説明

ドクタ装置、ドクタ刃着脱装置

【課題】高い技量を必要とすることなく、うねり等を生じないようにドクタ刃を装着できるドクタ装置、ドクタ刃着脱装置を提供する。
【解決手段】ドクタ装置10は、上ホルダ20と、上ホルダ20に設けられ、装着された状態のドクタ刃11の奥行方向Yに沿った方向に配置され、装着された状態のドクタ刃11の奥行方向Yの範囲に延在するように設けられた磁石22と、下ホルダ30と、下ホルダ30に設けられ、上ホルダ20に設けられた磁石22に対応する範囲に配置され、磁石22に引き寄せられることにより下ホルダ30を上ホルダ20に引き寄せて固定する磁性体32と、第1及び下ホルダ30に設けられ、磁石22及び磁性体32によって下ホルダ30が上ホルダ20に引き寄せられることにより、ドクタ刃11を挟み込むようにして装着する上挟み込み突起24及び下挟み込み突起34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、版に付着したインキをぬぐい取るドクタ装置、ドクタ刃着脱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、グラビア印刷等に利用され、凹版に付着した余分なインキをぬぐい取るドクタ装置があった(例えば特許文献1)。
しかし、ドクタ装置は、ドクタ刃を装着するときに、ドクタ刃にうねり等を生じないように、上下のドクタホルダをねじ止めする必要があった。このため、ドクタ刃の装着には、高い技量が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−259554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、高い技量を必要とすることなく、うねり等を生じないようにドクタ刃を装着できるドクタ装置、ドクタ刃着脱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0006】
請求項1の発明は、第1ホルダ(20)と、前記第1ホルダに設けられ、装着された状態のドクタ刃(11)の長手方向(Y)に沿った方向に配置され、装着された状態の前記ドクタ刃の長手方向の範囲に延在するように設けられた磁石部(22)と、第2ホルダ(30)と、前記第2ホルダに設けられ、前記第1ホルダに設けられた前記磁石部に対応する範囲に配置され、磁石又は磁性体により形成され前記磁石部に引き寄せられることにより前記第2ホルダを第1ホルダに引き寄せて固定する吸磁部(33)と、前記第1及び第2ホルダに設けられ、前記磁石部及び前記吸磁部によって前記第2ホルダが前記第1ホルダに引き寄せられることにより、前記ドクタ刃を挟み込むようにして装着するドクタ刃装着部(26a,36a)と、を備えるドクタ装置である。
請求項2の発明は、請求項1に記載のドクタ装置において、前記磁石部(22)は、前記長手方向(Y)に並べられた複数の磁石片(22a)により形成され、前記第1ホルダ(20)は、前記各磁石片を、他の磁石片に交換可能に着脱する磁石片着脱部(23)を備えること、を特徴とするドクタ装置である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のドクタ装置において、前記吸磁部は(32)、前記長手方向(Y)に並べられた複数の個片である吸磁体片(32a)により形成され、前記第2ホルダ(30)は、前記各吸磁体片を、他の吸磁体片に交換可能に着脱する吸磁体片着脱部(33)を備えること、を特徴とするドクタ装置である。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のドクタ装置に前記ドクタ刃(11)を着脱するドクタ刃着脱装置であって、前記第1ホルダ(20)に設けられた係合部(26a,26b)に係合し、前記ドクタ刃装着部が前記ドクタ刃を挟み込む方向である着脱方向(Z)のうち前記第2ホルダ(30)側に移動しないように保持する第1保持部(120)と、前記第2ホルダに設けられた係合部(36a,36b)に係合し、前記着脱方向のうち前記第1ホルダ(20)側に移動しないように保持する第2保持部(130)と、前記第1及び第2保持部のうち少なくとも1つを前記着脱方向に駆動して、前記第1及び第2ホルダの前記着脱方向の距離を変更する駆動部とを備えること、を特徴とするドクタ刃着脱装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明は、ドクタ刃の長手方向の範囲に延在する磁石部及び吸磁部によって第1及び第2ホルダを引き寄せるので、長手方向においてドクタ刃をほぼ均一な力で挟み込むことができる。これにより、ドクタ刃のうねり、しなり等を抑制でき、印刷時のびびり等を防止できる。また、ねじ止め等のような締結力の微調整が必要ないので、高い技量がなくても、高品位にドクタ刃を装着できる。
さらに、本発明は、ドクタ刃の着脱を繰り返す場合に、前回の挟み込み力を再現してドクタ刃を挟み込むことができるので、挟み込み力のばらつきを低減できる。
(2)本発明は、第1ホルダが、各磁石片を、他の磁石片に交換可能に着脱する磁石片着脱部を備えるので、厚みの異なる他の磁石片に交換すれば、ドクタ刃を挟み込む力を部分的に微調整できる。
【0009】
(3)本発明は、第2ホルダが、各吸磁体片を、他の吸磁体片に交換可能に着脱する吸磁体片着脱部を備えるので、厚みの異なる他の吸磁体片に交換すれば、ドクタ刃を挟み込む力を部分的に微調整できる。
(4)本発明は、第1保持部が第1ホルダに係合して第1ホルダを保持して、第2保持部が第2ホルダに係合して第2ホルダを保持して、駆動部が第1及び第2保持部のうち少なくとも1つを着脱方向に駆動して、第1及び第2ホルダの着脱方向の距離を変更するので、安定した取り付け作業ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態の印刷装置1を簡略して示す図である。
【図2】第1実施形態のドクタ装置10の斜視図である。
【図3】第1実施形態のドクタ装置10の断面図、上ホルダ20の裏面図である。
【図4】第1実施形態のドクタ装置10及びドクタ刃着脱装置100を示す図である。
【図5】比較例である従来のドクタ装置210の斜視図である。
【図6】第2実施形態のドクタ装置310〜610を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の印刷装置1を簡略して示す図である。
印刷装置1は、グラビア印刷用の装置であり、版2が回転して、インクパン3に収容されたインク3aを、版2の版面2aに付着させて引き上げ、版面2aのうち凹部以外に付着した余分なインク3aをドクタ装置10が取り除くようになっている。そして、紙5が版面2a及び圧胴4との間に挟み込まれ、版面2aの凹部に残存したインク3aが紙5に転写される。
ドクタ装置10は、ドクタ装置装着部6に固定されている。ドクタ装置装着部6は、ドクタ刃11の版面2aに対する接触角度を調整する調整機構6aを備えている。
【0012】
図2は、第1実施形態のドクタ装置10の斜視図である。
図3は、第1実施形態のドクタ装置10の断面図、上ホルダ20の裏面図である。
図3(a)は、図2のIII−III部矢視断面図であり、切断面が位置決め穴27及び位置決めピン37の中心軸を通る面である。
図3(b)は、図3(a)のb−b部矢視断面図に相当する図である。
図2、図3に示すように、ドクタ装置10は、ドクタ刃11と、上ホルダ20(第1ホルダ)と、下ホルダ30(第2ホルダ)とを備えている。
なお、以下の説明において、ドクタ刃11をドクタ装置10に装着した状態において、ドクタ刃11の表面を法線方向から見たときに、ドクタ刃11の短手方向を左右方向X、ドクタ刃11の長手方向を奥行方向Y、厚み方向(高さ方向)を鉛直方向Zとして説明する。なお、鉛直方向Zは、上挟み込み突起24及び上挟み込みがドクタ刃11を挟み込む方向である。
ドクタ刃11は、版面2aに接触して、版面2aの余分なインク3aを取り除く部材である。ドクタ刃11は、奥行方向Yに長い形状である。ドクタ刃11は、金属(鋼材等)、樹脂等により形成される。
【0013】
上ホルダ20は、奥行方向Yに細長い平板状に形成されている。上ホルダ20は、上平板部21と、磁石22(磁石部)と、磁石装着あり溝23(磁石片着脱部)と、上挟み込み突起24(ドクタ刃挟み込み部)と、上当接部25と、上ホルダつば26a,26b(第1ホルダ係合部)と、位置決め穴27とを備えている。
上平板部21は、上ホルダ20の主要な構成部分である。上平板部21は、例えば、アルミニウム等の非磁性体を押出成形して形成される。また、上平板部21は、金属材料に限らず、樹脂材料(FRP等)等の非磁性体により形成してもよい。上平板部21の奥行方向Yの長さは、ドクタ刃11の奥行方向Yの長さとほぼ同等である。
【0014】
磁石22は、上ホルダ20及び下ホルダ30を磁力により引き寄せて接合するための部材である。磁石22は、上平板部21の下面のほぼ中央部に奥行方向Yに延在するように設けられる。
磁石22は、上ホルダ20及び下ホルダ30の接合に十分な磁力を発生させるものであり、必要に応じて、ヨーク付のものを選択してもよい。磁石22は、鋼材等の磁性体を引き寄せる性質を持つ部材であり、例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石等の永久磁石であり、鉄等の磁性体を磁化させた部材等であってもよい。
磁石22は、奥行方向Yに並べられた複数の磁石片22aにより形成される。
磁石片22aは、奥行方向Yから見たときの断面が、上辺が長い等脚台形状になるように、形成される。
【0015】
磁石装着あり溝23は、上平板部21の下面の奥行方向Yに延在するように設けられている。磁石装着あり溝23は、各磁石片22aに係合するような形状である。このため、磁石片22aは、奥行方向Yに引き出して交換可能に着脱でき、また、他の磁石片22aに交換できる。
【0016】
上挟み込み突起24は、ドクタ刃11を下挟み込み突起34(後述する)の間に挟み込んで、ドクタ刃11を装着する突起である。上挟み込み突起24は、上平板部21の下面から下側Z1に突出するように設けられている。上挟み込み突起24は、上平板部21の下面のうち右側X2の端部に配置され、奥行方向Yに延在するように設けられている。
【0017】
上当接部25は、下ホルダ30の下当接部35(後述する)に当接する突起である。上当接部25は、上平板部21の下面から下側Z1に突出するように設けられている。上当接部25は、上平板部21の下面のうち左側X1端部の領域に配置され、奥行方向Yに延在するように設けられている。
つまり、上当接部25は、磁石22を対称軸として、上挟み込み突起24に左右対称の範囲に配置されている。
位置決め穴27は、上ホルダ20及び下ホルダ30の水平方向(XY平面方向)の位置を位置決めするために、上平板部21の下面に設けられた穴である。位置決め穴27は、上平板部21の下面のうち手前側Y1及び奥側Y2にそれぞれ設けられている。
【0018】
上ホルダつば26a,26bは、後述するように、ドクタ刃11の着脱時に、上ホルダ20を上チャッカー120(後述する)に保持するための上ホルダ20側の係合部である。上ホルダつば26a,26bは、それぞれ上平板部21の右側X2及び左側X1の側面から外側に突出するように設けられている。
【0019】
下ホルダ30は、上ホルダ20と水平面を介して、ほぼ対称の形状である(つまり、下ホルダ30の断面形状は、左右方向Xの軸を対称軸として、上ホルダ20の断面形状とほぼ対称の形状である。)。下ホルダ30は、下平板部31と、磁性体32(吸磁部)と、磁性体装着あり溝33(吸磁体片着脱部)と、下挟み込み突起34(ドクタ刃挟み込み部)と、下ホルダつば36a,36b(第2ホルダ係合部)と、位置決めピン37とを備えている。
【0020】
磁性体32は、いわゆる強磁性体であり、上ホルダ20の磁石22の磁力に引き寄せられることにより、下ホルダ30を上ホルダ20に引き寄せて接合するための部材であり、例えば鋼材により形成され、又は酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライト等を用いてもよい。
磁性体32は、下平板部31上面のほぼ中央に奥行方向Yに延在するように設けられる。つまり、磁性体32は、上ホルダ20の磁石22に対応する範囲に配置される。
磁性体32は、磁石22と同様に、奥行方向Yに並べられた複数の個片である磁性体片32a(吸磁体片)により形成される。
磁性体片32aは、奥行方向Yから見たときの断面が、下辺が長い等脚台形状になるように、形成される。
磁性体装着あり溝33は、磁石装着あり溝23と同様に、各磁性体片32aに係合するあり溝であり、各磁性体片32aを他の磁性体片32aに交換可能に着脱できる。
【0021】
下挟み込み突起34は、ドクタ刃11を上挟み込み突起24との間に挟み込んで、ドクタ刃11を装着する突起である。下挟み込み突起34は、上挟み込み突起24に対向するように、下平板部31の上面から上側Z2に突出するように設けられている。
【0022】
下当接部35は、ドクタ刃11をドクタ装置10に装着した状態において、上ホルダ20の上当接部25に当接する突起である。下当接部35は、上当接部25に対向するように、下平板部31の上面から上側Z2に突出するように設けられている。
位置決めピン37は、上ホルダ20及び下ホルダ30の水平面方向(XY平面方向)の互いの位置を位置決めするために、下平板部31の上面から突出するように設けられている。位置決めピン37は、位置決め穴27に対応する範囲に、それぞれ配置されている。
下ホルダつば36a,36bは、下ホルダ30を下チャッカー130(後述する)に保持するための下ホルダ30側の係合部である。下ホルダつば36a,36bは、それぞれ下平板部31の右側X2及び左側X1の側面から外側に突出するように設けられている。
【0023】
ドクタ刃11を装着した状態のドクタ装置10の作用について説明する。
図2,図3に示すように、上ホルダ20及び下ホルダ30は、磁石22及び磁性体32の磁力の働きにより引き寄せられ、接合される。上ホルダ20及び下ホルダ30は、位置決め穴27及び位置決めピン37により、互いにXY面方向の位置決めがされる。上ホルダ20及び下ホルダ30が接合した状態では、上当接部25及び下当接部35が当接し、上挟み込み突起24及び下挟み込み突起34がドクタ刃11を挟み込み、また、磁石22及び磁性体32が引き寄せられて接着した状態になる。つまり、磁力が働かない場合には、磁石22及び磁性体32の間には、微小な隙間があり、上ホルダ20及び下ホルダ30の両端部(上当接部25及び下当接部35の部分、上挟み込み突起24及び下挟み込み突起34の部分)が当接する設定であり、磁力が働くことにより上ホルダ20及び下ホルダ30が、この微小な隙間だけ撓み(二点鎖線L1,L2参照)、磁石22及び磁性体32が接合するような形態になっている。この撓みの作用により、上挟み込み突起24及び下挟み込み突起34が、ドクタ刃11を挟み込んで保持できる。
【0024】
ドクタ刃11は、左端が位置決めピン37の外周面に当接するように装着される。このため、印刷時において、ドクタ刃11の先端に、版2によって左側X1に押されるように負荷がかかっても、ドクタ刃11は、左側X1には移動しないように規制される。
【0025】
磁石22及び磁性体32は、上ホルダ20及び下ホルダ30の奥行方向Yに延在するように設けられ、つまり、ドクタ刃11の奥行方向Yの長さに渡って設けられている。このため、上挟み込み突起24及び上挟み込み突起24は、ドクタ刃11を、奥行方向Yに渡って均一な力で挟み込むことができる。
【0026】
これにより、上挟み込み突起24及び上挟み込み突起24の挟み込みに起因するドクタ刃11のうねり、しなり等を抑制でき、印刷時のびびり等を防止できる。また、ねじ止め等のような締結力の微調整が必要ないので、作業者が高い技量がなくても、高品位にドクタ刃11を装着できる。
さらに、ドクタ刃11の着脱を繰り返す場合、つまり、ドクタ刃11を取り外した後さらに装着する場合には、前回と同じ挟み込み力を再現してドクタ刃11を挟み込むことができるので、装着毎の挟み込み力のばらつきを低減できる。
【0027】
また、ドクタ刃11の挟み込み力を奥行方向Yにおいて部分的に調整する場合には、磁石22及び磁性体32が着脱可能であるので、厚み(鉛直方向Zの高さ)の異なる他の磁石22及び磁性体32に変更すればよい。又は、磁石22又は磁性体32の表面に、スペーサを貼付してもよい。この場合であっても、前述したように、ドクタ刃11を取り外した後さらに装着するときに、前回と同じ力を再現してドクタ刃11を挟み込むことができる。
なお、ドクタ刃11の挟み込み力を調整する場合には、必要に応じて当て板41,42(図3(a)参照)を追加してもよい。
【0028】
図4は、第1実施形態のドクタ装置10及びドクタ刃着脱装置100を示す図である。
印刷装置1で印刷を進めるに従って、ドクタ刃11は、磨耗したりするために、しなり具合が変わってくる。このような場合、ドクタ刃11の挟み込み力の微調整が必要になったり、新たなドクタ刃11に交換する必要がある。
ドクタ刃着脱装置100は、このような場合に、ドクタ装置10のドクタ刃11を着脱するための装置である。ドクタ刃着脱装置100は、上ホルダ20を着脱方向である鉛直方向Zに駆動して、上ホルダ20及び下ホルダ30の鉛直方向の距離を変更するようになっている。
ドクタ刃着脱装置100は、上チャッカー120(第1保持部)と、下チャッカー130(第2保持部)とを備えている。なお、図示は省略するが、上チャッカー120及び下チャッカー130の奥行方向Yの長さは、ドクタ刃11とほぼ同じである。
【0029】
上チャッカー120は、上ホルダ20を保持する部材である。上チャッカー120は、下チャッカー130に対して鉛直方向Zに移動可能に、下チャッカー130に保持されている。上チャッカー120は、平板部121の右側X2及び左側X1の端部から、それぞれ下側Z1に向けて壁部121a,121bが設けられたような形状である。上チャッカー120は、上チャッカーつば126a,126b(第1保持部係合部)と、駆動軸127とを備えている。
【0030】
上チャッカーつば126a,126bは、壁部121a,121bの先端から内側に向けて突出するように設けられている。上チャッカーつば126a,126bは、上ホルダつば26a,26bを引っ掛かけて(係合し)、上ホルダ20が下側Z1に移動しないように保持する。
駆動軸127は、平板部121の上面に直立するように設けられた軸体である。
【0031】
なお、壁部121a,121bの内幅は、上ホルダ20の外形よりも少し大きい。このため、上ホルダ20は、壁部121a,121bとの間に隙間を有し、左右方向Xにある程度移動できるようなっている。また、平板部及び上ホルダ20の間には、隙間を有している。このため、作業者は、上ホルダ20を奥行方向Yにスライドして挿入し、上チャッカー120に取り付けることができる。
【0032】
下チャッカー130は、下ホルダ30を保持する部材である。下チャッカー130は、下チャッカー本体131と、固定ブラケット136b(第2保持部係合部)と、ボルト139とを備えている。
下チャッカー本体131は、底板132と、底板132の右側X2及び左側X1の端部に設けられた壁部133a,133bと、壁部133bに支持される天板134とを有するような形状である。底板132は、設置面Gに設定される。底板132及び天板134の間の領域は、上チャッカー120が移動できるようになっている。下チャッカー本体131は、駆動用孔134aと、下チャッカーつば136a(第2保持部係合部)とを有している。
駆動用孔134aは、駆動軸127を上下方向に駆動するために、天板134に設けられた貫通孔である。駆動用孔134aの内部には、ボールねじ機構(駆動部)が設けられており、駆動軸127を鉛直方向Zに移動できるようになっている。
下チャッカーつば136aは、壁部133aの先端から内側に向けて突出するように設けられている。下チャッカーつば136aは、下面が斜面になっており、下ホルダつば36aのエッジが当接できるようになっている。
【0033】
固定ブラケット136bは、下ホルダつば36bを底板132との間に挟み込むための部材である。固定ブラケット136bは、底板132に対してボルト139によって固定される。固定ブラケット136bのねじ止め位置は、奥行方向Yに複数設けられている。
【0034】
ドクタ刃11の着脱方法について説明する。
作業者は、以下の手順に従って、上ホルダ20及び下ホルダ30にドクタ刃11を装着できる。
(1)上チャッカー120をボールねじ機構により上側Z2に移動した状態で、下ホルダ30を下チャッカー130に載置する。
(2)下ホルダつば36aのエッジを、下チャッカーつば136aに押し当てる。
(3)下ホルダつば36aを下チャッカーつば136aに押し当てた状態で、固定ブラケット136bで下ホルダつば36bを底板132との間に挟み込む。その状態で、固定ブラケット136bを底板132にボルト139でねじ止めして、下ホルダ30を下チャッカー130に固定する。
以上の作業により、下ホルダ30が下チャッカー130に固定(係合)され、下ホルダ30が上側Z2つまり上ホルダ20側に移動しないように保持される。
【0035】
(4)ドクタ刃11を位置決めピン37に当て付けるようにして、下ホルダ30に載置する。
(5)上ホルダつば26a,26bを、上チャッカーつば126a,126bに引っ掛けながら、上ホルダ20を奥行方向Yにスライドして上チャッカー120に取り付ける。
この作業により、上チャッカー120は、上ホルダつば26a,26bを引っ掛かけて、上ホルダ20が下側Z1つまり下ホルダ30側に移動しないように保持される。
【0036】
(6)ボールねじ機構を駆動して、上チャッカー120を降下して、上ホルダ20を下ホルダ30に向けて降下させる。
上ホルダ20及び下ホルダ30の距離が近くなるに従って、磁石22及び磁性体32の間に働く磁力が大きくなる。前述したように、磁石22及び磁性体32は、それぞれ上ホルダ20及び下ホルダ30の中央部に配置されている。また、上ホルダつば26a,26b及び下ホルダつば36a,36bは、それぞれ上ホルダ20及び下ホルダ30の両端部に配置されている。このため、上ホルダ20及び下ホルダ30は、中央部の磁石22及び磁性体32が引き寄せられ、撓み(二点鎖線L11,L12参照)を生じる。
【0037】
(7)上チャッカー120がさらに降下すると、位置決め穴27に位置決めピン37が挿入されることによって上ホルダ20が水平面方向に移動し、上ホルダ20及び下ホルダ30は、互いに水平面方向における位置決めがされる。
【0038】
(8)上チャッカー120がさらに降下すると、上ホルダ20及び下ホルダ30が、磁石22及び磁性体32の間に働く磁力により接合される。
この場合、上ホルダ20及び下ホルダ30には撓みが発生しているので、最初に、磁石22及び磁性体32が当接し、その後、上ホルダ20及び下ホルダ30の両端部(上当接部25及び下当接部35の部分、上挟み込み突起24及び下挟み込み突起34の部分)が当接する。
また、ドクタ刃着脱装置100は、ボールねじ機構を利用して上チャッカー120を駆動しているので、上チャッカー120をゆっくり降下できる。このため、磁石22及び磁性体32の間の磁力が強くても、ドクタ刃着脱装置100は、磁石22及び磁性体32、両端部の各接合面をゆっくりと接合でき、安定した動作を行うことができる。
各接合面が接合したら、次の作業に進む。
【0039】
(9)上ホルダ20つめ及び上チャッカー120の間に隙間ができる程度まで、上チャッカー120を降下したところで、ボールねじ機構の駆動を停止する。これにより、上ホルダ20は、上チャッカー120に対してフリーになる。
(10)固定ブラケット136bを固定しているボルト139を取り外す。これにより、下ホルダ30は、下チャッカー130に対してフリーになり、ドクタ装置10は、ドクタ刃着脱装置100に対してフリーになる。
(11)ドクタ装置10を奥行方向Yに引き出して取り出す。
【0040】
以上により、ドクタ刃11の装着作業が終了する。
なお、ドクタ刃11を取り外すときには、上記作業とは反対の順序をすればよい。この場合にも、上ホルダ20をゆっくりと上昇できるので、各接合面をゆっくりと離間させ、安定した動作を行うことができる。
【0041】
このように、ドクタ刃着脱装置100を利用してドクタ刃11の着脱作業を行うことにより、以下の効果を奏することができる。
(1)ドクタ刃11を繰り返し着脱する場合であっても、同じ条件で動作できるので、着脱作業にともなうばらつきを低減でき、取り付け精度を向上できる。例えば、作業者が手で上ホルダ20を直接保持して着脱作業を行うと、上ホルダ20が傾いてしまい、装着毎に各接合面の接合順序が変わってしまたり、ドクタ刃11の保持力が装着毎に一定にならない問題がある。ドクタ刃着脱装置100を利用すれば、この問題を解決できる。
(2)ドクタ刃着脱装置100を利用することにより、作業者毎のばらつきが生じない。また、ねじ止め等のような締結力の微調整が必要ないので、作業者が高い技量がなくても、ドクタ刃11をばらつきなく装着できる。
【0042】
(比較例)
図5は、比較例である従来のドクタ装置210の斜視図である。
なお、以下の説明及び図面において、第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
従来のドクタ装置210は、上ホルダ220を下ホルダ230にボルト250によって接合している。ボルト250は、奥行方向Yに複数配列されている。
このため、上挟み込み突起224及び下挟み込み突起234のうち、ボルト250の対応する領域250aには、強い挟み込み力が働くが、これらの中間の領域250bでは、挟み込み力が領域250aよりも弱くなってしまう。また、同じトルクでボルト250を締め付けても、全てのボルト250に均一の軸力を発生させることは、極めて困難である。
このため、ドクタ装置210は、ドクタ刃11を奥行方向Yに渡って均一な挟み込み力で挟み込むことができないという問題があり、これが、ドクタ刃11のうねりの発生や、印刷時のびびりの原因の1つになっていた。
【0043】
また、ドクタ装置210は、ドクタ刃11の着脱を繰り返す場合にも、同じトルクでボルト250を締め付けても、全てのボルト250に前回と同じ軸力を再現させることは、極めて困難である。さらに、ボルト250のねじ止めの順序等も、均一な挟み込み力でドクタ刃11を挟み込めない原因になる。
このため、ドクタ装置210は、ドクタ刃11の着脱に高度な技術が必要であった。
【0044】
これに対して、前述したように、本実施形態のドクタ装置10は、ドクタ刃11を奥行方向Yに渡って均一な挟み込み力で挟み込むことができるので、ドクタ刃11のうねりの発生や、印刷時のびびりを低減できる。また、ドクタ装置10は、ドクタ刃11の着脱を繰り返しても、前回と同じ挟み込み力を再現してドクタ刃11を装着できるし、また、ドクタ刃着脱装置100を利用すれば、一定の挟み込み力でドクタ刃11を挟み込むことの精度を向上できる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、本発明を適用した第2実施形態について説明する。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
図6は、第2実施形態のドクタ装置310〜610を示す図(図3(a)に相当する図)である。
【0046】
図6(a)に示すように、ドクタ装置310は、ドクタ刃11を装着した状態で、磁石322及び磁性体332が離間している。このように、上ホルダ320及び下ホルダ330の接合に十分な磁力を発生できれば、磁石322及び磁性体332が離間するように配置してもよい。
さらに、図6(b)に示すドクタ装置410のように、十分な磁力を発生できれば、磁石422及び磁性体432を、それぞれ上平板部421及び下平板部431の外側に配置してもよい。
【0047】
図6(c)に示すドクタ装置510は、磁石522及び磁性体532を、それぞれ上挟み込み突起524及び下挟み込み突起534の部分に配置したものである。この場合、上ホルダ520及び下ホルダ530の左右方向Xの長さを小さくできるので、装置の小型化を図ることができる。
また、この場合であっても、図6(d)に示すドクタ装置610のように、磁石622及び磁性体632を離間して配置してもよい。
【0048】
また、ドクタ刃着脱装置を利用しない場合には、ドクタ装置310〜610のように、上ホルダつば及び下ホルダつばを設ける必要はない。この場合、上ホルダ及び下ホルダの形状を簡単にできる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態及び後述する変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0050】
(変形形態)
(1)実施形態において、磁石部を磁石片とし、また磁性体部(吸磁部)を磁性体片とする例を示したが、これに限定されない。例えば、磁石部及び磁性体部のうちいずれか1つを個片状にしてもよい。この場合であっても、他の個片に変更すれば、ドクタ刃の挟み込み力を調整できる。
【0051】
(2)実施形態において、下ホルダの吸磁部は、磁性体部である例を示したが、これに限定されない。例えば、下ホルダの吸磁部は、上ホルダの磁石に吸着する磁石(例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石や、鉄等の磁性体を磁化させた部材等)により形成してもよい。この場合、上ホルダの磁石と、下ホルダの磁石とは、互いに引き合うように極性を合わせて配置すれば、上ホルダ及び下ホルダをより強力に接合できる。また、この場合にも、下ホルダの磁石を、個片状の複数の磁石体片により形成すれば、ドクタ刃を挟み込む力を部分的に微調整できる。
【符号の説明】
【0052】
10,310,410,510,610 ドクタ装置
20 上ホルダ
22,322,422,522,622 磁石
22a 磁石片
23 磁石装着あり溝
24 上挟み込み突起
26a,26b 上ホルダつば
30 下ホルダ
32,332,432,532,632 磁性体
32a 磁性体片
33 磁性体装着あり溝
34 下挟み込み突起
36a,36b 下ホルダつば
37 位置決めピン
100 ドクタ刃着脱装置
120 上チャッカー
126a,126b 上チャッカーつば
127 駆動軸
130 下チャッカー
134a 駆動用孔
136a 下チャッカーつば
136b 固定ブラケット
139 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ホルダと、
前記第1ホルダに設けられ、装着された状態のドクタ刃の長手方向に沿った方向に配置され、装着された状態の前記ドクタ刃の長手方向の範囲に延在するように設けられた磁石部と、
第2ホルダと、
前記第2ホルダに設けられ、前記第1ホルダに設けられた前記磁石部に対応する範囲に配置され、磁石又は磁性体により形成され前記磁石部に引き寄せられることにより前記第2ホルダを第1ホルダに引き寄せて固定する吸磁部と、
前記第1及び第2ホルダに設けられ、前記磁石部及び前記吸磁部によって前記第2ホルダが前記第1ホルダに引き寄せられることにより、前記ドクタ刃を挟み込むようにして装着するドクタ刃装着部と、
を備えるドクタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドクタ装置において、
前記磁石部は、前記長手方向に並べられた複数の磁石片により形成され、
前記第1ホルダは、前記各磁石片を、他の磁石片に交換可能に着脱する磁石片着脱部を備えること、
を特徴とするドクタ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のドクタ装置において、
前記吸磁部は、前記長手方向に並べられた複数の個片である吸磁体片により形成され、
前記第2ホルダは、前記各吸磁体片を、他の吸磁体片に交換可能に着脱する吸磁体片着脱部を備えること、
を特徴とするドクタ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のドクタ装置に前記ドクタ刃を着脱するドクタ刃着脱装置であって、
前記第1ホルダに設けられた係合部に係合し、前記ドクタ刃装着部が前記ドクタ刃を挟み込む方向である着脱方向のうち前記第2ホルダ側に移動しないように保持する第1保持部と、
前記第2ホルダに設けられた係合部に係合し、前記着脱方向のうち前記第1ホルダ側に移動しないように保持する第2保持部と、
前記第1及び第2保持部のうち少なくとも1つを前記着脱方向に駆動して、前記第1及び第2ホルダの前記着脱方向の距離を変更する駆動部とを備えること、
を特徴とするドクタ刃着脱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−212965(P2011−212965A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82985(P2010−82985)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】