説明

ドライフィルムレジストの薄膜化処理方法

【課題】ドライレジストの薄膜化処理方法を提供するものであり、詳しくは、レジストの除去工程にて泡立ちがなく、均一な薄膜化処理が連続して行える薄膜化処理方法を提供する。
【解決手段】ドライフィルムレジストが貼り付けられた基板5の該ドライフィルムレジストを処理液で処理する工程、その後に、表面の不要なドライフィルムレジスト分を除去液を用いて除去する工程とからなるドライフィルムレジストの薄膜化処理方法において、除去する工程が除去液を繰り返し使用するものであり、除去液中に消泡剤が含まれるドライフィルムレジストの薄膜化処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライフィルムレジスト(以下、「DFR」と略す場合がある)の薄膜化処理方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板やリードフレームの製造方法としては、基板上にエッチングレジスト層を形成し、そのエッチングレジスト層で被覆されていない金属層をエッチングによって取り除くサブトラクティブ法が挙げられる。この手法は、他の手法に比べ、製造工程が短くコスト安であること、金属パターンと絶縁板の接着強度が強いこと等の優位点があるため、現在のプリント配線板及びリードフレーム製造の主流となっている。そして、サブトラクティブ法にてエッチングレジスト層を設ける方法としては、DFRと呼ばれるシート状の感光材料及び液状フォトレジストを用いた方法が挙げられ、これらの中でも、取り扱い性が優れ、テンティングによるスルーホールの保護が可能なことから、DFRの方が一般的に好まれている。
【0003】
さて、近年の電子機器の小型、多機能化に伴い、機器内部に使用されるプリント配線板も高密度化や金属パターンの微細化が進められており、サブトラクティブ法によって、現在では、導体幅が50〜80μm、導体間隙が50〜80μmの金属パターンを有するプリント配線板が製造されている。また、更なる高密度化、微細配線化が進み、50μm以下の超微細な金属パターンが求められるようになっている。それに伴い、パターン精度やインピーダンスの要求も高くなっている。このような微細な金属パターンを達成するために、従来からセミアディティブ法が検討されているが、工程数が大幅に増加するという問題やめっき銅の密着性不良等の問題があった。
【0004】
サブトラクティブ法において、このような微細な金属パターンを形成する場合、生産ライン全ての技術レベルや管理レベルを向上させる必要があることはもちろんであるが、その中でもエッチングが大きなポイントとなる。これは、サブトラクティブ法の特徴である導体の側面方向から進行するサイドエッチングが問題となるからであり、サイドエッチングの量を抑えるために、液組成管理、基板への液吹き付け角度や強さ等、最適なエッチング条件を調整する必要がある。また、エッチング条件の調整だけではなく、エッチングレジスト層の膜厚によってもサイドエッチングは影響を受ける。つまり、膜厚が厚いほど微細なレジストパターン間に液が循環しにくくなり、その結果、サイドエッチングが大きくなる。現在主流となっているDFRの厚みは25μm前後の厚みであり、一方、微細な金属パターンを形成するためにはできるだけレジスト膜厚を薄くする必要があり、そのために、近年では10μm以下の厚みのDFRが開発され、商品化されはじめている。しかし、このような薄いDFRではゴミを核とした気泡の混入及び凹凸追従性が不十分となり、レジスト剥がれや断線が発生する問題があった。
【0005】
このような問題を解決すべく、サブトラクティブ法によって導電パターンを作製する方法において、基板上にDFRを貼り付けた後、無機アルカリ性化合物の含有量が5〜20質量%の高濃度アルカリ水溶液によってDFRを処理し、その後、一挙に除去する方法で薄膜化処理を行い、次に回路パターンの露光、現像、エッチングを行うことを特徴とする導電パターンの形成方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1には、不要なレジストを除去する工程として、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物のうち、少なくともいずれか1種を含むpH5〜10の水溶液を用いて、レジスト1cm当たり0.03〜1L/minの供給流量で除去する方法が記載されている。除去液の使用方法について、引用文献1には詳細に説明されていないが、一度使用してそのまま排出してしまう場合と、予め一定量の除去液を槽内に貯めておき、繰り返し使用する場合が考えられる。そのまま排出してしまう場合における除去液の排出量についても具体的に述べられてはいないが、例えば、両面銅張積層板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学(株)製、商品名:CCL−E170)に貼り付けた厚み40μmのDFRを20μmにまで薄膜化処理する場合を考えて、我々が実験した結果、この薄膜化処理において、不要なレジストを除去するために必要な最低限の除去液の供給量として、基板の半分の面積に相当する除去液を常時吐出し、不要なDFRの除去作業を行った時の排出量を考えると、1枚(片面)処理するだけでも26〜867L/minの排出量になり、除去液の費用に関し、コスト的に問題があり、また、排出された除去液を廃棄処理するための排水処理設備が別途必要となるなどの問題があった。これにより、除去液を多量に排出することなく、連続して使用する必要がある。しかし、予め一定量の除去液を槽内に貯めておき、繰り返し使用する場合、除去液が建浴後の新液である場合は問題なく薄膜化処理が可能であったが、除去液を循環させて繰り返し使用した場合、薄膜化処理するDFRの処理量と共に除去液の泡立ちが激しくなり、数十分の連続運転を行うと槽内に泡が溢れ、これ以上の連続運転ができない状態となる問題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2009/096438号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、DFRの薄膜化処理方法を提供するものであり、詳しくは、レジストの除去工程にて泡立ちがなく、均一な薄膜化処理が連続して行えるDFRの薄膜化処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが検討した結果、ドライフィルムレジストが貼り付けられた基板の該ドライフィルムレジストを処理液で処理する工程、その後に、除去液を用いて表面の不要なドライフィルムレジスト分を除去する工程とからなるドライフィルムレジストの薄膜化処理方法において、除去する工程が除去液を繰り返し使用するものであり、除去液中に消泡剤が含まれることを特徴とするドライフィルムレジストの薄膜化処理方法によって、上記課題を解決できた。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、基板上のDFRの除去工程にて泡立ちがなく、均一な薄膜化処理が連続して行える薄膜化処理方法を提供するものである。薄膜化処理の方法としては、まず、処理液で処理する工程を行い、DFRのミセルを一旦不溶化し、高濃度アルカリ水溶液中に溶解拡散しにくくする。そして、その後、一挙にミセルを除去する方法で、表面の不要なDFRを除去する工程を行い、薄膜化を行う。薄膜化処理において、除去液を繰り返し使用して何度も除去処理を重ねていくと、次第に、薄膜化処理するDFRの処理量と共に除去液の泡立ちが激しくなり、数十分の連続運転を行うと槽内に泡が溢れ、これ以上の連続運転ができない状態となるという問題に対して調査した結果、発泡の原因は主に、水に分散したDFR主成分にあることと推測された。DFRの主成分は一般的に(メタ)アクリル酸を主成分とするポリマーであるため、高濃度のアルカリ溶液にてミセル化させ、その後、水に分散させた場合、高級脂肪酸塩が水に溶け込んだ状態、即ち、石鹸が水に溶け込んだ状態と同じような状態となり、このため、DFRの処理量と共に除去液の泡立ちが激しくなり、連続運転ができない状態となってしまうものと予想される。我々が検討した結果、発泡を抑制する手段として、消泡剤を使用することが最も好ましいことが判明した。消泡剤を添加することで発泡が抑制され、安定した連続運転が可能となる。また、消泡剤の種類としては、20質量%以下の鉱物油を含む消泡剤を用いることが好ましいことが判明した。鉱物油は抑泡効果が大きいとされているが、あまり多く添加すると、水面に油分が浮遊し、槽内を汚したり、処理基板を汚染したりする恐れがあるため、消泡剤に含まれる鉱物油の含有量は20質量%以下が好ましいことを本発明で見出した。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】薄膜化処理装置の構成を簡単に表した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のDFRの薄膜化処理について詳細に説明する。DFRが貼り付けられた基板は、基板の少なくとも片面にDFRを貼り付けることで得られる。貼り付けには、例えば、100℃以上に加熱したゴムロールを加圧して押し当てるラミネータ装置を用いる。基板には酸洗等の前処理を施しても良い。貼り付け後、DFRのキャリアフィルムを剥がし、DFRの薄膜化処理を施す。
【0012】
本発明のDFRの薄膜化処理方法の後に、回路パターンの露光を行い、更に現像を行ってエッチングレジスト層を形成し、次にエッチングレジスト層以外の金属層をエッチングすることで、導電パターンを形成することができる。
【0013】
基板としては、プリント配線板またはリードフレーム用基板が挙げられる。プリント配線板としては、例えば、フレキシブル基板、リジッド基板が挙げられる。フレキシブル基板は、通常、ポリエステルやポリイミド、アラミド、ポリエステル−エポキシベースが絶縁層の材料として用いられている。フレキシブル基板の絶縁層の厚さは5〜125μmで、その両面もしくは片面に1〜35μmの金属層が設けられており、非常に可撓性がある。絶縁層や金属層の厚みはこの範囲以外のものであっても良い。フレキシブル基板は、シート状の形態でも良いし、ロール状の形態でも良い。ロール状の形態であれば、ロール トゥ ロール(Roll to Roll)の方式で、薄膜化処理、露光、現像、エッチング等の工程を処理できる。
【0014】
リジッド基板としては、紙基材またはガラス基材にエポキシ樹脂またはフェノール樹脂等を浸漬させた絶縁性基板を必要枚数重ねて絶縁層とし、その片面もしくは両面に金属箔を載せ、加熱、加圧して積層し、金属層が設けられたものが挙げられる。また、内層配線パターン加工後、プリプレグ、金属箔等を積層して作製する多層用のシールド板、また貫通孔や非貫通孔を有する多層板も挙げられる。厚みは60μm〜3.2mmであり、プリント基板としての最終使用形態により、その材質と厚みが選定される。金属層の材料としては、銅、金、銀、アルミニウム等が挙げられるが、銅が最も一般的である。これらプリント基板は、例えば「プリント回路技術便覧−第二版−」((社)プリント回路学会編、日刊工業新聞社刊)や「多層プリント回路ハンドブック」(J.A.スカーレット編、(株)近代化学社刊)に記載されているものを使用することができる。リードフレーム用基板としては、鉄ニッケル合金、銅系合金等の基板が挙げられる。
【0015】
DFRとは、一般的に使用されている回路形成用の感光性材料であり、光照射部が硬化して現像液に不溶化するネガ型のレジストが挙げられる。DFRは、少なくとも光架橋性樹脂層からなり、ポリエステル等のキャリアフィルム(透明支持体)上に光架橋性樹脂層が設けられ、場合によってはポリエチレン等の保護フィルムで光架橋性樹脂層上を被覆した構成となっている。ネガ型の光架橋性樹脂層は、例えば、カルボキシル基を含むバインダーポリマー、光重合性不飽和化合物、光重合開始剤、溶剤、その他添加剤からなる。それらの配合比率は、感度、解像度、硬度、テンティング性等の要求される性質のバランスによって決定される。光架橋性樹脂組成物の例は「フォトポリマーハンドブック」(フォトポリマー懇話会編、1989年刊行、(株)工業調査会刊)や「フォトポリマー・テクノロジー」(山本亜夫、永松元太郎編、1988年刊行、日刊工業新聞社刊)等に記載されており、所望の光架橋性樹脂組成物を使用することができる。光架橋性樹脂層の厚みは15〜100μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましい。この厚みが15μm未満では、ゴミを核とした気泡の混入や凹凸追従性不良によって、レジスト剥がれや断線が発生する場合があり、100μmを超えると、薄膜化で溶解除去される量が多くなって薄膜化処理時間が長くなることがある。
【0016】
薄膜化処理とは、DFRの厚みを略均一に薄くする処理のことであり、薄膜化処理を施す前の厚みの0.05〜0.9倍の厚みにする。薄膜化処理の工程は、大きく2つの工程に分けられる。第一に、処理液として高濃度アルカリ水溶液を用いて、DFRの光架橋性樹脂成分のミセルを一旦不溶化し、アルカリ水溶液中に溶解拡散しにくくする工程、第二に、この不溶化したミセルを除去する工程である。その後に、ミセルが除去されて薄膜化された光架橋性樹脂層表面を十分に水洗する工程を設けても良い。
【0017】
処理液に使用されるアルカリ性化合物としては、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの炭酸塩または重炭酸塩等のアルカリ金属炭酸塩、カリウム、ナトリウムのリン酸塩等のアルカリ金属リン酸塩、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの水酸化物等のアルカリ金属水酸化物、カリウム、ナトリウムのケイ酸塩等のアルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物を挙げることができる。このうち特に好ましい化合物としては、アルカリ金属炭酸塩が挙げられる。
【0018】
処理液は、上記アルカリ性化合物を処理液に対して5〜20質量%含有することが好ましい。5質量%未満では溶解除去途中のミセルが溶解拡散しやすくなって、処理液の流動によって薄膜化処理が不均一になる場合がある。また、20質量%を超えると析出が起こりやすくなって、液の経時安定性、作業性に劣る場合がある。溶液のpHは9〜12の範囲とすることが好ましい。また、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜少量添加することもできる。
【0019】
処理液を用いて光架橋性樹脂成分のミセルを一旦不溶化する工程は、DFRを貼り付けた基板を処理液中に浸漬させて実施する、いわゆるディップ方式で行うことが好ましい。ディップ方式で行うことにより、光架橋性樹脂表面を均一にミセル化させることが可能となる。
【0020】
処理液の温度範囲としては、具体的には10〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜35℃、更に好ましくは15〜25℃である。処理液の温度が大きく異なると、不溶化するミセルの量が安定しなくなるため、処理液の温度は常に一定に保つことが望ましい。
【0021】
本発明における不溶化したミセルを除去する工程に用いる除去液は、消泡剤を含むものである。消泡剤の種類としては、鉱物油を20質量%以下含んでいるものを使用することが好ましい。この除去液を用いて、高濃度アルカリ水溶液で不溶化された光架橋性樹脂成分を再分散させて溶解除去する。
【0022】
本発明に用いる除去液中に含まれる消泡剤は、消泡効果(抑泡効果、破泡効果)を有する試材で構成され、成分別に分類すると、シリコーン系、界面活性剤系、パラフィン系、鉱物油系に分類される。
【0023】
シリコーン系消泡剤は消泡効果が高いが、薄膜化処理後のレジスト表面への付着や装置内のロールへの付着などにより、製品にハジキを発生させる場合がある。次に、界面活性剤系消泡剤としては、乳化剤を用いて、HLBの低い界面活性剤をエマルジョン分散させたものが多く用いられる。このタイプは持続性が比較的あるものの、消泡効果は他に比べて少ない。次に、パラフィン系消泡剤は、乳化剤を用いてパラフィンワックスあるいはその変性物をエマルジョン分散させたものである。このタイプの消泡剤は、成分として鉱物油を含む消泡剤であり、本発明で使用するのに好ましい消泡剤である。鉱物油の含有量、その他含まれる成分により、消泡効果と持続性を両立させることが可能となる。鉱物油の含有量は20質量%以下が好ましい。用いられる鉱物油としては、石油原油あるいはその加工物から得られる主としてパラフィン系やナフテン系の飽和炭化水素、例えば、流動パラフィン、潤滑油、ガソリン、灯油、軽油、重油、マシン油などが挙げられる。最後に、鉱物油系消泡剤は、鉱物油を主要な消泡成分とするものである。消泡効果を強くするために金属石鹸、二酸化珪素などを混合したものもある。鉱物油系消泡剤は、消泡効果は優れるものの、水への分散性が極めて悪く、水面に油分が浮遊したり、ワークへの油分の付着、浴槽を著しく汚すことがある。
【0024】
本発明に用いる除去液中に含まれる消泡剤は、好ましくは、鉱物油を20質量%以下含む消泡剤である。鉱物油は一般的に、抑泡効果が大きいものの持続性が少ないとされているが、20質量%以下を含有させ、他の成分で持続性を補わせることにより、抑泡効果と持続性が両立される。消泡剤に含まれる鉱物油の含有量は20質量%以下が好ましく、10〜20質量%の範囲がより好ましく、15〜20質量%の範囲以下が更に好ましい。20質量%より多い場合は、水面に油分が浮遊し、槽内を汚したり、薄膜化処理したDFR表面に油分が付着し、表面を汚染したりする場合がある。鉱物油を20質量%以下含んだ消泡剤としては、一般に市販されている消泡剤を使用することができるが、具体的には、栗田工業(株)製の消泡剤である商品名:クリレス(登録商標)505、514、521などを挙げることができる。
【0025】
本発明に係わる上記の消泡剤の添加量は特に制限はないが、未使用の除去液に対して1〜10000ppmの範囲が好ましく、10〜1000ppmの範囲がより好ましい。少ない添加量であれば消泡効果が低くなるし、あまり多くの量を添加すると、消泡効果は大きくなるものの、水面に油分が浮遊し、槽内を汚したり、薄膜化処理したDFR表面に油分が付着し、表面を汚染したりする場合がある。
【0026】
本発明に用いる除去液は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物のうち少なくともいずれか1種を含むことが好ましい。除去液のpHの範囲はpH6.0〜9.0の範囲が好ましく、pH7.0〜8.5の範囲がより好ましい。不要なDFRの除去工程において、pHが6.0未満では、再分散により溶け込んだ光架橋性樹脂成分が凝集し、不溶性のスラッジとなって薄膜化したDFR表面に付着し、薄膜化処理したドライフィルム表面に白い曇りムラが発生する。一方、水溶液のpHが9.0を超えると、光架橋性樹脂成分の溶解拡散が促進され、面内で膜厚ムラが発生するため好ましくない。
【0027】
本発明に用いる除去液のpHは、硫酸、リン酸、塩酸などを用いて、液のpHを調整した後に使用しても良い。また、除去処理の工程で、前段の処理工程からのアルカリ性化合物の持ち込みなどから除去液のpHの値が上昇した場合、規定の範囲内に収まるように随時必要量を添加し、規定のpHの範囲内に収めた後に、再度、除去工程を開始することができる。更に、予めpHが規定の範囲内に収まるように酸の添加量を自動制御しておけば、連続して除去処理を行うこともできる。
【0028】
本発明における表面の不要なDFRを除去する工程としては、処理液を用いて一旦不溶化させた光架橋性樹脂成分のミセルを一気に除去することが望ましいことから、スプレー方式、ブラッシング方式、スクレーピング方式などがあり、スプレー方式が、光架橋性樹脂層の溶解速度の点からは最も好ましい。スプレー方式の場合、処理条件(温度、時間、スプレー圧)は使用する光架橋性樹脂成分の溶解速度に合わせて適宜調整される。具体的には、処理温度は10〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜35℃、更に好ましくは15〜25℃である。また、スプレー圧は0.01〜0.5MPaとするのが好ましく、0.1〜0.3MPaがより好ましい。スプレーは、不要なDFRを滞留させることなく、一気に除去することが好ましいことから、光架橋性樹脂層表面に垂直な方向に対して傾いた方向から噴射するのが好ましい。
【0029】
除去液の供給流量は、DFR1cm当たり0.030〜1.0L/minが好ましく、0.050〜1.0L/minがより好ましく、0.10〜1.0L/minが更に好ましい。供給流量がこの範囲であると、薄膜化後の光架橋性樹脂層表面に不溶解成分を残すことなく、面内略均一にミセルを除去することができる。DFR1cm当たりの供給流量が0.030L/min未満では、不溶化した光架橋性樹脂成分の溶解不良が起こる場合がある。一方、供給流量が1.0L/minを超えると、供給のために必要なポンプなどの部品が巨大になり、大掛かりな装置が必要となる場合がある。更に、1.0L/minを超えた供給量では、光架橋性樹脂成分の溶解拡散に与える効果が変わらなくなることがある。
【0030】
本発明に係わる薄膜化処理において、除去液を供給し、処理液で不溶化された光架橋性樹脂成分を再分散させて溶解除去した後、DFR表面を水によって十分に洗浄することが好ましい。水洗処理の方法は、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式等があり、処理速度が速いため、スプレー方式が最も適している。
【0031】
本発明に係わる薄膜化処理を行った後、露光、現像、エッチングを行うことにより、回路パターンを形成することができる。露光方法としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、UV蛍光灯を光源とした反射画像露光、フォトツールを用いた片面、両面密着露光や、プロキシミティ方式、プロジェクション方式やレーザー走査露光が挙げられる。走査露光を行う場合には、He−Neレーザー、He−Cdレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンイオンレーザー、ルビーレーザー、YAGレーザー、窒素レーザー、色素レーザー、エキシマレーザー等のレーザー光源を発光波長に応じてSHG波長変換して走査露光する、あるいは液晶シャッター、マイクロミラーアレイシャッターを利用した走査露光によって露光することができる。
【0032】
現像の方法としては、使用するDFRに見合った現像液を用い、基板の上下方向から基板表面に向かってスプレーして、レジストパターンとして不要な部分を除去し、回路パターンに相当するエッチングレジスト層を形成する。一般的には、1〜3質量%の炭酸ナトリウム水溶液が使用される。
【0033】
エッチングは、現像で形成されたエッチングレジスト層以外の露出した金属層を除去する方法である。エッチング工程では、「プリント回路技術便覧」((社)日本プリント回路工業会編、1987年刊行、日刊工業新聞社発行)記載の方法等を使用することができる。エッチング液は金属層を溶解除去できるもので、また少なくともエッチングレジスト層が耐性を有しているものであれば良い。一般に金属層に銅を使用する場合には、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液等を使用することができる。
【0034】
以下、本発明の薄膜化処理方法で使用される装置について詳細に説明する。
【0035】
図1は、薄膜化処理装置の構成を簡単に表した模式図である。この図は、左側から、処理液を用いて光架橋性樹脂層成分のミセルを一旦不溶化し、処理液中に溶解拡散しにくくする工程(1)、次に、この不溶化したミセルを除去する工程(2)、次に、ミセルが除去されて薄膜化された光架橋性樹脂層表面を十分に水洗する工程(3)、最後に、ブロアを用いて薄膜化された光架橋性樹脂層表面上に残っている水を完全に除去する工程(4)で使用されるユニット1〜4を示したものである。
【0036】
DFRが貼り付けられた基板5は、まず搬入口6より挿入される。工程(1)のユニット1にはディップ槽7が設けてあり、ディップ槽7の中には搬送用ロール8が対になった状態で設置されている。基板5上のDFRは、このディップ槽7の中で不溶化されたミセル層を形成することとなる。処理液は、ディップ槽の下部から処理液供給用ポンプ9にて供給され、オーバーフローさせる。オーバーフローした処理液は、処理液回収管10を介して処理液貯蔵タンク11に回収され、再使用されることとなる。また、処理液回収管10にはバルブ12が取り付けてあり、古くなった処理液は、これを切り替えることで、廃液管18から適宜、廃液することもできる。
【0037】
次に、基板5は、連結口13を通って次工程(2)のユニット2に搬送される。ユニット2にはミセル除去用のスプレーノズル14が設置してあり、このスプレーノズルに除去液が供給、噴出され、基板5上に形成された不溶化したミセルを一気に除去する。ミセル除去用のスプレーノズル14は、両面処理が可能なように基板5の上下に設置されてある。ユニット1と同様に、除去液は貯蔵タンク15からポンプ16を介して供給される。ユニット2の下部には、バルブ17が取り付けてある除去液回収管10と廃液管18があり、これらを操作することで回収と廃棄を選択することが可能となる。
【0038】
ユニット3とユニット4は、それぞれ、水洗工程(3)と乾燥工程(4)のユニットである。ユニット3では、水供給管26から水洗用のスプレーノズル19に水が供給され、基板5の表面を綺麗に洗浄する。洗浄後の水は、排水処理管20を介し廃棄される。水洗後、基板5はユニット4に導入される。ユニット4にはターボブロワ21が設けられ、ターボブロワ21の吸引管22がユニット4に接続され、ターボブロワ21の吐出管23に複数の空気噴射ノズル24が接続され、基板5の表面に向けて空気を噴射する構成となっている。これにより、基板5に付着した水滴を除去し、搬出口25より基板5が搬出され、一連の薄膜化処理が完了する。
【実施例】
【0039】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1〜18
両面銅張積層板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学(株)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト(旭化成イーマテリアルズ(株)製、商品名:サンフォート(登録商標)AQ−4038、厚み40μm)を貼り付けた。次に、キャリアフィルムを剥離した後、DFRの厚みが平均10μmになるまで薄膜化処理を行った。処理液の組成としては、炭酸ナトリウムを10質量%含む水溶液を用い、除去液の組成としては、炭酸ナトリウムを添加してpH8.0に調整した水溶液を用いた。この際、予め、連続使用する除去液100Lに対して、表1記載の種類及び添加量で消泡剤を除去液に投入しておき、上記薄膜化処理を10回分行い、全ての薄膜化処理が終了した時点での除去液浴槽の泡立ち、除去液浴槽の汚れ状況、処理したワークの表面状況の観察を行い、どの消泡剤が最も適しているかを総合的に判断した。処理液の温度は20℃、ディップ方式で処理した。除去液の温度は20℃、スプレー圧力は0.15MPa、除去液の流量はDFR1cm当たり0.3L/minの条件で行い、除去液のpHの調整は、必要に応じて1質量%の硫酸を添加して、pH7.5〜8.5の範囲になるように随時調整した。10回分の薄膜化処理を行うために要した時間は、いずれの場合も45分であった。
【0041】
[泡立ちの評価方法]
全てのワークの薄膜化処理後、除去液浴槽の水面から計測し、どの程度の高さまで泡が立っているかを測定した。
【0042】
[除去液浴槽の汚れ状況の評価方法]
全てのワークの薄膜化処理後、除去液浴槽の壁への消泡剤成分の付着状況、スカム(溶解したレジスト由来と思われる異物)の付着の有無などを総合的に判断し、評価した。評価基準としては以下の通りであり、製品として使用可能な条件は△以上であった。
◎:除去液浴槽の壁への消泡剤成分、スカムなどの付着が全くなく、非常に良好。
○:除去液浴槽の壁への消泡剤成分、スカムなどの付着がない。
△:除去液浴槽の壁への消泡剤成分、スカムなどの付着が少しあるが、実用可能である。
×:除去液浴槽の壁への消泡剤成分、スカムなどの付着が多く、実用上問題である。
【0043】
[薄膜化処理後のワークの表面状況の評価方法]
薄膜化処理後、蛍光灯の明かりのもと、試料を蛍光灯直下2mの場所に配置し、試料を水平状態から45度傾けた状態でDFR表面を観察し、目視にて、DFR表面に見える消泡剤成分やスカムの付着有無、処理ムラなどがないかを判定した。評価基準としては以下の通りであり、製品として使用可能な条件は△以上であった。
◎:消泡剤成分やスカム、処理ムラなどが全くなく、非常に良好。
○:消泡剤成分やスカム、処理ムラなどがない。
△:消泡剤成分やスカム、処理ムラなどが少しあるが、実用可能である。
×:消泡剤成分やスカム、処理ムラなどが多く、実用上問題である。
【0044】
【表1】

【0045】
表1で明らかなように、本発明の薄膜化処理方法は、レジストの除去工程にて泡立ちがなく、均一な薄膜化処理が連続して行える薄膜化処理方法であることがわかる。
【0046】
消泡剤の種類別に見てみると、パラフィン系消泡剤が総合的に最も良好な結果であった。界面活性剤系消泡剤は、浴槽の汚れやワークへの付着などは少ないものの、消泡効果が少し不足気味であった。鉱物油系消泡剤は、消泡効果は高いものの、浴槽の汚れやワークへの付着などが確認された。シリコーン系消泡剤は、消泡剤としての評価は問題なかったものの、薄膜化処理後のレジスト表面への付着によるハジキの現象が確認された。消泡剤を添加しない比較例1は発泡が激しく、連続運転ができなかった。
【0047】
鉱物油を含む消泡剤であるパラフィン系消泡剤では、鉱物油の含有量が多いほど消泡効果が大きくなっていることがわかるが、鉱物油の含有量が20質量%より多い実施例10〜12では、消泡効果は大きいものの、浴槽やワークへの油分の付着などが見られ、このことから、消泡剤中の鉱物油の含有量は20質量%以下が好ましいことがわかる。更に、消泡の効果から、10〜20質量%の含有量が好ましく、15〜20質量%の含有量がより好ましいことがわかる。消泡剤の添加量としては、実施例4〜9に示すように添加量と共に消泡効果は大きくなっていることがわかり、逆に、浴槽の汚れやワークへの付着の程度は添加量が増えるに従って次第に悪くなっていることがわかる。これらを総合的に判断すると、添加量は10〜1000ppmの範囲が好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、サブトラクティブ法における金属パターンの形成に広く使用され、例えば、プリント配線板、リードフレーム等の作製に使用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 工程(1)ユニット
2 工程(2)ユニット
3 工程(3)ユニット
4 工程(4)ユニット
5 ドライフィルムレジスト(DFR)が貼り付けられた基板
6 搬入口
7 ディップ槽
8 搬送用ロール
9 ユニット1用処理液供給用ポンプ
10 処理液(除去液)回収管
11 処理液貯蔵タンク
12 バルブ
13 連結口
14 ミセル除去用のスプレーノズル
15 除去液貯蔵タンク
16 除去液供給用ポンプ
17 バルブ
18 廃液管
19 水洗用のスプレーノズル
20 排水処理管
21 ターボブロワ
22 吸引管
23 吐出管
24 空気噴射ノズル
25 搬出口
26 水供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライフィルムレジストが貼り付けられた基板の該ドライフィルムレジストを処理液で処理する工程、その後に、除去液を用いて表面の不要なドライフィルムレジスト分を除去する工程とからなるドライフィルムレジストの薄膜化処理方法において、除去する工程が除去液を繰り返し使用するものであり、除去液中に消泡剤が含まれることを特徴とするドライフィルムレジストの薄膜化処理方法。
【請求項2】
該消泡剤が鉱物油を含んでおり、鉱物油の含有量が20質量%以下である請求項1記載のドライフィルムレジストの薄膜化処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−104771(P2012−104771A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254433(P2010−254433)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】