説明

ドット形成原料収容器、インクカートリッジ、記録装置

【課題】 記録装置本体に電池を搭載することなく、かつ外部から実時間情報を取得しなくても、被記録材への記録を実行しない時間が一定時間以上経過したか否かを常に正確に特定して適正なタイミングでヘッドクリーニング等の記録画質を維持するためのメンテナンス制御を自動的に実行可能な構成の記録装置を実現して、不必要な前記メンテナンス制御によるインク等の無駄な消費が生ずる虞を低減させる。
【解決手段】 インクカートリッジ71はインク充填部711及び電池712を、インクカートリッジ72はインク充填部721及び電池722を、インクカートリッジ73はインク充填部731及び電池732を、インクカートリッジ74はインク充填部741及び電池742を、それぞれ内蔵している。メイン回路基板10に実装されたRTC11は、電源OFFの間は電池712、722、732又は742のいずれかの電力で動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材の記録面にドットを形成して記録を実行する記録装置及び記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へインクを噴射して記録を実行する記録装置並びに記録装置に着脱可能に接続されるドット形成原料収容器及びインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へインクを噴射して記録を実行するインクジェットプリンタ等の記録装置においては、被記録材への記録を実行しない状態が一定時間以上継続すると、記録ヘッドのヘッド面に配設されたインク噴射ノズルのノズル開口近傍のインクが乾燥して固化し、それによってインク噴射ノズルの目詰まりが生ずる虞がある。そして、このインク噴射ノズルの目詰まりが生じている状態のまま被記録材への記録を実行すると、目詰まりしているインク噴射ノズルから本来噴射されるべきインクが噴射されないため、いわゆるドット抜けが生じて記録画質が低下してしまう。
【0003】
このドット抜けによる記録画質の低下を未然に防止するには、記録ヘッドのヘッド面に配設されたインク噴射ノズルのノズル開口近傍の乾燥して固化したインクを除去するためのヘッドクリーニングを実行してインク噴射ノズルの目詰まりを解消してから被記録材への記録を実行すれば良い。しかし、このヘッドクリーニングは、一般的に大量のインク消費を伴うため、例えば、被記録材への記録を実行する度、記録開始前に毎度ヘッドクリーニングを実行するようにしてしまうと、前回記録実行時からの経過時間が短くインク噴射ノズルの目詰まりが生じていないような場合にも一律にヘッドクリーニングが実行されることとなる結果、不必要なヘッドクリーニングが頻発してしまう虞がある。
【0004】
つまり、被記録材への記録を実行する度、記録開始前に毎度ヘッドクリーニングを実行するのは、インクが無駄に消費されることとなってしまい、インク利用効率が著しく低下してしまうため現実的ではない。そこで、一般的なインクジェットプリンタ等の記録装置においては、被記録材への記録開始時に、インク噴射ノズルの目詰まりが生じている可能性が高いと思われる一定時間以上の時間が前回の記録実行時から経過している場合に限り、記録開始前にヘッドクリーニングが自動的に実行されるように構成されている。
【0005】
このようなことから、一般的なインクジェットプリンタ等の記録装置は、被記録材への記録を実行しない時間が一定時間以上経過したか否かを特定するために、公知のRTC(リアル・タイム・クロック)等の計時手段を備えている。ところが、記録装置の電源がOFFされている間、このRTCによる計時が停止してしまうと、前回記録実行時からの経過時間を正確に特定することができなくなってしまう。そのため、RTC等の計時手段を備えたインクジェットプリンタ等の記録装置は、記録装置の電源がOFFされ、さらにコンセントが抜かれた状態においてもRTC等の計時手段を動作させるために、RTC等の計時手段専用の小型電池(ボタン電池等)や大容量のコンデンサ等を記録装置本体に内蔵しているのが一般的である。しかし、その電池等がやがて電池切れとなってしまえば、記録装置の電源がOFFされてコンセントが抜かれている状態において、もはやRTC等の計時手段を動作させることはできなくなってしまうという課題が生ずる。
【0006】
このような課題を解決可能な従来技術の一例としては、例えば、記録開始及び終了を示すコマンドとともに実時間データをパーソナルコンピュータ等の外部機器から受信して記録を実行する構成を有し、前回記録実行時からの経過時間を、前回の記録終了コマンドとともに外部機器から受信した実時間と今回の記録開始コマンドとともに受信した実時間とから算出する記録装置が公知である(例えば、特許文献1を参照)。記録開始時及び終了時に常に外部機器から実時間データを取得する構成であるため、記録装置内部にRTC等の計時手段を設ける必要がないので、RTC等の計時手段の電池切れといった課題が生じない。また、他の従来技術の一例としては、例えば、記録装置そのものがリチウムイオン電池や燃料電池等で動作可能な構成を有するモバイル用途向けの記録装置が公知である(例えば、特許文献2を参照)。このような構成の記録装置は、電源をOFFし、さらにコンセントを抜いた状態でも、実装されている電池の電力で、被記録材への記録が実行可能であると同時に記録装置内部のRTC等の計時手段を動作させることも可能である。
【0007】
【特許文献1】特開2001−138602号公報
【特許文献2】特開2005−262592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されている従来技術は、記録開始及び終了を示すコマンドとともに実時間データを送信可能なパーソナルコンピュータ等の外部機器が接続されていることが絶対条件となる。そのため、記録装置にデジタルカメラを直接接続して被記録材への記録を実行したり、メモリカードからデジタル画像ファイルを直接読み込んで被記録材への記録を実行したりといったダイレクトプリント機能を有する記録装置においては、ダイレクトプリント機能を利用して被記録材への記録を実行している限り、被記録材への記録を実行しない時間が一定時間以上経過したか否かを正確に特定することができなくなってしまうことになる。
【0009】
被記録材への記録を実行しない時間が一定時間以上経過したか否かを正確に特定できない場合には、インク噴射ノズルのノズル詰まりが生じているかどうかが予測できない。そのため、ドット抜けにより記録画質が低下してしまう虞が生ずる。そのため、ドット抜けによる記録画質の低下を未然に防ぐためには、インク噴射ノズルのノズル詰まりが生じている可能性の如何に関わらず記録開始前に常にヘッドクリーニングを実行せざるを得なくなってしまうため、前記のように不必要なヘッドクリーニングが頻発して大量のインクを無駄に消費してしまうという課題が依然として生ずることとなる。
【0010】
また、リチウムイオン電池等の電池パックの電力で動作可能な記録装置においては、記録装置の電源をOFFしている間も常に電池パック等を記録装置に装着しておかなければ、RTC等の計時手段による計時が停止し、被記録材への記録を実行しない時間が一定時間以上経過したか否かを正確に特定することができなくなってしまう。したがって、この場合も、電池パックの着脱状態によっては、インク噴射ノズルのノズル詰まりが生じている可能性の如何に関わらず記録開始前にヘッドクリーニングを実行せざるを得なくなってしまい、必要のない無駄なヘッドクリーニングを実行してインクを無駄に消費してしまう虞が依然として生ずる。さらに、上述した特許文献2に開示されている従来技術においては、記録装置を動作させることが可能な大型の燃料電池を記録装置本体に実装するため、記録装置が大型化してしまうという課題が生ずる。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、記録装置本体に電池を搭載することなく、かつ外部から実時間情報を取得しなくても、被記録材への記録を実行しない時間が一定時間以上経過したか否かを常に正確に特定して適正なタイミングでヘッドクリーニング等の記録画質を維持するためのメンテナンス制御を自動的に実行可能な構成の記録装置を実現して、不必要な前記メンテナンス制御によるインク等の無駄な消費が生ずる虞を低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、被記録材の記録面にドットを形成して記録を実行する記録装置に着脱可能に接続され、被記録材の記録面に形成されるドットの原料となるドット形成原料が収容されるドット形成原料収容器であって、前記記録装置に搭載されているRTCを動作させるための電池を内蔵している、ことを特徴としたドット形成原料収容器である。
【0013】
ここで、ドット形成原料とは、被記録材の記録面に形成されるドットを構成する原料を意味し、例えば、インクジェットプリンタ等の記録装置におけるインク、レーザプリンタ等の記録装置におけるトナー、ドットインパクトプリンタ等のインクリボン等であり、記録装置を介して被記録材の記録面にドットを構成し得る全ての物を含む概念である。そして、ドット形成原料収容器は、このドット形成原料を収容した容器であり、記録装置に着脱可能に接続される構成を有し、記録装置に接続された状態で使用されてドット形成原料を記録装置本体に提供し得るものであり、例えば、インクジェットプリンタ等の記録装置のインクカートリッジ、レーザプリンタ等の記録装置のトナーカートリッジ、ドットインパクトプリンタ等のリボンカートリッジ等が含まれる。また、RTC(リアル・タイム・クロック)は、公知の計時専用チップである。
【0014】
このように、ドット形成原料を記録装置本体に提供すべく記録装置本体に接続されて使用されるドット形成原料収容器において、本発明の第1の態様に記載のドット形成原料収容器は、記録装置に搭載されているRTCを動作させるための電池が内蔵されている。それによって、記録装置の電源がOFFされてかつコンセントが抜かれた状態においても、ドット形成原料収容器が接続されている限り、ドット形成原料収容器の電池からの電力供給で記録装置本体に搭載されているRTCを停止させることなく動作させ続けることができる。ドット形成原料収容器は、収容されているドット形成原料がなくなる度に常に新品のドット形成原料収容器に交換されるため、電池切れが生ずる心配もない。また、記録装置の電源OFF後に、充電のために電池パックを取り外したりコンセントを抜いておいたりすることはあっても、インクカートリッジやトナーカートリッジ等のドット形成原料収容器をわざわざ取り外すといった使用状況は一般的には考えにくい。したがって、記録装置本体に電池を搭載することなく、かつ外部から実時間情報を取得しなくても、被記録材への記録を実行しない時間が一定時間以上経過したか否かをRTCの計時から常に正確に特定して適正なタイミングでヘッドクリーニング等の記録画質を維持するためのメンテナンス制御を自動的に実行することができる。また、記録装置本体に電池を搭載する必要がないので、記録装置本体に電池を実装することによる記録装置本体の大型化が生じない。
【0015】
これにより、本発明の第1の態様に記載のドット形成原料収容器によれば、このドット形成原料収容器に収容されているドット形成原料を利用して被記録材の記録面にドットを形成して記録を実行可能な記録装置において、記録装置本体に電池を搭載することなく、かつ外部から実時間情報を取得しなくても、被記録材への記録を実行しない時間が一定時間以上経過したか否かをRTCの計時から常に正確に特定して適正なタイミングでヘッドクリーニング等の記録画質を維持するためのメンテナンス制御を自動的に実行することができるので、不必要な前記メンテナンス制御によるインク等の無駄な消費が生ずる虞を低減させることができるという作用効果が得られる。
また、記録装置本体に電池を搭載する必要がないので、記録装置のリサイクルに際して電池を取り外す工程が不要になり、それによって、記録装置のリサイクル性を向上させることができるという作用効果も得られる。
【0016】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様において、前記電池は、DMFC型燃料電池である、ことを特徴としたドット形成原料収容器である。
このように、小型で軽量な燃料電池であるDMFC(Direct Methanol
Fuel Cell)型燃料電池をドット形成原料収容器に内蔵することによって、電池を内蔵することによるドット形成原料収容器の大型化の虞を低減させることができる。また、燃料電池は、燃料を再充填するだけで電池機能を回復させることができる。したがって、本発明の第2の態様に記載のドット形成原料収容器によれば、前述した第1の態様に記載の発明による作用効果に加えて、ドット形成原料収容器のリユース(再使用)を容易かつ低コストに実現することができるという作用効果が得られる。
【0017】
本発明の第3の態様は、前述した第1の態様又は第2の態様に記載のドット形成原料収容器から供給されるドット形成原料で被記録材の記録面にドットを形成して被記録材への記録を実行可能な構成を有する記録実行手段と、該記録実行手段による被記録材への記録制御を実行する記録制御装置とを備えた記録装置であって、電源がONである間は、記録装置本体側の電源で前記記録制御装置のRTCが動作し、電源がOFFである間は、前記ドット形成原料収容器に内蔵されている電池を電源として前記RTCが動作する構成を有している、ことを特徴とした記録装置である。
【0018】
このように、記録装置の電源がONである間は、記録装置本体側の電源で記録制御装置のRTCを動作させ、記録装置の電源がOFFである間のみドット形成原料収容器に内蔵されている電池でRTCを動作させることによって、ドット形成原料収容器の内蔵電池の電力を効率的に節約しながら使用してRTCを動作させることができる。したがって、ドット形成原料収容器に内蔵する電池を、より電力供給能力が小さい小型の電池にすることが可能になり、それによって、本発明に係るドット形成原料収容器をより小型化できるとともに低コストに実現することができるという作用効果が得られる。
【0019】
本発明の第4の態様は、前述した第3の態様において、複数の前記ドット形成原料収容器が接続可能であるとともに、接続された複数の前記ドット形成原料収容器の電池出力が前記RTCに並列接続される構成を有している、ことを特徴とした記録装置である。
このように、接続された複数のドット形成原料収容器の電池出力がRTCに並列接続される構成によって、接続された複数のドット形成原料収容器のいずれか一を取り外しても、他のドット形成原料収容器の電池からの電力供給によりRTCを動作させ続けることができる。
【0020】
本発明の第5の態様は、前述した第3の態様において、ニ以上の所定数の前記ドット形成原料収容器が接続されるとともに、接続された所定数の前記ドット形成原料収容器の電池出力が前記RTCに直列接続される構成を有している、ことを特徴とした記録装置である。
このように、接続された所定数のドット形成原料収容器の電池出力がRTCに直列接続される構成によって、所定数のドット形成原料収容器が全て記録装置に接続されて、各ドット形成原料収容器の電池が全て直列に接続された状態でRTCの動作電圧での電力供給が得られる。したがって、各ドット形成原料収容器の電池は、RTC動作電圧より低い出力電圧の電池で構成することができるので、ドット形成原料収容器に内蔵する電池を、さらに小さい小型の電池にすることが可能になり、それによって、本発明に係るドット形成原料収容器をさらに低コストに実現することができるという作用効果が得られる。
【0021】
本発明の第6の態様は、記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へインクを噴射して記録を実行する記録装置に着脱可能に接続され、前記インク噴射ノズルから被記録材の記録面へ噴射されるインクが収容されるインクカートリッジであって、前記記録装置に搭載されているRTCを動作させるための電池を内蔵している、ことを特徴としたインクカートリッジである。
本発明の第6の態様に記載のインクカートリッジによれば、このインクカートリッジに収容されているインクを記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へ噴射して記録を実行可能な記録装置において、前述した第1の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0022】
本発明の第7の態様は、前述した第6の態様において、前記電池は、DMFC型燃料電池である、ことを特徴としたインクカートリッジである。
本発明の第7の態様に記載のインクカートリッジによれば、このインクカートリッジに収容されているインクを記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へ噴射して記録を実行可能な記録装置において、前述した第2の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
本発明の第8の態様は、前述した第6の態様又は第7の態様に記載のインクカートリッジから供給されるインクを記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へ噴射して被記録材への記録を実行可能な構成を有する記録実行手段と、前記記録実行手段による被記録材への記録制御を実行する記録制御装置とを備えた記録装置であって、電源がONである間は、記録装置本体側の電源で前記記録制御装置のRTCが動作し、電源がOFFである間は、前記インクカートリッジに内蔵されている電池を電源として前記RTCが動作する構成を有している、ことを特徴とした記録装置である。
本発明の第8の態様に記載の記録装置によれば、記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へインクを噴射して記録を実行可能な記録装置において、前述した第3の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0024】
本発明の第9の態様は、前述した第8の態様において、複数の前記インクカートリッジが接続可能であるとともに、接続された複数の前記インクカートリッジの電池出力が前記RTCに並列接続される構成を有している、ことを特徴とした記録装置である。
本発明の第9の態様に記載の記録装置によれば、記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へインクを噴射して記録を実行可能な記録装置において、前述した第4の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0025】
本発明の第10の態様は、前述した第8の態様において、ニ以上の所定数の前記インクカートリッジが接続されるとともに、接続された所定数の前記インクカートリッジの電池出力が前記RTCに直列接続される構成を有している、ことを特徴とした記録装置である。
【0026】
本発明の第10の態様に記載の記録装置によれば、記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へインクを噴射して記録を実行可能な記録装置において、前述した第5の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
本発明の第11の態様は、前述した第8の態様〜第10の態様のいずれかにおいて、前記記録制御装置は、被記録材への記録終了時刻を被記録材への記録を実行する度に更新しながら保持し、保持している記録終了時刻を記録装置の電源OFF時に不揮発性メモリに記憶し、記録装置の電源ON時に前記不揮発性メモリに記憶されている記録終了時刻を取得して保持し、被記録材への記録実行時には、保持している記録終了時刻からの経過時間に応じて必要な前記記録ヘッドのメンテナンス制御を実行してから被記録材への記録を開始する、ことを特徴とした記録装置である。
【0028】
このように、常に最新の記録終了時刻を保持し、被記録材への記録実行時には、保持している最新の記録終了時刻からの経過時間に応じて必要な記録ヘッドのメンテナンス制御(ヘッドクリーニング等)を実行してから記録を開始するので、被記録材への記録を実行しない状態の経過時間に応じて適正な記録ヘッドのメンテナンス制御を実行してから被記録材への記録を開始することができる。また、記録装置の電源OFF時には、保持している最新の記録終了時刻を不揮発性メモリに記憶させ、再び記録装置の電源をONした時に不揮発性メモリから最新の記録終了時刻を取得するので、記録装置の電源ON/OFFの有無に関係なく、常に最新の記録終了時刻を保持し続けることができる。そして、前述したように、記録制御装置のRTCは、記録装置の電源OFFの間もインクカートリッジに内蔵されている電池の電力で動作し続ける。
【0029】
以上から、本発明の第11の態様に記載の記録装置によれば、記録装置の電源ON/OFFの有無に関係なく、被記録材への記録を実行しない時間が一定時間以上経過したか否かを常に正確に特定して適正なタイミングでヘッドクリーニング等の記録画質を維持するためのメンテナンス制御を自動的に実行することができるので、常に適正な記録ヘッドのメンテナンスがなされている状態から被記録材への記録を開始することができる。したがって、インク噴射ノズルのノズル詰まり等に起因する記録画質の低下を未然に防止しつつ、不必要なメンテナンス制御によるインクの無駄な消費が生ずる虞を低減させることができるという作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明に係る「記録装置」の一例としてのインクジェット式記録装置の概略構成について説明する。
【0031】
図1は、本発明に係るインクジェット式記録装置の要部平面図であり、図2はその側面図である。図3は、本発明に係るインクジェット式記録装置の概略のブロック図である。
「被記録材」としての記録紙Pの記録面にドットを形成して記録を実行する「記録装置」としてのインクジェット式記録装置50には、記録紙Pへの記録を実行可能な「記録実行手段」を構成する手段として、記録紙Pに対して主走査方向Xへ移動可能にキャリッジガイド軸51に軸支されたキャリッジ61が設けられている。キャリッジ61には、記録紙Pの記録面にインクを噴射して記録を行うためのインク噴射ノズル(図示せず)を有する記録ヘッド62と主走査方向Xの記録紙Pの端部を検出するためのPWセンサ34とが搭載されている。キャリッジ61は、CRモータ63(図3)の回転駆動力が、無端ベルトによるベルト伝達機構(図示せず)によって伝達されて主走査方向Xに往復動する。このキャリッジ61を主走査方向Xへ往復動させることで、記録紙Pに対して記録ヘッド62を主走査方向Xに走査させることができる。記録ヘッド62のヘッド面と対向する位置には、記録紙Pを摺接支持しつつ記録紙Pの記録面と記録ヘッド62のヘッド面との間隔を所定間隔に規定するプラテン52が設けられている。
【0032】
キャリッジ61の主走査方向Xへの往復動領域の一端側の外側には、公知のキャッピング装置59が設けられている。記録を実行しない待機状態においては、キャリッジ61がキャッピング装置59の上まで移動して停止し、キャッピング装置59に配設されているキャップCPによって記録ヘッド62のヘッド面が封止される。このキャリッジ61の停止位置は、ホームポジションHPとして規定される。
【0033】
また、インクジェット式記録装置50には、記録紙Pへの記録を実行可能な「記録実行手段」を構成する「被記録材搬送手段」として、記録紙Pを副走査方向Yに搬送する搬送駆動ローラ53と搬送従動ローラ54が設けられている。搬送駆動ローラ53は、「被記録材搬送用モータ」としてのPFモータ58(図3)の回転駆動力が歯車伝達されて回転する。搬送従動ローラ54は、複数設けられており、従動回転可能に軸支された状態で搬送駆動ローラ53に押圧付勢されている。搬送従動ローラ54の押圧付勢力で高摩擦抵抗被膜が施された搬送駆動ローラ53の外周面に押しつけられた記録紙Pは、その摩擦抵抗によって搬送駆動ローラ53の外周面に密着する。その状態で搬送駆動ローラ53を搬送方向へ回転させることによって、記録紙Pは、搬送従動ローラ54が従動回転しつつ副走査方向Yに搬送され、それによって、記録ヘッド62を記録紙Pに対して副走査方向Yに走査させることができる。
【0034】
給紙トレイ57の近傍には、給紙トレイ57に積重されている記録紙Pの最上位の記録紙Pを「被記録材搬送手段」へ自動給送する「自動給送手段」としてのASF(オート・シート・フィーダ)が設けられている。ASFは、給紙トレイ57に設けられた給紙ローラ57b及び図示してない分離パットを有する公知の自動給紙機構である。給紙ローラ57bは、給紙トレイ57の一方側に配置されている。記録紙ガイド57aは、記録紙Pの幅に合わせて幅方向に摺動可能に給紙トレイ57に設けられている。そして、PFモータ58(図3)の回転駆動力が歯車伝達されて回転する給紙ローラ57bの回転駆動力によって、給紙トレイ57に置かれた記録紙Pが給紙される。その際に、分離パットの摩擦抵抗によって、複数の記録紙Pが一度に給紙されることなく最上位の記録紙Pのみが正確に分離されて一枚ずつ自動給紙されるように構成されている。給紙ローラ57bと搬送駆動ローラ53との間には、搬送される記録紙Pの先端及び後端を検出する公知の紙検出器33が配設されている。
【0035】
一方、記録紙Pを副走査方向Yへ搬送可能な「被記録材搬送手段」及び記録実行後の記録紙Pを排紙する手段として、排紙駆動ローラ55と排紙従動ローラ56とが設けられている。排紙駆動ローラ55は、PFモータ58(図3)の回転駆動力が歯車伝達されて回転し、記録実行後の記録紙Pは、排紙駆動ローラ55の回転によって副走査方向Yに排紙される。排紙従動ローラ56は、周囲に複数の歯を有し、各歯の先端が記録紙Pの記録面に点接触するように鋭角的に尖った歯付きローラになっている。複数の排紙従動ローラ56は、それぞれ個々に排紙駆動ローラ55に付勢され、記録紙Pが排紙駆動ローラ55の回転により排紙される際に記録紙Pに接して記録紙Pの排紙に伴い従動回転する。
そして、給紙ローラ57b、搬送駆動ローラ53及び排紙駆動ローラ55を回転駆動するPFモータ58(図3)及びキャリッジ61を主走査方向Xに駆動するCRモータ63(図3)は、「記録制御装置」としての記録制御部100により駆動制御される。また、記録ヘッド62も同様に、記録制御部100により駆動制御されて記録紙Pの表面にインクを噴射する。記録制御部100は、キャリッジ61を主走査方向Xへ往復動させながら記録ヘッド62から記録紙Pへインクを噴射してドットを形成する動作と、記録紙Pを副走査方向Yへ所定の搬送量で搬送する動作とを交互に繰り返しながら記録紙Pへの記録制御を実行する。
【0036】
引き続き図1〜図3を参照しながら記録制御部100について説明する。
記録制御部100は、ROM101、RAM102、ASIC(特定用途向け集積回路)103、MPU104、不揮発性メモリ105、PFモータドライバ106、CRモータドライバ107及びヘッドドライバ108を備えている。MPU104には、ASIC103を介して、ロータリエンコーダ31、リニアエンコーダ32、紙検出器33、PWセンサ34及びインクジェット式記録装置50の電源をON/OFFするための電源スイッチ35の出力信号が入力される。
【0037】
公知のロータリエンコーダ31は、搬送駆動ローラ53の回転量を検出するべくPFモータ58の回転周期に連動した周期のパルス信号を出力するように配設されている。ロータリエンコーダ31は、搬送駆動ローラ53の回転に連動して回転するロータリスケール311と、ロータリスケール311の外周に沿って等間隔に形成されているスリットを検出するロータリスケールセンサ312とを有している(図2)。搬送駆動ローラ53の回転に伴い変化するロータリスケールセンサ312の出力信号は、ASIC103を介してMPU104へ出力される。
公知のリニアエンコーダ32は、キャリッジ61の移動量を検出するべくCRモータ63の回転周期に連動した周期のパルス信号を出力するように配設されている。リニアエンコーダ32は、キャリッジ61の近傍に主走査方向Xと略平行に配置されたリニアスケール321と、リニアスケール321に等間隔に形成されているスリットを検出するキャリッジ61に搭載されたリニアスケールセンサ322とを有している(図2)。キャリッジ61の主走査方向Xの移動量に応じたパルス数でパルス周期が移動速度に伴い変化するリニアスケールセンサ322の出力信号は、ASIC103を介してMPU104へ出力される。
【0038】
記録制御部100のシステムバスには、ROM101、RAM102、ASIC103、MPU104及び不揮発性メモリ105が接続されている。MPU104は、インクジェット式記録装置50の記録制御を実行するための演算処理やその他必要な演算処理を行う。ROM101には、MPU104によるインクジェット式記録装置50の制御に必要な記録制御プログラム(ファームウェア)等が格納されており、記録制御プログラムの処理に必要な各種データ等は不揮発性メモリ105に記憶されている。RAM102は、MPU104の作業領域や記録データ等の格納領域として用いられる。
ASIC103は、DCモータであるPFモータ58の速度制御を行う制御回路及びCRモータ63の速度制御を行う制御回路並びに記録ヘッド62の駆動制御を行う制御回路(図示せず)を有している。MPU104から送られてくる制御命令、ロータリエンコーダ31の出力信号及びリニアエンコーダ32の出力信号に基づいて、PFモータ58及びCRモータ63の速度制御を行う為の各種演算を行い、その演算結果に基づくモータ制御信号をPFモータドライバ106及びCRモータドライバ107へ送出する。ASIC103は、MPU104から送出される記録データ等に基づいて、記録ヘッド62の制御信号を演算生成してヘッドドライバ108へ送出して記録ヘッド62を駆動制御する。ASIC103は、インクジェット式記録装置50の本体に設けられたUSBコネクタ(図示せず)を介して接続されるデジタルカメラ301等とのUSBインタフェースを実現して、デジタルカメラ301等からデジタル画像ファイルを入力する機能を実現するUSBIF111を有している。
【0039】
図4は、本発明に係るインクジェット式記録装置50のインクカートリッジ及びRTCの電源系統の第1実施例を図示したものである。
本発明に係る「ドット形成原料収容器」としてのインクカートリッジ71〜74は、インクジェット式記録装置50のキャリッジ61に着脱可能に接続され、記録ヘッド62からのインク噴射により記録紙Pの記録面に形成されるドットの原料となる「ドット形成原料」としてのインクが各々収容されている。インクカートリッジ71は、イエローインク充填部711及びインクジェット式記録装置50の記録制御部100を構成するメイン回路基板10に実装されたRTC11を動作させるための電池712を内蔵している。同様に、インクカートリッジ72は、マゼンダインク充填部721及びRTC11を動作させるための電池722を内蔵している。インクカートリッジ73は、シアンインク充填部731及びRTC11を動作させるための電池732を内蔵している。インクカートリッジ74は、ブラックインク充填部741及びRTC11を動作させるための電池742を内蔵している。イエローインク充填部711のイエローインク、マゼンダインク充填部721のマゼンダインク、シアンインク充填部731のシアンインク及びブラックインク充填部741のブラックインクは、それぞれ対応するインク噴射ノズルへ供給されるように記録ヘッド62へ接続されている。
【0040】
尚、電池712、722、732及び742は、当該実施例においては、DMFC(Direct Methanol Fuel Cell)型燃料電池であるが、特にこれに限定されるものではない。例えば、一般的なボタン電池等でも本発明の実施は可能であり、インクカートリッジ71〜74に内蔵可能な大きさであれば、どのような態様の電池であっても差し支えない。そして、当該実施例のように、小型で軽量な燃料電池であるDMFC型燃料電池をインクカートリッジ71〜74に内蔵することによって、インクカートリッジ71〜74が大型化してしまう虞を低減することができる。また、DMFC型燃料電池等の燃料電池は、燃料となるメタノール水溶液等を補充するだけで電池機能を回復させることができるので、インク及びメタノール水溶液等の電池燃料の再充填によって、本発明に係るインクカートリッジ71〜74のリユース(再使用)を容易かつ低コストに実現することができる。
【0041】
電池712、722、732及び742の出力電圧は、キャリッジ61側において、図示の如く並列接続されてメイン回路基板10へ印加される。メイン回路基板10は、記録制御部100及びRTC11へ電力供給可能な直流電源装置12を有しているとともに、電池712、722、732又は742の出力電圧と直流電源装置12の出力電圧とが、ダイオードD1とダイオードD2とでダイオードORされてRTC11へ印加される回路構成を有している。このような回路構成によって、RTC11は、インクジェット式記録装置50の電源がONである間は、メイン回路基板10の直流電源装置12からの電力供給で動作することができ、インクジェット式記録装置50の電源がOFFされて直流電源装置12からの電力供給が停止している間は、インクカートリッジ71〜74に内蔵されている電池712、722、732又は742からの電力供給で動作することができる。
【0042】
このように、インクジェット式記録装置50の電源がOFFされている間のみ、インクカートリッジ71〜74の電池712、722、732又は742の電力でRTC11が動作するので、電池712、722、732又は742の電力を効率的に節約しながら使用してRTC11を動作させることができる。したがって、電池712、722、732及び742を電力供給能力が小さい小型の電池にすることが可能になるので、本発明に係るインクカートリッジ71〜74をより小型化できるとともに低コストに実現することができる。
【0043】
さらに、インクカートリッジ71〜74の電池712、722、732及び742の出力電圧が、RTC11に並列に印加されるので、インクカートリッジ71〜74のいずれか1つがキャリッジ61に接続されている限り、電池712、722、732又は742のいずれかの電力で、インクジェット式記録装置50の電源がOFFされている間もRTC11を動作させ続けることができる。さらに、RTC11の電源ラインとGNDとの間には、大容量の電気二重層コンデンサC1が接続されており、この電気二重層コンデンサC1に充電された電荷だけで約500時間はRTC11を動作させ続けることができる。したがって、インクカートリッジ71〜74が全て取り外されたり、電池712、722、732及び742の全てが電池切れとなったりしても、インクジェット式記録装置50の電源OFFの間、しばらくの間は電気二重層コンデンサC1でRTC11を動作させ続けることが可能である。
【0044】
つづいて、記録制御部100によるヘッドクリーニング制御について説明する。記録制御部100は、公知の計時専用チップであるRTC11から日時を取得することができ、RTC11から取得する日時に基づいて、以下に説明する制御を実行する。
【0045】
図5は、記録紙Pへの記録制御時におけるヘッドクリーニング制御の手順を示したフローチャートである。
記録制御部100は、RTC11の計時に基づいて、記録紙Pへの記録終了時刻を記録紙Pへの記録を実行する度に更新しながら前回記録終了時刻T0としてRAM102に保持している。記録制御部100は、記録紙Pへの記録開始時には、まず、記録紙Pへの記録を開始する前に前回記録終了時刻T0がエラー値か否かを判定する(ステップS1)。このエラー値については後述する。前回記録終了時刻T0がエラー値でない場合には(ステップS1でNo)、つづいて、この時のRTC11のカウント値(時刻)を記録開始時刻T1にセットし(ステップS2)、前回記録終了時刻T0から記録開始時刻T1までの経過時間ΔTを算出する(ステップS3)。
【0046】
つづいて、算出した経過時間ΔTの時間に応じた記録ヘッド62のメンテナンス動作を実行する(ステップS4)。具体的には、経過時間ΔTの時間に応じたレベルの記録ヘッド62のヘッドクリーニング制御等を実行する。記録ヘッド62のメンテナンス動作を実行した後、所定の記録制御シーケンスを実行して記録紙Pへの記録を実行する(ステップS5)。具体的には、前述したように、キャリッジ61を主走査方向Xへ往復動させながら記録ヘッド62から記録紙Pへインクを噴射してドットを形成する動作と、記録紙Pを副走査方向Yへ所定の搬送量で搬送する動作とを交互に繰り返しながら記録紙Pへの記録を実行する。そして、記録紙Pへの記録が終了した時点で、RTC11のカウント値(時刻)を前回記録終了時刻T0としてRAM102に保持する(ステップS6)。
【0047】
一方、記録紙Pへの記録を開始する前の時点において、前回記録終了時刻T0がエラー値だった場合には(ステップS1でYes)、経過時間ΔTに所定の最大値をセットする(ステップS7)。この所定の最大値を経過時間ΔTにセットすることによって、ステップS4で最大レベルのヘッドクリーニング制御が実行されることになる。そして、記録紙Pへの記録を実行し(ステップS5)、記録紙Pへの記録が終了した時点で、RTC11のカウント値(時刻)を前回記録終了時刻T0としてRAM102に保持する(ステップS6)。
【0048】
図6は、インクジェット式記録装置50の電源OFF時に実行される手順を示したフローチャートである。
インクジェット式記録装置50の電源OFF時には、RAM102に保持している前回記録終了時刻T0を不揮発性メモリ105に記憶させる(ステップS11)。
【0049】
図7は、インクジェット式記録装置50の電源ON時に実行される手順を示したフローチャートである。
記録制御部100は、インクカートリッジ71〜74の電池712、722、732又は742の出力電圧を測定可能に接続されたAC/DCコンバータ109(図4)を有しており、インクジェット式記録装置50の電源ON時には、まず、インクカートリッジ71〜74の電池712、722、732及び742の出力電圧をそれぞれ測定する(ステップS21)。つづいて、測定した電池712、722、732又は742の出力電圧のいずれかがRTC11の動作電圧以上か否かを判定する(ステップS22)。電池712、722、732又は742の出力電圧のいずれかがRTC11の動作電圧以上であった場合には(ステップS22でYes)、RTC11は、インクジェット式記録装置50が電源OFFの間も電池712、722、732又は742の出力電圧で動作し続けていたと判定して、不揮発性メモリ105に記憶されている前回記録終了時刻T0を取得して保持する(ステップS23)。
【0050】
一方、電池712、722、732及び742の出力電圧のいずれもがRTC11の動作電圧に満たない場合には(ステップS22でNo)、インクジェット式記録装置50が電源OFFの間にRTC11が停止していたと判定する。インクジェット式記録装置50が電源OFFの間にRTC11が停止していた場合には、電源OFF前に不揮発性メモリ105に記憶した前回記録終了時刻T0に対する現在のRTC11のカウント値からは、正確な経過時間ΔTを算出することができない。したがって、この場合には、前記のエラー値を前回記録終了時刻T0にセットする(ステップS24)。つまり、エラー値とは、電源ON時に電池712、722、732及び742のいずれもが電池切れだった場合に経過時間ΔTに所定の最大値をセットするための既定値であり、最大レベルのヘッドクリーニング制御が実行される経過時間に相当する値であれば、どのような値に設定しても差し支えない。前回記録終了時刻T0にエラー値がセットされることによって、経過時間ΔTに所定の最大値がセットされ(図5のステップS7)、最大レベルのヘッドクリーニング制御が実行される(図5のステップS4)。
【0051】
以上説明したように、本発明に係るインクジェット式記録装置50は、「ドット形成原料収容器」としてのインクカートリッジ71〜74のそれぞれにRTC11を動作させるための電池712、722、732、742が内蔵されている。そのため、インクカートリッジ71〜74のいずれかが接続されている限り、インクジェット式記録装置50の電源がOFFされてかつコンセントが抜かれた状態においても、電池712、722、732又は742のいずれかからの電力供給でRTC11を停止させることなく動作させ続けることができる。インクジェット式記録装置50に接続されるインクカートリッジ71〜74は、収容されているインクがなくなる度に常に新品のインクカートリッジ71〜74に交換されるため、電池712、722、732、742の電池切れが生ずる心配もない。また、インクジェット式記録装置50の電源OFF後に、充電のために電池パックを取り外したりコンセントを抜いておいたりすることはあっても、インクカートリッジやトナーカートリッジ等の「ドット形成原料収容器」をわざわざ取り外すといった使用状況は一般的には考えにくい。そして、仮にインクカートリッジ71〜74が全て取り外された状態となったり、電池712、722、732及び742の全てが電池切れとなったりしたとしても、インクジェット式記録装置50の電源OFFの間、しばらくの間は電気二重層コンデンサC1でRTC11を動作させ続けることが可能である。
【0052】
このようにして、インクジェット式記録装置50本体に電池を搭載することなく、かつ外部から実時間情報を取得しなくても、記録紙Pへの記録を実行しない時間が一定時間以上経過したか否かを長期にわたってRTC11の計時から常に正確に特定して適正なタイミングでヘッドクリーニング等の記録画質を維持するためのメンテナンス制御を自動的に実行することができる。それによって、不必要な前記メンテナンス制御によるインク等の無駄な消費が生ずる虞を低減させることができる。また、インクジェット式記録装置50本体にRTC11動作用の電池を実装する必要がないので、インクジェット式記録装置50の大型化が防止されるとともに、インクジェット式記録装置50内部のRTC11動作用の電池交換といった面倒な作業も不要になる。さらに、RTC11動作用の電池を使用済みのインクカートリッジ71〜74とともに回収することができるので、RTC11動作用の電池の再生利用(リサイクル)及び再使用(リユース)を容易に実現できる。
【0053】
図8は、本発明に係るインクジェット式記録装置50のインクカートリッジ及びRTCの電源系統の第2実施例を図示したものである。
第2実施例におけるインクジェット式記録装置50は、インクカートリッジ71〜74の電池712、722、732及び742の出力電圧が、図示の如く直列接続されてメイン回路基板10のRTC11へ印加される構成を有している。それ以外は、前述した第1実施例と同様なので説明は省略する。
【0054】
このように、インクカートリッジ71〜74が全てインクジェット式記録装置50に接続された状態で、電池712、722、732及び742が全て直列に接続されてRTC11の動作電圧の電力供給が実現される。したがって、インクカートリッジ71〜74の電池712、722、732及び742は、RTC11の動作電圧より低い出力電圧の電池で構成することができる。それによって、インクカートリッジ71〜74に内蔵する電池712、722、732及び742を、さらに小さい小型の電池にすることが可能になるので、本発明に係るインクカートリッジ71〜74をさらに小型化できるとともに低コストに実現することができる。例えば、一般的なDMFC型燃料電池の単セルの出力電圧は、0.5〜0.8V程度であるが、このDMFC型燃料電池の単セルをインクカートリッジ71〜74に内蔵して、インクカートリッジ71〜74の単セルが全て直列に接続される構成とすれば、RTC11の動作電圧となる直流電圧(DC3.3V前後)の電力供給を実現することができる。
【0055】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係るインクジェット式記録装置の概略の平面図である。
【図2】本発明に係るインクジェット式記録装置の概略の側面図である。
【図3】本発明に係るインクジェット式記録装置の概略のブロック図である。
【図4】インクカートリッジ及びRTCの電源系統の第1実施例である。
【図5】ヘッドクリーニング制御の手順を示したフローチャートである。
【図6】電源OFF時に実行される手順を示したフローチャートである。
【図7】電源ON時に実行される手順を示したフローチャートである。
【図8】インクカートリッジ及びRTCの電源系統の第2実施例である。
【符号の説明】
【0057】
10 メイン回路基板、11 RTC、12 直流電源装置、50 インクジェット式記録装置、51 キャリッジガイド軸、52 プラテン、53 搬送駆動ローラ、54 搬送従動ローラ、55 排紙駆動ローラ、56 排紙従動ローラ、61 キャリッジ、62 記録ヘッド、71〜74 インクカートリッジ、100 記録制御部、101 ROM、102 RAM、103 ASIC、104 MPU、105 不揮発性メモリ、109 AC/DCコンバータ、712、722、732、742 電池、C1 電気二重層コンデンサ、P 記録紙、X 主走査方向、Y 副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材の記録面にドットを形成して記録を実行する記録装置に着脱可能に接続され、被記録材の記録面に形成されるドットの原料となるドット形成原料が収容されるドット形成原料収容器であって、
前記記録装置に搭載されているRTCを動作させるための電池を内蔵している、ことを特徴としたドット形成原料収容器。
【請求項2】
請求項1において、前記電池は、DMFC型燃料電池である、ことを特徴としたドット形成原料収容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のドット形成原料収容器から供給されるドット形成原料で被記録材の記録面にドットを形成して被記録材への記録を実行可能な構成を有する記録実行手段と、該記録実行手段による被記録材への記録制御を実行する記録制御装置とを備えた記録装置であって、
電源がONである間は、記録装置本体側の電源で前記記録制御装置のRTCが動作し、電源がOFFである間は、前記ドット形成原料収容器に内蔵されている電池を電源として前記RTCが動作する構成を有している、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項3において、複数の前記ドット形成原料収容器が接続可能であるとともに、接続された複数の前記ドット形成原料収容器の電池出力が前記RTCに並列接続される構成を有している、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項3において、ニ以上の所定数の前記ドット形成原料収容器が接続されるとともに、接続された所定数の前記ドット形成原料収容器の電池出力が前記RTCに直列接続される構成を有している、ことを特徴とした記録装置。
【請求項6】
記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へインクを噴射して記録を実行する記録装置に着脱可能に接続され、前記インク噴射ノズルから被記録材の記録面へ噴射されるインクが収容されるインクカートリッジであって、
前記記録装置に搭載されているRTCを動作させるための電池を内蔵している、ことを特徴としたインクカートリッジ。
【請求項7】
請求項6において、前記電池は、DMFC型燃料電池である、ことを特徴としたインクカートリッジ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のインクカートリッジから供給されるインクを記録ヘッドのインク噴射ノズルから被記録材の記録面へ噴射して被記録材への記録を実行可能な構成を有する記録実行手段と、前記記録実行手段による被記録材への記録制御を実行する記録制御装置とを備えた記録装置であって、
電源がONである間は、記録装置本体側の電源で前記記録制御装置のRTCが動作し、電源がOFFである間は、前記インクカートリッジに内蔵されている電池を電源として前記RTCが動作する構成を有している、ことを特徴とした記録装置。
【請求項9】
請求項8において、複数の前記インクカートリッジが接続可能であるとともに、接続された複数の前記インクカートリッジの電池出力が前記RTCに並列接続される構成を有している、ことを特徴とした記録装置。
【請求項10】
請求項8において、ニ以上の所定数の前記インクカートリッジが接続されるとともに、接続された所定数の前記インクカートリッジの電池出力が前記RTCに直列接続される構成を有している、ことを特徴とした記録装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項において、前記記録制御装置は、被記録材への記録終了時刻を被記録材への記録を実行する度に更新しながら保持し、
保持している記録終了時刻を記録装置の電源OFF時に不揮発性メモリに記憶し、
記録装置の電源ON時に前記不揮発性メモリに記憶されている記録終了時刻を取得して保持し、
被記録材への記録実行時には、保持している記録終了時刻からの経過時間に応じて必要な前記記録ヘッドのメンテナンス制御を実行してから被記録材への記録を開始する、ことを特徴とした記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−261129(P2007−261129A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90355(P2006−90355)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】