ドセタキセルおよびそれらの類似体のナノ粒子製剤
ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物を説明する。ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体、および、少なくとも1種の表面安定剤を含む組成物は、癌治療に用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、ドセタキセルおよびそれらの類似体のナノ粒子組成物、このような組成物の製造方法、および、癌治療における、具体的には乳房、卵巣、前立腺、および、肺癌の治療におけるこのようなナノ粒子組成物の使用を対象とする。
【0002】
発明の背景
A.ドセタキセルおよびそれらの類似体に関する背景
タキソイドまたはタキサンは、細胞分裂を停止させることによって細胞増殖を阻害する化合物であり、例えばドセタキセルやパクリタキセルが挙げられる。これらはまた、抗有糸分裂剤、または、抗微小管剤、または、有糸分裂阻害剤とも呼ばれる。
【0003】
米国特許第5,438,072号において、抗腫瘍および抗白血病活性を有するタキソイドベースの組成物、およびそれらの使用が説明されている。米国特許第6,624,317号は、癌治療に使用するためのタキソイド複合体の製造について述べている。Magnusの米国特許第5,508,447号の図1A(以下、「Magnusの米国特許」とする)は、タキサン環系の構造と番号付けを示す。Magnusの米国特許は、癌治療に使用するためのタキソールの合成を対象とする。米国特許第5,698,582号、および、第5,714,512号は、抗腫瘍剤および抗白血病の治療剤としての、注射に適した医薬組成物で用いられるタキサン誘導体に関する。米国特許第6,028,206号、および、第5,614,645号は、癌治療において有用なタキソール類似体の製造に関する。米国特許第4,814,470号、および、第5,411,984号はいずれも、癌治療に使用するためのある種のタキソール誘導体の製造に関する。
【0004】
米国特許第5,494,683号、および、第5,399,363号において、パクリタキセルのナノ粒子組成物が説明されている。これらの特許は、ドセタキセルのナノ粒子製剤を説明していない。
【0005】
パクリタキセルの化学構造は、以下に示す通りである:
【0006】
【化1】
【0007】
ドセタキセルは、タキソイド類に属する半合成の抗腫瘍薬である。ドセタキセルは、実験式:C43H53NO14・3H2Oを有し、分子量861.9を有する白色〜ほぼ白色の粉末である。ドセタキセルは高い親油性を有し、実質的に水不溶性である。ドセタキセルの化学名は、(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステル,5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタキサ−11−エン−9−オン4−アセタート2−ベンゾアートとの13−エステルの三水和物である。ドセタキセルは、イチイ属の植物の再利用可能な針葉樹のバイオマスから抽出された前駆体(タキソイド10−デアセチルバッカチンIII)から開始する半合成によって製造される。ドセタキセルの構造は、以下に示すように、パクリタキセルの構造とはかなり異なっている:
【0008】
【化2】
【0009】
ドセタキセルの独特な化学構造は、パクリタキセルと比較して以下の2つの改変を含む:(1)タキソールB環のC−10位で、ヒドロキシ基がアセチル基に置き換えられている;および、(2)C−13側鎖の変種(例えば、タキソール側鎖におけるN−ベンゾイル基の代わりに、N−tert−ブトキシカルボニル基)。これらの顕著な構造的な差により、異なる活性を有するパクリタキセルおよびドセタキセルが生じる。例えばドセタキセルは、パクリタキセルよりも高い効力を有する。Angelo等,“Docetaxel versus paclitaxel for antiangiogenesis”,J.Hematother.Stem.Cell Res.,11(1):103〜18(2002)。加えて、パクリタキセルおよびドセタキセルによるCOX−2発現の誘導を比較する研究において、ヒトおよびマウスの細胞においてパクリタキセルで誘導されたCOX−2発現の類似の反応速度論と濃度−応答プロファイルに対して、ドセタキセルは、ヒト単球でのみCOX−2発現を誘導するが、マウスの細胞では誘導しないことが見出された。Cassidy等,Clin.Can.Res.,8:846〜855(2002)。
【0010】
その上、ドセタキセルの作用機序もパクリタキセルの作用機序とは異なる。ドセタキセルは、有糸分裂を開始させるのに必須の細胞中の微小管ネットワークを崩壊させ、加えて、正常な微小管で調節された細胞活性に影響を与える。この作用機序により、パクリタキセルよりも低い重度の副作用が生じる。
【0011】
ドセタキセルは、アベンティス・ファーマシューティカルズ(Aventis Pharmaceuticals,ブリッジウォーター,ニュージャージー州)によって、タキソテール(TAXOTERE(R))注射用濃縮液として販売されている。タキソテール(R)は滅菌された非発熱性の製剤であり、20mg(0.5mL)、または、80mg(2.0mL)のドセタキセル(無水)を含む1回量バイアルとして利用可能である。1mLあたり、40mgのドセタキセル(無水)と、1040mgのポリソルベート80が含まれる。タキソテール(R)注射用濃縮液は、使用前に希釈が必要である。その目的のために、滅菌済みで非発熱性の1回量の希釈剤が供給される。タキソテール(R)用の希釈剤は、13%エタノールを含む注射用水であり、バイアルに入れて供給される。
【0012】
ドセタキセルの溶解性を高めるために用いられるポリソルベート80およびエタノールの存在は、逆効果を引き起こす可能性がある。タキソテール(R)に関連する不利な過敏症が生じるために、化学療法の24時間前から3日間、経口デキサメタゾンを前投与することが推奨される。ポリソルベート80は、低血圧および/または気管支痙攣、もしくは全身性発疹/紅斑を特徴とする重度の過敏反応に関与しており、このような症状は、推奨された3日間のデキサメタゾン前投与を受けた患者の2.2%(92人中2人)に発症している。加えて、ドセタキセル注射は、使用前に希釈が必要である。その目的のために、滅菌した非発熱性の1回量の希釈剤が供給されなければならない。上述したように、タキソテール(R)注射製剤用の希釈剤は、13%エタノールを含む注射用水を含み、これは薬物と一緒に供給する必要がある。
【0013】
ドセタキセルは、患者の骨髄中の血液細胞数の減少を引き起こす可能性があり、この薬物はまた、肝臓障害を引き起こす可能性もある。加えて、タキソテール(R)投与による過敏症の症例が観察されている。症状としては、低血圧、および/または、気管支痙攣、および、全身性発疹/紅斑が挙げられる。また、過量投与のケースもいくつか観察されている(投与量150〜200mg/m2)。これに関連する合併症の例としては、骨髄抑制、末梢神経毒性、および、粘膜炎が挙げられる。
【0014】
溶媒としてのポリソルベート80およびエタノールは、タキソテール(R)投与で観察された過敏反応に少なくとも部分的に関与する。前投薬としてステロイド、およびその他のヒスタミン遮断薬を投与することによってこれらの反応の発生率と重症度が低減したが、また、前投薬に関連する有害反応(例えばクッシング症候群、感染合併症、高血糖症、高血圧、および、ステロイド精神病などの精神医学的な作用)も、特に長期投与の場合の懸念材料である。また、溶媒も塩化ビニル(PVC)バッグや管材料からの可塑剤の浸出に寄与しており、場合によってはこれらの物質で見られるその他の逆効果(例えば、ニューロパシー、および、腫瘍細胞耐性)を引き起こす。
【0015】
パクリタキセルと共に利用されているより高い水溶性を有する代替の薬物製剤の一つは、アルブミンに結合したパクリタキセル(アブラキサン(ABRAXANE)(R))である。しかしながら、この薬物製剤は、パクリタキセルをアルブミンに共有結合させることが必要であるため、パクリタキセルの特性が変化する可能性がある。例えば、アルブミンに結合したパクリタキセルを使用した第I相および第II相臨床試験において、溶媒が媒介する毒性は観察されず、前投薬も不必要であり、さらに薬物注入はたった30分間であった。しかしながら、この物質の薬物動態プロファイルは第I相試験において線形を示し、非線形の薬物動態学を示す従来のパクリタキセルとは異なっていた“Abraxane(paclitaxel protein−bound particles for injectable suspension[albumin−bound])product information”,Abraxis Oncology(シャウムバーグ,イリノイ州),2005年1月。
【0016】
臨床上の薬理学用語において、ドセタキセルは、有糸分裂および中間期の細胞機能に必須である細胞中の微小管ネットワークを崩壊させることによって作用する抗腫瘍薬である。ドセタキセルは遊離のチューブリンに結合して、チューブリンの安定な微小管への組み立てを促進し、同時にそれらの分解を阻害する。これにより正常な機能を有さない微小管束の生産と微小管の安定化が起こり、その結果、細胞における有糸分裂が阻害される。ドセタキセルが微小管へ結合しても、結合した微小管におけるプロトフィラメントの数を変えることはなく、この特徴は、現在のところ臨床で用いられているほとんどの紡錐体毒とは異なる。Physicians’Desk Reference,第58版,3,307,771〜78頁(Thompson PDR,モントベール,ニュージャージー州,2004)。
【0017】
タキソテール(R)(ドセタキセル)は、局所進行乳癌または転移性乳癌における先行のアントラサイクリンによる化学療法がうまくいかなかった後に使用するために、1996年に米国食品医薬品局によって初めて認可された。続いて1999年に、この薬物は、局所進行または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)における第二選択の用途として認可された。2002年11月に、米国食品医薬品局は、タキソテール(R)(ドセタキセル)を、これまでこの状態に関する化学療法を受けていない切除不能な局所進行または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)の患者の治療のためのシスプラチンとの併用に関して認可した。2004年には、アンドロゲン非依存性の(ホルモン抵抗性)転移性前立腺癌の患者の治療のためのタキソテール(R)とプレドニゾンとの併用が認可された。加えて、タキソテール(R)とドキソルビシンおよびシクロホスファミドとの併用が、手術可能なリンパ節転移陽性乳癌の患者の補助治療に関して米国食品医薬品局に認可されている。タキソテール(R)は、多くのタイプの癌の様々な段階に関する臨床試験において試験され続けている。
【0018】
第I相試験において、癌患者にドセタキセル(タキソテール(R))を20mg/m2〜115mg/m2の範囲の用量で投与した後の薬物動態学が評価されている。70mg/m2〜115mg/m2を静脈内投与した後のドセタキセルの薬物動態学は用量非依存性であり、平均個体群α、β、γにおいてそれぞれ4分間、36分間および11.1時間の半減期を示した3−コンパートメントモデルと一致する。認可されたタキソテール(R)の投与量の範囲は、60mg/m2〜100mg/m2である。用量100mg/m2でIV投与した後のピークの血漿濃度の平均は、3.7μg/mL(SD=0.8)であり、それに対応するAUCは、4.6μg/mL・h(SD=0.8)であった。ドセタキセル(タキソテール(R))血漿濃度およびAUCは用量に正比例することがわかったが、薬物クリアランスは用量または投与スケジュールとは無関係であり、これは線形の薬物動態プロファイルと一致する。全身クリアランスおよび定常状態分布容積の平均値は、それぞれ21L/h/m2、113Lであった。ドセタキセル(タキソテール(R))は、静脈内(IV)投与した後、迅速かつ広範囲に分散する。インビトロでの研究によれば、ドセタキセルは、約94%が血漿タンパク質、主としてアルブミン、α1酸性糖タンパク質、および、リポタンパク質に結合することが示される。
【0019】
タキソテール(R)(ドセタキセル)の処方計画は、治療しようとする癌の種類に応じて様々である。乳癌の場合、推奨される投与量は、3週間毎に、1時間かけて静脈内に60〜100mg/m2である。非小細胞肺癌の場合、タキソテール(R)は、先行の白金系化学療法がうまくいかなかった後にのみ用いられる。推奨される投与量は、3週間毎に、1時間かけて静脈内に75mg/m2である。
【0020】
ドセタキセル使用に関する重要な限定は、有効性および毒性における予測不可能な個人差である。ドセタキセルが臨床的に導入されてから、ドセタキセル治療を改善しようとする試みは、様々な領域にわたりつつあり、具体的には、薬物動態学的(PK)、および、薬力学的(PD)な個体差を減少させること、スケジュール、投与経路および薬物製剤を最適化すること、および、薬剤耐性を元に戻すことである。
【0021】
ドセタキセルの類似体としては、3’−デフェニル−3’シクロヘキシルドセタキセル、2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル、および、3’−デフェニル−3’シクロヘキシル−2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセルなどが説明されている。これらのドセタキセル類似体は、安息香酸のC−3’および/またはC−2位においてフェニル基の代わりにシクロヘキシル基を含む。Ojima等,“Synthesis and Structure−Activity Relationships of New Antitumor Taxoids:Effects of Cyclohexyl Substitution at the C−3’and/or C−2 TAXOTERE(R)(Docetaxel)”,J.Med.Chem.,37:2602〜08(1994)。3’−デフェニル−3’−シクロヘキシルドセタキセル、および、2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセルは、微小管分解に対してドセタキセルと同等の強い阻害活性を有することが報告されている。これは、C−3’またはC−2におけるフェニルまたは芳香族基は、微小管への強い結合にとって必須ではないことを実証する。
【0022】
その他のこれまでに述べられたドセタキセル類似体としては、様々な2−アミドドセタキセル類似体があり、例えば、以下が挙げられる:m−メトキシおよびm−クロロベンゾイルアミド類似体(Fang等,“Synthesis and Cytotoxicity of 2alpha−amido Docetaxel Analogues”,Bioorg.Med.Chem.Lett.,12:1543〜6(2002));オキセタンD環が欠失しているが、生物活性に重要な4アルファ−アセトキシ基を有するドセタキセル類似体(Deka等,“Deletion of the oxetane ring in docetaxel analogues:synthesis and biological evaluation”,Org.Lett,5:5031〜4(2003));5(20)デオキシドセタキセル(Dubois等,“Synthesis of 5(20)deoxydocetaxel,a new active docetaxel analogue”,Tetrahedron Lett.,47:3331〜3334(2000));10−デオキシ−10−C−モルホリノエチルドセタキセル類似体(Iimura等,“Orally active docetaxel analogue−synthesis of 10−deoxy−10−C−morpholinoethyl docetaxel analogues”,Bioorganic and Medicinal Chem.Lett.,11:407〜410(2001));Cassidy等,Clin.Can.Res.,8:846〜855(2002)で説明されているドセタキセル類似体、例えばイソセリンN−アシル置換基としてt−ブチルカルバメートを有するが、C−10(ヒドロキシルに対してアセチル基)、および、C−13イソセリン結合(エステルに対して、エノールエステル)においてドセタキセルとは異なる類似体;および、C−3位にペプチド側鎖を有するドセタキセル類似体、これは、Larroque等,“Novel C2−C3”N−peptide linked macrocyclic taxoids.Part 1:Synthesis and biological activities of docetaxel analogues with apeptide side chain at C3”,Bioorg.Med.Chem.Lett.15(21):4722〜4726(2005)で説明されている。加えて、様々なドセタキセル誘導体としては、臨床試験において、XRP9881(また、RPR 109881Aとも言う)(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体)(アベンティス・ファーマ(Aventis Pharma))、XRP6528(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体)(アベンティス・ファーマ)、オルタタキセル(Ortataxel)(14−ベータ−ヒドロキシ−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体)(バイエル(Bayer)/インデナ(Indena))、MAC−321(10−デアセチル−7−プロパノイルバッカチンドセタキセル類似体)(ワイス・エアスト(Wyeth−Ayerst))、および、DJ−927(7−デオキシ−9−ベータ−ジヒドロ−9,10,0−アセタールタキサンドセタキセル(docetaxal)類似体)(第一製薬(Daiichi Pharmaceuticals))が挙げられ、これらはいずれも、Engels等,“Potential for Improvement of Docetaxel−Based Chemotherapyで説明されている:A Pharmacological Review”,British J.of Can.,93:173〜177(2005)。Querolle等,“Novel C2−C3’N−linked Macrocyclic Taxoids:Novel Docetaxel Analogues with High Tubulin Activity”,J.Med.Chem.,(2004年11月)において、さらなるドセタキセル誘導体が説明されている。
【0023】
B.活性物質のナノ粒子組成物に関する背景
活性物質のナノ粒子組成物、最初に米国特許第5,145,684号(以下、「684特許」とする)で説明されており、これは、可溶性が不十分な治療薬または診断薬からなる粒子であって、可溶性が不十分な治療薬または診断薬の表面を、架橋していない表面安定剤に吸収または会合させている。684特許は、ドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子組成物を説明していない。
【0024】
活性物質のナノ粒子組成物の製造方法は、例えば米国特許第5,518,187号、および、第5,862,999号で、いずれも“Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;米国特許第5,718,388号で、“Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;および、米国特許第5,510,118号で、“Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles”として説明されている。
【0025】
活性物質のナノ粒子組成物はまた、例えば、米国特許第5,298,262号で、“Use of Ionic Cloud Point Modifiers to Prevent Particle Aggregation During Sterilization”として;第5,302,401号で、“Method to Reduce Particle Size Growth During Lyophilization”として;第5,318,767号で、“X−Ray Contrast Compositions Useful in Medical Imaging”として;第5,326,552号で、“Novel Formulation For Nanoparticulate X−Ray Blood Pool Contrast Agents Using High Molecular Weight Non−ionic Surfactants”として;第5,328,404号で、“Method of X−Ray Imaging Using Iodinated Aromatic Propanedioates”として;第5,336,507号で、“Use of Charged Phospholipids to Reduce Nanoparticle Aggregation”として;第5,340,564号で、“Formulations Comprising Olin 10−G to Prevent Particle Aggregation and Increase Stability”として;第5,346,702号で、“Use of Non−Ionic Cloud Point Modifiers to Minimize Nanoparticulate Aggregation During Sterilization”として;第5,349,957号で、“Preparation and Magnetic Properties of Very Small Magnetic−Dextran Particles”として;第5,352,459号で、“Use of Purified Surface Modifiers to Prevent Particle Aggregation During Sterilization”として;第5,399,363号および第5,494,683号で、いずれも“Surface Modified Anticancer Nanoparticles”として;第5,401,492号で、“Water Insoluble Non−Magnetic Manganese Particles as Magnetic Resonance Enhancement Agents”として;第5,429,824号で、“Use of Tyloxapol as a Nanoparticulate Stabilizer”として;第5,447,710号で、“Method for Making Nanoparticulate X−Ray Blood Pool Contrast Agents Using High Molecular Weight Non−ionic Surfactants”として;第5,451,393号で、“X−Ray Contrast Compositions Useful in Medical Imaging”として;第5,466,440号で、“Formulations of Oral Gastrointestinal Diagnostic X−Ray Contrast Agents in Combination with Pharmaceutically Acceptable Clays”として;第5,470,583号で、“Method of Preparing Nanoparticle Compositions Containing Charged Phospholipids to Reduce Aggregation”として;第5,472,683号で、“Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carbamic Anhydrides as X−Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging”として;第5,500,204号で、“Nanoparticulate Diagnostic Dimers as X−Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging”として;第5,518,738号で、“Nanoparticulate NSAID Formulations”として;第5,521,218号で、“Nanoparticulate Iododipamide Derivatives for Use as X−Ray Contrast Agents”として;第5,525,328号で、“Nanoparticulate Diagnostic Diatrizoxy Ester X−Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging”として;第5,543,133号で、“Process of Preparing X−Ray Contrast Compositions Containing Nanoparticles”として;第5,552,160号で、“Surface Modified NSAID Nanoparticles”として;第5,560,931号で、“Formulations of Compounds as Nanoparticulate Dispersions in Digestible Oils or Fatty Acids”として;第5,565,188号で、“Polyalkylene Block Copolymers as Surface Modifiers for Nanoparticles”として;第5,569,448号で、“Sulfated Non−ionic Block Copolymer Surfactant as Stabilizer Coatings for Nanoparticle Compositions”として;第5,571,536号で、“Formulations of Compounds as Nanoparticulate Dispersions in Digestible Oils or Fatty Acids”として;第5,573,749号で、“Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carboxylic Anydrides as X−Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging”として;第5,573,750号で、“Diagnostic Imaging X−Ray Contrast Agents”として;第5,573,783号で、“Redispersible Nanoparticulate Film Matrices With Protective Overcoats”として;第5,580,579号で、“Site−specific Adhesion Within the GI Tract Using Nanoparticles Stabilized by High Molecular Weight,Linear Poly(ethylene Oxide)Polymers”として;第5,585,108号で、“Formulations of Oral Gastrointestinal Therapeutic Agents in Combination with Pharmaceutically Acceptable Clays”として;第5,587,143号で、“Butylene Oxide−Ethylene Oxide Block Copolymers Surfactants as Stabilizer Coatings for Nanoparticulate Compositions”として;第5,591,456号で、“Milled Naproxen with Hydroxypropyl Cellulose as Dispersion Stabilizer”として;第5,593,657号で、“Novel Barium Salt Formulations Stabilized by Non−ionic and Anionic Stabilizers”として;第5,622,938号で、“Sugar Based Surfactant for Nanocrystals”として;第5,628,981号で、“Improved Formulations of Oral Gastrointestinal Diagnostic X−Ray Contrast Agents and Oral Gastrointestinal Therapeutic Agents”として;第5,643,552号で、“Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carbonic Anhydrides as X−Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging”として;第5,718,388号で、“Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;第5,718,919号で、“Nanoparticles Containing the R(−)Enantiomer of Ibuprofen”として;第5,747,001号で、“Aerosols Containing Beclomethasone Nanoparticle Dispersions”として;第5,834,025号で、“Reduction of Intravenously Administered Nanoparticulate Formulation Induced Adverse Physiological Reactions”として;第6,045,829号で、“Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus(HIV)Protease Inhibitors Using Cellulosic Surface Stabilizers”として;第6,068,858号で、“Methods of Making Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus(HIV)Protease Inhibitors Using Cellulosic Surface Stabilizers”として;第6,153,225号で、“Injectable Formulations of Nanoparticulate Naproxen”として;第6,165,506号で、“New Solid Dose Form of Nanoparticulate Naproxen”として;第6,221,400号で、“Methods of Treating Mammals Using Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus(HIV)Protease Inhibitors”として;第6,264,922号で、“Nebulized Aerosols Containing Nanoparticle Dispersions”として;第6,267,989号で、“Methods for Preventing Crystal Growth and Parti
cle Aggregation in Nanoparticle Compositions”として;第6,270,806号で、“Use of PEG−Derivatized Lipids as Surface Stabilizers for Nanoparticulate Compositions”として;第6,316,029号で、“Rapidly Disintegrating Solid Oral Dosage Form”として;第6,375,986号で、“Solid Dose Nanoparticulate Compositions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate”として;第6,428,814号で、“Bioadhesive Nanoparticulate Compositions Having Cationic Surface Stabilizers”として;第6,431,478号で、“Small Scale Mill”として;第6,432,381号で、“Methods for Targeting Drug Delivery to the Upper and/or Lower Gastrointestinal Tract”として;第6,592,903号で、“Nanoparticulate Dispersions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate”として;第6,582,285号で、“Apparatus for sanitary wet milling”として;第6,656,504号で、“Nanoparticulate Compositions Comprising Amorphous Cyclosporine”として;第6,742,734号で、“System and Method for Milling Materials”として;第6,745,962号で;“Small Scale Mill and Method thereof “として;第6,811,767号で、“Liquid droplet aerosols of nanoparticulate drugs”として;および、第6,908,626号で、“Compositions having a combination of immediate release and controlled release characteristics”として;第6,969,529号で、“Nanoparticulate compositions comprising copolymers of vinyl pyrrolidone and vinyl acetate as surface stabilizers”として;第6,976,647号で、“System and Method for Milling Materials” として説明されており、これらはいずれも参照により具体的に含まれる。加えて、米国特許出願第20020012675号A1(2002年1月31日公開)の“Controlled Release Nanoparticulate Compositions”もナノ粒子組成物を説明しており、具体的に参照により開示に含まれる。これらの特許はいずれも、ドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤を説明していない。
【0026】
非晶質の小さい粒子の組成物は、例えば米国特許第号4,783,484号で、“Particulate Composition and Use thereof as Antimicrobial Agent”として;第4,826,689号で、“Method for Making Uniformly Sized Particles from Water−Insoluble Organic Compounds”として;第4,997,454号で、“Method for Making Uniformly−Sized Particles From Insoluble Compounds”として;第5,741,522号で、“Ultrasmall,Non−aggregated Porous Particles of Uniform Size for Entrapping Gas Bubbles Within and Methods”として;および、第5,776,496号で、“Ultrasmall Porous Particles for Enhancing Ultrasound Back Scatter”として説明されている。
【0027】
現在、強化された溶解特性を有するドセタキセル製剤、さらには患者に投与する際の生物学的利用率を強化し、かつ毒性を減少させたドセタキセル製剤への必要性がある。本発明は、ドセタキセルおよびそれらの類似体のナノ粒子製剤に関する方法、およびそれらを含む組成物を提供することによってこれらの要求を満たす。このような製剤としては、これらに限定されないが、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の注射製剤が挙げられる。
【0028】
発明の概要
本発明は、ドセタキセルまたはその類似体を含むドセタキセルのナノ粒子組成物に関し、ここで、上記ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、約2000nm未満の有効平均粒度を有する。また本組成物は、少なくとも1種の表面安定剤も含み、ここで、この表面安定剤は、ドセタキセルまたはドセタキセル類似体の粒子の表面に吸収されているか、または、それらと会合している。本発明の好ましい剤形は注射可能な剤形であるが、製薬上許容できるあらゆる剤形が利用可能である。
【0029】
本発明のその他の形態は、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体、少なくとも1種の表面安定剤、および、製薬上許容できるキャリアーを含む医薬組成物を対象とし、それに加えてあらゆる望ましい賦形剤を含む医薬組成物も対象とする。
【0030】
本発明の一実施態様において、ドセタキセルまたはその類似体の注射製剤が提供される。その他の実施態様において、本製剤は、ポリソルベート(例えばポリソルベート80など)、または、エタノール水溶液を含まない。
【0031】
本発明の一形態は、投与すると以下の目的を達成するドセタキセルまたはその類似体(集合的に、「活性成分」とする)の新しい注射製剤の驚くべき、そして予想外の発見を対象とする:(1)本注射製剤は、ポリソルベートまたはエタノール水溶液がなくてもよい、および、(2)ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の有効平均粒度は、約2ミクロン未満である。一実施態様において、本注射製剤は、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体、および、ドセタキセルまたはその類似体の表面に吸収させた、または、それらに会合させた表面安定剤として、ポビドンポリマーを含む。
【0032】
本発明は、投与した際に薬物が迅速に溶解し、ドセタキセルまたはその類似体が低い注射量で所定濃度含まれる、ポリソルベートおよび/またはエタノールを含まない組成物を提供する。
【0033】
本発明のその他の形態は、タキソテール(R)のような従来のドセタキセル製剤と比較して改善された薬物動態プロファイルを有するナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物を対象とする。
【0034】
本発明のその他の実施態様は、ドセタキセルまたはその類似体を含み、さらに、癌治療において有用な、または、一般的にタキソイドと併用される1種またはそれ以上の当業界既知のドセタキセル以外の、または、ドセタキセル類似体以外の活性物質をさらに含むナノ粒子組成物を対象とする。
【0035】
本発明はさらに、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物の製造方法を開示する。このような方法は、約2000nm未満の有効平均粒度を有するナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物が提供されるのに十分な時間と条件下で、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の粒子と、少なくとも1種の表面安定剤とを接触させることを含む。1種またはそれ以上の表面安定剤は、ドセタキセルのサイズを減少させる前に、その最中に、または、その後のいずれかに、ドセタキセルまたはその類似体と接触させることができる。
【0036】
また本発明は、本明細書で開示された新規のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物を用いた癌の治療方法も対象とする。このような方法は、被検体に、治療上有効な量の本発明に係るナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物を投与することを含む。当業者には、本発明のナノ粒子組成物を用いたその他の治療方法が既知である。
【0037】
前述の一般的な説明および以下の図面の簡単な説明の両方、ならびに詳細な説明は、例証と説明であり、特許請求された本発明のさらなる説明を示すことを目的とする。その他の目的、利点、および、新規の特徴は、当業者であれば以下の発明の詳細な説明から十分に理解できると思われる。
【0038】
図面の簡単な説明
図1は、磨砕していないドセタキセル(無水)(カミダ社(Camida Ltd.))の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0039】
図2は、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセル(カミダ社(Camidta Ltd.))の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0040】
図3は、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、および、0.1%(w/w)レシチンと混合した5%(w/w)無水ドセタキセル(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0041】
図4は、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)無水ドセタキセル(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0042】
図5は、0.25%(w/w)プラスドン(Plasdone(R))S630、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した1%(w/w)無水ドセタキセル(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0043】
図6は、0.25%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した1%(w/w)無水ドセタキセル(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0044】
図7は、0.25%(w/w)プルロニック(Pluronic)(R)F127と混合した1%(w/w)無水ドセタキセル(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0045】
図8は、磨砕していないドセタキセル三水和物(カミダ社)の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
図9は、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム(デオキシコール酸Na)と混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0046】
図10は、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0047】
図11は、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0048】
図12は、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%(w/w)レシチン、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0049】
図13は、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%(w/w)レシチン、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0050】
図14は、1.25%(w/w)TPGS(ビタミンE PEG)、および、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0051】
図15は、1.25%(w/w)プルロニック(Pluronic)(R)F108、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、10%(w/w)デキストロース(w/w)と混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0052】
図16は、1.25%(w/w)プラスドン(R)S630、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した5%(w/w)ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0053】
図17は、1.25%(w/w)HPMC、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した5%(w/w)ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0054】
図18は、1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0055】
図19は、1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0056】
発明の詳細な記述
A.大要
本発明は、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物、および、それらを用いた方法および使用を対象とする。従来のドセタキセル(タキソテール(R))製剤に対して、驚くべきことに、さらに意外なことに、本ナノ粒子組成物は、このような薬物の溶解性を高めるためのポリソルベートまたはエタノールを必ずしも含んでいなくてもよい。
【0057】
驚くべきことに、ドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子組成物を製造することができた。これまでにもタキソールのナノ粒子組成物は製造されてきたが、ドセタキセルは、タキソールとはかなり異なる構造を有する。この異なる構造のために、タキソールと比較して有意に強い活性がドセタキセルに付与されている。その上、ドセタキセルは、タキソールとは異なるメカニズムによって作用する。このような2種の化合物の異なる構造を考慮すると、ドセタキセルまたはその類似体の表面に吸収させた、または、それらに会合させた表面安定剤が、このような化合物をナノ粒子サイズでうまく安定化することができることは予想外であった。
【0058】
本組成物は、約2000nm未満の有効平均粒度を有するドセタキセルまたはその類似体、および、少なくとも1種の表面安定剤を含む。一実施態様において、表面安定剤として約40,000ダルトン未満の分子量を有するポビドンポリマーを共に含む、注射用ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物が説明される。その他の実施態様において、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の医薬製剤は、約6〜約7のpHを有する。
【0059】
ヒトの治療において、重要なことは、インビボで必要な治療的な量の活性成分を送達し、その活性成分を迅速かつ一定して生物的に利用可能にする剤形を提供することである。従って、本明細書において、この必要性を満たす様々なドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤が説明される。ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の剤形の2つの例としては、注射可能なナノ粒子の剤形、および、コーティングされたナノ粒子の剤形、例えば固体分散液または液体充填カプセルが挙げられるが、製薬上許容できるあらゆる剤形が利用可能である。
【0060】
本発明の剤形は、患者に投与する際に多種多様な放出プロファイルを示す製剤で提供することができ、このような製剤としては、例えば、1日1回の投与(またはその他の適切な期間での投与、例えば1週間/1月あたり1回/2回/3回)を可能にする即時放出型(IR)製剤、制御放出型(CR)製剤、ならびに、IR製剤とCR製剤両方の組み合わせが挙げられる。本発明の組成物のCRの形態は、1日あたり1回のみの投与(または、適切な期間につき1回の投与、例えば毎週または毎月に1回の投与)でよいため、このような剤形は、患者の利便性とコンプライアンスを強化する利点を提供する。CRの形態で用いられる制御放出メカニズムは、多種多様な方法で達成することができ、このような方法としては、これらに限定されないが、徐々に崩壊する製剤、拡散が制御された製剤、および、浸透圧制御された製剤の使用が挙げられる。
【0061】
従来のドセタキセルの形態(例えば、非ナノ粒子、または、可溶化した剤形、例えばタキソテール(R))を上回る本発明のドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤の利点としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:(1)水溶性の増加;(2)生物学的利用率の増加;(3)強化された生物学的利用率による、剤形サイズの小型化;(4)強化された生物学的利用率による、より少ない治療的な投与量;(5)不要な副作用の危険の低減;(6)患者の利便性とコンプライアンスの強化;(7)副作用を起こすことなくより高い投与量が可能なこと;および、(8)より有効な癌治療。従来の注射用ドセタキセル(タキソテール(R))の形態を上回る本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の注射製剤のさらなる利点は、薬物の溶解性を高めるためにポリソルベートまたはエタノールを用いる必要がないことである。
【0062】
本発明はまた、1種またはそれ以上の非毒性の生理学的に許容できるキャリアー、アジュバント、または、基剤(集合的にキャリアーと称される)を共に含む、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物も含む。本組成物は、非経口の注射剤(例えば、静脈内、筋肉内、または、皮下注射剤)、固体、液体またはエアロゾル形態での経口投与、膣、鼻、直腸、眼、局所(粉末、軟膏またはドロップ)、口腔、嚢内、腹膜内または外用投与などに応じて製剤化することができる。
【0063】
B.定義
以下、以下に記載したように、さらに本願にわたりいくつかの定義を用いて本発明を説明する。
【0064】
本明細書で用いられる用語「約2000nm未満の有効平均粒度」は、重量により、例えば沈降場流動分画法、光子相関分光法、光散乱、ディスク型遠心分離、および当業者既知のその他の技術によって測定した場合、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の少なくとも50%が約2000nm未満のサイズを有することを意味する。
【0065】
本明細書で用いられる「約」は、当業界における通常の技術を有する者であれば理解しているものと思われ、さらにその用語が用いられる文脈によってある程度変化する場合も予想される。「約」が用いられる文脈を考慮した際に、当業界における通常の技術を有する者にとって不明確な定義が使用されている場合、「約」は、具体的な定義のプラスまたはマイナス平均10%以内と予想される。
【0066】
本明細書で用いられる「安定な」ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、これらに限定されないが、1種またはそれ以上の以下のパラメーターを有するドセタキセルまたはその類似体を含む:(1)ドセタキセルまたはその類似体の粒子が、粒子間の引力により、感知できるほどに凝集または凝結しない、または、別の方法で時間が経っても粒度を有意に増加させない;(2)ドセタキセルまたはその類似体の粒子の物理的構造は、時間が経っても変化しせず、例えば非晶相から結晶相への変換によっても変化しない;(3)ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、化学的に安定である;および、/または、(4)ドセタキセルまたはその類似体は、本発明のナノ粒子の製造中にドセタキセルまたはその類似体の融点での、またはそれを超える温度での加熱工程に晒されない。
【0067】
用語「従来の」または「非ナノ粒子」活性物質またはドセタキセルまたはその類似体は、可溶化した、または、約2000nmより大きい有効平均粒度を有する活性物質、例えばドセタキセルまたはその類似体を意味するものとする。ナノ粒子の活性物質は、本明細書で定義される通り、約2000nm未満の有効平均粒度を有する。
【0068】
本明細書で用いられる成句「難水溶性の薬物」は、約30mg/mL未満、約20mg/ml未満、約10mg/ml未満、または、約1mg/ml未満の水溶性を有する薬物を意味する。
【0069】
本明細書で用いられる成句「治療上有効な量」は、薬物が投与されたこのような治療を必要とする被検体の有意な数に特定の薬理学的応答を提供する薬物投与量を意味する。具体的な例において具体的な被検体に投与される治療上有効な量の薬物は、このような投与量が当業者によって治療上有効な量とみなされたとしても、本明細書で説明されている状態/病気の治療に常に有効であるとは限らないことを強調する。
【0070】
本明細書で用いられる用語「粒子」は、物体のサイズ、形状または形態に関わりなく、独立した粒子、ペレット、ビーズまたは顆粒として存在することを特徴とする物体の状態を意味する。本明細書で用いられる用語「マルチ粒子(multiparticulate)」は、それらのサイズ、形状または形態に関わりなく、複数の分離または凝集した粒子、ペレット、ビーズ、顆粒、またはそれらの混合物を意味する。
【0071】
本明細書において、本発明に係る組成物に関して、または、コーティングもしくはコーティング材料に関して、または、その他のあらゆる環境で用いられる用語「放出制御」は、即時放出型ではない放出を意味し、例えば制御放出、持続放出および遅延放出などが考慮される。
【0072】
本明細書で用いられる用語「時間遅延」は、組成物の投与と、特定の成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出との間の期間を意味する。
本明細書で用いられる用語「ラグタイム」は、1種の成分からの活性成分の送達と、それに続くその他の成分からのドセタキセルまたはその類似体の送達との間の期間を意味する。
【0073】
C.ドセタキセルのナノ粒子組成物の特徴
本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、多数の薬理学的特徴が強化されている。
【0074】
1.高い生物学的利用率
本発明の一実施態様において、ドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤は、同じ用量の同じドセタキセルまたはその類似体で高い生物学的利用率を示し、タキソテール(R)のような従来のドセタキセル製剤と比較してより少ない用量しか必要としない。
【0075】
ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の剤形は、従来の微結晶性ドセタキセルの剤形(例えばタキソテール(R))で観察されるのと同じ薬理効果を得るためにより少ない薬物量しか必要としない。それゆえに、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の剤形は、従来の微結晶性ドセタキセルの剤形と比較して高い生物学的利用率を有する。
【0076】
2.本発明のドセタキセル組成物の薬物動態プロファイルは、本組成物を摂取する被検体の給餌または絶食条件の影響を受けない
本発明のその他の実施態様において、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物が説明され、ここで、ドセタキセルまたはその類似体の薬物動態プロファイルは、実質的に、本組成物を摂取する被検体の給餌または絶食条件の影響を受けない。これは、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物が、給餌条件下で投与される場合と、それに対して、絶食条件下で投与される場合とでは、吸収された薬物の量、または、薬物吸収速度に明らかな差がわずかしかないか、またはまったくないことを意味する。
【0077】
実質的に食事の影響を受けない剤形の利点としては、被検体の利便性の増加が挙げられ、従って、被検体は用量を摂取する際に食事をしていいのか、または絶食するのかを確認する必要がないため被検体のコンプライアンスも向上する。これは、ドセタキセルまたはその類似体に関する被検体のコンプライアンスが弱いと、薬物が処方される医療条件の増加が観察される可能性がある−すなわち、乳房または肺癌患者のような癌患者の予後を悪化させる恐れがあるため、有意である。
【0078】
本発明はまた、哺乳動物被検体に投与されると、望ましい薬物動態プロファイルを有するドセタキセルまたはその類似体の組成物を提供する。ドセタキセルまたはその類似体の組成物の望ましい薬物動態プロファイルとしては、好ましくは、これらに限定されないが、以下が挙げられる:(1)ドセタキセルまたはその類似体のCmaxであり、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、そのCmaxは、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えば、タキソテール(R))のCmaxより大きい;および、/または、(2)ドセタキセルまたはその類似体のAUCであり、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、そのAUCは、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えば、タキソテール(R))のAUCより大きい;および、/または、(3)ドセタキセルまたはその類似体のTmaxであり、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、そのTmaxは、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えば、タキソテール(R))のTmaxより低い。望ましい薬物動態プロファイルは、本明細書で用いられるように、ドセタキセルまたはその類似体の初回投与の後に測定された薬物動態プロファイルである。
【0079】
一実施態様において、好ましいドセタキセルまたはその類似体の組成物は、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えばタキソテール(R))を用いた薬物動態の比較試験において、ドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えば、タキソテール(R))によって示されるTmaxの、約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、または、約5%以下のTmaxを示す。
【0080】
その他の実施態様において、本発明のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えばタキソテール(R))を用いた薬物動態の比較試験において、ドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えばタキソテール(R))によって示されるCmaxよりも、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約600%、少なくとも約700%、少なくとも約800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約1100%、少なくとも約1200%、少なくとも約1300%、少なくとも約1400%、少なくとも約1500%、少なくとも約1600%、少なくとも約1700%、少なくとも約1800%、または、少なくとも約1900%大きいCmaxを示す。
【0081】
さらにその他の実施態様において、本発明のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えばタキソテール(R))を用いた薬物動態の比較試験において、ドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えばタキソテール(R))によって示されるAUCよりも、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約225%、少なくとも約250%、少なくとも約275%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約500%、少なくとも約550%、少なくとも約600%、少なくとも約750%、少なくとも約700%、少なくとも約750%、少なくとも約800%、少なくとも約850%、少なくとも約900%、少なくとも約950%、少なくとも約1000%、少なくとも約1050%、少なくとも約1100%、少なくとも約1150%、または、少なくとも約1200%大きいAUCを示す。
【0082】
3.給餌条件で投与された場合と、絶食条件で投与された場合の本発明のドセタキセル組成物の生体内利用率同等性
本発明はまた、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物も包含し、ここで、絶食条件での被検体への本組成物の投与は、給餌条件での被検体への本組成物の投与と生体内利用率が等しい。
【0083】
ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物の吸収の差は、給餌条件で投与された場合と、絶食条件で投与された場合を比較すると、好ましくは、約00%未満、約95%未満、約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約35%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または、約3%未満である。
【0084】
本発明の一実施態様において、本発明は、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を包含し、ここで、絶食条件での被検体への本組成物の投与は、給餌条件での被検体への本組成物の投与と生体内利用率が等しく、具体的には米国食品医薬品局(USFDA)やそれに対応する欧州の 監督官庁(EMEA)によって示されたCmaxおよびAUCガイドラインで定義されている通りである。USFDAガイドラインのもとで、2種の生成物または方法のAUCおよびCmaxの90%信頼区間(CI)が0.80〜1.25である場合、それらの生体内利用率は等しい(Tmax測定は、調節のためであり、生体内利用率等価性には関連がない)。欧州のEMEAガイドラインに従って2種の化合物または投与条件間の生体内利用率等価性を示すために、AUCの90%CIは、0.80〜1.25、Cmaxの90%CIは、0.70〜1.43でなければならない。
【0085】
4.本発明のドセタキセル組成物の溶解プロファイル
さらに本発明のその他の実施態様において、本発明のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、意外なことに高い溶解プロファイルを有する。一般的に溶解が速ければ速いほど、より速い作用の開始、および、より大きい生物学的利用率が得られるため、ドセタキセルまたはその類似体の迅速な溶解が好ましい。ドセタキセルまたはその類似体の溶解プロファイルと生物学的利用率を改善するために、100%に近いレベルを達成することができるように、薬物の溶解を高めることが有用である。
【0086】
本発明のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、好ましくは、約5分以内に、少なくとも約20%のドセタキセルまたはその類似体の組成物が溶解する溶解プロファイルを有する。本発明のその他の実施態様において、約5分以内に、少なくとも約30%、または、少なくとも約40%のドセタキセルまたはその類似体の組成物が溶解する。本発明のさらにその他の実施態様において、好ましくは、約10分以内に、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または、少なくとも約80%のドセタキセルまたはその類似体の組成物が溶解する。最終的には、本発明のその他の実施態様において、好ましくは、約20分以内に、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または、少なくとも約100%のドセタキセルまたはその類似体の組成物が溶解する。
【0087】
好ましくは、溶解性は、違いを示す媒体中で測定される。このような溶解媒体において、胃液中でかなり異なった溶解プロファイルを有する2種の生成物は、2種のかなり異なった溶解曲線を示すと予想され、すなわち溶解媒体によってインビボでの組成物の溶解性を推測することができる。典型的な溶解媒体は、界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムを0.025Mで含む水性媒体である。溶解した量の測定は、分光光度法で行うことができる。溶解性を測定するために、回転ブレード法(欧州薬局方)を用いることができる。
【0088】
5.本発明のドセタキセル組成物の再分散性プロファイル
本発明の一実施態様において、本発明のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、再分散したドセタキセルまたはその類似体の粒子の有効平均粒度が、約2ミクロン未満になるように、再分散する固形の投与形態に製剤化される。これは、投与した際に、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物が、ナノ粒子の粒度に再分散されなかった場合、剤形が、ドセタキセルまたはその類似体をナノ粒子の粒度に製剤化することによって付与される利点が失われる可能性があるため、有意である。
【0089】
実際に、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の利点は、ドセタキセルまたはその類似体の粒度が小さいことにより、ドセタキセルまたはその類似体が投与した際に小さい粒度に再分散しない場合、全体的な自由エネルギーの減少を引き起こすナノ粒子系の極めて高い表面自由エネルギーと、熱力学的駆動力のために「凝集塊」、または、凝集したドセタキセルまたはその類似体の粒子が形成される。このような凝集した粒子の形成に伴い、剤形の生物学的利用率も低下する可能性がある。
【0090】
その上、本発明のナノ粒子タキソイド組成物、例えば、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物は、ヒトまたは動物のような哺乳動物に投与すると、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の粒子の高い再分散性を示し、これは、生体に関連する水性媒体中の再溶解/再分散性、すなわち再分散したドセタキセルまたはその類似体の粒子の有効平均粒度が、約2ミクロン未満になることによって実証されている通りである。このような生体に関連する水性媒体は、媒体の生物学的な関連性の基準を形成する 望ましいイオン強度およびpHを示す水性媒体であればどのようなものでもよい。望ましいpHおよびイオン強度は、人体中で見出される生理学的条件の典型的な値である。このような生体に関連する水性媒体としては、例えば、望ましいpHおよびイオン強度を示す電解質水溶液、または、あらゆる塩、酸もしくは塩基の水溶液、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0091】
生体に関連するpHは当業界周知である。例えば、胃では、わずかに2より低い値(ただし通常1より大きい)から、4または5までのpH範囲である。小腸において、pHは、4〜6の範囲であり、結腸においては6〜8の範囲であり得る。また、生体に関連するイオン強度もは当業界周知である。絶食条件下の胃液は、約0.1Mのイオン強度を有し、一方、絶食条件の腸液は、約0.14のイオン強度を有する。例えば、Lindahl等,“Characterization of Fluids from the Stomach and Proximal Jejunum in Men and Women”,Pharm.Res.,14(4):497〜502(1997)を参照。
【0092】
試験溶液のpHおよびイオン強度は、具体的な化学物質含量よりも重要であると考えられる。従って、適切なpHおよびイオン強度 値は、強酸、強塩基、塩、単独または複数の共役酸−塩基対(すなわち、弱酸、および、その酸に対応する塩)、一塩基および多塩基の電解質などの多数の組み合わせによって得ることができる。
【0093】
代表的な電解質溶液としては、これらに限定されないが、約0.001〜約0.1Nの濃度のHCl溶液、および、約0.001〜約0.1Mの濃度範囲のNaCl溶液、ならびにそれらの混合物が挙げられる。例えば、電解質溶液としては、これらに限定されないが、約0.1N またはそれ未満のHCl、約0.01Nまたはそれ未満のHCl、約0.001Nまたはそれ未満のHCl、約0.1Mまたはそれ未満のNaCl、約0.01Mまたはそれ未満のNaCl、約0.001Mまたはそれ未満のNaCl、および、それらの混合物が挙げられる。これらの電解質溶液のなかでも、消化管の基部におけるpHおよびイオン強度条件を考慮すると、0.01NのHCl、および/または、0.1MのNaClが絶食したヒトの生理学的条件の最も代表的なものである。
【0094】
0.001NのHCl、0.01NのHCl、および、0.1NのHClの電解質濃度は、それぞれpH3、pH2、および、pH1に相当する。従って、0.01NのHCl溶液は、胃内で見出される典型的な酸性条件を模擬する。0.1MのNaCl溶液は、胃腸液など全身で見出されるイオン強度条件の適度な近似状態を提供するが、0.1Mより高い濃度を用いて、ヒト胃腸管内における給餌条件を模擬実験することも可能である。
【0095】
望ましいpHおよびイオン強度を示す典型的な塩、酸、塩基の溶液、またはそれらの組み合わせとしては、これらに限定されないが、リン酸/リン酸塩+ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩化塩、酢酸/酢酸塩+ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩化塩、炭酸/炭酸水素塩+ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩化塩、および、クエン酸/クエン酸塩+ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩化塩が挙げられる。
【0096】
本発明のその他の実施態様において、本発明の再分散したドセタキセルまたはその類似体の粒子(水性媒体、生体に関連する媒体、またはその他のあらゆる適切な媒体中に再分散した)は、光散乱法、顕微鏡またはその他の適切な方法によって測定したところ、約2000nm未満、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、または、約50nm未満の有効平均粒度を有する。このような有効平均粒度を測定するのに適した方法は、当業界において通常の技術を有する者には既知である。
【0097】
再分散性は、当業界既知のあらゆる適切な手段を用いて試験することができる。例えば、米国特許第6,375,986号の実施例の章の、“Solid Dose Nanoparticulate Compositions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate”を参照。
【0098】
6.その他の活性物質と共に用いられるドセタキセル組成物
本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、癌治療、具体的には乳房、および/または、肺癌治療の治療において有用な1種またはそれ以上の化合物をさらに含んでいてもよい。本発明の組成物は、このようなその他の活性物質と共に製剤化してもよいし、あるいは、本発明の組成物は、このような活性物質と共投与してもよいし、または、連続的に投与してもよい。本発明のドセタキセル組成物と共投与するか、または共に製剤化することができる薬物の例としては、これらに限定されないが、抗癌剤、化学療法剤、デキサメタゾン、COX−2阻害剤、ラニキダール(laniquidar)、オブリマーセン(oblimersen)、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ステロイド、例えばプレドニゾン、およびその他のヒスタミン遮断薬、シクロホスファミド、サイクロスポリン、イレッサ(ZD1839)、サリドマイド、ミトキサントロン、インフリキシマブ、エルロチニブ、トラスツズマブ、TLK286、MDX−010、ZD1839、エピルビシン、タモキシフェン、ベバシズマブ、フィルグラスチム、ビノレルビン、セツキシマブ、イリノテカン、エストラムスチン、エキシスリンド(exisulind)、カルボプラチン、ZD6474、ゲムシタビン、イフォスファミド、カペシタビン、フラボピリドール(flavopiridol)、セレコキシブ、スリンダック、および、エキシスリンド(exisulind)が挙げられる。
【0099】
D.組成物
本発明は、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物の粒子、および、少なくとも1種の表面安定剤を提供する。表面安定剤は、ドセタキセルまたはその類似体粒子の表面に吸収または会合させることが好ましい。本発明において有用な表面安定剤は、ドセタキセルまたはその類似体の粒子、または、それ自身と化学反応しない。好ましくは、表面安定剤の個々の分子は、分子間の架橋を実質的に含まない。その他の実施態様において、本発明の組成物は、2種またはそれ以上の表面安定剤を含んでいてもよい。
【0100】
本発明はまた、1種またはそれ以上の非毒性の生理学的に許容できるキャリアー、アジュバント、または、基剤(集合的にキャリアーと称される)を共に含むナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物も含む。本組成物は、非経口の注射剤(例えば、静脈内、筋肉内、または、皮下注射剤)、固体、液体またはエアロゾル形態での経口投与、膣、鼻、直腸、眼、局所(粉末、軟膏またはドロップ)、口腔、嚢内、腹膜内または外用投与などに応じて製剤化することができる。本発明の具体的な実施態様において、ドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤は、注射可能な形態、または、コーティングされた経口用製剤である。
【0101】
1.ドセタキセル
本明細書で用いられる用語「ドセタキセル」は、それらの類似体および塩を含み、結晶相、非晶相、半結晶性の相、半非晶質の相、または、それらの混合物の形態のものが可能である。ドセタキセルまたはその類似体は、実質的に光学的に純粋な一方のエナンチオマーか、または、エナンチオマーの混合物、ラセミ体、またはそれ以外の形態のいずれかの形態として存在する可能性がある。
【0102】
本発明で説明されている、および、本発明に包含されるドセタキセルの類似体としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
(1)安息香酸のC−3’および/またはC−2位においてフェニル基の代わりにシクロヘキシル基を含むドセタキセル類似体、例えば、3’−デフェニル−3’シクロヘキシルドセタキセル、2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル、および、3’−デフェニル−3’シクロヘキシル−2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル(Ojima等,“Synthesis and structure−activity relationships of new antitumor taxoids.Effects of cyclohexyl substitution at the C−3’and/or C−2 of taxotere(docetaxel)”,J.Med.Chem.,37(16):2602〜8(1994));
(2)C−3’位またはC−2位においてフェニルまたは芳香族基が欠失したドセタキセル類似体、例えば3’−デフェニル−3’−シクロヘキシルドセタキセル、および、2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル;
(3)2−アミドドセタキセル類似体、例えば、m−メトキシ、および、m−クロロベンゾイルアミド類似体など(Fang等,Bioorg.Med.Chem.Lett.,72(11):1543〜6(2002);
(4)オキセタンD環が欠失しているが、生物活性に重要な4アルファ−アセトキシ基を有するドセタキセル類似体、例えば5(20)−チアドセタキセル類似体、これは、10−デアセチルバッカチンIII、または、タキシンBおよびイソタキシンBから合成することができ、Merckle等,“Semisynthesis of D−ring modified taxoids:novel thia derivatives of docetaxel”,J.Org.Chem.,66(15):5058〜65(2001)、および、Deka等,Org.Lett,5(26):5031〜4(2003)で説明されている;
(5)5(20)デオキシドセタキセル;
(6)10−デオキシ−10−C−モルホリノエチルドセタキセル類似体、例えば、7−ヒドロキシル基が、疎水性基(メトキシ、デオキシ、6,7−オレフィン、アルファ−F、7−ベータ−8−ベータ−メタノ、フルオロメトキシ)に改変されたドセタキセル類似体であり、これは、Iimura等,“Orally active docetaxel analogue:synthesis of 10−deoxy−10−C−morpholinoethyl docetaxel analogues”,Bioorg.Med.Chem.Lett,11(3):407〜10(2001)で説明されている;
(7)Cassidy等,Clin.Can.Res.,8:846〜855(2002)で説明されているドセタキセル類似体、例えばイソセリンN−アシル置換基としてt−ブチルカルバメートを有するが、C−10(アセチル基、それに対して、ヒドロキシル)、および、C−13イソセリン結合(エノールエステル、それに対して、エステル)においてドセタキセルとは異なる類似体;
(8)C−3位にペプチド側鎖を有するドセタキセル類似体、これは、Larroque等,“Novel C2−C3”N−peptide linked macrocyclic taxoids.Part 1 :Synthesis and biological activities of docetaxel analogues with a peptide side chain at C3”,Bioorg.Med.Chem.Lett.15(21):4722〜4726(2005)で説明されている;
(9)XRP9881(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(10)XRP6528(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(11)オルタタキセル(Ortataxel)(14−ベータ−ヒドロキシ−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(12)MAC−321(10−デアセチル−7−プロパノイルバッカチンドセタキセル類似体);
(13)DJ−927(7−デオキシ−9−ベータ−ジヒドロ−9,10,O−アセタールタキサンドセタキセル(docetaxal)類似体);
(14)C−2位に芳香環が結合したC2−C3’N−結合を有し、N3’とC2−芳香環とがオルト、メタまたはパラ位で連結されたドセタキセル類似体。パラ置換された誘導体は微小管を安定化することができなかったが、それに対してオルトおよびメタ置換された化合物は、低温誘発性の微小管分解分析において有意な活性を示す。Olivier等,“Synthesis of C2−C3’N−Linked Macrocyclic Taxoids; Novel Docetaxel Analogues with High Tubulin Activity”,J.Med.Chem.,47(24:5937〜44,2004年11月);
(15)C−2のOH、および、C−3’NH成分が連結した22員環(またはそれ以上)の環が結合しているドセタキセル類似体(C−2のOH成分とC−3’のNH成分とが連結した18、20、21および22員環が結合しているドセタキセル類似体の生物学的な評価によれば、活性は、環の大きさに依存することが示された;22員環のタキソイド3dだけが、有意なチューブリン結合を示した)(Querolle等,“Synthesis of novel macrocyclic docetaxel analogues.Influence of their macrocyclic ring size on tubulin activity”,J.Med.Chem.,46(17):3623〜30(2003));
(16)7ベータ−O−グリコシル化ドセタキセル類似体(Anastasia等,“Semi−Synthesis of an O−glycosylated docetaxel analogue”,Bioorg.Med.Chem.,11(7):1551〜6(2003));
(17)10−アルキル化ドセタキセル類似体、例えばアルキル成分の末端にメトキシカルボニル基を有する10−アルキル化ドセタキセル類似体(Nakayama等,“Synthesis and cytotoxic activity of novel 10−alkylated docetaxel analogs”,Bioorg.Med.Chem.Lett.,8(5):427〜32(1998));
(18)2’,2’−ジフルオロ、3’−(2−フリル)、および、3’−(2−ピロリル)ドセタキセル類似体(Uoto等,“Synthesis and structure−activity relationships of novel 2’,2’−difluoro analogues of docetaxel”,Chem.Pharm.Bull.(Tokyo),45(11):1793〜804(1997));および、
(19)蛍光性およびビオチン化ドセタキセル類似体、例えば(a)7または3’位にN−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾ−4−イル)アミド−6−カプロイル鎖を有するドセタキセル類似体、(b)3’位にN−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾ−4−イル)アミド−3−プロパノイル基を有するドセタキセル類似体、または、(c)7、10または3’位に5’−ビオチニルアミド−6−カプロイル鎖を有するドセタキセル類似体(Dubois等,“Fluorescent and biotinylated analogues of docetaxel:synthesis and biological evaluation”,Bioorg.Med,Chem.,3(10):1357〜68(1995))。
【0103】
2.表面安定剤
本発明のドセタキセルまたはその類似体の製剤において、2種以上の表面安定剤の組み合わせが使用可能である。本発明の一実施態様において、ドセタキセルまたはその類似体の製剤は、注射製剤である。適切な表面安定剤としては、これらに限定されないが、既知の有機および無機の医薬品賦形剤が挙げられる。このような賦形剤としては、様々なポリマー、低分子量オリゴマー、天然産物、および、界面活性剤が挙げられる。表面安定剤としては、非イオン性、イオン性、アニオン性、カチオン性、および、両性イオン性界面活性剤が挙げられる。本発明の一実施態様において、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の注射製剤のための表面安定剤は、ポビドンポリマーである。
【0104】
表面安定剤の代表的な例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(現在、ヒプロメロースとして知られている)、アルブミン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホスクシナート、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、マクロゴールエーテル、例えばセトマクロゴール1000)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、市販のトゥイーン(Tween(R))、例えばトゥイーン(R)20、および、トゥイーン(R)80(ICIスペシャリティー・ケミカルズ(ICI Speciality Chemicals)));ポリエチレングリコール(例えば、カルボワックス3550(Carbowaxes 3550(R))、および、934(R)(ユニオン・カーバイド(Union Carbide)))、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、フタル酸ヒプロメロース、非晶質セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシドとホルムアルデヒドとを含む4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(また、チロキサポール、スーペリオン(superione)、および、トリトン(Triton)としても知られている)、ポロキサマー(例えば、プルロニック(R)F68およびF108、これは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーである);ポロキサミン(例えば、テトロニック908(Tetronic 908(R))、またポロキサミン908(R)として知られており、これらは、エチレンジアミン(BASFワイアンドット社(BASF Wyandotte Corporation),パーシパニー,ニュージャージー州)にプロピレンオキシドとエチレンオキシドを連続添加することによって誘導された四官能性のブロックコポリマーである);テトロニック1508(R)(T−1508)(BASFワイアンドット社)、トリトンX−200(R)、これは、アルキルアリールポリエーテルスルホナート(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas))である;クローデスタ(Crodesta)F−110(R)、これは、ステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロース(クローダ社(Croda Inc.))との混合物である;p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)、また、Olin−1OG(R)、または、界面活性剤10−G(R)(オリン・ケミカルズ(Olin Chemicals),スタンフォード,コネチカット州);これは、クローデスタSL−40(R)(クローダ社);および、SA9OHCOとして知られており、SA9OHCOは、C18H37CH2C(O)N(CH3)−CH2(CHOH)4(CH2OH)2(イーストマンコダック社(Eastman Kodak Co.))である;デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシル(−D−グルコピラノシド;n−デシル(−D−マルトピラノシド;n−ドデシル(−D−グルコピラノシド;n−ドデシル(−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−(−D−グルコピラノシド;n−ヘプチル(−D−チオグルコシド;n−ヘキシル(−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノイル(−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−(−D−グルコピラノシド;オクチル(−D−チオグルコピラノシド;PEG−リン脂質、PEG−コレステロール、PEG−コレステロール誘導体、PEG−ビタミンA、PEG−ビタミンE、リゾチーム、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのランダムコポリマーなどが挙げられる。また、望ましい場合は、本発明のドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤は、リン脂質を含ませないで製剤化してもよい。
【0105】
有用なカチオン性表面安定剤の例としては、これらに限定されないが、ポリマー、バイオポリマー、多糖類、セルロース誘導体、アルギン酸塩、リン脂質、および、非高分子化合物、例えば両性イオン性安定剤、ポリ−n−メチルピリジニウム、アントリル(anthryul)ピリジニウム塩化物、カチオン性のリン脂質、キトサン、ポリリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリラートトリメチルアンモニウム臭化物(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウム臭化物(HDMAB)、および、ポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリラートジメチル硫酸塩が挙げられる。その他の有用なカチオン性安定剤としては、これらに限定されないが、カチオン脂質、スルホニウム、ホスホニウム、および、第四級アンモニウム化合物、例えばステアリルトリメチルアンモニウム塩化物、ベンジル−ジ(2−シクロエチル)エチルアンモニウム臭化物、ヤシ脂肪酸トリメチルアンモニウム塩化物または臭化物、ヤシ脂肪酸メチルジヒドロキシエチルアンモニウム塩化物または臭化物、デシルトリエチルアンモニウム塩化物、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物または臭化物、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物または臭化物、ヤシ脂肪酸ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物または臭化物、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩化物または臭化物、ラウリルジメチル(エテンオキシ)4アンモニウム塩化物または臭化物、N−アルキル(C14〜18)ジメチルベンジルアンモニウム塩化物、N−アルキル(C14〜18)ジメチルベンジルアンモニウム塩化物、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物一水化物、ジメチルジデシルアンモニウム塩化物、N−アルキルおよび(C12〜14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウム塩化物、ハロゲン化トリメチルアンモニウム、アルキル−トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル−ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩化物、エトキシ化されたアルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、および/または、エトキシ化されたトリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウム塩化物、N−ジデシルジメチルアンモニウム塩化物、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物一水化物、N−アルキル(C12〜14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウム塩化物、および、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウム塩化物、ラウリルトリメチルアンモニウム塩化物、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩化物、アルキルベンジルジメチルアンモニウム臭化物、C12、C15、C17トリメチルアンモニウム臭化物、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウム塩化物、ポリ−ジアリルジメチルアンモニウム塩化物(DADMAC)、ジメチルアンモニウム塩化物、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリセチルメチルアンモニウム塩化物、デシルトリメチルアンモニウム臭化物、ドデシルトリエチルアンモニウム臭化物、テトラデシルトリメチルアンモニウム臭化物、メチルトリオクチルアンモニウム塩化物(ALIQUAT336)、POLYQUAT、臭化テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム臭化物、コリンエステル(例えば、脂肪酸のコリンエステル)、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物(例えば、ステアリルトリモニウム塩化物、および、ジステアリルジモニウム塩化物)、臭化セチルピリジニウム、または、塩化物、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物の塩、MIRAPOL、および、ALKAQUAT(アルカリル・ケミカル社(Alkaril Chemical Company))、アルキルピリジニウム塩;アミン、例えばアルキルアミン、ジアルキルアミン、アルカノールアミン、ポリエチレンポリアミン、N,N−ジアルキルアミノアクリル酸アルキル、および、ビニルピリジン、アミン塩、例えばラウリルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、アルキルピリジニウム塩、および、アルキルイミダゾリウム塩、および、酸化アミン;イミドアゾリニウム塩;プロトン化された第四級アクリルアミド;メチル化された第四級化合物ポリマー、例えばポリ[ジアリルジメチルアンモニウム塩化物]、および、ポリ−[N−メチルビニルピリジニウム塩化物];および、カチオン性グアールが挙げられる。
【0106】
このような典型的なカチオン性表面安定剤、およびその他の有用なカチオン性表面安定剤は、J.Cross and E.Singer,Cationic Surfactants:Analytical and Biological Evaluation(マルセル・デッカー(Marcel Dekker),1994);P.and D.Rubingh(編集者),Cationic Surfactants:Physical Chemistry(マルセル・デッカー,1991);および、J.Richmond,Cationic Surfactants:Organic Chemistry(マルセル・デッカー,1990)において説明されている。
【0107】
非高分子性の表面安定剤としては、あらゆる非高分子化合物が挙げられ、例えば、塩化ベンザルコニウム、カルボニウム化合物、ホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、ハロニウム化合物、カチオン性有機金属化合物、第四級リン化合物、ピリジニウム化合物、アニリニウム化合物、アンモニウム化合物、ヒドロキシルアンモニウム化合物、一級アンモニウム化合物、二級アンモニウム化合物、三級アンモニウム化合物、および、式NR1R2R3R4(+)の四級アンモニウム化合物である。式NR1R2R3R4(+)の化合物について:
(i)R1〜R4はいずれもCH3ではない;
(ii)R1〜R4のいずれか一個がCH3である;
(iii)R1〜R4のうち3個がCH3である;
(iv)R1〜R4の全部がCH3である;
(v)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がC6H5CH2であり、R1〜R4のいずれか一個が7個またはそれ未満の炭素原子からなるアルキル鎖である;
(vi)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がC6H5CH2であり、R1〜R4のいずれか一個が19個またはそれ以上の炭素原子からなるアルキル鎖である;
(vii)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個が、基C6H5(CH2)n(式中、nは1より大きい)である;
(viii)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がC6H5CH2であり、R1〜R4のうち1個が、少なくとも1種のヘテロ原子を含む;
(ix)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がC6H5CH2であり、R1〜R4のうち1個が、少なくとも1種のハロゲンを含む;
(x)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がC6H5CH2であり、R1〜R4のうち1個が、少なくとも1個の環状フラグメントを含む;
(xi)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がフェニル環である;または、
(xii)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のうち2個が、純粋な脂肪族フラグメントである。
【0108】
このような化合物としては、これらに限定されないが、塩化ベヘンアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベヘントリモニウム、塩化ラウラルコニウム、塩化セタルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化セトリモニウム、セチルアミンヒドロフッ化物、塩化クロラリルメテナミン(クオタニウム−15(Quaternium−15))、ジステアリルジモニウム塩化物(クオタニウム−5)、ドデシルジメチルエチルベンジルアンモニウム塩化物(クオタニウム−14)、クオタニウム−22、クオタニウム−26、クオタニウム−18ヘクトライト、ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩、塩酸システイン、ジエタノールアンモニウムPOE(10)オレイル(oletyl)リン酸エーテル、ジエタノールアンモニウムPOE(3)オレイルリン酸エーテル、獣脂アルコニウム塩化物(tallow alkonium chloride)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、塩化ステアラルコニウム、臭化ドミフェン、安息香酸デナトニウム、塩化ミリスタルコニウム、塩化ラウリルトリモニウム、エチレンジアミン二塩化水素化物、塩酸グアニジン、ピリドキシンHCl、塩酸イオフェタミン、塩酸メグルミン、塩化メチルベンゼトニウム、臭化ミルトリモニウム、塩化オレイルトリモニウム、ポリクオタニウム−1、塩酸プロカイン、ココベタイン、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトライト(stearalkoniumhectonite)、ステアリルトリヒドロキシエチルプロピレンジアミンジヒドロフルオリド、獣脂トリモニウム塩化物、および、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物が挙げられる。
【0109】
これらの表面安定剤の多くは既知の医薬品賦形剤であり、米国薬剤師会(American Pharmaceutical Association)と英国薬剤師会(The Pharmaceutical Society of Great Britain)による共編で出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients(ファーマシューティカル・プレス(The Pharmaceutical Press),2000)で詳細に説明されており、これは、この参照により具体的に開示に含まれる。
【0110】
ポビドンポリマー
ポビドンポリマーは、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の注射製剤を製剤化するのに使用することができる典型的な表面安定剤である。ポビドンポリマーは、ポリビドン、ポビドナム(povidonum)、PVP、および、ポリビニルピロリドンとしても知られており、これらは、コリドン(Kollidon(R))(BASF社)、および、プラスドン(R)(ISPテクノロジーズ社(ISP Technologies,Inc.))という商標名で販売されている。これらは多分散高分子であり、化学名は、1−エテニル−2−ピロリジノンポリマー、および、1−ビニル−2−ピロリジノンポリマーである。ポビドンポリマーは、約10,000〜約700,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する一連の生成物として商業的に生産されている。注射可能なナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の表面安定剤として有用であるためには、ポビドンポリマーが、約40,000ダルトン未満の分子量を有することが好ましく、これは、40,000ダルトンより大きい分子量の場合、注射剤の体からのクリアランスが困難なためである。
【0111】
ポビドンポリマーは、例えば以下の工程を含むレッペ法によって製造される:(1)レッペのブタジエン合成によって、アセチレンおよびホルムアルデヒドから1,4−ブタンジオールを得ること;(2)銅上で、200℃で、1,4−ブタンジオールを脱水素し、γ−ブチロラクトンを形成すること;および、(3)γ−ブチロラクトンとアンモニアとを反応させ、ピロリドンを得ること。それに続くアセチレン処理により、ビニルピロリドンの単量体が得られる。重合は、H2OおよびNH3の存在下で加熱することによって開始される。Merck Index,第10版,7581頁(メルク&Co.(Merck & Co.),ローウェイ,ニュージャージー州,1983)を参照。
【0112】
ポビドンポリマーの製造法では、不均一な鎖長を有するため、分子量が異なる分子を含むポリマーが得られる。このような分子の分子量は、それぞれ個々の市販のグレードにおいてほぼ平均または平均値であり、様々である。ポリマーの分子量を直接決定することは難しいいため、様々な分子量のグレードを分類するのに最も広く用いられる方法は、粘度測定に基づいたK値による方法である。様々なレードのポビドンポリマーのK値は、平均分子量の関数で示され、K値は、粘度測定から誘導され、フィッケンチャーの式に従って計算される。
【0113】
その重量平重量均分子量(Mw)は、個々の分子の重量を測定する方法(例えば光散乱)によって測定される。表1に、数種の市販のポビドンポリマー(これらは全て可溶性である)の分子量データを示す。
【0114】
出願人は理論的なメカニズムに拘束されることを望まないが、ポビドンポリマーは、粒子間の機械的または立体障害として機能することによって、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の凝結および/または凝集を妨害し、凝集および凝結に必要な近接した粒子間の接近を最小化すると考えられる。
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示されたデータに基づいて、注射用組成物の典型的な好ましい市販のポビドンポリマーとしては、これらに限定されないが、プラスドン(R)C−15、コリドン(R)12PF、コリドン(R)17PF、および、コリドン(R)25が挙げられる。
【0117】
3.ナノ粒子状のドセタキセルの粒度
本明細書で用いられるように、粒度は、例えば当業者周知の従来の粒度測定技術によって測定された重量平均粒度に基づき決定される。このような技術としては、例えば、沈降場流動分画法、光子相関分光法、光散乱、および、ディスク型遠心分離が挙げられる。
【0118】
本発明の組成物は、約2ミクロン未満の有効平均粒度を有するドセタキセルまたはその類似体の粒子を含む。本発明のその他の実施態様において、ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、光散乱法、顕微鏡またはその他の適切な方法によって測定したところ、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400mn未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、または、約50nm未満の有効平均粒度を有する。本発明のその他の実施態様において、本発明の組成物は、注射可能な剤形であり、ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、光散乱法、顕微鏡またはその他の適切な方法によって測定したところ、好ましくは、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、または、約50nm未満の有効平均粒度を有する。注射用組成物は、約1ミクロンより大きく、約2ミクロン以下の有効平均粒度を有するドセタキセルまたはその類似体を含んでいてもよい。
【0119】
「約2000nm未満の有効平均粒度」は、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の少なくとも50%は、有効な重量平均を有する、すなわち約2000nm未満の粒度を有することを意味する。「有効平均粒度」が、約600nm未満である場合、少なくとも約50%のドセタキセルまたはその類似体の粒子が、上述の技術によって測定した場合、約600nm未満の粒度を有する。上述したその他の粒度の場合も同様である。
【0120】
その他の実施態様において、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または、少なくとも約99%のドセタキセルまたはその類似体の粒子が、有効平均未満、すなわち約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満などの粒度を有する。
【0121】
本発明において、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物のD50値は、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の50重量%がこの粒径よりも小さいことを示す値である。同様に、D90は、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の90重量%がこの粒径よりも小さいことを示す値である。
【0122】
4.ナノ粒子状のドセタキセル、および、表面安定剤の濃度
ドセタキセルまたはその類似体、および、1種またはそれ以上の表面安定剤の相対量は、広範囲に様々であってよい。個々の成分の最適な量は、例えば、選択された表面安定剤およびドセタキセルまたはその類似体の物理的および化学的特性、例えば親水親油バランス(HLB)、融点、および、安定剤の水溶液の表面張力などに依存する。
【0123】
好ましくは、ドセタキセルまたはその類似体の濃度は、ドセタキセルまたはその類似体と、少なくとも1種の表面安定剤との合計重量(ただし、その他の賦形剤は含まない)に基づき、約99.5重量%〜約0.001重量%、約95重量%〜約0.1重量%、または、約90重量%〜約0.5重量%の範囲で様々であってよい。一般的には、用量および費用効果の観点からより高い濃度の活性成分が好ましい。
【0124】
好ましくは、表面安定剤の濃度は、ドセタキセルまたはその類似体と、少なくとも1種の表面安定剤との合計の総乾燥重量(ただし、その他の賦形剤は含まない)に基づき、約0.5重量%〜約99.999重量%、約5.0重量%〜約99.9重量%、または、約10重量%〜約99.5重量%の範囲で様々であってよい。
【0125】
5.その他の医薬品賦形剤
また、本発明の医薬組成物は、望ましい投与経路および剤形に応じて、1種またはそれ以上の結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁化剤、甘味料、矯味矯臭薬剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および、その他の賦形剤を含んでいてもよい。このような賦形剤は、当業界周知である。
【0126】
充填剤の例は、乳糖一水和物、乳糖無水物、および、様々なスターチであり;結合剤の例は、様々なセルロース、および、架橋ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース、例えばアビセルPH101(Avicel(R)PH101)、および、アビセル(R)PH102、微結晶性セルロース、および、ケイ化微晶性セルロース(ProSolv SMCCTM)である。
【0127】
適切な潤滑剤としては、圧縮しようとする粉末の流動性に作用する物質が挙げられ、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、例えばエアロシル200(Aerosil(R)200)、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、および、シリカゲルである。
【0128】
甘味料の例は、あらゆる天然または人工甘味料であり、例えばスクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、サイクラミン酸塩、アスパルテーム、および、アクスルファーム(acsulfame)である。矯味矯臭薬剤の例は、マグナスウィート(Magnasweet(R))(MAFCOの商標)、バブルガムフレーバー、および、果実フレーバーなどである。
【0129】
保存剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、および、その塩、パラヒドロキシ安息香酸のその他のエステル、例えばブチルパラベン、アルコール、例えばエチルまたはベンジルアルコール、フェノール化合物、例えばフェノール、および、第四級化合物、例えば塩化ベンザルコニウムである。
【0130】
適切な希釈剤としては、製薬上許容できる不活性充填剤、例えば微結晶性セルロース、ラクトース、二塩基のリン酸カルシウム、サッカリド、および/または、前述のものいずれかの混合物が挙げられる。希釈剤の例としては、微結晶性セルロース、例えばアビセル(R)PH 101、および、アビセル(R)PH102;ラクトース、例えば乳糖一水和物、乳糖無水物、および、ファーマトースDCL21(Pharmatose(R));二塩基のリン酸カルシウム、例えばエンコンプレス(Emcompress(R));マンニトール;スターチ;ソルビトール;スクロース;および、グルコースが挙げられる。
【0131】
適切な崩壊剤としては、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモスターチ、トウモロコシデンプン、および、加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸ナトリウムスターチ、および、それらの混合物が挙げられる。
【0132】
発泡剤の例は、発泡剤の組み合わせであり、例えば有機酸と、炭酸塩または炭酸水素塩との組み合わせである。適切な有機酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、および、アルギン酸、ならびに、無水物および酸性塩が挙げられる。適切な炭酸塩および炭酸水素塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、ナトリウムグリシン炭酸塩、L−リシン炭酸塩、および、アルギニン炭酸塩が挙げられる。あるいは、発泡剤の組み合わせのうち炭酸水素ナトリウム成分だけが存在していてもよい。
【0133】
6.ドセタキセルのナノ粒子注射製剤
本発明の一実施態様において、投与した際に迅速に溶解し、低い注射量でナノ粒子状のドセタキセルを高濃度で含ませることができる、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の注射製剤が提供される。典型的な組成物は、%w/wに基づき以下を含む:
【0134】
【表2】
【0135】
典型的な保存剤としては、メチルパラベン(%w/wに基づき約0.18%)、プロピルパラベン(%w/wに基づき約0.02%)、フェノール(%w/wに基づき約0.5%)、および、ベンジルアルコール(2%v/vまで)が挙げられる。典型的なpH調節剤は、水酸化ナトリウムであり、典型的な液体キャリアーは、滅菌注射用水である。その他の有用な保存剤、pH調節剤、および、液体キャリアーは、当業界周知である。
【0136】
7.コーティングされた経口製剤
ドセタキセルまたはその類似体の生物学的利用率は、食事と共に投与された場合に減少する。食事と共に投与すると、ドセタキセルまたはその類似体が胃に保持される時間が増加する。この保持時間の増加により、ドセタキセルまたはその類似体を、胃内の酸性環境下で溶解させることが可能になる。続いて、溶解した薬物が胃を出て、上部小腸のより塩基性の環境に入ると、ドセタキセルまたはその類似体は溶液から沈殿する。沈殿したドセタキセルまたはその類似体は十分に吸収されないため、それらを再度溶解して吸収可能な状態にしなければならず、このプロセスは、ドセタキセルまたはその類似体の水溶性が不十分なためにゆっくりである。胃内での薬物の溶解、それに続く沈殿は、ドセタキセルまたはその類似体が、ナノ粒子の剤形として、例えばナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の固体分散液、または、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の液体充填カプセルとして投与されることによって得ることができる強化された生物学的利用率を低減させる。胃の低いpH条件から薬物を保護すれば、このような生物学的利用率の減少が低くなるか、または、なくなると予想される。
【0137】
それゆえに、本明細書において、コーティングされたナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物が、例えば腸溶性ドセタキセルまたはその類似体を含む組成物が説明される。一実施態様において、経口製剤は、腸溶性固形の剤形のような経口製剤を含む。
【0138】
経口投与のための固形の剤形としては、これらに限定されないが、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、および、顆粒が挙げられる。このような固形の剤形において、ドセタキセルまたはその類似体は、以下のうち少なくとも1種と混合される:(a)1またはそれ以上の不活性な賦形剤(またはキャリアー)、例えばクエン酸ナトリウム、または、リン酸二カルシウム;(b)充填剤または増量剤、例えばスターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および、ケイ酸;(c)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および、アラビアゴム;(d)潤滑剤、例えばグリセロール;(e)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカスターチ、アルギン酸、所定の複合ケイ酸塩、および、炭酸ナトリウム;(f)溶液遅延剤、例えばパラフィン;(g)吸収促進剤、例えば第四アンモニウム化合物;(h)湿潤剤、例えばセチルアルコール、および、モノステアリン酸グリセロール;(i)吸着剤、例えばカオリン、および、ベントナイト;および、(j)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、または、それらの混合物。カプセル、錠剤および丸剤の場合、さらに緩衝剤が剤形に含まれていてもよい。
【0139】
薬物放出プロファイル
一実施態様において、コーティングされたドセタキセルまたはその類似体、例えば本明細書で説明される腸溶性血漿プロファイルコーティングされたドセタキセルまたはその類似体の組成物は、経口の剤形で患者に投与されるとパルス型の血漿プロファイルを示す。医薬化合物の投与に付随する血漿プロファイルは、「パルス型のプロファイル」と説明することができ、この場合、高濃度のドセタキセルまたはその類似体のパルスと、拡散した低濃度の谷間が観察される。2つのピークを含むパルス型のプロファイルは、「二峰性」と説明することもできる。同様に、投与した際にこのようなプロファイルを示す組成物または剤形は、ドセタキセルまたはその類似体の「パルス放出」を示すと言うこともできる。
【0140】
従来よく用いられてきた、定期的な間隔で即時放出型(IR)剤形を投与する用法は、典型的には、パルス型の血漿プロファイルを引き起こす。このような場合において、薬物の血漿濃度のピークは、各IRの用量を投与した後に観察され、連続した投与タイムポイントの間に谷間(低い薬物濃度の領域)が生じる。このような用法(および、その結果得られたパルス型の血漿プロファイル)は、それらに関連する特定の薬理学的効果および治療効果を有する。例えば、ピーク間のドセタキセルまたはその類似体の血漿濃度の低下によって提供されるウォッシュアウト期間は、患者において様々なタイプの薬物に対する耐性を減少させたり、または、そのような耐性を予防する寄与因子と考えられてきた。
【0141】
Devane等の米国特許第6,228,398号、第6,730,325号、および、第6,793,936号では、本明細書で開示された組成物に類似したマルチ粒子の改変された制御放出(CR)組成物が開示され、特許請求されている;これらはいずれも、具体的に参照により本発明に含める。この分野におけるあらゆる関連の従来技術がそこで見出せる可能性がある。
【0142】
本発明のその他の形態は、ドセタキセルまたはその類似体の第一の群を含む第一の成分と、ドセタキセルまたはその類似体の第二の群を含む第二の成分とを有するマルチ粒子の放出制御組成物である。第二の成分の成分含有粒子は、放出制御膜でコーティングされている。その代わりに、またはそれに加えて、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第二の群は、放出制御マトリックス材料をさらに含む。経口送達された後、有効な組成物は、パルス型でドセタキセルまたはその類似体を送達する。
【0143】
本発明に係るマルチ粒子の放出制御組成物の好ましい実施態様において、第一の成分は、即時放出される成分である。
ドセタキセルまたはその類似体の粒子の第二の群に塗布された放出制御膜により、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第一の群からの活性成分の放出と、活性なドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第二の群からの活性成分の放出との間にラグタイムが生じる。加えて、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第二の群中の放出制御マトリックス材料が存在すると、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第一の群からのドセタキセルまたはその類似体の放出と、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第二の群からの活性成分の放出との間にラグタイムが生じる。ラグタイムの持続時間は、放出制御膜の組成および/または量を変更すること、および/または、利用されている放出制御マトリックス材料の組成および/または量を変更することによって多様に変化させることができる。従って、ラグタイムの持続時間は、望ましい血漿プロファイルを模擬するように設計することができる。
【0144】
マルチ粒子の放出制御組成物を投与した際に生じた血漿プロファイルは、実質的に、2種またはそれ以上のIR剤形の連続投与によって生じた血漿プロファイルに類似しているため、本発明のマルチ粒子の制御放出組成物は、ドセタキセルまたはその類似体に対する耐性に問題がある可能性がある患者にそれらを投与する場合に特に有用である。従って、このマルチ粒子の放出制御組成物は、患者の本組成物における活性成分に対する耐性の発生を減少させたり、または、それを最小化するのに有利である。
【0145】
本発明はさらに、癌の治療方法、具体的には乳房、卵巣、前立腺、および/または、肺癌の治療方法を提供し、本方法は、治療上有効な量の本発明に係る組成物を投与して、ドセタキセルまたはその類似体のパルス型の、または二峰性の投与を提供することを含む。本発明の利点としては、従来の複数回のIR用法に必要な投与の頻度を減少させつつ、パルス型の血漿プロファイルにより生じる利点を維持することが挙げられる。このような投与の頻度の減少により、製剤を少ない頻度で投与すればよいため患者のコンプライアンスの面で有利である。本発明の組成物を利用することによって達成し得る投与頻度の減少は、医療に携わる人が薬物投与に費やす時間を少なくするため医療費の低減に寄与すると予想される。
【0146】
各成分中の活性成分は、同一でもよいし、または異なっていてもよい。例えば、併用療法の場合、第一の成分としてドセタキセルまたはその類似体を含み、第二の成分として第二の活性成分を含む組成物が望ましい場合がある。実際に、2種またはそれ以上の活性成分が互いに適合する場合、それらは同じ成分にに包含されていてもよい。本組成物の成分のいずれかに存在する医薬化合物は、医薬化合物の生物学的利用率または治療効果を改変するために、本組成物のその他の成分に例えばエンハンサー化合物または増感化合物が添加されていてもよい。
【0147】
本明細書で用いられる用語「エンハンサー」は、動物(例えばヒト)のGITを通過する正味の輸送を促進することによって、活性成分の吸収および/または生物学的利用率を強化することができる化合物を意味する。エンハンサーとしては、これらに限定されないが、中鎖脂肪酸;塩、エステル、エーテルおよびそれらの誘導体、例えばグリセリド、および、トリグリセリド;非イオン界面活性剤、例えばエチレンオキシドと脂肪酸とを反応させることによって製造することができるもの、脂肪族アルコール、アルキルフェノール、または、ソルビタン、または、グリセロール脂肪酸エステル;チトクロームP450阻害剤、P糖タンパク質阻害剤など;および、これらの物質の2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。
【0148】
各成分に存在するドセタキセルまたはその類似体の比率は、望ましい投与計画に応じて、同一でもよいし、または異なっていてもよい。ドセタキセルまたはその類似体は、治療効果を惹起するのに十分なあらゆる量で第一の成分、および第二の成分に存在する。ドセタキセルまたはその類似体は、場合によって、実質的に光学的に純粋な一方のエナンチオマーか、または、エナンチオマーの混合物、ラセミ体、またはそれ以外の形態のいずれかの形態として存在する可能性がある。
【0149】
各成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出に関する徐放性の特徴は、各成分の組成を改変することによって様々に変更することができ、例えば、賦形剤またはコーティングが存在する場合、そのいずれかを改変することによって変更できる。具体的には、ドセタキセルまたはその類似体の放出は、このようなコーティングが存在する場合、粒子上の放出制御膜の組成および/または量を変化させることによって制御が可能である。放出制御される成分が2種以上存在する場合、これらの成分それぞれの放出制御膜は、同一でもよいし、または異なっていてもよい。同様に、放出制御マトリックス材料の包含によって放出制御が促進される場合、活性成分の放出は、利用されている放出制御マトリックス材料の選択と量によって制御が可能である。放出制御膜は、特定の成分それぞれの望ましい時間の遅延を得るのにのに十分なあらゆる量で各成分中に存在させることができる。放出制御膜は、成分間の望ましいラグタイムが得られるのに十分なあらゆる量で各成分中で予め調節することができる。
【0150】
また、各成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出のラグタイムまたは遅延時間も、各成分の組成を改変することによって様々に変更することができ、例えば、存在する可能性があるあらゆる賦形剤およびコーティングを改変することによって変更することができる。例えば、第一の成分が即時放出される成分の場合、ドセタキセルまたはその類似体は、実質的に投与した直後に放出される。あるいは、第一の成分が、例えば時間を遅らせて即時放出される成分の場合、ドセタキセルまたはその類似体は、実質的に 時間遅延の直後に放出される。第二の成分は、例えば時間を遅らせて即時放出される成分(説明した通り)であってもよく、あるいは、時間を遅らせて持続放出する成分、または、徐放性の成分であってもよく、このような場合、ドセタキセルまたはその類似体は、長期間にわたり制御下で放出される。
【0151】
当業者であれば当然ながら、血漿濃度曲線の実際の性質は、説明した通りのこれらの因子のあらゆる組み合わせによって影響を受けると予想される。具体的には、各成分間におけるドセタキセルまたはその類似体の送達 (従って、作用の開始も)のラグタイムは、各成分の組成、および、コーティング (存在する場合)を変更することによって制御が可能である。従って、各成分の組成(例えば、活性成分の量や性質など)を変更し、ラグタイムのバリエーションを変更することによって、多数の放出および血漿プロファイルが得られる可能性がある。各成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出の間のラグタイムの持続時間、および、各成分からの放出の性質(すなわち即時放出型、持続放出など)に応じて、血漿プロファイルにおけるパルスが十分に離れており、明確に規定されたピークを示すこともあり(例えば、ラグタイムが長い場合)、または、パルスがある程度重複していることもある(例えば、ラグタイムが短い場合)。
【0152】
好ましい実施態様において、本発明に係るマルチ粒子の放出制御組成物は、即時放出される成分、および、少なくとも1種の放出制御される成分を有し、この場合、即時放出される成分は、ドセタキセルまたはその類似体の第一の群を含む粒子を含み、放出制御される成分は、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第二の群、および、それに続く群を含む。第二の、および、それに続く放出制御される成分は、制御放出膜を含んでいてもよい。加えて、またはその代わりに、第二の、および、それに続く放出制御される成分は、放出制御マトリックス材料を含んでいてもよい。実施の際に、このような、例えば単一の放出制御される成分を有するマルチ粒子の放出制御組成物の投与により、特徴的なパルス型を有するドセタキセルまたはその類似体の血漿濃度レベルが生じ、この場合、本組成物の即時放出される成分は、血漿プロファイルにおける第一のピークを形成し、放出制御される成分は、血漿プロファイルにおける第二の ピークを形成する。2種以上の放出制御される成分を含む本発明の実施態様は、血漿プロファイルにおいてさらなるピークを形成する。
【0153】
このような、1回の投与単位の投与から得られた血漿プロファイルは、ドセタキセルまたはその類似体の2回(またはそれ以上)のパルスを、2回(またはそれ以上)の投与単位を投与せずに送達することがが望ましい場合に有利である。
【0154】
腸溶コーティング
ドセタキセルまたはその類似体の放出を望ましい方式で改変するあらゆるコーティング材料が使用可能である。具体的には、本発明の実施において使用するのに適したコーティング材料としては、これらに限定されないが、ポリマーコーティング材料、例えば酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルローストリマレタート(trimaletate)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、アンモニオメタクリラートコポリマー、例えばオイドラギット(Eudragit)(R)RSおよびRLという商標名で販売されているもの、ポリアクリル酸およびポリアクリラートおよびメタクリラートコポリマー、例えばオイドラギット(R)SおよびLという商標名で販売されているもの、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセタート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セラック;ヒドロゲルおよびゲルを形成する材料、例えばカルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムカルメロース、カルシウムカルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、スターチ、および、セルロースベースの架橋ポリマー(ここで、架橋の程度は、水の吸収とポリマーマトリックスの膨張が容易になる程度に低い)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、架橋されたスターチ、微結晶性セルロース、キチン、アミノアクリル−メタクリラートコポリマー(オイドラギット(R)RS−PM,ローム・アンド・ハース)、プルラン、コラーゲン、カゼイン、寒天、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、(膨潤性親水性ポリマー)ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリラート)(分子量約5k〜5,000k)、ポリビニルピロリドン(分子量約10k〜360k)、アニオン性およびカチオン性ヒドロゲル、残留した酢酸塩が少ないポリビニルアルコール、寒天の膨潤性混合物およびカルボキシメチルセルロース、無水マレイン酸と、スチレン、エチレン、プロピレンまたはイソブチレンとのコポリマー、ペクチン(分子量約30k〜300k)、多糖類、例えば寒天、アラビアゴム、カラヤ、トラガカント、アルギンおよびグアール、ポリアクリルアミド、ポリオックス(Polyox)ポリエチレンオキシド(分子量約100k〜5,000k)、アクアキープ(AquaKeep)アクリラートポリマー、ポリグルカンのジエステル、架橋されたポリビニルアルコール、および、ポリN−ビニル−2−ピロリドン、ナトリウムスターチグルコレート(例えば、エキスプロタブ(Explotab)(R);エドワード・マンデルC.社(Edward Mandell C.Ltd.));親水性ポリマー、例えば多糖類、メチルセルロース、ナトリウムまたはカルシウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、ポリエチレンオキシド(例えば、ポリオックス(R),ユニオン・カーバイド)、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースブチラート、セルロースプロピオナート、ゼラチン、コラーゲン、スターチ、マルトデキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、メタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー(例えば、オイドラギット(R),ローム・アンド・ハース)、その他のアクリル系アクリル酸誘導体、ソルビタンエステル、天然ゴム類、レシチン、ペクチン、アルギン酸塩、アルギン酸アンモニウム、ナトリウム、カルシウム、アルギン酸カリウム、プロピレングリコールアルギナート、寒天、および、ゴム類、例えばアラビアゴム、カラヤ、ローカストビーン、トラガカント、カラゲーナン、グアール、キサンタン、スクレログルカン、および、それらの混合物およびブレンドが挙げられる。当業者であれば当然ながら、例えば可塑剤、潤滑剤、溶媒などの賦形剤を、コーティングに添加してもよい。適切な可塑剤としては、例えばアセチル化モノグリセリド;ブチルフタリルブチルグリコラート;酒石酸ジブチル;フタル酸ジエチル;フタル酸ジメチル;エチルフタリルエチルグリコラート;グリセリン;プロピレングリコール;トリアセチン;クエン酸塩;トリプロピオイン;ジアセチン;フタル酸ジブチル;アセチルモノグリセリド;ポリエチレングリコール;ヒマシ油;クエン酸トリエチル;多価アルコール、グリセロール、酢酸エステル、グリセロールトリアセテート、クエン酸アセチルトリエチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ブチルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルオクチル、アゼライン酸ジオクチル、エポキシ化タレート、トリメリット酸トリイソオクチル、フタル酸ジエチルヘキシル、ジ−n−オクチルフタラート、ジ−i−オクチルフタラート、ジ−i−デシルフタラート、ジ−n−ウンデシルフタラート、ジ−n−トリデシルフタラート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、ジ−2−エチルヘキシルアジパート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアゼラート、ジブチルセバケートが挙げられる。
【0155】
放出制御される成分が放出制御マトリックス材料を含む場合、あらゆる適切な放出制御マトリックス材料、または、適切な放出制御マトリックス材料の組み合わせが使用可能である。このような材料は当業者既知である。本明細書で用いられる用語「放出制御マトリックス材料」としては、親水性ポリマー、疎水性ポリマー、および、それらの混合物が挙げられ、これらは、インビトロまたはインビボでそれらに分散されたドセタキセルまたはその類似体の放出を改変することができる。本発明の実施に適した放出制御マトリックス材料としては、これらに限定されないが、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、および、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキシド、アルキルセルロース、例えばメチルセルロース、および、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチラート、酢酸フタル酸セルロース、セルロースアセテートトリメリテート、ポリビニルアセテートフタラート、ポリアルキルメタクリラート、ポリ酢酸ビニル、および、それらの混合物が挙げられる。
【0156】
本発明に係るマルチ粒子の放出制御組成物は、パルス型での活性成分の放出を容易にするのに適したあらゆる剤形に包含されていてもよい。典型的には、このような剤形は、即時放出型成分と放出制御される成分とを構成するドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の異なる群のブレンドが可能であり、このようなブレンドは、適切なカプセル、例えばハードまたはソフトゼラチンカプセルに充填される。あるいは、活性成分を含む粒子のそれぞれ異なる群は、小型の錠剤に圧縮してもよく(任意に、追加の賦形剤を含んでいてもよい)、これをその後、適切な比率でカプセルに充填してもよい。その他の適切な剤形は、多層錠剤の形態である。この例において、マルチ粒子の放出制御組成物の第一の成分を一つの層に圧縮し、続いて第二の成分を多層錠剤の第二の層として追加してもよい。本発明の組成物を構成するドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の群を、さらに、迅速に溶解する剤形、例えば発泡性の剤形、または、速溶解性の剤形に含めてもよい。
【0157】
その他の実施態様において、本発明に係る組成物は、異なるインビトロの溶解プロファイルを有する、少なくとも2つのドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の群を含む。
好ましくは、実施の際に、本発明の組成物、および、本組成物を含む固形の経口の剤形は、第一の成分に含まれる実質的に全てのドセタキセルまたはその類似体が、第二の成分からドセタキセルまたはその類似体が放出される前に放出されるようにドセタキセルまたはその類似体を放出する。第一の成分がIR成分を含む場合、例えば、IR成分中の実質的に全てのドセタキセルまたはその類似体が放出されるまで、第二の成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出が遅延することが好ましい。第二の成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出は、上記で詳述したように、放出制御膜、および/または、放出制御マトリックス材料の使用によって遅延させることができる。
【0158】
一実施態様において、患者の系からのドセタキセルまたはその類似体の第一の用量のウォッシュアウトを容易にするような用法を提供することによって患者の耐性を最小限にとどめることが望ましい場合、第一の成分に含まれる実質的に全てのドセタキセルまたはその類似体が放出されるまで、第二の成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出を遅延させ、さらに、第一の成分から放出されたドセタキセルまたはその類似体の少なくとも一部が、患者の系から排除されるまでさらに遅延させる。具体的な実施態様において、実施の際の本組成物の第二の成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出は、必ずしも全てそうなるとは言えないが、実質的に本組成物の投与の後少なくとも約2時間遅延する。
【0159】
実施の際の本組成物の第二の成分からの薬物の放出は、必ずしも全てそうなるとは言えないが、実質的に、組成物の投与の後少なくとも約4時間、好ましくは約4時間遅延する。
【0160】
E.ドセタキセルのナノ粒子組成物の製造方法
ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、当業界既知のあらゆる適切な方法、例えば磨砕、均質化、沈殿、または、超臨界流体を用いた粒子製造技術を用いて製造することができる。典型的なナノ粒子組成物の製造方法は、米国特許第5,145,684号において説明されている。また、ナノ粒子組成物の製造方法も、米国特許第5,518,187号で、“Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;米国特許第5,718,388号で、“Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;米国特許第5,862,999号で、“Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;米国特許第5,665,331号で、“Co−Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents with Crystal Growth Modifiers”として;米国特許第5,662,883号で、“Co−Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents with Crystal Growth Modifiers”として;米国特許第5,560,932号で、“Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents”として;米国特許第5,543,133号で、“Process of Preparing X−Ray Contrast Compositions Containing Nanoparticles”として;米国特許第5,534,270号で、“Method of Preparing Stable Drug Nanoparticles”として;米国特許第5,510,118号で、“Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles”として;および、米国特許第5,470,583号で、“Method of Preparing Nanoparticle Compositions Containing Charged Phospholipids to Reduce Aggregation”としてが説明されており、これらはいずれもこの参照により具体的に開示に含まれる。
【0161】
得られたナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物または分散液は、固体、半固体、または液状の製剤で利用することができ、例えば、液状分散体、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム、放出制御製剤、速溶製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、カプセル、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、即時放出製剤と放出制御製剤とを組み合わせた製剤などで利用することができる。
【0162】
典型的な磨砕または均質化方法は、以下を含む:(1)液状の分散媒中にドセタキセルまたはその類似体を分散すること;および、(2)ドセタキセルまたはその類似体の粒度を、約2000nm未満の有効平均粒度に機械的に減少させること。粒度を減少させる前に、その最中に、または、その後のいずれかに、表面安定剤を添加する。粒度を減少させる工程の際に、液状の分散媒のpHは、好ましくは約5.0〜約7.5の範囲内に維持する。好ましくは、粒度を減少させる工程に用いられる分散媒は水性であるが、ドセタキセルまたはその類似体の可溶性や分散性が不十分なあらゆる媒体も使用可能である。水性分散液以外の媒体の例としては、これらに限定されないが、ベニバナ油、エタノール、t−ブタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキサン、または、グリコールが挙げられる。
【0163】
ドセタキセルまたはその類似体の粒度を減少させる機械的な力を提供する有効な方法としては、ボールミル、媒体ミル、および、例えばマイクロフルイダイザー(Microfluidizer(R))装置(マイクロフルイディスク社(Microfluidics Corp.))を用いた均質化が挙げられる。ボールミルは、粉砕媒体、薬物、安定剤および液体を用いる低エネルギーでの粉砕工程である。媒体が落ちて押し付けられることによって粒度が減少するような最適な速度で回転する粉砕容器に、材料を置く。粒子が減少するエネルギーは、重力と摩擦粉砕用媒体の質量によって提供されるため、用いられる媒体は高密度を有していなければならない。
【0164】
媒体ミルは、高エネルギーの粉砕工程である。ドセタキセルまたはその類似体、表面安定剤および液体を貯蔵容器に置き、媒体と回転軸/インペラーを含むチャンバー中で再循環させる。回転軸が媒体を撹拌することによって、ドセタキセルまたはその類似体、および、表面安定剤に押し付ける力と剪断力がかかり、それによってそれらのサイズが減少する。
【0165】
均質化は、粉砕媒体を用いない技術である。ドセタキセルまたはその類似体、表面安定剤および液体(または、ドセタキセルまたはその類似体および液体、表面安定剤は粒度の減少の後に添加される)のストリームは加工ゾーンに推進され、この加工ゾーンは、マイクロフルイダイザー(R)装置において相互作用チャンバーと呼ばれる。処理しようとする生成物をポンプに導入して、外に押し出す。マイクロフルイダイザー装置のプライミングバルブで、ポンプからの空気をパージする。ポンプが生成物で充填されたら、プライミングバルブを閉じて、生成物を相互作用チャンバーを通して押し出す。相互作用チャンバーの幾何学的配置によって、ドセタキセルまたはその類似体の粒度の減少に関与する強力な剪断力、衝撃および空洞形成が得られる。具体的に言えば、相互作用チャンバーの内部で、加圧された生成物は2つのストリームに分けられ、かなりの高速に促進される。次に、形成されたジェットを互いに対面させて、相互作用ゾーン内で衝突させる。得られた生成物は、極めて微細な、かつ一様の粒子または液滴サイズを有する。また、マイクロフルイダイザー(R)装置は、生成物を冷却させる熱交換器も提供する。Bosch等の米国特許第5,510,118号(具体的に参照により開示に含まれる)は、400nmより小さいサイズの粒子を形成するマイクロフルイダイザー(R)を用いた方法について言及している。
【0166】
Pace等の公開された国際特許出願番号WO97/144407(1997年4月24日に公開)は、平均サイズ100nm〜300nmを有する水不溶性の生物学的に活性な化合物の粒子を開示しており、この粒子は、化合物を溶液に溶解させ、次に、適切な表面安定剤の存在下で溶液を圧縮ガス、液体または超臨界流体に噴霧することによって製造される。
【0167】
粒度を減少させる方法を用いて、ドセタキセルまたはその類似体の粒度を、約2000nm未満の有効平均粒度に減少させる。
ドセタキセルまたはその類似体を、それらが実質的に不溶性である液状媒体に添加して、予備混合物を形成してもよい。液状媒体中のドセタキセルまたはその類似体の濃度は、約5〜約60%、約15〜約50%(w/v)、または、約20〜約40%の範囲で様々であってよい。表面安定剤は予備混合物に存在させてもよいし、または、それらをドセタキセルまたはその類似体の分散液に添加してもよく、それに続いて粒度を減少させる。表面安定剤の濃度は、約0.1〜約50重量%、約0.5〜約20重量%、または、約1〜約10重量%の範囲で様々であってよい。
【0168】
予備混合物を直接用いて、それらを機械的な手段で処理することによって、分散液中でドセタキセルまたはその類似体の平均粒度を約2000nm未満に減少させることができる。摩擦粉砕するためにボールミルが用いられる場合、予備混合物を直接用いることが好ましい。あるいは、ドセタキセルまたはその類似体と表面安定剤は、適切な撹拌手段、例えばコウルズ(Cowles)タイプのミキサーを用いて、肉眼で見えるような凝集がない均一な分散液が観察されるまで液状媒体中に分散させてもよい。再循環させた媒体ミルを摩擦粉砕に用いる場合、予備混合物は、このような予備的な磨砕による分散工程で処理することが好ましい。
【0169】
ドセタキセルまたはその類似体の粒度を減少させるために適用される機械的な手段は、都合のよい形態としては、分散ミルの形態をとることができる。適切な分散ミルとしては、ボールミル、磨砕ミル、振動ミル、および、媒体ミル、例えばサンドミル、および、ビーズミルが挙げられる。好ましくは媒体ミルであり、これは望ましい粒度の減少を提供するのに必要な磨砕時間が比較的短いためである。媒体ミルの場合、予備混合物の見かけの粘度は、好ましくは、約100〜約1,000センチポイズであり、ボールミルの場合、予備混合物の見かけの粘度は、好ましくは、約1〜約100センチポイズである。このような範囲は、効率的な粒度の減少と、媒体の浸食との最適なバランスを得るのに役立つ。
【0170】
摩擦粉砕時間は広範囲に様々であってよく、主に、具体的な機械的な手段と選択された加工条件に依存する。ボールミルの場合、5日まで、または、それより長い時間のプロセシング時間が必要とされる場合がある。あるいは、高剪断媒体ミルを使用する場合、1日未満のプロセシング時間(滞留時間は1分間〜数時間)も可能である。
【0171】
ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、粒度を著しく落とさないような温度で粒度を減少させることができる。一般的には、約30℃未満から約40℃未満までの加工温度が好ましい。必要に応じて、加工装置は、従来の冷却装置を用いて冷却してもよい。例えば、ジャケットを付けること、または、氷水中への磨砕チャンバーの浸漬による温度のコントロールが考慮される。一般的に、本発明の方法は、都合のよい形態としては、周囲温度条件下で、さらに、安全かつ磨砕加工に有効な加工圧力で行われる。周囲条件下での加工圧力は、ボールミル、磨砕ミル、および、振動ミルの特徴である。
【0172】
粉砕用媒体
粒度を減少させる工程のための粉砕用媒体は、好ましくは球状または微粒子状であり、約3mm未満より好ましくは約1mm未満の平均粒度を有する形態の硬い媒体から選択することができる。このような媒体は、望ましくは、より短いプロセシング時間で本発明の粒子を提供することができ、さらに、磨砕装置の摩耗をより少なくすることができる。粉砕用媒体のための材料の選択は、重要とは考えられない。典型的な粉砕のための材料は、酸化ジルコニウム、例えば、マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、セラミック、ステンレス鋼、チタニア、アルミナで安定化された95%ZrO、イットリウムで安定化された95%ZrO、および、ガラス粉砕用媒体である。
【0173】
粉砕用媒体は、好ましくは実質的に球状であり、実質的に高分子樹脂からなる粒子、例えばビーズを含んでいてもよい。あるいは、粉砕用媒体は、その上に高分子樹脂のコーティングを有するコアを含んでいてもよい。本発明の一実施態様において、高分子樹脂は、約0.8〜約3.0g/cm3の密度を有していてもよい。
【0174】
一般的に、適切な高分子樹脂は、化学的および物理的に不活性であり、金属、溶媒および単量体を実質的に含まず、さらに、それらが粉砕中に削られたり、または押し潰されないようにするのに十分な硬度と破砕性を有する。適切な高分子樹脂としては、架橋されたポリスチレン、例えばジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン;スチレンコポリマー;ポリカーボネート;ポリアセタール、例えばデルリン(Delrin(R);E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I. du Pont de Nemours and Co.));塩化ビニルポリマーおよびコポリマー;ポリウレタン;ポリアミド;ポリ(テトラフルオロエチレン)、例えば、テフロン(登録商標)(Teflon(R);E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー)、および、その他のフルオロポリマー;高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;セルロースエーテル、および、エステル例えば酢酸セルロース;ポリヒドロキシメタクリラート;ポリヒドロキエチルアクリラート;および、シリコーンを含むポリマー、例えばポリシロキサンなどが挙げられる。このような高分子は、生分解性でもよい。典型的な生分解性ポリマーとしては、ポリ(ラクチド)、ラクチドおよびグリコリドのポリ(グリコリド)コポリマー、ポリ無水物、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(N−アシルヒドロキシプロリン)エステル、ポリ(N−パルミトイルヒドロキシプロリン)エステル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、および、ポリ(ホスファゼン)が挙げられる。生分解性ポリマーによって、媒体からの汚染それ自身を、体外に除去することができる生物学的に許容できる生成物にインビボで有利に代謝させることができる。
【0175】
粉砕用媒体のサイズは、好ましくは、約0.01〜約3mmの範囲である。微細な粉砕のためには、粉砕用媒体のサイズは、好ましくは約0.02〜約2mm、より好ましくは約0.03〜約1mmである。
【0176】
好ましい粉砕工程において、ドセタキセルまたはその類似体の粒子は連続的に製造される。このような方法は、磨砕 チャンバーにドセタキセルまたはその類似体を連続的に導入し、チャンバー中でドセタキセルまたはその類似体と、粉砕用媒体とを接触させ、それと平行して粒度を減少させ、磨砕チャンバーからナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の活性成分を連続的に取り出すことを含む。
【0177】
粉砕用媒体は、第二の工程において、従来の分離技術を用いて磨砕したナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体から分離され、このような分離技術としては、例えば単純なろ過、メッシュフィルターまたはスクリーンによる篩い分けなどが挙げられる。また、その他の分離技術、例えば遠心分離も使用可能である。
【0178】
無菌製剤の製造
注射用組成物の開発には、無菌製剤の生産が必要である。本発明の製造法は、滅菌懸濁液の一般的な既知の製造法に類似している。一般的な滅菌懸濁液の製造法のフローチャートは以下に示す通りである:
【0179】
【化3】
【0180】
括弧内の任意の工程で示したように、この加工のうちいくつかは、粒度を減少させる方法、および/または、滅菌方法に依存する。例えば、媒体の調整は、媒体を使用しない磨砕方法には必要ではない。化学的および/または物理的な不安定性のために最終的な滅菌が実行不可能な場合、防腐加工を用いてもよい。
【0181】
F.治療方法
ヒトの治療において、インビボで必要な治療的な量の薬物を送達し、一定した方式で薬物を生物的に利用可能にするようなドセタキセルまたはその類似体の剤形を提供することが重要である。従って、本発明のその他の形態は、抗癌治療を必要とする哺乳動物(例えばヒト)の治療方法、例えば抗腫瘍や抗白血病の治療方法を提供し、本方法は、そのような哺乳動物に、本発明のドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤を投与することを含む。
【0182】
本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物で治療することができる典型的な癌の種類としては、これらに限定されないが、乳房、肺(例えば、これらに限定されないが、非小細胞肺癌)、卵巣、前立腺、充実性腫瘍(例えば、これらに限定されないが、頭頚部、乳房、肺、胃腸、尿生殖器、黒色腫、および、肉腫)、原発性中枢神経系新生物、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、未分化星状細胞腫、退形成性髄膜腫、未分化希突起グリオーマ、脳の悪性血管外皮腫、下咽頭扁平上皮癌、喉頭扁平上皮癌、白血病、唇と口腔の扁平上皮癌、上咽頭扁平上皮癌、中咽頭扁平上皮癌、子宮頚癌、および、膵臓癌が挙げられる。
【0183】
本発明の一実施態様において、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の有効な投与量は、それと同等のドセタキセルの非ナノ粒子製剤、例えばタキソテール(R)が必要とする量より少ない。タキソテール(R)(ドセタキセル)の処方計画は、20mg(0.5mL)、および、80mg(2.0mL)を含むバイアルの形態で利用可能であるが、治療しようとする癌の種類に応じて様々である。乳癌の場合、推奨される投与量は、3週間毎に、1時間かけて静脈内に60〜100mg/m2である。非小細胞肺癌の場合、タキソテール(R)は、先行の白金系化学療法がうまくいかなかった後にのみ用いられる。推奨される投与量は、3週間毎に、1時間かけて静脈内に75mg/m2である。従って、本発明の一実施態様において、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の投与量は、約100mg/m2未満、約90mg/m2未満、約80mg/m2未満、約70mg/m2未満、約60mg/m2未満、約50mg/m2未満、約40mg/m2未満、約30mg/m2未満、約20mg/m2未満、または、約10mg/m2未満である。
【0184】
さらに本発明のその他の実施態様において、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、それと同等のドセタキセルの非ナノ粒子製剤、例えばタキソテール(R)と比較して有意に高い用量で投与することができる。以下の実施例16で説明されているように、典型的なドセタキセルのナノ粒子製剤は、500mg/kgのインビボでの最大耐量を示したが、それに対して、タキソテール(R)の最大耐量は40mg/kgであった。従って、本発明のその他の実施態様において、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の投与量は、約50mg/m2より多い、約60mg/m2より多い、約70mg/m2より多い、約80mg/m2より多い、約90mg/m2より多い、約100mg/m2より多い、約110mg/m2より多い、約120mg/m2より多い、約130mg/m2より多い、約140mg/m2より多い、約150mg/m2より多い、約160mg/m2より多い、約170mg/m2より多い、約180mg/m2より多い、約190mg/m2より多い、約200mg/m2より多い、約210mg/m2より多い、約220mg/m2より多い、約230mg/m2より多い、約240mg/m2より多い、約250mg/m2より多い、約260mg/m2より多い、約270mg/m2より多い、約280mg/m2より多い、約290mg/m2より多い、約300mg/m2より多い、約310mg/m2より多い、約320mg/m2より多い、約330mg/m2より多い、約340mg/m2より多い、または、約350mg/m2より多い。
【0185】
本発明の具体的に有利な特徴としては、本発明の医薬製剤は、投与した際に、活性成分の予想以上に迅速な吸収を示すことが挙げられる。本発明の一実施態様において、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物(例えば注射用組成物)は、ポリソルベート、エタノール、または、それらの組み合わせを含まない。加えて、注射製剤に製剤化される場合、本発明の組成物は、注射される体積が少なくても高濃度を達成できる。本発明のドセタキセルまたはその類似体の注射用組成物は、ボーラス注射で、または、適切な期間にわたる低速での注入によって投与することができる。
【0186】
当業者であれば当然ながら、ドセタキセルまたはその類似体の有効量は経験的に決定することができ、そのままの形態で用いてもよいし、または、製薬上許容できる塩、エステルまたはプロドラッグの形態このような形態が存在する場合、そのような形態で用いてもよい。本発明の注射用および経口用組成物における実際のドセタキセルまたはその類似体の投与量レベルは、特定の組成物および投与方法に関して望ましい治療効果を得るのに効果的なドセタキセルまたはその類似体の量が達成されるならばどのような量であってもよい。それゆえに、選択された投与量レベルは、望ましい治療効果、投与経路、投与されたドセタキセルまたはその類似体の効力、望ましい治療の持続時間、および、その他の要因に依存する。
【0187】
投与単位 組成物は、1日用量を構成するのに用いられる一日用量の約数からなる量を含んでいてもよい。しかし当然ながら、ある特定の患者に特定した用量レベルは、多種多様な要因に依存すると予想され、このような要因としては、達成しようとする細胞性の応答または生理学的な応答のタイプおよび程度;用いられる特定の物質または組成物の活性;用いられる特定の物質または組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康状態、性別および食事;投与時間、投与経路、および、物質の排出速度;治療の持続時間;薬物を特定の物質を組み合わて用いるのか、または、同時に用いるのか;および、医療分野において周知の類似の要因が挙げられる。
【0188】
本発明を説明するために、以下の実施例を示す。しかし当然ながら、本発明の本質および範囲は、これらの実施例で説明される特定の条件または詳細に限定されなが、それに続く特許請求の範囲によってのみ限定されることとする。本明細書に記載された米国特許など全ての参考文献は、本明細書において参照されることにより具体的に開示に含まれる。
【0189】
実施例
実施例1
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0190】
図1は、磨砕していないドセタキセル(無水)(カミダ社)の光学顕微鏡写真を示しており、従来のナノ粒子状ではないドセタキセル(無水)の平均粒度が212,060nmであり、D50が175,530nmであり、D90が、435,810nmであったことを示す。
【0191】
5%(w/w)ドセタキセル(カミダ社)の水性分散液を、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した。次に、この混合物を、ナノミル0.01(NanoMill(R)0.01)(ナノミル・システムズ(NanoMill Systems),キングオブプロシア,ペンシルベニア州;例えば、米国特許第6,431,478号を参照)の10mlのチャンバーに、220ミクロンのポリミル(PolyMill(R))摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル(Dow Chemical))(媒体の充填は89%)と共に添加した。この混合物を2500rpmの速度で180分間磨砕した。
【0192】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910(Horiba LA910)粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、170nmであり、D50は、145nmであり、D90は、260nmであった。図2は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0193】
この結果より、得られた平均粒度が170nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例2
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0194】
5%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、および、0.1%(w/w)レシチンと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を、5500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0195】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、166nmであり、D50は、147nmであり、D90は、242nmであった。図3は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0196】
この結果より、得られた平均粒度が166nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例3
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0197】
5%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム(w/w)、および、20%(w/w)デキストロースと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を、5500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0198】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、165nmであり、D50は、142nmであり、D90は、248nmであった。図4は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0199】
この結果より、得られた平均粒度が165nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例4
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0200】
1%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、0.25%(w/w)プラスドン(R)S630、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した。次に、この混合物を、低いエネルギーのローラーミル(U.S.ストーンウェア(U.S.STONEWARE),マーワー,ニュージャージー州)を用いて、15mLのボトル中で、0.5mmのセラミック媒体(東ソー(Tosoh),セラミック事業部)(媒体の充填は50%)と共に磨砕した。この混合物を、130rpmの速度で72時間磨砕した。
【0201】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、コールターN4M(Coulter N4M)粒度解析器)を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、209nmであった。図5は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0202】
この結果より、得られた平均粒度が209nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例5
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0203】
1%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、0.25%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した。次に、この混合物を、低いエネルギーのローラーミル(U.S.ストーンウェア,マーワー,ニュージャージー州)を用いて、15mLのガラスボトル中で、0.5mmのセラミック媒体(東ソー(Tosoh),セラミック事業部)(媒体の充填は50%)と共に磨砕した。この混合物を130rpmの速度で72時間磨砕した。
【0204】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、コールターN4M粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、253nmであった。図6は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0205】
この結果より、得られた平均粒度が253nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例6
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0206】
1%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、0.25%(w/w)プルロニック(R)F127と混合した。次に、この混合物を、低いエネルギーのローラーミル(U.S.ストーンウェア(U.S.STONEWARE),マーワー,ニュージャージー州)を用いて、15mLのガラスボトル中で、0.5mmのセラミック媒体(東ソー(Tosoh),セラミック事業部)(媒体の充填は50%)と共に磨砕した。この混合物を、130rpmの速度で72時間磨砕した。
【0207】
磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、56.42ミクロンであり、D50は、65.55ミクロンであり、D90は、118.5ミクロンであった。続いて、磨砕したサンプルの粒度が大きかったため、このサンプルを30秒超音波破砕し、凝集したドセタキセル粒子が存在するかどうかを決定した。30秒超音波破砕した後、磨砕したドセタキセルの平均粒度は、1.468ミクロンであり、D50は、330nmであり、D90は、5.18ミクロンであった。図7は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0208】
この結果より、用いられた薬物と表面安定剤の特定の濃度において、プルロニック(R)F127は、無水ドセタキセルをうまく安定化しなかったことがわかる。
実施例7
この実施例の目的は、ドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を製造することである。
【0209】
図8は、磨砕していないドセタキセル三水和物の光学顕微鏡写真を示す。磨砕していないドセタキセル三水和物は、61,610nmの平均粒度を有し、D50は、51,060nmであり、D90は、119,690nmであった。
【0210】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性分散液を、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州;例えば、米国特許第6,431,478号を参照)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0211】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、152nmであり、D50は、141nmであり、D90は、202nmであった。図9は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0212】
この結果より、得られた平均粒度が152nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例8
この実施例の目的は、ドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を製造することである。
【0213】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性分散液を、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を、2900rpmの速度で60分間磨砕した。
【0214】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、113nmであり、D50は、109nmであり、D90は、164nmであった。図10は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0215】
この結果より、得られた平均粒度が164nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例9
この実施例の目的は、実施例8で製造されたドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤の長期安定性を決定することである。
【0216】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースを含む実施例8で製造されたドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を低温(15℃未満)で6ヶ月保存した。
【0217】
6ヶ月の貯蔵期間の後、ドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。ドセタキセルの平均粒度は、147nmであり、D50は、136nmであり、D90は、205nmであった。図11は、低温で6ヶ月貯蔵した後のドセタキセル組成物の光学顕微鏡写真を示す。
【0218】
その結果から、本ドセタキセルのナノ粒子組成物は、有意な粒度の上昇を起こすことなく長期間保存することができることが示される。
実施例10
この実施例の目的は、ドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を製造することである。
【0219】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性分散液を、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%(w/w)レシチン、および、20%(w/w)デキストロースと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を、2900rpmの速度で75分間磨砕した。
【0220】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、144nmであり、D50は、137nmであり、D90は、193nmであった。図12は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0221】
この結果より、得られた平均粒度が144nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例11
この実施例の目的は、実施例10で製造されたドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤の長期安定性を試験することである。
【0222】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%レシチン(w/w)、および、20%(w/w)デキストロースを含む実施例10で製造されたドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を低温(15℃未満)で6ヶ月保存した。
【0223】
6ヶ月の貯蔵期間の後、ドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。ドセタキセルの平均粒度は、721nmであり、D50は、371nmであり、D90は、1.76ミクロンであった。図13は、低温で6ヶ月貯蔵した後のドセタキセル組成物の光学顕微鏡写真を示す。
【0224】
その結果から、ドセタキセルのナノ粒子組成物は、2ミクロン未満の有効平均粒度を維持しながら長期間保存することができることが示される。
実施例12
この実施例の目的は、ドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を製造することである。
【0225】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性分散液を、1.25%(w/w)TPGS(ビタミンE PEG)、および、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で120分間磨砕した。
【0226】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、134nmであり、D50は、129nmであり、D90は、179nmであった。図14は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0227】
この結果より、得られた平均粒度が134nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例13
この実施例の目的は、ドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を製造することである。
【0228】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性分散液を、1.25%(w/w)プルロニック(R)F108、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、10%(w/w)デキストロース(w/w)と混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で120分間磨砕した。
【0229】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、632nmであり、D50は、172nmであり、D90は、601nmであった。図15は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0230】
この結果より、得られた平均粒度が632nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例14
この実施例の目的は、ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0231】
5%(w/w)ドセタキセルの水性分散液を、1.25%(w/w)プラスドン(R)S630、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0232】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、142nmであり、D50は、97.8nmであり、D90は、142nmであった。図16は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0233】
この結果より、得られた平均粒度が142nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例15
この実施例の目的は、ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0234】
5%(w/w)ドセタキセルの水性分散液を、1.25%(w/w)HPMC、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0235】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、157nmであり、D50は、142nmであり、D90は、207nmであった。図17は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0236】
この結果より、得られた平均粒度が157nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例16
この実験の目的は、ドセタキセルのナノ粒子製剤の最大耐量を決定することである。
【0237】
ドセタキセルのナノ粒子製剤の急性毒性を評価して、特徴付けるために、2種類のナノ粒子分散液を利用した。(1)表面安定剤としてPVP、および、デオキシコール酸ナトリウムを含むドセタキセルのナノ粒子分散液(実施例8で製造された);および、(2)表面安定剤としてトゥイーン(R)80、および、レシチンを含むドセタキセルのナノ粒子分散液(実施例10で製造された)。
【0238】
両方のドセタキセルのナノ粒子製剤を、様々な用量でマウスに静脈内投与した。両方のドセタキセルのナノ粒子製剤の最大耐量(MD)は、500mg/kgであった。
また、ドセタキセルのナノ粒子製剤と平行して、市販のナノ粒子状ではないドセタキセル製品のタキソテール(R)も試験した。タキソテール(R)のMDは、40mg/kgであった。
【0239】
従って、ドセタキセルのナノ粒子製剤は十分許容され、従来のドセタキセルの非ナノ粒子製剤よりも有意に高い用量で投与することができる。
実施例17
この実施例の目的は、ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0240】
5%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mLのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で5.5時間磨砕した。
【0241】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、271nmであり、D90は、480nmであった。図18は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0242】
この結果より、得られた平均粒度が271nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例18
この実施例の目的は、ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0243】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性分散液を、1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mLのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0244】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、174nmであり、D90は、252nmであった。図19は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0245】
この結果より、得られた平均粒度が174nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
当業者にはよく知られていると予想されるが、本発明の本質または範囲から逸脱することなく本発明の方法および組成物に様々な変更や改変を施すことができる。従って、本発明は、添付の請求項およびそれらに等価なもの範囲内に入る本発明の変更や改変も含むことを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】磨砕していないドセタキセル(無水)の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図2】1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図3】1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、および、0.1%(w/w)レシチンと混合した5%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図4】1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図5】0.25%(w/w)プラスドン(R)S630、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した1%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図6】0.25%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した1%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図7】0.25%(w/w)プルロニック(R)F127と混合した1%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図8】磨砕していないドセタキセル三水和物の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図9】1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム(デオキシコール酸Na)と混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図10】1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図11】1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図12】1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%(w/w)レシチン、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図13】1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%(w/w)レシチン、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図14】1.25%(w/w)TPGS(ビタミンE PEG)、および、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図15】1.25%(w/w)プルロニック(Pluronic)(R)F108、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、10%(w/w)デキストロース(w/w)と混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図16】1.25%(w/w)プラスドン(R)S630、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した5%(w/w)ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図17】1.25%(w/w)HPMC、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した5%(w/w)ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図18】1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図19】1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、ドセタキセルおよびそれらの類似体のナノ粒子組成物、このような組成物の製造方法、および、癌治療における、具体的には乳房、卵巣、前立腺、および、肺癌の治療におけるこのようなナノ粒子組成物の使用を対象とする。
【0002】
発明の背景
A.ドセタキセルおよびそれらの類似体に関する背景
タキソイドまたはタキサンは、細胞分裂を停止させることによって細胞増殖を阻害する化合物であり、例えばドセタキセルやパクリタキセルが挙げられる。これらはまた、抗有糸分裂剤、または、抗微小管剤、または、有糸分裂阻害剤とも呼ばれる。
【0003】
米国特許第5,438,072号において、抗腫瘍および抗白血病活性を有するタキソイドベースの組成物、およびそれらの使用が説明されている。米国特許第6,624,317号は、癌治療に使用するためのタキソイド複合体の製造について述べている。Magnusの米国特許第5,508,447号の図1A(以下、「Magnusの米国特許」とする)は、タキサン環系の構造と番号付けを示す。Magnusの米国特許は、癌治療に使用するためのタキソールの合成を対象とする。米国特許第5,698,582号、および、第5,714,512号は、抗腫瘍剤および抗白血病の治療剤としての、注射に適した医薬組成物で用いられるタキサン誘導体に関する。米国特許第6,028,206号、および、第5,614,645号は、癌治療において有用なタキソール類似体の製造に関する。米国特許第4,814,470号、および、第5,411,984号はいずれも、癌治療に使用するためのある種のタキソール誘導体の製造に関する。
【0004】
米国特許第5,494,683号、および、第5,399,363号において、パクリタキセルのナノ粒子組成物が説明されている。これらの特許は、ドセタキセルのナノ粒子製剤を説明していない。
【0005】
パクリタキセルの化学構造は、以下に示す通りである:
【0006】
【化1】
【0007】
ドセタキセルは、タキソイド類に属する半合成の抗腫瘍薬である。ドセタキセルは、実験式:C43H53NO14・3H2Oを有し、分子量861.9を有する白色〜ほぼ白色の粉末である。ドセタキセルは高い親油性を有し、実質的に水不溶性である。ドセタキセルの化学名は、(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステル,5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタキサ−11−エン−9−オン4−アセタート2−ベンゾアートとの13−エステルの三水和物である。ドセタキセルは、イチイ属の植物の再利用可能な針葉樹のバイオマスから抽出された前駆体(タキソイド10−デアセチルバッカチンIII)から開始する半合成によって製造される。ドセタキセルの構造は、以下に示すように、パクリタキセルの構造とはかなり異なっている:
【0008】
【化2】
【0009】
ドセタキセルの独特な化学構造は、パクリタキセルと比較して以下の2つの改変を含む:(1)タキソールB環のC−10位で、ヒドロキシ基がアセチル基に置き換えられている;および、(2)C−13側鎖の変種(例えば、タキソール側鎖におけるN−ベンゾイル基の代わりに、N−tert−ブトキシカルボニル基)。これらの顕著な構造的な差により、異なる活性を有するパクリタキセルおよびドセタキセルが生じる。例えばドセタキセルは、パクリタキセルよりも高い効力を有する。Angelo等,“Docetaxel versus paclitaxel for antiangiogenesis”,J.Hematother.Stem.Cell Res.,11(1):103〜18(2002)。加えて、パクリタキセルおよびドセタキセルによるCOX−2発現の誘導を比較する研究において、ヒトおよびマウスの細胞においてパクリタキセルで誘導されたCOX−2発現の類似の反応速度論と濃度−応答プロファイルに対して、ドセタキセルは、ヒト単球でのみCOX−2発現を誘導するが、マウスの細胞では誘導しないことが見出された。Cassidy等,Clin.Can.Res.,8:846〜855(2002)。
【0010】
その上、ドセタキセルの作用機序もパクリタキセルの作用機序とは異なる。ドセタキセルは、有糸分裂を開始させるのに必須の細胞中の微小管ネットワークを崩壊させ、加えて、正常な微小管で調節された細胞活性に影響を与える。この作用機序により、パクリタキセルよりも低い重度の副作用が生じる。
【0011】
ドセタキセルは、アベンティス・ファーマシューティカルズ(Aventis Pharmaceuticals,ブリッジウォーター,ニュージャージー州)によって、タキソテール(TAXOTERE(R))注射用濃縮液として販売されている。タキソテール(R)は滅菌された非発熱性の製剤であり、20mg(0.5mL)、または、80mg(2.0mL)のドセタキセル(無水)を含む1回量バイアルとして利用可能である。1mLあたり、40mgのドセタキセル(無水)と、1040mgのポリソルベート80が含まれる。タキソテール(R)注射用濃縮液は、使用前に希釈が必要である。その目的のために、滅菌済みで非発熱性の1回量の希釈剤が供給される。タキソテール(R)用の希釈剤は、13%エタノールを含む注射用水であり、バイアルに入れて供給される。
【0012】
ドセタキセルの溶解性を高めるために用いられるポリソルベート80およびエタノールの存在は、逆効果を引き起こす可能性がある。タキソテール(R)に関連する不利な過敏症が生じるために、化学療法の24時間前から3日間、経口デキサメタゾンを前投与することが推奨される。ポリソルベート80は、低血圧および/または気管支痙攣、もしくは全身性発疹/紅斑を特徴とする重度の過敏反応に関与しており、このような症状は、推奨された3日間のデキサメタゾン前投与を受けた患者の2.2%(92人中2人)に発症している。加えて、ドセタキセル注射は、使用前に希釈が必要である。その目的のために、滅菌した非発熱性の1回量の希釈剤が供給されなければならない。上述したように、タキソテール(R)注射製剤用の希釈剤は、13%エタノールを含む注射用水を含み、これは薬物と一緒に供給する必要がある。
【0013】
ドセタキセルは、患者の骨髄中の血液細胞数の減少を引き起こす可能性があり、この薬物はまた、肝臓障害を引き起こす可能性もある。加えて、タキソテール(R)投与による過敏症の症例が観察されている。症状としては、低血圧、および/または、気管支痙攣、および、全身性発疹/紅斑が挙げられる。また、過量投与のケースもいくつか観察されている(投与量150〜200mg/m2)。これに関連する合併症の例としては、骨髄抑制、末梢神経毒性、および、粘膜炎が挙げられる。
【0014】
溶媒としてのポリソルベート80およびエタノールは、タキソテール(R)投与で観察された過敏反応に少なくとも部分的に関与する。前投薬としてステロイド、およびその他のヒスタミン遮断薬を投与することによってこれらの反応の発生率と重症度が低減したが、また、前投薬に関連する有害反応(例えばクッシング症候群、感染合併症、高血糖症、高血圧、および、ステロイド精神病などの精神医学的な作用)も、特に長期投与の場合の懸念材料である。また、溶媒も塩化ビニル(PVC)バッグや管材料からの可塑剤の浸出に寄与しており、場合によってはこれらの物質で見られるその他の逆効果(例えば、ニューロパシー、および、腫瘍細胞耐性)を引き起こす。
【0015】
パクリタキセルと共に利用されているより高い水溶性を有する代替の薬物製剤の一つは、アルブミンに結合したパクリタキセル(アブラキサン(ABRAXANE)(R))である。しかしながら、この薬物製剤は、パクリタキセルをアルブミンに共有結合させることが必要であるため、パクリタキセルの特性が変化する可能性がある。例えば、アルブミンに結合したパクリタキセルを使用した第I相および第II相臨床試験において、溶媒が媒介する毒性は観察されず、前投薬も不必要であり、さらに薬物注入はたった30分間であった。しかしながら、この物質の薬物動態プロファイルは第I相試験において線形を示し、非線形の薬物動態学を示す従来のパクリタキセルとは異なっていた“Abraxane(paclitaxel protein−bound particles for injectable suspension[albumin−bound])product information”,Abraxis Oncology(シャウムバーグ,イリノイ州),2005年1月。
【0016】
臨床上の薬理学用語において、ドセタキセルは、有糸分裂および中間期の細胞機能に必須である細胞中の微小管ネットワークを崩壊させることによって作用する抗腫瘍薬である。ドセタキセルは遊離のチューブリンに結合して、チューブリンの安定な微小管への組み立てを促進し、同時にそれらの分解を阻害する。これにより正常な機能を有さない微小管束の生産と微小管の安定化が起こり、その結果、細胞における有糸分裂が阻害される。ドセタキセルが微小管へ結合しても、結合した微小管におけるプロトフィラメントの数を変えることはなく、この特徴は、現在のところ臨床で用いられているほとんどの紡錐体毒とは異なる。Physicians’Desk Reference,第58版,3,307,771〜78頁(Thompson PDR,モントベール,ニュージャージー州,2004)。
【0017】
タキソテール(R)(ドセタキセル)は、局所進行乳癌または転移性乳癌における先行のアントラサイクリンによる化学療法がうまくいかなかった後に使用するために、1996年に米国食品医薬品局によって初めて認可された。続いて1999年に、この薬物は、局所進行または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)における第二選択の用途として認可された。2002年11月に、米国食品医薬品局は、タキソテール(R)(ドセタキセル)を、これまでこの状態に関する化学療法を受けていない切除不能な局所進行または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)の患者の治療のためのシスプラチンとの併用に関して認可した。2004年には、アンドロゲン非依存性の(ホルモン抵抗性)転移性前立腺癌の患者の治療のためのタキソテール(R)とプレドニゾンとの併用が認可された。加えて、タキソテール(R)とドキソルビシンおよびシクロホスファミドとの併用が、手術可能なリンパ節転移陽性乳癌の患者の補助治療に関して米国食品医薬品局に認可されている。タキソテール(R)は、多くのタイプの癌の様々な段階に関する臨床試験において試験され続けている。
【0018】
第I相試験において、癌患者にドセタキセル(タキソテール(R))を20mg/m2〜115mg/m2の範囲の用量で投与した後の薬物動態学が評価されている。70mg/m2〜115mg/m2を静脈内投与した後のドセタキセルの薬物動態学は用量非依存性であり、平均個体群α、β、γにおいてそれぞれ4分間、36分間および11.1時間の半減期を示した3−コンパートメントモデルと一致する。認可されたタキソテール(R)の投与量の範囲は、60mg/m2〜100mg/m2である。用量100mg/m2でIV投与した後のピークの血漿濃度の平均は、3.7μg/mL(SD=0.8)であり、それに対応するAUCは、4.6μg/mL・h(SD=0.8)であった。ドセタキセル(タキソテール(R))血漿濃度およびAUCは用量に正比例することがわかったが、薬物クリアランスは用量または投与スケジュールとは無関係であり、これは線形の薬物動態プロファイルと一致する。全身クリアランスおよび定常状態分布容積の平均値は、それぞれ21L/h/m2、113Lであった。ドセタキセル(タキソテール(R))は、静脈内(IV)投与した後、迅速かつ広範囲に分散する。インビトロでの研究によれば、ドセタキセルは、約94%が血漿タンパク質、主としてアルブミン、α1酸性糖タンパク質、および、リポタンパク質に結合することが示される。
【0019】
タキソテール(R)(ドセタキセル)の処方計画は、治療しようとする癌の種類に応じて様々である。乳癌の場合、推奨される投与量は、3週間毎に、1時間かけて静脈内に60〜100mg/m2である。非小細胞肺癌の場合、タキソテール(R)は、先行の白金系化学療法がうまくいかなかった後にのみ用いられる。推奨される投与量は、3週間毎に、1時間かけて静脈内に75mg/m2である。
【0020】
ドセタキセル使用に関する重要な限定は、有効性および毒性における予測不可能な個人差である。ドセタキセルが臨床的に導入されてから、ドセタキセル治療を改善しようとする試みは、様々な領域にわたりつつあり、具体的には、薬物動態学的(PK)、および、薬力学的(PD)な個体差を減少させること、スケジュール、投与経路および薬物製剤を最適化すること、および、薬剤耐性を元に戻すことである。
【0021】
ドセタキセルの類似体としては、3’−デフェニル−3’シクロヘキシルドセタキセル、2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル、および、3’−デフェニル−3’シクロヘキシル−2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセルなどが説明されている。これらのドセタキセル類似体は、安息香酸のC−3’および/またはC−2位においてフェニル基の代わりにシクロヘキシル基を含む。Ojima等,“Synthesis and Structure−Activity Relationships of New Antitumor Taxoids:Effects of Cyclohexyl Substitution at the C−3’and/or C−2 TAXOTERE(R)(Docetaxel)”,J.Med.Chem.,37:2602〜08(1994)。3’−デフェニル−3’−シクロヘキシルドセタキセル、および、2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセルは、微小管分解に対してドセタキセルと同等の強い阻害活性を有することが報告されている。これは、C−3’またはC−2におけるフェニルまたは芳香族基は、微小管への強い結合にとって必須ではないことを実証する。
【0022】
その他のこれまでに述べられたドセタキセル類似体としては、様々な2−アミドドセタキセル類似体があり、例えば、以下が挙げられる:m−メトキシおよびm−クロロベンゾイルアミド類似体(Fang等,“Synthesis and Cytotoxicity of 2alpha−amido Docetaxel Analogues”,Bioorg.Med.Chem.Lett.,12:1543〜6(2002));オキセタンD環が欠失しているが、生物活性に重要な4アルファ−アセトキシ基を有するドセタキセル類似体(Deka等,“Deletion of the oxetane ring in docetaxel analogues:synthesis and biological evaluation”,Org.Lett,5:5031〜4(2003));5(20)デオキシドセタキセル(Dubois等,“Synthesis of 5(20)deoxydocetaxel,a new active docetaxel analogue”,Tetrahedron Lett.,47:3331〜3334(2000));10−デオキシ−10−C−モルホリノエチルドセタキセル類似体(Iimura等,“Orally active docetaxel analogue−synthesis of 10−deoxy−10−C−morpholinoethyl docetaxel analogues”,Bioorganic and Medicinal Chem.Lett.,11:407〜410(2001));Cassidy等,Clin.Can.Res.,8:846〜855(2002)で説明されているドセタキセル類似体、例えばイソセリンN−アシル置換基としてt−ブチルカルバメートを有するが、C−10(ヒドロキシルに対してアセチル基)、および、C−13イソセリン結合(エステルに対して、エノールエステル)においてドセタキセルとは異なる類似体;および、C−3位にペプチド側鎖を有するドセタキセル類似体、これは、Larroque等,“Novel C2−C3”N−peptide linked macrocyclic taxoids.Part 1:Synthesis and biological activities of docetaxel analogues with apeptide side chain at C3”,Bioorg.Med.Chem.Lett.15(21):4722〜4726(2005)で説明されている。加えて、様々なドセタキセル誘導体としては、臨床試験において、XRP9881(また、RPR 109881Aとも言う)(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体)(アベンティス・ファーマ(Aventis Pharma))、XRP6528(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体)(アベンティス・ファーマ)、オルタタキセル(Ortataxel)(14−ベータ−ヒドロキシ−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体)(バイエル(Bayer)/インデナ(Indena))、MAC−321(10−デアセチル−7−プロパノイルバッカチンドセタキセル類似体)(ワイス・エアスト(Wyeth−Ayerst))、および、DJ−927(7−デオキシ−9−ベータ−ジヒドロ−9,10,0−アセタールタキサンドセタキセル(docetaxal)類似体)(第一製薬(Daiichi Pharmaceuticals))が挙げられ、これらはいずれも、Engels等,“Potential for Improvement of Docetaxel−Based Chemotherapyで説明されている:A Pharmacological Review”,British J.of Can.,93:173〜177(2005)。Querolle等,“Novel C2−C3’N−linked Macrocyclic Taxoids:Novel Docetaxel Analogues with High Tubulin Activity”,J.Med.Chem.,(2004年11月)において、さらなるドセタキセル誘導体が説明されている。
【0023】
B.活性物質のナノ粒子組成物に関する背景
活性物質のナノ粒子組成物、最初に米国特許第5,145,684号(以下、「684特許」とする)で説明されており、これは、可溶性が不十分な治療薬または診断薬からなる粒子であって、可溶性が不十分な治療薬または診断薬の表面を、架橋していない表面安定剤に吸収または会合させている。684特許は、ドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子組成物を説明していない。
【0024】
活性物質のナノ粒子組成物の製造方法は、例えば米国特許第5,518,187号、および、第5,862,999号で、いずれも“Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;米国特許第5,718,388号で、“Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;および、米国特許第5,510,118号で、“Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles”として説明されている。
【0025】
活性物質のナノ粒子組成物はまた、例えば、米国特許第5,298,262号で、“Use of Ionic Cloud Point Modifiers to Prevent Particle Aggregation During Sterilization”として;第5,302,401号で、“Method to Reduce Particle Size Growth During Lyophilization”として;第5,318,767号で、“X−Ray Contrast Compositions Useful in Medical Imaging”として;第5,326,552号で、“Novel Formulation For Nanoparticulate X−Ray Blood Pool Contrast Agents Using High Molecular Weight Non−ionic Surfactants”として;第5,328,404号で、“Method of X−Ray Imaging Using Iodinated Aromatic Propanedioates”として;第5,336,507号で、“Use of Charged Phospholipids to Reduce Nanoparticle Aggregation”として;第5,340,564号で、“Formulations Comprising Olin 10−G to Prevent Particle Aggregation and Increase Stability”として;第5,346,702号で、“Use of Non−Ionic Cloud Point Modifiers to Minimize Nanoparticulate Aggregation During Sterilization”として;第5,349,957号で、“Preparation and Magnetic Properties of Very Small Magnetic−Dextran Particles”として;第5,352,459号で、“Use of Purified Surface Modifiers to Prevent Particle Aggregation During Sterilization”として;第5,399,363号および第5,494,683号で、いずれも“Surface Modified Anticancer Nanoparticles”として;第5,401,492号で、“Water Insoluble Non−Magnetic Manganese Particles as Magnetic Resonance Enhancement Agents”として;第5,429,824号で、“Use of Tyloxapol as a Nanoparticulate Stabilizer”として;第5,447,710号で、“Method for Making Nanoparticulate X−Ray Blood Pool Contrast Agents Using High Molecular Weight Non−ionic Surfactants”として;第5,451,393号で、“X−Ray Contrast Compositions Useful in Medical Imaging”として;第5,466,440号で、“Formulations of Oral Gastrointestinal Diagnostic X−Ray Contrast Agents in Combination with Pharmaceutically Acceptable Clays”として;第5,470,583号で、“Method of Preparing Nanoparticle Compositions Containing Charged Phospholipids to Reduce Aggregation”として;第5,472,683号で、“Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carbamic Anhydrides as X−Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging”として;第5,500,204号で、“Nanoparticulate Diagnostic Dimers as X−Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging”として;第5,518,738号で、“Nanoparticulate NSAID Formulations”として;第5,521,218号で、“Nanoparticulate Iododipamide Derivatives for Use as X−Ray Contrast Agents”として;第5,525,328号で、“Nanoparticulate Diagnostic Diatrizoxy Ester X−Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging”として;第5,543,133号で、“Process of Preparing X−Ray Contrast Compositions Containing Nanoparticles”として;第5,552,160号で、“Surface Modified NSAID Nanoparticles”として;第5,560,931号で、“Formulations of Compounds as Nanoparticulate Dispersions in Digestible Oils or Fatty Acids”として;第5,565,188号で、“Polyalkylene Block Copolymers as Surface Modifiers for Nanoparticles”として;第5,569,448号で、“Sulfated Non−ionic Block Copolymer Surfactant as Stabilizer Coatings for Nanoparticle Compositions”として;第5,571,536号で、“Formulations of Compounds as Nanoparticulate Dispersions in Digestible Oils or Fatty Acids”として;第5,573,749号で、“Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carboxylic Anydrides as X−Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging”として;第5,573,750号で、“Diagnostic Imaging X−Ray Contrast Agents”として;第5,573,783号で、“Redispersible Nanoparticulate Film Matrices With Protective Overcoats”として;第5,580,579号で、“Site−specific Adhesion Within the GI Tract Using Nanoparticles Stabilized by High Molecular Weight,Linear Poly(ethylene Oxide)Polymers”として;第5,585,108号で、“Formulations of Oral Gastrointestinal Therapeutic Agents in Combination with Pharmaceutically Acceptable Clays”として;第5,587,143号で、“Butylene Oxide−Ethylene Oxide Block Copolymers Surfactants as Stabilizer Coatings for Nanoparticulate Compositions”として;第5,591,456号で、“Milled Naproxen with Hydroxypropyl Cellulose as Dispersion Stabilizer”として;第5,593,657号で、“Novel Barium Salt Formulations Stabilized by Non−ionic and Anionic Stabilizers”として;第5,622,938号で、“Sugar Based Surfactant for Nanocrystals”として;第5,628,981号で、“Improved Formulations of Oral Gastrointestinal Diagnostic X−Ray Contrast Agents and Oral Gastrointestinal Therapeutic Agents”として;第5,643,552号で、“Nanoparticulate Diagnostic Mixed Carbonic Anhydrides as X−Ray Contrast Agents for Blood Pool and Lymphatic System Imaging”として;第5,718,388号で、“Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;第5,718,919号で、“Nanoparticles Containing the R(−)Enantiomer of Ibuprofen”として;第5,747,001号で、“Aerosols Containing Beclomethasone Nanoparticle Dispersions”として;第5,834,025号で、“Reduction of Intravenously Administered Nanoparticulate Formulation Induced Adverse Physiological Reactions”として;第6,045,829号で、“Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus(HIV)Protease Inhibitors Using Cellulosic Surface Stabilizers”として;第6,068,858号で、“Methods of Making Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus(HIV)Protease Inhibitors Using Cellulosic Surface Stabilizers”として;第6,153,225号で、“Injectable Formulations of Nanoparticulate Naproxen”として;第6,165,506号で、“New Solid Dose Form of Nanoparticulate Naproxen”として;第6,221,400号で、“Methods of Treating Mammals Using Nanocrystalline Formulations of Human Immunodeficiency Virus(HIV)Protease Inhibitors”として;第6,264,922号で、“Nebulized Aerosols Containing Nanoparticle Dispersions”として;第6,267,989号で、“Methods for Preventing Crystal Growth and Parti
cle Aggregation in Nanoparticle Compositions”として;第6,270,806号で、“Use of PEG−Derivatized Lipids as Surface Stabilizers for Nanoparticulate Compositions”として;第6,316,029号で、“Rapidly Disintegrating Solid Oral Dosage Form”として;第6,375,986号で、“Solid Dose Nanoparticulate Compositions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate”として;第6,428,814号で、“Bioadhesive Nanoparticulate Compositions Having Cationic Surface Stabilizers”として;第6,431,478号で、“Small Scale Mill”として;第6,432,381号で、“Methods for Targeting Drug Delivery to the Upper and/or Lower Gastrointestinal Tract”として;第6,592,903号で、“Nanoparticulate Dispersions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate”として;第6,582,285号で、“Apparatus for sanitary wet milling”として;第6,656,504号で、“Nanoparticulate Compositions Comprising Amorphous Cyclosporine”として;第6,742,734号で、“System and Method for Milling Materials”として;第6,745,962号で;“Small Scale Mill and Method thereof “として;第6,811,767号で、“Liquid droplet aerosols of nanoparticulate drugs”として;および、第6,908,626号で、“Compositions having a combination of immediate release and controlled release characteristics”として;第6,969,529号で、“Nanoparticulate compositions comprising copolymers of vinyl pyrrolidone and vinyl acetate as surface stabilizers”として;第6,976,647号で、“System and Method for Milling Materials” として説明されており、これらはいずれも参照により具体的に含まれる。加えて、米国特許出願第20020012675号A1(2002年1月31日公開)の“Controlled Release Nanoparticulate Compositions”もナノ粒子組成物を説明しており、具体的に参照により開示に含まれる。これらの特許はいずれも、ドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤を説明していない。
【0026】
非晶質の小さい粒子の組成物は、例えば米国特許第号4,783,484号で、“Particulate Composition and Use thereof as Antimicrobial Agent”として;第4,826,689号で、“Method for Making Uniformly Sized Particles from Water−Insoluble Organic Compounds”として;第4,997,454号で、“Method for Making Uniformly−Sized Particles From Insoluble Compounds”として;第5,741,522号で、“Ultrasmall,Non−aggregated Porous Particles of Uniform Size for Entrapping Gas Bubbles Within and Methods”として;および、第5,776,496号で、“Ultrasmall Porous Particles for Enhancing Ultrasound Back Scatter”として説明されている。
【0027】
現在、強化された溶解特性を有するドセタキセル製剤、さらには患者に投与する際の生物学的利用率を強化し、かつ毒性を減少させたドセタキセル製剤への必要性がある。本発明は、ドセタキセルおよびそれらの類似体のナノ粒子製剤に関する方法、およびそれらを含む組成物を提供することによってこれらの要求を満たす。このような製剤としては、これらに限定されないが、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の注射製剤が挙げられる。
【0028】
発明の概要
本発明は、ドセタキセルまたはその類似体を含むドセタキセルのナノ粒子組成物に関し、ここで、上記ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、約2000nm未満の有効平均粒度を有する。また本組成物は、少なくとも1種の表面安定剤も含み、ここで、この表面安定剤は、ドセタキセルまたはドセタキセル類似体の粒子の表面に吸収されているか、または、それらと会合している。本発明の好ましい剤形は注射可能な剤形であるが、製薬上許容できるあらゆる剤形が利用可能である。
【0029】
本発明のその他の形態は、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体、少なくとも1種の表面安定剤、および、製薬上許容できるキャリアーを含む医薬組成物を対象とし、それに加えてあらゆる望ましい賦形剤を含む医薬組成物も対象とする。
【0030】
本発明の一実施態様において、ドセタキセルまたはその類似体の注射製剤が提供される。その他の実施態様において、本製剤は、ポリソルベート(例えばポリソルベート80など)、または、エタノール水溶液を含まない。
【0031】
本発明の一形態は、投与すると以下の目的を達成するドセタキセルまたはその類似体(集合的に、「活性成分」とする)の新しい注射製剤の驚くべき、そして予想外の発見を対象とする:(1)本注射製剤は、ポリソルベートまたはエタノール水溶液がなくてもよい、および、(2)ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の有効平均粒度は、約2ミクロン未満である。一実施態様において、本注射製剤は、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体、および、ドセタキセルまたはその類似体の表面に吸収させた、または、それらに会合させた表面安定剤として、ポビドンポリマーを含む。
【0032】
本発明は、投与した際に薬物が迅速に溶解し、ドセタキセルまたはその類似体が低い注射量で所定濃度含まれる、ポリソルベートおよび/またはエタノールを含まない組成物を提供する。
【0033】
本発明のその他の形態は、タキソテール(R)のような従来のドセタキセル製剤と比較して改善された薬物動態プロファイルを有するナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物を対象とする。
【0034】
本発明のその他の実施態様は、ドセタキセルまたはその類似体を含み、さらに、癌治療において有用な、または、一般的にタキソイドと併用される1種またはそれ以上の当業界既知のドセタキセル以外の、または、ドセタキセル類似体以外の活性物質をさらに含むナノ粒子組成物を対象とする。
【0035】
本発明はさらに、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物の製造方法を開示する。このような方法は、約2000nm未満の有効平均粒度を有するナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物が提供されるのに十分な時間と条件下で、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の粒子と、少なくとも1種の表面安定剤とを接触させることを含む。1種またはそれ以上の表面安定剤は、ドセタキセルのサイズを減少させる前に、その最中に、または、その後のいずれかに、ドセタキセルまたはその類似体と接触させることができる。
【0036】
また本発明は、本明細書で開示された新規のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物を用いた癌の治療方法も対象とする。このような方法は、被検体に、治療上有効な量の本発明に係るナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物を投与することを含む。当業者には、本発明のナノ粒子組成物を用いたその他の治療方法が既知である。
【0037】
前述の一般的な説明および以下の図面の簡単な説明の両方、ならびに詳細な説明は、例証と説明であり、特許請求された本発明のさらなる説明を示すことを目的とする。その他の目的、利点、および、新規の特徴は、当業者であれば以下の発明の詳細な説明から十分に理解できると思われる。
【0038】
図面の簡単な説明
図1は、磨砕していないドセタキセル(無水)(カミダ社(Camida Ltd.))の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0039】
図2は、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセル(カミダ社(Camidta Ltd.))の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0040】
図3は、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、および、0.1%(w/w)レシチンと混合した5%(w/w)無水ドセタキセル(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0041】
図4は、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)無水ドセタキセル(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0042】
図5は、0.25%(w/w)プラスドン(Plasdone(R))S630、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した1%(w/w)無水ドセタキセル(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0043】
図6は、0.25%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した1%(w/w)無水ドセタキセル(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0044】
図7は、0.25%(w/w)プルロニック(Pluronic)(R)F127と混合した1%(w/w)無水ドセタキセル(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0045】
図8は、磨砕していないドセタキセル三水和物(カミダ社)の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
図9は、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム(デオキシコール酸Na)と混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0046】
図10は、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0047】
図11は、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0048】
図12は、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%(w/w)レシチン、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0049】
図13は、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%(w/w)レシチン、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0050】
図14は、1.25%(w/w)TPGS(ビタミンE PEG)、および、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0051】
図15は、1.25%(w/w)プルロニック(Pluronic)(R)F108、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、10%(w/w)デキストロース(w/w)と混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0052】
図16は、1.25%(w/w)プラスドン(R)S630、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した5%(w/w)ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0053】
図17は、1.25%(w/w)HPMC、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した5%(w/w)ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0054】
図18は、1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0055】
図19は、1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【0056】
発明の詳細な記述
A.大要
本発明は、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物、および、それらを用いた方法および使用を対象とする。従来のドセタキセル(タキソテール(R))製剤に対して、驚くべきことに、さらに意外なことに、本ナノ粒子組成物は、このような薬物の溶解性を高めるためのポリソルベートまたはエタノールを必ずしも含んでいなくてもよい。
【0057】
驚くべきことに、ドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子組成物を製造することができた。これまでにもタキソールのナノ粒子組成物は製造されてきたが、ドセタキセルは、タキソールとはかなり異なる構造を有する。この異なる構造のために、タキソールと比較して有意に強い活性がドセタキセルに付与されている。その上、ドセタキセルは、タキソールとは異なるメカニズムによって作用する。このような2種の化合物の異なる構造を考慮すると、ドセタキセルまたはその類似体の表面に吸収させた、または、それらに会合させた表面安定剤が、このような化合物をナノ粒子サイズでうまく安定化することができることは予想外であった。
【0058】
本組成物は、約2000nm未満の有効平均粒度を有するドセタキセルまたはその類似体、および、少なくとも1種の表面安定剤を含む。一実施態様において、表面安定剤として約40,000ダルトン未満の分子量を有するポビドンポリマーを共に含む、注射用ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物が説明される。その他の実施態様において、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の医薬製剤は、約6〜約7のpHを有する。
【0059】
ヒトの治療において、重要なことは、インビボで必要な治療的な量の活性成分を送達し、その活性成分を迅速かつ一定して生物的に利用可能にする剤形を提供することである。従って、本明細書において、この必要性を満たす様々なドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤が説明される。ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の剤形の2つの例としては、注射可能なナノ粒子の剤形、および、コーティングされたナノ粒子の剤形、例えば固体分散液または液体充填カプセルが挙げられるが、製薬上許容できるあらゆる剤形が利用可能である。
【0060】
本発明の剤形は、患者に投与する際に多種多様な放出プロファイルを示す製剤で提供することができ、このような製剤としては、例えば、1日1回の投与(またはその他の適切な期間での投与、例えば1週間/1月あたり1回/2回/3回)を可能にする即時放出型(IR)製剤、制御放出型(CR)製剤、ならびに、IR製剤とCR製剤両方の組み合わせが挙げられる。本発明の組成物のCRの形態は、1日あたり1回のみの投与(または、適切な期間につき1回の投与、例えば毎週または毎月に1回の投与)でよいため、このような剤形は、患者の利便性とコンプライアンスを強化する利点を提供する。CRの形態で用いられる制御放出メカニズムは、多種多様な方法で達成することができ、このような方法としては、これらに限定されないが、徐々に崩壊する製剤、拡散が制御された製剤、および、浸透圧制御された製剤の使用が挙げられる。
【0061】
従来のドセタキセルの形態(例えば、非ナノ粒子、または、可溶化した剤形、例えばタキソテール(R))を上回る本発明のドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤の利点としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:(1)水溶性の増加;(2)生物学的利用率の増加;(3)強化された生物学的利用率による、剤形サイズの小型化;(4)強化された生物学的利用率による、より少ない治療的な投与量;(5)不要な副作用の危険の低減;(6)患者の利便性とコンプライアンスの強化;(7)副作用を起こすことなくより高い投与量が可能なこと;および、(8)より有効な癌治療。従来の注射用ドセタキセル(タキソテール(R))の形態を上回る本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の注射製剤のさらなる利点は、薬物の溶解性を高めるためにポリソルベートまたはエタノールを用いる必要がないことである。
【0062】
本発明はまた、1種またはそれ以上の非毒性の生理学的に許容できるキャリアー、アジュバント、または、基剤(集合的にキャリアーと称される)を共に含む、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物も含む。本組成物は、非経口の注射剤(例えば、静脈内、筋肉内、または、皮下注射剤)、固体、液体またはエアロゾル形態での経口投与、膣、鼻、直腸、眼、局所(粉末、軟膏またはドロップ)、口腔、嚢内、腹膜内または外用投与などに応じて製剤化することができる。
【0063】
B.定義
以下、以下に記載したように、さらに本願にわたりいくつかの定義を用いて本発明を説明する。
【0064】
本明細書で用いられる用語「約2000nm未満の有効平均粒度」は、重量により、例えば沈降場流動分画法、光子相関分光法、光散乱、ディスク型遠心分離、および当業者既知のその他の技術によって測定した場合、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の少なくとも50%が約2000nm未満のサイズを有することを意味する。
【0065】
本明細書で用いられる「約」は、当業界における通常の技術を有する者であれば理解しているものと思われ、さらにその用語が用いられる文脈によってある程度変化する場合も予想される。「約」が用いられる文脈を考慮した際に、当業界における通常の技術を有する者にとって不明確な定義が使用されている場合、「約」は、具体的な定義のプラスまたはマイナス平均10%以内と予想される。
【0066】
本明細書で用いられる「安定な」ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、これらに限定されないが、1種またはそれ以上の以下のパラメーターを有するドセタキセルまたはその類似体を含む:(1)ドセタキセルまたはその類似体の粒子が、粒子間の引力により、感知できるほどに凝集または凝結しない、または、別の方法で時間が経っても粒度を有意に増加させない;(2)ドセタキセルまたはその類似体の粒子の物理的構造は、時間が経っても変化しせず、例えば非晶相から結晶相への変換によっても変化しない;(3)ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、化学的に安定である;および、/または、(4)ドセタキセルまたはその類似体は、本発明のナノ粒子の製造中にドセタキセルまたはその類似体の融点での、またはそれを超える温度での加熱工程に晒されない。
【0067】
用語「従来の」または「非ナノ粒子」活性物質またはドセタキセルまたはその類似体は、可溶化した、または、約2000nmより大きい有効平均粒度を有する活性物質、例えばドセタキセルまたはその類似体を意味するものとする。ナノ粒子の活性物質は、本明細書で定義される通り、約2000nm未満の有効平均粒度を有する。
【0068】
本明細書で用いられる成句「難水溶性の薬物」は、約30mg/mL未満、約20mg/ml未満、約10mg/ml未満、または、約1mg/ml未満の水溶性を有する薬物を意味する。
【0069】
本明細書で用いられる成句「治療上有効な量」は、薬物が投与されたこのような治療を必要とする被検体の有意な数に特定の薬理学的応答を提供する薬物投与量を意味する。具体的な例において具体的な被検体に投与される治療上有効な量の薬物は、このような投与量が当業者によって治療上有効な量とみなされたとしても、本明細書で説明されている状態/病気の治療に常に有効であるとは限らないことを強調する。
【0070】
本明細書で用いられる用語「粒子」は、物体のサイズ、形状または形態に関わりなく、独立した粒子、ペレット、ビーズまたは顆粒として存在することを特徴とする物体の状態を意味する。本明細書で用いられる用語「マルチ粒子(multiparticulate)」は、それらのサイズ、形状または形態に関わりなく、複数の分離または凝集した粒子、ペレット、ビーズ、顆粒、またはそれらの混合物を意味する。
【0071】
本明細書において、本発明に係る組成物に関して、または、コーティングもしくはコーティング材料に関して、または、その他のあらゆる環境で用いられる用語「放出制御」は、即時放出型ではない放出を意味し、例えば制御放出、持続放出および遅延放出などが考慮される。
【0072】
本明細書で用いられる用語「時間遅延」は、組成物の投与と、特定の成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出との間の期間を意味する。
本明細書で用いられる用語「ラグタイム」は、1種の成分からの活性成分の送達と、それに続くその他の成分からのドセタキセルまたはその類似体の送達との間の期間を意味する。
【0073】
C.ドセタキセルのナノ粒子組成物の特徴
本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、多数の薬理学的特徴が強化されている。
【0074】
1.高い生物学的利用率
本発明の一実施態様において、ドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤は、同じ用量の同じドセタキセルまたはその類似体で高い生物学的利用率を示し、タキソテール(R)のような従来のドセタキセル製剤と比較してより少ない用量しか必要としない。
【0075】
ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の剤形は、従来の微結晶性ドセタキセルの剤形(例えばタキソテール(R))で観察されるのと同じ薬理効果を得るためにより少ない薬物量しか必要としない。それゆえに、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の剤形は、従来の微結晶性ドセタキセルの剤形と比較して高い生物学的利用率を有する。
【0076】
2.本発明のドセタキセル組成物の薬物動態プロファイルは、本組成物を摂取する被検体の給餌または絶食条件の影響を受けない
本発明のその他の実施態様において、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物が説明され、ここで、ドセタキセルまたはその類似体の薬物動態プロファイルは、実質的に、本組成物を摂取する被検体の給餌または絶食条件の影響を受けない。これは、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物が、給餌条件下で投与される場合と、それに対して、絶食条件下で投与される場合とでは、吸収された薬物の量、または、薬物吸収速度に明らかな差がわずかしかないか、またはまったくないことを意味する。
【0077】
実質的に食事の影響を受けない剤形の利点としては、被検体の利便性の増加が挙げられ、従って、被検体は用量を摂取する際に食事をしていいのか、または絶食するのかを確認する必要がないため被検体のコンプライアンスも向上する。これは、ドセタキセルまたはその類似体に関する被検体のコンプライアンスが弱いと、薬物が処方される医療条件の増加が観察される可能性がある−すなわち、乳房または肺癌患者のような癌患者の予後を悪化させる恐れがあるため、有意である。
【0078】
本発明はまた、哺乳動物被検体に投与されると、望ましい薬物動態プロファイルを有するドセタキセルまたはその類似体の組成物を提供する。ドセタキセルまたはその類似体の組成物の望ましい薬物動態プロファイルとしては、好ましくは、これらに限定されないが、以下が挙げられる:(1)ドセタキセルまたはその類似体のCmaxであり、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、そのCmaxは、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えば、タキソテール(R))のCmaxより大きい;および、/または、(2)ドセタキセルまたはその類似体のAUCであり、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、そのAUCは、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えば、タキソテール(R))のAUCより大きい;および、/または、(3)ドセタキセルまたはその類似体のTmaxであり、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、そのTmaxは、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えば、タキソテール(R))のTmaxより低い。望ましい薬物動態プロファイルは、本明細書で用いられるように、ドセタキセルまたはその類似体の初回投与の後に測定された薬物動態プロファイルである。
【0079】
一実施態様において、好ましいドセタキセルまたはその類似体の組成物は、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えばタキソテール(R))を用いた薬物動態の比較試験において、ドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えば、タキソテール(R))によって示されるTmaxの、約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、または、約5%以下のTmaxを示す。
【0080】
その他の実施態様において、本発明のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えばタキソテール(R))を用いた薬物動態の比較試験において、ドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えばタキソテール(R))によって示されるCmaxよりも、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約600%、少なくとも約700%、少なくとも約800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約1100%、少なくとも約1200%、少なくとも約1300%、少なくとも約1400%、少なくとも約1500%、少なくとも約1600%、少なくとも約1700%、少なくとも約1800%、または、少なくとも約1900%大きいCmaxを示す。
【0081】
さらにその他の実施態様において、本発明のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、同じ投与量で投与されたドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えばタキソテール(R))を用いた薬物動態の比較試験において、ドセタキセルの非ナノ粒子製剤(例えばタキソテール(R))によって示されるAUCよりも、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約225%、少なくとも約250%、少なくとも約275%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約500%、少なくとも約550%、少なくとも約600%、少なくとも約750%、少なくとも約700%、少なくとも約750%、少なくとも約800%、少なくとも約850%、少なくとも約900%、少なくとも約950%、少なくとも約1000%、少なくとも約1050%、少なくとも約1100%、少なくとも約1150%、または、少なくとも約1200%大きいAUCを示す。
【0082】
3.給餌条件で投与された場合と、絶食条件で投与された場合の本発明のドセタキセル組成物の生体内利用率同等性
本発明はまた、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物も包含し、ここで、絶食条件での被検体への本組成物の投与は、給餌条件での被検体への本組成物の投与と生体内利用率が等しい。
【0083】
ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物の吸収の差は、給餌条件で投与された場合と、絶食条件で投与された場合を比較すると、好ましくは、約00%未満、約95%未満、約90%未満、約85%未満、約80%未満、約75%未満、約70%未満、約65%未満、約60%未満、約55%未満、約50%未満、約45%未満、約35%未満、約35%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、または、約3%未満である。
【0084】
本発明の一実施態様において、本発明は、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を包含し、ここで、絶食条件での被検体への本組成物の投与は、給餌条件での被検体への本組成物の投与と生体内利用率が等しく、具体的には米国食品医薬品局(USFDA)やそれに対応する欧州の 監督官庁(EMEA)によって示されたCmaxおよびAUCガイドラインで定義されている通りである。USFDAガイドラインのもとで、2種の生成物または方法のAUCおよびCmaxの90%信頼区間(CI)が0.80〜1.25である場合、それらの生体内利用率は等しい(Tmax測定は、調節のためであり、生体内利用率等価性には関連がない)。欧州のEMEAガイドラインに従って2種の化合物または投与条件間の生体内利用率等価性を示すために、AUCの90%CIは、0.80〜1.25、Cmaxの90%CIは、0.70〜1.43でなければならない。
【0085】
4.本発明のドセタキセル組成物の溶解プロファイル
さらに本発明のその他の実施態様において、本発明のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、意外なことに高い溶解プロファイルを有する。一般的に溶解が速ければ速いほど、より速い作用の開始、および、より大きい生物学的利用率が得られるため、ドセタキセルまたはその類似体の迅速な溶解が好ましい。ドセタキセルまたはその類似体の溶解プロファイルと生物学的利用率を改善するために、100%に近いレベルを達成することができるように、薬物の溶解を高めることが有用である。
【0086】
本発明のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、好ましくは、約5分以内に、少なくとも約20%のドセタキセルまたはその類似体の組成物が溶解する溶解プロファイルを有する。本発明のその他の実施態様において、約5分以内に、少なくとも約30%、または、少なくとも約40%のドセタキセルまたはその類似体の組成物が溶解する。本発明のさらにその他の実施態様において、好ましくは、約10分以内に、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または、少なくとも約80%のドセタキセルまたはその類似体の組成物が溶解する。最終的には、本発明のその他の実施態様において、好ましくは、約20分以内に、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または、少なくとも約100%のドセタキセルまたはその類似体の組成物が溶解する。
【0087】
好ましくは、溶解性は、違いを示す媒体中で測定される。このような溶解媒体において、胃液中でかなり異なった溶解プロファイルを有する2種の生成物は、2種のかなり異なった溶解曲線を示すと予想され、すなわち溶解媒体によってインビボでの組成物の溶解性を推測することができる。典型的な溶解媒体は、界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムを0.025Mで含む水性媒体である。溶解した量の測定は、分光光度法で行うことができる。溶解性を測定するために、回転ブレード法(欧州薬局方)を用いることができる。
【0088】
5.本発明のドセタキセル組成物の再分散性プロファイル
本発明の一実施態様において、本発明のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、再分散したドセタキセルまたはその類似体の粒子の有効平均粒度が、約2ミクロン未満になるように、再分散する固形の投与形態に製剤化される。これは、投与した際に、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物が、ナノ粒子の粒度に再分散されなかった場合、剤形が、ドセタキセルまたはその類似体をナノ粒子の粒度に製剤化することによって付与される利点が失われる可能性があるため、有意である。
【0089】
実際に、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の利点は、ドセタキセルまたはその類似体の粒度が小さいことにより、ドセタキセルまたはその類似体が投与した際に小さい粒度に再分散しない場合、全体的な自由エネルギーの減少を引き起こすナノ粒子系の極めて高い表面自由エネルギーと、熱力学的駆動力のために「凝集塊」、または、凝集したドセタキセルまたはその類似体の粒子が形成される。このような凝集した粒子の形成に伴い、剤形の生物学的利用率も低下する可能性がある。
【0090】
その上、本発明のナノ粒子タキソイド組成物、例えば、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物は、ヒトまたは動物のような哺乳動物に投与すると、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の粒子の高い再分散性を示し、これは、生体に関連する水性媒体中の再溶解/再分散性、すなわち再分散したドセタキセルまたはその類似体の粒子の有効平均粒度が、約2ミクロン未満になることによって実証されている通りである。このような生体に関連する水性媒体は、媒体の生物学的な関連性の基準を形成する 望ましいイオン強度およびpHを示す水性媒体であればどのようなものでもよい。望ましいpHおよびイオン強度は、人体中で見出される生理学的条件の典型的な値である。このような生体に関連する水性媒体としては、例えば、望ましいpHおよびイオン強度を示す電解質水溶液、または、あらゆる塩、酸もしくは塩基の水溶液、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0091】
生体に関連するpHは当業界周知である。例えば、胃では、わずかに2より低い値(ただし通常1より大きい)から、4または5までのpH範囲である。小腸において、pHは、4〜6の範囲であり、結腸においては6〜8の範囲であり得る。また、生体に関連するイオン強度もは当業界周知である。絶食条件下の胃液は、約0.1Mのイオン強度を有し、一方、絶食条件の腸液は、約0.14のイオン強度を有する。例えば、Lindahl等,“Characterization of Fluids from the Stomach and Proximal Jejunum in Men and Women”,Pharm.Res.,14(4):497〜502(1997)を参照。
【0092】
試験溶液のpHおよびイオン強度は、具体的な化学物質含量よりも重要であると考えられる。従って、適切なpHおよびイオン強度 値は、強酸、強塩基、塩、単独または複数の共役酸−塩基対(すなわち、弱酸、および、その酸に対応する塩)、一塩基および多塩基の電解質などの多数の組み合わせによって得ることができる。
【0093】
代表的な電解質溶液としては、これらに限定されないが、約0.001〜約0.1Nの濃度のHCl溶液、および、約0.001〜約0.1Mの濃度範囲のNaCl溶液、ならびにそれらの混合物が挙げられる。例えば、電解質溶液としては、これらに限定されないが、約0.1N またはそれ未満のHCl、約0.01Nまたはそれ未満のHCl、約0.001Nまたはそれ未満のHCl、約0.1Mまたはそれ未満のNaCl、約0.01Mまたはそれ未満のNaCl、約0.001Mまたはそれ未満のNaCl、および、それらの混合物が挙げられる。これらの電解質溶液のなかでも、消化管の基部におけるpHおよびイオン強度条件を考慮すると、0.01NのHCl、および/または、0.1MのNaClが絶食したヒトの生理学的条件の最も代表的なものである。
【0094】
0.001NのHCl、0.01NのHCl、および、0.1NのHClの電解質濃度は、それぞれpH3、pH2、および、pH1に相当する。従って、0.01NのHCl溶液は、胃内で見出される典型的な酸性条件を模擬する。0.1MのNaCl溶液は、胃腸液など全身で見出されるイオン強度条件の適度な近似状態を提供するが、0.1Mより高い濃度を用いて、ヒト胃腸管内における給餌条件を模擬実験することも可能である。
【0095】
望ましいpHおよびイオン強度を示す典型的な塩、酸、塩基の溶液、またはそれらの組み合わせとしては、これらに限定されないが、リン酸/リン酸塩+ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩化塩、酢酸/酢酸塩+ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩化塩、炭酸/炭酸水素塩+ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩化塩、および、クエン酸/クエン酸塩+ナトリウム、カリウムおよびカルシウムの塩化塩が挙げられる。
【0096】
本発明のその他の実施態様において、本発明の再分散したドセタキセルまたはその類似体の粒子(水性媒体、生体に関連する媒体、またはその他のあらゆる適切な媒体中に再分散した)は、光散乱法、顕微鏡またはその他の適切な方法によって測定したところ、約2000nm未満、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、または、約50nm未満の有効平均粒度を有する。このような有効平均粒度を測定するのに適した方法は、当業界において通常の技術を有する者には既知である。
【0097】
再分散性は、当業界既知のあらゆる適切な手段を用いて試験することができる。例えば、米国特許第6,375,986号の実施例の章の、“Solid Dose Nanoparticulate Compositions Comprising a Synergistic Combination of a Polymeric Surface Stabilizer and Dioctyl Sodium Sulfosuccinate”を参照。
【0098】
6.その他の活性物質と共に用いられるドセタキセル組成物
本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、癌治療、具体的には乳房、および/または、肺癌治療の治療において有用な1種またはそれ以上の化合物をさらに含んでいてもよい。本発明の組成物は、このようなその他の活性物質と共に製剤化してもよいし、あるいは、本発明の組成物は、このような活性物質と共投与してもよいし、または、連続的に投与してもよい。本発明のドセタキセル組成物と共投与するか、または共に製剤化することができる薬物の例としては、これらに限定されないが、抗癌剤、化学療法剤、デキサメタゾン、COX−2阻害剤、ラニキダール(laniquidar)、オブリマーセン(oblimersen)、シスプラチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ステロイド、例えばプレドニゾン、およびその他のヒスタミン遮断薬、シクロホスファミド、サイクロスポリン、イレッサ(ZD1839)、サリドマイド、ミトキサントロン、インフリキシマブ、エルロチニブ、トラスツズマブ、TLK286、MDX−010、ZD1839、エピルビシン、タモキシフェン、ベバシズマブ、フィルグラスチム、ビノレルビン、セツキシマブ、イリノテカン、エストラムスチン、エキシスリンド(exisulind)、カルボプラチン、ZD6474、ゲムシタビン、イフォスファミド、カペシタビン、フラボピリドール(flavopiridol)、セレコキシブ、スリンダック、および、エキシスリンド(exisulind)が挙げられる。
【0099】
D.組成物
本発明は、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物の粒子、および、少なくとも1種の表面安定剤を提供する。表面安定剤は、ドセタキセルまたはその類似体粒子の表面に吸収または会合させることが好ましい。本発明において有用な表面安定剤は、ドセタキセルまたはその類似体の粒子、または、それ自身と化学反応しない。好ましくは、表面安定剤の個々の分子は、分子間の架橋を実質的に含まない。その他の実施態様において、本発明の組成物は、2種またはそれ以上の表面安定剤を含んでいてもよい。
【0100】
本発明はまた、1種またはそれ以上の非毒性の生理学的に許容できるキャリアー、アジュバント、または、基剤(集合的にキャリアーと称される)を共に含むナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物も含む。本組成物は、非経口の注射剤(例えば、静脈内、筋肉内、または、皮下注射剤)、固体、液体またはエアロゾル形態での経口投与、膣、鼻、直腸、眼、局所(粉末、軟膏またはドロップ)、口腔、嚢内、腹膜内または外用投与などに応じて製剤化することができる。本発明の具体的な実施態様において、ドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤は、注射可能な形態、または、コーティングされた経口用製剤である。
【0101】
1.ドセタキセル
本明細書で用いられる用語「ドセタキセル」は、それらの類似体および塩を含み、結晶相、非晶相、半結晶性の相、半非晶質の相、または、それらの混合物の形態のものが可能である。ドセタキセルまたはその類似体は、実質的に光学的に純粋な一方のエナンチオマーか、または、エナンチオマーの混合物、ラセミ体、またはそれ以外の形態のいずれかの形態として存在する可能性がある。
【0102】
本発明で説明されている、および、本発明に包含されるドセタキセルの類似体としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
(1)安息香酸のC−3’および/またはC−2位においてフェニル基の代わりにシクロヘキシル基を含むドセタキセル類似体、例えば、3’−デフェニル−3’シクロヘキシルドセタキセル、2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル、および、3’−デフェニル−3’シクロヘキシル−2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル(Ojima等,“Synthesis and structure−activity relationships of new antitumor taxoids.Effects of cyclohexyl substitution at the C−3’and/or C−2 of taxotere(docetaxel)”,J.Med.Chem.,37(16):2602〜8(1994));
(2)C−3’位またはC−2位においてフェニルまたは芳香族基が欠失したドセタキセル類似体、例えば3’−デフェニル−3’−シクロヘキシルドセタキセル、および、2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル;
(3)2−アミドドセタキセル類似体、例えば、m−メトキシ、および、m−クロロベンゾイルアミド類似体など(Fang等,Bioorg.Med.Chem.Lett.,72(11):1543〜6(2002);
(4)オキセタンD環が欠失しているが、生物活性に重要な4アルファ−アセトキシ基を有するドセタキセル類似体、例えば5(20)−チアドセタキセル類似体、これは、10−デアセチルバッカチンIII、または、タキシンBおよびイソタキシンBから合成することができ、Merckle等,“Semisynthesis of D−ring modified taxoids:novel thia derivatives of docetaxel”,J.Org.Chem.,66(15):5058〜65(2001)、および、Deka等,Org.Lett,5(26):5031〜4(2003)で説明されている;
(5)5(20)デオキシドセタキセル;
(6)10−デオキシ−10−C−モルホリノエチルドセタキセル類似体、例えば、7−ヒドロキシル基が、疎水性基(メトキシ、デオキシ、6,7−オレフィン、アルファ−F、7−ベータ−8−ベータ−メタノ、フルオロメトキシ)に改変されたドセタキセル類似体であり、これは、Iimura等,“Orally active docetaxel analogue:synthesis of 10−deoxy−10−C−morpholinoethyl docetaxel analogues”,Bioorg.Med.Chem.Lett,11(3):407〜10(2001)で説明されている;
(7)Cassidy等,Clin.Can.Res.,8:846〜855(2002)で説明されているドセタキセル類似体、例えばイソセリンN−アシル置換基としてt−ブチルカルバメートを有するが、C−10(アセチル基、それに対して、ヒドロキシル)、および、C−13イソセリン結合(エノールエステル、それに対して、エステル)においてドセタキセルとは異なる類似体;
(8)C−3位にペプチド側鎖を有するドセタキセル類似体、これは、Larroque等,“Novel C2−C3”N−peptide linked macrocyclic taxoids.Part 1 :Synthesis and biological activities of docetaxel analogues with a peptide side chain at C3”,Bioorg.Med.Chem.Lett.15(21):4722〜4726(2005)で説明されている;
(9)XRP9881(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(10)XRP6528(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(11)オルタタキセル(Ortataxel)(14−ベータ−ヒドロキシ−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(12)MAC−321(10−デアセチル−7−プロパノイルバッカチンドセタキセル類似体);
(13)DJ−927(7−デオキシ−9−ベータ−ジヒドロ−9,10,O−アセタールタキサンドセタキセル(docetaxal)類似体);
(14)C−2位に芳香環が結合したC2−C3’N−結合を有し、N3’とC2−芳香環とがオルト、メタまたはパラ位で連結されたドセタキセル類似体。パラ置換された誘導体は微小管を安定化することができなかったが、それに対してオルトおよびメタ置換された化合物は、低温誘発性の微小管分解分析において有意な活性を示す。Olivier等,“Synthesis of C2−C3’N−Linked Macrocyclic Taxoids; Novel Docetaxel Analogues with High Tubulin Activity”,J.Med.Chem.,47(24:5937〜44,2004年11月);
(15)C−2のOH、および、C−3’NH成分が連結した22員環(またはそれ以上)の環が結合しているドセタキセル類似体(C−2のOH成分とC−3’のNH成分とが連結した18、20、21および22員環が結合しているドセタキセル類似体の生物学的な評価によれば、活性は、環の大きさに依存することが示された;22員環のタキソイド3dだけが、有意なチューブリン結合を示した)(Querolle等,“Synthesis of novel macrocyclic docetaxel analogues.Influence of their macrocyclic ring size on tubulin activity”,J.Med.Chem.,46(17):3623〜30(2003));
(16)7ベータ−O−グリコシル化ドセタキセル類似体(Anastasia等,“Semi−Synthesis of an O−glycosylated docetaxel analogue”,Bioorg.Med.Chem.,11(7):1551〜6(2003));
(17)10−アルキル化ドセタキセル類似体、例えばアルキル成分の末端にメトキシカルボニル基を有する10−アルキル化ドセタキセル類似体(Nakayama等,“Synthesis and cytotoxic activity of novel 10−alkylated docetaxel analogs”,Bioorg.Med.Chem.Lett.,8(5):427〜32(1998));
(18)2’,2’−ジフルオロ、3’−(2−フリル)、および、3’−(2−ピロリル)ドセタキセル類似体(Uoto等,“Synthesis and structure−activity relationships of novel 2’,2’−difluoro analogues of docetaxel”,Chem.Pharm.Bull.(Tokyo),45(11):1793〜804(1997));および、
(19)蛍光性およびビオチン化ドセタキセル類似体、例えば(a)7または3’位にN−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾ−4−イル)アミド−6−カプロイル鎖を有するドセタキセル類似体、(b)3’位にN−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾ−4−イル)アミド−3−プロパノイル基を有するドセタキセル類似体、または、(c)7、10または3’位に5’−ビオチニルアミド−6−カプロイル鎖を有するドセタキセル類似体(Dubois等,“Fluorescent and biotinylated analogues of docetaxel:synthesis and biological evaluation”,Bioorg.Med,Chem.,3(10):1357〜68(1995))。
【0103】
2.表面安定剤
本発明のドセタキセルまたはその類似体の製剤において、2種以上の表面安定剤の組み合わせが使用可能である。本発明の一実施態様において、ドセタキセルまたはその類似体の製剤は、注射製剤である。適切な表面安定剤としては、これらに限定されないが、既知の有機および無機の医薬品賦形剤が挙げられる。このような賦形剤としては、様々なポリマー、低分子量オリゴマー、天然産物、および、界面活性剤が挙げられる。表面安定剤としては、非イオン性、イオン性、アニオン性、カチオン性、および、両性イオン性界面活性剤が挙げられる。本発明の一実施態様において、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の注射製剤のための表面安定剤は、ポビドンポリマーである。
【0104】
表面安定剤の代表的な例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(現在、ヒプロメロースとして知られている)、アルブミン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホスクシナート、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、デキストラン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、マクロゴールエーテル、例えばセトマクロゴール1000)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、市販のトゥイーン(Tween(R))、例えばトゥイーン(R)20、および、トゥイーン(R)80(ICIスペシャリティー・ケミカルズ(ICI Speciality Chemicals)));ポリエチレングリコール(例えば、カルボワックス3550(Carbowaxes 3550(R))、および、934(R)(ユニオン・カーバイド(Union Carbide)))、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、フタル酸ヒプロメロース、非晶質セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシドとホルムアルデヒドとを含む4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー(また、チロキサポール、スーペリオン(superione)、および、トリトン(Triton)としても知られている)、ポロキサマー(例えば、プルロニック(R)F68およびF108、これは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーである);ポロキサミン(例えば、テトロニック908(Tetronic 908(R))、またポロキサミン908(R)として知られており、これらは、エチレンジアミン(BASFワイアンドット社(BASF Wyandotte Corporation),パーシパニー,ニュージャージー州)にプロピレンオキシドとエチレンオキシドを連続添加することによって誘導された四官能性のブロックコポリマーである);テトロニック1508(R)(T−1508)(BASFワイアンドット社)、トリトンX−200(R)、これは、アルキルアリールポリエーテルスルホナート(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas))である;クローデスタ(Crodesta)F−110(R)、これは、ステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロース(クローダ社(Croda Inc.))との混合物である;p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)、また、Olin−1OG(R)、または、界面活性剤10−G(R)(オリン・ケミカルズ(Olin Chemicals),スタンフォード,コネチカット州);これは、クローデスタSL−40(R)(クローダ社);および、SA9OHCOとして知られており、SA9OHCOは、C18H37CH2C(O)N(CH3)−CH2(CHOH)4(CH2OH)2(イーストマンコダック社(Eastman Kodak Co.))である;デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシル(−D−グルコピラノシド;n−デシル(−D−マルトピラノシド;n−ドデシル(−D−グルコピラノシド;n−ドデシル(−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−(−D−グルコピラノシド;n−ヘプチル(−D−チオグルコシド;n−ヘキシル(−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノイル(−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−(−D−グルコピラノシド;オクチル(−D−チオグルコピラノシド;PEG−リン脂質、PEG−コレステロール、PEG−コレステロール誘導体、PEG−ビタミンA、PEG−ビタミンE、リゾチーム、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのランダムコポリマーなどが挙げられる。また、望ましい場合は、本発明のドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤は、リン脂質を含ませないで製剤化してもよい。
【0105】
有用なカチオン性表面安定剤の例としては、これらに限定されないが、ポリマー、バイオポリマー、多糖類、セルロース誘導体、アルギン酸塩、リン脂質、および、非高分子化合物、例えば両性イオン性安定剤、ポリ−n−メチルピリジニウム、アントリル(anthryul)ピリジニウム塩化物、カチオン性のリン脂質、キトサン、ポリリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリラートトリメチルアンモニウム臭化物(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウム臭化物(HDMAB)、および、ポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリラートジメチル硫酸塩が挙げられる。その他の有用なカチオン性安定剤としては、これらに限定されないが、カチオン脂質、スルホニウム、ホスホニウム、および、第四級アンモニウム化合物、例えばステアリルトリメチルアンモニウム塩化物、ベンジル−ジ(2−シクロエチル)エチルアンモニウム臭化物、ヤシ脂肪酸トリメチルアンモニウム塩化物または臭化物、ヤシ脂肪酸メチルジヒドロキシエチルアンモニウム塩化物または臭化物、デシルトリエチルアンモニウム塩化物、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物または臭化物、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物または臭化物、ヤシ脂肪酸ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物または臭化物、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩化物または臭化物、ラウリルジメチル(エテンオキシ)4アンモニウム塩化物または臭化物、N−アルキル(C14〜18)ジメチルベンジルアンモニウム塩化物、N−アルキル(C14〜18)ジメチルベンジルアンモニウム塩化物、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物一水化物、ジメチルジデシルアンモニウム塩化物、N−アルキルおよび(C12〜14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウム塩化物、ハロゲン化トリメチルアンモニウム、アルキル−トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル−ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩化物、エトキシ化されたアルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、および/または、エトキシ化されたトリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウム塩化物、N−ジデシルジメチルアンモニウム塩化物、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物一水化物、N−アルキル(C12〜14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウム塩化物、および、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウム塩化物、ラウリルトリメチルアンモニウム塩化物、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩化物、アルキルベンジルジメチルアンモニウム臭化物、C12、C15、C17トリメチルアンモニウム臭化物、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウム塩化物、ポリ−ジアリルジメチルアンモニウム塩化物(DADMAC)、ジメチルアンモニウム塩化物、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリセチルメチルアンモニウム塩化物、デシルトリメチルアンモニウム臭化物、ドデシルトリエチルアンモニウム臭化物、テトラデシルトリメチルアンモニウム臭化物、メチルトリオクチルアンモニウム塩化物(ALIQUAT336)、POLYQUAT、臭化テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム臭化物、コリンエステル(例えば、脂肪酸のコリンエステル)、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物(例えば、ステアリルトリモニウム塩化物、および、ジステアリルジモニウム塩化物)、臭化セチルピリジニウム、または、塩化物、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物の塩、MIRAPOL、および、ALKAQUAT(アルカリル・ケミカル社(Alkaril Chemical Company))、アルキルピリジニウム塩;アミン、例えばアルキルアミン、ジアルキルアミン、アルカノールアミン、ポリエチレンポリアミン、N,N−ジアルキルアミノアクリル酸アルキル、および、ビニルピリジン、アミン塩、例えばラウリルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、アルキルピリジニウム塩、および、アルキルイミダゾリウム塩、および、酸化アミン;イミドアゾリニウム塩;プロトン化された第四級アクリルアミド;メチル化された第四級化合物ポリマー、例えばポリ[ジアリルジメチルアンモニウム塩化物]、および、ポリ−[N−メチルビニルピリジニウム塩化物];および、カチオン性グアールが挙げられる。
【0106】
このような典型的なカチオン性表面安定剤、およびその他の有用なカチオン性表面安定剤は、J.Cross and E.Singer,Cationic Surfactants:Analytical and Biological Evaluation(マルセル・デッカー(Marcel Dekker),1994);P.and D.Rubingh(編集者),Cationic Surfactants:Physical Chemistry(マルセル・デッカー,1991);および、J.Richmond,Cationic Surfactants:Organic Chemistry(マルセル・デッカー,1990)において説明されている。
【0107】
非高分子性の表面安定剤としては、あらゆる非高分子化合物が挙げられ、例えば、塩化ベンザルコニウム、カルボニウム化合物、ホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、ハロニウム化合物、カチオン性有機金属化合物、第四級リン化合物、ピリジニウム化合物、アニリニウム化合物、アンモニウム化合物、ヒドロキシルアンモニウム化合物、一級アンモニウム化合物、二級アンモニウム化合物、三級アンモニウム化合物、および、式NR1R2R3R4(+)の四級アンモニウム化合物である。式NR1R2R3R4(+)の化合物について:
(i)R1〜R4はいずれもCH3ではない;
(ii)R1〜R4のいずれか一個がCH3である;
(iii)R1〜R4のうち3個がCH3である;
(iv)R1〜R4の全部がCH3である;
(v)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がC6H5CH2であり、R1〜R4のいずれか一個が7個またはそれ未満の炭素原子からなるアルキル鎖である;
(vi)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がC6H5CH2であり、R1〜R4のいずれか一個が19個またはそれ以上の炭素原子からなるアルキル鎖である;
(vii)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個が、基C6H5(CH2)n(式中、nは1より大きい)である;
(viii)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がC6H5CH2であり、R1〜R4のうち1個が、少なくとも1種のヘテロ原子を含む;
(ix)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がC6H5CH2であり、R1〜R4のうち1個が、少なくとも1種のハロゲンを含む;
(x)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がC6H5CH2であり、R1〜R4のうち1個が、少なくとも1個の環状フラグメントを含む;
(xi)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のいずれか一個がフェニル環である;または、
(xii)R1〜R4のうち2個がCH3であり、R1〜R4のうち2個が、純粋な脂肪族フラグメントである。
【0108】
このような化合物としては、これらに限定されないが、塩化ベヘンアルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベヘントリモニウム、塩化ラウラルコニウム、塩化セタルコニウム、臭化セトリモニウム、塩化セトリモニウム、セチルアミンヒドロフッ化物、塩化クロラリルメテナミン(クオタニウム−15(Quaternium−15))、ジステアリルジモニウム塩化物(クオタニウム−5)、ドデシルジメチルエチルベンジルアンモニウム塩化物(クオタニウム−14)、クオタニウム−22、クオタニウム−26、クオタニウム−18ヘクトライト、ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩、塩酸システイン、ジエタノールアンモニウムPOE(10)オレイル(oletyl)リン酸エーテル、ジエタノールアンモニウムPOE(3)オレイルリン酸エーテル、獣脂アルコニウム塩化物(tallow alkonium chloride)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、塩化ステアラルコニウム、臭化ドミフェン、安息香酸デナトニウム、塩化ミリスタルコニウム、塩化ラウリルトリモニウム、エチレンジアミン二塩化水素化物、塩酸グアニジン、ピリドキシンHCl、塩酸イオフェタミン、塩酸メグルミン、塩化メチルベンゼトニウム、臭化ミルトリモニウム、塩化オレイルトリモニウム、ポリクオタニウム−1、塩酸プロカイン、ココベタイン、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトライト(stearalkoniumhectonite)、ステアリルトリヒドロキシエチルプロピレンジアミンジヒドロフルオリド、獣脂トリモニウム塩化物、および、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物が挙げられる。
【0109】
これらの表面安定剤の多くは既知の医薬品賦形剤であり、米国薬剤師会(American Pharmaceutical Association)と英国薬剤師会(The Pharmaceutical Society of Great Britain)による共編で出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients(ファーマシューティカル・プレス(The Pharmaceutical Press),2000)で詳細に説明されており、これは、この参照により具体的に開示に含まれる。
【0110】
ポビドンポリマー
ポビドンポリマーは、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の注射製剤を製剤化するのに使用することができる典型的な表面安定剤である。ポビドンポリマーは、ポリビドン、ポビドナム(povidonum)、PVP、および、ポリビニルピロリドンとしても知られており、これらは、コリドン(Kollidon(R))(BASF社)、および、プラスドン(R)(ISPテクノロジーズ社(ISP Technologies,Inc.))という商標名で販売されている。これらは多分散高分子であり、化学名は、1−エテニル−2−ピロリジノンポリマー、および、1−ビニル−2−ピロリジノンポリマーである。ポビドンポリマーは、約10,000〜約700,000ダルトンの範囲の平均分子量を有する一連の生成物として商業的に生産されている。注射可能なナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の表面安定剤として有用であるためには、ポビドンポリマーが、約40,000ダルトン未満の分子量を有することが好ましく、これは、40,000ダルトンより大きい分子量の場合、注射剤の体からのクリアランスが困難なためである。
【0111】
ポビドンポリマーは、例えば以下の工程を含むレッペ法によって製造される:(1)レッペのブタジエン合成によって、アセチレンおよびホルムアルデヒドから1,4−ブタンジオールを得ること;(2)銅上で、200℃で、1,4−ブタンジオールを脱水素し、γ−ブチロラクトンを形成すること;および、(3)γ−ブチロラクトンとアンモニアとを反応させ、ピロリドンを得ること。それに続くアセチレン処理により、ビニルピロリドンの単量体が得られる。重合は、H2OおよびNH3の存在下で加熱することによって開始される。Merck Index,第10版,7581頁(メルク&Co.(Merck & Co.),ローウェイ,ニュージャージー州,1983)を参照。
【0112】
ポビドンポリマーの製造法では、不均一な鎖長を有するため、分子量が異なる分子を含むポリマーが得られる。このような分子の分子量は、それぞれ個々の市販のグレードにおいてほぼ平均または平均値であり、様々である。ポリマーの分子量を直接決定することは難しいいため、様々な分子量のグレードを分類するのに最も広く用いられる方法は、粘度測定に基づいたK値による方法である。様々なレードのポビドンポリマーのK値は、平均分子量の関数で示され、K値は、粘度測定から誘導され、フィッケンチャーの式に従って計算される。
【0113】
その重量平重量均分子量(Mw)は、個々の分子の重量を測定する方法(例えば光散乱)によって測定される。表1に、数種の市販のポビドンポリマー(これらは全て可溶性である)の分子量データを示す。
【0114】
出願人は理論的なメカニズムに拘束されることを望まないが、ポビドンポリマーは、粒子間の機械的または立体障害として機能することによって、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の凝結および/または凝集を妨害し、凝集および凝結に必要な近接した粒子間の接近を最小化すると考えられる。
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示されたデータに基づいて、注射用組成物の典型的な好ましい市販のポビドンポリマーとしては、これらに限定されないが、プラスドン(R)C−15、コリドン(R)12PF、コリドン(R)17PF、および、コリドン(R)25が挙げられる。
【0117】
3.ナノ粒子状のドセタキセルの粒度
本明細書で用いられるように、粒度は、例えば当業者周知の従来の粒度測定技術によって測定された重量平均粒度に基づき決定される。このような技術としては、例えば、沈降場流動分画法、光子相関分光法、光散乱、および、ディスク型遠心分離が挙げられる。
【0118】
本発明の組成物は、約2ミクロン未満の有効平均粒度を有するドセタキセルまたはその類似体の粒子を含む。本発明のその他の実施態様において、ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、光散乱法、顕微鏡またはその他の適切な方法によって測定したところ、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400mn未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、または、約50nm未満の有効平均粒度を有する。本発明のその他の実施態様において、本発明の組成物は、注射可能な剤形であり、ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、光散乱法、顕微鏡またはその他の適切な方法によって測定したところ、好ましくは、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、または、約50nm未満の有効平均粒度を有する。注射用組成物は、約1ミクロンより大きく、約2ミクロン以下の有効平均粒度を有するドセタキセルまたはその類似体を含んでいてもよい。
【0119】
「約2000nm未満の有効平均粒度」は、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の少なくとも50%は、有効な重量平均を有する、すなわち約2000nm未満の粒度を有することを意味する。「有効平均粒度」が、約600nm未満である場合、少なくとも約50%のドセタキセルまたはその類似体の粒子が、上述の技術によって測定した場合、約600nm未満の粒度を有する。上述したその他の粒度の場合も同様である。
【0120】
その他の実施態様において、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または、少なくとも約99%のドセタキセルまたはその類似体の粒子が、有効平均未満、すなわち約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満などの粒度を有する。
【0121】
本発明において、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物のD50値は、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の50重量%がこの粒径よりも小さいことを示す値である。同様に、D90は、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の90重量%がこの粒径よりも小さいことを示す値である。
【0122】
4.ナノ粒子状のドセタキセル、および、表面安定剤の濃度
ドセタキセルまたはその類似体、および、1種またはそれ以上の表面安定剤の相対量は、広範囲に様々であってよい。個々の成分の最適な量は、例えば、選択された表面安定剤およびドセタキセルまたはその類似体の物理的および化学的特性、例えば親水親油バランス(HLB)、融点、および、安定剤の水溶液の表面張力などに依存する。
【0123】
好ましくは、ドセタキセルまたはその類似体の濃度は、ドセタキセルまたはその類似体と、少なくとも1種の表面安定剤との合計重量(ただし、その他の賦形剤は含まない)に基づき、約99.5重量%〜約0.001重量%、約95重量%〜約0.1重量%、または、約90重量%〜約0.5重量%の範囲で様々であってよい。一般的には、用量および費用効果の観点からより高い濃度の活性成分が好ましい。
【0124】
好ましくは、表面安定剤の濃度は、ドセタキセルまたはその類似体と、少なくとも1種の表面安定剤との合計の総乾燥重量(ただし、その他の賦形剤は含まない)に基づき、約0.5重量%〜約99.999重量%、約5.0重量%〜約99.9重量%、または、約10重量%〜約99.5重量%の範囲で様々であってよい。
【0125】
5.その他の医薬品賦形剤
また、本発明の医薬組成物は、望ましい投与経路および剤形に応じて、1種またはそれ以上の結合剤、充填剤、潤滑剤、懸濁化剤、甘味料、矯味矯臭薬剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および、その他の賦形剤を含んでいてもよい。このような賦形剤は、当業界周知である。
【0126】
充填剤の例は、乳糖一水和物、乳糖無水物、および、様々なスターチであり;結合剤の例は、様々なセルロース、および、架橋ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース、例えばアビセルPH101(Avicel(R)PH101)、および、アビセル(R)PH102、微結晶性セルロース、および、ケイ化微晶性セルロース(ProSolv SMCCTM)である。
【0127】
適切な潤滑剤としては、圧縮しようとする粉末の流動性に作用する物質が挙げられ、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、例えばエアロシル200(Aerosil(R)200)、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、および、シリカゲルである。
【0128】
甘味料の例は、あらゆる天然または人工甘味料であり、例えばスクロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、サイクラミン酸塩、アスパルテーム、および、アクスルファーム(acsulfame)である。矯味矯臭薬剤の例は、マグナスウィート(Magnasweet(R))(MAFCOの商標)、バブルガムフレーバー、および、果実フレーバーなどである。
【0129】
保存剤の例は、ソルビン酸カリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、および、その塩、パラヒドロキシ安息香酸のその他のエステル、例えばブチルパラベン、アルコール、例えばエチルまたはベンジルアルコール、フェノール化合物、例えばフェノール、および、第四級化合物、例えば塩化ベンザルコニウムである。
【0130】
適切な希釈剤としては、製薬上許容できる不活性充填剤、例えば微結晶性セルロース、ラクトース、二塩基のリン酸カルシウム、サッカリド、および/または、前述のものいずれかの混合物が挙げられる。希釈剤の例としては、微結晶性セルロース、例えばアビセル(R)PH 101、および、アビセル(R)PH102;ラクトース、例えば乳糖一水和物、乳糖無水物、および、ファーマトースDCL21(Pharmatose(R));二塩基のリン酸カルシウム、例えばエンコンプレス(Emcompress(R));マンニトール;スターチ;ソルビトール;スクロース;および、グルコースが挙げられる。
【0131】
適切な崩壊剤としては、軽度に架橋されたポリビニルピロリドン、コーンスターチ、ジャガイモスターチ、トウモロコシデンプン、および、加工デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グリコール酸ナトリウムスターチ、および、それらの混合物が挙げられる。
【0132】
発泡剤の例は、発泡剤の組み合わせであり、例えば有機酸と、炭酸塩または炭酸水素塩との組み合わせである。適切な有機酸としては、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、および、アルギン酸、ならびに、無水物および酸性塩が挙げられる。適切な炭酸塩および炭酸水素塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、ナトリウムグリシン炭酸塩、L−リシン炭酸塩、および、アルギニン炭酸塩が挙げられる。あるいは、発泡剤の組み合わせのうち炭酸水素ナトリウム成分だけが存在していてもよい。
【0133】
6.ドセタキセルのナノ粒子注射製剤
本発明の一実施態様において、投与した際に迅速に溶解し、低い注射量でナノ粒子状のドセタキセルを高濃度で含ませることができる、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の注射製剤が提供される。典型的な組成物は、%w/wに基づき以下を含む:
【0134】
【表2】
【0135】
典型的な保存剤としては、メチルパラベン(%w/wに基づき約0.18%)、プロピルパラベン(%w/wに基づき約0.02%)、フェノール(%w/wに基づき約0.5%)、および、ベンジルアルコール(2%v/vまで)が挙げられる。典型的なpH調節剤は、水酸化ナトリウムであり、典型的な液体キャリアーは、滅菌注射用水である。その他の有用な保存剤、pH調節剤、および、液体キャリアーは、当業界周知である。
【0136】
7.コーティングされた経口製剤
ドセタキセルまたはその類似体の生物学的利用率は、食事と共に投与された場合に減少する。食事と共に投与すると、ドセタキセルまたはその類似体が胃に保持される時間が増加する。この保持時間の増加により、ドセタキセルまたはその類似体を、胃内の酸性環境下で溶解させることが可能になる。続いて、溶解した薬物が胃を出て、上部小腸のより塩基性の環境に入ると、ドセタキセルまたはその類似体は溶液から沈殿する。沈殿したドセタキセルまたはその類似体は十分に吸収されないため、それらを再度溶解して吸収可能な状態にしなければならず、このプロセスは、ドセタキセルまたはその類似体の水溶性が不十分なためにゆっくりである。胃内での薬物の溶解、それに続く沈殿は、ドセタキセルまたはその類似体が、ナノ粒子の剤形として、例えばナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の固体分散液、または、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の液体充填カプセルとして投与されることによって得ることができる強化された生物学的利用率を低減させる。胃の低いpH条件から薬物を保護すれば、このような生物学的利用率の減少が低くなるか、または、なくなると予想される。
【0137】
それゆえに、本明細書において、コーティングされたナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体を含む組成物が、例えば腸溶性ドセタキセルまたはその類似体を含む組成物が説明される。一実施態様において、経口製剤は、腸溶性固形の剤形のような経口製剤を含む。
【0138】
経口投与のための固形の剤形としては、これらに限定されないが、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、および、顆粒が挙げられる。このような固形の剤形において、ドセタキセルまたはその類似体は、以下のうち少なくとも1種と混合される:(a)1またはそれ以上の不活性な賦形剤(またはキャリアー)、例えばクエン酸ナトリウム、または、リン酸二カルシウム;(b)充填剤または増量剤、例えばスターチ、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および、ケイ酸;(c)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および、アラビアゴム;(d)潤滑剤、例えばグリセロール;(e)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカスターチ、アルギン酸、所定の複合ケイ酸塩、および、炭酸ナトリウム;(f)溶液遅延剤、例えばパラフィン;(g)吸収促進剤、例えば第四アンモニウム化合物;(h)湿潤剤、例えばセチルアルコール、および、モノステアリン酸グリセロール;(i)吸着剤、例えばカオリン、および、ベントナイト;および、(j)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、または、それらの混合物。カプセル、錠剤および丸剤の場合、さらに緩衝剤が剤形に含まれていてもよい。
【0139】
薬物放出プロファイル
一実施態様において、コーティングされたドセタキセルまたはその類似体、例えば本明細書で説明される腸溶性血漿プロファイルコーティングされたドセタキセルまたはその類似体の組成物は、経口の剤形で患者に投与されるとパルス型の血漿プロファイルを示す。医薬化合物の投与に付随する血漿プロファイルは、「パルス型のプロファイル」と説明することができ、この場合、高濃度のドセタキセルまたはその類似体のパルスと、拡散した低濃度の谷間が観察される。2つのピークを含むパルス型のプロファイルは、「二峰性」と説明することもできる。同様に、投与した際にこのようなプロファイルを示す組成物または剤形は、ドセタキセルまたはその類似体の「パルス放出」を示すと言うこともできる。
【0140】
従来よく用いられてきた、定期的な間隔で即時放出型(IR)剤形を投与する用法は、典型的には、パルス型の血漿プロファイルを引き起こす。このような場合において、薬物の血漿濃度のピークは、各IRの用量を投与した後に観察され、連続した投与タイムポイントの間に谷間(低い薬物濃度の領域)が生じる。このような用法(および、その結果得られたパルス型の血漿プロファイル)は、それらに関連する特定の薬理学的効果および治療効果を有する。例えば、ピーク間のドセタキセルまたはその類似体の血漿濃度の低下によって提供されるウォッシュアウト期間は、患者において様々なタイプの薬物に対する耐性を減少させたり、または、そのような耐性を予防する寄与因子と考えられてきた。
【0141】
Devane等の米国特許第6,228,398号、第6,730,325号、および、第6,793,936号では、本明細書で開示された組成物に類似したマルチ粒子の改変された制御放出(CR)組成物が開示され、特許請求されている;これらはいずれも、具体的に参照により本発明に含める。この分野におけるあらゆる関連の従来技術がそこで見出せる可能性がある。
【0142】
本発明のその他の形態は、ドセタキセルまたはその類似体の第一の群を含む第一の成分と、ドセタキセルまたはその類似体の第二の群を含む第二の成分とを有するマルチ粒子の放出制御組成物である。第二の成分の成分含有粒子は、放出制御膜でコーティングされている。その代わりに、またはそれに加えて、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第二の群は、放出制御マトリックス材料をさらに含む。経口送達された後、有効な組成物は、パルス型でドセタキセルまたはその類似体を送達する。
【0143】
本発明に係るマルチ粒子の放出制御組成物の好ましい実施態様において、第一の成分は、即時放出される成分である。
ドセタキセルまたはその類似体の粒子の第二の群に塗布された放出制御膜により、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第一の群からの活性成分の放出と、活性なドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第二の群からの活性成分の放出との間にラグタイムが生じる。加えて、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第二の群中の放出制御マトリックス材料が存在すると、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第一の群からのドセタキセルまたはその類似体の放出と、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第二の群からの活性成分の放出との間にラグタイムが生じる。ラグタイムの持続時間は、放出制御膜の組成および/または量を変更すること、および/または、利用されている放出制御マトリックス材料の組成および/または量を変更することによって多様に変化させることができる。従って、ラグタイムの持続時間は、望ましい血漿プロファイルを模擬するように設計することができる。
【0144】
マルチ粒子の放出制御組成物を投与した際に生じた血漿プロファイルは、実質的に、2種またはそれ以上のIR剤形の連続投与によって生じた血漿プロファイルに類似しているため、本発明のマルチ粒子の制御放出組成物は、ドセタキセルまたはその類似体に対する耐性に問題がある可能性がある患者にそれらを投与する場合に特に有用である。従って、このマルチ粒子の放出制御組成物は、患者の本組成物における活性成分に対する耐性の発生を減少させたり、または、それを最小化するのに有利である。
【0145】
本発明はさらに、癌の治療方法、具体的には乳房、卵巣、前立腺、および/または、肺癌の治療方法を提供し、本方法は、治療上有効な量の本発明に係る組成物を投与して、ドセタキセルまたはその類似体のパルス型の、または二峰性の投与を提供することを含む。本発明の利点としては、従来の複数回のIR用法に必要な投与の頻度を減少させつつ、パルス型の血漿プロファイルにより生じる利点を維持することが挙げられる。このような投与の頻度の減少により、製剤を少ない頻度で投与すればよいため患者のコンプライアンスの面で有利である。本発明の組成物を利用することによって達成し得る投与頻度の減少は、医療に携わる人が薬物投与に費やす時間を少なくするため医療費の低減に寄与すると予想される。
【0146】
各成分中の活性成分は、同一でもよいし、または異なっていてもよい。例えば、併用療法の場合、第一の成分としてドセタキセルまたはその類似体を含み、第二の成分として第二の活性成分を含む組成物が望ましい場合がある。実際に、2種またはそれ以上の活性成分が互いに適合する場合、それらは同じ成分にに包含されていてもよい。本組成物の成分のいずれかに存在する医薬化合物は、医薬化合物の生物学的利用率または治療効果を改変するために、本組成物のその他の成分に例えばエンハンサー化合物または増感化合物が添加されていてもよい。
【0147】
本明細書で用いられる用語「エンハンサー」は、動物(例えばヒト)のGITを通過する正味の輸送を促進することによって、活性成分の吸収および/または生物学的利用率を強化することができる化合物を意味する。エンハンサーとしては、これらに限定されないが、中鎖脂肪酸;塩、エステル、エーテルおよびそれらの誘導体、例えばグリセリド、および、トリグリセリド;非イオン界面活性剤、例えばエチレンオキシドと脂肪酸とを反応させることによって製造することができるもの、脂肪族アルコール、アルキルフェノール、または、ソルビタン、または、グリセロール脂肪酸エステル;チトクロームP450阻害剤、P糖タンパク質阻害剤など;および、これらの物質の2種またはそれ以上の混合物が挙げられる。
【0148】
各成分に存在するドセタキセルまたはその類似体の比率は、望ましい投与計画に応じて、同一でもよいし、または異なっていてもよい。ドセタキセルまたはその類似体は、治療効果を惹起するのに十分なあらゆる量で第一の成分、および第二の成分に存在する。ドセタキセルまたはその類似体は、場合によって、実質的に光学的に純粋な一方のエナンチオマーか、または、エナンチオマーの混合物、ラセミ体、またはそれ以外の形態のいずれかの形態として存在する可能性がある。
【0149】
各成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出に関する徐放性の特徴は、各成分の組成を改変することによって様々に変更することができ、例えば、賦形剤またはコーティングが存在する場合、そのいずれかを改変することによって変更できる。具体的には、ドセタキセルまたはその類似体の放出は、このようなコーティングが存在する場合、粒子上の放出制御膜の組成および/または量を変化させることによって制御が可能である。放出制御される成分が2種以上存在する場合、これらの成分それぞれの放出制御膜は、同一でもよいし、または異なっていてもよい。同様に、放出制御マトリックス材料の包含によって放出制御が促進される場合、活性成分の放出は、利用されている放出制御マトリックス材料の選択と量によって制御が可能である。放出制御膜は、特定の成分それぞれの望ましい時間の遅延を得るのにのに十分なあらゆる量で各成分中に存在させることができる。放出制御膜は、成分間の望ましいラグタイムが得られるのに十分なあらゆる量で各成分中で予め調節することができる。
【0150】
また、各成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出のラグタイムまたは遅延時間も、各成分の組成を改変することによって様々に変更することができ、例えば、存在する可能性があるあらゆる賦形剤およびコーティングを改変することによって変更することができる。例えば、第一の成分が即時放出される成分の場合、ドセタキセルまたはその類似体は、実質的に投与した直後に放出される。あるいは、第一の成分が、例えば時間を遅らせて即時放出される成分の場合、ドセタキセルまたはその類似体は、実質的に 時間遅延の直後に放出される。第二の成分は、例えば時間を遅らせて即時放出される成分(説明した通り)であってもよく、あるいは、時間を遅らせて持続放出する成分、または、徐放性の成分であってもよく、このような場合、ドセタキセルまたはその類似体は、長期間にわたり制御下で放出される。
【0151】
当業者であれば当然ながら、血漿濃度曲線の実際の性質は、説明した通りのこれらの因子のあらゆる組み合わせによって影響を受けると予想される。具体的には、各成分間におけるドセタキセルまたはその類似体の送達 (従って、作用の開始も)のラグタイムは、各成分の組成、および、コーティング (存在する場合)を変更することによって制御が可能である。従って、各成分の組成(例えば、活性成分の量や性質など)を変更し、ラグタイムのバリエーションを変更することによって、多数の放出および血漿プロファイルが得られる可能性がある。各成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出の間のラグタイムの持続時間、および、各成分からの放出の性質(すなわち即時放出型、持続放出など)に応じて、血漿プロファイルにおけるパルスが十分に離れており、明確に規定されたピークを示すこともあり(例えば、ラグタイムが長い場合)、または、パルスがある程度重複していることもある(例えば、ラグタイムが短い場合)。
【0152】
好ましい実施態様において、本発明に係るマルチ粒子の放出制御組成物は、即時放出される成分、および、少なくとも1種の放出制御される成分を有し、この場合、即時放出される成分は、ドセタキセルまたはその類似体の第一の群を含む粒子を含み、放出制御される成分は、ドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の第二の群、および、それに続く群を含む。第二の、および、それに続く放出制御される成分は、制御放出膜を含んでいてもよい。加えて、またはその代わりに、第二の、および、それに続く放出制御される成分は、放出制御マトリックス材料を含んでいてもよい。実施の際に、このような、例えば単一の放出制御される成分を有するマルチ粒子の放出制御組成物の投与により、特徴的なパルス型を有するドセタキセルまたはその類似体の血漿濃度レベルが生じ、この場合、本組成物の即時放出される成分は、血漿プロファイルにおける第一のピークを形成し、放出制御される成分は、血漿プロファイルにおける第二の ピークを形成する。2種以上の放出制御される成分を含む本発明の実施態様は、血漿プロファイルにおいてさらなるピークを形成する。
【0153】
このような、1回の投与単位の投与から得られた血漿プロファイルは、ドセタキセルまたはその類似体の2回(またはそれ以上)のパルスを、2回(またはそれ以上)の投与単位を投与せずに送達することがが望ましい場合に有利である。
【0154】
腸溶コーティング
ドセタキセルまたはその類似体の放出を望ましい方式で改変するあらゆるコーティング材料が使用可能である。具体的には、本発明の実施において使用するのに適したコーティング材料としては、これらに限定されないが、ポリマーコーティング材料、例えば酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルローストリマレタート(trimaletate)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、アンモニオメタクリラートコポリマー、例えばオイドラギット(Eudragit)(R)RSおよびRLという商標名で販売されているもの、ポリアクリル酸およびポリアクリラートおよびメタクリラートコポリマー、例えばオイドラギット(R)SおよびLという商標名で販売されているもの、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセタート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセタートスクシナート、セラック;ヒドロゲルおよびゲルを形成する材料、例えばカルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムカルメロース、カルシウムカルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、スターチ、および、セルロースベースの架橋ポリマー(ここで、架橋の程度は、水の吸収とポリマーマトリックスの膨張が容易になる程度に低い)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、架橋されたスターチ、微結晶性セルロース、キチン、アミノアクリル−メタクリラートコポリマー(オイドラギット(R)RS−PM,ローム・アンド・ハース)、プルラン、コラーゲン、カゼイン、寒天、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、(膨潤性親水性ポリマー)ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリラート)(分子量約5k〜5,000k)、ポリビニルピロリドン(分子量約10k〜360k)、アニオン性およびカチオン性ヒドロゲル、残留した酢酸塩が少ないポリビニルアルコール、寒天の膨潤性混合物およびカルボキシメチルセルロース、無水マレイン酸と、スチレン、エチレン、プロピレンまたはイソブチレンとのコポリマー、ペクチン(分子量約30k〜300k)、多糖類、例えば寒天、アラビアゴム、カラヤ、トラガカント、アルギンおよびグアール、ポリアクリルアミド、ポリオックス(Polyox)ポリエチレンオキシド(分子量約100k〜5,000k)、アクアキープ(AquaKeep)アクリラートポリマー、ポリグルカンのジエステル、架橋されたポリビニルアルコール、および、ポリN−ビニル−2−ピロリドン、ナトリウムスターチグルコレート(例えば、エキスプロタブ(Explotab)(R);エドワード・マンデルC.社(Edward Mandell C.Ltd.));親水性ポリマー、例えば多糖類、メチルセルロース、ナトリウムまたはカルシウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、ポリエチレンオキシド(例えば、ポリオックス(R),ユニオン・カーバイド)、メチルエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、セルロースブチラート、セルロースプロピオナート、ゼラチン、コラーゲン、スターチ、マルトデキストリン、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、グリセロール脂肪酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、メタクリル酸またはメタクリル酸のコポリマー(例えば、オイドラギット(R),ローム・アンド・ハース)、その他のアクリル系アクリル酸誘導体、ソルビタンエステル、天然ゴム類、レシチン、ペクチン、アルギン酸塩、アルギン酸アンモニウム、ナトリウム、カルシウム、アルギン酸カリウム、プロピレングリコールアルギナート、寒天、および、ゴム類、例えばアラビアゴム、カラヤ、ローカストビーン、トラガカント、カラゲーナン、グアール、キサンタン、スクレログルカン、および、それらの混合物およびブレンドが挙げられる。当業者であれば当然ながら、例えば可塑剤、潤滑剤、溶媒などの賦形剤を、コーティングに添加してもよい。適切な可塑剤としては、例えばアセチル化モノグリセリド;ブチルフタリルブチルグリコラート;酒石酸ジブチル;フタル酸ジエチル;フタル酸ジメチル;エチルフタリルエチルグリコラート;グリセリン;プロピレングリコール;トリアセチン;クエン酸塩;トリプロピオイン;ジアセチン;フタル酸ジブチル;アセチルモノグリセリド;ポリエチレングリコール;ヒマシ油;クエン酸トリエチル;多価アルコール、グリセロール、酢酸エステル、グリセロールトリアセテート、クエン酸アセチルトリエチル、フタル酸ジベンジル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ブチルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ブチルオクチル、アゼライン酸ジオクチル、エポキシ化タレート、トリメリット酸トリイソオクチル、フタル酸ジエチルヘキシル、ジ−n−オクチルフタラート、ジ−i−オクチルフタラート、ジ−i−デシルフタラート、ジ−n−ウンデシルフタラート、ジ−n−トリデシルフタラート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、ジ−2−エチルヘキシルアジパート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアゼラート、ジブチルセバケートが挙げられる。
【0155】
放出制御される成分が放出制御マトリックス材料を含む場合、あらゆる適切な放出制御マトリックス材料、または、適切な放出制御マトリックス材料の組み合わせが使用可能である。このような材料は当業者既知である。本明細書で用いられる用語「放出制御マトリックス材料」としては、親水性ポリマー、疎水性ポリマー、および、それらの混合物が挙げられ、これらは、インビトロまたはインビボでそれらに分散されたドセタキセルまたはその類似体の放出を改変することができる。本発明の実施に適した放出制御マトリックス材料としては、これらに限定されないが、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、および、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレンオキシド、アルキルセルロース、例えばメチルセルロース、および、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、酢酸セルロース、セルロースアセテートブチラート、酢酸フタル酸セルロース、セルロースアセテートトリメリテート、ポリビニルアセテートフタラート、ポリアルキルメタクリラート、ポリ酢酸ビニル、および、それらの混合物が挙げられる。
【0156】
本発明に係るマルチ粒子の放出制御組成物は、パルス型での活性成分の放出を容易にするのに適したあらゆる剤形に包含されていてもよい。典型的には、このような剤形は、即時放出型成分と放出制御される成分とを構成するドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の異なる群のブレンドが可能であり、このようなブレンドは、適切なカプセル、例えばハードまたはソフトゼラチンカプセルに充填される。あるいは、活性成分を含む粒子のそれぞれ異なる群は、小型の錠剤に圧縮してもよく(任意に、追加の賦形剤を含んでいてもよい)、これをその後、適切な比率でカプセルに充填してもよい。その他の適切な剤形は、多層錠剤の形態である。この例において、マルチ粒子の放出制御組成物の第一の成分を一つの層に圧縮し、続いて第二の成分を多層錠剤の第二の層として追加してもよい。本発明の組成物を構成するドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の群を、さらに、迅速に溶解する剤形、例えば発泡性の剤形、または、速溶解性の剤形に含めてもよい。
【0157】
その他の実施態様において、本発明に係る組成物は、異なるインビトロの溶解プロファイルを有する、少なくとも2つのドセタキセルまたはその類似体を含む粒子の群を含む。
好ましくは、実施の際に、本発明の組成物、および、本組成物を含む固形の経口の剤形は、第一の成分に含まれる実質的に全てのドセタキセルまたはその類似体が、第二の成分からドセタキセルまたはその類似体が放出される前に放出されるようにドセタキセルまたはその類似体を放出する。第一の成分がIR成分を含む場合、例えば、IR成分中の実質的に全てのドセタキセルまたはその類似体が放出されるまで、第二の成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出が遅延することが好ましい。第二の成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出は、上記で詳述したように、放出制御膜、および/または、放出制御マトリックス材料の使用によって遅延させることができる。
【0158】
一実施態様において、患者の系からのドセタキセルまたはその類似体の第一の用量のウォッシュアウトを容易にするような用法を提供することによって患者の耐性を最小限にとどめることが望ましい場合、第一の成分に含まれる実質的に全てのドセタキセルまたはその類似体が放出されるまで、第二の成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出を遅延させ、さらに、第一の成分から放出されたドセタキセルまたはその類似体の少なくとも一部が、患者の系から排除されるまでさらに遅延させる。具体的な実施態様において、実施の際の本組成物の第二の成分からのドセタキセルまたはその類似体の放出は、必ずしも全てそうなるとは言えないが、実質的に本組成物の投与の後少なくとも約2時間遅延する。
【0159】
実施の際の本組成物の第二の成分からの薬物の放出は、必ずしも全てそうなるとは言えないが、実質的に、組成物の投与の後少なくとも約4時間、好ましくは約4時間遅延する。
【0160】
E.ドセタキセルのナノ粒子組成物の製造方法
ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、当業界既知のあらゆる適切な方法、例えば磨砕、均質化、沈殿、または、超臨界流体を用いた粒子製造技術を用いて製造することができる。典型的なナノ粒子組成物の製造方法は、米国特許第5,145,684号において説明されている。また、ナノ粒子組成物の製造方法も、米国特許第5,518,187号で、“Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;米国特許第5,718,388号で、“Continuous Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;米国特許第5,862,999号で、“Method of Grinding Pharmaceutical Substances”として;米国特許第5,665,331号で、“Co−Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents with Crystal Growth Modifiers”として;米国特許第5,662,883号で、“Co−Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents with Crystal Growth Modifiers”として;米国特許第5,560,932号で、“Microprecipitation of Nanoparticulate Pharmaceutical Agents”として;米国特許第5,543,133号で、“Process of Preparing X−Ray Contrast Compositions Containing Nanoparticles”として;米国特許第5,534,270号で、“Method of Preparing Stable Drug Nanoparticles”として;米国特許第5,510,118号で、“Process of Preparing Therapeutic Compositions Containing Nanoparticles”として;および、米国特許第5,470,583号で、“Method of Preparing Nanoparticle Compositions Containing Charged Phospholipids to Reduce Aggregation”としてが説明されており、これらはいずれもこの参照により具体的に開示に含まれる。
【0161】
得られたナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物または分散液は、固体、半固体、または液状の製剤で利用することができ、例えば、液状分散体、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム、放出制御製剤、速溶製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、カプセル、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、即時放出製剤と放出制御製剤とを組み合わせた製剤などで利用することができる。
【0162】
典型的な磨砕または均質化方法は、以下を含む:(1)液状の分散媒中にドセタキセルまたはその類似体を分散すること;および、(2)ドセタキセルまたはその類似体の粒度を、約2000nm未満の有効平均粒度に機械的に減少させること。粒度を減少させる前に、その最中に、または、その後のいずれかに、表面安定剤を添加する。粒度を減少させる工程の際に、液状の分散媒のpHは、好ましくは約5.0〜約7.5の範囲内に維持する。好ましくは、粒度を減少させる工程に用いられる分散媒は水性であるが、ドセタキセルまたはその類似体の可溶性や分散性が不十分なあらゆる媒体も使用可能である。水性分散液以外の媒体の例としては、これらに限定されないが、ベニバナ油、エタノール、t−ブタノール、グリセリン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヘキサン、または、グリコールが挙げられる。
【0163】
ドセタキセルまたはその類似体の粒度を減少させる機械的な力を提供する有効な方法としては、ボールミル、媒体ミル、および、例えばマイクロフルイダイザー(Microfluidizer(R))装置(マイクロフルイディスク社(Microfluidics Corp.))を用いた均質化が挙げられる。ボールミルは、粉砕媒体、薬物、安定剤および液体を用いる低エネルギーでの粉砕工程である。媒体が落ちて押し付けられることによって粒度が減少するような最適な速度で回転する粉砕容器に、材料を置く。粒子が減少するエネルギーは、重力と摩擦粉砕用媒体の質量によって提供されるため、用いられる媒体は高密度を有していなければならない。
【0164】
媒体ミルは、高エネルギーの粉砕工程である。ドセタキセルまたはその類似体、表面安定剤および液体を貯蔵容器に置き、媒体と回転軸/インペラーを含むチャンバー中で再循環させる。回転軸が媒体を撹拌することによって、ドセタキセルまたはその類似体、および、表面安定剤に押し付ける力と剪断力がかかり、それによってそれらのサイズが減少する。
【0165】
均質化は、粉砕媒体を用いない技術である。ドセタキセルまたはその類似体、表面安定剤および液体(または、ドセタキセルまたはその類似体および液体、表面安定剤は粒度の減少の後に添加される)のストリームは加工ゾーンに推進され、この加工ゾーンは、マイクロフルイダイザー(R)装置において相互作用チャンバーと呼ばれる。処理しようとする生成物をポンプに導入して、外に押し出す。マイクロフルイダイザー装置のプライミングバルブで、ポンプからの空気をパージする。ポンプが生成物で充填されたら、プライミングバルブを閉じて、生成物を相互作用チャンバーを通して押し出す。相互作用チャンバーの幾何学的配置によって、ドセタキセルまたはその類似体の粒度の減少に関与する強力な剪断力、衝撃および空洞形成が得られる。具体的に言えば、相互作用チャンバーの内部で、加圧された生成物は2つのストリームに分けられ、かなりの高速に促進される。次に、形成されたジェットを互いに対面させて、相互作用ゾーン内で衝突させる。得られた生成物は、極めて微細な、かつ一様の粒子または液滴サイズを有する。また、マイクロフルイダイザー(R)装置は、生成物を冷却させる熱交換器も提供する。Bosch等の米国特許第5,510,118号(具体的に参照により開示に含まれる)は、400nmより小さいサイズの粒子を形成するマイクロフルイダイザー(R)を用いた方法について言及している。
【0166】
Pace等の公開された国際特許出願番号WO97/144407(1997年4月24日に公開)は、平均サイズ100nm〜300nmを有する水不溶性の生物学的に活性な化合物の粒子を開示しており、この粒子は、化合物を溶液に溶解させ、次に、適切な表面安定剤の存在下で溶液を圧縮ガス、液体または超臨界流体に噴霧することによって製造される。
【0167】
粒度を減少させる方法を用いて、ドセタキセルまたはその類似体の粒度を、約2000nm未満の有効平均粒度に減少させる。
ドセタキセルまたはその類似体を、それらが実質的に不溶性である液状媒体に添加して、予備混合物を形成してもよい。液状媒体中のドセタキセルまたはその類似体の濃度は、約5〜約60%、約15〜約50%(w/v)、または、約20〜約40%の範囲で様々であってよい。表面安定剤は予備混合物に存在させてもよいし、または、それらをドセタキセルまたはその類似体の分散液に添加してもよく、それに続いて粒度を減少させる。表面安定剤の濃度は、約0.1〜約50重量%、約0.5〜約20重量%、または、約1〜約10重量%の範囲で様々であってよい。
【0168】
予備混合物を直接用いて、それらを機械的な手段で処理することによって、分散液中でドセタキセルまたはその類似体の平均粒度を約2000nm未満に減少させることができる。摩擦粉砕するためにボールミルが用いられる場合、予備混合物を直接用いることが好ましい。あるいは、ドセタキセルまたはその類似体と表面安定剤は、適切な撹拌手段、例えばコウルズ(Cowles)タイプのミキサーを用いて、肉眼で見えるような凝集がない均一な分散液が観察されるまで液状媒体中に分散させてもよい。再循環させた媒体ミルを摩擦粉砕に用いる場合、予備混合物は、このような予備的な磨砕による分散工程で処理することが好ましい。
【0169】
ドセタキセルまたはその類似体の粒度を減少させるために適用される機械的な手段は、都合のよい形態としては、分散ミルの形態をとることができる。適切な分散ミルとしては、ボールミル、磨砕ミル、振動ミル、および、媒体ミル、例えばサンドミル、および、ビーズミルが挙げられる。好ましくは媒体ミルであり、これは望ましい粒度の減少を提供するのに必要な磨砕時間が比較的短いためである。媒体ミルの場合、予備混合物の見かけの粘度は、好ましくは、約100〜約1,000センチポイズであり、ボールミルの場合、予備混合物の見かけの粘度は、好ましくは、約1〜約100センチポイズである。このような範囲は、効率的な粒度の減少と、媒体の浸食との最適なバランスを得るのに役立つ。
【0170】
摩擦粉砕時間は広範囲に様々であってよく、主に、具体的な機械的な手段と選択された加工条件に依存する。ボールミルの場合、5日まで、または、それより長い時間のプロセシング時間が必要とされる場合がある。あるいは、高剪断媒体ミルを使用する場合、1日未満のプロセシング時間(滞留時間は1分間〜数時間)も可能である。
【0171】
ドセタキセルまたはその類似体の粒子は、粒度を著しく落とさないような温度で粒度を減少させることができる。一般的には、約30℃未満から約40℃未満までの加工温度が好ましい。必要に応じて、加工装置は、従来の冷却装置を用いて冷却してもよい。例えば、ジャケットを付けること、または、氷水中への磨砕チャンバーの浸漬による温度のコントロールが考慮される。一般的に、本発明の方法は、都合のよい形態としては、周囲温度条件下で、さらに、安全かつ磨砕加工に有効な加工圧力で行われる。周囲条件下での加工圧力は、ボールミル、磨砕ミル、および、振動ミルの特徴である。
【0172】
粉砕用媒体
粒度を減少させる工程のための粉砕用媒体は、好ましくは球状または微粒子状であり、約3mm未満より好ましくは約1mm未満の平均粒度を有する形態の硬い媒体から選択することができる。このような媒体は、望ましくは、より短いプロセシング時間で本発明の粒子を提供することができ、さらに、磨砕装置の摩耗をより少なくすることができる。粉砕用媒体のための材料の選択は、重要とは考えられない。典型的な粉砕のための材料は、酸化ジルコニウム、例えば、マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、セラミック、ステンレス鋼、チタニア、アルミナで安定化された95%ZrO、イットリウムで安定化された95%ZrO、および、ガラス粉砕用媒体である。
【0173】
粉砕用媒体は、好ましくは実質的に球状であり、実質的に高分子樹脂からなる粒子、例えばビーズを含んでいてもよい。あるいは、粉砕用媒体は、その上に高分子樹脂のコーティングを有するコアを含んでいてもよい。本発明の一実施態様において、高分子樹脂は、約0.8〜約3.0g/cm3の密度を有していてもよい。
【0174】
一般的に、適切な高分子樹脂は、化学的および物理的に不活性であり、金属、溶媒および単量体を実質的に含まず、さらに、それらが粉砕中に削られたり、または押し潰されないようにするのに十分な硬度と破砕性を有する。適切な高分子樹脂としては、架橋されたポリスチレン、例えばジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレン;スチレンコポリマー;ポリカーボネート;ポリアセタール、例えばデルリン(Delrin(R);E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I. du Pont de Nemours and Co.));塩化ビニルポリマーおよびコポリマー;ポリウレタン;ポリアミド;ポリ(テトラフルオロエチレン)、例えば、テフロン(登録商標)(Teflon(R);E.I.デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー)、および、その他のフルオロポリマー;高密度ポリエチレン;ポリプロピレン;セルロースエーテル、および、エステル例えば酢酸セルロース;ポリヒドロキシメタクリラート;ポリヒドロキエチルアクリラート;および、シリコーンを含むポリマー、例えばポリシロキサンなどが挙げられる。このような高分子は、生分解性でもよい。典型的な生分解性ポリマーとしては、ポリ(ラクチド)、ラクチドおよびグリコリドのポリ(グリコリド)コポリマー、ポリ無水物、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリ(イミノカーボネート)、ポリ(N−アシルヒドロキシプロリン)エステル、ポリ(N−パルミトイルヒドロキシプロリン)エステル、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、ポリ(オルトエステル)、ポリ(カプロラクトン)、および、ポリ(ホスファゼン)が挙げられる。生分解性ポリマーによって、媒体からの汚染それ自身を、体外に除去することができる生物学的に許容できる生成物にインビボで有利に代謝させることができる。
【0175】
粉砕用媒体のサイズは、好ましくは、約0.01〜約3mmの範囲である。微細な粉砕のためには、粉砕用媒体のサイズは、好ましくは約0.02〜約2mm、より好ましくは約0.03〜約1mmである。
【0176】
好ましい粉砕工程において、ドセタキセルまたはその類似体の粒子は連続的に製造される。このような方法は、磨砕 チャンバーにドセタキセルまたはその類似体を連続的に導入し、チャンバー中でドセタキセルまたはその類似体と、粉砕用媒体とを接触させ、それと平行して粒度を減少させ、磨砕チャンバーからナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の活性成分を連続的に取り出すことを含む。
【0177】
粉砕用媒体は、第二の工程において、従来の分離技術を用いて磨砕したナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体から分離され、このような分離技術としては、例えば単純なろ過、メッシュフィルターまたはスクリーンによる篩い分けなどが挙げられる。また、その他の分離技術、例えば遠心分離も使用可能である。
【0178】
無菌製剤の製造
注射用組成物の開発には、無菌製剤の生産が必要である。本発明の製造法は、滅菌懸濁液の一般的な既知の製造法に類似している。一般的な滅菌懸濁液の製造法のフローチャートは以下に示す通りである:
【0179】
【化3】
【0180】
括弧内の任意の工程で示したように、この加工のうちいくつかは、粒度を減少させる方法、および/または、滅菌方法に依存する。例えば、媒体の調整は、媒体を使用しない磨砕方法には必要ではない。化学的および/または物理的な不安定性のために最終的な滅菌が実行不可能な場合、防腐加工を用いてもよい。
【0181】
F.治療方法
ヒトの治療において、インビボで必要な治療的な量の薬物を送達し、一定した方式で薬物を生物的に利用可能にするようなドセタキセルまたはその類似体の剤形を提供することが重要である。従って、本発明のその他の形態は、抗癌治療を必要とする哺乳動物(例えばヒト)の治療方法、例えば抗腫瘍や抗白血病の治療方法を提供し、本方法は、そのような哺乳動物に、本発明のドセタキセルまたはその類似体のナノ粒子製剤を投与することを含む。
【0182】
本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物で治療することができる典型的な癌の種類としては、これらに限定されないが、乳房、肺(例えば、これらに限定されないが、非小細胞肺癌)、卵巣、前立腺、充実性腫瘍(例えば、これらに限定されないが、頭頚部、乳房、肺、胃腸、尿生殖器、黒色腫、および、肉腫)、原発性中枢神経系新生物、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、未分化星状細胞腫、退形成性髄膜腫、未分化希突起グリオーマ、脳の悪性血管外皮腫、下咽頭扁平上皮癌、喉頭扁平上皮癌、白血病、唇と口腔の扁平上皮癌、上咽頭扁平上皮癌、中咽頭扁平上皮癌、子宮頚癌、および、膵臓癌が挙げられる。
【0183】
本発明の一実施態様において、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の有効な投与量は、それと同等のドセタキセルの非ナノ粒子製剤、例えばタキソテール(R)が必要とする量より少ない。タキソテール(R)(ドセタキセル)の処方計画は、20mg(0.5mL)、および、80mg(2.0mL)を含むバイアルの形態で利用可能であるが、治療しようとする癌の種類に応じて様々である。乳癌の場合、推奨される投与量は、3週間毎に、1時間かけて静脈内に60〜100mg/m2である。非小細胞肺癌の場合、タキソテール(R)は、先行の白金系化学療法がうまくいかなかった後にのみ用いられる。推奨される投与量は、3週間毎に、1時間かけて静脈内に75mg/m2である。従って、本発明の一実施態様において、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の投与量は、約100mg/m2未満、約90mg/m2未満、約80mg/m2未満、約70mg/m2未満、約60mg/m2未満、約50mg/m2未満、約40mg/m2未満、約30mg/m2未満、約20mg/m2未満、または、約10mg/m2未満である。
【0184】
さらに本発明のその他の実施態様において、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物は、それと同等のドセタキセルの非ナノ粒子製剤、例えばタキソテール(R)と比較して有意に高い用量で投与することができる。以下の実施例16で説明されているように、典型的なドセタキセルのナノ粒子製剤は、500mg/kgのインビボでの最大耐量を示したが、それに対して、タキソテール(R)の最大耐量は40mg/kgであった。従って、本発明のその他の実施態様において、本発明のナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の投与量は、約50mg/m2より多い、約60mg/m2より多い、約70mg/m2より多い、約80mg/m2より多い、約90mg/m2より多い、約100mg/m2より多い、約110mg/m2より多い、約120mg/m2より多い、約130mg/m2より多い、約140mg/m2より多い、約150mg/m2より多い、約160mg/m2より多い、約170mg/m2より多い、約180mg/m2より多い、約190mg/m2より多い、約200mg/m2より多い、約210mg/m2より多い、約220mg/m2より多い、約230mg/m2より多い、約240mg/m2より多い、約250mg/m2より多い、約260mg/m2より多い、約270mg/m2より多い、約280mg/m2より多い、約290mg/m2より多い、約300mg/m2より多い、約310mg/m2より多い、約320mg/m2より多い、約330mg/m2より多い、約340mg/m2より多い、または、約350mg/m2より多い。
【0185】
本発明の具体的に有利な特徴としては、本発明の医薬製剤は、投与した際に、活性成分の予想以上に迅速な吸収を示すことが挙げられる。本発明の一実施態様において、ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物(例えば注射用組成物)は、ポリソルベート、エタノール、または、それらの組み合わせを含まない。加えて、注射製剤に製剤化される場合、本発明の組成物は、注射される体積が少なくても高濃度を達成できる。本発明のドセタキセルまたはその類似体の注射用組成物は、ボーラス注射で、または、適切な期間にわたる低速での注入によって投与することができる。
【0186】
当業者であれば当然ながら、ドセタキセルまたはその類似体の有効量は経験的に決定することができ、そのままの形態で用いてもよいし、または、製薬上許容できる塩、エステルまたはプロドラッグの形態このような形態が存在する場合、そのような形態で用いてもよい。本発明の注射用および経口用組成物における実際のドセタキセルまたはその類似体の投与量レベルは、特定の組成物および投与方法に関して望ましい治療効果を得るのに効果的なドセタキセルまたはその類似体の量が達成されるならばどのような量であってもよい。それゆえに、選択された投与量レベルは、望ましい治療効果、投与経路、投与されたドセタキセルまたはその類似体の効力、望ましい治療の持続時間、および、その他の要因に依存する。
【0187】
投与単位 組成物は、1日用量を構成するのに用いられる一日用量の約数からなる量を含んでいてもよい。しかし当然ながら、ある特定の患者に特定した用量レベルは、多種多様な要因に依存すると予想され、このような要因としては、達成しようとする細胞性の応答または生理学的な応答のタイプおよび程度;用いられる特定の物質または組成物の活性;用いられる特定の物質または組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康状態、性別および食事;投与時間、投与経路、および、物質の排出速度;治療の持続時間;薬物を特定の物質を組み合わて用いるのか、または、同時に用いるのか;および、医療分野において周知の類似の要因が挙げられる。
【0188】
本発明を説明するために、以下の実施例を示す。しかし当然ながら、本発明の本質および範囲は、これらの実施例で説明される特定の条件または詳細に限定されなが、それに続く特許請求の範囲によってのみ限定されることとする。本明細書に記載された米国特許など全ての参考文献は、本明細書において参照されることにより具体的に開示に含まれる。
【0189】
実施例
実施例1
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0190】
図1は、磨砕していないドセタキセル(無水)(カミダ社)の光学顕微鏡写真を示しており、従来のナノ粒子状ではないドセタキセル(無水)の平均粒度が212,060nmであり、D50が175,530nmであり、D90が、435,810nmであったことを示す。
【0191】
5%(w/w)ドセタキセル(カミダ社)の水性分散液を、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した。次に、この混合物を、ナノミル0.01(NanoMill(R)0.01)(ナノミル・システムズ(NanoMill Systems),キングオブプロシア,ペンシルベニア州;例えば、米国特許第6,431,478号を参照)の10mlのチャンバーに、220ミクロンのポリミル(PolyMill(R))摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル(Dow Chemical))(媒体の充填は89%)と共に添加した。この混合物を2500rpmの速度で180分間磨砕した。
【0192】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910(Horiba LA910)粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、170nmであり、D50は、145nmであり、D90は、260nmであった。図2は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0193】
この結果より、得られた平均粒度が170nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例2
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0194】
5%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、および、0.1%(w/w)レシチンと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を、5500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0195】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、166nmであり、D50は、147nmであり、D90は、242nmであった。図3は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0196】
この結果より、得られた平均粒度が166nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例3
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0197】
5%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム(w/w)、および、20%(w/w)デキストロースと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を、5500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0198】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、165nmであり、D50は、142nmであり、D90は、248nmであった。図4は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0199】
この結果より、得られた平均粒度が165nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例4
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0200】
1%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、0.25%(w/w)プラスドン(R)S630、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した。次に、この混合物を、低いエネルギーのローラーミル(U.S.ストーンウェア(U.S.STONEWARE),マーワー,ニュージャージー州)を用いて、15mLのボトル中で、0.5mmのセラミック媒体(東ソー(Tosoh),セラミック事業部)(媒体の充填は50%)と共に磨砕した。この混合物を、130rpmの速度で72時間磨砕した。
【0201】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、コールターN4M(Coulter N4M)粒度解析器)を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、209nmであった。図5は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0202】
この結果より、得られた平均粒度が209nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例5
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0203】
1%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、0.25%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した。次に、この混合物を、低いエネルギーのローラーミル(U.S.ストーンウェア,マーワー,ニュージャージー州)を用いて、15mLのガラスボトル中で、0.5mmのセラミック媒体(東ソー(Tosoh),セラミック事業部)(媒体の充填は50%)と共に磨砕した。この混合物を130rpmの速度で72時間磨砕した。
【0204】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、コールターN4M粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、253nmであった。図6は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0205】
この結果より、得られた平均粒度が253nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例6
この実施例の目的は、無水ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0206】
1%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、0.25%(w/w)プルロニック(R)F127と混合した。次に、この混合物を、低いエネルギーのローラーミル(U.S.ストーンウェア(U.S.STONEWARE),マーワー,ニュージャージー州)を用いて、15mLのガラスボトル中で、0.5mmのセラミック媒体(東ソー(Tosoh),セラミック事業部)(媒体の充填は50%)と共に磨砕した。この混合物を、130rpmの速度で72時間磨砕した。
【0207】
磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、56.42ミクロンであり、D50は、65.55ミクロンであり、D90は、118.5ミクロンであった。続いて、磨砕したサンプルの粒度が大きかったため、このサンプルを30秒超音波破砕し、凝集したドセタキセル粒子が存在するかどうかを決定した。30秒超音波破砕した後、磨砕したドセタキセルの平均粒度は、1.468ミクロンであり、D50は、330nmであり、D90は、5.18ミクロンであった。図7は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0208】
この結果より、用いられた薬物と表面安定剤の特定の濃度において、プルロニック(R)F127は、無水ドセタキセルをうまく安定化しなかったことがわかる。
実施例7
この実施例の目的は、ドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を製造することである。
【0209】
図8は、磨砕していないドセタキセル三水和物の光学顕微鏡写真を示す。磨砕していないドセタキセル三水和物は、61,610nmの平均粒度を有し、D50は、51,060nmであり、D90は、119,690nmであった。
【0210】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物(カミダ社)の水性分散液を、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州;例えば、米国特許第6,431,478号を参照)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0211】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、152nmであり、D50は、141nmであり、D90は、202nmであった。図9は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0212】
この結果より、得られた平均粒度が152nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例8
この実施例の目的は、ドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を製造することである。
【0213】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性分散液を、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を、2900rpmの速度で60分間磨砕した。
【0214】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、113nmであり、D50は、109nmであり、D90は、164nmであった。図10は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0215】
この結果より、得られた平均粒度が164nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例9
この実施例の目的は、実施例8で製造されたドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤の長期安定性を決定することである。
【0216】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物、1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースを含む実施例8で製造されたドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を低温(15℃未満)で6ヶ月保存した。
【0217】
6ヶ月の貯蔵期間の後、ドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。ドセタキセルの平均粒度は、147nmであり、D50は、136nmであり、D90は、205nmであった。図11は、低温で6ヶ月貯蔵した後のドセタキセル組成物の光学顕微鏡写真を示す。
【0218】
その結果から、本ドセタキセルのナノ粒子組成物は、有意な粒度の上昇を起こすことなく長期間保存することができることが示される。
実施例10
この実施例の目的は、ドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を製造することである。
【0219】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性分散液を、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%(w/w)レシチン、および、20%(w/w)デキストロースと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を、2900rpmの速度で75分間磨砕した。
【0220】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、144nmであり、D50は、137nmであり、D90は、193nmであった。図12は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0221】
この結果より、得られた平均粒度が144nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例11
この実施例の目的は、実施例10で製造されたドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤の長期安定性を試験することである。
【0222】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物、1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%レシチン(w/w)、および、20%(w/w)デキストロースを含む実施例10で製造されたドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を低温(15℃未満)で6ヶ月保存した。
【0223】
6ヶ月の貯蔵期間の後、ドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。ドセタキセルの平均粒度は、721nmであり、D50は、371nmであり、D90は、1.76ミクロンであった。図13は、低温で6ヶ月貯蔵した後のドセタキセル組成物の光学顕微鏡写真を示す。
【0224】
その結果から、ドセタキセルのナノ粒子組成物は、2ミクロン未満の有効平均粒度を維持しながら長期間保存することができることが示される。
実施例12
この実施例の目的は、ドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を製造することである。
【0225】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性分散液を、1.25%(w/w)TPGS(ビタミンE PEG)、および、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で120分間磨砕した。
【0226】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、134nmであり、D50は、129nmであり、D90は、179nmであった。図14は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0227】
この結果より、得られた平均粒度が134nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例13
この実施例の目的は、ドセタキセル三水和物のナノ粒子製剤を製造することである。
【0228】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性分散液を、1.25%(w/w)プルロニック(R)F108、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、10%(w/w)デキストロース(w/w)と混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で120分間磨砕した。
【0229】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、632nmであり、D50は、172nmであり、D90は、601nmであった。図15は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0230】
この結果より、得られた平均粒度が632nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例14
この実施例の目的は、ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0231】
5%(w/w)ドセタキセルの水性分散液を、1.25%(w/w)プラスドン(R)S630、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0232】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、142nmであり、D50は、97.8nmであり、D90は、142nmであった。図16は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0233】
この結果より、得られた平均粒度が142nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例15
この実施例の目的は、ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0234】
5%(w/w)ドセタキセルの水性分散液を、1.25%(w/w)HPMC、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mlのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0235】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、157nmであり、D50は、142nmであり、D90は、207nmであった。図17は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0236】
この結果より、得られた平均粒度が157nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例16
この実験の目的は、ドセタキセルのナノ粒子製剤の最大耐量を決定することである。
【0237】
ドセタキセルのナノ粒子製剤の急性毒性を評価して、特徴付けるために、2種類のナノ粒子分散液を利用した。(1)表面安定剤としてPVP、および、デオキシコール酸ナトリウムを含むドセタキセルのナノ粒子分散液(実施例8で製造された);および、(2)表面安定剤としてトゥイーン(R)80、および、レシチンを含むドセタキセルのナノ粒子分散液(実施例10で製造された)。
【0238】
両方のドセタキセルのナノ粒子製剤を、様々な用量でマウスに静脈内投与した。両方のドセタキセルのナノ粒子製剤の最大耐量(MD)は、500mg/kgであった。
また、ドセタキセルのナノ粒子製剤と平行して、市販のナノ粒子状ではないドセタキセル製品のタキソテール(R)も試験した。タキソテール(R)のMDは、40mg/kgであった。
【0239】
従って、ドセタキセルのナノ粒子製剤は十分許容され、従来のドセタキセルの非ナノ粒子製剤よりも有意に高い用量で投与することができる。
実施例17
この実施例の目的は、ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0240】
5%(w/w)無水ドセタキセルの水性分散液を、1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mLのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で5.5時間磨砕した。
【0241】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、271nmであり、D90は、480nmであった。図18は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0242】
この結果より、得られた平均粒度が271nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
実施例18
この実施例の目的は、ドセタキセルのナノ粒子製剤を製造することである。
【0243】
5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性分散液を、1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した。次に、この混合物を、ナノミル(R)0.01(ナノミル・システムズ,キングオブプロシア,ペンシルベニア州)の10mLのチャンバー中で、220ミクロンのポリミル(R)摩擦粉砕用媒体(ダウ・ケミカル)と共に(媒体の充填は89%)磨砕した。この混合物を2500rpmの速度で60分間磨砕した。
【0244】
磨砕した後、磨砕したドセタキセル粒子の粒度を、脱イオン蒸留水中で、ホリバLA910粒度解析器を用いて測定した。磨砕したドセタキセルの平均粒度は、174nmであり、D90は、252nmであった。図19は、磨砕したドセタキセルの光学顕微鏡写真を示す。
【0245】
この結果より、得られた平均粒度が174nmの安定なドセタキセルのナノ粒子製剤がうまく製造されたことが実証される。
当業者にはよく知られていると予想されるが、本発明の本質または範囲から逸脱することなく本発明の方法および組成物に様々な変更や改変を施すことができる。従って、本発明は、添付の請求項およびそれらに等価なもの範囲内に入る本発明の変更や改変も含むことを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】磨砕していないドセタキセル(無水)の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図2】1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図3】1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、および、0.1%(w/w)レシチンと混合した5%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図4】1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図5】0.25%(w/w)プラスドン(R)S630、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した1%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図6】0.25%(w/w)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および、0.01%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した1%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図7】0.25%(w/w)プルロニック(R)F127と混合した1%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図8】磨砕していないドセタキセル三水和物の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図9】1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K12、および、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム(デオキシコール酸Na)と混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図10】1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図11】1.25%(w/w)ポリビニルピロリドン(PVP)K17、0.25%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図12】1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%(w/w)レシチン、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図13】1.25%(w/w)トゥイーン(R)80、0.1%(w/w)レシチン、および、20%(w/w)デキストロースと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図14】1.25%(w/w)TPGS(ビタミンE PEG)、および、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図15】1.25%(w/w)プルロニック(Pluronic)(R)F108、0.1%(w/w)デオキシコール酸ナトリウム、および、10%(w/w)デキストロース(w/w)と混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図16】1.25%(w/w)プラスドン(R)S630、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した5%(w/w)ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図17】1.25%(w/w)HPMC、および、0.05%(w/w)ジオクチルスルホスクシナート(DOSS)と混合した5%(w/w)ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図18】1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)無水ドセタキセルの水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図19】1%(w/w)アルブミン、および、0.5%(w/w)デオキシコール酸ナトリウムと混合した5%(w/w)ドセタキセル三水和物の水性ナノ粒子分散液の位相光学を利用した光学顕微鏡写真(100倍)である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約2000nm未満の有効平均粒度を有するドセタキセルまたはその類似体の粒子;および、(b)少なくとも1種の表面安定剤を含む組成物。
【請求項2】
前記ドセタキセルまたはその類似体は、結晶相、非晶相、半結晶性の相、半非晶質の相、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ドセタキセルまたはその類似体の粒子の有効平均粒度は、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、および、約50nm未満からなる群より選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は:
(a)経口、肺、直腸、眼内、結腸、非経口、嚢内、膣内、腹膜内、局所、口腔、鼻および外用投与からなる群より選択される投与用に製剤化されるか;
(b)液状分散剤、固体分散剤、液体充填カプセル、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム、凍結乾燥製剤、錠剤、カプセル、多粒子充填カプセル、多粒子で構成される錠剤、圧縮錠剤、および、ドセタキセルまたはその類似体の腸溶性コーティングされたビーズが充填されたカプセルからなる群より選択される剤形に製剤化されるか;
(c)放出制御製剤、速溶製剤、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、および、即時放出製剤と放出制御製剤とを組み合わせた製剤からなる群より選択される剤形に製剤化されるか;または、
(d)(a)、(b)および(c)のいずれかの組み合わせである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、注射製剤である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
(a)前記表面安定剤は、ドセタキセルまたはその類似体と、少なくとも1種の表面安定剤との合計の総乾燥重量(ただし、その他の賦形剤は含まない)に基づき、約0.5重量%〜約99.999重量%、約5.0重量%〜約99.9重量%、および、約10重量%〜約99.5重量%からなる群より選択される量で存在するか;
(b)前記ドセタキセルまたはその類似体は、ドセタキセルまたはその類似体と、少なくとも1種の表面安定剤との合計重量(ただし、その他の賦形剤は含まない)に基づき、約99.5重量%〜約0.001重量%、約95重量%〜約0.1重量%、および、約90重量%〜約0.5重量%からなる群より選択される量で存在するか;または、
(c)(a)および(b)の組み合わせである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記表面安定剤は、アニオン性表面安定剤、カチオン性表面安定剤、両性イオン性表面安定剤、非イオン性表面安定剤、および、イオン性表面安定剤からなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の表面安定剤は、塩化セチルピリジニウム、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、ホスファチド、デキストラン、グリセロール、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、フタル酸ヒプロメロース、非晶質セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレンオキシドとホルムアルデヒドとを含む4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー、ポロキサマー;ポロキサミン(Poloxamine)、荷電リン脂質、ジオクチルスルホスクシナート、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールポリエーテルスルホナート、ステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロースとの混合物、p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)、デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシルβ−D−グルコピラノシド;n−デシルβ−D−マルトピラノシド;n−ドデシルβ−D−グルコピラノシド;n−ドデシルβ−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド;n−ヘプチルβ−D−チオグルコシド;n−ヘキシルβ−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノイルβ−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−β−D−グルコピラノシド;オクチルβ−D−チオグルコピラノシド;リゾチーム、PEG−リン脂質、PEG−コレステロール、PEG−コレステロール誘導体、PEG−ビタミンA、PEG−ビタミンE、酢酸ビニルとビニルピロリドンとのランダムコポリマー、カチオン性ポリマー、カチオン性バイオポリマー、カチオン性多糖類、カチオン性セルロース系、カチオン性アルギン酸塩、カチオン性の非高分子化合物、カチオン性のリン脂質、カチオン脂質、ポリメチルメタクリラートトリメチルアンモニウム臭化物、スルホニウム化合物、ポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリラートジメチル硫酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物、ホスホニウム化合物、第四級アンモニウム化合物、ベンジル−ジ(2−クロロエチル)エチルアンモニウム臭化物、ヤシ脂肪酸トリメチルアンモニウム塩化物、ヤシ脂肪酸トリメチルアンモニウム臭化物、ヤシ脂肪酸メチルジヒドロキシエチルアンモニウム塩化物、ヤシ脂肪酸メチルジヒドロキシエチルアンモニウム臭化物、デシルトリエチルアンモニウム塩化物、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物/臭化物、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物/臭化物、ヤシ脂肪酸ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物、ヤシ脂肪酸ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム臭化物、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ラウリルジメチルベンジルアンモニウム臭化物、ラウリルジメチル(エテンオキシ)4アンモニウム塩化物、ラウリルジメチル(エテンオキシ)4アンモニウム臭化物、N−アルキル(C14〜18)ジメチルベンジルアンモニウム塩化物、N−アルキル(C14〜18)ジメチルベンジルアンモニウム塩化物、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物一水化物、ジメチルジデシルアンモニウム塩化物、N−アルキル、および、(C12〜14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウム塩化物、ハロゲン化トリメチルアンモニウム、アルキル−トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル−ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩化物、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、エトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウム塩化物、N−ジデシルジメチルアンモニウム塩化物、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物一水化物、N−アルキル(C12〜14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウム塩化物、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウム塩化物、ラウリルトリメチルアンモニウム塩化物、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩化物、アルキルベンジルジメチルアンモニウム臭化物、C12トリメチルアンモニウム臭化物、C15トリメチルアンモニウム臭化物、C17トリメチルアンモニウム臭化物、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウム塩化物、ポリ−ジアリルジメチルアンモニウム塩化物(DADMAC)、ジメチルアンモニウム塩化物、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリセチルメチルアンモニウム塩化物、デシルトリメチルアンモニウム臭化物、ドデシルトリエチルアンモニウム臭化物、テトラデシルトリメチルアンモニウム臭化物、メチルトリオクチルアンモニウム塩化物、POLYQUAT10TM、臭化テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム臭化物、コリンエステル、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物、臭化セチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物の塩、MIRAPOLTM、ALKAQUATTM、アルキルピリジニウム塩;アミン、アミン塩、酸化アミン、イミドアゾリニウム塩、プロトン化第四級アクリルアミド、メチル化された第四級化合物ポリマー、および、カチオン性グアールからなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ドセタキセルまたはその類似体以外の活性物質を1種またはそれ以上さらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ドセタキセルまたはその類似体の粒子が、哺乳動物に投与する際に、粒子の有効平均粒度が、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、および、約50nm未満からなる群より選択されるように再分散される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の有効平均粒度が、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、および、約50nm未満からなる群より選択されるように、生体に関連する媒体中に再分散される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記生体に関連する媒体は、水、電解質水溶液、塩の水溶液、酸の水溶液、塩基の水溶液、および、それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ドセタキセルまたはその類似体のTmaxは、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、同じ投与量で投与されたナノ粒子状ではないドセタキセルまたはその類似体の製剤のTmaxより低い、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記Tmaxは、同じ投与量で投与されたナノ粒子状ではないドセタキセルまたはその類似体の製剤によって示されるTmaxの、約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、および、約5%以下からなる群より選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、絶食した被検体に投与した後、約6時間未満、約5時間未満、約4時間未満、約3時間未満、約2時間未満、約1時間未満、および、約30分未満からなる群より選択されるTmaxを示す、請求項13または請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ドセタキセルまたはその類似体のCmaxは、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、同じ投与量で投与されたナノ粒子状ではないドセタキセルまたはその類似体の製剤のCmaxより大きい、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記Cmaxは、同じ投与量で投与されたドセタキセルまたはその類似体の非ナノ粒子製剤によって示されるCmaxよりも、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約600%、少なくとも約700%、少なくとも約800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約1100%、少なくとも約1200%、少なくとも約1300%、少なくとも約1400%、少なくとも約1500%、少なくとも約1600%、少なくとも約1700%、少なくとも約1800%、または、少なくとも約1900%大きいCmaxからなる群より選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ドセタキセルまたはその類似体のAUCは、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、同じ投与量で投与されたナノ粒子状ではないドセタキセルまたはその類似体の製剤のAUCより大きい、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記AUCは、同じ投与量で投与されたドセタキセルまたはその類似体の非ナノ粒子製剤によって示されるAUCよりも、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約225%、少なくとも約250%、少なくとも約275%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約500%、少なくとも約550%、少なくとも約600%、少なくとも約750%、少なくとも約700%、少なくとも約750%、少なくとも約800%、少なくとも約850%、少なくとも約900%、少なくとも約950%、少なくとも約1000%、少なくとも約1050%、少なくとも約1100%、少なくとも約1150%、または、少なくとも約1200%大きいAUCからなる群より選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
給餌条件下で投与された場合、絶食条件と比較して有意に異なる吸収レベルを生じない、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
給餌条件で投与された場合と、絶食条件で投与された場合を比較すると、前記ドセタキセルまたはその類似体の組成物の吸収の差は、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、および、約3%未満からなる群より選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
絶食条件でのヒトへの前記組成物の投与は、給餌条件での被検体への前記組成物の投与と生体内利用率が同等である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
「生体内利用率同等性」は、以下の(a)または(b)によって証明される、請求項22に記載の組成物:
(a)CmaxとAUCの両方に関する90%信頼区間が、0.80〜1.25であること;または、
(b)AUCに関する90%信頼区間が0.80〜1.25であり、Cmaxに関する90%信頼区間が0.70〜1.43であること。
【請求項24】
前記ドセタキセル類似体は、以下の(a)〜(v)からなる群より選択される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物:
(a)安息香酸のC−3’位、安息香酸のC−2位、またはそれらを組み合わせた位置においてフェニル基の代わりにシクロヘキシル基を含むドセタキセル類似体;
(b)C−3’位またはC−2位においてフェニルまたは芳香族基が欠失したドセタキセル類似体;
(c)2−アミドドセタキセル類似体;
(d)オキセタンD環が欠失しているが、4アルファ−アセトキシ基を有するドセタキセル類似体;
(e)5(20)デオキシドセタキセル;
(f)10−デオキシ−10−C−モルホリノエチルドセタキセル類似体;
(g)イソセリンN−アシル置換基としてt−ブチルカルバメートを有するが、C−10(ヒドロキシルに対して、アセチル基)、および、C−13イソセリン結合(エステルに対して、エノールエステル)においてドセタキセルとは異なる類似体;
(h)C−3位にペプチド側鎖を有するドセタキセル類似体;
(i)XRP9881(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(j)XRP6528(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(k)オルタタキセル(Ortataxel)(14−ベータ−ヒドロキシ−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(l)MAC−321(10−デアセチル−7−プロパノイルバッカチンドセタキセル類似体);
(m)DJ−927(7−デオキシ−9−ベータ−ジヒドロ−9,10,O−アセタールタキサンドセタキセル(docetaxal)類似体);
(n)C−2位に芳香環が結合したC2−C3’N−結合を有し、N3’とC2−芳香環とがオルト位で連結されたドセタキセル類似体;
(o)C−2位に芳香環が結合したC2−C3’N−結合を有し、N3’とC2−芳香環とがメタ位で連結されたドセタキセル類似体;
(p)C−2のOH成分と、C−3’のNH成分とを連結する22員環(またはそれ以上)の環が結合しているドセタキセル類似体;
(q)7ベータ−O−グリコシル化ドセタキセル類似体;
(r)10−アルキル化ドセタキセル類似体;
(s)2’,2’−ジフルオロドセタキセル類似体;
(t)3’−(2−フリル)ドセタキセル類似体;
(u)3’−(2−ピロリル)ドセタキセル類似体;および、
(v)蛍光性のビオチン化したドセタキセル類似体。
【請求項25】
前記ドセタキセル類似体は、以下の(a)〜(r)からなる群より選択される、請求項24に記載の組成物:
(a)3’−デフェニル−3’シクロヘキシルドセタキセル;
(b)2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル;
(c)3’−デフェニル−3’−シクロヘキシル−2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル;
(d)3’−デフェニル−3’−シクロヘキシルドセタキセル;
(e)2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル;
(f)m−メトキシドセタキセル類似体;
(g)m−クロロベンゾイルアミドドセタキセル類似体;
(h)5(20)−チアドセタキセル類似体;
(i)7−ヒドロキシル基が疎水性基のメトキシに改変されているドセタキセル類似体;
(j)7−ヒドロキシル基が疎水性基のデオキシに改変されているドセタキセル類似体;
(k)7−ヒドロキシル基が疎水性基の6,7−オレフィンに改変されているドセタキセル類似体;
(l)7−ヒドロキシル基が疎水性基のアルファ−Fに改変されているドセタキセル類似体;
(m)7−ヒドロキシル基が疎水性基の7−ベータ−8−ベータ−メタノに改変されているドセタキセル類似体;
(n)7−ヒドロキシル基が疎水性基のフルオロメトキシに改変されているドセタキセル類似体;
(o)アルキル成分の末端にメトキシカルボニル基を有する10−アルキル化ドセタキセル類似体;
(p)7または3’位にN−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾ−4−イル)アミド−6−カプロイル鎖を有するドセタキセル類似体;
(q)3’位にN−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾ−4−イル)アミド−3−プロパノイル基を有するドセタキセル類似体;および、
(r)7、10または3’位に5’−ビオチニルアミド−6−カプロイル鎖を有するドセタキセル類似体。
【請求項26】
医薬品を製造するための、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項27】
前記組成物は、注射投与用に製剤化される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記医薬品は、乳房、前立腺、卵巣、および、肺からなる群より選択される癌治療において有用である、請求項26または請求項27に記載の使用。
【請求項29】
ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の製造方法であって、約2000nm未満の有効平均粒度を有するドセタキセルまたはその類似体の組成物が提供されるのに十分な時間と条件下で、ドセタキセルまたはその類似体の粒子と、少なくとも1種の表面安定剤とを接触させることを含む、上記製造方法。
【請求項30】
前記接触は、粉砕、ホモジナイズ、沈殿、または、超臨界流体加工を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項1】
(a)約2000nm未満の有効平均粒度を有するドセタキセルまたはその類似体の粒子;および、(b)少なくとも1種の表面安定剤を含む組成物。
【請求項2】
前記ドセタキセルまたはその類似体は、結晶相、非晶相、半結晶性の相、半非晶質の相、および、それらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ドセタキセルまたはその類似体の粒子の有効平均粒度は、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、および、約50nm未満からなる群より選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は:
(a)経口、肺、直腸、眼内、結腸、非経口、嚢内、膣内、腹膜内、局所、口腔、鼻および外用投与からなる群より選択される投与用に製剤化されるか;
(b)液状分散剤、固体分散剤、液体充填カプセル、ゲル、エアロゾル、軟膏、クリーム、凍結乾燥製剤、錠剤、カプセル、多粒子充填カプセル、多粒子で構成される錠剤、圧縮錠剤、および、ドセタキセルまたはその類似体の腸溶性コーティングされたビーズが充填されたカプセルからなる群より選択される剤形に製剤化されるか;
(c)放出制御製剤、速溶製剤、遅延放出製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、および、即時放出製剤と放出制御製剤とを組み合わせた製剤からなる群より選択される剤形に製剤化されるか;または、
(d)(a)、(b)および(c)のいずれかの組み合わせである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、注射製剤である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
(a)前記表面安定剤は、ドセタキセルまたはその類似体と、少なくとも1種の表面安定剤との合計の総乾燥重量(ただし、その他の賦形剤は含まない)に基づき、約0.5重量%〜約99.999重量%、約5.0重量%〜約99.9重量%、および、約10重量%〜約99.5重量%からなる群より選択される量で存在するか;
(b)前記ドセタキセルまたはその類似体は、ドセタキセルまたはその類似体と、少なくとも1種の表面安定剤との合計重量(ただし、その他の賦形剤は含まない)に基づき、約99.5重量%〜約0.001重量%、約95重量%〜約0.1重量%、および、約90重量%〜約0.5重量%からなる群より選択される量で存在するか;または、
(c)(a)および(b)の組み合わせである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記表面安定剤は、アニオン性表面安定剤、カチオン性表面安定剤、両性イオン性表面安定剤、非イオン性表面安定剤、および、イオン性表面安定剤からなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の表面安定剤は、塩化セチルピリジニウム、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、ホスファチド、デキストラン、グリセロール、アラビアゴム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、塩化ベンザルコニウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセロール、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ワックス、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、フタル酸ヒプロメロース、非晶質セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、エチレンオキシドとホルムアルデヒドとを含む4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノールポリマー、ポロキサマー;ポロキサミン(Poloxamine)、荷電リン脂質、ジオクチルスルホスクシナート、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールポリエーテルスルホナート、ステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロースとの混合物、p−イソノニルフェノキシポリ−(グリシドール)、デカノイル−N−メチルグルカミド;n−デシルβ−D−グルコピラノシド;n−デシルβ−D−マルトピラノシド;n−ドデシルβ−D−グルコピラノシド;n−ドデシルβ−D−マルトシド;ヘプタノイル−N−メチルグルカミド;n−ヘプチル−β−D−グルコピラノシド;n−ヘプチルβ−D−チオグルコシド;n−ヘキシルβ−D−グルコピラノシド;ノナノイル−N−メチルグルカミド;n−ノイルβ−D−グルコピラノシド;オクタノイル−N−メチルグルカミド;n−オクチル−β−D−グルコピラノシド;オクチルβ−D−チオグルコピラノシド;リゾチーム、PEG−リン脂質、PEG−コレステロール、PEG−コレステロール誘導体、PEG−ビタミンA、PEG−ビタミンE、酢酸ビニルとビニルピロリドンとのランダムコポリマー、カチオン性ポリマー、カチオン性バイオポリマー、カチオン性多糖類、カチオン性セルロース系、カチオン性アルギン酸塩、カチオン性の非高分子化合物、カチオン性のリン脂質、カチオン脂質、ポリメチルメタクリラートトリメチルアンモニウム臭化物、スルホニウム化合物、ポリビニルピロリドン−2−ジメチルアミノエチルメタクリラートジメチル硫酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム臭化物、ホスホニウム化合物、第四級アンモニウム化合物、ベンジル−ジ(2−クロロエチル)エチルアンモニウム臭化物、ヤシ脂肪酸トリメチルアンモニウム塩化物、ヤシ脂肪酸トリメチルアンモニウム臭化物、ヤシ脂肪酸メチルジヒドロキシエチルアンモニウム塩化物、ヤシ脂肪酸メチルジヒドロキシエチルアンモニウム臭化物、デシルトリエチルアンモニウム塩化物、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物/臭化物、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物/臭化物、ヤシ脂肪酸ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム塩化物、ヤシ脂肪酸ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム臭化物、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチル硫酸塩、ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ラウリルジメチルベンジルアンモニウム臭化物、ラウリルジメチル(エテンオキシ)4アンモニウム塩化物、ラウリルジメチル(エテンオキシ)4アンモニウム臭化物、N−アルキル(C14〜18)ジメチルベンジルアンモニウム塩化物、N−アルキル(C14〜18)ジメチルベンジルアンモニウム塩化物、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物一水化物、ジメチルジデシルアンモニウム塩化物、N−アルキル、および、(C12〜14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウム塩化物、ハロゲン化トリメチルアンモニウム、アルキル−トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル−ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩化物、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、エトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウム塩化物、N−ジデシルジメチルアンモニウム塩化物、N−テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物一水化物、N−アルキル(C12〜14)ジメチル1−ナフチルメチルアンモニウム塩化物、ドデシルジメチルベンジルアンモニウム塩化物、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウム塩化物、ラウリルトリメチルアンモニウム塩化物、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩化物、アルキルベンジルジメチルアンモニウム臭化物、C12トリメチルアンモニウム臭化物、C15トリメチルアンモニウム臭化物、C17トリメチルアンモニウム臭化物、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウム塩化物、ポリ−ジアリルジメチルアンモニウム塩化物(DADMAC)、ジメチルアンモニウム塩化物、アルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリセチルメチルアンモニウム塩化物、デシルトリメチルアンモニウム臭化物、ドデシルトリエチルアンモニウム臭化物、テトラデシルトリメチルアンモニウム臭化物、メチルトリオクチルアンモニウム塩化物、POLYQUAT10TM、臭化テトラブチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム臭化物、コリンエステル、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアラルコニウム化合物、臭化セチルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物の塩、MIRAPOLTM、ALKAQUATTM、アルキルピリジニウム塩;アミン、アミン塩、酸化アミン、イミドアゾリニウム塩、プロトン化第四級アクリルアミド、メチル化された第四級化合物ポリマー、および、カチオン性グアールからなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ドセタキセルまたはその類似体以外の活性物質を1種またはそれ以上さらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ドセタキセルまたはその類似体の粒子が、哺乳動物に投与する際に、粒子の有効平均粒度が、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、および、約50nm未満からなる群より選択されるように再分散される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、ドセタキセルまたはその類似体の粒子の有効平均粒度が、約1900nm未満、約1800nm未満、約1700nm未満、約1600nm未満、約1500nm未満、約1400nm未満、約1300nm未満、約1200nm未満、約1100nm未満、約1000nm未満、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約650nm未満、約600nm未満、約550nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、約350nm未満、約300nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、および、約50nm未満からなる群より選択されるように、生体に関連する媒体中に再分散される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記生体に関連する媒体は、水、電解質水溶液、塩の水溶液、酸の水溶液、塩基の水溶液、および、それらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ドセタキセルまたはその類似体のTmaxは、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、同じ投与量で投与されたナノ粒子状ではないドセタキセルまたはその類似体の製剤のTmaxより低い、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記Tmaxは、同じ投与量で投与されたナノ粒子状ではないドセタキセルまたはその類似体の製剤によって示されるTmaxの、約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約30%以下、約25%以下、約20%以下、約15%以下、約10%以下、および、約5%以下からなる群より選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物は、絶食した被検体に投与した後、約6時間未満、約5時間未満、約4時間未満、約3時間未満、約2時間未満、約1時間未満、および、約30分未満からなる群より選択されるTmaxを示す、請求項13または請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ドセタキセルまたはその類似体のCmaxは、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、同じ投与量で投与されたナノ粒子状ではないドセタキセルまたはその類似体の製剤のCmaxより大きい、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記Cmaxは、同じ投与量で投与されたドセタキセルまたはその類似体の非ナノ粒子製剤によって示されるCmaxよりも、少なくとも約50%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約600%、少なくとも約700%、少なくとも約800%、少なくとも約900%、少なくとも約1000%、少なくとも約1100%、少なくとも約1200%、少なくとも約1300%、少なくとも約1400%、少なくとも約1500%、少なくとも約1600%、少なくとも約1700%、少なくとも約1800%、または、少なくとも約1900%大きいCmaxからなる群より選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ドセタキセルまたはその類似体のAUCは、投与後の哺乳動物被検体の血漿で分析した場合、同じ投与量で投与されたナノ粒子状ではないドセタキセルまたはその類似体の製剤のAUCより大きい、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記AUCは、同じ投与量で投与されたドセタキセルまたはその類似体の非ナノ粒子製剤によって示されるAUCよりも、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%、少なくとも約175%、少なくとも約200%、少なくとも約225%、少なくとも約250%、少なくとも約275%、少なくとも約300%、少なくとも約350%、少なくとも約400%、少なくとも約450%、少なくとも約500%、少なくとも約550%、少なくとも約600%、少なくとも約750%、少なくとも約700%、少なくとも約750%、少なくとも約800%、少なくとも約850%、少なくとも約900%、少なくとも約950%、少なくとも約1000%、少なくとも約1050%、少なくとも約1100%、少なくとも約1150%、または、少なくとも約1200%大きいAUCからなる群より選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
給餌条件下で投与された場合、絶食条件と比較して有意に異なる吸収レベルを生じない、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
給餌条件で投与された場合と、絶食条件で投与された場合を比較すると、前記ドセタキセルまたはその類似体の組成物の吸収の差は、約100%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、および、約3%未満からなる群より選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
絶食条件でのヒトへの前記組成物の投与は、給餌条件での被検体への前記組成物の投与と生体内利用率が同等である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
「生体内利用率同等性」は、以下の(a)または(b)によって証明される、請求項22に記載の組成物:
(a)CmaxとAUCの両方に関する90%信頼区間が、0.80〜1.25であること;または、
(b)AUCに関する90%信頼区間が0.80〜1.25であり、Cmaxに関する90%信頼区間が0.70〜1.43であること。
【請求項24】
前記ドセタキセル類似体は、以下の(a)〜(v)からなる群より選択される、請求項1〜23のいずれか一項に記載の組成物:
(a)安息香酸のC−3’位、安息香酸のC−2位、またはそれらを組み合わせた位置においてフェニル基の代わりにシクロヘキシル基を含むドセタキセル類似体;
(b)C−3’位またはC−2位においてフェニルまたは芳香族基が欠失したドセタキセル類似体;
(c)2−アミドドセタキセル類似体;
(d)オキセタンD環が欠失しているが、4アルファ−アセトキシ基を有するドセタキセル類似体;
(e)5(20)デオキシドセタキセル;
(f)10−デオキシ−10−C−モルホリノエチルドセタキセル類似体;
(g)イソセリンN−アシル置換基としてt−ブチルカルバメートを有するが、C−10(ヒドロキシルに対して、アセチル基)、および、C−13イソセリン結合(エステルに対して、エノールエステル)においてドセタキセルとは異なる類似体;
(h)C−3位にペプチド側鎖を有するドセタキセル類似体;
(i)XRP9881(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(j)XRP6528(10−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(k)オルタタキセル(Ortataxel)(14−ベータ−ヒドロキシ−デアセチルバッカチンIIIドセタキセル類似体);
(l)MAC−321(10−デアセチル−7−プロパノイルバッカチンドセタキセル類似体);
(m)DJ−927(7−デオキシ−9−ベータ−ジヒドロ−9,10,O−アセタールタキサンドセタキセル(docetaxal)類似体);
(n)C−2位に芳香環が結合したC2−C3’N−結合を有し、N3’とC2−芳香環とがオルト位で連結されたドセタキセル類似体;
(o)C−2位に芳香環が結合したC2−C3’N−結合を有し、N3’とC2−芳香環とがメタ位で連結されたドセタキセル類似体;
(p)C−2のOH成分と、C−3’のNH成分とを連結する22員環(またはそれ以上)の環が結合しているドセタキセル類似体;
(q)7ベータ−O−グリコシル化ドセタキセル類似体;
(r)10−アルキル化ドセタキセル類似体;
(s)2’,2’−ジフルオロドセタキセル類似体;
(t)3’−(2−フリル)ドセタキセル類似体;
(u)3’−(2−ピロリル)ドセタキセル類似体;および、
(v)蛍光性のビオチン化したドセタキセル類似体。
【請求項25】
前記ドセタキセル類似体は、以下の(a)〜(r)からなる群より選択される、請求項24に記載の組成物:
(a)3’−デフェニル−3’シクロヘキシルドセタキセル;
(b)2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル;
(c)3’−デフェニル−3’−シクロヘキシル−2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル;
(d)3’−デフェニル−3’−シクロヘキシルドセタキセル;
(e)2−(ヘキサヒドロ)ドセタキセル;
(f)m−メトキシドセタキセル類似体;
(g)m−クロロベンゾイルアミドドセタキセル類似体;
(h)5(20)−チアドセタキセル類似体;
(i)7−ヒドロキシル基が疎水性基のメトキシに改変されているドセタキセル類似体;
(j)7−ヒドロキシル基が疎水性基のデオキシに改変されているドセタキセル類似体;
(k)7−ヒドロキシル基が疎水性基の6,7−オレフィンに改変されているドセタキセル類似体;
(l)7−ヒドロキシル基が疎水性基のアルファ−Fに改変されているドセタキセル類似体;
(m)7−ヒドロキシル基が疎水性基の7−ベータ−8−ベータ−メタノに改変されているドセタキセル類似体;
(n)7−ヒドロキシル基が疎水性基のフルオロメトキシに改変されているドセタキセル類似体;
(o)アルキル成分の末端にメトキシカルボニル基を有する10−アルキル化ドセタキセル類似体;
(p)7または3’位にN−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾ−4−イル)アミド−6−カプロイル鎖を有するドセタキセル類似体;
(q)3’位にN−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾ−4−イル)アミド−3−プロパノイル基を有するドセタキセル類似体;および、
(r)7、10または3’位に5’−ビオチニルアミド−6−カプロイル鎖を有するドセタキセル類似体。
【請求項26】
医薬品を製造するための、請求項1〜25のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項27】
前記組成物は、注射投与用に製剤化される、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記医薬品は、乳房、前立腺、卵巣、および、肺からなる群より選択される癌治療において有用である、請求項26または請求項27に記載の使用。
【請求項29】
ナノ粒子状のドセタキセルまたはその類似体の組成物の製造方法であって、約2000nm未満の有効平均粒度を有するドセタキセルまたはその類似体の組成物が提供されるのに十分な時間と条件下で、ドセタキセルまたはその類似体の粒子と、少なくとも1種の表面安定剤とを接触させることを含む、上記製造方法。
【請求項30】
前記接触は、粉砕、ホモジナイズ、沈殿、または、超臨界流体加工を含む、請求項29に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2008−531591(P2008−531591A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557184(P2007−557184)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/006535
【国際公開番号】WO2006/091780
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507250508)エラン・ファルマ・インターナショナル・リミテッド (23)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/006535
【国際公開番号】WO2006/091780
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507250508)エラン・ファルマ・インターナショナル・リミテッド (23)
【Fターム(参考)】
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