説明

ドライバー状態推定装置及びドライバー状態推定方法

【課題】より精度良くドライバーの状態を推定することが可能なドライバー状態推定装置及びドライバー状態推定方法を提供する。
【解決手段】運転支援装置10の注意レベル推定部20は、ドライバーの注意レベルが低いレベルと高いレベルとの場合にT、H及びHの3つのパラメータの標本値群を取得し、ベクトル空間上にプロットし、各標本値群中で平均値の点同士を結ぶ直線N1を法線とし、直線N1の中点M1を通る平面P1を設定する。注意レベル推定部20は、測定されたT、H及びHが平面P1のいずれの側に位置するかでドライバーの注意レベルを推定する。ドライバーの注意レベルが異なる標本値群を3次元のベクトル空間上にプロットするため、標本値群中の標本値にバラツキがあっても、注意レベルの異なる標本値群同士を判別し易くなり、より精度良くドライバーの状態を推定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバー状態推定装置及びドライバー状態推定方法に関し、特にドライバーの状態に影響されるパラメータの標本値群に基づいてドライバーの状態を推定するドライバー状態推定装置及びドライバー状態推定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車における交通事故の防止を目的とした予防安全技術として、HMI(Human Machine Interface)による様々な情報提示手法が検討されている。情報提示による予防安全効果のさらなる向上のためには、車両周囲の物理的な事故発生のリスクに加えて、刻々と変化するドライバーの運転に対する注意レベルや疲労度等の状態に対して考慮することが重要であると考えられる。例えば、特許文献1では、ブレーキ遅れ時間等のドライバーの操作量を基準操作量と比較することにより、ドライバーの疲労度を推定する疲労検出装置が開示されている。この装置では、ドライバーの疲労度の推定の際に、車両周辺の他車両情報、道路形状情報、気象情報及び操作デバイスの劣化情報に基づいた推定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−6839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような技術においては、単一のパラメータであるブレーキ遅れ時間等をその基準操作量と比較することによってドライバーの疲労度を推定しているが、同じ疲労度であっても、生体であるドライバーのブレーキ遅れ時間等の値にはバラツキが生じる。例えば、ドライバーが全く疲労していない状態であっても、種々の要因により、予め設定したブレーキ遅れ時間等の基準操作量を下回る操作をしてしまうことは有り得る。このような場合、装置はドライバーが疲労しているものと誤判定をしてしまう。一方、ドライバーが極度に疲労している状態であっても、予め設定したブレーキ遅れ時間等の基準操作量を上回る操作をしてしまうことは有り得る。このような場合、装置はドライバーが疲労していないものと誤判定をしてしまう。ブレーキ遅れ時間以外に他車両情報や、道路形状情報等を単に加味して推定を行っても、上記のような問題は残る。そのため、ドライバーの状態をより精度良く推定することが可能な手法が望まれている。
【0005】
本発明は、このような実情に考慮してなされたものであり、その目的は、より精度良くドライバーの状態を推定することが可能なドライバー状態推定装置及びドライバー状態推定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ドライバーの状態が第1レベルである場合とドライバーの状態が第1レベルより良好な第2レベルである場合とのそれぞれにおいて、ドライバーの状態に影響される少なくとも3つのパラメータそれぞれの標本値群を取得する標本値群取得手段と、標本値群取得手段が取得したパラメータそれぞれの標本値群を、パラメータそれぞれをベクトル軸とするベクトル空間上にプロットする標本値群プロット手段と、標本値群プロット手段によってパラメータの標本値群をプロットされたベクトル空間上において、第1レベルの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる第1平均値点と、第2レベルの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる第2平均値点とをプロットする平均値点プロット手段と、平均値点プロット手段がプロットした第1平均値点と第2平均値点とを結ぶ直線を設定する直線設定手段と、直線設定手段が設定した直線の中点を設定する中点設定手段と、直線設定手段が設定した直線を法線とし、中点設定手段が設定した直線の中点を通る面を設定する面設定手段と、ドライバーの運転中におけるパラメータそれぞれの測定値を取得する測定値取得手段と、測定値取得手段が取得したパラメータそれぞれの測定値をベクトル空間上にプロットする測定値プロット手段と、測定値プロット手段がプロットした測定値が、面設定手段が設定した面の第1レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第1レベルの状態であると推定し、測定値プロット手段がプロットした測定値が、面設定手段が設定した面の第2レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第2レベルの状態であると推定する状態推定手段とを備えたドライバー状態推定装置である。
【0007】
この構成によれば、標本値群取得手段が、ドライバーの状態が第1レベルである場合とドライバーの状態が第1レベルより良好な第2レベルである場合とのそれぞれにおいて、ドライバーの状態に影響される少なくとも3つのパラメータそれぞれの標本値群を取得し、標本値群プロット手段が、標本値群取得手段が取得したパラメータそれぞれの標本値群を、パラメータそれぞれをベクトル軸とするベクトル空間上にプロットする。このように、ドライバーの状態が異なる標本値群を3次元以上のベクトル空間上にプロットすることにより、標本値群中の標本値にバラツキがあっても、ドライバーの状態が異なる標本値群同士を判別し易くなる。
【0008】
また、平均値点プロット手段が、標本値群プロット手段によってパラメータの標本値群をプロットされたベクトル空間上において、第1レベルの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる第1平均値点と、第2レベルの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる第2平均値点とをプロットし、直線設定手段が、平均値点プロット手段がプロットした第1平均値点と第2平均値点とを結ぶ直線を設定し、中点設定手段が、直線設定手段が設定した直線の中点を設定し、面設定手段が、直線設定手段が設定した直線を法線とし、中点設定手段が設定した直線の中点を通る面を設定することにより、ドライバーの状態が異なる標本値群同士の境界となる面を設定することができる。
【0009】
さらに、測定値取得手段が、ドライバーの運転中におけるパラメータそれぞれの測定値を取得し、測定値プロット手段が、測定値取得手段が取得したパラメータそれぞれの測定値をベクトル空間上にプロットし、状態推定手段が、測定値プロット手段がプロットした測定値が、面設定手段が設定した面の第1レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第1レベルの状態であると推定し、測定値プロット手段がプロットした測定値が、面設定手段が設定した面の第2レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第2レベルの状態であると推定することにより、パラメータの測定値にバラツキがあった場合でも明確な境界となる面を用いて、より精度良くドライバーの状態を推定することが可能となる。
【0010】
この場合、パラメータには、自車と先行車との相対速度ΔV、目標車間距離と現在の車間距離との差である車間距離誤差ΔR及びアクセルペダル変位Pとした場合に、T(dP/dt)+P=HΔV+HΔRで示されるアクセルペダル操作モデルにおけるペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHを含むことが好適である。
【0011】
この構成によれば、自車が先行車に対して追従走行を行っている際のアクセルペダル操作モデルにおけるペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHをパラメータに含むため、ドライバーの注意レベル等の状態が重要となる追従走行の際に、ドライバーの状態をより高精度で推定することができる。
【0012】
また、標本値群取得手段は、ドライバーの状態が第1レベルである場合とドライバーの状態が第1レベルから段階的に良好になる第1レベル〜第nレベル(3<n)である場合のパラメータそれぞれの標本値群を取得し、平均値点プロット手段は、第1レベル〜第nレベルそれぞれの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる第1平均値点〜第n平均値をプロットし、直線設定手段は、平均値点プロット手段がプロットした第1平均値点と第2平均値点とを結ぶ第1の直線〜第n−1平均値点と第n平均値点とを結ぶ第n−1の直線をそれぞれ設定し、中点設定手段は、直線設定手段が設定した第1〜第n−1の直線それぞれの第1の中点〜第n−1の中点を設定し、面設定手段は、直線設定手段が設定した第1〜第n−1の直線を法線とし、中点設定手段が設定した第1〜第n−1の直線の第1〜第n−1の中点を通る第1の面〜第n−1の面をそれぞれ設定し、状態推定手段は、測定値プロット手段がプロットした測定値が、測定値に最も近接する第kの面(1≦k<n−1)との位置関係において、第kの面の第kレベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第kレベルの状態であると推定し、測定値プロット手段がプロットした測定値が、面設定手段が設定した第kの面の第k+1レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第k+1レベルの状態であると推定することが好適である。
【0013】
この構成によれば、標本値群取得手段は、ドライバーの状態が第1レベルである場合とドライバーの状態が第1レベルから段階的に良好になる第1レベル〜第nレベル(3<n)である場合のパラメータそれぞれの標本値群を取得するため、3段階以上に分類されたドライバーの状態の標本値群がベクトル空間上にプロットされることになる。
【0014】
また、平均値点プロット手段は、第1レベル〜第nレベルそれぞれの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる第1平均値点〜第n平均値をプロットし、直線設定手段は、平均値点プロット手段がプロットした第1平均値点と第2平均値点とを結ぶ第1の直線〜第n−1平均値点と第n平均値点とを結ぶ第n−1の直線をそれぞれ設定し、中点設定手段は、直線設定手段が設定した第1〜第n−1の直線それぞれの第1の中点〜第n−1の中点を設定し、面設定手段は、直線設定手段が設定した第1〜第n−1の直線を法線とし、中点設定手段が設定した第1〜第n−1の直線の第1〜第n−1の中点を通る第1の面〜第n−1の面をそれぞれ設定するため、ベクトル空間上に3段階以上に分類されたドライバーの状態が異なる標本値群同士の境界となる面を設定することができる。
【0015】
さらに、状態推定手段は、測定値プロット手段がプロットした測定値が、測定値に最も近接する第kの面(1≦k<n−1)との位置関係において、第kの面の第kレベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第kレベルの状態であると推定し、測定値プロット手段がプロットした測定値が、面設定手段が設定した第kの面の第k+1レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第k+1レベルの状態であると推定するため、3段階以上に細かくドライバーの状態を推定することができる。
【0016】
また、面設定手段は、直線設定手段が設定した直線を法線とし、中点設定手段が設定した直線の中点を通る平面を設定することが好適である。
【0017】
この構成によれば、面設定手段は、直線設定手段が設定した直線を法線とし、中点設定手段が設定した直線の中点を通る平面を設定するため、ドライバーの状態が異なる標本値群同士の境界となる面を簡単に設定することができる。
【0018】
一方、面設定手段は、直線設定手段が設定した直線を法線とし、中点設定手段が設定した直線の中点を通り、ドライバーの状態が互いに異なる標本値群同士の間を通る曲面を設定することが好適である。
【0019】
この構成によれば、面設定手段は、直線設定手段が設定した直線を法線とし、中点設定手段が設定した直線の中点を通り、ドライバーの状態が互いに異なる標本値群同士の間を通る曲面を設定するため、例えば、標本値群中の標本値のバラツキが大きい場合であっても、ドライバーの状態が異なる標本値群同士の境界となる面を確実に設定することができる。
【0020】
一方、本発明は、ドライバーの状態が第1レベルである場合とドライバーの状態が第1レベルより良好な第2レベルである場合とのそれぞれにおいて、ドライバーの状態に影響される少なくとも3つのパラメータそれぞれの標本値群を取得する標本値群取得工程と、標本値群取得工程で取得したパラメータそれぞれの標本値群を、パラメータそれぞれをベクトル軸とするベクトル空間上にプロットする標本値群プロット工程と、標本値群プロット工程によってパラメータの標本値群をプロットされたベクトル空間上において、第1レベルの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる第1平均値点と、第2レベルの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる第2平均値点とをプロットする平均値点プロット工程と、平均値点プロット工程でプロットした第1平均値点と第2平均値点とを結ぶ直線を設定する直線設定工程と、直線設定工程で設定した直線の中点を設定する中点設定工程と、直線設定工程で設定した直線を法線とし、中点設定工程が設定した直線の中点を通る面を設定する面設定工程と、ドライバーの運転中におけるパラメータそれぞれの測定値を取得する測定値取得工程と、測定値取得工程で取得したパラメータそれぞれの測定値をベクトル空間上にプロットする測定値プロット工程と、測定値プロット工程でプロットした測定値が、面設定工程で設定した面の第1レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第1レベルの状態であると推定し、測定値プロット工程でプロットした測定値が、面設定工程が設定した面の第2レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第2レベルの状態であると推定する状態推定工程とを含むドライバー状態推定方法である。
【0021】
この場合、パラメータには、自車と先行車との相対速度ΔV、目標車間距離と現在の車間距離との差である車間距離誤差ΔR及びアクセルペダル変位Pとした場合に、T(dP/dt)+P=HΔV+HΔRで示されるアクセルペダル操作モデルにおけるペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHを含むことが好適である。
【0022】
また、標本値群取得工程では、ドライバーの状態が第1レベルである場合とドライバーの状態が第1レベルから段階的に良好になる第1レベル〜第nレベル(3<n)である場合のパラメータそれぞれの標本値群を取得し、平均値点プロット工程では、第1レベル〜第nレベルそれぞれの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる第1平均値点〜第n平均値をプロットし、直線設定工程では、平均値点プロット工程でプロットした第1平均値点と第2平均値点とを結ぶ第1の直線〜前記第n−1平均値点と第n平均値点とを結ぶ第n−1の直線をそれぞれ設定し、中点設定工程では、直線設定工程で設定した第1〜第n−1の直線それぞれの第1の中点〜第n−1の中点を設定し、面設定工程では、直線設定工程で設定した第1〜第n−1の直線を法線とし、中点設定工程で設定した第1〜第n−1の直線の第1〜第n−1の中点を通る第1の面〜第n−1の面をそれぞれ設定し、状態推定工程では、測定値プロット工程でプロットした測定値が、測定値に最も近接する第kの面(1≦k<n−1)との位置関係において、第kの面の第kレベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第kレベルの状態であると推定し、測定値プロット工程でプロットした測定値が、面設定工程で設定した第kの面の第k+1レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが第k+1レベルの状態であると推定することが好適である。
【0023】
また、面設定工程では、直線設定工程で設定した直線を法線とし、中点設定工程で設定した直線の中点を通る平面を設定することが好適である。
【0024】
一方、面設定工程では、直線設定工程で設定した直線を法線とし、中点設定工程で設定した直線の中点を通り、ドライバーの状態が互いに異なる標本値群同士の間を通る曲面を設定することが好適である。
【発明の効果】
【0025】
本発明のドライバー状態推定装置及びドライバー状態推定方法によれば、より精度良くドライバーの状態を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係る運転支援装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態の運転支援装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】実施形態の運転支援装置が適用される状況を示す側面図である。
【図4】ドライバーの注意レベルを推定するための平面を設定した3次元空間を示す斜視図である。
【図5】ドライバーの注意レベルを判定するための曲面を設定した3次元空間を示す斜視図である。
【図6】ドライバーの注意レベルを推定するための複数の平面を設定した3次元空間を示す斜視図である。
【図7】実験例における被験者を示す表である。
【図8】実験例におけるサブタスクを示す図である。
【図9】実験例において最初に被験者の注意レベルの高低による標本値群の分離度の確認を行った際における被験者の運転に対する主観的な注意レベルのアンケート結果を示すグラフである。
【図10】実験例において最初に被験者の注意レベルの高低による標本値群の分離度の確認を行った際に注意レベルの高低が分離できた度合を示す表である。
【図11】実験例において最初に被験者の注意レベルの高低による標本値群の分離度の確認を行った際における注意レベルを推定するための平面を設定した3次元空間を示す斜視図である。
【図12】実験例において2回目に被験者の注意レベルの推定を行った際におけるサブタスクが無い場合の車間距離、速度及びペダル操作量の変動を示すグラフである。
【図13】実験例において2回目に被験者の注意レベルの推定を行った際におけるサブタスクが有る場合の車間距離、速度及びペダル操作量の変動を示すグラフである。
【図14】実験例において2回目に被験者の注意レベルの推定を行った際における注意レベルを推定するための平面を設定した3次元空間を示す斜視図である。
【図15】実験例において2回目に被験者の注意レベルの推定を行った際にサブタスクの有無を分けることができた度合を示す表である。
【図16】実験例において2回目に被験者の注意レベルの推定を行った際における被験者の運転に対する主観的な注意レベルのアンケート結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係るドライバー状態推定装置及びドライバー状態推定方法について説明する。図1に示す運転支援装置10は、車両に搭載され、ドライバーの注意レベルに応じて情報の提示等の運転支援を行なうための装置である。
【0028】
図1に示すように、運転支援装置10は、レーダセンサ11、カメラセンサ12、ペダルセンサ13及び車速センサ14を備えている。レーダセンサ11は、自車と先行車との車間距離及び先行車の速度を計測するためのものである。レーダセンサ11には、ミリ波レーダあるいはレーザレーダ等を適用できる。カメラセンサ12も、自車と先行車との車間距離を計測するためのものである。カメラセンサ12には、ステレオカメラ等を適用することができる。ペダルセンサ13は、自車のアクセルペダルの変位を検出するためのものである。車速センサ14は、自車の車速を検出するためのものである。車速センサ14により検出された車速はドライバーの注意レベルの推定の他、レーダセンサ11、カメラセンサ12及びペダルセンサ13により検出された検出値の補正に用いられる。
【0029】
運転支援装置10は、注意レベル推定部20を備えている。注意レベル推定部20は、レーダセンサ11、カメラセンサ12、ペダルセンサ13及び車速センサ14が検出した検出値に基づき、ドライバーの注意レベルを推定するためのものである。注意レベル推定部20は、物理的には、ECU(Electro Control Unit)から構成され、装置全体を制御する。
【0030】
注意レベル推定部20にはドライバーデータベース30が接続されている。ドライバーデータベース30には、注意レベル推定部20がドライバーの注意レベルを推定するためのパラメータの標本値が記録される。なお、データベース30に記録される標本値は自車の個々のドライバーについてデータとすることにより、当該ドライバーに特化した標本値とすることができる。あるいは、ドライバーの注意レベルに対するパラメータの値に個々のドライバーによらない一般的な傾向が見られるときは、データベース30に記録される標本値は、一般のドライバーについての統計的な標本値とすることもできる。この場合、自車のドライバーの年齢、性別及び運転経験等に合致した標本値を適用することができる。
【0031】
アシスト方法決定部40は、レーダセンサ11、カメラセンサ12、ペダルセンサ13及び車速センサ14が検出した検出値に基づいて推定される自車が現在の環境下でおかれている環境リスクと、注意レベル推定部20が推定したドライバーの注意レベルとに応じて、ディスプレイ51、スピーカ52、ブザー53及び反力アクチュエータ54を動作させて、ドライバーの注意レベルを修正し、ドライバーの運転を支援するためのものである。
【0032】
以下、本実施形態の運転支援装置10の動作について説明する。本実施形態の運転支援装置10は、全体としては図2に示す動作を自車の走行中に繰り返し実行する。本実施形態では、図3に示すように、自車100が先行車200の後方に追従して走行している状態を想定する。図2に示すように、レーダセンサ11、カメラセンサ12、ペダルセンサ13及び車速センサ14が各データを取得する(S11)。この場合、図3に示すように、自車100の自車速度V、先行車200の先行車速度V及び車間距離Rが検出される。
【0033】
注意レベル推定部20は、レーダセンサ11、カメラセンサ12、ペダルセンサ13及び車速センサ14により検出された検出値、あるいはドライバーデータベース30に記録されたデータから、ドライバーの注意レベルを推定するためのモデルのパラメータを同定する(S12)。本実施形態においては、注意レベルの推定のためのアクセルペダル操作モデルは下式(1)によって表される
【数1】



【0034】
式(1)のPはアクセルペダル変位、ΔVは相対速度、ΔRは車間距離誤差、Tはペダル遅れ時定数、Hは相対速度フィードバックゲイン、Hは車間距離誤差フィードバックゲインである。車間距離誤差ΔRとは、目標車間距離と現在の車間距離Rとの差である。ペダル遅れ時定数Tとは、アクセルペダルが緩やかに踏まれる度合を表す定数である。相対速度フィードバックゲインHとは、相対速度が修正される応答の速さの度合を示す定数である。車間距離誤差フィードバックゲインHとは、車間距離誤差ΔRが修正される応答の速さの度合を示す定数である。
【0035】
注意レベル推定部20は、上記のアクセルペダル操作モデルについて、後述する方法でドライバーの注意レベルを推定する(S13)。アシスト方法決定部40は、レーダセンサ11、カメラセンサ12、ペダルセンサ13及び車速センサ14が検出した検出値に基づいて推定される自車が現在の環境下でおかれている環境リスクを推定する(S14)。
【0036】
アシスト方法決定部40は、環境リスクと注意レベル推定部20が推定したドライバーの注意レベルに応じてアシストを実行すべきか判定する(S15)。アシストを実行すべきときは、アシスト方法決定部40は、警告等のアシストをディスプレイ51、スピーカ52、ブザー53及び反力アクチュエータ54を動作させて行う(S16)。この場合のアシストは、環境リスクが高く、ドライバーの注意レベルが低い順に、ディスプレイ51による表示、スピーカ52による音声案内、ブザー53による警報の報知及び反力アクチュエータ54のアクセルペダルへの反力によるドライバーの運転への介入と強度を増加させて行われる。
【0037】
以下、本実施形態におけるドライバーの注意レベルの推定手法について説明する。注意レベル推定部20は、レーダセンサ11等により検出された検出値、あるいはドライバーデータベース30に記録されたデータから、ドライバーの注意レベルが低い注意レベルである場合と高い注意レベルである場合とのそれぞれにおいて、ペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHの3つのパラメータそれぞれの標本値を取得する。
【0038】
図4に示すように、注意レベル推定部20は、ペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHの3つのパラメータそれぞれの標本値群を、これらのパラメータそれぞれをベクトル軸とするベクトル空間上にプロットする。図4に示すように、ペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHを3軸とする3次元ベクトル空間上に、白三角プロットと白丸プロットとでそれぞれ示される低い注意レベルの標本値群と高い注意レベルの標本値群とがプロットされる。
【0039】
注意レベル推定部20は、低い注意レベル及び高い注意レベルの標本値群それぞれで、ペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHそれぞれの平均値となる点をプロットする。図4に示すように、3次元ベクトル空間上に、黒三角プロットと黒丸プロットとでそれぞれ示される低い注意レベルの平均点と高い注意レベルの平均点とがプロットされる。
【0040】
図4に示すように、注意レベル推定部20は、低い注意レベルの平均点と高い注意レベルの平均点とを結ぶ直線N1を設定する。図4に示すように、注意レベル推定部20は、直線N1の中点M1を設定する。図4に示すように、注意レベル推定部20は、直線N1を法線とし、直線N1の中点M1を通る平面P1を設定する。これにより、低い注意レベルと高い注意レベルの標本値群とを区画する平面P1が設定される。
【0041】
次に、レーダセンサ11、カメラセンサ12、ペダルセンサ13及び車速センサ14による検出値により、ペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHそれぞれの値が得られたときは、注意レベル推定部20は、これらを3次元空間上にプロットし、当該プロットされた点が平面P1の低い注意レベルの側に位置するときは、ドライバーが低い注意レベルであると推定し、当該プロットされた点が平面P1の高い注意レベルの側に位置するときは、ドライバーが高い注意レベルであると推定する。
【0042】
なお、この場合、低い注意レベルと高い注意レベルの標本値群とを区画する面は平面に限らず、図5のような曲面P1’とすることができる。この場合の曲面P1’は、図4の平面P1と同様に、直線N1を法線とし、直線N1の中点M1を通る。曲面P1’は、低い注意レベルと高い注意レベルの標本値群との間を通る曲面となる。この場合、注意レベル推定部20は、図5に示すように、低い注意レベルの標本値群中の標本値と高い注意レベルの標本値群中の標本値とで、最も距離が近い標本値同士を結ぶ直線N1’を設定する。さらに、直線N1’の中点M1’が同様に設定される。注意レベル推定部20は、曲面P1’を、直線N1’を法線とし、直線N1’の中点M1’を通る曲面として設定する。これにより、低い注意レベルと高い注意レベルの標本値群との中間を通る曲面P1’が設定される。
【0043】
あるいは、この場合、図6に示すように、3段階以上の注意レベルを設定し、そのそれぞれの標本値群について、同様に標本値群それぞれの境界となる面を設定しても良い。図6の例では、第1〜第4注意レベルの標本値群について、同様に平均値が求められ、直線N1〜N3とその中点M1〜3とが設定され、直線N1〜N3を法線とし、直線N1〜N3の中点M1〜M3を通る平面P1〜P3が設定される。この場合、注意レベル推定部20は、レーダセンサ11、カメラセンサ12、ペダルセンサ13及び車速センサ14による検出値により、ペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHそれぞれの値が得られたときは、当該値がプロットされた点に最も近接する平面P1〜P3について、当該点がいずれの注意レベルの標本値群の側に位置するかで、ドライバーの注意レベルを推定する。
【0044】
本実施形態によれば、注意レベル推定部20が、ドライバーの注意レベルが低いレベルである場合と高いレベルである場合とのそれぞれにおいて、ドライバーの注意レベルに影響される少なくとも3つのパラメータそれぞれの標本値群を取得し、パラメータそれぞれの標本値群を、パラメータそれぞれをベクトル軸とするベクトル空間上にプロットする。このように、ドライバーの注意レベルが異なる標本値群を3次元以上のベクトル空間上にプロットすることにより、標本値群中の標本値にバラツキがあっても、ドライバーの注意レベルが異なる標本値群同士を判別し易くなる。
【0045】
また、注意レベル推定部20が、パラメータの標本値群をプロットされたベクトル空間上において、低い注意レベル及び高い注意レベルそれぞれの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる平均値点をプロットし、平均値点同士を結ぶ直線N1を設定し、当該直線の中点M1を設定し、設定した直線N1を法線とし、直線の中点M1を通る平面P1を設定することにより、ドライバーの注意レベルが異なる標本値群同士の境界となる面を設定することができる。
【0046】
さらに、注意レベル推定部20が、ドライバーの運転中におけるパラメータそれぞれの測定値を取得し、パラメータそれぞれの測定値をベクトル空間上にプロットし、プロットした測定値が、設定した平面P1の低い注意レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが低い注意レベルの状態であると推定し、測定値が平面P1の高い注意レベルの標本値の側に位置するときは、ドライバーが高い注意レベルの状態であると推定することにより、パラメータの測定値にバラツキがあった場合でも明確な境界となる平面P1を用いて、より精度良くドライバーの注意レベルを推定することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、自車100が先行車200に対して追従走行を行っている際のアクセルペダル操作モデルにおけるペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHをパラメータに含むため、ドライバーの注意レベルの状態が重要となる追従走行の際に、ドライバーの注意レベルをより高精度で推定することができる。
【0048】
また、本実施形態では、注意レベル推定部20は、ドライバーの注意レベルが第1レベル〜第4レベルである場合のパラメータそれぞれの標本値群を取得するため、3段階以上に分類されたドライバーの注意レベルの標本値群がベクトル空間上にプロットされることになる。
【0049】
また、注意レベル推定部20は、第1レベル〜第4レベルそれぞれの標本値群中でパラメータそれぞれの平均値となる平均値点をプロットし、これらの平均値点同士を結ぶ直線N1〜N3とその中点M1〜M3とを設定し、直線N1〜N3を法線とし、直線N1〜N3の中点M1〜M3を通る平面P1〜P3を設定する。このため、ベクトル空間上に3段階以上に分類されたドライバーの注意レベルが異なる標本値群同士の境界となる面を設定することができる。
【0050】
さらに、注意レベル推定部20は、プロットした測定値が、測定値に最も近接する平面P1〜P3との位置関係において、当該点がいずれの注意レベルの標本値群の側に位置するかで、ドライバーの注意レベルを推定する。そのため、3段階以上に細かくドライバーの状態を推定することができる。
【0051】
本実施形態では、注意レベル推定部20は、設定した直線N1を法線とし、直線N1の中点M1を通る平面P1設定するため、ドライバーの注意レベルが異なる標本値群同士の境界となる面を簡単に設定することができる。あるいは本実施形態によれば、注意レベル推定部20は、設定した直線N1を法線とし、直線N1の中点M1を通り、ドライバーの注意レベルが互いに異なる標本値群同士の間を通る曲面P1’を設定するため、例えば、標本値群中の標本値のバラツキが大きい場合であっても、ドライバーの注意レベルが異なる標本値群同士の境界となる面を確実に設定することができる。
【0052】
(実験例)
以下、本発明の実験例について説明する。上式(1)のドライバーモデルのパラメータであるペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHを、過去2分間の走行データを用いて最小二乗法により同定した。ドライビングシュミュレータ(以下、DSと呼ぶ)にてオンラインで計算を行い、計算は10秒おきに行なった。
【0053】
ドライバーモデルのパラメータにより注意レベルを推定するために、注意レベルが高い状態と低い状態の走行データを取得しパラメータの同定を行った。これらの同定されたパラメータを、それぞれの注意レベルにおける規範パラメータとする。注意レベルを推定するためにドライバーモデルの規範パラメータとなるT、H及びHを取得し、図4に示すような注意レベル推定の閾値となる平面P1を決定した。
【0054】
本実験例では、自動車運転免許を有する20代の男性3名を被験者とした。図7に各被験者の年齢、運転歴、年間走行距離を示す。実験には被験者の安全の確保と実験条件の再現性の観点から動揺装置付きのDS(三菱プレシジョン株式会社製)を用いた。
【0055】
注意レベル低下状態を模擬するために、被験者にサブタスクを行なわせた。サブタスクはスピーカから1桁の数字を3秒間隔で連続的に音声提示し、被験者に1桁の足し算を行わせ、口頭で回答させるというものである。例えば、図8に示すように、音声提示される数字が5、7、1、3の場合、被験者は3秒ごとに、(5+7=)12、(7+1=)8、(1+3=)4と回答していく。
【0056】
実験シナリオとしてDS上に先行車追従場面を設定した。走行コースは片側2車線の高速道路の左側車線である。先行車はランダムなタイミングで加減速を行い、走行速度70、80、90km/hのいずれかの速度で走行する。このときの加減速度は1m/sである。走行開始5分から8分の間のランダムなタイミングで、先行車は7m/sで急減速し、そのまま停止して実験終了である。被験者には事前に走行シナリオについて説明し、DSでの運転操作に慣れさせるため十分な練習走行を行わせた上で実験を行った。走行中は被験者に、相対速度を小さく維持すること、速度に合わせて適切な車間距離を保つことを指示した。被験者1名につきサブタスクを行わせた場合と行わせなかった場合との各5トリップ、計30トリップ分の走行データを収集した。被験者には1トリップを走行するたびにアンケートとして運転に対する注意レベルを0から10までの11段階で評価させた。
【0057】
図9に、1トリップ毎に被験者に行わせたアンケート結果を示す。図9において、E1からE3は3名の被験者を表す。サブタスク有とサブタスク無とで主観的な注意レベルの高低を比較した結果、被験者E1〜E3ではそれぞれ主観的注意レベルの差が5%、1%、1%の有意水準で違いが現れた。
【0058】
図10に、実験によって取得した各被験者の走行データからパラメータの同定を行い、これにより決定した注意レベル推定のための平面によって、どの程度注意レベルの高低が分離できたかを求めた表を示す。分離の度合いは、パラメータ群と平面との位置関係から決定する。例えば、サブタスク無の場合のパラメータ点が10個あり、その内8個が前記平面より高い注意レベルを表す側にある場合、分離精度は80%となる。図10を見ると、被験者E1〜E3では70から80%の水準で注意レベルを分離可能であることが確認できる。
【0059】
被験者E1のパラメータ同定結果と注意レベル推定のための平面P1を図11に示す。また、サブタスク有とサブタスク無の場合の車間距離、走行速度、アクセルペダル操作量を、E1についてサブタスク無しの場合を図12に、サブタスク有りの場合を図13にそれぞれに示す。図12と図13とを比較すると、サブタスクの影響として、先行車の速度に対する追従性が低下し、アクセルペダルの操作頻度が低下しているように見える。E2、E3に関しても同様に運転操作行動への影響があった。
【0060】
次に、上述の実験で決定した平面P1により、推定精度の検証実験を行った。上述の実験と同様の条件にて、サブタスクの有無でそれぞれ5回、計30トリップの実験を行った。パラメータの同定はDSにてオンラインで行った。
【0061】
図14に被験者E1の同定結果と注意レベル推定のための平面P1を示す。図15に各被験者の平面による推定結果をサブタスクの有無で分けて示す。図15から、60から90%の推定精度であることが確認できる。
【0062】
図16に実験2の際に行ったアンケート結果を示す。被験者E1、E3では図9と同様に有意差があった。本発明では、情報提示のためのHMIによる予防安全の効果向上のため、ドライバモデルを用いた注意レベル推定手法を検討した。注意レベル推定のため、パラメータを3軸に持つ空間上に識別のための平面を設定し、これによる注意レベルの推定精度を調査した。結果、提案した手法によりドライバーの注意レベルの高低を60から90%の精度で識別可能であることを示した。
【0063】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、ドライバーの状態として、ドライバーの注意レベルを推定する手法について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、ドライバーの疲労度、覚醒度等の種々の状態を推定する際に適用可能である。また、上記実施形態は、推定に用いるパラメータとして、ペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHを用いたが、他のパラメータを用いることもでき、パラメータの数も3つに限られず、4以上のパラメータを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0064】
10…運転支援装置、11…レーダセンサ、12…カメラセンサ、13…ペダルセンサ、14…車速センサ、20…注意レベル推定部、30…ドライバーデータベース、40…アシスト方法決定部、51…ディスプレイ、52…スピーカ、53…ブザー、54…反力アクチュエータ、100…自車、200…先行車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバーの状態が第1レベルである場合と前記ドライバーの状態が前記第1レベルより良好な第2レベルである場合とのそれぞれにおいて、前記ドライバーの状態に影響される少なくとも3つのパラメータそれぞれの標本値群を取得する標本値群取得手段と、
前記標本値群取得手段が取得した前記パラメータそれぞれの前記標本値群を、前記パラメータそれぞれをベクトル軸とするベクトル空間上にプロットする標本値群プロット手段と、
前記標本値群プロット手段によって前記パラメータの前記標本値群をプロットされた前記ベクトル空間上において、前記第1レベルの前記標本値群中で前記パラメータそれぞれの平均値となる第1平均値点と、前記第2レベルの前記標本値群中で前記パラメータそれぞれの平均値となる第2平均値点とをプロットする平均値点プロット手段と、
前記平均値点プロット手段がプロットした前記第1平均値点と前記第2平均値点とを結ぶ直線を設定する直線設定手段と、
前記直線設定手段が設定した前記直線の中点を設定する中点設定手段と、
前記直線設定手段が設定した前記直線を法線とし、前記中点設定手段が設定した前記直線の中点を通る面を設定する面設定手段と、
前記ドライバーの運転中における前記パラメータそれぞれの測定値を取得する測定値取得手段と、
前記測定値取得手段が取得した前記パラメータそれぞれの測定値を前記ベクトル空間上にプロットする測定値プロット手段と、
前記測定値プロット手段がプロットした前記測定値が、前記面設定手段が設定した前記面の前記第1レベルの前記標本値の側に位置するときは、前記ドライバーが前記第1レベルの状態であると推定し、前記測定値プロット手段がプロットした前記測定値が、前記面設定手段が設定した前記面の前記第2レベルの前記標本値の側に位置するときは、前記ドライバーが前記第2レベルの状態であると推定する状態推定手段と、
を備えたドライバー状態推定装置。
【請求項2】
前記パラメータには、自車と先行車との相対速度ΔV、目標車間距離と現在の車間距離との差である車間距離誤差ΔR及びアクセルペダル変位Pとした場合に、
(dP/dt)+P=HΔV+HΔR
で示されるアクセルペダル操作モデルにおけるペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHを含む、請求項1に記載のドライバー状態推定装置。
【請求項3】
前記標本値群取得手段は、ドライバーの状態が第1レベルである場合と前記ドライバーの状態が前記第1レベルから段階的に良好になる前記第1レベル〜第nレベル(3<n)である場合の前記パラメータそれぞれの標本値群を取得し、
前記平均値点プロット手段は、前記第1レベル〜前記第nレベルそれぞれの前記標本値群中で前記パラメータそれぞれの平均値となる第1平均値点〜第n平均値をプロットし、
前記直線設定手段は、前記平均値点プロット手段がプロットした前記第1平均値点と前記第2平均値点とを結ぶ第1の直線〜前記第n−1平均値点と前記第n平均値点とを結ぶ第n−1の直線をそれぞれ設定し、
前記中点設定手段は、前記直線設定手段が設定した前記第1〜前記第n−1の直線それぞれの第1の中点〜第n−1の中点を設定し、
前記面設定手段は、前記直線設定手段が設定した前記第1〜前記第n−1の直線を法線とし、前記中点設定手段が設定した前記第1〜前記第n−1の直線の前記第1〜前記第n−1の中点を通る第1の面〜第n−1の面をそれぞれ設定し、
前記状態推定手段は、前記測定値プロット手段がプロットした前記測定値が、前記測定値に最も近接する第kの面(1≦k<n−1)との位置関係において、前記第kの面の第kレベルの前記標本値の側に位置するときは、前記ドライバーが前記第kレベルの状態であると推定し、前記測定値プロット手段がプロットした前記測定値が、前記面設定手段が設定した前記第kの面の第k+1レベルの前記標本値の側に位置するときは、前記ドライバーが前記第k+1レベルの状態であると推定する、請求項1又は2に記載のドライバー状態推定装置。
【請求項4】
前記面設定手段は、前記直線設定手段が設定した前記直線を法線とし、前記中点設定手段が設定した前記直線の中点を通る平面を設定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のドライバー状態推定装置。
【請求項5】
前記面設定手段は、前記直線設定手段が設定した前記直線を法線とし、前記中点設定手段が設定した前記直線の中点を通り、前記ドライバーの状態が互いに異なる前記標本値群同士の間を通る曲面を設定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のドライバー状態推定装置。
【請求項6】
ドライバーの状態が第1レベルである場合と前記ドライバーの状態が前記第1レベルより良好な第2レベルである場合とのそれぞれにおいて、前記ドライバーの状態に影響される少なくとも3つのパラメータそれぞれの標本値群を取得する標本値群取得工程と、
前記標本値群取得工程で取得した前記パラメータそれぞれの前記標本値群を、前記パラメータそれぞれをベクトル軸とするベクトル空間上にプロットする標本値群プロット工程と、
前記標本値群プロット工程によって前記パラメータの前記標本値群をプロットされた前記ベクトル空間上において、前記第1レベルの前記標本値群中で前記パラメータそれぞれの平均値となる第1平均値点と、前記第2レベルの前記標本値群中で前記パラメータそれぞれの平均値となる第2平均値点とをプロットする平均値点プロット工程と、
前記平均値点プロット工程でプロットした前記第1平均値点と前記第2平均値点とを結ぶ直線を設定する直線設定工程と、
前記直線設定工程で設定した前記直線の中点を設定する中点設定工程と、
前記直線設定工程で設定した前記直線を法線とし、前記中点設定工程が設定した前記直線の中点を通る面を設定する面設定工程と、
前記ドライバーの運転中における前記パラメータそれぞれの測定値を取得する測定値取得工程と、
前記測定値取得工程で取得した前記パラメータそれぞれの測定値を前記ベクトル空間上にプロットする測定値プロット工程と、
前記測定値プロット工程でプロットした前記測定値が、前記面設定工程で設定した前記面の前記第1レベルの前記標本値の側に位置するときは、前記ドライバーが前記第1レベルの状態であると推定し、前記測定値プロット工程でプロットした前記測定値が、前記面設定工程が設定した前記面の前記第2レベルの前記標本値の側に位置するときは、前記ドライバーが前記第2レベルの状態であると推定する状態推定工程と、
を含むドライバー状態推定方法。
【請求項7】
前記パラメータには、自車と先行車との相対速度ΔV、目標車間距離と現在の車間距離との差である車間距離誤差ΔR及びアクセルペダル変位Pとした場合に、
(dP/dt)+P=HΔV+HΔR
で示されるアクセルペダル操作モデルにおけるペダル遅れ時定数T、相対速度フィードバックゲインH及び車間距離誤差フィードバックゲインHを含む、請求項6に記載のドライバー状態推定方法。
【請求項8】
前記標本値群取得工程では、ドライバーの状態が第1レベルである場合と前記ドライバーの状態が前記第1レベルから段階的に良好になる前記第1レベル〜第nレベル(3<n)である場合の前記パラメータそれぞれの標本値群を取得し、
前記平均値点プロット工程では、前記第1レベル〜前記第nレベルそれぞれの前記標本値群中で前記パラメータそれぞれの平均値となる第1平均値点〜第n平均値をプロットし、
前記直線設定工程では、前記平均値点プロット工程でプロットした前記第1平均値点と前記第2平均値点とを結ぶ第1の直線〜前記第n−1平均値点と前記第n平均値点とを結ぶ第n−1の直線をそれぞれ設定し、
前記中点設定工程では、前記直線設定工程で設定した前記第1〜前記第n−1の直線それぞれの第1の中点〜第n−1の中点を設定し、
前記面設定工程では、前記直線設定工程で設定した前記第1〜前記第n−1の直線を法線とし、前記中点設定工程で設定した前記第1〜前記第n−1の直線の前記第1〜前記第n−1の中点を通る第1の面〜第n−1の面をそれぞれ設定し、
前記状態推定工程では、前記測定値プロット工程でプロットした前記測定値が、前記測定値に最も近接する第kの面(1≦k<n−1)との位置関係において、前記第kの面の第kレベルの前記標本値の側に位置するときは、前記ドライバーが前記第kレベルの状態であると推定し、前記測定値プロット工程でプロットした前記測定値が、前記面設定工程で設定した前記第kの面の第k+1レベルの前記標本値の側に位置するときは、前記ドライバーが前記第k+1レベルの状態であると推定する、請求項6又は7に記載のドライバー状態推定方法。
【請求項9】
前記面設定工程では、前記直線設定工程で設定した前記直線を法線とし、前記中点設定工程で設定した前記直線の中点を通る平面を設定する、請求項6〜8のいずれか1項に記載のドライバー状態推定方法。
【請求項10】
前記面設定工程では、前記直線設定工程で設定した前記直線を法線とし、前記中点設定工程で設定した前記直線の中点を通り、前記ドライバーの状態が互いに異なる前記標本値群同士の間を通る曲面を設定する、請求項6〜8のいずれか1項に記載のドライバー状態推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−81570(P2011−81570A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232809(P2009−232809)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】