動アクチュエータを設けたリンク部材5の変形例を示す概略構成図である。リンク部材2,7の間に配置されるリンク部材5Aは、図9に示すように、筐体51内に駆動モータ52を配置すると共に、駆動モータ52の両側にウォーム53、減速機構54及びクラッチ機構55を線対称に配置して収容する。このとき、一方の減速機構54の減速ギア54cは、連結軸4と同軸上に配置し、ウォーム53及び減速ギア54a,54bを介して伝達される駆動モータ52の駆動力を連結軸4へ出力する。他方の減速機構54の減速ギア54cは、連結軸6と同軸上に配置し、ウォーム53及び減速ギア54a,54bを介して伝達される駆動モータ52の駆動力を連結軸6へ出力する。減速ギア54aは、ドア開閉装置1のばね24dと同様に配置されるばね54dを有しており、駆動モータ52から減速機構24への駆動力が非伝達となった際に減速機構54にバックドアBDの開方向への付勢力を付与し、バックドアBDを停止位置に保持する。また、クラッチ機構55は、駆動モータ52から減速機構54への駆動力の伝達或いは非伝達を切り替える。
【0047】
このように構成されるリンク部材5Aによれば、1つの駆動モータ52によって連結軸4,6を駆動してリンク部材2,7を回転させることができるので、ドア開閉装置1Aを小型に構成することができる。
【0048】
以上に説明したドア開閉装置1Aでは、リンク部材2,5Aにばね24d,54dを設け、駆動モータ22,52から減速機構24,54へ駆動力を非伝達としたときに、バックドアBDをばね24d,54dの付勢力によって停止位置に保持することができるようにした。しかし、ドア開閉装置1Aは、クラッチ機構25,55を設けずに、駆動モータ22,52の抵抗力及びばね24d,54dの付勢力によってバックドアBDを停止位置に保持するようにしてもよい。
【0049】
尚、上記各実施の形態では、ドア開閉装置を自動車のバックドアに適用する場合について説明したが、本発明のドア開閉装置を車両本体Bに対して上下方向へ開閉するタイプのサイドドアに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明のドア開閉装置は、車両のドアの開閉に用いて駆動手段が発生した駆動力の伝達効率を向上させるのに有用である。
【符号の説明】
【0051】
1 ドア開閉装置
2 リンク部材
21 筐体
21a 挿通孔
22 駆動モータ
23 ウォーム
24 減速機構
24a〜24c 減速ギア
24d ばね
25 クラッチ機構
3,4,6 連結軸
5,5A リンク部材
51 筐体
51a 挿通孔
52 駆動モータ
53 ウォーム
54 減速機構
54a〜54c 減速ギア
54d ばね
55 クラッチ機構
11 開度検出部
12 制御部
13 記憶部
14 ドア開閉スイッチ
B 車両本体
BD バックドア
Hj ヒンジ
OP 後部開口
PCL 全閉位置
PD 開き位置
PFO 全開位置
RG レインガータ
WS ウェザーストリップ
θ 開度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に対して上下方向へ開閉自在に支持されるドアと前記車両本体との間を連結する複数のリンク部材の少なくとも一つのリンク部材を電動アクチュエータによって駆動し、前記ドアを自動で開閉するドア開閉装置において、
前記電動アクチュエータを前記複数のリンク部材の少なくとも一つに設け、前記電動アクチュエータを設けたリンク部材と隣接するリンク部材とを連結する連結軸を前記電動アクチュエータによって回転させることを特徴とするドア開閉装置。
【請求項2】
前記電動アクチュエータを設けたリンク部材に設けられ、
前記電動アクチュエータの回転速度を減速して当該リンク部材の連結軸へ伝達する減速機構と、
前記電動アクチュエータの駆動力の前記減速機構への伝達或いは非伝達を切り替えるクラッチ機構と、
を備えていることを特徴とする請求項1に記載のドア開閉装置。
【請求項3】
前記減速機構は、前記電動アクチュエータの駆動力が非伝達となった際に前記ドアを開方向へ付勢する付勢力を当該減速機構に付与し、前記ドアを停止位置に保持するばねを有することを特徴とする請求項2に記載のドア開閉装置。
【請求項4】
前記車両本体側に配置されるリンク部材の長さは、他のリンク部材の長さよりも長いことを特徴とする請求項1又は2に記載のドア開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−41699(P2012−41699A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182452(P2010−182452)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【Fターム(参考)】